(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143934
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】水中油中水型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20241004BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20241004BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20241004BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20241004BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241004BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20241004BHJP
A61K 9/113 20060101ALI20241004BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20241004BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20241004BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20241004BHJP
A23L 29/10 20160101ALI20241004BHJP
A23D 7/005 20060101ALI20241004BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20241004BHJP
A23L 29/262 20160101ALI20241004BHJP
A23L 29/238 20160101ALI20241004BHJP
A23L 29/244 20160101ALI20241004BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20241004BHJP
A23L 29/30 20160101ALI20241004BHJP
A23L 29/20 20160101ALI20241004BHJP
【FI】
A23L5/00 L
A61K8/06
A61K8/37
A61K8/9789
A61Q19/00
A61K8/73
A61K9/113
A61K47/40
A61K47/36
A61K47/38
A23L29/10
A23D7/005
A23L29/269
A23L29/262
A23L29/238
A23L29/244
A23L29/256
A23L29/30
A23L29/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056891
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000111487
【氏名又は名称】ハウス食品グループ本社株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】中森 慶祐
(72)【発明者】
【氏名】朝武 宗明
(72)【発明者】
【氏名】武藤 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】榎田 敬
(72)【発明者】
【氏名】大西 耕大郎
【テーマコード(参考)】
4B026
4B035
4B041
4C076
4C083
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DG04
4B026DG07
4B026DK01
4B026DK03
4B026DL03
4B026DP01
4B026DX04
4B035LC03
4B035LC16
4B035LE03
4B035LE20
4B035LG09
4B035LG12
4B035LG18
4B035LG21
4B035LG23
4B035LG24
4B035LG25
4B035LG26
4B035LG27
4B035LG57
4B035LK04
4B035LK13
4B035LK17
4B035LP21
4B041LC03
4B041LC10
4B041LD01
4B041LH04
4B041LH07
4B041LH08
4B041LH10
4B041LH11
4B041LH13
4B041LK05
4B041LK08
4B041LK09
4B041LK18
4B041LP04
4C076AA18
4C076BB01
4C076BB31
4C076DD01
4C076EE30
4C076EE32
4C076EE36
4C076EE39
4C076FF16
4C076FF36
4C076FF43
4C083AA122
4C083AB051
4C083AC012
4C083AC421
4C083AC422
4C083AD162
4C083AD211
4C083AD222
4C083AD251
4C083AD252
4C083AD271
4C083AD301
4C083AD351
4C083AD352
4C083CC01
4C083DD34
4C083EE01
4C083FF04
(57)【要約】
【課題】本発明は、優れた乳化安定性を有する水中油中水型乳化組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】水、疎水性物質、サイクロデキストリン、及び増粘多糖類を含む、水中油中水型乳化組成物であって、外水相が前記サイクロデキストリン、及び前記増粘多糖類を含む、乳化組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、疎水性物質、サイクロデキストリン、及び増粘多糖類を含む、水中油中水型(W1/O/W2型)乳化組成物であって、外水相(W2)が前記サイクロデキストリン、及び前記増粘多糖類を含む、乳化組成物。
【請求項2】
前記疎水性物質が、油脂、疎水性ワックス、及び疎水性樹脂からなる群より選択される一種以上である、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項3】
前記増粘多糖類が、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、グルコマンナン、スクシノグリカン、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、タマリンドガム、ジェランガム、及び、アルギン酸ナトリウムからなる群より選択される一種以上である、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項4】
油相(O)がさらに、乳化剤を含む、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項5】
水中油中水型(W1/O/W2型)乳化組成物の製造方法であって、以下の工程:
(1)水、及び疎水性物質を混合して油中水型(W1/O型)乳化組成物を得る工程、ならびに、
