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特開2024-143899温調装置、温調装置の制御方法、プログラム及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143899
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】温調装置、温調装置の制御方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20241004BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20241004BHJP
【FI】
H05K7/20 J
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056838
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】椎山 拓己
(72)【発明者】
【氏名】江口 博之
(72)【発明者】
【氏名】田代 祐太郎
【テーマコード(参考)】
5E322
5H770
【Fターム(参考)】
5E322AA11
5E322AB10
5E322BB04
5E322BB05
5E322BB06
5H770BA04
5H770CA01
5H770GA19
5H770HA02Y
5H770HA02Z
5H770HA03W
5H770HA03Y
5H770HA03Z
5H770HA04Y
5H770HA06X
5H770HA06Z
5H770QA27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電力装置を最大出力で運転させつつ、電力装置の運転時間を延長するためには、送風機の冷却能力(温調能力)を改善する必要がある。具体的には、発熱体である電力変換器に送風する冷却風量を増大させる必要がある。しかしながら、冷却風量を増大させると、冷却ファンの消費電力が増大する。
【解決手段】温調装置である電力装置10において、温調対象である電力変換部90の発熱量が推定すると共に、冷却ファン66の冷却能力を推定する。冷却ファン66は、コンバータCPUの発熱量推定部が推定した発熱量及び冷却能力に基づいて制御される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温調対象の温度を調節する温調装置であって、
前記温調対象の発熱量を推定する第1推定部と、
該温調装置の温調能力を推定する第2推定部と、
前記第1推定部が推定した前記発熱量と、前記第2推定部が推定した前記温調能力とに基づいて、該温調装置を制御する制御部と、
を備える、温調装置。
【請求項2】
請求項1記載の温調装置において、
前記制御部は、前記第1推定部が推定した前記発熱量と、前記第2推定部が推定した前記温調能力と、前記発熱量及び前記温調能力に応じて予め定められた前記温調装置の稼働度合いと、に基づいて、該温調装置を制御する、温調装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の温調装置において、
前記第2推定部は、前記温調対象の温度と、前記温調装置の温調状態と、に基づいて、前記温調能力を推定する、温調装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の温調装置において、
前記温調対象は、電力を消費する負荷であり、
前記第1推定部は、前記負荷で消費される前記電力に基づいて、前記発熱量を推定する、温調装置。
【請求項5】
請求項1~3に従属する請求項4記載の温調装置において、
前記制御部によって制御されることで、前記負荷を冷却する冷却ファンをさらに備え、
前記温調能力は、前記冷却ファンの冷却能力であり、
前記温調状態は、前記温調装置の冷却状態である、温調装置。
【請求項6】
請求項5記載の温調装置において、
前記負荷は、前記電力を変換する電力変換部であり、
前記電力変換部の入力側は、蓄電装置に接続され、
前記電力変換部の出力側は、前記温調装置の外部に存在する外部機器に接続可能である、温調装置。
【請求項7】
請求項6記載の温調装置において、
前記出力側の電力である出力電力を算出する電力算出部をさらに備え、
前記第1推定部は、前記入力側に供給される入力電圧と、前記電力算出部が算出した前記出力電力と、前記電力変換部の変換効率と、に基づいて、前記電力変換部の前記発熱量を推定し、
前記第2推定部は、前記電力変換部の現在の温度と、前記冷却ファンの現在の風量と、に基づいて、前記冷却ファンの前記冷却能力を推定する、温調装置。
【請求項8】
請求項7記載の温調装置において、
前記発熱量を用いて前記冷却能力を調整し、調整した前記冷却能力に基づいて、前記冷却ファンの前記風量の目標値である目標風量を決定する冷却風量決定部をさらに備え、
前記制御部は、前記冷却風量決定部が決定した前記目標風量に基づいて、前記冷却ファンを制御する、温調装置。
【請求項9】
請求項8記載の温調装置において、
前記稼働度合いは、前記発熱量と前記冷却能力との関係を示す前記冷却ファンの制御モードであり、
前記冷却風量決定部は、複数の前記制御モードのうちの1つの制御モードと、前記発熱量と、を用いて、前記冷却能力を調整する、温調装置。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか1項に記載の温調装置において、
前記第2推定部は、前記温調装置の現在の外気温と、前記電力変換部の現在の温度と、前記冷却ファンの現在の風量と、に基づいて、前記冷却能力を推定する、温調装置。
【請求項11】
請求項6~10のいずれか1項に記載の温調装置において、
前記電力変換部の温度は、前記電力変換部を構成する半導体素子の温度である、温調装置。
【請求項12】
請求項11記載の温調装置において、
前記電力変換部は、前記蓄電装置と電気的に接続され、直流電力を変換する直流変換器と、前記直流変換器と前記外部機器との間で電気的に接続され、前記直流電力と交流電力とを変換する交直変換器と、を有し、
前記半導体素子の温度は、少なくとも前記交直変換器を構成する半導体素子の温度である、温調装置。
【請求項13】
温調対象の温度を調節する温調装置の制御方法であって、
前記温調対象の発熱量を推定する第1ステップと、
前記温調装置の温調能力を推定する第2ステップと、
推定した前記発熱量及び前記温調能力に基づいて、前記温調装置を制御する第3ステップと、
を有する、温調装置の制御方法。
【請求項14】
請求項13記載の温調装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項15】
請求項14記載のプログラムを記憶する記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温調装置、温調装置の制御方法、プログラム及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電力装置が開示されている。電力装置は、筐体、発熱体及び送風機を備える。発熱体及び送風機は、筐体の内部に収容されている。発熱体は、電力を変換する電力変換器である。電力変換器は、電力を変換する(稼働する)ことで発熱する。送風機は、電力変換器に送風することで、電力変換器を冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/235617号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力装置を最大出力で運転させつつ、電力装置の運転時間を延長するためには、送風機の冷却能力(温調能力)を改善する必要がある。具体的には、発熱体である電力変換器に送風する冷却風量を増大させる必要がある。しかしながら、冷却風量を増大させると、冷却ファンの消費電力が増大する。
