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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143923
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】産後ボトム衣類
(51)【国際特許分類】
   A41C 1/00 20060101AFI20241004BHJP
   A41C 1/10 20060101ALI20241004BHJP
   A41C 1/02 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A41C1/00 G
A41C1/10
A41C1/00 E
A41C1/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056876
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】306033379
【氏名又は名称】株式会社ワコール
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】西村 恵美
(72)【発明者】
【氏名】隈井 順子
【テーマコード(参考)】
3B131
【Fターム(参考)】
3B131AA01
3B131AA08
3B131AA27
3B131AB11
3B131AB12
3B131AB14
3B131AB16
3B131AB17
3B131BA01
3B131BA04
3B131BA21
3B131BA41
3B131BA43
3B131BB14
3B131BB34
(57)【要約】
【課題】産後の腹部のサポート効果を確保しつつ、着用者の動きを阻害しにくい産後ボトム衣類を提供する。
【解決手段】産後ボトム衣類1は、本体部2と、本体部2のクロッチ部7に対して結合端部11において結合された腹部サポート部10とを備える。腹部サポート部10の第1サポート部20及び第2サポート部30は、結合端部11と中央サポート領域Rの左右の側縁部12,12では結合され、交差部Xに向けて延びる一対の斜辺部22,32では互いに遊離している。腹部サポート部10は、一対の自由端部26,36、及び、中央サポート領域Rにおける少なくとも一対の斜辺部22,32寄りの領域では本体部2から遊離している。一対の自由端部26,36の少なくとも一部は本体部2の左右の腰部4,4に着脱自在に係止される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の腰部とクロッチ部とを有する本体部と、
前記クロッチ部に対して結合端部において結合された腹部サポート部と、を備え、
前記腹部サポート部は、中央サポート領域で重なり合う第1サポート部及び第2サポート部を有し、
前記第1サポート部及び前記第2サポート部は、前中心に位置する交差部で交差する一対の斜辺部と、前記結合端部と反対側において左右に突出する一対の自由端部とを含むと共に、前記結合端部と前記中央サポート領域の左右の側縁部では結合され、前記交差部に向けて延びる前記一対の斜辺部では互いに遊離しており、
前記腹部サポート部は、前記一対の自由端部、及び、前記中央サポート領域における少なくとも前記一対の斜辺部寄りの領域では前記本体部から遊離しており、
前記一対の自由端部の少なくとも一部は前記本体部の前記左右の腰部に着脱自在に係止される、産後ボトム衣類。
【請求項2】
前記腹部サポート部の前記左右の側縁部は、前記結合端部を頂部としてV字状に延びており、前記腹部サポート部は、前記結合端部のみにおいて前記本体部に結合されている、請求項1に記載の産後ボトム衣類。
【請求項3】
前記腹部サポート部は、前記結合端部が結合される前記クロッチ部の前端と前記本体部の上端の距離の1/2よりも前記上端に近い位置まで延在する、請求項1又は2に記載の産後ボトム衣類。
【請求項4】
前記一対の斜辺部のそれぞれは1枚の生地が折り返された構造をなしており、前記第1サポート部及び前記第2サポート部のぞれぞれは前記1枚の生地からなる二重構造を有する、請求項1又は2に記載の産後ボトム衣類。
【請求項5】