(2)前記W1/O型乳化物、水、サイクロデキストリン、及び、増粘多糖類を混合して水中油中水型(W1/O/W2型)乳化組成物を得る工程、
を含む、製造方法。
【請求項6】
工程(2)において、前記前記W1/O型乳化物と、サイクロデキストリン及び増粘多糖類を添加した水とを混合することを含む、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
工程(1)において、前記疎水性物質にさらに乳化剤を添加することを含む、請求項5又は6に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水、疎水性物質、サイクロデキストリン、及び増粘多糖類を含む、水中油中水型(W1/O/W2型)乳化組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水中油中水型乳化組成物とは、疎水性物質(連続相)の中に水(W1:不連続相)が分散してなる油中水型乳化組成物(W1/O型)が、水(W2:連続相)の中に分散してなる乳化組成物であり、今日、医薬、化粧品、飲食品等の様々な分野で広く利用されている。
【0003】
特許文献1、特許文献2には、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを使用してなる、医薬品、化粧品、食品用のW/O/W型複合エマルジョンが開示され、内水相及び外水相には、カゼイン、ナトリウムカゼイネート、ゼラチン、小麦タンパク、大豆タンパク、血漿タンパク、乳清タンパク、卵白、卵黄、澱粉、加工澱粉、デキストリン、サイクロデキストリン、澱粉誘導体、ローカストビンガム、キサンタンガム、プルラン、デキストラン、カードラン、グアーガム、タマリンドガム、寒天、カラギーナン、ファーセレラン、アルギン酸及びその塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ペクチン、アラビノガラクタン、結晶セルロース、CMC、メチルセルロース、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ピロリン酸、ポリリン酸等の成分が添加されたものであることが記載されている。
【0004】
特許文献3には、所定のポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含有するW1/O/W2型複合乳化ドレッシング類が開示され、水相(W2)に、ぺクチン、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、グァーガム、ジエランガム、カードラン、プルラン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン等の増粘多糖類を添加することが好ましいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60-203139号公報
【特許文献2】特開昭60-199833号公報
【特許文献3】WO 2007/043678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、従来の水中油中水型乳化組成物は、乳化安定性が十分でなく、乳化状態を維持できず、容易に乳化破壊を生じてしまう場合があることを見出した。
そこで、本発明は、優れた乳化安定性を有する水中油中水型乳化組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、水中油中水型(W1/O/W2)乳化組成物において、「W2」に該当する外水相に、サイクロデキストリンと増粘多糖類を含めることによって、優れた乳化安定性が得られることを見出した。
【0008】
本発明は、これらの新規知見に基づくものであり、以下の発明を包含する。
[1] 水、疎水性物質、サイクロデキストリン、及び増粘多糖類を含む、水中油中水型(W1/O/W2型)乳化組成物であって、外水相(W2)が前記サイクロデキストリン、及び前記増粘多糖類を含む、乳化組成物。
[2] 前記疎水性物質が、油脂、疎水性ワックス、及び疎水性樹脂からなる群より選択される一種以上である、[1]の乳化組成物。
[3] 前記増粘多糖類が、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、グルコマンナン、スクシノグリカン、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、タマリンドガム、ジェランガム、及び、アルギン酸ナトリウムからなる群より選択される一種以上である、[1]又は[2]の乳化組成物。
[4] 油相(O)がさらに、乳化剤を含む、[1]~[3]のいずれかの乳化組成物。
【0009】
[5]水中油中水型(W1/O/W2型)乳化組成物の製造方法であって、以下の工程:
(1)水、及び疎水性物質を混合して油中水型(W1/O型)乳化組成物を得る工程、ならびに、
(2)前記W1/O型乳化物、水、サイクロデキストリン、及び、増粘多糖類を混合して水中油中水型(W1/O/W2型)乳化組成物を得る工程、
を含む、製造方法。
[6] 工程(2)において、前記W1/O型乳化物と、サイクロデキストリン及び増粘多糖類を添加した水とを混合することを含む、[5]の製造方法。
[7] 工程(1)において、前記疎水性物質にさらに乳化剤を添加することを含む、[5]又は[6]の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた乳化安定性を有する水中油中水型乳化組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、水、疎水性物質、サイクロデキストリン、及び増粘多糖類を含む、水中油中水型(W1/O/W2型)乳化組成物に関するものである。以下、本発明の水中油中水型乳化組成物を、単に「本発明の乳化組成物」と記載する場合がある。本発明の乳化組成物においては、外水相(W2)がサイクロデキストリン及び増粘多糖類を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明において「水中油中水型(W1/O/W2型)乳化組成物」とは、疎水性物質(O:連続相)の中に水(W1:不連続相)が分散してなる油中水型乳化組成物(W1/O型)が、水(W2:連続相)の中に分散してなる乳化組成物を意味する。本明細書においては、「水中油中水型」、「W1/O/W2型」、及び「W/O/W型」の乳化組成物とはいずれも、前記構造を有する乳化組成物を指し、これらの用語は相互互換的に用いることができる。また、本明細書においては、「W1」に該当する水を「内水相」と記載し、「W2」に該当する水を「外水相」と記載する場合がある。
【0013】
本発明において「疎水性物質」とは、水に不溶性であり、水、ならびに、水と下記に詳述する、サイクロデキストリン及び増粘多糖類と共に、油中水型(W/O型)乳化組成物、ならびに水中油中水型(W/O/W型)乳化組成物を形成することが可能な物質であればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは、油脂、疎水性ワックス、疎水性樹脂等が挙げられる。疎水性物質はいずれかの物質を単独で用いてもよいし、あるいは異なる種類の疎水性物質を組み合わせて用いてもよい。例えば、疎水性物質は、油脂、疎水性ワックス、及び疎水性樹脂からなる群より選択される一種以上の物質を用いることができ、本発明の利用態様に応じて、適当なものを選択して用いることができる。
