(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143963
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】複合式高速アニーリング装置とその方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/324 20060101AFI20241003BHJP
C30B 29/36 20060101ALI20241003BHJP
C30B 33/02 20060101ALI20241003BHJP
H01L 21/268 20060101ALI20241003BHJP
H05B 6/80 20060101ALI20241003BHJP
H05B 6/10 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L21/324 J
C30B29/36 A
C30B33/02
H01L21/268 Z
H01L21/324 C
H05B6/80 Z
H05B6/10 381
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106200
(22)【出願日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】112112357
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】521488440
【氏名又は名称】明遠精密科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】寇崇善
【テーマコード(参考)】
3K059
3K090
4G077
【Fターム(参考)】
3K059AA09
3K059AD03
3K090AB13
3K090BA05
4G077AA02
4G077BE08
4G077FE14
4G077HA12
(57)【要約】
【課題】複合式高速アニーリング装置とその方法を提供する。
【解決手段】複合式高速アニーリング装置は、二つの電極と、加熱チャンバーと、誘導加熱装置と、誘電加熱装置と、を備え、少なくとも一つの加工対象物は、二つの電極の間に置かれており、且つ加熱チャンバーのチャンバー内に位置する。複合式高速アニーリング方法において、複合式高速アニーリング装置の誘導加熱装置は、加工対象物に対して誘導加熱工程を行う。加工対象物の導電率が温度の上昇により降下したと、二つの電極は加工対象物を加熱し、且つ誘電加熱装置も加工対象物に対して誘電加熱工程を行う。これにより、加工対象物の加熱速度を一定に保持することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの加工対象物が二つの電極の間に置かれている二つの電極と、
少なくとも前記加工対象物を収容するためのチャンバーを有する加熱チャンバーと、
前記加熱チャンバーにおける前記加工対象物に対して、誘導加熱工程を行い、誘導磁界を発生することにより、前記加工対象物に渦電流を発生して、前記加工対象物を加熱する誘導加熱装置と、
前記加熱チャンバーにおける前記加工対象物に対して、誘電加熱工程を行い、前記二つの電極に電界を発生することにより、前記二つの電極の間に位置する前記加工対象物を加熱する誘電加熱装置と、
を備え、
前記誘導加熱装置と前記誘電加熱装置とは、それぞれ前記誘導加熱工程および前記誘電加熱工程を同時に、逐次、断続的に、又は交互に行うことを特徴する複合式高速アニーリング装置。
【請求項2】
前記誘導加熱装置は、前記加熱チャンバーにおける前記加工対象物と前記二つの電極とに対して、前記誘導加熱工程を行うことにより、前記加工対象物と前記二つの電極とを加熱することを特徴する、請求項1に記載の複合式高速アニーリング装置。
【請求項3】
更に、前記加熱チャンバーに設けられているファラデー遮蔽層を備え、前記誘導加熱装置は、前記ファラデー遮蔽層を通って、前記加熱チャンバーの前記チャンバーにおいて、前記誘導磁界を形成することを特徴する、請求項1に記載の複合式高速アニーリング装置。
【請求項4】
前記ファラデー遮蔽層は、複数の開口を有する金属シリンダーであることを特徴する、請求項3に記載の複合式高速アニーリング装置。
【請求項5】
前記金属シリンダーは、前記加熱チャンバーの輻射熱ロスを減少するための反射面を有することを特徴する、請求項4に記載の複合式高速アニーリング装置。
【請求項6】
前記金属シリンダーの前記反射面には、更に、反射層が覆われていることを特徴する、請求項5に記載の複合式高速アニーリング装置。
【請求項7】
前記二つの電極と前記加工対象物との間には、少なくとも一つのバリア層が設けられていることを特徴する、請求項1に記載の複合式高速アニーリング装置。
【請求項8】
前記加工対象物は、複数あり、その間に少なくとも一つのバリア層が設けられていることを特徴する、請求項1に記載の複合式高速アニーリング装置。
【請求項9】
前記バリア層と前記加工対象物のうちの一方は多結晶構造であり、前記バリア層と前記加工対象物のうちの他方は単結晶構造であることを特徴する、請求項7又は8に記載の複合式高速アニーリング装置。
【請求項10】
前記誘導加熱装置と前記誘電加熱装置とは、前記加工対象物と前記バリア層とに対して、前記誘導加熱工程と前記誘電加熱工程とを行うことにより、前記加工対象物と前記バリア層とを加熱することを特徴する、請求項7又は8に記載の複合式高速アニーリング装置。
【請求項11】
前記加工対象物は、導体および非導体から構成されるグループから選んで採用することを特徴する、請求項1に記載の複合式高速アニーリング装置。
【請求項12】
前記加工対象物はウエハーであることを特徴する、請求項1に記載の複合式高速アニーリング装置。
【請求項13】
前記二つの電極の材料はグラファイトを採用することを特徴する、請求項1に記載の複合式高速アニーリング装置。
【請求項14】
前記誘導加熱装置は、前記加熱チャンバーに巻き付けられているインダクタンスコイルを備え、前記誘導加熱装置は、前記インダクタンスコイルに第1の所定周波数を有する第1の交番電磁信号を加えることにより、前記加工対象物と前記二つの電極とに前記誘導磁界を発生することを特徴する、請求項1に記載の複合式高速アニーリング装置。
【請求項15】
