(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014401
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】内燃機関の冷却システム
(51)【国際特許分類】
F01P 7/16 20060101AFI20240125BHJP
F02M 26/28 20160101ALI20240125BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20240125BHJP
B60W 10/30 20060101ALI20240125BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20240125BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20240125BHJP
【FI】
F01P7/16 503
F02M26/28 ZHV
F01P7/16 504Z
F01P7/16 505B
B60K6/442
B60W10/30 900
B60W20/00
B60L50/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117195
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】澤田 徹
【テーマコード(参考)】
3D202
3G062
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202BB43
3D202CC41
3D202DD00
3D202DD19
3D202DD22
3D202EE00
3G062CA08
3G062GA08
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125BD17
5H125CA02
(57)【要約】
【課題】内燃機関を効率的に冷却できる内燃機関の冷却システムを提供する。
【解決手段】内燃機関の冷却システムは、内燃機関を冷却する冷却水が循環する冷却回路と、前記冷却回路に前記冷却水を循環させる電動ポンプと、前記冷却回路に設けられた複数のコンポーネントと、前記冷却水が各前記コンポーネントをバイパスするように、各前記コンポーネントに対応して設けられた複数のバイパス回路と、前記冷却水の流通を前記コンポーネントと前記バイパス回路とのいずれか一方に切り換える制御弁と、前記制御弁の開閉を制御するとともに、前記電動ポンプの出力を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記コンポーネントに前記冷却水を流通させる場合に、前記冷却水を流通させる前記コンポーネントの種別に基づいて前記電動ポンプの出力を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を冷却する冷却水が循環する冷却回路と、
前記冷却回路に前記冷却水を循環させる電動ポンプと、
前記冷却回路に設けられた複数のコンポーネントと、
前記冷却水が各前記コンポーネントをバイパスするように、各前記コンポーネントに対応して設けられた複数のバイパス回路と、
前記冷却水の流通を前記コンポーネントと前記バイパス回路とのいずれか一方に切り換える制御弁と、
前記制御弁の開閉を制御するとともに、前記電動ポンプの出力を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記コンポーネントに前記冷却水を流通させる場合に、前記冷却水を流通させる前記コンポーネントの種別に基づいて前記電動ポンプの出力を制御する、
内燃機関の冷却システム。
【請求項2】
前記コンポーネントが、前記内燃機関の本体に接する種別である場合、
前記内燃機関の本体の温度が予め設定された所定温度以上のときは、前記内燃機関の温度が前記所定温度未満のときに比べ、前記電動ポンプの出力が大きくなるように前記電動ポンプの出力を制御する、
請求項1に記載の内燃機関の冷却システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記冷却水を流通させる前記コンポーネントの圧力損失が予め定められた圧力損失を超える場合に、前記電動ポンプの出力が予め定められた出力量だけ大きくなるように、前記電動ポンプの出力を制御する、
