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特開2024-143958メシマコブGKPlの抽出物を含有する運動パフォーマンス向上用、運動疲労軽減用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143958
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】メシマコブGKPlの抽出物を含有する運動パフォーマンス向上用、運動疲労軽減用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/07 20060101AFI20241003BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20241003BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20241003BHJP
   C12N 1/14 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
A61K36/07
A61P1/16
A61P3/00
A61P3/02
A61P21/00
A23L33/10
C12N1/14 F
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093519
(22)【出願日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】112111750
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】519298765
【氏名又は名称】葡萄王生技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】陳 勁初
(72)【発明者】
【氏名】李 宜蓁
(72)【発明者】
【氏名】李 宗儒
(72)【発明者】
【氏名】呂 庭宇
(72)【発明者】
【氏名】陳 ▲彦▼博
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE05
4B018MD08
4B018MD82
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF04
4B065AA71X
4B065AC14
4B065BD05
4B065BD08
4B065BD10
4B065BD14
4B065BD50
4B065CA41
4B065CA44
4C088AA07
4C088AC17
4C088BA05
4C088BA09
4C088BA10
4C088CA02
4C088CA05
4C088CA06
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA75
4C088ZA94
4C088ZC21
(57)【要約】
【課題】メシマコブGKPlの抽出物を含有する運動パフォーマンス向上用、運動疲労軽減用組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、メシマコブ(Phellinus linteus)GKPlの抽出物を含有する運動パフォーマンス向上用、運動疲労軽減用組成物に関し、組成物は、メシマコブGKPlの抽出物を有効成分として含み、この抽出物は、熱水抽出物及び/又はエタノール抽出物を含み、これによって運動持続時間、肝臓及び筋肉中のグリコーゲン含有量を向上させ、運動後の血液中の乳酸及び尿素窒素の含有量を低下させ、これによって運動パフォーマンスを向上させ、運動疲労を軽減する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メシマコブ(Phellinus linteus)GKPlの抽出物を含有する運動パフォーマンス向上用組成物であって、前記組成物は、前記メシマコブGKPlの前記抽出物を有効成分として含み、前記抽出物は、熱水抽出物及び/又はエタノール抽出物を含み、且つ前記メシマコブGKPlは、2019年7月18日に台湾食品工業発展研究所(Food Industry Research and Development Institute;FIRDI)生物資源保存及び研究センター(Bioresource Collection and Research Center;BCRC)に寄託され、受託番号はBCRC 930210であり、それによって肝臓及び/又は筋肉中のグリコーゲン含有量を向上させる、メシマコブ(Phellinus linteus)GKPlの抽出物を含有する運動パフォーマンス向上用組成物。
【請求項2】
前記熱水抽出物は、前記メシマコブGKPlの菌糸体を80℃~120℃の水で20分間~40分間熱水抽出処理して得られる、請求項1に記載のメシマコブGKPlの抽出物を含有する運動パフォーマンス向上用組成物。
【請求項3】
前記エタノール抽出物は、前記メシマコブGKPlの菌糸体をエタノール抽出処理して得られる、請求項1に記載のメシマコブGKPlの抽出物を含有する運動パフォーマンス向上用組成物。
【請求項4】
前記組成物は、医薬組成物又は食品組成物である、請求項1に記載のメシマコブGKPlの抽出物を含有する運動パフォーマンス向上用組成物。
【請求項5】
前記組成物は、医薬及び食品に許容可能な担体、賦形剤及び/又は添加剤を更に含む、請求項1に記載のメシマコブGKPlの抽出物を含有する運動パフォーマンス向上用組成物。
【請求項6】
前記メシマコブGKPlの前記抽出物を投与しない対照被験者に比べて、前記メシマコブGKPlの前記抽出物を投与した被験者は、運動持続時間が増加し、且つ前記対照被験者と前記被験者の両方とも、筋萎縮症を持っていない、請求項1に記載のメシマコブGKPlの抽出物を含有する運動パフォーマンス向上用組成物。
【請求項7】
メシマコブGKPlの抽出物を含有する運動疲労軽減用経口組成物であって、前記経口組成物は、有効投与量の前記メシマコブGKPlの前記抽出物を有効成分として含み、前記抽出物は、熱水抽出物及び/又はエタノール抽出物を含み、且つ前記メシマコブGKPlの受託番号はBCRC 930210であり、それによって被験者に連続28日間投与した後、前記被験者の運動後の血液中の尿素窒素含有量を低下させる、メシマコブGKPlの抽出物を含有する運動疲労軽減用経口組成物。
