(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143918
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ミシン
(51)【国際特許分類】
D05B 55/14 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
D05B55/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056868
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100152515
【弁理士】
【氏名又は名称】稲山 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】佐野 正幸
(72)【発明者】
【氏名】深見 勇気
(72)【発明者】
【氏名】北村 春畝
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150CB01
3B150CB24
3B150CE01
3B150CE27
3B150DB02
3B150DB08
3B150GD11
3B150GG01
3B150LA02
3B150LA03
3B150LA04
3B150LB01
3B150NA02
3B150NA03
3B150NA04
3B150NB18
(57)【要約】
【課題】針棒の位置検出を、軽量且つ小型の構成により実現することが可能なミシンを提供する。
【解決手段】ミシンは、縫針30が装着される針棒31と、針棒31を駆動する駆動ユニットと、針棒31に隣接するフレーム70と、フレーム70に設けられ、針棒31の軸方向と平行な検出面7Aにコイルを有する電磁誘導方式のセンサ7と、針棒31に固定され、検出面7Aと対向する金属性の金属板を有する検出体8と、センサ7の出力情報に基づき、検出面7Aに対する検出体8の位置を示す情報を出力する出力装置とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫針が装着される針棒と、
前記針棒を駆動する駆動ユニットと、
前記針棒に隣接するフレームと、
前記フレームに設けられ、前記針棒の軸方向と平行な検出面にコイルを有する電磁誘導方式のセンサと、
前記針棒に固定され、前記検出面と対向する導電性の被検出面を有する検出体と、
前記センサの出力情報に基づき、前記検出面に対する前記検出体の位置を示す情報を出力する出力装置と
を備えたことを特徴とするミシン。
【請求項2】
前記出力装置は表示装置であり、前記針棒の位置を示す情報を表示することを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項3】
前記検出体は、
前記被検出面を支持する支持部と、
前記針棒に固定される固定具と、
前記支持部と前記固定具との間に亘って延びる延伸部と
を有することを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項4】
前記延伸部に沿って前記固定具から前記支持部に向けて延びる方向は、前記針棒を中心とした半径方向に対して上方又は下方に傾斜することを特徴とする請求項3に記載のミシン。
【請求項5】
前記検出体は、
前記延伸部から前記針棒と平行に延びるピンを有し、
前記駆動ユニットは、
前記針棒に固定される針棒抱きと、
前記針棒抱きを上下方向に移動させることにより、前記針棒抱きを介して前記針棒を上下方向に移動させる駆動部と
を有し、
前記針棒抱きは、
前記ピンが係合する係合部を有することを特徴とする請求項3に記載のミシン。
【請求項6】
前記被検出面は長方形の形状を有し、上下方向の前記被検出面の長さは、上下方向と直交する方向の前記被検出面の長さよりも短いことを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
