IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中日本高速道路株式会社の特許一覧 ▶ 西松建設株式会社の特許一覧 ▶ サンエー工業株式会社の特許一覧

特開2024-143910切削屑回収装置、切削施工システム、切削屑回収方法および切削施工方法
<>
  • 特開-切削屑回収装置、切削施工システム、切削屑回収方法および切削施工方法 図1
  • 特開-切削屑回収装置、切削施工システム、切削屑回収方法および切削施工方法 図2
  • 特開-切削屑回収装置、切削施工システム、切削屑回収方法および切削施工方法 図3
  • 特開-切削屑回収装置、切削施工システム、切削屑回収方法および切削施工方法 図4
  • 特開-切削屑回収装置、切削施工システム、切削屑回収方法および切削施工方法 図5
  • 特開-切削屑回収装置、切削施工システム、切削屑回収方法および切削施工方法 図6
  • 特開-切削屑回収装置、切削施工システム、切削屑回収方法および切削施工方法 図7
  • 特開-切削屑回収装置、切削施工システム、切削屑回収方法および切削施工方法 図8
  • 特開-切削屑回収装置、切削施工システム、切削屑回収方法および切削施工方法 図9
  • 特開-切削屑回収装置、切削施工システム、切削屑回収方法および切削施工方法 図10
  • 特開-切削屑回収装置、切削施工システム、切削屑回収方法および切削施工方法 図11
  • 特開-切削屑回収装置、切削施工システム、切削屑回収方法および切削施工方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143910
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】切削屑回収装置、切削施工システム、切削屑回収方法および切削施工方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/04 20060101AFI20241004BHJP
   E21D 11/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
E21D11/04 Z
E21D11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056855
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】505398952
【氏名又は名称】中日本高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】392000408
【氏名又は名称】サンエー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】弁理士法人MIP
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 岳
(72)【発明者】
【氏名】大石 一明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 翔平
(72)【発明者】
【氏名】鍬崎 広和
(72)【発明者】
【氏名】盛 鋼
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA05
2D155KA00
2D155LA16
(57)【要約】
【課題】 粉塵の発生をなくし、車両の錯綜を回避して安全性を向上させることができる装置、システムおよび方法を提供すること。
【解決手段】 切削屑を回収する切削屑回収装置12は、高圧水による切削により発生した切削屑を受け入れる、頂部に開口70を有し、頂部から底部へ向けて縮小する断面を有する切削屑回収ホッパー60と、切削屑回収ホッパー60内の底部に近隣して配置され、収容された切削屑を一定の方向へ推進させるための高圧流体を噴射するジェット水ノズル61と、切削屑回収ホッパー60に吸引ホース64を介して接続され、切削屑回収ホッパー60内を一定の方向へ推進させた切削屑を吸引するバキュームポンプ66とを含む。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削屑を回収する装置であって、
