(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143893
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】時計遺伝子発現リズムの振幅増強剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7048 20060101AFI20241004BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20241004BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20241004BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20241004BHJP
【FI】
A61K31/7048
A61P25/18
A61P25/20
A23L33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056831
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】306014736
【氏名又は名称】第一三共ヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100129414
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 京
(72)【発明者】
【氏名】嶋岡 雄大
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
【Fターム(参考)】
4B018MD07
4B018MD08
4B018MD18
4B018ME14
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA11
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA05
4C086ZA18
(57)【要約】
【課題】時計遺伝子発現リズムの振幅を増強する技術を提供する。
【解決手段】ヘスペリジンを有効成分として含有する、時計遺伝子発現リズムの振幅増強剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘスペリジンを有効成分として含有する、時計遺伝子発現リズムの振幅増強剤。
【請求項2】
時計遺伝子発現ピークにおける時計遺伝子発現量の増加作用を有する、請求項1に記載の振幅増強剤。
【請求項3】
経時的な振幅減衰の抑制作用を有する、請求項1または2に記載の振幅増強剤。
【請求項4】
時計遺伝子が、Bmal遺伝子、Per遺伝子、Cry遺伝子およびClock遺伝子からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1または2に記載の振幅増強剤。
【請求項5】
経口摂取される、請求項1または2に記載の振幅増強剤。
【請求項6】
起床時から日中までのいずれかの時間における、疲労感、眠気およびだるさからなる群から選択される少なくとも一種の改善剤である、請求項1または2に記載の振幅増強剤。
【請求項7】
活力、気力および意欲からなる群から選択される少なくとも一種の低下抑制剤または向上剤である、請求項1または2に記載の振幅増強剤。
【請求項8】
医薬組成物または食品組成物である、請求項1または2に記載の振幅増強剤。
【請求項9】
アセトアミノフェン、アスピリンおよびその塩、エテンザミド、サザピリン、サリチルアミド、ラクチルフェネチジン、イブプロフェン、イソプロピルアンチピリン、ロキソプロフェンおよびその塩、プラノプフェン、ジクロフェナクおよびその塩、メフェナム酸、インドメタシンファルネシル、アセメタシン、エトドラク、ナプロキセン、メロキシカム、セレコキシブ、ならびに、チアラミドおよびその塩からなる群から選択される一または二以上の成分をさらに含む、請求項1または2に記載の振幅増強剤。
【請求項10】
起床時から日中までのいずれかの時間における、疲労感、眠気およびだるさからなる群から選択される少なくとも一種の改善剤の製造のための、請求項1または2に記載の振幅増強剤の使用。
【請求項11】
活力、気力および意欲からなる群から選択される少なくとも一種の低下抑制剤または向上剤の製造のための、請求項1または2に記載の振幅増強剤の使用。
【請求項12】
請求項1または2に記載の振幅増強剤を対象に適用することを含む、起床時から日中までのいずれかの時間における、疲労感、眠気およびだるさからなる群から選択される少なくとも一種の改善方法(ヒトに対する医療行為を除く。)。
