(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143944
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】富山産の煎り大豆に糖液を加えながらみそ、みりん、白砂糖、キビ、片栗等の衣用粉を付着させて衣掛した豆菓子とその製造方法。
(51)【国際特許分類】
A23G 3/48 20060101AFI20241003BHJP
A23G 3/36 20060101ALI20241003BHJP
A23L 11/00 20210101ALI20241003BHJP
【FI】
A23G3/48
A23G3/36
A23L11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023066741
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】522201196
【氏名又は名称】株式会社食養の杜とやま
(72)【発明者】
【氏名】江尻 昭
【テーマコード(参考)】
4B014
4B020
【Fターム(参考)】
4B014GG01
4B014GG06
4B014GG17
4B014GK03
4B014GL10
4B014GP02
4B014GP14
4B014GP24
4B014GP27
4B020LB22
4B020LB24
4B020LC05
4B020LG01
4B020LK05
4B020LK09
4B020LK20
4B020LP03
(57)【要約】
【課題】 大豆由来粉を生地原料に含む大豆菓子類を製造するにあたり、好ましくない大豆臭が抑制され、且つ良好な風味を有する大豆菓子類を提供する。
【解決手段】大豆由来粉を配合して生地を調製する工程を含む大豆菓子の製造方法において、攪拌機付きの回転釜の中に、みそ、みりん、白砂糖、キビ、片栗を規定量投入し、攪拌し、180℃以上の高温に所定時間(8~12分)加熱し、泡立ちする時点で煎り大豆を投入し、ヘラを回転させながら、煎り大豆にみそ、みりん、白砂糖、キビ、片栗を絡ませ、約5分間、良くかき混ぜた後、きな粉と、上記煎り大豆を良く混ぜ、該煎り大豆を一晩寝かせることを特徴とする大豆菓子の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆由来粉を配合して生地を調製する工程を含む焼き菓子の製造方法であって、攪拌機付きの回転釜の中に、みそ、みりん、白砂糖、キビ、片栗を規定量投入し、攪拌し、180℃以上の高温に所定時間(8~12分)加熱し、泡立ちする時点で煎り大豆を投入し、ヘラを回転させながら、煎り大豆にみそ、みりん、白砂糖、キビ、片栗を絡ませ、約5分間、良くかき混ぜた後、きな粉と、上記煎り大豆を良く混ぜ、該煎り大豆を一晩寝かせることを特徴とする大豆菓子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豆菓子の製造方法に関し、更に詳しくは、大豆等の塊状食品が配された豆菓子の衣の食感をソフトなものとした豆菓子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から豆を使ったお菓子の一つとして豆菓子が知られている。
大豆は高タンパク質で栄養的価値を有する食材であり、更にイソフラボンや多くの機能性成分を含有するため、多くの食品分野での利用が求められる食材である。
しかし、大豆や大豆粉等を食品原料として利用する場合、好ましくない大豆臭が強く、その利用は限られた食品分野に限定される。
【0003】
近年の健康志向に関する消費者ニーズの観点から、穀粉として大豆粉を使用する菓子類の開発が期待される。しかし、菓子類では生地の配合原料等が風味に大きな影響を与える傾向にあるため、大豆粉等を穀粉の原料として生地に配合し且つ良好な風味を有する菓子類を提供することは困難となる。そして、従来は、必要ならば、糖蜜や醤油等の調味付けを行って乾燥することにより製造されていた。
【0004】
従来の豆を芯にして衣を被せた豆菓子の製造方法は、小麦粉,寒梅粉そして小麦粉の順でそれぞれ層状に被覆させるものが知られている。ところが、このような製造方法で作られた豆菓子は味が単調で、しかも風味が乏しく、さらに、栄養価が不足していた。
【0005】
そこで、これらの欠点を解消するために、小麦粉や寒梅粉には殆んど含まれていないカルシウム,鉄及び植物性蛋白質等を多く含有している大豆粉を衣に使用することが考えられたが、大豆粉を豆の表面に直接付着させると豆と大豆粉の密着性が悪くて、焙煎時に剥げ落ち易い欠点があり、これを解決するために、生豆の表面を砂糖水で湿らせて小麦粉を被覆し、その表面に砂糖水を湿らせて寒梅粉を被覆し、さらにその表面を砂糖水で湿らせて最表面に小麦粉を被覆させてから焙煎することが行なわれていた。
【0006】
