(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143922
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ミシン
(51)【国際特許分類】
D05B 27/16 20060101AFI20241004BHJP
D05B 27/06 20060101ALI20241004BHJP
D05B 35/02 20060101ALI20241004BHJP
D05B 35/10 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
D05B27/16
D05B27/06
D05B35/02
D05B35/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056875
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003399
【氏名又は名称】JUKI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】比嘉 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】小川 達矢
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 邦彰
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150AA01
3B150CB26
3B150CC02
3B150CC03
3B150CC05
3B150CE01
3B150CE23
3B150DE04
3B150DE08
3B150DE11
3B150DE19
3B150DE33
3B150GD02
3B150GD24
3B150GF02
3B150GF03
3B150JA03
3B150JA05
3B150JA06
3B150JA07
3B150LA37
3B150LB01
3B150NA36
3B150NB04
3B150NB05
3B150NC03
3B150QA06
3B150QA07
(57)【要約】
【課題】被縫製物の側端部を適正な位置に合わせつつも被縫製物を良好に送る。
【解決手段】針板101上の被縫製物C1,C2を縫い方向に送る送り機構20,40と、被縫製物C1,C2の縫い方向に直交する方向における端部を検出する端部検出装置80とを備え、送り機構20,40は、針落ち位置の左側と右側とで縫い方向の送り量に差を設けた差動送りを可能とし、端部検出装置80の検出に基づいて、送り機構20,40による左側と右側の縫い方向の送り量の差を制御する制御装置90を備えている。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
針板上の被縫製物を縫い方向に送る送り機構と、
前記被縫製物の前記縫い方向に直交する方向における端部を検出する端部検出装置とを備え、
前記送り機構は、針落ち位置の左側と右側とで前記縫い方向の送り量に差を設けた差動送りを可能とし、
前記端部検出装置の検出に基づいて、前記送り機構による左側と右側の前記縫い方向の送り量の差を制御する制御装置を備えることを特徴とするミシン。
【請求項2】
前記送り機構は、前記針板上の被縫製物に対して下側から搬送ベルトにより被縫製物を送る下送り機構を含み、
前記下送り機構の搬送ベルトは、前記針落ち位置の左側で送りを行う左ベルトと前記針落ち位置の右側で送りを行う右ベルトとを含むことを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項3】
前記送り機構は、前記針板上の被縫製物に対して上側から搬送ベルトにより被縫製物を送る上送り機構を含み、
前記上送り機構の搬送ベルトは、前記針落ち位置の左側で送りを行う左ベルトと前記針落ち位置の右側で送りを行う右ベルトとを含むことを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項4】
前記送り機構は、前記針板上の被縫製物に対して上側から搬送ベルトにより被縫製物を送る上送り機構を含み、
前記上送り機構の搬送ベルトは、前記針落ち位置の左側で送りを行う左ベルトと前記針落ち位置の右側で送りを行う右ベルトとを含むことを特徴とする請求項2に記載のミシン。
【請求項5】
前記被縫製物は、上側の被縫製物と下側の被縫製物とが重ねられて構成され、
前記端部検出装置は、前記上側の被縫製物の前記端部を検出する上検出部と、前記下側の被縫製物の前記端部を検出する下検出部とを有することを特徴とする請求項4に記載のミシン。
【請求項6】
前記上検出部及び前記下検出部よりも送り方向上流側で、前記下側の被縫製物と前記上側の被縫製物とを分離させるガイドを備えることを特徴とする請求項5に記載のミシン。
【請求項7】
前記端部検出装置を前記縫い方向に直交する方向に移動させる位置調節機構を備えることを特徴とする請求項1記載のミシン。
【請求項8】
前記端部検出装置は、前記縫い方向に直交する方向に並んだ複数の検出部を有することを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項9】
前記針板又は当該針板に連なる前記被縫製物の搬送面に設けられた送出口からエアーを送り出す送出装置を備えることを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右の差動送りを行うミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のミシンは、送り歯によって縫い方向に送られる針板上の被縫製物に対して、送り歯による送り方向に直交する方向に送りを行うローラ機構により、被縫製物を移動させて被縫製物の側端部の位置を適正な位置に合わせながら縫製を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成の場合、ローラ機構が送り歯の送り方向に直交する方向に送りを行う構成のため、送り歯の送りに影響を与えるおそれがあった。
【0005】
本発明は、被縫製物の側端部を適正な位置に合わせつつも被縫製物を良好に送ることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ミシンにおいて、
針板上の被縫製物を縫い方向に送る送り機構と、
前記被縫製物の前記縫い方向に直交する方向における端部を検出する端部検出装置とを備え、
前記送り機構は、針落ち位置の左側と右側とで前記縫い方向の送り量に差を設けた差動送りを可能とし、
前記端部検出装置の検出に基づいて、前記送り機構による左側と右側の前記縫い方向の送り量の差を制御する制御装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のミシンは、上記構成により、被縫製物の側端部を適正な位置に合わせつつも被縫製物を良好に送ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】発明の実施形態であるミシンの後面図である。
【
図4】押さえ足の図示を省略したミシンベッド部の左端部上面を示す斜視図である。
【
図6】四本の搬送ベルトが前後差動送り状態にある送り機構の斜視図である。
【
図7】四本の搬送ベルトが左右差動送り状態にある送り機構の斜視図である。
【
図8】針板上で被縫製物を上から押さえる布押さえ機構の斜視図である。
【
図11】端部検出装置が装備される針板の周辺を示す斜視図である。
【
図12】端部検出装置が装備される針板の周辺を示す後面図である。
【
図14】制御装置が実行する縫製の動作制御を示したフローチャートである。
【
図15】端部検出装置の他の形態であるセンサ保持枠の後面図である。
【
