(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143969
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】光半導体装置および光半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/042 20060101AFI20241003BHJP
H01S 5/50 20060101ALI20241003BHJP
H01S 5/026 20060101ALI20241003BHJP
H01S 5/02345 20210101ALI20241003BHJP
H01S 5/023 20210101ALI20241003BHJP
H01S 5/11 20210101ALI20241003BHJP
H01S 5/12 20210101ALI20241003BHJP
【FI】
H01S5/042 612
H01S5/50 610
H01S5/026 610
H01S5/02345
H01S5/023
H01S5/11
H01S5/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111493
(22)【出願日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2023056179
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 大輔
(72)【発明者】
【氏名】青山 康之祐
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AA03
5F173AA48
5F173AB13
5F173AD30
5F173AF72
5F173AH06
5F173AK21
5F173AK23
5F173AR99
5F173AS01
5F173MA02
5F173MC30
5F173MD53
5F173MD59
5F173MD62
(57)【要約】
【課題】光半導体素子の実装時に同電位で駆動する電極数を決定できる光半導体装置および光半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】光半導体装置は、レーザ光を増幅する光増幅器部と、前記光増幅器部に電流を流すための複数の配線パッドと、ボンディングワイヤと、を有し、前記光増幅器部は、光軸方向に沿って分割された複数の電極を有し、前記複数の電極の数は、前記複数の配線パッドの数よりも多く、前記ボンディングワイヤは、前記複数の電極のそれぞれを前記複数の配線パッドのうちの1つと接続する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を増幅する光増幅器部と、
前記光増幅器部に電流を流すための複数の配線パッドと、
ボンディングワイヤと、
を有し、
前記光増幅器部は、光軸方向に沿って分割された複数の電極を有し、
前記複数の電極の数は、前記複数の配線パッドの数よりも多く、
前記ボンディングワイヤは、前記複数の電極のそれぞれを前記複数の配線パッドのうちの1つと接続する、
光半導体装置。
【請求項2】
前記複数の電極は、等間隔に分割される、
請求項1に記載の光半導体装置。
【請求項3】
前記複数の電極は、前記光軸方向における長さが互いに同じである、
請求項1に記載の光半導体装置。
【請求項4】
前記光増幅器部と集積化され、前記レーザ光を出射するレーザ部を有する、
請求項1に記載の光半導体装置。
【請求項5】
前記レーザ部は、分布帰還型である、
請求項4に記載の光半導体装置。
【請求項6】
前記レーザ部は、回折格子層と、前記回折格子層の上に設けられたコンタクト層と、を有し、
前記回折格子層は、光軸方向に沿って一定の周期の回折格子が形成された第1領域と、前記回折格子が形成されていない第2領域と、を有し、
前記第1領域は、前記光軸方向において前記第2領域よりも前記光増幅器部から遠くに位置する、
請求項4に記載の光半導体装置。
【請求項7】
前記コンタクト層は、前記光軸方向において前記光増幅器部に近い第1端部を有し、
前記第1領域と前記第2領域との境界は、前記光軸方向において前記第1端部よりも前記光増幅器部から遠くに位置する、
請求項6に記載の光半導体装置。
【請求項8】
前記光軸方向における前記境界と前記第1端部との距離は、5μm以上10μm以下である、
請求項7に記載の光半導体装置。
【請求項9】
前記レーザ部および前記光増幅器部は、それぞれ
半導体層と、
前記半導体層の上に設けられたコンタクト層と、
前記コンタクト層の上に設けられたコンタクト電極と、
前記コンタクト電極の上に設けられた絶縁膜と、
を有し、
前記コンタクト層および前記コンタクト電極は、前記レーザ部と前記光増幅器部との間で分離溝によって分割されており、
前記分離溝は、前記絶縁膜によって覆われる、
請求項4に記載の光半導体装置。
【請求項10】
前記光増幅器部は、
半導体層と、
前記半導体層の上に設けられたコンタクト層と、
前記コンタクト層の上に設けられたコンタクト電極と、
前記コンタクト電極の上に設けられた絶縁膜と、
を有し、
前記コンタクト層および前記コンタクト電極は、前記光軸方向に沿って分離溝により複数に分割されており、
前記分離溝は、前記絶縁膜によって覆われる、
請求項1に記載の光半導体装置。
【請求項11】
前記半導体層と前記コンタクト層との界面における前記分離溝の幅は、5μm以上10μm以下である、
請求項9または請求項10に記載の光半導体装置。
【請求項12】
レーザ光を出射するレーザ部と、前記レーザ光を増幅する光増幅器部とを有する光半導体素子を準備する工程と、
前記光増幅器部に電流を流すための複数の配線パッドが設けられたサブマウントを準備する工程と、
前記サブマウントの上に前記光半導体素子を実装する工程と、
を有し、
前記光増幅器部は、光軸方向に沿って分割された複数の電極を有し、
前記複数の電極の数は、前記複数の配線パッドの数よりも多く、
前記実装する工程は、ボンディングワイヤにより前記複数の電極のそれぞれを前記複数の配線パッドのうちの1つと接続することを含む、
光半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記実装する工程は、前記光半導体素子の光出力の目標値に応じて、前記ボンディングワイヤを接続する位置を決定することを含む、
請求項12に記載の光半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光半導体装置および光半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザに半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)が集積化された光半導体装置が知られている(例えば、非特許文献1、2参照)。非特許文献1に記載された光半導体装置は、3分割された電極を有する半導体光増幅器を備える。非特許文献2に記載された光半導体装置は、分布帰還型(DFB:Distributed Feedback)レーザを有する。DFBレーザにおける回折格子が形成された領域は、電流注入領域と一致している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】K. Carney et al., "Method to improve the noise figure and saturation power in multi-contact semiconductor optical amplifiers: Simulation and experiment", Opt. Express, vol. 21, pp. 7180-7195, Mar. 2013.
