(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143924
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電力供給システム及び電力供給システムを備える移動体
(51)【国際特許分類】
H02H 7/18 20060101AFI20241004BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241004BHJP
H02H 9/02 20060101ALI20241004BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20241004BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20241004BHJP
B60L 50/61 20190101ALI20241004BHJP
B60L 58/18 20190101ALI20241004BHJP
【FI】
H02H7/18
H02J7/00 P
H02J7/00 303C
H02J7/00 S
H02H9/02 D
H02J1/00 309R
H02J7/00 302C
B60L9/18 L
B60L50/61
B60L58/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056877
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】三谷 学
【テーマコード(参考)】
5G013
5G053
5G165
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G013AA09
5G013BA01
5G013CA05
5G013DA11
5G053AA05
5G053BA04
5G053EC01
5G165BB05
5G165CA01
5G165DA02
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5G165GA02
5G165GA04
5G165GA09
5G165HA01
5G165HA07
5G165JA07
5G165KA02
5G165KA05
5G165LA01
5G165LA02
5G165LA04
5G165NA01
5G165NA02
5G165NA10
5G503AA04
5G503BA02
5G503BB02
5G503BB03
5G503CA01
5G503CA11
5G503DA04
5G503DA07
5G503EA08
5G503FA06
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5G503GD06
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BB00
5H125BC09
5H125DD05
5H125EE22
5H125EE23
5H125FF16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】システム起動時に、出力電圧の高い蓄電装置から出力電圧の低い蓄電装置に流れる突入電流を防止する電力供給システム及び電力供給システムを備える移動体を提供する。
【解決手段】電力供給システム10において、第1処理回路26aは、第1処理回路に備えられたプレチャージ抵抗42aを介して第1蓄電装置24aから第1負荷装置16aに電力を供給することにより、第1負荷装置に備えられた平滑コンデンサ20aに対してプレチャージを行う第1処理と、平滑コンデンサに蓄積された電荷をプレチャージ抵抗を介して放電する第2処理と、第1蓄電装置に蓄積された電荷をプレチャージ抵抗を介して放電する第3処理と、を選択的に行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電装置から出力される直流電力を第1負荷装置に供給する第1電力供給回路と、
前記第1電力供給回路に第1処理回路を介して前記発電装置と並列に接続された第1蓄電装置と、
前記発電装置から出力される前記直流電力を第2負荷装置に供給する第2電力供給回路と、
前記第2電力供給回路に第2処理回路を介して前記発電装置と並列に接続された第2蓄電装置と、
を備え、
前記第1処理回路は、
前記第1処理回路に備えられたプレチャージ抵抗を介して前記第1蓄電装置から前記第1負荷装置に電力を供給することにより、前記第1負荷装置に備えられた平滑コンデンサに対してプレチャージを行う第1処理と、
前記平滑コンデンサに蓄積された電荷を前記プレチャージ抵抗を介して放電する第2処理と、
前記第1蓄電装置に蓄積された電荷を前記プレチャージ抵抗を介して放電する第3処理と、を選択的に行い得る、電力供給システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電力供給システムにおいて、
前記第1処理回路は、
前記第1蓄電装置と前記第1負荷装置とを電気的に接続する一対の配線と、
前記一対の配線のうちの一方である第1配線上に備えられた第1スイッチと、
前記一対の配線のうちの他方である第2配線上に備えられた第2スイッチと、を備え、
前記プレチャージ抵抗の一端は、前記第1スイッチと前記第1負荷装置との間の前記第1配線に電気的に接続され、
前記プレチャージ抵抗の他端は、前記第1スイッチと前記第1蓄電装置との間の前記第1配線に第3スイッチを介して接続されるとともに、前記第2スイッチと前記第1蓄電装置との間の前記第2配線に第4スイッチを介して接続される、電力供給システム。
【請求項3】
請求項2記載の電力供給システムにおいて、
