(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143920
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 29/13 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
B41J29/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056871
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100152515
【弁理士】
【氏名又は名称】稲山 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】原田 高歩
【テーマコード(参考)】
2C061
【Fターム(参考)】
2C061AP10
2C061AQ04
2C061AS06
2C061BB02
2C061BB19
2C061BB22
2C061BB35
2C061CD01
2C061CF06
2C061CF07
2C061DD01
2C061HV01
(57)【要約】
【課題】筐体に設けられた開口部を介して筐体内に液体が浸入することを、容易且つ適切に防止できるプリンタを提供する。
【解決手段】プリンタは、ヘッド39と、ヘッドが設けられる内部空間Kを覆う上壁22U、左側壁22L、右側壁22R、左下壁22S、右下壁22Tを含む筐体2と、筐体2の第1開口23を覆うカバー6とを備える。カバー6は、底板61と、底板61のうち左下壁22S、右下壁22Tと上下方向に重なる部分に少なくとも設けられ、左下壁22S、右下壁22Tと接触するシール部材62と、左下壁22S、右下壁22Tに底板61を押圧する押圧部材64L、64Rと、押圧部材64L、64Rの位置を切り替える切替部材651L、652L、651R、652Rとを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドと、
前記ヘッドが設けられる内部空間を覆う複数の壁であって、
上方から前記内部空間を覆う上壁、
上下方向と直交する第1方向の一方の側から前記内部空間を覆う第1側壁、
前記第1方向の他方の側から前記内部空間を覆う第2側壁、
下方から前記内部空間を覆う下壁であって、前記第1側壁の下端から前記第2側壁の下端に向けて延びる第1下壁、及び、前記第2側壁の下端から前記第1側壁の下端に向けて延びる第2下壁を有し、前記第1下壁と前記第2下壁のそれぞれの先端の間に第1開口が形成された前記下壁を含む前記複数の壁を備えた筐体と、
前記筐体の前記下壁に着脱可能であり、前記第1開口を覆うカバーと
を備えたプリンタであって、
前記カバーは、
底板と、
前記底板のうち前記下壁と前記上下方向に重なる部分に少なくとも設けられ、前記下壁と接触するシール部材と、
前記下壁に前記底板を押圧する第1位置と、前記下壁に前記底板を押圧しない第2位置とに移動可能な押圧部材と、
前記押圧部材の位置を、前記第1位置と前記第2位置との間で切り替える第1切替部材と
を備えたことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記第1切替部材は、偏心カムと、前記偏心カムを回転させるレバーとを備えたことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記レバーは、前記内部空間に配置されることを特徴とする請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記カバーは、
前記筐体に対して前記底板が装着される過程で前記第1下壁及び前記第2下壁のそれぞれをガイドする第1ガイド部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記上壁、前記第1側壁、前記第2側壁、及び下壁のそれぞれの、前記上下方向及び前記第1方向と直交する第2方向の一方側は閉塞され、
前記筐体は、
前記上壁、前記第1側壁、前記第2側壁、及び下壁のそれぞれの前記第2方向の他方の側の端部を含む開口端により囲まれた第2開口を有し、
前記筐体に着脱可能なカセットを更に備え、
前記カセットは、
前記筐体に装着された状態で前記第2開口を覆うベース板と、
前記ベース板のうち前記開口端と対向する部分の少なくとも一部に設けられたパッキンと
を備えたことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のプリンタ。
【請求項6】
前記上壁、前記第1側壁、前記第2側壁、及び下壁のそれぞれの、前記上下方向及び前記第1方向と直交する第2方向の一方側は閉塞され、
前記シール部材のうち前記第2方向の他方の側の端部は、前記底板のうち前記第2方向の他方の側の端部に対し、前記第2方向の他方に突出することを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項7】
前記筐体は、
前記筐体に対して前記カセットが装着される過程で、前記カセットに設けられた被ガイド部材をガイドする第2ガイド部材を備えたことを特徴とする請求項5に記載のプリンタ。
【請求項8】
前記被ガイド部材は、
前記筐体に対して前記カセットが装着された状態で、前記筐体に対する前記カセットの脱離が不可能な第1状態と、前記筐体に対する前記カセットの脱離が可能な第2状態とに切り替え可能なロック機構を有し、
前記カセットは、
前記ロック機構を前記第1状態から前記第2状態に切り替える第2切替部材を備えたことを特徴とする請求項7に記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のプリンタは、リボン及びヘッドを内部に収容したプリンタハウジングを有する。プリンタハウジングの下面に開口部が形成される。プリンタは、ヘッドでリボンを加熱することにより、開口部の下方を通過する印刷媒体にリボンのインクを転写する。
【0003】
