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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144019
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】モータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/52 20060101AFI20241003BHJP
   H02K 3/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H02K3/52 E
H02K3/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023163562
(22)【出願日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2023054327
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大堀 竜
(72)【発明者】
【氏名】川島 義親
【テーマコード(参考)】
5H603
5H604
【Fターム(参考)】
5H603AA03
5H603AA09
5H603BB01
5H603BB07
5H603BB09
5H603BB13
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB12
5H603CB16
5H603CC11
5H603CE01
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB10
5H604BB15
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC16
5H604QB03
5H604QB14
(57)【要約】
【課題】コイルの渡り線同士の干渉を抑制することができるモータ装置を得る。
【解決手段】ワイパモータ10は、ステータコアと、導線LWと、ターミナル82とを有する。ターミナル82は、U相の第1端子84と、V相の第2端子86と、W相の第3端子88と、を有する。導線LWは、第1端子84と第2端子86を接続する第1配線部LW1と、第2端子86と第3端子88を接続する第2配線部LW2と、第3端子88と第1端子84を接続する第3配線部LW3と、を有する。第1配線部LW1、第2配線部LW2及び第3配線部LW3のそれぞれは、複数のコイル部Cを有する。第1配線部LW1の引き回し方向と第3配線部LW3の引き回し方向は、順方向であり、第2配線部LW2の引き回し方向は、順方向とは反対側に向かう逆方向である。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の本体部及び前記本体部から径方向の外側に突出された複数のティースを備え、前記径方向にロータ本体と対向するステータコアと、
前記本体部の周方向に沿って引き回された導線と、
前記周方向に順番に並んだ第1相の第1端子、第2相の第2端子及び第3相の第3端子を備え、前記ステータコアの軸方向の一端面に位置し、前記導線に電流を供給するターミナルと、
を有し、
前記導線は、前記第1端子と前記第2端子を接続する第1配線部と、前記第2端子と前記第3端子を接続する第2配線部と、前記第3端子と前記第1端子を接続する第3配線部と、を有し、
前記第1配線部、前記第2配線部及び前記第3配線部のそれぞれは、前記複数のティースに巻かれた複数のコイル部を有し、
前記第1端子から前記第2端子への前記第1配線部の引き回し方向と、前記第3端子から前記第1端子への前記第3配線部の引き回し方向とは、前記周方向の一方側に向かう順方向に揃っており、
前記第2端子から前記第3端子への前記第2配線部の引き回し方向は、前記順方向とは反対側に向かう逆方向である、
ことを特徴とするモータ装置。
【請求項2】
前記複数のコイル部は、前記順方向に並ぶ第1コイル部、第2コイル部、第3コイル部、第4コイル部、第5コイル部、第6コイル部、第7コイル部、第8コイル部、第9コイル部、第10コイル部、第11コイル部及び第12コイル部を有し、
前記第1配線部は、前記第1端子から、前記第1コイル部、前記第2コイル部、前記第7コイル部、前記第8コイル部の順で引き回されており、
前記第2配線部は、前記第2端子から、前記第12コイル部、前記第11コイル部、前記第6コイル部、前記第5コイル部の順で引き回されており、
前記第3配線部は、前記第3端子から、前記第3コイル部、前記第4コイル部、前記第9コイル部、前記第10コイル部の順で引き回されており、
