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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144010
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】化粧シートおよび化粧部材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20241003BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20241003BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20241003BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20241003BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B7/023
B32B3/30
E04F13/07 B
E04F13/08 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148259
(22)【出願日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2023055640
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】新里 栄美
(72)【発明者】
【氏名】臼井 寛詠
【テーマコード(参考)】
2E110
4F100
【Fターム(参考)】
2E110AA57
2E110AB01
2E110AB02
2E110AB03
2E110AB04
2E110AB05
2E110AB22
2E110AB23
2E110BA04
2E110BB02
2E110BB04
2E110BB22
2E110BB32
2E110BB33
2E110BB38
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2E110GA04X
2E110GA05W
2E110GA42X
2E110GA43W
2E110GB11W
2E110GB11Z
2E110GB12W
2E110GB32X
2E110GB42W
2E110GB42X
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2E110GB44X
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2E110GB47X
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2E110GB48X
2E110GB49W
2E110GB52W
2E110GB52X
2E110GB53W
2E110GB54W
2E110GB54Z
2E110GB55Z
2E110GB62W
2E110GB62X
2E110GB62Z
2E110GB63X
4F100AA20C
4F100AA20D
4F100AA20H
4F100AA21B
4F100AB04E
4F100AB10E
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4F100AE01E
4F100AG00E
4F100AJ06B
4F100AK01E
4F100AK15E
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4F100AK25E
4F100AK51C
4F100AK51D
4F100AP00E
4F100AP01E
4F100AT00A
4F100BA04
4F100BA05
4F100CA02C
4F100CA02D
4F100CA13B
4F100CA23D
4F100DE01C
4F100DE01D
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4F100GB07
4F100HB00B
4F100HB21D
4F100HB31B
4F100HB31C
4F100HB31D
4F100HB35B
4F100JK09C
4F100JK13D
4F100JL10A
4F100JN21C
4F100JN21D
4F100JN26C
4F100JN26D
4F100YY00C
4F100YY00D
(57)【要約】      (修正有)
【課題】強い触感を有しつつ、本物感を有する化粧シートを提供する。
【解決手段】基材層1、意匠層2、保護層3、および、パターン状の盛上部4aを有する盛上層4を、厚さ方向において、この順に有する化粧シート10であって、上記保護層の60°グロス値は、上記盛上層の60°グロス値より小さく、上記盛上層の60°グロス値は、20以下であり、上記厚さ方向において、上記保護層の面積に対する上記盛上層の面積の割合は、10%以上であり、隣り合う上記盛上部の平均間隔は、1.6mm以上である、化粧シートとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、意匠層、保護層、および、パターン状の盛上部を有する盛上層を、厚さ方向において、この順に有する化粧シートであって、
前記保護層の60°グロス値は、前記盛上層の60°グロス値より小さく、
前記盛上層の60°グロス値は、20以下であり、
前記厚さ方向において、前記保護層の面積に対する前記盛上層の面積の割合は、10%以上であり、
隣り合う前記盛上部の平均間隔は、1.6mm以上である、化粧シート。
【請求項2】
前記保護層の60°グロス値は、3以下である、請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記盛上層の60°グロス値は、4以上である、請求項1に記載の化粧シート。
【請求項4】
隣り合う前記盛上部の平均間隔は、4.0mm以下である、請求項1に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記盛上層の平均厚さは、前記保護層の平均厚さに対して、2倍以上である、請求項1に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記盛上層の平均厚さは、15μm以上である、請求項1に記載の化粧シート。
【請求項7】
前記保護層の平均厚さは、5μm以上である、請求項1に記載の化粧シート。
【請求項8】
前記盛上部は、フィラーを含有する、請求項1に記載の化粧シート。
【請求項9】
前記フィラーは、無機粒子である、請求項8に記載の化粧シート。
【請求項10】
前記盛上部における前記無機粒子の含有量は、前記盛上部の樹脂成分100質量部に対して、2質量部以上、38質量部以下である、請求項9に記載の化粧シート。
【請求項11】
前記無機粒子の平均粒子径は、2μm以上、12μm以下である、請求項9に記載の化粧シート。
【請求項12】
前記フィラーは、有機粒子である、請求項8に記載の化粧シート。
【請求項13】
前記盛上部における前記有機粒子の含有量は、前記盛上部の樹脂成分100質量部に対して、7質量部以上、38質量部以下である、請求項12に記載の化粧シート。
【請求項14】
前記有機粒子の平均粒子径は、20μm以上、60μm以下である、請求項12に記載の化粧シート。
【請求項15】
基体と、
請求項1から請求項14までのいずれかの請求項に記載の化粧シートと、
を有する、化粧部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化粧シートおよび化粧部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば建材、家具等の表面に、意匠性を付与するため、基体および化粧シートを有する化粧部材が用いられる。
【0003】
化粧シートは、例えば、基材層上に、意匠層、表面保護層を有する。さらに、触感を得るために、化粧シートの表面に盛上部を設けることが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-87158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、強いザラザラとした触感を有する化粧シートが求められている。盛上部に粒子径の大きいビーズを含ませることにより、強い触感を付与することが考えられる。一方で、盛上部に粒子径の大きいビーズを含ませると、盛上部が高艶となり、本物感に欠ける不自然な意匠となる場合がある。そのため、盛上部の触感を高めつつ、本物感を有する化粧シートが求められている。
【0006】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、強い触感を有しつつ、本物感を有する化粧シートを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示においては、基材層、意匠層、保護層、および、パターン状の盛上部を有する盛上層を、厚さ方向において、この順に有する化粧シートであって、上記保護層の60°グロス値は、上記盛上層の60°グロス値より小さく、上記盛上層の60°グロス値は、20以下であり、上記厚さ方向において、上記保護層の面積に対する上記盛上層の面積の割合は、10%以上であり、隣り合う上記盛上部の平均間隔は、1.6mm以上である、化粧シートを提供する。
【0008】
本開示においては、基体と、上述の化粧シートと、を有する、化粧部材を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示においては、強い触感を有しつつ、本物感を有する化粧シートを提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示における化粧シートを例示する概略断面図である。
