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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014400
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】電磁式燃料噴射弁
(51)【国際特許分類】
   F02M 51/06 20060101AFI20240125BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F02M51/06 J
F02M51/06 H
F16K31/06 305J
F16K31/06 385A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117194
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山下 謙斗
(72)【発明者】
【氏名】田中 直輝
【テーマコード(参考)】
3G066
3H106
【Fターム(参考)】
3G066BA19
3G066BA31
3G066CC01
3G066CC51
3G066CC56
3G066CE24
3G066CE25
3H106DA07
3H106DA23
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB22
3H106DB32
3H106DB37
3H106DC02
3H106DC17
3H106DD08
3H106EE04
3H106EE17
3H106GA21
3H106GA23
3H106GC02
3H106GC04
3H106KK18
(57)【要約】
【課題】電磁式燃料噴射弁において,コイルの通電時,可動コアの作動遅れを回避して開弁特性を良好に維持すると共に,コイルの通電遮断時には,可動コアのバウンシングを抑制し得るようにする。
【解決手段】可動コア41の前端面に,可動コア41と同心の環状凸部50が,弁ハウジング9内周に固定される閉弁側ストッパ49の平坦な後端面に当接可能に設けられ,この環状凸部50は,可動コア41と同心状に設定される仮想トーラスTの環状凸曲面Ta′に倣って形成される。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端部に弁座(27)を有する弁ハウジング(9)と,該弁ハウジング(9)の後端に連設される中空の固定コア(14)と,該固定コア(14)の外周に配設されるコイル(32)と,前記弁座(27)と協働する弁部(42)にロッド(43)が連設されてなる弁体(40)と,前記固定コア(14)の前端面に対向しながら前記弁ハウジング(9)の内周及び前記ロッドの外周に摺動可能に嵌装され,前記弁ハウジング(9)内での燃料の流通を許容する可動コア(41)と,前記ロッド(43)に固定され,前記コイル(32)の通電時,前記固定コア(14)に吸引される前記可動コア(41)により押動されて前記弁体(40)を開弁作動させる開弁側ストッパ(48)と,前記可動コア(41)の前端面の外周側に対向して前記弁ハウジング(9)の内周面に嵌合,固定される環状の閉弁側ストッパ(49)と,前記弁体(40)を閉弁方向に付勢する弁ばね(54)と,前記コイル(32)の非通電時,前記可動コア(41)を前記開弁側ストッパ(48)から離反させて前記閉弁側ストッパ(49)に当接させるように付勢する補助ばね(55)とを備える電磁式燃料噴射弁において,前記可動コア(41)の,前記閉弁側ストッパ(49)に対向する前端面には,該可動コア(41)と同心の環状凸部(50)が前記閉弁側ストッパ(49)の平坦な後端面に当接可能に設けられ,該環状凸部(50)は,該可動コア(41)と同心状に設定される仮想トーラス(T)の環状凸曲面(Ta′)に倣って形成されることを特徴とする,電磁式燃料噴射弁。
【請求項2】
前記環状凸部(50)の頂点(50a)が前記可動コア(41)の前端面上,その外周寄りに配置されることを特徴とする,請求項1に記載の電磁式燃料噴射弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,主として内燃機関の燃料供給系に使用される電磁式燃料噴射弁に関し,特に,前端部に弁座を有する弁ハウジングと,該弁ハウジングの後端に連設される中空の固定コアと,該固定コアの外周に配設されるコイルと,前記弁座と協働する弁部にロッドが連設されてなる弁体と,前記固定コアの前端面に対向しながら前記弁ハウジングの内周及び前記ロッドの外周に摺動可能に嵌装され,前記弁ハウジング内での燃料の流通を許容する可動コアと,前記ロッドに固定され,前記コイルの通電時,前記固定コアに吸引される