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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144003
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】RFIDラベルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20241003BHJP
   H01Q 19/02 20060101ALI20241003BHJP
   G09F 3/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G06K19/077 248
G06K19/077 144
G06K19/077 280
H01Q19/02
G09F3/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023142635
(22)【出願日】2023-09-04
(62)【分割の表示】P 2023054356の分割
【原出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 享平
【テーマコード(参考)】
5J020
【Fターム(参考)】
5J020AA01
5J020BC09
5J020BD04
(57)【要約】
【課題】金属層を設けた場合にもエンコードに支障をきたすことのないRFIDラベルの製造方法を提案すること。
【解決手段】本開示に係るRFIDラベルは、表面層と、アンテナ層と、裏面層とを有し、前記裏面層は、金属製のフィルムを含み、かつ、前記アンテナ層に設けられるアンテナの指向性に応じて特定される位置に配置される空隙であって、前記RFIDラベルにおける裏面層を分断することのない空隙を有する。本開示に係るRFIDラベルの製造方法は、前記表面層に対して印字する工程と、前記印字された表面層とは逆側に接着される前記裏面層の側から、当該表面層の方向に向かって、前記アンテナ層に対して前記RFIDラベルに保持させる情報を書き込む工程と、を含む。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層と、アンテナ層と、裏面層とを有するRFIDラベルの製造方法であって、
前記裏面層は、
金属製のフィルムを含み、かつ、前記アンテナ層に設けられるアンテナの指向性に応じて特定される位置に配置される空隙であって、前記RFIDラベルにおける裏面層を分断することのない空隙を有し、
前記表面層に対して印字する工程と、
前記印字された表面層とは逆側に接着される前記裏面層の側から、当該表面層の方向に向かって、前記アンテナ層に対して前記RFIDラベルに保持させる情報を書き込む工程と、
を含むことを特徴とするRFIDラベルの製造方法。
【請求項2】
前記裏面層を構成する金属製のフィルムに、所定距離ごとに前記空隙を有する空隙領域を複数設ける工程をさらに含み、
前記複数設けられた空隙領域の合計は、前記裏面層の面積のうち2割を超えない面積を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のRFIDラベルの製造方法。
【請求項3】
前記空隙領域を設ける工程は、
前記RFIDラベルの裏面層における中央縦列を基準の中心線として、当該基準を含む前記裏面層の横幅長の3割を超えない範囲内に、前記空隙の中心位置が収まるように当該空隙領域を設ける、
ことを特徴とする請求項2に記載のRFIDラベルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、RFIDラベルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商品等にRFID(Radio Frequency Identification)ラベルを付し、その情報をRFIDリーダで読み取ることによって、商品の在庫や出荷管理を行う技術が利用されている。
【0003】
RFID等の無線通信技術においては、ラベルに情報を書き込んだり、ラベルの情報を読み取ったりする際の速度や正確性が重要となる。例えば、RFIDタグにおいて、インピーダンスマッチング回路を覆うように導電体を重ねる構成を採用することで、RFIDタグを接近させて配置した場合でも通信に支障をきたさないようにする技術が知られている(例えば、特許文献1)。また、RFIDのような非接触通信を行うICタグにおいて、反射手段を設ける構成を採用することで、通信距離を伸ばす技術が知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5358489号公報