縫針が装着される針棒の上下方向の位置を検出することが可能なミシンが提案されている。特許文献1に記載のミシンは、ラックギヤ、ピニオンギヤ、及びポテンショメータを備える。ラックギヤは、針棒に設けられる。ピニオンギヤは、ポテンショメータの回転軸に取り付けられ、且つ、ラックギヤに噛み合う。針棒が駆動することに応じてラックギヤは上下動し、ピニオンギヤは回転する。ポテンショメータは、回転軸の回転量に応じた信号をコンピュータに出力する。コンピュータは、ポテンショメータが出力した信号に基づき、針棒の位置を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ミシンによる縫製時、針棒は上下方向に高速で移動する。このため、針棒の位置を検出する為に針棒に設けられる機構は、ギヤ等の負荷が少なく軽量であることが好ましい。又、ミシン内のうち針棒の近傍には、他の機構部品が多数配置されている。このため、針棒の位置を検出する為に針棒に設けられる機構は、他の機構部品と接触しないように小さいことが好ましい。
【0005】
本発明の目的は、針棒の位置検出を、軽量且つ小型の構成により実現することが可能なミシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るミシンは、縫針が装着される針棒と、前記針棒を駆動する駆動ユニットと、前記針棒に隣接するフレームと、前記フレームに設けられ、前記針棒の軸方向と平行な検出面にコイルを有する電磁誘導方式のセンサと、前記針棒に固定され、前記検出面と対向する導電性の被検出面を有する検出体と、前記センサの出力情報に基づき、前記検出面に対する前記検出体の位置を示す情報を出力する出力装置とを備えたことを特徴とする。
【0007】
ミシンは、針棒に固定された検出体の被検出面をセンサにより検出することで、針棒の上下方向の位置を検出する。ミシンは、電磁誘導式のセンサを用いることにより、検出対象となる被検出面を含む検出体を軽量且つ小型化できる。従って、ミシンは、針棒の駆動に過大な負荷をかけずに針棒の位置を検出できる。又、ミシンは、針棒近傍の他の機構部品に検出体が干渉することを防止できる。
【0008】
本発明において、前記出力装置は表示装置であり、前記針棒の位置を示す情報を表示してもよい。この場合、ミシンのユーザは、表示装置に表示された情報に基づき、針棒の位置を認識できる。
【0009】
本発明において、前記検出体は、前記被検出面を支持する支持部と、前記針棒に固定される固定具と、前記支持部と前記固定具との間に亘って延びる延伸部とを有してもよい。この場合、検出体は、針棒から離隔した位置に設けられるセンサの検出面に被検出面を近接させることができるので、センサによる被検出面の検出精度を高めることができる。
【0010】
本発明において、前記延伸部に沿って前記固定具から前記支持部に向けて延びる方向は、前記針棒を中心とした半径方向に対して上方又は下方に傾斜してもよい。ミシンは、センサに対して上方又は下方に他の機構部品が配置されている場合でも、検出体が他の機構部品に干渉することを防止できる。
【0011】
本発明において、前記検出体は、前記延伸部から前記針棒と平行に延びるピンを有し、前記駆動ユニットは、前記針棒に固定される針棒抱きと、前記針棒抱きを上下方向に移動させることにより、前記針棒抱きを介して前記針棒を上下方向に移動させる駆動部とを有し、前記針棒抱きは、前記ピンが係合する係合部を有してもよい。針棒に対する検出体の位置を安定化し、センサに対して被検出面の位置がずれることを防止できる。従ってミシンは、センサによる被検出面の検出精度を良好な状態で維持できる。
【0012】
本発明において、前記被検出面は長方形の形状を有し、上下方向の前記被検出面の長さは、上下方向と直交する方向の前記被検出面の長さよりも短くてもよい。センサにより検出される被検出面の上下方向の位置の分解能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】針棒31、駆動ユニット5、センサ7、及び検出体8を示す斜視図である。
【
図3】針棒31、センサ7、及び検出体8を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第一実施形態に係るミシン1について、図面を参照して説明する。以下説明では、図中に矢印で示す左右、前後、上下を使用する。
