(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143955
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】盗撮防止装置
(51)【国際特許分類】
E04H 1/12 20060101AFI20241003BHJP
B05B 12/12 20060101ALI20241003BHJP
A47K 17/00 20060101ALI20241003BHJP
E03D 9/00 20060101ALI20241003BHJP
B05B 17/06 20060101ALN20241003BHJP
G08B 15/02 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
E04H1/12 B
B05B12/12
A47K17/00
E03D9/00 Z
B05B17/06
G08B15/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079354
(22)【出願日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】U 2023000942
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 生太
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】比良 祥子
(72)【発明者】
【氏名】小野 智司
【テーマコード(参考)】
2D037
2D038
4D074
4F035
5C084
【Fターム(参考)】
2D037EA03
2D037EB00
2D037EB03
2D038BC03
2D038KA02
4D074AA10
4D074BB06
4D074DD70
4F035AA04
4F035BB07
5C084AA07
5C084AA13
5C084BB40
5C084EE01
5C084FF26
(57)【要約】
【課題】利用者が安心感をもってプライベートルームを利用することができる盗撮防止装置を提供する。
【解決手段】実施形態に係る盗撮防止装置100において、煙霧供給装置130は、利用者によって、プライベートルームとしてのトイレットルーム900が利用される際に、トイレットルーム900に煙霧800を供給する。開始制御部141は、トイレットルーム900への利用者の進入の検知、又は利用者による操作に基づいて、煙霧供給装置130に煙霧800の供給を開始させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者によってプライベートルームが利用される際に、前記プライベートルームに煙霧を供給する煙霧供給装置、
を備える、盗撮防止装置。
【請求項2】
前記プライベートルームへの前記利用者の進入の検知、又は前記利用者による操作に基づいて、前記煙霧供給装置に前記煙霧の供給を開始させる開始制御部、
をさらに備える、請求項1に記載の盗撮防止装置。
【請求項3】
前記プライベートルームからの前記利用者の退出の検知、前記利用者による操作、又は前記煙霧の供給が開始された時点からの予め定められた時間の経過に基づいて、前記煙霧供給装置に前記煙霧の供給を停止させる停止制御部、
をさらに備える、請求項1に記載の盗撮防止装置。
【請求項4】
前記プライベートルームを画定しているプライベートルーム画定部材に、前記プライベートルームを換気する換気装置が備え付けられており、
前記停止制御部によって前記煙霧の供給が停止された後は、前記換気装置によって前記プライベートルームから前記煙霧が除去される、
請求項3に記載の盗撮防止装置。
【請求項5】
前記停止制御部によって前記煙霧の供給が停止された後に、前記換気装置による換気を促進させる換気制御部、
をさらに備える、請求項4に記載の盗撮防止装置。
【請求項6】
前記プライベートルームを画定しているプライベートルーム画定部材の、前記煙霧に覆われうる位置に、前記利用者によって取り扱われる設備が備え付けられており、
前記利用者によって前記プライベートルームが利用される際に、前記設備の位置を可視光によって指し示す指示装置、
をさらに備える、請求項1から5のいずれか1項に記載の盗撮防止装置。
【請求項7】
前記利用者によって前記プライベートルームが利用される際に、前記プライベートルームに拡散している前記煙霧に入射する可視光による演出を行う光演出装置、
をさらに備える、請求項1から5のいずれか1項に記載の盗撮防止装置。
【請求項8】
前記利用者によって前記プライベートルームが利用される際に、音による演出を行う音演出装置、
をさらに備える、請求項1から5のいずれか1項に記載の盗撮防止装置。
【請求項9】
前記利用者によって前記プライベートルームが利用される際に、前記盗撮防止装置の機能に関する音声ガイダンスを出力する音声ガイダンス装置、
をさらに備える、請求項1から5のいずれか1項に記載の盗撮防止装置。
【請求項10】
利用者に携帯され、前記利用者がプライベートルームを利用する際に、前記プライベートルームを利用中の前記利用者が撮影されることを妨げる量の煙霧を、前記プライベートルームに供給する、盗撮防止装置。
【請求項11】
前記煙霧に、芳香成分、消臭成分、抗菌成分、及び除菌成分から選択される少なくとも1つの成分が含まれている、
請求項1から5のいずれか1項又は請求項10に記載の盗撮防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影機器を用いた盗撮を防止する盗撮防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されているように、エスカレータの利用者が乗る部分に赤外パルス光を照射する盗撮防止装置が知られている。この盗撮防止装置は、撮影機器で撮影される画像の画質を赤外パルス光で劣化させることにより、盗撮の防止を図ろうとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トイレットルーム、シャワールームといった、人目に触れずに利用されるプライベートルームにおいても、盗撮の被害が発生している。なお、本明細書において“ルーム”とは、空間を指す概念とする。
