IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本板硝子株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ガラス板モジュール 図1
  • 特開-ガラス板モジュール 図2
  • 特開-ガラス板モジュール 図3
  • 特開-ガラス板モジュール 図4
  • 特開-ガラス板モジュール 図5
  • 特開-ガラス板モジュール 図6
  • 特開-ガラス板モジュール 図7
  • 特開-ガラス板モジュール 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144013
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ガラス板モジュール
(51)【国際特許分類】
   B60J 1/17 20060101AFI20241003BHJP
   B60J 1/20 20060101ALI20241003BHJP
   B60S 1/02 20060101ALI20241003BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20241003BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B60J1/17 Z
B60J1/20 C
B60S1/02 300
B60J1/00 H
H05B3/20 327A
H05B3/20 327B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023153904
(22)【出願日】2023-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2023056270
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】坂本 拓光
(72)【発明者】
【氏名】朝岡 尚志
【テーマコード(参考)】
3D127
3D225
3K034
【Fターム(参考)】
3D127AA06
3D127BB01
3D127CB05
3D127CC05
3D225AA02
3D225AC10
3D225AD04
3K034AA02
3K034AA04
3K034AA12
3K034BC16
3K034CA22
(57)【要約】
【課題】ベルトモールの凍結を解消することができる、ガラス板モジュールを提供する。
【解決手段】本発明は、自動車において昇降可能に設けられたガラス板モジュールであって、ガラス板と、前記ガラス板において、JISR3212で規定される試験領域外に設けられた加熱線と、前記ガラス板に設けられ、前記加熱線に給電を行う給電部と、を備え、前記ガラス板が最上位置にあるとき、前記自動車に設けられたベルトモールと接するベルトラインが規定され、前記加熱線の少なくとも一部は、前記ベルトラインに沿うように配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車において昇降可能に設けられたガラス板モジュールであって、
ガラス板と、
前記ガラス板において、JIS R3212で規定される試験領域Dの領域外に設けられた加熱線と、
前記ガラス板に設けられ、前記加熱線に給電を行う給電部と、
を備え、
前記ガラス板が最上位置にあるとき、前記自動車に設けられたベルトモールと接するベルトラインが規定され、
前記加熱線の少なくとも一部は、前記ベルトラインに沿うように配置されている、ガラス板モジュール。
【請求項2】
前記加熱線の少なくとも一部は、前記ベルトラインより下方に配置されている、請求項1に記載のガラス板モジュール。
【請求項3】
前記加熱線の少なくとも一部が、前記ベルトライン上に配置されている、請求項1に記載のガラス板モジュール。
【請求項4】
前記加熱線は、外部から視認不可能な位置に設けられている、請求項1に記載のガラス板モジュール。
【請求項5】
前記加熱線は、前記ガラス板の両側辺のうち少なくとも一方の側辺に沿って延びる側部位を有する、請求項1に記載のガラス板モジュール。
【請求項6】
前記加熱線は、
前記ベルトラインに沿う上側部位と、
前記上側部位よりも下方に配置される下側部位と、
前記下側部位及び前記上側部位の両端部同士を接続する一対の連結部位と、
を有している、請求項1に記載のガラス板モジュール。
【請求項7】
前記下側部位は、隙間を空けて配置される第1部位及び第2部位を有し、