図16】ミシンベッド部の上面に複数のエアーの送出口を設けたミシンの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態の概略構成]
以下、本発明の実施形態であるミシンについて詳細に説明する。
図1はミシン100の後面図、
図2はミシン100の左側面図、
図3はミシン100の斜視図を示す。
以下、被縫製物の送り方向下流側を「前」、送り方向上流側を「後」、前を向いた状態で左手側を「左」、右手側を「右」、鉛直上方を「上」、鉛直下方を「下」とする。前後方向、左右方向、上下方向は、互いに直交する。
以下の説明では、ミシン100は水平面に設置されている前提であり、前後方向と左右方向は、水平となる。
【0010】
本発明の実施形態であるミシン100として、差動送りの機能を搭載した本縫いミシンを例示する。
ミシン100は、ミシンフレーム110、針上下動機構、送り機構としての下送り機構20、送り機構としての上送り機構40、押さえ機構としての布押さえ機構70、釜機構、端部検出装置80(
図11参照、
図1~
図10では図示略)、制御装置90を備えている。
【0011】
針上下動機構は、縫い針11に上下動動作を付与する。
下送り機構20は、針板101上の被縫製物に下から送り動作を付与する。
上送り機構40は、針板101上の被縫製物に上から送り動作を付与する。
布押さえ機構70は、針板101上の被縫製物に押さえ圧を付与する。
釜機構は、縫い針11から上糸のループを捕捉して下糸を絡め、縫い目を形成する。
端部検出装置80は、針板101上において、上側の被縫製物である上布C1(
図12参照)と下側の被縫製物である下布C2(
図12参照)のそれぞれの側端部(右端部)の左右方向における位置を検出する。
制御装置90は、上記各構成の動作制御を実行する。
なお、上記ミシン100は、一般的な本縫いミシンが備える、天秤機構、糸調子等の各構成を備えているが、これらは周知のものなので説明は省略する。
【0012】
[ミシンフレーム]
上記ミシンフレーム110は、上述したミシン100の各構成を支持又は格納する。
ミシンフレーム110は、ミシンベッド部111と立胴部112とミシンアーム部113とを有する。
ミシンベッド部111は、ミシン100の下部に位置し、左右方向に沿って延在している。
立胴部112は、ミシンベッド部111の右端部から立設されている。
ミシンアーム部113は、立胴部112の上端部から左方に向かって延出されている。
【0013】
[針上下動機構]
図4は後述する押さえ足の図示を省略したミシンベッド部111の左端部上面を示す斜視図である。
針上下動機構は、
図1~
図4に示すように、ミシンアーム部113の内側に配設され、ミシンモータに回転駆動されると共に左右方向に沿った上軸を有する。
さらに、針上下動機構は、縫い針11を下端部で保持する針棒12と、上軸の回転力を上下動の往復駆動力に変換して針棒に伝達するクランク機構とを備えている。
なお、上軸及びクランク機構は、周知なので図示は省略している。
【0014】
針棒12は、上下方向に沿って延在し、ミシンアーム部113の左端下部において、上下動可能に支持されている。
縫い針11は、針棒12の下端部に保持され、針棒12と共に上下動を行う。ミシンベッド部111の上面における針棒12の下方には、水平な平板からなる針板101が設けられている。
【0015】
そして、針板101に対する縫い針11の針落ち位置には、複合開口部102が形成されている。針板101の複合開口部102には、針穴13を有する針穴部材30と後述する下送り機構20の左ベルトとしての後左下ベルト21及び前左下ベルト22,右ベルトとしての前右下ベルト23及び後右下ベルト24が上方に露出して配置されている。即ち、複合開口部102は、針穴部材30と各下ベルト21~24とが露出する複数の矩形の開口部が一体的に複合した形状となっている。
【0016】
[釜機構]
釜機構は、
図2及び
図3に示すように、針板101の針穴部材30の下側に設けられた外釜14及び中釜15と、中釜15を回転させる釜軸(図示略)とを有する。
釜軸は、ミシンベッド部111内において、左右方向に沿った状態で回転可能に支持されている。釜軸は、前述した上軸から歯車機構又はベルト機構を介して上軸の二倍に増速された左右方向に沿った軸回りの回転が入力される。
【0017】
中釜15は外釜14の内側に格納されている。さらに、中釜15は、その内側に下糸を供給する図示しないボビンを格納している。
外釜14は、釜軸の左端部に連結され、中釜15の周囲を回転する。中釜15は、外釜14と共に回転しないように回転が規制されている。外釜14は、外周に縫い針11から上糸のループを捕捉するための剣先を有する。外釜14は、回転することにより、剣先により上糸のループを捕捉して、中釜15の内側から繰り出される下糸をくぐらせることができる。
上記外釜14と中釜15は、後述する下送り機構20の略円筒状のガイド枠29の内側に格納状態で配置されている。
【0018】
[下送り機構]
図5は下送り機構20のガイド枠29の斜視図、
図6及び
図7は下送り機構20の斜視図である。
図6と
図7は、後述する各下ベルト21~24の掛け渡し状態が異なる場合を示している。
以下、
図1~
図7に基づいて下送り機構20について詳細に説明する。
【0019】
下送り機構20は、各図に示すように、搬送ベルトとしての各下ベルト21~24、第1モータ25、第2モータ26、回転軸27,28、第一プーリ31、第二プーリ32を有する。
さらに、下送り機構20は、それぞれの下ベルト21~24が被縫製物の下面に接触するようにガイドするガイド枠29と、第一加圧機構33と、第二加圧機構34とを備えている。
【0020】
第一及び第2モータ25,26は、いずれも、動作量を任意に制御可能なモータ、例えは、直流モータ、交流モータ、ステッピングモータ等である。第一及び第2モータ25,26は、前後に並んだ状態でミシンベッド部111の右端部の内側に配置され、出力軸を左方に向けている。
前側の第1モータ25の出力軸には、回転軸27を介して第一プーリ31が連結されている。
後側の第2モータ26の出力軸には、回転軸28を介して第二プーリ32が連結されている。
【0021】
回転軸27,28は、いずれも左右方向に平行であって、ミシンベッド部111内で回転可能に支持されている。
第一及び第二プーリ31,32は、ミシンベッド部111の左端部内で左右方向に沿った軸回りに回転可能に支持されている。そして、第一及び第二プーリ31,32は、回転軸27,28を介して、それぞれ、第1モータ25と第2モータ26から回転動作が付与される。
第一及び第二プーリ31,32は、前後方向から見て重複する配置、即ち、同じ高さで左右方向について同じ位置である。また、第一プーリ31が第二プーリ32の前側に配置されている。
【0022】
第一及び第二プーリ31,32は、いずれも、左右方向に並列に配置された下ベルト21,22,23,24の全てを掛け渡すことが可能である。
即ち、第一プーリ31は、外周面に、後左下ベルト21,前左下ベルト22を掛け渡すための左溝311と前右下ベルト23,後右下ベルト24を掛け渡すための右溝312とを有する。
第二プーリ32は、外周面に、後左下ベルト21,前左下ベルト22を掛け渡すための左溝321と前右下ベルト23,後右下ベルト24を掛け渡すための右溝322とを有する。
各下ベルト21~24は、幅が等しく、左溝及び右溝311,312,321,322は、いずれも、少なくともベルト二本分の幅を有する。
これにより、各下ベルト21~24は、いずれも、第一プーリ31と第二プーリ32とを適宜選択して掛け渡すことができる。
【0023】
各下ベルト21,22,23,24は、無端環状であって、ガイド枠29と第一プーリ31又はガイド枠29と第二プーリ32の間に掛け渡される。
また、各下ベルト21,22,23,24は、左から右に向かって順番に並列されている。
【0024】
ガイド枠29(ガイド部材)は、