【0005】
本発明は、上記した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、温調対象の温度を調節する温調装置であって、前記温調装置は、前記温調対象の発熱量を推定する第1推定部と、該温調装置の温調能力を推定する第2推定部と、前記第1推定部が推定した前記発熱量と、前記第2推定部が推定した前記温調能力とに基づいて、該温調装置を制御する制御部と、を備える。
【0007】
本発明の第2の態様は、温調対象の温度を調節する温調装置の制御方法であって、前記制御方法は、前記温調対象の発熱量を推定する第1ステップと、前記温調装置の温調能力を推定する第2ステップと、推定した前記発熱量及び前記温調能力に基づいて、前記温調装置を制御する第3ステップと、を有する。
【0008】
本発明の第3の態様は、前記制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0009】
本発明の第4の態様は、前記プログラムを記憶する記憶媒体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、温調対象の発熱量を推定し、温調装置の温調能力を推定し、推定した発熱量及び温調能力に基づいて温調装置を制御する。温調対象の将来の発熱量及び温調能力に応じて温調装置が制御されるので、温調対象の温度を適切に調節することができる。また、温調装置の消費電力の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施形態に係る電力装置の斜視図である。
図2図2は、図1の電力装置の回路図である。
図3図3は、インバータCPU、コンバータCPU、ファンドライバ及び冷却ファンのブロック図である。
図4図4は、比較例のマップを示す図である。
図5図5は、本実施形態のマップを示す図である。
図6図6は、本実施形態のマップを示す図である。
図7図7は、本実施形態のマップを示す図である。
図8図8は、本実施形態に係る電力装置の動作を示すフローチャートである。
図9図9は、本実施形態に係る電力装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本実施形態に係る電力装置10(温調装置)の斜視図である。
【0013】
電力装置10は、筐体12を備える。筐体12の形状は、略直方体状である。筐体12は、内部空間14を有する。内部空間14には、バッテリ16(蓄電装置)を収容するためのスロット18が設けられている。バッテリ16は、スロット18に対して着脱可能である。
【0014】
電力装置10には、少なくとも1つのバッテリ16が装着されていればよい。電力装置10が複数のバッテリ16を備える場合、複数のバッテリ16のうち、少なくとも1つのバッテリ16が電力装置10に対して着脱可能であればよい。バッテリ16は、別途の作業工具等を用いることなく、電力装置10に対して着脱可能であることがより好ましい。つまり、バッテリ16は、作業工具等を用いなくても、電力装置10に対して着脱可能に構成されている。また、「電力装置10に対して着脱」には、電力装置10に対してバッテリ16を装着する場合と、電力装置10に対してバッテリ16を離脱させる場合とが含まれる。以下の説明では、電力装置10に対して、1つのバッテリ16が着脱可能である場合について説明する。
【0015】
バッテリ16は、電力装置10に対して着脱可能なモバイルバッテリである。バッテリ16の形状は、略直方体状である。バッテリ16は、充放電可能なモバイルバッテリである。バッテリ16は、例えば、着脱式のリチウムイオンバッテリのバッテリパックが好適である。
【0016】
バッテリ16は、ケース20とハンドル22とを備える。ケース20は、ケース本体24とボトムケース26とを有する。ケース本体24の内部には、バッテリ本体28が収容されている。バッテリ本体28は、電力を蓄電する。ボトムケース26は、ケース本体24の底部に固定されている。ハンドル22は、ケース本体24の上部に固定されている。ハンドル22は、T字状に形成されている。ハンドル22は、ハンドルカバー30と、第1ハンドル部32と、第2ハンドル部34とを有する。ハンドルカバー30は、ケース本体24の上部に固定されている。第1ハンドル部32は、ハンドルカバー30の外周に沿って、ハンドルカバー30の上部に設けられている。第2ハンドル部34は、第1ハンドル部32と直交する方向に延びるように配置されている。第2ハンドル部34の一端は、第1ハンドル部32の中央部分に連結されている。第2ハンドル部34の他端は、ハンドルカバー30の外周部のうち、第1ハンドル部32から離れた箇所に連結されている。第1ハンドル部32及び第2ハンドル部34とハンドルカバー30との間には、ユーザが手(指)を差し込める程度の隙間が形成されている。ユーザは、第2ハンドル部34とハンドルカバー30との隙間に指を差し込み、第2ハンドル部34を把持することが可能である。
【0017】
筐体12の上部には、スロット18の開口36が形成されている。筐体12の上部には、開口36を覆うカバー38が設けられている。カバー38には、不図示の開ボタンが設けられている。ユーザが開ボタンを押すと、カバー38が開き、筐体12の外部とスロット18とが連通する。ユーザは、カバー38が開いている状態で、スロット18に対してバッテリ16を着脱することができる。なお、図1は、カバー38が開いている状態を示す。
【0018】
図1に示すように、筐体12の側面には、電力装置10に装着されたバッテリ16の残容量を示すためのインジケータ40が設けられている。また、筐体12の側面には、複数の操作ボタン42が配置されている。
【0019】
さらに、筐体12の側面には、複数の出力端子44が備えられている。複数の出力端子44は交流出力端子である。複数の出力端子44は、電力装置10から該電力装置10の外部に交流電力を出力するための端子である。複数の出力端子44は、例えば、商用電源プラグの差し込み口である。複数の出力端子44には、カバー46が被せられている。カバー46は、複数の出力端子44を保護する。
【0020】
図2は、電力装置10の回路図である。電力装置10は、バッテリ16と、スロット18と、第1DC/DCコンバータ50(直流変換器)と、第2DC/DCコンバータ52と、インバータ56(交直変換器)と、フィルタ58と、コンバータCPU60と、インバータCPU62と、ファンドライバ64と、冷却ファン66と、3つの電圧センサ68、70、72と、2つの電流センサ74、76と、温度センサ78と、外気温センサ80と、入力部82と、出力部84とを備える。
【0021】
スロット18には、コネクタ86が設けられている。コネクタ86は、スロット18の底部に設けられている。バッテリ16は、コネクタ88を有する。コネクタ88は、バッテリ16の底部に設けられている(図1参照)。コネクタ88は、バッテリ本体28に接続されている。バッテリ16をスロット18に挿入し、バッテリ16の底部がスロット18の底部に当接するときに、2つのコネクタ86、88が接続される。2つのコネクタ86、88のうち、一方のコネクタが雄型コネクタである。他方のコネクタは、雄型コネクタに嵌合(接続)する雌型コネクタである。図2では、コネクタ88が雌型コネクタであると共に、コネクタ86が雄型コネクタである場合を図示している。
【0022】
第1DC/DCコンバータ50と、第2DC/DCコンバータ52と、インバータ56とは、電力を変換する電力変換部90(温調対象)を構成する。第1DC/DCコンバータ50、第2DC/DCコンバータ52、及び、インバータ56の各々は、半導体素子を有する。なお、第1DC/DCコンバータ50、第2DC/DCコンバータ52、及び、インバータ56の内部構成は、周知である。そのため、第1DC/DCコンバータ50、第2DC/DCコンバータ52、及び、インバータ56の内部構成の説明は省略する。
【0023】
