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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143890
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】パウチ
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20241004BHJP
   B65D 75/62 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B65D81/34 U
B65D75/62 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056828
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122529
【弁理士】
【氏名又は名称】藤枡 裕実
(74)【代理人】
【識別番号】100135954
【弁理士】
【氏名又は名称】深町 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100119057
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英生
(74)【代理人】
【識別番号】100131369
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171859
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 英之
(72)【発明者】
【氏名】石川 峻
(72)【発明者】
【氏名】ボラ アンガナ
【テーマコード(参考)】
3E013
3E067
【Fターム(参考)】
3E013BA02
3E013BA11
3E013BA12
3E013BA15
3E013BB12
3E013BC04
3E013BC12
3E013BC14
3E013BD11
3E013BD12
3E013BD13
3E013BE01
3E013BF08
3E013BF26
3E013BF33
3E013BF37
3E013BF80
3E013BG15
3E067AB01
3E067BA12A
3E067BB12A
3E067BB14A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB18A
3E067BB25A
3E067CA04
3E067CA05
3E067CA12
3E067CA17
3E067CA24
3E067EA06
3E067EB06
3E067EB22
3E067EE15
3E067EE48
3E067EE59
3E067FB13
3E067FC01
(57)【要約】
【課題】 縦長の吊り下げ用でありながら、電子レンジで加熱調理することに適したパウチを提供する。
【解決手段】 蒸気抜き機構を有するパウチであり、上縁と下縁と、上縁と下縁の間に延びる第1側縁と、第2側縁と、上縁に沿って形成された上部シール部と、第1側縁に沿って形成された第1側部シール部と、第2側縁に沿って形成された第2側部シール部と、を含み、上縁と下縁の距離が、第1側縁と第2側縁の距離より大きく、蒸気抜き機構が、上部シール部の下方に連接され、上部シール部との間に収容部から隔離された第1未シール部を形成する隔離シール部と、第1未シール部と上部シール部に接しており2枚の積層体を貫通する貫通孔と、を備え、上縁と下縁を結ぶ方向を第1方向、第1方向と直交する方向を第2方向としたとき、第1方向の熱間シール強度の第2方向の熱間シール強度に対する比率が1未満である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面側から内面側へ順に、第1基材層及びシーラント層を少なくとも備える積層体から構成されるパウチであって、
蒸気抜き機構を有するパウチであって、
前記パウチは、上縁と、前記上縁に対向する下縁と、前記上縁と前記下縁の間に延びる第1側縁と、第2側縁と、
前記上縁に沿って形成された上部シール部と、前記第1側縁に沿って形成された第1側部シール部と、前記第2側縁に沿って形成された第2側部シール部と、を含み、
前記パウチは、前記上縁と前記下縁の距離が、前記第1側縁と前記第2側縁の距離より大きく、
前記蒸気抜き機構が、前記上部シール部の下方に連接され、前記上部シール部との間に収容部から隔離された第1未シール部を形成する隔離シール部と、前記第1未シール部と前記上部シール部に接しており2枚の前記積層体を貫通する貫通孔と、を備え、
前記上縁と前記下縁を結ぶ方向を第1方向、前記第1方向と直交する方向を第2方向としたとき、前記第1方向の熱間シール強度の前記第2方向の熱間シール強度に対する比率が1未満である、パウチ。
【請求項2】
前記積層体は、前記第1基材層と前記シーラント層の間にさらに第2基材層を備え、
前記第2基材層に、前記上縁から前記下縁に向かって延びる直線の仮想線に沿って、2本の切込み線からなる切込み対が複数配置され、
前記切込み対は、直線状の第1切込み線と、直線状の第2切込み線と、を備え、
前記第1切込み線と前記第2切込み線が、前記仮想線に対して傾斜しており、
前記第1切込み線と前記第2切込み線の間隔が、前記上縁から前記下縁に向かって広がるように設けられており、
前記第1切込み線および前記第2切込み線は、前記仮想線から前記切込み線の延びる方向に向かって、第1縁部と、前記第1縁部に対向する第2縁部と、前記第1縁部および前記第2縁部に連設する中間部と、に区分され、
前記第1縁部および前記第2縁部における切込みは、前記第2基材層を貫通せず、前記中間部における切込みは、貫通している、請求項1に記載のパウチ。
【請求項3】
