(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014394
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60K 35/40 20240101AFI20240125BHJP
B60W 30/182 20200101ALI20240125BHJP
B60K 37/00 20240101ALI20240125BHJP
B60K 35/00 20240101ALI20240125BHJP
B60K 35/70 20240101ALI20240125BHJP
B62D 1/181 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B60K37/00 J
B60W30/182
B60K37/00 E
B60K35/00 Z
B60K37/00 B
B62D1/181
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117182
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】小林 慧
(72)【発明者】
【氏名】廣田 貴士
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友哉
【テーマコード(参考)】
3D030
3D241
3D344
【Fターム(参考)】
3D030DD62
3D241BA01
3D241BA29
3D241CD28
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D344AA07
3D344AA16
3D344AA19
3D344AB01
3D344AC01
3D344AC28
3D344AC30
3D344AD01
3D344AD05
3D344AD13
(57)【要約】
【課題】ドライバがインストルメントパネルの位置に対する満足感を得られるような車両を提供する。
【解決手段】車両100は、インストルメントパネル10を前後方向に移動させるアクチュエータ13と、操舵部20をインストルメントパネル10に対し相対移動させるアクチュエータ24と、アクチュエータ13,24を制御する制御部と、予めドライバに対応付けられた目標インストルメントパネル位置と目標操舵位置とを記憶する記憶部と、を備える。制御部は、ドライバにより運転操作の開始がされたと判定されると、インストルメントパネル10の位置および操舵部20の位置がそれぞれ記憶部に記憶された目標インストルメントパネル位置および目標操舵位置となるように、アクチュエータ13,24を制御する。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートの前方に、前後方向に移動可能に配置されたインストルメントパネルと、
前記インストルメントパネルを前後方向に移動させる第1アクチュエータと、
前記インストルメントパネルに、前記インストルメントパネルに対し相対移動可能に設けられた操舵部と、
前記操舵部を前記インストルメントパネルに対し相対移動させる第2アクチュエータと、
前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御する制御部と、
予めドライバに対応付けられた目標インストルメントパネル位置と目標操舵位置とを記憶する記憶部と、を備え、
前記制御部は、前記ドライバにより運転操作の開始が実行されたか否かを判定する判定部を有し、該判定部により運転操作の開始が実行されたと判定されると、前記インストルメントパネルの位置および前記操舵部の位置がそれぞれ前記記憶部に記憶された前記目標インストルメントパネル位置および前記目標操舵位置となるように、前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御することを特徴とする車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両において、
前記ドライバが運転操作を開始するときにオンされる電源スイッチを有し、
前記判定部は、前記電源スイッチがオンされると、運転操作の開始が実行されたと判定することを特徴とする車両。
【請求項3】
請求項2に記載の車両において、
前記車両の停車を検出する停車検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記電源スイッチのオフが検出されると、または、前記停車検出部により所定時間以上連続して停車が検出されると、前記インストルメントパネルの位置が、前記インストルメントパネルが最大に前方に移動した退避位置となり、かつ、前記操舵部の位置が、前記操舵部が前記インストルメントパネルに格納された格納位置となるように、前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータを制御することを特徴とする車両。
【請求項4】
請求項3に記載の車両において、
前記操舵部は、前記格納位置であるとき、前記インストルメントパネルに設けられた凹部に収容されることを特徴とする車両。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の車両において、
前記車両は、自動運転システムを有する自動運転車両であり、
走行中のドライバの周辺監視義務を含む第1自動運転レベルまたは前記周辺監視義務を含まない第2自動運転レベルに、自動運転時の運転レベルを切り換える運転レベル切換部をさらに備え、
前記制御部は、前記運転レベル切換部により前記第1自動運転レベルに切り換えられると、前記インストルメントパネルの位置が前記目標インストルメントパネル位置となり、前記操舵部の位置が前記目標操舵位置となるように、前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御する一方、前記運転レベル切換部により前記第2自動運転レベルに切り換えられると、前記インストルメントパネルの位置が前記目標インストルメントパネル位置となり、前記操舵部の位置が、前記操舵部が前記インストルメントパネルに格納された格納位置となるように、前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御することを特徴とする車両。
【請求項6】
請求項5に記載の車両において、