前記本体部の中心から前記複数のコイル部をそれぞれ見た場合に、
前記第1コイル部、前記第4コイル部、前記第5コイル部、前記第8コイル部、前記第9コイル部及び前記第12コイル部での前記導線の巻き方向が時計回り方向であり、
前記第2コイル部、前記第3コイル部、前記第6コイル部、前記第7コイル部、前記第10コイル部及び前記第11コイル部での前記導線の巻き方向が反時計回り方向である、
ことを特徴とする請求項1に記載のモータ装置。
【請求項3】
前記第1コイル部から前記第12コイル部までのうち前記周方向に隣り合う3つを1つのコイルグループとして、
複数の前記コイルグループのうち、前記第1端子と前記径方向に並んだ第1コイルグループは、前記第1コイル部を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載のモータ装置。
【請求項4】
複数の前記コイルグループのうち、前記第2端子と前記径方向に並んだ第2コイルグループは、前記第12コイル部を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載のモータ装置。
【請求項5】
複数の前記コイルグループのうち、前記第3端子と前記径方向に並んだ第3コイルグループは、前記第3コイル部を含む、
ことを特徴とする請求項4に記載のモータ装置。
【請求項6】
前記第1配線部は、複数の前記コイル部を繋ぐ第1渡り線部を有し、
前記第2配線部は、複数の前記コイル部を繋ぐ第2渡り線部を有し、
前記第3配線部は、複数の前記コイル部を繋ぐ第3渡り線部を有し、
前記第1渡り線部、前記第2渡り線部及び前記第3渡り線部のうち、いずれか2つを含む1本の前記導線を第1導線とし、残りの1つを含む1本の前記導線を第2導線としたとき、
前記第1渡り線部、前記第2渡り線部及び前記第3渡り線部のうち、いずれか2つは、前記軸方向の一端側に位置し、残りの1つは、前記軸方向の他端側に位置する、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のモータ装置。
【請求項7】
前記第1配線部及び前記第2配線部は、前記第1導線に含まれ、前記第3配線部は、前記第2導線に含まれる、
請求項6に記載のモータ装置。
【請求項8】
前記複数のティースは、前記周方向に隣り合い且つ同相の前記コイル部が巻かれた第1ティース及び第2ティースを含み、
前記第1配線部、前記第2配線部及び前記第3配線部は、それぞれ、前記第1ティースに巻かれた一の前記コイル部と、前記第2ティースに巻かれた他の前記コイル部とを有し、
前記導線のうち、前記第1ティースへの一の前記コイル部の巻き始め部分は、前記ステータコアの軸方向の一端面と他端面のいずれか一方に位置し、
前記導線のうち、前記第2ティースへの他の前記コイル部の巻き終わり部分は、前記ステータコアの軸方向の一端面と他端面のいずれか他方に位置し、
前記導線は、前記一端面と前記他端面のいずれか一方から前記第1ティースと前記第2ティースとの間を通って前記一端面と前記他端面のいずれか他方へ延び且つ一の前記コイル部と他の前記コイル部とを繋ぐ中間渡り部を有する、
請求項2から請求項5のいずれか1項に記載のモータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されたモータでは、第1の給電端子、第2の給電端子及び第3の給電端子のそれぞれについて、当該給電端子についてのコイルの延出及び到達が、複数回行われている。さらに、隣接する異相(W相とU相、U相とV相、V相とW相)のコイルは、互いに巻き回し方向が同じである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-041948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のモータでは、それぞれの給電端子についてコイルの延出及び到達が複数回行われている。さらに、隣接する異相のコイルの巻き回し方向が同じであることで、異相のコイルに限らず、同相のコイル内であってもコイルの渡り線の交錯を避けにくい状態にあった。このように、特許文献1のモータでは、コイルの渡り線同士が干渉する箇所が多くなる虞があった。
【0005】