【特許文献2】特開2002-298106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術によれば、金属層等を設けることにより、無線通信に係る通信性能を高めることができる。
【0006】
しかし、単体で生産されるICタグ等と異なり、ラベルプリンタのような機器を用いて大量生産されるRFIDラベルでは、金属層を設けた場合、エンコード用の電波が金属層で遮断されてしまい、情報の読み書きができないという問題があった。
【0007】
そこで、本開示では、金属層を設けた場合にもエンコードに支障をきたすことのないRFIDラベルおよびRFIDラベルの製造方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本開示に係るRFIDラベルは、表面層と、アンテナ層と、裏面層とを有し、前記裏面層は、金属製のフィルムを含み、かつ、前記アンテナ層に設けられるアンテナの指向性に応じて特定される位置に配置される空隙であって、前記RFIDラベルにおける裏面層を分断することのない空隙を有する。本開示に係るRFIDラベルの製造方法は、前記表面層に対して印字する工程と、前記印字された表面層とは逆側に接着される前記裏面層の側から、当該表面層の方向に向かって、前記アンテナ層に対して前記RFIDラベルに保持させる情報を書き込む工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
実施形態の一態様によれば、金属層を設けた場合にもエンコードに支障をきたすことのないRFIDラベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るRFIDラベルの構成を示す図である。
図2】RFIDラベルへのエンコード処理を説明するための図である。
図3】実施形態に係るアルミロールの構成を示す図である。
図4】RFIDラベルの指向性を説明するための図である。
図5】RFIDラベルに設けられるスリット部の位置とエンコード結果との関係を示す図である。
図6】実施形態に係るRFIDラベルの製造方法を説明するための図(1)である。
図7】実施形態に係るRFIDラベルの製造方法を説明するための図(2)である。
図8】実施形態に係るRFIDラベルの製造方法を説明するための図(3)である。
図9】実施形態に係るRFIDラベルの製造方法を説明するための図(4)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0012】
(1.実施形態)
図1は、実施形態に係るRFIDラベル100の構成を示す図である。RFIDラベル100には、RFIDラベルへの情報を書き込む機器であるラベルプリンタを用いて種々の情報が書き込まれ、記憶される。例えば、RFIDラベル100は、商品に貼付され、商品の在庫管理や出荷管理等に利用される。
【0013】
図1の左側に示すように、RFIDラベル100は、表面層10と、アンテナ層20と、裏面層30とが積層されて構成される。
【0014】
表面層10は、ラベルの内容等を示すための上紙等である。アンテナ層20は、電波を送受信するためのアンテナ部と、情報の読み書き等の処理を行う回路部25とを含む、いわゆるアンテナ付きICチップである。アンテナ層20は、RFIDインレイもしくはRFIDインレット等と称される。
【0015】
裏面層30は、ラベルの下紙となる部分である。裏面層30は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムと、アルミフィルム等の金属フィルムと、ラベルを添付するための剥離紙と、それらを互いに接着するための接着剤とを含む。RFIDラベル100は、金属フィルム等の金属層を含むことで、ラベルを貼付する対象が金属である場合に、貼付対象の金属の影響を受けにくく、通信性能が低下しないという利点がある。
【0016】
図1の右側に、RFIDラベル100の断面形状を示す。図1に示すように、RFIDラベル100は、表面層10とアンテナ層20、それらの間の接着層31と、アンテナ層20と裏面層30、それらの間の接着層32とが積層されて構成される。アンテナ層20は、回路部25を含む。