第1DC/DCコンバータ50及び第2DC/DCコンバータ52は、バッテリ本体28に対して、電気的に並列に接続されている。第1DC/DCコンバータ50の1次側(入力側)92と、第2DC/DCコンバータ52の1次側(入力側)94とは、2つのコネクタ86、88を介して、バッテリ本体28と電気的に接続されている。
【0024】
第1DC/DCコンバータ50の2次側(出力側)96は、インバータ56の1次側(入力側)98と電気的に接続されている。インバータ56の2次側(出力側)100は、フィルタ58を介して、複数の出力端子44に接続されている。複数の出力端子44は、電力装置10の外部に存在する外部機器102と接続可能である。図2では、2つの出力端子44のうち、一方の出力端子44に外部機器102が接続される場合を図示している。
【0025】
第2DC/DCコンバータ52の2次側(出力側)104は、ファンドライバ64を介して、冷却ファン66と電気的に接続されている。
【0026】
バッテリ本体28の電圧(直流電圧Vi)は、第1DC/DCコンバータ50の1次側92と、第2DC/DCコンバータ52の1次側94とに供給される。
【0027】
第1DC/DCコンバータ50は、昇圧用のコンバータである。第1DC/DCコンバータ50は、1次側92の電圧(直流電圧Vi)の電圧値を、2次側96の直流電圧の電圧値に変換(昇圧)する。
【0028】
インバータ56は、第1DC/DCコンバータ50の2次側96から供給された直流電圧(インバータ56の1次側98の電圧)を、交流電圧Vo(インバータ56の2次側100の電圧)に変換する。また、インバータ56は、2次側100の交流電圧Voを、1次側98の直流電圧に変換可能である。
【0029】
従って、電力変換部90は、バッテリ本体28の直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を外部機器102に供給することが可能である。あるいは、電力変換部90は、外部機器102から供給された交流電力を直流電力に変換し、変換した直流電力をバッテリ本体28に蓄電することが可能である。
【0030】
以下の説明では、電力装置10が、バッテリ本体28の電力を、電力装置10の外部(外部機器102)に供給する給電器として機能する場合について説明する。
【0031】
フィルタ58は、交流電圧Voに重畳する高周波ノイズをカットする。
【0032】
第2DC/DCコンバータ52は、降圧用のコンバータである。第2DC/DCコンバータ52は、1次側94の直流電圧Viの電圧値を、2次側104の直流電圧Vfの電圧値に変換(降圧)する。従って、直流電圧Vfは、直流電圧Vi、及び、第1DC/DCコンバータ50の2次側96の直流電圧よりも低い(Vf<Vi)。第2DC/DCコンバータ52は、変換した2次側104の直流電圧Vfをファンドライバ64に供給する。
【0033】
ファンドライバ64は、冷却ファン66の駆動回路(電源回路)である。ファンドライバ64は、第2DC/DCコンバータ52からの直流電力の供給を受けて、冷却ファン66を駆動させる。冷却ファン66は、ファンドライバ64からの制御によって駆動する。冷却ファン66は、電力変換部90に冷却風を送風することで該電力変換部90を冷却する。後述するように、冷却ファン66は、電力変換部90のうち、少なくともインバータ56を冷却する。
【0034】
電圧センサ68は、スロット18のコネクタ86と、第1DC/DCコンバータ50の1次側92及び第2DC/DCコンバータ52の1次側94との間に配置されている。電圧センサ68は、バッテリ本体28の直流電圧Viを逐次検出し、検出結果をコンバータCPU60に逐次出力する。
【0035】
電圧センサ70及び電流センサ74は、第2DC/DCコンバータ52とファンドライバ64との間に配置されている。電圧センサ70は、ファンドライバ64に供給される直流電圧Vfを逐次検出し、検出結果をコンバータCPU60に逐次出力する。電流センサ74は、第2DC/DCコンバータ52からファンドライバ64に流れる直流電流Ifを逐次検出し、検出結果をコンバータCPU60に逐次出力する。
【0036】
電圧センサ72及び電流センサ76は、フィルタ58と複数の出力端子44との間に配置されている。電圧センサ72は、インバータ56の2次側100の交流電圧Voを逐次検出し、検出結果をインバータCPU62に逐次出力する。電流センサ76は、インバータ56から複数の出力端子44に流れる交流電流Ioを逐次検出し、検出結果をインバータCPU62に逐次出力する。
【0037】
温度センサ78は、電力変換部90の現在の温度を検出する。より詳しくは、温度センサ78は、インバータ56を構成する半導体素子の温度Tiを逐次検出し、検出結果をコンバータCPU60に逐次出力する。
【0038】
外気温センサ80は、電力装置10の外部の温度(外気温)Toを逐次検出し、検出結果をコンバータCPU60に逐次出力する。
【0039】
入力部82は、電力装置10のユーザが操作可能な複数の操作ボタン42(図1参照)である。入力部82は、ユーザからの操作入力を受け付け、受け付けた操作入力の内容をコンバータCPU60に出力する。出力部84は、インジケータ40(図1参照)等であって、コンバータCPU60からの報知内容を、画像、音等によって電力装置10の外部に報知する。
【0040】
コンバータCPU60及びインバータCPU62は、電力装置10に搭載されるECU(電子制御装置)である。コンバータCPU60及びインバータCPU62の各々は、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサ(processor)を含み構成され得るコンピュータである。すなわち、コンバータCPU60及びインバータCPU62は、処理回路(processing circuitry)によって構成され得る。コンバータCPU60は、メモリ110(記憶媒体)に格納されたプログラムを読み出して実行することにより、各種の機能を実現する。インバータCPU62は、メモリ112(記憶媒体)に格納されたプログラムを読み出して実行することにより、各種の機能を実現する。
【0041】
なお、コンバータCPU60及びインバータCPU62の各々について、少なくとも一部が、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路によって実現されてもよい。また、コンバータCPU60及びインバータCPU62の各々について、少なくとも一部が、ディスクリートデバイスを含む電子回路によって構成されてもよい。
【0042】
2つのメモリ110、112の各々は、揮発性メモリ(不図示)と不揮発性メモリ(不図示)とによって構成され得る。揮発性メモリとしては、例えば、RAM(Random Access Memory)等が挙げられ得る。この揮発性メモリは、プロセッサのワーキングメモリとして使用され、処理又は演算に必要なデータ等を一時的に記憶する。不揮発性メモリとしては、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等が挙げられ得る。不揮発性メモリは、保存用のメモリとして使用され、プログラム、テーブル、マップ等を記憶する。メモリ110、112の各々について、少なくとも一部が、上述したようなプロセッサ、集積回路等に備えられていてもよい。
【0043】
インバータCPU62は、電圧センサ72及び電流センサ76の検出結果等に基づき、インバータ56の動作を制御する。コンバータCPU60は、電圧センサ68、70及び電流センサ74の検出結果等に基づき、第1DC/DCコンバータ50及び第2DC/DCコンバータ52の動作を制御する。
【0044】
電力変換部90では、第1DC/DCコンバータ50及び第2DC/DCコンバータ52の各々について、半導体素子がスイッチング動作を行うことにより、直流電圧を変換する。また、インバータ56は、半導体素子がスイッチング動作を行うことにより、交直変換を行う。各半導体素子は、スイッチング動作に伴い、電力を消費して発熱する。従って、電力変換部90は、電力装置10内の負荷であると共に、発熱体である。