【請求項8】
前記被験者が成人である場合、前記有効投与量は、0.1g/60kg体重(body weight;b.w.)/日~2.0g/60kg b.w./日である、請求項7に記載のメシマコブGKPlの抽出物を含有する運動疲労軽減用経口組成物。
【請求項9】
前記被験者がマウスである場合、前記有効投与量は、0.1g/kg b.w./日~0.5g/kg b.w./日である、請求項7に記載のメシマコブGKPlの抽出物を含有する運動疲労軽減用経口組成物。
【請求項10】
前記メシマコブGKPlの前記抽出物を投与しない対照被験者に比べて、前記メシマコブGKPlの前記抽出物を投与した被験者は、運動後の血液中の乳酸含有量が低下し、且つ前記対照被験者と前記被験者の両方とも、筋萎縮症を持っていない、請求項7に記載のメシマコブGKPlの抽出物を含有する運動疲労軽減用経口組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動パフォーマンス向上用、運動疲労軽減用組成物に関し、特にメシマコブGKPlの抽出物を含有する運動パフォーマンス向上用、運動疲労軽減用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アスリートのスポーツ競技における運動パフォーマンスを向上させるために、運動科学(例えば、運動心理学、運動生理学、運動バイオメカニクス、運動栄養学、伝統的な補助療法)に焦点を当てた研究がますます進んでいる。運動パフォーマンスに影響を与える要因は、身体能力、運動スキル、視力、疲労度、病気、運動傷害、運動栄養、心理的要因、及び外的要因等を含む。そのうち、運動栄養は、体組成を構築し、十分なエネルギーを供給する上で重要な役割を果たすだけでなく、代謝速度、体の回復速度、アスリートの免疫力を向上させること、及び/又は運動傷害のリスクを軽減することに最も重要な鍵の1つでもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
炭水化物、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラル、水分の配合比率及び摂取タイミングに加えて、運動サプリメント(例えば、クレアチン、カフェイン)も運動パフォーマンスを向上させ、及び/又は運動疲労を軽減することができる。しかしながら、一部の運動サプリメントには、副作用を引き起こし、ひいてはアスリートの全体的な健康に害を及ぼす可能性のある活性物質が含まれているため、禁止薬物として分類されている。したがって、運動サプリメントの安全で効果的な活性物質を探すことは、重要な研究の方向となっている。
【0004】
メシマコブ(Phellinus linteus)は、タバコウロコタケ科キコブタケ属の薬用真菌である。メシマコブは、安全性が高く、抗酸化、抗がん、抗認知症、抗炎症、抗アレルギー(例えば、アレルギー性鼻炎、湿疹、関節リウマチ)、肝臓保護、心血管疾患の予防、睡眠の質の向上、鎮痛、尿酸抑制、スキンケア等の機能がある。しかしながら、メシマコブの運動パフォーマンスの向上及び運動疲労の軽減に関する効果の研究は少ない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明の一態様は、被験者の運動後の血液中の尿素窒素含有量を低下させるように、メシマコブ(Phellinus linteus)GKPlの抽出物を含有する運動パフォーマンス向上用組成物を提供する。
【0006】
本発明の別の態様は、運動後の血液中の尿素窒素含有量を低下させるように、メシマコブGKPlの抽出物を含有する運動疲労軽減用経口組成物を提供する。
【0007】
本発明の上記態様によれば、メシマコブGKPlの抽出物を含有する運動パフォーマンス向上用組成物であって、組成物は、メシマコブGKPlの抽出物を有効成分として含み、且つ抽出物が、熱水抽出物及び/又はエタノール抽出物を含み、それによって肝臓及び/又は筋肉中のグリコーゲン含有量を向上させる。上記メシマコブGKPlの抽出物は、2019年7月18日に台湾食品工業発展研究所(Food Industry Research and Development Institute;FIRDI)生物資源保存及び研究センター(Bioresource Collection and Research Center;BCRC)に寄託され、受託番号はBCRC 930210である。
【0008】
本発明の一実施例において、熱水抽出物は、メシマコブGKPlの菌糸体を80℃~120℃の水で20分間~40分間熱水抽出処理して得られる。
【0009】
本発明の一実施例において、エタノール抽出物は、メシマコブGKPlの菌糸体をエタノール抽出処理して得られる。
【0010】
本発明の一実施例において、組成物は、医薬組成物又は食品組成物である。
【0011】
本発明の一実施例において、組成物は、医薬及び食品に許容可能な担体、賦形剤及び/又は添加剤を選択可能に含んでよい。
【0012】
本発明の一実施例において、メシマコブGKPlの抽出物を投与しない対照被験者に比べて、メシマコブGKPlの抽出物を投与した被験者は、運動持続時間が増加し、ここで対照被験者と被験者の両方とも、筋萎縮症を持っていない。
【0013】
本発明の別の態様によれば、メシマコブGKPlの抽出物を含有する運動疲労軽減用経口組成物を提供する。上記経口組成物は、有効投与量のメシマコブGKPlの抽出物を有効成分として含み、ここで抽出物は、メシマコブGKPlの熱水抽出物及び/又はエタノール抽出物を含み、且つメシマコブGKPlの受託番号は、BCRC 930210であり、これによって、被験者に少なくとも28日間連続投与した後、被験者の運動後の血液中の尿素窒素含有量を低下させる。
【0014】
本発明の一実施例において、被験者が成人である場合、有効投与量は、0.1g/60kg体重(body weight;b.w.)/日~2.0g/60kg b.w./日である。
【0015】
本発明の一実施例において、被験者がマウスである場合、有効投与量は、0.1g/kg b.w./日~0.5g/kg b.w./日である。
