(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143977
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ソレノイド装置及びソレノイド装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 7/06 20060101AFI20241003BHJP
H01F 7/16 20060101ALI20241003BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20241003BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01F7/06 E
H01F7/16 Z
H01F41/02 F
F16K31/06 305A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119695
(22)【出願日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】P 2023053747
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】陳 東明
【テーマコード(参考)】
3H106
5E048
【Fターム(参考)】
3H106EE35
3H106GA01
5E048AD02
5E048CA03
(57)【要約】
【課題】カバー体の巻始め端部と巻終わり端部とのずれを抑制する。
【解決手段】ソレノイドと、ソレノイドを覆うカバー体と、を備えるソレノイド装置であって、前記カバー体は、筒状に巻かれた板状部材であり、前記板状部材は、前記板状部材の巻始め端部と巻終わり端部とにおいて、周方向に対向し周方向の位置決めを行う周方向対向面を有する。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボビン、前記ボビンに巻回されたコイル、前記ボビンの貫通孔内の軸方向一の方側に配置され、前記コイルの励磁によって軸方向に移動するプランジャと、前記貫通孔の軸方向の他方側に配置され、前記プランジャを軸方向に案内する軸方向に延びる孔を有した固定コア、とを備えるソレノイドと、
前記ソレノイドを覆うカバー体と、
を備えるソレノイド装置であって、
前記カバー体は、筒状に巻かれた板状部材であり、
前記板状部材は、前記板状部材の巻始め端部と巻終わり端部とにおいて、周方向に対向し周方向の位置決めを行う周方向対向面を有し、
前記板状部材は、前記巻始め端部と前記巻終わり端部との一方に被嵌合部を備え、
前記板状部材は、前記巻始め端部と前記巻終わり端部との他方に、前記被嵌合部に嵌合する嵌合部を備える、
ソレノイド装置。
【請求項2】
前記被嵌合部及び前記嵌合部は、軸方向に対向し軸方向の位置決めを行う軸方向対向面を備える、請求項1に記載のソレノイド装置。
【請求項3】
前記被嵌合部と前記嵌合部とは、前記板状部材の厚み方向からは、前記嵌合部は、前記被嵌合部に嵌合することができ、前記厚み方向に垂直で且つ前記被嵌合部と前記嵌合部とが接近する方向からは、前記嵌合部は、前記被嵌合部に嵌合することができない形状である、請求項1に記載のソレノイド装置。
【請求項4】
前記被嵌合部は、前記巻始め端部と前記巻終わり端部との一方から前記板状部材の内側に進むに従って軸方向の幅が長くなるように切欠きられた切欠き部であり、
前記嵌合部は、前記巻始め端部と前記巻終わり端部との他方から、前記他方が遠くなるのに従って軸方向の幅が長くなる突出部である、
請求項3に記載のソレノイド装置。
【請求項5】
前記カバー体の軸方向の一端側は、内径が広がった拡径部を備える、請求項1に記載のソレノイド装置。
【請求項6】
前記拡径部は、軸方向に進むに従って幅が変化する複数のスリット部を備える、請求項5に記載のソレノイド装置。
【請求項7】
前記拡径部の隣り合う2つの前記スリット部の間は、軸側に折れ曲がった折れ曲がり部を備える、請求項6に記載のソレノイド装置。
【請求項8】
請求項1に記載のソレノイド装置の製造方法であって、
前記巻始め端部の周方向対向面と前記巻終わり端部の周方向対向面とを基準に、前記巻始め端部及び前記巻終わり端部の位置決めを行って、前記板状部材を前記筒状に巻くことにより、前記カバー体を形成することを含み、
前記筒状に巻かれた前記板状部材内に前記ソレノイドが収容される、
ソレノイド装置の製造方法。
【請求項9】
ボビン、前記ボビンに巻回されたコイル、前記ボビンの貫通孔内の軸方向一の方側に配置され、前記コイルの励磁によって軸方向に移動するプランジャと、前記貫通孔の軸方向の他方側に配置され、前記プランジャを軸方向に案内する軸方向に延びる孔を有した固定コア、とを備えるソレノイドと、
前記ソレノイドを覆うカバー体と、
を備えるソレノイド装置であって、
前記カバー体は、筒状に巻かれた板状部材であり、
前記板状部材は、前記板状部材の巻始め端部と巻終わり端部とにおいて、周方向に対向し周方向の位置決めを行うための周方向対向面と、軸方向に対向し軸方向の位置決めを行うための軸方向対向面とを有した合わせ面部を備え、
前記板状部材は、軸方向の端部に、内径が拡がった拡径部を備え、
前記拡径部は、周方向に離間し且つ軸方向で幅が変化する切欠き部を複数備え、
前記板状部材の軸方向の端部の前記切欠き部に挟まれた部分は、軸側に折れ曲った軸方向規制部を備えるソレノイド装置。
【請求項10】
前記板状部材の軸方向の端部は、プレス枠切り離し切断面部を有し、
前記プレス枠切り離し切断面部は、前記板状部材の軸方向の端部の軸側に折り曲げられない非軸方向規制部に設けられる、
ことを特徴とする請求項9に記載のソレノイド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、ソレノイド装置及びソレノイド装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の電磁装置は、プランジャを軸方向に移動させるソレノイドとソレノイドを覆うカバー体とを備える。カバー体の素材は、平板を、幅方向の両端側に複数の切欠き溝が形成された筒状円弧形成部と、筒状円弧形成部の端に接続された取りつけ形成部とを有するように、プレス打ち抜きすることにより、形成される。そして、カバー体の素材の筒状円弧形成部の一端、即ち、筒状取りつけ形成部が接続された他端とは逆側の端を、取りつけ形成部が接続された他端側の上に位置するように、筒状円弧形成部を曲げ、一端側と他端側とを熔接して筒状のカバー体が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記電磁装置には、筒状円弧形成部の一端を他端側に位置させるための位置決めの基準がない。よって、筒状円弧形成部を曲げた後、筒状円弧形成部の一端と他端とが平行でない筒状のカバー体が形成される。
【0005】