図2】本開示における化粧シートを例示する概略上面図である。
図3図2に示す化粧シートの点線枠P内の盛上部4aを拡大した概略上面図である。
図4】本開示における化粧シートを例示する概略断面図である。
図5】本開示における化粧部材を例示する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
下記に、図面等を参照しながら、実施の形態を説明する。ただし、本開示は、多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定されない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状について模式的に表す場合があるが、これはあくまで一例であり、限定して解釈されない。
【0012】
本明細書において、ある部材に、他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限り、ある部材に接するように、直上あるいは直下に、他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合と、の両方を含む。また、本明細書において、ある部材の面に、他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面に」と表記する場合、特に断りの無い限り、ある部材に接するように、直上あるいは直下に、他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合と、の両方を含む。
【0013】
上述したように、盛上部に粒子径の大きいビーズを含ませることにより、強い触感が得られるものの、盛上部の艶が高く、例えば、天然木材等の自然物の外観を表現することが困難である。
【0014】
A.化粧シート
以下、本開示における化粧シートについて、詳細に説明する。図1は、本開示における化粧シートを例示する概略断面図である。図1に示す化粧シート10は、基材層1、意匠層2、保護層3、および、パターン状の盛上部4aを有する盛上層4を、厚さ方向Dにおいて、この順に有する。本開示においては、保護層3の60°グロス値は、盛上層4の60°グロス値より小さく、盛上層4の60°グロス値は、20以下であり、厚さ方向Dにおいて、保護層3の面積に対する盛上層4の面積の割合は、10%以上であり、隣り合う盛上部4aの平均間隔は、1.6mm以上である。
【0015】
本開示によれば、隣り合う盛上部4aの平均間隔が所定の値以上であり、かつ、保護層3の面積に対する盛上層4の面積の割合が所定の値以上であることにより、強い凹凸の触感が得られる。また、保護層3の60°グロス値が、盛上層4の60°グロス値より小さく、盛上層4の60°グロス値が所定の値以下であることにより、グロスマット感を維持しつつ盛上層の艶感を低減することができ、少ない層構成で、自然で本物感のある意匠となる。
【0016】
1.盛上層
図1に示すように、本開示における盛上層4は、保護層3の意匠層2とは反対側の面に配置され、パターン状の盛上部4aを有する。盛上層4は、保護層3上に設けられた多数の盛上部4aから形成されることにより、化粧シートの意匠性が高められる。
【0017】
(1)60°グロス
盛上層の60°グロス値は、保護層の60°グロス値より大きく、かつ、20以下である。盛上層の60°グロス値は、15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。60°グロス値が上記範囲であると、盛上層の艶感を低減することができ、自然で本物感のある意匠が得られる。一方、60°グロス値は、例えば、4以上であり、6以上であってもよい。60°グロス値が上記範囲であると、盛上層が低艶となり過ぎることを抑制でき、保護層との間で優れたグロスマット感を維持することができる。
【0018】
本開示において、盛上層の60°グロス値とは、以下の方法により測定された値である。
化粧シートを盛上層側が上になるように置き、盛上層側から、グロスメーターを用いて、JIS Z 8741:1997の方法3に準拠して盛上層の60°鏡面光沢度を測定する。盛上層の60°グロス値は、任意の10箇所の盛上部における測定値の平均値である。各測定箇所においては、グロスメーターの測定部位の中心に盛上部があり、かつ、測定部位の面積の50%以上が盛上部と重複するようにして測定する。グロスメーターの測定部位の中心とは、グロスメーターの光源からの光が入射する入射領域の中心のことをいう。
【0019】
盛上層の60°グロス値は、後述するフィラーの種類、平均粒子径、含有量等によって調整することができる。例えば、フィラーとして、無機粒子を用いることによって、グロス値が下がる傾向にある。無機粒子の平均粒子径を大きくすることによって、グロス値が下がる傾向にある。無機粒子の含有量を多くすることによって、グロス値が下がる傾向にある。有機粒子は、無機粒子に比べて艶消し効果は弱いものの、有機粒子の含有量を多くすることにより、グロス値が低くなる傾向がある。また、有機粒子は、一般的に、無機粒子と比較して平均粒子径が大きいが、平均粒子径を小さくすることによって、60°グロス値が低くなる傾向がある。
【0020】
(2)盛上部
盛上層は、パターン状の盛上部4aを有する。盛上部4aは、意匠層2の柄と同調するように配置されていることが好ましい。「同調」とは、対象となる2つのパターンの形状および位置が概ね一致することをいう。具体的には、盛上部4aと、意匠層2の絵柄を構成する少なくとも一部のパターンとの、形状および位置が、リアル感および高級感を損ねない程度に一致することをいう。
【0021】
図1においては、意匠層2が絵柄層2yを有し、盛上部4aが絵柄層2yと同調している。盛上部4aを意匠層の柄と同調させるように配置することで、盛上部4aと意匠層の柄の相乗効果により、化粧シートの意匠性を向上することができる。例えば木目柄の場合、盛上部4aのパターンを、導管等の濃い柄に対して同調させることで、質感が向上する。例えば、化粧シートを平面視した際に、絵柄層の全面積を100とした際に、絵柄層と同調する盛上部4aの面積は、90以上であることが好ましく、95以上であることがより好ましく、97以上であることがさらに好ましく、99以上であることがよりさらに好ましい。一方、盛上部4aは、意匠層の柄と同調するように配置されていなくてもよい。
【0022】
本開示において、隣り合う盛上部4aの平均間隔は、通常、1.6mm以上であり、2.0mm以上であることが好ましく、2.3mm以上であることがより好ましい。隣り合う盛上部4aの平均間隔が上記範囲よりも小さいと、強い触感を得ることができない。一方、隣り合う盛上部4aの平均間隔は、例えば、4.0mm以下であり、3.0mm以下であってもよい。
【0023】
本開示において、隣り合う盛上部4aの平均間隔とは、隣り合う盛上部4aの上端部間の間隔W4を、化粧シートの断面画像から100か所測定し、最小値から10番目に小さい値までと、最大値から10番目に大きい値までと、を除いた80箇所の値の平均値とする。例えば、図1および図2において、隣り合う盛上部4aの平均間隔は、盛上部4aの長手方向D1に対する垂直方向D2における、隣り合う盛上部4aの平均間隔に該当する。特に、意匠層の柄が木目柄である場合、木目の導管が伸びている方向が、盛上部4aの長手方向に一致する。また、例えば、意匠層の柄が石目柄である場合等、盛上部4aが特定の長手方向を有さない場合には、特定の方向に限られない複数の任意の方向における、隣り合う盛上部4aの平均間隔に該当する。
【0024】
盛上部のD2方向における断面形状は、特に限定されず、略矩形形状、略多角形形状、略円形形状等が挙げられる。図4において、盛上部4aの断面形状は略矩形形状(台形形状)である。
【0025】
図3は、図2に示す化粧シートの点線枠P内の盛上部4aを拡大した概略上面図である。図3に示すように、1つの盛上部4aは、不規則な凹凸面45を含んでいてもよい。このような凹凸面については、特開2022-55319号公報に記載の盛上部の凹凸面が挙げられる。具体的には、凹凸面45は、凸部46および凹部47を含んでいる。不規則な凹凸面45を形成する凸部46および凹部47は、配置において不規則性を有してもよい。凸部46および凹部47は、形状において不規則性を有してもよい。図3に示されるように、盛上部4aの凹凸面45は、木の表面状でもよい。図3に示すように、凸部46および凹部47の少なくとも一方は、向きおよび長さの少なくとも一方が一定ではない線状部49でもよい。凸部46および凹部47の両方が、向きおよび長さの少なくとも一方が一定ではない線状部49でもよい。
【0026】
この盛上部4aによれば、その内部領域において、凸部46および凹部47の間の段差により触感を付与できる。つまり、盛上層4は、盛上部4aの縁部にて触感を付与できるだけでなく、盛上部4aの内部においても触感を付与できる。したがって、より強い触感により化粧シート10の表面の凹凸を強調できる。
【0027】
加えて、凹凸面45の規則性を消失することにより、凹凸面45を観察した際における人工的な印象を抑えることができる。したがって、盛上部4aが自然な風合いを表現でき、意匠層との組合せにより相乗的に意匠性を向上できる。
【0028】
線状部49の延びる方向の大きさを、線状部49の全長とする。線状部49の延びる方向に直交する方向の大きさを、線状部49の幅とする。線状部49のD方向(紙面奥行方向)の大きさを、線状部49の深さする。
【0029】