図2に示すように、左右方向について各プーリ31,32と略一致し、前後方向について各プーリ31,32の間となるように配置されている。さらに、ガイド枠29は、各プーリ31,32の上方であって、針板101の真下に配置されている。
ガイド枠29は、
図5に示すように、ミシンベッド部111内に固定するためのブラケット部295と、各下ベルト21~24をガイドする円筒状の本体部296とを有する。
【0025】
ガイド枠29は、本体部296の中心軸が左右方向に向けられた状態で針板101の真下に配置されている。
本体部296の外周面上部の左右方向中央には、前後方向に沿った嵌合溝297が形成されている。嵌合溝297の内側には、前後方向に長尺な板状の針穴部材30が固定状態で嵌合配置されている。針穴部材30は、針落ち位置に上下に貫通した針穴13が形成されている。
針穴部材30における針穴13の形成面は、針板101の上面と同じ高さ又はわずかに高くなっている。
【0026】
また、本体部296は、その外周面の上部で周方向に各下ベルト21~24を摺動させて被縫製物の送りを行わせる。このため、本体部296の外周面の上部には、それぞれの下ベルト21~24をガイドする第一~第四ガイド部291,292,293,294が設けられている。
第一ガイド部291は針穴13の左後方、第二ガイド部292は針穴13の左前方、第三ガイド部293は針穴13の右前方、第四ガイド部294は針穴13の右後方に設けられている。
各ガイド部291~294は、いずれも、前後方向に延在する凸条であり、左右方向の幅が各下ベルト21~24と等しいか幾分広い。各ガイド部291~294の後端部は、本体部296の外周面に対して半径方向外側への突出量が前に向かって漸増するスロープとなっている。また、各ガイド部291~294の前端部は、本体部296の外周面に対して半径方向外側への突出量が前に向かって漸減するスロープとなっている。
【0027】
第一ガイド部291は、針穴13よりも左側であって、ほぼ全長に渡って針穴13の中心よりも後側に位置している。
そして、第一ガイド部291は、本体部296の半径方向外側への最大突出部より前側に平坦且つ水平となるガイド面291a(
図5模様部分)を有する。ガイド面291aは、上から見て針板101の複合開口部102に臨む配置である。
そして、ガイド面291aは、その上を摺接して通過する後左下ベルト21の外側面が針板101の上面よりも僅かに高くなるように設定されている。
ガイド面291aは、その前端部が針穴13の中心よりもわずかに後方に位置し、後左下ベルト21が針穴13の中心より後側で被縫製物に当接するように形成されている。
【0028】
第二ガイド部292は、針穴13よりも左側且つ第一ガイド部291よりも右側であって、ほぼ全長に渡って針穴13の中心よりも前側に位置している。
そして、第二ガイド部292は、本体部296の半径方向外側への最大突出部より後側に平坦且つ水平となるガイド面292a(
図5模様部分)を有する。ガイド面292aは、上から見て針板101の複合開口部102に臨む配置である。
そして、ガイド面292aは、その上を摺接して通過する前左下ベルト22の外側面が針板101の上面よりも僅かに高くなるように設定されている。
ガイド面292aは、その後端部が針穴13の中心よりもわずかに前方に位置し、前左下ベルト22が針穴13の中心より前側で被縫製物に当接するように形成されている。
【0029】
第三ガイド部293は、針穴13よりも右側であって、ほぼ全長に渡って針穴13の中心よりも前側に位置している。
そして、第三ガイド部293は、本体部296の半径方向外側への最大突出部より後側に平坦且つ水平となるガイド面293a(
図5模様部分)を有する。ガイド面293aは、上から見て針板101の複合開口部102に臨む配置である。
そして、ガイド面293aは、その上を摺接して通過する前右下ベルト23の外側面が針板101の上面よりも僅かに高くなるように設定されている。
ガイド面293aは、その後端部が針穴13の中心よりもわずかに前方に位置し、前右下ベルト23が針穴13の中心より前側で被縫製物に当接するように形成されている。
【0030】
第四ガイド部294は、針穴13及び第三ガイド部293よりも右側であって、ほぼ全長に渡って針穴13の中心よりも後側に位置している。
そして、第四ガイド部294は、本体部296の半径方向外側への最大突出部より前側に平坦且つ水平となるガイド面294a(
図5模様部分)を有する。ガイド面294aは、上から見て針板101の複合開口部102に臨む配置である。
そして、ガイド面294aは、その上を摺接して通過する後右下ベルト24の外側面が針板101の上面よりも僅かに高くなるように設定されている。
ガイド面294aは、その前端部が針穴13の中心よりもわずかに後方に位置し、後右下ベルト24が針穴13の中心より後側で被縫製物に当接するように形成されている。
【0031】
ガイド面291a,294aは針穴13の中心よりも後側、ガイド面292a,293aは針穴13の中心よりも前側に設けられている。このため、後側の後左下ベルト21,後右下ベルト24と前側の前左下ベルト22,前右下ベルト23とで速度差(搬送量差)を設けた場合に、各下ベルト21~24が干渉することなく、前後の送り速度差(搬送量差)による搬送力を被縫製物に付与することができる。従って、前後方向の差動送りにおける狙い通りの縫い目が形成され、縫い品質の向上を図ることが可能となる。
【0032】
第一加圧機構33は、各下ベルト21~24の内、ガイド枠29と第一プーリ31との間に掛け渡された全てのベルトに対して張力を付与して弛みの発生を抑止する。
第一加圧機構33は、
図2,
図3及び
図6に示すように、左加圧ローラ331と、右加圧ローラ332と、支持板333と、ベースブロック334とを有する。
【0033】
支持板333は、前後上下方向に沿った長尺の平板状であって、長手方向が前斜め上方向を向いた状態でベースブロック334に支持されている。
さらに、支持板333は、その上端部の左面と右面とで左加圧ローラ331と右加圧ローラ332とを同心且つ回転可能に支持する。支持板333は、ガイド枠29-第一プーリ31間に渡るベルトの外側面に対して後部下方から左加圧ローラ331及び右加圧ローラ332が当接するように配置されている。
【0034】
ベースブロック334は、後述する第二加圧機構34と共用され、第一及び第二加圧機構33、34の構成を支持する。ベースブロック334は、ミシンベッド部111内において、ガイド枠29の下方に固定装備されている。
支持板333は、その長手方向に沿った長穴を有し、ベースブロック334に対して長穴に挿通された二つのボルトによって締結固定される。支持板333の長手方向は、第一プーリ31に掛け渡されたベルトに対して略直交する方向に向けられている。このため、ボルトを緩めて支持板333を長穴に沿って移動させることで、ベルトに対する左加圧ローラ331及び右加圧ローラ332の圧接力を調節することができる。換言すると、ガイド枠29と第一プーリ31との間を渡るベルトのテンションを調節することができる。
【0035】
左加圧ローラ331と右加圧ローラ332は、外径が等しく、支持板333によって左右方向に沿った同一軸回りに回転可能に支持されている。また、左加圧ローラ331及び右加圧ローラ332の左右の幅は、いずれも各下ベルト21~24の幅の二倍かそれ以上の幅を有する。
これにより、左加圧ローラ331は、ガイド枠29と第一プーリ31との間に掛け渡された後左下ベルト21と前左下ベルト22のいずれにも当接させることができる。
同様に、右加圧ローラ332は、ガイド枠29と第一プーリ31との間に掛け渡された前右下ベルト23と後右下ベルト24のいずれにも当接させることができる。
【0036】
第二加圧機構34は、各下ベルト21~24の内、ガイド枠29と第二プーリ32との間に掛け渡された全てのベルトに対して張力を付与して弛みの発生を抑止する。
第二加圧機構34は、
図2,
図3及び
図6に示すように、左加圧ローラ341と、右加圧ローラ342と、支持板343と、前述したベースブロック334とを有する。