【0015】
<ミシン1の概要>
ミシン1は、被縫製物に対する縫製が可能な門型のミシンである。
図1に示すように、ミシン1は、ベッド部21、一対の脚柱部22、梁部23、頭部24、送り機構25、保持機構26、及び操作部27を有する。
【0016】
ベッド部21は、基部21A及び枠体21Bを有する。基部21Aは略矩形状である。基部21Aの上面は、水平に延びる平らな保持面21Uを形成する。基部21Aの前端部に、保持面21Uに沿って前方に延びる保持板21Pが設けられる。保持面21Uの左端部近傍に開口部210Lが形成され、前後方向に延びる蛇腹21Lが開口部210Lを覆う。保持面21Uの右端部近傍に開口部210Rが形成され、前後方向に延びる蛇腹21Rが開口部210Rを覆う。蛇腹21L、21Rは、それぞれ、保持面21Uの前端部と後端部の間に亘って直線状に延びる。蛇腹21L、21Rは、後述する送り機構25が前後方向に往復移動することに応じ、伸縮する。枠体21Bは格子状の構造体であり、基部21Aを下方から支持する。
【0017】
一対の脚柱部22は、脚柱部22L、22Rを有する。脚柱部22L、22Rは、それぞれ、略四角柱状である。脚柱部22Lは、ベッド部21の基部21Aの左端部且つ前後方向中央よりも前方の位置から、上方に延びる。脚柱部22Lは、左右方向において蛇腹21Lよりも左側に位置する。脚柱部22Rは、ベッド部21の基部21Aの右端部且つ前後方向中央よりも前方の位置から、上方に延びる。脚柱部22Rは、左右方向において蛇腹21Rよりも右側に位置する。脚柱部22L、22Rは、左右方向に離隔する。
【0018】
梁部23は、脚柱部22L、22Rの夫々の間に架設する。梁部23は、一対の脚柱部22の間に亘って左右方向に延びる。梁部23は、筐体23Uを有する。筐体23Uは、脚柱部22L、22Rの夫々の上端部と後端部の間に亘って延びる。脚柱部22L、22R、筐体23Uで囲まれた空間に、非図示のレールが設けられる。レールは棒状を有し、脚柱部22L、22R間に架設される。レールは、後述する頭部24を左右方向に移動可能に支持する。蛇腹23Fは、脚柱部22L、22R、筐体23Uのそれぞれの前端部、及び、後述の頭部24の左右両端部に亘って設けられる。蛇腹23Fは、頭部24を支持するレールを前側から覆う。蛇腹23Fは、頭部24がレールに沿って左右方向に往復移動することに応じ、伸縮する。
【0019】
頭部24は、梁部23に対して前側に設けられる。頭部24は、針棒31、押え足32、天秤33、糸調子装置34、副糸調子器35、糸案内36、37等を備える。針棒31は上下方向に延び、下端部に縫針30(
図2参照)を装着可能である。押え足32は、針棒31の移動に応じて縫針30が通過する貫通穴を有し、被縫製物を上側から押える。天秤33は、針棒31の上下方向への移動に応じて動作し、上糸を引き上げる。糸調子装置34は、上糸の張力を調整する。副糸調子器35は、非図示の糸駒から延びる上糸に巻き付き、下方の糸調子装置34に向けて上糸を誘導する。糸案内36、37は、それぞれ、糸調子装置34から延びる上糸に接触し、天秤33に向けて上糸を誘導する。
【0020】
梁部23内のレールは、頭部24を左右方向に移動可能に支持する。従って頭部24は、梁部23の前端部に沿って左右方向に移動可能である。頭部24の下方且つ基部21Aの内部に、非図示の釜機構が設けられる。釜機構は、針棒31の下方への移動時に縫針が通過する針穴を設けた針板を有する。釜機構は、頭部24と同期して左右方向に移動可能である。
【0021】
送り機構25は、連結部25L、25Rを有する。連結部25Lは、ベッド部21の開口部210Lに配置されたレールに連結する。連結部25Rは、ベッド部21の開口部210Rに配置されたレールに連結する。連結部25L、25Rは、保持機構26と連結する。保持機構26は、被縫製物を保持する。保持機構26は、非図示の上枠、下枠261、エアシリンダ262L、262Rを有する。上枠と下枠261は、平面視矩形状の枠であり、間に被縫製物を挟持する。上枠は、エアシリンダ262L、262Rにより上下に移動する。