【0045】
電力装置10は、電力変換部90を温調対象として、該電力変換部90の温度を調節する。具体的には、冷却ファン66を駆動させ、冷却ファン66から電力変換部90に冷却風を送風する。電力変換部90に冷却風が送風されることで、各半導体素子が冷却され、電力変換部90の温度(各半導体素子の温度)が調節される。
【0046】
電力変換部90では、インバータ56が最も発熱する。そのため、冷却ファン66は、少なくとも、インバータ56に冷却風を送風し、該インバータ56の半導体素子を冷却できればよい。以下の説明では、説明の便宜上、インバータ56を構成する半導体素子の温度Tiを、電力変換部90の温度Tiと呼称する場合がある。
【0047】
インバータCPU62及びコンバータCPU60は、下記のように機能することで、冷却ファン66の駆動を制御する。
【0048】
図3に示すように、インバータCPU62は、瞬時電力演算部114(電力算出部)の機能を実現する。瞬時電力演算部114は、電圧センサ72(図2参照)が逐次検出した交流電圧Voと、電流センサ76が逐次検出した交流電流Ioとに基づき、交流電力の瞬時値(瞬時電力P)を逐次算出する(P=Vo×Io)。上記のように、電力変換部90は、電力装置10内の負荷であると共に、各半導体素子が電力を消費することにより発熱する。また、瞬時電力Pは、電圧センサ72が検出した現在の交流電圧Voと、電流センサ76が検出した現在の交流電流Ioとに基づいて算出される。そのため、瞬時電力Pは、電力変換部90の消費電力に対応する電力であると共に、電力変換部90の現在の出力電力である。瞬時電力演算部114は、算出した瞬時電力PをコンバータCPU60に逐次出力する。
【0049】
コンバータCPU60は、発熱量推定部116(第1推定部)、冷却能力推定部118(第2推定部)、冷却風量決定部120、及び、冷却ファン制御部122(制御部)の機能を実現する。また、コンバータCPU60のメモリ110は、第1マップ124及び第2マップ126を有する。
【0050】
発熱量推定部116は、電力変換部90の発熱量Xを推定する。
【0051】
具体的には、コンバータCPU60のメモリ110には、電力変換部90の変換効率を示す数式又はマップ(第1マップ124)が格納されている。発熱量推定部116は、メモリ110に格納された数式又はマップを参照して、瞬時電力演算部114が算出した瞬時電力Pと、電圧センサ68が検出した直流電圧Viとから、電力変換部90の現在の変換効率ηを算出する。なお、図3では、メモリ110に第1マップ124が格納されている場合を図示している。
【0052】
発熱量推定部116は、瞬時電力Pと現在の変換効率ηとに基づいて、電力変換部90の発熱量Xを推定する(X=P×(1-η))。
【0053】
なお、電圧センサ68が検出した直流電圧Viは、バッテリ本体28の現在の電圧である。また、瞬時電力Pは、電力変換部90の現在の瞬時電力である。さらに、電力変換部90の各半導体素子は、瞬時電力Pを消費し、その後、発熱する。従って、発熱量推定部116で推定される発熱量Xは、電力変換部90が瞬時電力Pを消費して発熱するときの将来の発熱量である。
【0054】
また、上記のように、電力変換部90のうち、インバータ56が最も発熱する。従って、発熱量Xの大部分は、インバータ56の発熱量である。そのため、発熱量推定部116は、実際には、インバータ56の将来の発熱量を推定する。従って、メモリ110に格納される電力変換部90の変換効率の数式又はマップは、インバータ56の変換効率の数式又はマップであってもよい。この場合、発熱量推定部116が算出する変換効率ηは、インバータ56の現在の変換効率である。
【0055】
冷却能力推定部118は、冷却ファン66の冷却能力Y(温調能力)を推定する。
【0056】
具体的には、冷却能力推定部118は、電力変換部90の現在の温度と、電力装置10での冷却状態(温調状態)とに基づいて、冷却ファン66の冷却能力Yを推定する。
【0057】
上記のように、電力変換部90のうち、インバータ56が最も発熱する。そのため、電力変換部90の現在の温度は、実際には、温度センサ78が検出したインバータ56の現在の温度Tiである。
【0058】
また、電力装置10での冷却状態には、冷却ファン66の現在の風量と、外気温センサ80が検出した現在の外気温Toとが含まれる。
【0059】
冷却ファン66の現在の風量は、冷却ファン66の出力である。冷却ファン66の出力は、冷却ファン66の入力から推定することができる。冷却ファン66の入力は、第2DC/DCコンバータ52からファンドライバ64に供給される直流電圧Vfと、ファンドライバ64に流れる直流電流Ifとに基づく入力電力(Vf×If)である。従って、冷却能力推定部118は、冷却ファン66に供給される入力電力(Vf×If)から冷却ファン66の現在の風量を推定する。
【0060】
上記のように、温度Tiは、電力変換部90(インバータ56)の現在の温度である。また、電力装置10の冷却状態は、冷却ファン66の現在の風量と、現在の外気温Toとである。従って、冷却能力推定部118が推定する冷却能力Yは、現在の環境で電力変換部90を冷却しているときの将来の冷却ファン66の冷却能力である。
【0061】
なお、外気温Toは、冷却能力Yの推定に必須の構成要素ではない。そのため、冷却能力推定部118は、電力変換部90の現在の温度(温度Ti)と、冷却ファン66の現在の風量とに基づいて、冷却ファン66の冷却能力Yを推定してもよい。
【0062】
図4は、冷却ファン66(図2参照)に対する従来の制御手法(比較例)を示す説明図である。
【0063】
従来は、電力変換部90を構成する半導体素子の温度T(インバータ56を構成する半導体素子の温度Ti)に応じて、冷却ファン66の冷却風量Fの目標値(目標風量Ft)を決定している。図4では、半導体素子の温度T(Ti)がT1までは、目標風量FtがF0に設定される。なお、F0は、冷却ファン66が停止状態(無風状態)での風量である。F0=0であってもよい。T1<T(Ti)≦T2では、目標風量FtがF1(F0<F1)に設定される。T2<T(Ti)では、目標風量FtがF2(F1<F2)に設定される。つまり、従来は、半導体素子の温度Tの上昇に伴い、目標風量Ftがステップ状に大きくなる。また、従来は、冷却による半導体素子の温度Tの低下に伴い、目標風量Ftがステップ状に小さくなる。
【0064】
しかしながら、この手法では、半導体素子の温度T(Ti)が大きくなると、単純に目標風量Ftが大きく設定される。目標風量Ftが大きくなることで冷却能力Yは大きくなるが、冷却ファン66の消費電力が増大する。
【0065】
これに対して、本実施形態では、図3に示すように、コンバータCPU60は、冷却風量決定部120を有する。冷却風量決定部120は、発熱量推定部116で推定された発熱量Xを用いて、冷却ファン66の冷却能力Yを調整する。冷却風量決定部120は、調整した冷却能力Yに基づいて、目標風量Ftを決定する。
【0066】
詳しく説明すると、本実施形態では、近い将来の電力変換部90の発熱量Xを予測し、予測した発熱量Xに応じて近い将来の冷却ファン66の冷却能力Yを調整する。これにより、調整された冷却能力Yは、発熱量Xに応じた最低限の冷却ファン66の消費電力に相当する。このように調整された冷却能力Yに基づいて目標風量Ftを決定し、決定した目標風量Ftにて冷却ファン66を駆動させると、電力変換部90を適切に冷却できると共に、冷却ファン66の消費電力の増大を抑えることが可能となる。
【0067】
図3に示すように、コンバータCPU60のメモリ110には、第2マップ126が格納されている。第2マップ126には、発熱量Xと冷却能力Yとの関係を示す複数の制御モードのマップ(図5図7参照)が格納されている。制御モードは、冷却ファン66及びファンドライバ64(図2参照)の制御手法を示すモードである。冷却風量決定部120は、複数の制御モードのうち、1つの制御モードのマップを参照し、参照したマップと、発熱量推定部116が推定した発熱量Xとを用いて、冷却能力Yを調整する。