【非特許文献2】L. Hou, M. Haji, J. Akbar and J. Marsh, "Narrow linewidth laterally coupled 1.55 um AlGaInAs/InP distributed feedback lasers integrated with a curved tapered semiconductor optical amplifier", Opt. Lett., vol. 37, no. 21, pp. 4525-4527, Nov. 2012.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の半導体光増幅器では、電極の分割数および長さが設計時に決まるため、光半導体素子が完成した後に目的に応じて同電位で駆動する電極数を変更できない。
【0005】
本開示は、光半導体素子の実装時に同電位で駆動する電極数を決定できる光半導体装置および光半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の光半導体装置は、レーザ光を増幅する光増幅器部と、前記光増幅器部に電流を流すための複数の配線パッドと、ボンディングワイヤと、を有し、前記光増幅器部は、光軸方向に沿って分割された複数の電極を有し、前記複数の電極の数は、前記複数の配線パッドの数よりも多く、前記ボンディングワイヤは、前記複数の電極のそれぞれを前記複数の配線パッドのうちの1つと接続する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、光半導体素子の実装時に同電位で駆動する電極数を決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る光半導体素子を示す概略図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る光半導体素子を示す断面図(その1)である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る光半導体素子を示す断面図(その2)である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る光半導体素子を示す断面図(その3)である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る光半導体素子を示す断面図(その4)である。
【
図6】
図6は、実施形態の第1例に係る光半導体装置を示す概略図である。
【
図7】
図7は、実施形態の第2例に係る光半導体装置を示す概略図である。
【
図8】
図8は、光半導体装置の駆動条件の決定方法を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第1電流比を決定するステップを示す図(その1)である。
【
図10】
図10は、第1電流比を決定するステップを示す図(その2)である。
【
図11】
図11は、第1電流比を決定するステップを示す図(その3)である。
【
図12】
図12は、実験に用いた光半導体素子を示す概略図である。
【
図13】
図13は、光半導体素子内のキャリア密度を示す図である。
【
図14】
図14は、光半導体素子内のフォトン密度を示す図である。
【
図15】
図15は、光増幅器部に流す合計の電流と光出力および電力変換効率との関係を示す図である。
【
図16】
図16は、実施形態の変形例に係る光半導体素子を示す断面図である。
【
図17】
図17は、実施形態の変形例に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図18】
図18は、実施形態の変形例に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図19】
図19は、実施形態の変形例に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図20】
図20は、実施形態の変形例に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図21】
図21は、実施形態の変形例に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その5)である。
【
図22】
図22は、実施形態の変形例に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その6)である。
【
図23】
図23は、実施形態の変形例に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その7)である。
【
図24】
図24は、実施形態の変形例に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その8)である。
【
図25】
図25は、実施形態の変形例に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その9)である。
【
図26】
図26は、実施形態の変形例に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その10)である。
【
図27】
図27は、実施形態の変形例に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その11)である。
【
図28】
図28は、実施形態の変形例に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その12)である。
【
図29】
図29は、実施形態の変形例に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その13)である。
【
図30】
図30は、実施形態の変形例に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その14)である。
【
図31】
図31は、実施形態の変形例に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その15)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施するための形態について、以下に説明する。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。本開示での結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また結晶学上の指数が負であることは、通常、"-"(バー)を数字の上に付すことによって表現されるが、本開示では数字の前に負の符号を付している。また、任意の点からみて、基板の[100]側を上方、上側または上ということがあり、基板の[-100]側を下方、下側または下ということがある。
【0011】
〔1〕 本開示の一態様に係る光半導体装置は、レーザ光を増幅する光増幅器部と、前記光増幅器部に電流を流すための複数の配線パッドと、ボンディングワイヤと、を有し、前記光増幅器部は、光軸方向に沿って分割された複数の電極を有し、前記複数の電極の数は、前記複数の配線パッドの数よりも多く、前記ボンディングワイヤは、前記複数の電極のそれぞれを前記複数の配線パッドのうちの1つと接続する。この場合、光半導体素子の実装時にボンディングワイヤを接続する位置を変更することよって同電位で駆動する電極数を決定できる。このため、同一の光半導体素子を異なる駆動方法において利用できる。
【0012】
〔2〕 〔1〕において、前記複数の電極は、等間隔に分割されてもよい。この場合、光増幅器部の光軸方向の電流分布において、任意の分布形状を高い精度で近似しやすくなる。
【0013】
〔3〕 〔1〕または〔2〕において、前記複数の電極は、前記光軸方向における長さが互いに同じであってもよい。この場合、光増幅器部の光軸方向の電流分布において、任意の分布形状を高い精度で近似しやすくなる。
【0014】
〔4〕 〔1〕から〔3〕において、前記光増幅器部と集積化され、前記レーザ光を出射するレーザ部を有してもよい。この場合、高い光出力を得やすい。
【0015】
〔5〕 〔4〕において、前記レーザ部は、分布帰還型であってもよい。この場合、単一モードで発振するため、データセンタ用の連続光源として利用しやすい。
【0016】