本発明の目的は、コイルの渡り線同士の干渉を抑制することができるモータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のモータ装置は、筒状の本体部及び前記本体部から径方向の外側に突出された複数のティースを備え、前記径方向にロータ本体と対向するステータコアと、前記本体部の周方向に沿って引き回された導線と、前記周方向に順番に並んだ第1相の第1端子、第2相の第2端子及び第3相の第3端子を備え、前記ステータコアの軸方向の一端面に位置し、前記導線に電流を供給するターミナルと、を有し、前記導線は、前記第1端子と前記第2端子を接続する第1配線部と、前記第2端子と前記第3端子を接続する第2配線部と、前記第3端子と前記第1端子を接続する第3配線部と、を有し、前記第1配線部、前記第2配線部及び前記第3配線部のそれぞれは、前記複数のティースに巻かれた複数のコイル部を有し、前記第1端子から前記第2端子への前記第1配線部の引き回し方向と、前記第3端子から前記第1端子への前記第3配線部の引き回し方向とは、前記周方向の一方側に向かう順方向に揃っており、前記第2端子から前記第3端子への前記第2配線部の引き回し方向は、前記順方向とは反対側に向かう逆方向である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、第1配線部、第3配線部は、第1端子、第3端子からそれぞれ順方向に引き回されている。一方、第2配線部は、第2端子から逆方向に引き回されている。このため、ターミナルの第2端子及び第3端子の付近では、第2配線部のうち、第2端子から逆方向に延びる渡り線の部分と、第3端子に向かう渡り線の部分とが交錯しにくくなる。これにより、第1配線部、第2配線部及び第3配線部がそれぞれ順方向に引き回されている構成と比べて、渡り線同士の干渉を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るワイパモータの斜視図である。
図2図1のA-A線に沿う断面図である。
図3図1のワイパモータのステータユニット及びロータユニットを示す平面図である。
図4図1のワイパモータのステータユニットを示す斜視図である。
図5図4のステータユニットの各ティースに巻かれた各コイル部の巻き方向を示す説明図である。
図6図5の3相の導線がデルタ結線された状態を模式的に示す説明図である。
図7図5の3相の導線における各コイル部での巻き方向を模式的に示す展開図である。
図8】U相の端子の位置と第1コイルグループでの導線の巻き始め位置との関係を示す説明図である。
図9】V相の端子の位置と第2コイルグループでの導線の巻き始め位置との関係を示す説明図である。
図10】W相の端子の位置と第3コイルグループでの導線の巻き始め位置との関係を示す説明図である。
図11】第2実施形態に係るワイパモータのステータユニットを示す平面図である。
図12図11の各コイル部での巻き方向を模式的に示す展開図である。
図13図11の一部を拡大した平面図である。
図14図11の2本の導線がデルタ結線された状態を模式的に示す説明図である。
図15図14の2本の導線がステータコアの軸方向の一方側と他方側とで引き回しされる状態を示す側面図である。
図16図11のステータユニットの第1変形例について、各コイル部での巻き方向を模式的に示す展開図である。
図17図16の第1変形例について、2本の導線がデルタ結線された状態を模式的に示す説明図である。
図18図11のステータユニットの第2変形例について、各コイル部での巻き方向を模式的に示す展開図である。
図19図18の第2変形例について、2本の導線がデルタ結線された状態を模式的に示す説明図である。
図20】第3実施形態に係るワイパモータの各コイル部での巻き方向を模式的に示す展開図である。
図21図20の複数のコイル部のうち1組のコイル部に導線が巻かれる状態を模式的に示す説明図である。
図22図20の複数のコイル部のうち他の1組のコイル部に導線が巻かれる状態を模式的に示す説明図である。
図23】第3実施形態に対する第1比較例として、複数のコイル部のうち1組のコイル部に導線が巻かれる状態を模式的に示す説明図である。
図24】第3実施形態に対する第2比較例として、複数のコイル部のうち他の1組のコイル部に導線が巻かれる状態を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の第1実施形態について、図1から図10までを参照して説明する。なお、図1から図10までにおいて、同一又は同様の構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、図1から図10までにおいては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や、一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合、「第1」、「第2」等の用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0010】
