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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143925
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/32 20060101AFI20241004BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20241004BHJP
   H01Q 21/28 20060101ALI20241004BHJP
   H01Q 1/52 20060101ALI20241004BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H01Q1/32 Z
H01Q1/22 B
H01Q21/28
H01Q1/52
B60R11/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056878
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】木村 晃野
【テーマコード(参考)】
3D020
5J021
5J046
5J047
【Fターム(参考)】
3D020BA13
3D020BB01
3D020BC18
5J021AA04
5J021AA05
5J021AA06
5J021AA13
5J021AB03
5J021AB06
5J021HA05
5J021HA07
5J021HA10
5J021JA03
5J021JA07
5J046AA07
5J046AB01
5J046AB07
5J046AB13
5J046MA09
5J046UA01
5J047AA07
5J047AB01
5J047AB07
5J047AB13
5J047EB00
(57)【要約】
【課題】複数のアンテナの相互干渉を低減し、体積及び重量を低下し、アンテナ特性の劣化を防ぐことである。
【解決手段】アンテナ装置1は、V2X用のアンテナ部100と、アンテナ部100に隣接する位置に設けられた衛星電波受信用のアンテナ部200,300と、ラジオ放送受信用のアンテナ部500と、アンテナ部200,300とアンテナ部500との間に配置された携帯電話通信用のアンテナ部400と、を備える。アンテナ部100,200,300は、アンテナ部500,400よりも高い位置に配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
V2X用の第1アンテナと、
前記第1アンテナに隣接する位置に設けられた衛星電波受信用の第2アンテナと、
ラジオ放送受信用の第3アンテナと、
前記第2アンテナと前記第3アンテナとの間に配置された携帯電話通信用の第4アンテナと、を備え、
前記第1アンテナ及び前記第2アンテナは、前記第3アンテナ及び前記第4アンテナよりも高い位置に配置されているアンテナ装置。
【請求項2】
前記第2アンテナは、パッチアンテナである請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第3アンテナは、容量冠を有する請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第4アンテナは、複数のアンテナ素子を有し、
前記各アンテナ素子は、長辺部を有し、
前記複数のアンテナ素子は、長辺部が互いに直交する位置に配置されている請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1アンテナ及び前記第2アンテナが実装される第1基板と、
前記第3アンテナ及び前記第4アンテナが実装される第2基板と、を備え、
前記第1基板は、前記第2基板よりも高い位置に配置されている請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第1アンテナ、前記第2アンテナ、前記第3アンテナ、前記第4アンテナに電気的に接続され、当該アンテナの数よりも少ない数のコネクタを備える請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記第1アンテナ、前記第2アンテナ、前記第3アンテナ及び前記第4アンテナを格納する筐体を備える請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記第2アンテナは、第5アンテナ及び第6アンテナを有し、
前記第3アンテナは、第7アンテナ及び第8アンテナを有し、
前記第4アンテナは、第9アンテナ及び第10アンテナを有し、
前記第5アンテナは、前記第1アンテナに隣接する位置に設けられ、
前記第6アンテナは、前記第1アンテナを基準として、前記第5アンテナと逆方向の当該第1アンテナに隣接する位置に設けられ、