前記第1の所定周波数の範囲は、50kHz~200kHzであることを特徴する、請求項14に記載の複合式高速アニーリング装置。
【請求項16】
前記誘電加熱装置は、第2の所定周波数を有する第2の交番電磁信号を加えることにより、前記加工対象物の両側に位置する前記二つの電極に前記電界を発生することを特徴する、請求項1に記載の複合式高速アニーリング装置。
【請求項17】
前記第2の所定周波数の範囲は、10MHz~900MHzであることを特徴する、請求項16に記載の複合式高速アニーリング装置。
【請求項18】
前記誘電加熱装置は、RF電源と、アダプターと、を備え、前記RF電源は、前記第2の所定周波数を有する前記第2の交番電磁信号を供給し、前記アダプターは、前記RF電源と前記二つの電極との間に位置し、両者と電気的に接続することにより、前記第2の交番電磁信号の反射を減少することを特徴する、請求項16に記載の複合式高速アニーリング装置。
【請求項19】
更に、前記加熱チャンバーの前記チャンバーとそれぞれ連通する、ガス入力ユニットと、ガス排出ユニットと、を備えることにより、前記加熱チャンバーの前記チャンバーは所定圧力に保持されることを特徴する、請求項1に記載の複合式高速アニーリング装置。
【請求項20】
前記加熱チャンバーの前記チャンバーの前記所定圧力の範囲は、0.1atm~10atmであることを特徴する、請求項19に記載の複合式高速アニーリング装置。
【請求項21】
更に、圧力検出ユニットとコントローラーとを含む測定及び制御システムを備え、前記圧力検出ユニットは、前記加熱チャンバーの前記チャンバーの気圧を測定するためのものであり、前記コントローラーは、前記気圧の大きさによって、前記ガス入力ユニット及び/又は前記ガス排出ユニットの操作を制御することを特徴する、請求項19に記載の複合式高速アニーリング装置。
【請求項22】
前記測定及び制御システムは、更に、前記加熱チャンバーの前記チャンバーの温度を測定するための高温計を備えることを特徴する、請求項21に記載の複合式高速アニーリング装置。
【請求項23】
前記加熱チャンバーは、キャビティーと、上蓋と、下蓋と、を備え、前記キャビティーは、前記上蓋と前記下蓋との間に位置し、両者と接続することにより、前記キャビティー、前記上蓋および前記下蓋の間に前記チャンバーが形成されることを特徴する、請求項1に記載の複合式高速アニーリング装置。
【請求項24】
前記加熱チャンバーの材料は、石英管やセラミックス管を採用することを特徴する、請求項23に記載の複合式高速アニーリング装置。
【請求項25】
誘導加熱装置により、少なくとも一つの加工対象物に対して、誘導加熱工程を行い、前記誘導加熱装置は、誘導磁界を発生して、前記加工対象物に渦電流を発生することにより、前記加工対象物を加熱するステップと、
誘電加熱装置により、前記加工対象物に対して、誘電加熱工程を行い、前記誘電加熱装置は、電界を発生することにより、前記加工対象物を加熱するステップと、
を含むことを特徴する複合式高速アニーリング方法。
【請求項26】
前記加工対象物は、二つの電極の間に載せられており、前記誘導加熱装置は、前記加工対象物と前記二つの電極とに対して、前記誘導加熱工程を行うことにより、前記加工対象物と前記二つの電極とを加熱し、前記誘電加熱装置は、前記二つの電極に前記電界を発生することにより、前記加工対象物を加熱することを特徴する、請求項25に記載の複合式高速アニーリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アニーリング装置とその方法に関し、特に、複合式高速アニーリング装置とその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素(SiC)は、広いバンドギャップ、高絶縁破壊電界、高い熱伝導率、優れた化学的不活性を有することにより、高温、高出力、高周波デバイスの製造に重要な半導体材料となっている。なお、イオン注入は、SiC半導体デバイスの作製に欠かせない技術である。
そして、アニーリング(Annealing)は、イオン注入の後、格子ダメージの除去と、注入されたイオンの活性化とに必要な工程である。炭化ケイ素にとって、1,500°Cより高い温度で、イオンを注入してアニーリングしないと、プロセス効果を得ることができない。
【0003】
従来のアニーリングは、通常、抵抗加熱や低周波誘導加熱を備えたセラミック炉で実行される。
しかし、セラミック炉の加熱/冷却速度は遅い(20°C/min)ため、1,500°C以上の温度で、炭化ケイ素をアニーリングすることが困難となる。
炭化ケイ素は、1,400°Cを超える温度で、長時間に暴露すると、基板表面上の構成物質は昇華と再堆積が起こって(一般にステップクラスタリング(Step Bunching)と呼ばれ)、炭化ケイ素のウエハー(Wafer)の表面粗さの増加を来して、最大アニーリング温度を制限する。
このようなアニーリング温度に対する制限により、注入されたイオンを十分に活性化することができない可能性があり、その結果、接触抵抗およびチャネル領域抵抗が高くなる。
【0004】
このため、従来のアニーリング技術のように、加熱速度が遅すぎて炭化ケイ素のウエハーの表面が劣化したという問題を回避するために、高速アニーリング技術の発展は鍵となる。
しかし、ハロゲンランプとレーザーとの技術により、高速に熱処理することができるが、依然として若干の問題が存在し、例えば、達成可能な最高アニーリング温度、表面熔解、残留欠陥密度が高く、及びインプラントの再分布などの問題がある。
【0005】
別の方面、炭化ケイ素は、マイクロ波エネルギーを有効に吸収することができ、適切にデザインされたアニーリングシステムを使用すると、マイクロ波により、極めて速い速度で炭化ケイ素のウエハーを加熱し、又は冷却することができ、アニーリングに掛かる時間に対して良く制御することもできる。
マイクロ波は、選択加熱の特性があり、半導体ウエハーだけに吸収され、周囲環境に吸収されず、アニーリングの加熱速度が極めて速い。そして、アニーリングの過程中に、炭化ケイ素のウエハーの周囲環境の温度の上昇は少なく、マイクロ波源をオフしたと、炭化ケイ素のウエハーの冷却速度は速い。
従来のアニーリング技術に比べて、マイクロ波を利用して、炭化ケイ素に対してアニーリングする場合には、小面積の炭化ケイ素のウエハーの加熱の結果によれば、加熱速度は600°C/sを超えることができ、温度は2,000°Cになることも可能である。