本開示の技術は、上記事実に鑑み成されたもので、カバー体の巻始め端部と巻終わり端部とのずれを抑制することができるソレノイド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的達成のため、本開示の技術の第1の態様のソレノイド装置は、ボビン、前記ボビンに巻回されたコイル、前記ボビンの貫通孔内の軸方向一の方側に配置され、前記コイルの励磁によって軸方向に移動するプランジャと、前記貫通孔の軸方向の他方側に配置され、前記プランジャを軸方向に案内する軸方向に延びる孔を有した固定コア、とを備えるソレノイドと、前記ソレノイドを覆うカバー体と、を備えるソレノイド装置であって、前記カバー体は、筒状に巻かれた板状部材であり、前記板状部材は、前記板状部材の巻始め端部と巻終わり端部とにおいて、周方向に対向し周方向の位置決めを行う周方向対向面を有する。
【0007】
本開示の技術の第2の態様のソレノイド装置の製造方法は、第1の態様のソレノイド装置の製造方法であって、前記巻始め端部の周方向対向面と前記巻終わり端部の周方向対向面とを基準に、前記巻始め端部及び前記巻終わり端部の位置決めを行って、前記板状部材を前記筒状に巻くことにより、前記カバー体を形成することを含み、前記筒内に前記ソレノイドが収容される。
【0008】
本開示の技術の第3の態様のソレノイド装置は、ボビン、前記ボビンに巻回されたコイル、前記ボビンの貫通孔内の軸方向一の方側に配置され、前記コイルの励磁によって軸方向に移動するプランジャと、前記貫通孔の軸方向の他方側に配置され、前記プランジャを軸方向に案内する軸方向に延びる孔を有した固定コア、とを備えるソレノイドと、前記ソレノイドを覆うカバー体と、を備えるソレノイド装置であって、前記カバー体は、筒状に巻かれた板状部材であり、前記板状部材は、前記板状部材の巻始め端部と巻終わり端部とにおいて、周方向に対向し周方向の位置決めを行うための周方向対向面と、軸方向に対向し軸方向の位置決めを行うための軸方向対向面とを有した合わせ面部を備え、前記板状部材は、軸方向の端部に、内径が拡がった拡径部を備え、前記拡径部は、周方向に離間し且つ軸方向で幅が変化する切欠き部を複数備え、前記板状部材の軸方向の端部の前記切欠き部に挟まれた部分は、軸側に折れ曲った軸方向規制部を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の技術は、カバー体の巻始め端部と巻終わり端部とのずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の技術の第1実施形態のソレノイド装置の一例の断面図である。
【
図2】
図2は、カバー体30を構成する板状部材31の一例を示す正面図である。
【
図3B】
図3Bは、カバー体30のX軸方向の負側の端に備えられた拡径部32の一例を示す断面図(
図3AのA-A断面図)である。
【
図4】
図4は、第2実施形態のカバー体42の一例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、第3実施形態のカバー体50の一例を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、第1変形例の板状部材31の一例を示す正面図である。
【
図7】
図7は、第2変形例の板状部材31の一例を示す正面図である。
【
図8】
図8は、第3変形例のカバー体50Bの板状部材31Aの一例を示す正面図である。
【
図9】
図9は、板材から板状部材31及びと繋ぎ部82、84外を打ち抜いた様子の一例を示す正面図である。
【
図10】
図10は、板状部材31Aを丸めた様子の一例を示す正面図である。
【
図11】
図11は、カバー体50Bの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本開示の技術の実施形態を説明する。
【0012】
以下では、説明の便宜上、互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸を設定する。一例として、X軸とY軸とを含むXY平面が水平、Z軸が鉛直である。なお、X軸が鉛直であり、Y軸とZ軸とを含むXZ平面が水平でもよい。
【0013】
また、X軸方向は「軸O方向」であり、軸Oを中心とする径方向を「径方向」と言い、軸Oを中心とする周方向を「周方向C」と言う。
【0014】
そして、X軸方向正側が「軸O方向一方側」であり、X軸方向負側が「軸O方向他方側」である。
【0015】
本明細書中において、上下方向、水平方向、上側および下側とは、単に各部の相対的な位置関係を説明するために使用する用語である。したがって、各部の実際の位置関係等は、これらの用語で示される位置関係等と異なっていてもよい。
(構成)
図1~
図3Bを参照して、本開示の技術のソレノイド装置の実施形態の構成について説明する。
図1は、本開示の技術の第1実施形態のソレノイド装置の一例の断面図である。
図2は、カバー体30を構成する板状部材31の一例を示す正面図である。
図3Aは、カバー体30の一例を示す斜視図である。
図3Bは、カバー体30のX軸方向の負側の端に備えられた拡径部32の一例を示す断面図(
図3AのA-A断面図)である。
【0016】
図1に示すように、ソレノイド装置100は、ソレノイド1と、ソレノイド1のX軸方向正側に装着された弁機構10と、カバー体30と、を備える。
【0017】
ソレノイド装置100は、例えば自動車に搭載され、液体、気体等の流体Qの通過と遮断とを切り換える切換装置として用いられる。
【0018】
(ソレノイド1)
ソレノイド1は、ボビン2と、プランジャ103と、コイル4と、ヨーク(固定コア)5と、外部取付用ブラケット7と、コイルバネ(付勢部材)8と、を有する。
【0019】
ボビン2は、貫通孔21を有する筒状の部材である。貫通孔21は、X軸方向に沿ってボビン2を貫通する。また、貫通孔21の直径は、X軸方向に沿ってほぼ一定である。
【0020】
コイル14は、ボビン2の外周部22に、導電性を有する線材が巻回されることにより形成され。
【0021】
プランジャ103は、ボビン2の貫通孔21内のX軸方向性正側に配置され、コイル14の励磁によってX軸方向に移動する。
【0022】
ヨーク5は、ボビン2の貫通孔21内のX軸方向性負側に配置され、プランジャ103をX軸方向に案内する孔を有する。
【0023】
ボビン2は、例えば、ポリエステルやポリイミド等の各種樹脂材料で構成される。
【0024】
ボビン2の貫通孔21には、X軸方向正側からプランジャ103が、また、X軸方向負側からヨーク5がそれぞれ挿入される。
【0025】
プランジャ103およびヨーク5は、それぞれ、例えば、鉄のような磁性材料(磁性を有する金属材料)で構成される。
【0026】
上記コイル4への通電に伴って、磁界(磁力)が発生することによりヨーク5が励磁される。そして、この励磁されたヨーク5にプランジャ103が吸引される。これにより、プランジャ103をX軸方向に沿って移動させることができる。すなわち、プランジャ103は、X軸方向に沿って移動可能にボビン2に支持される。
【0027】