【0017】
なお、寸法の一例としては、RFIDラベル100の平面形状における縦サイズが約50mm、横サイズが約80mmである場合、RFIDラベル100の厚み全体が約815μmである。例えば、表面層10の厚みが約80μm、接着層31の厚みが約30μm、アンテナ層の厚みが約60μm、接着層32の厚みが約500μm、裏面層の厚みが約145μmである。これらの寸法は、製造されるRFIDラベル100のサイズによって、適宜、変更可能である。
【0018】
上述のように、RFIDラベル100に対しては、ラベルプリンタを用いて情報の書き込み(エンコード)が行われる。かかる処理について、図2を用いて説明する。図2は、RFIDラベル100へのエンコード処理を説明するための図である。具体的には、図2では、ラベルプリンタ200によってRFIDラベル100へのエンコードが行われる処理の概要を示す。
【0019】
図2に示す例では、RFIDラベル100は、RFIDラベル100を構成する用紙のローラー(ラベルロール)から搬送方向に向かって送り出され、ラベルプリンタ200のエンコーダー部に進む。ラベルプリンタ200は、用紙位置検出用センサーによって用紙(RFIDラベル100)を感知し、当該RFIDラベル100に対応する情報をアンテナから送信し、情報を書き込む(エンコードする)。
【0020】
このとき、RFIDラベル100の裏面が金属層を含むと、アンテナからの電波が遮断されるおそれがある。このため、RFIDラベル100が金属層を含む場合には、ラベルプリンタ200を用いて大量にラベルを生産することが難しいという問題があった。
【0021】
この点について、実施形態に係るRFIDラベル100は、金属層にスリットのような空隙を設けることにより、上記問題を解決する。具体的には、実施形態に係るRFIDラベル100は、アンテナ層20に設けられるアンテナの指向性に応じて特定される位置に配置される空隙であって、RFIDラベル100における裏面層を分断することのない空隙を有する。すなわち、実施形態に係る製造方法では、裏面層30を構成する金属製のフィルムに、所定距離ごとに空隙領域を設ける工程を含む。
【0022】
なお、RFIDラベル100における裏面層を分断することのない空隙とは、例えばスリットなど、裏面の金属層を完全には分断せず、任意の箇所で接続を保つ構成をいう。このため、空隙は、スリットに限らず、パンチホールのように所定間隔で開けられた穴や、ひし形や三角形などの任意の形状で所定数の開口部が設けられるような態様であってもよい。
【0023】
RFIDラベル100は、空隙を有することで、エンコードのための電波を遮断せず、情報が書き込まれることが可能となる。また、詳細は後述するが、実施形態では、スリット部等の空隙領域に含まれる空隙が、1つのRFIDラベル100における裏面層の面積のうち2割を超えない面積となるよう、アンテナ層20裏面層30とが接着される。
【0024】
このように、RFIDラベル100は、RFIDラベル100の表面積のうち所定割合の面積のみを空隙とするよう製造されることで、金属層があることによる通信性能の向上のメリットを失わないよう調整される。
【0025】
上記のRFIDラベル100を実現するために設けられる空隙の構成について、図3以下を用いて説明する。図3は、実施形態に係るアルミロール300の構成を示す図である。
【0026】
アルミロール300は、図1で示した裏面層30に対応する部材である。図3に示すように、アルミロール300は、中央縦列(製造時の送り方向に対して平行方向かつロールの中心線)上の所定間隔に、空隙領域であるスリット部35が設けられる。
【0027】
スリット部35は、スリットとして線形状の空隙が一定間隔で設けられている領域をいう。スリット部35に設けられる個々のスリットのサイズについて、例えば、スリット間隔L1は、約0.5mmである。スリット幅L2は、約0.5mmである。スリット長(横幅)L3は、約20mmである。また、スリット部35は、例えば、縦サイズが10mm、横サイズが10mmの正方形であったり、縦サイズが10mm、横サイズが20mmの長方形であったりしてもよい。これらの寸法は、後述するように、RFIDラベル100の面積に対する空隙の面積比の許容範囲を満たす条件であれば、適宜、変更可能である。
【0028】