図3に示す化粧シート10において、凸部46は、平面視で、周囲の全てが凹部47により囲まれた凸部Dを含んでいる。凸部Dは、平面視において、盛上部4aの内部に不規則に配置されてもよい。一つの盛上部4aに含まれる凸部Dの平面視の形状は、三角形、四角形、円形、楕円形等の定型的な幾何学形状ではなく、不定形でもよい。凸部Dの平面視における面積は、複数の凸部Dの間で不規則的に異なっていてもよい。すなわち、複数の凸部Dの間で、平面視における面積は互いに異なってもよい。
【0030】
凸部Dの平面視における寸法は、触感及び自然な風合いの実現を考慮して、設定され得る。凸部DのD2方向に沿った最大寸法は、好ましくは30μm以上500μm以下であり、より好ましくは100μm以上300μm以下である。凸部DのD1方向に沿った最大寸法は、好ましくは40μm以上20000μm以下であり、より好ましくは400μm以上8000μm以下である。
【0031】
化粧シート10は、図3に示されるように、平面視で周囲の全てが凹部47により囲まれた凸部Dに加えて、凹部47によって一部が囲まれていない凸部46を含んでもよい。
【0032】
線状部49の長さは特に限定されない。少なくとも一部の線状部49の両端が盛上部4aの縁に位置してもよい。少なくとも一部の線状部49は、盛上部4aの内部に位置する一端部または両端部を含んでもよい。すなわち、線状部49の一端のみが盛上部4aの縁に位置してもよい。線状部49の両端が、盛上部4aの内部に位置してもよい。これらの線状部49の端部位置は、1つの盛上部4aに含まれる線状部49の間で、異なってもよい。
【0033】
線状部49の幅W49(図3参照)は、特に限定されない。線状部49の幅W49は、50μm以上250μm以下でもよい。複数の線状部49の間で、幅W49は異なってもよい。線状部49の高低差、すなわち凹部47と凸部46との高低差は、D方向(紙面奥行方向)において、凹部47の最も小さい(低い)部分と凸部46の最も大きい(高い)部分との差である。高低差は、特に限定されないが、10μm以上200μm以下でもよい。複数の線状部49に起因した高低差は、同一でもよいし、互いに異なってもよい。一つの線状部49に起因した高低差は、当該線状部49の長手方向に沿って、一定でもよく、変化してもよい。
【0034】
線状部49の長手方向に直交する断面での断面形状は、特に限定されない。線状部49の長手方向に直交する断面での断面形状は、半円形、半楕円形、三角形、四角形、五角形、六角形その他多角形、不定形な幾何学形状など、あらゆる形状でもよい。
【0035】
(3)面積
本開示の化粧シートは、厚さ方向において、保護層の面積に対する盛上層の面積の割合は、通常、10%以上であり、20%以上であることが好ましく、30%以上であることが更に好ましく、40%以上であることが特に好ましい。本開示においては、隣り合う盛上部4aの平均間隔が所定の値以上であり、かつ、保護層3の面積に対する盛上層4の面積の割合が所定の値以上であることにより、強い凹凸の触感が得られる。また、保護層の面積に対する盛上層の面積の割合が上記範囲であることにより、耐摩耗性、耐擦傷性および耐汚染性が向上する。一方、上記盛上層の面積の割合は、例えば、55%以下であり、50%以下であることが好ましい。
【0036】
厚さ方向における、保護層の面積に対する盛上層の面積の割合とは、厚さ方向から見た、測定領域に含まれる保護層が設けられた領域の面積に対する、測定領域に含まれる盛上層が設けられた盛上領域の面積の割合であり、測定領域を10mm×10mmの範囲として、100か所で上記面積割合を算出した平均値である。
【0037】
(4)厚さ
本開示における盛上層の平均厚さT4は、保護層の平均厚さT3に対して、例えば、2.0倍以上であり、2.5倍以上であってもよく、3.0倍以上であってもよい。盛上層の平均厚さが上記範囲であることにより、耐摩耗性、耐擦傷性および耐汚染性が向上する。盛上層の具体的な平均厚さは、例えば、10μm以上であり、15μm以上であってもよく、20μm以上であってもよい。一方、盛上層の平均厚さは、例えば、50μm以下であり、40μm以下であってもよく、30μm以下であってもよい。
【0038】
盛上層の平均厚さは、化粧シートの断面について、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した画像から100箇所の盛上部4aの厚さT4を測定し、最小値から10箇所と最大値から10箇所を除いた80箇所の値の平均値とする。盛上部が凹凸面を有する場合には、凸部での厚さを測定する。また、保護層の平均厚さについても同様である。
【0039】
(5)組成
(i)フィラー
盛上部は、フィラーが含まれていることが好ましい。すなわち、盛上層は、フィラーが含まれていることが好ましい。フィラーとしては、例えば、有機粒子、無機粒子が挙げられる。有機粒子としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂及びナイロン等のポリアミド樹脂等の樹脂からなるビーズが挙げられる。無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア(二酸化チタン)、カオリナイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機材料等からなるビーズが挙げられる。粒子は、上述の1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
無機粒子の平均粒子径は、特に限定されない。無機粒子の平均粒子径は、例えば、2μm以上であり、3μm以上であってもよく、5μm以上であってもよい。一方、無機粒子の平均粒子径は、例えば、12μm以下であり、10μm以下であってもよい。本明細書において、平均粒子径は、レーザ回折散乱法により測定される、体積基準粒度分布によるD50である。
【0041】
盛上部における無機粒子の含有量は、盛上部の樹脂成分100質量部に対して、2質量部以上であってもよく、5質量部以上が好ましく、15質量部以上であってもよく、18質量部以上であってもよい。一方、盛上部における無機粒子の含有量は、例えば、38質量部以下であってもよく、28質量部以下であってもよく、25質量部以下であってもよい。
【0042】
有機粒子の平均粒子径は、特に限定されない。有機粒子の平均粒子径は、例えば、20μm以上であり、30μm以上であってもよい。一方、有機粒子の平均粒子径は、例えば、60μm以下であり、50μm以下であってもよい。
【0043】
盛上部における有機粒子の含有量は、盛上部の樹脂成分100質量部に対して、7質量部以上が好ましく、10質量部以上であってもよい。一方、盛上層における有機粒子の含有量は、例えば、38質量部以下であってもよく、33質量部以下であってもよく、25質量部以下であってもよい。
【0044】
盛上部がフィラーとして有機粒子および無機粒子の両方を含む場合、盛上部におけるフィラーの含有量に対する有機粒子の含有量は、例えば、20質量%以上であり、30質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよい。一方、有機粒子の含有量は、例えば、80質量%以下であり、70質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよい。
【0045】
盛上部がフィラーとして有機粒子および無機粒子の両方を含む場合、盛上部におけるフィラーの含有量に対する無機粒子の含有量は、例えば、20質量%以上であり、30質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよい。一方、無機粒子の含有量は、例えば、80質量%以下であり、70質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよい。
【0046】
(ii)樹脂成分
盛上部を構成する材料は、樹脂成分を含有する。樹脂成分は、典型的には、硬化性樹脂Xの硬化物(架橋構造体)である。一方、樹脂成分は、熱可塑性樹脂であってもよい。中でも、盛上部は、硬化性樹脂Xの硬化物を含有することが好ましい。硬化性樹脂Xとしては、例えば、二液硬化樹脂、熱硬化樹脂及び電離放射線硬化樹脂から選ばれる少なくとも1種でもよい。
【0047】
二液硬化樹脂として、ポリオール化合物を主剤としイソシアネート化合物を硬化剤とする二液硬化型ウレタン樹脂、二液硬化型エポキシ樹脂、二液硬化型ウレタン変性アクリル樹脂及び二液硬化型ポリエステル樹脂等が例示される。
【0048】
熱硬化樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。
【0049】
電離放射線硬化樹脂は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物を含む組成物である。電離放射線硬化性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基、及びエポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。電離放射線硬化樹脂は、エチレン性不飽和結合基を有する化合物でもよい。電離放射線硬化樹脂は、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する化合物でもよく、好ましくは、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する、多官能性(メタ)アクリレート系化合物でもよい。多官能性(メタ)アクリレート系化合物は、モノマーまたはオリゴマーでもよい。電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合又は架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味する。電離放射線として、紫外線(UV)又は電子線(EB)が例示される。電離放射線は、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線でもよい。