【0014】
本発明において「油脂」とは、乳化組成物の形成において一般的に使用される油脂を利用することができ、極性及び非極性のいずれも使用することができる。このような油脂としては、例えば、植物由来の油脂(例えば、キャノーラ油、菜種白絞油、大豆油、コーン油、綿実油、落花生油、ゴマ油、米油、米糠油、ツバキ油、ベニバナ油、オリーブ油、アマニ油、シソ油、エゴマ油、ヒマワリ油、パーム油、茶油、ヤシ油、アボガド油、ククイナッツ油、グレープシード油、ココアバター、ココナッツ油、小麦胚芽油、アーモンド油、月見草油、ひまし油、ヘーゼルナッツ油、マカダミアナッツ油、ローズヒップ油、大豆油、ブドウ油、カカオ油、ホホバ油、パーム核油、スクワレン、スクワラン等)、イソステアリルアルコール、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、2-オクタデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、フィトステロール、コレステロール、ステアリン酸、イソステアリン酸、カプリン酸、ラノリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ベヘニン酸、リノール酸、リノレン酸、モノステアリン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノベヘニン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノラノリン酸グリセリル、モノリノ-ル酸グリセリル、モノリノレン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリン、イソプロピルミリステート、グリセロールトリ-2-ヘプチルウンデカノエート、グリセロールトリ-2-エチルヘキサノエート、2-ヘプチルウンデシルパルミテート、ジ-2-ヘプチルウンデシルアジペート、セチルイソオクタノエート、トリメチロールプロパン-2-トリメチロールヘプチルウンデカノエート、プロパン-2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトール-2-ヘプチルウンデカノエート、ペンタエリスリトール-2-エチルヘキサノエート、コレステロールイソステアレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート等の合成エステル油、牛脂、豚油、魚油、乳脂、ラノリン、スクワレン、スクワラン等の動物由来の油脂等が挙げられるが、これらに限定はされない。その中でも、本発明において利用される油脂としては、少なくとも常温において液体の状態のものが好ましい。本明細書において「常温」とは、5~35℃、好ましくは15~30℃を意味する。油脂はいずれか単独で用いてもよいし、異なる油脂を組み合わせて用いてもよく、本発明の利用態様に応じて、適当なものを選択して用いることができる。例えば、本発明の乳化組成物を、飲食品、医薬品(医薬部外品を含む)、化粧品等の分野に用いる場合には、安全性の高い動物由来又は植物由来の油脂が好ましく、食経験があり安全性の高い食用植物油が特に好ましい。
【0015】
本発明において「疎水性ワックス」とは、動植物や石油若しくは鉱物由来の天然疎水性ワックス、合成の疎水性ワックスが挙げられ、80℃以下の融点を有するものを使用することができ、その中でも、少なくとも常温において液体の状態のものが好ましい。このような疎水性ワックスとしては、例えば、ミツロウ、鯨ロウ、羊毛ロウ、モクロウ、ロジン(松脂)、キャンデリラロウ、カルナバロウ、カカオ脂、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、セレシンワックス、ワセリンワックス、オゾケナイトワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、アルコール変性ワックス、マレイン酸変性酸化ポリエチレンワックス、アミドワックス等が挙げられるが、これらに限定はされない。疎水性ワックスはいずれか単独で用いてもよいし、異なる疎水性ワックスを組み合わせて用いてもよく、本発明の利用態様に応じて、適当なものを選択して用いることができる。例えば、本発明の乳化組成物を、飲食品、医薬品(医薬部外品を含む)、化粧品等の分野に用いる場合には、安全性の高い動物由来又は植物由来の疎水性ワックスが特に好ましい。
【0016】
本発明において「疎水性樹脂」とは、親水性基を有さないか又はその含有量が小さな樹脂であり、水等の極性溶媒に溶解しない樹脂を指し、本発明においては少なくとも常温において液体の状態のものを好適に用いることができる。このような疎水性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂(親水化されていないもの、例えば、シリコーン油、変性シリコーン)、ポリウレタン樹脂、フッ素含有樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ならびにこれらのポリマーの共重合体等が挙げられるが、これらに限定はされない。疎水性樹脂はいずれか単独で用いてもよいし、異なる疎水性樹脂を組み合わせて用いてもよく、本発明の利用態様に応じて、適当なものを選択して用いることができる。例えば、本発明の乳化組成物を、飲食品、医薬品(医薬部外品を含む)、化粧品等の分野に用いる場合には、生体適合性や生体親和性有することが確認された安全性の高いものが特に好ましい。
【0017】
本発明において「疎水性物質」とは、より好ましくは油脂及び疎水性ワックスであり、特に好ましくは油脂である。
【0018】
「サイクロデキストリン」は、ブドウ糖を構成単位とする環状無還元マルトオリゴ糖を意味し、ブドウ糖の数が6つのα-サイクロデキストリン、7つのβ-サイクロデキストリン、8つのγ-サイクロデキストリンが挙げられる。本発明においては、α-、β-、γ-サイクロデキストリン、及びそれらの誘導体、ならびにそれらの任意の組み合わせを用いることができる。サイクロデキストリンの誘導体としては、例えば、エチルサイクロデキストリン、メチルサイクロデキストリン、ヒドロキシエチルサイクロデキストリン、ヒドロキシプロピルサイクロデキストリン、メチルアミノサイクロデキストリン、アミノサイクロデキストリン、カルボキシエチルサイクロデキストリン、カルボキシメチルサイクロデキストリン、スルフォキシエチルサイクロデキストリン、スルフォキシルサイクロデキストリン、アセチルサイクロデキストリン、分岐サイクロデキストリン、サイクロデキストリン脂肪酸エステル、グルコシルサイクロデキストリン、マルトシルサイクロデキストリン等が挙げられるが、これらに限定はされない。好ましくはα-サイクロデキストリンを使用する。α-サイクロデキストリンは水への溶解性が高く、ざらつきの少ない乳化組成物を得ることができる。
【0019】
