(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143929
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】除塵装置
(51)【国際特許分類】
F24F 9/00 20060101AFI20241004BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20241004BHJP
【FI】
F24F9/00 J
H04N23/60 500
F24F9/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056885
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】森 豊
(72)【発明者】
【氏名】原田 真宏
(72)【発明者】
【氏名】村上 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅之
【テーマコード(参考)】
5C122
【Fターム(参考)】
5C122DA01
5C122EA01
5C122FH10
5C122FH11
5C122FH14
5C122HA46
5C122HA82
5C122HA86
5C122HB01
(57)【要約】
【課題】適切に除塵することが可能な除塵装置を提供する。
【解決手段】使用者Uに風を吹き付けることによって除塵を行う除塵装置1であって、風を吹き出し可能な複数の吹き出し口10が形成された側壁部2と、使用者Uを撮影するカメラと、カメラの撮影結果に基づいて使用者Uのシルエットを推測するシルエット推測部と、シルエットの推測結果に基づいて、複数の吹き出し口10から吹き出す風の強さを個別に制御する制御部と、を具備する。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者に風を吹き付けることによって除塵を行う除塵装置であって、
風を吹き出し可能な複数の吹き出し口が形成された本体部と、
前記使用者を撮影する撮影部と、
前記撮影部の撮影結果に基づいて前記使用者のシルエットを推測するシルエット推測部と、
前記シルエットの推測結果に基づいて、前記複数の吹き出し口から吹き出す風の強さを個別に制御する制御部と、
を具備する、
除塵装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記使用者と、当該使用者の荷物との接点を前記シルエットの推測結果から抽出し、
前記複数の吹き出し口のうち、前記接点に風を当てる吹き出し口から優先的に風を吹き出し可能となるように、前記接点についての重みづけを行う、
請求項1に記載の除塵装置。
【請求項3】
前記シルエットの推測結果に基づいて前記使用者の体の部位を推測する部位推測部をさらに具備し、
前記制御部は、
前記複数の吹き出し口のうち、除塵対象物が付き易い部位に風を当てる吹き出し口から優先的に風を吹き出し可能となるように、前記部位についての重みづけを行う、
請求項1又は請求項2に記載の除塵装置。
【請求項4】
前記使用者の着衣部を推測する着衣推測部をさらに具備し、
前記制御部は、
前記複数の吹き出し口のうち、前記着衣部に風を当てる吹き出し口から優先的に風を吹き出し可能となるように、前記着衣部についての重みづけを行う、
請求項1又は請求項2に記載の除塵装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記使用者が衣服を身に着けていない露出部に向けて風を吹き出さないように、風の強さを制御する、
請求項4に記載の除塵装置。
【請求項6】
前記使用者が身に付けている衣服の材質を推測する材質推測部をさらに具備し、
前記制御部は、
前記複数の吹き出し口のうち、除塵対象物が付き易い材質の衣服に風を当てる吹き出し口から優先的に風を吹き出し可能となるように、前記材質についての重みづけを行う、
請求項1又は請求項2に記載の除塵装置。
【請求項7】
前記複数の吹き出し口は、
第一の方向に風を吹き出す第一の吹き出し口と、
平面視において前記第一の方向とは異なる第二の方向に風を吹き出す第二の吹き出し口と、
を含む、
請求項1又は請求項2に記載の除塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者に風を吹き付けることによって除塵を行う除塵装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者に風を吹き付けることによって除塵を行う除塵装置の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載のエアシャワー装置は、送風ユニットを具備する。前記送風ユニットには、複数のシャワーノズルが設けられる。前記送風ユニットは、各シャワーノズルから同じ風速及び風量の風を使用者に吹き付けることで、使用者に付着した花粉を吹き飛ばすことができる。
【0004】
ここで、花粉の付き易さは使用者の体の部位によって異なるため、花粉の付き易い部位に重点的に風を吹き付けることが望ましい。また使用者が荷物を持っていた場合、当該荷物によって風が遮られるおそれがあるため、荷物の周辺にも重点的に風を吹き付けることが望ましい。
【0005】
しかしながら特許文献1のエアシャワー装置は、同じ風速及び風量の風を使用者の全身に吹き付けるものであるため、上述した荷物周辺等に重点的に風を吹き付けることができず、除塵が不十分となってしまうおそれがあった。このため、適切に除塵することが可能な技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、適切に除塵することが可能な除塵装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、使用者に風を吹き付けることによって除塵を行う除塵装置であって、風を吹き出し可能な複数の吹き出し口が形成された本体部と、前記使用者を撮影する撮影部と、前記撮影部の撮影結果に基づいて前記使用者のシルエットを推測するシルエット推測部と、前記シルエットの推測結果に基づいて、前記複数の吹き出し口から吹き出す風の強さを個別に制御する制御部と、を具備するものである。
【0010】
請求項2においては、前記制御部は、前記使用者と、当該使用者の荷物との接点を前記シルエットの推測結果から抽出し、前記複数の吹き出し口のうち、前記接点に風を当てる吹き出し口から優先的に風を吹き出し可能となるように、前記接点についての重みづけを行うものである。
【0011】
請求項3においては、前記シルエットの推測結果に基づいて前記使用者の体の部位を推測する部位推測部をさらに具備し、前記制御部は、前記複数の吹き出し口のうち、除塵対象物が付き易い部位に風を当てる吹き出し口から優先的に風を吹き出し可能となるように、前記部位についての重みづけを行うものである。
【0012】
請求項4においては、前前記使用者の着衣部を推測する着衣推測部をさらに具備し、前記制御部は、前記複数の吹き出し口のうち、前記着衣部に風を当てる吹き出し口から優先的に風を吹き出し可能となるように、前記着衣部についての重みづけを行うものである。