前記第7アンテナは、前記第1アンテナを基準として、前記第5アンテナの方向の外側の位置に設けられ、
前記第8アンテナは、前記第1アンテナを基準として、前記第6アンテナの方向の外側の位置に設けられ、
前記第9アンテナは、前記第5アンテナと前記第7アンテナとの間に配置され、
前記第10アンテナは、前記第6アンテナと前記第8アンテナとの間に配置されている請求項1から7のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に搭載されるアンテナ装置が知られている。車両用のアンテナ装置としては、車両のルーフに搭載されるシャークフィンアンテナのアンテナ装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
近年は、デザイン性や空力の観点から、車両のルーフ上に搭載されるアンテナ装置を撤廃できないか検討が行われている。例えば、突起レスのアンテナ装置として、車両ルーフに凹部を設け、その内部にアンテナ素子(パッチアンテナ素子、無給電素子)を配置したアンテナ装置が知られている(特許文献2参照)。
【0004】
また、ルーフ内に搭載されるアンテナ装置として、凹部が形成された導体板において、当該凹部内にアンテナが配置されたアンテナ装置が知られている(特許文献3参照)。
【0005】
また、ルーフ内に、複数のアンテナを設けたルーフ内蔵型の複合アンテナ装置としての車両用通信装置が知られている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6992052号公報
【特許文献2】国際公開第2021/066140号
【特許文献3】特開2017-153036号公報
【特許文献4】特開2022-12537号公報
【特許文献5】特許第4952269号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「アンテナ工学ハンドブック」、オーム社、電子情報通信学会編
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、ルーフ内蔵型の複合アンテナ装置では、以下のような特徴を有する。
(1).特許文献3に記載のアンテナ装置のように、アンテナ周囲を導体(金属壁)で囲われた場合や、車両ルーフ内部のようにアンテナ高さ以上の金属壁に囲まれる空間にアンテナを設置した場合に、所望のアンテナ特性を得られない。
【0009】
(2).波長の長いメディア(通信規格)における低背化について、狭帯域、低放射効率などインピーダンスの観点から、増幅器や伝送線路との不整合ロスにより利得が低下する(非特許文献1参照)。
【0010】
(3).特許文献4に記載のアンテナ装置のように、複数のアンテナ間の距離が適切に保たれなければアンテナ間に浮遊容量や相互結合の影響が強くなるため、アンテナ特性の変化やアイソレーションが低下する。
【0011】
上記(1)~(3)の特徴により、これまでに提案された車両ルーフ内蔵型アンテナの多くは、メディアが単体のものや対応する周波数帯域が高くアンテナサイズの小さなメディアに限定されていた。例えば、金属製のブラケットに設けられた凹部内に、1つのパッチアンテナを有するアンテナ装置が知られている(特許文献5参照)。このため、ルーフ内蔵型の薄型複合アンテナ装置の開発は技術的に困難であった。
【0012】
本発明の課題は、複数のアンテナの相互干渉を低減し、体積及び重量を低下し、アンテナ特性の劣化を防ぐことである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明のアンテナ装置は、
V2X用の第1アンテナと、
前記第1アンテナに隣接する位置に設けられた衛星電波受信用の第2アンテナと、
ラジオ放送受信用の第3アンテナと、
前記第2アンテナと前記第3アンテナとの間に配置された携帯電話通信用の第4アンテナと、を備え、
前記第1アンテナ及び前記第2アンテナは、前記第3アンテナ及び前記第4アンテナよりも高い位置に配置されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数のアンテナの相互干渉を低減でき、体積及び重量を低下でき、アンテナ特性の劣化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態のアンテナ装置の一部透過斜視図である。
図2】実施の形態のアンテナ装置を取り付けた車両の外観斜視図である。
図3】カバー部を外した状態の凹部の拡大斜視図である。
図4】実施の形態のアンテナ装置を示す透過側面図である。
図5】実施の形態のアンテナ装置を示す上面図である。
図6】設置高さを変化した場合のC-V2X用のアンテナ部の水平面放射パターンを示す図である。
図7】設置高さを変化した場合の衛星電波受信用のアンテナ部の垂直面放射パターンを示す図である。