【0037】
支持板343は、前述した支持板333と同一の構造であり、長手方向が後斜め上方向を向いた状態でベースブロック334に支持されている。
また、支持板343は、その上端部の左面と右面とで左加圧ローラ341と右加圧ローラ342とを同心且つ回転可能に支持する。支持板343は、ガイド枠29-第二プーリ32間に渡るベルトの外側面に対して後部上方から左加圧ローラ341及び右加圧ローラ342が当接するように配置されている。
【0038】
支持板343も長穴を有し、支持板343を当該長穴に沿って移動させることができる。これにより、第二プーリ32に掛け渡されたベルトに対する左加圧ローラ341及び右加圧ローラ342の圧接力を調節することができる。従って、ガイド枠29と第二プーリ32との間を渡るベルトのテンションを調節することができる。
【0039】
左加圧ローラ341と右加圧ローラ342は、外径が等しく、支持板343によって左右方向に沿った同一軸回りに回転可能に支持されている。また、左加圧ローラ341及び右加圧ローラ342の左右の幅は、いずれも各下ベルト21~24の二倍かそれ以上の幅を有する。
これにより、左加圧ローラ341は、ガイド枠29と第二プーリ32との間に掛け渡された後左下ベルト21と前左下ベルト22のいずれにも当接させることができる。
同様に、右加圧ローラ342は、ガイド枠29と第二プーリ32との間に掛け渡された前右下ベルト23と後右下ベルト24のいずれにも当接させることができる。
【0040】
第一加圧機構33の左加圧ローラ331と第二加圧機構34の左加圧ローラ341は、いずれも、後左下ベルト21と前左下ベルト22とに当接させることができる。同様に、第一加圧機構33の右加圧ローラ332と第二加圧機構34の右加圧ローラ342は、いずれも、前右下ベルト23と後右下ベルト24とに当接させることができる。
従って、各下ベルト21~24を第一プーリ31と第二プーリ32のいずれに掛け渡しても、第一加圧機構33又は第二加圧機構34のいずれかによってテンションが付与される。
【0041】
図6は針落ち位置の前側で送る前左下ベルト22,前右下ベルト23を第一プーリ31、後側で送る後左下ベルト及び後右下ベルト21,24を第二プーリ32に掛け渡した状態を示す。
図7は針落ち位置の左側で送る後左下ベルト21,前左下ベルト22を第一プーリ31、前右下ベルト23,後右下ベルト24を第二プーリ32に掛け渡した状態を示す。
【0042】
各下ベルト21~24は、ボルトを緩めて各加圧ローラ331,332,341,342を後退させると、各プーリ31,32から容易に外して架け替えることが可能である。
このため、
図6の掛け渡し状態での縫製と
図7の掛け渡し状態での縫製とを容易に選択して行うことが可能である。
【0043】
例えば、
図6の掛け渡し状態(前後差動送り状態とする)では、針落ち位置より前側を後側より速く送るいわゆるいせ込み縫いを行うことが可能である。
また、前後差動送り状態では、針落ち位置より前側を後側より遅く送り、被縫製物にテンションを加える縫製を行うことも可能である。
【0044】
図7の掛け渡し状態(左右差動送り状態とする)では、左側を速く送れば右曲がりの曲線縫いを行うことができ、右側を速く送れば左曲がりの曲線縫いを行うことができる。
また、左右の速度差(搬送量差)の大小に応じて曲率を変えることができるので多様な曲線縫いを行うことが可能である。
本実施形態では、ミシン100を左右差動送り状態で使用することを前提とする。従って、これ以降の説明では、各下ベルト21~24は、
図7の掛け渡し状態とされているものとする。
【0045】
[布押さえ機構]
図8は針板101上で被縫製物を上から押さえる押さえ機構としての布押さえ機構70の斜視図、
図9は後面図、
図10は分解斜視図である。
布押さえ機構70は、押さえ足71、押さえ棒72、取付台74、押さえモータ73(
図13参照)、高さセンサ762(
図13参照)を有する。
【0046】
押さえ棒72は、針棒12の前隣に配置され、上下方向に沿った状態でミシンアーム部113の内部に上下動可能に支持されている。
押さえ棒72の上端部は、ミシンアーム部113の内部において、図示しない押さえバネにより下方に押圧されている。押さえバネの伸縮量は、動作量を任意に制御可能な押さえモータ73によって調節可能である。従って、押さえモータ73を制御することにより、押さえ足71の押さえ圧を任意に設定することが可能である。
【0047】
また、押さえ棒72には、その高さを検出する高さセンサ762が併設されている。従って、押さえ足71の押さえ圧を規定値に設定した後、被縫製物の厚さの変化によって押さえ足71の高さが変化したことを高さセンサ762が検出した場合に、押さえバネの伸縮量が変化しないように押さえモータ73を制御することにより、押さえ圧を一定の設定値に維持することが可能である。
【0048】
押さえ足71は、取付台74を介して押さえ棒72の下端部に装備されている。取付台74は、上面と下面とが水平且つ平坦なブロックである。取付台74は、押さえ棒72を挿入可能な挿入孔が上下に貫通形成されている。取付台74は、挿入孔から外縁部に達する切れ目が形成されており、当該切れ目の隙間幅を狭めるように締結するネジ741が設けられている。挿入孔に押さえ棒72の下端部が挿入された状態でネジ741を締結すれば、押さえ棒72を抱き締め固定することができ、ネジ741を緩めれば、押さえ棒72から取付台74を取り外すことができる。
【0049】
取付台74は、下面より押さえ棒72の下端部が僅かに突出した状態で押さえ棒72に対する取り付けが行われる。
押さえ棒72の下端部は、下面が平滑であり、押さえ足71が上部の平坦面712dを当接させた状態で取り付けられる。
取付台74の左側面には、押さえ足71の上端部を取り付けるためのガイドとなる凸条742が前後方向に沿って形成されている。
また、取付台74の前端部には、後述する上送り機構40のリンク部材474の下端部が左右方向に沿った軸回りに回動可能に連結されている。
【0050】
押さえ足71は、針板101の複合開口部102の上に配置されている。押さえ足71は、被縫製物を上から押さえて、各下ベルト21~24による搬送力を被縫製物に適切に伝達させる。また、押さえ足71は、上送り機構40の左上ベルト41及び右上ベルト42を搬送可能に支持している。そして、押さえ足71は、各上ベルト41,42を被縫製物に押し付けてその搬送力を被縫製物に適切に伝達させる機能も有する。
【0051】
押さえ足71は、
図8~
図10に示すように、被縫製物を上から押さえる底板711と押さえ棒72の下端部に取り付けられる連結部712とを有する。
【0052】
底板711は、底面が平滑であって布送り方向上流側(後端部)が上方に反り上がったいわゆる舟形を呈する。
連結部712は、底板711の前端部上面に立設され、底板711に対して左右方向に沿った軸回りに幾分揺動可能に連結されている。連結部712の上部には、押さえ棒72の下端部の下面に当接する平坦面712dが形成されている。また、連結部712の上部の左端には、側壁712aが立設されている。当該側壁712aの右面は、取付台74の左側面に対向すると共に、凸条742に嵌合する凹溝712bが形成されている。
連結部712は、上部の平坦面を取付台74の下面に当接させると共に、凹溝712bに凸条742を嵌合させた状態で鉛直上下方向に沿った正しい姿勢となる。
さらに、側壁712aには、ネジ743の挿通孔712cが左右方向に貫通形成されている。一方、取付台74の左側面にはネジ穴744が形成されている。従って、ネジ743を挿通孔712cに通してネジ穴744に締結することにより、取付台74に対して押さえ足71を適正な姿勢で適正な位置に固定することが出来る。なお、ネジ743を緩めることで、押さえ足71を取付台74及び押さえ棒72から取り外すこともできる。
【0053】
[上送り機構]
図1,
図2,
図8~