【0013】
請求項5においては、前記制御部は、前記使用者が衣服を身に着けていない露出部に向けて風を吹き出さないように、風の強さを制御するものである。
【0014】
請求項6においては、前記使用者が身に付けている衣服の材質を推測する材質推測部をさらに具備し、前記制御部は、前記複数の吹き出し口のうち、除塵対象物が付き易い材質の衣服に風を当てる吹き出し口から優先的に風を吹き出し可能となるように、前記材質についての重みづけを行うものである。
【0015】
請求項7においては、前記複数の吹き出し口は、第一の方向に風を吹き出す第一の吹き出し口と、平面視において前記第一の方向とは異なる第二の方向に風を吹き出す第二の吹き出し口と、を含むものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、各吹き出し口から吹き出される風の強さが使用者のシルエットに応じて個別に制御されるため、適切に除塵することができる。
【0018】
請求項2においては、使用者と荷物との接点に重点的に風を当てることができるため、適切に除塵することができる。
【0019】
請求項3においては、使用者の体の部位のうち、除塵対象物の付き易い部位に重点的に風を当てることができるため、適切に除塵することができる。
【0020】
請求項4においては、除塵対象物が付き易い着衣部に重点的に風を当てることができるため、適切に除塵することができる。
【0021】
請求項5においては、使用者に不快感を与えるのを抑制することができる。
【0022】
請求項6においては、使用者の衣服のうち、除塵対象物の付き易い部分に重点的に風を当てることができるため、適切に除塵することができる。
【0023】
請求項7においては、使用者の正面及び背面に角度をつけて風を当てることができるため、適切に除塵することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る除塵装置の構成を示す概略図。
【
図3】(a)除塵装置を示す側面図。(b)吹き出し口の拡大側面図。
【
図5】除塵装置で使用者を除塵するための除塵処理を示すフローチャート。
【
図6】使用者のシルエットを抽出する様子を示す図。
【
図7】(a)荷物を持っていない使用者を示す図。(b)使用者の人のシルエットを示す図。(c)使用者と荷物との接点を示す図。
【
図9】使用者のシルエットとメッシュとの位置関係の一例を示す図。
【
図10】(a)使用者と荷物との接点の重みづけの一例を示す図。(b)使用者の体の部位の重みづけの一例を示す図。(c)着衣部の重みづけの一例を示す図。(d)衣服の材質の重みづけの一例を示す図。
【
図11】制御部により抽出された使用者の部位の一例を示す図。
【
図12】使用者の部位とメッシュとの位置関係の一例を示す図。
【
図13】制御部により抽出された着衣部及び露出部の一例を示す図。
【
図14】着衣部及び露出部とメッシュとの位置関係の一例を示す図。
【
図16】(a)優先度、風の強さ及びダンパーの開度の関係の一例を示す図。(b)優先度に応じてダンパーが制御される様子を示す拡大側面図。
【
図17】(a)荷物を背負った使用者に風を当てる様子を示す平面図。(b)荷物を脇に抱えた使用者に風を当てる様子を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、
図1から
図4を参照し、本発明の一実施形態に係る除塵装置1の構成について説明する。以下の説明においては、図中に記した矢印に従って上下方向を定義する。なお本実施形態では、
図1における紙面右側から紙面左側に向けて除塵装置1内を使用者U(除塵の対象となる人)が通過することを想定している。
【0026】
このため以下では、使用者Uが除塵装置1内に入る側(
図1に示す側壁部2の紙面右側)を「入口」、使用者Uが除塵装置1から出る側(
図1に示す側壁部2の紙面左側)を「出口」と定義する。また以下の説明においては、「入口」から「出口」に向かう方向を「前方向」と定義し、「出口」から「入口」に向かう方向を「後方向」と定義する。また以下の説明においては、前方向を向いた使用者Uを基準として、「左右方向」を定義する。
【0027】
除塵装置1は、使用者Uに付着した花粉やハウスダスト等の粉塵を除去する(除塵する)ものである。除塵装置1は、建物や部屋の中に花粉等が侵入するのを防ぐ目的で、建物や部屋の入口等に設置される。なお除塵装置1は、人が出入りする建物(部屋)であれば、どのような建物にも設置可能である。除塵装置1は、例えばホテルや事務所等に設置される。
【0028】
図1及び
図2に示すように、除塵装置1は、側壁部2、通路3、ファン4、ダンパー5、カメラ6、サーモカメラ7、赤外線センサ8及び制御部9を具備する。
【0029】
図1に示す側壁部2は、除塵装置1の本体を成す部材である。側壁部2は、建物や部屋の入口等に設置される。側壁部2は、左右一対設けられる。使用者Uは、左右の側壁部2の間を通過することができる。本実施形態では左右の側壁部2の間の空間が、除塵装置1の内部空間1aとなっている。
【0030】
内部空間1aの前後略中央部は、使用者Uに付着した花粉等を吹き飛ばすための位置となっている。以下ではこの位置を「除塵位置P」(
図4参照)と称する。側壁部2は、吹き出し口10を具備する。
【0031】
吹き出し口10は、内部空間1aに向けて風を吹き出すための開口部である。吹き出し口10は、左右の側壁部2の対向面に形成される。吹き出し口10は、側面視略円状に形成される。吹き出し口10は、複数形成される。
図3(a)に示すように、本実施形態では、上下に並んだ8つの吹き出し口10が前後に5組(1つの側壁部2に合計40個)形成される。
【0032】
以下では、前後5組の吹き出し口10について、入口側に近いものから順に、「第1吹き出し口1n」、「第2吹き出し口2n」、「第3吹き出し口3n」、「第4吹き出し口4n」、「第5吹き出し口5n」と称する。
【0033】
なお、上記吹き出し口1n~5nの符号「n」は、その吹き出し口が上から何番目にあるのかを示す変数となっている。例えば第1吹き出し口1nの中で最も上側(n=1)の吹き出し口は、「第1吹き出し口11」と記載される。また第1吹き出し口1nの中で上から2番目(n=2)の吹き出し口は、「第1吹き出し口12」と記載される。
【0034】
図4に示すように、第2吹き出し口2n、第3吹き出し口3n及び第4吹き出し口4nは、除塵位置Pの左右外側方に配置され、横方向(略左右方向)に向けて風を吹き出すことができる。なお
図4には、吹き出し口10が模式的に記載されている。
【0035】
第1吹き出し口1nは、除塵位置Pよりも入口側に配置される。第1吹き出し口1nは、平面視において斜め方向(左右方向に対して出口側に傾斜する方向)に向けて風を吹き出すように構成される。当該第1吹き出し口1nは、除塵位置Pで前を向いた使用者Uの後側に風を当てることができる。
【0036】