【0006】
しかし、マイクロ波の波長はより短く、反応チャンバーを加熱するときに、エネルギーの分布が不均一であるため、炭化ケイ素のウエハーの加熱ムラを来たす。特に、炭化ケイ素のウエハーの面積が増大すると、加熱反応キャビティーの体積が増加して、アニーリングするときに、加熱ムラの問題は酷くなる。そして、マイクロ波の必要なエネルギーも大幅に増加して、装置がより高価になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主な目的は、誘導加熱メカニズムと誘電加熱メカニズムを合わせたため、導体と非導体とを同時に加熱することができ、例えば誘導加熱メカニズムにより、炭化ケイ素のウエハーの温度を上昇することができ、且つ炭化ケイ素のウエハーの温度の上昇により、導電率が降下したときには、誘電加熱メカニズムにより、炭化ケイ素のウエハーの温度を上昇することにより、ウエハーの加熱速度を一定に保持することができる複合式高速アニーリング装置とその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
交番磁界(Alternating Magnetic Field)を発生させる電磁波により、炭化ケイ素のウエハーを加熱するときに、渦電流(Eddy Current)が発生して、誘導加熱(Induction Heating)効果を得ることができる。
しかし、温度が500度Kを超えたと、炭化ケイ素のウエハーの導電率は高速に降下して、その抵抗率の上昇を来す。そして、交番電界(Alternation Electric Field)を有する電磁波は、誘電加熱(Dielectric Heating)メカニズムを発生することにより、炭化ケイ素のウエハーを加熱することもできるため、炭化ケイ素のウエハーの誘電正接(Loss tangent)は、温度の上昇に従って増加し、温度の上昇が約摂氏1,000度程度を超えたと、誘電正接が高速で大幅に増加する。
このため、本発明は、複合式の加熱メカニズムを提案し、これは、誘導加熱メカニズムと誘電加熱メカニズムを合わせて、加工対象物(Workpiece)を加熱し、例えば炭化ケイ素のウエハーなどを加熱する。
【0009】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置によると、少なくとも一つの加工対象物が二つの電極の間に置かれている二つの電極と、
少なくとも加工対象物を収容するためのチャンバーを有する加熱チャンバーと、
加熱チャンバーにおける加工対象物に対して、誘導加熱工程を行い、誘導磁界を発生することにより、加工対象物に渦電流を発生して、加工対象物を加熱する誘導加熱装置と、
加熱チャンバーにおける加工対象物に対して、誘電加熱工程を行い、二つの電極に電界を発生することにより、二つの電極の間に位置する加工対象物を加熱する誘電加熱装置と、
を備え、
誘導加熱装置と誘電加熱装置とは、それぞれ誘導加熱工程および誘電加熱工程を同時に、逐次、断続的に、又は交互に行うことを特徴する。
【0010】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置によると、前記誘導加熱装置は、前記加熱チャンバーにおける前記加工対象物と前記二つの電極とに対して、前記誘導加熱工程を行うことにより、前記加工対象物と前記二つの電極とを加熱することを特徴する。
【0011】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置によると、更に、前記加熱チャンバーに設けられているファラデー遮蔽層を備え、前記誘導加熱装置は、前記ファラデー遮蔽層を通って、前記加熱チャンバーの前記チャンバーにおいて、前記誘導磁界を形成することを特徴する。
【0012】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置によると、前記ファラデー遮蔽層は、複数の開口を有する金属シリンダーであることを特徴する。
【0013】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置によると、前記金属シリンダーは、前記加熱チャンバーの輻射熱ロスを減少するための反射面を有することを特徴する。
【0014】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置によると、前記金属シリンダーの前記反射面には、更に、反射層が覆われていることを特徴する。
【0015】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置によると、前記二つの電極と前記加工対象物との間には、少なくとも一つのバリア層が設けられていることを特徴する。
【0016】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置によると、前記加工対象物は、複数あり、その間に少なくとも一つのバリア層が設けられていることを特徴する。
【0017】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置によると、前記バリア層と前記加工対象物のうちの一方は多結晶構造であり、前記バリア層と前記加工対象物のうちの他方は単結晶構造であることを特徴する。
【0018】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置によると、前記誘導加熱装置と前記誘電加熱装置とは、前記加工対象物と前記バリア層とに対して、前記誘導加熱工程と前記誘電加熱工程とを行うことにより、前記加工対象物と前記バリア層とを加熱することを特徴する。
【0019】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置によると、前記加工対象物は、導体および非導体から構成されるグループから選んで採用することを特徴する。
【0020】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置によると、前記加工対象物はウエハーであることを特徴する。
【0021】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置によると、前記二つの電極の材料はグラファイトを採用することを特徴する。