高圧水による切削により発生した切削屑を受け入れる、頂部に開口を有し、頂部から底部へ向けて縮小する断面を有する容器と、
前記容器内の底部に近隣して配置され、収容された前記切削屑を一定の方向へ推進させるための高圧流体を噴射する噴射手段と、
前記容器に管を介して接続され、前記容器内を一定の方向へ推進させた前記切削屑を吸引する吸引手段と
を含む、切削屑回収装置。
【請求項2】
前記吸引手段により吸引された前記切削屑を回収する回収タンクと、
前記回収タンクに回収された掘削屑を分離する分離手段と
を含む、請求項1に記載の切削屑回収装置。
【請求項3】
前記切削屑は、トンネルの内壁面を覆う覆工コンクリートを切削した後の切削屑であり、
前記容器は、前記一定の方向に延びる両端に、前記管を接続可能なノズルを有し、
前記トンネルの出入口の近い側の坑外に、前記回収タンク、前記分離装置および前記吸引手段が設置され、該回収タンク、該分離装置および該吸引手段が設置された側のノズルに前記管が接続される、請求項2に記載の切削屑回収装置。
【請求項4】
前記容器は、トンネル内壁面と、車両が通行可能な空間を形成し、通行する該車両を防護するためのプロテクタとの間に設置され、
前記切削屑回収装置は、
前記容器と前記プロテクタの外壁面とを架け渡すように、地面に対して傾斜して配置される回収板をさらに含む、請求項3に記載の切削屑回収装置。
【請求項5】
高圧水により覆工コンクリートを切削する切削装置と、前記切削装置による切削により発生する切削屑を回収する切削屑回収装置とを含み、前記切削屑回収装置が、
前記高圧水による切削により発生した切削屑を受け入れる、頂部に開口を有し、頂部から底部へ向けて縮小する断面を有する容器と、
前記容器内の底部に近隣して配置され、収容された前記切削屑を一定の方向へ推進させるための高圧流体を噴射する噴射手段と、
前記容器に管を介して接続され、前記容器内を一定の方向へ推進させた前記切削屑を吸引する吸引手段と
を含む、切削施工システム。
【請求項6】
前記切削装置は、車両が通行可能な空間を形成し、通行する該車両を防護するためのプロテクタ上に載置され、トンネルの内壁面を覆う覆工コンクリートを切削する、請求項5に記載の切削施工システム。
【請求項7】
前記プロテクタと前記トンネルの内壁面との間の前記切削装置のトンネル軸方向の前後の隙間を閉鎖する飛散防止シートを含む、請求項6に記載の切削施工システム。
【請求項8】
切削屑を回収する方法であって、
高圧水による切削により発生した前記切削屑を、頂部に開口を有し、頂部から底部へ向けて縮小する断面を有する容器内に受け入れる工程と、
前記容器内の底部に近隣して配置される噴射手段から高圧流体を噴射して、前記容器内に収容された前記切削屑を一定の方向へ推進させる工程と、
前記容器に管を介して接続される吸引手段により、前記容器内を一定の方向へ推進させた前記切削屑を吸引する工程と
を含む、切削屑回収方法。
【請求項9】
覆工コンクリートを切削し、切削屑を回収する切削施工方法であって、
前記覆工コンクリートを高圧水により切削する工程と、
前記高圧水による切削により発生した前記切削屑を、頂部に開口を有し、頂部から底部へ向けて縮小する断面を有する容器内に受け入れる工程と、
前記容器内の底部に近隣して配置される噴射手段から高圧流体を噴射して、前記容器内に収容された前記切削屑を一定の方向へ推進させる工程と、
前記容器に管を介して接続される吸引手段により、前記容器内を一定の方向へ推進させた前記切削屑を吸引する工程と
を含む、切削施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削屑回収装置、切削施工システム、切削屑回収方法および切削施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
