(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143979
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】衛生紙ロール
(51)【国際特許分類】
A47K 10/16 20060101AFI20241003BHJP
D21H 27/40 20060101ALI20241003BHJP
D21H 27/30 20060101ALI20241003BHJP
D21H 27/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A47K10/16 A
D21H27/40
D21H27/30 B
D21H27/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121454
(22)【出願日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2023052807
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 美沙
(72)【発明者】
【氏名】大岡 康伸
【テーマコード(参考)】
2D135
4L055
【Fターム(参考)】
2D135AA02
2D135AA07
2D135AA12
2D135AA17
2D135AA18
2D135AB06
2D135AC08
2D135AD01
2D135AD02
2D135AD03
2D135AD04
2D135AD15
2D135AD16
2D135AD27
2D135DA02
2D135DA06
2D135DA08
2D135DA13
2D135DA14
2D135DA15
2D135DA16
4L055AA02
4L055AA03
4L055AC06
4L055AJ01
4L055AJ07
4L055CH20
4L055EA07
4L055EA08
4L055EA10
4L055EA15
4L055FA11
4L055FA16
4L055FA30
4L055GA29
(57)【要約】
【課題】巻長を長くしつつもコンパクトかつ嵩高で、吸水性及びふき取り性にも優れた衛生紙ロールを提供する。
【解決手段】エンボスを有する2プライ以上の衛生紙ロールであって、製品プライの坪量が30.0~54.0g/m
2、紙厚が0.2~0.5mm/製品プライ、巻長が20~40m、巻密度が0.3~1.0m/cm
2、巻径が100~135mm、エンボスの個数ENが300~1100個/100cm
2、エンボス1個当たりの平均面積ESが3.0~10.0mm
2/個、かつ(EN/ES)が35~300、エンボスの深さが0.06~1.05mm、面積当たり吸水量が105~220Water-g/m
2である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンボスを有する2プライ以上の衛生紙ロールであって、製品プライの坪量が30.0~54.0g/m2、紙厚が0.2~0.5mm/製品プライ、巻長が20~40m、巻密度が0.3~1.0m/cm2、巻径が100~135mm、
前記エンボスの個数ENが300~1100個/100cm2、前記エンボス1個当たりの平均面積ESが3.0~10.0mm2/個、
かつ(EN/ES)が35~300、前記エンボスの深さが0.06~1.05mm、
面積当たり吸水量が105~220Water-g/m2である衛生紙ロール。
【請求項2】
前記衛生紙ロールは2プライ以上で、ダブルエンボスが付されてなる請求項1記載の衛生紙ロール。
【請求項3】
DMDTが1370~2750cN/25mm、DCDTが585~1180cN/25mmである請求項1又は2記載の衛生紙ロール。
【請求項4】
ロール密度が0.10~0.30g/cm3である請求項1又は2記載の衛生紙ロール。
【請求項5】
エンボスの面積率が15~60%である請求項1又は2記載の衛生紙ロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ペーパータオルやキッチンタオル等に好適に用いることができる衛生紙ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
キッチンタオル等の衛生紙ロールの風合い、拭き取りやすさ、吸水性等を確保するため、エンボス加工が施されている(特許文献1、2)。
又、近年では、持ち運びや収納性の観点から、巻長を長くしつつも巻径が大きくならないコンパクトなロ-ルが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-73999号公報
【特許文献2】特開2017-131545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般に、長巻のロールを巻径が小さいコンパクトな製品にするには、エンボス深さを小さくせざるを得ないという問題がある。エンボス深さが小さい場合、吸水性(Water-g/m2、Water-g/g)が劣り、また凹凸が小さくなることでふき取り性も悪くなり、キッチンタオルとしての機能が低下する。一方、エンボスを深く入れると巻径が大きくなるので、ロールホルダーに収まらず、ロールのコンパクト化を実現することが困難になったり、長尺で硬く巻いた際にエンボスが潰れて美粧性や機能が劣る。
従って本発明は、巻長を長くしつつもコンパクトかつ嵩高で、吸水性及びふき取り性にも優れた衛生紙ロールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、個々のエンボスの面積(大きさ)EN及び総個数(総面積)ES、(EN/ES)の比、エンボス深さ、紙厚、坪量、並びに巻密度を規定することで、巻長を長くしつつもコンパクトで、吸水性とふき取り性も確保できることを見出した。