プリンタが設置される製造ラインの洗浄時、洗浄用の液体がプリンタハウジングの開口部を介して内部に浸入することを防止する必要がある。これに対し、特許文献1では、プリンタ全体を覆うフード及びカバーにより、プリンタハウジング内への液体の浸入を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プリンタ全体をカバーで覆う方法では、プリンタを支持する支持シャフト等の支持体からプリンタを取り外してカバーを取り付ける必要がある。これに対し、プリンタ内への液体の浸入を、容易且つ適切に防止することが所望される。
【0006】
本発明の目的は、筐体に設けられた開口部を介して筐体内に液体が浸入することを、容易且つ適切に防止できるプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るプリンタは、ヘッドと、前記ヘッドが設けられる内部空間を覆う複数の壁であって、上方から前記内部空間を覆う上壁、上下方向と直交する第1方向の一方の側から前記内部空間を覆う第1側壁、前記第1方向の他方の側から前記内部空間を覆う第2側壁、下方から前記内部空間を覆う下壁であって、前記第1側壁の下端から前記第2側壁の下端に向けて延びる第1下壁、及び、前記第2側壁の下端から前記第1側壁の下端に向けて延びる第2下壁を有し、前記第1下壁と前記第2下壁のそれぞれの先端の間に第1開口が形成された前記下壁を含む前記複数の壁を備えた筐体と、前記筐体の前記下壁に着脱可能であり、前記第1開口を覆うカバーとを備えたプリンタであって、前記カバーは、底板と、前記底板のうち前記下壁と前記上下方向に重なる部分に少なくとも設けられ、前記下壁と接触するシール部材と、前記下壁に前記底板を押圧する第1位置と、前記下壁に前記底板を押圧しない第2位置とに移動可能な押圧部材と、前記押圧部材の位置を、前記第1位置と前記第2位置との間で切り替える第1切替部材とを備えたことを特徴とする。
【0008】
プリンタは、筐体に設けられた第1開口をカバーにより覆うことで、内部空間への液体の浸入を防止する。カバーは、筐体の下壁に装着されるので、筐体全体がカバーにより覆われる場合と比べて、簡易な構成で内部空間への液体の浸入を防止できる。カバーの底板は、押圧部材により下壁に押圧されるので、下壁と底板との間の隙間から液体が内部空間に浸入することを適切に防止できる。
【0009】
本発明において、前記第1切替部材は、偏心カムと、前記偏心カムを回転させるレバーとを備えてもよい。第1切替部材は、レバーに対する操作に応じて偏心カムを回転させることで、押圧部材の位置を第1位置と第2位置とに切り替える。第1切替部材は、レバーに対する操作により受けた力を底板及び押圧部材に効率良く伝達し、下壁に底板を押圧でできる。
【0010】
本発明において、前記レバーは、前記内部空間に配置されてもよい。この場合、筐体の第1開口がカバーにより覆われた状態で、筐体の外側にレバーが突出することを防止できる。従って、プリンタは、筐体の外側に突出したレバーが周辺の機器に接触することを防止できる。
【0011】
本発明において、前記カバーは、前記筐体に対して前記底板が装着される過程で前記第1下壁及び前記第2下壁のそれぞれをガイドする第1ガイド部材を備えてもよい。第1ガイド部材は、ユーザがカバーを筐体に装着する場合の操作を容易化できる。
【0012】
本発明において、前記上壁、前記第1側壁、前記第2側壁、及び下壁のそれぞれの、前記上下方向及び前記第1方向と直交する第2方向の一方側は閉塞され、前記筐体は、前記上壁、前記第1側壁、前記第2側壁、及び下壁のそれぞれの前記第2方向の他方の側の端部を含む開口端により囲まれた第2開口を有し、前記筐体に着脱可能なカセットを更に備え、前記カセットは、前記筐体に装着された状態で前記第2開口を覆うベース板と、前記ベース板のうち前記開口端と対向する部分の少なくとも一部に設けられたパッキンとを備えてもよい。プリンタは、カセットのベース板と筐体の開口端との間の隙間から液体が内部空間に浸入することを、パッキンにより適切に防止できる。
【0013】
本発明において、前記上壁、前記第1側壁、前記第2側壁、及び下壁のそれぞれの、前記上下方向及び前記第1方向と直交する第2方向の一方側は閉塞され、前記シール部材のうち前記第2方向の他方の側の端部は、前記底板のうち前記第2方向の他方の側の端部に対し、前記第2方向の他方に突出してもよい。プリンタは、カセットのベース板とカバーとの間の隙間から液体が筐体内に侵入することを、シール部材のうち底板から突出する部分により適切に防止できる。
【0014】
本発明において、前記筐体は、前記筐体に対して前記カセットが装着される過程で、前記カセットに設けられた被ガイド部材をガイドする第2ガイド部材を備えてもよい。この場合、第2ガイド部材は、ユーザがカセットを筐体に装着する場合の操作を容易化できる。
【0015】
本発明において、前記被ガイド部材は、前記筐体に対して前記カセットが装着された状態で、前記筐体に対する前記カセットの脱離が不可能な第1状態と、前記筐体に対する前記カセットの脱離が可能な第2状態とに切り替え可能なロック機構を有し、前記カセットは、前記ロック機構を前記第1状態から前記第2状態に切り替える第2切替部材を備えてもよい。この場合、プリンタは、筐体に装着された状態のカセットが筐体から脱離することをロック機構により防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】印刷用カセット4又は防水用カセット7が装着されたプリンタ1の斜視図である。
【
図6】
図1のA-A線を矢印方向から視た断面図であって、防水用カセット7が装着される前の状態を示す図である。
【
図7】
図1のA-A線を矢印方向から視た断面図であって、防水用カセット7が装着された後の状態を示す図である。
【
図10】本体3及びカバー6の正面図であって、切替部材650が解除位置にある状態を示す図である。
【
図11】本体3及びカバー6の正面図であって、切替部材650が押圧位置にある状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照し、本発明の実施形態を説明する。以下説明は図中に矢印で示す左右、前後、上下を使用する。
図1に示すプリンタ1は、左方から右方に通過する帯状の包装材(図示略)の上方に配置され、所望の文字や図形を包装材に印刷する。
【0018】
<プリンタ1の構成>
図1に示すように、プリンタ1は略直方体状に形成される。プリンタ1は、本体3、印刷用カセット4又は防水用カセット7、及びカバー6を備える。
【0019】
<印刷用カセット4>
図1、