図3に示すように、アルミロール300に設けられたスリット部35は、完成したRFIDラベル100の中央縦列に配置されるよう、アルミロール300の中央縦列に所定間隔で配置される。この理由について、図4を用いて説明する。
【0029】
図4は、RFIDラベル100の指向性を説明するための図である。図4の左側には、RFIDラベル100が備えるアンテナにおける電流の流れの一例を示す。図4に示すように、RFIDラベル100のアンテナの電流は、中央で最大となり、両端で最少となる。かかる電流の流れから、RFIDラベル100のアンテナは、折り返しダイポールアンテナと類似する指向性を有する。
【0030】
図4の右側に、RFIDラベル100の指向性を示す。図4には、アンテナの指向性の強さを、最大距離を1として正規化した例を示している。すなわち、RFIDラベル100は、正面中央方向で、最大距離となるような指向性を有する。このため、RFIDラベル100の空隙(スリット)は、図4の左側に示す中央縦列領域50に含まれるように設けられることが望ましい。
【0031】
上記の理由から、アルミロール300には、完成時のRFIDラベル100の中央縦列にスリットが含まれるように、中央縦列にスリット部35が設けられる。
【0032】
スリット部35が設けられた位置とエンコード結果との関係について、図5を用いて説明する。図5は、RFIDラベル100に設けられるスリット部35の位置とエンコード結果との関係を示す図である。具体的には、図5には、RFIDラベル100の様々な位置に空隙を設けた試作品について、エンコードが問題なくできたか否かという実験結果を示している。
【0033】
図5に示す結果表120には、RFIDラベル100におけるアンテナの形状と、当該アンテナに対してスリット部35が設けられる位置を示す。
【0034】
結果表120の左側には、スリット部35が矩形(例えば、10mmの正方形)であり、スリット部35が中央縦列に配置された例を示す。この場合、スリット部35が縦方向の中央よりも上側、中央、下側のいずれに配置された場合であっても、エンコード結果に支障がなかった。すなわち、結果表120は、スリット部35がRFIDラベル100の中央縦列の領域(図4に示した中央縦列領域50)に含まれる場合、エンコードに支障が生じないことを示している。
【0035】
なお、結果表120の左側の一番下に示すように、中央縦列がスリットでなく全て空隙である場合、すなわち、空隙が裏面層を分断する場合、金属層があることによるメリット(通信距離を延ばす等)が享受できない可能性がある。すなわち、結果表120の左側の一番下の例では、RFIDラベル100が金属性の物品等に貼付した際にRFIDラベルとして十分に機能せず、望ましい結果が得られない可能性がある。
【0036】
また、結果表120の右側には、スリット部35が矩形であり、スリット部35が中央縦列以外の位置に配置された例を示す。この場合、RFIDラベル100においてスリット部35がアンテナの端部となるため、電流が減衰し、中央縦列にスリット部35が配置された場合と比較すると、電波を拾えない可能性が高くなる。
【0037】
なお、結果表120の右側の一番下に示すように、中央縦列全てがスリットであり、空隙が裏面層を分断しない場合、エンコード結果に支障は生じない。ただし、後述するように、RFIDラベル100の面積に対して空隙の面積が増加することで、貼付対象の金属の影響を受けにくいという金属対応ラベルとしてのメリットが得られにくくなるおそれがある。
【0038】
したがって、図5に示したように、スリット部35は、RFIDラベル100の中央縦列に配置され、裏面層を分断せず、かつ、空隙の面積が小さいことが望ましい。
【0039】
かかる構成を実現するため、RFIDラベル100にスリット部35を設ける際の工程について、図6以下を用いて説明する。図6は、実施形態に係るRFIDラベル100の製造方法を説明するための図(1)である。
【0040】
図6では、連続で大量のRFIDラベル100を製造する際の手順を示す。例えば、連続したRFIDラベル100は、RFIDラベル100を構成する構成物が、図6で示す左側から右側に順に送られていくことにより製造される。
【0041】