【0022】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置によると、前記誘導加熱装置は、前記加熱チャンバーに巻き付けられているインダクタンスコイルを備え、前記誘導加熱装置は、前記インダクタンスコイルに第1の所定周波数を有する第1の交番電磁信号を加えることにより、前記加工対象物と前記二つの電極とに前記誘導磁界を発生することを特徴する。
【0023】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置によると、前記第1の所定周波数の範囲は、50kHz~200kHzであることを特徴する。
【0024】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置によると、前記誘電加熱装置は、第2の所定周波数を有する第2の交番電磁信号を加えることにより、前記加工対象物の両側に位置する前記二つの電極に前記電界を発生することを特徴する。
【0025】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置によると、前記第2の所定周波数の範囲は、10MHz~900MHzであることを特徴する。
【0026】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置によると、前記誘電加熱装置は、RF電源と、アダプターと、を備え、前記RF電源は、前記第2の所定周波数を有する前記第2の交番電磁信号を供給し、前記アダプターは、前記RF電源と前記二つの電極との間に位置し、両者と電気的に接続することにより、前記第2の交番電磁信号の反射を減少することを特徴する。
【0027】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置によると、更に、前記加熱チャンバーの前記チャンバーとそれぞれ連通する、ガス入力ユニットと、ガス排出ユニットと、を備えることにより、前記加熱チャンバーの前記チャンバーは所定圧力に保持されることを特徴する。
【0028】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置によると、前記加熱チャンバーの前記チャンバーの前記所定圧力の範囲は、0.1atm~10atmであることを特徴する。
【0029】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置によると、更に、圧力検出ユニットとコントローラーとを含む測定及び制御システムを備え、前記圧力検出ユニットは、前記加熱チャンバーの前記チャンバーの気圧を測定するためのものであり、前記コントローラーは、前記気圧の大きさによって、前記ガス入力ユニット及び/又は前記ガス排出ユニットの操作を制御することを特徴する。
【0030】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置によると、前記測定及び制御システムは、更に、前記加熱チャンバーの前記チャンバーの温度を測定するための高温計を備えることを特徴する。
【0031】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置によると、前記加熱チャンバーは、キャビティーと、上蓋と、下蓋と、を備え、前記キャビティーは、前記上蓋と前記下蓋との間に位置し、両者と接続することにより、前記キャビティー、前記上蓋および前記下蓋の間に前記チャンバーが形成されることを特徴する。
【0032】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置によると、前記加熱チャンバーの材料は、石英管やセラミックス管を採用することを特徴する。
【0033】
本発明に係る複合式高速アニーリング方法によると、誘導加熱装置により、少なくとも一つの加工対象物に対して、誘導加熱工程を行い、誘導加熱装置は、誘導磁界を発生して、加工対象物に渦電流を発生することにより、加工対象物を加熱するステップと、
誘電加熱装置により、加工対象物に対して、誘電加熱工程を行い、誘電加熱装置は、電界を発生することにより、加工対象物を加熱するステップと、
を含むことを特徴する。
【0034】
本発明に係る複合式高速アニーリング方法によると、前記加工対象物は、二つの電極の間に載せられており、前記誘導加熱装置は、前記加工対象物と前記二つの電極とに対して、前記誘導加熱工程を行うことにより、前記加工対象物と前記二つの電極とを加熱し、前記誘電加熱装置は、前記二つの電極に前記電界を発生することにより、前記加工対象物を加熱することを特徴する。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置とその方法によれば、次のような効果がある。
(1)誘導加熱メカニズムと誘電加熱メカニズムを合わせるため、導体と非導体とを同時に加熱することができ、例えば誘導加熱メカニズムにより、炭化ケイ素のウエハーの温度を上昇することができ、且つ炭化ケイ素のウエハーの温度の上昇により、導電率が降下したときには、誘電加熱メカニズムにより、炭化ケイ素のウエハーの温度を上昇することにより、ウエハーの加熱速度を一定に保持することができる。
【0036】
(2)誘導加熱メカニズムにより、電極の温度を上昇することもできる。これにより、炭化ケイ素のウエハーの温度の上昇により、導電率が降下したときには、電極を加熱することにより、炭化ケイ素のウエハーを持続に加熱することができ、ひいては炭化ケイ素のウエハーの加熱速度を一定に保持することができる。
【0037】
(3)電極は、載せ台座および加熱台座として使用することができる。
【0038】
(4)加熱チャンバーは、反射層とすることができ、そしてファラデー遮蔽層とすることもできる金属シリンダーを有し、金属シリンダーにより、加熱チャンバーの輻射熱ロスを減少することができる他、交番磁界を加熱チャンバーに入ってウエハーに渦電流を発生することもできる。
【0039】
(5)電極とウエハーとの間、又はウエハーとウエハーとの間に位置するバリア層を有するため、汚染現象の拡散を防止することができる。バリア層は、載せ台座および加熱台座として使用することもできる。
【0040】