前記給電部は、前記隙間を介して対向する前記第1部位及び前記第2部位の端部にそれぞれ設けられている、請求項6に記載のガラス板モジュール。
【請求項8】
前記上側部位の幅が、前記下側部位の幅よりも大きい、請求項6または7に記載のガラス板モジュール。
【請求項9】
前記ベルトラインは、水平方向に対し、後方にいくにしたがって斜め上方に延びるように規定され、
前記ガラス板における後方の下側の角部に前記給電部が配置されている、請求項1に記載のガラス板モジュール。
【請求項10】
前記加熱線は、銀プリントにより形成されている、請求項1に記載のガラス板モジュール。
【請求項11】
前記ガラス板は、内側ガラス板及び外側ガラス板を有する合わせガラスによって形成され、
前記加熱線は、前記内側ガラス板と前記外側ガラス板の間に配置されている、請求項1に記載のガラス板モジュール。
【請求項12】
前記加熱線は、前記外側ガラス板の車内側の面に配置されている、請求項11に記載のガラス板モジュール。
【請求項13】
前記ガラス板は、湾曲した単板により形成されている、請求項1に記載のガラス板モジュール。
【請求項14】
前記加熱線には、被覆材が被覆されている、請求項1に記載のガラス板モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車において昇降可能に設けられたガラス板モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、加熱機構を有する昇降可能なサイドガラスについて開示されている。このサイドガラスには、特定の場所(例えば、ドアミラー付近)に加熱線を配置されており、加熱線に通電することで、曇りを優先的に解消することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-530894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなサイドガラスが配置されるドアには、サイドガラスが収容される開口部付近にドア内部への水の侵入を防止するベルトモールが配置されている。このベルトモールは、サイドガラスが上昇して最上部にあるときに、サイドガラスの下辺付近に位置する。そのため、ガラス板を伝った水がベルトモールに溜まりやすい構造になっている。
【0005】
そのため、冬季に駐車をすると、ベルトモールに溜まった水が凍結し、ベルトモールとガラス板が固着されることがあった。これにより、ガラス板の昇降に負荷が増大し、ガラス窓を開けられなくなるおそれがあった。本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、ベルトモールの凍結を解消することができる、ガラス板モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
項1.自動車において昇降可能に設けられたガラス板モジュールであって、
ガラス板と、
前記ガラス板において、JIS R3212で規定される試験領域Dの領域外に設けられた加熱線と、
前記ガラス板に設けられ、前記加熱線に給電を行う給電部と、
を備え、
前記ガラス板が最上位置にあるとき、前記自動車に設けられたベルトモールと接するベルトラインが規定され、
前記加熱線の少なくとも一部は、前記ベルトラインに沿うように配置されている、ガラス板モジュール。
【0007】
項2.前記加熱線の少なくとも一部は、前記ベルトラインより下方に配置されている、項1に記載のガラス板モジュール。
【0008】
項3.前記加熱線の少なくとも一部が、前記ベルトライン上に配置されている、項1に記載のガラス板モジュール。
【0009】
項4.前記加熱線は、外部から視認不可能な位置に設けられている、項1から3のいずれかに記載のガラス板モジュール。
【0010】
項5.前記加熱線は、前記ガラス板の両側辺のうち少なくとも一方の側辺に沿って延びる側部位を有する、項1から4のいずれに記載のガラス板モジュール。
【0011】
項6.前記加熱線は、前記ガラス板の両側辺及び上辺に沿うように延びる部位を有している、項1から5のいずれかに記載のガラス板モジュール。
【0012】
項7.前記加熱線は、
前記ベルトラインに沿う上側部位と、
前記上側部位よりも下方に配置される下側部位と、
前記下側部位及び前記上側部位の両端部同士を接続する一対の連結部位と、
を有している、項1から6のいずれかに記載のガラス板モジュール。
【0013】
項8.前記下側部位は、隙間を空けて配置される第1部位及び第2部位を有し、