【0050】
多官能性(メタ)アクリレート系化合物のうち、2官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエトキシジアクリレート、ビスフェノールAテトラプロポキシジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート等が例示される。3官能以上の(メタ)アクリレート系モノマーとして、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート等が例示される。上記(メタ)アクリレート系モノマーは、分子骨格の一部を変性しているものでもよい。上記(メタ)アクリレート系モノマーは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトン、イソシアヌル酸、アルキル、環状アルキル、芳香族、ビスフェノール等による変性がなされたものでもよい。
【0051】
多官能性(メタ)アクリレート系オリゴマーとして、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等のアクリレート系重合体等が例示される。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、多価アルコール及び有機ジイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって得られる。エポキシ(メタ)アクリレートは、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と多塩基酸と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、及び2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等とフェノール類と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートでもよい。上記電離放射線硬化樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
電離放射線硬化樹脂が紫外線硬化性樹脂である場合、組成物は、光重合開始剤及び光重合促進剤等の添加剤を含んでもよい。光重合開始剤として、エチレン性不飽和基を有する化合物の場合は、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサントン類等から選ばれる1種以上が例示される。光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができる。光重合促進剤として、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が例示される。
【0053】
熱可塑樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ナイロン、ポリスチレン及びABS樹脂等が挙げられる。
【0054】
盛上層は、透明でもよいし、着色されてもよい。組成物に対して着色剤(顔料又は染料)を添加することによって、盛上層に用いられる材料が着色されてもよい。着色剤は、公知又は市販の顔料又は染料でもよい。着色剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。着色剤の添加量は、所望の色合い等に応じて適宜設定され得る。
【0055】
盛上層は、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、ラジカル捕捉剤、軟質成分(例えばゴム)等の各種の添加剤を含んでもよい。
【0056】
盛上層の形成方法としては、例えば、版型や格子等を用いたグラビア印刷により、硬化性樹脂Xを含有する盛上層形成用インキを、保護層の意匠層とは反対側の面に塗工し、必要に応じて硬化させることにより、盛上部を形成することができる。盛上部が上述した凹凸面を有する場合、例えば、特開2022-55319号公報に記載の版を使用することができる。
【0057】
盛上層形成用インキが、硬化性樹脂Xとして電子線硬化性樹脂を含有する場合、通常、電子線を照射することで、電子線硬化性樹脂の硬化物を得る。電子線源としては、例えば、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が挙げられる。電子線のエネルギーとしては、例えば、100kV以上、1000kV以下であり、100kV以上、300kV以下であってもよい。電子線の照射量は、例えば、2Mrad以上、15Mrad以下である。
【0058】
盛上層形成用インキが、硬化性樹脂Xとして紫外線硬化性樹脂を含有する場合、通常、紫外線を照射することで、紫外線硬化性樹脂の硬化物を得る。紫外線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯が挙げられる。紫外線の波長としては、例えば、190nm以上、380nm以下である。
【0059】
盛上層形成用インキが、硬化性樹脂Xとして熱硬化性樹脂を含有する場合、通常、加熱することで、熱硬化性樹脂の硬化物を得る。加熱温度は、熱硬化性樹脂の種類に応じて、適宜設定される。盛上層形成用インキは、熱硬化性樹脂とともに、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤を含有していてもよい。硬化剤としては、例えば、イソシアネート、有機スルホン酸塩、有機アミン、過酸化物(例えばメチルエチルケトンパーオキサイド)、ラジカル開始剤(アゾイソブチルニトリル)が挙げられる。
【0060】
盛上層形成用インキは、必要に応じて、溶媒を含有していてもよい。溶媒としては、例えば、水;トルエン、キシレン等の炭化水素化合物;メタノール、エタノール、メチルグリコール等のアルコール化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物;テロラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル化合物;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素化合物;ジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0061】
2.保護層
図1に示すように、本開示における保護層3は、意匠層2と盛上層4との間に配置される。本開示における保護層は、後述する基材層に対して、部分的に配置されていてもよく、全面に配置されていてもよい。中でも、保護層は、基材層の全面に配置されていることが好ましい。また、図1に示すように、保護層3は、盛上層4と直接接していることが好ましい。本開示の化粧シートは、少ない層構成で、自然で本物感のある意匠を得ることができる。
【0062】
本開示における保護層の60°グロス値は、盛上層の60°グロス値より小さければ特に限定されないが、例えば、3以下であり、2以下であってもよい。一方、保護層の60°グロス値は、例えば、1以上である。
【0063】
保護層は、意匠層を保護し、所定の60°グロス値を有する材質であれば特に限定されない。保護層を構成する材料は、例えば、樹脂成分を含有する。樹脂成分としては、上述した盛上層で例示した樹脂成分と同様の種類が挙げられる。
【0064】
保護層は、例えば、マット化剤を含有する。マット化剤としては、例えば、上述した盛上層で例示した無機粒子と同様の種類が挙げられる。保護層に用いられる無機粒子の平均粒子径は、例えば、1μm以上であり、3μm以上であってもよく、5μm以上であってもよい。一方、保護層に用いられる無機粒子の平均粒子径は、例えば、20μm以下であり、15μm以下であってもよい。
【0065】
保護層における無機粒子の含有量は、保護層の樹脂成分100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、20質量部以上であってもよい。一方、保護層における無機粒子の含有量は、例えば、40質量部以下であってもよく、30質量部以下であってもよい。
【0066】
保護層の平均厚さは、特に制限はないが、例えば、1μm以上あり、5μm以上であることが好ましい。保護層の平均厚さが上記範囲であることにより、耐摩耗性、耐擦傷性および耐セロテープ性が向上する。一方、保護層の平均厚さは、例えば、50μm以下であり、30μm以下であってもよく、20μm以下であってもよい。保護層の厚さが上記範囲であることにより、例えば、保護層がシリカを含有する場合において、シリカによる白濁感の増大を抑制することができ、意匠層の視認性が向上する。さらに、保護層が硬くなり過ぎず、折り曲げた際の表面の割れを抑制できる。
【0067】
3.意匠層
本開示における意匠層は、基材層と保護層との間に配置される。意匠層は、柄を有することが好ましい。
【0068】
意匠層の柄としては、例えば、有機質柄、無機質柄、抽象柄が挙げられる。有機質柄とは、動植物等の生物の生命活動に由来した柄をいう。また、無機質柄とは、有機質柄に該当しない柄をいう。また、抽象柄とは、対象(例えば自然界に存在する形象)を抽象的に解釈し、はっきりとした形を表さない柄をいう。有機質柄としては、例えば、木目柄、レザー柄、花柄、ボタニカル柄が挙げられる。無機質柄としては、例えば、石目柄、コンクリート柄、砂目柄、布目柄、金属柄、タイル貼柄、煉瓦積柄が挙げられる。抽象柄としては、例えば、揺らぎ柄(例えば、インクの揺らぎ柄)、煙柄、マーブル柄が挙げられる。
【0069】
意匠層は、例えば、絵柄層を有する。また、意匠層は、絵柄層より基材層側に、ベタ層を有していてもよい。本開示において、絵柄層とは、基材層の一方の面に部分的(特にパターン状)に形成された層を意味する。また、ベタ層とは、基材層の一方の面の全面に形成された層を意味する。