【0068】
図5図7には、複数の制御モードのマップが図示されている。図5図7には、発熱量Xと冷却能力Yとの関係を示す特性線130、132、134が図示されている。これらの制御モードでは、特性線130、132、134に従って、発熱量Xに応じた冷却能力Yを設定可能である。
【0069】
図5は、通常の制御モードのマップである。通常の制御モードは、冷却ファン66に対する通常の制御を示すマップである。図5では、発熱量XがX1になるまでは、冷却能力YがY0に設定される。なお、Y0は、冷却ファン66が停止状態(無風状態)での冷却能力である。Y0=0であってもよい。また、図5では、発熱量XがX1を超えると、発熱量Xの増加に伴い、冷却能力Yが線形的に増加する。
【0070】
図6は、電力変換部90(インバータ56)を先行して冷却するための制御モードのマップである。図6では、発熱量XがX1になるまでは、冷却能力YがY0に設定され、X=X1では、冷却能力YがY0からY1(Y0<Y1)に上昇する。また、図6では、発熱量XがX1を超えると、発熱量Xの増加に伴い、冷却能力Yが線形的に増加する。但し、X>X1における特性線132での発熱量Xに対する冷却能力Yの増加量は、X>X1における特性線130での発熱量Xに対する冷却能力Yの増加量よりも小さい。
【0071】
図6に示す制御モードでは、X=X1で冷却能力YがY0からY1に上昇する。これにより、電力変換部90が発熱量Xで発熱する前に、先行して冷却能力Yを増加させ、冷却ファン66を駆動させる。この結果、冷却ファン66は、発熱量Xに対して大きな冷却風量で電力変換部90を冷却する。また、X>X1では、発熱量Xの増加に伴い、冷却能力Yが徐々に増加する。これにより、発熱量Xが大きいときの冷却ファン66の騒音を抑えることができる。
【0072】
図7は、電力装置10を静粛に保ちたいときの制御モードのマップである。図7では、発熱量XがX2(X2>X1)になるまでは、冷却能力YがY0に設定される。また、発熱量XがX2になると、冷却能力Yは、Y0からY2(Y2<Y1)にまで上昇する。また、図7では、発熱量XがX2を超えると、発熱量Xの増加に伴い、冷却能力Yが線形的に増加する。
【0073】
図7では、発熱量XがX2になるまでは、冷却能力YがY0に設定される。そのため、図7の制御モードでは、冷却ファン66による電力変換部90の冷却開始を遅らせることができる。これにより、冷却ファン66の駆動によって発生する騒音を低く抑えることができる。
【0074】
ユーザは、入力部82(図2参照)を操作して、複数の制御モードのうち、1つの制御モードを選択する。冷却風量決定部120(図3参照)は、第2マップ126に格納されている複数のマップのうち、ユーザが選択した制御モードに対応するマップを参照する(読み込む)。冷却風量決定部120は、参照したマップと、発熱量推定部116が推定した発熱量Xとを用いて、冷却能力推定部118が推定した冷却能力Yを調整する。
【0075】
具体的には、冷却風量決定部120は、発熱量推定部116が推定した発熱量X(発熱量Xe)と、冷却能力推定部118が推定した冷却能力Y(冷却能力Ye0)とを、マップ上にプロットする。発熱量Xe及び冷却能力Ye0のプロット(Xe、Ye0)が特性線130、132、134上にあるときに、冷却風量決定部120は、プロットした冷却能力Ye0に応じた風量を目標風量Ftに設定する。
【0076】
また、冷却風量決定部120は、発熱量X(発熱量Xe)及び冷却能力Y(冷却能力Ye1又はYe2)のプロットが特性線130、132、134から外れている場合には、冷却能力推定部118が推定した冷却能力の値(Ye1又はYe2)を、発熱量推定部116が推定した発熱量Xeにおける特性線130、132、134上での冷却能力の値(冷却能力Yea)に補正する。
【0077】
すなわち、発熱量推定部116が推定した発熱量Xeにおいて、冷却能力推定部118で推定された冷却能力の値が、特性線130、132、134上の冷却能力の値よりも大きい場合には、冷却能力推定部118で推定された冷却能力Ye2が過剰である。つまり、冷却能力推定部118で推定された冷却能力Ye2で目標風量Ftを設定し、設定した目標風量Ftで冷却ファン66を駆動すれば、発熱量Xeに対して過剰な風量で電力変換部90が冷却される。この結果、冷却ファン66の消費電力が増大する可能性がある。この場合には、冷却風量決定部120は、冷却能力Ye2を特性線130、132、134上の冷却能力Yeaにまで低く抑え、低く抑えた冷却能力Yeaに応じた風量を目標風量Ftに設定する。
【0078】
また、発熱量推定部116が推定した発熱量Xeにおいて、冷却能力推定部118で推定された冷却能力の値が、特性線130、132、134上の冷却能力の値よりも小さい場合には、冷却能力推定部118で推定された冷却能力Ye1が小さい。つまり、冷却能力推定部118で推定された冷却能力Ye1で目標風量Ftを設定し、設定した目標風量Ftで冷却ファン66を駆動すれば、発熱量Xeに対して過小な風量で電力変換部90が冷却される。この結果、電力変換部90の冷却を効果的に行うことができない。この場合には、冷却風量決定部120は、冷却能力Ye1を特性線130、132、134上の冷却能力Yeaにまで増大させ、増大させた冷却能力Yeaに応じた風量を目標風量Ftに設定する。
【0079】
冷却ファン制御部122は、冷却風量決定部120が決定した目標風量Ftに基づいて、ファンドライバ64を制御することで、冷却ファン66の駆動を制御する。具体的には、冷却ファン制御部122は、目標風量Ftに応じた制御信号をファンドライバ64に供給する。ファンドライバ64は、冷却ファン制御部122から供給される制御信号と、第2DC/DCコンバータ52から供給される直流電力とに基づき、冷却ファン66の駆動を制御する。
【0080】
本実施形態に係る電力装置10は、以上のように構成される。次に、電力装置10の動作について、図8及び図9のフローチャートを参照しながら説明する。ここでは、主として、冷却ファン66(図2及び図3参照)による電力変換部90の冷却方法(温調方法)について説明する。
【0081】
図8のステップS1において、電力変換部90(インバータ56)(図2参照)の変換効率ηを測定する。この場合、電力変換部90を動作させ、電圧センサ68が検出した直流電圧Viと、電圧センサ72が検出した交流電圧Voとを取得する。不図示のコンピュータは、取得した直流電圧Viと交流電圧Voとを用いて変換効率ηを算出する。
【0082】
ステップS2において、不図示のコンピュータは、測定した変換効率ηの数式又はマップを作成する。
【0083】
ステップS3において、不図示のコンピュータは、作成した変換効率ηの数式又はマップ(第1マップ124)をメモリ110に格納する。
【0084】
なお、ステップS1~S3では、コンバータCPU60が、変換効率ηの算出と、数式又はマップの作成と、作成した数式又はマップをメモリ110への格納とを行ってもよい。
【0085】
図9のステップS11において、電力装置10(図1及び図2参照)が運転を開始する。この場合、第1DC/DCコンバータ50及び第2DC/DCコンバータ52の各々は、バッテリ本体28の直流電圧Viを出力電圧に変換する。インバータ56は、第1DC/DCコンバータ50の出力電圧を交流電圧Voに変換し、変換した交流電圧Vo(交流電力)を外部機器102に供給する。ファンドライバ64は、第2DC/DCコンバータ52から供給される直流電力を受けて、冷却ファン66を駆動させる。これにより、冷却ファン66は、電力変換部90に冷却風を送風する。冷却風が送風されることで、電力変換部90の温度(温度Ti)が調節される。
【0086】