図2に示すように、印刷用カセット4は、プリンタ1の前方に配置される。印刷用カセット4は、ベース板71、ハンドル72、供給ロール軸43、巻取ロール軸44、ガイドローラ45,46、及び位置決めシャフト80を備える。
【0020】
ベース板71は、正面視にて略矩形状に形成される。
図1に示すように、ハンドル72は、ベース板71の前面71A側に設けられる。ハンドル72は、把持部721、上支持部722、及び下支持部723を備える。把持部721は、前面71Aから前方に離間した位置で上下方向に延びる。把持部721は、ユーザによって把持される。上支持部722は、把持部721の上端部からベース板71に向けて、後方に延びる。下支持部723は、把持部721の下端部からベース板71に向けて、後方に延びる。ハンドル72は、本体3に対して印刷用カセット4を着脱する場合において、ユーザにより把持される。把持部721の前面上部に、リリースボタン86が設けられる。リリースボタン86は、印刷用カセット4を本体3から脱離する場合において、ユーザにより押下される。
【0021】
図2に示すように、供給ロール軸43、巻取ロール軸44、及びガイドローラ45,46,47は、ベース板71の背面71Bに設けられる。供給ロール軸43及び巻取ロール軸44は、上下方向の中央位置より上方側に設けられ、左右方向に並ぶ。供給ロール軸43は左方に配置され、巻取ロール軸44は右方に配置される。供給ロール軸43及び巻取ロール軸44は、背面71Bから後方に延びる。供給ロール軸43及び巻取ロール軸44は、中心軸周りに回転可能である。供給ロール軸43には、帯状のインクリボン(図示略)の一端が固定され巻回される。巻取ロール軸44には、インクリボンの他端が固定される。巻取ロール軸44は、供給ロール軸43から繰り出されたインクリボンをロール状に巻き取る。
【0022】
ガイドローラ45は、背面71Bの左下の角部に設けられる。ガイドローラ46は、背面71Bの右下の角部に設けられる。ガイドローラ47は、背面71Bの右上の角部に設けられる。ガイドローラ45、46、47は、背面71Bから後方に延びる。ガイドローラ45、46、47は、中心軸周りに回転である。供給ロール軸43から繰り出されたインクリボンは、ガイドローラ45,46、47のそれぞれの外周面に当接して屈曲した搬送経路を介して、巻取ロール軸44に案内される。
【0023】
位置決めシャフト80は、背面71Bの左右中央の上端部近傍に設けられる。位置決めシャフト80の前端部は、ベース板71に設けられた貫通穴70に挿通する。位置決めシャフト80は、印刷用カセット4が本体3から脱離しないように保持する。又、位置決めシャフト80は、リリースボタン86の押下に応じ、本体3に対して印刷用カセット4が着脱不可能な状態から着脱可能な状態に切り替える。位置決めシャフト80の具体的構造については後述する。
【0024】
ベース板71の背面71Bのうち左右方向の中央且つ上下方向の中央よりも下方に、把持部79が設けられる。把持部79は、本体3に対して印刷用カセット4及び後述する防水用カセット7を着脱する過程で、ユーザにより把持される。
【0025】
<防水用カセット7>
防水用カセット7は、印刷用カセット4のベース板71、ハンドル72、及び位置決めシャフト80と同じ構造を有する。印刷用カセット4の供給ロール軸43、巻取ロール軸44、及びガイドローラ45、46、47に対応する部材は、防水用カセット7には設けられない。以下では、防水用カセット7の構造のうち、印刷用カセット4と異なる構造について説明し、共通する構成の説明を省略する。
【0026】
図3、
図5に示すように、ベース板71の背面71Bのうち上端部、右端部、及び下端部に溝73Aが設けられる。溝73Aは、後方から視てC字状を有する。溝73Aのうち背面71Bの上端部を左右方向に延びる部分の左端部、及び、背面71Bの下端部を左右方向に延びる部分の左端部の間に亘って、凹部73Bが設けられる。溝73A及び凹部73Bは、枠状の嵌合部73を形成する。嵌合部73にパッキン77が嵌る。パッキン77は枠状を有する。パッキン77は、ゴムなどの弾性部材により形成される。パッキン77のうち、凹部73Bに嵌合する部分の後方に、カバー板77Aが固定される。
【0027】
溝73Aのうち背面71Bの下端部を左右方向に延びる部分の上方に、前方に向けて凹んだ凹部74が形成される。凹部74に弾性体78が嵌る。
【0028】
ベース板71の背面71Bのうち右下の角部に、ガイドローラ76が設けられる。ガイドローラ76は、背面71Bから後方に延びる。
【0029】
<本体3>
本体3には、印刷用カセット4又は防水用カセット7が選択的に装着される。
図4に示すように、本体3は、本体ベース31、供給ロール軸受部33、巻取ロール軸受部34、軸受部35、支軸36、ガイド筒体38、サーマルヘッド39、ヘッド駆動部311、機構駆動部(非図示)、及び筐体2を備える。
【0030】
本体ベース31は、正面から視た状態で略矩形状を有する。本体ベース31の前面31Aは、印刷用カセット4又は防水用カセット7の装着時、ベース板71の背面71Bと対向する。
【0031】
供給ロール軸受部33及び巻取ロール軸受部34は、本体ベース31の前面31Aにおいて、印刷用カセット4の供給ロール軸43及び巻取ロール軸44(
図2参照)のそれぞれに対応する位置に設けられる。印刷用カセット4の装着時、供給ロール軸受部33は、供給ロール軸43の先端を支持し、且つ供給ロール軸43を駆動して回転させる。巻取ロール軸受部34は、巻取ロール軸44の先端を支持し、且つ巻取ロール軸44を駆動して回転させる。軸受部35は、本体ベース31の前面31Aにおいて、印刷用カセット4のガイドローラ45(
図2参照)に対応する配置に設けられる。軸受部35は、印刷用カセット4のガイドローラ45の先端部45A(
図2参照)と係合し、ガイドローラ45を回転可能に支持する。支軸36は、本体ベース31の前面31Aにおいて、印刷用カセット4のガイドローラ46(
図2参照)、及び、防水用カセット7のガイドローラ76(
図3参照)のそれぞれに対応する位置に設けられる。支軸36は、ガイドローラ46を回転可能に支持し、且つガイドローラ76を位置決めする。
【0032】
ガイド筒体38は、前面31Aにおいて、印刷用カセット4及び防水用カセット7の位置決めシャフト80(
図2、