図8】アンテナ素子が直交又は平行に配置された場合のアンテナ素子間アイソレーションの周波数特性を示す図である。
図9】シャークフィンアンテナとラジオ放送受信用のアンテナ部とのV偏波の平均利得の周波数特性を示す図である。
図10】変形例のアンテナ装置を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明に係る実施の形態及び変形例を順に詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0017】
(実施の形態)
図1図9を参照して、本発明に係る実施の形態を説明する。まず、図1図3を参照して、本実施の形態のアンテナ装置1の全体の装置構成を説明する。図1は、本実施の形態のアンテナ装置1の一部透過斜視図である。図2は、アンテナ装置1を取り付けた車両V1の外観斜視図である。図3は、カバー部C1を外した状態の凹部RE1の拡大斜視図である。
【0018】
図1に示すように、アンテナ装置1は、自動車などの車両のルーフ内に取り付けるアンテナ装置であって、複数の通信規格(メディア)の複数のアンテナ部を備える薄型複合アンテナ装置である。
【0019】
アンテナ装置1は、トップカバー10と、ブラケット20と、第1基板としての基板部30Aと、第2基板としての基板部30Bと、第1アンテナとしてのアンテナ部100と、第2アンテナとしてのアンテナ部200,300と、第4アンテナとしてのアンテナ部400と、第3アンテナとしてのアンテナ部500と、を備える。図1において、アンテナ装置1は、トップカバー10を透過して描かれている。また、図1において、アンテナ装置1を基準として、三次元のX軸、Y軸、Z軸をとるものとする。アンテナ装置1に関する他の図でも同様に、X軸、Y軸、Z軸がとられる。
【0020】
トップカバー10及びブラケット20により、アンテナ装置1の筐体としての筐体部2が構成される。アンテナ部100の一部を除き、基板部30A,30Bと、アンテナ部100,200,300,400,500とは、アンテナ装置1の筐体部2内に格納されている。
【0021】
トップカバー10は、基板部30A,30B及びアンテナ部100,200,300,400,500を上側(+Z方向側)から覆うカバーである。トップカバー10は、例えば電波透過性を有する樹脂の成型品である。トップカバー10のXZ平面に平行な側面は、-Y方向側の端部の高さが最も高く(Z軸方向の長さが長く)、+Y方向側に行くにつれて、高さが低くなる(Z軸方向の長さが短くなる)略テーパー状である。トップカバー10のXY平面に平行な上面は、略矩形である。トップカバー10は、螺子止めにより、ブラケット20及び基板部30A,30Bに取り付けられている。
【0022】
ブラケット20は、基板部30A,30B及びアンテナ部100,200,300,400,500を下側(-Z方向側)から覆うブラケットである。ブラケット20は、例えばSUS(Steel Use Stainless)などの板金による金属製である。ブラケット20は、アンテナ装置1を後述する車両V1に取り付けるための4つの取付穴部21を有する。
【0023】
基板部30A,30Bは、例えばFR4(Flame Retardant Type 4)のPCB(Printed Circuit Board)である。基板部30Aは、基板本体部31Aと、コネクタ32Aと、を有する。基板本体部31Aは、アンテナ部100,200,300及びコネクタ32Aと、各種の回路素子と、が実装され、表面に配線パターンが形成された基板の本体部である。コネクタ32Aは、アンテナ部100,200,300からの受信信号を伝送するケーブル(図示略)の一端のプラグが接続されるレセプタクルのコネクタである。コネクタ32Aに接続されるケーブルの他端は、車両V1内に設けられたセット内の受信機に接続される。
【0024】
基板部30Bは、基板本体部31Bと、コネクタ32B1,32B2と、を有する。基板本体部31Aは、アンテナ部400,500及びコネクタ32B1,32B2と、各種の回路素子と、が実装され、表面に配線パターンが形成された基板の本体部である。当該回路素子は、例えば、アンテナ部400,500の共振用の表面実装部品としての、チップインダクタやチップキャパシタである。コネクタ32B1,32B2は、アンテナ部400,500からの受信信号を伝送するケーブル(図示略)の一端のプラグが接続されるレセプタクルのコネクタである。コネクタ32B1,32B2に接続されるケーブルの他端は、車両V1内に設けられたセットの受信機に接続される。また、基板部30A,30B(基板本体部31A,31B)は、螺子止めにより、ブラケット20に取り付けられている。
【0025】