【0016】
本発明の一実施例において、メシマコブGKPlの抽出物を投与しない対照被験者に比べて、メシマコブGKPlの抽出物を投与した被験者は、運動後の血液中の乳酸含有量が低下し、ここで対照被験者と被験者の両方とも、筋萎縮症を持っていない。
【発明の効果】
【0017】
本発明のメシマコブGKPlの抽出物を使用することで、肝臓及び/又は筋肉中のグリコーゲン含有量を向上させ、且つ被験者の運動後の血液中の尿素窒素含有量を低下させ、それによって運動パフォーマンスを向上させ、及び/又は運動疲労を軽減することができるため、有効成分として、様々な組成物を調製するために用いられてよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の上記及び他の目的、特徴、利点及び実施例をより分かりやすくするために、以下の添付図面を詳しく説明する。
図1】表1に示す対照群及び実験群のマウスの荷重かけ水泳力尽時間の棒グラフである。
図2】表2に示す対照群及び実験群のマウスのランニングマシンの力尽時間の棒グラフである。
図3A】表3に示す対照群及び実験群のマウスの血液中の乳酸上昇比率の棒グラフである。
図3B】表3に示す対照群及び実験群のマウスの血液中の乳酸除去比率の棒グラフである。
図4】表4に示す対照群及び実験群のマウスの長時間水泳前後の血液中の尿素窒素含有量の棒グラフである。
図5】表5に示す対照群及び実験群のマウスの肝臓及び筋肉中のグリコーゲン含有量の棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
引用文献における用語に対する定義又は使い方が、本明細書における該用語に対する定義と一致しないか又は逆であれば、引用文献における該用語に対する定義を使用せず、本明細書における該用語に対する定義を使用する。また、コンテキストに特に定義されない限り、単数の用語は複数を含んでよく、複数の用語は単数を含んでもよい。
【0020】
前述のように、本発明は、メシマコブ(Phellinus linteus)GKPlの抽出物を含有する運動パフォーマンス向上用、運動疲労軽減用組成物を提供し、メシマコブGKPIの抽出物は、被験者の筋肉、肝臓中のグリコーゲン含有量を向上させ、被験者の運動後の血液中の乳酸及び尿素窒素の含有量を低下させ、これによって運動パフォーマンスを向上させ、及び/又は運動疲労を軽減することができる。
【0021】
ここでいう「被験者」とは、健康な人である。幾つかの実施例において、被験者とは、健康なアスリート及び/又は他のトレーニング計画を持つ健康な人である。幾つかの実施形態において、被験者は、筋肉疾患を有さない。幾つかの実施形態において、筋肉疾患は、筋萎縮症及び/又はサルコペニアを含んでよいが、これらに限定されない。
【0022】
ここでいう「運動パフォーマンス」とは、運動時に被験者が示す速度、力、スキル及び/又は協調性である。異なる種類の運動は、異なる方式で運動パフォーマンスを評価してよい。幾つかの実施例において、運動パフォーマンスは、筋持久力及び/又は心肺持久力を含む。幾つかの実施例において、運動パフォーマンスは、運動持続時間及び/又は肝臓及び筋肉中のグリコーゲン含有量で評価してよい。幾つかの実施例において、運動持続時間は、荷重かけ水泳力尽時間及び/又はランニングマシンの力尽時間で評価してよい。
【0023】
ここでいう「運動疲労」とは、被験者が運動時、運動後、運動して休憩した後の疲労度である。幾つかの実施例において、運動疲労度は、運動後の血液中の乳酸及び/又は尿素窒素含有量で評価してよい。
【0024】
グリコーゲンは、動物がエネルギーを貯蔵する物質の1つで、グルコースが脱水縮合して形成される多糖であり、肝細胞及び筋細胞に生成して貯蔵することができることを補足として説明する。筋肉が血液中のグルコースから十分なエネルギーをすぐに得ることができない場合、筋細胞は、筋肉が運動する時に必要なエネルギーを供給するように、細胞中のグリコーゲンを直接分解する。また、血液中のグルコース含有量が低下すると、肝細胞も、血液中のグルコース含有量を補充するように、細胞中のグリコーゲンを直接分解する。したがって、肝臓及び筋肉中のグリコーゲン含有量は、運動持久力に影響を与え、運動パフォーマンスを向上させることができる。
【0025】
有酸素呼吸によって生成されるエネルギーが筋肉に必要なエネルギーを満たしていない場合、筋肉も解糖の作用によって十分なエネルギーを得て、副産物である乳酸及び水素イオンを生成する。乳酸は、血液循環によって肝臓に移送されることができ、肝臓がコーリサイクル(Cori cycle)によって乳酸を除去し、且つグルコースを生成することができる。水素イオンも、以上の過程において除去されることができる。しかしながら、乳酸の生成速度が除去速度より大きい場合、乳酸及び水素イオンは、筋肉に大量に蓄積され、それによって筋肉のpH値を低下させ、且つ酵素のエネルギー伝達に影響を与え、筋肉の痛み、重み、発熱等の運動疲労症状を引き起こす。したがって、血液中の乳酸含有量は、運動疲労の指標としてよい。
【0026】
体がエネルギーを使う順序は、炭水化物(例えば、グルコース及び/又はグリコーゲン)、脂肪、タンパク質である。したがって、長時間運動した後、糖類又は脂肪の分解代謝によって十分なエネルギーを供給できない場合、筋肉はタンパク質及びアミノ酸を分解することで、エネルギーを生成し、且つ肝臓に尿素窒素を生成する。尿素窒素は、血液によって腎臓に送られ、そして尿液を介して体外に排出される。したがって、血液中の尿素窒素(Blood urea nitrogen;BUN)含有量も、運動疲労の指標としてよい。
【0027】
幾つかの実施例において、運動前後の血液中の乳酸及び/又は尿素窒素の含有量の差異をそれぞれ比較することで、運動後の乳酸及び/又は尿素窒素の蓄積量を評価してよい。別の具体例において、短時間運動して休憩した後の血液中の乳酸含有量の差異をそれぞれ比較することで、運動して休憩した後の血液中の乳酸の除去量を評価してよい。
【0028】