本発明の技術的特徴および達成し得る技術的効能の理解を深めるために、より良い実施例と詳細な説明を以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明に係る複合式高速アニーリング装置の実施の態様の構造を示す断面図である。
【
図2】本発明に係る複合式高速アニーリング装置のファラデー遮蔽層を示す斜視図である。
【
図3】本発明に係る複合式高速アニーリング装置の誘電加熱メカニズムの操作を示す模式図であって、
図3(A)、(B)及び(C)は、複数のウエハー、單一のウエハー及び利用しないバリア層の態様をそれぞれ示す。
【
図4】本発明に係る複合式高速アニーリング装置の誘導加熱メカニズムの操作を示す模式図である。
【
図5】本発明に係る複合式高速アニーリング方法の複合式加熱プロセスを示すフローチャートである。
【
図6】本発明に係る複合式高速アニーリング装置の別の実施の態様の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本発明の実施の形態の図面における各部材の比率は、説明を容易に理解するために示され、実際の比率ではない。また、図に示すアセンブリの寸法の比率は、各部品とその構造を説明するためのものであり、もちろん、本発明はこれに限定されない。一方、理解を便利にするために、以下の実施の形態における同じ部品については、同じ符号を付して説明する。
【0043】
さらに、明細書全体および請求の範囲で使用される用語は、特に明記しない限り、通常、この分野、本明細書に開示される内容、および特別な内容で使用される各用語の通常の意味を有する。本発明を説明するために使用されるいくつかの用語は、当業者に本発明の説明に関する追加のガイダンスを提供するために、本明細書の以下または他の場所で説明される。
【0044】
この記事での「第1」、「第2」、「第3」などの使用については、順序や順次を具体的に示すものではなく、本発明を制限するためにも使用されていない。これは、同じ専門用語で説明するコンポーネントまたは操作を区別するだけために使用される。
【0045】
次に、この記事で「含む」、「備える」、「有する」、「含有する」などの用語が使用されている場合、それらはすべてオープンな用語である。つまり、これらは、含むがこれに限定されないことを意味する。
【0046】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置とその方法は、加工対象物がウエハー(例えば炭化ケイ素のウエハー)であることを一例として説明する。炭化ケイ素の物理的特性は、加熱などの加工プロセスにおいて、高温になると、導電率は高速に降下するが、電磁波誘電吸収率が高速に上昇する。また、その他のウエハー材料も類似する特性を有する。
このため、本発明は、複合式の加熱メカニズムを採用し、中周波誘導加熱(Induction Heating)メカニズムを使用することを含むことにより、ウエハーの温度を高速に上昇する。
ドーピングされたウエハーにとって、温度が高速に上昇して、ある数値になったと、その導電率が高速に降下し、且つその導電率は、ドーピングの濃度や種類の異なりにより、ウエハーの温度の変化に従う変化が異なる。
このため、本発明は、複合式の加熱メカニズムを採用し、更に、RF電源を使用して、導電率が高速に降下するウエハーに対して、誘電加熱(Dielectric Heating)メカニズムを行って、ウエハーを高速にアニーリングすることができるという効果を得る。
【0047】
図1から
図5を参照する。
図1は、本発明に係る複合式高速アニーリング装置の実施の態様を示す断面図である。
図2は、本発明に係る複合式高速アニーリング装置のファラデー遮蔽層を示す斜視図である。
図3は、本発明に係る複合式高速アニーリング装置の誘電加熱メカニズムの操作を示す模式図である。
図4は、本発明に係る複合式高速アニーリング装置の誘導加熱メカニズムの操作を示す模式図である。
図5は、本発明に係る複合式高速アニーリング方法の複合式加熱プロセスを示すフローチャートである。
本発明に係る複合式高速アニーリング装置10は、
図1に示すように、二つの電極20と、加熱チャンバー30と、誘導加熱装置40と、誘電加熱装置50と、を備える。
加工対象物は、例えば二つの電極20の間に置かれている。
例えば、電極20は加工対象物を載せるためのものである。
加工対象物は、温度の上昇に従って導電率が降下する材料、又は温度の変化に従って導電率が変化する材料を採用し、例えばウエハー22である。
加工対象物は、例えば炭化ケイ素のウエハー22やその他の材料(例えばSi、SiGe、Ge、GaAs、GaNやInP)のウエハー22であり、且つ半導体の作製プロセスの過程中の任意の段階にあるウエハーであり、そして、この加工対象物が、ドーピングされたかどうか、又はどんな物質でドーピングされたかに係わらず、すべて本発明の保護範囲に属する。
しかし、本発明はこれに限定されず、加工対象物は、例えば、その他の材料や物体でもよく、例えば結晶インゴットや加熱されることが必要な何れかの物体である。
電極20の材料は、例えばグラファイトを採用する。
これにより、ウエハー22が二つの電極20の間に置かれているときに、電極20は、ウエハー22の載せ台座とすることができ、且つ加熱させ可能な電極(加熱台座も称し)として使用することもできる。
このため、電極20は、類似や同じ効果を有する、その他の材料を採用してもよい。
本発明は、温度の上昇に従って導電率が降下し、又は温度の変化に従って導電率が変化する加工対象物を例として説明するが、本発明の権利範囲は、これらに限定されない。
すなわち、導電率(導電性も称し)が温度の変化に従って改変するかどうかに係わらず、何れかの物体は、本発明に係る複合式高速アニーリング装置10を利用して加熱することができれば、全て本発明の請求の範囲に属する。
【0048】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置10は、加熱チャンバー30において、ウエハー22に対して複合式加熱プロセスを行う。
この複合式加熱プロセスは、
図4に示す誘導加熱メカニズムと、
図3に示す誘電加熱メカニズムとを利用する。
加熱チャンバー30は、二つの電極20及びウエハー22を収容するためのチャンバー32を有する。
複合式加熱プロセスにおいて、本発明に係る複合式高速アニーリング装置の誘導加熱装置40は、加熱チャンバー30における、ウエハー22と二つの電極20とに対して、