前記第1処理では、前記第1スイッチをオフとし、前記第2スイッチをオンとし、前記第3スイッチをオンとし、前記第4スイッチをオフとすることにより、前記第1負荷装置に備えられた前記平滑コンデンサに対してプレチャージを行う、電力供給システム。
【請求項4】
請求項2に記載の電力供給システムにおいて、
前記第2処理では、前記第1スイッチをオフとし、前記第2スイッチをオンとし、前記第3スイッチをオフとし、前記第4スイッチをオンとすることにより、前記平滑コンデンサに蓄積された電荷を前記プレチャージ抵抗を介して放電する、電力供給システム。
【請求項5】
請求項2に記載の電力供給システムにおいて、
前記第3処理では、前記第1スイッチをオンとし、前記第2スイッチをオフとし、前記第3スイッチをオフとし、前記第4スイッチをオンとすることにより、前記第1蓄電装置に蓄積された電荷を前記プレチャージ抵抗を介して放電する、電力供給システム。
【請求項6】
請求項2に記載の電力供給システムにおいて、
前記第1処理回路は、前記第1蓄電装置の端子電圧と前記第2蓄電装置の端子電圧との差分が予め決められた電圧閾値以下となるまで前記第3処理を行った後に、前記第1処理を実行する、電力供給システム。
【請求項7】
請求項2に記載の電力供給システムにおいて、
非放電状態での前記第1蓄電装置の端子電圧と、放電中の前記第1蓄電装置の前記端子電圧と、前記プレチャージ抵抗の抵抗値と、前記放電中の前記第1蓄電装置の電流値とに基づいて前記第1蓄電装置の内部抵抗値を算出し、前記内部抵抗値に基づいて前記第1蓄電装置の劣化状態を推定する推定部を備える、電力供給システム。
【請求項8】
請求項1に記載の電力供給システムにおいて、
前記第1処理では、前記第1処理回路に備えられた前記プレチャージ抵抗を介して前記第1蓄電装置から前記発電装置に電力を供給することにより、前記発電装置に備えられた平滑コンデンサに対してプレチャージを行う、電力供給システム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の電力供給システムを備える移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給システム及び電力供給システムを備える移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する電動化技術に関する研究開発が行われている。
【0003】
特許文献1には、高圧バッテリ(蓄電装置)とモータジェネレータ(負荷装置)とを備える電力供給システムが示される。高圧バッテリとモータジェネレータとの間には、3つのリレーと、抵抗体(プレチャージ抵抗)と、コンデンサ(平滑コンデンサ)と、降圧コンバータとが介在する。この電力供給システムでは、3つのリレーのオンとオフとを制御することによって、抵抗体を介してコンデンサのプレチャージを行うことができる。また、この電力供給システムでは、3つのリレーのオンとオフとを制御することによって、コンデンサに蓄積された電荷を抵抗体を介して放電することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
より良好な電力供給システムが待望されている。
【0006】
本発明は上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電力供給システムは、発電装置から出力される直流電力を第1負荷装置に供給する第1電力供給回路と、前記第1電力供給回路に第1処理回路を介して前記発電装置と並列に接続された第1蓄電装置と、前記発電装置から出力される前記直流電力を第2負荷装置に供給する第2電力供給回路と、前記第2電力供給回路に第2処理回路を介して前記発電装置と並列に接続された第2蓄電装置と、を備え、前記第1処理回路は、前記第1処理回路に備えられたプレチャージ抵抗を介して前記第1蓄電装置から前記第1負荷装置に電力を供給することにより、前記第1負荷装置に備えられた平滑コンデンサに対してプレチャージを行う第1処理と、前記平滑コンデンサに蓄積された電荷を前記プレチャージ抵抗を介して放電する第2処理と、前記第1蓄電装置に蓄積された電荷を前記プレチャージ抵抗を介して放電する第3処理と、を選択的に行い得る。
【0008】
本発明の移動体は、上記の電力供給システムを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、良好な電力供給システム及び移動体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】
図3は、電力供給システムの動作フローである。
【
図4】
図4は、システム起動準備処理での電力供給システムの動作を示す図である。
【
図5】
図5は、システム作動処理での電力供給システムの動作を示す図である。
【
図6】
図6は、システムシャットダウン処理での電力供給システムの動作を示す図である。
【
図7】
図7は、放電要否判定処理の処理フローである。
【
図8】
図8は、蓄電装置放電処理での電力供給システムの動作を示す図である。
【
図9】
図9は、比較例の電力供給システムのシステム起動準備時の動作を示す図である。
【
図10】
図10は、比較例の電力供給システムのシステム起動準備時の動作を示す図である。
【
図11】
図11は、比較例の電力供給システムのシステム作動時の動作を示す図である。
【
図12】
図12Aは、比較例の電圧変化を示すタイムチャートである。
図12Bは、比較例の電流変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
負荷装置に対して複数の蓄電装置を並列に接続することが考えられる。このような電力供給システムにおいては、システム起動時に、出力電圧の高い蓄電装置から出力電圧の低い蓄電装置に突入電流が流れる虞がある。本願発明は、鋭意検討した結果、以下のような電力供給システムを想到した。