【請求項13】
請求項1または2に記載の振幅増強剤を対象に適用することを含む、活力、気力および意欲からなる群から選択される少なくとも一種の低下抑制剤または向上方法(ヒトに対する医療行為を除く。)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計遺伝子発現リズムの振幅増強剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトを初めとする哺乳類動物の多くは約24時間を1周期とする体内時計(概日時計)を備える。近年の環境の変化により、体内時計が乱れることは睡眠障害や代謝障害等の原因となること、加齢により体内時計機能が低下することが知られている。
【0003】
体内時計のメカニズムには時計遺伝子が関与する。時計遺伝子の発現リズムの調整に関する技術として、特許文献1(特開2019-97565号公報)および特許文献2(特開2008-266319号公報)に記載のものがある。
特許文献1には、有効成分としてスダチチンを含有する、時計遺伝子Period2発現リズムの振幅増強作用を有する組成物について記載されており(請求項1)、時計遺伝子Period2発現リズムの振幅を増強させ、体内時計を調整する組成物の提供により、様々な不定愁訴や疾病の予防または改善を通じて、人々の健康の増進に寄与するとともに、医薬品・食品等の産業の健全な発展が期待されると記載されている(段落0031)。
【0004】
特許文献2には、概日リズムの乱れが原因で起こる生理現象(睡眠・覚醒・ホルモン分泌・体温・消化・血圧・代謝等)の変調を予防・改善・コントロールすることを目的とする技術として(段落0014)、特定の物質を有効成分とする概日リズム調整組成物について記載されている(請求項1)。また、特許文献2には、特定濃度のヘスペレチン溶液を添加すると、時計遺伝子の一つであるBmal1の発現が一時的に促進されたことが記載されている(実施例6、段落0054、
図13)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-97565号公報
【特許文献2】特開2008-266319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2には、ヘスペレチン溶液を添加することにより、添加時のピークの形状が変化したこと、および、添加時のピークの次以降に出現したピークについては、溶媒のみを添加した場合と同程度以下の振幅であったことが示されている(
図13)。
【0007】
本発明は、時計遺伝子発現リズムの振幅を増強する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下の時計遺伝子発現リズムの振幅増強剤およびその使用ならびに方法が提供される。
[1] ヘスペリジンを有効成分として含有する、時計遺伝子発現リズムの振幅増強剤。
[2] 時計遺伝子発現ピークにおける時計遺伝子発現量の増加作用を有する、[1]に記載の振幅増強剤。
[3] 経時的な振幅減衰の抑制作用を有する、[1]または[2]に記載の振幅増強剤。
[4] 時計遺伝子が、Bmal遺伝子、Per遺伝子、Cry遺伝子およびClock遺伝子からなる群から選択される少なくとも一種である、[1]乃至[3]いずれか一つに記載の振幅増強剤。
[5] 経口摂取される、[1]乃至[4]いずれか一つに記載の振幅増強剤。
[6] 起床時から日中までのいずれかの時間における、疲労感、眠気およびだるさからなる群から選択される少なくとも一種の改善剤である、[1]乃至[5]いずれか一つに記載の振幅増強剤。
[7] 活力、気力および意欲からなる群から選択される少なくとも一種の低下抑制剤または向上剤である、[1]乃至[6]いずれか一つに記載の振幅増強剤。
[8] 医薬組成物または食品組成物である、[1]乃至[7]いずれか一つに記載の振幅増強剤。
[9] アセトアミノフェン、アスピリンおよびその塩、エテンザミド、サザピリン、サリチルアミド、ラクチルフェネチジン、イブプロフェン、イソプロピルアンチピリン、ロキソプロフェンおよびその塩、プラノプフェン、ジクロフェナクおよびその塩、メフェナム酸、インドメタシンファルネシル、アセメタシン、エトドラク、ナプロキセン、メロキシカム、セレコキシブ、ならびに、チアラミドおよびその塩からなる群から選択される一または二以上の成分をさらに含む、[1]乃至[8]いずれか一つに記載の振幅増強剤。
[10] 起床時から日中までのいずれかの時間における、疲労感、眠気およびだるさからなる群から選択される少なくとも一種の改善剤の製造のための、[1]乃至[9]いずれか一つに記載の振幅増強剤の使用。