図3参照)に対応する配置に設けられる。ガイド筒体38は円筒状を有し、前面31Aから前方に延びる。ガイド筒体38には、左右方向に対向する円形の貫通穴381、382が形成される。印刷用カセット4又は防水用カセット7が本体3に装着される場合、ガイド筒体38に位置決めシャフト80が前方から挿入される。ガイド筒体38は、印刷用カセット4又は防水用カセット7が本体3に装着される過程で、位置決めシャフト80をガイドする。
【0033】
サーマルヘッド39は、前後方向並ぶ多数の熱電素子を有する。ヘッド駆動部311は、前面31Aの下方に設けられる。ヘッド駆動部311は、サーマルヘッド39を左右方向及び上下方向に移動可能に支持する。印刷用カセット4の装着時、サーマルヘッド39は、供給ロール軸43と巻取ロール軸44との間に亘って搬送されるインクリボンを加熱することにより、包装材にインクを転写する。
【0034】
機構駆動部(非図示)は、本体ベース31の後方に設けられる。機構駆動部は、各種モータ等の複数のアクチュエータを有する。機構駆動部は、制御部(図示略)から受信した制御指令に基づき、供給ロール軸受部33、巻取ロール軸受部34、ヘッド駆動部311、及びサーマルヘッド39を駆動する。なお、制御部は、プリンタ1内に設けられてもよいし、プリンタ1に有線又は無線で通信可能に接続された端末(図示略)に設けられてもよい。
【0035】
以下、本体ベース31の前方の空間であって、サーマルヘッド39及びヘッド駆動部311が収容される空間を、「内部空間K」という。
【0036】
筐体2は、第1筐体21及び第2筐体22を含む。第1筐体21は箱状に形成される。第1筐体21は、本体ベース31の後方の空間の周囲を覆う。機構駆動部は、第1筐体21により覆われる。第2筐体22は、本体ベース31の前方の内部空間Kの周囲を覆う。
図4に示すように、サーマルヘッド39及びヘッド駆動部311は、第2筐体22により覆われる。第2筐体22は、上壁22U、左側壁22L、右側壁22R、及び下壁22Bを有する。
【0037】
上壁22Uは上下方向と直交し、本体ベース31の上端部から前方に延びる。上壁22Uは、内部空間Kを上方から覆う。左側壁22L及び右側壁22Rは、それぞれ左右方向と直交する。左側壁22Lは、本体ベース31の左端部から前方に延びる。左側壁22Lの上端部は、上壁22Uの左端部に連結する。左側壁22Lは、内部空間Kを左方から覆う。右側壁22Rは、本体ベース31の右端部から前方に延びる。右側壁22Rの上端部は、上壁22Uの右端部に連結する。右側壁22Rは、内部空間Kを右方から覆う。
【0038】
下壁22Bは、左下壁22S、右下壁22Tを含む。左下壁22S及び右下壁22Tは、それぞれ上下方向と直交し、本体ベース31の下端部の一部から前方に延びる。左下壁22Sは、左側壁22Lの下端部から右側壁22Rの下端部に向けて、右方に延びる。右下壁22Tは、右側壁22Rの下端部から左側壁22Lの下端部に向けて、左方に延びる。左下壁22S及び右下壁22Tは、内部空間Kを下方から覆う。
【0039】
左下壁22Sの右方の先端部221と右下壁22Tの左方の先端部222とは、左右方向に離隔する。先端部221、222間には、下方に向けて開口する第1開口23が形成される。内部空間Kに収容されたサーマルヘッド39は、第1開口23を介して外部に露出する。上壁22U、左側壁22L、右側壁22R、左下壁22S、及び右下壁22Tのそれぞれの前端部は、前方に向けて開口する第2開口24の開口端24Aを形成する。
【0040】
<位置決めシャフト80>
図5、
図6、
図7を参照し、位置決めシャフト80の構造を説明する。位置決めシャフト80は、ホルダ51、カラー52、ガイドシャフト53、キャップ54、センターシャフト55、ボール57,58、ばね59等を備える。
【0041】
ホルダ51は、円筒状を有し、前後方向に延びる。ホルダ51は、上支持部722の前方に配置される。ホルダ51の後面と、ベース板71の背面71Bとは、略同一平面状に配置される。ホルダ51は、前後方向に延びる貫通穴510を有する。ホルダ51の外周面の左右両側に、一対の固定フランジ511が設けられる。一対の固定フランジ511のそれぞれに、固定穴513が形成される。ホルダ51は、固定フランジ511のそれぞれの固定穴513に挿通されるねじ512によって、ベース板71の背面71Bに固定される。
【0042】
ガイドシャフト53は、円筒状を有する。ガイドシャフト53は、ホルダ51の貫通穴510に挿通し、ホルダ51に固定される。ガイドシャフト53の前端部は、ホルダ51の前端部よりも前方に突出する。ガイドシャフト53の後端部は、ホルダ51の後端部よりも後方に突出する。ガイドシャフト53は、内部にガイド穴531を備える。ガイド穴531は前後方向に延びる。ガイドシャフト53の前端側の外周面には、径方向内側に縮径する縮径部532が設けられる。縮径部532には、貫通穴534,535が形成される。貫通穴534,535は、左右方向に対向する。
【0043】
キャップ54は、前後方向に延びる略筒状に形成される。キャップ54は内部にガイド穴541を備える。キャップ54は、ガイドシャフト53の後方に配置される。ガイドシャフト53のガイド穴531とキャップ54のガイド穴541は、同軸上に配置される。キャップ54の先端部は閉塞する。キャップ54の先端部に、前後方向に延びる貫通穴540が形成される。
【0044】
センターシャフト55は、前後方向に延びる棒状に形成される。センターシャフト55は、ガイドシャフト53及びキャップ54のガイド穴531,541内に挿入する。センターシャフト55は、ガイドシャフト53及びキャップ54に対して前後方向に移動可能である。センターシャフト55の前端側は、ガイドシャフト53の前端部よりも前方に突出する。リリースボタン86は、センターシャフト55の前端部に固定される。センターシャフト55の後端部は、ガイドシャフト53の後端部よりも後方に突出し、キャップ54内に配置される。
【0045】
センターシャフト55は、後端部よりも前方にばね留め551を有する。ばね留め551の外径は、キャップ54のガイド穴541の径と略同一である。センターシャフト55のうちばね留め551の前端部よりも前方に、ばね59が巻回される。ばね59は圧縮コイルばねである。ばね59の後端部は、ばね留め551の前端部に接続する。センターシャフト55のうちばね59の前端部よりも前方に、カラー52が設けられる。カラー52は円筒形を有する。カラー52は、ガイドシャフト53の前端部とばね552の後端部との間に介在する。カラー52は、センターシャフト55に対して前後方向に移動可能である。