矢板工法により構築されたトンネルの覆工では、覆工と矢板の間に空洞が残ったり、覆工の厚さが不足したりして、ひび割れや漏水等の変状が顕著化してきている。その対策として、既設の覆工コンクリートをロックボルト等により補強した後、既設の覆工コンクリートを切削し、必要に応じて防水シートの張替えや止水等を施し、コンクリートを打設して覆工を再生するトンネル覆工再生工法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載の技術では、既設の覆工コンクリートをカッタードラムで切削するため、粉塵が大量に発生するが、集塵機により粉塵が滞留することを防止している。また、シャフローダや切削屑キャリア等の搬出装置をトンネルの内壁面とプロテクタの外壁面との間に形成された作業空間に走行可能に配置し、切削により発生した切削屑を搬出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-173093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術では、集塵機で粉塵をある程度減少させることはできるが、作業員は、粉塵による劣悪な環境で、作業を行わなければならないという問題があった。また、切削屑の搬出においても、狭隘なトンネル内で搬出車両と一般車両とが合流して搬出するため、車両が錯綜し、安全性に問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、切削屑を回収する装置であって、
高圧水による切削により発生した切削屑を受け入れる、頂部に開口を有し、頂部から底部へ向けて縮小する断面を有する容器と、
容器内の底部に近隣して配置され、収容された切削屑を一定の方向へ推進させるための高圧流体を噴射する噴射手段と、
容器に管を介して接続され、容器内を一定の方向へ推進させた切削屑を吸引する吸引手段と
を含む、切削屑回収装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、粉塵の発生をなくし、車両の錯綜を回避して安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】切削施工システムの構成例を示した図。
図2】切削装置の構成例を示した断面図。
図3】切削装置の構成例を示した平面図。
図4】ウォータージェット工法について説明する図。
図5】XY移動装置の構成例およびノズルの移動方向の一例を示した図。
図6】切削装置の別の構成例を示した正面図。
図7】切削屑回収装置の構成例を示した図。
図8】切削屑回収ホッパーの詳細な構成を示した図。
図9】切削屑回収ホッパーの配置例を示した図。
図10】濁水処理装置の構成例を示した図。
図11】切削施工の流れを例示したフローチャート。
図12】切削屑回収の流れを例示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
覆工は、トンネルや地下構造物の壁面等の掘削後の地山等の緩みを抑え、地山等を支持するために施工される。矢板工法により構築されたトンネルの覆工では、ひび割れや漏水等の変状が顕著化してきている。ここで、矢板工法とは、木製や鋼製の矢板を地中に連続して打込み、それを支保工で支持し、その内壁にコンクリートを打設して覆工を行う工法である。
【0010】
ひび割れや漏水等の変状を改善するには、例えばトンネル覆工再生工法を用い、既設の覆工コンクリートをロックボルト等により補強した後、覆工再生を行うことができる。トンネル覆工再生工法は、既存のトンネル内でプロテクタを用いて車道を通過する通行車両の安全を確保しながら、既設の覆工コンクリートを切削し、コンクリートを打設して覆工を再生する工法である。
【0011】
プロテクタは、一般車両を防護し、移動可能に車輪を有するトンネル形状の一般車両防護作業車である。一般車両は、プロテクタの設置により、覆工再生の作業中でも、プロテクタにより形成された一般車両通行帯を通して通行することができる。
【0012】
覆工再生では、既設の覆工コンクリートを切削し、必要に応じて防水シートの張替えや止水等を施し、コンクリートを打設して覆工を再生する。覆工コンクリートの再生は、施工場所がトンネル坑内に限られるものではないが、以下、トンネル坑内に打設された覆工コンクリートとして説明する。
【0013】
図1は、切削施工システムの構成例を示した図である。切削施工システムは、既設の覆工コンクリート100を切削するための切削装置10と、切削により発生した切削屑等の処理を実施する付帯設備とを含む。ここでは、覆工コンクリート100は、既設の覆工コンクリートの切削を必要とする部分を示し、既設の覆工コンクリートの全部であってもよいし、その内壁面側の一部であってもよい。また、覆工コンクリート100は、内部に鉄筋が配筋されていてもよい。