前記給電部は、前記隙間を介して対向する前記第1部位及び前記第2部位の端部にそれぞれ設けられている、項7に記載のガラス板モジュール。
【0014】
項9.前記上側部位の幅が、前記下側部位の幅よりも大きい、項7または8に記載のガラス板モジュール。
【0015】
項10.前記ベルトラインは、水平方向に対し、後方にいくにしたがって斜め上方に延びるように規定され、
前記ガラス板における後方の下側の角部に前記給電部が配置されている、項1から9のいずれかに記載のガラス板モジュール。
【0016】
項11.前記加熱線は、銀プリントにより形成されている、項1から10のいずれかに記載のガラス板モジュール。
【0017】
項12.前記ガラス板は、内側ガラス板及び外側ガラス板を有する合わせガラスによって形成され、
前記加熱線は、前記内側ガラス板と前記外側ガラス板の間に配置されている、項1から11のいずれかに記載のガラス板モジュール。
【0018】
項13.前記加熱線は、前記外側ガラス板の車内側の面に配置されている、項12に記載のガラス板モジュール。
【0019】
項14.前記ガラス板は、湾曲した単板により形成されている、項1から13のいずれかに記載のガラス板モジュール。
【0020】
項15.前記加熱線には、被覆材が被覆されている、項1から14のいずれかに記載のガラス板モジュール。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ベルトモールの凍結を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るガラス板モジュールが取り付けられるドアの一部断面図である。
図2】本発明に係るガラス板モジュールの一実施形態の正面図である。
図3】本発明に係るガラス板モジュールの他の例を示す正面図である。
図4】本発明に係るガラス板モジュールの他の例を示す正面図である。
図5】本発明に係るガラス板モジュールの他の例を示す正面図である。
図6】本発明に係るガラス板モジュールの他の例を示す正面図である。
図7】本発明に係るガラス板モジュールの他の例を示す正面図である。
図8】本発明に係るガラス板モジュールの他の例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るガラス板モジュールの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係るガラス板モジュールは、自動車のドアにおいて昇降可能に設けられるものである。以下では、まず、このガラス板モジュールが設けられるドアの構造の一部について説明し、その後、ガラス板モジュールについて説明する。
【0024】
<1.ドア構造>
図1は、本実施形態に係るガラス板モジュールが取り付けられるドア構造の一部断面図である。図1に示すように、このドア構造は、車外側のドアフレーム1と、車内側のドアフレーム2とを有している。車外側のドアフレーム1には、車外側ベルトモール3が取り付けられており、車内側のドアフレーム2には、車内側ベルトモール4が取り付けられている。そして、これらベルトモール3,4の間で、ガラス板モジュール5がレギュレータ(図示省略)により昇降可能に支持されている。
【0025】
車外側ベルトモール3において、車内側を向く面には、弾性変形可能な上部リップ31及び下部リップ32が取り付けられている。上部リップ31は、ガラス板モジュール5に接するように斜め上方に延びるとともに、図1の紙面に垂直な方向に延びている。また、下部リップ32は、上部リップ31の下側に取り付けられ、上部リップ31と同様に形成されている。
【0026】
車内側ベルトモール4において、車外側を向く面には、弾性変形可能な上部リップ41及び下部リップ42が取り付けられている。上部リップ41は、ガラス板モジュール5に接するように斜め上方に延びるとともに、図1の紙面に垂直な方向に延びている。また、下部リップ32は、上部リップ31の下側に取り付けられ、上部リップ31と同様に形成されている。
【0027】
以上のようなリップ31,32,41,42により、ガラス板モジュール5を伝って、雨などの水分がドアの内部に侵入するのが抑制される。なお、ガラス板モジュール5がレギュレータによって上昇されて最上位置にあるときに、上部リップ31,41が接する部分をつないだ仮想線をベルトラインLと称することとする。
【0028】
<2.ガラス板モジュール>
図2はガラス板モジュールの正面図である。図2に示すように、このガラス板モジュール5は、ガラス板51と、このガラス板51の車内側の面に設けられた加熱線52と、加熱線52に給電を行うための一対の給電部531,532と、を備えている。