前記可動コアにより押動されて前記弁体を開弁作動させる開弁側ストッパと,前記可動コアの前端面の外周側に対向して前記弁ハウジングの内周面に嵌合,固定される環状の閉弁側ストッパと,前記弁体を閉弁方向に付勢する弁ばねと,前記コイルの非通電時,前記可動コアを前記開弁側ストッパから離反させて前記閉弁側ストッパに当接させるように付勢する補助ばねとを備える電磁式燃料噴射弁の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる電磁式燃料噴射弁は,下記特許文献1に開示されるように既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002-506502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の電磁式燃料噴射弁では,可動コア及び閉弁側ストッパは,相対向面全体を平坦面として,弁体の閉弁時,広い面積をもって面接触させるようになっている。こうしたものでは,コイルの通電遮断に伴い,可動コアが補助ばねの付勢力により閉弁側ストッパとの当接位置へ押圧されたとき,可動コア及び閉弁側ストッパの広い接触面間に燃料油膜が生成され,大なる張り付き力が生じることにより,可動コアのバウンシングが抑制される利点がある。
【0005】
しかしながら,コイルの通電遮断時,可動コア及び閉弁側ストッパの当接部に発生する張り付き力が過大となると,コイルの通電時,可動コアに作動遅れが生じ,弁体の開弁応答性を著しく低下させる不都合を生じる。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので,コイルの通電遮断時,可動コア及び閉弁側ストッパの当接部に発生する燃料油膜による張り付き力を適度に制御可能にし,コイルの通電時,可動コアの作動遅れを回避して開弁特性を良好に維持すると共に,コイルの通電遮断時には,可動コアのバウンシングを抑制し得る前記電磁式燃料噴射弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために,本発明は,前端部に弁座を有する弁ハウジングと,該弁ハウジングの後端に連設される中空の固定コアと,該固定コアの外周に配設されるコイルと,前記弁座と協働する弁部にロッドが連設されてなる弁体と,前記固定コアの前端面に対向しながら前記弁ハウジングの内周及び前記ロッドの外周に摺動可能に嵌装され,前記弁ハウジング内での燃料の流通を許容する可動コアと,前記ロッドに固定され,前記コイルの通電時,前記固定コアに吸引される前記可動コアにより押動されて前記弁体を開弁作動させる開弁側ストッパと,前記可動コアの前端面の外周側に対向して前記弁ハウジングの内周面に嵌合,固定される環状の閉弁側ストッパと,前記弁体を閉弁方向に付勢する弁ばねと,前記コイルの非通電時,前記可動コアを前記開弁側ストッパから離反させて前記閉弁側ストッパに当接させるように付勢する補助ばねとを備える電磁式燃料噴射弁において,前記可動コアの,前記閉弁側ストッパに対向する前端面には,該可動コアと同心の環状凸部が前記閉弁側ストッパの平坦な後端面に当接可能に設けられ,該環状凸部は,該可動コアと同心状に設定される仮想トーラスの環状凸曲面に倣って形成されることを第1の特徴とする。
【0008】
また,本発明は,第1の特徴に加えて,前記環状凸部の頂点が前記可動コアの前端面上,その外周寄りに配置されることを第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の特徴によれば,可動コアの前端面に設けられる環状凸部が,可動コアと同心状に設定される仮想トーラスの環状凸曲面に倣って形成されるので,コイルの通電遮断時,可動コアの環状凸部と閉弁側ストッパの平坦な後端面との当接部に生成される燃料油膜の膜厚は,環状凸部の頂点から半径方向外方及び内方に向かって増加し,上記当接部の張り付き力を漸減させることになる。したがって,環状凸部の曲率半径を適宜設定することにより,上記張り付き力を所望通りに制御でき,可動コアのバウンシング抑制及び開弁応答性向上の両方を満足させることができる。
【0010】
しかも,コイルの通電遮断時,可動コアが傾き姿勢で閉弁側ストッパに当接した場合には,その傾き角度の大小に拘らず,可動コアの環状凸部の一点が閉弁側ストッパの平坦な後端面に転がり可能に当接することになり,補助ばねの付勢力により,可動コアを適正姿勢に速やかに復帰させることができ,可動コアのバウンシング抑制に寄与し得ると共に,環状凸部及び閉弁側ストッパの当接部の耐摩耗性の向上にも寄与し得る。
【0011】