〔6〕 〔4〕において、前記レーザ部は、回折格子層と、前記回折格子層の上に設けられたコンタクト層と、を有し、前記回折格子層は、光軸方向に沿って一定の周期の回折格子が形成された第1領域と、前記回折格子が形成されていない第2領域と、を有し、前記第1領域は、前記光軸方向において前記第2領域よりも前記光増幅器部から遠くに位置してもよい。この場合、第1領域を、電流が注入されない非注入領域から遠ざけることができる。
【0017】
〔7〕 〔6〕において、前記コンタクト層は、前記光軸方向において前記光増幅器部に近い第1端部を有し、前記第1領域と前記第2領域との境界は、前記光軸方向において前記第1端部よりも前記光増幅器部から遠くに位置してもよい。この場合、第1領域を、電流が注入されない非注入領域から遠ざけることができる。非注入領域では、光吸収によって効率が低下する。第1領域を非注入領域から遠ざけることで、光は非注入領域を1度しか通過しなくなり、非注入領域における光吸収を低減できる。
【0018】
〔8〕 〔7〕において、前記光軸方向における前記境界と前記第1端部との距離は、5μm以上10μm以下であってもよい。5μm以上の場合、光半導体素子を製造する際のアライメントずれの影響を受けにくい。10μm以下の場合、光半導体素子の特性への影響が生じにくい。
【0019】
〔9〕 〔4〕において、前記レーザ部および前記光増幅器部は、それぞれ半導体層と、前記半導体層の上に設けられたコンタクト層と、前記コンタクト層の上に設けられたコンタクト電極と、前記コンタクト電極の上に設けられた絶縁膜と、を有し、前記コンタクト層および前記コンタクト電極は、前記レーザ部と前記光増幅器部との間で分離溝によって分割されており、前記分離溝は、前記絶縁膜によって覆われてもよい。この場合、高い耐湿性が得られる。
【0020】
〔10〕 〔1〕において、前記光増幅器部は、半導体層と、前記半導体層の上に設けられたコンタクト層と、前記コンタクト層の上に設けられたコンタクト電極と、前記コンタクト電極の上に設けられた絶縁膜と、を有し、前記コンタクト層および前記コンタクト電極は、前記光軸方向に沿って分離溝により複数に分割されており、前記分離溝は、前記絶縁膜によって覆われてもよい。この場合、高い耐湿性が得られる。
【0021】
〔11〕 〔9〕または〔10〕において、前記半導体層と前記コンタクト層との界面における前記分離溝の幅は、5μm以上10μm以下であってもよい。5μm以上の場合、隣り合うコンタクト層間において高い絶縁性を確保しやすい。10μm以下の場合、半導体層における光吸収を低減しやすい。
【0022】
〔12〕 本開示の他の一態様に係る光半導体装置の製造方法は、レーザ光を出射するレーザ部と、前記レーザ光を増幅する光増幅器部とを有する光半導体素子を準備する工程と、前記光増幅器部に電流を流すための複数の配線パッドが設けられたサブマウントを準備する工程と、前記サブマウントの上に前記光半導体素子を実装する工程と、を有し、前記光増幅器部は、光軸方向に沿って分割された複数の電極を有し、前記複数の電極の数は、前記複数の配線パッドの数よりも多く、前記実装する工程は、ボンディングワイヤにより前記複数の電極のそれぞれを前記複数の配線パッドのうちの1つと接続することを含む。この場合、光半導体素子の実装時にボンディングワイヤを接続する位置を変更することよって同電位で駆動する電極数を決定できる。このため、同一の光半導体素子を異なる駆動方法において利用できる。
【0023】
〔13〕 〔12〕において、前記実装する工程は、前記光半導体素子の光出力の目標値に応じて、前記ボンディングワイヤを接続する位置を決定することを含んでもよい。この場合、目標とする光出力ごとに電力変換効率を高めることができる。
【0024】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態について詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0025】
〔光半導体素子〕
図1から
図5を参照し、実施形態に係る光半導体素子1について説明する。
図1は、実施形態に係る光半導体素子1を示す模式図である。
図2から
図5は、実施形態に係る光半導体素子1を示す断面図である。
図1は、上部電極712の分割構造を平面視で示す。
図2は、
図1中のII-II線に沿った断面図に相当する。
図3は、
図1中のIII-III線に沿った断面図に相当する。
図4は、
図1中のIV-IV線に沿った断面図に相当する。
図5は、
図1中のV-V線に沿った断面図に相当する。
【0026】
光半導体素子1は、主として、基板20と、半導体層30と、半導体層80とを有する。
【0027】
基板20は、例えばn型のリン化インジウム(InP)基板である。基板20は、第1主面20Aと、第1主面20Aとは反対の第2主面20Bとを有する。基板20には、例えば1.0×1018cm-3の濃度でシリコン(Si)または硫黄(S)がドープされている。第1主面20Aの面方位は(100)であり、第2主面20Bの面方位は(-100)である。
【0028】
半導体層30は、第1主面20Aの上に設けられている。半導体層30は、バッファ層32と、回折格子層33と、n型クラッド層34と、活性層35と、p型クラッド層36とを有する。
【0029】
バッファ層32は、基板20の上に設けられている。バッファ層32は、例えば厚さが500nm程度のn型のInP層である。バッファ層32には、例えば5.0×1017cm-3の濃度でSiがドープされている。バッファ層32は、基板20の結晶方位を引き継いでいる。
【0030】
回折格子層33は、バッファ層32の上に設けられている。回折格子層33は、例えば厚さが50nm程度のn型の砒化リン化ガリウムインジウム(GaInAsP)層である。回折格子層33の室温での発光波長λgは、1.15μm程度である。回折格子層33には、例えば5.0×1017cm-3の濃度でSiがドープされている。回折格子層33は、バッファ層32の結晶方位を引き継いでいる。
【0031】
n型クラッド層34は、回折格子層33およびバッファ層32の上に設けられている。n型クラッド層34は、回折格子層33を覆う。n型クラッド層34は、例えば厚さが500nm程度のn型のInP層である。n型クラッド層34には、例えば5.0×1017cm-3の濃度でSiがドープされている。n型クラッド層34は、回折格子層33およびバッファ層32の結晶方位を引き継いでいる。
【0032】
活性層35は、n型クラッド層34の上に設けられている。活性層35は、量子井戸層と、量子井戸層を間に挟む2つの障壁層とを有する。量子井戸層は、例えば厚さが80nm程度のGaInAsP層または砒化アルミニウムガリウムインジウム(AlGaInAs)層である。障壁層は、いずれも、例えば厚さが30nm程度のGaInAsP層またはAlGaInAs層である。障壁層の室温での発光波長λgは、1.15μm程度である。活性層35は、n型クラッド層34の結晶方位を引き継いでいる。
【0033】
p型クラッド層36は、活性層35の上に設けられている。p型クラッド層36は、例えば厚さが200nm程度のp型のInP層である。p型クラッド層36には、例えば5.0×1017cm-3の濃度で亜鉛(Zn)がドープされている。p型クラッド層36は、活性層35の結晶方位を引き継いでいる。
【0034】
半導体層30は、基板20の結晶方位を引き継いでいる。以降の説明における結晶方位は、基板20の結晶方位である。半導体層30には、メサ31が形成されている。メサ31は、バッファ層32の一部が露出するように形成されている。メサ31の高さは、例えば1000nm程度である。メサ31は、レーザ部40および光増幅器部50を有する。詳細は後述するが、
図1に示されるように、概ね、レーザ部40は[0-1-1]方向に平行に延び、光増幅器部50は[0-1-1]方向から[01-1]方向に向けて6°以上8°以下傾斜した方向に平行に延びる。光増幅器部50は、レーザ部40の[0-1-1]側の端部に繋がる。レーザ部40と光増幅器部50とは、集積化されている。この場合、高い光出力を得やすい。レーザ部40の[0-1-1]方向に平行な方向における寸法は、例えば350μm以上1500μm以下である。光増幅器部50の[0-1-1]方向に平行な方向における寸法は、例えば500μm以上1800μm以下である。
【0035】
レーザ部40は、第1主面20Aに垂直な第1面111および第2面112を有する。第1面111の面方位は(01-1)であり、第2面112の面方位は(0-11)である。すなわち、第1面111および第2面112は、{01-1}面に平行である。第1面111と第2面112との間の第1距離W1は、例えば1.5μm以上2.5μm以下である。
【0036】
光増幅器部50は、テーパ部51と、平行部52とを有する。テーパ部51はレーザ部40の[0-1-1]側の端部に繋がり、平行部52はテーパ部51のレーザ部40とは反対の端部に繋がる。