[11] 活力、気力および意欲からなる群から選択される少なくとも一種の低下抑制剤または向上剤の製造のための、[1]乃至[9]いずれか一つに記載の振幅増強剤の使用。
[12] [1]乃至[9]いずれか一つに記載の振幅増強剤を対象に適用することを含む、起床時から日中までのいずれかの時間における、疲労感、眠気およびだるさからなる群から選択される少なくとも一種の改善方法(ヒトに対する医療行為を除く。)。
[13] [1]乃至[9]いずれか一つに記載の振幅増強剤を対象に適用することを含む、活力、気力および意欲からなる群から選択される少なくとも一種の低下抑制剤または向上方法(ヒトに対する医療行為を除く。)。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、時計遺伝子発現リズムの振幅を増強する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例におけるBmal1の発現リズムの評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態において、組成物は、各成分をいずれも単独でまたは2種以上を組み合わせて含むことができる。
本明細書において、数値範囲を示す「~」は、以上、以下を表し、両端の数値をいずれも含む。
【0012】
(時計遺伝子発現リズムの振幅増強剤)
本実施形態において、時計遺伝子発現リズムの振幅増強剤(以下、単に「振幅増強剤」とも呼ぶ。)は、ヘスペリジンを有効成分として含有する。
振幅増強剤は、具体的には、時計遺伝子発現リズムの振幅(以下、単に「振幅」とも呼ぶ。)の増強作用を有し、ヘスペリジンを有効成分として含有する組成物である。
【0013】
時計遺伝子は、具体的には、体内時計を制御する遺伝子であり、振幅増強効果向上の観点から、好ましくは、Bmal1、Bmal2等のBmal(Brain and Muscle Arnt-like)遺伝子;Per1、Per2等のPer(Period)遺伝子;Cry1、Cry2等のCry(Cryptochrome)遺伝子およびClock遺伝子からなる群から選択される少なくとも一種であり、より好ましくはBmal遺伝子であり、さらに好ましくはBmal1である。
時計遺伝子の発現とは、具体的には、時計遺伝子または時計遺伝子がコードするタンパク質の発現である。
【0014】
時計遺伝子の発現リズムを特徴づける具体的な指標として、振幅、周期および位相が挙げられる。
振幅は、具体的には時計遺伝子発現リズムにおける山頂(ピーク)から谷底(トラフ)までの幅をいう。ピーク高さとは、時計遺伝子発現リズムのベースライン(時間軸)からピークまでの高さをいう。
周期は、具体的には時計遺伝子発現リズムにおける1周期(たとえば一つのピークから次のピークまで)の時間である。
位相は、具体的には、時計遺伝子発現リズムの時間軸における特定の位置をいう。
【0015】
時計遺伝子発現リズムにおいて、振幅の増強とは、具体的には振幅の増加または減少の抑制であり、好ましくは振幅の増加である。
本実施形態においては、振幅増強剤がヘスペリジンを有効成分として含むため、振幅の増加または減少の抑制の効果を安定的に得ることができる。これにより、活動時間における生活の質を向上することができ、たとえば、起床から就寝までの、さらに具体的には起床時から日中までのいずれかの時間における、活力、気力または意欲を向上したり、これらの低下を抑制したりすることができる。また、たとえば、疲労感、眠気またはだるさを改善することができる。
【0016】
また、振幅増強剤は、活動時間における生活の質を向上する観点から、好ましくは起床から就寝までの、より好ましくは起床時から日中までのいずれかの時間における、疲労感、眠気およびだるさからなる群から選択される少なくとも一種の改善剤である。
同様の観点から、振幅増強剤は、好ましくは活力、気力および意欲からなる群から選択される少なくとも一種の低下抑制剤または向上剤である。
【0017】
活動時間における生活の質の向上効果をより安定的に得る観点から、振幅増強剤は、好ましくは、時計遺伝子発現リズムにおいて、振幅増強剤の添加時または添加後最初に現れるピーク(Peak1)の次に現れるピーク(Peak2)から、その前後いずれかのトラフまでの幅を増加または上記幅の減少を抑制する。
【0018】
活動時間における生活の質の向上効果をより実感させる観点から、振幅増強剤は、好ましくは時計遺伝子発現ピークにおける時計遺伝子発現量の増加作用を有し、より好ましくは振幅増強剤の添加時または添加後最初に現れるピーク(Peak1)の次に現れるピーク(Peak2)の高さを増強する。
【0019】
また、活動時間における生活の質の向上効果の持続性を高める観点から、振幅増強剤は、好ましくは経時的な振幅減衰の抑制作用を有する。
