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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143964
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】管継手用カバー
(51)【国際特許分類】
   F16L 57/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
F16L57/00 A
F16L57/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108533
(22)【出願日】2023-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2023052892
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 渉
(72)【発明者】
【氏名】須原 遼太
(72)【発明者】
【氏名】和阪 学弘
(72)【発明者】
【氏名】仲山 聡通
(72)【発明者】
【氏名】塩濱 豪典
(72)【発明者】
【氏名】宮谷 直伸
(72)【発明者】
【氏名】大路 佳奈
【テーマコード(参考)】
3H024
【Fターム(参考)】
3H024AA03
3H024AB01
3H024AC04
3H024CA01
(57)【要約】
【課題】冷媒配管の接続作業の確実性を向上させることができる管継手用カバーを提供する。
【解決手段】管継手用カバー10は、管継手60の継手本体61に取り外し可能に取り付けられるカバーであって、管継手60の袋ナット62に連結される冷媒配管100の、当該袋ナット62に対する挿入長さを設定するためのゲージを有している。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管継手(60)の継手本体(61)に取り外し可能に取り付けられるカバーであって、
前記管継手(60)の袋ナット(62)に連結される冷媒配管(100)の、当該袋ナット(62)に対する挿入長さ(L)を設定するためのゲージを有している、管継手用カバー。
【請求項2】
前記継手本体(61)を挿入可能な内径を有する筒状体(11)と、
前記筒状体(11)の軸方向の一端部を塞ぎ、前記筒状体(11)に挿入された前記継手本体(61)の先端を覆う蓋体(12)と、をさらに有し、
前記ゲージが、前記筒状体(11)の径方向の外側に設けられている、請求項1に記載の管継手用カバー。
【請求項3】
前記ゲージが、前記冷媒配管(100)の外周側に配置される外側部材(41)と、前記冷媒配管(100)の内周側に配置される内側部材(42)と、前記外側部材(41)と前記内側部材(42)との間において前記冷媒配管の端面を接触させて位置決めする接触面(43a)とを有し、
前記外側部材(41)が、前記接触面(43a)から前記挿入長さ(L)に相当する距離だけ離れた位置を示す指示部(41b)を有している、請求項2に記載の管継手用カバー。
【請求項4】
前記接触面(43a)が外部に露出している、請求項3に記載の管継手用カバー。
【請求項5】
前記ゲージが、
前記冷媒配管(100)を挿入可能な内径を有する筒状体(11,31)と、
前記筒状体(11,31)の軸方向の一端部を塞ぎ、かつ、前記筒状体(11,31)に挿入された前記冷媒配管(100)の端面を接触させて位置決めする接触面(22a、35a)を有する蓋体(12、32)と、を有し、
前記筒状体(11,31)が、前記接触面(22a、35a)から前記挿入長さ(L)に相当する距離だけ離れた位置を示す指示部(17、18、33)を有している、請求項1に記載の管継手用カバー。
【請求項6】
前記指示部(17)が、前記筒状体(11)に形成され、かつ、前記筒状体(11)に挿入された前記冷媒配管(100)の外周面を露出可能な開口である、請求項5に記載の管継手用カバー。
【請求項7】
前記蓋体(12、32)に、前記接触面(22a、35a)を視認可能な開口(25)が形成される、請求項5又は6に記載の管継手用カバー。
【請求項8】
前記蓋体(12)が、前記冷媒配管(100)の端部を挿入させる円環状の溝(24)を有し、前記溝(24)が、前記冷媒配管(100)の外径寸法の基準となる径方向外側の周面(21a)と、前記冷媒配管(100)の内径寸法の基準となる径方向内側の周面(23a)とを有する、請求項5又は6に記載の管継手用カバー。
【請求項9】
前記筒状体(11)が、前記継手本体(61)を挿入可能な内径を有し、挿入された前記継手本体(61)を径方向外側から覆い、
前記蓋体(12)が、前記筒状体(11)に挿入された前記継手本体(61)の先端を覆う、請求項5又は6に記載の管継手用カバー。
【請求項10】
前記継手本体(61)を挿入可能な内径を有し、挿入された前記継手本体(61)を径方向外側から覆う第2筒状体(11)を有し、
前記蓋体(12)が、前記第2筒状体(11)に挿入された前記継手本体(61)の先端を覆う、請求項5又は6に記載の管継手用カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、管継手用カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機等の冷凍装置の分野において、冷媒配管同士や冷媒配管と弁等の要素部品とを接続する管継手として、「フレア継手」が広く知られている。このフレア継手は、例えば互いに接続される冷媒配管のうち一方の管端部に設けられ、雄ねじ部を有する継手本体と、他方の管端部に設けられ、継手本体の雄ねじ部に締結される袋ナットとを備える。他方の冷媒配管の管端部はフレア加工が施され、フレア加工した部分を袋ナットに引っ掛けた状態で、袋ナットを継手本体に締結させることで冷媒配管同士が接続される。
【0003】
上記のようなフレア継手は、作業者によってフレア加工の精度にばらつきが生じやすく、冷媒配管の接続部の品質が安定し難い。そのような課題を解決するものとして、フレア加工を不要とする管継手が特許文献1等により提案されている。
【0004】
特許文献1の管継手は、従来のフレア継手と同様に継手本体と袋ナットとを有し、袋ナットには、ストップリングが内装されている。この管継手は、袋ナットの内部に他方の冷媒配管の管端部を挿入し、継手本体に袋ナットを締結することで、ストップリングを他方の冷媒配管に噛み込ませて固定し、冷媒配管を接続する。したがって、他方の冷媒配管にはフレア加工が不要であり、実質的に袋ナットに冷媒配管を挿入する工程と、継手本体に袋ナットを締結する工程のみで作業が完了するため、冷媒配管の接続部の品質のばらつきを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/262318号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の管継手は、袋ナットに対する冷媒配管の挿入長さが定められており、袋ナットに不足なく冷媒配管を挿入することが求められる。そのため、予め冷媒配管の端部に挿入長さを示す印をマーキングすることが必須とされ、そのマーキングの位置を容易に測定するためのゲージも活用されている。