つまり、巻長を長くしてもコンパクトになるようにエンボス深さを小さくし、それによるふき取り性の低下を、個々のエンボスの面積ENと総個数ES、及びふき取り対象物へのエンボスの食い込み易さを示す(EN/ES)を規定(エンボス面積と総個数との割合を適度にしてエンボスによる凹凸の分散状態を規定)することで抑制することに成功した。
又、紙厚や坪量を所定範囲に規定することでも、吸水性、ふき取り性とコンパクト化を両立した。
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の衛生紙ロールは、エンボスを有する2プライ以上の衛生紙ロールであって、製品プライの坪量が30.0~54.0g/m2、紙厚が0.2~0.5mm/製品プライ、巻長が20~40m、巻密度が0.3~1.0m/cm2、巻径が100~135mm、前記エンボスの個数ENが300~1100個/100cm2、前記エンボス1個当たりの平均面積ESが3.0~10.0mm2/個、かつ(EN/ES)が35~300、前記エンボスの深さが0.06~1.05mm、面積当たり吸水量が105~220Water-g/m2である。
【0007】
この衛生紙ロールによれば、所定のエンボスを設け、坪量、紙厚、巻長、巻密度、巻径、吸水量、EN、ES、及び(EN/ES)を規定したので、巻長を長くしつつもコンパクトかつ嵩高で、吸水性、ふき取り性にも優れた衛生紙ロールが得られる。
【0008】
本発明の衛生紙ロールにおいて、前記衛生紙ロールは2プライ以上であり、ダブルエンボスが付されてなることが好ましい。
本発明の衛生紙ロールにおいて、DMDTが1370~2750cN/25mm、DCDTが585~1180cN/25mmであることが好ましい。
本発明の衛生紙ロールにおいて、ロール密度が0.10~0.30g/cm3であることが好ましい。
本発明の衛生紙ロールにおいて、エンボスの面積率が15~60%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、巻長を長くしつつもコンパクトかつ嵩高で、吸水性及びふき取り性にも優れた衛生紙ロールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る衛生紙ロールの外観を示す斜視図である。
【
図3】エンボスの面積の具体的な測定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の好ましい実施形態につき説明するが、これらは例示の目的で掲げたものでこれらにより本発明を限定するものではない。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る衛生紙ロール10は、エンボスを有する2プライ以上に重ねられたシート10xをロール状に巻き取った衛生紙ロールであって、製品プライの坪量が30.0~54.0g/m
2、紙厚が0.2~0.5mm/製品プライ、巻長が20~40m、巻密度が0.3~1.0m/cm
2、巻径が100~135mm、かつ後述する所定のエンボス及び吸水量を有する。
シート10xのロール外側の表面をロール表面(又はシートの表面)10aとし、ロール内側の表面をロール裏面(又はシートの裏面)10bとする。
衛生紙ロールの巻密度を上記範囲に調整する方法としては、坪量及び紙厚を所定範囲に調整しつつ、ロールワインダー(特にサーフェイス式)でロールを巻く強さを調整する方法がある。
【0012】
衛生紙ロール10の巻長が20m未満であると、1ロール当りの巻長が短くなり、ロールの交換頻度が多くなったり、保管時の省スペースが図れない。ロールの巻長が40mを超えるものは、巻径(巻直径DR)が135mmを超えてしまい、ロールホルダー等に収まり難くなる。
巻長は、好ましくは23~37m、より好ましくは25~35mである。
【0013】
巻密度は、(巻長×プライ数)÷(ロールの断面積)で表される。ロールの断面積は、{ロールの外径(巻直径DR)部分の断面積}-(コア外径部分の断面積)で表される。コア外径DI(
図1参照)は、ロールの中心孔の直径である。ロールの内側にコア(巻芯紙管)が装着されていない場合は、この中心孔の直径がコア外径DIに相当し、ロールの内側にコア(巻芯紙管)が装着されている場合は、コア外径がDIに相当する。
巻密度が0.3m/cm
2未満であると、巻直径DRが135mmを超えてしまい、ロールホルダー等に収まり難くなる。巻密度が1.0m/cm
2を超えると、紙厚が低くなって吸水性が劣ったり、坪量が低くなって破れやすくなる。
巻密度は、好ましくは0.4~0.9m/cm
2、より好ましくは0.5~0.8m/cm
2である。
【0014】
巻直径DRが100~135mmであると、巻長を20m以上に長くしつつロールホルダー等に収まり易くなる。巻直径DRが100mm未満であると1ロール当りの巻長が短くなり、ロールの交換頻度が多くなったり、保管時の省スペースが図れない場合がある。巻直径DRが135mmを超えるものは、ロールホルダー等に収まり難くなる場合がある。
巻直径DRはより好ましくは105~125mmで、さらに好ましくは110~120mmである。
【0015】
シート10xの製品プライ当りの坪量が30.0g/m2未満であるか、又は紙厚が0.2mm/製品プライ未満であると、強度や紙厚が低下すると共に吸水性が劣る。シート10xの製品プライ当りの坪量が54.0g/m2を超えるか、又は紙厚が0.5mm/製品プライを超えると、シートが厚くなり、これを20m以上巻いたロールの巻直径DRが135mmを超え、ロールホルダーに収まり難くなる。