請求項1に記載の内燃機関の冷却システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記冷却水を流通させる前記コンポーネントに滞留する前記冷却水の容量が予め定められた容量を超える場合に、前記電動ポンプの出力が予め定められた出力量だけ大きくなるように、前記電動ポンプの出力を制御する、
請求項1に記載の内燃機関の冷却システム。
【請求項5】
前記複数のコンポーネントは、再循環する排気ガスを冷却するためのEGRクーラを含み、
前記制御装置は、前記冷却水が前記EGRクーラをバイパスする場合であっても、内燃機関の高負荷運転時には、前記冷却水が前記EGRクーラを流通する場合の前記電動ポンプの出力を維持するように、前記電動ポンプの出力を制御する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の内燃機関の冷却システム。
【請求項6】
前記複数のコンポーネントは、再循環する排気ガスを冷却するためのEGRクーラを含み、
内燃機関で発電された電力が供給された走行用モータが駆動輪を駆動するシリーズ走行モード、又は前記内燃機関及び前記走行用モータが駆動輪を駆動するパラレル走行モードを選択可能なハイブリッド車両に搭載され、
前記冷却水が前記EGRクーラをバイパスする場合であっても、前記パラレル走行モードが選択されている場合には、前記冷却水が前記EGRクーラを流通する場合の前記電動ポンプの出力を維持するように、前記電動ポンプの出力を制御する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の内燃機関の冷却システム。
【請求項7】
前記制御弁は、前記コンポーネント及び前記バイパス回路への前記冷却水の流量を制御する流量制御弁であって、
前記制御装置は、前記複数のコンポーネントに予め設定された係数と前記流量制御弁の開度とを乗じた値の総和に基づいて前記電動ポンプの出力を決定する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の内燃機関の冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関の冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、冷却水通路と、冷却水通路内において冷却水を循環させるポンプと、冷却水通路内において循環する冷却水を冷却するラジエータと、冷却水通路の経路上に配置されたバルブと、バルブを制御する制御装置を備えた内燃機関の冷却システムが開示されている。冷却水通路は、ポンプとバルブとの間に設けられた通路と、バルブとラジエータとを接続する通路と、ラジエータとポンプとを接続する通路と、ラジエータを迂回してバルブとポンプとを接続する通路とを含んでいる。
【0003】
特許文献1に開示されたポンプは、機械式のポンプであり、内燃機関の出力軸であるクランクシャフトに連結され、そのクランクシャフトの回転駆動力によって駆動される。したがって、機械式のポンプでは、内燃機関(クランクシャフト)の回転によって出力が変動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、電動ポンプでは内燃機関の回転と関係なく出力を得ることができるが、出力を一定にすると、内燃機関を効率的に冷却できない。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、内燃機関を効率的に冷却できる内燃機関の冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る内燃機関の冷却システムは、内燃機関を冷却する冷却水が循環する冷却回路と、前記冷却回路に前記冷却水を循環させる電動ポンプと、前記冷却回路に設けられた複数のコンポーネントと、前記冷却水が各前記コンポーネントをバイパスするように、各前記コンポーネントに対応して設けられた複数のバイパス回路と、前記冷却水の流通を前記コンポーネントと前記バイパス回路とのいずれか一方に切り換える制御弁と、前記制御弁の開閉を制御するとともに、前記電動ポンプの出力を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記コンポーネントに前記冷却水を流通させる場合に、前記冷却水を流通させる前記コンポーネントの種別に基づいて前記電動ポンプの出力を制御する。