【0029】
<2-1.ガラス板>
ガラス板51は、第1上辺511、第2上辺512、前側辺513、底辺514、及び後側辺515によって囲まれている。底辺11は前後方向に延び、前後方向の中央付近に下方に突出する突部516が設けられている。この突部516には、レギュレータ(図示省略)に接続するための一対の固定具54が取り付けられている。底辺11は、後方にいくにしたがってやや斜め上方に延びており、その前端及び後端から、前側辺513及び後側辺515が、それぞれ上方に延びている。前側辺513及び後側辺515は概ね平行であり、それぞれ、上方にいくにしたがって後方に傾斜するように延びている。また、前側辺513の長さは、後側辺515よりも短くなっている。後側辺515の上端には、第1上辺511が連結されており、この第1上辺511は、底辺514と概ね平行に延びている。第1上辺511の前端と前側辺513の上端とは、第2上辺512によって連結されている。
【0030】
ガラス板51の下端部には、上述したベルトラインLが規定されている。ベルトラインLは、概ね底辺514と平行に延びている。そして、ベルトラインLと底辺514との間の領域Aに、加熱線52及び給電部531,532が配置されている。ガラス板の軽量化の観点から、領域Aの上下方向の幅は、例えば、20~40mmであることが好ましい。
【0031】
ガラス板51は、熱線吸収ガラス、一般的なクリアガラスやグリーンガラスで形成することもできる。このようなガラス板51は、自動車が使用される国の安全規格に沿った可視光線透過率を実現する必要がある。
【0032】
また、ここで用いるガラス板51は、平坦状であってもよいし、湾曲していてもよい。但し、湾曲している場合には、車内側の面が凹状に形成される。
【0033】
<2-2.加熱線及び給電部>
図1に示すように、加熱線52は、ベルトラインLに沿って延びる上側部位521と、上側部位521の下方に配置され、上側部位521と平行に延びる下側部位522と、上側部位521及び下側部位522の前端同士及び後端同士をそれぞれ連結する第1連結部位523及び第2連結部位524と、を有している。また、下側部位522は、前側に配置された第1部位522aと、後ろ側に配置された第2部位522bとが隙間を空けて配置されている。この隙間は、底辺514と後側辺515とが交差する角部付近に設けられている。そして、第1部位522aの後端に第1給電部531、第2部位522bの前端に第2給電部532が設けられている。これら第1給電部531及び第2給電部532にはそれぞれケーブル(図示省略)を介して電源(図示省略)の正極及び負極がそれぞれ接続されている。したがって、加熱線52と電源とで直列の回路を構成している。
【0034】
また、上側部位521の線幅は、下側部位522の線幅よりも、大きくなっており、これによって、下側部位522の発熱量が、上側部位521の発熱量よりも大きくなっている。
【0035】
ガラス板モジュール5を昇降させた場合、上側部位521の加熱線は下側部位522の加熱線より、ベルトモール3,4を往復する回数が多くなるので、上側部位521は下側部位522に比べて摩耗による影響を受けやすい。したがって、上側部位521の線幅を太くすれば、摩耗による断線等の影響を小さくすることができる。
【0036】
加熱線52を構成する材料は特には限定されないが、例えば、銀、銅などの導電性の材料を印刷することで形成することができる。あるいは、加熱線としての金属線をガラス板51に接着することもできる。金属線の材料も、印刷と同様に銀、銅などにすることができる。
【0037】
<3.ガラス板モジュールによる解氷>
ガラス板51に付着した雨などの水分は、ガラス板51を伝って、ベルトモール3,4に溜まるため、冬期には凍結する可能性がある。ベルトモール3,4が凍結すると、ガラス板51とベルトモール3,4とが固定され、昇降しがたくなる。また、完全に凍結していないとしても、昇降時にレギュレータの負荷が大きくなる。これに対して、本実施形態のガラス板モジュール5では、ベルトラインLに沿って加熱線52が設けられているため、これに通電することで、ベルトモール3,4のリップ31,41を加熱することができ、凍結したベルトモール3,4の氷解が可能となる。これにより、ガラス板モジュール5が昇降できなるという不具合を解消することができる。
【0038】