図6では、下紙として、アルミロール300と剥離紙138とを示す。まず、かかる下紙が最下層となり、右側に送られ、ホットメルトが塗布される(ステップS1)。その後、下紙に、インレットロール130からインレットが貼り付けられる(ステップS2)。続けて、インレットに、ホットメルトが塗布される(ステップS3)。その後、インレットに、上紙ロール132から上紙が貼り付けられる(ステップS4)。最後に、ハーフカッター134が、剥離紙をカットしないように連続した用紙を切り取ることにより、1片のRFIDラベル100が製造される(ステップS5)。
【0042】
このようにして製造されたRFIDラベル100は、図1と同様、表面から順に、表面層10、接着層31、アンテナ層20、接着層32、裏面層30とを有する。
【0043】
ところで、上記の製造の際、インレットロール130の送りと、スリット部35のパターンがエッチングされている下紙の送りとが、微小でも差が生じると、製造中にインレットと下紙の位置関係にずれが生じることになる。仮に製造工程においてずれが生じた場合であっても、製造工程では、RFIDラベル100に空隙が設けられるよう調整されることが望ましい。
【0044】
この点について、図7以下を用いて説明する。図7は、実施形態に係るRFIDラベル100の製造方法を説明するための図(2)である。図7は、RFIDラベル100の送りの様子と、アルミロール300との関係を示す。図7は、図6で示したRFIDラベル100の製造ラインを、上空から見下ろした平面図として示している。
【0045】
図6で説明したように、下紙であるアルミロール300は、RFIDラベル100の大きさに合わせてハーフカッター134に切り取られる。この際、電波の遮断を防止するため、スリット部35が、図5の左側に示したように中央縦列に配置されることが望ましい。しかし、ロールの送りに微小なずれが生じると、徐々に、スリット部35の位置がずれてしまい、RFIDラベル100の領域とずれる可能性がある。
【0046】
図8に、理想的なスリット部35の配置を示す。図8は、実施形態に係るRFIDラベル100の製造方法を説明するための図(3)である。
【0047】
図8では、RFIDラベル100と、アルミロール300と、アルミロール300に設けられたスリット部35との関係を示している。図8に示すように、アルミロール300の送りが適切であれば、スリット部35は、RFIDラベル100の中央縦列に少なくとも1つ配置されるため、適切な金属ラベルとして機能するRFIDラベル100が完成する。一方、スリット部35の位置がずれてしまい、例えば、スリット部35が連続するRFID100の隙間に配置されてしまうと、完成したRFIDラベル100にスリット部35が含まれないこととなり、適切な金属ラベルとして機能しない。
【0048】
そこで、実施形態に係る製造方法では、図9に示すようにスリット部35を配置することで、上記問題を解決する。図9は、実施形態に係るRFIDラベル100の製造方法を説明するための図(4)である。
【0049】
図8で示したように、RFIDラベル100は、エンコードの電波を遮断しないために、少なくとも1つのスリット部35が含まれることを要する。このため、アルミロール300にエッチングされるスリット部35は、以下に示す条件を満たすことが望ましい。
【0050】
図9に示す寸法Aは、スリット部35の縦方向の長さを示す。また、寸法Bは、スリット部35が配置される間隔を示す。寸法Cは、スリット部35の横方向の長さを示す。寸法Xは、RFIDラベル100の縦方向(すなわち、アルミロール300の送り方向と同じ方向)の長さを示す。寸法Yは、インレットの配置間隔(すなわち、RFIDラベル100が配置される間隔)を示す。寸法Zは、RFIDラベル100の横方向の長さを示す。
【0051】
上記寸法の関係において、「2A+B ≦ X」(以下、式(1)と称する)を満たす場合、アルミロール300とインレットの送りのずれが生じても、インレットに対して、確実にスリット部35が少なくとも1つ含まれることになる。なお、RFIDラベル100には、複数のスリット部35が含まれてもよい。すなわち、アルミロール300には、式(1)を満たす条件で、スリット部35が設けられる。
【0052】
以上のように、RFIDラベル100に空隙領域を設ける工程では、RFIDラベル100の裏面層における縦幅の長さを超えない距離ごとに、少なくとも1つのスリット部35が含まれるようにアルミロール300にスリット部35を設けることが望ましい。
【0053】
なお、スリット部35におけるスリットごとの間隔(図3に示したスリット間隔L1)について、製造上可能である寸法が下限となるが、その下限はおよそ0.15mmほどである。また、上限は、RFIDラベル100と空隙との面積比によって定まる。