アンテナ部100は、通信規格が例えばC-V2X(Cellular Vehicle to Everything)のアンテナ部である。C-V2Xは、携帯電話用の無線通信回線を使ってV2X通信を行うための通信規格である。V2Xは、自分の車両と、他の車両、信号機や道路標識などの道路インフラ、歩行者などと、の無線通信を行う通信規格である。V2Xは、仰角が0度以下でも利得が要求される通信規格である。このため、V2Xのアンテナは、高い位置に配置されることが好ましい。C-V2Xの周波数帯は、5.9GHz帯である。
【0026】
アンテナ部100は、基板上にダイポールアンテナのパターンが構成された構造を有する。アンテナ部100の基板の平面がXZ平面に平行に位置するように、アンテナ部100は、基板部30A上に立設するように実装されている。アンテナ部100とトップカバー10との間には、車両V1走行時などの異音低減用のスポンジS1が配置されている。
【0027】
アンテナ部200,300は、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)用のパッチアンテナである。アンテナ部200の具体的な通信規格及び周波数帯は、例えばGPS(Global Positioning System)のL1帯(中心周波数;1575.42[MHz])であるものとする。アンテナ部300の具体的な通信規格及び周波数帯は、例えばGPSのL2帯(中心周波数;1227.60[MHz])及びL5帯(中心周波数;1176.45[MHz])であるものとする。アンテナ部200,300の形状及び大きさは、上記の通信規格に対応するように設計されている。
【0028】
アンテナ部200,300は、衛星電波受信用のパッチアンテナであり、通信規格及び周波数帯は、上記のGNSSの各周波数帯に限定されない。通信規格及び周波数帯は、例えば、高精度GNSSとしてのQZSS(Quasi-Zenith Satellite System:みちびき(準天頂衛星システム))のL6帯(中心周波数:1278.75[MHz])としてもよい。また、アンテナ部200,300は、SXM(Sirius XM radio;衛星ラジオ)など、他の通信規格に適用する構成としてもよい。
【0029】
アンテナ部400は、例えばセルラー通信(携帯電話通信)用のアンテナ部である。アンテナ部400の通信規格は、LTE(Long Term Evolution)などの各種の携帯電話通信の通信規格であり、その周波数帯が700[MHz]~5[GHz]帯である。アンテナ部400は、アンテナ素子410,420を有する。
【0030】
アンテナ素子410は、板金が折り曲げられた構造を有する逆Fアンテナのアンテナ素子であり、直線帯状で長さが最も長い長辺部411の延在方向がX軸方向となるように配置されて実装されている。アンテナ素子420は、同様の構造を有する逆Fアンテナのアンテナ素子であり、直線帯状で長さが最も長い長辺部421の延在方向がY軸方向となるように配置されて実装されている。アンテナ部400は、アンテナ素子410,420の2系統をとることにより、電波の向きの影響を低減しつつ、通信速度を上げることができる。
【0031】
なお、アンテナ部400が有するアンテナ素子の数は、2に限定されるものではなく、3以上の複数としてもよい。また、アンテナ部400が有する複数のアンテナ素子は、同一周波数帯を送受信するアンテナ素子であっても、互いに別の周波数帯を送受信するアンテナ素子であってもよい。
【0032】
アンテナ部500は、例えばFM(Frequency Modulation)放送(98[MHz])などのラジオ放送受信用のアンテナ部である。しかしこれに限定されるものではなく、AM(Amplitude Modulation)(526.5~1606.5[kHz])、DAB(Digital Audio Broadcasting)などのラジオ放送や、DTV(デジタルテレビ)放送(470~710[MHz])のアンテナ部としてもよい。
【0033】
アンテナ部500は、容量冠(容量環)510と、立設素子520(図3)と、を有する逆Fアンテナである。容量冠510は、トップカバー10の形状に合わせて、+Y方向にいくにつれて、高さが低くなるように、アンテナ装置1(ブラケット20)の下面に対して斜めになるように配置された平面状の板金によるアンテナ素子である。立設素子520は、容量冠510と一体的な板金のアンテナ素子であり、基板本体部31Bに立設されて、容量冠510に接続されている。容量冠510とトップカバー10との間には、異音低減用のスポンジS2が配置されている。
【0034】
アンテナ部500は、容量冠510を有する逆Fアンテナであるが、容量冠を有する逆Lアンテナとしてもよい。
【0035】
図2図3に示すように、アンテナ装置1は、車両V1に取り付けられる。図2図3において、図1のアンテナ装置1を基準としたX軸、Y軸、Z軸とは独立して、車両V1を基準とした前後左右上下の各方向を設定するものとする。
【0036】