前記産後ボトム衣類の着用時、着用者の姿勢の変化に応じて前記第1サポート部及び前記第2サポート部が互いにずれて当該姿勢の変化に追従する、請求項1又は2に記載の産後ボトム衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産後ボトム衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産後の体型を整えるボトム衣類が知られている。例えば、特許文献1に記載された産後ガードルは、フロントパネルの両脇に脇部と一体となった後身頃が取り付けられた構成を有している。フロントパネルの両脇に、ゴム弾性のある翼状の布が取り付けられ、後身頃にはゴム弾性のある広幅テープが縫着される。翼状の布とテープとをベルベット式ファスナーで互いに係止させることで、着用者の腹部や腰部が引き締められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-303211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の産後ガードルでは、布とテープが結合されて前後に引っ張り合うことで、腹部に対する矯正がはたらき、またウエスト部分が固定される。この産後ガードルでは、腹部の矯正機能を有するフロントパネルは、ガードルの前身頃の一部である。フロントパネルが弾性布帛で裏打ちされる場合もある。このような構成では、矯正機能は発揮されるものの、着用者の動きを阻害してしまう傾向にある。
【0005】
本発明は、産後の腹部のサポート効果を確保しつつ、着用者の動きを阻害しにくい産後ボトム衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る産後ボトム衣類は、左右の腰部とクロッチ部とを有する本体部と、クロッチ部に対して結合端部において結合された腹部サポート部と、を備え、腹部サポート部は、中央サポート領域で重なり合う第1サポート部及び第2サポート部を有し、第1サポート部及び第2サポート部は、前中心に位置する交差部で交差する一対の斜辺部と、結合端部と反対側において左右に突出する一対の自由端部とを含むと共に、結合端部と中央サポート領域の左右の側縁部では結合され、交差部に向けて延びる一対の斜辺部では互いに遊離しており、腹部サポート部は、一対の自由端部、及び、中央サポート領域における少なくとも一対の斜辺部寄りの領域では本体部から遊離しており、一対の自由端部の少なくとも一部は本体部の左右の腰部に着脱自在に係止される。
【0007】
この産後ボトム衣類によれば、着用者は、第1サポート部及び第2サポート部の一対の自由端部を両手に持って、本体部の左右の腰部に対して着脱させる。これにより、腹部サポート部の装着状態と自由状態とを迅速に切り替えることができる。腹部サポート部の装着状態では、中央サポート領域が着用者の産後の腹部をサポートし、体型の補整効果(シェイプ機能)が発揮される。また第1サポート部及び第2サポート部が、一対の斜辺部で互いに遊離しているので、互いにずれやすく、中央サポート領域の面に対して法線方向への融通性が高いため、着用者の腹部を必要以上に締め付けない。さらに、腹部サポート部は、結合端部を除く大部分(少なくとも、装着状態において腹部を覆っている上部の大部分)において本体部から遊離している。よって、この産後ボトム衣類によれば、産後の腹部のサポート効果を確保しつつ、着用者の動きを阻害しにくくなっている。
【0008】
腹部サポート部の左右の側縁部は、結合端部を頂部としてV字状に延びており、腹部サポート部は、結合端部のみにおいて本体部に結合されていてもよい。この場合、腹部サポート部の動きの自由度が高まるため、腹部サポート部が着用者の動きに追従しやすい。
【0009】
腹部サポート部は、結合端部が結合されるクロッチ部の前端と本体部の上端の距離の1/2よりも上端に近い位置まで延在してもよい。この場合、腹部サポート部の中央サポート領域が、着用者の産後の腹部を確実にサポートする。
【0010】
一対の斜辺部のそれぞれは1枚の生地が折り返された構造をなしており、第1サポート部及び第2サポート部のぞれぞれはその1枚の生地からなる二重構造を有してもよい。この場合、着用者の腹部に当たる部分(一対の斜辺部等)に接ぎ部が存在せず、肌当たりが良い。
【0011】