【0005】
本発明の目的は、利用者が安心感をもってプライベートルームを利用することができる盗撮防止装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点に係る盗撮防止装置は、
利用者によってプライベートルームが利用される際に、前記プライベートルームに煙霧を供給する煙霧供給装置、
を備える。
【0007】
前記プライベートルームへの前記利用者の進入の検知、又は前記利用者による操作に基づいて、前記煙霧供給装置に前記煙霧の供給を開始させる開始制御部、
をさらに備えてもよい。
【0008】
前記プライベートルームからの前記利用者の退出の検知、前記利用者による操作、又は前記煙霧の供給が開始された時点からの予め定められた時間の経過に基づいて、前記煙霧供給装置に前記煙霧の供給を停止させる停止制御部、
をさらに備えてもよい。
【0009】
前記プライベートルームを画定しているプライベートルーム画定部材に、前記プライベートルームを換気する換気装置が備え付けられており、
前記停止制御部によって前記煙霧の供給が停止された後は、前記換気装置によって前記プライベートルームから前記煙霧が除去されてもよい。
【0010】
前記停止制御部によって前記煙霧の供給が停止された後に、前記換気装置による換気を促進させる換気制御部、
をさらに備えてもよい。
【0011】
前記プライベートルームを画定しているプライベートルーム画定部材の、前記煙霧に覆われうる位置に、前記利用者によって取り扱われる設備が備え付けられており、
前記利用者によって前記プライベートルームが利用される際に、前記設備の位置を可視光によって指し示す指示装置、
をさらに備えてもよい。
【0012】
前記利用者によって前記プライベートルームが利用される際に、前記プライベートルームに拡散している前記煙霧に入射する可視光による演出を行う光演出装置、
をさらに備えてもよい。
【0013】
前記利用者によって前記プライベートルームが利用される際に、音による演出を行う音演出装置、
をさらに備えてもよい。
【0014】
前記利用者によって前記プライベートルームが利用される際に、前記盗撮防止装置の機能に関する音声ガイダンスを出力する音声ガイダンス装置、
をさらに備えてもよい。
【0015】
本発明の第2の観点に係る盗撮防止装置は、
利用者に携帯され、前記利用者がプライベートルームを利用する際に、前記プライベートルームを利用中の前記利用者が撮影されることを妨げる量の煙霧を、前記プライベートルームに供給する。
【0016】
前記煙霧に、芳香成分、消臭成分、抗菌成分、及び除菌成分から選択される少なくとも1つの成分が含まれていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、利用者によってプライベートルームが利用される際に、仮に撮影機器による撮影が行われても、撮影で得られる画像に利用者が映り込むことが煙霧の存在によって妨げられる。このため、利用者は、煙霧の存在によって、安心感をもってプライベートルームを利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る盗撮防止装置の構成を示す概念図。
【
図2】第1実施形態に係る盗撮防止装置によって供給された煙霧が拡散した状態のトイレットルームを示す概念図。
【
図3】第2実施形態に係る盗撮防止装置の構成を示す概念図。
【
図4】第3実施形態に係る盗撮防止装置の構成を示す概念図。
【
図5】第4実施形態に係る盗撮防止装置の構成を示す概念図。
【
図6】第5実施形態に係る盗撮防止装置の構成を示す概念図。
【
図7】第6実施形態に係る盗撮防止装置の構成を示す概念図。
【
図8】実施例に係る煙霧供給装置の配置の態様を示す写真。
【
図9】実施例に係る煙霧供給装置によって供給された煙霧がトイレットルームにおいて拡散する過程を時系列で示した写真。
【
図10】実験例A1-D4で用いた模擬トイレットルームを示す概念図。
【
図11】実験例A1-D4に係る実験条件及び実験結果を示す図。
【
図12】(a):実験例A1で撮影された画像を示す写真。(b):実験例A2で撮影された画像を示す写真。
【
図13】(a):実験例A3で撮影された画像を示す写真。(b):実験例A4で撮影された画像を示す写真。
【
図14】(a):実験例B1で撮影された画像を示す写真。(b):実験例B2で撮影された画像を示す写真。
【
図15】(a):実験例B3で撮影された画像を示す写真。(b):実験例B4で撮影された画像を示す写真。
【
図16】(a):実験例C1で撮影された画像を示す写真。(b):実験例C2で撮影された画像を示す写真。
【
図17】(a):実験例C3で撮影された画像を示す写真。(b):実験例C4で撮影された画像を示す写真。
【
図18】(a):実験例D1で撮影された画像を示す写真。(b):実験例D2で撮影された画像を示す写真。
【
図19】(a):実験例D3で撮影された画像を示す写真。(b):実験例D4で撮影された画像を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、プライベートルームとしてトイレットルームを例に挙げ、実施形態に係る盗撮防止装置について説明する。図中、同一又は対応する部分に同一の符号を付す。
【0020】
[第1実施形態]
図1に示すように、本実施形態に係る盗撮防止装置100は、トイレットルーム900における盗撮の防止を図るために、トイレットルーム900に設置される。
【0021】
まず、トイレットルーム900について説明する。トイレットルーム900は、床面911、その床面911に対向する天面912、及びそれら床面911と天面912とをつなぐ4つの側面913によって画定されている。床面911といずれかの側面913との間、及び天面912といずれかの側面913との間の少なくとも一方に、外部に通じる隙間が介在していてもよい。また、床面911と側面913との間、及び天面912と側面913との間が閉じられていてもよい。
【0022】
なお、トイレットルーム900は、プライベート(private)に、即ち人目に触れずに利用されるプライベートルームの一例である。また、床面911、天面912、及び側面913は、プライベートルームを画定するプライベートルーム画定部材の一例である。