シート10xのシート製品プライ当りの坪量がより好ましくは35.0~50.0g/m2であり、さらに好ましくは38.0~45.0g/m2である。シート10xの紙厚がより好ましくは0.25~0.45mm/製品プライであり、さらに好ましくは0.3~0.35mm/製品プライである。
1枚当りのシート10xの坪量及び紙厚を上記範囲に調整する方法としては、エンボス条件を規定する。
【0016】
なお、本発明では製品プライ当りの坪量や紙厚を規定し、1プライの坪量や紙厚は変わるが、製品として2プライ以上重ねたシートの坪量や紙厚は上記範囲で変わらない。
このようにすると、プライ数を変更しても最終製品が同等の紙質を維持できる。
【0017】
<エンボス>
本発明の衛生紙ロール10(シート10x)に以下のエンボスが施されている。エンボスは、シングルエンボスでもダブルエンボスでもよいが、ダブルエンボスが好ましい。また、表側のみエンボスが施されていても良い。ダブルエンボス加工は、2プライ以上の衛生紙ロールのシートにそれぞれエンボス加工し、各シートのエンボスの凸面同士を対向させるようにシートを積層したものである。
ダブルエンボスにすることで、紙厚や比容積を高くし易く、吸水性をより高くしやすい。また、ダブルエンボスにする際は、エッジエンボスや糊によって2プライ以上プライアップすることができるが、糊を使用するとエンボスの形状を保ちやすくできるため好ましい。また、ダブルエンボスとしては、ネステッドエンボスが好ましい。
【0018】
<エンボス1個当たりの平均面積(大きさ)ES>
エンボス1個当たりの平均面積が3.0~10.0mm2/個である。平均面積が3.0mm2/個未満であっても10.0mm2/個を超えても、ふき取り性が低下する。これは、ESが3.0mm2/個未満であると、対象物との接触面積が減り、10.0mm2/個を超えると、エンボスが大きすぎて、シートの平坦である面積が増えるからである。
【0019】
シングルエンボスの場合も、エンボス1個当たりの平均面積を上記範囲に規定することで、ダブルエンボスの場合と同様、紙厚が高くなってふき取り性が向上する。
【0020】
エンボス1個当たりの平均面積ESが7.1~10.0mm2であることが好ましく、8.0~10.0mm2であることがより好ましい。
【0021】
<エンボスの個数EN>
上記エンボスが300~1100個/100cm2形成されている。上記エンボスの個数ENが300個/100cm2未満であっても1100個/100cm2を超えても、ふき取り性が低下する。これは、ENが300個/100cm2未満であると、凹凸の数が少なくなりふき取り難く、1100個/100cm2を超えると、凹凸は増えるが、凹凸の間隔が狭くなり、対象物が隙間に入り込みにくくなるためである。
上記エンボスの個数ENが300~700個/100cm2であることが好ましく、300~600個/100cm2であることがより好ましい。
【0022】
(EN/ES)が35~300である。
(EN/ES)は、ゴミ等のふき取り対象物へのエンボスの食い込み易さを示す。つまり、エンボス面積と総個数との割合を適度にしてエンボスによる凹凸の分散状態を規定し、例えば、エンボスがボツボツしているほど凹凸が引っかかってふき取りやすい。
(EN/ES)が35未満であると、エンボスが小さいか、又はエンボス個数が多くてエンボスが密になってエンボスによる凹凸の凹部の割合が減り、拭き取り性が悪くなる。
(EN/ES)が300を超えると、エンボスが大きいか、又はエンボス個数が少なくて平滑な面積が大きくなるため、拭き取り性が悪くなる。
(EN/ES)が40~150であると好ましく、50~100であるとさらに好ましい。
【0023】
なお、(EN/ES)は、EN(個/100cm2)を、ES(mm2/個)で除した値である。
【0024】
<エンボスの深さ>
上記エンボスの深さが0.06~1.05mmである。
エンボスの深さが0.06mm未満であると、ふき取り性が低下する。これは、エンボスの凹凸の差が小さくなり、ふきとり性が低下するためである。一方、エンボスの深さが1.05mmを超えると巻直径DRが135mmを超えてしまい、ロールホルダー等に収まり難くなる。
上記エンボスの深さが0.10~0.55mmであることが好ましく、0.14~0.35mmであることがより好ましい。
【0025】
<エンボスの面積及び個数の測定>
エンボス1個当たりの平均面積は、マイクロスコープを用いてエンボスの高低差を測定して求める。
マイクロスコープとしては、KEYENCE社製の製品名「ワンショット3D測定マクロスコープ VR-3100」を使用することができる。マイクロスコープの画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアとしては、製品名「VR-H1A」を使用することができる。又、測定条件は、倍率12倍、視野面積24mm×18mmの条件で測定する。測定倍率と視野面積は、求めるエンボスの大きさによって、適宜変更しても良い。なお、3次元測定機や輪郭形状測定機は、点や線で測定されるが、上記マイクロスコープの場合、面全体を測定するため、全体の形状やうねりがわかりやすい。
【0026】
なおエンボスの面積は、
図2に示すように、エンボスの周縁frの一辺の長さaと、長さaに垂直な方向での一辺の長さbを測定し、a×bを面積Sとして求める。星や丸等、一辺の長さaとbの掛け算で求められないようなパターン(形状)は、それぞれに適した計算式で面積を算出する。面積を求めることが困難なパターンは、矩形で近似して、計算する。
例えば、扇形や台形の場合、a×bではなく、面積を求める公式が知られているので、この公式を計算式として用いる。一方、星型や花型のように面積を求める公式が無い場合、星等の輪郭を囲む矩形の面積を算出する。