本発明の第2の特徴によれば,環状凸部の頂点が可動コアの前端面上,その外周寄りに配置されるので,コイルの通電遮断時,可動コアが傾き姿勢で閉弁側ストッパに当接した場合には,環状凸部の,閉弁側ストッパの後端面に当接した一点,即ち支点と補助ばねの中心軸線との間の大なるアーム長をもって,補助ばねの付勢力により可動コアに大なる復帰モーメントを作用させることになり,可動コアを適正姿勢に一層速やかに復帰させることができ,可動コアのバウンシング抑制に大いに寄与し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る内燃機関用電磁式燃料噴射弁の実施形態を示す縦断面図。
図2】上記燃料噴射弁の閉弁状態を示す,図1の2部拡大図。
図3図2の3-3線断面図。
図4】上記燃料噴射弁の開弁状態を示す,図2との対応図
図5】上記燃料噴射弁の閉弁時,可動コアが傾き姿勢で閉弁側ストッパに当接したときの状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について添付の図1図5を参照しながら説明する。
【0014】
先ず図1において,内燃機関Eのシリンダヘッド5には,燃焼室6に開口する装着孔7が設けられており,燃焼室6に向かって燃料を噴射し得る本発明の電磁式燃料噴射弁Iが前記装着孔7に装着される。本発明の電磁式燃料噴射弁Iでは,燃料噴射側を前方,その反対側を後方とする。
【0015】
この電磁式燃料噴射弁Iの弁ハウジング9は,中空円筒状のハウジングボディ10と,このハウジングボディ10の前端部内周に嵌合して溶接される弁座部材11と,ハウジングボディ10の後端部外周に前端部を嵌合させてハウジングボディ10に溶接される磁性円筒体12と,この磁性円筒体12の後端部に前端部が同軸に結合される非磁性円筒体13とで構成される。非磁性円筒体13の後端部には,中空部15を有する円筒状の固定コア14の前端部が同軸に結合され,この固定コア14の後端部に,前記中空部15に通じる燃料供給筒16が一体に且つ同軸に連設される。
【0016】
磁性円筒体12は,その軸方向中間部にフランジ状のヨーク部12aを一体に有しており,装着孔7の外端を囲繞するようにしてシリンダヘッド5に設けられる環状凹部17に収容されるクッション材18が,シリンダヘッド5及びヨーク部12a間に介装される。
【0017】
燃料供給筒16の入口には,オリフィス部材24と,その下流側に隣接する燃料フィルタ19とが装着される。この燃料供給筒16には,図示しない燃料ポンプの吐出口に連なる燃料分配管20から分岐した燃料供給キャップ21が環状のシール部材22を介して嵌合される。燃料供給キャップ21の頂部にはブラケット23が係止され,このブラケット23は,シリンダヘッド5に立設される不図示の支柱にボルト等により、シリンダヘッド5に着脱可能に締結される。
【0018】
燃料供給キャップ21と,燃料供給筒16の中間部に設けられて燃料供給キャップ21側に臨む環状段部25との間には,板ばねからなる弾性部材26が介装される。この弾性部材26が発揮する弾発力で電磁式燃料噴射弁Iがシリンダヘッド5に保持される。
【0019】
弁座部材11は,端壁部11aを前端部に有して有底円筒状に形成されており,前記端壁部11aには,円錐状の弁座27が形成されると共に,その弁座27の中心近傍に開口する複数の燃料噴孔28が設けられる。この弁座部材11は,燃料噴孔28を燃焼室6に向けて開口するようにしてハウジングボディ10の前端部に嵌合,溶接される。即ち弁ハウジング9が,その前端部に弁座27を有するように構成される。
【0020】
磁性円筒体12の後端部から固定コア14に至る外周面にはコイル組立体30が嵌装される。このコイル組立体30は,上記外周面に嵌合するボビン31と,このボビン31に巻装されるコイル32とからなり,このコイル組立体30を囲繞する磁性体のコイルハウジング33の前端部が磁性円筒体12と結合される。
【0021】
固定コア14の後端部外周は,コイルハウジング33の後端部に連なってモールド成形される合成樹脂製の被覆層34で被覆されており,この被覆層34には,コイル32に連なる端子35を保持するカプラ34aが電磁式燃料噴射弁Iの一側方に突出するように一体に形成される。
【0022】
固定コア14の前端部に,固定コア14に外周面を連ねるようにして非磁性円筒体13の後端部が嵌合され,液密に溶接される。
【0023】
弁座部材11から非磁性円筒体13に至る弁ハウジング9内には,弁体40と可動コア41とが収容される。弁体40は,弁座27と協働して燃料噴孔28を開閉する弁部42に,固定コア14内まで延びるロッド43が連設されてなる。そして,弁部42は,弁座部材11内で摺動するよう球状に形成され,ロッド43は弁部42よりも小径に形成される。弁座部材11及びロッド43間には環状の燃料通路44が画成され,弁部42の外周面には,弁座部材11との間に燃料通路を画成する複数の平面部45が形成される。したがって弁座部材11は,弁体40の開閉動作を案内しながら燃料の通過を許容する。