図10に示すように、上送り機構40は、搬送ベルトとしての左上ベルト41及び右上ベルト42と、前述した左右のベルトガイド43,44と、左上ベルト41のベルト送りの駆動源となる左上モータ45と、右上ベルト42のベルト送りの駆動源となる右上モータ46と、各上モータ45,46から押さえ足71まで各上ベルト41,42をガイドするガイド機構47とを備えている。
【0054】
左右のベルトガイド43,44は、押さえ足71の左右両側に装備されている。
各ベルトガイド43,44は、押さえ足71の連結部712の下部の左右の側面に対して左右方向に沿った支軸431によって回動可能に取り付けられている。
【0055】
各ベルトガイド43,44は、側面視で、前端部が前斜め上に向かって延出され、後端部の手前で針板101に最も近接し、後端部は後斜め上側に浮き上がった形状となっている。また、各ベルトガイド43,44は、それぞれ、後端部に左右方向に沿った軸によって回転可能な送りローラ432,442を備えている。
左右の無端環状の上ベルト41,42は、それぞれ、左右のベルトガイド43,44と押さえ足71の側面との間を通るようにガイドされる。即ち、左右の上ベルト41,42は、それぞれ、送りローラ432,442の上部から外周に沿って下方に折り返され、各ベルトガイド43,44における針板101に最も近接する部位を前方に向かって進行するようにガイドされた後、前斜め上の方向に抜けてゆく。各上ベルト41,42は、各ベルトガイド43,44における針板101に最も近接する部位に沿って前方に進行する際に、針板101上の被縫製物に当接して前側への送りを行う。
【0056】
また、前述したように、各ベルトガイド43,44は、支軸431によって押さえ足71に軸支されている。そして、各ベルトガイド43,44の前端部には、引っ張りバネ433,443の一端部が連結されている。各引っ張りバネ433,443は、他端部が押さえ足71の連結部712の上部に連結されており、各ベルトガイド43,44の前端部に上側への張力を付与している。
このため、各ベルトガイド43,44の後端部側は下方への回動が付勢され、針板101に最も近接する部位に沿って前方に進行する各上ベルト41,42に対して針板101側への圧接力が付与される。
【0057】
左右の上モータ45,46は、回転数が制御可能なモータ、例えば、直流モータ、交流モータ、ステッピングモータ等が使用される。
そして、左上モータ45は、出力軸を左方に向けた状態で、モータブラケット451を介してミシンアーム部113の左端部の前側に支持されている。
また、右上モータ46は、出力軸を左方に向けた状態で、モータブラケット451を介してミシンアーム部113の左端部の前側において、左上モータ45の上方に支持されている。
【0058】
そして、左上モータ45の出力軸にはモータプーリ452が装備され、当該モータプーリ452には、左上ベルト41の一端部が巻回されている。
また、右上モータ46の出力軸にはモータプーリ462が装備され、当該モータプーリ462には、右上ベルト42の一端部が巻回されている。
【0059】
左上ベルト41は、無端環状であり、環を引き延ばした状態の一端部が左上モータ45のモータプーリ452に掛け渡され、ベルトガイド43の送りローラ432に他端部が掛け渡されている。
右上ベルト42も、無端環状であり、環を引き延ばした状態の一端部が右上モータ46のモータプーリ462に掛け渡され、前述したベルトガイド44の後端部の送りローラ442に他端部が掛け渡されている。
【0060】
そして、左上ベルト41におけるモータプーリ452から送りローラ432に至る経路と、右上ベルト42におけるモータプーリ462から送りローラ442に至る経路は、左右方向から見て、モータプーリ452,462の周辺を除いて重複している。なお、左上ベルト41に対して右上ベルト42は、右側に配置されている。
【0061】
ガイド機構47は、左上ベルト41と右上ベルト42とをそれぞれの上記経路に沿ってガイドする。
ガイド機構47は、左右に並んだ一対の第一テンションローラ471と、左右に並んだ一対の第二テンションローラ472と、上下のリンク部材473,474からなるガイドアーム475と、各上ベルト41,42の経路上の各部に回転可能に設けられた複数のガイドローラ476とを有する。
【0062】
一対の第一テンションローラ471は、モータプーリ452の下方に配置されている。また、一対の第二テンションローラ472は、モータプーリ452と一対の第一テンションローラ471との間に配置されている。
一対の第一テンションローラ471は、左右方向に沿った軸回りに回転可能であって、軸方向の幅が広い。そして、一対の第一テンションローラ471は、左上ベルト41と右上ベルト42の双方に対して外側から圧接してこれらに内側向きのテンションの付与を行う。
一対の第二テンションローラ472は、左右方向に沿った軸回りに回転可能であって、軸方向の幅が狭い。そして、一対の第二テンションローラ472は、右上ベルト42のみに対して内側から圧接して外側向きのテンションの付与を行う。
また、右上ベルト42は、一対の第二テンションローラ472によって左右両側に広げられるので、経路の途中にあるモータプーリ452との干渉を回避することが出来る。
【0063】
ガイドアーム475を構成する上側のリンク部材473は、一端部がモータブラケット451の下端部に左右方向に沿った軸回りに回動可能に連結されている。また、上側のリンク部材473の他端部は、左右方向に沿った軸回りに回動可能に下側のリンク部材474の一端部に連結されている。
さらに、下側のリンク部材474の他端部は、前述したように、取付台74の前端部に左右方向に沿った軸回りに回動可能に連結されている。
【0064】
上側のリンク部材473と下側のリンク部材474の連結部には、左上ベルト41と右上ベルト42とに対して、環の内側に前側から当接するガイドローラ476と、環の外側に前側から当接するガイドローラ(図示略)とが設けられている。
これにより、左右の上ベルト41,42は、上側のリンク部材473に沿った経路と下側のリンク部材474に沿った経路とによって搬送が行われる。
従って、押さえ足71が被縫製物の厚さの変化や凹凸によって昇降し、上側のリンク部材473と下側のリンク部材474の屈曲角度が変動を生じた場合でも、左右の上ベルト41,42は、上側のリンク部材473に沿った経路と下側のリンク部材474に沿った経路とが維持される。このため、各上ベルト41,42の経路長が一定に維持され、張力の変動を抑制することができる。
【0065】
[端部検出装置]
図11は端部検出装置80が装備される針板101の周辺を示す斜視図、
図12は後面図を示す。
これらの図示のように、端部検出装置80は、上検出部としての上側端部センサ811,812と、下検出部としての下側端部センサ821,822と、センサ保持枠83と、ガイドとしての上ガイド84と、ガイドとしての下ガイド85と、筐体86とを有する。
【0066】
筐体86は、矩形の天板部861と天板部861の前端部と後端部とに設けられた二つの壁部862とを有する。筐体86は、底部と左端部とが開放されている。
筐体86は、針板101上において、左右方向について、全体が針落ち位置より幾分右側に配置される。また、筐体86は、針板101上において、前後方向について、全体が針落ち位置より幾分後側(送り方向上流側)に配置される。
また、筐体86の前側及び後側の壁部862は、いずれも左端の下端部が右方に切り欠かれている。この切り欠きは、縫製時に前方に送られる被縫製物である上布C1及び下布C2の右端部との接触を回避するためのものである。
【0067】
筐体86は、端部検出装置80の構成全体を支持している。そして、筐体86は、ミシンベッド部111の上面に対して上述の配置で取り付けられている。
この場合、筐体86は、周知の固定構造、例えばネジ止め等により、ミシンベッド部111の上面に固定してもよい。また、筐体86の下端部に永久磁石を設ける等して、端部検出装置80の全体を着脱可能としてもよい。その場合には、筐体86が位置決めできるように、ミシンベッド部111側に凹部や凸部を設け、筐体86の下端部が嵌合して位置決め可能な構造を設けることが好ましい。