図1において、上枠はエアシリンダ262L、262Rから取り外されている。送り機構25は、被縫製物を保持した保持機構26を前後方向に移動させる。
【0022】
操作部27は、梁部23の左端部の前面に固定される。操作部27は、スイッチ群27A、及び表示部27Bを備える。スイッチ群27Aは、作業者の操作に応じて各種指示が入力される。表示部27Bは液晶ディスプレイであり、各種画像を表示できる。
【0023】
<駆動ユニット5>
駆動ユニット5は、頭部24内に収容され、針棒31を駆動する。
図2に示すように、駆動ユニット5は、上軸50、回転ツマミ51、プーリ52、釣合錘53、クランク54、ロッド56、57、及び針棒受け4を有する。
【0024】
上軸50は円柱状を有し、左右方向に延びる。回転ツマミ51は、上軸50の右端部に固定される。回転ツマミ51は、作業者が手動で針棒31を上下方向に移動させる場合に回転操作される。プーリ52は、上軸50のうち回転ツマミ51の左方に固定される。プーリ52の側面にギヤ52Aが形成される。非図示のモータの回転軸とプーリ52との間に、非図示のベルトが架け渡される。プーリ52は、モータの駆動に応じて回転するベルトから回転駆動力を受け、上軸50を回転させる。
【0025】
釣合錘53は、上軸50のうちプーリ52の左方に固定される。釣合錘53は、上軸50の回転時に発生する振動を抑制する。クランク54は、上軸50のうち釣合錘53の左方に固定される。クランク54のうち、上軸50の回転中心を基準とした径方向において上軸50から離隔した位置に、左方に延びる第1支軸(非図示)が固定される。ロッド56の下端部は、第1支軸に回転可能に支持される。ロッド56は、第1支軸に支持された部分から上方に延びる。ロッド56の上端部に天秤33が固定される。天秤33は、ロッド56の上端部から前斜め上方に延びる。
【0026】
天秤33の後方に、天秤受け55が設けられる。天秤受け55は、左右方向に延びる回転軸55A、及び、回転軸55Aから前方に延びるクランク55Bを有する。クランク55Bの前端部は、ロッド56の上端部に連結する。クランク55Bは、ロッド56に対して回転可能である。天秤受け55は、天秤33が上下方向に移動する場合の速度を制御する。
【0027】
非図示のモータの駆動に応じて上軸50が回転した場合、ロッド56の上端部は上下方向に移動する。このため、ロッド56の上端部に固定された天秤33も、上軸50の回転に応じて上下方向に移動する。
【0028】
ロッド56の下端部の左面に、第1支軸を中心とした径方向において第1支軸から離隔する方向に延びる連結板56Aが固定される。連結板56Aのうち第1支軸の側と反対側の端部に、左方に延びる第2支軸(非図示)が固定される。ロッド57の一端部は、第2支軸に回転可能に支持される。ロッド57の他端部は、後述する針棒抱き4の第3支軸4B(
図4参照)を回転可能に支持する。
【0029】
図4に示すように、針棒抱き4は、固定具4A、第3支軸4B、及び係合部4Cを有する。固定具4Aには、上下方向に貫通する貫通孔41が形成される。貫通孔41に針棒31(
図3参照)が挿通される。固定具4Aの前面にスリット42が形成される。スリット42は後方に延び、貫通孔41に連通する。スリット42は、固定具4Aのうち貫通孔41よりも前方の部分を左右方向に2分する。固定具4Aのうち貫通孔41よりも前方の部分であってスリット42により2分されたそれぞれの部分に、左右方向に貫通する貫通孔43が形成される。貫通孔43は一直線状に延びる。貫通孔43の内面にねじ山が形成される。
【0030】
第3支軸4Bは、固定具4Aの右面から右方に延びる。第3支軸4Bは円筒状を有する。第3支軸4Bは、ロッド57の他端部(
図2参照)により回転可能に支持される。係合部4Cは、固定具4Aの左面に形成される。係合部4Cは、左方に突出する突出部44A、44Bを有する。突出部44A、44Bは、前後方向に離隔する。係合部4Cのうち突出部44A、44B間の隙間44に、後述する検出体8のピン8D(
図4参照)が係合する。
【0031】
図3に示すように、固定具4Aの貫通孔41(