【0046】
センターシャフト55の側面のうちカラー52の前端部よりも前方の部分に、凹部553が形成される。センターシャフト55の外径は、凹部553の部分で縮径する。
【0047】
ボール57,58は、ガイドシャフト53の貫通穴534,535のそれぞれの内側に嵌合する。ボール57,58は、それぞれ球体である。ボール57,58の径は、貫通穴534,535の径よりも大きい。ボール57,58は、ガイドシャフト53のガイド穴531内において、センターシャフト55の外周面と接触する。ボール57,58は、センターシャフト55の前後方向の移動に伴い、センターシャフト55の外周面と摺動する。
【0048】
<カバー6>
カバー6は、本体3に対して着脱可能である。
図4に示すように、カバー6は、本体3の左下壁22S及び右下壁22Tに取り付けられることにより、本体3に装着される。本体3に装着された状態のカバー6は、本体3の第1開口23を覆う。
図8、
図9に示すように、カバー6は、底板61、シール部材62、ガイド部材63、押圧部材64、及び切替ユニット65を備える。
【0049】
底板61は板状を有し、上方から視た状態で略矩形状である。底板61は、左右方向に長い。底板61は、右端部に屈曲部61Aを有する。屈曲部61Aは、屈曲して上方に僅かに延びる。
【0050】
シール部材62は、底板61の上面に積層して設けられる。シール部材62は、上方から視た状態で略矩形状である。シール部材62は、左右方向に長い。シール部材62の左端部は、底板61の左端部よりも右方に配置される。シール部材62の右端部は、底板61の右端部よりも左方に配置される。シール部材62の左右方向の長さは、底板61の左右方向の長さよりも僅かに短い。シール部材62の後端部は、底板61の後端部よりも前方に配置される。シール部材62の前端部は、底板61の前端部よりも僅かに前方に配置される。シール部材62の前端部を含む一部は、底板61の前端部に対して前方に突出する。シール部材62の前後方向の長さは、底板61の前後方向の長さよりも僅かに短い。
【0051】
ガイド部材63は、シール部材62の上面に設けられる。ガイド部材63は、左ガイド部材63L及び右ガイド部材63Rを有する。左ガイド部材63L及び右ガイド部材63Rは、左右方向に並ぶ。左ガイド部材63L及び右ガイド部材63Rは、板状を有する。左ガイド部材63L及び右ガイド部材63Rは、上下方向と直交する。
【0052】
左ガイド部材63Lは、延伸部631L、632Lを有する。延伸部631Lは、底板61及びシール部材62の前端部近傍、且つ、底板61及びシール部材62の左右方向の中央よりも左方の部分から、後方に延びる。延伸部632Lは、延伸部631Lの後端部から右方に延びる。延伸部632Lの厚さは、延伸部631Lの厚さよりも大きい。
【0053】
右ガイド部材63Rは、底板61及びシール部材62の左右方向の中央を前後方向に延びる対称線を基準として、左ガイド部材63Lと左右対称である。右ガイド部材63Rは、延伸部631R、632Rを有する。延伸部631Rは、底板61及びシール部材62の前端部近傍、且つ、底板61及びシール部材62の左右方向の中央よりも右方の部分から、後方に延びる。延伸部632Rは、延伸部631Rの後端部から左方に延びる。左ガイド部材63Lの延伸部632Lの右端部と、右ガイド部材63Rの延伸部632Rの左端部とは、左右方向に離隔する。
【0054】
ガイド部材63は、底板61及びシール部材62に設けられた複数の貫通穴に下方から挿通する複数のねじ67(
図9参照)により、底板61及びシール部材62に固定される。
【0055】
押圧部材64は、左押圧部材64L及び右押圧部材64Rを有する。左押圧部材64L及び右押圧部材64Rは、同一形状を有する。
【0056】
左押圧部材64Lは、延伸部641L、及び支持部642L、643Lを含む。延伸部641Lは板状を有する。延伸部641Lは、左ガイド部材63Lの延伸部631Lと同一形状を有し、延伸部631Lの上方に配置される。延伸部631L、641L間に、板状のゴムなどの弾性部材66Lが介在する。支持部642Lは、延伸部641Lの左端部から左方に延びる。支持部643Lは、延伸部641Lの右端部から右方に延びる。支持部642L、643Lの下面は、延伸部641Lの下面よりも下方に配置される。支持部642Lは、左ガイド部材63Lの延伸部631Lの左方に配置される。支持部643Lは、左ガイド部材63Lの延伸部631Lの右方に配置される。
【0057】
右押圧部材64Rは、延伸部641R、及び支持部642R、643Rを含む。延伸部641R、及び支持部642R、643Rは、それぞれ、左押圧部材64Lの延伸部641L、及び支持部642L、643Lに対応する。延伸部641Rは、右ガイド部材63Rの延伸部631Rの上方に配置される。延伸部631R、641R間に、板状のゴムなどの弾性部材66Rが介在する。支持部642Rは、右ガイド部材63Rの延伸部631Rの左方に配置される。支持部643Rは、右ガイド部材63Rの延伸部631Rの右方に配置される。
【0058】
左ガイド部材63Lの延伸部631L、弾性部材66L、及び、左押圧部材64Lの延伸部641Lのそれぞれに形成された貫通穴に対し、ねじ691L、692Lが下方から挿通する。ねじ691L、692Lの上端部は、左押圧部材64Lの延伸部641Lの上面よりも上方に突出する。左ガイド部材63Lの延伸部631L、弾性部材66L、及び、左押圧部材64Lの延伸部641Lのそれぞれに形成された貫通穴に対し、ねじ691R、692Rが下方から挿通する。ねじ691R、692Rの上端部は、右押圧部材64Rの延伸部641Rの上面よりも上方に突出する。ねじ691L、692L、691R、692Rを、「ねじ69」と総称する。ねじ69の上端部に、軸受663が設けられる。軸受663には、左右方向に延びる貫通穴が形成される。
【0059】
切替ユニット65は、切替部材651L、652L、651R、652Rを有する。切替部材651L、652L、651R、652Rは、同一部材である。以下、切替部材651L、652L、651R、652Rを「切替部材650」と総称する。切替部材650は、所謂カムレバーである。切替部材650は、押圧部材64の上方に配置される。