【0008】
上記(1)の構成によれば、コンポーネントに冷却水を流通させる場合に、冷却水を流通させるコンポーネントの種別に基づいて電動ポンプの出力を制御するので、内燃機関を効率的に冷却できる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、前記コンポーネントが、前記内燃機関の本体に接する種別である場合、前記内燃機関の本体の温度が予め設定された所定温度以上のときは、前記内燃機関の温度が前記所定温度未満のときに比べ、前記電動ポンプの出力が大きくなるように前記電動ポンプの出力を制御する。
【0010】
上記(2)の構成によれば、コンポーネントが、内燃機関の本体に接する種別である場合、内燃機関の本体の温度が予め設定された所定温度以上のときは、内燃機関の温度が所定温度未満のときに比べ、電動ポンプの出力が大きくなるので、コンポーネントを効率的に冷却できる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、前記制御装置は、前記冷却水を流通させる前記コンポーネントの圧力損失が予め定められた圧力損失(基準値)を超える場合に、前記電動ポンプの出力が予め定められた出力量だけ大きくなるように、前記電動ポンプの出力を制御する。
【0012】
上記(3)の構成によれば、冷却水を流通させるコンポーネントの圧力損失が予め定められた圧力損失を超える場合に、電動ポンプの出力が予め定められた出力量だけ大きくなるので、内燃機関を効率的に冷却できる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、前記制御装置は、前記冷却水を流通させる前記コンポーネントに滞留する前記冷却水の容量が予め定められた容量(基準値)を超える場合に、前記電動ポンプの出力が予め定められた出力量だけ大きくなるように、前記電動ポンプの出力を制御する。
【0014】
上記(4)の構成によれば、冷却水を流通させるコンポーネントに滞留する冷却水の容量が予め定められた容量を超える場合に、電動ポンプの出力が予め定められた出力量だけ大きくなるので、内燃機関を効率的に冷却できる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)から(4)のいずれか一つの構成において、前記複数のコンポーネントは、再循環する排気ガスを冷却するためのEGRクーラを含み、前記制御装置は、前記冷却水が前記EGRクーラをバイパスする場合であっても、内燃機関の高負荷運転時には、前記冷却水が前記EGRクーラを流通する場合の前記電動ポンプの出力を維持するように、前記電動ポンプの出力を制御する。
【0016】
上記(5)の構成によれば、冷却水がEGRクーラをバイパスする場合であっても、内燃機関の高負荷運転時には、冷却水がEGRクーラを流通する場合の電動ポンプの出力を維持するので、内燃機関の冷却能力を高い状態に維持できる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)から(4)のいずれか一つの構成において、前記少なくとも一つのコンポーネントは、再循環する排気ガスを冷却するためのEGRクーラであって、内燃機関で発電された電力が供給された走行用モータが駆動輪を駆動するシリーズ走行モード、又は前記内燃機関及び前記走行用モータが駆動輪を駆動するパラレル走行モードを選択可能なハイブリッド車両に搭載され、前記冷却水が前記EGRクーラをバイパスする場合であっても、前記パラレル走行モードが選択されている場合には、前記冷却水が前記EGRクーラを流通する場合の前記電動ポンプの出力を維持するように、前記電動ポンプの出力を制御する。
【0018】
上記(6)の構成によれば、冷却水がEGRクーラをバイパスする場合であっても、パラレル走行モードが選択されている場合には、冷却水がEGRクーラを流通する場合の電動ポンプの出力を維持するので、内燃機関の冷却能力を高い状態に維持できる。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)から(4)のいずれか一つの構成において、前記制御弁は、前記コンポーネント及び前記バイパス回路への前記冷却水の流量を制御する流量制御弁であって、前記制御装置は、前記複数のコンポーネントに予め設定された係数と前記流量制御弁の開度とを乗じた値の総和に基づいて前記電動ポンプの出力を決定する。
