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特開2024-143931物体検出装置、車両および物体検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143931
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】物体検出装置、車両および物体検出方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/08 20120101AFI20241004BHJP
   B60W 30/06 20060101ALI20241004BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B60W30/08
B60W30/06
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056887
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 武志
(72)【発明者】
【氏名】朝岡 則明
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241AA42
3D241AA66
3D241AD47
3D241BA21
3D241BA31
3D241BA49
3D241BB03
3D241BC01
3D241BC02
3D241CC01
3D241CC08
3D241DA13Z
3D241DA39Z
3D241DB01Z
3D241DB02Z
5H181AA01
5H181CC11
5H181CC14
5H181FF27
5H181LL02
5H181LL09
5H181LL17
(57)【要約】
【課題】車両に近づくことで検知しなくなった低障害物に対する検知誤差を抑制する。
【解決手段】測定装置からの車両周囲情報、及び車両制御装置からの車両情報に基づいて、車両の周囲に存在する障害物の車両に対する第1の位置座標を検知する検知回路と、前記障害物を検知した後、前記第1の位置座標を消失し、前記障害物が低障害物であると判断した場合、前記第1の位置座標を補正した前記低障害物の第2の位置座標に基づいた車両制御信号を前記車両制御装置に出力する制御回路と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定装置からの車両周囲情報、及び車両制御装置からの車両情報に基づいて、車両の周囲に存在する障害物の車両に対する第1の位置座標を検知する検知回路と、
前記障害物を検知した後、前記第1の位置座標を消失し、前記障害物が低障害物であると判断した場合、前記第1の位置座標を補正した前記低障害物の第2の位置座標に基づいた車両制御信号を前記車両制御装置に出力する制御回路と、
を備える物体検出装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記低障害物か否かを、前記車両からの距離および前記検知した前記障害物の波高値に基づいて判断する、
請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記車両情報を用いて、車両の第3の位置座標を推定する自車位置推定回路と、
推定した前記第3の位置座標と前記第1の位置座標とに基づいて、車両の周囲の障害物の第1の座標マップを作成するマッピング回路と、
をさらに備え
前記制御回路は、
前記第1の座標マップに基づいて前記消失した障害物の位置座標を再計算し、前記障害物の第2の座標マップの再作成を行うリマッピング回路、をさらに備える、
請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記リマッピング回路は、前記第1の座標マップと、過去に検知した障害物の第3の座標マップとを比較し、車両の近傍で検知範囲外となったために、消失した障害物を推定する、
請求項3に記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記リマッピング回路は、前記障害物の消失が前記測定装置の垂直指向性によるものである場合に、前記第1の座標マップをリマッピングする、
請求項4に記載の物体検出装置。
【請求項6】
前記リマッピング回路は、垂直指向性による消失か否かを、前記車両と前記障害物との距離と、前記測定装置の反射波の波高とに基づいて判断する、
請求項5に記載の物体検出装置。
【請求項7】
前記リマッピング回路は、前記車両が駐車動作を行っている低速時に、前記第1の座標マップの再作成を行う、
請求項3に記載の物体検出装置。
【請求項8】
前記リマッピング回路は、前記車両が駐車場周辺に位置する場合に、前記第1の座標マップの再作成を行う、