ヨーク5は、そのX軸方向負側の端部に、径方向外側に向かって突出する固定部59を有する。この固定部59がボビン2に接触することにより、ヨーク5がボビン2(コイル4)に対してX軸方向において位置決めされる。
【0028】
ヨーク5は、そのX軸方向正側の面に、X軸方向負側に凹む凹部51を有する。この凹部51は、軸O(X軸)に直交する底面511と、内周面(第2傾斜面)512とを備える。
【0029】
内周面512は、X軸方向負側から正側に向かって軸Oから遠ざかるように、軸Oに対して傾斜する。換言すれば、凹部51の直径は、X軸方向負側から正側に向かって漸増する。
【0030】
ヨーク5の固定部59とボビン2との間にはガスケット61が、また、外部取付用ブラケット7とボビン2との間にはガスケット62が、それぞれ圧縮された状態で配置される。
【0031】
これらのガスケット61、62は、リング状をなし、ボビン2の貫通孔21と同心状に配置される。ガスケット61、62の存在により、ボビン2と、固定部59および外部取付用ブラケット7との間が気密的に封止される。
【0032】
なお、ガスケット61、62は、例えば、ウレタンゴム等の弾性材料で構成される。
【0033】
プランジャ103は、そのX軸方向正側の面に、X軸方向負側に凹む凹部131を有する。この凹部131に、弁機構10のスプール弁130(小径部302)が圧入される。これにより、スプール弁130は、プランジャ103に連結され、プランジャ103とともにX軸方向に沿って移動することができる。
【0034】
また、プランジャ103は、そのX軸方向負側の面に、X軸方向正側に凹む凹部132を有する。
【0035】
本実施形態では、凹部131と凹部132とは、プランジャ103のX軸方向に沿って貫通する貫通孔で繋がる。この貫通孔の直径は、凹部131および凹部132の直径より小さく設定される。このため、凹部131と凹部132との境界部には、突出部133が形成される。
【0036】
プランジャ103は、そのX軸方向負側の端部に、外周面(第1傾斜面)134を有する。外周面134は、X軸方向正側から負側に向かって軸Oに近づくように、軸Oに対して傾斜する。換言すれば、プランジャ103のX軸方向負側の端部の外径は、X軸方向正側から負側に向かって漸減する。
【0037】
プランジャ103が最もヨーク5に接近した状態で、プランジャ103のX軸方向負側の端部は、ヨーク5の凹部51内に位置する。そして、プランジャ103の外周面134は、凹部51の内周面512と対向する。かかる構成により、プランジャ103とヨーク5との間に干渉が生じ難くして、これらの接近および離間を円滑に行うことができる。
【0038】
プランジャ103とヨーク5との間には、プランジャ103をX軸方向正側に付勢するコイルバネ8が配置される。
【0039】
コイルバネ8は、そのX軸方向正側がプランジャ103の凹部132に、X軸方向負側がヨーク5の凹部51に収容される。
【0040】
ヨーク5の非励磁状態において、コイルバネ8は、プランジャ103をX軸方向正側に向かって移動させることができる。したがって、ヨーク5を励磁状態と非励磁状態とに切り換えることにより、プランジャ103をX軸方向に沿って負側と正側とに交互に移動(すなわち、往復動)させ得る。
【0041】
本実施形態では、凹部132は、開口321においてプランジャ103のX軸方向負側に開口し、この開口321側から底部322側に向かって(X軸方向に沿って)、その直径が漸減する。
【0042】
かかる構成において、コイルバネ8のX軸方向正側の端部は、突出部133に接触するとともに、プランジャ103の凹部132の底部322付近に固定される。一方、コイルバネ8のX軸方向負側の端部は、ヨーク5の凹部51の底面511に接触するが固定されることなく、軸Oと直交する方向に移動(変位)可能である。すなわち、コイルバネ8は、そのX軸方向正側の端が固定端であり、X軸方向負側の端が自由端である。これにより、コイルバネ8がプランジャ103に片持ち支持されるため、仮に、コイルバネ8が傾斜しても、本来の位置に円滑に戻り易くなる。
【0043】
カバー体30は、ボビン2、プランジャ103、コイル4、ヨーク5、外部取付用ブラケット7およびコイルバネ8等を収納する。カバー体30には、コネクタ部材92が接続される。
【0044】
カバー体30は、X軸方向に沿って延びる筒状の部材である。そして、カバー体30の2つの開口縁部は、軸O側に折れ曲がった折れ曲がり部30U、30Dを備える。折れ曲がり部30U、30Dは、ノズル20の固定部202の外周縁部およびヨーク5の固定部59の外周縁部を覆う。これにより、ボビン2、プランジャ103、コイル4、ヨーク5、外部取付用ブラケット7およびコイルバネ8等がカバー体30内に収容された状態で、各部が固定され、ソレノイド1が組み立てられる。
【0045】
カバー体30は、ヨーク5と同様に、例えば、鉄のような磁性材料等で構成される。
【0046】
コネクタ部材92には、コイル4への通電を行うコネクタ(図示せず)が接続される。コネクタ部材92は、ボビン2と同様に、例えば、樹脂材料で構成される。
【0047】
以上のようなソレノイド1のX軸方向正側には、弁機構10が装着される。
【0048】
(弁機構10)
弁機構10は、円筒状のノズル20と、このノズル20内にX軸方向に沿って移動可能に配置された円筒状のスプール弁130とを備える。
【0049】
ノズル20は、X軸方向に沿って貫通した貫通孔(第1貫通孔)200と、筒壁を貫通して径方向外側に開口する側孔(第1側孔)201とを有する。ノズル20の貫通孔200には、スプール弁130が挿入される。
【0050】
ノズル20は、例えば、ステンレス鋼のような非磁性材料(磁性を有さない金属材料)で構成される。
【0051】
また、ノズル20の外周部には、シール部材140が配置される。このシール部材140は、弾性を有するリング状の部材であり、例えば、ウレタンゴム等の弾性材料で構成される。
【0052】
ノズル20は、そのX軸方向負側の端部に、径方向外側に向かって突出する固定部202を有する。この固定部202の外周縁部には、ソレノイド1のカバー体30のX軸方向正側の開口縁部が折り曲げられた折れ曲がり部30Dが位置する。これにより、弁機構10がソレノイド1に連結される。
【0053】
また、固定部202とソレノイド1(外部取付用ブラケット7)との間には、ガスケット150が圧縮された状態で配置される。この存在により、弁機構10とソレノイド1との間が気密的に封止される。なお、ガスケット150は、例えば、ウレタンゴム等の弾性材料で構成される。
【0054】
ノズル20は、さらに、X軸方向正側の端部の内周面が径方向内側に突出して形成された段差部(第2段差部)602を有する。一方、ノズル20内に配置されたスプール弁130は、X軸方向正側の端部の外周面が径方向内側に凹んで形成された段差部(第1段差部)601を有す。
【0055】
かかる構成により、スプール弁130がX軸方向正側に移動すると、段差部601が段差部602に突き当たって、それ以上のX軸方向正側への移動が規制される。すなわち、段差部601と段差部602とにより、スプール弁130のノズル20からの離脱を阻止する離脱阻止構造160を構成する。