ステップS12において、各電圧センサ68、70、72は、電圧(直流電圧又は交流電圧)Vi、Vo、Vfを検出し、検出結果をインバータCPU62又はコンバータCPU60に出力する。各電流センサ74、76は、電流(直流電流又は交流電流)Io、Ifを検出し、検出結果をインバータCPU62又はコンバータCPU60に出力する。温度センサ78は、半導体素子の温度Tiを検出し、検出結果をコンバータCPU60に出力する。外気温センサ80は、外気温Toを検出し、検出結果をコンバータCPU60に出力する。
【0087】
ステップS13において、瞬時電力演算部114(図3参照)は、電圧センサ72が検出した交流電圧Voと、電流センサ76が検出した交流電流Ioとに基づき、瞬時電力Pを算出する。瞬時電力演算部114は、算出した瞬時電力PをコンバータCPU60に出力する。
【0088】
ステップS14(第1ステップ)において、発熱量推定部116は、メモリ110に格納された数式又はマップ(第1マップ124)を参照し、瞬時電力Pと、電圧センサ68が検出した直流電圧Viとから、電力変換部90の現在の変換効率ηを算出する。次に、発熱量推定部116は、算出した変換効率ηと、瞬時電力Pとを用いて、電力変換部90の発熱量Xを推定する。発熱量推定部116は、推定した発熱量Xを冷却風量決定部120に出力する。
【0089】
ステップS15(第2ステップ)において、冷却能力推定部118は、温度センサ78が検出した温度Tiと、外気温センサ80が検出した外気温Toと、冷却ファン66の現在の風量(冷却ファン66の出力)とから、冷却ファン66の冷却能力Yを推定する。冷却能力推定部118は、推定した冷却能力Yを冷却風量決定部120に出力する。
【0090】
ステップS16において、冷却風量決定部120は、ユーザが複数の制御モードの中から1つの制御モードを選択している場合、第2マップ126に格納された複数のマップ(図5図7参照)の中から、ユーザが選択した制御モードのマップを参照する(読み込む)。
【0091】
ステップS17において、冷却風量決定部120は、参照しているマップと、冷却能力推定部118が推定した冷却能力Yと、発熱量推定部116が推定した発熱量Xとを用いて、該冷却能力Yが適切かどうかを判定する。
【0092】
冷却能力推定部118で推定された冷却能力Yがマップの特性線130、132、134(図5図7参照)から外れている場合(ステップS17:NO)、冷却風量決定部120は、ステップS18に進む。ステップS18において、冷却風量決定部120は、冷却能力推定部118が推定した冷却能力Y(Ye1又はYe2)を、発熱量推定部116が推定した発熱量X(発熱量Xe)に応じた特性線130、132、134上の冷却能力Yeaに調整(補正)する。
【0093】
なお、冷却能力推定部118で推定された冷却能力Y(Ye0)がマップの特性線130、132、134上にプロットされる場合(ステップS17:YES)、冷却風量決定部120は、ステップS18の処理をスキップする。
【0094】
ステップS19において、冷却風量決定部120は、冷却能力推定部118が推定した冷却能力Y(Ye0)、又は、ステップS18で補正した冷却能力Y(Yea)に応じた風量を、目標風量Ftとして決定する。
【0095】
ステップS20(第3ステップ)において、冷却ファン制御部122は、目標風量Ftに基づく制御信号をファンドライバ64に出力する。ファンドライバ64は、冷却ファン制御部122からの制御信号に基づき、冷却ファン66の駆動を制御する。これにより、冷却ファン66からインバータ56に送風される冷却風の風量が目標風量Ftに調整される。
【0096】
電力装置10の運転を継続する場合(ステップS21:NO)、電力装置10は、ステップS12に戻り、ステップS12~S21の処理を繰り返し実行する。
【0097】
また、電力装置10が運転を終了する場合(ステップS21:YES)、電力装置10は、電力変換部90の動作を停止させる。
【0098】
なお、本実施形態では、電力装置10がバッテリ16の電力を外部に供給する給電器である場合について説明した。本実施形態では、電力装置10は、電力装置10が外部から供給される電力をバッテリ16に蓄電する充電器として機能してもよい。あるいは、電力装置10は、給電器及び充電器として機能してもよい。
【0099】
また、本実施形態では、電力装置10にコンバータCPU60及びインバータCPU62の2つのコンピュータが設けられる場合について説明した。電力装置10では、コンバータCPU60及びインバータCPU62の機能を1つのコンピュータで実現してもよい。
【0100】
さらに、本実施形態では、温度センサ78がインバータ56を構成する半導体素子の温度Tiを検出し、冷却能力推定部118が該温度Tiを用いて冷却能力Yを推定する場合について説明した。本実施形態では、冷却能力推定部118は、電力変換部90の現在の温度に基づいて冷却能力Yを推定できればよい。従って、温度センサ78は、第1DC/DCコンバータ50、第2DC/DCコンバータ52及びインバータ56のうち、少なくともいずれか1つの変換器の温度を検出してもよい。より詳しくは、温度センサ78は、第1DC/DCコンバータ50、第2DC/DCコンバータ52及びインバータ56のうち、少なくともいずれか1つの変換器に備わるとよい。これにより、温度センサ78が備わる変換器を構成する半導体素子の温度を検出することができる。具体的には、温度センサ78は、第1DC/DCコンバータ50を構成する半導体素子の温度を検出してもよい。温度センサ78は、第2DC/DCコンバータ52を構成する半導体素子の温度を検出してもよい。あるいは、第1DC/DCコンバータ50及び第2DC/DCコンバータ52の双方に温度センサ78が設置されてもよい。この場合、2つの温度センサ78の各々は、設置対象の変換器を構成する半導体素子の温度を検出することができる。あるいは、第1DC/DCコンバータ50、第2DC/DCコンバータ52及びインバータ56に温度センサ78がそれぞれ設置されてもよい。この場合、3つの温度センサ78の各々は、設置対象の変換器を構成する半導体素子の温度を検出することができる。いずれの場合でも、冷却能力推定部118は、温度センサ78が検出した温度を用いて、冷却能力Yを推定することができる。
【0101】
本実施形態は、以下の効果を有する。
【0102】
図3及び図9に示すように、電力変換部90(温調対象)の発熱量Xを推定し、冷却ファン66の冷却能力Y(温調装置の温調能力)を推定し、推定した発熱量X及び冷却能力Yに基づいて冷却ファン66を制御する。将来の発熱量及び温調能力に応じて冷却ファン66が制御されるので、電力変換部90の温度(温度Ti)を適切に調節することができる。また、冷却ファン66の冷却能力Yを増大させても、冷却ファン66を含む電力装置10(図1及び図2参照)の消費電力の増加を抑制することができる。
【0103】
発熱量推定部116(第1推定部)が推定した発熱量Xと、冷却能力推定部118(第2推定部)が推定した冷却能力Yと、発熱量X及び冷却能力Yに応じて予め定められた制御モードのマップの特性線130、132、134(温調装置の稼働度合い)(図5図7参照)とに基づいて、冷却ファン66が制御される。これにより、冷却ファン66の稼働度合いに応じて、冷却ファン66を適切に制御することができる。
【0104】
電力変換部90の温度と電力装置10の冷却状態とに基づいて、将来の冷却能力Yを精度よく推定することができる。
【0105】
電力変換部90(負荷)で消費される現在の瞬時電力P(電力)に基づいて、将来の発熱量Xを精度よく推定することができる。これにより、電力変換部90の温度を適切に調節することができる。すなわち、電力変換部90を適切に冷却することができる。
【0106】