請求項3に記載の物体検出装置。
【請求項9】
前記リマッピング回路は、自動駐車モード中である場合に、前記第1の座標マップの再作成を行う、
請求項3に記載の物体検出装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9の何れか一項に記載の物体検出装置と、
周囲の車両周囲情報を取得する測定装置と、
車両情報を取得する車両制御装置と、
を備える車両。
【請求項11】
測定装置からの車両周囲情報、及び車両制御装置からの車両情報に基づいて、車両の周囲に存在する障害物の車両に対する第1の位置座標を検知するステップと、
前記障害物を検知した後、前記第1の位置座標を消失し、前記障害物が低障害物であると判断した場合、前記第1の位置座標を補正した前記低障害物の第2の位置座標に基づいた車両制御信号を前記車両制御装置に出力するステップと、
を含む物体検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物体検出装置、車両および物体検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の技術として、音波の反射を用いて、例えば、車両周囲の障害物を検出する物体検出装置が知られている。より具体的には、物体検出装置は、車両に取り付けられた複数の送受波センサが受波した反射波を用いて三辺測量法により障害物の位置座標を割り出している。
【0003】
特許文献1には、車両の近くの地面にある段差などの障害物の検出については、過去の障害物検知座標の記憶から自車と障害物の相対位置の推定することにより、車両と障害物の接触する可能性を計算する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5016889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、既存の技術によれば、車両に近づくことで検知しなくなった段差などの低障害物の位置を、過去の検知座標と自車移動量から推測しているが、低障害物で生じる検知距離の誤差については、十分な検討がなされていない。
【0006】
本開示は、車両に近づくことで検知しなくなった低障害物に対する検知誤差を抑制することができる物体検出装置、車両および物体検出方法の提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる物体検出装置は、測定装置からの車両周囲情報、及び車両制御装置からの車両情報に基づいて、車両の周囲に存在する障害物の車両に対する第1の位置座標を検知する検知回路と、前記障害物を検知した後、前記第1の位置座標を消失し、前記障害物が低障害物であると判断した場合、前記第1の位置座標を補正した前記低障害物の第2の位置座標に基づいた車両制御信号を前記車両制御装置に出力する制御回路と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかる物体検出装置、車両および物体検出方法によれば、車両に近づくことで検知しなくなった低障害物に対する検知誤差を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態にかかる物体検出装置を備える車両の一例を示す模式側面図である。
図2図2は、実施形態にかかる物体検出装置を備える車両の一例を示す模式上面図である。
図3図3は、実施形態にかかる物体検出装置を備える車両の構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、実施形態にかかる物体検出装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図5A図5Aは、既存の技術について説明する図である。
図5B図5Bは、既存の技術について説明する図である。
図6図6は、実施形態にかかる物体検出装置による物体検出処理の流れを示すフローチャートである。
図7図7は、垂直指向性による消失かどうか判断する方法の一例を示す図である。
図8図8は、障害物の位置座標の再計算の一例について示す図である。
図9A図9Aは、自動駐車での車両の動作例を示す図である。
図9B図9Bは、自動駐車での車両の動作例を示す図である。
図9C図9Cは、自動駐車での車両の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本開示にかかる物体検出装置、車両および物体検出方法の実施形態について説明する。
【0011】
(車両の構成例)
本明細書において、車両1の前後左右上下は、それぞれ車両1の運転席を基準とする方向であることとする。
【0012】
図1図2に示すように、車両1は、車体2と、所定方向に沿って車体2に結合された2対の車輪3とを備える。これらの車輪3のうち、1対のフロントタイヤ3fは車体2の前方部分の下面に取り付けられ、1対のリアタイヤ3rは車体2の後方部分の下面に取り付けられている。