【0023】
4つの側面913のうちの1つは、トイレットルーム900に対して出入りするための扉、具体的には開き戸によって構成されている。扉は、その扉を開閉するための取っ手及び鍵を含むノブ部920を有する。なお、本実施形態では、扉が開き戸で構成されているが、扉の概念には、開き戸のみならず、引き戸、折れ戸等も含まれる。
【0024】
床面911には、便器930が設置されている。側面913の、便器930の脇の位置には、便器930の機能を操作する操作盤940と、トイレットペーパー951を保持しているホルダー950とが設置されている。
【0025】
なお、ノブ部920、操作盤940、ホルダー950、及びトイレットペーパー951は、プライベートルームを利用する利用者によって取り扱われる設備の一例である。
【0026】
また、天面912には、トイレットルーム900を換気する換気装置960が備え付けられている。本実施形態では、換気装置960は、常時に作動している。
【0027】
次に、盗撮防止装置100の構成について説明する。盗撮防止装置100は、トイレットルーム900に煙霧800を供給する煙霧供給装置130を含む本体部150を備える。本体部150は、既述のプライベートルーム画定部材、具体的には、側面913に設けられている。
【0028】
本体部150には、利用者が煙霧800の供給の開始を指示する開始ボタン110と、利用者が煙霧の供給の停止を指示する停止ボタン120とが設けられている。また、本体部150には、煙霧供給装置130を制御する制御装置140も内蔵されている。
【0029】
制御装置140は、利用者による開始ボタン110の操作を契機として煙霧供給装置130に煙霧800の供給を開始させる開始制御部141と、利用者による停止ボタン120の操作を契機として煙霧供給装置130に煙霧800の供給を停止させる停止制御部142とを有する。なお、ここで“操作”とは、具体的にはボタンの押下を意味する。
【0030】
また、盗撮防止装置100は、指示装置160も備える。本実施形態では、指示装置160も、本体部150と同様、プライベートルーム画定部材、具体的には側面913に設けられている。但し、指示装置160、本体部150の設置位置は、特に限定されない。
【0031】
指示装置160は、既述の設備としての、ノブ部920、操作盤940、ホルダー950、及びトイレットペーパー951の各々の位置と、煙霧800の供給の停止を指示する停止ボタン120の位置とを可視光(以下、指示用可視光という。)によって指し示す。
【0032】
また、制御装置140は、指示装置160を制御する指示制御部143を有する。指示制御部143は、開始ボタン110の押下を契機として指示装置160に上記指示用可視光の出力を開始させ、停止ボタン120の押下の時点から予め定められた時間が経過したときに、指示装置160に上記指示用可視光の出力を停止させる。
【0033】
次に、盗撮防止装置100の動作について説明する。まず、利用者は、トイレットルーム900を利用すべく、トイレットルーム900に進入した後、用を足す前に、開始ボタン110を押下する。
【0034】
すると、指示制御部143が、開始ボタン110の押下を契機として、指示装置160に指示用可視光の出力を開始させる。これにより、ノブ部920、操作盤940、ホルダー950、トイレットペーパー951、及び停止ボタン120が指示用可視光によって照らされた状態となる。
【0035】
また、開始制御部141が、開始ボタン110の押下を契機として、煙霧供給装置130に煙霧800の供給を開始させる。煙霧供給装置130から供給された煙霧800は、トイレットルーム900に拡散する。
【0036】
この結果、トイレットルーム900の、少なくとも利用者を取り巻く領域、即ち、少なくとも便器930を取り巻く領域が、煙霧800で満たされる。プライベートルーム画定部材としての床面911、天面912、及び側面913は、煙霧800がプライベートルームとしてのトイレットルーム900から流出するのを抑える役割を果たす。
【0037】
図2に、煙霧800が拡散した状態のトイレットルーム900を示す。このように煙霧800が拡散した状態では、仮に撮影機器による撮影が行われても、撮影で得られる画像に利用者が映り込むことが煙霧800の存在によって妨げられる。このため、利用者は、煙霧800に包み込まれた状態で、安心感をもって用を足すことができる。
【0038】
なお、トイレットルーム900に煙霧800が拡散したときは、ノブ部920、操作盤940、ホルダー950、トイレットペーパー951、及び停止ボタン120も煙霧800に覆われうる。しかし、既述のとおり、これらは指示用可視光によって指し示されているため、利用者は、煙霧800の中でもこれらを視認できる。
【0039】
利用者は、煙霧800に包み込まれた状態で、指示用可視光で指し示された操作盤940、ホルダー950、トイレットペーパー951を使用して用を済ませる。用を済ませた利用者は、指示用可視光で指し示された停止ボタン120を押下し、かつ指示用可視光で指し示されたノブ部920を操作して、トイレットルーム900から退出する。
【0040】
指示制御部143は、停止ボタン120の押下の時点から、利用者が退出するのに要する時間として予め定められた時間(以下、退出所要時間という。)が経過したときに、指示装置160に指示用可視光の出力を停止させる。
【0041】
また、停止制御部142は、停止ボタン120の押下を契機として、煙霧供給装置130に煙霧800の供給を停止させる。煙霧800の供給が停止された後は、自ずと、常時に作動している換気装置960によってトイレットルーム900から煙霧800が除去される。このようにして、トイレットルーム900は、次の利用者が利用できる状態となる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、利用者によってトイレットルーム900が利用される際に、トイレットルーム900に煙霧800が供給される。従って、仮に、スマートフォン、小型カメラ等の撮影機器による撮影が行われても、撮影で得られる画像に利用者が映り込むことが煙霧800の存在によって妨げられる。このため、盗撮の防止が図られる。しかも、利用者は、煙霧800の存在によって、安心感をもってトイレットルーム900を利用することができる。