【0037】
テーパ部51は、第1主面20Aに垂直な第3面113および第4面114を有する。第3面113は第1面111に連なり、第4面114は第2面112に連なる。第3面113および第4面114は、第1主面20Aに平行な面内で、それぞれ(01-1)面、(0-11)面から互いに同じ方向に傾斜している。第3面113および第4面114が傾斜する方向は、(100)面に平行な方向である。第3面113の(01-1)面からの傾斜は、第4面114の(0-11)面からの傾斜よりも大きい。すなわち、第3面113は、第1主面20Aに平行な面内で、第4面114よりも大きく{01-1}面から傾斜している。従って、第3面113と第4面114との間の第3距離W3は、レーザ部40から離れるに連れて漸増する。第3面113と(01-1)面とのなす角の大きさは角度θ13であり、第4面114と(0-11)面とのなす角の大きさは角度θ14であり、角度θ13が角度θ14よりも大きい。本開示において、2つの面のなす角の大きさ(角度)は、0°以上90°以下である。2つの面のなす角の大きさ(角度)は、例えば顕微鏡観察を通じて測定できる。
【0038】
平行部52は、第1主面20Aに垂直な第5面115および第6面116を有する。第5面115と第6面116とは互いに平行である。第5面115と第6面116との間の第2距離W2は第1距離W1よりも大きい。逆の見方をすると、第1距離W1は第2距離W2よりも小さい。第2距離W2は、例えば2.0μm以上10μm以下である。第5面115および第6面116は、第1主面20Aに平行な面内で、それぞれ(01-1)面、(0-11)面から第3面113および第4面114と同じ方向に傾斜している。例えば、第5面115および第6面116は、第1主面20Aに平行な面内で、それぞれ(01-1)面、(0-11)面から第3面113および第4面114と同じ方向に6°以上8°以下傾斜している。第5面115と(01-1)面とのなす角の大きさは角度θ15であり、第6面116と(0-11)面とのなす角の大きさは角度θ16であり、角度θ15および角度θ16は互いに等しく、例えば6°以上8°以下である。
【0039】
本実施形態では、第3面113および第5面115は、法線ベクトルが[01-1]方向と[011]方向との間を向くように傾斜し、第4面114および第6面116は、法線ベクトルが[0-11]方向と[0-1-1]方向との間を向くように傾斜している。
【0040】
第5面115は、第1主面20Aに平行な面内で、第3面113よりも小さく(01-1)面から傾斜している。逆の見方をすると、第3面113は、第1主面20Aに平行な面内で、第5面115よりも大きく(01-1)面から傾斜している。例えば、第3面113は、第1主面20Aに平行な面内で、第5面115よりも0°超1°以下大きく(01-1)面から傾斜している。角度θ13が角度θ15よりも大きく、例えば角度θ13と角度θ15との差が0°超1°以下である。
【0041】
第6面116は、第1主面20Aに平行な面内で、第4面114よりも大きく(0-11)面から傾斜している。逆の見方をすると、第4面114は、第1主面20Aに平行な面内で、第6面116よりも小さく(0-11)面から傾斜している。例えば、第4面114は、第1主面20Aに平行な面内で、第6面116よりも0°超1°以下小さく(0-11)面から傾斜している。角度θ16が角度θ14よりも大きく、例えば角度θ16と角度θ14との差が0°超1°以下である。
【0042】
例えば、角度θ13と角度θ15との差が角度θ16と角度θ14との差と等しく、テーパ部51と平行部52との境界において、テーパ部51の光軸および平行部52の光軸が互いに繋がるとともに、互いに平行である。平行部52の光軸は、例えば[0-1-1]方向から6°以上8°以下傾斜している。
【0043】
図2に示されるように、レーザ部40内では、回折格子層33に一定の周期の回折格子が形成されている。これに対し、
図3に示されるように、光増幅器部50内では、回折格子層33に回折格子が形成されておらず、メサ31内でバッファ層32の上面の全体が回折格子層33により覆われている。
【0044】
半導体層80は、メサ31を埋め込むようにして、メサ31の側方に設けられている。半導体層80は、p型ブロック層81と、n型ブロック層82とを有する。半導体層80は第1面111、第2面112、第3面113、第4面114、第5面115および第6面116に接する。p型クラッド層36の上面の少なくとも一部は半導体層80から露出している。
【0045】
p型ブロック層81は、バッファ層32の上に設けられている。p型ブロック層81は、第1面111、第2面112、第3面113、第4面114、第5面115および第6面116に接する。p型ブロック層81は、バッファ層32、回折格子層33、n型クラッド層34、活性層35およびp型クラッド層36の各側面に接する。p型ブロック層81は、例えば最も厚い部分の厚さが1000nm以上1500nm以下のp型のInP層である。p型ブロック層81には、例えば1.0×1017cm-3以上1.0×1018cm-3以下の濃度でZnがドープされている。p型ブロック層81の一部に塩素(Cl)が添加されていてもよい。
【0046】
n型ブロック層82は、p型ブロック層81の上に設けられている。n型ブロック層82は、例えば最も厚い部分の厚さが300nm以上500nm以下のn型のInP層である。n型ブロック層82には、例えば5.0×1018cm-3程度の濃度でSiがドープされている。n型ブロック層82の一部にClが添加されていてもよい。
【0047】
光半導体素子1は、更に、p型半導体層83と、コンタクト層84と、上部電極71と、下部電極72と、絶縁膜91と、反射防止膜93と、高反射膜94とを有する。
【0048】
p型半導体層83は、p型クラッド層36およびn型ブロック層82の上に設けられている。p型半導体層83は、例えば最も厚い部分の厚さが2500nm以上3500nm以下のp型のInP層である。p型半導体層83には、例えば1.0×1018cm-3以上2.0×1018cm-3以下の濃度でZnがドープされている。p型半導体層83は、p型クラッド層36の一部として機能し得る。
【0049】
コンタクト層84は、p型半導体層83の上に設けられている。コンタクト層84は、p型のGaInAsP層と、p型の砒化インジウムガリウム(InGaAs)層とを有する。GaInAsP層は、p型半導体層83の上に設けられている。例えば、GaInAsP層の厚さは200nm程度であり、GaInAsP層には、2.0×1018cm-3程度の濃度でZnがドープされている。InGaAs層は、GaInAsP層の上に設けられている。例えば、InGaAs層の厚さは300nm程度であり、InGaAs層には、8.0×1018cm-3程度の濃度でZnがドープされている。コンタクト層84のバンドギャップは、p型半導体層83のバンドギャップよりも小さい。
【0050】
上部電極71は、コンタクト層84の上に設けられている。上部電極71は、平面視でメサ31と重なるように設けられている。例えば、平面視で上部電極71の輪郭の内側にメサ31の輪郭がある。
【0051】
コンタクト層84および上部電極71は、レーザ部40と光増幅器部50との間で分割されている。コンタクト層84および上部電極71は、レーザ部40と光増幅器部50との間で絶縁分離されている。レーザ部40および光増幅器部50には、互いに独立した電流を流すことができる。
【0052】
コンタクト層84は、コンタクト層841と、コンタクト層842とを含む。コンタクト層841は、レーザ部40に設けられる。コンタクト層842は、光増幅器部50に設けられる。コンタクト層842は、平行部52の光軸方向に沿って複数(例えば9個)に分割されている。複数のコンタクト層842は、互いに絶縁分離されている。複数のコンタクト層842は、等間隔に分割されてよい。複数のコンタクト層842は、平行部52の光軸方向における長さが互いに同じであってよい。
【0053】
上部電極71は、上部電極711と、上部電極712とを含む。上部電極711は、レーザ部40に設けられる。上部電極712は、光増幅器部50に設けられる。上部電極712は、平行部52の光軸方向に沿って複数(例えば9個)に分割されている。複数の上部電極712は、互いに絶縁分離されている。この場合、複数の上部電極712のそれぞれに、互いに独立した電流を流すことができる。複数の上部電極712は、平行部52の光軸方向における長さが互いに同じであってよい。この場合、光増幅器部50の光軸方向の電流分布において、任意の分布形状を高い精度で近似しやすくなる。複数の上部電極712は、等間隔に分割されてよい。すなわち、複数の上部電極712は、平行部52の光軸方向における長さが互いに同じであり、かつ、隣り合う上部電極712間の距離が互いに同じであってよい。この場合、光増幅器部50の光軸方向の電流分布において、任意の分布形状を高い精度で近似しやすくなる。