【0012】
[電力供給システム10の構成]
図1は、電力供給システム10の模式図である。電力供給システム10は、第1電力供給回路12a及び第2電力供給回路12bを備える。第1電力供給回路12aは、発電装置14から出力される直流電力を第1負荷装置16aに供給する。第2電力供給回路12bは、発電装置14から出力される直流電力を第2負荷装置16bに供給する。
【0013】
発電装置14は、不図示のエンジン、発電機及びパワーコントロールユニットを有する。エンジンにより発電機が駆動され、発電機は三相交流電力を発生する。パワーコントロールユニットは、三相交流電力を直流電力に変換する。発電装置14は、平滑コンデンサ18を有する。電力供給システム10の起動時には、最初に平滑コンデンサ18の充電(プレチャージ)が行われる。また、電力供給システム10のシャットダウン時には、平滑コンデンサ18の放電が行われる。
【0014】
発電装置14は、各種センサ、ヒューズ、リレー、ブレーカー、ダイオード、トランジスタ、抵抗、コイル等の各素子を有してもよい。
【0015】
第1負荷装置16a及び第2負荷装置16bは、不図示のインバータ及び電動モータを有する。インバータは、入力された直流電力を三相交流電力に変換する。電動モータは、三相交流電力により駆動される。第1負荷装置16a及び第2負荷装置16bは、不図示のDC/DCコンバータ及び低電圧駆動装置を有してもよい。DC/DCコンバータは、当該DC/DCコンバータに入力された直流電力の電圧を低下させる。低電圧駆動装置は、DC/DCコンバータから出力される直流電力により駆動される。第1負荷装置16aは、平滑コンデンサ20aを有する。第2負荷装置16bは、平滑コンデンサ20bを有する。電力供給システム10の起動時には、最初に平滑コンデンサ20a、20bの充電(プレチャージ)が行われる。また、電力供給システム10のシャットダウン時には、平滑コンデンサ20a、20bの放電が行われる。
【0016】
第1負荷装置16a及び第2負荷装置16bは、各種センサ、ヒューズ、リレー、ブレーカー、ダイオード、トランジスタ、抵抗、コイル、コンデンサ等の各素子を有してもよい。
【0017】
電力供給システム10は、遮断装置22a、22bを備える。遮断装置22aは、第1電力供給回路12aから発電装置14を遮断し得る。遮断装置22bは、第2電力供給回路12bから発電装置14を遮断し得る。
【0018】
第1電力供給回路12a及び第2電力供給回路12bは、上記構成以外のスイッチ、センサ、ヒューズ、ダイオード、抵抗、コイル、コンデンサ等の素子を有してもよい。
【0019】
遮断装置22aは、不図示の一対のスイッチを備える。一方のスイッチは、発電装置14と第1電力供給回路12aとを繋ぐ正極の配線に備えられる。他方のスイッチは、発電装置14と第1電力供給回路12aとを繋ぐ負極の配線に備えられる。
【0020】
遮断装置22bは、不図示の一対のスイッチを備える。一方のスイッチは、発電装置14と第2電力供給回路12bとを繋ぐ正極の配線に備えられる。他方のスイッチは、発電装置14と第2電力供給回路12bとを繋ぐ負極の配線に備えられる。
【0021】
電力供給システム10は、第1蓄電装置24a及び第2蓄電装置24bを備える。第1蓄電装置24aは、第1電力供給回路12aに第1処理回路26aを介して発電装置14と並列に接続される。第1蓄電装置24aから出力される直流電力は、第1負荷装置16aに供給される。第2蓄電装置24bは、第2電力供給回路12bに第2処理回路26bを介して発電装置14と並列に接続される。第2蓄電装置24bから出力される直流電力は、第2負荷装置16bに供給される。
【0022】
第1蓄電装置24a及び第2蓄電装置24bは、例えばリチウムイオンバッテリを有する。第1蓄電装置24a及び第2蓄電装置24bは、リチウムイオンバッテリ以外の二次電池を有してもよい。第1蓄電装置24a及び第2蓄電装置24bは、大容量コンデンサを有してもよい。
【0023】
第1処理回路26aは、正極線28a(第1配線又は第2配線)、負極線30a(第2配線又は第1配線)及び遮断装置32aを備える。正極線28aは、第1蓄電装置24aの正極端子と第1電力供給回路12aの正極端子とを電気的に接続する。負極線30aは、第1蓄電装置24aの負極端子と第1電力供給回路12aの負極端子とを電気的に接続する。遮断装置32aは、第1スイッチ34aと、第2スイッチ36aとを備える。第1スイッチ34aは、正極線28a上に備えられる。第2スイッチ36aは、負極線30a上に備えられる。
【0024】
第1処理回路26aは、迂回線38a、第3スイッチ40a及びプレチャージ抵抗42aを備える。迂回線38aは、第1蓄電装置24aと第1スイッチ34aとの間の正極線28aと、第1スイッチ34aと第1負荷装置16aとの間の正極線28aとを電気的に接続する。第3スイッチ40a及びプレチャージ抵抗42aは、迂回線38a上に備えられる。第3スイッチ40aは、プレチャージ抵抗42aよりも第1蓄電装置24aの近くに配される。一方、プレチャージ抵抗42aは、第3スイッチ40aよりも第1負荷装置16aの近くに配される。
【0025】
第1処理回路26aは、放電用接続線44a及び第4スイッチ46aを備える。放電用接続線44aは、第3スイッチ40aとプレチャージ抵抗42aとの間の迂回線38aと、第1蓄電装置24aと第2スイッチ36aとの間の負極線30aとを電気的に接続する。第4スイッチ46aは、放電用接続線44a上に備えられる。
【0026】