前記第2自動運転レベルは、自動運転で走行中に、前記自動運転システムから運転操作を要請される可能性のある条件付き第2自動運転レベルと、前記自動運転システムから運転操作を要請される可能性のない非条件付き第2自動運転レベルとを含み、
前記運転レベル切換部は、さらに前記条件付き第2自動運転レベルまたは前記非条件付き第2自動運転レベルに、自動運転時の運転レベルを切換可能であり、
前記制御部は、前記運転レベル切換部により前記非条件付き第2自動運転レベルに切り換えられると、前記条件付き第2自動運転レベルに切り換えられたときよりも前記インストルメントパネルが前方に位置するように前記第1アクチュエータを制御することを特徴とする車両。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載の車両において、
前記操舵部に設けられ、前記車両に対する所定の衝撃が検出されると、後方に向けて膨張展開するエアバッグ装置をさらに備え、
前記目標インストルメントパネル位置および前記目標操舵位置はそれぞれ第1目標インストルメントパネル位置および第1目標操舵位置であり、
前記記憶部には、予め前記ドライバに対応付けられた、前記エアバッグ装置が作動するときの前記インストルメントパネルの目標位置である第2目標インストルメントパネル位置と前記操舵部の目標位置である第2目標操舵位置とがさらに記憶され、
前記制御部は、前記所定の衝撃が検出されると、前記インストルメントパネルの位置が前記第2目標インストルメントパネル位置となり、前記操舵部の位置が前記第2目標操舵位置となるように、前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御することを特徴とする車両。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか1項に記載の車両において、
前記インストルメントパネルは、前記ドライバが操作可能な操作部を含む表示部を有し、
前記制御部は、さらに前記インストルメントパネルの位置と前記操舵部の位置とに応じて表示内容が変更されるように前記表示部を制御することを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動式のインストルメントパネルを有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用シートの前方に配置されたインストルメントパネルを、前後方向に移動可能に設けるようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1記載の装置では、ステアリング装置の非使用時に、インストルメントパネルが前方に移動した格納状態とされ、ステアリング装置の使用時に、インストルメントパネルが後方へ移動したトラックモード位置またはスポーツモード位置とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の装置では、インストルメントパネルの位置がドライバの体格等によらずに一律に設定されるため、ドライバがインストルメントパネルの位置に対する十分な満足感を得られない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様である車両は、車両用シートの前方に、前後方向に移動可能に配置されたインストルメントパネルと、インストルメントパネルを前後方向に移動させる第1アクチュエータと、インストルメントパネルに、インストルメントパネルに対し相対移動可能に設けられた操舵部と、操舵部をインストルメントパネルに対し相対移動させる第2アクチュエータと、第1アクチュエータと第2アクチュエータとを制御する制御部と、予めドライバに対応付けられた目標インストルメントパネル位置と目標操舵位置とを記憶する記憶部と、を備える。制御部は、ドライバにより運転操作の開始が実行されたか否かを判定する判定部を有し、判定部により運転操作の開始が実行されたと判定されると、インストルメントパネルの位置および操舵部の位置がそれぞれ記憶部に記憶された目標インストルメントパネル位置および目標操舵位置となるように、第1アクチュエータと第2アクチュエータとを制御する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ドライバがインストルメントパネルの位置に対する十分な満足感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】本発明の第1実施形態に係る車両の要部構成を示す側面図であり、インストルメントパネルが通常位置である状態を示す図。
【
図1B】本発明の第1実施形態に係る車両の要部構成を示す側面図であり、インストルメントパネルが退避位置である状態を示す図。
【
図2A】本発明の第1実施形態に係る車両の要部構成を示す平面図であり、インストルメントパネルが通常位置である状態を示す図。
【
図2B】本発明の第1実施形態に係る車両の要部構成を示す平面図であり、インストルメントパネルが退避位置である状態を示す図。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る車両に搭載される制御装置の要部構成を示すブロック図。
【
図4】
図2Aとは異なる通常位置の例を示す車両の平面図。
【
図5】
図3のCPUで実行される処理の一例を示すフローチャート。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る車両に搭載される制御装置の要部構成を示すブロック図。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る車両に特有であるインストルメントパネルの位置を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
-第1実施形態-
以下、
図1A~
図5を参照して本発明の第1実施形態について説明する。本発明の第1実施形態に係る車両100は、車両用シートに着座するドライバに面して配置された、前後方向に移動可能なインストルメントパネルを有する。車両100は、走行駆動源として内燃機関(エンジン)、走行モータ、あるいは内燃機関と走行モータの両方を有する。すなわち、車両100は、エンジン車両、電気自動車、またはハイブリッド車両である。
【0009】
図1A、
図1Bは、それぞれ本発明の第1実施形態に係る車両100の要部構成を示す側面図であり、
図2A,
図2Bは、それぞれ平面図である。なお、