【0013】
車体2は上面視で略矩形をしており、フロントタイヤ3fから前方の端部である前端部F、リアタイヤ3rから後方の端部である後端部R、及びフロントタイヤ3fとリアタイヤ3rとの間の左右方向の車体2の端部である側端部Sを有する。
【0014】
車体2の前後端部F,Rであって、車体2の下端付近には1対のバンパー4が設けられている。1対のバンパー4のうち、フロントバンパー4fは車体2の下端部付近の前面全体と側面の一部とを覆う。1対のバンパー4のうち、リアバンパー4rは車体2の下端部付近の後面全体と側面の一部とを覆う。
【0015】
車体2には、音波(例えば、超音波)の送受波を行う送受波装置5が取り付けられている。送受波装置5は、車両1の周囲に音波を送波し、送波音波が反射された反射波を受波する。送受波装置5は、車両1の周囲の車両周囲情報を取得する測定装置として機能する。
【0016】
送受波装置5のうち、フロントバンパー4fには送受波装置5fが取り付けられ、リアバンパー4rには送受波装置5rが配置される。送受波装置5が、車体2の両側端部Sにそれぞれ取り付けられていてもよい。また、送受波装置5が、車体2の4つの角に取り付けられていてもよい。
【0017】
送受波装置5fは、例えば複数の送受波センサ51を備える。図1図2の例では、送受波装置5fは6個の送受波センサ51a~51fを備えている。ただし、送受波装置5fに含まれる送受波センサ51の数は6個に限らず任意である。複数の送受波センサ51a~51fは、例えば左から右へと並んでフロントバンパー4fに等間隔で取り付けられてもよい。
【0018】
各々の送受波センサ51a~51fは、例えば、所定の間隔で音波を送波し、送波のタイミングとは異なるタイミングの所定の間隔で反射波を受波するソナーである。なお、各々の送受波センサ51a~51fは、例えば送波タイミングと受波タイミングとが交互に入れ替わるように構成されてもよい。
【0019】
送受波装置5rは、例えば複数の送受波センサ52を備える。図1図2の例では、送受波装置5rは6個の送受波センサ52a~52fを備えている。ただし、送受波装置5rに含まれる送受波センサ52の数は6個に限らず任意である。複数の送受波センサ52a~52fは、例えば左から右へと並んでリアバンパー4rに等間隔で配置されてもよい。
【0020】
各々の送受波センサ52a~52fは、例えば、所定の間隔で音波を送波し、送波のタイミングとは異なるタイミングの所定の間隔で反射波を受波するソナーである。なお、各々の送受波センサ52a~52fは、例えば送波タイミングと受波タイミングとが交互に入れ替わるように構成されてもよい。
【0021】
上記のように構成される送受波装置5からの送受波に関する情報は、物体検出装置10に送信される。物体検出装置10は例えば車両1に搭載されており、送受波装置5からの情報に基づいて車両1の周囲の物体(例えば、障害物)を検出する。ただし、物体検出装置10は、車両1に搭載されていなくともよく、遠隔地から車両1の状況を把握して物体を検出してもよい。
【0022】
なお、実施形態の物体検出装置10は、車両1が低速で走行している際に稼働され、例えば、駐車スペースへの駐車および駐車スペースからの出庫の際に、車両1の周囲の物体を検出して車両1の運転支援を行う。具体的には、物体検出装置10は、車両1が低速、例えば20km/h以下の速度であって、好ましくは15km/h以下、より好ましくは10km/h以下の速度で走行中に稼働するものとすることができる。
【0023】
車両1は、所定方向に沿って配置された2対の車輪3を用いて走行することが可能である。この場合、2対の車輪3が配置される所定方向が車両1の走行方向(移動方向)となり、例えば、車両1は、ギアの切り替えにより前進または後退することができる。また、車両1は、操舵により右左折することもできる。
【0024】
(物体検出装置の構成例)
図3に示すように、車両1は物体検出システム100と運転支援システム200とを備える。
【0025】
物体検出システム100は、例えば送受波装置5f,5r及び物体検出装置10を備え、車両1の近傍の物体(例えば、障害物)を検出する。運転支援システム200は、例えば物体検出装置10及び車両制御装置20を備え、運転者による車両1の運転を支援する。
【0026】
物体検出装置10は、例えばCPU(Central Processing Unit)11、RAM(Random Access Memory)12、及びROM(Read Only Memory)13を備えたECU(Electronic Cotrol Unit)のコンピュータとして構成されている。
【0027】