【0054】
基板20、バッファ層32、半導体層80、p型半導体層83、コンタクト層84の積層体に、トレンチ85が形成されている。トレンチ85は、メサ31を間に挟むようにして、メサ31の[01-1]側と[0-11]側に形成されている。トレンチ85は、例えばメサ31に沿って延びる。
【0055】
絶縁膜91は、コンタクト層84の上面と、上部電極71の上面および側面と、トレンチ85の内壁面および底面とを覆う。絶縁膜91は、例えば酸化ケイ素(SiO2)膜、酸窒化ケイ素(SiON)膜または窒化ケイ素(SiN)膜である。絶縁膜91に、上部電極71の上面の一部が露出する開口部92が形成されている。
【0056】
下部電極72は、基板20の第2主面20Bの下に設けられている。下部電極72は基板20に接する。
【0057】
メサ31は、面方位が(0-1-1)の第1端面31Aと、面方位が(011)の第2端面31Bとを有する。反射防止膜93は第1端面31Aを覆い、高反射膜94は第2端面31Bを覆う。例えば、反射防止膜93は、高屈折率膜として酸化アルミニウム(Al2O3)または二酸化タンタル(Ta2O3)層と、低屈折率膜として酸化ケイ素(SiO2)または酸化チタン(TiO2)膜とを含み、高屈折率膜が第1端面31Aと低屈折率膜との間にある。例えば、高反射膜94は、高屈折率膜として酸化アルミニウム(Al2O3)または二酸化タンタル(Ta2O3)層と、低屈折率膜として酸化ケイ素(SiO2)または酸化チタン(TiO2)膜とを含み、高屈折率膜が第2端面31Bと低屈折率膜との間にある構造を2周期以上5周期以下繰り返した多層構造を有する。
【0058】
光半導体素子1では、平面視でメサ31のレーザ部40を含む部分が分布帰還型(DFB:Distributed Feedback)レーザとして機能する。この場合、単一モードで発振するため、データセンタ用の連続光源として利用しやすい。光半導体素子1では、平面視でメサ31の光増幅器部50を含む部分が半導体光増幅器として機能する。
【0059】
〔光半導体装置〕
図6を参照し、実施形態の第1例に係る光半導体装置2について説明する。
図6は、実施形態の第1例に係る光半導体装置2を示す概略図である。
【0060】
光半導体装置2は、光半導体素子1と、サブマウントSMと、配線パッドP1から配線パッドP4と、ボンディングワイヤB1からボンディングワイヤB11とを有する。
【0061】
サブマウントSMは、例えば窒化アルミニウム(AlN)により形成されている。
【0062】
各配線パッドP1、P2、P3、P4は、サブマウントSMの上に設けられている。各配線パッドP1、P2、P3、P4は、互いに絶縁分離されている。各配線パッドP1、P2、P3、P4には、定電流源が接続されている。各配線パッドP1、P2、P3、P4は、例えば銅により形成されている。
【0063】
光半導体素子1は、サブマウントSMに実装されている。光半導体素子1は、例えば半田、導電性接着剤等の接合材により、配線パッドP1の上に固定されている。光半導体素子1は、下部電極72が配線パッドP1と電気的に接続されている。光半導体素子1は、上部電極711が配線パッドP2とワイヤ接続され、上部電極712が配線パッドP3、P4とワイヤ接続されている。
【0064】
ボンディングワイヤB1、B2は、上部電極711と配線パッドP2とを電気的に接続する。ボンディングワイヤB3、B4、B5、B6、B7、B8は、上部電極712a、712b、712c、712d、712e、712fと配線パッドP3とを電気的に接続する。ボンディングワイヤB9、B10、B11は、上部電極712g、712h、712iと配線パッドP4とを電気的に接続する。
【0065】
係る光半導体装置2は、光増幅器部50に設けられる9個の上部電極712aから上部電極712iと、2個の配線パッドP3、P4とを有する。6個の上部電極712a、712b、712c、712d、712e、712fは配線パッドP3とワイヤ接続され、3個の上部電極712g、712h、712iは配線パッドP4とワイヤ接続されている。この場合、6個の上部電極712a、712b、712c、712d、712e、712fが同電位となり、3個の上部電極712g、712h、712iが同電位となる。このため、光半導体装置2は、1つの光増幅器部50が、光軸方向に沿って設けられる2個の光増幅器部50a、50bとして機能する。光増幅器部50a、50bは、レーザ部40の側からこの順に設けられている。例えば、上部電極712aから上部電極712iが光軸方向に沿って等間隔に分割され、かつ光軸方向における長さが互いに同じである場合、光増幅器部50aの長さと光増幅器部50bの長さとの比は2:1となる。
【0066】
図7を参照し、実施形態の第2例に係る光半導体装置3について説明する。
図7は、実施形態の第2例に係る光半導体装置3を示す概略図である。
【0067】
光半導体装置3は、上部電極712とワイヤ接続される配線パッドが3個である点で、光半導体装置2と異なる。光半導体装置3は、光半導体素子1と、サブマウントSMと、配線パッドP1から配線パッドP5と、ボンディングワイヤB1からボンディングワイヤB11とを有する。
【0068】
サブマウントSMは、例えばAlNにより形成されている。
【0069】
各配線パッドP1、P2、P3、P4、P5は、サブマウントSMの上に設けられている。各配線パッドP1、P2、P3、P4、P5は、互いに絶縁分離されている。各配線パッドP1、P2、P3、P4、P5には、定電流源が接続されている。各配線パッドP1、P2、P3、P4、P5は、例えば銅により形成されている。
【0070】
光半導体素子1は、サブマウントSMに実装されている。光半導体素子1は、例えば半田、導電性接着剤等の接合材により、配線パッドP1の上に固定されている。光半導体素子1は、下部電極72が配線パッドP1と電気的に接続されている。光半導体素子1は、上部電極711が配線パッドP2とワイヤ接続され、上部電極712が配線パッドP3、P4、P5とワイヤ接続されている。
【0071】
ボンディングワイヤB1、B2は、上部電極711と配線パッドP2とを電気的に接続する。ボンディングワイヤB3、B4、B5は、上部電極712a、712b、712cと配線パッドP3とを電気的に接続する。ボンディングワイヤB6、B7、B8は、上部電極712d、712e、712fと配線パッドP4とを電気的に接続する。ボンディングワイヤB9、B10、B11は、上部電極712g、712h、712iと配線パッドP5とを電気的に接続する。
【0072】
係る光半導体装置3は、光増幅器部50に設けられる9個の上部電極712aから上部電極712iと、3個の配線パッドP3、P4、P5とを有する。3個の上部電極712a、712b、712cは配線パッドP3とワイヤ接続され、3個の上部電極712d、712e、712fは配線パッドP4とワイヤ接続され、3個の上部電極712g、712h、712iは配線パッドP5とワイヤ接続されている。この場合、3個の上部電極712a、712b、712cが同電位となり、3個の上部電極712d、712e、712fが同電位となり、3個の上部電極712g、712h、712iが同電位となる。このため、光半導体装置3は、1つの光増幅器部50が、光軸方向に沿って設けられる3個の光増幅器部50a、50b、50cとして機能する。光増幅器部50a、50b、50cは、レーザ部40の側からこの順に設けられている。例えば、上部電極712aから上部電極712iが光軸方向に沿って等間隔に分割され、かつ光軸方向における長さが互いに同じである場合、光増幅器部50aの長さと光増幅器部50bの長さと光増幅器部50cの長さとの比は1:1:1となる。
【0073】
以上に説明したように、光半導体装置2、3は配線パッドの数よりも多い数の複数の上部電極712を有する。この場合、光半導体素子1の実装時に各ボンディングワイヤを接続する位置を変更することによって同電位で駆動する上部電極712の数を決定できる。このため、同一の光半導体素子1を異なる駆動方法において利用できる。
【0074】
〔光半導体装置の製造方法〕
光半導体装置2の製造方法について説明する。光半導体装置2は、以下の方法によって製造できる。光半導体装置3についても光半導体装置2と同様の方法によって製造できる。
【0075】
まず、光半導体素子1およびサブマウントSMを準備する(以下「準備工程」という)。準備工程は、レーザ部40と光増幅器部50とを有する光半導体素子1を準備することを含む。準備工程は、複数の配線パッドP1、P2、P3、P4が設けられたサブマウントSMを準備することを含む。