以下の説明において、「軸方向」とは、後述するステータコア72(図2)の中心軸CA(図2)が延びている方向を意味する。「周方向」とは、ステータコア72の本体部74(図4)の周方向を意味する。「径方向」とは、本体部74の径方向を意味する。軸方向と径方向は直交している。ここで、軸方向をZ方向として、矢印Zで示す。軸方向は、一例として、上下方向に沿っている。矢印Zの先端側が上側に相当し、矢印Zの基端側が下側に相当する。
【0011】
後述する回転軸SH1と出力軸SH2が並ぶ方向をX方向として、矢印Xで示す。X方向は、一例として、左右方向である。矢印Xの先端側が右側に相当し、矢印Xの基端側が左側に相当する。X方向及びZ方向の両方と直交する方向をY方向として、矢印Yで示す。Y方向は、一例として、前後方向である。矢印Yの先端側が手前側に相当し、矢印Yの基端側が奥側に相当する。
【0012】
[第1実施形態]
図1に示される第1実施形態のワイパモータ10は、自動車等の車両の前方に搭載される不図示のワイパ装置の駆動源である。ワイパモータ10は、モータ装置の一例であり、車両の不図示のフロントガラスの近傍に搭載される。ワイパモータ10は、車室内に設けられた不図示のワイパスイッチの操作により作動する。フロントガラス上に揺動自在に設けられた不図示のワイパ部材は、ワイパモータ10の作動によって往復しながら、払拭動作を行う。
【0013】
ワイパモータ10は、ギヤ部20及びモータ本体部40を備えている。ギヤ部20及びモータ本体部40は、複数の固定ねじS1により強固に固定されている。
【0014】
〔ギヤ部〕
図2に示されるように、ギヤ部20は、ギヤハウジング22と、ヘリカルギヤ28と、出力軸SH2とを有している。
【0015】
ギヤハウジング22は、溶融したアルミ材料等を射出成形することで、段付きの略皿状に形成されている。また、ギヤハウジング22は、ギヤ収容部24と、ベースプレート取付部26と、軸受部材収容部36とを有している。ギヤ収容部24は、ヘリカルギヤ28を回転自在に収容している。ギヤハウジング22には、出力軸SH2を回転自在に支持する筒状の軸受部29が設けられている。これにより、出力軸SH2は、ギヤハウジング22に対して、ガタつくことなくスムーズに回転自在に支持される。
【0016】
出力軸SH2は、Z方向に沿った中心軸CBを有する略円柱状に形成されている。出力軸SH2の下端部は、円板状の軸固定部32に固定されている。軸固定部32は、不図示のピン及びねじによって、ヘリカルギヤ28の中央上部に固定されている。ヘリカルギヤ28の中央下部には、略円板状のセンサマグネット34が固定されている。センサマグネット34は、ヘリカルギヤ28の回転位置の検出に用いられる。
【0017】
軸受部材収容部36は、出力軸SH2に対してX方向の右側にずれた位置にある。軸受部材収容部36の内部には、第3軸受B3が収容されている。第3軸受B3は、後述する回転軸SH1の上端部を回転自在に支持する。なお、第3軸受B3は、回転軸SH1の径方向の移動は規制しているが、回転軸SH1のスラスト方向の移動は規制していない。
【0018】
ギヤ収容部24のうち、軸受部材収容部36に対する下側の部分には、バックアップ部材38が固定されている。バックアップ部材38は、プラスチック等の樹脂材料から成る。バックアップ部材38は、後述するピニオンギヤ66の外周面と微小の隙間をあけて配置されている。また、バックアップ部材38は、ピニオンギヤ66の周方向の半分を覆うように配置されている。これにより、バックアップ部材38は、出力軸SH2に大きな外力が付加された場合に、ヘリカルギヤ28から押付力を受けたピニオンギヤ66が、湾曲することを防いでいる。
【0019】
〔モータ本体部〕
図2に示されるように、モータ本体部40は、モータハウジング42と、ブラシレスモータ60とを有している。
【0020】
<モータハウジング>
モータハウジング42は、溶融したアルミ材料等を射出成形することで、段付きの略皿状に形成されている。モータハウジング42は、モータ収容部44、ベース装着部48及びベースプレート56を含んでいる。
【0021】
モータ収容部44は、底壁45と、固定壁46と、側壁47と、を有している。モータ収容部44の内部には、ブラシレスモータ60が収容されている。底壁45は、Z方向に所定の厚さを有する略円板状に形成されている。固定壁46は、底壁45の中央部からZ方向の上側に直立された円筒形状の壁部である。固定壁46には、第1軸受B1が固定されている。側壁47は、底壁45の外縁部からZ方向の上側に直立されている。
【0022】