【0007】
しかしながら、作業者がゲージを所持していない場合には正確にマーキングすることが困難となり、作業の確実性を担保できなくなる可能性がある。本開示は、冷媒配管の接続作業の確実性を向上させることができる管継手用カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本開示の管継手用カバーは、管継手の継手本体に取り外し可能に取り付けられるカバーであって、
前記管継手の袋ナットに連結される冷媒配管の、当該袋ナットに対する挿入長さを設定するためのゲージを有している。
【0009】
上記構成によれば、継手本体のカバーがゲージを有しているので、例えば冷凍装置の管継手の継手本体にカバーを取り付けることによって、当該冷凍装置にゲージを付属させることができる。そのため、施工現場においてカバーが有するゲージを用いて冷媒配管に正確にマーキングすることができ、冷媒配管の接続作業の確実性を向上させることができる。
【0010】
(2)前記(1)の管継手用カバーは、好ましくは、継手本体を挿入可能な内径を有する筒状体と、筒状体の軸方向の一端部を塞ぎ、筒状体に挿入された継手本体の先端を覆う蓋体と、をさらに有する。ゲージは、筒状体の径方向の外側に設けられている。
上記構成によれば、筒状体の径方向の外側にゲージが設けられることで、管継手のカバーとしての機能に影響されずにゲージを設けることができる。
【0011】
(3)前記(1)又は(2)の管継手用カバーにおいて、好ましくは、前記ゲージが、前記冷媒配管の外周側に配置される外側部材と、冷媒配管の内周側に配置される内側部材と、前記外側部材と前記内側部材との間において前記冷媒配管の端面を接触させて位置決めする接触面とを有し、前記外側部材が、前記接触面から挿入長さに相当する距離だけ離れた位置を示す指示部を有している。
【0012】
上記構成によれば、外側部材と内側部材との間に冷媒配管を挿入し、冷媒配管の端面を接触面に接触させることで、指示部によって、袋ナットに挿入すべき冷媒配管の挿入長さを容易に把握することができる。
【0013】
(4)前記(3)の管継手用カバーにおいて、好ましくは、前記接触面が外部に露出している。
【0014】
上記構成によれば、外側部材と内側部材との間に冷媒配管が適切に挿入され、接触面に接触しているかどうかを容易に確認することができる。
【0015】
(5)前記(1)に記載の管継手用カバーにおいて、好ましくは、前記ゲージが、前記冷媒配管を挿入可能な内径を有する筒状体と、
前記筒状体の軸方向の一端部を塞ぎ、かつ、前記筒状体に挿入された前記冷媒配管の端面を接触させて位置決めする接触面を有する蓋体と、を有し、
前記筒状体が、前記接触面から前記挿入長さに相当する距離だけ離れた位置を示す指示部を有している。
【0016】
上記構成によれば、筒状体に冷媒配管を挿入し、冷媒配管の端面を蓋体に接触させることで、指示部によって、袋ナットに挿入すべき冷媒配管の挿入長さを容易に把握することができる。
【0017】
(6)前記(5)に記載の管継手用カバーにおいて、好ましくは、前記指示部が、前記筒状体に形成され、かつ、前記筒状体に挿入された前記冷媒配管の外周面を露出可能な開口である。
【0018】
この構成によれば、開口によって袋ナットに挿入すべき冷媒配管の挿入長さを容易に把握することができ、例えば、開口を介して筆記具により冷媒配管の外周面にマーキングすることができる。
【0019】
(7)前記(5)又は(6)に記載の管継手用カバーにおいて、好ましくは、前記蓋体に、前記接触面を視認可能な開口が形成される。
【0020】
このような構成によって、筒状体に対して冷媒配管が適切に挿入されているかどうかを確認することができる。
【0021】
(8)前記(5)~(7)のいずれか1つに記載の管継手用カバーにおいて、好ましくは、前記蓋体が、前記冷媒配管の端部を挿入させる円環状の溝を有し、前記溝が、前記冷媒配管の外径寸法の基準となる径方向外側の周面と、前記冷媒配管の内径寸法の基準となる径方向内側の周面とを有する。
【0022】
この構成によれば、溝に冷媒配管を挿入することによって、冷媒配管の外径寸法及び内径寸法が、袋ナットに挿入するために適正であるかどうかを確認することができる。
【0023】
(9)前記(5)~(8)のいずれか1つに記載の管継手用カバーにおいて、好ましくは、前記筒状体が、前記継手本体を挿入可能な内径を有し、挿入された前記継手本体を径方向外側から覆い、
前記蓋体が、前記筒状体に挿入された前記継手本体の先端を覆う。
【0024】
この構成によれば、ゲージを構成する筒状体及び蓋体自体によって継手本体をカバーすることができるので、ゲージを有するカバーをコンパクトに構成することができる。
【0025】
(10)前記(5)~(9)のいずれか1つに記載の管継手用カバーにおいて、好ましくは、前記継手本体を挿入可能な内径を有し、挿入された継手本体を径方向外側から覆う第2筒状体を有し、
前記蓋体が、前記第2筒状体に挿入された前記継手本体の先端を覆う。
【0026】
この構成によれば、2つの筒状体の一方をゲージとして用い、他方をカバーとして用いることができ、それぞれの機能に応じた適切な寸法でカバーを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本開示の第1実施形態に係る管継手用カバーを装着した管継手の断面図である。
図2】管継手用カバーの斜視図である。
図3】管継手用カバーの断面図である。
図4A】管継手用カバーのゲージ機能を説明する断面図である。
図4B】管継手用カバーのゲージに冷媒配管を挿入する状態を示す拡大断面図である。
図5】管継手の断面図である。
図6】管継手の断面図である。
図7】本開示の第2実施形態に係る管継手用カバーの斜視図である。
図8】管継手用カバーのゲージ機能を説明する断面図である。
図9】本開示の第3実施形態に係る管継手用カバーの斜視図である。
図10】管継手用カバーのゲージ機能を説明する断面図である。
図11】本開示の第4実施形態に係る管継手用カバーの斜視図である。
図12】管継手用カバーの平面図である。
図13】管継手用カバーの断面図である。
図14】本開示の第5実施形態に係る管継手用カバーの斜視図である。
図15】管継手用カバーの断面図である。
図16】管継手用カバーの正面図である。
図17】本開示の第6実施形態に係る管継手用カバーの断面図である。
図18】本開示の第7実施形態に係る管継手用カバーの斜視図である。
図19】管継手用カバーの分解斜視図である。
図20】管継手用カバーをゲージとして用いた場合の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照しつつ、本開示の実施形態を詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1は、本開示の第1実施形態に係る管継手用カバーを装着した管継手の断面図である。