本発明において「増粘多糖類」とは、一般的に、水に溶解し、粘性を付与する(増粘安定剤、水溶性糊料等とも呼ばれる場合がある)多糖類を意味し、このような増粘多糖類としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガム、スクシノグリカン、ローカストビーンガム、グアーガム、タラガム、グルコマンナン、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、タマリンドガム、ジェランガム(脱アシル型、及びネイティブ型)、アラビアガム、ペクチン、α化でんぷん、リン酸架橋でんぷん、ヒドロキシプロピルでんぷん、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋でんぷん、トラガントガム、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸でんぷん、オクテニルコハク酸でんぷん、大豆多糖類、難消化デキストリン、ポリデキストロース、カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、サイリウムシードガム、マクロホモプシスガム、寒天、ゼラチン、アルギン酸、アルギン酸塩、プルラン、カードラン、ガティガム、アラビアガラクタン、カラヤガム、ファーセラン、キチン、ウェランガム等が挙げられるが、これらに限定はされない。増粘多糖類はいずれか単独で用いてもよいし、異なる増粘多糖類を組み合わせて用いてもよく、本発明の利用態様に応じて、適当なものを選択して用いることができる。例えば、本発明の乳化組成物を、飲食品、医薬品(医薬部外品を含む)、化粧品等の分野に用いる場合には、飲食品や医薬品(医薬部外品を含む)、化粧品等の製造において通常用いられている成分を利用することが好ましい。本発明において「増粘多糖類」は、より好ましくは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガム、スクシノグリカン、ローカストビーンガム、グアーガム、グルコマンナン、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、タマリンドガム、及び、ジェランガムであり、さらに好ましくは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、グルコマンナン、タマリンドガム、キサンタンガム、及びスクシノグリカンである。これらの増粘多糖類は、本発明の乳化組成物にとりわけ高い乳化安定性を付与することができる。
【0020】
以下、本発明の水中油中水型(W1/O/W2型)乳化組成物について説明するが、各成分の量の記載は、特記することがない限り、本発明の水中油中水型乳化組成物の全質量を100質量%とする、質量%の量にて示す。
【0021】
本発明の水中油中水型(W1/O/W2型)乳化組成物において、W1(内水相)には、水を任意の量で含むことができ、例えば、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、又は7質量%以上の量で含み、その上限は特に限定されるものではないが、例えば、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、又は10質量%以下とすることができる。本発明におけるW1(内水相)の水の量の範囲は前記下限及び上限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、本発明におけるW1(内水相)には水を、1質量%~50質量%、好ましくは3質量%~40質量%、より好ましくは7質量%~30質量%の範囲より適宜選択される量にて含めることができる。水の量が1質量%よりも少ない場合、及び水の量が50質量%よりも多い場合のいずれにおいても、W1/O型乳化組成物部分における乳化が不十分となる場合があり、本発明の乳化組成物の目的の用途における利用形態において、所望の使用感や効果を得ることができない場合がある。
【0022】
本発明の乳化組成物において、O(油相)には疎水性物質を、前記W1(内水相)の水を乳化して、W1/O型乳化組成物部分を形成することが可能な任意の量で含むことができる。例えば、本発明におけるO(油相)には疎水性物質を、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、又は7質量%以上の量で含み、その上限は特に限定されるものではないが、例えば、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、又は30質量%以下とすることができる。本発明におけるO(油相)の疎水性物質の量の範囲は前記下限及び上限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、本発明におけるO(油相)には疎水性物質を、1質量%~70質量%、好ましくは3質量%~50質量%、より好ましくは7質量%~30質量%の範囲より適宜選択される量にて含めることができる。疎水性物質の量が1質量%よりも少ないと、W1/O型乳化組成物部分における乳化が不十分となる場合があり、一方、疎水性物質の量が70質量%よりも多いと、本発明の乳化組成物の形成が不安定となる場合があり、いずれにおいても本発明の乳化組成物の目的の用途における利用形態において、所望の使用感や効果を得ることができない場合がある。
【0023】
本発明において、O(油相)はさらに乳化剤を含むことが好ましい。O(油相)が乳化剤を含むことによって、W1及びW2のそれぞれとの関係における分散、乳化に高い安定性を付与することができ、本発明の水中油中水型乳化組成物に優れた乳化安定性に寄与することができ好ましい。
【0024】
本発明において「乳化剤」は、従来乳化組成物の製造において一般的に利用されている任意の乳化剤を用いることができる。このような乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン変性シリコーンオイル、レシチン類、サポニン類、リンタンパク質、ならびに、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等の非イオン性界面活性剤等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0025】
グリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンのヒドロキシ基のうち少なくとも1つに脂肪酸がエステル結合した化合物であり、炭素数8~22、好ましくは8~18、より好ましくは14~18の脂肪酸を有する。脂肪酸は、不飽和脂肪酸及び飽和脂肪酸のいずれでもよい。グリセリン脂肪酸エステルが2以上の脂肪酸を有する場合、それぞれの脂肪酸は同一であってもよいし、異なっていてもよい。グリセリン脂肪酸エステルが有する脂肪酸としては例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ペンタデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、アラキドン酸、ベヘン酸が挙げられ、好ましくは、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ペンタデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸であり、より好ましくは、パルミチン酸、オレイン酸、リシノール酸、ステアリン酸である。より詳細には、グリセリン脂肪酸エステルとしては例えば、ミリスチン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、ジステアリン酸グリセリン、カプリル酸モノグリセリド、ラウリン酸モノグリセリド、カプリン酸モノグリセリド、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノ12-ヒドロキシステアレート、グリセリンモノオレート、グリセリンモノ・ジベヘネート、グリセリンモノ・ジオレート等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0026】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンの重合体であるポリグリセリンのヒドロキシ基のうち少なくとも1つに脂肪酸がエステル結合した化合物であり、ポリグリセリンの重合度は特に限定されるものではなく、例えば2~20、好ましくは4~15とすることができる。ポリグリセリン脂肪酸エステルが有する脂肪酸は、炭素数8~22、好ましくは8~18、より好ましくは14~18の脂肪酸であり、不飽和脂肪酸及び飽和脂肪酸のいずれでもあってもよい。ポリグリセリン脂肪酸エステルが2以上の脂肪酸を有する場合、それぞれの脂肪酸は同一であってもよいし、異なっていてもよい。ポリグリセリン脂肪酸エステルが有する脂肪酸としては、上記グリセリン脂肪酸エステルが有する脂肪酸にて例示したものが挙げられる。より詳細には、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては例えば、ポリグリセリンステアリン酸エステル(例えば、デカステアリン酸デカグリセリン、ジステアリン酸デカグリセリン、ペンタステアリン酸ヘキサグリセリン、トリステアリン酸テトラグリセリン、ペンタステアリン酸デカグリセリン、ペンタステアリン酸テトラグリセリン、ヘキサステアリン酸ペンタグリセリン、モノステアリン酸ジグリセリン、トリステアリン酸ヘキサグリセリン、トリステアリン酸デカグリセリン、モノステアリン酸テトラグリセリン、テトラステアリン酸デカグリセリン等)、ポリグリセリンオレイン酸エステル(例えば、デカオレイン酸デカグリセリン、ペンタオレイン酸デカグリセリン、ペンタオレイン酸ヘキサグリセリン、ペンタオレイン酸テトラグリセリン等)、ポリグリセリンベヘン酸エステル(例えば、ヘプタベヘン酸デカグリセリン、ドデカベヘン酸デカグリセリン、テトラベヘン酸ヘキサグリセリン等)、ポリグリセリンエルカ酸エステル(例えば、オクタエルカ酸デカグリセリン等)、ポリグリセリンラウリン酸、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0027】
プロピレングリコール脂肪酸エステルは、プロピレングリコールのヒドロキシ基のうち少なくとも1つに脂肪酸がエステル結合した化合物であり、炭素数8~22、好ましくは8~18、より好ましくは14~18の脂肪酸を有する。脂肪酸は、不飽和脂肪酸及び飽和脂肪酸のいずれでもよい。プロピレングリコール脂肪酸エステルが2以上の脂肪酸を有する場合、それぞれの脂肪酸は同一であってもよいし、異なっていてもよい。プロピレングリコール脂肪酸エステルが有する脂肪酸としては、上記グリセリン脂肪酸エステルが有する脂肪酸にて例示したものが挙げられる。より詳細には、プロピレングリコール脂肪酸エステルとしては例えば、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールモノパルミテート、プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールモノオレート、プロピレングリコールモノベヘネート等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0028】
ショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖のヒドロキシ基のうち少なくとも1つに脂肪酸がエステル結合した化合物であり、炭素数8~22、好ましくは8~18、より好ましくは14~18の脂肪酸を有する。脂肪酸は、不飽和脂肪酸及び飽和脂肪酸のいずれでもよい。ショ糖脂肪酸エステルが2以上の脂肪酸を有する場合、それぞれの脂肪酸は同一であってもよいし、異なっていてもよい。ショ糖脂肪酸エステルが有する脂肪酸としては、例えば、上記グリセリン脂肪酸エステルが有する脂肪酸にて例示したものが挙げられ、好ましくは、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸である。より詳細には、ショ糖脂肪酸エステルとしては例えば、ショ糖ジオレイン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖ジパルミチン酸エステル、ショ糖ジミリスチン酸エステル、ショ糖ジラウリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステル、ショ糖ベヘニン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル、及びそれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0029】
有機酸モノグリセリド(グリセリン有機酸脂肪酸モノエステル)は、グリセリン脂肪酸モノエステルの3位のヒドロキシ基を有機酸でエステル化した化合物であり、炭素数8~22、好ましくは8~18、より好ましくは14~18の脂肪酸を有する。脂肪酸は、不飽和脂肪酸及び飽和脂肪酸のいずれでもよい。グリセリン脂肪酸モノエステルが有する脂肪酸としては、例えば、上記グリセリン脂肪酸エステルが有する脂肪酸にて例示したものが挙げられ、好ましくは、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ペンタデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸であり、より好ましくは、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸である。有機酸モノグリセリドが有する有機酸としては例えば、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、ジアセチル酒石酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、グルタル酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、マレイン酸、フマル酸、グリシン、アスパラギン酸等が挙げられ、好ましくは酒石酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、ジアセチル酒石酸、マレイン酸、フマル酸であり、より好ましくはジアセチル酒石酸、乳酸、クエン酸、コハク酸である。より詳細には、有機酸モノグリセリドとしては例えば、ジアセチル酒石酸モノグリセリド(例えば、ジアセチル酒石酸モノステアリン酸グリセリン)、乳酸モノグリセリド(例えば、乳酸モノステアリン酸グリセリン)、クエン酸モノグリセリド(例えば、クエン酸モノステアリン酸グリセリン、クエン酸モノオレイン酸グリセリン)、コハク酸モノグリセリド(例えば、コハク酸モノステアリン酸グリセリン)、酢酸モノグリセリド(例えば、酢酸モノステアリン酸グリセリン)等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0030】
ソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビタンのヒドロキシ基のうち少なくとも1つに脂肪酸がエステル結合した化合物であり、炭素数8~22、好ましくは8~18、より好ましくは14~18の脂肪酸を有する。脂肪酸は、不飽和脂肪酸及び飽和脂肪酸のいずれでもよい。ソルビタン脂肪酸エステルが2以上の脂肪酸を有する場合、それぞれの脂肪酸は同一であってもよいし、異なっていてもよい。ソルビタン脂肪酸エステルが有する脂肪酸としては、例えば、上記グリセリン脂肪酸エステルが有する脂肪酸にて例示したものが挙げられ、好ましくは、ラウリン酸、ペンタデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸であり、より好ましくは、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸である。より詳細には、ソルビタン脂肪酸エステルとしては例えば、モノステアリン酸ソルビタン、ジステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノカプリル酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0031】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、上述したソルビタン脂肪酸エステルのヒドロキシ基のうち少なくとも1つにエチレンオキサイドがエステル結合した化合物であり、エチレンオキサイドの付加モル数は、好ましくは2~6である。より詳細には、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては例えば、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(6E.O.)等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0032】
ポリグリセリン変性シリコーンオイルは、主鎖骨格をなすシリコーン鎖にポリグリセリン鎖が導入された構造を有する化合物であり、シリコーン鎖は、直鎖状であっても分岐鎖状でもよい。また、シリコーン鎖がポリグリセリン鎖で架橋された部分架橋型でもよい。ポリグリセリン変性シリコーンオイルとしては例えば、ポリグリセリル-3-ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ポリグリセリル-3-ジシロキサンジメチコン、ラウリルポリグリセリル-3-ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、セチルジグリセリルトリス(トリメチルシロキシ)シリルエチルジメチコン、(ラウリルジメチコン/ポリグリセリン-3)クロスポリマー、(ポリグリセリル-3/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマー等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0033】
レシチン類としては、例えば、植物レシチン、卵黄レシチン、酵素処理レシチン、酵素分解レシチン、分別レシチン等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0034】
サポニン類としては、キラヤ抽出物、エンジュサポニン、大豆サポニン、酵素処理大豆サポニン、茶種子サポニン、ユッカフォーム抽出物等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0035】
リンタンパク質としては、カゼインナトリウム等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0036】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等)、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0037】
乳化剤はいずれか単独で用いてもよいし、異なる乳化剤を組み合わせて用いてもよく、本発明の利用態様に応じて、適当なものを選択して用いることができる。例えば、本発明の乳化組成物を、飲食品、医薬品(医薬部外品を含む)、化粧品等の分野に用いる場合には、飲食品や医薬品(医薬部外品を含む)、化粧品等の製造において通常用いられている成分を利用することが好ましい。
【0038】
本発明におけるO(油相)には乳化剤を、0.1質量%以上、0.2質量以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上の量で含むことが好ましく、その上限は特に限定されるものではないが、例えば、20質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下とすることができる。本発明のO(油相)における乳化剤の量の範囲は前記下限及び上限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、本発明におけるO(油相)には乳化剤を、0.1質量%~20質量%、好ましくは0.3質量%~10質量%、例えば、0.6質量%~5質量%の範囲より適宜選択される量で含めることができる。乳化剤の量が0.1質量%よりも少ないと、W1及びW2のそれぞれとの関係における分散、乳化に優れた安定性を付与することができない場合があり、一方、20質量%よりも多いと、本発明の乳化組成物の目的の用途における利用形態において、所望の使用感を得ることができない場合がある。
【0039】
本発明におけるW2(外水相)には水を、W1/O型乳化組成物部分を乳化してサイクロデキストリン及び増粘多糖類と共に、本発明のW1/O/W2型乳化組成物を形成することが可能な任意の量で含むことができる。例えば、本発明におけるW2(外水相)には水を、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、又は60質量%以上の量で含み、その上限は特に限定されるものではないが、例えば、97質量%以下、又は90質量%以下とすることができる。本発明におけるW2(外水相)における水の量の範囲は前記下限及び上限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、本発明におけるW2(外水相)には水を、20質量%~97質量%、好ましくは30質量%~90質量%、より好ましくは40質量%~90質量%の範囲より適宜選択される量にて含めることができる。本発明におけるW2(外水相)に含まれる水の量は、体積比にしてW1/O型乳化組成物部分よりもW2(外水相)が大きくなる量にて含まれることが好ましく、例えばW1/O型乳化組成物部分とW2(外水相)は体積比にして(W1/O型乳化組成物:W2)1:1を超える量、例えば、1:2以上、1:3以上、1:4以上、1:5以上、とすることができ、その上限は特に限定されないが、1:30以下、1:20以下、1:15以下、又は1:10以下とすることができる。本発明におけるW1/O型乳化組成物部分とW2(外水相)における水の量を上記範囲に調節することによって、W2(外水相)におけるW1/O型乳化組成物部分の分散、乳化に安定性を付与することができ、本発明の水中油中水型乳化組成物における乳化安定性に寄与する。