前記貫通孔は吊り下げ具における支持用の棒である支持部を通す孔である、請求項1に記載のパウチ。
【請求項4】
前記第2方向の熱間シール強度が11N/15mm以上である、請求項1に記載のパウチ。
【請求項5】
前記シーラント層は、プロピレン・エチレンブロック共重合体と、ポリエチレンと、を含む、請求項1に記載のパウチ。
【請求項6】
前記第1側部シール部と前記第2側部シール部の間における上縁に第2未シール部がある、請求項1に記載のパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り下げが可能なパウチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パウチの上部に孔を形成しておき、フックなどの吊り下げ具を孔に通すことにより、パウチを吊り下げて陳列することが行われている(特許文献1参照)。また、吊り下げのための孔を、電子レンジで加熱されることによって生じる蒸気を逃がすための経路としても利用することが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-11990号公報
【特許文献2】特許第3851635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、吊り下げ用のパウチは、上部に吊り下げ用の機構を有している。そのため、吊り下げ用のパウチを電子レンジで加熱調理可能とするためには、上部に蒸気抜け機構を設けると加工がし易いと考えられる。しかし、上部に蒸気抜け機構を設けた場合でも、パウチの形状を縦長にすると、収容部の中心から近い側部シール部が先に剥離し、蒸気が横から漏れてしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本開示は、縦長の吊り下げ用でありながら、電子レンジで加熱調理することに適したパウチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示は、
外面側から内面側へ順に、第1基材層及びシーラント層を少なくとも備える積層体から構成されるパウチであって、
蒸気抜き機構を有するパウチであって、
前記パウチは、上縁と、前記上縁に対向する下縁と、前記上縁と前記下縁の間に延びる第1側縁と、第2側縁と、
前記上縁に沿って形成された上部シール部と、前記第1側縁に沿って形成された第1側部シール部と、前記第2側縁に沿って形成された第2側部シール部と、を含み、
前記パウチは、前記上縁と前記下縁の距離が、前記第1側縁と前記第2側縁の距離より大きく、
前記蒸気抜き機構が、前記上部シール部の下方に連接され、前記上部シール部との間に収容部から隔離された第1未シール部を形成する隔離シール部と、前記第1未シール部と前記上部シール部に接しており2枚の前記積層体を貫通する貫通孔と、を備え、
前記上縁と前記下縁を結ぶ方向を第1方向、前記第1方向と直交する方向を第2方向としたとき、前記第1方向の熱間シール強度の前記第2方向の熱間シール強度に対する比率が1未満である、パウチを提供する。
【0007】
また、本開示のパウチにおいて、
前記積層体は、前記第1基材層と前記シーラント層の間にさらに第2基材層を備え、
前記第2基材層に、前記上縁から前記下縁に向かって延びる直線の仮想線に沿って、2本の切込み線からなる切込み対が複数配置され、
前記切込み対は、直線状の第1切込み線と、直線状の第2切込み線と、を備え、
前記第1切込み線と前記第2切込み線が、前記仮想線に対して傾斜しており、
前記第1切込み線と前記第2切込み線の間隔が、前記上縁から前記下縁に向かって広がるように設けられており、
前記第1切込み線および前記第2切込み線は、前記仮想線から前記切込み線の延びる方向に向かって、第1縁部と、前記第1縁部に対向する第2縁部と、前記第1縁部および前記第2縁部に連設する中間部と、に区分され、
前記第1縁部および前記第2縁部における切込みは、前記第2基材層を貫通せず、前記中間部における切込みは、貫通していてもよい。
【0008】
また、本開示のパウチは、前記貫通孔は吊り下げ具における支持用の棒である支持部を通す孔であってもよい。
【0009】
また、本開示のパウチは、前記第2方向の熱間シール強度が11N/15mm以上であってもよい。
【0010】
また、本開示のパウチにおいて、前記シーラント層は、プロピレン・エチレンブロック共重合体と、ポリエチレンと、を含んでもよい。
【0011】
また、本開示のパウチは、前記第1側部シール部と前記第2側部シール部の間における上縁に第2未シール部があってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、縦長の吊り下げ用でありながら、電子レンジで加熱調理することに適したパウチを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るパウチを示す正面図である。
図2】パウチを構成するフィルムの層構成を示す図である。
図3】基材層を3層備えた場合におけるパウチを構成する積層フィルムの層構成を示す図である。
図4】開封手段18の詳細を示す平面図である。
図5図4におけるx-x線に対応した、おもて面フィルム1の断面図である。
図6】基材層が3層の場合のおもて面フィルム1の断面図である。
図7】密封されたパウチの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、本開示は、以下に説明する実施形態や実施例には限定されない。なお、以下に示す各図は、模式的に示したものである。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、各図において、部材の断面を示すハッチングを適宜省略する。本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値および材料名は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含むものとする。