【0020】
振幅増強剤は、時計遺伝子発現リズムの位相および周期については、これを変化させるものであってもよいし、変化させないものであってもよい。また、振幅増強剤は、時計遺伝子発現リズムの振幅を増強することにより、概日リズムを調整するものであってもよく、また、これによりたとえば生活リズムを改善するものであってもよい。
【0021】
通常の生活スケジュールへの影響を低減する観点から、振幅増強剤は、好ましくは計遺伝子発現リズムの周期長の伸張および短縮作用の少なくとも一つを有さず、より好ましくはこれらをいずれも有さない。
同様の観点から、振幅増強剤は、時計遺伝子発現リズムの位相の前進および後退作用の少なくとも一つを有さず、より好ましくはこれらをいずれも有さない。
【0022】
次に、振幅増強剤の構成成分を説明する。
【0023】
(ヘスペリジン)
ヘスペリジンは、ポリフェノールの一種であって、フラボノイドである。また、ヘスペリジンは、ビタミン様物質の一種(ビタミンP)である。
ヘスペリジンは、たとえば、日本薬局方外医薬品規格2002に収載されており、医薬品用途、食品用途等、種々の用途に応じた材料を用いることができる。また、ヘスペリジンとしてたとえば市販品を用いることができる。
【0024】
1回量の振幅増強剤中のヘスペリジンの含有量は、限定されないが、振幅増強効果向上の観点から、振幅増強剤全体に対して、たとえば0.01mg以上であってよく、好ましくは1mg以上であり、より好ましくは5mg以上、さらに好ましくは20mg以上である。
また、1回量の振幅増強剤中のヘスペリジンの含有量は、限定されないが、振幅増強剤全体に対して好ましくは500mg以下であり、より好ましくは400mg以下、さらに好ましくは350mg以下である。
【0025】
一日の適用量あたりのヘスペリジンの量は、限定されないが、振幅増強効果向上の観点から、たとえば0.01mg以上であってよく、好ましくは1mg以上であり、より好ましくは5mg以上、さらに好ましくは20mg以上である。
また、一日の適用量あたりのヘスペリジンの量は、限定されないが、たとえば500mg以下であってもよく、好ましくは400mg以下である。
【0026】
また、振幅増強剤の適用量については、たとえば、振幅増強剤の形態により設定することができる。
また、振幅増強剤の1日あたりの適用回数は、たとえば1~10回としてよく、好ましくは1~5回、より好ましくは1~3回である。
【0027】
(その他の成分)
振幅増強剤は、上述の成分以外の成分を含んでもよい。その他の成分は、たとえば食品または医薬品に用いられる成分から選択することができる。また、その他の成分は、たとえば振幅増強剤の剤形等に応じて選択することができる。
【0028】
振幅増強剤が医薬組成物であるとき、その他の成分として、たとえば、通常総合感冒薬や解熱鎮痛薬に使用されているその他の成分を必要に応じて配合することができる。また、医薬組成物には、たとえば、一般用医薬品製造販売承認基準に記載されている成分を配合することができる。かかる成分として、具体的には、解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、ノスカピン類、気管支拡張剤、去痰剤、抗コリン剤、抗炎症剤、カフェイン類、ビタミン類、胃粘膜保護剤、生薬類、催眠鎮静剤および漢方処方からなる群から選択される一種または二種以上を配合することができる。
【0029】
振幅増強剤に解熱鎮痛効果をさらに付与する観点から、振幅増強剤は、好ましくは解熱鎮痛剤をさらに含み、より好ましくはアセトアミノフェン、アスピリンおよびその塩(たとえば、アスピリン、アスピリンアルミニウム)、エテンザミド、サザピリン、サリチルアミド、ラクチルフェネチジン、イブプロフェン、イソプロピルアンチピリン、ロキソプロフェンおよびその塩、プラノプフェン、ジクロフェナクおよびその塩(たとえば、ジクロフェナク、ジクロフェナクナトリウム)、メフェナム酸、インドメタシンファルネシル、アセメタシン、エトドラク、ナプロキセン、メロキシカム、セレコキシブ、ならびに、チアラミドおよびその塩(たとえば、チアラミド、チアラミド塩酸塩)からなる群から選択される一または二以上の成分をさらに含む。
【0030】
さらに、振幅増強剤には、製剤を製造するために必要な医薬品添加物を配合することができる。たとえば、医薬品添加物として、薬食審査発1204第1号(薬事行政法令)、医薬品添加物辞典2021(日本医薬品添加剤協会編集、薬事日報社)および第8版食品添加物公定書(日本食品添加物協会)等に記載されているものを配合することができる。具体的には、賦形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊補助剤、流動化剤、滑沢剤、可塑剤、コーティング剤、糖衣剤、光沢化剤、着色剤、矯味剤、甘味剤、香料、および、着香剤・香料からなる群から選択される一または二以上の成分を医薬組成物に配合することができる。