【0060】
図9に示すように、切替部材650は、偏心カム66A、レバー66B、及びコンタクトプレート66Cを有する。偏心カム66Aは、左右方向に離隔した一対の板カム661を有する。一対の板カム661のそれぞれの中心に、左右方向に延びる貫通穴が設けられる。一対の板カム661の間に、ねじ69の先端部に設けられた軸受663(
図8参照)が配置される。円柱状の軸662は、一対の板カム661のそれぞれの貫通穴、及び、軸受663の貫通穴に挿通する。偏心カム66Aは、軸662を中心として回転可能である。軸662の中心から、一対の板カム661のそれぞれの周端部までの間の距離は一定でない。
【0061】
レバー66Bは、一対の板カム661のそれぞれの周端部の一部から、軸662を中心とする径方向の外側に向けて延びる。レバー66Bは板状を有する。レバー66Bは、偏心カム66Aを回転させるためにユーザにより操作される。
【0062】
コンタクトプレート66Cは、偏心カム66Aと押圧部材64との間に介在する。コンタクトプレート66Cは、円形の板であり、上下方向と直交する。コンタクトプレート66Cの上面に、偏心カム66Aの下端部が接触する。コンタクトプレート66Cの下面に、押圧部材64の上面が接触する。コンタクトプレート66Cの中心に、上下方向に延びる貫通穴が形成され、ねじ69が下方から挿通する。
【0063】
切替部材650は、回転によりレバー66Bが後方に延びた状態となった場合、軸662の中心とコンタクトプレート66Cとの間の距離は最も短くなる。以下、このような切替部材650の回転位置を、「解除位置」という。一方、切替部材650は、回転によりレバー66Bが前方に延びた状態となった場合、軸662の中心とコンタクトプレート66Cとの間の距離は最も長くなる。以下、このような切替部材650の回転位置を、「押圧位置」という。
【0064】
切替部材651Lは、ねじ691Lの軸受663に回転可能に固定される。切替部材652Lは、ねじ692Lの軸受663に回転可能に固定される。切替部材651L、652Lは、左押圧部材64Lの延伸部641Lの上方に配置され、前後方向に並ぶ。切替部材651Rは、ねじ691Rの軸受663に回転可能に固定される。切替部材652Rは、ねじ692Rの軸受663に回転可能に固定される。切替部材651R、652Rは、右押圧部材64Rの延伸部641Rの上方に配置され、前後方向に並ぶ。
【0065】
レバー66Bに対する操作に応じて切替部材650が解除位置から押圧位置に切り替えられることにより、偏心カム66A及びコンタクトプレート66Cは、押圧部材64を下方に押し下げ、ねじ69に接続するガイド部材63を上方に持ち上げる。これにより、ねじ67によりガイド部材63に接続した底板61及びシール部材62も、上方に持ち上げられる。以下、切替部材650が押圧位置にある状態における押圧部材64の位置を、「第1位置」という。切替部材650が解除位置にある状態における押圧部材64の位置を、「第2位置」という。
【0066】
<カバー6の着脱動作>
切替部材650を解除状態としたカバー6が準備される。押圧部材64は、第2位置に配置される(
図10参照)。カバー6は、本体3の筐体2のうち左下壁22S及び右下壁22Tの前方に配置される。ユーザは、この状態でカバー6を後方に移動させる。
【0067】
左ガイド部材63Lの延伸部631Lの左端部は、左下壁22Sの先端部221に右方から接触する。右ガイド部材63Rの延伸部631Rの右端部は、右下壁22Tの先端部222に左方から接触する。ガイド部材63の延伸部631L、631Rは、筐体2の左下壁22S及び右下壁22Tをガイドしてカバー6を位置決めする。又、左押圧部材64Lの支持部642Lは、左下壁22Sの上面のうち先端部221の近傍の部分に対して上方に配置される。右押圧部材64Rの支持部643Rは、右下壁22Tの上面のうち先端部222の近傍の部分に対して上方に配置される。シール部材62は、筐体2の左下壁22S及び右下壁22Tの下面に下方から接触する。
【0068】
更にカバー6が後方に移動することに応じ、左ガイド部材63Lの延伸部632L、及び右ガイド部材63Rの延伸部632Rのそれぞれの後端部は、本体ベース31の下方に位置するヘッド駆動部311に前方から接触する。これにより、カバー6の後方への移動は規制される。
図4に示すように、筐体2の第1開口23は、カバー6の底板61により覆われる。切替部材650のレバー66Bは、内部空間K内に配置される。
【0069】
ユーザは、切替部材650のレバー66Bを操作することにより、切替部材650を解除位置から押圧位置に切り替える。
図11に示すように、押圧部材64は、偏心カム66Aにより下方に押し下げられ、第2位置から第1位置に移動する。又、底板61及びシール部材62は、上方に持ち上げられる。左押圧部材64Lの支持部642Lは、底板61及びシール部材62との間に左下壁22Sを挟み、左下壁22Sに底板61及びシール部材62を押圧する。右押圧部材64Rの支持部643Rは、底板61及びシール部材62との間に右下壁22Tを挟み、右下壁22Tに底板61及びシール部材62を押圧する。これにより、シール部材62は左下壁22S及び右下壁22Tに密着する。
【0070】
<防水用カセット7の装着動作>
図6、
図7を参照し、本体3に対する防水用カセット7の装着動作について説明する。なお、本体3に対する印刷用カセット4の装着動作についても同様である。
【0071】
本体3から脱離された状態の防水用カセット7のリリースボタン86が押下される。ハンドル72の上支持部722に対してリリースボタン86が後方に移動することに応じ、リリースボタン86に接続したセンターシャフト55も後方に移動する。センターシャフト55の後端部は、キャップ54の貫通穴540に挿通し、キャップ54よりも後方に突出する。又、センターシャフト55の凹部553の前後方向の位置は、ボール57、58の前後方向の位置と一致する(
図6参照)。
【0072】
本体3に防水用カセット7を装着するため、ユーザは、本体3の前方から防水用カセット7を後方に移動させる。防水用カセット7の位置決めシャフト80は、本体3のガイド筒体38に前方から進入する。位置決めシャフト80は、ガイド筒体38内を後方に移動する。