側壁47の上端部には、X-Y面に沿ったフランジ47Aが設けられている。フランジ47Aは、ベースプレート取付部26と共に、ベースプレート56をZ方向に挟んでいる。フランジ47A及びベースプレート56は、固定ねじS1により、ベースプレート取付部26に固定されている。
【0023】
ベース装着部48は、モータ収容部44に対してX方向の左側に位置しており、モータ収容部44と隣り合っている。また、ベース装着部48は、出力軸SH2に対する下側に位置している。ベース装着部48の内側には、センサ基板52を保持する保持部材54が装着されている。
【0024】
センサ基板52には、一例として、1つのホールセンサHS1と、3つのホールセンサHS2とが設けられている。なお、図2では、3つのホールセンサHS2のうち1つのみが示されており、残り2つのホールセンサHS2の図示が省略されている。
【0025】
ホールセンサHS1は、センサマグネット34の回転位置を検出する。つまり、ホールセンサHS1は、ヘリカルギヤ28及び出力軸SH2の回転位置の検出に用いられる。不図示のコントローラは、ホールセンサHS1からの検出信号に基づいて、出力軸SH2の回転状態を把握する。
【0026】
3つのホールセンサHS2は、後述するU相、V相、W相に対応している。上記のコントローラは、それぞれのホールセンサHS2からの検出信号(矩形波信号)に基づいて、回転軸SH1の回転状態(回転速度や回転方向等)を把握し、かつ回転軸SH1の回転状態を精度良く制御する。
【0027】
ベースプレート56は、Z方向に所定の厚さを有する部材であり、モータ収容部44を上側から覆っている。ベースプレート56の下部には、第2軸受B2が固定されている。第2軸受B2は、第1軸受B1に対する上側に位置している。第2軸受B2は、第1軸受B1及び第3軸受B3と共に、回転軸SH1を回転自在に支持している。
【0028】
<ブラシレスモータ>
ブラシレスモータ60は、ロータユニット62及びステータユニット70を備えている。
【0029】
(ロータユニット)
ロータユニット62は、丸鋼棒からなる回転軸SH1と、略皿状に形成されたロータ本体64と、を有している。回転軸SH1のZ方向の下部は、第1軸受B1及び第2軸受B2により回転自在に支持されている。回転軸SH1の上端部は、第3軸受B3により回転自在に支持されている。回転軸SH1のZ方向の中央に対する上部には、ピニオンギヤ66が一体に設けられている。ピニオンギヤ66は、ナーリング加工等により螺旋状に形成されている。
【0030】
ロータ本体64は、回転軸SH1を回転させるものである。ロータ本体64は、鋼板(磁性体)をプレス加工等することで、断面が略U字形状に形成されている。ロータ本体64は、ロータ底壁64Aと、ロータ底壁64Aの外縁部からZ方向の上側に延出された筒状のロータ側壁64Bと、を備えている。
【0031】
ロータ底壁64Aの中心部分(回転中心部)には、ボス部64Cが一体に設けられている。ボス部64Cは、ロータ底壁64Aから回転軸SH1の軸方向に直立された筒状の部位である。ボス部64Cには、回転軸SH1の下部が圧入により強固に固定されている。このように、回転軸SH1の基端側部分がロータ底壁64Aに固定されていることで、回転軸SH1は、ロータ本体64と一体となって回転される。
【0032】
図3に示されるように、ロータ側壁64Bの径方向内側に位置する内周面65には、一例として、14極のマグネットMGが固定されている。マグネットMGは、Z方向から見て略瓦状(略円弧形状)に形成されている。これらのマグネットMGは、ロータ本体64の周方向に等間隔で並べられ、かつロータ側壁64Bに対して、エポキシ樹脂系の接着剤により強固に固定されている。14極のマグネットMGに対する径方向の内側には、後述するステータコア72が入り込んでいる。
【0033】
(ステータユニット)
図4に示されるように、ステータユニット70は、一例として、ステータコア72と、インシュレータ76と、ターミナル82と、導線LWと、を有している。
【0034】
<ステータコア>
ステータコア72は、筒状(円筒状)の本体部74及び複数のティースTを備え、本体部74の径方向にロータ本体64(図3)と対向している。ステータコア72は、複数の薄い鋼板(磁性体)をZ方向に積層することで形成されている。本体部74の内周部には、ベースプレート56(図2)にステータコア72を固定するための固定部75が3箇所設けられている。
【0035】
複数のティースTは、本体部74の外周面から径方向の外側に放射状に突出されている。具体的には、複数のティースTは、一例として、ティースT1、T2、T3、T4、T5、T6、T7、T8、T9、T10、T11、T12から成る。ティースT1からティースT12までは、ステータコア72を平面視した場合、時計回り方向(順方向)に等間隔で順番に並んでいる。なお、「平面視」とは、Z方向の上側(後述するターミナル82が位置する側)からステータコア72を見ることを意味する。