第5吹き出し口5nは、除塵位置Pよりも出口側に配置される。第5吹き出し口5nは、除塵位置Pを基準として、第1吹き出し口1nと前後対称に構成される。当該第5吹き出し口5nは、除塵位置Pで前を向いた使用者Uの前側に風を当てることができる。このように第1吹き出し口1n及び第5吹き出し口5nは、平面視において他の吹き出し口2n・3n・4nよりも角度をつけて(左右方向に対する傾斜角度が大きくなるように)風を吹き出すことができる。
【0037】
図1及び
図4に示す通路3は、使用者Uが通過する部分である。通路3は、内部空間1aに面する床部によって構成される。
【0038】
図2及び
図3に示すファン4は、空気にエネルギーを与えて気流を発生させるためのものである。ファン4としては、各種の方式のもの(遠心ファン、軸流ファン等)を用いることができる。ファン4は、全ての吹き出し口10に対して1つ設けられる。ファン4によって発生された気流は、空気の供給経路4a(配管等)を介して吹き出し口10へと送られる。供給経路4aは、中途部で適宜分岐することで、各吹き出し口10と接続される。
【0039】
図2及び
図3(b)に示すダンパー5は、供給経路4aにおいて空気の流通を制御するためのものである。ダンパー5は、供給経路4aに設けられ、設置箇所において供給経路4aを開閉可能に構成される。ダンパー5は、1つの吹き出し口10に対して1つ設けられる。各ダンパー5は、供給経路4aを開閉することで供給経路4aにおける空気の流通可否を切り替えて、各吹き出し口10から風を吹き出す状態と、風を吹き出さない状態とを切り替えることができる。
【0040】
また各ダンパー5は、供給経路4aの開度を調整可能に構成される。各ダンパー5は、開度を調整することで、各吹き出し口10への空気の流量(風量)を制御することができる。
【0041】
図2に示すカメラ6は、使用者Uを撮影するためのものである。本実施形態では、所定位置(例えば除塵位置P)にいる使用者Uを正面から撮影可能な第1カメラと、使用者Uを横から撮影可能な第2カメラとが設置される。第1カメラは、例えば除塵装置1が設置される階の天井部に設けられ、除塵位置Pよりも前方に配置される。第2カメラは、例えば左右の側壁部2の一方に設けられ、除塵位置Pの左右側方に配置される。
【0042】
サーモカメラ7は、物体の表面温度を測定するものである。サーモカメラ7は、物体から放出される赤外線を検出することで、当該物体の表面温度を測定可能に構成される。サーモカメラ7は、カメラ6と同じ場所に、当該カメラ6と同じ方向を向くように配置される。
【0043】
こうしてサーモカメラ7は、カメラ6の撮影位置において、カメラ6と同じ視点で使用者Uの表面温度を測定することができる。より詳細には本実施形態のサーモカメラ7は、除塵位置Pにいる使用者Uの表面温度を、当該使用者Uの正面及び横から測定することができる。
【0044】
赤外線センサ8は、赤外線を受光して各種情報を検出するためのものである。本実施形態の赤外線センサ8は、物体に向けて赤外線を照射すると共に、当該物体に当たって反射した赤外線を受光することで、反射の波長(波長と反射率との関係)を測定可能に構成される。また赤外線センサ8は、赤外線を照射する方向を調整可能に構成される。
【0045】
赤外線センサ8は、サーモカメラ7と同様に配置される。こうして赤外線センサ8は、除塵位置Pにいる使用者Uに向けて正面及び横から赤外線を照射することができる。また赤外線センサ8は、使用者Uに当たって反射した赤外線を受光することで、使用者Uの正面及び横からの反射の波長を測定することができる。
【0046】
制御部9は、各種機器を制御するためのものである。制御部9は、演算装置及び記憶装置を具備する。演算装置は、記憶装置に記憶されたプログラムを実行することで、除塵装置1の動作に必要な演算処理を実行できるように構成される。制御部9は、ファン4、ダンパー5、カメラ6、サーモカメラ7及び赤外線センサ8と通信可能に接続される。
【0047】
制御部9は、ファン4に信号を送信することで、ファン4の動作開始及び停止を制御することができる。また制御部9は、ダンパー5に信号を送信することで、ダンパー5による空気の流通可否、及び開度を制御することができる。上述の如く、ダンパー5は1つの吹き出し口10に対して1つ設けられている。制御部9は、これらダンパー5を個別に制御することで、各吹き出し口10から風を吹き出すか否か、及び各吹き出し口10から吹き出される風の強さを変更することができる。なお本実施形態における風の強さは、風速又は風量の少なくとも一方であるものとしている。
【0048】
また制御部9は、カメラ6からの信号に基づいて、使用者Uの撮影結果を取得することができる。また制御部9は、サーモカメラ7からの信号に基づいて、表面温度の測定結果を取得することができる。また制御部9は、赤外線センサ8に信号を送信することで、赤外線センサ8による赤外線の照射方向を変更することができる。また制御部9は、赤外線センサ8からの信号に基づいて、反射の波長の測定結果を取得することができる。
【0049】
以下では、
図1及び
図4を参照し、除塵装置1で使用者Uを除塵する手順を説明する。
【0050】
使用者Uは、内部空間1aに入口側から入り、除塵位置Pで立ち止まる。そうするとファン4が駆動され、吹き出し口10から風が吹き出される。当該風によって使用者Uに付着した花粉等が吹き飛ばされる。
【0051】
その後ファン4の動作が停止され、風の吹き出しが終了する。使用者Uは、風の吹き出しが終わった後で、除塵位置Pから出口側に移動して、除塵装置1の外に出る。これによって使用者Uは、除塵装置1で花粉等を除去してから建物や部屋の中に入ることができる。
【0052】
ここで、花粉の付き易さは使用者Uの体の部位によって異なる。また使用者Uが荷物Nを持っていた場合、当該荷物Nによって風が遮られるおそれがある。本実施形態の除塵装置1は、こうした花粉の付き易い部位や荷物N周辺に重点的に風を吹き付けて、使用者Uを適切に除塵することができる。以下、
図5に示すフローを用いて説明する。
【0053】
図5に示すフローは、使用者Uを除塵するための除塵処理である。除塵処理は、使用者Uを除塵するタイミングで適宜実行される。除塵処理は、例えば所定のセンサ(人感センサ等)によって除塵位置Pに使用者Uがいることが検知された場合に開始される。なお、除塵処理の開始条件は、使用者Uが除塵装置1を使用すると考えられるようなものであれば、本実施形態に限定されるものではない。除塵処理を開始すると、除塵装置1はステップS10へ移行する。
【0054】
ステップS10において除塵装置1のカメラ6は、正面及び側面から使用者Uを撮影し、当該撮影結果を制御部9に送信する。なお以下では、ステップS10において使用者Uを正面から撮影した画像を「正面画像」と称し、使用者Uを側面から撮影した画像を「側面画像G」(
図6参照)と称する。ステップS10の処理が終了すると、制御部9はステップS20へ移行する。
【0055】
ステップS20において制御部9は、側面画像G及び正面画像の中から使用者UのシルエットSを抽出する。例えば制御部9は、予め使用者Uがいない状態でカメラ6によって撮影された除塵装置1内の側面の画像と、側面画像Gとの差分をとることで、側面画像Gから使用者UのシルエットSを推測(抽出)する。