【0056】
スプール弁130は、X軸方向に沿って貫通した貫通孔(第2貫通孔)300を備える。
【0057】
また、スプール弁130は、小径部302と、小径部302よりX軸方向正側に位置する大径部301とを備える。したがって、大径部301と小径部302との間は、段差部303が存在する。
【0058】
大径部301は、筒壁を貫通して径方向外側に開口する側孔(第2側孔)3011を有する。
【0059】
かかる構成により、スプール弁130は、X軸方向に沿って移動することにより、スプール弁130がヨーク5から離間した際に、側孔3011が側孔201と連通した状態(連通状態)、およびスプール弁130がヨーク5に接触した際に、側孔201との連通が遮断された状態(非連通状態)をとることができる。
【0060】
換言すれば、スプール弁130は、側孔201の開口面積を変更することができる。これにより、スプール弁130は、側孔201および側孔3011を介して流入した後、貫通孔300および貫通孔200をX軸方向正側に向かって通過する流体Qの流量を調整することができる。
【0061】
大径部301は、その外径および内径が小径部302の外径および内径より大きく設定される。かかる大径部301を設けることにより、スプール弁130の大径化を図り、よって、ノズル20(弁機構10)を通過する流体Qの流量を増大させることができる。
【0062】
一方、小径部302は、プランジャ103の凹部132に圧入され、スプール弁130がプランジャ103に連結される。これにより、スプール弁130がプランジャ103とともにX軸方向に沿って移動することができる。かかる小径部302を設けることにより、ソレノイド1を大型化することなく、スプール弁130をソレノイド1(プランジャ103)に連結することができる。
【0063】
また、小径部302は、ノズル20と離間して配置されており、ノズル20との間に空間203が形成される。
【0064】
小径部302は、筒壁を貫通して径方向外側に開口する側孔(第3側孔)3021を備える。この側孔3021は、上記空間203と繋がる。
【0065】
このため、側孔201および側孔3011を介して流入する流体Qの一部は、貫通孔300をX軸方向負側に向かって通過し、側孔3021を介して空間203に流れ込む。これにより、
図1中太い矢印で示すように、段差部303のX軸方向正側の面および負側の面にかかる流体Qによる圧力を均等化(圧力差を相殺)することができる。よって、スプール弁130の流体Qによる負荷を軽減し、ソレノイド1の必要推力が増大することを抑制することができる。
【0066】
本開示の技術では、スプール弁130は、連通状態においてノズル20から突出するように構成される。かかる構成により、流体Qの流れにより、スプール弁130のノズル20から突出する部分の周囲の圧力が低下する。このため、ノズル20とスプール弁130との間にコンタミが入り込むのを防止することができる。仮に、ノズル20とスプール弁130との間にコンタミが入り込んでも、スプール弁130の突出部分の周囲の圧力が低下するため、円滑に排出される。その結果、スプール弁130の円滑な移動が可能となる。
【0067】
この状態(連通状態)で、スプール弁130は、その段差部601が段差部602に突き当たってノズル20からの離脱が阻止される。
【0068】
また、本実施形態では、スプール弁130は、非連通状態においてもノズル20から突出するように構成される。かかる構成により、ノズル20とスプール弁130との間にコンタミがより入り込み難くなる。
【0069】
また、ノズル20は、その内周面にX軸方向正側の端部から段差部602までX軸方向に延びる溝(呼吸溝)170を有する。かかる溝170を設けることにより、スプール弁130がソレノイド1側に移動する際に、流体Qが溝170へ供給されるため、ノズル20とスプール弁130との間の負圧が解消され、スプール弁130の移動抵抗の増加を抑制することができる。
【0070】
本実施形態では、4つの溝170がノズル20の周方向に沿ってほぼ等間隔で配置される。これにより、上記効果をより向上させることができる。
【0071】
なお、4つの溝170は、ノズル20の周方向に沿って等間隔で配置されていなくてもよい。また、溝170の設置数は、4つに限定されず、1つ、2つ、3つまたは5つ以上であってもよい。
【0072】
このような構成のスプール弁130において、大径部301の外径は、ノズル20の内径とほぼ等しく設定される。これにより、大径部301とノズル20との隙間を介して、流体Qが空間203に流れ込むのを防止または抑制して、段差部303のX軸方向正側の面および負側の面にかかる流体Qによる圧力をより確実に均等化することができる。
【0073】
また、側孔3021の直径は、側孔201の直径より小さく設定される。これにより、側孔201および側孔3011を介して流入した後、貫通孔300および貫通孔200をX軸方向正側に向かって通過する流体Qの円滑な流れを十分に確保することができる。
【0074】
なお、本実施形態では、側孔3011の直径は、側孔3021の直径および側孔201の直径より大きく設定される。これにより、上記効果がより良好に得られる。
【0075】
また、スプール弁130は、例えば、ステンレス鋼のような非磁性材料で構成される。この場合、スプール弁130が励磁(磁化)されないため、流体Qに鉄粉等のコンタミが混入していても、スプール弁130に吸着し難く、コンタミによりスプール弁130の円滑な動きが阻害されるのを防止することができる。
【0076】
(カバー体30)
カバー体30を説明する。カバー体30は、筒状に巻かれた板状部材31である。
【0077】
図2に示すように、板状部材31は、巻始め端部3839Aと、巻終わり端部3839Bと、を備える。なお、
図2には、筒状に巻かれる前の板状部材31が示される。カバー体30は、板状部材31が、
図3Aに示すように、巻始め端部3839Aと巻終わり端部3839Bとが接した状態で筒状に巻かれることにより、構成される。
図1におけるカバー体30のX軸方向の負側は、
図2における紙面上側であり、
図1におけるカバー体30のX軸方向の正側は、
図2における紙面下側である。よって、
図2における紙面上側をX軸方向の負側と言い、
図2における紙面下側をZ方向の負側と言う。
【0078】
板状部材31は、本開示の技術の「板状部材」の一例である。カバー体30は、本開示の技術の「カバー体」の一例である。
【0079】
図2及び
図3Aに示すように、板状部材31は、X軸方向の負側の端側に、拡径部32を備える。板状部材31は、X軸方向の正側の端側に、拡径部33を備える。板状部材31は、拡径部32と拡径部33との間に、本体部332を備える。
【0080】
拡径部32と拡径部33とは、本開示の技術の「拡径部」の一例である。
【0081】