【0043】
[変形例1]
第1実施形態において、停止制御部142は、開始ボタン110の押下の時点から、必要かつ充分な量の煙霧800の供給が完了する時間として予め定められた煙霧供給所要時間が経過した時には、たとえ停止ボタン120の押下がなされなくても、煙霧供給装置130に煙霧800の供給を停止させる自動停止機能を備えてもよい。
【0044】
また、その自動停止機能は、開始ボタン110が短時間で複数回押下された場合にのみ発現されてもよい。つまり、開始ボタン110が短時間で複数回押下された場合は、煙霧800の供給が開始された後、上記自動停止機能によって自ずと煙霧800の供給が停止される。開始ボタン110が1回のみ押下された場合には、停止制御部142は、停止ボタン120の押下を契機として、煙霧供給装置130に煙霧800の供給を停止させてもよい。
【0045】
[変形例2]
上記第1実施形態において、煙霧800の供給の停止のタイミングは、利用者の操作によらずにセンシングの結果によって定められてもよい。具体的には、第1実施形態において、盗撮防止装置100は、煙霧800が予め定められた濃度に達したことを検知する煙霧濃度センサを備えてもよい。そして、停止制御部142は、煙霧濃度センサの検知を契機として、煙霧供給装置130に煙霧800の供給を停止させてもよい。
【0046】
なお、利用者に安心感を与える観点から、煙霧濃度センサはカメラでないことが好ましい。また、煙霧濃度センサには、その煙霧濃度センサが盗撮目的の機器でないことを明示する説明書きを付すことが好ましい。
【0047】
[第2実施形態]
以下、センシングの結果によって、煙霧800の供給の開始、停止等のタイミングを定める他の具体例を述べる。
【0048】
図3に示すように、本実施形態に係る盗撮防止装置100は、進退センサ170を備える。進退センサ170は、既述のプライベートルーム画定部材、具体的には側面913に設けられている。進退センサ170は、トイレットルーム900への利用者の進入、及びトイレットルーム900からの利用者の退出を検知する。
【0049】
なお、進退センサ170は、既述の煙霧濃度センサと同様、利用者に安心感を与える観点から、カメラでないことが好ましい。また、進退センサ170には、その進退センサ170が盗撮目的の機器でないことを明示する説明書きを付すことが好ましい。
【0050】
本実施形態では、開始制御部141は、進退センサ170による、トイレットルーム900への利用者の進入の検知を契機として、又は、その進入の検知の時点から予め定められた期間が経過したことを契機として、煙霧供給装置130に煙霧800の供給を開始させる。
【0051】
停止制御部142は、煙霧供給装置130による煙霧800の供給の開示の時点から、上述した煙霧供給所要時間が経過した時に、煙霧供給装置130に煙霧800の供給を停止させる。なお、停止制御部142は、進退センサ170による、トイレットルーム900からの利用者の退出の検知を契機として、煙霧供給装置130に煙霧800の供給を停止させてもよい。
【0052】
指示制御部143は、進退センサ170による、トイレットルーム900への利用者の進入の検知を契機として、又は、その進入の検知の時点から予め定められた期間が経過したことを契機として、指示装置160に指示用可視光の出力を開始させる。
【0053】
また、指示制御部143は、進退センサ170による、トイレットルーム900からの利用者の退出の検知を契機として、又は、トイレットルーム900への利用者の進入の検知の時点から予め定められた期間が経過したことを契機として、指示装置160に指示用可視光の出力を停止させる。
【0054】
本実施形態によれば、
図1に示した開始ボタン110、停止ボタン120を省略することができ、それら開始ボタン110、停止ボタン120の操作も不要となる。
【0055】
[変形例3]
第2実施形態において、進退センサ170は、トイレットルーム900への利用者の進入と、トイレットルーム900からの利用者の退出とのうち、利用者の進入のみを検知するものであってもよい。
【0056】
この場合、停止制御部142は、進退センサ170による、トイレットルーム900への利用者の進入の検知の時点から、利用者がトイレットルーム900を利用するのに要する時間として予め定められた時間(以下、利用所要時間という。)が経過したときに、煙霧供給装置130に煙霧800の供給を停止させる。
【0057】
また、指示制御部143は、煙霧800の供給を停止の時点から、既述の退出所要時間が経過したときに、指示装置160に指示用可視光の出力を停止させる。
【0058】
あるいは、
図1に示した停止ボタン120を省略せずに、本体部150に残してもよい。この場合は、煙霧800の供給停止のタイミング、及び指示用可視光の出力停止のタイミングは、第1実施形態の場合と同様とすることができる。
【0059】
[変形例4]
第2実施形態において、進退センサ170は、トイレットルーム900への利用者の進入と、トイレットルーム900からの利用者の退出とのうち、利用者の退出のみを検知するものであってもよい。そして、
図1に示した開始ボタン110を省略せずに、本体部150に残してもよい。
【0060】
この場合は、煙霧800の供給開始のタイミング、及び指示用可視光の出力開始のタイミングは、第1実施形態の場合と同様とし、煙霧800の供給停止のタイミング、及び指示用可視光の出力停止のタイミングは、第2実施形態の場合と同様とすることができる。
【0061】
[変形例5]
第1実施形態又は第2実施形態において、便器930に、利用者の便器930の使用の終了を検知する自動洗浄装置が備わっていてもよい。その場合、制御装置140は、自動洗浄装置から、便器930の使用の終了の検知を表す信号(以下、使用終了検知信号という。)を取得することができる。
【0062】
そこで、停止制御部142は、使用終了検知信号の取得を契機として、煙霧800の供給を停止させてもよい。また、指示制御部143は、使用終了検知信号が取得された時点から、既述の退出所要時間が経過したときに、指示装置160に指示用可視光の出力を停止させてもよい。