産後ボトム衣類の着用時、着用者の姿勢の変化に応じて第1サポート部及び第2サポート部が互いにずれて当該姿勢の変化に追従してもよい。この場合、産後ボトム衣類は、立ったり座ったりを繰り返す、又は、腰を屈曲させる等といった着用者の姿勢の変化を妨げない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、産後の腹部のサポート効果を確保しつつ、着用者の動きを阻害しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る産後ボトム衣類を示す正面図である。
図2図2は、図1に示した産後ボトム衣類の背面図である。
図3図3は、腹部サポート部及びその周辺を拡大して示す正面図である。
図4図4は、産後ボトム衣類において腹部サポート部が自由状態にある場合の正面図である。
図5図5は、産後ボトム衣類の着用状態を斜め前方から見て示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1~4は、何れも、一実施形態に係る産後ボトムを平置きした状態を示している。
【0015】
まず図1及び図2を説明して、本実施形態の産後ボトム衣類1の全体構成について説明する。図1及び図2に示されるように、産後ボトム衣類1は、産後の女性が着用する下半身衣類である。産後ボトム衣類1の具体例としては、産後用ガードルが挙げられるが、それに限定されず、産後に着用される衣類又は下着であれば本発明を適用することができる。産後ボトム衣類1は、産後における主に腹部のサポート効果を有することで、体型の補整効果(シェイプ機能)を着用者にもたらすことができる。しかも産後ボトム衣類1においては、以下に詳述する構成により、動きやすさや着脱の容易さの観点で各種の工夫がなされている。
【0016】
産後ボトム衣類1は、伸縮性を有する生地からなる本体部2を備える。本体部2は、着用者の腹部、腰部、股部、臀部、及び大腿部を覆う。本体部2は、着用者の腹部から股部にかけてあてがわれるフロント部3と、着用者の臀部上方にあてがわれるバック部6と、フロント部3及びバック部6を左右において連結する左右の腰部4,4とを有する。フロント部3,左右の腰部4,4、及びバック部6からなる環状体の上端部に位置するウエスト部9は、着用者のウエストライン(もっともくびれた部分)に対応する。ウエスト部9には、例えば、着用者の腰部に対して産後ボトム衣類1をフィットさせるための帯状の弾性部材が取り付けられている。
【0017】
本体部2は、着用者の脚部が通される左右の裾部8,8と、着用者の股間部に対応するクロッチ部7とを有する。左右の裾部8,8のそれぞれは、上部の前中心側部分が接合ライン3g,3g(図4参照)を介してフロント部3に接合されており、また上部の後中心側部分が後中心の位置において互いに接合されている。クロッチ部7は、その前端7aがフロント部3の下端に接合されると共に、前端7a以外の部分は裾部8,8に接合されている。上記の各部(各生地)は、伸縮性素材からなる。本体部2に用いられる伸縮性素材は、例えば、ツーウェイラッセル、ツーウェイトリコット、ツーウェイサテンパワーネット等の素材である。なお、本体部2の各部に応じて伸縮性又は強度等が異なる生地が用いられてもよいし、同一の生地から構成されてもよい。以上は本体部2の一例であり、本体部の構成は上記構成に限られない。各部は、例えば縫合によって接合されてもよいが、接着等の別の手段によって接合されてもよい。また腰部4に関しては、例えば、肌側にパワーネットが用いられ、外側に、後述する面ファスナーのループ等の係止端部27,37を係止可能な素材が用いられる。なお、肌側素材と外側素材の間に、本体部2の素材と同じツーウェイラッセル等を介在させてもよい。
【0018】
続いて、図1図3及び図4を参照して、産後ボトム衣類1における腹部等のサポート効果に関する構成について詳述する。図1に示されるように、産後ボトム衣類1は、着用者の腹部と、腹部から左右の腰部にかけての領域を覆うことのできる腹部サポート部10を備える。腹部サポート部10は、例えば肌側(すなわち本体部2に近い側)に配置された第1サポート部20と、外面側に配置された第2サポート部30とを有し、これらのサポート部が部分的に重なった構成を有する。第1サポート部20及び第2サポート部30の大きさ及び外形は同一である。第1サポート部20及び第2サポート部30は、前中心のラインに関して線対称となるように配置されている。なお、図1では、第2サポート部30が紙面手前側に位置する。第1サポート部20が紙面奥側に位置して大部分が隠れているため、第1サポート部20の引出線が破線で表されている。