直流電圧Vi(入力電圧)、瞬時電力P(出力電力)及び変換効率ηに基づき将来の発熱量Xが推定されると共に、電力変換部90の現在の温度(温度Ti)及び冷却ファン66の現在の風量に基づき将来の冷却能力Yが推定される。これにより、電力変換部90の温度上昇を予測して、冷却ファン66から電力変換部90に送風される風量を先行して多くすることができる。この結果、電力装置10を最大出力で運転する場合に、電力装置10の運転開始から、該電力装置10の加熱保護のために運転を終了するまでの運転時間を、できる限り長く延ばすことができる。
【0107】
また、現在の直流電圧Vi、瞬時電力P及び変換効率ηを用いて将来の発熱量Xを推定すると共に、電力変換部90の現在の温度及び現在の風量を用いて将来の冷却能力Yを推定する。これにより、電力変換部90の状態が変化する場合(瞬時電力Pの瞬間的な変動)、バッテリ16(蓄電装置)の状態が変化する場合(直流電圧Viの変動)でも、状態の変化に対応して冷却ファン66を適切に制御することが可能となる。このように、過渡的な変化に対応して、フィードフォワード制御で冷却ファン66を制御することで、電力変換部90の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0108】
図5図7に示すように、将来の発熱量Xを用いて将来の冷却能力Yを調整し、調整した冷却能力Yに基づき目標風量Ftが決定される。これにより、冷却ファン66(図2及び図3参照)から電力変換部90に送風される風量を最適な冷却風量に制御することができる。この結果、電力変換部90を効果的に冷却することができる。
【0109】
また、冷却能力Yが将来の発熱量Xに応じて調整されることで、該発熱量Xに対して冷却能力Yが不足したり、又は、該発熱量Xに対して冷却能力Yが過大になることを回避することができる。すなわち、冷却能力推定部118で推定された冷却能力Yが、将来の発熱量Xに対して不足している場合には、推定した冷却能力Yに不足分を上乗せする。また、冷却能力推定部118で推定された冷却能力Yが、将来の発熱量Xに対して過大である場合には、過剰分だけ冷却能力Yを低くする。これにより、発熱量Xと冷却能力Yとのバランスを取ることができる。このようなフィードフォワード制御によって、冷却ファン66は、電力変換部90が温度上昇する前に、先回りして必要最低限の消費電力で電力変換部90を適切に冷却することができる。また、発熱量Xと冷却能力Yとのバランスを取ることで、冷却ファン66の消費電力を抑えると共に、冷却ファン66の騒音を抑えることができる。
【0110】
また、従来は、電力変換部90を構成する半導体素子の熱損失及び熱抵抗等から該半導体素子の接合部の温度を推定し、推定した接合部の温度から目標風量Ftを決定していた。そのため、従来の手法では、目標風量Ftを決定するための処理が複雑であった。
【0111】
これに対して、本実施形態では、現在の直流電圧Vi、瞬時電力P及び変換効率ηを用いて、電力変換部90全体の将来の発熱量Xが推定される。また、電力変換部90を構成する半導体素子の現在の温度(温度Ti)と、冷却ファン66の現在の風量とを用いて、冷却ファン66の将来の冷却能力Yが推定される。さらに、推定した将来の発熱量Xを用いて冷却能力Yを調整し、調整した冷却能力Yに応じた目標風量Ftを決定する。このように、本実施形態は、簡易的な推定手法で目標風量Ftが決定されるので、汎用の低スペックのマイクロコンピュータを用いて、目標風量Ftを決定するための処理を実行させることが可能となる。これにより、電力装置10を安価に実現することが可能となる。
【0112】
ユーザは、複数の制御モード(図5図7参照)のうち、所望の1つの制御モードを選択すればよい。これにより、ユーザが所望するモードにて、冷却ファン66の消費電力の増加を抑えつつ、電力変換部90を冷却することができる。例えば、通常の制御モード(図5参照)、静粛性が求められる制御モード(図7参照)、発熱に備えて先行して冷却するような制御モード(図6参照)等を予め用意しておくことで、ユーザは、所望のモードを選択することができる。
【0113】
図2図3及び図9に示すように、電力装置10の現在の外気温Toと、電力変換部90の現在の温度(温度Ti)と、冷却ファン66の現在の風量とに基づいて、将来の冷却能力Yを精度よく推定することができる。
【0114】
電力変換部90の温度が該電力変換部90を構成する半導体素子の温度であるので、将来の冷却能力Yを一層精度よく推定することができる。
【0115】
半導体素子の温度が少なくともインバータ56(交直変換器)を構成する半導体素子の温度Tiである。これにより、電力変換部90のうち、最も発熱するインバータ56の半導体素子の温度Tiを考慮して、将来の冷却能力Yを推定することができる。
【0116】
上述した開示に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0117】
(付記1)
温調対象(90)の温度(Ti)を調節する温調装置(10)であって、前記温調装置は、前記温調対象の発熱量(X)を推定する第1推定部(116)と、該温調装置の温調能力(Y)を推定する第2推定部(118)と、前記第1推定部が推定した前記発熱量と、前記第2推定部が推定した前記温調能力とに基づいて、該温調装置を制御する制御部(122)と、を備える。
【0118】
この構成によれば、温調対象の発熱量を推定し、温調装置の温調能力を推定し、推定した発熱量及び温調能力に基づいて温調装置を制御する。温調対象の将来の発熱量及び温調能力に応じて温調装置が制御されるので、温調対象の温度を適切に調節することができる。また、温調装置の消費電力の増加を抑制することができる。
【0119】
(付記2)
付記1に記載の温調装置において、前記制御部は、前記第1推定部が推定した前記発熱量と、前記第2推定部が推定した前記温調能力と、前記発熱量及び前記温調能力に応じて予め定められた前記温調装置の稼働度合い(130、132、134)と、に基づいて、該温調装置を制御してもよい。
【0120】
この構成によれば、第1推定部が推定した発熱量と、第2推定部が推定した温調能力と、発熱量及び温調能力に応じて予め定められた温調装置の稼働度合いと、に基づいて、温調装置が制御される。これにより、温調装置の稼働度合いに応じて、温調装置を適切に制御することができる。
【0121】
(付記3)
付記1又は2に記載の温調装置において、前記第2推定部は、前記温調対象の温度と、前記温調装置の温調状態と、に基づいて、前記温調能力を推定してもよい。
【0122】
この構成によれば、温調対象の温度と温調装置の温調状態とに基づいて、将来の温調能力を精度よく推定することができる。
【0123】
(付記4)
付記1~3のいずれかに記載の温調装置において、前記温調対象は、電力(P)を消費する負荷であり、前記第1推定部は、前記負荷で消費される前記電力に基づいて、前記発熱量を推定してもよい。
【0124】
この構成によれば、負荷で消費される現在の電力に基づいて、将来の発熱量を精度よく推定することができる。これにより、温調対象である負荷の温度を適切に調節することができる。
【0125】
(付記5)
付記1~3に従属する付記4に記載の温調装置において、前記温調装置は、前記制御部によって制御されることで、前記負荷を冷却する冷却ファン(66)をさらに備え、前記温調能力は、前記冷却ファンの冷却能力であり、前記温調状態は、前記温調装置の冷却状態であってもよい。
【0126】
この構成によれば、負荷の将来の発熱量と冷却ファンの将来の冷却能力とに基づいて、冷却ファンが制御される。これにより、温調対象である負荷を適切に冷却することができる。また、冷却ファンの冷却能力を増大させても、冷却ファンの消費電力の増加を抑制することができる。
【0127】
(付記6)
付記5に記載の温調装置において、前記負荷は、前記電力を変換する電力変換部(90)であり、前記電力変換部の入力側(92)は、蓄電装置(16)に接続され、前記電力変換部の出力側(100)は、前記温調装置の外部に存在する外部機器(102)に接続可能であってもよい。
【0128】
この構成によれば、電力変換部を適切に冷却することができる。
【0129】
(付記7)