図3Bに示すように、拡径部32の厚さは、本体部332の厚さよりも薄い。具体的は、上記のように板状部材31が筒状に巻かれた状態で、拡径部32の内周面までの軸Oを中心した半径R2は、本体部332の内周面までの軸Oを中心した半径R1より長い。拡径部32と本体部332との外周面の接続箇所には、段差がない。これに対し、拡径部32と本体部332との内周面の接続箇所には、段差がある。拡径部32は、X軸方向の負側の端側が潰されることにより、構成される。
【0082】
図2及び
図3Aに示すように、拡径部32は、スリット部34A、34Bを備える。本実施の形態では、拡径部32は、2個のスリット部34A、34Bを備える。例えば、スリット部34A、34Bの各々は、X軸方向の負側に進むに従って幅が大きくなる形状を有する。
図2に示すように、筒状に巻かれる前の板状部材31を、板状部材31の板面に垂直な方向で板状部材31に向かって見た場合、スリット部34A、34B各々は、扇又はV字の形状を有する。
【0083】
スリット部34Aは、板状部材31が筒状に巻かれる前では、分割されており、板状部材31が筒状に巻かれるスリット部34Aが形成される。
【0084】
拡径部32は、スリット部34Aとスリット部34Bとの間に、コネクタ部材92が挿通するための挿通部36を備える。挿通部36は、拡径部32のX軸方向の負側の端から正側に本体部332の一部まで矩形に切断された形状を有する。
【0085】
拡径部32の隣り合う2つのスリット部34Aとスリット部34Bとの間は、
図1に示すように、軸O側に折れ曲がった折れ曲がり部30Uを備える。
【0086】
拡径部33の構成は、拡径部32の構成と同様であるので、その詳細な説明を省略し、異なる部分を説明する。拡径部32は2個のスリット部34A、34Bを備えるのに対し、拡径部33は、スリット部34A、34Bと同様の構成の3個のスリット部35A、35B、35Cを備える点で相違する。また、拡径部33は、スリット部35Bとスリット部35Bとの間に、外部取付用ブラケット7が挿通するための挿通部37を備える。挿通部37は、拡径部33のX軸方向の正側の端から負側に本体部332の一部まで矩形に切断された形状を有する。
【0087】
なお、拡径部32の3個のスリット部35A、35B、35Cの隣り合う2つのスリット部間は、軸O側に折れ曲がった折れ曲がり部30D(
図1も参照)を備える。
【0088】
スリット部34A、34B及びスリット部35A、35B、35Cは、本開示の技術の「スリット部」の一例である。折れ曲がり部30U、30Dは、本開示の技術の「折れ曲がり部」の一例である。
【0089】
図3Aに示すように、巻始め端部3839Aと巻終わり端部3839Bとは、板状部材31を筒状に巻いた場合の周方向Cに対向し、周方向Cの位置決めのための基準となる周方向対向面(即ち、端面)を備える。具体的には、
図2に示すように、巻始め端部3839Aは、周方向Cの位置決めのための基準となる複数の端面38A1、38A2、38A3を備える。巻終わり端部3839Bは、周方向Cの位置決めのための基準となる端面38B1、38B2、38B3を備える。板状部材31が、巻始め端部3839Aと巻終わり端部3839Bとが接した状態で筒状に巻かれることにより、端面38A1及び端面38B1と、端面38A2及び端面38B2と、端面38A3及び端面38B3とがそれぞれ対向した状態で接する。このように端面((38A1、38B1)、(38A2、38B2)、(38A3、38B3))同士が対向した状態で接することにより、
図3Aに示すように、巻始め端部3839Aと巻終わり端部3839Bとの周方向Cの位置が決められる。
【0090】
端面38A1、38A2、38A3と端面38B1、38B2、38B3とは、本開示の技術の「周方向対向面」の一例である。
【0091】
巻始め端部3839Aと巻終わり端部3839Bとの何れか一方は、X軸方向及び周方向Cの複数の位置決めの基準となる少なくとも1個の被嵌合部を備える。本実施の形態では、巻始め端部3839Aは、複数の嵌合部39A1、39A2を備える。巻始め端部3839Aと巻終わり端部3839Bとの何れか他方は、X軸方向及び周方向Cの複数の位置決めの基準となる少なくとも1個の被嵌合部を備える。本実施の形態では、巻終わり端部3839Bは、複数の被嵌合部39B1、39B2を備える。
ここで、嵌合部とは、被嵌合部に嵌る部分をいい、被嵌合部とは、嵌合部により嵌められる部分をいう。被嵌合部に嵌合部が嵌った状態は、被嵌合部と嵌合部との境界が一致する場合ばかりではなく、被嵌合部と嵌合部との境界に若干の遊びがある場合(遊嵌合)も含む。
【0092】
嵌合部39A1と被嵌合部39B1とは、嵌合部39A1が被嵌合部39B1に嵌合する形状を備える。嵌合部39A1と被嵌合部39B1とは、板状部材31の厚み方向からは、嵌合部39A1は被嵌合部39B1に嵌合することができ、当該厚み方向に垂直で巻始め端部3839Aと巻終わり端部3839Bとが接近する方向(即ち、周方向C)からは、嵌合部39A1は被嵌合部39B1に嵌合することができない形状である。具体的には、被嵌合部39B1は、巻終わり端部3839Bから板状部材31の内側(即ち、周方向C)に進むに従ってX軸方向の幅が長くなるように切欠きられた切欠き部である。嵌合部39A1は、巻始め端部3839Aから周方向C(巻終わり端部3839Bに接近する方向)に突出すると共に巻始め端部3839Aが遠くなるのに従ってX軸方向の幅が長くなる突出部である。
【0093】
嵌合部39A2と被嵌合部39B2とは、嵌合部39A1と被嵌合部39B1と同様の構成であるので、その説明を省略する。
【0094】
板状部材31が、巻始め端部3839Aと巻終わり端部3839Bとが接し、具体的には、嵌合部39A1が被嵌合部39B1に嵌合し且つ嵌合部39A2が被嵌合部39B2に嵌合した状態で筒状に巻かれる。板状部材31がこのように巻かれると、巻始め端部3839Aと巻終わり端部3839Bとの周方向Cの位置が決められる。なお、この場合、巻始め端部3839Aと巻終わり端部3839BとのX軸方向の位置も決められる。
【0095】
嵌合部39A1、39A2は、本開示の技術の「嵌合部」及び「突出部」の一例である。被嵌合部39B1、39B2は、本開示の技術の「被嵌合部」及び「切欠き部」の一例である。
【0096】
(ソレノイド装置の製造方法)
次に、以上のように構成されるソレノイド装置の製造方法を説明する。
【0097】
第1のステップで、拡径部32、33、挿通部36、37、スリット部34A、34B、35A、35B、35Cを備える板状部材31を製造する。
【0098】
第2のステップで、板状部材31を、巻始め端部3839Aと巻終わり端部3839Bとが接するように、筒状に巻くことにより、カバー体30を形成する。
【0099】
第3のステップで、カバー体30の内部にソレノイド1を位置させる。
【0100】
第4のステップで、折れ曲がり部30Uと折れ曲がり部30Dとを構成し、カバー体30の内部にソレノイド1を固定する。
【0101】
なお、第2のステップと第3のステップとを組み合わせてもよい。具体的には、板状部材31を、巻始め端部3839Aと巻終わり端部3839Bとが接するように、ソレノイド1を内部に位置させた状態で、筒状に巻くことにより、カバー体30を形成する。