【0063】
[第3実施形態]
第1実施形態又は第2実施形態において、盗撮防止装置100には、利用者に演出を提供する機能を付加してもよい。以下、その具体例を述べる。
【0064】
図4に示すように、本実施形態に係る盗撮防止装置100は、演出のための可視光(以下、演出用可視光という。)を放射する演出用光源180と、音及び音声を出力するスピーカー190とをさらに備える。
【0065】
本実施形態では、演出用光源180及びスピーカー190は、プライベートルーム画定部材としての天面912に設けられている。但し、演出用光源180及びスピーカー190の設置位置は、特に限定されない。
【0066】
また、制御装置140は、演出用光源180及びスピーカー190を制御する演出制御部144をさらに有する。演出制御部144は、開始ボタン110の押下を契機として演出用光源180を起動させ、停止ボタン120の押下を契機として演出用光源180を停止させる。
【0067】
演出用光源180は、演出制御部144によって起動されることにより、利用者によってトイレットルーム900が利用される際に、トイレットルーム900に拡散している煙霧800に入射する演出用可視光による演出を行う。
【0068】
演出用可視光は、煙霧800によって散乱されうる。演出には、演出用可視光の走査、点滅、色調の変更、又はこれらの組み合わせの動作が含まれてもよい。演出用可視光は、レーザ光であってもよい。演出用光源180の演出により、利用者に審美感を抱かせることができる。以上のように、演出用光源180は、本開示に係る光演出装置としての役割を果たす。
【0069】
また、演出制御部144は、進退センサ170による、トイレットルーム900への利用者の進入の検知を契機としてスピーカー190を起動させ、停止ボタン120の押下を契機としてスピーカー190を停止させる。
【0070】
スピーカー190は、演出制御部144によって起動されることにより、利用者によってトイレットルーム900が利用される際に、音による演出を行う。
【0071】
音には、音楽の他、川のせせらぎの音、鳥のさえずりの音等、自然界で発生する音が含まれてもよい。音による演出で、トイレットルーム900の利用の快適性、安心性を高めることができる。即ち、スピーカー190は、本開示に係る音演出装置としての役割を果たす。
【0072】
また、スピーカー190は、演出制御部144によって起動されることにより、利用者によってトイレットルーム900が利用される際に、盗撮防止装置100の機能を知らせる音声ガイダンスを出力する。つまり、スピーカー190は、本開示に係る音声ガイダンス装置としての役割も果たす。
【0073】
音声ガイダンスには、例えば、煙霧800の意義の説明、煙霧800の発生を望む場合には開始ボタン110を押下すべき旨の説明、利用後は停止ボタン120を押下すべき旨の説明、煙霧800は自動的に除去される旨の説明等が含まれてもよい。
【0074】
なお、本実施形態において、演出制御部144は、進退センサ170による、トイレットルーム900からの利用者の退出の検知を契機として、又はトイレットルーム900への利用者の進入の検知の時点から既述の利用所要時間が経過したことを契機として、演出用光源180及びスピーカー190を停止させてもよい。
【0075】
[第4実施形態]
第1実施形態では、換気装置960が常時に作動しており、かつ換気装置960の換気の能力が一定に保たれる構成を例示した。停止制御部142によって煙霧800の供給が停止された後に、換気装置960による換気を促進させてもよい。以下、その具体例を述べる。
【0076】
図5に示すように、本実施形態に係る制御装置140は、換気制御部145をさらに有する。換気制御部145は、煙霧800の除去に要する期間として予め定められた期間(以下、煙霧除去所要期間という。)にわたって換気装置960による換気を促進させる換気促進制御を行う。
【0077】
具体的には、換気制御部145は、換気装置960を構成しているファンのモーターの回転数を煙霧除去所要期間にわたって高める。換気促進制御は、停止制御部142によって煙霧800の供給が停止された後に遂行される。
【0078】
また、本明細書において、“換気を促進させる”とは、実行中の換気の能力を途中で高めることのみならず、停止されていた換気を開始させることも含む意味とする。
【0079】
即ち、換気制御部145は、煙霧800の供給が停止された後の煙霧除去所要期間においてのみ換気装置960を作動させ、その煙霧除去所要期間以外の期間には、換気装置960を停止させてもよい。
【0080】
[第5実施形態]
図1-
図5には、トイレットルーム900に設置されるタイプの盗撮防止装置100を例示した。盗撮防止装置100は、利用者に携帯可能に構成されていてもよい。以下、その具体例を述べる。
【0081】
図6に、本実施形態に係る携帯型の盗撮防止装置200を示す。この盗撮防止装置200は、既述の開始ボタン110及び停止ボタン120の他、煙霧800を吐出する吐出口210を外面に備える。
【0082】
また、図示はしないが、盗撮防止装置200には、既述の煙霧供給装置130、開始制御部141、及び停止制御部142が内蔵されている。さらに、盗撮防止装置200には、煙霧800を発生させるのに必要な電力を煙霧供給装置130に供給する電源も内蔵されている。
【0083】
利用者は、盗撮防止装置200を携帯してトイレットルーム900に進入し、トイレットルーム900を利用する際に、開始ボタン110を押下する。すると、トイレットルーム900を利用中の利用者が撮影されることを妨げる量の煙霧800が、吐出口210からプライベートルームに供給される。
【0084】
このため、第1-第4実施形態の場合と同様、利用者は、煙霧800の存在によって安心感をもってトイレットルーム900を利用することができる。利用者は、用を済ませた後、停止ボタン120を押下する。すると、吐出口210からの煙霧800の供給が停止され、トイレットルーム900の煙霧800は換気装置960によって除去される。
【0085】
[第6実施形態]