【0015】
<パウチの構成>
図1は、本開示の一実施形態に係るパウチを示す正面図である。図1に示すように、本実施形態に係るパウチは、上縁14と、上縁14に対向する下縁13と、上縁14と下縁13の間に延びる第1側縁11と、第2側縁12と、を含んでいる。図1において、D1、D2は、方向を示している。方向D1が上縁14と下縁13を結ぶ方向であり、方向D2が第1側縁11と第2側縁12を結ぶ方向である。方向D1を第1方向、方向D2を第2方向と呼ぶ場合もある。なお、本明細書においては、方向D1に沿って、上縁14側を上側、下縁13を下側と呼ぶこともある。
【0016】
図1に示した実施形態のパウチは、内容物が充填される前の状態(内容物が充填されていない状態)のパウチを示したものである。実施形態のパウチは、正面視において長方形状である。本開示において、長方形とは、四隅が直角の長方形だけでなく、長方形の四隅が面取りされて、外に凸の円弧状となったものも含む概念である。本開示におけるパウチは、内容物が充填されていない状態のパウチに限らず、内容物が充填されている状態のパウチも含む概念である。
【0017】
<各フィルム>
実施形態のパウチは、略長方形状のおもて面フィルム1と、おもて面フィルム1と同一形状の裏面フィルム2の2枚のフィルムで構成されている。本実施形態のパウチは、おもて面フィルム1、裏面フィルム2の2枚のフィルムが所定の箇所においてシール(熱融着)されることにより形成される。
【0018】
<各シール部>
実施形態のパウチは、図1に示すように、第1側部シール部5と、第2側部シール部6と、上部シール部4と、を備え、下縁13に開口部15が形成されている。第1側部シール部5は、おもて面フィルム1と裏面フィルム2がヒートシールにより接合されたものである。蒸気抜き機構20は、上部シール部4に接続して形成されている。上部シール部4のシール幅W1は、8mm以上15mm以下としてもよい。第1側部シール部5のシール幅W2、第2側部シール部6のシール幅W3は、5mm以上10mm以下としてもよい。なお、シール幅とは、シール部が延びる方向と直交する方向における幅である。
【0019】
図1に示すように、上部シール部4の上端からパウチの上縁14に達する第2未シール部30を設けてもよい。第2未シール部30は、おもて面フィルム1と裏面フィルム2がシールされていない部分であり、下縁13側の開口部15と収容部71を挟んで対向している。第2未シール部30を設けることにより、パウチを製造する際に、確実に下縁13側の開口部15を形成し、且つ、廃棄する部分を少なくすることができる。
【0020】
図1において、Pはパウチの中心である。パウチの中心Pは、方向D1において上縁14と下縁13の中間となる点であり、方向D2において第1側縁11と第2側縁12の中間となる点である。第1側縁11と第2側縁12の距離であるパウチの幅をL1、上縁14と下縁13の距離であるパウチの高さをL2、パウチの中心Pと隔離シール部20bの最短距離をL3、パウチの中心Pと側部シール部の最短距離をL4、方向D1における、上部シール部4の内縁と隔離シール部20bの下端の距離をL5とする。
【0021】
<収容部>
開口部15を介して内容物が収容された後、下縁13に沿って下部シール部7が形成され、パウチが封止される。下部シール部7は、第1側部シール部5から第2側部シール部6に亘って形成される。収容部71は、第1側部シール部5の内縁と、第2側部シール部6の内縁と、下部シール部7の内縁と、上部シール部4の内縁と、後述する隔離シール部20bの内縁と、で画成される。
【0022】
<内容物>
内容物は、水分、油分を含む。内容物としては例えば、レトルト食品、冷凍食品や冷蔵食品などを挙げることができる。また食品としては、カレー、お粥、焼きそば、惣菜、魚などを挙げることができる。これらの内容物においては、加熱に伴って水分が蒸発してパウチの収容部71の圧力が高まるので、収容部71内の蒸気を外部に逃がす蒸気抜き機能が求められる。
【0023】
<フィルムの詳細>
図2は、本実施形態に係るパウチを構成するフィルムの層構成を示す図である。おもて面・裏面・底面は、積層フィルム40により実現することができる。積層フィルム40は、少なくとも、外面側から、第1基材層41、第2基材層42、シーラント層44を含む積層体である。実施形態において、積層フィルム40は、図2に示すように、外面側(図面上側)から順に、第1基材層41、第2基材層42、シーラント層44が積層されている。さらに、印刷層、他の層が積層されていてもよい。シーラント層44は、パウチの最内面を構成する層である。電子レンジで加熱する場合、パウチは、熱に対する耐性が必要とされる。このため、実施形態の第1基材層41、第2基材層42は、耐熱性をもつ材料とすることが好ましい。
【0024】
例えば、第1基材層41、第2基材層42の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステルフィルム、ナイロンなどのポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルムなどを用いることができる。厚みは、10μm以上50μm以下であることが好ましい。第1基材層41、第2基材層42は、二軸延伸されていることが好ましい。本実施形態では、第1基材層41としてポリエチレンテレフタレート(PET)を用いることが特に好ましい。また、第2基材層42としてポリアミド、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などを用いることが特に好ましい。第2基材層42はポリアミドを主成分として含む延伸フィルムであることがより好ましい。第1基材層41と第2基材層42、第2基材層42とシーラント層44の積層は、どのような手法で行ってもよいが、本実施形態では、接着剤を用いたドライラミネート法により積層している。