図2に示すように、車両V1は、上方側にルーフRO1を有する。また、車両V1は、ルーフRO1の後方に、車両V1の幅方向(左右方向)に延在する凹部RE1(図3)を上側から覆う樹脂製のカバー部C1を有する。カバー部C1からは、アンテナ装置1のアンテナ部100を覆うトップカバー10のみが露出している。
【0037】
図3に示すように、凹部RE1内には、取付けプレートP1が設置されている。取付けプレートP1は、金属製のプレートであり、車両V1のボディからグラウンドがとられている。アンテナ装置1は、取付けプレートP1上に取り付けられる。例えば、取付けプレートP1上に取付用の4つのボルト(図示略)が上方向に延在するように設置されている。アンテナ装置1は、凹部RE1内に配置され、4つの取付穴部21への4つのボルトの挿通及び+Z方向側からの4つのナット(図示略)の締めにより、凹部RE1に固定的に取付られる。
【0038】
アンテナ装置1の取り付け位置は、凹部RE1の左右方向の略中心にアンテナ部100が位置するように、凹部RE1の中心部から外側(右側)の部分にわたる領域である。つまり、アンテナ装置1の+Y方向が、凹部RE1の右方向に平行になるように取り付けられる。
【0039】
つぎに、図4図9を参照して、アンテナ装置1の各アンテナ部のアンテナ特性を説明する。図4は、アンテナ装置1を示す透過側面図である。図5は、アンテナ装置1を示す上面図である。図6は、設置高さを変化した場合のアンテナ部100の水平面放射パターンを示す図である。図7は、設置高さを変化した場合のアンテナ部200の垂直面放射パターンを示す図である。図8は、アンテナ素子410,420が直交又は平行に配置された場合のアンテナ素子間アイソレーションの周波数特性を示す図である。図9は、シャークフィンアンテナとアンテナ部500とのV偏波の平均利得の周波数特性を示す図である。
【0040】
図4に示すように、アンテナ装置1の筐体内部において、基板部30Aの基板本体部31Aは、基板部30Bの基板本体部31Bの位置よりも高い(+Z側に大きい)位置に配置されている。つまり、基板本体部31Aに実装されたアンテナ部100,200,300は、アンテナ装置1の下面からの高さが高い位置に配置されている。
【0041】
ここで、図6に、アンテナ部100の水平面(XY平面)の放射パターンとして、水平面の角度(0~360度)に対するアンテナ部100の利得[dB]を示す。図6において、実線が、下面から25mmの高さに配置されたアンテナ部100の水平面の利得[dB]を示し、点線が、下面から5mmの高さに配置されたアンテナ部100の水平面の利得[dB]を示す。図6に示すように、25mmの高さに配置されたアンテナ部100の水平面の利得は、5mmの高さに配置されたアンテナ部100の水平面の利得に比べて、高くなり、利得が低い角度が低減している。このため、アンテナ装置1の高い位置に配置されたアンテナ部100は、低い位置に配置されたアンテナ部100の水平面の利得よりも、水平面の放射パターン(利得)が改善されている。
【0042】
また、図7に、アンテナ部200の垂直面(YZ平面)の放射パターンとして、垂直面の角度(0~360度)に対するアンテナ部200の利得[dB]を示す。図6において、実線が、下面から25mmの高さに配置されたアンテナ部200の水平面の利得[dB]を示し、点線が、下面から5mmの高さに配置されたアンテナ部200の垂直面の利得[dB]を示す。図7に示すように、25mmの高さに配置されたアンテナ部200の垂直面の利得は、5mmの高さに配置されたアンテナ部200の垂直面の利得に比べて、高く、特に低仰角の部分で高い。このため、アンテナ装置1の高い位置に配置されたアンテナ部200は、低い位置に配置されたアンテナ部200の垂直面の利得よりも、垂直面の放射パターン(利得)が改善されている。
【0043】
また、図5に示すように、トップカバー10を除くアンテナ装置1において、アンテナ部400のアンテナ素子410の長辺部411がX軸方向に平行になるように配置され、アンテナ素子420の長辺部421がY軸方向に平行になるように配置されている。図8に、周波数[MHz]に対する、アンテナ素子410,420間のアイソレーション(の値)[dB]を示す。図7において、実線が、アンテナ素子410,420が互いに直交に配置された場合のアンテナ素子410,420間のアイソレーション[dB]を示す。点線が、アンテナ素子410,420が互いに平行に配置された場合のアンテナ素子410,420間のアイソレーション[dB]を示す。
【0044】
図8に示すように、直交に配置された場合のアンテナ素子410,420間のアイソレーション[dB]は、平行に配置された場合のアンテナ素子410,420間のアイソレーション[dB]よりも、低い周波数部分が増加している。アイソレーション[dB]が低いほど、アイソレーションがとれている(互いに独立している)ことを示す。このため、直交に配置された場合のアンテナ素子410,420は、平行に配置された場合のアンテナ素子410,420よりも、アイソレーションがとれている。アンテナ装置1のように、アンテナ素子410,420を同種の2系統の通信に用いる場合において、アイソレーションがとれているほど、2系統全体としての通信速度が速くなり、好ましい。