【0068】
センサ保持枠83は、筐体86の前側の壁部862の後面に支持されている。センサ保持枠83の左端部には、上から順番に、上壁部831、中間壁部833、下壁部832が並んで設けられ、前後方向から見て櫛歯状を呈している。上壁部831、中間壁部833及び下壁部832は、いずれも前後左右方向に沿った板状であって、各々の左端部は、針落ち位置よりも幾分左方まで延出されている。
そして、上送り機構40によって前方に向かって送られる上布C1の右の側端部が上壁部831と中間壁部833との間を通過する。
同様に、下送り機構20によって前方に向かって送られる下布C2の右の側端部が下壁部832と中間壁部833との間を通過する。
【0069】
下壁部832と中間壁部833の間に下布C2を挿入するために、センサ保持枠83は、下壁部832のほぼ全体が針板101に設けられた矩形の開口部103の内側に格納され、下壁部832の上面が針板101の上面と同じ高さとなっている。
なお、中間壁部833の下面と針板101の上面との間に下布C2が挿入可能な程度に隙間が確保できればよいので、下壁部832の上面は、針板101の上面よりも低位置となってもよい。
【0070】
上壁部831の下面には、針落ち位置に対して右側に所定距離Sとなる位置を挟んで左右両側に下方に向けられた上側端部センサ811,812が設けられている。距離Sは、上布C1及び下布C2の縫い代の目標値と一致する。縫い代は、被縫製物の端縁部に沿って縫製を行う場合の当該端縁部から縫い目までの距離である。
上側端部センサ811,812は、光源と受光素子とがいずれも下方に向けられた、いわゆる反射型のフォトインタラプタからなる。中間壁部833の上面は、反射面となっており、上側端部センサ811,812は、光源光の反射光を受光素子が受光することができる。
【0071】
上側端部センサ811,812の検出出力は、制御装置90に入力され、制御装置90は、反射光の受光量の低下から、上布C1の右端が検出位置に存在することを認識することができる。
上側端部センサ811,812は、それぞれ距離Sとなる位置から左側又は右側に僅かに離隔して設けられている。即ち、これらの上側端部センサ811,812は、上布C1の右端部が距離Sに位置するとみなせる許容範囲を示している。
制御装置90は、縫製時に、上壁部831と中間壁部833の間に、左側から上布C1の右端部が進入した状態で、左側の上側端部センサ811から上布C1の右端が検出されなくなると、上布C1を右方に移動させる制御を行い、右側の上側端部センサ812から上布C1の右端が検出されると、上布C1を左方に移動させる制御を行う。これにより、上布C1の右端を左右の上側端部センサ811,812の間に維持する制御を行う。
【0072】
下壁部832の上面には、針落ち位置に対して右側に所定距離Sとなる位置を挟んで左右両側に上方に向けられた下側端部センサ821,822が設けられている。
下側端部センサ821,822も、反射型のフォトインタラプタからなる。中間壁部833は、その下面も反射面となっている。
【0073】
下側端部センサ821,822の場合も、制御装置90は、反射光の受光量の低下から、下布C2の右端が検出位置に存在することを認識することができる。
下側端部センサ821,822の左右方向の配置は、上側端部センサ811,812と同じであり、下布C2の右端部が距離Sに位置するとみなせる許容範囲を示している。
制御装置90は、縫製時に、下壁部832と中間壁部833の間に、左側から下布C2の右端部が進入した状態で、左側の下側端部センサ821から下布C2の右端が検出されなくなると、下布C2を右方に移動させる制御を行い、右側の下側端部センサ822から下布C2の右端が検出されると、下布C2を左方に移動させる制御を行う。これにより、下布C2の右端を左右の上側端部センサ821,822の間に維持する制御を行う。
【0074】
なお、上側端部センサ811,812及び下側端部センサ821,822については、フォトインタラプタに限定されず、布端を検出可能ないかなる検出手段も利用できる。例えば、マイクロスイッチ等によって、上布C1又は下布C2の右端部が左方から接触した場合に縫い代が距離Sを超えつつあることを検出してもよい。
【0075】
上ガイド84と下ガイド85とは、いずれも板状のガイドである。
上ガイド84は、センサ保持枠83の上壁部831と中間壁部833の間に上布C1を導くためのものである。
下ガイド85は、センサ保持枠83の下壁部832と中間壁部833の間に下布C2を導くためのものである。下ガイド85は、上布C1と下布C2とを分離させる機能も有する。
【0076】
下ガイド85は、中間壁部833から後方及び左方に延出されている。下ガイド85は、中間壁部833と概ね同程度の厚さで形成されており、下ガイド85の上面は中間壁部833の上面と同じ高さ、下ガイド85の下面は中間壁部833の下面と同じ高さとなるように筐体86の奥で支持されている。
また、下ガイド85の後方及び左方の延出端部は、幾分上側に屈曲又は湾曲形成されている。これにより、縫製の際に、下布C2を下ガイド85の下側に送り込み易くなっている。
【0077】
上ガイド84は、上壁部831から後方及び左方に延出されている。上ガイド84の下面は上壁部831の下面と同じ高さとなるように筐体86の奥で支持されている。
また、上ガイド84の後方及び左方の延出端部は、幾分上側に屈曲又は湾曲形成されている。これにより、縫製の際に、上布C1を上ガイド84と下ガイド85の間に送り込み易くなっている。
【0078】
[ミシンの制御系]
図13はミシン100の制御系を示すブロック図である。
図示のように、ミシン100は、各構成の動作制御を行う制御装置90を備えている。そして、この制御装置90には、ミシンモータ16、押さえモータ73、第1モータ25、第2モータ26、左上モータ45、右上モータ46が各々のモータ駆動回路16a,73a,25a,26a,45a,46aを介して接続されている。
また、ミシンモータ16、押さえモータ73、第1モータ25、第2モータ26、左上モータ45、右上モータ46には、その回転数を検出するエンコーダ161,732,251,261,453,461が併設されている。これらのエンコーダ161,732,251,261,453,461もモータ駆動回路16a,73a,25a,26a,45a,46aを介して制御装置90に接続されている。
【0079】
制御装置90は、CPU91、ROM92、RAM93、EEPROM94(登録商標)を備え、後述する各種の動作制御を実行する。
ROM92には、基本となるシステムプログラムが格納されている。
また、EEPROM94には、各種の設定データや他のプログラム等が記憶されている。なお、上記各種の設定データ、プログラムは、EEPROMに替えてフラッシュメモリー、EPROM又はHDD等の不揮発性の記憶装置を設け、これらに記憶しても良い。
CPU91は、ROM92、EEPROM94内の各種のプログラムを実行する。RAM93は、CPU91の作業領域となるメモリである。
【0080】
また、制御装置90には、インターフェイス96aを介して操作入力部96が接続されている。
操作入力部96は、入力画面961を備えており、各種設定を入力する際に必要な情報が表示される。
また、操作入力部96からは、縫いピッチ、布押さえ機構70による縫製時の押さえ圧の設定値等を設定入力することができる。
【0081】
また、制御装置90には、踏み込み操作により縫製の開始及び停止、縫製速度の増減操作等を入力するペダル95がインターフェイス95aを介して接続されている。
【0082】
また、制御装置90には、押さえ足71の高さを検出する高さセンサ762、前述した上側端部センサ811,812及び下側端部センサ821,822がインターフェイス762a,811a,812a,821a,822aを介して接続されている。