図1A,
図2Aは、それぞれドライバが車両100の運転操作を行うときのインストルメントパネルの通常位置を示し、
図1B,
図2Bは、それぞれドライバ200が車両100の運転操作を行わないときのインストルメントパネルの退避位置を示す。以下では、便宜上、図示のように前後方向、左右方向および上下方向を定義し、この定義に従い各部の構成を説明する。
【0010】
図1A,
図2Aに示すように、車両100は、前側のシート102の前方に配置されたインストルメントパネル10を有する。インストルメントパネル10は、車両100の骨格を形成する車体フレーム101に支持される。より詳しくは、インストルメントパネル10は、左右方向に延在する可動フレーム11を有し、可動フレーム11の左右両端部が、車体フレーム101の左右の側壁に前後方向にわたって延設されたレール12にスライド可能に係合される。インストルメントパネル10は、モータなどのアクチュエータ13を含む駆動機構を介して、レール12に沿って前後方向に移動する。駆動機構は、例えばアクチュエータ13により回転駆動されるピニオンギヤと、レール12に沿って延在し、ピニオンギヤに噛合するラックギヤとを有する、ラックアンドピニオン式の駆動機構である。
【0011】
レール12の後方には、開閉可能なドア103が設けられる。ドライバ200がドア103を介して車両100に乗降するとき、
図1B,
図2Bに示すように、インストルメントパネル10の位置(インストルメントパネル位置)は、インストルメントパネル10が最大に前方に移動した退避位置となる。これによりドライバ200は車両100に容易に乗降することができる。ドライバ200が車両100に乗車すると、
図1A,
図2Aに示すように、インストルメントパネル10が後方に移動し、インストルメントパネル位置は通常位置となる。
【0012】
インストルメントパネル10の後面には、表示部15が設けられる。表示部15には、車速や燃料残量等の車両情報、車両100の現在地および現在地から目的地までの経路を示す地図情報、車両100の空調や音響等の設定情報などが表示される。表示部15は、例えばタッチパネルにより構成される。インストルメントパネル位置が通常位置であるとき、ドライバ200はタッチパネル(表示部15)を介して目的地の情報や各種設定情報などを入力することができる。
【0013】
インストルメントパネル10には、操舵部20が移動可能に支持される。操舵部20は、前後方向に延在し、前端部がインストルメントパネル10に回動可能に支持されるステアリングシャフト21と、ステアリングシャフト21の後端部に固定されたステアリングホイール22とを有する。ステアリングホイール22の回転操作(回転量)は回転センサ23により検出される。回転センサ23からの信号は、車両100の走行動作を制御するための走行制御用コントローラに入力される。すなわち、ステアリングホイール22の操作量に応じた旋回指令がバイワイヤで入力される。走行制御用コントローラは、回転センサ23からの信号に基づいて転舵機構(不図示)を駆動する。これによりステアリングホイール22の操作に応じて前輪104が左右方向に転舵される。
【0014】
ステアリングホイール22は、モータなどのアクチュエータ24の駆動により、ステアリングシャフト21に沿って、またはステアリングシャフト21と一体に、インストルメントパネル10に対し前後方向に移動可能に設けられる。これにより、インストルメントパネル位置が通常位置であるとき、ドライバ200にとっての最適位置にステアリングホイール22の位置(ステアリングホイール位置)を調整することができ、ドライバ200の運転操作が容易になる。なお、
図1A,
図2Aに示すようなインストルメントパネル10に対するステアリングホイール22の位置を、すなわちステアリングホイール22がインストルメントパネル後面から後方に突出した位置を、突出位置と呼ぶ。
【0015】
ステアリングホイール22には、車両100に対する所定の指令を入力するステアリング操作部が設けられる。ステアリング操作部は、スイッチやレバーによって構成され、追従走行やレーンキープ走行等の運転支援機能に関する指令、音響機器に関する指令等を入力する。変速機に対する変速指令を、ステアリング操作部により入力することもできる。
【0016】
図示は省略するが、ステアリングホイール22の近傍には、車両100の加減速を指令するアクセル入力部と、車両100の制動を指令するブレーキ入力部とが設けられる。これらアクセル入力部とブレーキ入力部とは、例えば前後方向に移動可能なレバー部材により構成することができる。レバー部材の操作量は、ポテンショメータ等のセンサにより検出され、センサからの信号が走行制御用コントローラに入力される。これにより、レバー部材の操作量に応じた加減速指令や制動指令が、バイワイヤで入力される。ステアリングホイール22の近傍にアクセル入力部とブレーキ入力部とを設けることで、アクセルペダルとブレーキペダルとが省略される。
【0017】
ステアリングホイール22の中央部には、エアバッグ装置としてのエアバッグモジュール30が内蔵される。エアバッグモジュール30はインフレータを有し、車両100に所定の衝撃が作用すると、エアバッグ制御用のコントローラからインフレータに制御信号が出力され、インフレータによりエアバッグが膨張展開される。車両100に作用する衝撃は、加速度センサにより検出される。
【0018】
インストルメントパネル10には、ステアリングホイール22の前面に凹部16が設けられる。
図1B,
図2Bに示すように、インストルメントパネル位置が退避位置であるとき、ステアリングホイール22は、アクチュエータ24の駆動によって前方に移動し、凹部16に収容される。例えばリンク機構(不図示)を介して凹部16に収容される。なお、
図1B,
図2Bに示すようなインストルメントパネル10に対するステアリングホイール位置を、格納位置と呼ぶ。ステアリングホイール位置が格納位置であるとき、ステアリングホイール22の後面はインストルメントパネル10の後面とほぼ同一面上に位置する。このため、ステアリングホイール22がインストルメントパネル10の表面から後方に突出することなく、ドライバ200の車両100への乗降が容易である。なお、ステアリングホイール格納用のアクチュエータを、ステアリングホイール22の位置調整用のアクチュエータ24とは別に設けてもよい。
【0019】