なお、エンボスのパターンは、例えば円形、楕円形、長方形、正方形、花柄等、特に制限されない。
【0027】
図3にエンボスの面積(長さb)の具体的な測定方法を示す。
図3(a)は、マイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルを示し、シート表面の高さが濃淡で表されることがわかる。
図3(a)の濃色部位が個々のエンボス2を示し、このうち1つのエンボス2の一辺の長さbを横切る線分A-Bを引くと、
図3(b)に示すようにエンボス2の高さ(測定断面曲線)プロファイルが得られる。ここで、X-Y平面画像の色の濃淡で、エンボスの凸部と凹部がわかるので、凸部と凹部が隣接している部分を横切るように線分A-Bを決めればよい。なお、エンボス2の一辺の長さaの測定の場合、線分A-Bは縦方向となる。
【0028】
エンボスの個数の測定は、シートの全幅で、長さ方向に隣接する2つのミシン目の間の全領域から、任意の100cm2の部位を選んで目視で測定する。なお、ナーリング(エッジエンボス)処理が行われているなど、100cm2の部位を選択できない場合は、ナーリング(エッジエンボス)処理等で測定できない部分を除いて測定可能な部位についてエンボス個数を測定し、100cm2当たりのエンボス個数として換算する。
【0029】
<エンボスの深さの測定>
又、エンボス深さは、上記マイクロスコープを用いて上述のエンボスの高低差を測定して求める。
【0030】
ここで、
図3(b)の高さプロファイルは、実際のシートの試料表面の凹凸を表す(測定)断面曲線Sであるが、ノイズ(シートの表面に繊維塊があったり、繊維がヒゲ状に伸びていたり、繊維のない部分に起因した急峻なピーク)をも含んでおり、凹凸の高低差の算出に当たっては、このようなノイズピークを除去する必要がある。
そこで、
図4に示すように、高さプロファイルの断面曲線Sから「輪郭曲線」Wを出力し、この輪郭曲線Wのうち、上に凸となる2つの極大点P1、P2を定め,P1とP2の平均値を深さの最大値Maxとする。同様に下に凸となる極小点を深さの最小値Minと定める。
【0031】
このようにして、エンボス深さ=最大値Max-最小値Minとする。又、凹部と、凹部に隣接する凹部の間における極大点P1,P2のX-Y平面上の距離(長さ)を一辺aの長さと規定する。なお、「輪郭曲線」は、断面曲線からλc:800μm(但し、λcはJIS-B0601「3.1.1.2」に記載の「粗さ成分とうねり成分との境界を定義するフィルタ」)より短波長の表面粗さの成分を低域フィルタによって除去して得られる曲線である。なお、λcを、隣接するエンボス同士のP1の間隔(これを、エンボスピッチという)以上に設定すると、ピークをノイズと認識してしまう可能性があるので、λcをエンボスピッチ未満とする。例えば、エンボスピッチが800μm以下の場合、例えばλc:250μmに設定する。隣接するエンボス同士のP1の間隔は、
図4の左又は右に繋がる次のエンボスについて同様にP1,P2を求め、隣接するエンボス同士でP1、P2、P1と並ぶときの2つのP1の間隔である。
【0032】
同様にして、
図3(a)において一辺aについてもエンボス深さ及び一辺aの長さを測定し、一辺aとbの各エンボス深さのうち、大きい方の値をエンボス深さとして採用する。以上の測定を、シート10xの表面10aの任意の10個のエンボス2について行い、その平均値を最終的なエンボス深さとして採用する。又、10個のエンボス2について一辺a、bの長さの測定をそれぞれ行い、各平均値を最終的な一辺a、bの長さとして採用し、a×bを平均面積とする。
【0033】
なお、エンボスを測定する際、シングルエンボスであっても、ダブルエンボスであっても、測定面は表面10a側とする。
ここで、表面10a側は肌に触れる外側であるので、柔らかさを確保するためにエンボスが凹部となっており、この凹部を測定することになる。
そして、エンボスとしては、シングルエンボス、ダブルエンボスが挙げられ、いずれの場合も、凹部は表面10a側にある。
また、ダブルエンボスとしては、表面10a側と裏面10a側のシートの両方にエンボスを付し、エンボスの凸部同士を対向させて重ねたタイプの他、表面10a側のシートのみエンボスを有して裏面10a側はエンボスが無いタイプも含む。
ダブルエンボスはどのような加工方法(ネステッド、ピントゥピン、表面10a側(1プライ)のみのエンボス)でも良い。
【0034】
また、エンボスの測定で任意の10個のエンボスを選定する際には、衛生紙ロール10の外巻の端部(シートを使用し始める位置)から、衛生紙ロール10の巻長の10%に当たる部分で測定する。例えば、巻長が30mの場合、端部から30m×10%=3mの部分で測定する。なお、巻長の10%の部分がミシン目に当たる場合は、ミシン目の外巻側を測定する。
【0035】
シート(シート)10xの吸水性を確保する手段としては、表面に凹凸を付与するものであれば、エンボスに限らず、例えば、凹凸ファブリックを用いて抄紙時にウェブに凹凸を付けてもよい。又、この場合、凹凸がエンボスに相当する。
【0036】
衛生紙ロールのロール密度が0.10~0.30g/cm3であることが好ましい。ロール密度が0.10g/cm3未満であると、1ロール当たりの物流効率に劣る。ロール密度が0.30g/cm3を超えると、固巻きとなり、エンボスが潰れて美粧性や機能性が劣る。