管継手用カバー10は、空気調和機などの冷凍装置において、外部から冷媒配管を接続するための管継手60をカバーし、管継手60の内部への異物の侵入等を抑制するために用いられる。この管継手用カバー10は、冷凍装置がメーカーにて製造され、出荷される段階から、施工現場にて冷媒配管が接続されるまでの間、使用される。
【0029】
(管継手の構成)
まず、本実施形態の管継手用カバーが適用される管継手について説明する。
図5及び図6は、管継手の断面図である。特に、図5は、管継手60に冷媒配管100を接続する直前の状態を示し、図6は、管継手60に冷媒配管100を接続した後の状態を示す。図5及び図6において、管継手60の軸心を符号Cで示す。以下の説明では、管継手60の軸心Cに平行な方向Xを軸方向という。
【0030】
本実施形態の管継手60は、いわゆるフレアレス継手である。管継手60は、継手本体61と、袋ナット62とを有する。継手本体61は、例えば、冷凍装置の一例である空気調和機の室外機又は室内機の熱交換器から機外へ延びる冷媒配管の先端に設けられる。
【0031】
継手本体61は、筒形状に形成されている。継手本体61の筒内は冷媒流路となる。継手本体61の軸方向一方側(図5の右側)の外周面には雄ねじ61aが形成されている。継手本体61の軸方向一方側の端面61bは、先細り状に傾斜したテーパー面に形成されている。継手本体61は、閉鎖弁等のポートと一体に形成されていてもよし、冷媒配管の管端部に一体に形成されていてもよい。
【0032】
袋ナット62は、ナット本体64と、ストップリング65と、シール66,67とを有する。ナット本体64は、筒形状に形成されている。ナット本体64の筒内には、雌ねじ64a、収容部64b、及び溝64cが形成されている。雌ねじ64aは、ナット本体64の軸方向他方側(図5の左側)の内周面に形成されている。雌ねじ64aは雄ねじ61aに締結可能である。図5では、ナット本体64の雌ねじ64aが、継手本体61の雄ねじ61aに浅く締結されており、図6では、ナット本体64の雌ねじ64aが、継手本体61の雄ねじ61aに深く完全に締結されている。
【0033】
溝64cは、ナット本体64の軸方向一方側の内周面に形成されている。溝64cには、シール66が装着される。シール66は、例えばOリングである。収容部64bは、ナット本体64の軸方向Xにおいて雌ねじ64aと溝64cとの間に形成されている。収容部64bには、ストップリング65が収容される。収容部64bに収容されたストップリング65と雌ねじ64aとの間には、シール67が収容される。シール67は、例えばOリングである。収容部64bにおける軸方向一方側の内周面64b1は、同一方側に向けて内径が小さくなるテーパー面に形成されている。
【0034】
ストップリング65は、筒形状に形成されている。ストップリング65の筒内には、挿入部65aが設けられている。挿入部65aは、一定の内径を有する円筒面に形成されている。挿入部65a内には、継手本体61に接続される冷媒配管100が挿入される。ストップリング65の軸方向他方側の端面65bは、継手本体61の先端面61bに面接触するテーパー面に形成されている。
【0035】
ストップリング65の軸方向Xの一端側(図5の右側)には、ナット本体64のテーパー面64b1に接触する爪部65cが形成されている。爪部65cは、挿入部65aに挿入された冷媒配管100の外周面に噛み込み、冷媒配管100を固定する。具体的に、図5に示すように、継手本体61の雄ねじ61aにナット本体64の雌ねじ64aを浅く締結した状態では、爪部65cは冷媒配管100の外周面から離れているか、又はわずかに接触する程度であるが、図6に示すように、雄ねじ61aに雌ねじ64aを深く締結すると、テーパー面64b1に押されて爪部65cが内径側に変形し、冷媒配管100の外周面に噛み込み、冷媒配管100を固定する。
【0036】
以上のように継手本体61に冷媒配管100を接続するため、袋ナット62に挿入すべき最低限の冷媒配管100の長さLが管継手60毎に定められている。そのため、冷媒配管100の接続作業を行うにあたり、最低限の長さLを示す位置にペン等でマーキングすることが求められている。図5及び図6には、マーキングされた印が符号Mで示されている。正確にマーキングするために、所定の治具(ゲージ)を用いることが必須とされている。しかしながら、作業者が治具を所持していないこともあり得、この場合、冷媒配管100の接続品質が担保されない可能性がある。
【0037】
従来、冷凍装置に設けられる管継手60には、冷媒配管100が接続されるまでの間、異物の侵入を防止するためにカバーが設けられている。従来のフレア継手の場合、継手本体の先端を板状のカバーで覆った状態で袋ナットを締結することでカバーが固定される。冷媒配管の接続作業を行う場合、袋ナットが継手本体から取り外され、カバーが除去される。その後、冷媒配管にフレア加工が施され、冷媒配管のフレア部分を継手本体に接触させた状態で継手本体に袋ナットが締結される。
【0038】
本実施形態では、上述のようなフレアレス継手が用いられ、フレア継手用の袋ナットは用いられないので、従来の方法でカバーを設けることができない。そのため、本実施形態では、フレアレス継手に適したカバー10が用いられる。
【0039】
(管継手用カバーの構成)
図2は、管継手用カバーの斜視図である。図3は、管継手用カバーの断面図である。
図1図3に示すように、管継手用カバー10は、合成樹脂製又は金属製である。管継手用カバー10は、筒状体11と、蓋体12とを有する。筒状体11は、軸方向Xと平行な軸心を有する筒形状に形成されている。継手本体61にカバー10を装着した状態では、継手本体61の軸心Cとカバー10の軸心とは一致している。そのため、以下の説明及び図面では、カバー10の軸心にも同様の符号Cを付す。
【0040】
筒状体11の内周面には、雌ねじ14が形成されている。この雌ねじ14は、管継手60の継手本体61の雄ねじ61aに締結可能である。筒状体11は、雌ねじ14の径方向外側に、六角形状に形成された第1外周面15を含む。この第1外周面15に、レンチ等の工具をかみ合わせることで、継手本体61の雄ねじ61aに筒状体11の雌ねじ14を締結しやすくすることができる。
【0041】
筒状体11は、軸方向Xの他方側(図1の左側)の端部に、第1外周面15よりも外径の小さい第2外周面16を含む。この第2外周面16には、径方向に貫通する開口17が形成されている。本実施形態では、180°位相をずらした2か所に開口17が形成されている。この開口17は、周方向に細長く形成されている。この開口17は、冷媒配管100を挿入した際にペン等の筆記具101で印Mをマーキングするために利用される。
【0042】
筒状体11の軸方向一方側(図1の右側)の端部は、蓋体12によって閉じられている。筒状体11の軸方向他方側(図1の左側)の端部は開口している。蓋体12は、外筒21と、底板22と、突起23とを含む。外筒21は、円筒形状に形成され、筒状体11の軸方向一方側の端部から軸方向一方側へ向けて延びている。外筒21の外径は、筒状体11の第1外周面15よりも小さい。