本明細書に記載される「運動」は有酸素運動及び無酸素運動に分けられてよいことを補足として説明する。有酸素運動とは、運動持続時間が長く、安定した規則的な筋肉の収縮と弛緩を必要とする中強度の運動である。有酸素運動のエネルギーは、主に有酸素呼吸によって糖類又は脂肪を分解して生成される。幾つかの具体例において、有酸素運動は、長距離ランニング、ウォーキング、サイクリング、水泳、有酸素ボクシング、及び/又は有酸素ダンスを含んでよいが、これらに限定されない。無酸素運動とは、運動持続時間が短く、筋肉が瞬発力を生み出す必要がある高強度の運動である。無酸素運動のエネルギーは、主に解糖によってグリコーゲンを分解して生成される。幾つかの具体例において、無酸素運動は、短距離ランニング及び/又はウエイトトレーニング等を含んでよいが、これらに限定されない。しかし実際には、有酸素運動でも無酸素運動でも、有酸素呼吸及び解糖によってエネルギーを得る。幾つかの実施例において、本発明に記載される「長時間運動」とは、筋肉がタンパク質及び/又はアミノ酸でエネルギーを生成する必要になるまで、上記有酸素運動又は無酸素運動を持続的に行うことである。
【0029】
実験によると、メシマコブGKPlの抽出物を投与しない対照被験者に比べて、メシマコブGKPlの抽出物を投与した被験者の運動持続時間、肝臓及び/又は筋肉中のグリコーゲン含有量が増加し、それはメシマコブGKPlの抽出物が運動パフォーマンスを確実に高めることができることを示す。上記実施例において、被験者は、1日間~10日間の運動トレーニング、又はより長期の運動トレーニングを受ける。また、メシマコブGKPlの抽出物を投与しない対照被験者に比べて、メシマコブGKPlの抽出物を投与した被験者の運動後の血液中の乳酸及び/又は尿素窒素の含有量が低下し、それはメシマコブGKPlの抽出物が運動疲労を確実に軽減することができることを示す。
【0030】
ここでいうメシマコブGKPl(菌株GKPlとも呼ばれる)は、その菌糸体が2019年7月18日に台湾食品工業発展研究所(Food Industry Research and Development Institute;FIRDI)生物資源保存及び研究センター(Bioresource Collection and Research Center;BCRC、アドレス:30062台湾新竹市東区食品路331号)に寄託され、受託番号がBCRC 930210である。菌株GKPlの菌糸体はまた、2020年11月12日に日本独立行政法人製品評価技術基盤機構(National Institute of Technology and Evaluation;NITE)特許微生物寄託センター(Patent Microorganisms Depositary、アドレス:〒292-0818 日本千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に寄託され、受託番号はNITE BP-03321である。本発明は、運動パフォーマンスを向上させ、及び/又は運動疲労を軽減する効果を果たすためには、特定の菌株のメシマコブを選択する必要があることを補足として説明する。メシマコブが菌株GKPlでなければ、運動パフォーマンスの向上又は運動疲労の軽減等の効果の取得は期待できない。
【0031】
上記菌株GKPlの抽出物に、複数の培養ステップ処理によってバイオマスを増加させてよい。複数の培養ステップ処理は、周知の培養方法で行ってよい。幾つかの実施例において、複数の培養ステップ処理は、固体培養ステップ、液体培養ステップ、及び発酵ステップを選択的に含んでよい。
【0032】
詳しくは、第1の培養物を得るように、固体培養ステップは、15℃~30℃、固体培地で菌株GKPlの抽出物に対して7日間~14日間行ってよい。固体培地の配合成分は、特に限定されず、周知の固体培地であってよい。幾つかの実施例において、固体培地は、炭素源、窒素源、及びポテトデキストロース寒天培地(potato dextrose agar;PDA)を含んでよいが、これらに限定されない。
【0033】
第2の培養物を得るように、液体培養ステップは、15℃~30℃、pH2~pH6、110rpm~130rpmの振動速度、液体培地で第1の培養物に対して3日間~21日間行ってよい。液体培地の成分は、特に限定されず、需要に応じて調整してよい。幾つかの実施例において、液体培地は、1.00重量%~3.00重量%の包括的な炭素・窒素源、1.00重量%~4.00重量%の糖類、0.10重量%~1.00重量%の酵母エキス、0.10重量%~1.00重量%のペプトン、0.01重量%~0.50重量%の無機塩類、及びバランスの取れた量の水を含んでよいが、これらに限定されない。幾つかの具体例において、包括的な炭素・窒素源は、例えば穀類(例えば、小麦粉)及び/又は豆類(例えば、大豆粉、緑豆粉及び/又はカシア粉)であってよい。幾つかの具体例において、糖類は、単糖(例えば、グルコース及び/又はフルクトース)及び/又は二糖(例えば、マルトース及び/又はスクロース)を含んでよいが、これらに限定されない。幾つかの具体例において、無機塩類は、例えばリン酸塩(例えば、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム)及び/又は硫酸塩(例えば、硫酸マグネシウム及び/又は硫酸鉄)であってよい。
【0034】
バイオマスと増殖活性が増加したGKP1菌糸体を含有する菌株GKPlの発酵物(以下GKPl発酵物と略称する)を得るように、発酵ステップは、15℃~30℃、pH2~pH6、50rpm~150rpmの振動速度、発酵培地で第2の培養物に対して3日間~21日間行ってよい。幾つかの実施例において、発酵ステップは、発酵槽内で行ってよい。幾つかの具体例において、発酵槽の槽圧は、0.5kg/cm~1.0kg/cmであってよく、且つ発酵槽の通気速度は、1.0vvm~1.5vvmであってよく、ここでvvmとは、本明細書では導入された空気体積/発酵培地体積/分である。発酵培地の成分は、特に限定されない。幾つかの実施例において、発酵培地の成分は、上記液体培地と同じである。
【0035】
幾つかの実施例において、菌株GKPl菌糸体の乾燥物(以下GKPl乾燥物と略称する)を得るように、発酵ステップの後、GKPl発酵物を選択的に乾燥処理してよい。乾燥処理は、凍結乾燥法、真空乾燥法、又は噴霧乾燥法等、周知の乾燥方法で行ってよい。幾つかの実施例において、GKPl発酵物のGKPl乾燥物に対する体積重量比率(単位:L:kg)は、例えば100:5~100:1であってよい。