ロール密度は、(ロール質量)÷(ロールの体積)で表される。ロール質量は、ロール幅275mmあたりのロール状ペーパータオル1の質量である。ロール体積は[{ロールの外径(巻直径DR)部分の断面積}-(コア外径部分の断面積)]×ロール幅(228mmあたりに換算する)で表される。例えば、ロール幅228mmあたりのロール質量(コアを除く)が312g、巻直径117mm、コアの外径が39mmの場合、ロール密度=0.14g/cm3となる。ロール状ペーパータオル1にコアがない場合は、中心の空洞部の直径をコア外径DIとする。
【0037】
ロール密度が0.12~0.25g/cm3であることがより好ましく、0.14~0.20g/cm3であることが最も好ましい。
【0038】
上記エンボスの面積率が15~60%であることが好ましい。ここで、エンボスの面積率は、シートの単位面積当たりのエンボスの総面積の割合である。エンボスの総面積は、上記したエンボス1個当たりの平均面積と単位面積当たりのエンボスの個数から、エンボス部の面積(Sn=平均面積×エンボスの総個数)を測定し、単位面積で除した面積率(Sn/シートの測定の単位面積)として算出することができる。
エンボス面積・個数・面積率・深さは、上巻から20%、50%、80%部分の3か所で、かつ、ロール幅の中心部でそれぞれ測定し、値を平均する。
エンボスの面積率が15%未満であっても60%を超えても吸水性が低下する。個々のエンボスの面積(寸法)が上記範囲内であっても、エンボスの個数が少ないと面積率が5%未満に低くなって紙厚が低くなり、吸水性が劣る場合がある。また、個々のエンボスの面積(寸法)が上記範囲内であっても、エンボスの個数が多いと面積率が60%を超えて高くなり、同様に紙厚が低くなって吸水性が劣る場合がある。
【0039】
エンボスの面積率が25~60%であることがより好ましく、30~60%であることが最も好ましい。
【0040】
2プライ又はそれ以上に重ねられたシート10xの吸水量が105~220Water-g/m2である。吸水量が105Water-g/m2未満であると吸水性が低下し、220Water-g/m2を超えるとエンボス深さが深くなり、紙厚が高くなって巻径も大きくなるので、コンパクト性に劣る。
吸水量が120~200Water-g/m2であることがより好ましく、140~180Water-g/m2であることがさらに好ましい。
【0041】
2プライ又はそれ以上に重ねられたシート10xの吸水量が2.5~6.0Water-g/gであることが好ましい。吸水量が2.5Water-g/g未満であると吸水性が低下し、6.0Water-g/gを超えても特に問題は無いが、紙厚が高くなって巻直径DRも大きくなり、ロールホルダー等に収まり難くなることがある。
吸水量が3.0~5.5Water-g/gであることがより好ましく、3.5~5.0Water-g/gであることがさらに好ましい。
【0042】
なお、吸水量の単位として、Water-g/m2は、シートの面積当たりの吸水量であり、坪量を高くすればWater-g/m2は向上するが、巻径が大きくなり、コンパクト性に劣る。一方、Water-g/gは、シートの質量当たりの吸水量であり、坪量を高くしてもWater-g/gは単純に向上せず、シートの紙厚(比容積)を高くすることで、Water-g/gも高くなる。
つまり、吸水量の単位として、Water-g/m2とWater-g/gの両方の好適な範囲を規定することで、コスト及び紙厚(嵩高さ)を両立しつつ吸水性を確保できる。
【0043】
上記吸水量は、
図7に示すようにして測定する。まず、2プライ又はそれ以上に重ねられたシート10xを採取し、一片が7.62cm(3インチ)の正方形の型版を用いてカットし、一辺7.62cmの矩形の試験片を作成する。吸水前の試験片の質量を電子天秤で測定しておく。試験片をホルダー(試験片の3点を固定するジグで、ジグは水分を吸収しない金属からなる)にセットする。
【0044】
次に、市販のバットに、蒸留水を深さ1cm入れ、ホルダーにセットした試験片を蒸留水中に2分間浸漬する。2分浸漬後に試験片をホルダーと共に蒸留水から取り出し、
図7に示すように、試験片200の1つの隅部200dに帯210を貼り付ける。帯210は、測定試料をはがして1プライにして幅2mm×長さ15mmの大きさに切り、試験片の隅部200dから中心に向かって6mmの部分に貼り付ける。次に、ホルダーと試験片200を、隅部200dに対向する隅部200aが上になるようにして空の水槽内に設置した棒にぶら下げ、水槽の蓋を閉めて15分間、放置する。その後、ホルダー220と試験片200を水槽から取り出し、帯210とホルダー220を外し、電子天秤で試験片200の質量を測定する。蒸留水に浸す前後での試験片200の質量変化から、試験片1m2当たりの蒸留水の吸水量(Water-g/m
2)を計算する。さらに、吸水量(Water-g/m
2)を試験片の坪量で割ることにより、吸水量(Water-g/m
2)/坪量(g/m
2)=吸水量(Water-g/g)を算出する。測定は各サンプル5回ずつ行い、平均値を採用した。
なお、本測定は、JIS-P8111法に従い、温度23±1℃、湿度50±2%の状態で行う。また、蒸留水は23±1℃に保持する。
【0045】
シート10xの比容積が3.8~11.1cm3/gであることが好ましい。比容積が3.8cm3/g未満であると、吸水性が劣ることがある。一方、比容積が11.1cm3/gを超えると、バルク(嵩高さ)が高くなり過ぎて巻直径DRが135mmを超え、ロールホルダー等に収まり難くなることがある。
上記比容積は、より好ましくは4.1~10.0cm3/g、さらに好ましくは5.0~8.7cm3/gである。
なお、比容積は、後述するようにそれぞれ測定される紙厚を坪量で割り、単位gあたりの容積cm3で表したものである。
【0046】
2プライ又はそれ以上に重ねられた製品のシート10xのDMDTが1370~2750cN/25mmであることが好ましい。