図5のステップS10に示す誘導加熱工程を行う。
誘導加熱装置40は、第1の交番電磁信号(AC)により、交番磁界(Magnetic Field)を発生し、且つ変化する磁束(Magnetic Flux,Φ)を有する誘導磁界(Induced Magnetic Field)を発生することにより、
図4に示すように、ウエハー22と二つの電極20とに渦電流(Eddy Current,I
EC)を発生することにより、ウエハー22と二つの電極20とを加熱する。
【0049】
誘導加熱メカニズムにおいて、加工対象物にとって、単位体積あたりに発生する加熱エネルギーは下記の式で表す。
これは
である。
σ
mは加工対象物の導電率(Conductivity)であり、ω = 2πf,fは電磁波の周波数であり、Bは交番磁界の強度である。
加工対象物はドーピングされた(doped)炭化ケイ素のウエハーである場合には、導電率(すなわち、1/抵抗率)が温度の上昇に従って上昇するが、温度は例えば500度Kを超えたと、導電率が高速に降下する(すなわち、抵抗率が上昇する。)。
【0050】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置10の複合式加熱プロセスにおいて、誘電加熱装置50は、
図5のステップS20に示すように、加熱チャンバー30におけるウエハー22に対して、誘電加熱工程を行う。
誘電加熱装置50は、二つの電極20に電界を発生することにより、二つの電極20の間に位置するウエハー22を加熱する。
ウエハー22は、
図3(B)及び
図3(C)に示すように、一つあり、又は
図3(A)に示すように、複数ある。
また、二つの電極20とウエハー22との間、及び二つの隣接するウエハー22の間には、実際の必要によって、オプションで、
図3(A)及び
図3(B)に示すように、少なくとも一つのバリア層24を設けてもいいし、又は
図3(C)に示すように、バリア層24を省略してもいいし、且つ二つの隣接するウエハー22の間に、オプションでバリア層24を設けてもよい。
バリア層24を設ける目的は、ウエハー22同士の間やウエハー22と電極20との間が、温度の上昇により、ドーピング成分の境界を越える拡散などによる汚染現象の発生を防止することにある。
バリア層24を設けると、ウエハー22の載せ台座および加熱台座として使用することもできる。
バリア層24は、オプションで、誘導加熱装置40と誘電加熱装置50とに加熱され可能な材料を採用することもできる。
これにより、誘導加熱装置40と誘電加熱装置50とは、例えばウエハー22とバリア層24とに対して、誘導加熱工程(S10)と誘電加熱工程(S20)とを同時に行うことにより、ウエハー22とバリア層24とを加熱する。
例えば、ウエハー22の材料が単結晶構造(例えば単結晶炭化ケイ素)を採用すれば、バリア24の成分は例えば多結晶構造(例えば多結晶炭化ケイ素)を採用し、逆も同じである。
すなわち、ウエハー22とバリア24は、例えば異なる材料を採用する。
しかし、本発明はこれらに限定されず、バリア層24は、バリア効果(例えば拡散バリア効果)を得ることができれば、どのような材料を採用するか、又は加熱されることができるかどうかに係わらず、全て本発明の保護範囲に属する。
本発明の技術的手段および効果の説明を利便にするために、本発明では、加工対象物がウエハー22(例えば炭化ケイ素のウエハー)であり、電極20がグラファイト電極であることを例として説明したが、何れかの物質、物体や構造は、本発明に係る複合式高速アニーリング装置により加熱を行うことができれば、すべて本発明の保護範囲に属する。
複合式加熱プロセスにおいて、誘導加熱装置40及び誘電加熱装置50は、誘導加熱工程(ステップS10)及び誘電加熱工程(ステップS20)を、同時、逐次、間欠、交互に行うことに限定されない。
【0051】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置の加熱メカニズムは、中周波誘導加熱(induction heating)メカニズムを採用する。
その原因は、高低周波の電磁界を利用する加熱電源を使用すると、考慮しなければいけないことがあり、第1の方面は、媒体による加熱の効率が高周波の電磁波を利用するときに効果がより良く、第2の方面は、電磁波の侵入深さを考慮することにある。
グラファイト(graphite)の電極20は、炭化ケイ素のウエハー22の台座とすると共に、加熱電極とされる。
これは、電極20にとって、電磁波が10MHzより大きくなったと、侵入深さが400μmより小さいことを利用し、電極の材料としてグラファイトを採用すると、上下の電極20の間に交番電界を発生しても、減衰が大きくならない。
なお、低周波の電磁波にとって、その侵入深さは、グラファイト電極20と炭化ケイ素のウエハー22とから構成される加熱台座より大きい。
換言すると、中周波の第1の交番電磁信号により、全体を有効に加熱することができる。
特に、グラファイトは、耐高温であり、且つ誘導加熱メカニズムの効率が高いため、グラファイト電極20と炭化ケイ素のウエハー22とから構成される加熱台座の温度を高速に上昇させることができる。
しかし、本発明では、中周波の電磁界を例として説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、何れかの周波数の電磁界は、グラファイト電極20と炭化ケイ素のウエハー22とに対して、誘導加熱を行うことができれば、すべて本発明の保護範囲に属する。
【0052】
例えば、加熱反応の初期段階および中期段階において、本発明では、誘導加熱メカニズムにより、グラファイト電極20と炭化ケイ素のウエハー22との温度を高速に上昇することができる。
炭化ケイ素のウエハー22の温度は、例えば500度Kより高いときに、炭化ケイ素の導電率が降下し、加熱効果が悪化するが、グラファイトを採用する電極20は、依然として誘導加熱され、その温度の上昇の速度を一定に保持することができる。
なお、温度を上昇する過程中に、炭化ケイ素の誘電正接(Loss tangent)は持続に増加して、誘電加熱の効率が増加する。
温度が約摂氏1,000度程度に上昇したと、誘電正接が大幅に上昇するため、誘電加熱の効果を加速することができる。
【0053】
詳細に説明すると、誘導加熱装置40は、例えば加熱チャンバー30に巻き付けられているインダクタンスコイル(Inductance Coil)42を備える。