【0036】
<インシュレータ>
インシュレータ76は、プラスチック等の絶縁体から成り、本体部74の上端部及び下端部を覆うと共に、複数のティースTの導線LWが巻かれる部分を覆っている。インシュレータ76は、ティースT1からティースT12までの外周面は覆っていない。換言すると、ティースT1からティースT12までの最外周に位置する部分は、径方向に露出されている。なお、インシュレータ76を構成する部位のうち、本体部74の上端部を覆う円筒状の部分を上縁部77とする。上縁部77は、ステータコア72の軸方向の一端面72Aに設けられている。
【0037】
<ターミナル>
ターミナル82は、上縁部77に設けられている。換言すると、ターミナル82は、ステータコア72の軸方向の一端面72Aに位置している。ターミナル82は、不図示のコントローラから所定のタイミングで供給された電流を、導線LWに供給する端子部である。具体的には、ターミナル82は、本体部74の周方向(平面視で時計回り方向)に順番に並んだ第1相の第1端子84と、第2相の第2端子86と、第3相の第3端子88と、を備えている。
【0038】
第1端子84、第2端子86及び第3端子88は、一例として、本体部74の周方向のうち中心角が60°程度の範囲内で並んでいる。また、第1端子84、第2端子86及び第3端子88は、周方向に等間隔で並んでいる。
【0039】
<導線>
図6に示されるように、導線LWは、導電性を有する1本の線材から成り、第1相の一例であるU相、第2相の一例であるV相、第3相の一例であるW相に対応した部材である。また、導線LWは、本体部74(図4)の周方向に沿って引き回されている。導線LWは、第1端子84と第2端子86を接続する第1配線部LW1と、第2端子86と第3端子88を接続する第2配線部LW2と、第3端子88と第1端子84を接続する第3配線部LW3と、を有している。なお、第1配線部LW1、第2配線部LW2、第3配線部LW3は、1本の導線LWについて3つの部位を区別するための名称であり、導線LWが3本あることを意味するものではない。
【0040】
第1配線部LW1、第2配線部LW2及び第3配線部LW3のそれぞれは、複数のティースTのそれぞれに所定の巻き数で巻かれた複数のコイル部C(図4)を有している。なお、1本の導線LWにおいて、複数のコイル部Cの間の部分(ティースTに巻かれていない部分)を、渡り線K(図7)と称する。
【0041】
図7には、1本の導線LWの引き回し状態、及び複数のコイル部Cでの巻き状態が模式的に示されている。なお、図7は、各コイル部Cでの導線LWの巻き方向を示すものであり、各コイル部Cでの導線LWの巻き数を表すものではない。第1配線部LW1は実線、第2配線部LW2は点線、第3配線部LW3は一点鎖線でそれぞれ区別されている。図7に示された端子A1、A2、A3は、図7において導線LWの右端と左端が繋がっていることを表す仮想の端子である。
【0042】
図7に示されるように、第1配線部LW1は、渡り線K1と、後述する第1コイル部C1、第2コイル部C2、第7コイル部C7及び第8コイル部C8と、を含んでいる。第2配線部LW2は、渡り線K2と、後述する第5コイル部C5、第6コイル部C6、第11コイル部C11及び第12コイル部C12と、を含んでいる。第3配線部LW3は、渡り線K3と、後述する第3コイル部C3、第4コイル部C4、第9コイル部C9及び第10コイル部C10と、を含んでいる。
【0043】
なお、渡り線K2のうち、第2端子86から第12コイル部C12までの部分を渡り線K2Aとし、第5コイル部C5から第3端子88までの部分を渡り線K2Bとして区別する。
【0044】
図4に示されるように、複数のコイル部Cは、平面視で順方向(時計回り方向)に並ぶ第1コイル部C1、第2コイル部C2、第3コイル部C3、第4コイル部C4、第5コイル部C5、第6コイル部C6、第7コイル部C7、第8コイル部C8、第9コイル部C9、第10コイル部C10、第11コイル部C11及び第12コイル部C12を有している。第1コイル部C1はティースT1に巻かれた部分、第12コイル部C12はティースT12に巻かれた部分というように、第1コイル部C1から第12コイル部C12までが、ティースT1からティースT12までと1対1で対応している。
【0045】