【0070】
意匠層は、例えば、着色剤および樹脂成分を含有する。着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料;蛍光顔料;夜光顔料が挙げられる。着色剤として、染料を用いてもよい。
【0071】
樹脂成分としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、エステルウレタン系樹脂、アクリルアミド系樹脂、エチレンオキシド系樹脂、N-ビニルピロリドン系樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ウレタン(メタ)アクリル系樹脂、天然ゴム、合成ゴム、セルロース誘導体等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。
【0072】
意匠層は、必要に応じて、フィラー(例えばシリカ)、体質顔料(例えば有機ビーズ)、中和剤、界面活性剤等の添加剤を含有していてもよい。意匠層の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上、20μm以下である。
【0073】
意匠層の形成方法としては、例えば、着色剤、バインダー樹脂および溶媒(または分散媒)を含有する意匠層形成用インキを用いた塗工法が挙げられる。例えば、意匠層形成用インキを、基材層の一方の面に塗工し、乾燥することで、意匠層が得られる。
【0074】
上記溶剤(または分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸-2-メトキシエチル、酢酸-2-エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等の無機溶剤が挙げられる。
【0075】
上記塗工法としては、例えば、印刷法が挙げられる。印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法が挙げられる。また、ベタ層を形成するための塗工法としては、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種コーティング法が挙げられる。
【0076】
4.基材層
本開示における化粧シートは、基材層を有する。基材層は、意匠層、保護層および盛上層を支持する部材である。化粧シートが基材層を有することで、機械的強度、後加工適性、意匠性等の各種性能が向上するので、シートとしての使用性が向上する。
【0077】
基材層は、特に限定されず、例えば、樹脂基材、ガラス基材、金属基材、繊維基材が挙げられる。基材層の種類は、化粧シートの用途に応じて適宜選択される。
【0078】
樹脂基材に用いられる樹脂としては、例えば、各種の合成樹脂、各種の天然樹脂が挙げられる。合成樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂が挙げられる。化粧シートの製造適性、取扱い適性、後加工適性を考慮すると、熱可塑性樹脂が好ましい。
【0079】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、アイオノマー、各種オレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレングリコール-テレフタル酸-イソフタル酸共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等のアクリル樹脂;ナイロン6、ナイロン66等に代表されるポリアミド樹脂;三酢酸セルロース、セロファン、セルロイド等のセルロース樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)等のスチレン樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂が挙げられる。
【0080】
また、硬化性樹脂としては、例えば、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0081】
天然樹脂としては、例えば、天然ゴム、松脂、琥珀が挙げられる。
【0082】
金属基材に用いられる金属としては、例えば、アルミニウム又はジュラルミン等のアルミニウム合金;鉄又は炭素鋼、ステンレス鋼等の鉄合金;銅又は真鍮、青銅等の銅合金;金、銀、クロム、ニッケル、コバルト、錫、チタニウムが挙げられる。金属基材は、表面にめっき皮膜又は陽極酸化皮膜を有していてもよい。
【0083】
繊維基材に用いられる繊維質材料としては、例えば、薄葉紙、クラフト紙、上質紙、和紙、チタン紙、リンター紙、硫酸紙、パラフィン紙、パーチメント紙、グラシン紙、壁紙用裏打紙、板紙、石膏ボード用原紙等の紙;ポリエステル樹脂繊維、アクリル樹脂繊維、絹、木綿、麻等のタンパク質又はセルロース系の天然繊維、ガラス繊維、炭素繊維等の繊維からなる織布又は不織布挙げられる。繊維基材には、アクリル樹脂、スチレン-ブタジエンゴム、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の各種樹脂が添加されていてもよい。繊維基材が紙基材である場合、紙基材の繊維間の強度、又は紙基材と他の基材との層間強度を向上させることができる。また、毛羽立ちを抑制できる。樹脂の添加方法としては、抄造後に樹脂を含浸させてもよく、抄造時に樹脂を内填させてもよい。樹脂を添加した紙基材としては、例えば紙間強化紙、樹脂含浸紙が挙げられる。
【0084】
基材層は、必要に応じて、添加剤を含有してもよい。樹脂基材の場合、添加剤としては、例えば、無機充填剤、難燃剤、滑剤、発泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤が挙げられる。各種添加剤は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。添加剤の含有量は、表面特性、加工特性を阻害しない範囲であれば特に制限はなく、要求特性に応じて適宜設定できる。
【0085】
基材層は、単層であってもよく、2層以上の積層体であってもよい。積層体の場合、基材層は、同じ種類の基材を2層以上有していてもよく、異なる種類の基材を2層以上有していてもよい。
【0086】
基材層は、透明であってもよく、不透明であってもよい。
【0087】
また、基材層は着色されていてもよい。着色の態様には特に限定されず、透明着色であってもよく、不透明着色(隠蔽着色)であってもよく、これらは任意に選択できる。
【0088】
基材層が着色されている場合、着色剤を含有することができる。着色剤としては、例えば、チタン白等の白色顔料、鉄黒、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、ニッケル-アゾ錯体、アゾメチンアゾ系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料が挙げられる。例えば、化粧シートを積層する被着体の表面色相がばらついている場合に、表面色相を隠蔽し、装飾層の色調の安定性を向上させたい場合は、白色顔料等の無機顔料を用いればよい。
【0089】
基材層は、基材層に接する層との密着性、例えば装飾層との密着性、接着層との密着性を高めるために、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、酸化法、凹凸化法等の物理的表面処理、化学的表面処理が挙げられる。酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン-紫外線処理法が挙げられる。凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法が挙げられる。これらの表面処理は、基材層の種類に応じて適宜選択されるが、表面処理の効果および操作性を考慮すると、一般にはコロナ放電処理が好ましい。
【0090】
また、基材層が積層体である場合、隣接する各層の接着性を向上させるために、各層間に、接着層又はプライマー層が配置されていてもよい。
【0091】
基材層の厚さは、特に限定されず、基材層の材料に応じて適宜選択される。樹脂を含有する基材層の場合、基材層の厚さは、例えば、10μm以上300μm以下であり、20μm以上200μm以下であってもよく、40μm以上100μm以下であってもよい。また、基材層が紙基材である場合、坪量は、例えば、20g/m以上150g/m以下であり、30g/m以上100g/m以下であってもよい。
【0092】
5.他の層
本開示における化粧シートは、図1に示すように、基材層1、意匠層2、保護層3および盛上層4を少なくとも有する。一方、本開示における化粧シートは、これらの層に加えて、他の層を有していてもよい。他の層としては、例えば、透明性樹脂層、接着層、セパレータ層、プライマー層が挙げられる。
【0093】
(1)透明性樹脂層
本開示における化粧シートは、保護層と意匠層との間に透明性樹脂層を有していてもよい。透明性樹脂層により、化粧シートの強度を高めることができる。
【0094】
透明性樹脂層は、意匠層を視認できる程度に透明であればよく、無色透明の他、着色透明および半透明であってもよい。
【0095】
透明性樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(以下、「ABS樹脂」とも称する。)、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂が挙げられる。加工適性を考慮すると、中でも、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂が好ましい。樹脂は、単独で、又は2種以上を用いてもよい。