【0014】
切削装置10は、覆工コンクリート100を切削するための切削手段を備える。従来の覆工再生では、周面に金属製の多数のビットを備えたカッタードラムを使用し、カッタードラムにより覆工コンクリート100からなるトンネル内壁面を所定厚さで除去している。カッタードラムにより切削では、切削時に、大量の粉塵が発生する。大量の粉塵の発生は、作業環境を悪化させる。
【0015】
カッタードラムによる切削は、切削時に、既設の覆工コンクリート100に対して衝撃を与え、その覆工コンクリートの残存部にクラック等を発生させる可能性がある。また、カッタードラムによる切削は、切削時に振動が発生し、その振動がプロテクタ11等へ伝わる。すると、プロテクタ11の内部の一般車両通行帯を通行する一般車両の通行に影響を与えることになる。また、カッタードラムによる切削時では、覆工コンクリート100内の鉄筋に損傷を与えず、コンクリートのみを切削することは困難である。
【0016】
そこで、切削装置10は、ウォータージェット(WJ)工法により覆工コンクリート100を切削する装置とされる。ウォータージェット工法は、100MPa~250MPaといった高圧水によりコンクリートを無振動で、鉄筋の損傷なく部分除去する工法である。切削装置10は、切削手段として、WJ噴流ノズルを含み、WJ噴流ノズルから噴射される高圧水(WJ噴流)をコンクリートに衝突させることにより、当該コンクリートを切削する。
【0017】
切削装置10は、プロテクタ11の上に載せ、プロテクタ11の周囲を取り囲むように設置される。切削装置10は、トンネル内壁面の周方向へ切削手段が移動可能に構成される。プロテクタ11上には、レールが設けられ、切削装置10は、レール上を移動することで、トンネル軸方向への移動を可能にする。
【0018】
切削装置10の切削手段により発生した切削屑は、主にコンクリートの破片や粉であり、トンネル内壁面とプロテクタ11との間の狭隘な空間を落下する。このとき、切削屑とともに噴射した水も落下してくる。
【0019】
付帯設備は、落下してくる切削屑や水を回収する切削屑回収装置12を備える。切削屑回収装置12は、落下してくる切削屑や水を受け入れ、トンネル坑外の安全な場所へ輸送する。従来においては、トンネル内壁面とプロテクタ11との間の狭隘な空間に落下した切削屑をシャフローダにより搬出車両である切削屑キャリアに積み込み、切削屑キャリアがトンネル坑外へ搬出している。
【0020】
しかしながら、切削屑回収装置12を用いることで、切削屑を真下で受け止め、トンネル坑外へ管を介して自動で輸送するため、搬出車両が不要となり、搬出車両と一般車両の錯綜を回避し、安全性を向上させることができる。
【0021】
切削屑回収装置12は、トンネル坑外において、輸送した切削屑と水とを含むスラリーから固形分と液分とに分離する。分離後の液分は、泥等が混じった濁水であり、河川等に放流したり、高圧水として再利用するために水処理される。付帯設備は、水処理を行うために、濁水処理装置13を含む。また、付帯設備は、切削屑回収装置12で使用する高圧流体を供給する高圧流体供給装置として給水装置14と、覆工コンクリート100の切削に使用する高圧水を発生させる高圧水発生装置15とを含む。
【0022】
切削屑回収装置12を構成する要素の一部、濁水処理装置13、給水装置14、高圧水発生装置15は、トンネル坑外や坑内の切削場所から離れた安全な場所に設置される。このように、トンネル内壁面とプロテクタ11との間の狭隘な空間にポンプ等の動力手段をもつ付帯設備が設置されないため、作業性や安全性を向上させることができる。
【0023】
図2は、切削装置10の構成例を示した断面図であり、図3は、切削装置10の構成例を示した平面図である。トンネル内の中央位置にプロテクタ11が配置される。プロテクタ11は、一般車両が1台通行可能な空洞である一般車両通行帯20を有し、底部にトンネル軸方向への移動を可能にするための車輪21を有している。また、プロテクタ11は、平坦な上面を有し、上面にレールフレーム22がトンネル軸方向に延びるように敷設されている。
【0024】
切削装置10は、レールフレーム22上に移動可能に載置される台車フレーム30と、台車フレーム30上に桁部材31を介して設けられるXYフレーム固定部材32と、XYフレーム固定部材32に取り付けられるXY移動装置33とを含む。切削装置10は、切削手段としてWJ噴流ノズル34を含む。XY移動装置33は、WJ噴流ノズル34をトンネルの周方向に移動させる。