図6に示すように、仮に使用者Uが荷物Nを持っていた場合、ステップS20において荷物Nを含む使用者UのシルエットSが抽出される。
【0056】
またステップS20において制御部9は、正面画像についても側面画像Gと同様の方法で、使用者UのシルエットSを推測する。なお、上述したシルエットSを抽出する方法は一例であり、適宜変更可能である。
図5に示すように、ステップS20の処理が終了すると、制御部9はステップS30へ移行する。
【0057】
ステップS30において制御部9は、使用者Uの荷物Nの有無を確認する。また制御部9は、使用者Uが荷物Nを持っている場合、当該使用者Uと荷物Nとの接点P1(
図7参照)を使用者UのシルエットSから抽出する。なお本実施形態において使用者Uと荷物Nとの接点P1とは、ステップS20で抽出したシルエットSにおいて、使用者Uと荷物Nとの境界となる部分を指している。なお接点P1を抽出する方法については、後述する具体例の中で説明する。ステップS30の処理が終了すると、制御部9はステップS40へ移行する。
【0058】
ステップS40~S130の処理において制御部9は、接点P1等の情報を用いて、各吹き出し口10に対する風の強さを設定(算出)する。以下ではまずステップS40~S130の処理の概要を説明し、後述する具体例の中で各ステップの処理内容を詳細に説明する。
【0059】
ステップS40において制御部9は、ステップS30で抽出した接点P1に関する重みづけを行う。当該重みづけによって接点P1に強い風を吹き付けられるように、各吹き出し口10に重みづけの値が割り当てられる。ステップS40の処理が終了すると、制御部9はステップS50へ移行する。
【0060】
ステップS50において制御部9は、側面画像G及び正面画像に写った使用者Uの体の部位Bを判定する。ステップS50の処理が終了すると、制御部9はステップS60へ移行する。
【0061】
ステップS60において制御部9は、ステップS50で抽出した部位Bに関する重みづけを行う。当該重みづけによって花粉の付き易い部位Bに強い風を吹き付けられるように、各吹き出し口10に重みづけの値が割り当てられる。ステップS60の処理が終了すると、制御部9はステップS70へ移行する。
【0062】
ステップS70において制御部9は、使用者Uの表面温度の測定結果をサーモカメラ7から取得する。ステップS70の処理が終了すると、制御部9はステップS80へ移行する。
【0063】
ステップS80において制御部9は、ステップS70で取得した表面温度の測定結果に基づいて、使用者Uの表面状態を判定する。当該判定によって制御部9は、人の肌が露出している露出部Rと、衣服で覆われた着衣部Cと、を側面画像G及び正面画像の中から抽出する(
図13参照)。ステップS80の処理が終了すると、制御部9はステップS90へ移行する。
【0064】
ステップS90において制御部9は、ステップS80で判定した着衣部C及び露出部Rに関する重みづけを行う。当該重みづけによって着衣部Cに強い風を吹き付けられるように、各吹き出し口10に重みづけの値が割り当てられる。ステップS90の処理が終了すると、制御部9はステップS100へ移行する。
【0065】
ステップS100において制御部9は、赤外線センサ8を制御して、使用者Uに赤外線を照射させる。この際制御部9は、ステップS50で判定した使用者Uの部位Bごとに赤外線を照射させ、使用者Uの部位Bごとに反射の波長(波長と反射率との関係)の測定結果を赤外線センサ8から取得する。ステップS100の処理が終了すると、制御部9はステップS110へ移行する。
【0066】
ステップS110において制御部9は、ステップS100で取得した反射の波長の測定結果に基づいて、使用者Uの部位Bごとに使用者Uが着ている衣服の材質を判定する。ステップS110の処理が終了すると、制御部9はステップS120へ移行する。
【0067】
ステップS120において制御部9は、ステップS110で判定した材質に関する重みづけを行う。当該重みづけによって、花粉の付き易い材質の衣服を身に着けている部位Bに強い風を吹き付けられるように、各吹き出し口10に重みづけの値が割り当てられる。ステップS120の処理が終了すると、制御部9はステップS130へ移行する。
【0068】
ステップS130において制御部9は、ステップS40・S60・S90・S120での重みづけの値を組み合わせ、風の強さ(風量、風速)についての優先度を吹き出し口10ごとに算出する。ステップS130の処理が終了すると、制御部9はステップS140へ移行する。
【0069】
ステップS140において制御部9は、優先度に応じて各ダンパー5の開度の調整し、ファン4を駆動させる。これによって制御部9は、ステップS130で算出された優先度が低い吹き出し口10よりも、優先度が高い吹き出し口10からより多くの量の風を吹き出させる。こうして制御部9は、一部の吹き出し口10から優先的に風を吹き出させ(比較的強い風を吹き出させ)、荷物Nとの接点P1等の重点的に除塵が必要な部分に強い風を当てて、使用者Uを適切に除塵することができる。ステップS140の処理が終了すると、
図5に示す除塵処理を終了する。
【0070】
以下では、上述した除塵処理の具体例を説明する。なお本具体例では、荷物Nを持った使用者Uに風が吹き付けられ、当該使用者Uが除塵される。また本具体例では、ステップS10・S20において
図6に示す側面画像G及びシルエットSが取得され、当該側面画像G等に基づいて風の強さが制御される。以下、具体的に説明する。
【0071】
本具体例において制御部9は、予め撮影された荷物Nを持たない人U0と、ステップS20で抽出したシルエットSとを比較することで、荷物Nの有無の確認及び接点P1を抽出する(ステップS30)。
【0072】
より詳細には制御部9は、
図7(a)に示す荷物Nを持たない人U0のシルエットS0を予め教師あり学習によって機械学習した学習済みモデルを有している。機械学習では、体格の異なる人を撮影した複数の画像が用いられる。なお、説明の便宜上、図面では人U0や荷物Nのシルエット(S0、S1、S2)を楕円で簡略化して示している。
【0073】
制御部9は、ステップS20で抽出したシルエットSを、当該学習済みモデルに入力する。前記学習済みモデルは、入力されたシルエットSの中から人の特徴を抽出し、当該抽出結果に基づいて、前記シルエットSの中から人のシルエットS1を出力する(
図7(b)参照)。
【0074】
制御部9は、こうして学習済みモデルから出力された人のシルエットS1と、ステップS20で抽出したシルエットSとの差分をとる。これによって制御部9は、人のシルエットS1以外の部分であり、かつ、所定以上の面積を有する領域を、前記シルエットSの中から抽出する。制御部9は、この抽出した領域を荷物NのシルエットS2とする。
【0075】
制御部9は、上記条件を満たす領域がない場合、荷物NのシルエットS2を抽出しない。したがって制御部9は、荷物NのシルエットS2を抽出したか否かに応じて、使用者Uの荷物Nの有無を判定することができる。