【0025】
基材層が2層の場合、積層フィルムは、第1基材層41、第2基材層42、シーラント層44の層構成を含む。この場合、好ましい例として、蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)12μm/延伸ポリアミド(ONY)15μm/無延伸ポリプロピレン(CPP)60μmの層構成となる積層フィルム、蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)12μm/延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)15μm/無延伸ポリプロピレン(CPP)60μmの層構成となる積層フィルムが挙げられる。
【0026】
また、積層フィルム40は、第2基材層42とシーラント層44の間に第3基材層43を備えていてもよい。図3は、基材層を3層備えた場合におけるパウチを構成する積層フィルムの層構成を示す図である。図3において、図2と同一の部分については同一符号を付して説明を省略する。図3の変形例では、第2基材層42とシーラント層44の間に第3基材層43を備えている。第3基材層43としては、第1基材層41、第2基材層42と同様、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステルフィルム、ナイロンなどのポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルムなどを用いることができる。厚みは、10μm以上50μm以下であることが好ましい。第3基材層43は、二軸延伸されていることが好ましい。本実施形態では、第3基材層43としてポリエチレンテレフタレート(PET)を用いることが特に好ましい。第1基材層41と第2基材層42、第2基材層42と第3基材層43、第3基材層43とシーラント層44の積層は、どのような手法で行ってもよいが、本実施形態では、接着剤を用いたドライラミネート法により積層している。
【0027】
基材層が3層の場合、積層フィルム40は、第1基材層41、第2基材層42、第3基材層43、シーラント層44の層構成を含む。この場合、好ましい例として、蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)12μm/延伸ポリアミド(ONY)15μm/延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)12μm/無延伸ポリプロピレン(CPP)60μmの層構成となる積層フィルムが挙げられる。
【0028】
図示しない印刷層は、商品内容を表示したり美感を付与したりカット部分を表示したりするために設けられる。印刷層は、バインダーと顔料を含む印刷インキにより形成される。シーラント層44は、積層体である積層フィルム40のうち、製袋してパウチとするときの最も容器内方となる側に配置される。シーラント層44の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体などのポリオレフィン系樹脂などが採用できる。シーラント層44の材料としては、特に、プロピレン・エチレンブロック共重合体を用いることが好ましい。シーラント層44は、プロピレン・エチレンブロック共重合体に加えて、さらにポリエチレンを含むことがより好ましい。シーラント層44の厚みは、30μm以上100μm以下であることが好ましい。シーラント層44は未延伸であることが好ましい。
【0029】
積層フィルム40は、他の層を含んでいてもよい。他の層は、第1基材層41の外側に設けられていてもよいし、図2に示すように、第1基材層41とシーラント層44の間のどこかに設けられていてもよい。他の層としては、水蒸気その他のガスバリア性、遮光性など、必要とされる機能に応じて、適切なものが選択される。例えば、他の層がガスバリア層の場合、アルミニウムなどの金属や酸化アルミニウムなどの金属酸化物や酸化珪素などの無機酸化物の蒸着層が設けられる。蒸着層は、第1基材層41、第2基材層42、第3基材層43のいずれかに積層してもよいし、シーラント層44に蒸着してもよい。あるいは、アルミニウムなどの金属箔を設けてもよい。その他にも、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)や、ナイロンMXD6などの芳香族ポリアミドなどの、ガスバリア性を有する樹脂層を設けてもよい。各層は、ドライラミネート法や溶融押し出し法などを用いて積層することができる。
【0030】
<蒸気抜き機構>
図1に示すように、本実施形態に係るパウチでは、上部シール部4に連続する部分に、蒸気を抜くための蒸気抜き機構20が設けられている。蒸気抜き機構20は、蒸気抜けさせるための第1未シール部20aと、第1未シール部20aと収容部71を隔離するための隔離シール部20bと、少なくとも一部が第1未シール部20aと接する位置に形成された貫通孔20cを含む。方向D2において、蒸気抜き機構20の位置は必ずしも限定されない。本実施形態のように、蒸気抜き機構20は、方向D2において、パウチの中心線と一致する位置にあってもよい。
【0031】
第1未シール部20aは、第1方向D1において隔離シール部20b内縁と上縁14との間に位置している。第1未シール部20aは、隔離シール部20bによって収容部71から隔離されている。隔離シール部20bは、上部シール部4の下方に連接され、上部シール部4との間に収容部71から隔離された第1未シール部20aを形成する。貫通孔20cは第1未シール部20aよりも部分的に上方に位置している。貫通孔20cは、おもて面フィルム1及び裏面フィルム2を貫通している孔である。貫通孔20cは、吊り下げ具の支持部を挿入するための構成要素として機能できる。吊り下げ具としては、孔の空いた物品を吊り下げるための公知の吊り下げ具を用いることができる。吊り下げ具の支持部は、吊り下げ具における支持用の棒である。貫通孔20cは、例えば、型などを用いて上部シール部4、第1未シール部20a、隔離シール部20bなどを部分的に打ち抜くことによって形成される。図1に示す例において、貫通孔20cの輪郭は円形である。