【0083】
[縫製制御]
ここで、制御プログラム941に基づいて行われる被縫製物の縫製制御について説明する。
図14は制御プログラム941を実行するCPU91が行う処理を示したフローチャートである。
【0084】
まず、ミシンのオペレータは、下布C2を下ガイド85と針板101の間に送り込み、上布C1を上ガイド84と下ガイド85との間に送り込んでペダル95の踏み込みを行う。
【0085】
これに対して、制御装置90のCPU91は、ペダル95の踏み込みを監視しつつ待機しており(ステップS1)、踏み込みを検出すると、EEPROM94内の送りピッチの設定値の読み込みを行う(ステップS3)。
【0086】
そして、CPU91は、ミシンモータ16をペダル95の踏み込み量に応じた速度で駆動する(ステップS5)。さらに、設定された送りピッチで針落ちが行われる速度で、左上モータ45、右上モータ46、第1モータ25、第2モータ26の駆動を開始させる(ステップS7)。
これにより、上布C1及び下布C2がそれぞれ個別に前方に送られる。
【0087】
次いで、CPU91は、左側の上側端部センサ811により上布C1の右端部が検出されたか否かを判定し(ステップS9)、検出された場合には、右側の上側端部センサ812により上布C1の右端部が検出されたか否かを判定する(ステップS10)。
そして、右側の上側端部センサ812でも上布C1の右端部が検出された場合には、上布C1が右に寄り過ぎていると判定する。
このため、CPU91は、左上モータ45と右上モータ46の回転速度の平均が設定された送りピッチを維持する回転速度としつつ、右上モータ46の方が回転速度が高くなるように差動送りを実行する(ステップS11)。これにより上布C1は、左方寄りに送りが行われる。そして、ステップS15に処理を進める。
【0088】
また、ステップS9において、左側の上側端部センサ811により上布C1の右端部が検出されない場合には、上布C1が左に寄り過ぎていると判定する。
このため、CPU91は、左上モータ45と右上モータ46の回転速度の平均が設定された送りピッチを維持する回転速度としつつ、左上モータ45の方が回転速度が高くなるように差動送りを実行する(ステップS13)。これにより上布C1は、右方寄りに送りが行われる。そして、ステップS15に処理を進める。
【0089】
また、ステップS10において、右側の上側端部センサ812により上布C1の右端部が検出されなかった場合には、上布C1の右端部が適正な位置にあるものとして、ステップS15に処理を進める。
【0090】
次いで、CPU91は、左側の下側端部センサ821により下布C2の右端部が検出されかを判定し(ステップS15)、検出された場合には、右側の下側端部センサ822により下布C2の右端部が検出されたか否かを判定する(ステップS16)。
そして、右側の下側端部センサ822でも下布C2の右端部が検出された場合には、下布C2が右に寄り過ぎていると判定する。
このため、CPU91は、第1モータ25と第2モータ26の回転速度の平均が設定された送りピッチを維持する回転速度としつつ、第2モータ26の方が回転速度が高くなるように差動送りを実行する(ステップS17)。これにより下布C2は、左方寄りに送りが行われる。そして、ステップS21に処理を進める。
【0091】
また、ステップS15において、左側の下側端部センサ821により下布C2の右端部が検出されない場合には、下布C2が左に寄り過ぎていると判定する。
このため、CPU91は、第1モータ25と第2モータ26の回転速度の平均が設定された送りピッチを維持する回転速度としつつ、第1モータ25の方が回転速度が高くなるように差動送りを実行する(ステップS19)。これにより下布C2は、右方寄りに送りが行われる。そして、ステップS21に処理を進める。
なお、ステップS11,S13,S17,S19の差動量は、操作入力部96から予め任意に設定可能としてもよい。
【0092】
また、ステップS16において、右側の下側端部センサ822により下布C2の右端部が検出されなかった場合には、下布C2の右端部が適正な位置にあるものとして、ステップS21に処理を進める。
【0093】
そして、CPU91は、ペダル95の踏み込みが解除されたか否かを判定し(ステップS21)、ペダル95の踏み込みが解除されていない場合にはステップS9に処理を戻して、再び、上布C1と下布C2の左右の偏りを修正しながら縫製を継続する。
【0094】
また、ペダル95の踏み込みが解除された場合には、左上モータ45、右上モータ46、第1モータ25、第2モータ26及びミシンモータ16の駆動を停止させて縫製を終了する。
【0095】
[発明の実施形態の技術的効果]
以上のように、ミシン100は、端部検出装置80の検出に基づいて、制御装置90が、上送り機構40、下送り機構20による上布C1及び下布C2の左側と右側の縫い方向の送り量の差を生じるように制御する。
これにより、従来のように、直進する主送り方向に対して直交する方向に強制的に送り動作を加えて進路を矯正する場合と異なり、上布C1及び下布C2は、滑らかに進路変更を行いつつ、縫い代を一定に維持することが可能となる。
これにより、曲線的な縫製を行う場合であっても縫い品質の高い縫製を行うことが可能となる。
【0096】
また、下送り機構20は、左ベルトとしての後左下ベルト21及び前左下ベルト22と右ベルトとしての前右下ベルト23及び後右下ベルト24とを有するので、ベルト送りが可能である。このため、送り歯が押し付けられる場合と異なり、下布C2が薄手の生地や繊細な生地である場合でもこれらを保護しながら良好な送りを行うことが可能となる。
【0097】
また、上送り機構40は、左上ベルトとしての左上ベルト41と右ベルトとしての右上ベルト42とを有するので、ベルト送りが可能である。このため、送り歯が押し付けられる場合と異なり、上布C1が薄手の生地や繊細な生地である場合でもこれらを保護しながら良好な送りを行うことが可能となる。
【0098】
また、端部検出装置80は、上側に重ねられた上布C1の端部を検出する上側端部センサ811,812と、下側に重ねられた下布C2の端部を検出する下側端部センサ821,822とを有している。
従って、端部検出装置80は、上布C1と下布C2について個別に端部位置を検出することができ、上布C1と下布C2のそれぞれを個別に進路を矯正してそれぞれについて縫い代を一定に維持することが可能となる。
これにより、上布C1と下布C2の側端部の形状が異なる場合でも、良好な縫い合わせを実現することが可能となる。
【0099】
また、端部検出装置80は、上側端部センサ811,812及び下側端部センサ821,822よりも送り方向上流側で、下布C2と上布C1とを分離させる下ガイド85を有する。このため、下布C2の側端部と上布C1の側端部とが干渉することなく、個別に端部検出を行うことができるので、端部検出の精度が向上し、下布C2と上布C1とをそれぞれ精度良く縫い代を一定に維持する縫製を行うことが可能となる。これにより、さらに縫い品質の高い縫製を行うことが可能となる。
【0100】
また、下ガイド85は、下布C2と上布C1とが接触により摺動し、互いに引きずられることを抑制することができ、下布C2と上布C1の側端部がそれぞれ精度良く左右方向に位置調整されるため、特に、側端部の形状が異なる場合であっても、互いの縫い合わせを良好に行うことができ、さらに縫い品質の高い縫製を行うことが可能となる。
【0101】
[端部検出装置の他の形態]
端部検出装置80は、上述した構成に限定されない。
例えば、センサ保持枠83に設ける上側端部センサ811,812及び下側端部センサ821,822に替えて、
図15に示すように、左右方向に均一間隔で三個以上並んだ上側端部センサ81及び下側端部センサ82を利用してもよい。