【0040】
本発明におけるW2(外水相)には、サイクロデキストリン、及び増粘多糖類が含まれ、これらは水の存在下において共同して作用し、W2(外水相)におけるW1/O型乳化組成物部分の分散、乳化に高い安定性を付与することができ、本発明の水中油中水型乳化組成物における優れた乳化安定性に寄与する。
【0041】
本発明におけるW2(外水相)にはサイクロデキストリンを、増粘多糖類と共に本発明の乳化組成物の乳化安定性に寄与し、かつ本発明の乳化組成物の目的の用途における利用形態において所望の使用感を得ることが可能な任意の量で含めることができる。例えば、本発明におけるW2(外水相)には、サイクロデキストリンを、1質量%以上、2質量%以上、4質量%以上、又は6質量%以上の量で含み、その上限は特に限定されるものではないが、例えば、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、もしくは10質量%以下とすることができる。本発明のW2(外水相)におけるサイクロデキストリンの量の範囲は前記下限及び上限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、本発明におけるW2(外水相)にはサイクロデキストリンを、1質量%~30質量%、4質量%~20質量%、好ましくは6質量%~15質量%の範囲より適宜選択される量で含めることができる。サイクロデキストリンの量が1質量%よりも少ないと本発明の乳化組成物の乳化安定性が不十分となる場合があり、一方、30質量%よりも多い場合には当該乳化組成物の粘性が高くなりすぎる場合や、溶解できずにざらつきを生じる要因となる場合があり、いずれにおいても、本発明の乳化組成物の目的の用途における利用形態において、所望の使用感を得ることができない場合がある。
【0042】
本発明におけるW2(外水相)には増粘多糖類を、サイクロデキストリンと共に本発明の乳化組成物の乳化安定性に寄与し、かつ本発明の乳化組成物の目的の用途における利用形態において所望の使用感を得ることが可能な任意の量で含めることができる。例えば、本発明におけるW2(外水相)には増粘多糖類を、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上の量で含み、その上限は特に限定されるものではないが、例えば、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、又は3質量%以下とすることができる。本発明のW2(外水相)における増粘多糖類の量の範囲は前記下限及び上限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、本発明におけるW2(外水相)には、増粘多糖類を、0.1質量%~30質量%、0.2質量%~20質量%、好ましくは0.3質量%~10質量%の範囲より適宜選択される量で含めることができる。増粘多糖類の量が0.1質量%よりも少ないと本発明の乳化組成物の乳化安定性が不十分となる場合があり、一方、30質量%よりも多い場合には本発明の乳化組成物の粘性が高くなりすぎる場合があり、いずれにおいても、本発明の乳化組成物の用途における利用形態において、所望の使用感を得ることができない場合がある。
【0043】
本発明の乳化組成物においては、水の存在下におけるサイクロデキストリンと増粘多糖類の併用により、当該乳化組成物に乳化安定性を付与することができる。サイクロデキストリンと増粘多糖類の併用によりもたらされる当該乳化組成物の乳化安定性は、一般的なゲル化剤が水に溶解され冷却することにより形成される3次元マトリックスゲルに依拠するものではなく(好ましくは、3次元マトリックスゲルを含むものではなく)、水の存在下、サイクロデキストリンと増粘多糖類との間で生じる水素結合による相互作用の存在によるものであると考えられる。また、本発明の乳化組成物は、水の存在下におけるサイクロデキストリンと増粘多糖類の併用により、乳化安定性を有するものであることから、W2(外水相)には従来乳化組成物の製造において一般的に利用されている乳化剤を実質的に含まないものとしてもよく、好ましくはW2(外水相)は当該乳化剤を実質的に含まない。本発明において「乳化剤を実質的に含まない」とは、本発明におけるW2(外水相)において、乳化剤が乳化作用を発揮する態様で含まれないことを意味し、乳化剤が一切含まれないことを意図するものではない。
【0044】
一態様において、本発明の水中油中水型(W1/O/W2型)乳化組成物は、W1(内水相)に水を3~21質量%、好ましくは3~7質量%含み、Oに疎水性物質を2.5~8.5質量%、好ましくは2.5~7質量%含み、W2(外水相)には、水を60~85質量%、好ましくは63~84質量%、サイクロデキストリンを好ましくは6質量%、増粘多糖類を好ましくは0.3質量%含む。また、本発明の水中油中水型(W1/O/W2型)乳化組成物のO(油相)にはさらに、乳化剤を0.3~0.6質量%、好ましくは0.3質量%含むことが好ましい。
【0045】
本発明の乳化組成物には、上記成分に加えて、必要に応じてさらに、目的の用途における利用形態の製造において通常用いられている成分(以下、「その他の成分」と記載する)を、本発明の効果を損なわない範囲で、所望の利用形態に応じた量にて適宜配合することができる。このようなその他の成分としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、希釈剤、緩衝剤、懸濁化剤、増粘剤、保存剤、抗菌剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、顔料、染料、色素、潤滑剤、可塑剤、溶剤、溶解補助剤、等張化剤、矯味矯臭剤、香料、甘味料、呈味成分、酸味料、調味料、保湿剤、ビタミン類、界面活性剤、キレート剤、有機溶媒等が挙げられるが、これらに限定はされない。その他の成分は、その親水性、親油性、又は疎水性の特性に応じて、水相又は油相に含めることができる。
【0046】