図5に示されるように、第1コイル部C1はU-相に対応している。以下、第2コイル部C2はU+相、第3コイル部C3はW+相、第4コイル部C4はW-相、第5コイル部C5はV-相、第6コイル部C6はV+相に対応している。さらに、第7コイル部C7はU+相、第8コイル部C8はU-相、第9コイル部C9はW-相、第10コイル部C10はW+相、第11コイル部C11はV+相、第12コイル部C12はV-相に対応している。このように、複数のコイル部Cは、ステータユニット70を平面視した場合、時計回り方向にU-、U+、W+、W-、V-、V+、U+、U-、W-、W+、V+、V-の順に並んでいる。
【0046】
各相の符号の「+」は、本体部74の中心CPから複数のコイル部Cをそれぞれ見た場合に、ティースTへの導線LW(図4)の巻き方向が、時計回り方向であることを表している。各相の符号の「-」は、中心CPから複数のコイル部Cをそれぞれ見た場合に、ティースTへの導線LWの巻き方向が、反時計回り方向であることを表している。図5では、ティースT2に巻かれた第2コイル部C2について、巻入り位置(図示の黒丸印)と巻き出し位置(図示のX印)との距離が最も短くなるように結んだ場合の距離L1が示されている。
【0047】
図3に示されるように、ブラシレスモータ60は、一例として、合計12個のティースT(図4)を備えている。換言すると、ブラシレスモータ60は、合計12個のスロットを備えている。また、ロータユニット62は、14極のマグネットMGを備えている。すなわち、本実施形態に係るブラシレスモータ60は、「14極12スロット形」のブラシレスモータとなっている。
【0048】
図6に示されるように、U相、V相、W相の導線LWは、「デルタ結線」されている。これにより、「スター結線」で必要となる中性点を形成するコイルあるいは導電部材が不要となるため、ブラシレスモータ60(図3)の構造が簡素化されている。なお、デルタ結線の導線LWについて、U1はU-相、U2はU+相、U7はU+相、U8はU-相、V12はV-相、V11はV+相、V6はV+相、V5はV-相、W3はW+相、W4はW-相、W9はW-相、W10はW+相に対応している。
【0049】
図7に示されるように、第1端子84から第2端子86への第1配線部LW1の引き回し方向と、第3端子88から第1端子84への第3配線部LW3の引き回し方向とは、本体部74(図4)の周方向の一方側に向かう順方向(図7の右方向)に揃えられている。第2端子86から第3端子88への第2配線部LW2の引き回し方向は、順方向とは反対側に向かう逆方向(図7の左方向)である。
【0050】
第1配線部LW1は、第1端子84から、第1コイル部C1、第2コイル部C2、第7コイル部C7、第8コイル部C8の順で引き回されており、第2端子86に到達している。第2配線部LW2は、第2端子86から、第12コイル部C12、第11コイル部C11、第6コイル部C6、第5コイル部C5の順で引き回されており、第3端子88に到達している。第3配線部LW3は、第3端子88から、第3コイル部C3、第4コイル部C4、第9コイル部C9、第10コイル部C10の順で引き回されており、第1端子84に到達している。
【0051】
本体部74の中心CP(図5)から複数のコイル部Cをそれぞれ見た場合に、第1コイル部C1、第4コイル部C4、第5コイル部C5、第8コイル部C8、第9コイル部C9及び第12コイル部C12での導線LWの巻き方向は、時計回り方向である。
【0052】
一方、中心CPから複数のコイル部Cをそれぞれ見た場合に、第2コイル部C2、第3コイル部C3、第6コイル部C6、第7コイル部C7、第10コイル部C10及び第11コイル部C11での導線LWの巻き方向は、反時計回り方向である。
【0053】
一例として、第2コイル部C2について、巻入り位置から巻き出し位置までの引き回し方向の距離は、L1(図5の距離L1に相当)となる。ここで、第2コイル部C2において、巻き方向が異なる場合、巻入り位置及び巻き出し位置が異なるので、少なくとも距離L1に相当する分だけ渡り線Kの長さが異なることになる。このことは、他のコイル部Cについても同様である。
【0054】
図8図9及び図10に示されるように、U相の第1端子84、V相の第2端子86及びW相の第3端子88は、12個のコイル部C(ティースT)のうち、ティースT1(U-)、ティースT2(U+)と、これらに対して周方向に隣り合うティースT3(W+)、ティースT12(V-)との合計4つから成るティース群に対応する位置に配置されている。ティース群に対応する位置とは、平面視でティース群の少なくとも一部と径方向に並ぶ位置である。
【0055】
図8に示されるように、第1コイル部C1から第12コイル部C12までのうち、本体部74の周方向に隣り合う3つのコイル部を1つのコイルグループGとする。ステータユニット70は、合計12組のコイルグループGを有している。なお、図8から図10までに示されているのは、それぞれ1組のコイルグループGのみであり、残り11組のコイルグループGの図示は省略されている。コイルグループGは、一点鎖線Gで示されている。