図7は、携帯型の盗撮防止装置200の他の形態を示す。この盗撮防止装置200は、利用者の操作を受けて、その利用者が撮影されることを妨げる量の煙霧800をトイレットルーム900に供給する構造を有する点では、第5実施形態に係る盗撮防止装置200と共通するが、エアゾール製品によって構成されている点が、第5実施形態に係る盗撮防止装置200と相違する。具体的には、この盗撮防止装置200は、噴射ボタン220を備えるスプレー缶によって構成されている。
【0086】
気密容器であるスプレー缶には、煙霧800の材料と、煙霧800を噴出させるためのガスとが圧入されている。利用者が噴射ボタン220を押下すると、吐出口210から煙霧800が噴射され、噴射ボタン220の押下を止めると、煙霧800の噴射が止まる。本実施形態によっても、第5実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0087】
以上、第1-第6実施形態について説明した。以下、煙霧800及び煙霧供給装置130について説明する。
【0088】
[煙霧800について]
第1-第6実施形態において、煙霧800は、空気中を浮遊する程度に微細な粒子(以下、微粒子という。)の集合によって構成される。即ち、本明細書において“煙霧800”とは、空気中を浮遊している状態の微粒子の集合を指す。微粒子は、液体であってもよいし、固体であってもよい。
【0089】
[煙霧供給装置130について]
第1-第5実施形態において、煙霧供給装置130は、煙霧800を発生させる機構を備える。上記微粒子が液体よりなる煙霧800は、煙霧800の原料となる液体(以下、煙霧原料液という。)を霧化することで発生させることができる。霧化の手法としては、煙霧原料液を加熱し気化させる加熱方式、煙霧原料液に超音波を付与する超音波霧化方式が例示される。
【0090】
なお、煙霧原料液は、水性のものであってもよいし、油性のものであってもよい。煙霧原料液は、芳香成分、消臭成分、抗菌成分、及び除菌成分から選択される少なくとも1つの成分を含むことが好ましい。同一の物質が、芳香成分、消臭成分、抗菌成分、及び除菌成分から選択される複数の成分の機能を兼ねてもよい。
【0091】
煙霧原料液に芳香成分を含めることで、芳香成分を含む煙霧800を生成できる。煙霧原料液に消臭成分を含めることで、消臭成分を含む煙霧800を生成できる。煙霧原料液に抗菌成分を含めることで、抗菌成分を含む煙霧800を生成できる。煙霧原料液に除菌成分を含めることで、除菌成分を含む煙霧800を生成できる。
【0092】
[実施例]
図8に示すように、家庭用のトイレットルーム900に煙霧供給装置130を配置し、煙霧800を発生させた。煙霧供給装置130には、ANTARI社製のフォグマシン(製品名:Z800II)を用いた。
【0093】
また、煙霧原料液には、ANTARI社製の水性フォグリキッド(製品名:FLG5)を用いた。同水性フォグリキッドによれば、無臭で非刺激性、無毒性、かつ不燃性の煙霧800を発生させることができる。
【0094】
実施例に係るトイレットルーム900の容積は、2.64m3(=幅80cm×奥行150cm×高さ220cm)である。換気装置960を停止させた状態で、煙霧供給装置130によって、84.95m3/minの速度でトイレットルーム900に煙霧800を供給した。
【0095】
図9に、煙霧800がトイレットルーム900に拡散する様子を時系列で示す。
図9の上段には、上方から利用者を撮影した写真を時系列で5枚示している。撮影には、盗撮への悪用が報告されている撮影機器として、スマートフォンを用いた。上方からの撮影においては、煙霧800の供給の開始から約10秒で、画像に利用者が全く映らない状態となった。
【0096】
図9の下段には、下方から利用者を撮影した写真を時系列で5枚示している。下方からの撮影にもスマートフォンを用いた。下方からの撮影においては、煙霧800の供給の開始から約10秒で、画像に利用者のシルエットが薄っすら見えるのみで利用者の細部は確認し難い状態、即ち、煙霧800によって盗撮防止の役割が果たされていると言える状態となった。さらに、煙霧800の供給の開始から約30秒後には、画像に利用者が全く映らない状態となった。
【0097】
以上のように、上方からの撮影においても、下方からの撮影においても、煙霧800の存在によって、画像への利用者の映り込みが妨げられることが確かめられた。
【0098】
また、トイレットルーム900に煙霧800を充満させた状態で、トイレットルーム900に備わっている換気装置960を起動させた。その結果、換気装置960の起動から1~2分の経過時点でトイレットルーム900での視界が良好となり、4~5分の経過時点でほぼ完全にトイレットルーム900から煙霧800が除去されることが確かめられた。
【0099】
[実験例]
煙霧800の供給の開始から、撮影で得られる画像において利用者が視認できない状態となるまでに要する時間(以下、カメラ視界遮断所要時間という。)は、煙霧供給装置130と撮影機器との位置関係、及び換気装置960の状態に依存する。そこで、煙霧供給装置130と撮影機器との位置関係、及び換気装置960の状態を種々変更し、カメラ視界遮断所要時間を具体的に調べる実験を行った。
【0100】
図10を参照し、本実験の条件について説明する。段ボールによって、既述のトイレットルーム900を模した模擬トイレットルーム900sを画定する画定用箱体を作製した。その画定用箱体は、床面911sに対向する天面912s、及び床面911sと天面912sとをつなぐ4つの側面913sを有する直方体の形状に形成されている。なお、天面912sと4つの側面913sとの間には、外部に通じる隙間が確保されている。
【0101】
床面911sには、既述の便器930に見立てた椅子930sが配置されている。椅子930sに人が着座している状態で、煙霧供給装置130から煙霧800を供給しつつ、椅子930sに着座している人を撮影機器としてのカメラCMで撮影した。
【0102】
以下では、椅子930sの前方の側面913sと、椅子930sの後方の側面913sとが向かい合う方向を“前後方向”という。また、前後方向に関して、椅子930sの前方の側面913sに近い位置を“手前”といい、椅子930sの前方の側面913sに近い位置を“奥方”という。
【0103】