また、物体検出装置10は、車両制御装置20の各部および送受波装置5f,5rの個々の送受波センサ51,52と、各種情報の送受信が可能なI/O(Input/Output)ポート15を備えている。物体検出装置10が、例えば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)の記憶装置14を備えていてもよい。
【0028】
物体検出装置10のRAM12、ROM13、記憶装置14、及びI/Oポート15の各構成は、例えば内部バスを介してCPU11と各種情報の送受信が可能に構成されている。
【0029】
物体検出装置10は、例えばROM13にインストールされているプログラムをCPU11が実行することにより、送受波装置5f,5rにおける送波音波および反射波に基づいて、車両1の近傍に物体(例えば、障害物)がある場合にはそれを検出する。また、物体検出装置10は、障害物の検出結果に基づいて、車両1へのフィードバックを行うよう指示する信号を車両制御装置20へと出力する。
【0030】
車両制御装置20は、例えば車速センサ21、アクセルセンサ22、ブレーキセンサ23、ブレーキアクチュエータ24、及びエンジンコントローラ25を備える。車両制御装置20は、車速センサ21からの車速などの各種の車両情報を取得する。
【0031】
車速センサ21は車輪3の回転量から車両1の速度を検知する。アクセルセンサ22は、運転者によるアクセルペダルの操作量を検知する。ブレーキセンサ23は、運転者によるブレーキペダルの操作量を検知する。
【0032】
ブレーキアクチュエータ24は、通常走行時はブレーキセンサ23の検知結果に基づいてフロントタイヤ3f及びリアタイヤ3rの少なくともいずれかに制動をかける。エンジンコントローラ25は、通常走行時はアクセルセンサ22の検知結果に基づいてエンジンの出力制御を行って、車両1の加減速制御を実行する。
【0033】
車両制御装置20は、例えば、車速センサ21、アクセルセンサ22、及びブレーキセンサ23から車両1の各部の状態を示す情報を取得する。車両制御装置20は、これらの情報および物体検出装置10から受信した信号に基づいて、ブレーキアクチュエータ24及びエンジンコントローラ25の少なくともいずれかを制御することで、例えば物体検出装置10が検出した障害物を回避するよう車両1を制御する。
【0034】
例えば、車両制御装置20は、ブレーキアクチュエータ24を制御して車両1に制動をかけることで、車両1と障害物との衝突回避を図る。これに替えて、または加えて、車両制御装置20は、エンジンコントローラ25により、エンジンの出力を例えば数秒間抑制させて車両1の加速を抑制することで、車両1と障害物との衝突回避を図ってもよい。
【0035】
また、車両1は、アクセルペダルが電子制御されるタイプであり、車両制御装置20によってアクセルペダルの開度を制御する機構を備える場合もあり得る。このような場合には、上記のエンジン出力の抑制に替えて、または加えて、車両制御装置20は、アクセルペダル制御機構によって、アクセルペダルの開度を制御して車両1の加速を抑制することで、車両1と障害物との衝突回避を図ってもよい。
【0036】
このように、車両制御装置20が、車両1に制動をかける機能および車両1の加速を抑制する機能の少なくともいずれかを有することで、運転支援システム200が、例えば、ペダル踏み間違い時に、加速抑制装置、衝突被害軽減ブレーキ装置として機能するように構成されていてもよい。
【0037】
ペダル踏み間違い時の加速抑制装置および衝突被害軽減ブレーキ装置は、例えば運転者が誤ってアクセルペダルを強く踏み込み過ぎてしまったような場合に、近傍の障害物への衝突を回避するよう運転者への運転支援を行う機能である。
【0038】
次に、物体検出装置の機能構成について説明する。
【0039】
図4に示すように、物体検出装置10は、障害物検知部101と、自車位置推定部102と、障害物マップ作成部103と、マップ再作成部104と、走行制御部105と、を備えている。
【0040】
これらの障害物検知部101、自車位置推定部102、障害物マップ作成部103、マップ再作成部104、及び走行制御部105は、それぞれ取得回路、演算回路、判定回路、制御回路、及び記憶回路として構成されていてもよい。なお、マップ再作成部104、及び走行制御部105をまとめて、制御回路として構成されてもよい。あるいは、これらの構成の少なくともいずれかが、例えば、デバイス、ユニット、またはモジュールとして構成されていてもよい。
【0041】
障害物検知部101は、検知回路である。障害物検知部101は、個々の送受波センサ51,52から送受波に関する車両周囲情報を取得する。送受波センサ51,52からの車両周囲情報には、例えば、個々の送受波センサ51,52が音波を送波した時刻、反射波を受波した時刻、及び反射波の強度の各種情報が含まれている。
【0042】