JIS P8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強さをDMDT(Dry Machine Direction Tensile strength)、乾燥時の横方向の引張強さをDCDT(Dry Cross Direction Tensile strength)とする。なお、DMDT、DCDTは、2プライ又はそれ以上に重ねられたままのシート10xの製品について測定する。
DMDTが1560~2540cN/25mmであることがより好ましく、1660~2460cN/25mmであることがさらに好ましい。
【0047】
又、DCDTが好ましくは585~1180cN/25mm、より好ましくは780~1125cN/25mm、最も好ましくは880~1080cN/25mmである。
DMDT及びDCDTが上記値未満であると、吸水性が低下すると共にやぶれ易くなることがある。DMDT及びDCDTが上記値より高いと坪量が高くなって、コンパクト性が劣る可能性がある。
なお、衛生紙の抄紙の流れ方向を「縦方向」とし、流れ方向に直角な方向を「横方向」とする。
【0048】
ロール質量は、コア(紙管)の質量を除く、ロール幅(コア方向のロールの幅)228mmあたりの衛生紙ロールの質量である。ロール幅Wが228mmと異なる場合は、Wを228mmに換算してロール質量を求める。例えば、ロール幅Wが105mmの場合、そのロール質量に係数(228/105)を乗じた質量を、Wが228mm当たりのロール質量とする。
ロール1個あたりのロール質量は、130~500gが好ましい。ロール質量が130g未満であると、坪量や巻長が適切に維持されなくなり、ロールの交換頻度が高くなり、ロール質量が500gを超えると、巻直径DRが大きくなり過ぎてロールホルダー等に収まり難くなる。
上記ロール質量は、より好ましくは180~430g、最も好ましくは220~370gである。
【0049】
シートは木材パルプ100質量%から成っていてもよく、古紙パルプ、非木材パルプを含んでも良い。目標とする品質を得るためには、NBKP(針葉樹クラフトパルプ):LBKP(広葉樹クラフトパルプ)=25~70:30~75(質量比)の木材パルプを原料とすることが好ましく、より好ましい範囲はNBKP:LBKP=35~60:40~65、更に好ましい範囲はNBKP:LBKP=40~55:45~60である。
上記LBKPの材種としてユーカリ属グランディス、及びユーカリグロビュラスに代表される、フトモモ科ユーカリ属から製造されるパルプが好ましい。又、このNBKPとLBKPのパルプ100質量部に対して、牛乳パック由来等の古紙パルプを100質量部まで含むことができる。古紙パルプは品質的バラツキが大きく、配合割合が増えると製品の品質、特に柔らかさに大きく影響するので、このNBKPとLBKPのパルプ100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、最も好ましくは0質量部配合するのが望ましい。
【0050】
なお、シートに適正な強度を確保するために、通常の手段で原料配合し、パルプ繊維の叩解処理にて強度調整を行うことができる。目標の品質を得るための叩解としては、叩解前後のパルプにおいて、市販のバージンパルプに対して、JIS-P8121で測定されるカナダ標準濾水度で20~350ml、より好ましくは50~300ml、更に好ましくは100~250ml濾水度を低減させる。
【0051】
シートは、紙料にバージン系原料を使用する場合は一定範囲の繊維長及び繊維粗度を有する針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプを特定の範囲で配合して抄紙することができる。紙料への添加剤としては最終製品の要求品質に応じ、デボンダー柔軟剤を含めた柔軟剤、嵩高剤、染料、分散剤、乾燥紙力増強剤、濾水向上剤、ピッチコントロール剤、吸収性向上剤、湿潤剤などを用いることができる。特に、目的の強度となるよう、公知の乾燥紙力増強剤と湿潤紙力増強剤を添加することが好ましい。
シートとして古紙原料を使用する場合も、上記バージン系の場合と同様の処理を行う。
【0052】
本発明の衛生紙ロールは、例えば以下のように、(1)抄紙及びクレーピング、(2)エンボス処理及びロール巻取り加工、の順で製造することができる。また、カレンダー処理など、公知の処理を行うことができる。
【0053】
(1)抄紙及びクレーピング
まず、公知の抄紙機のワイヤーパート上で上記紙料からウェブを抄紙し、プレスパートのフェルトへ移動させる。ワイヤーパートの方式としては、丸網式、長網(フォードリニアー)式、サクションブレスト式、短網式、ツインワイヤー式、クレセントフォーマー式などが挙げられる。
そして、ウェブに対し、サクションプレッシャーロール又はサクションなしのプレッシャーロール又はプレスロールなどで機械的に圧縮をしたり、あるいは熱風による通気乾燥などの脱水方法により脱水を続ける。また、サクションプレッシャーロール又はサクションなしのプレッシャーロールは、プレスパートからヤンキードライヤーにウェブを移動させる手段としても使用される。
【0054】
ヤンキードライヤーに移動されたウェブは、ヤンキードライヤー及びヤンキードライヤーフードで乾燥された後、クレーピングドクターによりクレーピング処理され、リールパートで巻き取られる。
クレーピング(クレープと言われる波状の皺をつけること)は、紙を縦方向(抄紙機上のシート走行方向)に機械的に圧縮することである。そして、シートのウェブの製造の際、クレーピングドクターによりヤンキードライヤー上のウェブが剥がされ、リールパートで巻き取られるが、ヤンキードライヤーとリールパートの速度差(リールパートの速度≦ヤンキードライヤーの速度)によりクレーピングドクターにてクレープ(皺)が形成される。