このように本実施形態の車両は、シート102に対するインストルメントパネル10の位置とステアリングホイール22の位置とがそれぞれ変更可能である。このため、シート102の位置を変更することなく、ドライバ200からインストルメントパネル10までの距離およびステアリングホイール22までの距離を変更することができる。したがって、シート位置を調整する位置調整機構は不要である。
図1A,
図1Bに示すように、車両100の車室内のフロア105には、シート102の位置に対応して足置部106が設けられる。足置部106は、ドライバ200の足裏が載置されるように後方にかけて下り勾配で傾斜して設けられる。これによりドライバ200の乗車姿勢を安定化できる。なお、足置部106をフロア105に沿って前後方向に移動可能に設けてもよい。
【0020】
車両100は、インストルメントパネル位置とステアリングホイール位置とを制御する制御装置を有する。
図3は、本発明の第1実施形態に係る車両100に搭載される制御装置50の要部構成を示すブロック図である。
図3に示すように、制御装置50は、制御部としてのコントローラ51を中心として構成され、コントローラ51にそれぞれ接続された電源スイッチ52と、車速センサ53と、加速度センサ54と、入力部55と、アクチュエータ13,24と、インフレータ31とを有する。
【0021】
電源スイッチ52は、ドライバが運転操作を開始するときにオン操作されるスイッチ、例えばイグニッションスイッチである。車速センサ53は、車両100の車速を検出する。加速度センサ54は、車両100の加速度、特にエアバッグ装置を作動させるような車両100に作用する衝撃を検出する。コントローラ51は、CPU51Aと、ROM,RAM等の記憶部51Bとを有する。
【0022】
入力部55は、移動指令部551と設定指令部552とを有する。移動指令部551は、ドライバによって操作される操作部材を有し、操作部材の操作に応じてアクチュエータ13,24がそれぞれ駆動される。すなわち、ドライバ200が初めて車両100に乗車するとき、
図1A,
図2Aに示すようなドライバ200に対応したインストルメントパネル位置(目標インストルメントパネル位置と呼ぶ)とステアリングホイール位置(目標ステアリングホイール位置と呼ぶ)は設定されていないため、これら目標位置を設定する必要がある。このとき、移動指令部551からの入力信号によって、つまりドライバ200の手動指令によって、アクチュエータ13,24が駆動され、インストルメントパネル位置とステアリングホイール位置とがそれぞれドライバ200の好みに応じた目標位置に調整される。
【0023】
設定指令部552は、ドライバによって操作される操作部材を有する。この操作部材は、移動指令部551を介してインストルメントパネル位置とステアリングホイール位置が目標位置に調整されたときに操作され、これにより、目標位置が記憶部51Bに記憶される。目標位置が一旦記憶部51Bに記憶されると、以降、ドライバ200が電源スイッチ52をオンする度に、記憶部51Bから目標位置が読み出される。これによりインストルメントパネル10およびステアリングホイール22が目標位置に移動する。
【0024】
複数のドライバ200が同一の車両100を運転する場合、記憶部51Bにはドライバ毎に目標位置(目標インストルメント位置および目標ステアリングホイール位置)が記憶される。例えばドライバに対応して複数の設定指令部552が設けられ、これによりドライバ毎に目標位置を記憶することができる。この場合、電源スイッチ52をオンした後、ドライバ200が、複数の設定指令部552のうち当該ドライバ200に対応した設定指令部552を操作することで、当該ドライバ200に対応した目標位置を記憶部51Bから読み出すことができる。
【0025】
入力部55の構成は上述したものに限らない。ドライバ200の識別IDが入力可能となるように入力部55を構成するとともに、ドライバ200の識別IDに対応付けて記憶部51Bに複数の目標位置を記憶するようにしてもよい。そして、ドライバ200が乗車後に入力部55を介して識別IDを入力することで、コントローラ51が記憶部51Bから目標位置を読み込むようにしてもよい。これにより複数のドライバ200が同一の車両100を運転する場合に、各ドライバ200に対応した目標位置の設定が容易である。
【0026】
ドライバ200が携帯端末を所持して車両100に乗車することを想定し、入力部55が携帯端末から識別IDを自動的に取得することで、コントローラ51が識別IDに対応した目標位置を記憶部51Bから読み出すようにしてもよい。この場合、入力部55は、携帯端末と通信可能な通信ユニットにより構成される。情報端末のメモリに、予めドライバの体格を示す情報(身長、体重等)を記憶し、ドライバ200の乗車時に、コントローラ51が携帯端末からこの情報を読み込んで、ドライバ200の体格に対応した目標位置を自動的に設定するようにしてもよい。
【0027】
CPU51Aは、電源スイッチ52のオンオフに応じてアクチュエータ13,24に制御信号を出力する。すなわち、電源スイッチ52がオフされると、CPU51Aは、
図1B,
図2Bに示すように、インストルメントパネル位置が退避位置となり、ステアリングホイール位置が格納位置となるようにアクチュエータ13,24に制御信号を出力する。これによりドライバ200の前方空間が拡大し、ドライバ200は電源スイッチ52をオフした後、ドア103を介して容易に降車することができる。
【0028】
ドライバ200が車両100に乗車した後、電源スイッチ52がオンされると、CPU51Aは、記憶部51Bに記憶された目標位置を読み込み、インストルメントパネル10とステアリングホイール22とがそれぞれ目標位置となるようにアクチュエータ13,24にそれぞれ制御信号を出力する。これにより
図1A,
図1Bに示すように、インストルメントパネル10が後方に移動して通常位置(目標インストルメントパネル位置)になるとともに、ステアリングホイール22が後方に突出して突出位置(目標ステアリングホイール位置)になる。
【0029】
目標位置は、ドライバ200による運転操作用目標位置であり、ユーザ毎に定められ、記憶部51Bに記憶される。このため、例えばドライバ200が小柄である場合、
図4に示すように、電源スイッチ52のオン後のインストルメントパネル位置(通常位置)は、
図2Aに示すものよりも後方になる。このようにドライバ200の体格に応じた目標位置にインストルメントパネル10とステアリングホイール22とが移動するので、ドライバ200は、シート位置を調整することなくステアリングホイール22を最適な状態で把持することができる。
【0030】