【0031】
振幅増強剤が食品組成物であるとき、その他の成分として、たとえば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤、懸濁化剤、防腐剤、抗酸化剤(ポリフェノールを除く。)および矯味剤からなる群から選択される一種または二種以上である。
【0032】
賦形剤として、たとえば、コーンスターチ、結晶セルロース、炭酸カルシウム、寒梅粉、デヒドロ酢酸Na、ヒプロメロース、薬用炭、セラック、バレイショデンプン、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、二酸化ケイ素、沈降炭酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、酸化マグネシウム、乳酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、合成ケイ酸アルミニウム、乳糖、白糖、マルトース、D-マンニトール、エリスリトール、ブドウ糖および果糖からなる群から選択される一または二以上の成分が挙げられる。
【0033】
結合剤として、たとえば、アラビアゴム末、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびポリビニルアルコールからなる群から選択される一または二以上の成分が挙げられる。
【0034】
崩壊剤として、たとえば、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスポビドン、アルギン酸、デンプングリコール酸ナトリウム、部分アルファー化デンプンおよびベントナイトからなる群から選択される一または二以上の成分が挙げられる。
【0035】
滑沢剤としては、たとえば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールおよび硬化油からなる群から選択される一または二以上の成分が挙げられる。
【0036】
コーティング剤としては、たとえば、タルク、ヒプロメロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アラビアゴム、エチルセルロース、カルナウバロウ、カルボキシビニルポリマー、ステアリン酸マグネシウム、セラック、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プルラン、ポビドン、ポリビニルアルコールおよびマクロゴールからなる群から選択される一または二以上の成分が挙げられる。
【0037】
懸濁化剤としては、たとえば、アルギン酸ナトリウムおよびポリビニルピロリドンからなる群から選択される少なくとも一つの成分が挙げられる。
【0038】
防腐剤として、たとえば、パラオキシ安息香酸エチルおよびパラオキシ安息香酸ブチルからなる群から選択される少なくとも一つの成分が挙げられる。
【0039】
抗酸化剤(ポリフェノールを除く。)としては、たとえば、トコフェロールが挙げられる。
【0040】
矯味剤としては、たとえば、白糖、ハチミツ、アスパルテーム、ステビア、グリチルリチン酸ニカリウムおよび活性炭からなる群から選択される一または二以上の成分が挙げられる。
【0041】
振幅増強剤は、継続的な摂取容易性向上の観点から、好ましくは医薬組成物または食品組成物であり、より好ましくは食品組成物である。食品組成物としてたとえば特定保健用食品および機能性表示食品が挙げられる。
また、対象への適用容易性に優れる観点から、振幅増強剤は、経口摂取される。
【0042】
振幅増強剤は、対象への適用容易性に優れる観点から、好ましくは固形製剤である。
固形製剤の剤形は、たとえば、タブレット等の錠剤、グミ、ゼリー、粉末または顆粒末であり、好ましくは錠剤である。これらの固形製剤は、糖衣層、フィルムコーティング層等の被覆層を有してもよい。
【0043】
(製造方法)
振幅増強剤の製造方法は、たとえばヘスペリジンおよび適宜その他の成分を配合する工程を含む。振幅増強剤の製造方法は、たとえばその剤形に応じて製造し、製剤とすることができる。
【0044】
また、活動時間における生活の質を向上する観点から、本実施形態において得られる振幅増強剤は、好ましくは起床から就寝までの、より好ましくは起床時から日中までのいずれかの時間における、疲労感、眠気およびだるさからなる群から選択される少なくとも一種の改善剤の製造のために使用することができる。