【0096】
透明性樹脂層は、必要に応じて、添加剤を含む。添加剤としては、例えば紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤が挙げられる。耐候剤としては、既述のものから適宜選択して用いればよい。
【0097】
透明性樹脂層の厚さは、加工適性を考慮すると、例えば20μm以上150μm以下であり、40μm以上120μm以下であってもよく、60μm以上100μm以下であってもよい。
【0098】
透明性樹脂層の形成方法としては、例えば、樹脂組成物を塗布する方法、樹脂フィルムをドライラミネートにより積層する方法が挙げられる。
【0099】
(2)裏面接着層
本開示における化粧シートは、基材層の意匠層とは反対の面側に、裏面接着層を有していてもよい。裏面接着層は、例えば、化粧シートを被着体に貼付するための部材である。
【0100】
裏面接着層は、透明であってもよく、不透明であってもよい。
【0101】
裏面接着層に用いられる接着剤としては、例えば、硬化型接着剤、感圧型接着剤が挙げられる。具体例としては、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤が挙げられる。また、裏面接着層として、OCA(Optically Clear Adhesive)又はOCR(Optically Clear Resin)を用いることもできる。
【0102】
裏面接着層の厚さは、効率よく所望の接着力を得る観点から、例えば、5μm以上100μm以下であり、10μm以上75μm以下であってもよく、20μm以上50μm以下であってもよい。
【0103】
裏面接着層の形成方法としては、例えば、接着剤組成物を塗布する方法、接着フィルムをドライラミネートにより積層する方法が挙げられる。
【0104】
(3)プライマー層
本開示における化粧シートは、化粧シートを構成する複数の層の層間密着性を向上させるために、プライマー層を有してもよい。プライマー層は、任意の層間に配置されてもよい。
【0105】
プライマー層は、主としてバインダー樹脂から構成され、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を含有してもよい。
【0106】
バインダー樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体(ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端、側鎖に2個以上の水酸基を有する重合体(ポリカーボネートポリオール)由来のウレタン-アクリル共重合体)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)、酢酸セルロース樹脂が挙げられる。これらは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0107】
また、バインダー樹脂としては、上記の樹脂に、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤等の硬化剤を添加し、架橋硬化させる樹脂であってもよい。例えば、アクリルポリオール樹脂等のポリオール系樹脂をイソシアネート系硬化剤で架橋硬化させる樹脂が好ましく、アクリルポリオール樹脂をイソシアネート系硬化剤で架橋硬化させる樹脂がより好ましい。
【0108】
プライマー層の厚さは、例えば0.5μm以上であり、1μm以上であってもよく、2μm以上であってもよい。また、プライマー層の厚さは、例えば10μm以下であり、8μm以下であってもよく、6μm以下であってもよい。
【0109】
プライマー層の形成方法としては、樹脂組成物を塗布し、必要に応じて、乾燥、硬化する方法が挙げられる。
【0110】
(4)セパレータ層
本開示における化粧シートは、裏面接着層の基材層とは反対側の面に、セパレータ層を有していてもよい。セパレータ層は、裏面接着層を保護する部材であり、化粧シートを被着体に貼付する際には剥離される。セパレータ層としては、従来公知のものを使用することができる。
【0111】
B.化粧部材
本開示における化粧部材は、基体と、上述の化粧シートと、を有する。図5は、本開示における化粧部材を例示する概略断面図である。図5に示す化粧部材100は、基体50と、接着層40と、上述した化粧シート10と、をこの順に有する。図5に示すように、化粧シート10の盛上層4が、化粧部材100の最外層を構成している。化粧シート10は、基材層1側の面が基体50側を向くように配置されている。
【0112】
本開示によれば、上述した化粧シートを有するため、強い触感を有しつつ、本物感を有する化粧部材となる。
【0113】
1.化粧シート
本開示における化粧シートについては、上記「A.化粧シート」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0114】
2.基体
本開示における基体は、化粧シートにより装飾される部材である。基体の一例としては、樹脂部材が挙げられる。樹脂部材に用いられる樹脂としては、例えば、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系共重合体(ABS系樹脂)、フェノール系樹脂、セルロース系樹脂、ゴムが挙げられる。また、基体の他の例としては、木質部材が挙げられる。木質部材としては、例えば、木材単板、木材合板、パーティクルボード、木質繊維板が挙げられる。木質部材に用いられる木材としては、例えば、杉、檜、松、ラワンが挙げられる。
【0115】
また、基体の他の例としては、金属部材が挙げられる。金属部材に用いられる金属としては、例えば、鉄、鉄合金(例えば炭素鋼、ステンレス鋼)、アルミニウムが挙げられる。また、基体の他の例としては、窯業部材が挙げられる。窯業部材の材料は、ガラス、陶磁器等のセラミックスであってもよく、石膏等の非セメント窯業系材料であってもよく、ALC(軽量気泡コンクリート)等の非陶磁器窯業系材料であってもよい。
【0116】
基体の形状は、特に限定されず、例えば、板状、シート状、立体形状が挙げられる。また、基体は、平面部を有していてもよく、曲面部を有していてもよく、平面部および曲面部の両方を有していてもよい。また、基体は、凸部、凹部、凸条部、凹条部、貫通部の少なくとも一つを有していてもよい。
【0117】
3.接着層
本開示における化粧部材は、基体と、化粧シートとの間に、接着層(第2の接着層)を有していてもよい。基体と化粧シートとの間に配置される第2の接着層としては、例えば、上述した裏面接着層と同様の樹脂が用いられる。また、化粧シートが上述した裏面接着層を有する場合、化粧シートと基体とは直接接していてもよい。
【0118】
4.化粧部材
本開示における化粧部材は、上述した化粧シートおよび基体を有する。本開示における化粧部材の用途は、特に限定されないが、例えば、壁、天井、床、屋根、軒天井、柵、門扉等の建築部材;窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材;箪笥、棚、机等の一般家具;食卓、流し台等の厨房家具;台所、トイレ、風呂場、洗面台等の水廻りで用いられる各種家具;家電、OA機器等のキャビネット等の表面化粧板;車両の内装又は外装用部材が挙げられる。また、本開示における化粧材は、屋外で使用される部材(外装用部材)であってもよく、屋内で使用される部材(内装用部材)であってもよい。
【0119】
本開示における化粧部材は、例えば、化粧シートと、基体と、を積層することにより、得ることができる。具体的には、基体における面(装飾を要する面)と、化粧シートにおける基材層側の面と、を対向させて積層する。
【0120】
化粧部材の製造方法としては、例えば、本開示の化粧シートにおける裏面接着層と基体の表面とが直接接するように、化粧シートを基体に貼付する方法が挙げられる。また、別の化粧部材の製造方法としては、本開示の化粧シートにおける基材層側の面と基体の表面とが対向するように、第2の接着層を介して、化粧シートを基体に積層する。
【0121】
基体と化粧シートとを積層する方法としては、例えば、ラミネート法、ラッピング法、真空成形法が挙げられる。ラミネート法では、例えば、化粧シートを、板状の基体に加圧ローラーで加圧する。ラッピング法では、例えば、化粧シートを供給しつつ、複数の向きの異なるローラーにより、基体を構成する複数の側面に、順次化粧シートを加圧接着する。化粧シートおよび基体を積層する際に、ホットメルト接着剤(感熱接着剤)を用いる場合、その加温温度は、例えば、150℃以上200℃以下である。また、反応性ホットメルト接着剤を用いる場合、その加熱温度は、例えば、100℃以上130℃以下である。
【0122】
本開示は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【実施例0123】
[実施例1]
(化粧シートの作製)
基材として、建材用着色原紙(「CHPS45(型番)」、坪量:45g/m、天間特殊紙株式会社製)を準備した。基材の一方の面に、アクリル樹脂をバインダーとし、着色剤としてチタン白、弁柄および黄鉛を含む樹脂組成物をグラビア印刷法で塗布することにより、厚さ5μmのベタ層を形成した。次いで、ベタ層上に、硝化綿をバインダーとし、弁柄を主成分とする着色剤を含む樹脂組成物を用いて、木目模様の絵柄層を形成した。これにより、基材上に、ベタ層および絵柄層を含む意匠層を形成した。次いで、意匠層上の全面に、二液硬化性樹脂(主剤:アクリルポリオール、硬化剤:ヘキサメチレンジイソシアネート)およびマット化剤(平均粒子径2μmのシリカ粒子、保護層の樹脂成分100質量部に対して23質量部)を含む保護層用インキを塗布し、乾燥することにより、平均厚み5μmの保護層を形成した。次いで、保護層上の一部に、下記処方の盛上層用インキ1を塗布し、乾燥することにより、複数の盛上部を有する盛上層を形成した。その後、70℃で24時間の加熱養生を行い、実施例1の化粧シートを得た。なお、厚さ方向における保護層の面積に対する盛上層の面積の割合、隣り合う盛上部の平均間隔、および盛上層の平均厚さT4が、表1に示される値となるように盛上部を形成した。