本発明の乳化組成物の形態は特に限定されず、上記水分含量を有する形態の他、水分含量を減少させて調製された、半固体/半液体(ゲル、ゾル等)や乾燥体(例えば、粉体、フレーク等)の形態で提供することができる。このような半固体/半液体(ゲル、ゾル等)や乾燥体(例えば、粉体、フレーク等)の形態は、上記水分含量を有する形態の乳化組成物を得たのち、それを従来公知の乾燥手段に付して、当該乳化組成物の水分含量を減少させることにより得ることができる。このような乾燥手段としては、例えば、凍結乾燥、加熱乾燥、風乾、噴霧乾燥、ドラム乾燥、熱風乾燥、真空乾燥等が挙げられるが、これらに限定はされない。乾燥手段に付された後の当該乳化組成物の水分含量は、目的とする形態に応じて適宜選択することが可能である。乾燥体の形態であれば例えば、15質量%未満、10質量%以下、5質量%以下、又は1質量%以下とすることができる。乾燥手段に付された後の当該乳化組成物の水分含量の下限は特に限定されないが、0質量%以上、0質量%超、0.1質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上、又は0.8質量%以上とすることができる。当該乾燥体の形態の水分含量の範囲は前記上限及び下限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、当該乳化組成物の水分含量は、0質量%~15質量%未満、0質量%超15質量%未満、0.1質量%~15質量%未満、0.1質量%~10質量%、0.5質量%~5質量%、0.5質量%~1質量%、0.6質量%~1質量%、0.7質量%~1質量%、又は0.8質量%~1質量%とすることができる。
【0047】
本発明の水中油中水型(W1/O/W2型)乳化組成物は、以下の工程:
(1)水、及び、疎水性物質、ならびに必要に応じて乳化剤、その他の成分を上記の量にて混合、攪拌することにより、W1/O型乳化組成物を得る工程、ならびに、
(2)得られたW1/O型乳化物、水、サイクロデキストリン、及び、増粘多糖類、ならびに必要に応じてその他の成分を上記の量にて混合、攪拌することにより、水中油中水型(W1/O/W2型)乳化組成物を得る工程、
を含む方法により製造することができる。
【0048】
工程(1)において、水、及び、疎水性物質、ならびに必要に応じて乳化剤、その他の成分は、全て一緒に混合、攪拌してもよいし、各成分を別々にもしくは任意の組み合わせで順次添加して(順序は問わない)混合、攪拌してもよい。例えば、疎水性物質に必要に応じて乳化剤、その他の成分を予め添加し、また、水に必要に応じてその他の成分を予め添加し、その両者を混合、攪拌させてもよい。
【0049】
工程(2)において、W1/O型乳化組成物、水、サイクロデキストリン、及び、増粘多糖類、ならびに必要に応じてその他の成分は、全て一緒に混合、攪拌してもよいし、各成分を別々にもしくは任意の組み合わせで順次添加して(順序は問わない)混合、攪拌してもよい。例えば、水に予めサイクロデキストリン、及び、増粘多糖類、ならびに必要に応じてその他の成分を添加した上で、W1/O型乳化組成物と混合、攪拌させてもよい。
【0050】
製造された水中油中水型(W1/O/W2型)乳化組成物は、必要に応じて、加熱殺菌処理に付してもよい。本発明の乳化組成物は耐熱性の高い、優れた乳化安定性を有することから、本発明の乳化組成物を利用する目的の用途における利用形態について、その製造、殺菌、保存、使用等の工程にて高温条件に付すことができる。
【0051】
また、製造された水中油中水型(W1/O/W2型)乳化組成物は、必要に応じてさらに乾燥手段に付してもよい。乾燥手段は、上記従来公知の乾燥手段により行うことができ、当該乳化組成物の水分含量を、半固体/半液体(ゲル、ゾル等)や乾燥体の目的とする形状に応じて適宜調整することができる。得られた乾燥体は、必要に応じてさらに破砕、粉砕、又は摩砕処理に付して粉体やフレーク等の形態とすることができる。乾燥手段に付されて得られた乳化組成物には、必要に応じてその他の成分を上記の量にて混合、攪拌してもよく、ならびに/あるいは、加熱殺菌処理に付してもよい。
【0052】
本発明の水中油中水型(W1/O/W2型)乳化組成物は、飲食品、化粧品、外用医薬品、医薬品(医薬部外品を含む)、化学薬品、化成品、農薬、トイレタリー用品、スプレー製品、塗料、工業用薄膜素材、表面改質素材等の用途において基剤として利用し含めることができ、目的の用途における利用形態(例えば、所定の製品等の形態)で提供することができる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0053】
(1)W1/O/W2型乳化組成物の作製
以下の表1、表2の配合にしたがって、水相(W1)と、乳化剤を添加した油相(O)とを、TKホモミキサーMARK2(プライミクス社製)を用いて混合、撹拌し、W1/O型乳化組成物を作製した。次いで、得られたW1/O型乳化組成物と、サイクロデキストリン及びゲル化剤を添加した水相(W2)とを、TKホモミキサーMARK2を用いて混合、撹拌して、実施例1、2、4-7、ならびに比較例1、2、4-7のW1/O/W2型乳化組成物を作製した。
【0054】
実施例3、比較例3については、上記W1/O/W2型乳化組成物の作製において、TKホモミキサーMARK2に代えて、ホモディスパー2.5型(プライミクス社製)を用いた以外は同様にして、W1/O/W2型乳化組成物を作製した。
【0055】
(2)乳化安定性の評価方法
W/O/W型乳化組成物の乳化安定性は以下の方法により評価した。上記にて調製した各W1/O/W2型乳化組成物を50℃の恒温器に10日間保存しながら、当該乳化組成物の外観の様子・変化を、以下の評価基準に基づいて評価した。なお、離水や分離とは、W/O/W型乳化組成物の二重乳化構造が維持されず、当該構造が壊れて一重乳化構造の形態(例えば、W1/O、及び/又は(W1+W2)/O)に変化した場合や、水と疎水性物質が分かれた場合等を指す。
【0056】
[評価基準]
◎:10日間の保存中、離水や分離がなく、外観の変化はない
○:10日間の保存中、離水や分離はほとんどなく、外観の変化はほとんどない
△:保存3~9日で離水や分離があり、外観に明らかな変化がある
×:保存1~2日で離水や分離があり、外観に明らかな変化がある
【0057】
(3)加熱耐性の評価方法
W/O/W型乳化組成物の加熱耐性は以下の方法により評価した。15mL容遠心管に上記にて調製した実施例1-4、8、比較例1、2の各O1/W/O2型乳化組成物を14gずつ入れ、90℃の湯浴に15分間浸した後の外観の様子・変化を、以下の評価基準に基づいて評価した。なお、離水や分離とは、上記定義のとおりである。
【0058】
[評価基準]
◎:離水や分離がなく、外観の変化はない
○:離水や分離はほとんどなく、外観の変化はほとんどない
×:離水や分離があり、外観に明らかな変化がある
【0059】
(4)評価結果
各種評価の結果も、下記表1、表2に示す。
実施例1-8の結果より、W1/O/W2型乳化組成物において、油相(O)に利用される疎水性物質、水相(W2)に添加される増粘多糖類は、それぞれ特定のものに限定されず、様々なものを利用できることが確認された。
また、水相(W1)、油相(O)、水相(W2)の配合量はそれぞれ特定の量に限定されず、様々な量で利用できることが確認された。
【0060】
そして、実施例1-8、及び比較例1-7の比較より明らかなとおり、当該乳化組成物において、水相(W2)にサイクロデキストリン、及び増粘多糖類を含めることによって、高い乳化安定性や加熱耐性が得られることが確認された。水相(W2)に、サイクロデキストリン及び増粘多糖類のいずれか、あるいはそれらに代えて、乳化剤を添加した場合には、このような効果は確認されなかった。
【0061】
【0062】
【0063】