【0043】
蓋体12の底板22は、外筒21の軸方向一方側の端部に設けられ、外筒21を閉じている。底板22は、円形の板状に形成されている。
【0044】
蓋体12の突起23は、底板22からカバー10の内部に向けて軸方向他方側(図1の左側)に突出している。突起23は円柱状に形成されている。突起23の先端は、筒状体11内に入り込んでいる。突起23の先端面は、継手本体61の先端開口を塞ぎ、継手本体61内への異物の侵入を抑制している。
【0045】
図3に示すように、突起23の外周面23aは、大部分が略一定の外径を有し、先端側の一部がやや先細り状となるようにテーパー状に形成されている。外筒21の内周面21aと突起23の外周面23aとの間には、円環状の溝24が形成されている。
【0046】
蓋体12の外筒21には、径方向に貫通する開口25が形成されている。開口25は、180°位相をずらした2か所に形成されている。この開口25を介して、カバー10の外部からカバー10の内部、特に後述する底板22の接触面22aを視認することができる。
【0047】
図4Aは、管継手用カバーのゲージ機能を説明する断面図である。図4Bは、管継手用カバーのゲージに冷媒配管を挿入する状態を示す拡大断面図である。
本実施形態のカバー10は、冷媒配管100にマーキングするためのゲージを有している。具体的に、前述した筒状体11及び蓋体12が、ゲージを構成している。言い換えると、筒状体11及び蓋体12は、カバー10としての機能だけでなくゲージとしての機能を有する。図3に示すように、蓋体12の底板22の軸方向他方側の表面(接触面)22aから、筒状体11の開口17までの距離Lが、図5に示すように、管継手60の袋ナット62に挿入すべき冷媒配管100の長さLに相当している。
【0048】
本実施形態のカバー10をゲージとして用いる場合、当該カバー10を継手本体61から取り外し、カバー10の筒状体11の軸方向他方側の開口から冷媒配管100を挿入する。さらに、冷媒配管100の軸方向一方側の端部を、蓋体12の溝24に挿入し、冷媒配管100の端面を底板22の接触面22aに接触させる。冷媒配管100の端面が底板22の接触面22aに接触しているか否かは、外筒21に形成された開口25から確認することができる。
【0049】
冷媒配管100の端面を接触面22aに接触させた状態で、筒状体11の開口17からペン等の筆記具101を挿入することで、冷媒配管100の外周面に印M(図5及び図6参照)をマーキングすることができる。これにより、袋ナット62に挿入すべき冷媒配管100の長さLを正確に設定することができる。そのため、冷媒配管100を確実に管継手60に接続することができ、作業者による作業のばらつきを低減し、管継手60から冷媒が漏洩する可能性を低くすることができる。そのため、冷凍装置からの冷媒の漏洩が検出されたとしても、漏洩の可能性がある個所から管継手60を排除することができ、漏洩箇所の迅速な探索に寄与することができる。
【0050】
筒状体11に形成された開口17は、カバー10に挿入された冷媒配管100の外周面を露出可能であり、袋ナット62に対する冷媒配管100の挿入長さLを示す指示部を構成している。この開口17は、軸心Cに垂直な方向に筆記具101を挿入させるように形成されている。例えば、開口17は、軸心Cに対して傾斜した方向から筆記具101を挿入しても冷媒配管100の外周面に筆記具101が届かないように、軸方向Xの幅w(図3参照)を有している。このため、開口17に対して筆記具101が斜めに挿入されることが抑制され、より正確な位置にマーキングすることができる。
【0051】
冷媒配管100は、空気調和機の据付作業の過程で適宜専用の工具によって切断されるため、図4Bに示すように、冷媒配管100の端面の内周縁又は外周縁にはバリ(かえり)Bが発生することがある。このようなバリBが存在すると、袋ナット62への冷媒配管100の挿入が妨げられ、冷媒配管100を必要な長さLで挿入できなくなる可能性がある。
【0052】
図3及び図4Bに示すように、本実施形態のカバー10は、蓋体12に形成された溝24の径方向外側の周面(外筒21の内周面)21aが、冷媒配管100の外径寸法の基準となり、溝24の径方向内側の周面(突起23の外周面径)23aが、冷媒配管100の内径寸法の基準となっている。言い換えると、溝24の径方向外側の周面21aの径D1が、冷媒配管100の適切な外径に相当し、溝24の径方向内側の周面23aの径D2が、冷媒配管100の適切な内径に相当している。そのため、冷媒配管100の端面にバリBが存在し、そのバリBの分だけ冷媒配管100の内径が小さく又は外径が大きくなると、当該バリBが溝24の周面21a、23aに引っ掛かり、底板22の接触面22aに接触するまで冷媒配管100を挿入できなくなる。これにより、作業者に冷媒配管100にバリBがあることを認識させることができ、バリBの除去作業を作業者に促すことができる。
【0053】
[第2実施形態]
図7は、本開示の第2実施形態に係る管継手用カバーの斜視図である。図8は、管継手用カバーのゲージ機能を説明する断面図である。
第2実施形態の管継手用カバー10は、筒状体11に指示部を構成する開口17が形成されていない点で第1実施形態と異なる。本実施形態では、蓋体12の底板22の軸方向他方側(図8の左側)の表面(接触面)22aから筒状体11の軸方向他方側の端面18までの距離Lが、管継手60の袋ナット62に挿入すべき冷媒配管100の長さに相当している。したがって、筒状体11の軸方向他方側の端面18が、マーキングの位置を示す指示部を構成している。
【0054】
本実施形態では、筒状体11の端面18によって指示部が構成され、第1実施形態の指示部のような開口17が不要となっている。そのため、カバー10の軸方向Xの寸法を小さくすることができ、より小型化を図ることができる。
【0055】
ただし、第1、第2実施形態の双方とも、筒状体11がカバー10としてもゲージとしても機能しているので、筒状体11の内径は、継手本体61と冷媒配管100とのうち、より外径の大きい継手本体61を挿入できるように設定されている。そのため、筒状体11の内面と、筒状体11に挿入された冷媒配管100の外周面との間には隙間が生じる。第2実施形態では、筆記具101でマーキングするときに、筆記具101の先端が当該隙間に入り込み、マーキングの位置が一定に定まらない可能性がある。この点、第1実施形態(図4参照)では、軸心Cに対して垂直な方向に筆記具101が挿入されるように開口17が形成され、一定の位置にマーキングすることができる。したがって、この点においては、第2実施形態よりも第1実施形態の方が有利である。
【0056】
[第3実施形態]
図9は、本開示の第3実施形態に係る管継手用カバーの斜視図である。図10は、管継手用カバーのゲージ機能を説明する断面図である。