また、障害物検知部101は、車両制御装置20の車速センサ21から所定時刻における車両1の速度に関する車両情報を取得する。障害物検知部101は、車速センサ21からの速度に関する車両情報に加えて、例えば、車輪3の回転量、または車両制御装置20のアクセルセンサ22、ブレーキセンサ23、ブレーキアクチュエータ24、及びエンジンコントローラ25といった他の構成からの車両情報を取得してもよい。
【0043】
障害物検知部101は、例えば、個々の送受波センサ51,52からの車両周囲情報、及び車速センサ21などからの車両情報に基づいて、車両1の周囲に物体(障害物)がある場合に、その障害物の車両1に対する位置座標(第1の位置座標)を演算により求める。
【0044】
自車位置推定部102は、自車位置推定回路である。自車位置推定部102は、車両制御装置20の車速センサ21から所定時刻における車両1の速度に関する車両情報を取得する。自車位置推定部102は、車速センサ21からの速度に関する車両情報に加えて、例えば、車輪3の回転量、または車両制御装置20のアクセルセンサ22、ブレーキセンサ23、ブレーキアクチュエータ24、及びエンジンコントローラ25といった他の構成からの車両情報を取得してもよい。
【0045】
自車位置推定部102は、車速センサ21などからの車両情報を用いて、車両1の移動量、移動方向を含む車両1の位置座標(第3の位置座標)を算出して推定する。
【0046】
障害物マップ作成部103は、マッピング回路である。障害物マップ作成部103は、自車位置推定部102で推定した車両1の位置座標と障害物検知部101で検知した障害物の位置座標とから、車両1の周囲の障害物の座標マップ(第1の座標マップ)を作成する。
【0047】
マップ再作成部104は、リマッピング回路である。マップ再作成部104は、障害物マップ作成部103で作成した障害物の座標マップ(第1の座標マップ)と、過去に検知した障害物の座標マップと(第3の座標マップ)を比較する。マップ再作成部104は、障害物マップ作成部103で作成した障害物の座標マップ(第3の座標マップ)を、所定期間、保持する。
【0048】
マップ再作成部104は、比較の結果、車両1の近傍で検知範囲外となったために、消失した物体(障害物)を推定する。
【0049】
マップ再作成部104は、消失した物体(障害物)の位置座標(第2の位置座標)を再計算し、車両1の周囲の障害物の座標マップ(第1の座標マップ)を修正した座標マップ(第2の座標マップ)を再作成する。
【0050】
走行制御部105は、修正した車両1の周囲の障害物の座標マップに基づいて、車両1に障害物を回避させる指示内容を含む信号(例えば、自動駐車や衝突回避のためのブレーキ制御信号)を車両制御装置20に出力する。
【0051】
(既存の技術の説明)
次に、既存の技術について説明する。車両に取り付けられた複数の送受波センサを用いた物体検出装置は、段差などの低障害物や天井梁などの上方障害物が車両に近づく場合、送受波センサの垂直指向性により検知しなくなる。例えば、自動駐車等のように、障害物に低速で寄せて車両を移動する場合は、低障害物の位置を、過去の検知座標と自車移動量から推測したとしても、検知距離の誤差により低障害物に接触する可能性がある。
【0052】
図5Aに示すように、縁石等の低障害物Xは、送受波センサ51,52の垂直指向性により、車両1と距離が近づくと、反射が返ってこないため、送受波センサ51,52の検知エリア外となり未検知になる。従来においては、未検知の障害物Xは、検知した場合の検知距離と、車両1の移動量から、位置を推定される。一方、図5Bに示すように、送受波センサ51,52である超音波センサは、センサ高さより低いものや高いものは、超音波の反射経路が長くなるため、水平距離としては実距離より検知距離が長くなる。そのため、低障害物Xに対しては、遠方で検知した過去の検知座標を元に車両制御を実施する。しかしながら、自動駐車等では、車両1を障害物Xに低速で近くに寄せる動きとなるため、検知距離が遠くなると車両1と障害物Xとの接触の可能性がある。例えば、送受波センサ51,52の高さ50cmであって縁石の高さ20cmである場合、推定距離は40cmとなり、水平距離との誤差は10cmとなる。
【0053】
そこで、本実施形態の物体検出装置10は、送受波センサ51,52の垂直指向性を考慮して検知距離を算出し、自動駐車等での車両1の障害物への接触を防ぐようにしたものである。以下において、物体検出システムによる物体検出処理について説明する。
【0054】
(物体検出装置10による物体検出処理)
図6に示すように、障害物検知部101は障害物の車両1に対する位置座標を算出し、自車位置推定部102は車両1の位置情報を算出する(ステップS1)。
【0055】
次に、障害物マップ作成部103は、自車位置推定部102で推定した車両1の位置座標と障害物検知部101で検知した障害物の位置座標とから、車両1の周囲の障害物の座標マップを作成する(ステップS2)。