【0019】
第1サポート部20及び第2サポート部30は、いずれも伸縮性を有する同一の生地からなる。第1サポート部20及び第2サポート部30に用いられる伸縮性素材は、例えば、上記した本体部2の伸縮性素材と同様の素材であってもよいし、パワーネットやワンウェイサテンパワーネット等の素材であってもよい。第1サポート部20及び第2サポート部30は、伸縮性(編構造の方向性等)の観点でも、左右対称となるように構成されている。また第1サポート部20及び第2サポート部30のそれぞれは、1枚の生地からなる二重構造を有する。より詳細には、第1サポート部20では、斜辺部22において1枚の生地が折り返されている。第2サポート部30では、斜辺部32において1枚の生地が折り返されている。
【0020】
腹部サポート部10は、クロッチ部7に対して結合された結合端部11を有する。結合端部11では、例えば、第1サポート部20及び第2サポート部30の各端部と、フロント部3の下端と、クロッチ部7の前端7aとが一緒に縫合されている。腹部サポート部10の左右方向の幅は、結合端部11においてもっとも小さい。腹部サポート部10は、全体として逆三角形の形状を有する。言い換えれば、腹部サポート部10の左右の側縁部12,12は、結合端部11を頂部としてV字状に延びている。左右の側縁部12,12は、例えば、直線状に延びる。更に言い換えれば、腹部サポート部10は、結合端部11を頂部とする三角形状をなしている。結合端部11の左右方向の幅は、クロッチ部7の前端7aの幅に相当するため、腹部サポート部10全体の幅に対して非常に小さくなっている。
【0021】
本明細書では、衣類として、ある一まとまりの構造上の構成において、各生地が縫合又は接着等される場合に、各生地が「接合」されると表現する。一方、一応別個と考えられる構造上の2つ以上の構成において、各生地が縫合又は接着等される場合に、各生地が「結合」されると表現する。例えば、本体部2は、一まとまりの構成である。また第1サポート部20も一まとまりの構成であり、第2サポート部30も一まとまりの構成である。第1サポート部20と第2サポート部30は、別個の構成として位置づけられる。ただし、「接合」と「結合」は、複数の生地が一体化されるという点では、変わりはない。
【0022】
図1及び図3に示されるように、腹部サポート部10では、第1サポート部20のメインサポート部21と、第2サポート部30のメインサポート部31とが重なり合っている。メインサポート部21及びメインサポート部31は、それぞれ、結合端部11の位置から、着用者の腹部を覆うことのできる範囲に広がっている。第1サポート部20及び第2サポート部30は、メインサポート部21とメインサポート部31が重なり合うことで中央サポート領域Rを形成している。中央サポート領域Rは、メインサポート部21とメインサポート部31の各左右端縁が重なって形成される左右の側縁部12,12を含む。なお、図3では、中央サポート領域Rを容易に理解可能なよう、中央サポート領域Rに斜線(ハッチング)が付されている。
【0023】
中央サポート領域Rの結合端部11と反対側(図1に示す上側)の端部には、前中心に位置する交差部Xが存在する。第1サポート部20は、結合端部11と反対側(図1に示す上側)において左に突出する自由端部26を含む。第1サポート部20は、メインサポート部21及び自由端部26からなり、メインサポート部21と自由端部26とにわたって一直線状に延びる斜辺部22(図4参照)を含む。第2サポート部30は、結合端部11と反対側(図1に示す上側)において右に突出する自由端部36を含む。第2サポート部30は、メインサポート部31及び自由端部36からなり、メインサポート部31と自由端部36とにわたって一直線状に延びる斜辺部32を含む。これら一対の斜辺部22,32が交差部Xで交差している。一対の斜辺部22,32のそれぞれは、上記したように、1枚の生地が折り返されて折り返し部付近で縫製されていない構造(ワサ構造)をなしている。