誘導加熱装置40は、インダクタンスコイル42に第1の所定周波数の第1の交番電磁信号を加えることにより、ウエハー22と二つの電極20とに誘導磁界を発生する。
インダクタンスコイル42は、中周波AC電源に駆動され、第1の所定周波数の範囲は、約50kHz~200kHzであるが、これに限定されない。
この実施の態様では、加熱チャンバー30は、例えばキャビティー34と、上蓋36と、下蓋38と、を備える。
キャビティー34は、上蓋36と下蓋38との間に位置し、両方と接続することにより、キャビティー34と上蓋36と下蓋38の間にチャンバー32が形成される。
インダクタンスコイル42は、加熱チャンバー30のキャビティー34に巻き付けられている。
誘導加熱メカニズムを行うために、加熱チャンバー30のキャビティー34は、例えば石英やセラミックスなどの材料を採用する。
誘電加熱装置50のRF電源52は、上蓋36と下蓋38とを経由して、二つの電極20に第2の所定周波数の第2の交番電磁信号を加える
上蓋36と下蓋38とは、例えば金属層35と断熱材料層37とから構成される。
しかし、本発明はこれらに限定されず、その他の実現可能な態様では、本発明に係る加熱チャンバー30は、例えば全部が石英、セラミックスやその他の材料から構成される。
【0054】
本発明は、オプションで加熱チャンバー30に反射設計を増設してもよく、ことにより、赤外線の反射率を増加して、輻射熱ロスの最小化を実現することができる。
例えば、本発明は、
図1及び
図2に示すように、加熱チャンバー30のキャビティー34の外側に金属シリンダー60を設ける。
金属シリンダー60は、例えば光学的に研磨された金属ドラムであり、反射面とすることができ、且つオプションで反射層(例えば金)62をコーティングすることにより、赤外線の反射率を増加することができる。
これにより、グラファイト電極20と炭化ケイ素のウエハー22とから構成される加熱台座の超高温状態で発生される輻射熱ロスを降下することができる。
その他、本発明では、更に、オプションで金属シリンダー60に開口64を複数増設してもよい。
開口64は、例えば、縦方向に沿い(例えば長ストリップ状を呈し)、且つ金属シリンダー60を取り囲むように分布されることにより、金属シリンダー60は、ファラデー遮蔽(Farady shield)層66として、誘導加熱装置40で発生される交番磁界を、ファラデー遮蔽層66に通って、加熱チャンバー30のチャンバー32に入ることができる。
これにより、
図4に示すように、電極20とウエハー22とに渦電流I
ECが発生される。
【0055】
誘電加熱装置50は、RF媒体加熱装置(RF加熱装置も称し)であり、
図1及び
図3に示すように、第2の所定周波数を有する第2の交番電磁信号を供給することにより、ウエハー22の両側に位置する二つの電極20の間に電界が発生されて、加熱チャンバー30におけるウエハー22に対して、誘電加熱工程を行うことができる。
これにより、ウエハー22の加熱速度を一定に保持することができる。
例えば、誘電加熱装置50は、RF電源52を備え、且つオプションで、更に、アダプター54を備える。
RF電源52は、上記の第2の所定周波数を有する第2の交番電磁信号を供給する。
RF電源52は、例えば二つの電極20と、直接に電気的に接続し、又は導電性ワイヤ(図示せず)を介して電気的に接続する。
アダプター54は、RF電源52と二つの電極20との間に位置し、両方と電気的に接続することにより、第2の交番電磁信号の反射を減少することができる。
すなわち、アダプター54の整合回路によって、加熱チャンバー30のインピーダンスを調節して、RF電源52(例えばRF/マイクロ波電源)と整合することにより、電磁波(例えばRFやマイクロ波)の反射を減少することができる。
RF電源52は、10MHzより高い周波数を採用し、電磁界の分布の均一性を考慮して、900MHzより低い周波数を採用する。
すなわち、第2の所定周波数の範囲は、10MHz~900MHzであるが、これらに限定されない。例えば、10MHz~400MHzであり、出力電力を1キロワットとそれ以上の範囲に調節してもよい。
第2の所定周波数の範囲を、上記の周波数範囲および電力範囲における任意の数値範囲または上限および下限のエンドポイント値にすることができる。
アダプター54の整合回路における、インダクタンスLと、キャパシタンスCとのパラメータは、操作条件の変化によって変化して、良いカップリング条件を保持することができる。
アダプター54の整合回路における、既存のインダクタンスLと、キャパシタンスCとは、電子チューニングを行うことができるため、チューニングの応答時間に遅延がなく、そして加熱速度をもっと高くすることができる。
インピーダンスの整合は、高速の加熱を実現することにとって、極めて重要である。
整合ネットワークの最適な設計は、アプリケーションごとに異なる。
本発明の技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明で開示された内容に基づいて、誘電加熱装置50を実装する方法を理解できる。そして、それに対応するアダプター54の整合回路およびRF電源52を如何に採用するかを分かるはずなので、説明を省略した。
【0056】
本発明では、誘導加熱(induction heating)メカニズムと誘電加熱(dielectric heating)メカニズムとを同時に有するため、導体(例えば導電性ウエハー)と非導体(例えば非導電性ウエハー)から構成されるグループから選ばれたウエハーに対して、高速アニーリング処理を行うことができる。
本発明では、非導電性ウエハー及び炭化ケイ素の導電性ウエハーを例として説明したが、これらに限定されない。
そして、本発明に係る電磁界の分布の制御および調整は易いため、複数のウエハーのアニーリング処理に適用することができる。
大きい寸法を有する炭化ケイ素のウエハー(例えば、8インチより大きく)であっても、本発明に係る複合式高速アニーリング装置の操作原理および構造に基づいて、それに応じてアニーリングシステムの設計を改修することができる。
また、特に説明したいのは、本発明では、電極20が、ウエハー22を載せることができ、且つ誘導磁界に加熱され可能であることを例として説明したが、本発明の権利範囲はこれらに限定されない。