以上の構成により、プレチャージ抵抗42aの一端は、第1スイッチ34aと第1負荷装置16aとの間の正極線28aに電気的に接続される。プレチャージ抵抗42aの他端は、第1スイッチ34aと第1蓄電装置24aとの間の正極線28aに第3スイッチ40aを介して接続されるとともに、第2スイッチ36aと第1蓄電装置24aとの間の負極線30aに第4スイッチ46aを介して接続される。
【0027】
第1処理回路26aは、電圧センサ48a及び電流センサ50aを備える。電圧センサ48aは、第1蓄電装置24aの端子電圧(出力電圧)を検出できるように、正極線28aと負極線30aとに接続される。電流センサ50aは、第1蓄電装置24aの負極端子と第4スイッチ46aとの間の負極線30a上に備えられる。
【0028】
第2処理回路26bは、正極線28b、負極線30b及び遮断装置32bを備える。正極線28bは、第2蓄電装置24bの正極端子と第2電力供給回路12bの正極端子とを電気的に接続する。負極線30bは、第2蓄電装置24bの負極端子と第2電力供給回路12bの負極端子とを電気的に接続する。遮断装置32bは、第1スイッチ34bと、第2スイッチ36bとを備える。第1スイッチ34bは、正極線28b上に備えられる。第2スイッチ36bは、負極線30b上に備えられる。
【0029】
第2処理回路26bは、迂回線38b、第3スイッチ40b及びプレチャージ抵抗42bを備える。迂回線38bは、第2蓄電装置24bと第1スイッチ34bとの間の正極線28bと、第1スイッチ34bと第2負荷装置16bとの間の正極線28bとを電気的に接続する。第3スイッチ40b及びプレチャージ抵抗42bは、迂回線38b上に備えられる。第3スイッチ40bは、プレチャージ抵抗42bよりも第2蓄電装置24bの近くに配される。一方、プレチャージ抵抗42bは、第3スイッチ40bよりも第2負荷装置16bの近くに配される。
【0030】
第2処理回路26bは、放電用接続線44b及び第4スイッチ46bを備える。放電用接続線44bは、第3スイッチ40bとプレチャージ抵抗42bとの間の迂回線38bと、第2蓄電装置24bと第2スイッチ36bとの間の負極線30bとを電気的に接続する。第4スイッチ46bは、放電用接続線44b上に備えられる。
【0031】
以上の構成により、プレチャージ抵抗42bの一端は、第1スイッチ34bと第2負荷装置16bとの間の正極線28bに電気的に接続される。プレチャージ抵抗42bの他端は、第1スイッチ34bと第2蓄電装置24bとの間の正極線28bに第3スイッチ40bを介して接続されるとともに、第2スイッチ36bと第2蓄電装置24bとの間の負極線30bに第4スイッチ46bを介して接続される。
【0032】
第2処理回路26bは、電圧センサ48b及び電流センサ50bを備える。電圧センサ48bは、第2蓄電装置24bの端子電圧(出力電圧)を検出できるように、正極線28bと負極線30bとに接続される。電流センサ50bは、第2蓄電装置24bの負極端子と第4スイッチ46bとの間の負極線30b上に備えられる。
【0033】
各スイッチ(遮断装置22a、22bの各スイッチ、第1スイッチ34a、34b、第2スイッチ36a、36b、第3スイッチ40a、40b、第4スイッチ46a、46b)は、オン(接続)とオフ(遮断)とに切り替わる。各スイッチは、リレーであってもよい。各スイッチは、半導体スイッチであってもよい。
【0034】
[制御装置54の構成]
電力供給システム10は、制御装置54を備える。
図2は、制御装置54の制御ブロック図である。制御装置54は、電圧センサ48a、48bから電圧を示す信号を取得する。制御装置54は、電流センサ50a、50bから電流を示す信号を取得する。制御装置54は、各スイッチ(遮断装置22a、22bの各スイッチ、第1スイッチ34a、34b、第2スイッチ36a、36b、第3スイッチ40a、40b、第4スイッチ46a、46b)を制御する。
【0035】
制御装置54は、演算部56及び記憶部58を有する。演算部56は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサである。演算部56は、記憶部58に記憶されているプログラムを実行することにより、各装置を制御する。演算部56の少なくとも一部が、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路によって実現されてもよい。演算部56の少なくとも一部が、ディスクリートデバイスを含む電子回路によって実現されてもよい。
【0036】
演算部56は、制御部60及び推定部62として機能する。制御部60は、電力供給システム10に、後述するシステム起動準備処理、システム作動処理、システムシャットダウン処理及び蓄電装置放電処理を選択的に実行させ得る。具体的には、制御部60は、電力供給システム10に備えられる各々のスイッチのオンとオフとを制御して、各処理を実行させ得る。推定部62は、各々の蓄電装置(第1蓄電装置24a、第2蓄電装置24b)の劣化状態を推定する。
【0037】
記憶部58は、コンピュータ可読記憶媒体である、不図示の揮発性メモリ及び不図示の不揮発性メモリにより構成される。揮発性メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)等である。不揮発性メモリは、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等である。データ等が、例えば、揮発性メモリに記憶される。プログラム、テーブル、マップ等が、例えば、不揮発性メモリに記憶される。記憶部58の少なくとも一部が、上述したプロセッサ、集積回路等に備えられていてもよい。
【0038】
[電力供給システム10の動作]