第3実施形態のカバー10は、2つの筒状体11,31を備える。一方の筒状体(第2筒状体)11は、継手本体61のカバーとして機能する。この筒状体11は、第2実施形態の筒状体11と略同様の構成を有する。他方の筒状体(第1筒状体)31は、冷媒配管100のゲージとして機能する。蓋体12は、2つの筒状体11,31の間に配置されている。蓋体12は、双方の筒状体11,31の軸方向Xの端部を閉じている。
【0057】
第1筒状体31と第2筒状体11とは、同一の軸心Cを有する筒形状に形成されている。第1筒状体31は、蓋体12から軸方向Xの一方側に延びている。第1筒状体31の外径は、第2筒状体11の外径よりも小さい。第1筒状体31の内径は、冷媒配管100の外径よりもわずかに大きく、第1筒状体31に冷媒配管100を挿入したときに、第1筒状体31と冷媒配管100との間にはわずかな隙間しか生じない。第1筒状体31の基端部には、開口25が形成されている。この開口25は、蓋体12の底板22に冷媒配管100が接触しているかどうかを視認可能としている。
【0058】
蓋体12における底板22の軸方向Xの一方側の表面(接触面)22aと、筒状体31の軸方向Xの一方側の端面33との距離Lは、袋ナット62に挿入すべき冷媒配管100の長さに相当する。筒状体31の端面33は、マーキングの位置を示す指示部を構成している。
【0059】
蓋体12の突起23は、蓋体12の底板22から軸方向Xの一方側へ突出し、第1筒状体31の内部に配置されている。第1筒状体31の内周面と突起23の外周面との間には、円環状の溝24が形成されている。この溝24に、第1筒状体31に挿入された冷媒配管100の端部が挿入される。第1、第2実施形態と同様に、溝24の径方向外側の周面と、径方向内側の周面とは、それぞれ冷媒配管100の外径寸法及び内径寸法の基準となる。
【0060】
本実施形態では、実質的に継手本体61のカバーとして機能する第2筒状体11と、冷媒配管100のゲージとして機能する第1筒状体31とが別体となっている。そのため、ゲージとしての第1筒状体31の内径を冷媒配管100の外径に合わせて形成することができ、両者の隙間を小さくすることができる。そのため、筆記具101によって一定の位置にマーキングしやすくなる。また、第1筒状体31に形成された開口25は、第2筒状体11内に連通していないので、開口25から入った異物が継手本体61内に入り込むこともない。
【0061】
図11は、本開示の第4実施形態に係る管継手用カバーの斜視図である。図12は、管継手用カバーの平面図である。図13は、管継手用カバーの断面図である。
第4実施形態の管継手用カバー10は、筒状体11と、蓋体12とを有する。筒状体11及び蓋体12は、継手本体61の実質的なカバーとして機能する。以下、筒状体11及び蓋体12を総称してカバー本体40ともいう。筒状体11の内周面には、雌ねじ14が形成されている。雌ねじ14は、管継手60の継手本体61の雄ねじ61aに締結可能である。筒状体11の外周面(第1外周面)15は、レンチ等の工具をかみ合わせることができる六角形状に形成されている。
【0062】
本実施形態の管継手用カバー10は、カバー本体40の他に、ゲージとして機能する外側部材41、内側部材42、及び接続部材43を有する。カバー本体40と外側部材41と内側部材42と接続部材43とは、合成樹脂材によって一体に形成されている。
【0063】
外側部材41は、筒状体11の外周面15の一部(六角形状の1面)に設けられている。外側部材41は、長方形の板状に形成されている。外側部材41は、カバー本体40よりも軸方向Xに長く形成されている。外側部材41の軸方向Xの一方側(図13における右側)の端面は、カバー本体40の軸方向Xの一方側の端面(蓋体12の外面)と同一面上に配置されている。外側部材41の軸方向Xの他方側(図13における左側)の端面41bは、カバー本体40の軸方向Xの他方側の端面よりも軸方向Xの他方側に配置され、カバー本体40よりも突出している。
【0064】
内側部材42は、長方形又は正方形の板状に形成されている。内側部材42は、筒状体11の径方向における外側部材41の外側に配置されている。内側部材42は、外側部材41よりも軸方向Xに短く形成されている。内側部材42の軸方向Xの一方側(図13における右側)の端面は、カバー本体40及び外側部材41の軸方向Xの一方側の端面(蓋体12の外面)と同一面上に配置されている。内側部材42の軸方向Xの他方側(図13における左側)の端部は、カバー本体40の軸方向Xの他方側の端面よりも軸方向Xの一方側に配置されている。
【0065】
接続部材43は、外側部材41の軸方向Xの一方側の端部と内側部材42の軸方向Xの一方側の端部とを接続する。接続部材43によって接続された外側部材41と内側部材42との間には、軸方向他方側に開放された溝44が形成される。この溝44に冷媒配管100の端部が挿入される。接続部材43は、溝44に挿入された冷媒配管100の端面を接触させて冷媒配管100を位置決めする接触面43aを有する。接触面43aから外側部材41の軸方向Xの他方側の端面41bまでの距離Lは、図5に示すように、管継手60の袋ナット62に挿入すべき冷媒配管100の長さLに相当している。外側部材41の軸方向Xの他方側の端面41bは、指示部を構成する。
【0066】
内側部材42に対向する外側部材41の側面41aは、円弧状に形成されたている。外側部材41に対向する内側部材42の側面42aも、円弧状に形成されている。これらの側面41a、42aは、円弧状の溝44を形成する周面を構成している。円弧状の溝44の中心線は、筒状体11の軸心Cと平行である。
【0067】
溝44は、冷媒配管100の半周以下の範囲を挿入させる周方向の長さを有している。そのため、カバー10のゲージ(外側部材41、内側部材42、接続部材43、及び溝44)を小型化し、カバー10全体としても小型化することができる。ただし、溝44は、冷媒配管100の半周以上の範囲を挿入させる周方向の長さを有していてもよい。
【0068】
溝44の一方の周面(外側部材41の側面)41aは、冷媒配管100の外径寸法の基準となり、溝44の他方の周面(内側部材42の側面)42aは、冷媒配管100の内径寸法の基準となる。言い換えると、図12に示すように、溝44の一方の周面41aの曲率半径d1が、冷媒配管100の適切な外径の半分(半径)に相当し、溝44の他方の周面42aの曲率半径d2が、冷媒配管100の適切な内径の半分(半径)に相当している。
【0069】
本実施形態のカバー10をゲージとして用いる場合、当該カバー10を継手本体61から取り外し、外側部材41と内側部材42との間の溝44に冷媒配管100の端部を挿入し、冷媒配管100の端面を接触面43aに接触させる。冷媒配管100の端面が接触面43aに接触しているか否かは、外部から確認することができる。溝44は、冷媒配管100の半周以下の長さしかないので、溝44に挿入した状態で冷媒配管100を回転させることで、冷媒配管100の全周のバリBの有無を確認することができる。
【0070】