【0020】
上記(7)の構成によれば、複数のコンポーネントに予め設定された係数と流量制御弁の開度とを乗じた値の総和に基づいて電動ポンプの出力を決定するので、内燃機関を効率的に冷却できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、内燃機関を効率的に冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態1に係る内燃機関が搭載された車両を示す模式図である。
【
図2】
図1に示した内燃機関の冷却システムを示すブロック図である。
【
図3】実施形態2に係る内燃機関の冷却システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0024】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る内燃機関が搭載された車両を示す模式図である。
図2は、
図1に示した内燃機関の冷却システムを示すブロック図である。
【0025】
図1に示すように、実施形態1に係る内燃機関10が搭載される車両1は、内燃機関10及び走行用モータ12,14を動力源とするハイブリッド車両であるが、これに限定されるものではなく、内燃機関10のみを動力源とするエンジン車両であってもよい。内燃機関10は、シリンダブロック32及びシリンダヘッド34を有する。車両1は、内燃機関10によって駆動される発電機16と、発電機16で発電された電気を充電する走行用バッテリ18とを備えている。かかる車両1は、発電機16から供給された電気によって走行用モータ12,14が駆動輪20,22を駆動するシリーズ走行モード、又は内燃機関10及び走行用モータ12,14が駆動輪20を駆動するパラレル走行モードの選択が可能である。
図1に示すハイブリッド車両1は、四輪駆動のハイブリッド車両であるが、これに限定されるものではなく、二輪駆動のハイブリッド車両であってもよい。
【0026】
図2に示すように、実施形態1に係る内燃機関10は、内燃機関10を冷却するための冷却システム24Aを備えている。冷却システム24Aは、内燃機関10を冷却する冷却水が循環する冷却回路26と、冷却回路26に冷却水を循環させる電動ポンプ28と、冷却回路26に設けられた複数のコンポーネント30と、を備えている。複数のコンポーネント30は、例えば、内燃機関10の一部であるシリンダブロック32や、ラジエータ36であり、これらは冷却回路26に設けられている。電動ポンプ28は、補機バッテリ(図示せず)から供給される電気によって駆動されるポンプであって、内燃機関10の運転と別個独立して運転可能である。
【0027】
また、実施形態1に係る内燃機関10の冷却システム24Aは、冷却水が各コンポーネント30をバイパスするように、各コンポーネント30に対応して設けられた複数のバイパス回路38と、冷却水の流通をコンポーネント30とバイパス回路38のいずれか一方に切り替える制御弁40と、を備えている。バイパス回路38は、例えば、ラジエータ36をバイパスするバイパス回路42、シリンダブロック32をバイパスするバイパス回路44であり、冷却水がラジエータ36をバイパスする場合には冷却水がバイパス回路42を流れ、冷却水がシリンダブロック32をバイパスする場合には冷却水がバイパス回路44を流れる。なお、バイパス回路44はシリンダヘッド34を含み、冷却水がシリンダブロック32に流れる場合(後述する制御弁48が全開の場合)にも、冷却水はシリンダヘッド34に流れるようになっている。尚、冷却水がラジエータ36やシリンダブロック32をバイパスする場合に冷却水の全量がバイパス回路42やシリンダヘッド34を流れるものとしてもよいが、一部がバイパス回路42やシリンダヘッド34を流れるものとしてもよい。
【0028】
ラジエータ36をバイパスするバイパス回路42に対して設けられる制御弁46は、例えば、ラジエータ36が接続される回路とラジエータ36をバイパスするバイパス回路42との分岐点に設けられる。シリンダブロック32をバイパスするバイパス回路44に対して設けられる制御弁48は、例えば、シリンダブロック32の下流又は上流に設けられる。
【0029】