図3は、電力供給システム10の動作フローである。電力供給システム10は、システム起動準備処理(ステップS1)、システム作動処理(ステップS2)、システムシャットダウン処理(ステップS3)という一連の処理を繰り返し行い得る。更に、電力供給システム10は、システムシャットダウン処理から次のシステム起動準備処理までの間に、必要に応じて、蓄電装置放電処理(ステップS4)を行い得る。以下で各処理での電力供給システム10の動作を説明する。
【0039】
なお、以下では、各処理での発電装置14と、遮断装置22aと、第1電力供給回路12aと、第1負荷装置16aと、第1蓄電装置24aと、第1処理回路26aとの導通状態(第1導通状態)を説明する。一方、各処理での発電装置14と、遮断装置22bと、第2電力供給回路12bと、第2負荷装置16bと、第2蓄電装置24bと、第2処理回路26bとの導通状態(第2導通状態)は、第1導通状態と同じである。このため、以下では、第2導通状態についての説明を省略する。
【0040】
[システム起動準備処理での電力供給システム10の動作]
図4は、システム起動準備処理での電力供給システム10の動作を示す図である。例えば、ユーザが不図示の電源スイッチ等を手動でオン操作をすると、制御部60は、電力供給システム10を起動させる。最初に、制御部60は、平滑コンデンサ18、20aのプレチャージ(第1処理)が行われるように、各スイッチのオンオフ状態を制御する。
【0041】
制御部60は、遮断装置22aの一対のスイッチをオンとする。また、制御部60は、第1処理回路26aの各スイッチを次のように制御する。制御部60は、第1スイッチ34aをオフとし、第2スイッチ36aをオンとし、第3スイッチ40aをオンとし、第4スイッチ46aをオフとする。すると、第1蓄電装置24a、第3スイッチ40a、プレチャージ抵抗42a、遮断装置22a、平滑コンデンサ18及び第2スイッチ36aを含むRC回路が形成される。また、第1蓄電装置24a、第3スイッチ40a、プレチャージ抵抗42a、平滑コンデンサ20a及び第2スイッチ36aを含むRC回路が形成される。
【0042】
以上の導通状態により、電流は、
図4で示す矢印の経路を流れる。平滑コンデンサ18には、第1蓄電装置24aからプレチャージ抵抗42aを介して直流電力が供給される。平滑コンデンサ18には電荷が蓄積され、平滑コンデンサ18が充電される。同様に、平滑コンデンサ20aには、第1蓄電装置24aからプレチャージ抵抗42aを介して直流電力が供給される。平滑コンデンサ20aには電荷が蓄積され、平滑コンデンサ20aが充電される。平滑コンデンサ18、20aが所定の電圧に到達することにより、システム起動準備が完了する。
【0043】
[システム作動処理での電力供給システム10の動作]
図5は、システム作動処理での電力供給システム10の動作を示す図である。電力供給システム10の起動後、制御部60は、第1負荷装置16aに直流電力を供給するように、各スイッチのオンオフ状態を制御する。
【0044】
制御部60は、遮断装置22aの一対のスイッチをオンとする。また、制御部60は、第1処理回路26aの各スイッチを次のように制御する。制御部60は、第1スイッチ34aをオンとし、第2スイッチ36aをオンとし、第3スイッチ40aをオフとし、第4スイッチ46aをオフとする。
【0045】
以上の導通状態により、電力供給システム10の起動が完了する。その後、第1蓄電装置24aと第2蓄電装置24bとの少なくとも一方から供給される電力を用いて発電装置14が始動される。発電装置14と第1蓄電装置24aとの少なくとも一方は、第1負荷装置16aに直流電力を供給し得る。また、発電装置14は、第1蓄電装置24aを充電し得る。なお、電力供給システム10に異常がある場合に、1つ以上のスイッチは、制御部60によって適宜オフにされる。
【0046】
[システムシャットダウン処理での電力供給システム10の動作]
図6は、システムシャットダウン処理での電力供給システム10の動作を示す図である。ユーザが手動の電源スイッチ等でオフ操作をすると、制御部60は、電力供給システム10をシャットダウンさせる。制御部60は、平滑コンデンサ18、20aの放電(第2処理)が行われるように、各スイッチのオンオフ状態を制御する。
【0047】
制御部60は、遮断装置22aの一対のスイッチをオンとする。また、制御部60は、第1処理回路26aの各スイッチを次のように制御する。制御部60は、第1スイッチ34aをオフとし、第2スイッチ36aをオンとし、第3スイッチ40aをオフとし、第4スイッチ46aをオンとする。すると、平滑コンデンサ18、遮断装置22a、プレチャージ抵抗42a、第4スイッチ46a及び第2スイッチ36aを含むRC回路が形成される。また、平滑コンデンサ20a、プレチャージ抵抗42a、第4スイッチ46a及び第2スイッチ36aを含むRC回路が形成される。
【0048】
以上の導通状態により、電流は、
図6で示す矢印の経路を流れる。平滑コンデンサ18に蓄積された電荷は、プレチャージ抵抗42aを介して放電される。平滑コンデンサ20aに蓄積された電荷は、プレチャージ抵抗42aを介して放電される。
【0049】
[蓄電装置放電処理での電力供給システム10の動作]
図7は、放電要否判定処理の処理フローである。システムシャットダウン処理とシステム起動準備処理との間に、制御部60は、
図7で示す放電要否判定処理を行う。例えば、制御部60は、定期的に放電要否判定処理を行ってもよいし、所定のタイミングで放電要否判定処理を行ってもよいし、ユーザからの要求に応じて放電要否判定処理を行ってもよい。放電要否判定処理は、次回のシステム起動準備処理の実行前に、
図8で示す蓄電装置放電処理の実行要否を決定するための処理である。
【0050】
ステップS11において、制御部60は、電圧センサ48aの検出結果及び電圧センサ48bの検出結果に基づいて、第1蓄電装置24aと第2蓄電装置24bの各々の端子電圧に関する情報を取得する。
【0051】