シートに必要な品質、すなわち嵩(バルク感)、柔らかさ、吸水性、表面の滑らかさ、美観(クレープの形状)などは上記速度差で左右される。上記速度差等の条件にもよるが、製品が2プライの場合、クレーピング後のリール上のウェブ1プライの坪量は概略15~28g/m2となり、クレーピング前のヤンキードライヤー上のウェブの坪量より重くなる。上記坪量は、好ましくは17.5~26g/m2、より好ましくは20~24g/m2であり、ロール巻取り加工時にシートが伸びることを考慮して、製品の坪量より若干高めにすることが好ましい。上記範囲を超えると、巻径が大きくなり、コンパクト性に劣る場合があり、上記範囲未満であると、吸水性が劣る場合がある。
【0055】
同様に、製品が3プライの場合、クレーピング後のリール上のウェブ1プライの坪量は概略10~18g/m2となり、好ましくは11.7~16.7g/m2、より好ましくは12.7~15.0g/m2である。
同様に、製品が4プライの場合、クレーピング後のリール上のウェブ1プライの坪量は概略7.5~13.5g/m2となり、好ましくは8.8~12.5g/m2、より好ましくは9.5~11.3g/m2である。
【0056】
ここで、ヤンキードライヤーとリールのスピード差に基づくクレープ率は次式により定義される。
クレープ率(%)=100×(ヤンキードライヤー速度(m/分)-リール速度(m/分))÷リール速度(m/分)
品質や操業性の良し悪しはこのクレーピングの条件で大方決まり、クレーピング条件を最適とする操業条件が当業者にとって重要な事項となる。本発明においてシートを製造する際のクレープ率は好ましくは10~50%、より好ましくは20~40%、最も好ましくは25~35%である。
【0057】
(2)エンボス処理及びロール巻取り加工
原反を、例えば
図6のエンボス加工装置によってエンボス処理し、衛生紙ロール10を得る。
図6のエンボス加工装置においては、エンボス2の凸面が形成された凸エンボスロール3と、対向するゴム製抑えロール4との間に、ロール表面10a側のシートを通し、エンボス2を付与する。同様に、エンボス2の凸面が形成された別の凸エンボスロール3と、対向するゴム製抑えロール4との間に、ロール裏面10b側の1プライのシートを通し、エンボス2を付与する。そして一般的には、少なくても片方のシートのエンボスの凸面に適宜接着剤(プライボンドグルー)5を塗布した後、重ね合せロールにて、各シートのエンボスの凸面同士が対向するようにしてシートを重ねて接着され、適宜巻き取る。もちろん、10a側のシートがロール裏面、10b側のシートがロール表面側となっても良い。
なお、プライボンドグルーの代わりに、水を用いてもよい。水を使用する際は、プライボンドグルーを使用しないため、コストやエンボスロールの清掃が簡単になるという観点で好ましい。またグルーを使用する際は、プライがしっかり接着しやすく、プライ剥がれしにくいという観点で好ましい。なお、プライボンドグルーを用いると、触感が劣る場合があるため、プライが剥がれない程度に塗布量を少なくすることが好ましい。
これらの他に、ナーリング(エッジエンボス)によりプライボンドしても良い。また、プライボンドグルーとナーリング、水とナーリングなどそれらを組み合わせても良い。
【0058】
ロール巻取り加工機は、大別するとサーフェイス方式とセンター方式の2種類がある。サーフェイス方式は巻取るロールを外側から別の複数の駆動ロールで支持しながら巻取る方法であり、巻取られた衛生紙ロール10は、巻き径のコントロールがし易く、生産速度がより高速となる。センター方式は巻取りロールの中心に通したシャフトの駆動により巻取る方法で、巻取られた衛生紙ロール10は、比較的柔らかな製品となり、デリケートなエンボスを施した製品に適している。本発明においては、いずれの方法でも巻き取ることができるが、好ましくはサーフェイス方式である。
なおダブルエンボスではなく、2枚のシートを一緒にエンボス処理するシングルエンボスでも良い。また、必要に応じて、カレンダー処理を行っても良い。
【0059】
エンボス深さは、エンボスロール3と対向するゴムロール4(
図6参照)のニップ幅を適宜調整して制御することができる。ニップ幅は、ロールの特性によっても異なるが、好ましくは20~60mm、より好ましくは25~50mm、さらに好ましくは30~45mmである。ニップ幅が60mmを超えると、エンボスが強くなりすぎて紙厚が高くなってロールの巻直径DRが大きくなってしまう。一方、ニップ幅が20mm未満であると、エンボスが弱くなって吸水性が劣る場合がある。ニップ幅は、カーボン紙を用いて測定することができる。測定方法としては、まず、エンボスロールのニップを逃がし、カーボン紙と一般的なコピー用紙を重ねてセットする。次に、エンボスロールにニップをかける。その後、ニップを逃がし、カーボン紙とコピー用紙を取り外す。エンボスロールでニップがかかっていた部分のカーボン紙の色がコピー用紙に転写されるので、ニップ幅を測定することができる。
なお、エンボスロールの凹凸が深ければニップ幅を狭くし、エンボスロールの凹凸が浅ければニップ幅を広くすることで、エンボス深さを調整できる。
【0060】
ロール巻取り加工機にて同時に、印刷、ミシン目加工、テールシール、所定幅のカットを行うことができ、衛生紙ロール10を製造することができる。さらに、その後、フイルム包装加工して衛生紙ロールの包装体を製造することができる。
【0061】
本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
【実施例0062】