そして、冷媒配管100の端面を接触面43aに接触させた状態で、外側部材41の端面(指示部)41bに沿ってペン等の筆記具101で冷媒配管100の外周面に印M(図5及び図6参照)をマーキングする。これにより、袋ナット62に挿入すべき冷媒配管100の長さLを正確に設定することができる。そのため、冷媒配管100を確実に管継手60に接続することができ、作業者による作業のばらつきを低減し、管継手60から冷媒が漏洩する可能性を低くすることができる。これにより、冷凍装置からの冷媒の漏洩が検出されたとしても、漏洩の可能性がある個所から管継手60を排除することができ、漏洩箇所の迅速な探索に寄与することができる。
【0071】
なお、本実施形態において、冷媒配管100の挿入長さLを示す指示部は、外側部材41の端面41bではなく、外側部材41に形成された開口(例えば、第1実施形態で説明した開口17)であってもよい。本実施形態において、外側部材41の軸方向Xの他方側(図13における左側)の端面41bは、カバー本体40の軸方向Xの他方側の端面から突出しているが、必ずしも突出していなくてもよい。例えば、筒状体11の軸方向の長さが冷媒配管100の挿入長さLに相当する寸法を有している場合、外側部材41の軸方向Xの他方側の端面41bと、カバー本体40の軸方向Xの他方側の端面とを同一面上に配置することができる。また、この場合は、筒状体11自体を外側部材41として用いることもできる。この場合、筒状体11に外周面に、溝44を形成する円弧状の周面を形成すればよい。
【0072】
図14は、本開示の第5実施形態に係る管継手用カバーの斜視図である。図15は、管継手用カバーの断面図である。図16は、管継手用カバーの正面図である。
第5実施形態のカバー10は、2つの筒状体11,31を備える。一方の筒状体(第2筒状体)11は、蓋体12とともに継手本体61のカバーとして機能する。この筒状体11は、第4実施形態(図13参照)の筒状体11と略同様の構成を有する。ただし、この筒状体11の内周面には雌ねじ14が形成されていない。
【0073】
筒状体11の軸方向Xの一方側(図15の右側)の端部は、蓋体12により塞がれている。筒状体11の軸方向Xの他方側の端部には、一対の爪51が突出している。この一対の爪51の互いに対向する面には突起51aが形成されている。継手本体61には、雄ねじ61aの基端側にレンチ等の工具をかみ合わせる六角形状の大径部61cが形成されている。爪51の突起51aが、筒状体11内に挿入された継手本体61の大径部61cに引っ掛かることで、カバー10を継手本体61に固定することができる。
【0074】
他方の筒状体(第1筒状体)31は、冷媒配管100のゲージとして機能する。一方の筒状体11と他方の筒状体31とは、異なる軸心C,C1を有している。両筒状体11,31の軸心C,C1同士は、略平行に配置されている。他方の筒状体31の軸方向Xの一方側の端部は、蓋体32によって塞がれている。蓋体32の外面(軸方向Xの一方側(図15における右側)の面)は、蓋体12の外面と同一面上に配置されている。蓋体32は、底板35と突起36とを有する。底板35は、筒状体31内に挿入された冷媒配管100の端面を接触させて冷媒配管100を位置決めする接触面35aを有する。
【0075】
筒状体31の内径は、冷媒配管100の外径よりもわずかに大きい。そのため、筒状体31に冷媒配管100を挿入したときに、筒状体31と冷媒配管100との間にはわずかな隙間しか生じない。筒状体31の基端部には、開口25が形成されている。この開口25は、蓋体32の接触面35aに冷媒配管100の端面が接触しているか否かを視認可能としている。
【0076】
筒状体31には、開口17が形成されている。蓋体32における接触面35aと、開口17との距離Lは、袋ナット62に挿入すべき冷媒配管100の長さLに相当する。開口17は、マーキングの位置を示す指示部を構成している。
【0077】
蓋体12の突起36は、円柱形状に形成され、蓋体32の底板35から軸方向Xの他方側へ突出し、筒状体31の内部に配置されている。筒状体31の内周面と突起23の外周面との間には、円環状の溝24が形成されている。この溝24に、筒状体31に挿入された冷媒配管100の端部が挿入される。第1、第2実施形態と同様に、溝24の径方向外側の周面と、径方向内側の周面とは、それぞれ冷媒配管100の外径寸法及び内径寸法の基準となる。
【0078】
本実施形態では、実質的に継手本体61のカバーとして機能する筒状体11と、冷媒配管100のゲージとして機能する筒状体31とが別々に構成され、一体化されている。そのため、ゲージとしての筒状体31の内径を冷媒配管100の外径に合わせて形成することができ、両者の隙間を小さくすることができる。そのため、筆記具101によって一定の位置にマーキングしやすくすることができる。また、筒状体31に形成された開口25は、筒状体11内に連通していないので、開口25から入った異物が継手本体61内に入り込むこともない。
【0079】
なお、本実施形態において、筒状体31は、第4実施形態で説明した外側部材41を構成し、蓋体32の突起36は、第4実施形態で説明した内側部材42を構成していることになる。言い換えると、本実施形態は、第4実施形態の溝44を冷媒配管100の全周の範囲に設けた変形例ということができる。したがって、本実施形態において、ゲージを構成する筒状体31及び蓋体32は、カバーとして機能する筒状体11の径方向の外側に設けられる。
【0080】
図17は、本開示の第6実施形態に係る管継手用カバーの断面図である。
第6実施形態は、実質的に第1実施形態(図1参照)の変形例となる。本実施形態のカバー10は、第1実施形態と同様に、筒状体11、蓋体12(外筒21、底板22、突起23)、雌ねじ14、開口17,25等を有している。ただし、本実施形態では、筒状体11の軸心Cと、突起23の軸心C2とが偏心している。また、突起23の外周面と外筒21の内周面との間に形成された円環状の溝24も、筒状体11の軸心Cに対して偏心している。
【0081】
そのため、筒状体11内の溝24に冷媒配管100の端部を挿入したとき、冷媒配管100の外周面の一部が、筒状体11の内周面の一部に接近し、両者の隙間が小さくなる。そのため、開口17に挿入した筆記具101がより傾きにくくなり、筆記具101によって一定の位置にマーキングしやすくすることができる。
【0082】
なお、本実施形態では、蓋体12の開口25を塞ぐための被覆部材46が設けられている。この被覆部材46は、蓋体12の外筒21と底板22との全体を覆う形状に形成されている。被覆部材46は、透明又は半透明の部材により形成されている。そのため、開口25を塞いだ状態でも外部から開口25を視認可能であり、冷媒配管100の端面が接触面22aに接触しているか否かを確認することができる。このような被覆部材46を備えることによって開口25からカバー10内への異物の侵入を抑制することができる。なお、被覆部材46は設けられていなくともよい。
【0083】
図18は、本開示の第7実施形態に係る管継手用カバーの斜視図である。図19は、管継手用カバーの分解斜視図である。図20は、管継手用カバーをゲージとして用いた場合の斜視図である。