特許文献1には、きな粉を含む調味液を大豆スナック菓子の表面に付着させる技術が開示されている。しかし、当該技術では、加熱乾燥を行って製造した「後」のサクサク感を有するスナック菓子に対して、その「表面」に調味液を振りかけたスナック菓子が記載されているのみで(特許文献1 段落0006、0009、0011、0012等)、菓子の雑味を単に調味液にてマスクしているに過ぎない内容と認められる。また、特許文献1に係る実施例の結果は、加熱乾燥後のスナック菓子に調味液を振りかけただけの菓子において、菓子全体がきな粉本来の風味になる結果を示しているに過ぎない(特許文献1 段落0022等)。
これらの点から明らかなように、特許文献1の記載からは、焼成前の生地にきな粉以外の大豆由来粉ときな粉を一緒に混合して生地を調製し、これを焼成した菓子を製造した場合において、きな粉本来の風味とは異なる洋菓子系の良好な風味が実現されることを把握することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の事情に鑑みてなされたものでありその課題とする処は、大豆由来粉を生地原料に含む菓子類を製造するにあたり、好ましくない大豆臭が抑制され、且つケーキ類又はクッキー類等に適した良好な風味を有する菓子類を提供することを目的とする。
そこで、本発明は、このような従来の豆菓子の製造方法は、繰り返す工程が極めて多くて煩雑であり、しかも各被覆層を均一に形成し難くて、衣に斑ができ易い。また、得られた豆菓子は栄養価の点は兎も角、味覚の点で十分に満足できないものであった。それ故に本発明の目的は、このような課題をすべて解決できる豆菓子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記状況に鑑みて検討を重ねたところ、大豆由来粉を生地に配合して菓子類を製造するにあたり、その生地を調製する際にきな粉以外のみそ、みりん、白砂糖、キビ、片栗等を配合して混練したところ、驚くべきことに焼成後の菓子における好ましくない大豆臭が抑制され、且つ菓子類に適した風味が良好な大豆菓子が製造できることを見出した。
本発明者は、この豆菓子の製造方法としては以下のようなものにした。
そのフローチャートを
図1に示す。
【0010】
即ち、本発明は、
(1)まず、攪拌機付きの回転釜の中に、みそ、みりん、白砂糖、キビ、片栗を規定量投入し、混ぜる(撹拌する)。
(2)次に、十分に攪拌出来たら、ガスバーナーに火を付け煮る。
(3)180℃以上の高温に所定時間(5~6分)加熱する。
泡立ちする時点で煎り大豆を投入する。
この工程は、ガスの直火を使っているが、春夏秋冬の季節によってや、乾燥した日、湿気の多い日によっても、混ざり方が全然違うので、何分混ぜたら出来上がりと言う訳には行かない。例えば、一日の中でも、朝一番と午後からでも微妙に釜の温度が変化するので、毎回、緊張を要する工程である。
(4)攪拌機のヘラを回転させながら、煎り大豆にみそ、みりん、白砂糖、キビ、片栗を絡ませる。約5分間、良くかき混ぜた後、攪拌機を止める。
(5)回転釜のガスを止め、攪拌機を取り外し、回転釜を傾けて、予め、きな粉粉末を入れた容器(番重)に移す。
(6)そして、きな粉と、煎り大豆を良く混ぜる。
なお、この工程で、豆の1粒、1粒に均一にきな粉がのって行かないと、出来上がりの大きさが不揃いになったり、柔らかすぎで、割れてしまったり、工程の中で、一番、技能を必要とする工程であると言える。
(7)この状態で、一晩寝かせる。
(8)ザルで余分なきな粉を取りさる。
(9)きな粉豆の選別を行う。(目的=不揃いのものを排除する。)
(10)三方シール自動梱包機のホッパーに、きな粉豆を入れる。
(11)きな粉豆が、三方シールされた袋入り状態になる。<商品の完成>
【発明の効果】
【0011】
本発明の大豆菓子の製造方法によれば、その1品、1品は、煎り大豆と味噌等の調味料との組み合わせによっての製品の出来栄えが左右されるので、それらに、様々な味付けをして、製造者によって、特徴あるオリジナルな豆菓子に仕上げることが出来る。
味付けには、定番のきな粉豆から、ごま、しょうがなど和テイストな味付けもできる。
また、唐辛子、黒こしょう、七味などの香辛料テイストにすることもできる。
そして、コーヒー、紅茶、メープル、ココア、キャラメルなど洋テイストとの組み合わせなど、様々なバリエーションで、美味しい豆菓子に仕上げることが出来る。
豆菓子生地内の水分が微細な気泡となって蒸発するために出来上がった豆菓子がとてもきめ細かな状態となり、従来の製法では得られない極めてソフトでサクサクした食感を有する豆菓子を提供することができる。
【0012】
ここで、きな粉はそれ自体が菓子的な独特な風味を有する大豆粉の一種であるが、きな粉以外のみそ、みりん、白砂糖、キビ、片栗等ときな粉の両方を配合した生地を焼成した場合の菓子では、きな粉を配合しての焼成により大豆臭が抑制され、且つ、きな粉本来の風味とは異なる菓子の良好な風味が実現可能であった。当業者にとってもこのような風味の達成は予想できないものであった。
【0013】
また、きな粉はそれ自体が粉っぽさを増大させる傾向がある食品素材であるため、菓子類の生地にきな粉を配合する手段を着想することは、当該創作を阻害する方向の技術常識下での着想であったと認められる。
【0014】