図4参照)に針棒31が挿通される。貫通孔43にねじ40が螺合される。ねじ40の螺合により、固定具4Aのスリット42の間隔は小さくなり、貫通孔41の径は小さくなる。このとき、固定具4Aが針棒31に密着して上下方向の移動が規制されることにより、針棒抱き4は針棒31に固定される。又、針棒抱き4の第3支軸4Bは右方に延び、ロッド57の他端部に回転可能に支持される(
図2参照)。
【0032】
非図示のモータの駆動に応じて上軸50が回転した場合、ロッド57の他端部は上下動する。このとき、ロッド57の他端部に回転可能に支持された第3支軸3Bを有する針棒抱き4も、上下動する。このため、針棒抱き4が固定された針棒31も、上軸50の回転に応じて上下方向に移動する。
【0033】
<検出体8>
検出体8は、針棒31の上下方向の位置をセンサ7により検出する為に設けられる。
図5に示すように、検出体8は、固定具8A、延伸部8B、支持部8C、及びピン8Dを有する。
【0034】
固定具8Aには、上下方向に貫通する貫通孔81が形成される。貫通孔81に針棒31が挿通される。固定具8Aの前面にスリット82が形成される。スリット82は後方に延び、貫通孔81に連通する。スリット82は、固定具8Aのうち貫通孔81よりも前方の部分を左右方向に2分する。固定具8Aのうち貫通孔81よりも前方の部分であってスリット82により2分されたそれぞれの部分に、左右方向に貫通する貫通孔83が形成される。貫通孔83は一直線状に延びる。貫通孔83の内面にねじ山が形成される。
【0035】
固定具8Aの左面に延伸部8Bが設けられる。延伸部8Bは、第1延伸部86A及び第2延伸部86Bを有する。第1延伸部86Aは、固定具8Aの左面から左方に延びる。第2延伸部86Bは、第1延伸部86Aの左端から左斜め上方に延びる。
【0036】
支持部8Cは、第2延伸部86Bの上端部に設けられる。支持部8Cは板状であり、左右方向と直交する。支持部8Cを左方から視た場合の形状は、前後方向に長い長方形である。支持部8Cの右面且つ前後方向の中央に、第2延伸部86Bの上端部が接続する。支持部8Cは、固定具8Aに対して左方且つ上方に離隔する。
【0037】
支持部8Cの左面に、金属製の金属板85が設けられる。金属板85の形状は、支持部8Cの左面の形状と同じ長方形であり、支持部8Cの左面の全域を覆う。金属板85の上下方向の長さは、前後方向の長さよりも短い。金属板85の左面を、「被検出面85A」という。金属板85は、固定具8Aに対して左方且つ上方に離隔した位置で、支持部8Cにより支持される。
【0038】
延伸部8Bの第1延伸部86Aの下面に、ピン8Dが接続される。ピン8Dは円柱状を有し、第1延伸部86Aの下面から下方に延びる。
【0039】
図3に示すように、固定具8Aの貫通孔81(
図5参照)に針棒31が挿通される。固定具8Aは、針棒抱き4の固定具4Aの上方に配置される。貫通孔83にねじ80が螺合される。ねじ80の螺合により、固定具8Aのスリット82の間隔は小さくなり、貫通孔81の径は小さくなる。このとき、固定具8Aが針棒31に密着して上下方向の移動が規制されることにより、検出体8は針棒31に固定される。又、検出体8のピン8Dは、延伸部8B(
図5参照)から下方に延び、針棒抱き4の係合部4Cの隙間44(
図4参照)に上方から進入する。これにより、ピン8Dの下端部は、係合部4Cに係合する。
【0040】
非図示のモータの駆動に応じ、駆動ユニット5により針棒31が上下方向に移動した場合、針棒31及び針棒抱き4に固定された検出体8も、針棒31の移動に併せて上下方向に移動する。
【0041】
<センサ7>
図2、
図3に示すように、針棒31の左方にフレーム70が隣接する。フレーム70は、頭部24(
図1参照)内に収容される。フレーム70は、上下方向に長い板状を有し、左右方向と直交する。フレーム70の右面に、基板71が固定される。フレーム70と基板71との間に複数のスペーサ72が介在する。基板71は、フレーム70に対して右方に離隔する。
【0042】