煙霧供給装置130は、模擬トイレットルーム900sの、下部における手前の位置(以下、A位置ともいう。)、下部における奥方の位置(以下、B位置ともいう。)、上部における手前の位置(以下、C位置ともいう。)、及び上部における奥方の位置(以下、D位置ともいう。)のいずれかの位置に配置した。
【0104】
A位置は、床面911s上における椅子930sの向かいに位置する。A位置に配置された煙霧供給装置130は、椅子930sに向けて水平に煙霧800を吐出する。
【0105】
B位置は、床面911s上における椅子930sの脇に位置する。B位置に配置された煙霧供給装置130は、奥方から手前に向けて水平に煙霧800を吐出する。
【0106】
C位置の、床面911sからの高さは140cmである。C位置は、手前の左右の隅部のうちの一方に面する。C位置に配置された煙霧供給装置130は、C位置と対向する隅部に向かって斜め下方に傾斜した方向に、煙霧800を吐出する。
【0107】
D位置の、床面911sからの高さも140cmである。D位置は、C位置と対向する隅部に面する。D位置に配置された煙霧供給装置130は、D位置と対向する隅部、即ち、C位置が面する隅部に向かって斜め下方に傾斜した方向に、煙霧800を吐出する。
【0108】
なお、煙霧供給装置130には、ANTARI社製のフォグマシン(製品名:Z800II)を用いた。また、煙霧原料液には、ANTARI社製の水性フォグリキッド(製品名:FLG5)を用いた。
【0109】
模擬トイレットルーム900sの、前後方向の内寸である奥行は150cm、上下方向の内寸である高さは180cm、前後方向及び上下方向に直角な左右方向の内寸である幅は100cmである。即ち、模擬トイレットルーム900sの容積は2.7m3である。煙霧供給装置130は、84.95m3/minの速度で、模擬トイレットルーム900sに煙霧800を吐出する。
【0110】
カメラCMは、模擬トイレットルーム900sの、下部における手前の位置(以下、カメラCMの位置に関して単に“下部”という。)、及び上部における奥方の位置(以下、カメラCMの位置に関して単に“上部”という。)のいずれかの位置に配置した。なお、カメラCMには、スマートフォンを用いた。
【0111】
換気装置960は、椅子930sの側方に位置する側面913sの上部に備え付けられている。換気装置960には、パナソニック株式会社製のパイプファン(品番:FY-08PDX9)を用いた。換気装置960をONにしている状態と、OFFにしている状態とでの、上記カメラ視界遮断所要時間の違いを調べた。
【0112】
また、椅子930sの後方に位置する側面913sの上部には、火災報知器970が備え付けられている。上記カメラ視界遮断所要時間を調べる過程で、火災報知器970の鳴動の有無も調べた。なお、火災報知器970には、ニッタン株式会社製の住宅用熱式火災報知器(品番:CRG-1D-X)を用いた。
【0113】
図11に、実験例の番号別に実験条件を示す。実験条件は、カメラCMの位置、換気装置960の状態、及び煙霧供給装置130の位置で指定される。以下、実験条件が互いに異なる実験例A1-D4の結果について述べる。
【0114】
図12(a)、(b)は、それぞれ、実験例A1、A2においてカメラCMで撮影した画像の時系列を示す。各画像の下部には、煙霧800の吐出の開始時点からの経過時間を付記している。後に参照する
図13-
図19に示す各画像についても同様である。
【0115】
本実験で使用した煙霧800は、空気中を上昇する性質を有する。具体的には、煙霧800は、煙霧供給装置130から勢いよく吐出された後、側面913s又は床面911sで折り返されて拡散する。その後、煙霧800の流れの勢いが無くなるとともに、煙霧800は模擬トイレットルーム900s内で全体的に徐々に上昇する。従って、カメラCMが上部に配置されている場合の方が、カメラCMが下部に配置されている場合よりも、カメラ視界遮断所要時間が短い。
【0116】
具体的には、カメラCMを上部に配置した実験例A1では、カメラ視界遮断所要時間は13秒であり、カメラCMを下部に配置した実験例A2では、カメラ視界遮断所要時間は35秒であった。
【0117】
なお、実験例A1-D4において、カメラ視界遮断所要時間は、カメラCMで撮影した動画を用いて計測した。具体的には、その動画を実験者が目視で確認し、煙霧供給装置130から煙霧800の吐出が開始された状況を表すコマの時点から、椅子930sに着座している人物に対する盗撮が防止されていると言える程度に、その人物が煙霧800で隠れたと言える状況を表すコマの時点までの経過時間を、カメラ視界遮断所要時間とした。
【0118】
図13(a)、(b)は、それぞれ、実験例A3、A4においてカメラCMで撮影した画像の時系列を示す。実験例A3、A4では、先の実験例A1、A2とは異なり、換気装置960がONとされている。カメラCMを上部に配置した実験例A3では、カメラ視界遮断所要時間は15秒であり、カメラCMを下部に配置した実験例A4では、カメラ視界遮断所要時間は35秒であった。
【0119】
図14(a)、(b)は、それぞれ、換気装置960をOFFとし、煙霧供給装置130を下部の奥方に設置した実験例B1、B2においてカメラCMで撮影した画像の時系列を示す。カメラCMを上部に配置した実験例B1では、カメラ視界遮断所要時間は18秒であり、カメラCMを下部に配置した実験例B2では、カメラ視界遮断所要時間は35秒であった。
【0120】
図15(a)、(b)は、それぞれ、換気装置960をONとし、煙霧供給装置130を下部の奥方に設置した実験例B3、B4においてカメラCMで撮影した画像の時系列を示す。カメラCMを上部に配置した実験例B3では、カメラ視界遮断所要時間は25秒であり、カメラCMを下部に配置した実験例B4では、カメラ視界遮断所要時間は35秒であった。
【0121】
図16(a)、(b)は、それぞれ、換気装置960をOFFとし、煙霧供給装置130を上部の手前に設置した実験例C1、C2においてカメラCMで撮影した画像の時系列を示す。カメラCMを上部に配置した実験例C1では、カメラ視界遮断所要時間は20秒であり、カメラCMを下部に配置した実験例C2では、カメラ視界遮断所要時間は40秒であった。
【0122】