【0032】
第1未シール部20aと貫通孔20cは、電子レンジによる加熱に伴って発生する蒸気によってパウチ内の圧力が高まった際に、収容部71と連通してパウチ内の蒸気を外部へ逃がすために設けられている。第1未シール部20aと収容部71を隔てる隔離シール部20bの内縁は、上部シール部4の内縁から、収容部71側に張り出している。本実施形態の第1未シール部20aは、ヒートシールされずに重ねられたおもて面フィルム1、裏面フィルム2からなる。
【0033】
隔離シール部20bは、第1未シール部20aと収容部71を隔離するためにヒートシールされた部分であり、本実施形態では、蒸気抜き機構20の左端より第1側縁11側の第1側部シール部5と、蒸気抜き機構20の右端より第2側縁12側の上部シール部4と連設している。第1未シール部20aは、おもて面フィルム1と裏面フィルム2がシールされていない部分である。隔離シール部20bのシール幅W3は、第1側部シール部5のシール幅W1、第1側部シール部5のシール幅W2より小さくてもよい。隔離シール部20bの下端における幅W3は、2.5mm以上5mm以下とすることが好ましい。隔離シール部20bの内縁は、収容部71側に張り出しておりいる。本実施形態では、第1側部シール部5の内縁、隔離シール部20bの内縁のうち第1未シール部20aの第3縁24と平行な部分は、ともに平行である。
【0034】
貫通孔20cは、パウチのフィルム面の方向において、第1未シール部20aに接していればよい。接している部分が大きい程、第1未シール部20aに達した蒸気が、早くパウチの外部に排出される。図1に示す例では、円形である貫通孔20cの中心が第1未シール部20aの上端より下方に位置している。したがって、貫通孔20cの半周以上の長さで第1未シール部20aと接している。
【0035】
<開封手段>
本実施形態に係るパウチでは、加熱調理後に開封するために開封手段18が設けられている。図1に示すように、開封手段18は、蒸気抜き機構20より第2側縁12寄りに設けられている。なお、開封手段18は、蒸気抜き機構20より第1側縁11寄りに設けられていてもよい。開封手段18は、上縁14と下縁13を結ぶ方向、すなわち方向D1に沿った方向に延びる帯状の領域に形成されている。図1においては、開封手段18の配置位置だけを示しており、開封手段18の詳細については後述する。なお、開封手段18は、蒸気抜けした後、第1側縁11を下方にした際、内容物の上面よりも上側となるように設けられる。開封手段18は、おもて面フィルム1、裏面フィルム2の両方に形成されている。
【0036】
図4は、開封手段18の詳細を示す平面図である。図4において、上下左右の方向は、図1を90度回転させたものとなっている。図1と同様、図4においても、方向D1が上縁14と下縁13を結ぶ方向であり、方向D2が第1側縁11と第2側縁12を結ぶ方向である。図4において、方向D1に延びる破線は、仮想線Yである。仮想線Yは実際に設けられる線ではなく、切込み対30Aの形成位置を定めるための仮想の線である。
【0037】
したがって、図4に破線で示す仮想線Yは、上縁14と下縁13を結ぶ方向D1に沿って延びている。仮想線Yは直線であることが好ましい。切込み対30Aは、2つの切込み線で構成される切込み対である。切込み対30Aは、第1切込み線30Bと第2切込み線30Cで構成される。第1切込み線30B、第2切込み線30Cは、いずれも直線であることが好ましい。第1切込み線30Bと第2切込み線30Cは、いずれも仮想線Yに対して傾斜している。すなわち、第1切込み線30Bが延びる方向D3、第2切込み線30Cが延びる方向D4は、いずれも仮想線Yが延びる方向D1に対して傾斜している。
【0038】
また、第1切込み線30Bと第2切込み線30Cは、上縁14から下縁13に向かって広がるように設けられている。すなわち、1つの切込み対30Aにおいては、上縁14側における第1切込み線30Bと第2切込み線30Cの端部同士の間隔が最も狭く、下縁13側における第1切込み線30Bと第2切込み線30Cの端部同士の間隔が最も広くなっている。
【0039】
第1切込み線30Bと第2切込み線30Cは、互いに同一の長さであることが好ましい。この場合、第1切込み線30Bと第2切込み線30Cは、仮想線Yに対して互いに線対称となる位置に形成されることが好ましい。切込み対30Aは、上縁14と下縁13を結ぶ方向に複数配置されている。各切込み対30Aは、異なる間隔で配置されていてもよいが、等間隔で配置されていることが好ましい。本実施形態では、図4に示すように、全ての切込み対30Aが間隔k2をおいて配置されている。切込み対30Aの仮想線Yに沿った方向の端点同士の距離k1と間隔k2の関係は、必ずしも限定されないが、距離k1は間隔k2より大きいことが好ましい(k1>k2)。
【0040】
上述のように、切込み対30Aは、第1切込み線30Bと第2切込み線30Cにより構成されている。本実施形態では、第1切込み線30Bと第2切込み線30Cは、同様の形状の切込み線となっている。ここでは、第1切込み線30B、第2切込み線30Cとして用いられる切込み線50について説明する。図5は、図4におけるx-x線に対応した、おもて面フィルム1の断面図である。図5に示すように、本実施形態に係るパウチのおもて面フィルム1は、第1基材層41、第2基材層42,シーラント層44が積層された積層体である。パウチを構成した際には、おもて面フィルム1、裏面フィルム2は、外面側から内面側へ順に、第1基材層41、第2基材層42及びシーラント層44をこの順で少なくとも備える積層体となる。図5において網掛けで示した部分は、切込みによる破断部分である。図5における網掛けは、第2基材層42が破断した部分を示している。