【0036】
抽出処理は、例えば周知の抽出方法で行ってよい。幾つかの実施例において、GKPl抽出物は、GKPl熱水抽出物及び/又はGKPlエタノール抽出物を含んでよいが、これらに限定されない。幾つかの実施例において、GKPl熱水抽出物は、GKPl発酵物及び/又はGKPl乾燥物を熱水抽出処理して得られてよい。幾つかの実施例において、熱水抽出処理に使用される熱水の温度は、例えば80℃~120℃であってよい。幾つかの実施例において、熱水抽出処理の時間は、例えば20分間~40分間であってよい。幾つかの例において、GKPl発酵物及び/又はGKPl乾燥物の熱水に対する体積比は、例えば1/50~1/1、又は1/30~1/10、又は1/20であってよい。
【0037】
幾つかの実施例において、GKPlエタノール抽出物は、GKPl発酵物及び/又はGKPl乾燥物をエタノール抽出処理して得られてよい。幾つかの実施例において、エタノール抽出処理の時間は、例えば50分間~70分間であってよい。幾つかの例において、GKPl発酵物及び/又はGKPl乾燥物のエタノールに対する重量比は、例えば1/50~1/1、又は1/30~1/10、又は1/20であってよい。幾つかの具体例において、エタノール抽出処理は、超音波ステップを選択的に含んでよい。幾つかの実施例において、GKPl発酵乾燥物を得るように、GKPl熱水抽出物及び/又はGKPlエタノール抽出物は、乾燥ステップを更に経てよい。
【0038】
メシマコブGKPlの菌糸体、その発酵物及び乾燥物は、いずれも運動パフォーマンスを向上させ、運動疲労を軽減する活性物質を含有し、抽出処理は、これらの活性物質の濃度を向上させることしかできず、本発明を限定することを意図しないことを補足として説明する。換言すれば、本発明のメシマコブGKPlの菌糸体の発酵物及びその乾燥物も、運動パフォーマンスを向上させ、運動疲労を軽減する効果を有するはずである。
【0039】
注意すべきなのは、本発明に記載されるメシマコブGKPlの抽出物が更なる精製を経ないため、未知で分離できない成分を複数種含有し、そのうち運動パフォーマンスを向上させ、運動疲労を軽減する活性物質を含んでよいことである。また、本発明は、メシマコブGKPlの抽出物が運動パフォーマンスを向上させ、運動疲労を軽減する効果を達成することができることを証明するが、メシマコブGKPlの抽出物は、複数種の活性物質を含有し、そのうちの単一物質、及び/又は未知で分離できない成分を除外したものが、依然として運動パフォーマンスを向上させ、運動疲労を軽減する効果を達成することができることを合理的に予期することができない。したがって、本発明に記載されるメシマコブGKPlの抽出物は、成分、特性、又はパラメータで定義することができず、即ち、本発明は、成分、特性、又はパラメータで定義することが不可能又は実際的でない場合がある。
【0040】
菌株GKPlの抽出物は、運動パフォーマンスを向上させ、及び/又は運動疲労を軽減する効果を有するため、運動パフォーマンス向上用、及び/又は運動疲労軽減用組成物に適用してよい。幾つかの実施例において、組成物は、菌株GKPlの熱水抽出物及び/又はエタノール抽出物を有効成分として含んでよいが、これらに限定されない。別の実施例において、組成物の有効成分は、菌株GKPlの熱水抽出物及びエタノール抽出物からなる。幾つかの実施例において、熱水抽出物及びエタノール抽出物の重量比は、特に限定されない。一具体例において、熱水抽出物及びエタノール抽出物の重量比は、5:1~1:5、又は3:1~1:3、又は1:1である。
【0041】
上記の運動パフォーマンス向上用、及び/又は運動疲労軽減用組成物は、例えば経口組成物であってよい。幾つかの実施例において、組成物は、例えば医薬組成物又は食品組成物であってよい。医薬組成物に適する例としては、医薬品が挙げられるが、これに限定されない。食品組成物に適する例としては、一般食品、健康食品、飲料、栄養補助食品、運動サプリメント、乳製品、又は飼料等が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施例において、経口組成物は、医薬及び食品に許容可能な担体、賦形剤及び/又は添加剤を選択的に含んでよい。別の例において、経口組成物の剤形は、粉剤、錠剤、粒剤、座剤、マイクロカプセル、アンプル、液体スプレー、又は塞栓剤を含んでよいが、これらに限定されない。幾つかの実施例において、組成物は、有効成分(菌株GKPlの熱水抽出物及びエタノール抽出物からなる)及び他の医薬及び食品に許容可能な担体、賦形剤及び/又は添加剤からなる。
【0042】
適用する際に、菌株GKPlの抽出物を含有する経口組成物を被験者に一定の期間連続投与してよい。前述の有効投与量及び投与期間は、被験者によって異なり、特に限定されない。例えば、被験者が成人である場合、菌株GKPlの抽出物の有効投与量は、例えば0.1g/60kg体重(body weight;b.w.)/日~2.0g/60kg b.w./日であってよいが、0.5g/60kg b.w./日~1.5g/60kg b.w./日が好ましく、1.0g/60kg b.w./日がより好ましい。別の例において、被験者がマウスである場合、菌株GKPlの抽出物の有効投与量は、例えば0.1g/kg b.w./日~0.5g/kg b.w./日であってよいが、0.1g/kg b.w./日~0.3g/kg b.w./日が好ましく、0.15g/kg b.w./日~0.25g/kg b.w./日がより好ましい。別の例において、前述の投与期間は、例えば少なくとも28日間連続してもよく、又はより長くても短くてもよい。
【0043】
以下、複数の実施例を用いて本発明の応用を説明するが、それは本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正を行うことができる。
実施例1、GKPlの抽出物の調製
1.1 メシマコブ菌株GKPlの由来
【0044】