【0102】
(効果)
以上説明したように、板状部材31が、巻始め端部3839Aと巻終わり端部3839Bとが接した状態で筒状に巻かれることにより、端面38A1及び端面38B1と、端面38A2及び端面38B2と、端面38A3及び端面38B3とがそれぞれ対向した状態で接する。これにより、巻始め端部3839Aと巻終わり端部3839Bとの周方向Cの位置が決められる。
【0103】
板状部材31が、嵌合部39A1が被嵌合部39B1に嵌合し且つ嵌合部39A2が被嵌合部39B2に嵌合した状態で筒状に巻かれると、巻始め端部3839Aと巻終わり端部3839BとのX軸方向及び周方向Cの位置が決められる。
【0104】
以上のように、第1実施形態は、カバー体の巻始め端部3839Aと巻終わり端部3839Bとのずれを抑制することができる。
【0105】
拡径部32は2つのスリット部34A、34Bを備え、拡径部33は3つのスリット部35A~35Cを備える。よって、第1実施形態は、これらのスリット部を備えない場合に比較して、拡径部32、33の潰し量及び潰し荷重を少なくすることができる。
【0106】
潰し荷重が比較的大きいと、ソレノイド1の組立時、拡径部32、33以外の部分に荷重がかかって組立精度を悪化する場合もある。また、潰し荷重が比較的大きいと、それによるワークの位置ずれが発生しやすく寸法精度を保証するのが難しく、金型摩耗を加速する要因ともなる。しかし、本実施の形態では、上記のように潰し荷重を比較的少なくすることができ、ソレノイド1の組立精度及び寸法精度を向上させることができると共に、金型摩耗を抑制することができる。
【0107】
また、第1実施形態は、ソレノイド1の組立工程において、折れ曲がり部30U、30Dの軸O回りの長さを小さくすることができる。よって、折れ曲がり部を構成するためのカシメ荷重を軽減することができる。
【0108】
[第2実施形態]
(構成)
次に、本開示の技術の第2実施形態を説明する。第2実施形態の構成は、第1実施形態と同様の部分があるので、同一部分には同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分を説明する。
【0109】
図4は、第2実施形態のカバー体42の一例を示す斜視図である。
図4に示すように、カバー体40の拡径部32は、第1実施形態のスリット部34A、34Bと同様の構成の3個のスリット部44A、44B、44Cを備える。
【0110】
(効果)
拡径部32は、第1実施形態より1個多い、3個のスリット部44A、44B、44Cを備える。第2実施形態は、第1実施形態に比較して、拡径部32の潰し量及び潰し荷重を少なくすることができる。第2実施の形態では、第1実施形態より、ソレノイド1の組立精度及び寸法精度を向上させることができると共に金型摩耗を抑制することができる。第2の実施の形態は、第1実施形態より、折れ曲がり部を構成するためのカシメ荷重を軽減することができる。
【0111】
[第3実施形態]
(構成)
次に、本開示の技術の第3実施形態を説明する。第3実施形態の構成は、第1実施形態と同様の部分があるので、同一部分には同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分を説明する。
【0112】
図5は、第3実施形態のカバー体50の一例を示す斜視図である。
図5に示すように、カバー体50の拡径部32は、第1実施形態のスリット部34A、34Bと同様の構成の5個のスリット部54A、54B、54C、54D、54Eを備える。
【0113】
カバー体50の拡径部33は、第1実施形態のスリット部35A~35Cと同様の構成の5個のスリット部55A、55B、55C、55D、55Eを備える。
【0114】
(効果)
拡径部32は、第1実施形態より2個多い、5個のスリット部54A、54B、54C、54D、54Eを備える。拡径部33は、第1実施形態より2個多い、5個のスリット部55A、55B、55C、55D、55Eを備える。第3実施形態は、第1実施形態に比較して、拡径部32、32の潰し量及び潰し荷重を少なくすることができる。第3実施の形態では、第1実施形態より、ソレノイド1の組立精度及び寸法精度を向上させることができると共に金型摩耗を抑制することができる。第3の実施の形態は、第1実施形態より、折れ曲がり部を構成するためのカシメ荷重を軽減することができる。
【0115】
[変形例]
次に、本開示の技術の変形例を説明する。第1変形例及び第2変形例の構成は、第1実施形態と同様の部分があるので、同一部分には同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分を説明する。以下の各変形例は、位置決め基準部が第1実施形態と異なる。
【0116】
(第1変形例)
図6は、第1変形例の板状部材60の一例を示す正面図である。
図6に示すように、板状部材60の巻始め端部3839Aは、第1実施形態の嵌合部39A1、39A2に代えて、嵌合部69A1、69A2を備える。巻終わり端部3839Bは、被嵌合部39B1、39B2に代えて、被嵌合部69B1、69B2を備える。
【0117】
第1実施形態の嵌合部39A1と被嵌合部39B1とは、板状部材31の厚み方向からは、嵌合部39A1は被嵌合部39B1に嵌合することができ、当該厚み方向に垂直で巻始め端部3839Aと巻終わり端部3838Bとが接近する方向からは、嵌合部39A1は被嵌合部39B1に嵌合することができない形状である。
【0118】
これに対し、第1変形例では、嵌合部69A1と被嵌合部69B1とは、板状部材60の上記厚み方向及び上記接近する方向から、嵌合部69A1は被嵌合部69B1に嵌合することができる形状である。
【0119】
嵌合部69A1は、巻始め端部3839Aから周方向Cに、突出する形状の突出部を備える。突出部のX軸方向の幅は、巻始め端部3839Aが遠くなるに従って変化しない(即ち、同一である)。被嵌合部69B1は、巻終わり端部3839Bにおいて切欠けられた形状の切欠き部を備える。切欠き部のX軸方向の幅は、板状部材60の内側(即ち、周方向C)に進むに従って変化しない(即ち、同一である)。
嵌合部69A2と被嵌合部69B1とは、嵌合部69A1と被嵌合部69B1と同様の形状を備えるので、その詳細な説明を総略する。
【0120】
ところで、被嵌合部69B1と嵌合部69A1とは、軸方向に対向し軸方向の位置決めを行う軸O方向(X軸方向)対向面を備える。
具体的には、嵌合部69A1は、軸方向対向面69a11、周方向対向面69a12、及び軸方向対向面69a11を備える。
被嵌合部69B1は、軸方向対向面69a11に対向する軸方向対向面69b11、周方向対向面69a12に対向する周方向対向面69b12、軸方向対向面69a11に対向する軸方向対向面69b11を備える。
上記のように、端面38A1、38A2、38A3及び端面38B1、38B2、38B3は、周方向対向面でもある。