【0056】
次に、マップ再作成部104は、障害物マップ作成部103で作成した障害物の座標マップと、過去の障害物の座標マップとを比較する(ステップS3)。
【0057】
マップ再作成部104は、比較の結果、消失した座標がある場合(ステップS4のYes)、消失は垂直指向性によるものかを判断する(ステップS5)。
【0058】
ここで、垂直指向性による消失かどうか判断する方法の例について説明する。
【0059】
図7に示すように、垂直指向性による消失かどうかは、車両1と障害物との距離と、送受波センサ51,52における反射波の波高と、で判断する。
【0060】
波高は、送受波センサ51,52における反射波の波の高さを示すものである。図7に示すように、実際に、壁などの送受波センサ51,52からの送波を反射しやすい障害物は、送受波センサ51,52における反射波の波高が高くなる。一方、図7に示すように、縁石等の障害物は、送受波センサ51,52からの送波を反射しにくいので、送受波センサ51,52における反射波の波高が低くなる。図7に示すように、縁石等の障害物からの反射光の波高は、送受波センサ51,52の垂直指向性により、車両1に近づくと急激に下がる。
【0061】
一方、図7に示すように、障害物を検知しなくなる距離は、障害物の高さに依存する。図7に示すように、接触したくない高さの障害物が低いほど、遠い距離で、障害物として検知しなくなる。
【0062】
そこで、本実施形態においては、図7に示すように、マップ再作成部104は、縁石と壁を区別する閾値として検知閾値を設ける。
【0063】
図7に示す検知閾値は、段階的に設定されている。検知閾値は、接触したくない高さの障害物(縁石)が検知しなくなる距離を基準にする。図7に示す検知閾値は、極近距離(例えば1m以下)は、縁石を検知しないように設定される。
【0064】
また、図7に示す検知閾値は、近距離(例えば1m~2m)においては縁石と壁の両方を検知したいので、反射波の波高により縁石と壁の区別が可能であることから、低めに設定される。
【0065】
なお、縁石、壁とも、反射波の波高の大きさはばらつくため、遠距離(例えば2mより遠く)は反射波の波高で区別することは難しい。しかしながら、縁石も安定して検知しているため、反射が返ってこなくなった場合には実際に障害物が無くなったと考えるようにする。
【0066】
したがって、マップ再作成部104は、遠距離(例えば2m)での障害物の消失について、送受波センサ51,52の垂直指向性による障害物の消失ではないと判断する。また、マップ再作成部104は、近距離(例えば1m)でも反射波の波高が高い場合には、実際に障害物が消失したと判断する。
【0067】
図6に戻り、マップ再作成部104は、送受波センサ51,52の垂直指向性による障害物の消失であると判断した場合(ステップS6のYes)、障害物の位置座標の再計算および障害物の座標マップの再作成を行う(ステップS7)。
【0068】
ここで、図8に示すように、縁石などの低障害物Xは、車両1に近くなると垂直指向性の検知範囲外となり、検知しなくなる。そこで、本実施形態においては、マップ再作成部104は、送受波センサ51,52の垂直指向性による障害物の消失により障害物Xを検知しなくなった時点で、障害物Xの位置座標を再計算し、障害物の座標マップの再作成を行う。障害物の位置座標の補正検知距離eは、下記式により算出可能である。
e=d(√(1+((h-a)/d))-1)
【0069】
マップ再作成部104は、検知しなくなった距離r´に対して補正検知距離eを用いて補正して新たな障害物の位置座標とし、障害物の座標マップの再作成を行う。
【0070】
再計算後の障害物距離dは、垂直指向性θを用いて下記式により計算することもできる。
d=r´×cosθ
【0071】
マップ再作成部104は、障害物の位置座標の再計算および障害物の座標マップの再作成を行った後(ステップS7)、ステップS1に戻り、物体検出処理を繰り返す。
【0072】
一方、マップ再作成部104は、比較の結果、消失した座標がない場合(ステップS4のNo)、垂直指向性による障害物の消失ではない場合(ステップS6のNo)、消失した座標は縁石でないと判断して(ステップS8)、ステップS1に戻り、物体検出処理を繰り返す。
【0073】
ここで、図9Aに示すように、送受波センサ51,52で駐車空間を検知した場合、低い壁(縁石)は実距離よりやや遠めに検知点が出る。図9Bに示すように、更に車両1が低い壁(縁石)に近づくと、低い壁(縁石)は検知しなくなる。図9Cに示すように、本実施形態においては、低い壁(縁石)を検知しなくなった点で低い壁(縁石)の位置座標を再計算し、車両1に近い位置に低い壁(縁石)の位置座標を補正することで、低い壁(縁石)との衝突を防ぐことが可能となっている。
【0074】
このように本実施形態によれば、車両に近づくことで検知しなくなった障害物への接触を回避することができる。