本実施例で使用されるメシマコブ菌株GKPlの菌糸体の受託番号は、BCRC 930210又はNITE BP-03321である。菌株GKPlは、中国の野生のメシマコブシの子実体から分離された菌糸体である。メシマコブGKPlの微生物学的性質及び培養方式について、台湾特許(公開番号:TW I729928 B)、台湾特許(公開番号:TW I766394 B)、及び日本特許出願(公開番号:JP 2022067043 A)を参照し、ここで合わせて参考文献とする。
1.2 メシマコブ菌株GKPlの抽出物の調製
【0045】
菌株GKPl菌糸体をポテトデキストロース寒天培地に接種し、且つ25℃で7日間の固体培養ステップを行い、それによって第1の培養物を得る。次に、25℃、pH4.5、120rpmの振動速度、液体培地で第1の培養物に対して14日間の液体培養ステップを行い、それによって第2の培養物を得る。上記液体培地は、1.0重量%の包括的な炭素・窒素源、1.0重量%の糖類、0.3重量%の酵母エキス、0.3重量%のペプトン、及び0.1重量%の無機塩類を含む。包括的な炭素・窒素源、糖類、及び無機塩類の具体的な配合成分は、当業者にとって熟知しているものであり、実際の必要に応じて任意に調整してよく、ここでは説明を省略する。
【0046】
次に、25℃、pH5、80rpmの振動速度、0.5kg/cmの槽圧、1.0vvmの空気の通気速度で、上記培養液で第2の培養物に対して14日間の発酵ステップを行い、それによって菌株GKPl菌糸体の発酵物を得る。その後、菌株GKPl菌糸体の発酵物を凍結乾燥することで、菌株GKPl菌糸体の発酵物の凍結乾燥粉末(以下GKPl凍結乾燥粉末と略称する)を得る。本実施例において、100Lの菌株GKPl菌糸体の発酵物から、3kgのGKPl凍結乾燥粉末を得ることができる。
【0047】
次に、菌株GKPlの熱水抽出物及びエタノール抽出物(以下、それぞれGKPl熱水抽出物、GKPlエタノール抽出物と略称する)をそれぞれ調製する。GKPl熱水抽出物は、GKPl凍結乾燥粉末を蒸留水に添加した後、100℃で30分間熱水抽出処理して得られ、ここでGKPl凍結乾燥粉末の蒸留水に対する体積比は1/20である。GKPlエタノール抽出物は、GKPl凍結乾燥粉末をエタノールに添加した後、25℃で60分間のエタノール抽出処理及び超音波ステップを行って得られ、ここでGKPl凍結乾燥粉末のエタノールに対する重量比は1/20である。GKPl熱水抽出物とGKPlエタノール抽出物を1:1の重量比で混合し、それによって菌株GKPl抽出物(以下GKPl抽出物と略称する)を得る。菌株GKPl抽出物に対して凍結乾燥ステップを更に行うことで、GKPl凍結乾燥粉末を得る。

実施例2、運動パフォーマンスを向上させ、運動疲労を軽減するGKPl抽出物の効果の評価
2.1 実験用動物
【0048】
以下の実施例では、6週齢のICR系の雄マウス12匹を、対照群とメシマコブ群に分け、各群に6匹とする。1日目~28日目に、毎日朝9時に経口方式でマウスに水(対照群)又はGKPl抽出物(実験群)を二回投与し、且つマウスの体重、食物摂取量及び飲水量を観察し記録する。29日目~37日目に、荷重かけ水泳力尽実験(単位:分)、ランニングマシン力尽実験(単位:分)を行い、短時間水泳前後及び休憩後の血液中の乳酸含有量の変化比率、長時間水泳後及び休憩後の尿素窒素含有量(単位:mg/dL)、及び肝臓及び筋肉中のグリコーゲン含有量(mg/g肝臓又はmg/g筋肉)を測定する。
2.2 荷重かけ水泳力尽実験
【0049】
31日目に、荷重かけ水泳力尽実験を行う。実験前に、マウスに12時間絶食させる。実験の30分前に、マウスに水(対照群)及びGKPl抽出物(実験群)を二回投与する。実験を行う際、マウス体重の5%の鉛シートをマウスの尻尾の付け根に固定し、マウスを水槽に入れ、マウスを強制的に泳がせる。水槽の水温を27±1℃に維持し、実験では、単独水泳で行って、集団水泳時の押し込みによる実験結果への影響を避ける。
【0050】
実験全過程において、マウスの四肢が動いていることを確保する必要があり、マウスが水に浮いて手足を動かさない場合は、撹拌棒を用いてその近くでかき混ぜる。マウスは、協調運動を失い、且つ7秒以内に水面に戻ることができない(即ち泳いで力を尽した)場合、実験を終了する。実験開始から実験終了までの時間を、マウスの荷重かけ水泳力尽時間(即ち持続時間)として計算する。実験結果を表1に記録する。
【0051】
【表1】
【0052】
図1を参照し、それは、表1に示す対照群及び実験群のマウスの荷重かけ水泳力尽時間の棒グラフであり、ここで横軸は群を表し、縦軸は荷重かけ水泳力尽時間(単位:分)を表し、図番号「***」は、対照群に比べて統計的に有意な差(p<0.001)を有することを示す。
【0053】
図1に示すように、実験群のマウスの荷重かけ水泳力尽時間は、対照群よりも有意に長く(約78.89%増加)、それは、GKPl抽出物がマウスの運動持続時間を確実に増加させることができ、運動パフォーマンスを向上させる効果を有することを示す。
2.3 ランニングマシン力尽実験
【0054】
31日目に、ランニングマシン力尽実験を行う。実験前に、マウスに12時間絶食させる。実験の30分前に、マウスに水(対照群)及びGKPl抽出物(実験群)を二回投与する。実験を行う際、マウスをランニングマシンのベルトに置き、ここでランニングマシンは、5°の勾配を有し、低いところを末端とする。ランニングマシンの末端に電撃グリッドが設けられ、マウスが走行を停止し、体のある部位が電撃グリッドに接触した時、マウスに電撃を与える。実験の最初に、ランニングマシンの速度を10m/分とし、実験を5分間行った後、ランニングマシンの速度を毎分2m/分上げ、マウスが力を尽してから実験を終了する。マウス力尽の基準は、マウスが複数回電撃されたか、又はマウスが連続5秒間電撃を受けたこととする。実験結果を表2に記録する。
【0055】
【表2】
【0056】
図2を参照し、それは、表2に示す対照群及び実験群のマウスのランニングマシンの力尽時間の棒グラフであり、ここで横軸は群を表し、縦軸はランニングマシンの力尽時間(単位:分)を表し、図番号「***」は、対照群に比べて統計的に有意な差(p<0.001)を有することを示す。
【0057】
図2に示すように、実験群のマウスのランニングマシンの力尽時間は、対照群よりも有意に長く(約62.42%増加)、それは、GKPl抽出物がマウスの運動持続時間を確実に増加させることができ、運動パフォーマンスを向上させる効果を有することを示す。