また、加熱線52は上下に並ぶ上側部位521と下側部位522を有しているため、ベルトモール3,4のリップ31,41全体を加熱することができる。特に、上側部位521の幅が広いため、上側部位521の発熱量を大きくすることができる。そのため、水が溜まりやすい上側のリップ31,41を強く加熱することができ、効果的に氷解することができる。
【0039】
本実施形態においては、ベルトモール3,4の凍結を防止するため、ガラス板51に加熱線52を設け、ベルトモール3,4に加熱線を設けていないが、その理由は次の通りである。
(1)ベルトモール3,4は、ガラス板モジュール5の昇降時に力を受けて変形するので、加熱線が断線しやすい。
(2)ガラス板の熱伝導率は1W/(mK)であるのに対し、ベルトモール3,4に用いられるゴムの熱伝導率は0.13~0.25W/(mK)であり、ガラス板の方がゴムより熱伝導率が大きいので、ガラス板51に加熱線を設けた方が熱を有効に利用できる。
(3)ゴムとガラス板の比熱は、ゴムが1400~1900J/(kgK)であるのに対し、ガラス板は677J/(kgK)であるので、少ない熱量で温度を高くすることができる。したがって、ガラス板に加熱線を設けた方が、解氷に有効である。
【0040】
本実施形態では、デザイン的な要請から、ベルトモール3,4が後方にいくにしたがって上方に傾斜するように延びているが、これにより、ガラス板51を伝う水はベルトモール3,4の前方の1箇所に溜まりやすくなる。そこで、本実施形態では、ガラス板51の後方の角部に付近に給電部531,532を設けている。これにより、給電部531,532が水と接触しがたくなり、漏電のリスクを低減することができる。
【0041】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は適宜組み合わせ可能である。また、以下の各変形例は上述した実施形態と適宜組み合わせることも可能である。
【0042】
<4-1>
加熱線52の位置は、JISR3212の試験領域Dの領域以外に設けられていれば特には限定されないが、少なくとも一部をベルトラインLよりも下方に配置することが好ましい。これにより、加熱線52がベルトモール3,4やリップ31、32、41、42により遮蔽されるため、外部から視認されなくなり、見栄えがよくなる。また、加熱線52の一部(例えば、上側部位521)は、完全にベルトラインL上になくてもよく、ベルトラインLよりもやや上側又はやや下側に配置されていてもよい。
【0043】
<4-2>
加熱線52の形状は特には限定されず、種々の態様が可能である。例えば、ベルトラインに沿う3以上の直線状の部位を並べた加熱線とすることができる。あるいはベルトラインに沿う1本の直線状の加熱線とすることもできる。この場合、給電部531,532は、加熱線の両端にそれぞれ設けることができる。また、加熱線52は、ガラス板51の車外側の面及び車内側の面の少なくとも一方に設けることができる。
【0044】
加熱線52は、ガラス板51の側辺に沿って設けることもできる。例えば、図3に示すように、加熱線52の上側部位521及び下側部位522を延長し、前側辺513及び後側辺515にそれぞれ沿う第1側部位524及び第2側部位525を設けることができる。また、第1側部位524及び第2側部位525のいずれか一方のみを設けることもできる。
【0045】
その他、図4図7に示すように、加熱線52が、前側辺513、上辺511,512、及び後側辺515に沿うように構成することもできる。
【0046】
図4の例では、給電部531,532から直列に延びる加熱線52は、ベルトラインLに沿う(ベルトラインL上にある)第1部位5201、前側辺513に沿う第2部位5202、上辺511,512に沿う第3部位5203、後側辺513に沿う第4部位5204と、第1部位5201の下方でベルトラインLに沿う第5部位5205と、を有している。より詳細には、第1給電部531から上方に延びた加熱線52は、ベルトラインLに沿って前側辺513まで延び、前側辺513、上辺511,512、及び後側辺515に沿って後側辺515の下端付近まで延びた後に内側へ折り返し、後側辺515、上辺511,512、及び前側辺513に沿って延びる。さらに、加熱線52は、ベルトラインLに沿って後側辺513付近まで延びた後、ベルトラインLの中央付近まで折り返し、再度、後側辺513付近まで延びた後、ベルトラインLの中央付近まで折り返し、下方に延びて第2給電部532に接続される。
【0047】