この場合、上側端部センサ81及び下側端部センサ82が複数の奇数個からなる場合には、左右方向の中央に位置するものが目標とする縫い代の位置(距離Sの位置)となる配置とする。また、上側端部センサ81及び下側端部センサ82が複数の偶数個からなる場合には、左右方向の中央に位置するものが目標とする縫い代の位置(距離Sの位置)の左右両側に同数並ぶ配置とする。
そして、制御装置90は、上布C1又は下布C2の布端が目標とする縫い代の布端位置よりも大きく外れている場合には、左右の送りの差動量を大きくし、小さく外れている場合には、左右の送りの差動量を小さくする等の制御を左上モータ45及び右上モータ46に対して行うことが好ましい。
なお、左右方向に複数並んだ上側端部センサ81又は下側端部センサ82に替えて、左右方向に並んだ検出部としての複数の受光素子を有するライン状の受光センサを利用してもよい。
【0102】
また、左右方向に複数並んだ上側端部センサ81及び下側端部センサ82について、それぞれの内のいずれか一つを選択的に利用することで、選択したセンサ位置を縫い代とする縫製を行ってもよい。その場合、左右方向に複数並んだ上側端部センサ81及び下側端部センサ82の配置に基づいて、複数の幅を縫い代とする縫製を行うことが可能となる。
或いは、左右方向に複数並んだ上側端部センサ81及び下側端部センサ82について、隣り合う二つを選択的に利用することで、選択した二つのセンサの中間位置を縫い代とする縫製を行ってもよい。この場合も、左右方向に複数並んだ上側端部センサ81及び下側端部センサ82の配置に基づいて、複数の幅を縫い代とする縫製を行うことが可能となる。
また、前述したライン状の受光センサを利用する場合には、より高分解能で縫い代を設定して縫製を行うことが可能となる。
また、上側端部センサ81及び下側端部センサ82は送り方向に複数設けても良い。その場合、送り上流方向で上布C1及び下布C2の位置を事前に把握することにより、差動の効きを緩やかにして縫い線のふらつきや上布C1及び下布C2の皺を防ぐことも可能になる。
【0103】
また、端部検出装置80は、ミシンベッド部111の上面に対して、左右方向に位置調節可能に設置する構成としてもよい。例えば、筐体86をミシンベッド部111の上面に設置する場合に、筐体86とミシンベッド部111のいずれか一方に、左右方向に並んだ複数の位置決め穴や複数の位置決め凹部を設け、他方に位置決め穴に挿入可能なピンや位置決め凹部に嵌合可能な凸部を設けてもよい。これにより、複数の位置決め穴や複数の位置決め凹部のいずれか一つを選択して、ピン又は凸部を嵌めることで、左右方向における複数の位置を選択して端部検出装置80を配置することが可能である。
そして、左右方向について任意の配置を選択することで、縫い代を任意の幅とする縫製を行うことが可能となる。
【0104】
また、端部検出装置80をミシンベッド部111の上面に対して、左右方向に移動可能に設け、動作量を制御可能なモータを備える位置調節機構によって端部検出装置80を左右方向に任意に位置決め可能に構成してもよい。この場合、操作入力部96から任意の縫い代の値を設定可能とし、制御装置90が、縫い代の設定値に応じて、上記のモータにより端部検出装置80を左右方向に位置決めする動作制御を行う構成とすることが好ましい。
また、端部検出装置80をミシンベッド部111の上面に対して固定設置し、筐体86がセンサ保持枠83を左右方向に移動可能に支持する。さらに、動作量を制御可能なモータによってセンサ保持枠83を左右方向に任意に位置決め可能に構成してもよい。
【0105】
また、上布C1と下布C2とで同じ寸法の縫い代で縫製を行う構成を例示したが、上下のセンサ位置を変えて、上布C1と下布C2とで異なる寸法の縫い代で縫製を行ってもよい。さらに、上記のように、センサ位置を左右方向に移動可能とする場合には、上側と下側とでセンサ位置を個別に移動可能とすることが好ましい。
【0106】
[エアーの送出装置の搭載例]
図16は針板101に連なるミシンベッド部111の上面(縫製物の搬送面)に複数のエアーの送出口104を設け、各送出口104からエアーを送り出す送出装置を備える例を示す斜視図である。
この場合、大気圧よりも高圧のエアーを供給するファンや高圧空気タンク等のエアー発生源と、当該エアー発生源と各送出口104とを接続する管路と、各送出口104とエアー発生源と接続と切断を切り替え可能な電磁弁等を備える構成とする。そして、制御装置90が、縫製時に電磁弁を制御して、各送出口104からエアーの吹き出しを行う。
これにより、下布C2、上布C1と針板101とミシンベッド部111の上面との間にエアーが入り込み、相互間の摺動摩擦を低減して、下布C2、上布C1の送りや方向修正を円滑に行うことが可能となる。
従って、良好に送り方向が修正され、縫い代を安定的に目標値に維持することが可能となり、さらに縫い品質の高い縫製を行うことが可能となる。
【0107】
[その他]
以上、本発明の各実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られるものではない。例えば、実施形態において、単一の部材により一体的に形成された構成要素は、複数の部材に分割されて互いに連結又は固着された構成要素に置換してもよい。また、複数の部材が連結されて構成された構成要素は、単一の部材により一体的に形成された構成要素に置換してもよい。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0108】
また、上記ミシン100は、上送り機構40と下送り機構20の両方を備える構成を例示したが、これらはいずれか一方のみを備える構成としてもよい。その場合、上布C1と下布C2の側端部の形状が異なる場合には縫い合わせを行うことは難しいが、側端部の形状が一致する場合には、縫い代を目標値に維持する縫製を行うことは可能である。
また、ミシン100が、上送り機構40と差動送りを行わない従来の送り歯による下送り機構を備える構成としてもよい。また、ミシン100が、下送り機構20と差動送りを行わない送り足で上からの送りを行う従来の上送り機構を備える構成としてもよい。
また、上記の各例のように、左右の差動送りを行う構成が上下いずれか一方のみである場合には、端部検出装置は、上布C1と下布C2とを分離させず、いずれか一方の側端部を検出する構成としてもよい。
【0109】
また、下送り機構20としてベルト送りを行う構成を例示したが、これに限定されない。例えば、縫い針11の針落ち位置の左右両側に、制御装置90が左右別々に送りピッチを変更する制御を行うことが可能な送り歯を配置し、左右の送り歯によって左右の差動送りを行う構成としてもよい。
同様に、上送り機構40としてベルト送りを行う構成を例示したが、これに限定されない。例えば、縫い針11の左右両側に、制御装置90が左右別々に送りピッチを変更する制御を行うことが可能な送り足を配置し、左右の送り足によって左右の差動送りを行う構成としてもよい。
また、押さえ足71を取付台74及び押さえ棒72から取り外すことができる構成ではない従来のベルト送りの機構としてもよい。
【符号の説明】
【0110】
11 縫い針
12 針棒
13 針穴
16 ミシンモータ
20 下送り機構(送り機構)
21 後左下ベルト(左ベルト)
22 前左下ベルト(左ベルト)
23 前右下ベルト(右ベルト)
24 後右下ベルト(右ベルト)
25 第1モータ
26 第2モータ
40 上送り機構(送り機構)
41 左上ベルト(左ベルト)
42 右上ベルト(右ベルト)
45 左上モータ
46 右上モータ
47 ガイド機構
70 布押さえ機構
80 端部検出装置
81,811,812 上側端部センサ(上検出部)
82,821,822 下側端部センサ(下検出部)
83 センサ保持枠
84 上ガイド(ガイド)
85 下ガイド(ガイド)
86 筐体
90 制御装置
91 CPU
100 ミシン
101 針板
104 送出口
110 ミシンフレーム
111 ミシンベッド部
831 上壁部
832 下壁部
833 中間壁部
C1 上布(上側の被縫製物)
C2 下布(下側の被縫製物)