【0045】
また、図9に、周波数[MHz]に対する、シャークフィンアンテナ及びアンテナ部500のV偏波の平均利得[dBd]を示す。図9に示すように、アンテナ部500に面積の大きい容量冠510を設けることで、高周波数側(FMの周波数帯)で、V偏波の平均利得がシャークフィンアンテナの平均利得よりも大きくなる。容量冠510の面積は、大きいほどV偏波の平均利得が大きくなる。
【0046】
アンテナ部500をアンテナ装置1のY軸方向の外側部分以外に設ける場合、他のアンテナ部の実装のため、アンテナ部500の実装面積を大きくとれない。これに対し、図4図5に示すように、アンテナ部500は、他のアンテナ部よりも、車両V1の幅方向の外側(右端側)に配置されている。このため、アンテナ部500の容量冠510の面積を大きくでき、V偏波の平均利得も大きくできる。
【0047】
以上、本実施の形態によれば、アンテナ装置1は、C-V2X用のアンテナ部100と、アンテナ部100に隣接する位置に設けられた衛星電波受信用のアンテナ部200,300と、ラジオ放送受信用のアンテナ部500と、アンテナ部200,300とアンテナ部500との間に配置された携帯電話通信用のアンテナ部400と、を備える。アンテナ部100,200,300は、アンテナ部500,400よりも高い位置に配置されている。
【0048】
このため、複合アンテナのアンテナ装置1において、複数のアンテナ部の相互干渉を低減でき、体積及び重量を低下でき、アンテナ特性の劣化を防ぐことができる。より具体的には、アンテナ部100,200,300が、アンテナ部400,500よりも高い位置にあるので、アンテナ部間の相互干渉を抑えることができ、アンテナ部100,200,300,400,500を集約できる。アンテナ部100,200,300,400,500の集約により、アンテナ装置1の体積及び重量を低下できる。また、C-V2X用のアンテナ部100を高い位置に配置するので、良好な水平面放射パターン及び仰角が0度以下の利得を得ることができ、アンテナ特性の劣化を防ぐことができる。また、衛星電波受信用のアンテナ部200,300を高い位置に配置するので、良好な垂直面放射パターンを得ることができ、アンテナ特性の劣化を防ぐことができる。また、アンテナ部500をアンテナ部100の最も外側の位置に配置するので、実装面積の制約を受けることなく、アンテナ特性の劣化を防ぐことができる。また、各アンテナ部が集約されているアンテナ装置1を車両V1の凹部RE1に取り付けることを容易にすることができる。アンテナ装置1を車両V1の凹部RE1(ルーフRO1内部)に搭載することにより、車両デザインの自由度を増すことができ、その結果として空力性能向上や車室内空間拡大に貢献できる。さらに、アンテナ装置1の部品点数を削減でき、組み立て工数を削減できる。
【0049】
また、アンテナ部200,300は、パッチアンテナである。このため、アンテナ部200を薄型にでき、アンテナ部200,300を高い位置に配置しても、アンテナ装置1を薄型にできる。
【0050】
また、アンテナ部500は、容量冠510を有する。このため、良好なV偏波の平均利得を得ることができ、アンテナ特性の劣化を防ぐことができる。特に、アンテナ部500をアンテナ部100の最も外側の位置に配置するので、容量冠510の面積を大きくとることができ、より良好なV偏波の平均利得を得ることができる。
【0051】
また、アンテナ部400は、アンテナ素子410,420を有する。アンテナ素子410,420は、それぞれ、長辺部411,421を有する。アンテナ素子410,420は、長辺部411,421が互いに直交する位置に配置されている。このため、アンテナ素子410,420のアイソレーションをとることができ、携帯電話通信の通信速度を高くできる。
【0052】
また、アンテナ装置1は、アンテナ部100,200,300が実装される基板部30Aと、アンテナ部400,500が実装される基板部30Bと、を備える。基板部30Aは、基板部30Bよりも高い位置に配置されている。このため、アンテナ部100,200,300を基板部30Aに実装することにより、アンテナ部100,200,300をアンテナ部400,500よりも高い位置に容易に配置できる。また、基板部30A,30Bを複数のアンテナ部で共用化するので、基板部の使用数量及び面積を抑えることができ、アンテナ装置1のコストを抑えることができる。
【0053】