【0076】
本具体例では荷物NのシルエットS2が抽出されるため、制御部9は
図7(c)に示すように、人のシルエットS1と荷物NのシルエットS2とを重ね合わせて、各シルエットS1・S2の境界部分を特定する。制御部9は、こうして特定した部分を、使用者Uと荷物Nとの接点P1とする。なお、上述した接点P1の抽出方法は一例であり、本具体例に限定されるものではない。
【0077】
本具体例において制御部9は、抽出した接点P1に関する重みづけを行う(ステップS40)。この際制御部9は、メッシュM(
図8参照)を用いて各吹き出し口10と接点P1との位置関係(風が当たるか否か)を判断する。
【0078】
なおメッシュMは、吹き出し口10からの風が使用者Uに当たると考えられる領域を示すものである。また
図8に示すメッシュMの符号「M」以降に付される数字は、当該メッシュMに対応する吹き出し口10の符号と一致するものとなっている。例えば第1吹き出し口11に対応するメッシュMは、「メッシュM11」と記載される。なお、メッシュとしては、前方向を向いた使用者Uの体の左側及び右側のそれぞれに対応するように、
図8に示すような側面視格子状のものが2つ設定されると共に、使用者Uの体の前側及び後側のそれぞれに対応するように、正面視格子状のもの(不図示)が2つ設定される。これらのメッシュを用いた処理の内容は略同一であるため、以下では、
図8に示すように、前方向を向いた使用者Uの体の左側に対応するように設定されたメッシュMを用いて、本具体例(接点P1や部位B等に関する重みづけの内容)を説明する。
【0079】
本具体例では、カメラ6の向き、位置、撮影倍率等に基づいて、予め側面画像Gにおける各吹き出し口10の風が当たる範囲の位置及び大きさが算出されている。
図9に示すように制御部9は、当該算出結果に基づいて、荷物Nとの接点P1とメッシュMとを重ね合わせることができる。以下では、メッシュMのうち、使用者Uと重なるメッシュM3n・M4n(
図8参照)に着目し、除塵処理の内容を説明する。
【0080】
本具体例において制御部9は、各メッシュMと荷物Nの接点P1との位置関係に基づいて接点P1と重なるメッシュM34・M35を抽出し、当該メッシュM34・M35と対応する第3吹き出し口34・35が、接点P1に風を当てると推測する。
【0081】
接点P1に風を当てる吹き出し口34・35を推測した後で、制御部9は、当該推測結果に応じて各吹き出し口10に重みづけの値を割り当てる。より詳細には制御部9は、接点P1に風を当てる第3吹き出し口34・35の重みづけの値が、他の吹き出し口の重みづけの値よりも高くなるように、各吹き出し口10に値を割り当てる。これによって制御部9は、第3吹き出し口34・35の優先度が高くなる(風が強くなる)ように、接点P1についての重みづけを行う。
【0082】
図10(a)には、接点P1に応じた重みづけの値の一例が示される。
図10(a)に示すように、本具体例では、接点P1に風を当てる第3吹き出し口34・35に対して「2」が割り当てられる。また本具体例では、その他の吹き出し口10に対して、「1」が割り当てられる。
【0083】
制御部9は、接点P1についての重みづけを行った後で、使用者Uの体の部位Bを判定する(ステップS50)。制御部9は、例えば上述したシルエットSの抽出(ステップS30)の場合のように、体格の異なる人の体の部位を機械学習した学習モデルを用いて、使用者Uの体の部位Bを判定する。こうして本具体例において制御部9は、
図11に示すように、体の部位Bとして上半身B1、腹部B2、足上部B3及び足元B4を側面画像Gから抽出(推測)する。なお、説明の便宜上、図面では抽出された部位Bを楕円で簡略化して示している。
【0084】
なお、上述した部位Bを抽出する方法は一例であり、本具体例に限定されるものではない。また制御部9が抽出する部位Bの種類も一例であり、本具体例に限定されるものではない。
【0085】
制御部9は、使用者Uの体の部位Bを抽出した後で、接点P1の重みづけ(ステップS40)と同様の処理により、部位Bについて重みづけを行う(ステップS60)。すなわち制御部9は、抽出した部位BをメッシュMに重ね合わせ、当該メッシュMと部位Bとの位置関係(
図12参照)に基づいて、抽出した部位Bに風を当てる吹き出し口10を推測する。
【0086】
本具体例では
図12に示すように、メッシュM38・M48が足元B4と重なる(メッシュMの中で足元B4が占める割合が所定以上である)。このため制御部9は、メッシュM38・M48と対応する第3吹き出し口38及び第4吹き出し口48が、足元B4に風を当てると推測する。
【0087】
またメッシュM36・M37・M46・M47は、足上部B3と重なる。このため制御部9は、メッシュM36等と対応する第3吹き出し口36・37及び第4吹き出し口46・47が、足上部B3に風を当てると推測する。
【0088】
またメッシュM44・M45は、腹部B2と重なる。このため制御部9は、メッシュM44・M45と対応する第4吹き出し口44・45が、腹部B2に風を当てると推測する。
【0089】
またメッシュM32~M35・M42・M43は、上半身B1(腹部B2を除く)と重なる。このため制御部9は、メッシュM32等と対応する第3吹き出し口32~35及び第4吹き出し口42・43が、上半身B1に風を当てると推測する。その後制御部9は、風を当てる部位Bの推測結果に応じて、各吹き出し口10に重みづけの値を割り当てる。
【0090】
より詳細には制御部9は、花粉の付き易い部位Bに風を当てる吹き出し口の重みづけの値が、他の吹き出し口の重みづけの値よりも高くなるように、各吹き出し口10に値を割り当てる。ここで上述の如く本具体例では、上半身B1、腹部B2、足上部B3及び足元B4が側面画像Gから抽出される。
【0091】
花粉は、上記部位Bの中で腹部B2及び足元B4に最も付き易い。また足上部B3は、腹部B2及び足元B4の次に花粉が付き易い。したがって制御部9は、腹部B2及び足元B4に風を当てる吹き出し口38・48等に最も大きい値を割り当てる。また制御部9は、足上部B3に風を当てる吹き出し口36・37等に2番目に大きい値を割り当てる。また制御部9は、上半身B1に風を当てる吹き出し口32~35等に3番目に大きい値を割り当てる。これによって制御部9は、花粉の付き易い部位Bに風を当てる順に優先度が高くなるように、部位Bについての重みづけを行う。
【0092】
図10(b)には、こうした体の部位Bに応じた重みづけの値の一例が示される。
図10(b)に示すように、本具体例では、腹部B2及び足元B4に風を当てる吹き出し口38・48等に対して「3」が割り当てられる。また、足上部B3に風を当てる吹き出し口36・37等に対して、「2」が割り当てられる。また、上半身B1に風を当てる吹き出し口32~35等に対して「1」が割り当てられる。
【0093】
なお本具体例において制御部9は、上半身B1、腹部B2、足上部B3及び足元B4のいずれにも風を当てないその他の吹き出し口31・41に対して、腹部B2及び足元B4よりも低い値を割り当てる。例えば「0」を割り当てる。
【0094】