【0054】
上述のように、RFIDラベル100に空隙が設けられる面積が大きいほど、電波を通しやすくなるため、エンコード性能は高まる。一方で、RFIDラベル100に空隙が設けられる面積が大きいほど、金属層のメリットが得られにくくなる(ラベルの貼付対象の金属の影響を受けやすくなる)ため、ラベル通信性能は低くなる。すなわち、RFIDラベル100に対する空隙の面積比に応じて、エンコード性能とラベル通信性能とがトレードオフの関係になるといえる。
【0055】
本開示における構成では、実測上、空隙の面積が、RFIDラベル100(すなわち金属層)の面積のうち2割を超えない面積である場合に、両者の性能のバランスが良くなることが観測された。より具体的には、空隙の面積が、RFIDラベル100との面積比で1~20%を占める場合に、両者の性能のバランスが良くなる。すなわち、面積比が1%よりも低くなると、RFIDラベル100のエンコード性能が低下する。また、面積比が20%よりも大きくなると、RFIDラベル100のラベル通信性能が低下する。
【0056】
上記の条件を満たすためには、例えば、「A×C×(スリットのピッチ数)/X×Z = 1~20%」(以下、式(2)とする)であることが望ましい。「A×C×(スリットのピッチ数)」とは、すなわち空隙の面積である。また、「X×Z」とは、すなわちRFIDラベル100の面積である。すなわち、個々のスリット部35やスリットの大きさは、式(2)を満たす条件で定められる。
【0057】
上記で示した条件を満たす一例を挙げる。例えば、RFIDラベル100の面積が「50mm×80mm=4000mm」である場合で、スリット部の面積が「20mm×50mm=1000mm」であり、スリット間隔「0.5mm」の場合、面積比は、「(1000×0.5)/4000 = 12.5%」となる。この場合、RFIDラベル100は、空隙に関する条件を満たすので、適切な性能を発揮する。
【0058】
一方、1つのスリット(空隙)の面積を「6mm×6mm=36mm」とすると、面積比は、「36/4000 = 0.9%」となる。この場合、RFIDラベル100は、空隙の面積が条件よりも少なく、エンコード性能が低下する。また、1つのスリットの面積を「5mm×40mm=200mm」とし、そのスリットを5つ設けるとすると、面積比は、「1000/4000 = 25%」となる。この場合、RFIDラベル100は、空隙の面積が条件よりも大きく、ラベル通信性能が低下する。
【0059】
次に、スリット部35の横方向の配置について説明する。上述のように、スリット部35は、RFIDラベル100の中央縦列に配置されることが望ましい。本開示における構成では、実測上、図4に示した中央縦列領域50は、RFIDラベル100の中心からおよそRFIDラベル100の横方向の3割以内(すなわち、中央縦列領域50の横方向が「0.3Z」以内)と規定すると、性能の低下がみられなかった。よって、RFIDラベル100の裏面層における中央縦列を基準の中心線(図9に示す点線)とした場合、スリット部35の中心が、この基準を含む裏面層の横幅長の3割を超えない範囲内に収まるよう位置すればよい。かかる条件を満たす場合、スリット部35の中心は、図4に示した中央縦列領域50に収まることになる。なお、上記の中央縦列の範囲は、RFIDラベル100に搭載されるアンテナの性能等に応じて、適宜、変更されてもよい。
【0060】
このように、実施形態に係る製造方法では、上記した各条件を満たすように、RFIDラベル100に空隙を設ける。これにより、かかる条件下で製造されたRFIDラベル100は、エンコード性能とラベル通信性能のバランスのとれた、適切な運用が期待できる。
【0061】
(2.実施形態の変形例)
(2-1.RFIDラベル)
上記実施形態では、RFIDに関する媒体として、RFIDラベルを例に挙げた。一般にRFIDラベルとは、剥離紙や粘着層が付いており、対象となる商品等に貼付する態様のものをいう。しかし、実施形態に係るRFIDラベルは、剥離紙を有するラベルに限らず、製造後に粘着剤を塗布して商品に貼付する態様や、治具等を用いて対象に装着されるRFIDタグ等、剥離紙を有しない態様の媒体を含んでもよい。また、実施形態に係るRFIDラベルの製造方法は、上記のような剥離紙を有しない態様の媒体にも応用可能である。
【0062】
(2-2.ラベルプリンタ)