図6に示すように、ボール57、58はガイド筒体38に接触し、センターシャフト55の軸を中心とした径方向の内側に移動する。ボール57、58がガイドシャフト53の縮径部532の側面よりも内側に配置されることにより、位置決めシャフト80は、ガイド筒体38内を後方に移動可能となる。
【0073】
センターシャフト55の後端部は、ガイド筒体38の底部に接触し、前方への移動が規制される。この状態で、防水用カセット7のベース板71は、本体3の第2開口24を覆う。更にユーザは、本体3に対して防水用カセット7を後方に移動させようとする。この場合、センターシャフト55は後方に移動せず、ホルダ51及びガイドシャフト53のみ後方に移動する。これにより、センターシャフト55の前端部に設けられたリリースボタン86は、ハンドル72の上支持部722に対して前方に移動する。リリースボタン86が押下された状態は解除される。
【0074】
ホルダ51及びガイドシャフト53がセンターシャフト55に対して後方に移動することに応じ、センターシャフト55の凹部553よりも後方に、ガイドシャフト53の貫通穴534、535に嵌合したボール57、58が移動する。
図7に示すように、ボール57、58は、センターシャフト55の軸を中心とした径方向の外側に移動し、ガイドシャフト53の縮径部532の側面よりも外側に突出する。外側に突出したボール57、58は、ガイド筒体38の貫通穴381、382に嵌合する。これにより、本体3に対して防水用カセット7が装着される。防水用カセット7は、本体3から脱離不能な状態となる。以下、防水用カセット7が本体3に対して脱離不能な状態を、「第1状態」という。第1状態において、防水用カセット7のベース板71の背面71Bに設けられたパッキン77は、本体3の第2開口24の開口端24Aに対向し、開口端24Aに密着する。又、防水用カセット7のベース板71の背面71Bに設けられたパッキン77は、本体3に装着されたカバー6の底板61及びシール部材62に密着する。
【0075】
なお、ホルダ51及びガイドシャフト53がセンターシャフト55に対して後方に移動することに応じ、ばね552は、ばね留め551とカラー52との間で圧縮される。ばね552は、本体3に対して防水用カセット7のベース板71を前方に移動させる向きの力を、ホルダ51、カラー52、及びガイドシャフト53を介してベース板71に作用させる。従って、第1状態において、ベース板71は、本体3に対して前向きの付勢力をばね552から受けた状態となる。この力に応じ、センターシャフト55は僅かに前方に移動し、後方に僅かに移動可能となる。
【0076】
例えばユーザは、プリンタ1が設置される製造ラインの洗浄時、本体3にカバー6を装着して切替部材650を押圧位置に切り替え、カバー6のシール部材62を左下壁22S及び右下壁22Tに密着させる。次いでユーザは、防水用カセット7を本体3に装着する。これにより、製造ラインを洗浄するための液体が第1開口23及び第2開口24を介して内部空間Kに浸入することを防止できる。
【0077】
又、例えばユーザは、プリンタ1を用いて印刷を行う場合、本体3からカバー6を脱離させ、印刷用カセット4を本体3に装着する。プリンタ1の制御部は機構駆動部を制御し、供給ロール軸受部33、巻取ロール軸受部34、ヘッド駆動部311、及びサーマルヘッド39を駆動する。これにより、供給ロール軸受部33から巻取ロール軸受部34に向けてインクリボンが搬送され、同時に、サーマルヘッド39の加熱によりインクリボンが加熱される。加熱されたインクリボンから、第1開口23の下方を通過する包装材にインクが転写されることにより、印刷が行われる。
【0078】
<防水用カセット7の脱離動作>
図6、
図7を参照し、本体3に対する防水用カセット7の脱離動作について説明する。なお、本体3に対する印刷用カセット4の脱離動作についても同様である。
【0079】
図7に示す状態において、本体3から防水用カセット7を脱離させるため、ユーザは、ハンドル72の把持部721を把持しつつ、防水用カセット7のリリースボタン86を親指で押下する。ハンドル72の上支持部722に対してリリースボタン86が後方に移動することに応じ、リリースボタン86に接続したセンターシャフト55も後方に移動する。
【0080】
センターシャフト55が後方に移動することに応じ、センターシャフト55の凹部553の前後方向の位置は、ボール57、58の前後方向の位置と一致する(
図6参照)。ボール57、58は、センターシャフト55の軸を中心とした径方向の内側に移動し、ガイドシャフト53の縮径部532の側面よりも内側に配置される。ボール57、58は、ガイド筒体38に設けられた貫通穴381、382から外れる。防水用カセット7は、本体3から脱離可能な状態となる。以下、防水用カセット7が本体3に対して脱離可能な状態を、「第2状態」という。
【0081】
なお、防水用カセット7のベース板71は、本体3に対して前向きの付勢力をばね59から受けた状態となっている。このため、第2状態となった場合、防水用カセット7は、ばね59の付勢力を受けて前方に移動する。ユーザは、ハンドル72の把持部721を把持して防水用カセット7を更に後方に移動させることにより、防水用カセット7を本体3から脱離する。
【0082】
<本実施形態の作用、効果>
プリンタ1は、筐体2に設けられた第1開口23をカバー6により覆うことで、筐体2内への液体の浸入を防止する。カバー6は、筐体2の左下壁22S及び右下壁22Tに装着されるので、筐体2全体がカバーにより覆われる場合と比べて、簡易な構成で内部空間Kへの液体の浸入を防止できる。又、カバー6の底板61は、押圧部材64により左下壁22S及び右下壁22Tに押圧される。従って、カバー6は、左下壁22S及び右下壁22Tと底板61との間の隙間から液体が内部空間Kに浸入することを適切に防止できる。
【0083】
切替部材650は、レバー66Bに対する操作に応じて偏心カム66Aを回転させることで、押圧部材64の位置を第1位置と第2位置とに切り替える。切替部材650は、レバー66Bに対する操作により受けた力を底板61及び押圧部材64に効率良く伝達し、左下壁22S及び右下壁22Tに底板61を押圧できる。
【0084】