インストルメントパネル10とステアリングホイール22とが目標位置に移動した後、車速センサ53により車両100の所定時間以上の停車状態が検出されると、ドライバ200は運転操作を行う意図がないと推定される。このときCPU51Aは、アクチュエータ13,24に制御信号を出力し、
図1B,
図2Bに示すようにインストルメントパネル10を前方に移動するとともに、ステアリングホイール22を退避位置に移動する。これにより、電源スイッチ52がオフされなくても、インストルメントパネル10を自動的に前方に退避させることができる。なお、車載カメラにより車両100の周囲状況を監視し、信号待ちや渋滞の状態であるか否かを判定し、信号待ちや渋滞の状態でないことを条件として、インストルメントパネル10の前方への移動を許容するようにしてもよい。
【0031】
記憶部51Bには、予めドライバ200が運転操作するための運転操作用目標位置だけでなく、エアバッグ作動用の目標位置(エアバッグ用目標位置)も記憶される。このエアバッグ用目標位置は、運転操作用目標位置と同一であってもよく、異なってもよい。エアバッグ用目標位置を、ドライバ200の体格を考慮してドライバ毎に設定してもよく、ドライバ毎ではなく一律な値を設定してもよい。
【0032】
ドライバ200が車両100に乗車した後、加速度センサ54により車両100に対する所定値以上の衝撃が検出されると、インフレータによりエアバッグが膨張展開される。このとき、CPU51Aは、アクチュエータ13,24に制御信号を出力し、エアバッグモジュール30が内蔵されたステアリングホイール22を、エアバッグ用目標位置に移動する。これにより、ドライバ200に対し最適位置でエアバッグが展開するようになり、ドライバ200を衝撃から良好に保護することができる。
【0033】
図5は、予め記憶されたプログラムに従い、
図3のCPU51Aで実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、予めドライバ200に対応する運転操作用目標位置とエアバッグ用目標位置とが記憶部51Bに記憶された状態で開始され、所定時間毎に繰り返される。
【0034】
図5において、まず、ステップS1で、電源スイッチ52がオンされたか否かを判定する。ステップS1で否定されるとステップS2に進み、予め記憶部51Bに記憶されたインストルメントパネル10とステアリングホイール22のそれぞれの目標位置、すなわち
図1B,
図2Bに示すインストルメントパネル10の退避位置およびステアリングホイール22の格納位置を読み込み、ステップS5に進む。なお、この場合の目標位置を、便宜上、初期目標位置と呼ぶ。
【0035】
一方、ステップS1で肯定されるとステップS3に進み、予め記憶部51Bに記憶された運転操作用目標位置、すなわち
図1A,
図2Aまたは
図4に示すように、ドライバ200に対応した目標インストルメントパネル位置(通常位置)と目標ステアリングホイール位置(突出位置)とを読み込む。次いで、ステップS3で、車速センサ53からの信号に基づき、車両100が所定時間以上継続して停車しているか否かを判定する。ステップS4で肯定されるとステップS2に進み、否定されるとステップS5に進む。
【0036】
ステップS5では、加速度センサ54からの信号に基づき、車両100に対する所定値以上の衝撃が検出されたか否かを判定する。ステップS5で肯定されるとステップS6に進み、否定されるとステップS6をパスしてステップS7に進む。ステップS6では、予め記憶部51Bに記憶されたエアバッグ用目標位置を読み込む。
【0037】
ステップS1~ステップS6を通じて、インストルメントパネル10とステアリングホイール22の目標位置が設定される。すなわち、ステップS1で肯定された後、ステップS5で否定されると、運転操作用目標位置が、ステップS1で否定された後、ステップS5で否定されると、初期目標位置が、ステップS1で肯定または否定された後、ステップS5で肯定されると、エアバッグ用目標位置が、それぞれ設定される。ステップS7では、インストルメント位置とステアリングホイール位置とが、それぞれ設定された初期目標位置、運転操作用目標位置およびエアバッグ用目標位置のいずれかとなるように、アクチュエータ13,24に制御信号を出力し、処理を終了する。
【0038】
第1実施形態に係る車両100の動作をまとめると以下のようになる。ドライバ200が車両100に乗車する前は電源スイッチ52がオフである。したがって、
図1B,
図2Bに示すように、インストルメントパネル位置は退避位置に、ステアリングホイール位置は格納位置にあり(ステップS2→ステップS7)、ドライバ200は容易に車両100に乗車することができる。
【0039】
ドライバ200が車両100に乗車して電源スイッチ52がオンされると、
図1A,
図2Aまたは
図4に示すように、ドライバ200に対応した目標位置にインストルメントパネル10とステアリングホイール22とが移動する(ステップS3→ステップS7)。これによりインストルメントパネル10とステアリングホイール22とを、ドライバ200は操作しやすくなり、運転操作性が向上する。また、ドライバ200は、インストルメントパネル上の表示部15(タッチパネル)の操作も容易に行うことができる。
【0040】
ドライバ200は、車両100を降車するとき、電源スイッチ52をオフする。これにより、インストルメントパネル10およびステアリングホイール22がそれぞれ再び退避位置および格納位置に移動する(ステップS2→ステップS7)。このため、ドライバ200は車両100から容易に降車できる。停車時間が所定時間以上になったときは、ドライバが運転操作をやめる意図があると想定される。この場合には、電源スイッチ52がオフしなくても、電源スイッチ52がオフしたときと同様にインストルメントパネル10およびステアリングホイール22が退避位置および格納位置に移動する(ステップS4→ステップS2)。
【0041】
車両100に所定値以上の衝撃が作用したことが検出されると、インフレータに制御信号が出力され、エアバッグが膨張展開する。このとき、インストルメントパネル10とステアリングホイール22とはそれぞれドライバ200に対応したエアバッグ用目標位置に移動する(ステップS6→ステップS7)。これにより、ドライバ200に対し最適な位置でエアバッグが膨張展開するため、ドライバ200を良好に保護できる。なお、運転操作用目標位置とエアバッグ用目標位置とが同一位置に設定されるとき、インストルメントパネル10およびステアリングホイール22が運転操作用目標位置にあれば、インストルメントパネル位置およびステアリングホイール位置はそのままである。