【0025】
図4は、WJ噴流ノズル34を使用したウォータージェット工法について説明する図である。WJ噴流ノズル34は、図4(a)に示すように、支持部材40により支持される2つのノズル41、42から構成され、2つのノズル41、42は、各ノズルの中心を通る中心線が1点で交わるように配置される。2つのノズル41、42の各中心線が交わる1点は、衝突点であり、コンクリートを切削する深さ(はつり深さ)を規定する。2つのノズル41、42の中心線が平行となる角度を0度とすると、各ノズル41、42の角度を変えることで、はつり深さを制御することができる。
【0026】
WJ噴流ノズル34による切削は、WJ噴流ノズル34から衝突点までの範囲が切削に有効な範囲とされ、衝突点を超えて水が分散する範囲では、はつり能力が消散する。なお、WJ噴流ノズル34による切削では、鉄筋を損傷することなくコンクリートを切削することができるため、鉄筋裏側のコンクリートも切削して除去することができる。
【0027】
WJ噴流ノズル34により切削すると、図4(b)に示すように、噴射されたジェット水により覆工コンクリートが引っ掻いたように削り取られる。削り取られたコンクリートは、切削屑として噴射された水とともに下方へ落下する。
【0028】
図5は、XY移動装置33の構成例およびWJ噴流ノズル34の移動方向の一例を示した図である。図5(a)は、XY移動装置33の構成例を示した図である。XY移動装置33は、2本の平行に並ぶレール部材50、51と、レール部材50、51を橋渡すように架設される棒状部材52と、棒状部材52上をスライド可能とされ、WJ噴流ノズル34が取り付けられるノズル支持部材53とを含む。
【0029】
XY移動装置33は、棒状部材52上をノズル支持部材53がスライドすることで、WJ噴流ノズル34を、X方向へ移動させ、レール部材50、51が延びる方向へ棒状部材52が移動することで、Y方向へ移動させることができる。
【0030】
図5(b)は、WJ噴流ノズル34の移動方向の一例を示した図である。WJ噴流ノズル34は、ノズル支持部材53のスライド移動によりX方向(向かって右方向)へ約2m移動し、移動後、レール部材50、51が延びる方向であるY方向(向かって下方向)へ約30mm移動し、再びX方向(向かって左方向)へ約2m移動することを繰り返し、既設の覆工コンクリートを切削していく。移動速度は、2m/minを初期値とし、切削状況に応じて変化させることができる。なお、これは一例であるため、移動距離や移動速度はこれに限られるものではない。
【0031】
WJ噴流ノズル34は、X方向やY方向へ移動する間、衝突点が螺旋等を描くように制御される。衝突点が固定されていると、Y方向へ数mmずつ移動させなければ、はつり範囲をほぼ均一に切削することができないが、このような制御により、Y方向へ約30mmずつ移動させても、はつり範囲をほぼ均一に切削することができ、施工時間を短縮することができる。
【0032】
図6は、切削装置10の別の構成例を示した正面図である。切削装置10は、トンネル内壁面とプロテクタ11との間であってトンネル軸方向の前後を閉鎖し、切削屑の飛散を防止する飛散防止カバー35を備えることができる。飛散防止カバー35は、プロテクタ11の両側方のトンネル軸方向の前後に設けることができるが、プロテクタ11の上方のトンネル軸方向の前後にも設けてもよい。
【0033】
飛散防止カバー35は、数マイクロメートルから数センチメートルの径をもつ切削屑が、プロテクタ11の内部やトンネル内へ飛散することを防止できる材料で作製されたシート状のもので、材料としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ゴム、ポリプロピレン等が使用される。なお、飛散防止カバー35は、内部の様子を確認できるように透明または半透明であることが望ましい。
【0034】
図7は、切削屑回収装置12の構成例を示した図である。切削屑回収装置12は、高圧水による切削により発生した切削屑を受け入れる容器として切削屑回収ホッパー60を備える。
【0035】