筐体2の第1開口23がカバー6により覆われた状態で、切替部材650のレバー66Bは内部空間Kに配置される。このため、カバー6は、筐体2の外側にレバー66Bが突出することを防止できる。従って、プリンタ1は、筐体2の外側に突出したレバー66Bが周辺の機器に接触することを防止できる。
【0085】
カバー6のガイド部材63は、本体3にカバー6を装着する過程で、左下壁22S及び右下壁22Tの先端部221、222に接触し、左下壁22S及び右下壁22Tをガイドする。ユーザは、本体3に対するカバー6の左右方向の位置決めを容易に行うことができる。このように、ガイド部材63は、ユーザがカバー6を本体3に装着する場合の操作を容易化できる。
【0086】
防水用カセット7の背面71Bにパッキン77が設けられる。プリンタ1は、防水用カセット7のベース板71と筐体2の第2開口24の開口端24Aとの間の隙間から液体が内部空間Kに浸入することを、パッキン77により適切に防止できる。
【0087】
シール部材62の前端部を含む一部は、底板61の前端部に対して前方に突出する。この場合、シール部材62の突出部分は、防水用カセット7のパッキン77と良好に密着する。プリンタ1は、防水用カセット7のベース板71とカバー6との間の隙間から液体が内部空間Kに侵入することを、シール部材62のうち底板61から突出する部分により適切に防止できる。
【0088】
防水用カセット7が本体3に装着される過程で、防水用カセット7の位置決めシャフト80は、本体3のガイド筒体38に挿通される。これにより、本体3に対して防水用カセット7が位置決めされる。ガイド筒体38は、ユーザが防水用カセット7を本体3に装着する場合の操作を容易化できる。
【0089】
防水用カセット7は、位置決めシャフト80のうち外方に突出したボール57、58をガイド筒体38の貫通穴381、382に嵌合させることにより、本体3に対して脱離不可能になる。プリンタ1は、本体3に装着された状態の防水用カセット7が本体3から脱離することを、位置決めシャフト80のボール57、58により防止できる。なお、リリースボタン86を押下する操作に応じ、ボール57、58は、ガイド筒体38の内壁に設けられた貫通穴381、382から外れる。これにより、本体3に対して防水用カセット7は脱離可能となる。
【0090】
<変形例>
本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。シール部材62は、底板61の上面の全域に設けられなくてもよい。例えばシール部材62は、底板61のうち左下壁22S及び右下壁22Tと重なる部分にのみ設けられてもよい。
【0091】
切替部材650の数は4つに限定されず、他の数でもよい。切替部材650は、底板61の下方に設けられてもよい。即ち、切替部材650は、内部空間Kの外側に配置されてもよい。
【0092】
切替部材650は、上記で説明した所謂カムレバーに限定されない。例えば、切替部材650として、ねじ69に螺合するボルトが用いられてもよい。ユーザは、ねじ69にボルトを締め付けて押圧部材64を下方に押すことによって、左下壁22S及び右下壁22Tに底板61を押圧してもよい。
【0093】
ガイド部材63は、カバー6の底板61に別部材として設けられる場合に限定されない。例えば、底板61の一部が上方に屈曲することで、上方に突出する突出部が設けられてもよい。突出部は、前後方向に延びていてもよい。突出部は、本体3にカバー6を装着する過程で、左下壁22S及び右下壁22Tの先端部221、222に接触し、左下壁22S及び右下壁22Tをガイドしてもよい。カバー6にガイド部材63は設けられなくてもよい。
【0094】
防水用カセット7のベース板71の背面71Bに設けられるパッキン77は、枠状の嵌合部73の全域に亘って設けられなくてもよい。例えばパッキン77は、溝73Aのうちベース板71の下端部に沿って左右方向に延びる部分にのみ設けられてもよい。防水用カセット7にパッキン77は設けられなくてもよい。
【0095】
シール部材62と底板61とそれぞれの前端部の前後方向の位置は一致してもよい。シール部材62の前端部は、底板61の前端部よりも後方に配置されてもよい。
【0096】
位置決めシャフト80は、防水用カセット7のベース板71の左上の角、右上の角、左下の角、右下の角等に複数設けられてもよい。この場合、ガイド筒体38は、本体3のうち位置決めシャフト80に対応する位置に設けられてもよい。この場合、ガイド筒体38は、内部空間Kでインクリボンを搬送する搬送シャフトとして機能してもよい。防水用カセット7に位置決めシャフト80が設けられなくてもよいし、本体3にガイド筒体38が設けられなくてもよい。
【0097】
防水用カセット7は、リリースボタン86に替えて、ハンドル72の裏面に配置されたレバー若しくはトリガーによりセンターシャフト55の状態を変化させ、本体3に対して防水用カセット7が脱離可能な状態と脱離不可能な状態とを切り替えてもよい。位置決めシャフト80において、ガイドシャフト53の左右両側にボール57,58が設けられているが、ボールの数は1個でもよく、2個以上であってもよい。また、ボール57,58の位置は、ガイドシャフト53の外周面の上下両側に設けられてもよい。
【0098】
<その他>
左右方向は、本発明の「第1方向」の一例である。左側壁22Lは、本発明の「第1側壁」の一例である。右側壁22Rは、本発明の「第2側壁」の一例である。左下壁22Sは、本発明の「第1下壁」の一例である。右下壁22Tは、本発明の「第2下壁」の一例である。切替部材650は、本発明の「第1切替部材」の一例である。ガイド部材63は、本発明の「第1ガイド部材」の一例である。位置決めシャフト80は、本発明の「被ガイド部材」の一例である。ガイド筒体38は、本発明の「第2ガイド部材」の一例である。ボール57、58は、本発明の「ロック機構」の一例である。リリースボタン86は、本発明の「第2切替部材」の一例である。
【符号の説明】
【0099】
1 :プリンタ
2 :筐体
6 :カバー
7 :防水用カセット
22B :下壁
22L :左側壁
22R :右側壁
22S :左下壁
22T :右下壁
22U :上壁
23 :第1開口
24 :第2開口
24A :開口端
38 :ガイド筒体
39 :サーマルヘッド
57、58 :ボール
61 :底板
62 :シール部材
63 :ガイド部材
64 :押圧部材
66A :偏心カム
66B :レバー
71 :ベース板
77 :パッキン
86 :リリースボタン
K :内部空間