図5の例では、図4とは異なり、加熱線52の第1部位5201がベルトラインLと平行に延びるのではなく、ベルトラインLの前端付近から斜め下方に傾斜するように延びている。また、第5部位5205も第1部位5201と平行に延びているため、ベルトラインLとは平行ではない。したがって、図5の例では、加熱線52の一部がベルトラインL上にある。
【0048】
図6の例では、2つの加熱線52が両給電部531,532に並列に接続されている。より詳細には、第1給電部531から上方に延びた加熱線52は、ベルトラインLに沿って前側辺513まで延び、前側辺513、上辺511,512、及び後側辺515に沿って後側辺515の下端付近まで延びた後、ベルトラインLに沿って前方に延び、ベルトラインLの中央付近から下方に延びて第2給電部532に接続される。このような加熱線52が2本設けられ、並列に延びている。この例においても、第1部位5201は、ベルトラインLと平行に延びていない。但し、第1部位5201は、ベルトラインLと平行に延びていてもよい。
【0049】
図7の例は、加熱線52が直列に延びている。加熱線52は、第1給電部531から上方に延びた加熱線52は、ベルトラインLに沿って前側辺513まで延び、前側辺513、上辺511,512、及び後側辺515に沿って後側辺515の下端付近まで延びた後に内側へ折り返し、後側辺515、上辺511,512、及び前側辺513に沿って延びる。さらに、加熱線52は、ベルトラインLの中央付近まで延びた後、下方に延びて第2給電部532に接続される。この例では、第1部位5201は、ベルトラインの全長に亘って延びているのではなく、ベルトラインLの一部(この例では前部)に亘って延びている。
【0050】
以上のように、加熱線52は、前側辺513、上辺511,512、及び後側辺515に沿うように構成できるが、上記のように種々の態様にすることができる。また、図4に示すように、前側辺513、上辺511,512、後側辺515、ベルトラインLに沿う部位に加え、第5部位5205のような付加的な部位を設けることもできる。このような付加的な部位の形状は特には限定されない。なお、ガラス板51の上辺511,512、及び両側辺513,515は、ドアフレーム内に収容されるため、これらに沿う加熱線52はドアフレーム内のモールの氷解を行うことができる。
【0051】
また、加熱線52の一部がベルトラインLに沿うように延びていればよい。「ベルトラインLに沿う」とは、加熱線52の一部がベルトラインL上に配置されている、ベルトラインLと交差している、あるいは、ベルトラインL上にはないがベルトラインLの近傍で平行または傾斜して延びていればよい。「ベルトラインLの近傍」とは、加熱線52によりベルトラインLの氷を氷解できるような距離であればよく、例えば、加熱線52とベルトラインLとの距離は0~30mmであることが好ましく、2~10mmであることがさらに好ましい。また、図7に示すように、加熱線がベルトラインLの全長に亘って延びていなくてもよく、ベルトラインの一部に沿っていればよい。上記のように加熱線52の位置は特には限定されないが、ベルトラインLに平行で且つベルトラインL上またはそれに近接した位置に配置されると、効果的な解氷が可能となる。
【0052】
加熱線52の幅についても特には限定されない。例えば、上側部位521の線幅を下側部位522の線幅よりも小さくすることができる。例えば、ガラス板51のエッジ周辺部での温度勾配が大きいと、エッジ部分に熱応力が発生するので熱割れが発生しやすい。そのため、下側部位522の発熱量を上側部位521の発熱量より小さくすることで、エッジから離れるにしたがって温度を高くすることができる。これにより、エッジ周辺での温度勾配を小さくできるため、熱割れを抑制しやすくすることができる。また、加熱線のすべてを同じ幅にしたり、上記のように、要求される発熱量に応じて異なる幅の部位を組み合わせることができる。
【0053】
加熱線52は、ガラス板51の車内側の面及び車外側の面のいずれにも配置することができる。
【0054】
<4-3>
加熱線52の表面には、耐摩耗、絶縁性の確保のため被覆材を被覆することができる。被覆材としては、例えば、シリカを主成分とする有機無機複合膜、フッ素樹脂層、セラミックス層等を用いることができる。上記有機無機複合膜として、例えば、特許4451440号公報に記載されたような公知の複合膜を採用することができる。また、上記セラミックス層としては、例えば、特願2015-27017号公報に記載のような公知の被覆材を採用することができる。
【0055】