【0076】
次に、サブマウントSMに光半導体素子1を実装する(以下「実装工程」という。)。実装工程は、半田、導電性接着剤等の接合材により、サブマウントSMに設けられた配線パッドP1上に光半導体素子1を固定し、下部電極72と配線パッドP1とを電気的に接続することを含む。実装工程は、ボンディングワイヤB1、B2によって上部電極711と配線パッドP2とを接続することを含む。実装工程は、ボンディングワイヤによって複数の上部電極712a、712b、712c、712d、712e、712f、712g、712h、712iのそれぞれを複数の配線パッドP3、P4のうちの1つと接続することを含む。この場合、光半導体素子1の実装時にボンディングワイヤを接続する位置を変更することよって同電位で駆動する電極数を決定できる。このため、同一の光半導体素子1を異なる駆動方法において利用できる。実装工程は、光半導体素子1の光出力の目標値に応じて、ボンディングワイヤを接続する位置を決定することを含んでよい。この場合、目標とする光出力ごとに電力変換効率を高めることができる。本実施形態では、実装工程は、ボンディングワイヤB3、B4、B5、B6、B7、B8によって上部電極712a、712b、712c、712d、712e、712fと配線パッドP3とを接続することを含む。本実施形態では、実装工程は、ボンディングワイヤB9、B10、B11によって上部電極712g、712h、712iと配線パッドP4とを接続することを含む。
【0077】
〔光半導体装置の駆動条件の決定方法〕
図8から
図11を参照し、光半導体装置3の駆動条件の決定方法について説明する。本実施形態では、光半導体素子1の光出力の目標値が200mWである場合を例示して説明する。
図8は、光半導体装置3の駆動条件の決定方法を示すフローチャートである。
【0078】
図8に示されるように、光半導体装置3の駆動条件の決定方法は、ステップS1と、ステップS2とを有する。ステップS1は、光増幅器部50aに流す電流と、光増幅器部50b、50cに流す合計の電流との比(以下「第1電流比」という。)を決定するステップである。ステップS2は、光増幅器部50bに流す電流と、光増幅器部50cに流す電流との比(以下「第2電流比」という。)を決定するステップである。
【0079】
ステップS1では、まず、レーザ部40に電流を流してレーザ光を出射させ、第1電流比を1:1とした状態で光増幅器部50a、50b、50cに流す合計の電流を変化させながら、光半導体素子1の光出力および電力変換効率を測定する。これにより、第1電流比が1:1の場合における、光増幅器部50a、50b、50cに流す合計の電流と、光半導体素子1の光出力および電力変換効率との関係を示す第1関係情報を生成する。第1関係情報の一例を
図9に示す。
【0080】
図9は、第1電流比を決定するステップを示す図である。
図9は、第1電流比を1:1としたときの、光増幅器部50a、50b、50cに流す合計の電流と、光半導体素子1の光出力および電力変換効率(PCE:Power Conversion Efficiency)との関係を示す図である。
図9において、横軸は光増幅器部50a、50b、50cに流す合計の電流[A]を示し、左の縦軸は光半導体素子1の光出力[mW]を示し、右の縦軸は光半導体素子1の電力変換効率[%]を示す。
図9において、丸印は光出力を示し、三角印は電力変換効率を示す。
【0081】
次に、第1関係情報に基づいて、光出力の目標値を得るために必要な光増幅器部50a、50b、50cに流す合計の電流を求める。
図9に示されるように、光出力の目標値である200mWを得るために必要な光増幅器部50a、50b、50cに流す合計の電流は0.6Aであり、電力変換効率は24%である。
【0082】
次に、第1電流比を1:5に変更した状態で、レーザ部40に電流を流してレーザ光を出射させ、光増幅器部50a、50b、50cに流す合計の電流を変化させながら、光半導体素子1の光出力および電力変換効率を測定する。これにより、第1電流比が1:5の場合における、光増幅器部50a、50b、50cに流す合計の電流と、光半導体素子1の光出力および電力変換効率との関係を示す第2関係情報を生成する。第2関係情報の一例を
図10および
図11に示す。
【0083】
図10および
図11は、第1電流比を決定するステップを示す図である。
図10および
図11は、第1電流比を1:5としたときの、光増幅器部50a、50b、50cに流す合計の電流と、光半導体素子1の光出力および電力変換効率との関係を示す図である。
図10および
図11において、横軸は光増幅器部50a、50b、50cに流す合計の電流[A]を示し、左の縦軸は光半導体素子1の光出力[mW]を示し、右の縦軸は光半導体素子1の電力変換効率[%]を示す。
図10および
図11において、丸印は光出力を示し、三角印は電力変換効率を示す。
【0084】
次に、第2関係情報に基づいて、光増幅器部50a、50b、50cに流す合計の電流が0.6Aの場合における光半導体素子1の光出力を求める。
図10に示されるように、光増幅器部50a、50b、50cに流す合計の電流が0.6Aの場合における光半導体素子1の光出力は230mWである。
【0085】
次に、第1電流比が1:5の場合において、光出力の目標値を得るために必要な光増幅器部50a、50b、50cに流す合計の電流を求める。
図11に示されるように、光出力の目標値である200mWを得るために必要な光増幅器部50a、50b、50cに流す合計の電流は0.5Aであり、電力変換効率は27%である。すなわち、第1電流比を1:1から1:5に変更することにより、光半導体素子1を200mWの出力で駆動させる際の電力変換効率が24%から27%に改善する。
【0086】
次に、第1電流比をさらに別の比率に変更した状態で、
図10および
図11に示される方法と同じ手順で電力変換効率を求め、電力変換効率が収束するまで繰り返し、最大の電力変換効率が得られる場合の第1電流比を決定し、ステップS1を終了する。
【0087】
ステップS2では、第1電流比の決定方法と同様の方法によって、第2電流比を決定する。
【0088】
以上のステップS1およびステップS2により、光半導体素子1を200mWで駆動させる場合の電力変換効率を最適化できる。
【0089】
本実施形態では、光半導体素子1を200mWで駆動させる場合の電力変換効率を最適化する場合を例示して説明したが、これに限定されない。光半導体素子1を200mW以外の光出力で駆動させる場合についても同様に電力変換効率を最適化できる。
【0090】
本実施形態では、光増幅器部50が3個の光増幅器部50a、50b、50cを含む場合を例示して説明したが、これに限定されない。例えば、光増幅器部50が2個の光増幅器部を含む場合や、光増幅器部50が4個以上の光増幅器部を含む場合においても同様に、光半導体素子1の電力変換効率を最適化できる。
【0091】
〔実験結果〕
実施形態に係る光半導体素子1を用いた実験結果について説明する。
【0092】
(キャリア密度およびフォトン密度)
まず、実施形態に係る光半導体素子1を準備した。
図12は、実験に用いた光半導体素子1を示す概略図である。
図12に示されるように、光半導体素子1は、レーザ部40と、光増幅器部50とを有する。レーザ部40には、上部電極711が設けられている。光増幅器部50には、分割された2つの上部電極712a、712bが設けられている。光増幅器部50は、上部電極712aが設けられる光増幅器部50aと、上部電極712bが設けられる光増幅器部50bとを含む。
【0093】
次に、レーザ部40に電流を流してレーザ光を出射させ、光増幅器部50a、50bに電流を流しながら、光半導体素子1内のキャリア密度およびフォトン密度を測定した。光増幅器部50aに流す電流と光増幅器部50bに流す電流との比(以下「電流比」という。)は、1:3または1:1とした。
【0094】
図13は、光半導体素子1内のキャリア密度を示す図である。
図14は、光半導体素子1内のフォトン密度を示す図である。
図13および
図14における横軸は、光半導体素子1の位置[μm]を示す。光半導体素子1の位置は、第2端面31Bから第1端面31Aまでの[0-1-1]方向に平行な方向に沿った位置[μm]である。
図13における縦軸は光半導体素子1のキャリア密度[m
-3]を示し、
図14における縦軸は光半導体素子1のフォトン密度[m
-3]を示す。
図13および
図14において、実線は電流比が1:3の場合を示し、破線は電流比が1:1の場合を示す。
【0095】
図13および