【0024】
図1図3に示すように,ロッド43には,固定コア14内に配置される開弁側ストッパ48が固着される。この開弁側ストッパ48は,固定コア14の内周面に摺動自在に嵌合するフランジ部48aと,このフランジ部48aから可動コア41側に突出する円筒状の軸部48bとで構成されており,そのフランジ部48aが溶接によりロッド43に固着される。
【0025】
固定コア14の中空部15にはパイプ状のリテーナ53が嵌挿されてかしめ固定される。このリテーナ53と,開弁側ストッパ48のフランジ部48aとの間には弁体40を弁座27への着座方向,即ち閉弁方向へ付勢する弁ばね54が縮設される。
【0026】
前記可動コア41は,その後端面(被吸引面41a)を固定コア14の前端面(吸引面14a)に対向させながら,弁ハウジング9の内周面とロッド43の外周面とに摺動及び回転可能に嵌装される。したがって,可動コア41の外周面及び弁ハウジング9の内周面間には環状間隙56aが,また可動コア41の内周面及びロッド43の外周面間には環状の間隙56bがそれぞれ設けられる。また,可動コア41は,磁性円筒体12及び非磁性円筒体13に跨がって配置される。
【0027】
磁性円筒体12の内周面には,可動コア41の前端面の外周側に対向する環状の閉弁側ストッパ49が圧入して固定される。この閉弁側ストッパ49の位置決めのため,閉弁側ストッパ49の外周部前端面を支承する環状の位置決め段部47が磁性円筒体12の内周に形成される。閉弁側ストッパ49の,可動コア41に対向する後端面は平坦面である。
【0028】
可動コア41と前記開弁側ストッパ48のフランジ48aとの間には,可動コア41を上記閉弁側ストッパ49に向かって付勢する補助ばね55が縮設される。この補助ばね55のセット荷重は,前記弁ばね54のそれより小さく設定される。
【0029】
ロッド43の後端部は,開弁側ストッパ48のフランジ部48aよりも突出し,弁ばね54の可動端部の内周面に嵌合して,その位置決めの役割を果たしている。また開弁側ストッパ48の軸部48bは,補助ばね55の内周面に嵌合して,その位置決めの役割を果たしている。
【0030】
開弁側ストッパ48のフランジ部48aの外周の複数箇所には,固定コア14の内周面との間に燃料通路を画成する平面部57が設けられ,また可動コア41には,環状配列の複数の燃料通孔58が設けられる。
【0031】
而して,弁体40が閉弁位置あり,且つ可動コア41が閉弁側ストッパ49との当接位置にあるとき,固定コア14の吸引面14aと可動コア41の被吸引面41aとの間には,弁体40の開閉ストロークに対応する間隔が確保され,そして開弁側ストッパ48の軸部48bの前端部は,前記間隔の中間位置を占めるようになっている。したがって,コイル32の通電に伴い固定コア14が可動コア41を吸引したときは,可動コア41は,先ず開弁側ストッパ48に当接し,次いで開弁側ストッパ48を伴いながら固定コア14に吸着されるタイミングとなる。
【0032】
図2及び図3に明示するように,可動コア41の前端面には,可動コア41と同心の環状凸部50が,前記閉弁側ストッパ49の平坦な後端面に当接可能に設けられる。この環状凸部50は,可動コア41と同心状に設定される仮想トーラスTの前端側の環状凸曲面Ta′に倣って形成される。その際,環状凸部50の頂点50aが可動コア41の外周寄りに来るように,仮想トーラスTの小円Taの中心Oが可動コア41の外周寄りに設定される。尚,図2中,符号Rは仮想トーラスTの大円の半径を示す。
【0033】
また,可動コア41の前端面には,環状凸部50の内周縁に連なる円錐台状の凹部59が設けられる。
【0034】
次に,この実施形態の作用について説明する。
【0035】
電磁式燃料噴射弁Iにおいて,コイル32の非通電状態では,弁体40は,弁ばね54のセット荷重によって押圧されることで,弁座27に着座して燃料噴孔28を閉鎖する閉弁状態となる。この閉弁状態では,図示しない燃料ポンプから燃料分配管20に吐出される高圧燃料が燃料供給キャップ21を通して燃料供給筒16に供給され,燃料噴射弁Iの内部,即ち燃料供給筒16,パイプ状のリテーナ53,固定コア14,可動コア41,弁ハウジング9等の内部を満たして待機する。
【0036】
その際,燃料ポンプの吐出圧変動等に起因して燃料分配管20内に発生する燃料圧力の脈動は,燃料供給筒16の入口のオリフィス部材24のオリフィスにより減衰され,燃料噴射弁I内部への影響を解消,もしくは軽減する。
【0037】
一方,図2に示すように,可動コア41は,このような閉弁状態では,補助ばね55のセット荷重によって閉弁側ストッパ49との当接状態に保持され,且つ固定コア14との間に所定の前記間隔を保っている。