上記実施形態では、RFIDラベルへのエンコードを裏面から実行するラベルプリンタ200を例に挙げた。しかし、ラベルプリンタは、エンコードを裏面から実行するものに限られず、エンコードを表面から実行する態様であってもよい。
【0063】
(2-3.寸法)
上記実施形態では、実測に基づいて、RFIDラベル100に設ける空隙の大きさ(面積比)を説明した。しかし、実施形態で示した数値は一例であり、例示した値に限られなくてもよい。すなわち、RFIDラベル100は、エンコード性能およびラベル通信性能を満たす値が観測されるのであれば、実施形態で説明した条件と比較して、より大きい、もしくは、より小さい面積の空隙を有していてもよい。
【0064】
(2-4.空隙)
上記実施形態では、アルミロール300に所定間隔でスリット部35が設けられる例を示した。しかし、空隙の配置は必ずしも例示したものに限らず、例えば、アルミロール300の中央縦列に一定間隔で継続してスリットを設けるような態様が採用されてもよい。この場合、スリットは、例えばピッチ間隔の調整等により、図9で示した面積比の条件を満たすように配置される。
【0065】
(3.その他の実施形態)
上述した実施形態に係る処理は、上記実施形態以外にも種々の異なる形態にて実施されてよい。
【0066】
例えば、上記実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、各図に示した各種情報は、図示した情報に限られない。
【0067】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0068】
また、上述してきた実施形態及び変形例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0069】
また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、他の効果があってもよい。
【0070】
(4.本開示に係るRFIDラベルの効果)
上述してきたように、本開示に係るRFIDラベル(実施形態ではRFIDラベル100)は、表面層(実施形態では表面層10)と、アンテナ層(実施形態ではアンテナ層20)と、裏面層(実施形態では裏面層30)とを有する。裏面層は、金属製のフィルムを含み、かつ、アンテナ層に設けられるアンテナの指向性に応じて特定される位置に配置される空隙であって、RFIDラベルにおける裏面層を分断することのない空隙を有する。
【0071】
このように、本開示に係るRFIDラベルは、金属層を含むとともに、当該金属層に空隙を設けることで、ラベルプリンタによるエンコードに支障をきたすことなく、通信性能や高い生産性(ラベルプリンタによる大量生産)を実現することができる。
【0072】
また、空隙は、裏面層の面積のうち2割を超えない面積を有する。また、空隙は、RFIDラベルの裏面層における中央縦列を基準の中心線として、当該基準を含む裏面層の横幅長の3割を超えない範囲内に、当該空隙の中心位置が収まるよう位置する。
【0073】
このように、本開示に係るRFIDラベルは、空隙の範囲を規定することで、通信性能とエンコード性能の両者をバランスよく備えることができる。
【0074】
また、本開示に係るRFIDラベルの製造方法は、裏面層を構成する金属製のフィルムに、所定距離ごとに空隙領域(実施形態ではスリット部35)を設ける工程と、空隙領域に含まれる空隙が、1つのRFIDラベルにおける裏面層の面積のうち2割を超えない面積となるよう、アンテナ層と裏面層とを接着する工程と、を有する。また、空隙領域は、スリット状もしくはホール状(パンチホール等)の空隙を複数有する。また、空隙領域を設ける工程は、RFIDラベルの裏面層における縦幅の長さを超えない距離ごとに、少なくとも1つの空隙領域が含まれるように、金属製のフィルムに空隙領域を設ける。
【0075】
このように、本開示に係る製造方法は、スリット部等の空隙領域を裏面層に設ける際の寸法を規定することで、通信性能とエンコード性能の両者をバランスよく備えたRFIDラベルを製造することができる。
【符号の説明】
【0076】
10 表面層
20 アンテナ層
30 裏面層
35 スリット部
100 RFIDラベル
200 ラベルプリンタ
300 アルミロール
図1
図2
図3
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図9