2.4 血液中の乳酸上昇比率及び休憩後の血液中の乳酸除去比率
【0058】
35日目に、マウスの短時間運動後の血液中の乳酸上昇比率及び休憩後の血液中の乳酸除去比率を測定する。まずマウスに水(対照群)及びGKPl抽出物(実験群)を二回投与し、30分間後に一回目の採血を行い、マウスの水泳前の血液サンプルを得る。次に、マウスを水温が30℃の水槽で10分間泳がせた後、二回目の採血を行い、水泳後の血液サンプルを得る。その後、マウスが20分間休憩した後、三回目の採血を行い、マウスが水泳して休憩した後の血液サンプルを得る。
【0059】
水泳前の血液サンプル、水泳後の血液サンプル、及び水泳して休憩した後の血液サンプルにおける血液中の乳酸含有量を測定することにより、水泳前の血液中の乳酸含有量、水泳後の血液中の乳酸含有量、及び水泳して休憩した後の血液中の乳酸含有量を得る。血液中の乳酸含有量は、全自動生化学分析装置(名称:HITACHI 7060;メーカー:日本東京日立)で測定する。
【0060】
水泳後の血液中の乳酸含有量と水泳前の血液中の乳酸含有量との差の、水泳前の血液中の乳酸含有量に対する比率を計算することにより、水泳後の血液中の乳酸上昇比率を得る。水泳後の血液中の乳酸含有量と水泳して休憩した後の血液中の乳酸含有量との差の、水泳後の血液中の乳酸含有量に対する比率を計算することにより、休憩後の血液中の乳酸除去比率を得る。実験結果を表3に記録する。
【0061】
【表3】
【0062】
図3A及び図3Bを参照し、それらはそれぞれ表3に示す対照群及び実験群のマウスの血液中の乳酸上昇比率(図3A)及び除去比率(図3B)の棒グラフであり、ここで横軸は群を表し、縦軸はそれぞれ血液中の乳酸上昇比率(図3A、単位なし)及び血液中の乳酸除去比率(図3B、単位なし)を表し、図番号「*」は、対照群に比べて統計的に有意な差(p<0.05)を有することを示す。
【0063】
図3Aに示すように、実験群のマウスの血液中の乳酸上昇比率は、対照群よりも有意に小さく、それは、GKPl抽出物が運動時の血液中の乳酸蓄積を低減することができることを示す。次に、図3Bに示すように、実験群のマウスの休憩後の血液中の乳酸除去比率は、対照群よりも有意に高く、それは、GKPl抽出物が休憩時の乳酸除去を向上させることができ、運動疲労を効果的に軽減する効果を有することを示す。
2.5 長時間水泳前後の血液中の尿素窒素含有量
【0064】
37日目に、マウスの長時間水泳前後の血液中の尿素窒素含有量を測定する。まずマウスに水(対照群)及びGKPl抽出物(実験群)を二回投与し、30分間後に一回目の採血を行い、マウスの長時間水泳前の血液サンプルを得る。マウスを水温が30℃の水槽で60分間泳がせた後、二回目の採血を行い、長時間水泳後の血液サンプルを得る。
【0065】
長時間水泳前の血液サンプル及び長時間水泳後の血液サンプルの血液中の尿素窒素含有量を測定することにより、長時間水泳前の血液中の尿素窒素含有量及び長時間水泳後の血液中の尿素窒素含有量を得る。実験結果を表4に記録する。
【0066】
【表4】
【0067】
図4を参照し、それは、表4に示す対照群及び実験群のマウスの長時間水泳前後の血液中の尿素窒素含有量の棒グラフであり、ここで横軸は左から右へ、長時間水泳前と長時間水泳後を表し、縦軸は血液中の尿素窒素含有量(単位:mg/dL)を表し、直棒410及び直棒420はそれぞれ対照群と実験群を表し、図番号「*」は、対照群に比べて統計的に有意な差(p<0.05)を有することを示す。
【0068】
図4に示すように、長時間水泳を行う前(即ち通常活動状態で)、実験群及び対照群のマウスの血液中の尿素窒素含有量に統計的に有意な差がなく、それは、GKPl抽出物が通常活動状態でのマウスのタンパク質及び/又はアミノ酸の代謝に影響を与えないことを示す。しかし長時間水泳した後、実験群のマウスの血液中の尿素窒素含有量は、対照群よりも有意に低く、それは、GKPl抽出物が尿素窒素の蓄積を確実に低減することができ、運動疲労を効果的に軽減する効果を有することを示す。
2.6 肝臓及び筋肉中のグリコーゲン含有量
【0069】
39日目に、マウスの肝臓及び筋肉中のグリコーゲン含有量を分析する。まずマウスに水(対照群)及びGKPl抽出物(実験群)を二回投与し、30分間後にマウスを犠牲にする。マウスの肝臓及び後肢の下腿筋を取り外し、洗浄し、乾燥させた後に秤量する。次に、肝臓及び後肢の下腿筋の同じ位置にある組織をそれぞれ取り外し、且つ組織体積の5倍の10%氷過塩素酸を均質液とし、組織均質化装置(名称:Bullet Blender(登録商標);メーカー:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ市Next Advance)を用いて均質化を行い、それによって組織均質液を得る。
【0070】
4℃、12000xgで組織均質液を15分間遠心分離して、上澄液を得る。30μLの上澄液を200μLのヨウ素-ヨウ化カリウム(iodine-potassium iodide reagent)に10分間混合することで、上澄液中のグリコーゲンとヨウ素-ヨウ化カリウムとを反応させて、褐色の物質を生成する。ELISA(名称:Tecan Infinite M200;メーカー:オーストリア、ザルツブルグTecan Austria)で上澄液の波長460nmの光での吸光値を測定する。標準グリコーゲン(Sigmaから購入)で標準曲線を作成した後、各群のマウスの肝臓組織及び筋肉組織中のグリコーゲン含有量(mg/g肝臓又はmg/g筋肉)をそれぞれ計算する。結果を表5に記録する。
【0071】
【表5】
【0072】
図5を参照し、それは、表5に示す対照群及び実験群のマウスの肝臓及び筋肉中のグリコーゲン含有量の棒グラフであり、ここで横軸は部位を表し、左から右へ順に肝臓と筋肉であり、縦軸はグリコーゲン含有量(単位:mg/g 肝臓、mg/g 筋肉)を表し、棒510及び棒520はそれぞれ対照群及び実験群を表し、図番号「*」は、対照群に比べて統計的に有意な差(p<0.05)を有することを示す。
【0073】
図5に示すように、数日間のトレーニングを経て、実験群のマウスの肝臓及び筋肉中のグリコーゲン含有量は対照群よりも有意に高く、それは、GKPl抽出物が肝臓及び筋肉中のグリコーゲン含有量を確実に高めることができ、運動パフォーマンスを向上させる効果を有することを示す。