更に、本発明の好適態様に関して検討を重ねたところ、前記生地の調製の際に更に冷水膨潤度が高い片栗(澱粉)を生地に配合する態様においては、適度な水分保持が可能な菓子類が製造できることが判明した。当該態様では、口どけが良く且つ後残りがしない良好な食感の焼き菓子類の製造が可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】 本発明に係る大豆菓子の製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【
図2】 本発明に係る大豆菓子を加工する撹拌機付きの回転釜の実態図である。
【
図3】 本発明係る大豆菓の加熱および攪拌工程を示す実態図である。
【
図4】 本発明に係る加工された大豆菓子にきな粉を絡ませる工程の実態図である。
【
図5】 本発明のきな粉豆の製品の選別工程と製品の完成図である。
【
図6】 本発明係る大豆菓子に絡ませるきな粉粉末の100グラム当たりの栄養価を示す数表である。
【
図7】 本発明の完成品のきな粉豆の成分の配分を示す重量比率を示す数表である。
【
図8】 本発明の完成品のきな粉豆に含まれる成分割合を示した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る大豆菓子の製造方法の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る大豆菓子の製造方法の一実施形態におけるフローチャートである。
【0017】
<豆菓子生地>
まず、攪拌機付きの回転釜の中に、みそ、みりん、白砂糖、キビ、片栗を規定量投入し、混ぜる(撹拌する)。
【0018】
<焙煎>
そして、次に、十分に攪拌出来たら、ガスバーナーに火を付け煮る。
180℃の高温に所定時間(5~6分)加熱する。泡立ちする時点で煎り大豆を投入する。この工程は、ガスの直火を使っているが、春夏秋冬の季節によって、乾燥した日、湿気の多い日によっても、混ざり方が全然違うので、何分混ぜたら出来上がりと言う訳には行かない。例えば、一日の中でも、朝一番と午後からでも微妙に釜の温度が変化するので、毎回、緊張を要する工程である。
【0019】
<攪拌>
攪拌機のヘラを回転させながら、煎り大豆にみそ、みりん、白砂糖、キビ、片栗を絡ませる。約5分間、良くかき混ぜた後、攪拌機を止める。
回転釜のガスを止め、攪拌機を取り外し、回転釜を傾けて、予め、きな粉粉末を入れた容器(番重)に移す。そして、きな粉と、煎り大豆を良く混ぜる。
なお、この工程で、豆の1粒、1粒に均一にきな粉がのって行かないと、出来上がりの大きさが不揃いになったり、柔らかすぎで、割れてしまったり、工程の中で、一番、技能を必要とする工程であると言える。
【0020】
<寝かせ>
この状態で、一晩寝かせる。
【0021】
<製品の完成>
ザルで余分なきな粉を取りさる。
きな粉豆の選別を行う。目的=不揃いのものを排除する。
三方シール自動梱包機のホッパーに、きな粉豆を入れる。
最終的に、きな粉豆が、三方シールされた袋入り状態になる。 <商品の完成>
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、日本の伝統食材である大豆が「畑の肉」といわれるほど高い栄養があり、
毎日少しずつ食べることで、生活習慣病の予防をはじめ、さまざまな健康効果が期待できる。
(1)大豆にはビタミンC以外の栄養素が含まれているため、生活習慣病の予防に役立つ。
(2)大豆タンパク質のグリニシンは、良質のタンパク質、またアミノ酸価は肉や魚のタンパク質に匹敵するほどで、血や肉になりやすく、コレステロールや中性脂肪も低下させる力があるといわれている。
(3)大豆イソフラボンは、女性ホルモン類似の作用があり、骨から血中へのカルシウムの溶出を抑え、骨粗しょう症の予防にも役立つといわれている。
(4)カルシウムと鉄分が豊富であり、カルシウムは骨や歯の形成を促し、鉄は貧血防止作用があるといわれている。
(5)大豆オリゴ糖は食物繊維として働き、便通を整えてくれる力があるといわれている。
(6)セルロースやリグニンなどの食物繊維も豊富で、コレステロールの低下作用や整腸作用もあるといわれている。
【0023】
さらに、大豆菓子は、タンパク質、糖質、リノール酸を豊富に含んだ脂質、カルシウム、鉄、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン等の豊富なビタミン類等を多く含む完全食品といわれている。
また、大豆は、ダイエット効果、肥満予防効果、血漿コレステロール濃度調節効果、解毒(黒大豆)等の医薬的効果を発揮することも知られている。
とりわけ、大豆に含まれるイソフラボン、コエンザイムQ10等は、更年期障害、骨粗鬆症及び生理不順等の改善、癌(特に、乳癌、前立腺癌)の予防、血圧及び血清コレステロールの低下、並びに美白効果を有するとされ、近年、その効果が注目されている。
【0024】
本発明者等は、今般、大豆蛋白食品に、きな粉を付着させた大豆スナック菓子によれば、大豆自体の不快な臭い、風味を感じることなく、サクサク感があり、食感が良く、手軽に大豆栄養成分を摂取することができる、嗜好品を提供することができる、との知見を得た。
従って、本発明は、係る知見に基づいてなされたものである。
【0025】