【0024】
第1サポート部20及び第2サポート部30は、結合端部11と左右の側縁部12,12では結合されているが、側縁部12,12の上端から交差部Xに向けて延びる一対の斜辺部22,32では互いに遊離している。斜辺部22は中央サポート領域Rの重複斜辺部23及び自由端部26の突出斜辺部24からなり(図4参照)、斜辺部32は中央サポート領域Rの重複斜辺部33及び自由端部36の突出斜辺部34からなる(図1参照)。重複斜辺部23は第2サポート部30から遊離しており、重複斜辺部33は第1サポート部20から遊離している。
【0025】
そして、第1サポート部20の自由端部26は、交差部Xからもっとも離れた端部領域において、本体部2の左の腰部4に着脱自在に係止される係止端部27を含む。第2サポート部30の自由端部36は、交差部Xからもっとも離れた端部領域において、本体部2の右の腰部4に着脱自在に係止される係止端部37を含む。本体部2の左右の腰部4,4の表面と、係止端部27,37の裏面(腹部サポート部10がフロント部3に重なる位置に位置する場合の腰部4,4に対面する面)には、例えば、何れか一方にループが、何れか他方にフックが設けられている。ループ及びフックにより、面ファスナー機構が構成される。これにより、着用者が左右の手で係止端部27,37を持ち、左右の腰部4,4上の適宜の位置で係止端部27,37を貼り付け(係止させ)、一時的に取り付ける(固定する)ことができる。また着用者は、左右の手で係止端部27,37を持ち、左右の腰部4,4から係止端部27,37を取り外すことができる。
【0026】
各腰部4の大きさ(面積)は、腹部サポート部10によるサポート力を可能な限り調整自在であるよう、係止端部27,37よりも大きくなっている。腰部4の形状は特に限定されず、矩形であってもよく、その他の多角形であってもよく、境界のラインが部分的に弧状をなしてもよい。各腰部4は、着用者の左右の腰部の前面から後面に至る側部において前後方向及び上下方向にある程度広範囲に延在している。
【0027】
なお、係止端部27の外縁部である係止縁部13aと、係止端部37の外縁部である係止縁部13bは、それぞれ側縁部12に連続するが、一例として、外に膨らむカーブ形状を有する。係止端部27及び係止端部37については、適宜の形状変更がなされてもよい。
【0028】
それぞれ二重構造を有する第1サポート部20及び第2サポート部30が、中央サポート領域Rでは重なり合うため、中央サポート領域Rは四重の伸縮性生地からなる。中央サポート領域Rにおけるサポート力は、腹部サポート部10の他の部分(自由端部26及び係止端部27)に比べて大きく、また本体部2の何れの部分に比べても大きい。
【0029】
図3に示されるように、腹部サポート部10は、結合端部11が結合されるクロッチ部7の前端7aと本体部2の上端2aの距離Aの1/2よりも、上端2aに近い位置まで延在している。腹部サポート部10の結合端部11から上端20a,30aまでの長さBは、距離Aの1/2以上である。長さBが、距離Aの2/3以上であってもよいし、4/5以上であってもよい。本体部2の設計(ハイウェストか否か等)によって、この比率は調整されてもよい。
【0030】
腹部サポート部10は、結合端部11のみにおいて本体部2に結合されており、その他の全範囲において本体部2から遊離している。したがって、図4に示されるように、腹部サポート部10が自由状態にある場合、腹部サポート部10は結合端部11から垂れ下がる状態となり得る。このように、腹部サポート部10は、一対の自由端部26,36、及び、中央サポート領域Rにおける少なくとも斜辺部22,32寄りの領域(結合端部11からある程度離れた領域)では本体部2から遊離している。係止端部27,37が左右の腰部4,4に取り付けられ、腹部サポート部10が本体部2に装着された装着状態(図5参照)では、腹部サポート部10はフロント部3の下部及び左右の腰部4,4の下部を覆うように延在する。このとき、フロント部3と左右の裾部8,8との接合ライン3g,3gは着用者の鼠経溝に概ね沿っているが、V字状の側縁部12,12は接合ライン3g,3gの内側(前中心側)を通る。また図5に示されるように、平置き時には直線状であった側縁部12は、着用者の下半身にフィットしてS字のカーブ形状を呈する。
【0031】