以上より、巻始め端部3839Aは、周方向対向面を5個備えると共に、軸方向対向面を4個備える。なお、巻終わり端部3839Bも、周方向対向面を5個備えると共に、軸方向対向面を4個備える。
第1変形例では、巻始め端部3839A及び巻終わり端部3839Bが、2個の嵌合部(69A1、69A2)及び2個の被嵌合部(69B1、被嵌合部69B2)、周方向対向面を5個、軸方向対向面を4個備える。本開示の技術はこれに限定されない。例えば、巻始め端部3839A及び巻終わり端部3839Bは、1個の嵌合部及び1個の被嵌合部、周方向対向面を3個、軸方向対向面を2個備えるようにしてもよい。巻始め端部3839Aが周方向対向面を3個、軸方向対向面を2個備える場合としては、例えば、端面38A2が、嵌合部69A1の周方向対向面と嵌合部69A2の周方向対向面と同じ面となるまで吐出する。端面38B2が、被嵌合部69B1の周方向対向面と被嵌合部69B2の周方向対向面と同じ面となるまで切欠く。
【0121】
(第2変形例)
図7は、第2変形例の板状部材70の一例を示す正面図である。
図7に示すように、板状部材70の巻始め端部3839Aは、第1実施形態の嵌合部39A1と、第1変形例の被嵌合部69B2とを備える。板状部材31の巻終わり端部3839Bは、第1実施形態の被嵌合部39B1と、第1変形例の嵌合部69A2とを備える。
【0122】
(第3変形例)
第3変形例の構成は、第3実施形態(
図5参照)と同様の部分があるので、同一部分には同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分を説明する。
図8は、第3変形例のカバー体50Bの板状部材31Aの一例を示す正面図である。
図9は、板材から、板状部材31A、繋ぎ部82、84、及び枠体80以外の部分81を打ち抜いた様子の一例を示す正面図である。
図10は、板状部材31Aを丸めて形成されたカバー体50Bの一例を示す正面図である。
図11は、カバー体50Bの一例を示す斜視図である。
図11に示すカバー体50Bの拡径部32に備えられるスリット部54A、54B、54C、54D、54Eと、拡径部33に備えられるスリット部55A、55B、55C、55D、55Eとは、本開示の技術の「切欠き部」の一例である。
図11に示すカバー体50Bのスリット部54A、54B、54C、54D、54Eに挟まれた部分と、拡径部33に備えられるスリット部55A、55B、55C、55D、55Eに挟まれた部分とは、軸O側に折れ曲げられることにより、折れ曲がり部30U、30D(
図2も参照)が形成される。折れ曲がり部30U、30Dは、本開示の技術の「軸方向規制部」の一例である。
スリット部54A、54B、54C、54D、54Eに挟まれた部分は、次の第1の部分から第5の部分である。第1の部分は、拡径部32におけるスリット部54Aとスリット部54Bとの間の部分である。第2の部分は、拡径部32におけるスリット部54Bとスリット部54Cとの間の部分である。第3の部分は、拡径部32におけるスリット部54Cとスリット部54Dとの間の挿通部36以外の2つの部分である。第4の部分は、拡径部32におけるスリット部54Dとスリット部54Eとの間の部分である。第5の部分は、拡径部32におけるスリット部54Eとスリット部54Aとの間の部分である。
スリット部55A、55B、55C、55D、55Eに挟まれた部分は、次の第6の部分から第10の部分である。第6の部分は、拡径部33におけるスリット部55Aとスリット部55Bとの間の部分である。第7の部分は、拡径部33におけるスリット部55Bとスリット部55Cとの間の挿通部37以外の2つの部分である。第8の部分は、拡径部33におけるスリット部55Cとスリット部55Dとの間の部分である。第9の部分は、拡径部33におけるスリット部55Dとスリット部55Eとの間の部分である。第10の部分は、拡径部33におけるスリット部55Eとスリット部55Aとの間の部分である。
【0123】
(カバー体50B)
カバー体50Bを説明する。カバー体50Bは、筒状に巻かれる板状部材31Aである。
【0124】
図8に示すように、板状部材31Aは、巻始め端部3839Cと、巻終わり端部3839Dと、を備える。なお、
図8には、筒状に巻かれる前の板状部材31Aが示される。カバー体50Bは、板状部材31Aが、
図10及び
図11に示すように、巻始め端部3839Cと巻終わり端部3839Dとが接するように筒状に巻かれることにより、形成される。
図1におけるカバー体30のX軸方向の負側は、
図8~
図10における紙面上側であり、
図1におけるカバー体30のX軸方向の正側は、
図8~
図10における紙面下側である。よって、
図8~
図10における紙面上側をX軸方向の負側と言い、
図8~
図10における紙面下側をX方向の負側と言う。
【0125】
図8に示すように、板状部材31Aの巻始め端部3839Cは、複数(例えば、2個)の嵌合部39C01、39C02を備える。巻終わり端部3839Dは、複数の(例えば、2個)の被嵌合部39D01、39D02を備える。なお、これらの嵌合部及び被嵌合部の個数は2個に限定されない。3個、4個等でもよい。
【0126】
嵌合部39C01と被嵌合部39D01とは、板状部材31Aの上記厚み方向及び上記接近する方向から、嵌合部39C01は被嵌合部39D01に嵌合することができる形状である。嵌合部39C01は、巻始め端部3839Cから周方向Cに、突出する形状の突出部を備える。突出部のX軸方向の幅は、巻始め端部3839Cから遠くなるに従って変化しない(即ち、同一である)。被嵌合部39D01は、巻終わり端部3839Dにおいて切欠けられた形状の切欠き部を備える。切欠き部のX軸方向の幅は、板状部材31Aの内側(即ち、周方向C)に進むに従って変化しない(即ち、同一である)。
【0127】
嵌合部39C02と被嵌合部39D02は、嵌合部39C01と被嵌合部39D01と同様の構成であるので、その説明を省略する。
上記のように、嵌合部とは、被嵌合部に嵌る部分をいい、被嵌合部とは、嵌合部により嵌められる部分をいう。被嵌合部に嵌合部が嵌った状態は、被嵌合部と嵌合部との境界が一致する場合ばかりではなく、被嵌合部と嵌合部との境界に若干の遊びがある場合(遊嵌合)も含む。
【0128】
図8及び
図11に示すように、巻始め端部3839Cと巻終わり端部3839Dとは、板状部材31Aを筒状に巻いた場合の周方向Cに対向し、周方向Cの位置決めのための基準となる周方向対向面(即ち、端面)を備える。
【0129】
具体的には、
図8に示すように、巻始め端部3839Cは、嵌合部39C01、39C02以外の端面と、嵌合部39C01、39C02の周方向Cの端面とに、周方向Cの位置決めのための基準となる周方向対向面38C1~38C3と、周方向対向面39C1、39C2と、を備える。
【0130】
巻終わり端部3839Dは、被嵌合部39D01、39D02以外の端面と、被嵌合部39D01、39D02の周方向Cの端面とに、周方向Cの位置決めのための基準となる周方向対向面38D1~38D3と、周方向対向面39D1、39D2と、を備える。
【0131】