ステップS12において、制御部60は、ステップS11で取得された第1蓄電装置24aの端子電圧と第2蓄電装置24bの端子電圧との差が、電圧閾値より大きいか否かを比較する。電圧閾値は、電力供給システム10の回路に過電流が生ずるか否かを判定するための値である。電圧閾値は、比較的小さい値であることが望ましい。この過電流については後述する。電圧閾値は、記憶部58に予め記憶される。第1蓄電装置24aの端子電圧と第2蓄電装置24bの端子電圧との差が電圧閾値より大きい場合(ステップS12:YES)、処理はステップS13に移行する。一方、第1蓄電装置24aの端子電圧と第2蓄電装置24bの端子電圧との差が電圧閾値以下である場合(ステップS12:NO)、
図7で示す放電要否判定処理は終了する。この場合、次回のシステム起動準備処理までの間に蓄電装置放電処理の実行は不要である。
【0052】
ステップS12からステップS13に移行した場合、制御部60は、蓄電装置放電処理を実行する。この場合、制御部60は、第1蓄電装置24aの端子電圧と第2蓄電装置24bの端子電圧との差が電圧閾値以下になるまで、
図8で示す蓄電装置放電処理を継続して実行する。
【0053】
図8は、蓄電装置放電処理での電力供給システム10の動作を示す図である。上述したように、制御部60は、第1蓄電装置24aの端子電圧と第2蓄電装置24bの端子電圧との差が電圧閾値以下となるまで、蓄電装置放電処理(第3処理)を行う。なお、以下では、一例として、第1蓄電装置24aの端子電圧が第2蓄電装置24bの端子電圧よりも高圧である場合を説明する。
【0054】
制御部60は、遮断装置22aの一対のスイッチをオフとする。また、制御部60は、第1処理回路26aの各スイッチを次のように制御する。制御部60は、第1スイッチ34aをオンとし、第2スイッチ36aをオフとし、第3スイッチ40aをオフとし、第4スイッチ46aをオンとする。すると、第1蓄電装置24a、第1スイッチ34a、プレチャージ抵抗42a及び第4スイッチ46aを含むRC回路が形成される。更に、制御部60は、遮断装置22bの一対のスイッチ、第1スイッチ34b、第2スイッチ36b、第3スイッチ40b及び第4スイッチ46bの全てをオフとする。
【0055】
以上の導通状態により、電流は、
図8で示す矢印の経路を流れる。第1蓄電装置24aに蓄積された電荷は、プレチャージ抵抗42aを介して放電される。この状態で、第1蓄電装置24aに蓄積された電荷は、第1負荷装置16aに供給されない。制御部60は、第1蓄電装置24aの端子電圧と第2蓄電装置24bの端子電圧との差が電圧閾値以下となった時点で、第1スイッチ34a及び第4スイッチ46aをオフとする。
【0056】
一方、第2蓄電装置24bの端子電圧が第1蓄電装置24aの端子電圧よりも高圧である場合、制御部60は、第1スイッチ34bをオンとし、第2スイッチ36bをオフとし、第3スイッチ40bをオフとし、第4スイッチ46bをオンとする。また、制御部60は、遮断装置22aの一対のスイッチ、第1スイッチ34a、第2スイッチ36a、第3スイッチ40a及び第4スイッチ46aの全てをオフとする。
【0057】
[蓄電装置の劣化状態推定処理]
推定部62は、制御部60による蓄電装置放電処理の実行中又は実行後に、放電対象の第1蓄電装置24aの劣化状態を推定する。第1蓄電装置24aの劣化状態は、SOH(State Of Health)とも称される。
【0058】
推定部62は、例えば下記(1)式により、放電対象の第1蓄電装置24aの内部抵抗値(r)を算出する。
r = (Vocv-Vccv)/i (1)
Vocv:非放電状態での蓄電装置の端子電圧値
Vccv:放電中の蓄電装置の端子電圧値
i:放電中の電流値
r:蓄電装置の内部抵抗値
【0059】
蓄電装置放電処理中に、制御部60は、電圧センサ48aの検出結果に基づいて、各端子電圧値(Vccv)を取得する。蓄電装置放電処理の実行前又は実行後に、制御部60は、電圧センサ48aの検出結果に基づいて、端子電圧値(Vocv)を取得する。蓄電装置放電処理中に、制御部60は、電流センサ50aの検出結果に基づいて、電流値(i)を取得する。
【0060】
制御部60は、上記(1)により算出した内部抵抗値(r)と、記憶部58に予め記憶される劣化前の第1蓄電装置24aの内部抵抗値(r)とにより、第1蓄電装置24aのSOHを推定する。制御部60は、推定結果を、記憶部58に記憶させてもよいし、不図示の表示装置で表示させてもよい。
【0061】
プレチャージ抵抗42aは一定である。このため、蓄電装置放電処理時においてSOCの変化が無視できる時間内の電流(i)は一定とみなせる。つまり、上記(1)式によって算出される第1蓄電装置24aの内部抵抗値(r)は、上記の無視できる時間内において一定とみなせる。従って、本実施形態によれば、信頼度の高いSOHを取得することができる。
【0062】
[効果]
本実施形態では、第1処理回路26aに放電用接続線44a及び第4スイッチ46aが備えられる。本実施形態によれば、第1負荷装置16aに電力を供給することなく、第1蓄電装置24aの放電を行うことができる。同様に、本実施形態では、第2処理回路26bに放電用接続線44b及び第4スイッチ46bが備えられる。本実施形態によれば、第2負荷装置16bに電力を供給することなく、第2蓄電装置24bの放電を行うことができる。
【0063】
本実施形態によって奏する効果を理解しやすくするために、比較例の説明をする。ここで、
図9~
図11、
図12A、
図12Bを用いて比較例の電力供給システム100について説明する。
図9~
図11は、比較例の電力供給システム100の動作を示す図である。
図12Aは、比較例の時間-電圧を示すタイムチャートである。