産後ボトム衣類1の着用時には、着用者の姿勢の変化に応じて第1サポート部20及び第2サポート部30が互いにずれて当該姿勢の変化に追従する。斜辺部22と斜辺部32は互いに独立して動き得る(伸縮等も含めて)ので、各斜辺部22,32における交差部Xの位置も変動し得る。したがって、重複斜辺部23と突出斜辺部24の境界(交差部X)が変動し、重複斜辺部33と突出斜辺部34の境界(交差部X)も変動することとなる。言い換えれば、メインサポート部21と自由端部26の境界の位置(重複斜辺部33の位置)も、メインサポート部31と自由端部36の境界の位置(重複斜辺部23の位置)も、変動する。
【0032】
着用者の姿勢の変化によっては、着用者の腹部に対する交差部Xの位置が変動することもあるし、変動しないこともある。
【0033】
本実施形態の産後ボトム衣類1によれば、着用者は、第1サポート部20及び第2サポート部30の一対の自由端部26,36を両手に持って、本体部2の左右の腰部4,4に対して着脱させる。これにより、腹部サポート部10の装着状態と自由状態とを迅速に切り替えることができる。腹部サポート部10の装着状態では、中央サポート領域Rが着用者の産後の腹部をサポートし、体型の補整効果(シェイプ機能)が発揮される。また第1サポート部20及び第2サポート部30が、一対の斜辺部22,32で互いに遊離しているので、互いにずれやすく、中央サポート領域Rの面に対して法線方向への融通性が高い。よって、第1サポート部20及び第2サポート部30が着用者の腹部を必要以上に締め付けない。さらに、腹部サポート部10は、結合端部11を除く大部分(少なくとも、装着状態において腹部を覆っている上部の大部分)において本体部2から遊離している。よって、産後ボトム衣類1によれば、産後の腹部のサポート効果を確保しつつ、着用者の動きを阻害しにくくなっている。また、腹部サポート部10を装着状態にしたまま産後ボトム衣類1を脱ぐことも容易であるし、腹部サポート部10を自由状態にすれば、産後ボトム衣類1を脱ぐことは更に容易である。その後に着用者が産後ボトム衣類1を着用した場合も、一対の自由端部を迅速に左右の腰部に取り付けることができる。これにより、産後ボトム衣類の着脱が非常に容易である。
【0034】
上記した特許文献1に記載された従来の構成では、前側の布と後ろ側の布を互いに引き寄せる必要があるため、着用時の動作に手間を要する。本実施形態の産後ボトム衣類1ではそのような煩わしい着用時の動作は不要である。
【0035】
また、腹部に帝王切開の傷跡が残っている場合においても、中央サポート領域Rが傷跡を覆う。腹部サポート部10は、腹部を覆う部分(すなわち中央サポート領域R)に接ぎ部がないため肌当たりがよく着心地に優れる。斜辺部22及び斜辺部32は腹部上を移動し得るが、これらも折り返し構造により接ぎ部を有しないため、万一、帝王切開の傷跡上に位置した場合でも、痛みや不快感は抑制される。
【0036】
また腹部サポート部10の左右の側縁部12,12は、結合端部11を頂部としてV字状に延びており、腹部サポート部10は、結合端部11のみにおいて本体部2に結合されている。これにより、腹部サポート部10の動きの自由度が高まるため、腹部サポート部10が着用者の動きに追従しやすい。腹部サポート部10の装着状態では、中央サポート領域Rにテンションが加わる。中央サポート領域Rの下端である結合端部11の幅が狭い(点状に近い)ことで、着用者の動きを阻害しない。
【0037】
腹部サポート部10は、結合端部11が結合されるクロッチ部7の前端7aと本体部2の上端2aの距離の1/2よりも上端に近い位置まで延在している。これにより、腹部サポート部10の中央サポート領域Rが、着用者の産後の腹部を確実にサポートする。
【0038】
一対の斜辺部22,32のそれぞれは1枚の生地が折り返された構造をなしており、第1サポート部20及び第2サポート部30のぞれぞれはその1枚の生地からなる二重構造を有する。これにより、着用者の腹部に当たる部分(一対の斜辺部22,32等)に接ぎ部が存在せず、肌当たりが良い。
【0039】