【0042】
第1実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両100は、シート102の前方に、前後方向に移動可能に配置されたインストルメントパネル10と、インストルメントパネル10を前後方向に移動させるアクチュエータ13と、インストルメントパネル10に、インストルメントパネル10に対し前後方向に相対移動可能に設けられた操舵部20と、操舵部20(ステアリングホイール22)をインストルメントパネル10に対し前後方向に相対移動させるアクチュエータ24と、アクチュエータ13,24を制御するコントローラ51と、予めドライバ200に対応付けられた目標インストルメントパネル位置と目標ステアリングホイール位置とを記憶する記憶部51Bと、を備える(
図1A,
図2A,
図3)。コントローラ51は、ドライバ200により運転操作の開始が実行されたか否かを判定し、具体的には電源スイッチ52がオンされたか否かを判定し、電源スイッチ52がオンされたと判定されると、インストルメントパネル10の位置および操舵部20の位置がそれぞれ記憶部51Bに記憶された運転操作用目標位置となるように、アクチュエータ13,24を制御する(
図5)。これにより、電源スイッチ52のオンに伴い、ドライバ200の体格を考慮した目標位置にインストルメントパネル10とステアリングホイール22とを移動することができ、これらの位置に対するドライバ200の満足感を高めることができる。
【0043】
(2)電源スイッチ52は、ドライバ200が運転操作を開始するときにオンされるスイッチであり、この電源スイッチ52がオンされると、インストルメントパネル位置とステアリングホイール位置とがそれぞれ運転操作用目標位置となるようにアクチュエータ13,24が制御される。これによりドライバ200が運転操作を開始する最適なタイミングで、インストルメントパネル10とステアリングホイール22とを目標位置に移動することができる。
【0044】
(3)車両100は、車速センサ53をさらに備える(
図3)。コントローラ51は、電源スイッチ52のオフが検出されると、または、車速センサ53により所定時間以上連続して停車が検出されると、インストルメントパネル位置が、インストルメントパネル10が最大に前方に移動した退避位置となり、かつ、ステアリングホイール位置が、ステアリングホイール22がインストルメントパネル10に格納された格納位置となるように、アクチュエータ13,24を制御する(
図5)。これにより、ドライバ200が車両100から降車するとき、インストルメントパネル10とステアリングホイール22とが車両前方に退避するため、降車が容易である。
【0045】
(4)操舵部20は、格納位置であるとき、インストルメントパネル10に設けられた凹部16に収容される(
図2B)。これによりステアリングホイール22が後方に突出することなく、シート102の前方の空間を最大限に拡大できる。
【0046】
(5)車両100は、操舵部20に設けられ、車両100に対する所定の衝撃が検出されると、後方に向けて膨張展開するエアバッグを有するエアバッグモジュール30をさらに備える(
図2A)。記憶部51Bには、運転操作用目標位置の他、予めドライバ200に対応付けられた、エアバッグモジュール30が作動するときのインストルメントパネル10とステアリングホイール22の目標位置であるエアバッグ用目標位置がさらに記憶される。コントローラ51は、加速度センサ54により所定の衝撃が検出されると、インストルメントパネル10およびステアリングホイール22がエアバッグ用目標位置に移動するようにアクチュエータ13,24を制御する(
図5)。これによりドライバ200にとって最適な位置でエアバッグを膨張展開させることができる。
【0047】
-第2実施形態-
図6、
図7を参照して本発明の第2実施形態について説明する。なお、
図1A~
図5と同一の箇所には同一の符号を付し、以下では第1実施形態との相違点を主に説明する。第2実施形態では、車両100を、自動運転機能を有する車両、すなわち自動運転車両としており、この点が第1実施形態と異なる。このような運転支援技術を有する車両100においては、持続可能な輸送システムの発展に寄与するため、ステアリング位置とステアリングホイール位置とを最適に設定する必要がある。
【0048】
車両100は、自動運転システムを有する。自動運転システムは、カメラ、レーダ、ライダ等の車両100の外部状況を検出するセンサ(これらを総称して外部センサと呼ぶ)を備える。自動運転システムは、外部センサからの信号により車両100の周囲の障害物の位置および障害物までの距離を検出し、障害物との接触を回避するように目標軌道を生成するとともに、目標軌道に沿って車両100が目標位置に向けて走行するように車両走行用アクチュエータを制御する。
【0049】
図6は、本発明の第2実施形態に係る車両100に搭載される制御装置50の構成を示すブロック図である。
図6に示すように、制御装置50は、
図3の構成に加え、さらにコントローラ51にそれぞれ接続された運転レベル指令スイッチ56と、表示部15とを有する。
【0050】
運転レベル指令スイッチ56は、例えばインストルメントパネル10または操舵部20に設けられた、ドライバが手動操作可能なスイッチとして構成され、スイッチ操作に応じて自動運転レベルが指令される。自動運転レベルとは、どの程度まで運転を自動化するかの指標である。自動運転レベルは、例えばSAEインターナショナルにより定められたSAEJ3016に基づきレベル0~レベル5に分類される。具体的には、レベル0は、自動化なしの運転レベルであり、レベル0では、全ての運転操作を人間(ドライバ)が行う。
【0051】
レベル1は、加速、操舵および制動のいずれかの操作をシステムが行う運転レベル(運転支援)である。すなわち、レベル1では、特定の条件下で、アクセル、ブレーキ、ハンドルのいずれかの操作を自動運転システムが周囲の状況に応じて制御し、それ以外の全ての運転操作を人間が行う。レベル2は、加速、操舵および制動のうち複数の操作を一度にシステムが行う運転レベル(部分運転自動化)である。レベル2までは、人間に周囲の監視義務がある。
【0052】