また、アンテナ装置1は、アンテナ部100,200,300,400,500に電気的に接続され、当該アンテナ部の数よりも少ない数のコネクタ32A,32B1,32B2を備える。このため、各アンテナ部からセット側へ接続するケーブルを考えた際に、従来は車両V1上の分配先(アンテナ部)が複数存在して各ケーブルの長さがバラバラであった。しかし、アンテナ装置1のコネクタ32A,32B1,32B2に集約化することにより、各ケーブルの長さを同じような長さにでき、アンテナ装置1の生産性を向上でき、そのコストを削減できる。
【0054】
また、アンテナ装置1は、アンテナ部100,200,300,400,500を格納する筐体部2(トップカバー10、ブラケット20)を備える。このため、アンテナ部ごとに筐体を設ける構成に比べて、外装に用いる樹脂成型品としてのトップカバー10の金型を削減でき、アンテナ装置1のコストを抑えることができる。
【0055】
(変形例)
図10を参照して、上記実施の形態の変形例を説明する。図10は、変形例のアンテナ装置1aを示す概略ブロック図である。
【0056】
上記実施の形態では、車両V1の凹部RE1の左右方向の中心部から一方の外側(例えば右側)の領域にアンテナ装置1を取り付ける構成であった。このため、凹部RE1のうち、アンテナ装置1の取付領域以外の領域部分が余り、当該領域部分が他の用途に活用可能である。本変形例では、車両V1の凹部RE1の全ての領域に取り付けるアンテナ装置1aを用いる構成とする。
【0057】
図10に示すように、アンテナ装置1aは、上記実施の形態のアンテナ装置1と同様に、複数の通信規格の複数のアンテナ部を備える薄型複合アンテナ装置である。ただし、図10は、アンテナ装置1aの各アンテナ部の位置関係(配置順)を示す概略図であり、各アンテナ部の実装面積、各アンテナ部間の距離は、考慮していない図である。また、図10上の破線は、アンテナ装置1aのY軸方向の中心線である。
【0058】
アンテナ装置1aは、アンテナ部100と、第5アンテナとしてのアンテナ部200aと、第6アンテナとしてのアンテナ部200bと、第9アンテナとしてのアンテナ部400aと、第10アンテナとしてのアンテナ部400bと、第7アンテナとしてのアンテナ部500aと、第8アンテナとしてのアンテナ部400bと、を備える。アンテナ装置1aは、アンテナ部100をY軸方向の中心として、+Y方向に順に、アンテナ部200a,400a,500aが配置され、-Y方向に順に、アンテナ部200b,400b,500bが配置されている。
【0059】
アンテナ部200aは、GNSS用のパッチアンテナのアンテナ部である。アンテナ部200aは、上記実施の形態のアンテナ部200,300のように、2つ以上のパッチアンテナとする構成としてもよい。アンテナ部400aは、アンテナ部400と同様の携帯電話通信用の板金アンテナのアンテナ部である。アンテナ部500aは、アンテナ部500と同様のラジオ放送(例えば、AM/FM放送)用の板金アンテナのアンテナ部である。
【0060】
アンテナ部200bは、SXM用のパッチアンテナのアンテナ部である。アンテナ部200bも、2つ以上のパッチアンテナとする構成としてもよい。アンテナ部400bは、アンテナ部400と同様の携帯電話通信用の板金アンテナのアンテナ部である。アンテナ部500bは、アンテナ部500と同様のラジオ放送(例えば、DAB)用の板金アンテナのアンテナ部である。
【0061】
アンテナ装置1aのトップカバー、ブラケット、基板部の構成は、アンテナ装置1と同様であるため、異なる部分を主として説明する。アンテナ装置1aは、基板部として、アンテナ部100,200a,200bを実装する基板部30aと、アンテナ部400a,500aを実装する基板部30b1と、アンテナ部400b,500bを実装する基板部30b1と、を備える。
【0062】
アンテナ装置1aの下面を基準として、基板部30b1,30b2は、高さ(+z軸方向の位置)が同じである。基板部30aは、基板部30b1,30b2の高さよりも高く配置されている。アンテナ部100,200a,200bの高さは、アンテナ部400a,400b,500a,500bよりも高い位置に配置されている。このため、アンテナ装置1aのトップカバーは、側面(YZ平面)から見て、アンテナ部100から+Y方向にいくにつれて高さが低くなるテーパー形状を有し、同じくアンテナ部100から-Y方向にいくにつれて高さが低くなるテーパー形状を有する。
【0063】
また、アンテナ装置1aのY軸方向の長さは、車両V1の凹部RE1の幅方向(左右方向)の長さよりも少し短く設計されている。このため、アンテナ装置1aを凹部RE1に取り付けた場合に、空き領域がほぼなく、凹部RE1の領域をほぼ有効活用できる。
【0064】