基板71の右面に、センサ7が設けられる。センサ7は、電磁誘導型の近接センサである。センサ7の形状は、右方から視た状態で、上下方向に長い長方形である。センサ7の右面を、検出面7Aという。検出面7Aは、左右方向と直交し、上下方向及び前後方向と平行に延びる。検出面7Aには、近接する金属を検出するためのコイルが複数設けられる。検出面7Aの一部は、検出体8の金属板85の被検出面85Aの左方に対向する。検出面7Aと金属板85の被検出面85Aとは左右方向に離隔する。
【0043】
検出面7Aの下端は、上下方向において、針棒31が最も下方に移動した場合における検出体8の金属板85の被検出面85Aの下端よりも下方に位置する。検出面7Aの上端は、上下方向において、針棒31が最も上方に移動した場合における検出体8の金属板85の被検出面85Aの上端よりも上方に位置する。検出面7Aの前後方向の長さは、金属板85の被検出面85Aの前後方向の長さよりも短い。前後方向において、検出面7Aの前後方向の中心位置と、金属板85の被検出面85Aの前後方向の中心位置とは一致する。
【0044】
<動作説明>
センサ7は、針棒31の駆動に応じて上下方向に移動する検出体8の金属板85の被検出面85Aの上下方向の位置を、検出面7Aに設けられた複数のコイルにより検出する。センサ7は、検出した金属板85の被検出面85Aの上下方向の位置を示す出力情報を、非図示の制御部に出力する。
【0045】
制御部は、センサ7から出力された出力情報に基づき、検出面7Aに対する金属板85の被検出面85Aの上下方向の位置を特定する。制御部は、特定した金属板85の被検出面85Aの上下方向の位置に基づき、針棒31の位置を示す位置情報を更に特定する。例えば位置情報は、針棒31が最も下方に移動した位置を基準位置とした針棒31の相対位置を示す。制御部は操作部27を制御し、特定した位置情報を表示部27Bに表示させる。
【0046】
<本実施形態の作用、効果>
ミシン1は、針棒31に固定された検出体8の金属板85の被検出面85Aをセンサ7により検出することで、針棒31の上下方向の位置を検出する。ミシン1は、電磁誘導式のセンサ7を用いることにより、検出対象となる金属板85を含む検出体8を軽量且つ小型化できる。針棒31周辺は潤滑や冷却目的でオイルが用いられており、センサ7や検出体8においてもオイルに曝される虞がある。しかし、センサ7は電磁誘導式であるため、オイルに曝されても検出精度への影響は無い。よって、オイルが付着することを防止する対策部品等をセンサ7や検出体8に付加する必要が無い。従って、ミシン1は、針棒31の駆動に過大な負荷をかけずに針棒31の位置を検出できる。又、ミシン1は、針棒31近傍の他の機構部品に検出体8が干渉することを防止できる。
【0047】
ミシン1は、センサ7による検出結果に基づき、針棒31の位置情報を表示部27Bに表示させる。このためミシン1のユーザは、表示部27Bに表示された位置情報に基づき、針棒31の上下方向の位置を認識できる。
【0048】
検出体8は、針棒31に固定される固定具4A、金属板85を支持する支持部8C、及び、固定具8Aと支持部8Cとの間に亘って延びる延伸部8Bを有する。この場合、検出体8は、針棒31から離隔した位置に設けられるセンサ7の検出面7Aに金属板85の被検出面85Aを近接させることができるので、センサ7による金属板85の被検出面85Aの検出精度を高めることができる。
【0049】
検出体8の延伸部8Bは、針棒31の側からセンサ7の側に向けて、左斜め上方に延びる。延伸部8Bの延びる方向は、針棒31を中心とした半径方向に対して上方に傾斜する。この場合、ミシン1は、センサ7の下方に他の機構部品が配置されている場合でも、検出体8が他の機構部品に干渉することを防止できる。
【0050】
検出体8のピン8Dは、針棒抱き4の係合部4Cに係合する。このため、針棒31に対する検出体8の位置は、ピン8Dが針棒抱き4の係合部4Cに係合しない場合と比べて安定化する。このためミシン1は、センサ7に対して金属板85の位置がずれることを防止できる。従ってミシン1は、センサ7による金属板85の被検出面85Aの検出精度を良好な状態で維持できる。
【0051】
金属板85の被検出面85Aの上下方向の長さは、前後方向の長さよりも短い。このためミシン1は、センサ7により検出される金属板85の被検出面85Aの上下方向の位置の分解能を高めることができる。