レベル3は、加速、操作および制動の全てを自動運転システムが行い、自動運転システムが要請したときのみドライバが対応する運転レベル(条件付き自動運転)である。レベル3以降では、自動運転システムが周囲を監視し、人間に周囲の監視義務はない。レベル4は、特定の状況で、自動運転システムが全ての運転操作を行い、自動運転システムが運転を継続できない場合でも人間は交代しなくてもよい運転レベル(高度自動運転)である。したがって、レベル4以降では、非常時であっても自動運転システムが対応する。レベル5は、あらゆる状況で、自動運転システムが全ての運転操作を行う運転レベル(完全自動運転)である。
【0053】
運転レベル指令スイッチ56は、その操作に応じてレベル0~5のいずれかの自動運転レベルを指令する。これに代えて、自動運転システムが車両100の走行状況や周囲の状況等により自動運転が可能な条件が満たされているか否かを判定し、判定結果に応じて運転レベル指令スイッチ56を自動で切り換え、レベル0~5のいずれかを指令するように構成することもできる。
【0054】
CPU51Aは、運転レベル指令スイッチ56により指令された自動運転レベルに応じてインストルメントパネル位置およびステアリングホイール位置を変更する。具体的には、レベル2以下の自動運転レベルが指令されると、
図2A,
図4に示すように、インストルメントパネル10およびステアリングホイール22を、それぞれドライバ200の体格に応じた通常位置および突出位置に移動するようにアクチュエータ13,24に制御信号を出力する。すなわち、この場合には、ドライバ200が、走行中にステアリングホイール22とアクセル入力部とブレーキ入力部とを操作する、または操作する可能性が高いため、インストルメントパネル10およびステアリングホイール22を、ドライバ200が操作しやすい位置に移動する。
【0055】
運転レベル指令スイッチ56によりレベル4以上の自動運転レベルが指令されると、CPU51Aは、
図2Bに示すように、インストルメントパネル10およびステアリングホイール22を、それぞれ退避位置および格納位置に移動するようにアクチュエータ13,24に制御信号を出力する。すなわち、この場合には、ドライバ200が、運転操作を行う必要がないため、インストルメントパネル10およびステアリングホイール22を、最前部に移動する。これによりドライバ200の周囲のスペースが拡大し、快適性が高まる。
【0056】
一方、運転レベル指令スイッチ56によりレベル3の自動運転レベルが指令されると、CPU51Aは、
図7に示すように、インストルメントパネル10およびステアリングホイール22を、それぞれ通常位置および格納位置に移動するようにアクチュエータ13,24に制御信号を出力する。すなわち、この場合には、自動運転システムが要請したとき、ドライバ200が即座に運転操作を行えるようにする必要がある。このため、インストルメントパネル位置は通常位置であるが、ステアリングホイール位置は格納位置とする。なお、インストルメントパネル位置を通常位置とするのではなく、通常位置よりも前方かつ退避位置よりも後方に位置させてもよい。
【0057】
さらにCPU51Aは、インストルメントパネル位置およびステアリングホイール位置に応じて表示部15(タッチパネル)の表示態様を変更するように表示部15に制御信号を出力する。具体的には、インストルメントパネル位置が通常位置でステアリングホイール位置が突出位置であるとき、つまり、自動運転レベルがレベル2以下であるときには、インストルメントパネル位置が通常位置でステアリングホイール位置が格納位置であるとき、つまり、自動運転レベルがレベル3のときよりも、表示部15に表示する情報を少なくする。
【0058】
これは、ステアリングホイール位置が突出位置であるときには、タッチパネルを操作することなく、ステアリングホイール22に設けられたスイッチ(ステアリングスイッチ)の操作によりドライバは指令を入力することができるためである。したがって、自動運連レベルがレベル2以下であるとき、ステアリングスイッチによって指令できる情報は、表示部15に表示しない。なお、
図7の表示モードは、タッチパネルの操作によりドライバから指令が入力されるタッチパネルモードであり、
図2Aの表示モードは、タッチパネルとステアリングスイッチとから指令が入力される限定されたタッチパネルモードである。
【0059】
一方、インストルメントパネル位置が退避位置でステアリングホイール位置が格納位置であるとき、つまり、自動運転レベルがレベル4以上であるときには、表示部15がドライバ200から離れているため(
図2B)、タッチパネルは操作されない。この場合には、CPUは自動運転レベルがレベル3以下のときと異なり、最小限の車両走行情報を表示するように、あるいは車両走行情報以外の情報を表示するように、表示部15を制御する。このような表示モードを鑑賞モードと呼ぶ。
【0060】
なお、鑑賞モードにおける表示部15の表示内容が、ドライバ200からの指令によって変更可能となるように、シート102に、コントローラ51に接続された操作部(タッチパネルなど)を設け、操作部の操作によって表示内容を変更するようにしてもよい。ドライバ200が所有する携帯端末とコントローラ51とを通信可能に接続するとともに、携帯端末から送信された指令によって表示内容を変更するようにしてもよい。鑑賞モードにおいてインストルメントパネル10が退避位置まで移動するのではなく、ドライバ200にとって表示部15を見やすい位置(例えば
図2Bと
図7の中間位置)に、インストルメントパネル10が移動するようにしてもよい。
【0061】
第2実施形態によれば、第1実施形態の作用効果に加え、さらに以下のような作用効果を奏することができる。
(1)第2実施形態に係る車両100は、自動運転システムを有する自動運転車両であり、走行中のドライバの周辺監視義務を含むレベル2以下または周辺監視義務を含まないレベル3以上に、自動運転レベルを切り換える運転レベル指令スイッチ56をさらに備える(
図6)。CPU51Aは、運転レベル指令スイッチ56によりレベル2以下の自動運転レベルに切り換えられると、インストルメントパネル位置およびステアリングホイール位置がそれぞれドライバ200の体格に応じた運転操作用目標位置(
図2A,
図4)となるようにアクチュエータ13,24を制御する。一方、運転レベル指令スイッチ56によりレベル3以上の自動運転レベルに切り換えられると、インストルメントパネル位置がドライバ200の体格に応じた目標インストルメントパネル位置となり、ステアリングホイール位置が格納位置となるように、アクチュエータ13,24を制御する。このようにドライバ200がステアリングホイール22を操作する必要がない、自動運転レベルがレベル3以上のときに、ステアリングホイール22を格納位置に移動させることで、ドライバ200の前方空間が拡大し、ドライバ200の快適性が高まる。