被覆材は、加熱線52の表面だけでなく、ガラス板51全体に設けることができる。これにより、ガラス板51と加熱線52との段差を小さくすることができ、加熱線52による引っ掛かりを小さくすることができる。この場合、ガラス板51の上端側より下端側において、被覆材の厚みを厚くすることによって、ガラス板51の下部に配置された加熱線の耐久性を向上することができる。
【0056】
さらに、撥水性能を有する被覆材を設けることができる。このようにすることで、車内面において結露や凍結が生じた場合、結露水を水滴にすることで、凍結を抑制できる。また、被覆材と水滴の表面付着力が小さくなるので、水滴もしくは凍結した水滴が少ない力で離脱しやすくなる。
【0057】
<4-4>
ガラス板51の形状は特には限定されず、図2で示した形状は一例である。また、ガラス板51は、種々の構成が可能であり、一枚のガラス板で構成するほか、合わせガラスで構成することもできる。この場合、例えば、外側ガラス板と、内側ガラス板と、これらガラス板の間に配置される樹脂製の中間膜とで合わせガラスを構成することができる。中間膜は、一層で形成されてよいし、複数の層で形成することもできる。複数の層で形成する場合には、例えば、剛性の低い樹脂層を、剛性の高い樹脂層で挟む構造とすることができる。
【0058】
このような合わせガラスを用いる場合、加熱線52及び給電部53は、外側ガラス板と内側ガラス板との間に配置することができる。例えば、中間膜といずれか一方のガラス板との間、あるいは中間膜を複数の樹脂層で形成した場合、これら樹脂層の間に加熱線52及び給電部53を配置することができる。また、例えば、一方のガラス板に切り欠きを形成して給電部53を露出させれば、電源と接続することができる。あるいは、給電部53を合わせガラスの外側に配置することもできる。この場合、加熱線52は印刷でも形成できるが金属線で構成することが好ましい。また、加熱線52と給電部531,532とを接続するバスバーを設けることもできる。バスバーは、例えば、2枚の金属箔(例えば、銅箔)で構成することができ、これら金属箔の間に加熱線52を配置しハンダによって固定したものとすることができる。
【0059】
このように、加熱線52を合わせガラスの内部に配置することで加熱線52が保護され、劣化を抑制することができる。
【0060】
<4-5>
給電部531,532の位置は特には限定されず、上記実施形態以外の位置に配置することもできる。
【0061】
上記実施形態では、加熱線52を直列回路で構成しているが、並列回路で構成することもできる。例えば、図8に示すように、第1給電部531と第2給電部532との間に、上側部位521と接続する第3給電部533を設ける。第1給電部531と第2給電部532には、ケーブルを介して同極の電源が接続され、第3給電部533には、ケーブルを介して第1及び第2給電部531,532とは異極の電源が接続される。これにより、第1給電部531と第3給電部533とで構成される回路と、第2給電部532と第3給電部533とで構成される回路が形成される。すなわち、並列回路が形成される。このような並列回路を形成することで、加熱線52の長さが短くなるため、発熱量を増大することができ、短期間で解氷することができる。
【0062】
図8に示すように、給電部531~533を下辺514の中点またはそれよりも後方側に配置すると、給電部531~533が水と接触しがたくなり、漏電のリスクを低減することができる。一方、給電部531~533を、下辺514の中点より前方側に配置すると、前方の回路の長さが短くなり、水が溜まりやすい前方側の発熱量を増やすことができる。なお、このような並列回路は、図3図5図7の回路にも適用することができる。
【0063】
<4-6>
本発明のガラス板モジュールが設けられる自動車内の位置は特には限定されない。したがって、自動車のドア以外に設けられてもよく、昇降可能に構成され、ベルトモールが設けられている箇所であれば設けることができる。また、図1で示したドア構造も一例であり、ベルトモール3,4の形態は特には限定されない。すなわち、水の浸入を防止するように、少なくとも一部がガラス板に接するように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0064】
3 ベルトモール
31 上部リップ
32 下部リップ
4 ベルトモール
41 上部リップ
42 下部リップ
5 ガラス板モジュール
51 ガラス板
52 加熱線
521 上側部位
522 下側部位
523 連結部位
524 第1側部位
525 第2側部位
531,532 給電部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8