付記6に記載の温調装置において、前記温調装置は、前記出力側の電力である出力電力(P)を算出する電力算出部(114)をさらに備え、前記第1推定部は、前記入力側に供給される入力電圧(Vi)と、前記電力算出部が算出した前記出力電力と、前記電力変換部の変換効率(η)と、に基づいて、前記電力変換部の前記発熱量を推定し、前記第2推定部は、前記電力変換部の現在の温度(Ti)と、前記冷却ファンの現在の風量と、に基づいて、前記冷却ファンの前記冷却能力を推定してもよい。
【0130】
この構成によれば、入力電圧、出力電力及び変換効率に基づき将来の発熱量が推定されると共に、電力変換部の現在の温度及び冷却ファンの現在の風量に基づき将来の冷却能力が推定される。これにより、電力変換部の温度上昇を予測して、冷却ファンから電力変換部に送風される風量を先行して多くすることができる。この結果、電力装置を最大出力で運転する場合に、電力装置の運転開始から、該電力装置の加熱保護のために運転を終了するまでの運転時間を、できる限り長く延ばすことができる。
【0131】
また、現在の入力電圧、出力電力及び変換効率を用いて将来の発熱量を推定すると共に、電力変換部の現在の温度及び現在の風量を用いて将来の冷却能力を推定する。これにより、電力変換部の状態が変化する場合(出力電力の瞬間的な変動)、蓄電装置の状態が変化する場合(入力電圧の変動)でも、状態の変化に対応して冷却ファンを適切に制御することが可能となる。このように、過渡的な変化に対応して、フィードフォワード制御で冷却ファンを制御することで、電力変換部の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0132】
(付記8)
付記7に記載の温調装置において、前記発熱量を用いて前記冷却能力を調整し、調整した前記冷却能力に基づいて、前記冷却ファンの前記風量の目標値である目標風量(Ft)を決定する冷却風量決定部(120)をさらに備え、前記制御部は、前記冷却風量決定部が決定した前記目標風量に基づいて、前記冷却ファンを制御してもよい。
【0133】
この構成によれば、将来の発熱量を用いて将来の冷却能力を調整し、調整した冷却能力に基づき目標風量が決定される。これにより、冷却ファンから電力変換部に送風される風量を最適な冷却風量に制御することができる。この結果、電力変換部を効果的に冷却することができる。
【0134】
また、将来の発熱量に応じた冷却能力に調整されることで、該発熱量に対して冷却能力が不足したり、又は、該発熱量に対して冷却能力が過大になることを回避することができる。すなわち、第2推定部で推定された冷却能力が、将来の発熱量に対して不足している場合には、推定した冷却能力に不足分を上乗せする。また、第2推定部で推定された冷却能力が、将来の発熱量に対して過大である場合には、過剰分だけ冷却能力を低くする。これにより、発熱量と冷却能力とのバランスを取ることができる。このようなフィードフォワード制御によって、冷却ファンは、電力変換部が温度上昇する前に、先回りして必要最低限の消費電力で電力変換部を適切に冷却することができる。また、発熱量と冷却能力とのバランスを取ることで、冷却ファンの消費電力を抑えると共に、冷却ファンの騒音を抑えることができる。
【0135】
また、従来は、電力変換部を構成する半導体素子の熱損失及び熱抵抗等から該半導体素子の接合部の温度を推定し、推定した接合部の温度から目標風量を決定していた。そのため、従来の手法では、目標風量を決定するための処理が複雑であった。
【0136】
これに対して、本発明では、現在の入力電圧、出力電力及び変換効率を用いて、電力変換部全体の将来の発熱量が推定される。また、電力変換部を構成する半導体素子の現在の温度と、冷却ファンの現在の風量とを用いて、冷却ファンの将来の冷却能力が推定される。さらに、推定した将来の発熱量を用いて冷却能力を調整し、調整した冷却能力に応じた目標風量を決定する。このように、本発明は、簡易的な推定手法で目標風量が決定されるので、汎用の低スペックのマイクロコンピュータを用いて、目標風量を決定するための処理を実行させることが可能となる。これにより、温調装置を安価に実現することが可能となる。
【0137】
(付記9)
付記8に記載の温調装置において、前記稼働度合いは、前記発熱量と前記冷却能力との関係を示す前記冷却ファンの制御モードであり、前記冷却風量決定部は、複数の前記制御モードのうちの1つの制御モードと、前記発熱量と、を用いて、前記冷却能力を調整してもよい。
【0138】
この構成によれば、ユーザは、複数の制御モードのうち、所望の1つの制御モードを選択すればよい。これにより、ユーザが所望するモードにて、冷却ファンの消費電力の増加を抑えつつ、電力変換部を冷却することができる。例えば、通常の制御モード、静粛性が求められる制御モード、発熱に備えて先行して冷却するような制御モード等を予め用意しておくことで、ユーザは、所望のモードを選択することができる。
【0139】
(付記10)
付記7~9のいずれかに記載の温調装置において、前記第2推定部は、前記温調装置の現在の外気温(To)と、前記電力変換部の現在の温度と、前記冷却ファンの現在の風量と、に基づいて、前記冷却能力を推定してもよい。
【0140】
この構成によれば、温調装置の現在の外気温と、電力変換部の現在の温度と、冷却ファンの現在の風量とに基づいて、将来の冷却能力を精度よく推定することができる。
【0141】
(付記11)
付記6~10のいずれかに記載の温調装置において、前記電力変換部の温度は、前記電力変換部を構成する半導体素子の温度であってもよい。
【0142】
この構成によれば、電力変換部の温度が該電力変換部を構成する半導体素子の温度であるので、将来の冷却能力を一層精度よく推定することができる。
【0143】
(付記12)
付記11に記載の温調装置において、前記電力変換部は、前記蓄電装置と電気的に接続され、直流電力を変換する直流変換器(50)と、前記直流変換器と前記外部機器との間で電気的に接続され、前記直流電力と交流電力(P)とを変換する交直変換器(56)と、を有し、前記半導体素子の温度は、少なくとも前記交直変換器を構成する半導体素子の温度(Ti)であってもよい。
【0144】
この構成によれば、半導体素子の温度が少なくとも交直変換器を構成する半導体素子の温度である。これにより、電力変換部のうち、最も発熱する交直変換器の半導体素子の温度を考慮して、将来の冷却能力を推定することができる。
【0145】
(付記13)
温調対象の温度を調節する温調装置の制御方法であって、前記制御方法は、前記温調対象の発熱量を推定する第1ステップ(S14)と、前記温調装置の温調能力を推定する第2ステップ(S15)と、推定した前記発熱量及び前記温調能力に基づいて、前記温調装置を制御する第3ステップ(S20)と、を有する。
【0146】
この方法によれば、温調対象の発熱量を推定し、温調装置の温調能力を推定し、推定した発熱量及び温調能力に基づいて温調装置を制御する。温調対象の将来の発熱量及び温調能力に応じて温調装置が制御されるので、温調対象の温度を適切に調節することができる。また、温調装置の消費電力の増加を抑制することができる。
【0147】
(付記14)
付記13に記載の温調装置の制御方法をコンピュータ(60、62)に実行させるためのプログラムである。
【0148】
(付記15)
付記14に記載のプログラムを記憶する記憶媒体(110、112)である。
【0149】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0150】
10…電力装置(温調装置)
60…コンバータCPU(コンピュータ)
62…インバータCPU(コンピュータ)
90…電力変換部(温調対象)
110、112…メモリ(記憶媒体)
116…発熱量推定部(第1推定部)
118…冷却能力推定部(第2推定部)
122…冷却ファン制御部(制御部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9