【0124】
<盛上層用インキ1>
・二液硬化性樹脂 100質量部(主剤:アクリルポリオール、硬化剤:ヘキサメチレンジイソシアネート)
・有機粒子 33質量部(球形ウレタンビーズ、平均粒子径50μm)
・溶剤 適量(酢酸ブチル、酢酸エチル)
【0125】
[実施例2]
(化粧シートの作製)
基材として、建材用着色原紙(「CHPS45(型番)」、坪量:45g/m、天間特殊紙株式会社製)を準備した。基材の一方の面に、アクリル樹脂をバインダーとし、着色剤としてチタン白、弁柄および黄鉛を含む樹脂組成物をグラビア印刷法で塗布することにより、厚さ5μmのベタ層を形成した。次いで、ベタ層上に、硝化綿をバインダーとし、弁柄を主成分とする着色剤を含む樹脂組成物を用いて、木目模様の絵柄層を形成した。これにより、基材上に、ベタ層および絵柄層を含む意匠層を形成した。次いで、意匠層上の全面に、二液硬化性樹脂(主剤:アクリルポリオール、硬化剤;ヘキサメチレンジイソシアネート)およびマット化剤(平均粒子径2μmのシリカ粒子、保護層の樹脂成分100質量部に対して23質量部)を含む保護層用インキを塗布し、乾燥することにより、平均厚み5μmの保護層を形成した。次いで、保護層上の一部に、下記処方の盛上層用インキ2を塗布し、乾燥することにより、複数の盛上部を有する盛上層を形成した。その後、70℃で24時間の加熱養生を行い、実施例2の化粧シートを得た。なお、厚さ方向における保護層の面積に対する盛上層の面積の割合、隣り合う盛上部の平均間隔、および盛上層の平均厚さT4が、表1に示される値となるように盛上部を形成した。
【0126】
<盛上層用インキ2>
・二液硬化性樹脂 100質量部(主剤:アクリルポリオール、硬化剤:ヘキサメチレンジイソシアネート)
・有機粒子 11質量部(球形ポリメチルメタクリレート粒子、平均粒子径50μm)
・無機粒子 9質量部(シリカ粒子、平均粒子径3μm)
・溶剤 適量(酢酸ブチル、酢酸エチル)
【0127】
[実施例3]
(化粧シートの作製)
基材として、建材用着色原紙(「CHPS45(型番)」、坪量:45g/m、天間特殊紙株式会社製)を準備した。基材の一方の面に、アクリル樹脂をバインダーとし、着色剤としてチタン白、弁柄および黄鉛を含む樹脂組成物をグラビア印刷法で塗布することにより、厚さ5μmのベタ層を形成した。次いで、ベタ層上に、硝化綿をバインダーとし、弁柄を主成分とする着色剤を含む樹脂組成物を用いて、木目模様の絵柄層を形成した。これにより、基材上に、ベタ層および絵柄層を含む意匠層を形成した。次いで、意匠層上の全面に、二液硬化性樹脂(主剤:アクリルポリオール、硬化剤:ヘキサメチレンジイソシアネート)およびマット化剤(平均粒子径2μmのシリカ粒子、保護層の樹脂成分100質量部に対して23質量部)を含む保護層用インキを塗布し、乾燥することにより、平均厚み5μmの保護層を形成した。次いで、保護層上の一部に、下記処方の盛上層用インキ3を塗布し、乾燥することにより、複数の盛上部を有する盛上層を形成した。その後、70℃で24時間の加熱養生を行い、実施例3の化粧シートを得た。なお、厚さ方向における保護層の面積に対する盛上層の面積の割合、隣り合う盛上部の平均間隔、および盛上層の平均厚さT4が、表1に示される値となるように盛上部を形成した。
【0128】
<盛上層用インキ3>
・二液硬化性樹脂 100質量部(主剤:アクリルポリオール、硬化剤:ヘキサメチレンジイソシアネート)
・有機粒子 11質量部(球形ポリメチルメタクリレート粒子、平均粒子径50μm)
・無機粒子 4.5質量部(シリカ粒子、平均粒子径12μm)
・溶剤 適量(酢酸ブチル、酢酸エチル)
【0129】
[実施例4]
(化粧シートの作製)
基材として、建材用着色原紙(「CHPS45(型番)」、坪量:45g/m、天間特殊紙株式会社製)を準備した。基材の一方の面に、アクリル樹脂をバインダーとし、着色剤としてチタン白、弁柄および黄鉛を含む樹脂組成物をグラビア印刷法で塗布することにより、厚さ5μmのベタ層を形成した。次いで、ベタ層上に、硝化綿をバインダーとし、弁柄を主成分とする着色剤を含む樹脂組成物を用いて、木目模様の絵柄層を形成した。これにより、基材上に、ベタ層および絵柄層を含む意匠層を形成した。次いで、意匠層上の全面に、二液硬化性樹脂(主剤:アクリルポリオール、硬化剤:ヘキサメチレンジイソシアネート)およびマット化剤(平均粒子径2μmのシリカ粒子、保護層の樹脂成分100質量部に対して23質量部)を含む保護層用インキを塗布し、乾燥することにより、平均厚み5μmの保護層を形成した。次いで、保護層上の一部に、下記処方の盛上層用インキ4を塗布し、乾燥することにより、複数の盛上部を有する盛上層を形成した。その後、70℃で24時間の加熱養生を行い、実施例4の化粧シートを得た。なお、厚さ方向における保護層の面積に対する盛上層の面積の割合、隣り合う盛上部の平均間隔、および盛上層の平均厚さT4が、表1に示される値となるように盛上部を形成した。
【0130】
<盛上層用インキ4>
・二液硬化性樹脂 100質量部(主剤:アクリルポリオール、硬化剤:ヘキサメチレンジイソシアネート)
・無機粒子 28質量部(シリカ粒子、平均粒子径3μm)
・溶剤 適量(酢酸ブチル、酢酸エチル)
【0131】
[実施例5]
(化粧シートの作製)
基材として、建材用着色原紙(「CHPS45(型番)」、坪量:45g/m、天間特殊紙株式会社製)を準備した。基材の一方の面に、アクリル樹脂をバインダーとし、着色剤としてチタン白、弁柄および黄鉛を含む樹脂組成物をグラビア印刷法で塗布することにより、厚さ5μmのベタ層を形成した。次いで、ベタ層上に、硝化綿をバインダーとし、弁柄を主成分とする着色剤を含む樹脂組成物を用いて、木目模様の絵柄層を形成した。これにより、基材上に、ベタ層および絵柄層を含む意匠層を形成した。次いで、意匠層上の全面に、二液硬化性樹脂(主剤:アクリルポリオール、硬化剤;ヘキサメチレンジイソシアネート)およびマット化剤(平均粒子径2μmのシリカ粒子、保護層の樹脂成分100質量部に対して23質量部)を含む保護層用インキを塗布し、乾燥することにより、平均厚み8μmの保護層を形成した。次いで、保護層上の一部に、下記処方の盛上層用インキ5を塗布し、乾燥することにより、複数の盛上部を有する盛上層を形成した。その後、70℃で24時間の加熱養生を行い、実施例5の化粧シートを得た。なお、厚さ方向における保護層の面積に対する盛上層の面積の割合、隣り合う盛上部の平均間隔、および盛上層の平均厚さT4が、表1に示される値となるように盛上部を形成した。
【0132】
<盛上層用インキ5>
・二液硬化性樹脂 100質量部(主剤:アクリルポリオール、硬化剤:ヘキサメチレンジイソシアネート)
・有機粒子 7.6質量部(球形ポリメチルメタクリレート粒子、平均粒子径50μm)
・無機粒子 15質量部(シリカ粒子、平均粒子径6μm)
・溶剤 適量(酢酸ブチル、酢酸エチル)
【0133】
[実施例6]
(化粧シートの作製)
基材として、建材用着色原紙(「CHPS45(型番)」、坪量:45g/m、天間特殊紙株式会社製)を準備した。基材の一方の面に、アクリル樹脂をバインダーとし、着色剤としてチタン白、弁柄および黄鉛を含む樹脂組成物をグラビア印刷法で塗布することにより、厚さ5μmのベタ層を形成した。次いで、ベタ層上に、硝化綿をバインダーとし、弁柄を主成分とする着色剤を含む樹脂組成物を用いて、木目模様の絵柄層を形成した。これにより、基材上に、ベタ層および絵柄層を含む意匠層を形成した。次いで、意匠層上の全面に、二液硬化性樹脂(主剤:アクリルポリオール、硬化剤;ヘキサメチレンジイソシアネート)およびマット化剤(平均粒子径2μmのシリカ粒子、保護層の樹脂成分100質量部に対して23質量部)を含む保護層用インキを塗布し、乾燥することにより、平均厚み1μmの保護層を形成した。次いで、保護層上の一部に、下記処方の盛上層用インキ6を塗布し、乾燥することにより、複数の盛上部を有する盛上層を形成した。その後、70℃で24時間の加熱養生を行い、実施例6の化粧シートを得た。なお、厚さ方向における保護層の面積に対する盛上層の面積の割合、隣り合う盛上部の平均間隔、および盛上層の平均厚さT4が、表1に示される値となるように盛上部を形成した。
【0134】
<盛上層用インキ6>
・二液硬化性樹脂 100質量部(主剤:アクリルポリオール、硬化剤:ヘキサメチレンジイソシアネート)
・有機粒子 7.6質量部(球形ポリメチルメタクリレート粒子、平均粒子径50μm)
・無機粒子 15質量部(シリカ粒子、平均粒子径8μm)
・溶剤 適量(酢酸ブチル、酢酸エチル)
【0135】
[比較例1~3]
(化粧シートの作製)
基材として、建材用着色原紙(「CHPS45(型番)」、坪量:45g/m、天間特殊紙株式会社製)を準備した。基材の一方の面に、アクリル樹脂をバインダーとし、着色剤としてチタン白、弁柄および黄鉛を含む樹脂組成物をグラビア印刷法で塗布することにより、厚さ5μmのベタ層を形成した。次いで、ベタ層上に、硝化綿をバインダーとし、弁柄を主成分とする着色剤を含む樹脂組成物を用いて、木目模様の絵柄層を形成した。これにより、基材上に、ベタ層および絵柄層を含む意匠層を形成した。次いで、意匠層上の全面に、二液硬化性樹脂(主剤:アクリルポリオール、硬化剤:ヘキサメチレンジイソシアネート)およびマット化剤(平均粒子径2μmのシリカ粒子、保護層の樹脂成分100質量部に対して23質量部)を含む保護層用インキを塗布し、乾燥することにより、平均厚み3μmの保護層を形成した。次いで、保護層上の一部に、下記処方の盛上層用インキ7を塗布し、乾燥することにより、複数の盛上部を有する盛上層を形成した。その後、70℃で24時間の加熱養生を行い、比較例1~3の化粧シートを得た。なお、厚さ方向における、保護層の面積に対する盛上層の面積の割合、隣り合う盛上部の平均間隔、および盛上層の平均厚さT4が、表2に示される値となるように盛上部を形成した。