図14に示されるように、電流比が1:3の場合、電流比が1:1の場合と比べて、光増幅器部50bにおけるキャリア密度およびフォトン密度が高くなることが分かる。この結果から、光増幅器部50bに流す電流を光増幅器部50aに流す電流よりも大きくすることにより、光増幅器部50bにおいてレーザ光を増幅できることが示された。これに対し、光増幅器部50a、50bに同じ電流を流した場合、光増幅器部50bにおけるフォトン密度が飽和し、レーザ光をほとんど増幅できないことが示された。
【0096】
(光出力および電力変換効率)
まず、
図12に示される光半導体素子1を準備した。次に、レーザ部40に電流を流してレーザ光を出射させ、光増幅器部50a、50bに流す合計の電流を変化させながら、光半導体素子1の光出力および電力変換効率を測定した。電流比は、1:4または1:1とした。
【0097】
図15は、光増幅器部50a、50bに流す合計の電流と光出力および電力変換効率との関係を示す図である。
図15において、横軸は光増幅器部50a、50bに流す合計の電流[A]を示し、左の縦軸は光半導体素子1の光出力[mW]を示し、右の縦軸は光半導体素子1の電力変換効率[%]を示す。
図15において、丸印は光出力を示し、三角印は電力変換効率を示す。
図15において、実線は電流比が1:4の場合を示し、破線は電流比が1:1の場合を示す。
【0098】
図15に示されるように、電流比を変更することにより、光増幅器部50a、50bに流す合計の電流と、光半導体素子1の光出力および電力変換効率との関係性が変化することが分かる。例えば、電流比を1:4にすると低い光出力(例えば150mW以下)での電力変換効率を改善でき、電流比を1:1にすると高い光出力(例えば500mW超)が得られる。すなわち、同一の光半導体素子1において、高い光出力(例えば500mW超)が可能でありながら、低い光出力(例えば150mW以下)での電力変換効率を改善できる。このように、分割された複数の上部電極712が設けられる光半導体素子1によれば、光出力の目標値に応じて電力変換効率を最適化できる。
【0099】
これに対し、上部電極712が分割されずに1個である場合、光増幅器部50に流す電流と、光半導体素子1の光出力および電力変換効率との関係性が変化しない。このため、光出力の目標値に応じて光半導体素子1の電力変換効率を最適化することは困難である。
【0100】
〔光半導体素子の変形例〕
図16を参照し、実施形態の変形例に係る光半導体素子5について説明する。
図16は、実施形態の変形例に係る光半導体素子5を示す断面図である。
図16は、
図1中のXVI-XVI線に沿った断面図に相当する。以下、実施形態に係る光半導体素子1と異なる構成を中心に説明する。
【0101】
光半導体素子5は、基板20と、半導体層30と、コンタクト層84と、コンタクト電極86と、絶縁膜91と、下地金属膜87と、上部電極71と、下部電極72とを有する。
【0102】
基板20は、例えばn型のInP基板である。基板20は、第1主面20Aと、第1主面20Aとは反対の第2主面20Bとを有する。
【0103】
半導体層30は、第1主面20Aの上に設けられている。半導体層30は、回折格子層33と、n型クラッド層34と、活性層35と、p型クラッド層36とを有する。回折格子層33は、例えばGaInAsP層である。n型クラッド層34は、例えばn型のInP層である。活性層35は、量子井戸層と、量子井戸層を間に挟む2つの障壁層とを有する。量子井戸層は、例えばGaInAsP層である。障壁層は、例えばGaInAsP層である。p型クラッド層36は、例えばp型のInP層である。
【0104】
コンタクト層84は、半導体層30の上に設けられている。コンタクト層84は、p型のGaInAsP層と、p型のInGaAs層とを有する。GaInAsP層は、p型クラッド層36の上に設けられている。InGaAs層は、GaInAsP層の上に設けられている。
【0105】
コンタクト層84は、コンタクト層841と、コンタクト層842とを含む。コンタクト層841は、レーザ部40に設けられる。コンタクト層842は、光増幅器部50に設けられる。コンタクト層841とコンタクト層842とは、第1分離溝121によって分割されている。コンタクト層841とコンタクト層842とは、絶縁分離されている。
【0106】
コンタクト層841は、第1端部841aを有する。第1端部841aは、コンタクト層841の第1分離溝121の側面のうちコンタクト層841の厚さの半分の位置における接線L1と、p型クラッド層36の上面とが交わる位置である。
【0107】
コンタクト層842は、第2端部842aを有する。第2端部842aは、コンタクト層842の第1分離溝121の側面のうちコンタクト層842の厚さの半分の位置における接線L2と、p型クラッド層36の上面とが交わる位置である。
【0108】
第1分離溝121の幅A1は、5μm以上10μm以下であってよい。5μm以上の場合、互いに隣り合うコンタクト層841とコンタクト層842との間において高い絶縁性を確保しやすい。10μm以下の場合、半導体層30における光吸収を低減しやすい。第1分離溝121の幅A1は、光軸方向における第1端部841aと第2端部842aとの間の距離である。
【0109】
回折格子層33は、第1領域33aと、第2領域33bとを有する。第1領域33aは、光軸方向に沿って一定の周期の回折格子が形成された領域である。第2領域33bは、回折格子が形成されていない領域である。第1領域33aは、光軸方向において第2領域33bよりも光増幅器部50から遠くに位置する。この場合、第1領域33aを、電流が注入されない非注入領域35aから遠ざけることができる。非注入領域35aは、活性層35のうち、平面視でコンタクト層84と重ならない領域である。
【0110】
第1領域33aと第2領域33bとの境界は、光軸方向において第1端部841aよりも光増幅器部50から遠くに位置する。この場合、第1領域33aを非注入領域35aから遠ざけることができる。非注入領域35aでは、光吸収によって効率が低下する。第1領域33aを非注入領域35aから遠ざけることで、光は非注入領域35aを1度しか通過しなくなり、非注入領域35aにおける光吸収を低減できる。
【0111】
光軸方向における、第1領域33aと第2領域33bとの境界と、第1端部841aとの距離A5は、5μm以上10μm以下であってよい。5μm以上の場合、光半導体素子5を製造する際のアライメントずれの影響を受けにくい。10μm以下の場合、光半導体素子5の特性への影響が生じにくい。
【0112】
コンタクト電極86は、コンタクト層84の上に設けられている。コンタクト電極86は、例えばAuZn膜またはTiPtAu膜である。コンタクト電極86は、コンタクト電極861と、コンタクト電極862とを含む。コンタクト電極861は、レーザ部40に設けられる。コンタクト電極862は、光増幅器部50に設けられる。コンタクト電極861とコンタクト電極862とは、第2分離溝122によって分割されている。コンタクト電極861とコンタクト電極862とは、絶縁分離されている。
【0113】
コンタクト電極861は、光軸方向においてコンタクト電極862に近い第3端部861aを有する。第3端部861aは、光軸方向において第1端部841aよりも光増幅器部50から遠くに位置する。コンタクト電極862は、光軸方向においてコンタクト電極861に近い第4端部862aを有する。第4端部862aは、光軸方向において第2端部842aよりもレーザ部40から遠くに位置する。第2分離溝122の幅A2は、第1分離溝121の幅A1よりも広くてよい。第2分離溝122の幅A2は、光軸方向における第3端部861aと第4端部862aとの間の距離である。
【0114】
絶縁膜91は、コンタクト電極86の上に設けられている。絶縁膜91は、例えば酸化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜または窒化ケイ素膜である。絶縁膜91は、第1分離溝121および第2分離溝122を覆う。絶縁膜91は、第1分離溝121によって露出する半導体層30の上面と、第2分離溝122によって露出するコンタクト層841、842の上面および側面と、コンタクト電極861、862の上面および側面とを覆う。この場合、半導体層30、コンタクト層84、コンタクト電極86への水分の侵入が防止される。そのため、光半導体素子5の耐湿性が向上する。
【0115】
下地金属膜87は、コンタクト電極86の上面と、絶縁膜91の側面および上面の一部とを覆う。下地金属膜87は、例えばTiW膜である。下地金属膜87は、下地金属膜871と、下地金属膜872とを含む。下地金属膜871は、レーザ部40に設けられる。下地金属膜872は、光増幅器部50に設けられる。下地金属膜871と下地金属膜872とは、第3分離溝123によって分割されている。下地金属膜871と下地金属膜872とは、絶縁分離されている。第3分離溝123の幅A3は、第1分離溝121の幅A1よりも広くてよい。第3分離溝123の幅A3は、第2分離溝122の幅A2よりも狭くてよい。