制御部9は、部位Bに関する重みづけの後で、使用者Uの表面温度(サーモカメラ7の測定結果)に基づいて、着衣部C及び露出部Rを側面画像Gの中から抽出する(ステップS80)。なお、サーモカメラ7はカメラ6と同じ場所から表面温度を測定するため、制御部9は、側面画像G(シルエットS等)と照らし合わせることで、サーモカメラ7の中から使用者Uの表面温度が測定された領域を把握することができる。
【0095】
ここで表面温度に関して、人の肌が露出している露出部Rは、衣服で覆われた着衣部Cよりも表面温度が高いことが多い。そこで制御部9は、所定の基準に基づいて、使用者Uの表面温度が高い部分と、表面温度が低い部分とを抽出する。例えば、表面温度が所定以上の部分を表面温度が高い部分として抽出する。制御部9は、こうして抽出した部分を露出部Rとする。また制御部9は、表面温度が所定未満の部分を、表面温度が低い着衣部Cとする。
【0096】
本具体例では
図13に示すように、使用者Uの上半身B1の一部及び下肢の部分が、着衣部Cとして抽出される。また使用者Uの頭部及び手が、露出部Rとして抽出される。なお、説明の便宜上、図面では抽出された着衣部C及び露出部Rを楕円で簡略化して示している。
【0097】
なお着衣部C及び露出部Rの抽出方法は、本具体例に限定されるものではない。例えば本具体例では、所定の閾値と使用者Uの表面温度との比較によって着衣部Cが抽出されるものとしたが、これに限らず、使用者Uの表面温度の中で相対的に温度が低い部分が着衣部Cとして抽出されてもよい。また本具体例では、サーモカメラ7を用いて着衣部C及び露出部Rが抽出されるものとしたが、着衣部C及び露出部Rで値が異なるその他の情報を測定することで、着衣部C及び露出部Rを抽出してもよい。
【0098】
制御部9は、着衣部C等を抽出した後で、接点P1の重みづけ(ステップS40)と同様の処理により、着衣部C等について重みづけを行う(ステップS90)。すなわち制御部9は、着衣部C及び露出部RをメッシュMに重ね合わせ、当該メッシュMと着衣部C等との位置関係(
図14参照)に基づいて、着衣部C及び露出部Rに風を当てる吹き出し口10を推測する。
【0099】
本具体例では
図14に示すように、メッシュM33~M35・M43~M45は、上半身B1の着衣部C1と重なる(メッシュMの中で着衣部Cが占める割合が所定以上となる)。またメッシュM37・M38・M46~M48は、下肢の着衣部C2と重なる。このため制御部9は、当該メッシュM33~M35等と対応する第3吹き出し口33~35・37・38と、第4吹き出し口43~48と、が着衣部Cに風を当てると推測する。
【0100】
またメッシュM32・M42は、頭部の露出部R1と重なる。またメッシュM36は、手の露出部R2と重なる。このため制御部9は、当該メッシュM32等と対応する第3吹き出し口32・36及び第4吹き出し口42が露出部Rに風を当てると推測する。その後制御部9は、吹き出し口10の推測結果に応じて、各吹き出し口10に重みづけの値を割り当てる。
【0101】
ここで、露出部Rは着衣部Cよりも花粉が付き難い。このため制御部9は、着衣部Cに風を当てる吹き出し口33~35等の重みづけの値が、露出部Rに風を当てる吹き出し口32等の重みづけの値よりも高くなるように、各吹き出し口10に値を割り当てる。これによって制御部9は、着衣部Cに風を当てる吹き出し口33~35等の優先度が高くなる(風が強くなる)ように、着衣部Cについての重みづけを行う。
【0102】
図10(c)には、こうした露出部R等に応じた重みづけの値の一例が示される。
図10(c)に示すように、本具体例では、着衣部Cに風を当てる吹き出し口33~35等に対して「1」が割り当てられる。また露出部Rに風を当てる吹き出し口32等に対して「0」が割り当てられる。
【0103】
なお本具体例において制御部9は、着衣部C及び露出部Rのいずれにも風を当てないその他の吹き出し口31・41に対して、着衣部Cよりも低い値を割り当てる。例えば「0」を割り当てる。
【0104】
制御部9は、着衣部Cに関する重みづけの後で、使用者Uの部位Bごとに、反射の波長を取得する(ステップS100)。なお、赤外線センサ8はカメラ6と同じ場所から赤外線を照射するため、制御部9は、側面画像G(部位Bの判定結果)を用いることで、使用者Uの体の部位Bごとに赤外線を照射するように、赤外線センサ8を制御することができる。制御部9は、当該赤外線の照射により測定された反射の波長(波長と反射率との関係)を取得することで、使用者Uの部位Bごとに、反射の波長を把握することができる。
【0105】
ここで、衣服に赤外線を照射した場合における反射の波長は、当該衣服の材質によって異なることが知られている。本具体例において制御部9の記憶装置には、こうした反射の波長の特性が、衣服の材質ごとに記憶されている。制御部9は、当該波長の特性と、赤外線センサ8の測定結果とを比較することで、使用者Uの部位Bごとに衣服の材質を推測することができる(ステップS110)。本具体例では制御部9は、衣服の材質がウール、化学繊維及び綿のいずれであるのかを推測することができる。
【0106】
なお本具体例では、
図11に示す上半身B1の衣服の材質がウールであると推測されると共に、足上部B3及び足元B4の衣服の材質が綿であると推測されるものとしている。なお、上述した材質を推測する方法は一例であり、本具体例に限定されるものではない。例えば本具体例では、赤外線センサ8を用いて衣服の材質が推測されるものとしたが、材質ごとに値が異なるその他の情報を測定することで、衣服の材質を推測してもよい。また制御部9が推測する材質の種類は一例であり、本具体例に限定されるものではない。
【0107】
制御部9は、衣服の材質を推測した後で、接点P1の重みづけ(ステップS40)と同様の処理により、材質について重みづけを行う(ステップS110)。すなわち制御部9は、メッシュM及び抽出した部位Bを側面画像Gに重ね合わせると共に、推測した衣服の材質を当該部位Bに当てはめる。これによって制御部9は、各吹き出し口10からの風がウール、化学繊維及び綿のうち、どの材質に当たるのかを部位Bごとに推測する。
【0108】
例えば制御部9は、上半身B1(及び腹部B2)を向いた吹き出し口32~35等からの風が、ウールに当たると推測する。また制御部9は、足上部B3及び足元B4を向いた吹き出し口36~38等からの風が、綿に当たると推測する。その後制御部9は、材質についての推測結果に応じて、各吹き出し口10に重みづけの値を割り当てる。
【0109】
より詳細には制御部9は、花粉の付き易い材質の衣服に風を当てる吹き出し口の重みづけの値が、他の吹き出し口の重みづけの値よりも高くなるように、各吹き出し口10に値を割り当てる。ここで上述の如く本具体例では、衣服の材質として、ウール、化学繊維及び綿が抽出される。
【0110】
花粉は、上記材質の中でウールに最も付き易い。化学繊維には、その次に花粉が付き易い。したがって制御部9は、ウールに風を当てる吹き出し口32~35等に最も大きい値を割り当てる。また制御部9は、化学繊維に風を当てる吹き出し口に2番目に大きい値を割り当てる。また制御部9は、綿に風を当てる吹き出し口36~38等に3番目に大きい値を割り当てる。これによって制御部9は、花粉の付き易い材質の衣服に風を当てる順に優先度が高くなるように、材質についての重みづけを行う。