【0038】
このような閉弁状態でコイル32に通電すると,固定コア14及び可動コア41間に生じる磁力により,可動コア41は,固定コア14に吸引されるので,先ず,補助ばね55を圧縮しながら,ロッド43上を後方へ摺動して開弁側ストッパ48に当接する。即ち可動コア41は,その初動時,弁ばね54よりセット荷重が小さい補助ばね55を素早く圧縮しながら固定コア14に近接して,固定コア14からの吸引力を急増させるので,加速的に移動して開弁側ストッパ48に当接する。
【0039】
そして,図4に示すように,可動コア41は,直ちに開弁側ストッパ48を伴いながら,弁ばね54の大なるセット荷重に抗して速やかに更に後方へ移動して可動コア41の吸引面14aに吸着される。
【0040】
こうして可動コア41と共に後方へ移動する開弁側ストッパ48は,弁体40のロッド43に固定されているので,弁部42を弁座27から離座させ,開弁状態とすることができる。弁体40が開弁すると,弁ハウジング9等の内部で待機する高圧燃料が燃料噴孔28から内燃機関Eの燃焼室6に直接噴射される。このようにして,弁体40の開弁応答性が高められると共に,コイル32の消費電力の軽減を図ることができる。
【0041】
次に,コイル32への通電を遮断すると,弁ばね54の付勢力により開弁側ストッパ48が押動されるので,開弁側ストッパ48は弁体40を伴なって弁座27側に即座に移動し,弁部42を弁座27に着座させ,閉弁状態となって燃料噴孔28からの燃料噴射を停止する。この弁体40の閉弁状態は,弁ばね54の大なるセット荷重により確実に保持される。
【0042】
一方,可動コア41は,補助ばね55の付勢力により押圧されて閉弁側ストッパ49に受け止められる。このとき,可動コア41の前端面の環状凸部50が閉弁側ストッパ49の平坦な後端面に当接する。このとき,可動コア41の環状凸部50と閉弁側ストッパ49の平坦な後端面との間に燃料油膜が生成されるが,その燃料油膜の膜厚は,環状凸部50の頂点50aから半径方向外方及び内方に向かって増加し,張り付き力を漸減させることになる。したがって,環状凸部50の曲率半径,即ち仮想トーラスTの小円半径rや,環状凸部50の頂点50a位置,即ち仮想トーラスTの大円半径Rを適宜設定することにより張り付き力を所望通りに制御でき,可動コア41のバウンシング抑制及び開弁応答性向上の両方を満足させることができる。
【0043】
また,コイル32の通電遮断時,図5に示すように,可動コア41が傾き姿勢で閉弁側ストッパ49に当接した場合には,その傾き角度の大小に拘らず,可動コア41の環状凸部50の一点Pが閉弁側ストッパ49の平坦な後端面に転がり可能に当接する。
【0044】
その際,環状凸部50が可動コア41の前端面の外周寄りに設けられるので,上記当接点P,即ち支点Pは,可動コア41の外周寄りに位置することになり,その支点Pと補助ばね55の中心軸線Yとの間の大なるアーム長Lをもって,補助ばね55の付勢力が可動コア41に大なる復帰モーメントMを作用させることになる。その上,上記支点Pは閉弁側ストッパ49の平坦な後端面を転がり得るので,可動コア41は,環状凸部50全体を閉弁側ストッパ49に当接させる適正姿勢に速やかに復帰することができ,可動コア41のバウンシング抑制に寄与し得るのみならず,環状凸部50及び閉弁側ストッパ49の当接部の耐摩耗性向上にも寄与し得る。
【0045】
可動コア41のバウンシングの抑制は,次のコイル32の通電時までに可動コア41のバウンシングを収束させ得ることを意味し,所定の燃料噴射特性を安定させることができる。
【0046】
また,可動コア41の前端面において,環状凸部50の内周縁に連ねて設けられる円錐台状の凹部59は,コイル32の通電時,可動コア41に形成される磁路を絞ることなく,可動コア41の軽量化,延いては可動コア41の応答性向上に資することができる。
【0047】
以上,本発明の実施の形態について説明したが,本発明は上記実施形態に限定されるものではなく,特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0048】
I・・・・電磁式燃料噴射弁
T・・・・仮想トーラス
Ta・・・仮想トーラスの小円
Ta′・・環状凸曲面
O・・・・仮想トーラスの小円中心
r・・・・仮想トーラスの小円半径
R・・・・仮想トーラスの大円半径
9・・・・弁ハウジング
14・・・固定コア
27・・・弁座
32・・・コイル
40・・・弁体
41・・・可動コア
42・・・弁部
43・・・ロッド
48・・・開弁側ストッパ
49・・・閉弁側ストッパ
50・・・環状凸部
50a・・頂点
54・・・弁ばね
55・・・補助ばね
図1
図2
図3
図4
図5