【0075】
なお、本実施形態においては送受波センサ51,52の垂直指向性をθとして単純に計算したが、実際には送受波センサ51,52の垂直指向性は角度以外も用いて表すため、バルーン状のような複雑な形状になる。単純な式で表すことが出来ない場合は、衝突したくない高さの縁石について、検知しなくなる実距離と、そのときの検知距離をデータテーブル化するようにしてもよい。検知しなくなる実距離は、気温、湿度に依存するため、気温、湿度ごとのデータとしてもよい。事前に低障害物の高さごとに、検知しなくなる実距離を調べデータテーブル化しておくことで障害物の高さの推定も可能である。
【0076】
なお、物体検出装置10による物体検出処理におけるマップ再作成部104による補正検知距離eの補正を常時実施すると、不要作動が発生する可能性がある。そのため、マップ再作成部104による補正検知距離eの補正を、「車両が駐車動作を行っている低速時」の他、下記の状況に限定するようにしてもよい。
・車両が駐車場周辺に位置する場合
・自動駐車モード中である場合
【0077】
なお、上述の実施形態の物体検出装置において、各構成要素に用いた「・・・部」という表記は、上述のとおり、「・・・回路(circuitry)」、「・・・アッセンブリ」、「・・・デバイス」、「・・・ユニット」、又は、「・・・モジュール」といった他の表記に置換されうる。
【0078】
また、上述の実施形態の物体検出装置は、例えばROM13にインストールされているプログラムをCPU11が実行することにより、物体検出処理を行うこととした。
【0079】
しかし、物体検出装置で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されてもよい。あるいは、ネットワークを介してプログラムをダウンロードし、コンピュータで実行させてもよい。
【0080】
また、物体検出装置の機能の少なくとも一部が、CPUを有さない専用のハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0081】
このように、上述の実施形態の物体検出装置は、ソフトウェア、ハードウェア、またはハードウェアと連携したソフトウェアで実現することが可能である。また、上述の実施形態の物体検出装置は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータープログラム、または記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータープログラム、及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。なお、プログラム製品は、コンピュータープログラムが記録されたコンピュータが読み取り可能な媒体である。
【0082】
また、上述の実施形態の物体検出装置の各機能ブロックは、部分的に、または全体的に、集積回路であるLSIとして実現され、上述の実施形態の物体検出装置の各処理は、部分的に、または全体的に、1つのLSIまたはLSIの組み合わせによって制御されてもよい。LSIは個々のチップから構成されてもよいし、機能ブロックの一部または全てを含むように1つのチップから構成されてもよい。LSIはデータの入力と出力とを備えてもよい。LSIは、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0083】
ただし、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路、汎用プロセッサ又は専用プロセッサで実現してもよい。また、LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはLSI内部の回路セルの接続および設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。上述の実施形態の物体検出装置の各処理が、デジタル処理またはアナログ処理として実現されてもよい。
【0084】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてあり得る。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本開示にかかる物体検出装置、車両および物体検出方法によれば、車両に近づくことで検知しなくなった障害物への接触を回避することが実現できる。
【符号の説明】
【0086】
1 車両
5 測定装置
10 物体検出装置
20 車両制御装置
101 検知回路
102 制御回路、自車位置推定回路
103 制御回路、マッピング回路
104 制御回路、リマッピング回路
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C