図12Bは、比較例の時間-電流を示すタイムチャートである。比較例の電力供給システム100は、放電用接続線44a、44b及び第4スイッチ46a、46bを備えていないという点を除いて、本実施形態の電力供給システム10と同じ構成を有する。
【0064】
以下では、システム起動準備処理(プレチャージ)の開始からシステム作動処理の開始直後までの電力供給システム100の動作状態を説明する。電力供給システム100によると、システム起動準備処理の時点で、第1蓄電装置24aの端子電圧がE1であり、第2蓄電装置24bの端子電圧がE2であり、E2<E1であり、かつ、E1-E2が電圧閾値より大きいという状態の場合に問題が発生する。
【0065】
時点t1で、システム起動準備処理が開始される。
図9で示すように、遮断装置22aの一対のスイッチ、第2スイッチ36a及び第3スイッチ40aがオンとされ、第1スイッチ34aがオフとされる。また、遮断装置22bの一対のスイッチ、第2スイッチ36b及び第3スイッチ40bがオンとされ、第1スイッチ34bがオフとされる。すると、
図12Bで示すように、第1蓄電装置24aから第1負荷装置16aに電流(i1)が流れる。同様に、第2蓄電装置24bから第2負荷装置16bに電流(i2)が流れる。平滑コンデンサ20a、20bには徐々に電荷が蓄えられ、
図12Aで示すように、平滑コンデンサ20a、20bの電圧(Vc)が徐々に上昇する。
【0066】
時点t2で、平滑コンデンサ20a、20bの電圧(Vc)は、第2蓄電装置24bの端子電圧(E2)に達する。第1蓄電装置24aと第2蓄電装置24bとは導通しており、第1蓄電装置24aの端子電圧(E1)は、第2蓄電装置24b(E2)よりも大きい、このため、
図10で示すように、第1蓄電装置24aは、第2蓄電装置24bを充電する。
【0067】
第1蓄電装置24aによる第2蓄電装置24bの充電が継続されれば、第1蓄電装置24aの端子電圧(E1)と第2蓄電装置24b(E2)とは等しくなる。しかし、第1蓄電装置24aによる第2蓄電装置24bの充電は長い時間を要する。
【0068】
E1=E2となる前の時点t3で、システム作動処理が開始されたとする。
図11で示すように、遮断装置22aの一対のスイッチ、第1スイッチ34a及び第2スイッチ36aがオンとされ、第3スイッチ40aがオフとされる。また、遮断装置22bの一対のスイッチ、第1スイッチ34b及び第2スイッチ36bがオンとされ、第3スイッチ40bがオフとされる。すると、
図12Bで示すように、過電流が発生する。
図12Aで示すように、第2蓄電装置24bの端子電圧(E2)は、第1蓄電装置24aの端子電圧(E1)に急速に達する。
【0069】
以上のように、比較例の電力供給システム100では、E1>E2の状態でシステム作動処理が開始されると、電力供給システム100の回路全体に過電流が発生する。これに対して、本実施形態では、システムシャットダウン処理の時点でE1>E2である場合には、次のシステム起動準備処理までの間に、第1負荷装置16aに電力を供給することなく、第1蓄電装置24aの放電を行うことが可能である。このため、本実施形態によれば、E1>E2の状態でシステム起動準備処理及びシステム作動処理が開始されることはない。従って、本実施形態によれば、E1>E2に起因する過電流を抑制することができる。
【0070】
更に、本実施形態では、第1蓄電装置24aの放電が、電力供給用の回路に通常備えられるプレチャージ抵抗42aを使用して行われる。本実施形態によれば、第1蓄電装置24aの放電を行うための抵抗を別個に必要としないため、部品点数の増加を抑制することができる。
【0071】
なお、制御部60は、第2蓄電装置24bの端子電圧が第1蓄電装置24aの端子電圧よりも大きく、かつ、その差分が電圧閾値よりも大きい場合には、遮断装置22b、32b、第3スイッチ40b及び第4スイッチ46bを、第1蓄電装置24aの端子電圧が第2蓄電装置24bの端子電圧よりも大きい場合での遮断装置22a、32a、第3スイッチ40a及び第4スイッチ46aと同じように動作させる。また、推定部62は、電圧センサ48bの検出結果及び電流センサ50bの検出結果に基づいて、第2蓄電装置24bの劣化状態を推定することができる。
【0072】
[電力供給システム10の使用例]
図13は、移動体64の模式図である。電力供給システム10は、移動体64に搭載され得る。移動体64は、例えば、電動垂直離着陸機(eVTOL機)である。移動体64は、8つのVTOLロータ66を備える。VTOLロータ66は、機体68に対して上方向の推力を発生する。移動体64は、8つの電動モータ70を備える。1つの電動モータ70が、1つのVTOLロータ66を駆動する。移動体64は、2つのクルーズロータ72を有する。クルーズロータ72は、機体68に対して前方向の推力を発生する。移動体64は、4つの電動モータ74を備える。2つの電動モータ74が、1つのクルーズロータ72を駆動する。
【0073】
第1負荷装置16a及び第2負荷装置16bの各々は、複数の電動モータ70と複数の電動モータ74の少なくとも1つを備えてもよい。第1負荷装置16a及び第2負荷装置16bの各々は、電動モータ70及び電動モータ74の他に、低電圧駆動装置を備えてもよい。
【0074】
移動体64は、航空機に限らず、船舶、自動車、列車等であってもよい。また、電力供給システム10は、移動体64の他に、施設、工場等で使用されてもよい。
【0075】
[付記]
上述した開示に関し、更に以下の付記を開示する。
【0076】
(付記1)