【0052】
<変形例>
本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。本発明は、上記実施形態におけるミシン1に適用される場合に限定されず、他の種類のミシン(家庭用ミシン、刺繍ミシン、工業用ミシン、多針ミシン等)にも適用可能である。
【0053】
ミシン1の操作部27の表示部27Bに表示される位置情報は、上記実施形態に限定されない。例えば、位置情報により示される針棒31の基準位置は、針棒31が最も上方に移動した位置であってもよいし、針棒31の上下方向の移動範囲における中央の位置であってもよい。
【0054】
針棒31の位置情報は、上軸50を駆動するモータに設けられたエンコーダから出力されるモータの回転位置と関連付けて表示部27Bに表示されてもよい。例えば制御部は、ミシン1の出荷時において、針棒31が最も下方に位置した状態におけるエンコーダの値を、非図示の記憶部に記憶してもよい。制御部は、記憶部に記憶したエンコーダの値に基づいて特定した針棒31の位置と、センサ7の出力情報に基づいて特定した針棒31の位置との差分を算出し、表示部27Bに表示してもよい。更に制御部は、記憶部に記憶されたエンコーダの値を、センサ7の出力情報に基づいて特定した針棒31の位置に応じて修正してもよい。具体的には、制御部は、センサ7の出力情報に基づき、針棒31が最も下方に移動したと判断した場合におけるエンコーダの値を取得し、記憶部に記憶してもよい。
【0055】
ミシン1の制御部は、縫製動作が実行されている状態で針棒31の位置情報を表示部27Bに表示させてもよいし、ユーザが回転ツマミ51を操作して針棒31を手動で上下方向に移動させている場合にも、針棒31の位置情報を表示部27Bに表示させてもよい。
【0056】
検出体8の左面に金属板85が直接設けられてもよい。この場合、検出体8に延伸部8Bは設けられなくてもよい。検出体8は、針棒31の一部として設けられてもよい。例えば針棒31は、センサ7に向けて枝状に分岐する分岐部を有してもよい。分岐部の先端に金属板85が設けられていてもよい。
【0057】
検出体8の延伸部8Bは、針棒31の側からセンサ7に向けて、左斜め下方に延びてもよいし、水平に延びてもよい。延伸部8Bは、直線状に延びる場合に限定されず、屈曲していてもよい。
【0058】
検出体8は、針棒抱き4と一体に形成されてもよい。例えば検出体8は、針棒抱き4の固定具4Aに設けられる延伸部8B及び支持部8Cにより構成されてもよい。針棒抱き4にピンが設けられてもよい。検出体8は、針棒抱き4のピンに係合する係合部を有してもよい。この場合、検出体8は、針棒抱き4の係合部4Cに係合するピン8Dを有さなくてもよい。
【0059】
金属板85の被検出面85Aの形状は、前後方向に長い長方形に限定されず、上下方向に長い長方形でもよいし、正方形、円形等でもよい。金属板85を鉄などの磁性金属で構成すれば、センサ7による検出可能距離を大きく出来る。このため、センサ7に対する金属板85のレイアウト上の自由度を上げやすい。金属板85の被検出面85Aは、上記実施形態のようにセンサ7の検出面7Aに平行な平面である方が、上下方向の安定した検出精度を良好にできる。しかし、金属板85の被検出面85Aは、センサ7の検出面7Aと平行である場合に限定されず、検出目的に応じて、傾斜面や曲面、凹凸を有する形状であってもよい。また、金属板85に替えて、金属薄膜や金属棒、金属球のような板形状で無いものを用いても良い。更に、金属板85に替えて、カーボンファイバーや炭素繊維強化プラスチックなどの導電性の非金属材料により被検出面が形成された部材であっても良い。
【0060】
<その他>
表示部27Bは、本発明の「出力装置」の一例である。
【符号の説明】
【0061】
1 :ミシン
4 :針棒受け
4C :係合部
5 :駆動ユニット
7 :センサ
7A :検出面
8 :検出体
8A :固定具
8B :延伸部
8C :支持部
8D :ピン
27B :表示部
30 :縫針
31 :針棒
70 :フレーム
85 :金属板
85A :被検出面