産後ボトム衣類1の着用時、着用者の姿勢の変化に応じて第1サポート部20及び第2サポート部30が互いにずれて当該姿勢の変化に追従する。これにより、産後ボトム衣類1は、立ったり座ったりを繰り返す、又は、腰を屈曲させる等といった着用者の姿勢の変化を妨げない。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、腹部サポート部10が結合端部11のみにおいて本体部2に結合される例について示したが、これに限られない。腹部サポート部10は、一対の自由端部26,36、及び、中央サポート領域Rにおける少なくとも斜辺部22,32寄りの領域において、本体部2から遊離していればよい。中央サポート領域Rにおける少なくとも斜辺部22,32寄りの領域とは、結合端部11までの距離と斜辺部22,32までの距離を比べたときに、斜辺部22,32に近い領域を意味する。例えば、図3に示される車線部分(側縁部12,12を除く内部の領域)が本体部2から遊離するが、側縁部12,12の一部が本体部2に結合される形態も考えられる。すなわち、腹部サポート部10が、結合端部11と結合端部11以外の部分において本体部2に結合される形態も考えられる。その場合でも、側縁部12,12は、その下半分の範囲内で結合されており、上半部又はそれ以上の領域では、本体部2から遊離していればよい。側縁部12における下端の位置は結合端部11によって定義され、上端の位置は重複斜辺部23,33との交点Pによって定義される。腹部サポート部10は、一対の自由端部26,36、及び、少なくとも上記の領域で本体部2から遊離していれば、上記実施形態と同様の作用・効果が奏される。
【0041】
側縁部12,12がV字状に延びる場合に限られず、カーブしてもよい。
【0042】
腹部サポート部10の結合端部11から上端20a,30aまでの長さBが、距離A(図3参照)の1/2未満であってもよい。
【0043】
斜辺部22,32が折り返し構造を有していなくてもよい。第1サポート部20及び第2サポート部30がそれぞれ一重の生地からなってもよい。
【0044】
本発明は、以下の通りに記載され得る。
[1]
左右の腰部とクロッチ部とを有する本体部と、
前記クロッチ部に対して結合端部において結合された腹部サポート部と、を備え、
前記腹部サポート部は、中央サポート領域で重なり合う第1サポート部及び第2サポート部を有し、
前記第1サポート部及び前記第2サポート部は、前中心に位置する交差部で交差する一対の斜辺部と、前記結合端部と反対側において左右に突出する一対の自由端部とを含むと共に、前記結合端部と前記中央サポート領域の左右の側縁部では結合され、前記交差部に向けて延びる前記一対の斜辺部では互いに遊離しており、
前記腹部サポート部は、前記一対の自由端部、及び、前記中央サポート領域における少なくとも前記一対の斜辺部寄りの領域では前記本体部から遊離しており、
前記一対の自由端部の少なくとも一部は前記本体部の前記左右の腰部に着脱自在に係止される、産後ボトム衣類。
[2]
前記腹部サポート部の前記左右の側縁部は、前記結合端部を頂部としてV字状に延びており、前記腹部サポート部は、前記結合端部のみにおいて前記本体部に結合されている、[1]に記載の産後ボトム衣類。
[3]
前記腹部サポート部は、前記結合端部が結合される前記クロッチ部の前端と前記本体部の上端の距離の1/2よりも前記上端に近い位置まで延在する、[1]又は[2]に記載の産後ボトム衣類。
[4]
前記一対の斜辺部のそれぞれは1枚の生地が折り返された構造をなしており、前記第1サポート部及び前記第2サポート部のぞれぞれは前記1枚の生地からなる二重構造を有する、[1]~[3]の何れか一つに記載の産後ボトム衣類。
[5]
前記産後ボトム衣類の着用時、着用者の姿勢の変化に応じて前記第1サポート部及び前記第2サポート部が互いにずれて当該姿勢の変化に追従する、[1]~[4]の何れか一つに記載の産後ボトム衣類。
【符号の説明】
【0045】
1…産後ボトム衣類、2…本体部、2a…上端、4…腰部、7…クロッチ部、7a…前端、10…腹部サポート部、11…結合端部、12…側縁部、13a…係止縁部、13b…係止縁部、20…第1サポート部、21…メインサポート部、22…斜辺部、23…重複斜辺部、24…突出斜辺部、26…自由端部、27…係止端部、30…第2サポート部、31…メインサポート部、32…斜辺部、33…重複斜辺部、34…突出斜辺部、36…自由端部、37…係止端部、A…距離、B…長さ、R…中央サポート領域、X…交差部。
図1
図2
図3
図4
図5