第7実施形態のカバー10は、筒状体11と蓋体12とを有するカバー本体40と、実質的にゲージを構成するゲージ部材54とを別体で備えている。ゲージ部材54は、カバー本体40に着脱可能に取り付けられる。ゲージ部材54は、カバー本体40に対して軸方向の一方側(図19における左側)から取り付けられる第1の形態(継手本体61のカバーとして用いる形態)と、カバー本体40に対して軸方向の他方側(図19における右側)から取り付けられる第2の形態(冷媒配管100のゲージとして用いる形態)とで用いられる。
【0084】
本実施形態の筒状体11及び蓋体12は、上記の第2実施形態(図7図8参照)の筒状体11及び蓋体12と略同一であり、筒状体11の内部には、図8に示す突起23及び溝24が形成されている。ただし、本実施形態では、蓋体12の外筒21には、3か所以上(図示例では6か所)に開口25が形成されている。また、筒状体11の外周面には、ゲージ部材54の爪57が嵌る溝11aと、爪57を引っ掛ける突部11bとが形成されている。
【0085】
ゲージ部材54は、本体部55と、複数の被覆部56と、一対の爪57と、を備える。本体部55は、平板状に形成されている。本体部55の中央には貫通孔55aが形成されている。貫通孔55aの径は、冷媒配管100の外径よりもわずかに大きい。本体部55の外周は、筒状体11の外周面と略同じ六角形状に形成されている。
【0086】
複数の被覆部56は、本体部55の一方の面から突出している。複数の被覆部56は、本体部55の貫通孔55aの周囲に等間隔に配置されている。複数の被覆部56は、第1の形態で筒状体11に取り付けたときに(図18参照)、筒状体11に形成された開口25を閉塞する。そのため、第1の形態において、開口25からカバー10内に異物が侵入するのを抑制することができる。
【0087】
一対の爪57は、本体部55の一方の面から突出している。一対の爪57は、互いに対向する面に突起57aを有する。第1の形態及び第2の形態の双方とも、一対の爪57が、筒状体11に形成された突部11bに引っ掛かることで、ゲージ部材54がカバー本体40に取り付けられる。
【0088】
ゲージ部材54を第2の形態でカバー本体40に取り付けると、筒状体11の軸方向一方側の開口(蓋体12とは反対側の開口)がゲージ部材54の本体部55によって覆われる。本実施形態では、本体部55の外面55bが指示部を構成する。したがって、貫通孔55a内に冷媒配管100を挿入し、蓋体12内の溝24(図8参照)に冷媒配管100の端部を挿入し、本体部55の外面55bに沿って筆記具101でマーキングすることで、冷媒配管100の挿入長さLを正確に設定することができる。本体部55の貫通孔55aは、冷媒配管100の外径に応じて形成することができるので、冷媒配管100と貫通孔55aとの隙間を小さくすることができ、筆記具101によって一定の位置にマーキングすることができる。
【0089】
[その他の実施形態]
上記実施形態では、筆記具101を用いて冷媒配管100にマーキングしているが、他の手段によってマーキングしてもよい。例えば、シールによってマーキングしてもよい。この場合、第1実施形態の筒状体11の内側から開口17を覆うようにシールを設けておき、筒状体11の外側から開口17に棒等を差し込むことによって冷媒配管にシールを貼り付ける構成とすることができる。
【0090】
上記実施形態では、カバー10の筒状体11には、継手本体61の雄ねじ61aに締結される雌ねじ14や継手本体61に引っ掛かる爪51が形成されていたが、これら以外の手段によってカバー10が継手本体61に取り付けられてもよい。例えば、カバー10は、粘着テープ等によって継手本体61に取り付けられていてもよい。カバー10は、梱包材によって継手本体61に取り付けられていてもよい。
【0091】
管継手60の具体的な構成は、図5及び図6の例示に限らず、従来公知のものを採用することができる。
【0092】
[実施形態の作用効果]
(1)上記実施形態の管継手用カバー10は、管継手60の継手本体61に取り外し可能に取り付けられるカバーであって、管継手60の袋ナット62に連結される冷媒配管100の、当該袋ナット62に対する挿入長さLを設定するためのゲージを有している。
冷凍装置における管継手60の継手本体61にカバー10を取り付けることによって、当該冷凍装置にゲージを付属させることができる。そのため、施工現場において継手本体61からカバー10を取り外し、カバー10のゲージを用いて冷媒配管100に正確にマーキングすることができ、冷媒配管100の接続作業の確実性を向上させることができる。
【0093】
管継手60の袋ナット62に挿入すべき冷媒配管100の長さLは、冷媒配管100の径に応じて変化するため、多種類のゲージが必要になる。そのような多種類のゲージを作業者が準備しておくことは作業者の負担が著しく大きくなる。また、冷凍装置の製品に備品としてゲージを添付することも考えられるが、誤って異なる種類のゲージが添付されてしまうと、冷媒配管が適切に接続されなくなる恐れがある。本実施形態では、継手本体に取り付けられるカバーに対して、当該継手本体に接続される冷媒配管に径に応じたゲージの機能を持たせることができるので、作業者の負担を抑制でき、異なる種類のゲージが添付されることを抑制することができる。
【0094】
(2)上記第4、第5実施形態において、カバー10は、継手本体61を挿入可能な内径を有する筒状体11と、筒状体11の軸方向の一端部を塞ぎ、筒状体11に挿入された継手本体61の先端を覆う蓋体12と、をさらに有する。ゲージは、筒状体11の径方向の外側に設けられている。このように筒状体11の径方向の外側にゲージが設けられることで、継手本体61のカバーとしての機能に影響されずにゲージを設けることができる。また、筒状体11の径方向外側にゲージが設けられることで、カバー10が軸方向に大型化することを抑制することができる。カバー10が軸方向に大型化すると、冷凍装置からカバー10が大きく突出し、冷凍装置の梱包サイズが大きくなる恐れがあるが、上記実施形態のカバー10を用いることで、そのような不都合を解消することができる。
【0095】
(3)上記第4、5実施形態において、ゲージは、冷媒配管100の外周側に配置される外側部材41と、冷媒配管100の内周側に配置される内側部材42と、外側部材41と内側部材42との間において前記冷媒配管100の端面を接触させて位置決めする接触面43a、35aとを有する。外側部材41が、接触面43a、35aから挿入長さLに相当する距離だけ離れた位置を示す指示部41b、17を有している。そのため、外側部材41と内側部材42との間に冷媒配管100を挿入し、冷媒配管100の端面を接触面43a、35aに接触させることで、指示部41b、17によって、袋ナット62に挿入すべき冷媒配管100の長さLを容易に把握することができる。
【0096】
(4)上記第4実施形態において、接触面43aは外部に露出している。そのため、溝44に挿入された冷媒配管100の端面が接触面43aに接触しているか否かを容易に確認することができる。
【0097】