【0062】
(2)運転レベル指令スイッチ56は、自動運転で走行中に、自動運転システムから運転操作を要請される可能性のあるレベル3と、自動運転システムから運転操作を要請される可能性のないレベル4以上とに、自動運転レベルを切換可能である。CPU51Aは、運転レベル指令スイッチ56によりレベル4以上の自動運転レベルに切り換えられると、レベル3の自動運レベルに切り換えられたときよりも、インストルメントパネル10が前方に位置するようにアクチュエータ13を制御する(
図2B,
図7)。これにより、レベル4以上においてドライバ200の前方空間がさらに拡大し、ドライバ200の快適性が一層高まる。
【0063】
(3)インストルメントパネル10は、ドライバが操作可能なタッチパネルを含む表示部15を有する(
図2A,
図2B,
図4,
図7)。CPU51Aは、さらにインストルメントパネル位置とステアリングホイール位置とに応じて表示内容が変更されるように表示部15を制御する。これにより、ドライバ200によるタッチパネルの操作の容易性(タッチパネルまでの距離)やタッチパネルへの情報表示の必要性を考慮してタッチパネルに効率よく情報を表示することができる。
【0064】
上記実施形態は種々の形態に変形することができる。以下、いくつかの変形例について説明する。上記実施形態では、インストルメントパネル10の後面に、ドライバ200が操作可能なタッチパネルを含む表示部15を設けるようにしたが、操作部をタッチパネル以外によって構成してもよく、車両用シートの前方に配置されるインストルメントパネルの構成は上述したものに限らない。上記実施形態では、インストルメントパネル10と一体の可動フレーム11の左右両端部を、前後方向に延在する左右のレール12に沿ってスライド可能に係合するとともに、モータなどのアクチュエータ13によってインストルメントパネル10を前後方向に駆動するようにしたが、第1アクチュエータの構成は上述したものに限らない。第1アクチュエータはモータではなく、シリンダであってもよい。
【0065】
上記実施形態では、ステアリングシャフト21の後端部に設けられるステアリングホイール22により操舵部20を構成したが、操舵部の構成は上述したものに限らない。上記実施形態では、モータなどのアクチュエータ24により、ステアリングシャフト21に沿ってまたはステアリングシャフト21と一体にステアリングホイール22が移動可能となるように構成したが、インストルメントパネルに対し操舵部を相対移動させるのであれば、第2アクチュエータの構成はいかなるものでもよい。操舵部をインストルメントパネルに対し前後方向以外に相対移動して、インストルメントパネル10の凹部に格納するようにしてもよい。
【0066】
上記実施形態では、電源スイッチ52がオンされると、CPU51Aが、運転操作の開始が実行されたと判定するようにしたが、ドライバにより運転操作の開始が実行されたか否かを判定する判定部の構成はこれに限らない。例えばシートベルトの装着時にオンするシートベルトスイッチを設け、シートベルトスイッチがオンされると、運転操作の開始が実行されたと判定するようにしてもよい。上記実施形態では、操舵部20が格納位置であるとき、操舵部20をインストルメントパネル10の凹部16に格納するようにしたが、格納位置において凹部以外に格納するようにしてもよい。上記実施形態では、車速センサ53(停車検出部)により所定時間以上継続して停車が検出されると、インストルメントパネル10およびステアリングホイール22を、それぞれ退避位置および格納位置に移動するようにしたが、電源スイッチ52がオフされるまでこの移動を行わないようにしてもよい。
【0067】
上記実施形態では、電源スイッチ52のオンにより、インストルメントパネル10およびステアリングホイール22を、それぞれ目標インストルメントパネル位置(第1目標インストルメントパネル位置)および目標ステアリングホイール位置(第1目標操舵位置)に移動するようにした。また、加速度センサ54により所定の衝撃が検出されると、インストルメントパネル10およびステアリングホイール22を、それぞれ目標インストルメントパネル位置(第2目標インストルメントパネル位置)および目標ステアリングホイール位置(第2目標操舵位置)に移動するようにした。ここで、第1目標インストルメントパネル位置と第2目標インストルメントパネル位置および第1目標操舵位置と第2目標操舵位置の位置関係に関し、これらは互いに同一位置であってもよく、いずれか一方(例えば第1目標インストルメントパネル位置)がいずれか他方(例えば第2目標インストルメントパネル位置)よりも前方または後方に位置してもよい。
【0068】
上記実施形態では、運転レベル指令スイッチ56によりレベル0~5の範囲で自動運転レベルを切り換えるようにしたが、走行中のドライバの周辺監視義務を含むレベル2以下の自動運転レベル(第1自動運転レベル)または周辺監視義務を含まないレベル3以上の自動運転レベル(第2自動運転レベル)に、自動運転時の運転レベルを切り換えるように運転レベル切換部を構成してもよい。あるいは、自動運転で走行中に、前記自動運転システムから運転操作を要請される可能性のあるレベル3の自動運転レベル(条件付き第2自動運転レベル)と、自動運転システムから運転操作を要請される可能性のないレベル4以上の自動運転レベル(非条件付き第2自動運転レベル)とに切り換え可能に、運転レベル切換部を構成してもよい。上記実施形態では、自動運転レベルがレベル3に切り換えられると、CPU51Aが、インストルメントパネル10を通常位置(目標インストルメントパネル位置)に移動するようにしたが、通常位置よりも前方に移動してもよい。上記実施形態では、自動運転レベルがレベル4以上に切り換えられると、CPU51Aが、インストルメントパネル10を退避位置(最前部)に移動するようにしたが、退避位置よりも後方に移動するようにしてもよい。
【0069】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 インストルメントパネル、13 アクチュエータ、15 表示部、16 凹部、20 操舵部、22 ステアリングホイール、24 アクチュエータ、30 エアバッグモジュール、51 コントローラ、51A CPU、51B 記憶部、52 電源スイッチ、53 車速センサ、56 運転レベル指令スイッチ、100 車両