切削屑回収装置12は、切削屑回収ホッパー60内に配置され、収容された切削屑を一定の方向へ推進させるための高圧流体を噴射する噴射手段として、ジェット水ノズル61を備える。ここでは、高圧流体として高圧水であるジェット水を用いているが、高圧流体は、高圧空気等であってもよい。
【0036】
切削屑回収ホッパー60には、トンネル軸方向の端部にノズル62が設けられ、ノズル62には、吸引ホース63等の管が接続される。切削屑回収ホッパー60には、切削屑と水とを含むスラリーが回収される。切削屑回収ホッパー60内のスラリーは、ジェット水ノズル61によりジェット水が噴射され、ノズル62へ向けて推進される。ジェット水は、給水装置14からジェット水ノズル61へ供給される。
【0037】
切削屑回収装置12は、トンネル坑外やトンネル坑内の切削場所から離れた安全な場所に設置され、吸引ホース63と接続される回収タンク64と、分離装置65と、吸引手段としてバキュームポンプ66とを備える。バキュームポンプ66は、回収タンク64内を減圧し、吸引ホース63を介して切削屑回収ホッパー60から回収タンク64へスラリーを吸引することにより輸送する。分離装置65は、回収タンク64に回収されたスラリーを、篩等を使用して固形分と液分に分離する。固形分は、主に粒状の切削屑であり、液分は、粉状の切削屑等が混じった濁水である。固形分は、ずりとして回収される。液分は、濁水として濁水処理装置13へ送られる。
【0038】
切削屑回収ホッパー60内に回収されたスラリーは、切削した覆工コンクリートの破片といった粒径の大きいものが含まれており、ジェット水での推進のみでは、吸引ホース63内へ送り出すことはできるが、吸引ホース63が長くなると、吸引ホース63内で詰まりが生じる可能性がある。一方、バキュームポンプ66で吸引するのみでは、切削屑回収ホッパー60内の粒径の大きい破片を吸引することは難しく、切削屑回収ホッパー60内に粒径の大きいものが残り、蓄積されていく結果となる。これらのことから、ジェット水での推進と、バキュームポンプ66での吸引とが併用される。
【0039】
図8は、切削屑回収ホッパー60の詳細な構成を示した図である。図8(a)は正面図を示し、図8(b)は平面図を示し、図8(c)は側面図を示す。切削屑回収ホッパー60は、頂部に開口70を有し、頂部から底部へ向けて縮小する断面を有する。断面形状は、略逆三角形である。開口70は、トンネル軸方向に長く、その長さは、切削装置10のトンネル軸方向への長さとほぼ同じ長さとされ、切削屑を適切に回収できる長さとされている。切削屑回収ホッパー60は、トンネル軸方向の両端にノズル71、72を有する。ノズル71、72は、底部に近隣した位置に取り付けられる。
【0040】
開口70上には、大きな切削屑が切削屑回収ホッパー60内に入らないように、グレーチング73のような硬質の格子状の構造材が設置される。大きな切削屑は、ジェット水とバキューム吸引で回収できなくなる可能性があるからである。なお、大きな切削屑が発生しない場合、グレーチング73は設置していなくてもよい。
【0041】
ジェット水ノズル61は、移動式とされ、噴射口74、管75、バルブ76を含む。管75は、例えばノズル72側からバルブ76を介してノズル71側へ向けてトンネル軸方向へと延び、ノズル71側手前で切削屑回収ホッパー60の底部へ向けて延び、噴射口74がノズル72側へ向けて配置されている。
【0042】
ジェット水は、バルブ76により水量が調整され、噴射口74から噴射される。このため、切削屑回収ホッパー60内に回収されたスラリーは、ジェット水によりノズル72側へと推進される。スラリーは、ノズル72に接続された吸引ホース63を介してトンネル坑外へ輸送される。
【0043】
ジェット水ノズル61は、移動式であることから、切削屑回収ホッパー60内で噴射口74の長手方向の位置を適宜変えられるようになっている。管75は、図8(c)に示すように、切削屑回収ホッパー60の両端に頂部から底部へ向けて延びる切欠部77を支点としてスライド可能に支持される。このため、切欠部77上を、管75をスライドさせることにより、噴射口74の長手方向の位置を変更することができる。
【0044】
トンネルは、入口と出口を有し、入口側にノズル72が向き、出口側にノズル71が向いている場合、現在の位置が入口側に近ければ、吸引ホース63をノズル72に接続し、現在の位置が出口側に近ければ、吸引ホース63をノズル71に接続して、切削屑回収ホッパー60に回収したスラリーをトンネル坑外へ輸送することができる。