(5)上記第1~第3、第5、第6実施形態において、ゲージは、冷媒配管100を挿入可能な内径を有する筒状体11,31と、筒状体11,31の軸方向Xの一端部を塞ぎ、かつ、筒状体11,31に挿入された冷媒配管100の端面を接触させて位置決めする接触面22a、35aを有する蓋体12、32と、を有し、筒状体11,31が、接触面22a、35aから前記挿入長さLに相当する距離だけ離れた位置を示す指示部17、18、33を有している。そのため、筒状体11,31に冷媒配管100を挿入し、冷媒配管100の端面を蓋体12に接触させることで、指示部17、18、33によって、袋ナット62に挿入すべき冷媒配管100の挿入長さを容易に把握することができる。
【0098】
(6)上記第1、第5、第6実施形態において、指示部17は、筒状体11、31に形成され、かつ、筒17、18、33挿入された冷媒配管100の外周面を露出可能な開口である。そのため、開口17によって袋ナット62に挿入すべき冷媒配管100の挿入長さを容易に把握することができ、例えば、開口17を介して筆記具101により冷媒配管100の外周面にマーキングすることができる。
【0099】
(7)上記第1~第3、第5~第7実施形態において、蓋体12には、接触面22a、35aを視認可能な開口25が形成される。そのため、筒状体11,31に対して冷媒配管100が適切に挿入されているかどうかを容易に確認することができる。
【0100】
(8)上記第1~第3、第5~第7実施形態において、蓋体12は、冷媒配管100の端部を挿入させる円環状の溝24を有し、溝24が、冷媒配管100の外径寸法の基準となる径方向外側の周面21aと、冷媒配管100の内径寸法の基準となる径方向内側の周面23aとを有する。そのため、溝24に冷媒配管100を挿入することによって、冷媒配管100の外径寸法及び内径寸法が、袋ナット62に挿入するために適正な寸法であるかどうかを確認することができる。
【0101】
(9)上記第1、第2、第6、第7実施形態において、筒状体11は、継手本体61を挿入可能な内径を有し、挿入された継手本体61を径方向外側から覆い、蓋体12は、筒状体11に挿入された継手本体61の先端を覆う。この構成によれば、ゲージを構成する筒状体11及び蓋体12自体によって継手本体61をカバーすることができるので、ゲージを有するカバー10をコンパクトに構成することができる。
【0102】
(10)上記第3、第5実施形態において、カバー10は、継手本体61を挿入可能な内径を有し、挿入された継手本体61を径方向外側から覆う第2筒状体11を有し、蓋体12が、第2筒状体11に挿入された継手本体61の先端を覆う。そのため、2つの筒状体11,31のうち、一方の筒状体(第1筒状体)31をゲージとして用い、他方の筒状体(第2筒状体)11をカバーとして用いることができ、それぞれの機能に応じた適切な寸法、例えば、第1筒状体31の内径を冷媒配管100に適合した寸法に形成し、第2筒状体11の内径を継手本体61に適合した寸法に形成することができる。
【0103】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0104】
10 :管継手用カバー
11 :筒状体
12 :蓋体
17 :開口(指示部)
18 :端面(指示部)
21a :周面
22a :接触面
23a :周面
24 :溝
25 :開口
31 :筒状体
32 :蓋体
33 :端面(指示部)
35a :接触面
36 :突起
41 :外側部材
41b :端面(指示部)
42 :内側部材
43a :接触面
44 :溝
60 :管継手
61 :継手本体
62 :袋ナット
100 :冷媒配管
L :挿入長さ
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【手続補正書】
【提出日】2024-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管継手(60)の継手本体(61)に取り外し可能に取り付けられるカバーであって、
前記管継手(60)の袋ナット(62)に連結される冷媒配管(100)の、当該袋ナット(62)に対する挿入長さ(L)を設定するためのゲージと
前記継手本体(61)を挿入可能な内径を有する筒状体(11)と、
前記筒状体(11)の軸方向の一端部を塞ぎ、前記筒状体(11)に挿入された前記継手本体(61)の先端を覆う蓋体(12)と、を有し、
前記ゲージが、前記筒状体(11)の径方向の外側に設けられている、管継手用カバー。
【請求項2】
前記ゲージが、前記冷媒配管(100)の外周側に配置される外側部材(41)と、前記冷媒配管(100)の内周側に配置される内側部材(42)と、前記外側部材(41)と前記内側部材(42)との間において前記冷媒配管の端面を接触させて位置決めする接触面(43a)とを有し、
前記外側部材(41)が、前記接触面(43a)から前記挿入長さ(L)に相当する距離だけ離れた位置を示す指示部(41b)を有している、請求項に記載の管継手用カバー。
【請求項3】
前記接触面(43a)が外部に露出している、請求項に記載の管継手用カバー。
【請求項4】
管継手(60)の継手本体(61)に取り外し可能に取り付けられるカバーであって、
前記管継手(60)の袋ナット(62)に連結される冷媒配管(100)の、当該袋ナット(62)に対する挿入長さ(L)を設定するためのゲージを有し、
前記ゲージが、
前記冷媒配管(100)を挿入可能な内径を有する筒状体(11,31)と、
前記筒状体(11,31)の軸方向の一端部を塞ぎ、かつ、前記筒状体(11,31)に挿入された前記冷媒配管(100)の端面を接触させて位置決めする接触面(22a、35a)を有する蓋体(12、32)と、を有し、
前記筒状体(11,31)が、前記接触面(22a、35a)から前記挿入長さ(L)に相当する距離だけ離れた位置を示す指示部(17、18、33)を有している、管継手用カバー。
【請求項5】
前記指示部(17)が、前記筒状体(11)に形成され、かつ、前記筒状体(11)に挿入された前記冷媒配管(100)の外周面を露出可能な開口である、請求項に記載の管継手用カバー。
【請求項6】
前記蓋体(12、32)に、前記接触面(22a、35a)を視認可能な開口(25)が形成される、請求項又はに記載の管継手用カバー。
【請求項7】
前記蓋体(12)が、前記冷媒配管(100)の端部を挿入させる円環状の溝(24)を有し、前記溝(24)が、前記冷媒配管(100)の外径寸法の基準となる径方向外側の周面(21a)と、前記冷媒配管(100)の内径寸法の基準となる径方向内側の周面(23a)とを有する、請求項又はに記載の管継手用カバー。
【請求項8】
前記筒状体(11)が、前記継手本体(61)を挿入可能な内径を有し、挿入された前記継手本体(61)を径方向外側から覆い、
前記蓋体(12)が、前記筒状体(11)に挿入された前記継手本体(61)の先端を覆う、請求項又はに記載の管継手用カバー。
【請求項9】
前記継手本体(61)を挿入可能な内径を有し、挿入された前記継手本体(61)を径方向外側から覆う第2筒状体(11)を有し、
前記蓋体(12)が、前記第2筒状体(11)に挿入された前記継手本体(61)の先端を覆う、請求項又はに記載の管継手用カバー。