例えば、本発明に係る電極20は、例えば、ウエハー22を載せるためのものではなくてもよく、例えば、ウエハー22の両側にそれぞれ位置してもいいし、加熱チャンバー30の上蓋36と下蓋38とに位置してもよい(例えば
図6に示す実現可能な態様)。
このように改修された設計は、電極20による加熱により炭化ケイ素のウエハー22を加熱することができないが、依然として本発明の実現可能な態様に属するため、依然として本発明の保護範囲に属する。
すなわち、電極20は、誘電加熱装置50において交番電界を加えるときに、役立つことができれば、本発明に適用することができ、且つ本発明が要求する保護の範囲に含まれる。
【0057】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置10は、オプションで、ガス入力ユニット72と、ガス排出ユニット74と、を備え、ガス入力ユニット72は吸気管接続具73を介し、ガス排出ユニット74は排気管接続具75を介して、加熱チャンバー30のチャンバー32と連通することにより、加熱チャンバー30のチャンバー32を所定の圧力に保持することができる。
同じように、本発明に係る複合式高速アニーリング装置10は、更に、オプションで、測定及び制御システム70を備える。
測定及び制御システム70は、気圧および気流制御システムであり、圧力検出ユニット76と、コントローラー78と、を備える。
圧力検出ユニット76は、加熱チャンバー30のチャンバー32の気圧を測定するためのものである。
コントローラー78は、上記の気圧の大きさに応じて、ガス入力ユニット72及び/又はガス排出ユニット74の操作を制御するためのものである。
【0058】
例えば、上記の気圧および気流制御システムの操作範囲は、例えば0.1atm~10atmである。
ガスの圧力は、圧力検出ユニット76に監視される。
また、ガス入力ユニット72は、ガスの流量の設定によって、吸気管接続具73を経由して、ガスを加熱チャンバー30のチャンバー32に注入し、且つガス排出ユニット74により、排気管接続具75を経由して、ガスを加熱チャンバー30のチャンバー32から排出する。
ガス排出ユニット74は、例えば真空ポンプである。
詳細に説明すると、本発明では、加熱チャンバー30のチャンバー32にガスを入れる前に、まず、ガス排出ユニット74により、加熱チャンバー30のチャンバー32を真空にして、加熱チャンバー30のチャンバー32が真空状態になった後、加熱チャンバー30のチャンバー32が所定の圧力になるまで、ガス入力ユニット72により、加熱チャンバー30のチャンバー32にガスを導入する。
加熱チャンバー30のチャンバー32の所定の圧力の範囲は、0.1Atm~10Atmであり、且つ任意の数値範囲、又は所定の圧力範囲における上限および下限の終点値とすることができる。
上記のガスは、例えば、窒素ガスやアルゴンガスなどの純ガスから選ぶことができるが、加熱チャンバー30のチャンバー32を、設定された圧力の範囲に入ることができる何れかのガスは、すべて本発明の保護範囲に属する。
また、本発明では、コントローラー78により、ガス入力ユニット72に入力するガスの流量を制御し、又は設定することができ、そしてガス排出ユニット74の操作に合わせると、加熱チャンバー30のチャンバー32を上記の所定の圧力に保持することができる。
【0059】
その他、上記の測定及び制御システムは、更に、オプションで加熱チャンバー30のチャンバー32の温度を測定するための高温計79を備える。
高温計79は、例えば赤外線高温計であるが、これに限定されない。
本発明では、黒体放射線源を利用して測定されたウエハー(例えば炭化ケイ素を採用し)の放射率(Emissivity)は0.74であり、且つこの数値を高温計79に入力することにより、本発明で開示する技術におけるあらゆる温度測定に使用することができる。
【0060】
本発明に係る複合式高速アニーリング装置とその方法によれば、次のような効果がある。
(1)誘導加熱メカニズムと誘電加熱メカニズムを合わせるため、導体と非導体とを同時に加熱することができ、例えば誘導加熱メカニズムにより、炭化ケイ素のウエハーの温度を上昇することができ、且つ炭化ケイ素のウエハーの温度の上昇により、導電率が降下したときには、誘電加熱メカニズムにより、炭化ケイ素のウエハーの温度を上昇することにより、ウエハーの加熱速度を一定に保持することができる。
【0061】
(2)誘導加熱メカニズムにより、電極の温度を上昇することもできる。これにより、炭化ケイ素のウエハーの温度の上昇により、導電率が降下したときには、電極を加熱することにより、炭化ケイ素のウエハーを持続に加熱することができ、ひいては炭化ケイ素のウエハーの加熱速度を一定に保持することができる。
【0062】
(3)電極は、載せ台座および加熱台座として使用することができる。
【0063】
(4)加熱チャンバーは、反射層とすることができ、そしてファラデー遮蔽層とすることもできる金属シリンダーを有し、金属シリンダーにより、加熱チャンバーの輻射熱ロスを減少することができる他、交番磁界を加熱チャンバーに入ってウエハーに渦電流を発生することもできる。
【0064】
(5)電極とウエハーとの間、又はウエハーとウエハーとの間に位置するバリア層を有するため、汚染現象の拡散を防止することができる。バリア層は、載せ台座および加熱台座として使用することもできる。
【0065】
以上の記述は例を挙げたものにすぎず、限定するものではない。本発明の精神及び範疇から逸脱しない、それに対して行ういかなる同等効果の修正又は変更も、請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
10 複合式高速アニーリング装置
20 電極
22 ウエハー
24 バリア層
30 加熱チャンバー
32 チャンバー
34 キャビティー
35 金属層
36 上蓋
37 断熱材料層
38 下蓋
40 誘導加熱装置
42 インダクタンスコイル
50 誘電加熱装置
52 RF電源
54 アダプター
60 金属シリンダー
62 反射層
64 開口
66 ファラデー遮蔽層
70 測定及び制御システム
72 ガス入力ユニット
73 吸気管接続具
74 ガス排出ユニット
75 排気管接続具
76 圧力検出ユニット
78 コントローラー
79 高温計
AC 交番電磁信号
Φ 磁束
IEC 渦電流
S10 誘導加熱工程
S20 誘電加熱工程