また、実施形態1に係る内燃機関10の冷却システム24Aは、制御弁40の開閉を制御するとともに、電動ポンプ28の出力を制御する制御装置50を備えている。制御装置50は、演算装置、命令や情報を格納するレジスタ、及び周辺回路等から構成されるプロセッサ(図示せず)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ(図示せず)、及び入力インタフェース(図示せず)によって構成される。制御装置50は、コンポーネント30に冷却水を流通させる場合に、冷却水を流通させるコンポーネント30の種別に基づいて電動ポンプ28の出力を制御する。例えば、冷却水がバイパス可能なコンポーネント30の種別には、ラジエータ36、及びシリンダブロック32があり、制御装置50は、これらの冷却水がバイパス可能なコンポーネント30に冷却水を流通させる場合に、冷却水が流通されるコンポーネント30の種別に基づいて電動ポンプ28の出力を制御する。
【0030】
例えば、制御装置50は、冷却水を流通させるコンポーネント30の圧力損失が予め定められた圧力損失(基準値)を超える場合に、電動ポンプ28の出力が予め定められた出力量だけ大きくなるように、電動ポンプ28の出力を制御する。コンポーネント30の圧力損失は、予め定められた条件によって計測される。予め定められた条件とは、例えば、冷却水の温度が一定の温度であることである。圧力損失ΔPは、下記の数式1に示すように、管摩擦係数λ、配管長さl、配管直径d、流体密度ρ、及び平均流速uによって変動するが、冷却水の温度が変化すると例えば流体密度ρが変化するため、圧力損失ΔPも変化する。よって、予め定められた条件下で圧力損失ΔPを比較する必要がある。
【0031】
【0032】
例えば、制御装置50は、冷却水を流通させるコンポーネント30に滞留する冷却水の容量が予め定められた容量(基準値)を超える場合に、電動ポンプ28の出力が予め定められた出力量だけ大きくなるように、電動ポンプ28の出力を制御する。コンポーネント30に滞留する冷却水の容量は、電動ポンプ28の運転を停止した場合にコンポーネント30に残存する冷却水の水量であり、通常、コンポーネント30の容量として認識される。予め定められた容量とは、例えばコンポーネント30が熱交換器であるか否かを判断できる容量である。熱交換器は、表面積を大きくすることで冷却水とその他の熱媒体との熱交換を促進するため、冷却水の容量が大きくなる。また、コンポーネント30が熱交換器である場合に、予め定められた容量を例えば熱交換器が大型のものであるか否かを判断できる容量としてもよい。大型の熱交換器とは例えばラジエータ36であり、大型ではない熱交換器とは例えばオイルクーラやEGRクーラである。
【0033】
制御弁40は、コンポーネント30及びバイパス回路38への冷却水の流量を制御する流量制御弁であってもよい。例えば、制御弁40の開度を変更することで、コンポーネント30やバイパス回路38への流路面積を変更する。この場合に、制御装置50は、コンポーネント30ごとに予め設定された流量と制御弁40の開度とを乗じた値の総和に基づいて電動ポンプ28の出力を決定する。
【0034】
具体的には、冷却水がラジエータ36とシリンダブロック32をバイパスするときの電動ポンプの出力(流量)をVBASEとし、制御弁48の開度をK1、制御弁46の開度をK2、予め設定された流量をVC/B、シリンダブロック32に対して予め設定された流量をVC/B、ラジエータ36に対して予め設定された流量をVRADとすると、電動ポンプ28の出力VW/Pは、下記の数式2で表すことができる。
【0035】
【0036】
これを電動ポンプ28の回転数NEに置き換えると、下記の数式3で表すことができる。
【0037】
【0038】
実施形態1に係る内燃機関10の冷却システム24Aによれば、コンポーネント30に冷却水を流通させる場合に、冷却水を流通させるコンポーネント30の種別に基づいて電動ポンプ28の出力を制御するので、内燃機関10を効率的に冷却できる。すなわち、冷却水がコンポーネント30に流通しない場合は、電動ポンプ28の出力を小さくすることで内燃機関10の過冷却を抑制するとともに、電動ポンプ28による電力消費を抑制することができる。
【0039】