電力供給システム(10)は、発電装置(14)から出力される直流電力を第1負荷装置(16a)に供給する第1電力供給回路(12a)と、前記第1電力供給回路に第1処理回路(26a)を介して前記発電装置と並列に接続された第1蓄電装置(24a)と、前記発電装置から出力される前記直流電力を第2負荷装置(16b)に供給する第2電力供給回路(12b)と、前記第2電力供給回路に第2処理回路(26b)を介して前記発電装置と並列に接続された第2蓄電装置(24b)と、を備え、前記第1処理回路は、前記第1処理回路に備えられたプレチャージ抵抗(42a)を介して前記第1蓄電装置から前記第1負荷装置に電力を供給することにより、前記第1負荷装置に備えられた平滑コンデンサ(20a)に対してプレチャージを行う第1処理と、前記平滑コンデンサに蓄積された電荷を前記プレチャージ抵抗を介して放電する第2処理と、前記第1蓄電装置に蓄積された電荷を前記プレチャージ抵抗を介して放電する第3処理と、を選択的に行い得る。
【0077】
上記構成によれば、システムシャットダウン処理の時点で第1蓄電装置の端子電圧が第2蓄電装置の端子電圧よりも大きく、かつ、その差分が電圧閾値よりも大きい場合には、次のシステム起動準備処理までの間に、第1負荷装置に電力を供給することなく、第1蓄電装置の放電を行うことが可能である。このため、上記構成によれば、第1蓄電装置の端子電圧が第2蓄電装置の端子電圧よりも大きく、かつ、その差分が電圧閾値よりも大きい状態でシステム起動準備処理及びシステム通常処理が開始されることはない。従って、上記構成によれば、第1蓄電装置の端子電圧が第2蓄電装置の端子電圧よりも大きく、かつ、その差分が電圧閾値よりも大きいことに起因する過電流を抑制することができる。即ち、上記構成によれば、良好な電力供給システムを提供することができる。
【0078】
更に、上記構成によれば、第1蓄電装置の放電を、電力供給用の回路に通常備えられるプレチャージ抵抗を使用して行うことが可能である。上記構成によれば、第1蓄電装置の放電を行うための抵抗を別個に必要としないため、部品点数の増加を抑制することができる。
【0079】
(付記2)
付記1に記載の電力供給システムにおいて、前記第1処理回路は、前記第1蓄電装置と前記第1負荷装置とを電気的に接続する一対の配線(28a、30a)と、前記一対の配線のうちの一方である第1配線(28a)上に備えられた第1スイッチ(34a)と、前記一対の配線のうちの他方である第2配線(30a)上に備えられた第2スイッチ(36a)と、を備え、前記プレチャージ抵抗の一端は、前記第1スイッチと前記第1負荷装置との間の前記第1配線に電気的に接続され、前記プレチャージ抵抗の他端は、前記第1スイッチと前記第1蓄電装置との間の前記第1配線に第3スイッチ(40a)を介して接続されるとともに、前記第2スイッチと前記第1蓄電装置との間の前記第2配線に第4スイッチ(46a)を介して接続されてもよい。
【0080】
(付記3)
付記2に記載の電力供給システムは、前記第1処理では、前記第1スイッチをオフとし、前記第2スイッチをオンとし、前記第3スイッチをオンとし、前記第4スイッチをオフとすることにより、前記第1負荷装置に備えられた前記平滑コンデンサに対してプレチャージを行ってもよい。
【0081】
(付記4)
付記2に記載の電力供給システムは、前記第2処理では、前記第1スイッチをオフとし、前記第2スイッチをオンとし、前記第3スイッチをオフとし、前記第4スイッチをオンとすることにより、前記平滑コンデンサに蓄積された電荷を前記プレチャージ抵抗を介して放電してもよい。
【0082】
(付記5)
付記2に記載の電力供給システムは、前記第3処理では、前記第1スイッチをオンとし、前記第2スイッチをオフとし、前記第3スイッチをオフとし、前記第4スイッチをオンとすることにより、前記第1蓄電装置に蓄積された電荷を前記プレチャージ抵抗を介して放電してもよい。
【0083】
(付記6)
付記2に記載の電力供給システムにおいて、前記第1処理回路は、前記第1蓄電装置の端子電圧と前記第2蓄電装置の端子電圧との差分が予め決められた電圧閾値以下となるまで前記第3処理を行った後に、前記第1処理を実行してもよい。
【0084】
(付記7)
付記2に記載の電力供給システムは、非放電状態での前記第1蓄電装置の端子電圧(Vocv)と、放電中の前記第1蓄電装置の前記端子電圧(Vccv)と、前記プレチャージ抵抗の抵抗値(R)と、前記放電中の前記第1蓄電装置の電流値(i)とに基づいて前記第1蓄電装置の内部抵抗値(r)を算出し、前記内部抵抗値に基づいて前記第1蓄電装置の劣化状態(SOH)を推定する推定部(62)を備えてもよい。
【0085】
プレチャージ抵抗は一定である。このため、蓄電装置放電処理時においてSOCの変化が無視できる時間内の電流(i)は一定とみなせる。つまり、上記(1)式によって算出される第1蓄電装置の内部抵抗値(r)は、上記の無視できる時間内において一定とみなせる。従って、上記構成によれば、信頼度の高いSOHを取得することができる。
【0086】
(付記8)
付記1に記載の電力供給システムは、前記第1処理では、前記第1処理回路に備えられた前記プレチャージ抵抗を介して前記第1蓄電装置から前記発電装置に電力を供給することにより、前記発電装置に備えられた平滑コンデンサ(18)に対してプレチャージを行ってもよい。
【0087】
(付記9)
移動体(64)は、付記1~8のいずれか1つに記載の電力供給システムを備える。
【0088】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0089】
10…電力供給システム 12a…第1電力供給回路
12b…第2電力供給回路 14…発電装置
16a…第1負荷装置 16b…第2負荷装置
18、20a、20b…平滑コンデンサ 24a…第1蓄電装置
24b…第2蓄電装置 26a…第1処理回路
26b…第2処理回路 28a…正極線(配線、第1配線)
30a…正極線(配線、第2配線) 34a、34b…第1スイッチ
36a、36b…第2スイッチ 40a、40b…第3スイッチ
42a、42b…プレチャージ抵抗 46a、46b…第4スイッチ
62…推定部 64…移動体