【0041】
切込み線50は、切込み線50の延びる方向に沿って、順に第1縁部51、中間部52、第2縁部53の3つの部分に区分されている。第1縁部51は、第1端50aから延びており、第2縁部53は、第2端50bから延びている。切込み線50は、第2基材層42にのみ形成されている。そして、切込み線50の中間部52は、第2基材層42を貫通している。第1縁部51、第2縁部53は、いずれも第1基材層41側から形成されているが、第2基材層42を貫通していない。第1縁部51、第2縁部53における切込みの深さは、中間部52に近付くにつれて深くなっている。具体的には、第1縁部51においては、第1端50aから徐々に深くなり、中間部52との境界において最も深くなり、中間部52に達すると第2基材層42を貫通する。同様に、第2縁部53においては、第2端50bから徐々に深くなり、中間部52との境界において最も深くなり、中間部52に達すると第2基材層42を貫通する。
【0042】
切込み線50の底部(シーラント層44側)の断面は、直線状であってもよいし、曲線状であってもよい。すなわち、第1端50a、第2端50bから中間部52に向かうに従って一定の深さで深くなってもよいし、深くなる程度が変化してもよい。図5の例では、切込み線50の底部の断面は、曲線状となっている。
【0043】
切込み線50の長さd1は、第1縁部51の長さd2、中間部52の長さd3,第2縁部53の長さd4の和となっている。すなわち、d1=d2+d3+d4である。切込み線50のうち第2基材層42を貫通している部分である中間部52の長さd3の、切込み線50の全長d1に対する比率d3/d1は、0.3以上0.8以下であることが好ましい。この比率d3/d1が0.3以上であることにより、易開封性が高まり、調理後に喫食する際に容易に開封することができる。また、比率d3/d1が0.8以下であることにより、耐衝撃性が高まり、運搬時などの不用意に切断され難くなる。
【0044】
<基材層が3層の場合>
次に基材層が3層の場合について説明する。図6は、基材層が3層の場合のおもて面フィルム1の断面図である。図6の断面図は、図5の断面図と同様、図4におけるx-x線に対応している。図5図6を比較すると明らかなように、基材層が3層の場合、おもて面フィルム1においては、第2基材層42とシーラント層44の間に第3基材層43が積層されている。図5図6において同一符号で示すように、基材層が3層の場合も、切込み線50は、切込み線50の延びる方向に沿って、順に第1縁部51、中間部52、第2縁部53の3つの部分に区分されている。図6において網掛けで示した部分は、切込みによる破断部分である。図6における網掛けは、第2基材層42が破断した部分を示している。
【0045】
第1縁部51は、第1端50aから延びており、第2縁部53は、第2端50bから延びている。切込み線50は、第2基材層42にのみ形成されている。また、切込み線50は、第3基材層43にのみ形成されていてもよい。すなわち、基材層が3層の場合、切込み線50は、第2基材層42、第3基材層43の少なくとも一方に形成されていればよい。中間部52の長さのd3の、切込み線50の全長d1に対する比率d3/d1も、基材層が2層の場合と同様、0.3以上0.8以下であることが好ましい。ここでは、おもて面フィルム1について説明したが、裏面フィルム2においても、同様な切込み線50が、第1切込み線30B、第2切込み線30Cとして形成されている。
【0046】
<製造方法>
次に、パウチの製造方法について説明する。ここでは、基材層が2層の場合について説明する。第2基材層42の一方の面を加工面として、ロータリーダイカットにより、開封手段18を形成する。すなわち、所定の直線状の仮想線Yに沿った方向に、複数の切込み対30Aを所定の間隔で形成する。切込み対30Aは、図4に示したように、第1切込み線30Bと第2切込み線30Cで構成され、第1切込み線30B、第2切込み線30Cは、いずれも直線であり、いずれも仮想線Yに対して傾斜している。また、第1切込み線30Bと第2切込み線30Cは、仮想線Yに沿った一方から他方に向かうにつれて広がるように形成される。
【0047】
続いて、第1基材層41(PETフィルム)に印刷層を形成する。そして、第1基材層41と第2基材層42を、接着剤層を介して貼り合わせる。この際、第1基材層41の印刷層側の面と、第2基材層の加工面を貼り合わせる。なお、上述のように印刷層は必須ではない。続いて、接着剤層を介して第2基材層の加工面の反対側の面とシーラント層44(厚み60μmの未延伸ポリプロピレンフィルム)を貼り合わせた。これにより、第1基材層41、第2基材層42、シーラント層44(ポリエチレンテレフタレート、印刷層、接着剤層、ナイロン、接着剤層、ポリプロピレン)が順に積層された積層体である積層フィルムを形成した。接着剤層は、アクリルポリオールとイソシアネート化合物との硬化物である。このようにして開封手段18が形成された積層フィルムをおもて面フィルム1,裏面フィルム2として用いる。
【0048】
上記のようにして得られた、おもて面フィルム1,裏面フィルム2を、シーラント層44を内面にして重ね合わせ、ヒートシールを行う。これにより、上部シール部4、第1側部シール部5、第2側部シール部6、隔離シール部20bを有する、図1に示すパウチ(下部シール部7が形成されていない状態のパウチ)を形成する。続いて、型を用いて第1未シール部20aと上部シール部4に跨る位置を部分的に打ち抜き、貫通孔20cを形成する。その後、下縁13側の開口部15から収容部71に内容物を収容する。収容部71に内容物を収容した後、下部シール部7を形成して、図7に示すような、密封されたパウチを形成する。
【0049】
(作用)