同様の観点から、振幅増強剤は、好ましくは活力、気力および意欲からなる群から選択される少なくとも一種の低下抑制剤または向上剤の製造のために使用することもできる。
【0045】
同様の観点から、起床から就寝までの、好ましくは起床時から日中までのいずれかの時間における、疲労感、眠気およびだるさからなる群から選択される少なくとも一種の改善方法(ヒトに対する医療行為を除く。)は、本実施形態における振幅増強剤を対象に適用することを含む。
同様の観点から、活力、気力および意欲からなる群から選択される少なくとも一種の低下抑制剤または向上方法(ヒトに対する医療行為を除く。)は、本実施形態における振幅増強剤を対象に適用することを含む。
【0046】
(包装体)
包装体は、本実施形態における振幅増強剤が包装容器内に収容されたものである。包装体とすることにより、たとえば振幅増強剤の使用時の利便性を向上することができる。
包装形態の具体例として、瓶(ボトル)包装、ジャー包装、PTP包装(Press Through Package)、パウチ包装、スティック包装、SP包装(Strip Package)が挙げられる。これらの包装により振幅増強剤により一旦包装して気密保存してもよい。すなわち、振幅増強剤は気密包装体に収容されてもよい。さらにそれらをピロー包装してもよく、それらを箱等に格納してもよい。
また、たとえば吸湿抑制の観点から、振幅増強剤とともに乾燥剤等を包装容器内に収容してもよい。
【0047】
包装容器の材料として、たとえば、樹脂材料、金属材料、ガラス等の無機材料からなる群から選択される一または二以上の材料が挙げられる。
また、必要に応じ、再生プラスチック、バイオマスプラスチック、生分解性プラスチックなどの環境に配慮した素材を包装材料の一部または全部に用いてもよく、環境に配慮した容器・包装を用いてもよい。
【0048】
包装容器を構成するフィルム材料の具体例として、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム等の樹脂フィルムやこれら樹脂フィルムにアルミニウム箔等の金属箔を蒸着等により付着させたものを用いることができる。単層のフィルム、複層のフィルム(たとえばラミネートフィルム)のどちらを用いてもよい。
【0049】
包装容器は、たとえば振幅増強剤の形状に応じて選択することができる。振幅増強剤が錠剤であるとき、包装容器はたとえばパウチ袋であり、好ましくはアルミパウチ袋である。パウチ袋にファスナー機能が付与されていてもよい。
【0050】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0051】
以下、実施例を挙げて本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
(試験例1)
本例では、時計遺伝子であるBmal1のレポーター細胞(マウス胚性線維芽細胞:MEF)を評価細胞として用い、ヘスペリジンの遺伝子発現リズムへの影響を評価した。
【0053】
評価細胞(Miltenyi社のGentleMACS systemを用いてbmal1Elucレポーターマウス胎仔よりジーピーシー研究所にて調製)を10cm dishに起眠し、37℃、5%CO
2で培養した。
4日間の培養後、24 wellプレート2枚に5.0×10
4cells/wellで細胞を播種した。培養24時間後に10nMデキサメタゾン(Dex)で2時間処理し、その後、発光基質を含む培地に置換した。
置換後、37℃、5%CO
2に設定した培養機能付きルミノメーター(Kronos HT、アトー社製)内に細胞を設置し、経時的に発光を測定した。
測定開始後、測定中の生データを参考に、発光値がピークに到達する時間を確認し、発光値がピークに到達した約4時間後に被検物質として、ヘスペリジン(アルプス薬品工業製)を添加した。
被検物質の添加の際は、測定装置からプレートを取り出しwell内の培地を除去した。除去後、被検物質の30または100μM溶液(溶媒:0.3%DMSO)あるいは溶媒(0.3%DMSO)を含むように発光基質含有培地を各wellに添加した(n=4)。その後、プレートを測定装置に戻し、測定を再開した。
測定結果を
図1に示す。
図1の横軸は時間(h)であり、縦軸は相対発光値である。
【0054】
図1より、ヘスペリジンの添加により、Bmal1の発現リズムにおいて、被検物質の添加後、最初に現れるピーク(Peak1)の次に現れたピーク(Peak2)からその前後のトラフまでの振幅の増強効果が確認された。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施形態および実施例を説明したが、本発明はこれらに限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。