以上、本変形例によれば、アンテナ装置1aは、衛星電波受信用のアンテナ部200a,200bと、ラジオ放送受信用のアンテナ部500a,500bと、携帯電話通信用のアンテナ部400a,400bと、を備える。アンテナ部200aは、アンテナ部100に隣接する位置に設けられる。アンテナ部200bは、アンテナ部100を基準として、アンテナ部200aと逆方向のアンテナ部100に隣接する位置に設けられる。アンテナ部500aは、アンテナ部100を基準として、アンテナ部200aの方向(+Y方向)の外側の位置に設けられる。アンテナ部500bは、アンテナ部100を基準として、アンテナ部200bの方向(-Y方向)の外側の位置に設けられる。アンテナ部400aは、アンテナ部200aとアンテナ部500aとの間に配置されている。アンテナ部400bは、アンテナ部200bとアンテナ部500bとの間に配置されている。このため、アンテナ装置1aは、アンテナ装置1と同様な効果を奏するとともに、車両V1の凹部RE1の空間を有効に活用できる。
【0065】
なお、上記実施の形態における記述は、本発明に係るアンテナ装置の一例であり、これに限定されるものではない。
【0066】
上記実施の形態及び変形例では、アンテナ装置1,1aにおいて、ラジオ放送受信用のアンテナ部500,500a,500bを、板金アンテナとしたが、これに限定されるものではない。アンテナ部500,500a,500bを、基板上のパターン印刷したアンテナ部など、他の種類のアンテナ部としてもよい。また、アンテナ部500,500a,500bは、容量冠を有さない構造のアンテナ部としてもよい。
【0067】
また、上記実施の形態及び変形例では、アンテナ装置1,1aにおいて、基板部30B,30b1,30b2上のラジオ放送受信用のアンテナ部500,500a,500bの共振用コイルを、チップインダクタとしたが、これに限定されるものではない。共振用コイルを、空芯コイル、基板本体部にパターン印刷したコイルとしてもよく、アンテナ部500,500a,500bの形状をミアンダ形状などにしてもよい。
【0068】
また、上記実施の形態及び変形例では、アンテナ装置1,1aは、C-V2X用のアンテナ部100、衛星電波受信用のアンテナ部200,300,200a,200b、携帯電話通信用のアンテナ部400,400a,400b、ラジオ放送受信用のアンテナ部500,500a,500bを実装する構成としたが、これに限定されるものではない。アンテナ装置1,1aに実装するアンテナ部は、Wi-Fi(登録商標)など、他の種類の通信規格のアンテナ部を実装する構成としてもよい。
【0069】
また、上記実施の形態及び変形例では、アンテナ装置1,1aは、トップカバー10を備える構成としたが、これに限定されるものではない。アンテナ装置1,1aは、例えばカバー部C1から露出しない構成とする場合に、トップカバー(トップカバー10)がない構成としてもよい。
【0070】
また、上記実施の形態及び変形例では、アンテナ装置1(,1a)は、トップカバー10(トップカバー)と、基板部30A,30B(基板部30a,30b1,30b2)との固定方法を螺子止めとしたが、これに限定されるものではない。固定方法は、溶着など、他の固定方法としてもよい。
【0071】
また、上記実施の形態及び変形例では、アンテナ装置1(,1a)は、ブラケット20と、基板部30A,30B(基板部30a,30b1,30b2)とが接触して接続されている構成とした。しかし、ブラケット20と基板部30A,30Bとは、接触、非接触に限定されず、動作周波数帯で電気的に結合形態であればよい。
【0072】
また、上記実施の形態及び変形例では、アンテナ装置1,1aは、車両V1の凹部RE1内に搭載される構成としたが、これに限定されるものではない。アンテナ装置1,1aは、車両V1のルーフRO1上に搭載される構成としてもよく、車両のスポイラーへの搭載など、搭載場所に制約はない。
【0073】
また、実施の形態及び変形例のアンテナ装置1,1aを、アンテナ部100の位置を基準として、Y軸方向に線対称な構成としてもよい。当該線対称なアンテナ装置1は、車両V1の凹部RE1の幅方向(左右方向)の中心部にアンテナ部100を位置させ、凹部RE1の当該中心部から左方向側に位置させて取り付けられる。
【0074】
その他、上記実施の形態及び変形例におけるアンテナ装置の細部構成及び詳細動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0075】
1,1a アンテナ装置
2 筐体部
10 トップカバー
20 ブラケット
21 取付穴部
30A,30B,30a,30b1,30b2 基板部
31A,31B 基板本体部
32A,32B1,32B2 コネクタ
100,200,300,400,500,200a,200b,400a,400b,500a,500b アンテナ部
410,420 アンテナ素子
411,421 長辺部
510 容量冠
520 立設素子
S1,S2 スポンジ
V1 車両
RO1 ルーフ
C1 カバー部
RE1 凹部
P1 取付けプレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10