【0074】
以上より、上記特定の培養方式、特定の抽出方式、特定の投与量、特定の剤形、特定の実験用動物、又は特定の評価方式は、本発明のメシマコブGKPl抽出物を含有する運動パフォーマンス向上用、運動疲労軽減用組成物を例示的に説明するためだけに用いられる。しかしながら、当業者であれば理解できるように、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、他の培養方式、他の抽出方式、他の投与量、他の剤形、他の実験用動物、又は他の評価方法も、運動パフォーマンス向上用、運動疲労軽減用組成物に適用することができ、上記のものに限定されない。例えば、複数の培養ステップ処理は、メシマコブGKPlの抽出物のバイオマス及び生物活性を向上させるためだけに用いられ、周知の条件で複数の培養ステップ処理を行うことによって得られるメシマコブGKPlの抽出物も、運動パフォーマンスを向上させ、運動疲労を軽減する効果を有するはずである。
【0075】
上記実施例から分かるように、本発明のメシマコブGKPlの抽出物を含有する運動パフォーマンス向上用、運動疲労軽減用組成物は、その利点が、特定の菌株のメシマコブGKPlの抽出物を使用することで、運動持続時間、肝臓及び筋肉中のグリコーゲン含有量を向上させ、且つ運動後の血液中の乳酸及び尿素窒素の含有量を低下させることであり、したがって、運動パフォーマンス向上用、運動疲労軽減用組成物の有効成分としてよい。
【0076】
本発明は、複数の特定の実施例で以上にように開示されたが、前述の発明内容に対して様々な修正、変更及び置換を行うことができ、また、本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、幾つかの場合には本発明の実施例のいくつかの特徴を採用するが、他の特徴を対応的に使用しないことを理解すべきである。したがって、本発明の精神及び特許請求の範囲は、以上で例示した実施例に限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0077】
410、420、510、520 直棒
[生物材料の寄託]
メシマコブ(Phellinus linteus)は2019年7月18日に台湾新竹食品路331号財団法人食品工業発展研究所生物資源センター(BCRC)に寄託され、受託番号がBCRC 930210である。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-07-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メシマコブ(Phellinus linteus)GKPlの抽出物を含有する、筋肉中のグリコーゲン含有量を向上させるための組成物であって、前記組成物は、前記メシマコブGKPlの菌糸体の抽出物を有効成分として含み、前記抽出物は、熱水抽出物及び/又はエタノール抽出物を含み、前記エタノール抽出物は前記メシマコブGKPlの菌糸体をエタノールでエタノール抽出処理して得られ、前記メシマコブGKPlは、2019年7月18日に台湾食品工業発展研究所(Food Industry Research and Development Institute;FIRDI)生物資源保存及び研究センター(Bioresource Collection and Research Center;BCRC)に寄託され、受託番号はBCRC 930210であり、それによって筋萎縮症を持っていない被験者の筋肉中のグリコーゲン含有量を向上させる、メシマコブ(Phellinus linteus)GKPlの抽出物を含有する筋肉中のグリコーゲン含有量を向上させるための組成物。
【請求項2】
前記熱水抽出物は、前記メシマコブGKPlの菌糸体を80℃~120℃の水で20分間~40分間熱水抽出処理して得られる、請求項1に記載のメシマコブGKPlの抽出物を含有する筋肉中のグリコーゲン含有量を向上させるための組成物。
【請求項3】
前記被験者は、1日間~10日間の運動トレーニングを受けている、請求項1に記載のメシマコブGKPlの抽出物を含有する筋肉中のグリコーゲン含有量を向上させるための組成物。
【請求項4】
前記組成物は、医薬組成物又は食品組成物である、請求項1に記載のメシマコブGKPlの抽出物を含有する筋肉中のグリコーゲン含有量を向上させるための組成物。
【請求項5】
前記組成物は、医薬及び/又は食品に許容可能な担体、賦形剤及び/又は添加剤を更に含む、請求項1に記載のメシマコブGKPlの抽出物を含有する筋肉中のグリコーゲン含有量を向上させるための組成物。
【請求項6】
前記メシマコブGKPlの前記抽出物を投与しない対照被験者に比べて、前記メシマコブGKPlの前記抽出物を投与した被験者は、運動持続時間が増加し、且つ前記対照被験者は、筋萎縮症を持っていない、請求項1に記載のメシマコブGKPlの抽出物を含有する筋肉中のグリコーゲン含有量を向上させるための組成物。
【請求項7】
前記組成物を少なくとも連続28日間投与した被験者の運動後の血液中の尿素窒素含有量を低下させる、請求項1に記載のメシマコブGKPlの抽出物を含有する筋肉中のグリコーゲン含有量を向上させるための組成物。
【請求項8】
前記被験者が成人である場合、有効投与量は、0.1g/60kg体重(body weight;b.w.)/日~2.0g/60kg b.w./日である、請求項に記載のメシマコブGKPlの抽出物を含有する筋肉中のグリコーゲン含有量を向上させるための組成物。
【請求項9】
前記被験者がマウスである場合、有効投与量は、0.1g/kg b.w./日~0.5g/kg b.w./日である、請求項に記載のメシマコブGKPlの抽出物を含有する筋肉中のグリコーゲン含有量を向上させるための組成物。
【請求項10】
前記メシマコブGKPlの前記抽出物を投与しない対照被験者に比べて、前記メシマコブGKPlの前記抽出物を投与した被験者は、運動後の血液中の乳酸含有量が低下し、且つ前記対照被験者は、筋萎縮症を持っていない、請求項に記載のメシマコブGKPlの抽出物を含有する筋肉中のグリコーゲン含有量を向上させるための組成物。