板状部材31Aが、巻始め端部3839Cと巻終わり端部3839Dとが接するように筒状に巻かれることにより、周方向対向面38C1及び周方向対向面38D1~周方向対向面38C3及び周方向対向面38D3、周方向対向面39C1及び周方向対向面39D1、及び、周方向対向面39C2及び周方向対向面39D2がそれぞれ対向した状態で接する。このように周方向対向面((38C1、38D1)~(38C3、38D3)、(39C1、39D1)、及び、(39C2、39D2))同士が対向した状態で接することにより、
図11に示すように、巻始め端部3839Cと巻終わり端部3839Dとの周方向Cの位置が決められる。
【0132】
また、巻始め端部3839Cと巻終わり端部3839Dとは、板状部材31Aを筒状に巻いた場合の軸方向の位置決めを行うための基準となる軸方向対向面(即ち、端面)を備える。
【0133】
具体的には、
図8に示すように、巻始め端部3839Cは、嵌合部39C01と嵌合部39C02との周方向Cの端面以外の端面に、軸方向の位置決めのための基準となる軸方向対向面39C11、39C12と軸方向対向面39C21、39C22とを備える。
【0134】
巻終わり端部3839Dは、被嵌合部39D01と被嵌合部39D02との周方向Cの端面以外の端面に、軸方向の位置決めのための基準となる軸方向対向面39D11、39D12と軸方向対向面39D21、39D22と、を備える。
【0135】
板状部材31Aが、巻始め端部3839Cと巻終わり端部3839Dとが接するように筒状に巻かれることにより、軸方向対向面39C11及び軸方向対向面39D11~軸方向対向面39C22及び軸方向対向面39D22がそれぞれ対向した状態で接する。このように軸方向対向面((39C11、39D11)~(39C22、39D22))同士が対向した状態で接することにより、
図11に示すように、巻始め端部3839Cと巻終わり端部3839Dとの軸方向の位置が決められる。
【0136】
このように、板状部材31Aは、巻始め端部3839Cと巻終わり端部3839Dとにおいて、周方向対向面((38C1、38D1)~(39C2、39D2))と、軸方向対向面((39C11、39D11)~(39C22、39D22))とを有した合わせ面部3839(
図10及び
図11参照)を備える。
【0137】
ところで、板状部材31Aは、図示しない板材から、
図9に示すように、板状部材31A、繋ぎ部82、84、及び枠体80以外の部分81をプレス切り離しすることにより、製造される。板材からプレス切り離しされた段階では、板状部材31Aは、繋ぎ部82、84を介して、枠体80に接続される。
【0138】
繋ぎ部82、84が接続する板状部材31Aの部分(即ち、マッチング位置)は、板状部材31Aの軸方向の端部の軸側に折り曲げられない非軸方向規制部である。具体的には、繋ぎ部82が接続する板状部材31Aの部分は、挿通部36である。繋ぎ部84が接続する板状部材31Aの部分は、挿通部37である。
【0139】
上記のように部分81が板材から打ち抜かれた段階で、X軸方向の正側及び負側の端側が潰されることにより、拡径部32、33が構成される。そして、外径トリミングがなされる。
【0140】
次に、
図10に示すように、繋ぎ部82、84を介して枠体80に接続される状態で、巻始め端部3839Cと巻終わり端部3839Dとが接するように板状部材31が丸められ、矯正される。
【0141】
そして、板状部材31Aから繋ぎ部82、84を切断することにより、
図11に示すように、カバー体50Bが製造される。
【0142】
図8及び
図11に示すように、板状部材31Aにおける繋ぎ部82、84が接続されていた部分には、プレス枠切り離し切断面部72、74が形成される。プレス枠切り離し切断面部72、74は、板状部材31Aの軸方向の端部の軸側に折り曲げられない非軸方向規制部に設けられる。板状部材31Aの軸方向の端部の軸側に折り曲げられる軸方向規制部には、合わせ面部3839が位置する。よって、板状部材31Aの、繋ぎ部82、84が切断されるプレス枠切り離し切断面部72、74の位置は、合わせ面部3839から離れる。よって、巻始め端部3839Cと巻終わり端部3839Dとが接する位置から離れた個所で、板状部材31Aと繋ぎ部82、84とが切断される。板状部材31Aと繋ぎ部82、84とが切断される際、板状部材31Aと繋ぎ部82、84との切断位置(接続位置)には力がかかる。しかし、板状部材31Aと繋ぎ部82、84との切断位置は、巻始め端部3839Cと巻終わり端部3839Dとが接する位置から離れている。よって、第3変形例は、上記切断のために加わった力により巻始め端部3839Cと巻終わり端部3839Dとが位置ずれが生ずることを抑制することができる。よって、カバー体50Bの軸方向及び周方向の寸法を安定させることができる。
第3変形例では、プレス枠切り離し切断面部72、74の位置は、合わせ面部3839の反対側の位置、即ち、180度ずれている位置である。なお、プレス枠切り離し切断面部72、74の位置は、非軸方向規制部に位置すれば、合わせ面部3839から180度ずれている位置でなくともよい。
プレス枠切り離し切断面部72、74の位置が非軸方向規制部に位置する点は、第3変形例に限定されず、第1実施形態~第2変形例についても同様である。
【0143】
(その他の変形例)
以上説明した各例では、ソレノイド装置を図示の実施形態について説明したが、本開示の技術は、これに限定されるものではなく、ソレノイド装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0144】
例えば、プランジャ103の凹部131と凹部132とは繋がっていなくてもよい。
【0145】
また、ソレノイド装置100は、流体Qが弁機構10のX軸方向正側の大開口から流入し、貫通孔200および貫通孔300を通過した後、側孔3011および側孔201を介して弁機構10の径方向外側に流出するように使用することもできる。
【0146】
また、離脱阻止構造160は、ノズル20の貫通孔200内に径方向内側に向かって突出して設けられ、スプール弁130の大径部301とプランジャ103との間に位置し、プランジャ103が軸方向一方側に移動したとき接触するフランジ部で構成してもよい。
【0147】
また、コイルバネ(付勢部材)8は、プランジャ103に固定されず、ヨーク5に固定されていてもよい。
【0148】
また、付勢部材は、コイルバネに限らず、板バネ、トーションバネ等であってもよい。
【符号の説明】
【0149】
100 ソレノイド装置
12 ボビン
14 コイル
16 プランジャ
18 固定コア
30 カバー体
31 板状部材
3839A 巻始め端部
3839B 巻終わり端部
32、33 拡径部
34A、34B、35A、35B、35C スリット部
30U、30D 折れ曲がり部
3839 合わせ面部
38C1~38C3、38D1~38D3、39C1、39C2、39D1、39D2 周方向対向面
39C11、39C12、39C21、39C22、39D11、39D12、39D21、39D22 軸方向対向面
82、84 繋ぎ部
72、74 プレス枠切り離し切断面部