【0111】
図10(d)には、こうした材質に応じた重みづけの値の一例が示される。
図10(d)に示すように、本具体例では、ウールの衣服(上半身B1及び腹部B2)に風を当てる吹き出し口32~35等に対して「5」が割り当てられる。また、綿の衣服(足上部B3及び足元B4)に風を当てる吹き出し口36~38等に対して、「1」が割り当てられる。
【0112】
なお本具体例において制御部9は、ウール、化学繊維及び綿のいずれにも風を当てないその他の吹き出し口31・41について、ウールよりも低い値を割り当てる。例えば「1」(又は「2」)を割り当てる。
【0113】
制御部9は、材質についての重みづけを行った後で、優先度を算出する(ステップS130)。本具体例において制御部9は、接点P1、部位B、着衣部C及び材質についての重みづけ(ステップS40・S60・S90・S120)で割り当てた値を乗算することで、吹き出し口10ごとに優先度を算出する。
【0114】
例えば
図15に示すように、制御部9は、荷物Nとの接点P1に風を当てる第3吹き出し口34(メッシュM34)について、上述した重みづけの処理で割り当てられた「2」(接点P1)、「1」(上半身B1)、「1」(着衣部C)、「5」(ウール)を乗算して優先度を「10」とする。
【0115】
また例えば制御部9は、腹部B2に風を当てる第4吹き出し口44(メッシュM44)について、上述した重みづけの処理で割り当てられた「1」(接点P1なし)、「3」(腹部B2)、「1」(着衣部C)、「5」(ウール)を乗算して優先度を「15」とする。
【0116】
また例えば制御部9は、露出部Rに風を当てる第3吹き出し口36について、上述した重みづけの処理で割り当てられた「1」(接点P1なし)、「2」(足上部B3)、「0」(露出部R)、「1」(綿)を乗算して優先度を「0」とする。また制御部9は、その他の吹き出し口についても同様の処理により、優先度を算出する。
【0117】
制御部9は、こうして算出した優先度に基づいて、各吹き出し口10の風の強さを制御する(ステップS140)。
図16には、優先度とダンパー5の開度(風の強さ)との関係の一例が示される。
【0118】
図16に示すように制御部9は、優先度が「30」~「21」の場合にダンパー5の開度を100%(全開状態)に変更する。また制御部9は、優先度が「20」~「11」の場合にダンパー5の開度を60%に変更する。また制御部9は、優先度が「10」~「1」の場合にダンパー5の開度を30%に変更する。また制御部9は、優先度が「0」の場合にダンパー5の開度を0%(全閉状態)に変更する。
【0119】
図15(本具体例)のように優先度が算出された場合、荷物Nとの接点P1に風を当てる第3吹き出し口34(優先度:10)のダンパー5の開度が30%に変更される。また腹部B2に風を当てる第4吹き出し口44(優先度:15)のダンパー5の開度が60%に変更される。また露出部Rに風を当てる第3吹き出し口36(優先度:0)のダンパー5の開度が0%に変更される。
【0120】
こうして各ダンパー5の開度が調整された状態でファン4が駆動されることによって、花粉が付き易い部分(腹部B2、ウール)に最も強い風を当てることができる。また制御部9は、花粉が付き難い露出部Rに向けて風を吹き付けないようにすることもできる。これによって使用者Uに不快感を与えるのを抑制することができる。
【0121】
また露出部Rに風を吹き付けないようにすることで、その分だけ着衣部Cに吹き付ける風(第3吹き出し口34等からの風)の量を増やすことができる。こうして制御部9は、限られたファン4の送風能力(リソース)を有効に活用し、使用者Uへの風の吹き付けの最適化を図ることができる。このようにして除塵装置1は、使用者Uの特性(荷物Nの有無、部位B等)に応じて、当該使用者Uを適切に除塵することができる。
【0122】
なお上述した具体例では、第3吹き出し口3n及び第4吹き出し口4nに着目して除塵処理を説明したが、実際には
図17に示すように、他の吹き出し口1n・2n・5nからも使用者Uに対して風が吹き付けられる。
【0123】
例えば
図17(a)に示すように、荷物Nを背負った使用者Uに対して、第1吹き出し口1n及び第2吹き出し口2nからも、風が吹き付けられる。このうち、第1吹き出し口1nは、第2吹き出し口2nよりも斜め向きに風を吹き付けるため、使用者Uの表面に対して後側から直角に近い角度で風を当てることができる。これによって花粉を効果的に吹き飛ばすことができる。
【0124】
また例えば
図17(b)に示すように、荷物Nを脇に抱えた使用者Uに対して、第5吹き出し口5nからも風が吹き付けられる。当該第5吹き出し口5nは、第4吹き出し口4nよりも斜め向きに風を吹き付けるため、荷物Nに風が遮られるのを抑制することができる。また使用者Uの表面に対して前側から直角に近い角度で風を当てることができる。このように、本実施形態の吹き出し口10は、使用者Uの全部位の表面に対して直角に近い角度で風を当てることができ、花粉を効果的に吹き飛ばすことができる。
【0125】
なお本具体例では、説明の便宜上、
図8に示す側面視格子状のメッシュMを用いて重みづけを行うものとしたが、重みづけの処理で用いられるメッシュの形状は特に限定されるものではない。例えば制御部9は、
図18に示すような立体的なメッシュMAを用いて重みづけを行ってもよい。具体的には、メッシュMAは、円筒状に形成される。メッシュMAを用いる場合、メッシュMAは、使用者Uの周囲を取り囲むように配置される。こうして、各吹き出し口10の風の吹き出し方向と使用者Uの体の部位とを結び直線状に配置される領域(メッシュ)に基づいて、当該部位に対する吹き出し口10の制御を実行することができる。なお立体的なメッシュMAの形状は、上述したような円筒状に限定されない。立体的なメッシュMAの形状としては、例えば楕円筒状等の、使用者Uの体の外形(輪郭の形状)により近いものが望ましい。
【0126】
以上の如く、本実施形態に係る除塵装置1は、使用者Uに風を吹き付けることによって除塵を行う除塵装置1であって、風を吹き出し可能な複数の吹き出し口10が形成された側壁部2(本体部)と、前記使用者Uを撮影するカメラ6(撮影部)と、前記カメラの撮影結果に基づいて前記使用者UのシルエットSを推測するシルエット推測部(制御部9)と、前記シルエットSの推測結果に基づいて、前記複数の吹き出し口10から吹き出す風の強さを個別に制御する制御部9と、を具備するものである。
【0127】
このように構成することにより、各吹き出し口10から吹き出される風の強さが使用者UのシルエットSに応じて個別に制御されるため、適切に除塵することができる。
【0128】
また、前記制御部9は、前記使用者Uと、当該使用者Uの荷物Nとの接点P1を前記シルエットSの推測結果から抽出し(
図7参照)、前記複数の吹き出し口10のうち、前記接点P1に風を当てる吹き出し口10から優先的に風を吹き出し可能となるように、前記接点P1についての重みづけを行うものである(ステップS30・S40・S130・S140)。