図17(a)、(b)は、それぞれ、換気装置960をONとし、煙霧供給装置130を上部の手前に設置した実験例C3、C4においてカメラCMで撮影した画像の時系列を示す。カメラCMを上部に配置した実験例C3では、カメラ視界遮断所要時間は25秒であり、カメラCMを下部に配置した実験例C4では、カメラ視界遮断所要時間は40秒であった。なお、実験例C4では、椅子930sに座っている人の足元に煙霧800が溜まらず、人の足元は煙霧800で隠れなかった。
【0123】
図18(a)、(b)は、それぞれ、換気装置960をOFFとし、煙霧供給装置130を上部の奥方に設置した実験例D1、D2においてカメラCMで撮影した画像の時系列を示す。カメラCMを上部に配置した実験例D1では、カメラ視界遮断所要時間は25秒であり、カメラCMを下部に配置した実験例D2では、カメラ視界遮断所要時間は30秒であった。
【0124】
図19(a)、(b)は、それぞれ、換気装置960をONとし、煙霧供給装置130を上部の奥方に設置した実験例D3、D4においてカメラCMで撮影した画像の時系列を示す。カメラCMを上部に配置した実験例D3では、カメラ視界遮断所要時間は28秒であり、カメラCMを下部に配置した実験例D4では、カメラ視界遮断所要時間は40秒であった。
【0125】
図11には、以上説明したカメラ視界遮断所要時間の計測結果も記載されている。既述のとおり、本実験で使用した煙霧800は空気中を上昇する性質を有するため、カメラCMが上部に配置されている場合の方が、カメラCMが下部に配置されている場合よりも、カメラ視界遮断所要時間が短い。
【0126】
また、換気装置960をOFFにした場合の方が、換気装置960をONにした場合よりも、カメラ視界遮断所要時間が短い傾向が認められる。これは、供給中の煙霧800がON状態の換気装置960によって外部に排出されうることによる。
【0127】
また、実験例A1-D4のいずれにおいても、本実験で使用した火災報知器970は鳴動しないことが確認された。
【0128】
以上、実施形態、実施例、及び実験例A1-D4について説明した。以下に述べる変更も可能である。
【0129】
図1、
図4-
図6には、開始ボタン110と停止ボタン120とが2つに分かれて配置された構成を例示した。共通の1つのハードウエア、例えば、オン/オフ型のトグルスイッチによって、開始ボタン110の機能と停止ボタン120の機能との両方が実現されてもよい。また、開始ボタン110及び停止ボタン120の機能は、直接手で触れることなく、手をかざすことでオン/オフできる非接触スイッチによって実現されてもよい。
【0130】
図1-
図5には、1台の換気装置960を例示したが、プライベートルームには、複数台の換気装置960が備わっていてもよい。複数台の換気装置960の一部は、煙霧800の排出のために専用に設けられたものであってもよい。また、プライベートルームには、利用者が換気装置960のオン/オフを指示するためのスイッチが配置されていてもよい。
【0131】
第1-第4実施形態では、プライベートルームに設置されるタイプの盗撮防止装置100について述べた。本明細書において“プライベートルームに設置”とは、少なくとも一部がプライベートルームに設置されることを意味するものとする。
【0132】
一例として、
図1-
図5には、全体が、プライベートルーム画定部材としての側面913に取り付けられた煙霧供給装置130を示したが、他の一例として、煙霧供給装置130の、煙霧800を吐出する吐出口がプライベートルーム画定部材に開口していて、煙霧供給装置130の、噴霧原料液を保持するタンク、噴霧原料液を霧化する機構等は、プライベートルームの外部に設置してもよい。この場合、噴霧原料液を保持するタンク、噴霧原料液を霧化する機構等は、複数のプライベートルームに対して共用してもよい。
【0133】
図1-
図5には、1つの煙霧供給装置130から煙霧800が供給される構成を例示した。1つのプライベートルームに複数の煙霧供給装置130を設置してもよいし、1つのプライベートルームに設置する1つの煙霧供給装置130が、煙霧800を吐出する吐出口を複数備えていてもよい。そして、プライベートルームにおける複数の箇所から、そのプライベートルームに煙霧800を供給してもよい。
【0134】
図1-
図5には、プライベートルームとしてトイレットルーム900を例示したが、盗撮防止装置100及び200は、トイレットルーム900以外のプライベートルーム、例えば、シャワールーム、バスルーム、フィッティングルーム等にも適用できる。
【0135】
盗撮防止装置100は、プライベートルームにおいて、利用者によって取り扱われる設備、備品、その他の物品を、煙霧800に晒されることから保護する保護部材を備えてもよい。保護部材の一例としては、トイレットルーム900において、トイレットペーパー全体を覆うトイレットペーパーカバーが挙げられる。トイレットペーパーカバーは、ホルダー950に付設されてもよいし、ホルダー950の一部がトイレットペーパーカバーを構成していてもよい。
【0136】
また、保護部材の他の例として、フィッティングルームにおいて、利用者が脱いだ衣服を覆う衣類カバーが挙げられる。
【符号の説明】
【0137】
100…盗撮防止装置、
110…開始ボタン、
120…停止ボタン、
130…煙霧供給装置、
140…制御装置、
141…開始制御部、
142…停止制御部、
143…指示制御部、
144…演出制御部、
145…換気制御部、
150…本体部、
160…指示装置、
170…進退センサ、
180…演出用光源(光演出装置)、
190…スピーカー(音演出装置、音声ガイダンス装置)、
200…盗撮防止装置、
210…吐出口、
220…噴射ボタン、
800…煙霧、
900…トイレットルーム(プライベートルーム)、
900s…模擬トイレットルーム、
911…床面(プライベートルーム画定部材)、
911s…床面、
912…天面(プライベートルーム画定部材)、
912s…天面、
913…側面(プライベートルーム画定部材)、
913s…側面、
920…ノブ部(設備)、
930…便器、
930s…椅子、
940…操作盤(設備)、
950…ホルダー(設備)、
951…トイレットペーパー(設備)、
960…換気装置、
970…火災報知器、
CM…カメラ。