内容物が収容部71内に充填され、下縁13において下部シール部7を形成して密閉した後、電子レンジを用いて加熱する。加熱され蒸気により収容部71が膨らむと、収容部71の中心から近い第1側部シール部5の内縁、第2側部シール部6の内縁に力が加わる。その後、収容部71の中心から遠い隔離シール部20bの内縁、下部シール部7の内縁に力が加わる。収容部71の中心から近い方がより大きな力が加わるため、第1側部シール部5の内縁、第2側部シール部6の内縁には、隔離シール部20bの内縁、下部シール部7の内縁よりも大きな力が加わる。
【0050】
しかし、上縁14と下縁13を結ぶ第1方向の熱間シール強度の第2方向の熱間シール強度に対する比率が1未満である、すなわち、第1方向の熱間シール強度が第2方向の熱間シール強度より弱いため、幅方向が第1方向となる隔離シール部20bの剥離が、第1側部シール部5、第2側部シール部6よりも早く進む。したがって、圧力により隔離シール部20bが、収容部71の中央に近い下端側から剥離される。第1未シール部20aの接続点まで隔離シール部20bが剥がれると、収容部71が第1未シール部20aと繋がる。そして、蒸気が収容部71から第1未シール部20aに流れ込む。第1未シール部20aは、貫通孔20cと接しているため、空間として繋がっている。そのため、第1未シール部20aに流れ込んだ蒸気は、貫通孔20cを通ってパウチの外へ抜ける。そして、開封手段18を用いて開封し、内容物を食することができる。
【0051】
<実施例1>
第1基材層41として厚さ12μmの延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意し、第2基材層42としてアルミニウムを蒸着した厚さ12μmの延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意した。そして、接着剤層を介して、第2基材層42の蒸着面と第1基材層41を貼り合わせた。さらに、シーラント層44として、厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを用意し、第2基材層42と貼り合わせた。厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムとして、東レフィルム加工株式会社製の未延伸ポリプロピレンフィルム「ZK207」を用いた。このようにして、ポリエチレンテレフタレート(PET)12μm/蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)12μm/無延伸ポリプロピレン(CPP)60μmの層構成となるおもて面フィルム1,裏面フィルム2を得た。
【0052】
続いて、おもて面フィルム1と裏面フィルム2を重ね合わせ、所定の位置にヒートシールを施し、貫通孔を打ち抜き、所定の外形形状で切断することにより、図1に示したようなパウチを得た。パウチ幅L1=130mm、パウチ高さL2=250mm、包材中心から隔離シール部20bまでの最短距離L3=101mm、包材中心から側部シール部までの最短距離L4=57mmとした。距離の比率L3/L4=1.77であった。さらに、収容部71に水200mlを収容した後、下部にヒートシールを施して、下部シール部7を形成し、図7に示したような密封されたパウチを得た。
【0053】
レトルト条件として、温度121℃、時間30分、スプレー式で、レトルト処理を行った。レトルト処理後、第1方向D1を長手方向とし、第2方向D2の幅を15mmとした試験片を上部シール部4から切り出し第1試験片とした。また、第2方向D2を長手方向とし、第1方向D1の幅を15mmとした試験片を第1側部シール部5から切り出し、第2試験片とした。第1試験片を用いて、第1方向D1の熱間シール強度を測定し、第2試験片を用いて、第2方向D2の熱間シール強度を測定した。第1方向D1の熱間シール強度は、10.8N/15mmであり、第2方向D2の熱間シール強度は、14N/15mmであった。第1方向D1の熱間シール強度の第2方向D1の熱間シール強度に対する比率は、0.77であった。
【0054】
<実施例2>
パウチ幅L1=130mm、パウチ高さL2=230mm、包材中心から隔離シール部20bまでの最短距離L3=91mm、包材中心から側部シール部までの最短距離L4=57mm、距離の比率L3/L4=1.60とし、シール強度を変更した以外は、実施例1と同様にして図7に示したような密封されたパウチを形成した。そして、実施例1と同様にして、熱間シール強度を測定した。第1方向D1の熱間シール強度は、13.2N/15mmであり、第2方向D2の熱間シール強度は、15.5N/15mmであった。第1方向D1の熱間シール強度の第2方向D1の熱間シール強度に対する比率は、0.85であった。
【0055】
<実施例3>
パウチ幅L1=120mm、パウチ高さL2=250mm、パウチ中心から隔離シール部20bまでの最短距離L3=101mm、パウチ中心から側部シール部までの最短距離L4=52mm、距離の比率L3/L4=1.94とし、シール強度を変更した以外は、実施例1と同様にして図7に示したような密封されたパウチを形成した。そして、実施例1と同様にして、熱間シール強度を測定した。第1方向D1の熱間シール強度は、11.5N/15mmであり、第2方向D2の熱間シール強度は、18N/15mmであった。第1方向D1の熱間シール強度の第2方向D1の熱間シール強度に対する比率は、0.64であった。
【0056】
<実施例4>
パウチ幅L1=120mm、パウチ高さL2=230mm、パウチ中心から隔離シール部20bまでの最短距離L3=91mm、パウチ中心から側部シール部までの最短距離L4=52mm、距離の比率L3/L4=1.75とし、シール強度を変更した以外は、実施例1と同様にして図7に示したような密封されたパウチを形成した。そして、実施例1と同様にして、熱間シール強度を測定した。第1方向D1の熱間シール強度は、12N/15mmであり、第2方向D2の熱間シール強度は、17.6N/15mmであった。第1方向D1の熱間シール強度の第2方向D1の熱間シール強度に対する比率は、0.68であった。