【0129】
このように構成することにより、使用者Uと荷物Nとの接点P1に重点的に風を当てることができるため、適切に除塵することができる。
【0130】
また、前記除塵装置1は、前記シルエットSの推測結果に基づいて前記使用者Uの体の部位Bを推測する部位推測部(制御部9)をさらに具備し、前記制御部9は、前記複数の吹き出し口10のうち、花粉(除塵対象物)が付き易い部位Bに風を当てる吹き出し口10から優先的に風を吹き出し可能となるように、前記部位Bについての重みづけを行うものである(ステップS60・S130・S140)。
【0131】
このように構成することにより、使用者Uの体の部位Bのうち、花粉の付き易い部位Bに重点的に風を当てることができるため、適切に除塵することができる。
【0132】
また、前記除塵装置1は、前記使用者Uの着衣部Cを推測する着衣推測部(サーモカメラ7及び制御部9)をさらに具備し、前記制御部9は、前記複数の吹き出し口10のうち、前記着衣部Cに風を当てる吹き出し口10から優先的に風を吹き出し可能となるように、前記着衣部Cについての重みづけを行うものである(ステップS90・S130・S140)。
【0133】
このように構成することにより、花粉が付き易い着衣部Cに重点的に風を当てることができるため、適切に除塵することができる。
【0134】
また、前記制御部9は、前記使用者Uが衣服を身に着けていない露出部Rに向けて風を吹き出さないように、風の強さを制御するものである。なお本実施形態では、露出部Rに風を当てる吹き出し口36等に重みづけの値として「0」が割り当てられることにより、露出部Rに向けて風が吹き出さないように、優先度(風の強さ)が設定されている(
図15及び
図16(a)参照)。
【0135】
このように構成することにより、使用者Uに不快感を与えるのを抑制することができる。
【0136】
また、前記除塵装置1は、前記使用者Uが身に付けている衣服の材質を推測する材質推測部(赤外線センサ8及び制御部9)をさらに具備し、前記制御部9は、前記複数の吹き出し口10のうち、花粉(除塵対象物)が付き易い材質の衣服に風を当てる吹き出し口10から優先的に風を吹き出し可能となるように、前記材質についての重みづけを行うものである(ステップS120~S140)。
【0137】
このように構成することにより、使用者Uの衣服のうち、花粉の付き易い材質の衣服に重点的に風を当てることができるため、適切に除塵することができる。
【0138】
また、前記複数の吹き出し口10は、第一の方向(左右方向)に風を吹き出す第2吹き出し口2n、第3吹き出し口3n及び第4吹き出し口4n(第一の吹き出し口)と、平面視において前記第一の方向とは異なる第二の方向(左右方向に対して前後に傾斜する方向)に風を吹き出す第1吹き出し口1n及び第5吹き出し口5n(第二の吹き出し口)と、を含むものである(
図17参照)。
【0139】
このように構成することにより、第1吹き出し口1n及び第5吹き出し口5nから使用者Uの正面及び背面に角度をつけて風を当てることができるため、適切に除塵することができる。
【0140】
なお、本実施形態に係る側壁部2は、本発明に係る本体部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るカメラ6は、本発明に係る撮影部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る制御部9は、本発明に係るシルエット推測部及び部位推測部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るサーモカメラ7及び制御部9は、本発明に係る着衣推測部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る赤外線センサ8及び制御部9は、本発明に係る材質推測部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る第2吹き出し口2n、第3吹き出し口3n及び第4吹き出し口4nは、本発明に係る第一の吹き出し口の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る第1吹き出し口1n及び第5吹き出し口5nは、本発明に係る第二の吹き出し口の実施の一形態である。
【0141】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0142】
例えば、吹き出し口10は、側面視略円状に形成されるものとしたが(
図3参照)、吹き出し口10の形状は特に限定されるものではない。また吹き出し口10は、1つの側壁部2に合計40個設けられるものとしたが、左右の側壁部2に合計で2つ以上設けられるのであれば、吹き出し口10の個数は特に限定されるものではない。
【0143】
また本実施形態では、カメラ6によって正面及び横から使用者Uが撮影されるものとしたが、カメラ6で使用者Uをどのように撮影するのかは特に限定されるものではない。例えばカメラ6によって、使用者Uの全身をくまなく撮影することも可能である。
【0144】
また本実施形態では、優先度に応じて風の強さを4段階に制御するものとしたが(
図16参照)、これは一例であり、風の強さを何段階で制御するのかは、ファン4の送風能力、除塵対象物の種類等に応じて適宜変更可能である。
【0145】
また本実施形態で用いられた重みづけの値の大きさ(
図10参照)は一例であり、ファン4の送風能力、除塵対象物の種類等に応じて適宜変更可能である。
【0146】
また制御部9は、荷物Nとの接点P1、体の部位B、着衣部C及び衣服の材質に応じて風の強さを制御するものとしたが、少なくともシルエットSの推測結果に基づいて風の強さを制御するものであればよい。
【0147】
なお、使用者Uの体の部位Bは、接点P1と同様に、カメラ6の撮影結果から推測可能である(
図6及び
図11参照)。このため制御部9は、荷物Nとの接点P1と、体の部位B、着衣部C及び衣服の材質のいずれか1つと、を組み合わせて風の強さを制御する場合、部位Bを組み合わせることが望ましい。これによって制御部99は、共通の機器(カメラ6)を用いて接点P1及び部位Bに風を当てる吹き出し口10を推測することができる。
【0148】
また制御部9は、ステップS130において重みづけの値を乗算することで優先度を算出するものとしたが、これは一例であり、その他の計算方法により優先度を算出することも可能である。例えば制御部9は重みづけの値を合算することで優先度を算出可能である。
【0149】
また制御部9は、ステップS140において優先度に応じてダンパー5の開度を調整するものとしたが(
図16参照)、これに加えて、ファン4の出力(風量)を調整するものであってもよい。例えば制御部9は、優先度が高い吹き出し口10の個数が所定の閾値以上である場合に、ファン4の出力を高くしてもよい。
【符号の説明】
【0150】
1 除塵装置
2 側壁部
6 カメラ
9 制御部
10 吹き出し口
U 使用者