例えば、冷却水を流通させるコンポーネント30の圧力損失が予め定められた圧力損失を超える場合に、電動ポンプ28の出力が予め定められた出力量だけ大きくなるので、内燃機関10を効率的に冷却できる。すなわち、冷却水を流通させるコンポーネント30の圧力損失が大きい場合は、その圧力損失に応じて電動ポンプ28の出力を大きくするため、内燃機関10及びコンポーネント30に十分な冷却水を供給することができる。一方、圧力損失が大きいコンポーネント30に冷却水を流通させない場合は、電動ポンプ28の出力を小さくするため、内燃機関10の過冷却を抑制するとともに、電動ポンプ28による電力消費を抑制することができる。
【0040】
例えば、冷却水を流通させるコンポーネント30に滞留する冷却水の容量が予め定められた容量を超える場合に、電動ポンプ28の出力が予め定められた出力量だけ大きくなるので、内燃機関10を効率的に冷却できる。すなわち、冷却水を流通させるコンポーネント30の容量が大きい場合は、そのコンポーネント30に冷却水を流通させない場合に比べその他の冷却回路に流通する冷却水の流量が減少するため、コンポーネント30の容量に応じて電動ポンプ28の出力を大きくする。一方、容量が大きいコンポーネント30に冷却水を流通させない場合は、電動ポンプ28の出力を小さくするため、内燃機関10の過冷却を抑制するとともに、電動ポンプ28による電力消費を抑制することができる。
【0041】
例えば、制御弁40が冷却水の流量を制御する流量制御弁の場合には、複数のコンポーネント30に予め設定された係数と制御弁40の開度とを乗じた値の総和に基づいて電動ポンプ28の出力を決定するので、内燃機関10を効率的に冷却できる。すなわち、制御弁40の開度、言い替えるとコンポーネント30に流通する冷却水の流量に応じて電動ポンプ28の出力を決定する。このとき、各コンポーネント30に応じた必要流量(係数)も考慮するので、内燃機関10を効率的に冷却できる。
【0042】
[実施形態2]
図3は、実施形態2に係る内燃機関の冷却システムを示すブロック図である。尚、実施形態1に係る内燃機関10の冷却システム24Aと同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0043】
図3に示すように、実施形態2に係る内燃機関10の冷却システム24Bでは、複数のコンポーネント30は、実施形態1に加え、例えば、内燃機関10の潤滑に用いられるオイルを冷却するためのオイルクーラ52、及び再循環する排気ガスを冷却するためのEGRクーラ54を含み、これらは冷却回路26に設けられている。また、実施形態2に係る内燃機関の冷却システム24Bでは、冷却水がEGRクーラ54をバイパスするバイパス回路56と、冷却水の流通をEGRクーラ54とバイパス回路56のいずれか一方に切り替える制御弁58と、を備えている。冷却水がEGRクーラ54をバイパスする場合には冷却水がバイパス回路56を流れる。尚、冷却水がEGRクーラ54をバイパスする場合に冷却水の全量がバイパス回路56を流れるものとしてもよいが、一部がバイパス回路56を流れるものとしてもよい。
【0044】
バイパス回路56に対して設けられる制御弁58は、例えば、EGRクーラ54に接続される回路とEGRクーラ54をバイパスするバイパス回路56の合流点に設けられる。
【0045】
実施形態2に係る内燃機関10の冷却システム24Bでは、制御装置50は、冷却水がEGRクーラ54をバイパスする場合であっても、内燃機関10の高負荷運転時には、冷却水がEGRクーラ54を流通する場合の電動ポンプ28の出力を維持するように、電動ポンプ28の出力を制御する。すなわち、内燃機関10の低負荷運転時には、冷却水がEGRクーラ54をバイパスする場合は冷却水がEGRクーラ54をバイパスしない場合に比べ電動ポンプ28の出力を小さくする。一方、内燃機関10の高負荷運転時には、冷却水がEGRクーラ54をバイパスする場合でも電動ポンプ28の出力を冷却水がEGRクーラ54をバイパスしない場合と同様とする。内燃機関10の高負荷運転時は、例えば、車両の速度が予め定められた速度を超える場合、内燃機関10の回転速度が予め定められた回転速度を超える場合、である。したがって、例えば、車両が高速道路を走行している時や車両が登坂車線を走行している時に高負荷運転時となる。
【0046】