【0057】
<実施例5>
厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムとして、東レフィルム加工株式会社製の未延伸ポリプロピレンフィルム「ZK500」を用いた。それ以外は、実施例1と同様にしておもて面フィルム1、裏面フィルム2となる積層フィルムを用意した。そして、実施例1と同様に、パウチ幅L1=130mm、パウチ高さL2=250mm、パウチ中心から隔離シール部20bまでの最短距離L3=101mm、パウチ中心から側部シール部までの最短距離L4=57mm、距離の比率L3/L4=1.77とした。
【0058】
シール強度は、実施例1と異なるように形成し、実施例1と同様にして図7に示したような密封されたパウチを形成した。そして、実施例1と同様にして、熱間シール強度を測定した。第1方向D1の熱間シール強度は、5.5N/15mmであり、第2方向D2の熱間シール強度は、12.3N/15mmであった。第1方向D1の熱間シール強度の第2方向D1の熱間シール強度に対する比率は、0.45であった。
【0059】
<比較例1>
パウチ幅L1=130mm、パウチ高さL2=230mm、パウチ中心から隔離シール部20bまでの最短距離L3=93mm、パウチ中心から側部シール部までの最短距離L4=57mm、距離の比率L3/L4=1.63とし、シール強度を変更した以外は、実施例1と同様にして図7に示したような密封されたパウチを形成した。そして、実施例1と同様にして、熱間シール強度を測定した。第1方向D1の熱間シール強度は、16.8N/15mmであり、第2方向D2の熱間シール強度は、10.1N/15mmであった。第1方向D1の熱間シール強度の第2方向D1の熱間シール強度に対する比率は、1.66であった。
【0060】
<比較例2>
パウチ幅L1=130mm、パウチ高さL2=230mm、パウチ中心から隔離シール部20bまでの最短距離L3=93mm、パウチ中心から側部シール部までの最短距離L4=57mm、距離の比率L3/L4=1.63とし、シール強度を変更した以外は、実施例5と同様にして図7に示したような密封されたパウチを形成した。そして、実施例5と同様にして、熱間シール強度を測定した。第1方向D1の熱間シール強度は、14N/15mmであり、第2方向D2の熱間シール強度は、7.8N/15mmであった。第1方向D1の熱間シール強度の第2方向D1の熱間シール強度に対する比率は、1.63であった。
【0061】
<側部シール部の剥離評価>
電子レンジ内でパウチを加熱し、蒸気抜けした際に電子レンジからパウチを取り出して側部シール部の剥離長さを測定した。「剥離長さ」とは、側部シール部の延伸方向と直交方向、すなわち方向D2において、側部シール部が剥離した最大長さである。側部シール部の剥離長さは、第1側部シール部5の剥離長さと第2側部シール部6の剥離長さの平均値で求めた。そして、側部シール部の剥離長さが、1mm未満のものを◎、1mm以上4mm未満のものを〇、4mm以上のものを×、として3段階評価した。
【0062】
<評価結果>
実施例1~5,比較例1,2の評価結果を以下の表1に示した。
【0063】
【表1】
【0064】
表1に示したように、実施例1~5においては、第1方向(方向D1)の熱間シール強度の第2方向(方向D2)の熱間シール強度に対する比率が1未満である。このため、側部シール部の剥離長さが、4mm未満という良好な結果が得られた。これに対して、比較例1、2においては、第1方向(方向D1)の熱間シール強度の第2方向(方向D2)の熱間シール強度に対する比率が1以上である。このため、側部シール部の剥離長さが、4mm以上となってしまった。側部シール部の剥離長さが、4mm以上となると、側部シール部から蒸気が漏れてしまう可能性が高まる。
【0065】
表1に示したように、実施例1~5においては、第2方向の熱間シール強度が11N/15mm以上である。このため、側部シール部の剥離長さが、4mm未満という良好な結果が得られた。これに対して、比較例1、2においては、第2方向の熱間シール強度が11N/15mm未満である。このため、側部シール部の剥離長さが、4mm以上となってしまった。
【0066】
以上、本開示の好適な実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、開封手段として、第2基材層に、上縁から下縁に向かって延びる直線の仮想線に沿って、2本の切込み線からなる切込み対が複数配置された構造を用いたが、上縁、下縁の少なくとも一方に、ノッチを有する構成であってもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、おもて面フィルム1、裏面フィルム2を実現する積層ファイルが、第2基材層さらには第3基材層を備える構成としたが、基材層は1層のみであってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1・・・おもて面フィルム
2・・・裏面フィルム
4・・・上部シール部
5・・・第1側部シール部
6・・・第2側部シール部
11・・・第1側縁
12・・・第2側縁
13・・・下縁
14・・・上縁
15・・・開口部
18・・・開封手段
20・・・蒸気抜き機構
20a・・・第1未シール部
20b・・・隔離シール部
30・・・第2未シール部
40・・・積層フィルム
41・・・第1基材層
42・・・第2基材層
43・・・第3基材層
44・・・シーラント層
50・・・切込み線
50a・・・第1端
50b・・・第2端
51・・・第1縁部
52・・・中間部
53・・・第2縁部
71・・・収容部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7