【0045】
切削屑回収ホッパー60は、底部に車輪78が設けられ、トンネル軸方向へ移動可能とされる。これにより、切削装置10のトンネル軸方向への移動とともに切削屑回収ホッパー60を移動させることができる。
【0046】
図9は、切削屑回収ホッパー60の配置例を示した図である。切削屑回収ホッパー60は、トンネル内壁面の下部に設置され、プロテクタ11との間には、波板等の回収板79が地面に対して斜めに設置される。トンネル内壁面を構築する既設の覆工コンクリート100は、切削装置10のWJ噴流ノズル34から噴射される高圧水により切削され、切削屑101や水102が下方へ落下する。切削屑101等が落下する位置は、切削した位置の真下だけに限らず、プロテクタ11の外壁面へと飛散する場合もある。
【0047】
切削屑回収ホッパー60とプロテクタ11との間にも隙間があり、プロテクタ11の外壁面へ向けて飛散した切削屑101等は、切削屑回収ホッパー60内へ回収できない。そこで、回収板79を切削屑回収ホッパー60とプロテクタ11とを橋渡すように地面に対して斜めに架け、回収板79上に落下した切削屑101が滑り落ちて適切に切削屑回収ホッパー60内へ回収されるようにしている。
【0048】
なお、プロテクタ11の上面に対しては、切削屑101等が、住宅の屋根のようにプロテクタ11の両側へ滑り落ちるように回収板79を設置することができる。
【0049】
図10は、濁水処理装置13の構成例を示した図である。濁水処理装置13は、前処理装置80、原水槽81、第1反応器82、第2反応器83、造粒器84、沈殿槽85、処理水槽86、放流槽87、廃棄汚泥槽88を備える。
【0050】
分離装置65により分離された濁水は、前処理装置80へ送られる。前処理装置80は、第2の分離装置として機能するスクリーン等とされる。前処理装置80は、分離装置65より細かい多数のスリットを有し、濁水中の比較的粒径の大きい粒子を除去する。粒子が除去された後の濁水は、原水槽81へ送られる。原水槽81の濁水は、第1反応器82へ送られ、ポリ塩化アルミニウム(PAC)等の無機系の凝集剤が添加される。濁水中の浮遊成分は、PACにより凝集する。第2反応器83は、炭酸ガスを供給してpHを調整する。第2反応器83を出た液は、高分子凝集剤が添加される。
【0051】
造粒器84は、凝集物から一定の大きさの塊であるフロックを形成し、沈殿槽85においてフロックが沈殿する。沈殿槽85の上澄み液は、処理水槽86へ送られ、沈殿物は、廃棄汚泥として廃棄汚泥槽88へ送られる。処理水槽86の水は、放流槽87へ送られ、水質を確認後、河川等へ放流し、一部が原水槽81へ戻される。
【0052】
図11は、切削施工の流れを例示したフローチャートである。切削施工(ウォータージェット施工)は、ステップ100の施工準備から開始する。ステップ101では、施工準備として、切削装置10の組立、足場組立、付帯設備の設置を行う。
【0053】
切削装置10は、現地にて組み立てる。切削装置10は、プロテクタ11の上面に設置する天端部材と、プロテクタ11の側方の側部部材とから構成され、先に、天端部材を組み立て、その後、チェーンブロック等を使用して、側部部材を組み立てる。側部部材の組立とともに足場の組立も行う。
【0054】
ステップ102では、組み立てた足場を使用し、WJ噴流ノズル34を搭載したXY移動装置33を設置する。XY移動装置33は、プロテクタ11の両側方にそれぞれ1台ずつ設置される。例えば、一方の側方を左側、他方の側方を右側とすると、左右に1台ずつ設置される。ここでは、左右に1台ずつとしたが、これに限られるものではなく、左右に2台以上ずつ設置してもよい。また、WJ噴流ノズル34と高圧水発生装置15とを給水管により接続し、高圧水の供給が可能な状態にする。
【0055】
ステップ103では、切削位置を調整し、切削を開始する。WJ噴流ノズル34の衝突点の調整、水圧の調整を行い、切削を開始する。切削は、左右同時とし、水圧を管理しながら実施される。XY移動装置33は、遠隔地に設置した操作盤により運転することができる。高圧水による切削は、最大深さが100mm程度であるため、100mm以上の切削が必要な箇所については、XY移動装置33を2回以上稼働させる。