【0136】
<盛上層用インキ7>
・二液硬化性樹脂 100質量部(主剤:アクリルポリオール、硬化剤:ヘキサメチレンジイソシアネート)
・有機粒子 16質量部(球形ポリメチルメタクリレート粒子、平均粒子径50μm)
・溶剤 適量(酢酸ブチル、酢酸エチル)
【0137】
[比較例4]
(化粧シートの作製)
基材として、建材用着色原紙(「CHPS45(型番)」、坪量:45g/m、天間特殊紙株式会社製)を準備した。基材の一方の面に、アクリル樹脂をバインダーとし、着色剤としてチタン白、弁柄および黄鉛を含む樹脂組成物をグラビア印刷法で塗布することにより、厚さ5μmのベタ層を形成した。次いで、ベタ層上に、硝化綿をバインダーとし、弁柄を主成分とする着色剤を含む樹脂組成物を用いて、木目模様の絵柄層を形成した。これにより、基材上に、ベタ層および絵柄層を含む意匠層を形成した。次いで、意匠層上の全面に、二液硬化性樹脂(主剤:アクリルポリオール、硬化剤:ヘキサメチレンジイソシアネート)およびマット化剤(平均粒子径2μmのシリカ粒子、保護層の樹脂成分100質量部に対して23質量部)を含む保護層用インキを塗布し、乾燥することにより、平均厚み3μmの保護層を形成した。次いで、保護層上の一部に、下記処方の盛上層用インキ8を塗布し、乾燥することにより、複数の盛上部を有する盛上層を形成した。その後、70℃で24時間の加熱養生を行い、比較例4の化粧シートを得た。なお、厚さ方向における、保護層の面積に対する盛上層の面積の割合、隣り合う盛上部の平均間隔、および盛上層の平均厚さが、表2に示される値となるように盛上部を形成した。
【0138】
<盛上層用インキ8>
・二液硬化性樹脂 100質量部(主剤:アクリルポリオール、硬化剤:ヘキサメチレンジイソシアネート)
・有機粒子 16質量部(球形ポリメチルメタクリレート粒子、平均粒子径30μm)
・溶剤 適量(酢酸ブチル、酢酸エチル)
【0139】
[比較例5]
(化粧シートの作製)
基材として、建材用着色原紙(「CHPS45(型番)」、坪量:45g/m、天間特殊紙株式会社製)を準備した。基材の一方の面に、アクリル樹脂をバインダーとし、着色剤としてチタン白、弁柄および黄鉛を含む樹脂組成物をグラビア印刷法で塗布することにより、厚さ5μmのベタ層を形成した。次いで、ベタ層上に、硝化綿をバインダーとし、弁柄を主成分とする着色剤を含む樹脂組成物を用いて、木目模様の絵柄層を形成した。これにより、基材上に、ベタ層および絵柄層を含む意匠層を形成した。次いで、意匠層上の全面に、二液硬化性樹脂(主剤:アクリルポリオール、硬化剤:ヘキサメチレンジイソシアネート)およびマット化剤(平均粒子径2μmのシリカ粒子、保護層の樹脂成分100質量部に対して23質量部)を含む保護層用インキを塗布し、乾燥することにより、平均厚み5μmの保護層を形成した。次いで、保護層上の一部に、上記処方の盛上層用インキ7を塗布し、乾燥することにより、複数の盛上部を有する盛上層を形成した。その後、70℃で24時間の加熱養生を行い、比較例5の化粧シートを得た。なお、厚さ方向における、保護層の面積に対する盛上層の面積の割合、隣り合う盛上部の平均間隔、および盛上層の平均厚さT4が、表2に示される値となるように盛上部を形成した。
【0140】
[保護層および盛上層の60°グロス値]
実施例及び比較例で得られた化粧シートにおける盛上層および保護層の60°グロス値を以下の方法により測定した。結果を表1および表2に示す。
(測定方法)
化粧シートを盛上層側が上になるように置き、盛上層側から、グロスメーター(「マイクログロス(機種名)」、BYKガードナー社製)を用いて、JIS Z 8741:1997の方法3に準拠して盛上層の60°鏡面光沢度を測定した。盛上層の60°グロス値は、任意の10箇所の盛上部における測定値の平均値とした。各測定箇所においては、グロスメーターの測定部位の中心に盛上部があり、かつ、測定部位の面積の50%以上が盛上部と重複するようにして測定した。また、同様の方法で、保護層の60°鏡面光沢度を測定した。
【0141】
[本物感評価]
20歳代、30歳代、40歳代及び50歳代からそれぞれ5名を選出した計20名の被験者により、実施例及び比較例で得られた化粧シートの本物感の評価を行った。化粧シートの盛上層側から目視で観察し、盛上層と保護層が作り出す本物感を評価した。評価は、外光を遮った室内の蛍光灯照明下で行い、下記評価基準に基づいて行った。本物感の評価基準は、盛上部を有する箇所と盛上部を有さない箇所との艶差を十分に感じ、かつ、艶差が大きすぎないかとした。
(評価基準)
A:本物感があると答えた人が20人中15人以上であった。
B:本物感があると答えた人が20人中11人以上14人以下であった。
C:本物感があると答えた人が20人中5人以上10人以下であった。
D:本物感があると答えた人が20人中4人以下であった。
【0142】
[触感評価]
20歳代、30歳代、40歳代及び50歳代からそれぞれ5名を選出した計20名の被験者により、実施例及び比較例で得られた化粧シートの触感の評価を行った。各被験者が、利き手の人差し指の腹で化粧シートの盛上層側の表面を触り、触感が高いか否かについて評価した。触感の評価基準は、「凹凸を強く感じるか、否か」とした。
【0143】
(評価基準)
A:触感があると答えた人が20人中15人以上であった。
B:触感があると答えた人が20人中11人以上14人以下であった。
C:触感があると答えた人が20人中5人以上10人以下であった。
D:触感があると答えた人が4人以下であった。
【0144】
[耐摩耗性評価]
実施例及び比較例で得られた化粧シートについて、盛上層側の表面に対し、JIS K7204の規定に準拠した方法によって、耐摩耗性試験を実施した。試験条件は、2つの摩耗輪(CS-10)の荷重をそれぞれ500g、回転数を250回転とした。摩耗試験後の化粧シートを目視で観察し、柄残存率を求め、下記評価基準で評価した。
【0145】
(評価基準)
A:柄残存率90%以上
B:柄残存率70%以上90%未満
C:柄残存率50%以上70%未満
D:柄残存率50%未満
【0146】
[耐セロテープ性評価]
実施例及び比較例で得られた化粧シートについて、盛上層側の表面に、セロテープ(登録商標)(ニチバン株式会社製、24mm幅)を60mm×24mmで密着させた。次に、45°の角度で急速に剥離した。これを10回繰り返し、試験後の剥離部の有無を評価した。
A:剥離なし
B:剥離あり
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】
表1に示すように、実施例1~6で得られた化粧シートは、強い触感を有しつつ、本物感を有することが確認された。一方、表2に示すように、比較例1~比較例5で得られた化粧シートは、盛上層に平均粒子径が大きい有機粒子を使用しているため、盛上層のグロス値が高く、本物感に劣ることが確認された。また、比較例3および比較例4で得られた化粧シートは、盛上部の平均間隔が短いため、強い触感が得られないことが確認された。
【0150】
このように、本開示においては、例えば、以下の発明が提供される。
【0151】
[1]
基材層、意匠層、保護層、および、パターン状の盛上部を有する盛上層を、厚さ方向において、この順に有する化粧シートであって、
上記保護層の60°グロス値は、上記盛上層の60°グロス値より小さく、
上記盛上層の60°グロス値は、20以下であり、
上記厚さ方向において、上記保護層の面積に対する上記盛上層の面積の割合は、10%以上であり、
隣り合う上記盛上部の平均間隔は、1.6mm以上である、化粧シート。
【0152】
[2]
上記保護層の60°グロス値は、3以下である、[1]に記載の化粧シート。
【0153】
[3]
上記盛上層の60°グロス値は、4以上である、[1]または[2]に記載の化粧シート。
【0154】
[4]
隣り合う上記盛上部の平均間隔は、4.0mm以下である、[1]から[3]までのいずれかに記載の化粧シート。
【0155】
[5]
前記盛上層の平均厚さは、前記保護層の平均厚さに対して、2倍以上である、[1]から[4]までのいずれかに記載の化粧シート。
【0156】
[6]
前記盛上層の平均厚さは、15μm以上である、[1]から[5]までのいずれかに記載の化粧シート。
【0157】
[7]
前記保護層の平均厚さは、5μm以上である、[1]から[6]までのいずれかに記載の化粧シート。
【0158】
[8]
上記盛上部は、フィラーを含有する、[1]から[7]までのいずれかに記載の化粧シート。
【0159】
[9]
上記フィラーは、無機粒子である、[8]に記載の化粧シート。
【0160】
[10]
上記盛上部における上記無機粒子の含有量は、上記盛上部の樹脂成分100質量部に対して、2質量部以上、38質量部以下である、[9]に記載の化粧シート。
【0161】
[11]
上記無機粒子の平均粒子径は、2μm以上、12μm以下である、[9]または[10]に記載の化粧シート。
【0162】
[12]
上記フィラーは、有機粒子である、[8]に記載の化粧シート。
【0163】
[13]
上記盛上部における上記有機粒子の含有量は、上記盛上部の樹脂成分100質量部に対して、7質量部以上、38質量部以下である、[12]に記載の化粧シート。
【0164】
[14]
上記有機粒子の平均粒子径は、20μm以上、60μm以下である、[12]または[13]に記載の化粧シート。
【0165】
[15]
基体と、
[1]から[14]までのいずれかに記載の化粧シートと、
を有する、化粧部材。
【符号の説明】
【0166】
1…基材層
2…意匠層
3…保護層
4…盛上層
4a…盛上部
10…化粧シート
図1
図2
図3
図4
図5