例えば、制御装置50は、コンポーネント30が内燃機関10の本体に接する種別である場合、内燃機関10の本体の温度が予め設定された所定温度以上のときは、内燃機関10の温度が所定温度未満のときに比べ、電動ポンプ28の出力が大きくなるように、電動ポンプ28の出力を制御する。「内燃機関10の本体」は、シリンダブロック32やシリンダヘッド34である。「内燃機関10の本体に接する種別であるコンポーネント30」は、例えば、シリンダヘッド34に固定されるシリンダブロック32や、シリンダブロック32に固定されるオイルクーラ52が含まれる。なお、「内燃機関10の本体に接する種別であるコンポーネント30」は、内燃機関10の本体に固定されるものに限らず、シリンダブロック32又はシリンダヘッド34に接するコンポーネント30も含まれる。
【0047】
例えば、制御装置50は、冷却水がEGRクーラ54をバイパスする場合であっても、パラレル走行モードが選択されている場合には、冷却水がEGRクーラ54を流通する場合の電動ポンプ28の出力を維持するように、電動ポンプ28の出力を制御する。本実施形態では、シリーズ走行モードでは、実施形態1と同様に冷却水が流通されるコンポーネント30の種別に基づいて電動ポンプ28の出力を制御する。一方、パラレル走行モードでは、一般的には冷却水が流通されるコンポーネント30の種別に基づいて電動ポンプ28の出力を制御するが、冷却水が流通されるコンポーネント30がEGRクーラ54である場合には、冷却水がEGRクーラ54を通過する場合と冷却水がEGRクーラ54をバイパスする場合とで電動ポンプ28の出力を変更しない。
【0048】
実施形態1と同様に、制御弁40が、コンポーネント30及びバイパス回路38への冷却水の流量を制御する流量制御弁である場合に、制御装置50は、コンポーネント30ごとに予め設定された流量と制御弁40の開度とを乗じた値の総和に基づいて電動ポンプ28の出力を決定する。本実施形態では、実施形態1に対しバイパス回路38が設けられたコンポーネント30としてEGRクーラ54が追加されている。よって、数式2に制御弁58の開度K3とEGRクーラ54に対して予め設定された流量VEGRの積算値を加算した値から電動ポンプ28の出力VW/Pを算出する。
【0049】
実施形態2に係る内燃機関10の冷却システム24Bによれば、冷却水がEGRクーラ54をバイパスする場合であっても、内燃機関10の高負荷運転時には、冷却水がEGRクーラ54を流通する場合の電動ポンプ28の出力を維持するので、内燃機関10の冷却能力を高い状態に維持できる。
【0050】
例えば、コンポーネント30が、内燃機関10の本体に接する種別である場合、内燃機関10の本体の温度が予め設定された所定温度以上のときは、内燃機関10の温度が所定温度未満のときに比べ、電動ポンプ28の出力が大きくなるので、コンポーネント30を効率的に冷却できる。内燃機関10の本体に接するコンポーネント30は、内燃機関10の熱の影響を受けるため、内燃機関10が高温の場合は電動ポンプ28の出力を大きくする。一方、内燃機関10が低温の場合は内燃機関10の本体に接するコンポーネント30であっても内燃機関10の熱の影響が小さいので、電動ポンプ28の出力を大きくする必要はない。
【0051】
例えば、冷却水がEGRクーラ54をバイパスする場合であっても、パラレル走行モードが選択されている場合には、冷却水がEGRクーラ54を流通する場合の電動ポンプ28の出力を維持するので、内燃機関10の冷却能力を高い状態に維持できる。パラレル走行モードは車両1の走行状態に応じて内燃機関10の出力が変化するが、シリーズ走行モード内燃機関10の出力がおおよそ一定であり、パラレル走行モードより内燃機関10の出力が小さくなることが多い。よって、パラレル走行モードが選択されている場合には、冷却水がEGRクーラ54をバイパスする場合であっても冷却水がEGRクーラ54を流通する場合の電動ポンプ28の出力を維持することで、パラレル走行モードの内燃機関10を十分に冷却する。
【符号の説明】
【0052】
1 車両
10 内燃機関
12,14 走行用モータ
16 発電機
18 走行用バッテリ
20,22 駆動輪
24 冷却システム
26 冷却回路
28 電動ポンプ
30 コンポーネント
32 シリンダブロック
34 シリンダヘッド
36 ラジエータ
38 バイパス回路
40 制御弁
42 ラジエータをバイパスするバイパス回路
44 シリンダブロックをバイパスするバイパス回路
46 ラジエータをバイパスするバイパス回路に対して設けられる制御弁
48 シリンダブロックをバイパスするバイパス回路に対して設けられる制御弁
50 制御装置
52 オイルクーラ
54 EGRクーラ
56 EGRクーラをバイパスするバイパス回路
58 EGRクーラをバイパスするバイパス回路に対して設けられる制御弁