パルプ組成(質量%)をNBKP50%、LBKP50%とし、公知の方法でフェルトを介してロールプレスを行って抄紙した。その後、
図5に示すエンボス加工装置100によりエンボス加工して衛生紙(キッチンタオル)ロールを製造した。
【0063】
以下の評価を行った。
乾燥時の縦方向引張り強さDMDTと乾燥時の横方向引張り強さDCDT:JIS P8113に基づいて、2プライのシート10xにつき、破断までの最大荷重をcN/25mmの単位で測定した。引張強さの測定は、引張速度300mm/minの条件で行った。DMDT及びDCDTの数値から、DGMTを算出した。
坪量:製品プライのシート10xについて、JIS P8124に基づいて測定した。
紙厚:シート10xについて、シックネスゲージ(尾崎製作所製のダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用いて測定した。測定条件は、測定荷重3.7kPa、測定子直径30mmで、測定子と測定台の間に試料を置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取った。なお、シート10xを製品プライで測定を行った。又、測定を10回繰り返して測定結果を平均した。
比容積:シート10xの厚さを坪量で割り、単位gあたりの容積cm3で表した。
吸水量:上述の方法で測定した。
【0064】
ロールの巻直径DR:ムラテックKDS株式会社製ダイヤメータールールを用いて測定した。測定は、10個のロールを測定し、測定結果を平均した。
巻長:キッチンタオルのミシン目とミシン目の間のシートについて、10シート分の長さを実測した。その後、ロールのシート数を実測し、巻長は10シート分の長さとシート数から比例計算で求めた。例えば、10シート分の長さが2.3m、シート数が150シートの場合、2.3m×(150/10)=34.5mとなる。
ロールの巻密度、ロール密度、エンボスの面積、個数及び深さは上述の方法で測定した。
なお、坪量、引張強さ、厚さ、比容積、巻密度、ロール密度、エンボスの測定は、JIS-P8111に規定する温湿度条件下(23±1℃、50±2%RH)で平衡状態に保持後に行った。
【0065】
評価基準は◎○△×の4段階評価で行った。評価基準が◎○△であれば良好である。
吸水性
面積当たり吸水量として、140Water-g/m2以上は評価◎、120~139Water-g/m2が○、105~119Water-g/m2が△、104Water-g/m2以下を×とした。
質量当たり吸水量として、3.5Water-g/g以上は評価◎、3.0~3.4Water-g/gが○、2.5~2.9Water-g/gが△、2.4Water-g/g以下を×とした。
【0066】
コンパクト性は、巻直径として、120mm以下は評価◎、121~125mm2が○、126~135mmが△、136mm以上を×とした。
【0067】
ふき取り性
[試験方法]
長辺360mm、短辺215mmのステンレス製バッドを水平な場所に、長辺方向を体の正面(体の前後方向)に設置し、バッドの長辺方向上端部から50mm離れた、短辺方向中央部付近に、液体汚れを想定したサラダ油(日本農林規格(JAS規格))を10mg垂らした。
試験片は、100mm角に切断した製品プライのシートを4組重ねたものとし、油の中心部がシートの中心部になるように置く。この積層したシート上に、50mm角で430gの重りをなるべく早く静かに載せ、バッドの上端部から下端部方向へと、試験片を200mm移動させる。このとき重りを手で移動させるが、手の荷重がかからないよう、手は添える程度にする。なお、移動に要する時間は4秒である。拭き取り後のバッドにサラダ油が残らない状態(縦筋等がなくなるまで)になるまで、都度新しい試験片で拭き取りを繰り返す。拭き取りの終点(200mm地点)は、油がたまりやすいため、拭き取れたかどうかの評価は、拭き取り開始地点から150mm地点の間で観察する。
【0068】
[評価基準]
拭き取った回数が2回以下は評価◎、3回は○、4回は△、5回以上は×とした。
【0069】
得られた結果を表1~表3に載せる。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
表1~表3から明らかなように、所定のエンボスを設け、坪量、紙厚、巻長、巻密度、巻径、吸水量、EN、ES、及び(EN/ES)を規定した各実施例の場合、巻長を長くしつつもコンパクトかつ嵩高で、吸水性、ふき取り性にも優れていた。
【0074】
一方、製品プライの坪量が30.0g/m2未満で紙厚が0.2mm/製品プライ未満の比較例1の場合、巻径が小さくなったと共に吸水性が劣った。
坪量が54.0g/m2を超え紙厚が0.5mm/製品プライを超えた比較例2の場合、コストアップになったと共に、巻径が大きくなり過ぎてコンパクト性に劣った。
【0075】
エンボス深さが0.06mm未満の比較例3の場合、ふき取り性が劣った。
エンボス深さが1.05mmを超え、紙厚が0.5mm/製品プライを超えた比較例4の場合、巻径が大きくなり過ぎてコンパクト性に劣った。
【0076】
エンボス1個当たりの平均面積が3.0mm2/個未満、エンボスの個数が300個/100cm2未満、(EN/ES)が300を超えた比較例5の場合、ふき取り性が劣った。
一方、エンボス1個当たりの平均面積が10.0mm2/個を超えエンボスの個数が1100個/100cm2を超え、(EN/ES)が35未満の比較例6の場合も、ふき取り性が劣った。
【0077】
エンボスのEN、ESが実施例と同等の範囲にあるが、(EN/ES)が35未満となった比較例7の場合も、ふき取り性が劣った。
エンボスのEN、ESが実施例と同等の範囲にあるが、(EN/ES)が300を超えた比較例8の場合も、ふき取り性が劣った。