【0056】
ステップ104では、切削屑を切削屑回収装置12により回収する。切削屑は、切削屑回収装置12の切削屑回収ホッパー60にて回収し、ジェット水ノズル61およびバキュームポンプ66によりトンネル坑外の回収タンク64へ輸送する。
【0057】
ステップ105では、切削および切削屑の回収を実施した後、次の切削箇所があるか確認する。ある場合、ステップ106へ進み、XY移動装置33をトンネル軸方向へ移動させ、次の切削箇所に設置する。次の切削箇所は、トンネル軸方向へ2m程度移動した箇所とすることができる。XY移動装置33のトンネル軸方向への移動は、プロテクタ11の上面に設置されたレール上を、切削装置10全体を移動させることにより実施される。このとき、切削屑回収ホッパー60もトンネル軸方向へ移動させる。そして、ステップ103へ戻る。
【0058】
ステップ105で、次の切削箇所がない場合、ステップ107へ進み、施工を終了する。
【0059】
図12は、切削屑回収の流れを例示したフローチャートであり、図11のステップ104の詳細な処理の流れを示している。ステップ200では、切削屑を切削屑回収ホッパー60に受け入れる。覆工コンクリート100は、ジェット水により切削されるため、切削屑とともに水も回収される。切削屑回収ホッパー60内は、切削屑と水とを含むスラリーとして存在する。
【0060】
ステップ201では、切削屑回収ホッパー60内のスラリーは、吸引ホース63が接続されたノズル側へジェット水で押し込み、推進させる。ステップ202では、スラリーをバキュームポンプ66で吸引し、回収タンク64へ向けて輸送する。ここでは、ジェット水で推進させる工程に続いて、バキュームポンプ66で吸引する工程を実施するように記載しているが、これらの工程は同時に実施してもよい。
【0061】
ステップ203では、バキュームポンプ66で吸引されたスラリーは、回収タンク64へ回収される。ステップ204では、回収タンク64で回収されたスラリーを、分離装置65により固形分と液分とに分離する。固形分は、主に切削屑であり、液分は、濁水である。ステップ205で、分離した濁水を濁水処理装置13へ輸送する。その後、濁水処理装置13で濁水が処理される。
【0062】
以上に説明してきたように、ウォータージェットにより切削することで、無振動で、かつ鉄筋が損傷することなく切削することができ、粉塵の発生もなくすことができる。また、トンネル坑外の安全な場所まで吸引ホースで輸送するため、トンネル内で一般車両と搬出車両の錯綜を回避し、安全性を向上させることができる。
【0063】
切削屑回収ホッパー60と飛散防止カバー35によりプロテクタ11内に漏水が発生しないため、一般車両の通行の安全性を向上させることができる。また、プロテクタ11と既設の覆工コンクリートとの間の狭隘な空間に付帯設備を設置しないことで、作業性および安全性を向上させることができる。
【0064】
これまで本発明の切削屑回収装置、切削施工システム、切削屑回収方法および切削施工方法について図面に示した実施形態を参照しながら詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0065】
10…切削装置
11…プロテクタ
12…切削屑回収装置
13…濁水処理装置
14…給水装置
15…高圧水発生装置
20…一般車両通行帯
21…車輪
22…レールフレーム
30…台車フレーム
31…桁部材
32…XYフレーム固定部材
33…XY移動装置
34…WJ噴流ノズル
40…支持部材
41、42…ノズル
50、51…レール部材
52…棒状部材
53…ノズル支持部材
60…切削屑回収ホッパー
61…ジェット水ノズル
62…ノズル
63…吸引ホース
64…回収タンク
65…分離装置
66…バキュームポンプ
70…開口
71、72…ノズル
73…グレーチング
74…噴射口
75…管
76…バルブ
77…切欠部
78…車輪
79…回収板
80…給水槽
81…供給ポンプ
82…前処理装置
83…原水槽
84…第1反応器
85…第2反応器
86…造粒器
87…沈殿槽
88…処理水槽
89…放流槽
90…廃棄汚泥槽
100…覆工コンクリート
101…切削屑
102…水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12