【0116】
上部電極71は、下地金属膜87の上に設けられる。上部電極71は、下地金属膜87を覆う。上部電極71は、例えばAu電極である。上部電極71は、上部電極711と、上部電極712とを含む。上部電極711は、レーザ部40に設けられる。上部電極712は、光増幅器部50に設けられる。上部電極711と上部電極712とは、第4分離溝124によって分割されている。上部電極711と上部電極712とは、絶縁分離されている。第4分離溝124の幅A4は、第3分離溝123の幅A3と同じであってよい。
【0117】
下部電極72は、第2主面20Bの下に設けられている。下部電極72は、基板20に接する。下部電極72は、例えばAuGe電極、TiPtAu電極である。
【0118】
以上、
図16の例では、互いに隣り合うレーザ部40と光増幅器部50との間における分離構造を説明したが、光増幅器部50において互いに隣り合う上部電極712間における分離構造についても同様であってよい。この場合も同様に、半導体層30、コンタクト層84、コンタクト電極86への水分の侵入が防止される。そのため、光半導体素子5の耐湿性が向上する。
【0119】
〔変形例に係る光半導体素子の製造方法〕
図17から
図31を参照し、実施形態の変形例に係る光半導体素子5の製造方法について説明する。
図17から
図31は、実施形態の変形例に係る光半導体素子5の製造方法を示す断面図である。
【0120】
まず、
図17に示されるように、第1主面20Aおよび第2主面20Bを有する基板20を準備する。次に、第1主面20Aの上に回折格子層33を形成する。レーザ部40に含まれる部分では、回折格子層33に回折格子を形成し、光増幅器部50に含まれる部分では、回折格子層33により基板20の上面の全体を覆う。これにより、第1領域33aおよび第2領域33bが形成される。次に、回折格子層33の上にn型クラッド層34を形成する。n型クラッド層34は、回折格子層33を覆う。
【0121】
次に、
図18に示されるように、n型クラッド層34の上に活性層35を形成し、活性層35の上にp型クラッド層36を形成する。
【0122】
次に、
図19に示されるように、p型クラッド層36の上にコンタクト層84を形成する。
【0123】
次に、
図20に示されるように、コンタクト層84の上にマスク61を形成する。マスク61は、第1分離溝121を形成する領域上に開口を有する。マスク61は、例えば酸化ケイ素膜61aとレジスト膜61bとの積層膜である。酸化ケイ素膜61aの代わりに、酸窒化ケイ素膜、窒化ケイ素膜であってもよい。次に、マスク61をエッチングマスクとして用いて、コンタクト層84のウェットエッチングを行う。これにより、コンタクト層84に第1分離溝121が形成される。ウェットエッチングでは、塩酸、硫酸、過酸化水素水等の混合液によりコンタクト層84を除去できる。この場合、InPとGaInAsPのエッチング選択性により深さ制御が容易である。具体的には、p型クラッド層36の上面でエッチングを停止できる。ウェットエッチングでは、表面に凹凸がある場合でも凹凸形状に追従してコンタクト層84を除去できる。ウェットエッチングに代えて、コンタクト層84にドライエッチングを行ってもよい。ドライエッチングとしては、例えば四塩化ケイ素(SiCl
4)を用いた反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)を行う。
【0124】
次に、
図21に示されるように、マスク61を除去する。
【0125】
次に、
図22に示されるように、マスク62を形成する。マスク62は、コンタクト電極86を形成する領域上に開口を有する。マスク62は、例えばレジスト膜である。次に、マスク62から露出するコンタクト層84の上にコンタクト電極86を形成する。
【0126】
次に、
図23に示されるように、マスク62を除去する。これにより、コンタクト電極86に第2分離溝122が形成される。次に、図示しないトレンチを形成する。トレンチは、例えばエッチングマスク(図示せず)を用いたドライエッチングにより形成できる。ドライエッチングとしては、例えばSiCl
4を用いたRIEを行う。
【0127】
次に、
図24に示されるように、第1分離溝121によって露出するp型クラッド層36の上面と、第2分離溝122によって露出するコンタクト層84の上面および側面と、コンタクト電極86の上面および側面とを覆う絶縁膜91を形成する。絶縁膜91は、例えばプラズマCVD(PE-CVD:Plasma Enhanced - Chemical Vapor Deposition)法により形成できる。
【0128】
次に、
図25に示されるように、絶縁膜91の上にマスク63を形成する。マスク63は、第1分離溝121および第2分離溝122を覆う領域上に形成される。マスク63は、例えばレジスト膜である。次に、マスク63をエッチングマスクとして用いて、絶縁膜91のエッチングを行う。
【0129】
次に、
図26に示されるように、マスク63を除去する。次に、コンタクト電極86の上面と、絶縁膜91の上面および側面とを覆う下地金属膜87を形成する。下地金属膜87は、例えばスパッタ法により形成できる。
【0130】
次に、
図27に示されるように、下地金属膜87の上にマスク64を形成する。マスク64は、上部電極71を形成する領域上に開口を有する。マスク64は、例えばレジスト膜である。次に、マスク64から露出する下地金属膜87の上に上部電極71を形成する。上部電極71は、例えばめっき法により形成できる。
【0131】
次に、
図28に示されるように、マスク64を除去する。これにより、上部電極71に第4分離溝124が形成される。
【0132】
次に、
図29に示されるように、第4分離溝124から露出する下地金属膜87を除去する。これにより、下地金属膜87に第3分離溝123が形成される。下地金属膜87は、例えばドライエッチングにより除去できる。ドライエッチングとしては、例えばイオンミリング、RIEを行う。この場合、上部電極71へのサイドエチングが入りにくい。すなわち、第4分離溝124の側面がエッチングされにくい。ドライエッチングに代えて、ウェットエッチングにより、第4分離溝124から露出する下地金属膜87を除去してもよい。下地金属膜87は、例えばフッ酸(HF)を用いて除去できる。
【0133】
次に、
図30に示されるように、基板20を第2主面20Bから研磨する。
【0134】
次に、
図31に示されるように、第2主面20Bの下に基板20に接する下部電極72を形成する。
【0135】
このようにして、実施形態の変形例に係る光半導体素子5を製造できる。
【0136】
以上、実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0137】
1、5:光半導体素子
2、3:光半導体装置
20:基板
20A:第1主面
20B:第2主面
30、80:半導体層
31:メサ
31A:第1端面
31B:第2端面
32:バッファ層
33:回折格子層
33a:第1領域
33b:第2領域
34:n型クラッド層
35:活性層
35a:非注入領域
36:p型クラッド層
40:レーザ部
50、50a、50b、50c:光増幅器部
51:テーパ部
52:平行部
61、62、63、64:マスク
61a:酸化ケイ素膜
61b:レジスト膜
71、711、712、712a、712b、712c、712d、712e、712f、712g、712h、712i:上部電極
72:下部電極
81:p型ブロック層
82:n型ブロック層
83:p型半導体層
84、841、842:コンタクト層
841a:第1端部
842a:第2端部
85:トレンチ
86、861、862:コンタクト電極
861a:第3端部
862a:第4端部
87、871、872:下地金属膜
91:絶縁膜
92:開口部
93:反射防止膜
94:高反射膜
111:第1面
112:第2面
113:第3面
114:第4面
115:第5面
116:第6面
121:第1分離溝
122:第2分離溝
123:第3分離溝
124:第4分離溝
A1、A2、A3、A4:幅
A5:距離
B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9、B10、B11:ボンディングワイヤ
L1、L2:接線
P1、P2、P3、P4、P5:配線パッド
SM:サブマウント
W1:第1距離
W2:第2距離
W3:第3距離
θ13、θ14、θ15、θ16:角度