【0056】
複数(12組)のコイルグループGのうち、第1端子84と径方向に並んだ第1コイルグループG1は、第1コイル部C1を含んでいる。具体的には、第1コイルグループG1は、第11コイル部C11と、第12コイル部C12と、第1コイル部C1とを有している。そして、第1コイル部C1は、第1端子84から延びる第1配線部LW1の巻き始めのコイル部Cである。
【0057】
図9に示されるように、第2端子86と径方向に並んだ第2コイルグループG2は、第12コイル部C12を含んでいる。具体的には、第2コイルグループG2は、第12コイル部C12と、第1コイル部C1と、第2コイル部C2とを有している。そして、第12コイル部C12は、第2端子86から延びる第2配線部LW2の巻き始めのコイル部Cである。
【0058】
図10に示されるように、第3端子88と径方向に並んだ第3コイルグループG3は、第3コイル部C3を含んでいる。具体的には、第3コイルグループG3は、第1コイル部C1と、第2コイル部C2と、第3コイル部C3とを有している。そして、第3コイル部C3は、第3端子88から延びる第3配線部LW3の巻き始めのコイル部Cである。
【0059】
[第1実施形態の作用]
図7に示されるように、ワイパモータ10によれば、第1配線部LW1、第3配線部LW3が第1端子84、第2端子86から順方向に引き回されている。
【0060】
一方、第2配線部LW2は、第2端子86から逆方向に引き回されている。このため、ターミナル82の第2端子86及び第3端子88の付近では、第2配線部LW2のうち、第2端子86から逆方向に延びる渡り線K2Aと、第3端子88に向かう渡り線K2Bとが交錯しにくくなる。具体的には、一点鎖線で示された領域Sにおいて、渡り線K2Aと渡り線K2Bが交錯しにくくなる。これにより、第1配線部LW1、第2配線部LW2及び第3配線部LW3がそれぞれ順方向に引き回されている構成と比べて、導線LWの渡り線K(K1、K2、K3)同士の干渉を抑制することができる。
【0061】
ワイパモータ10によれば、本体部74の中心CP(図5)からそれぞれのコイル部Cを見た場合に、第1コイル部C1、第4コイル部C4、第5コイル部C5、第8コイル部C8、第9コイル部C9及び第12コイル部C12での導線LWの巻き方向は、時計回り方向である。
【0062】
一方、中心CPから見た場合に、第2コイル部C2、第3コイル部C3、第6コイル部C6、第7コイル部C7、第10コイル部C10及び第11コイル部C11での導線LWの巻き方向は、反時計回り方向である。このように、1本の導線LWを引き回すと共に各ティースTにおける巻き方向を予め設定しておくことで、渡り線K1の長さを、渡り線K2や渡り線K3に比べて短く設定することが可能となる。つまり、導線LWにおいて、渡り線Kの長さが短い部分を設定し易くなり、導線LWの渡り線K(K1、K2、K3)どうしの干渉を抑制することが出来る。
【0063】
図8に示されるように、第1端子84と径方向に並んだ第1コイルグループG1は、第1配線部LW1において最初に巻かれる第1コイル部C1を含んでいる。このため、第1コイルグループG1が第1コイル部C1を含んでいない構成に比べて、第1端子84から第1コイル部C1までの導線LWの距離が短くなる。これにより、第1配線部LW1に大きな張力を付与した状態で巻き始め易くなるので、ティースT1への導線LWのフッキング時において、導線LWの弛みを抑制することができる。
【0064】
図9に示されるように、第2端子86と径方向に並んだ第2コイルグループG2は、第2配線部LW2において最初に巻かれる第12コイル部C12を含んでいる。このため、第2コイルグループG2が第12コイル部C12を含んでいない構成に比べて、第2端子86から第12コイル部C12までの導線LWの距離が短くなる。これにより、第2配線部LW2に大きな張力を付与した状態で巻き始め易くなるので、ティースT12への導線LWのフッキング時において、導線LWの弛みを抑制することができる。
【0065】
図10に示されるように、第3端子88と径方向に並んだ第3コイルグループG3は、第3配線部LW3において最初に巻かれる第3コイル部C3を含んでいる。このため、第3コイルグループG3が第3コイル部C3を含んでいない構成に比べて、第3端子88から第3コイル部C3までの導線LWの距離が短くなる。これにより、第3配線部LW3に大きな張力を付与した状態で巻き始め易くなるので、ティースT3への導線LWのフッキング時において、導線LWの弛みを抑制することができる。
【0066】
また、ワイパモータ10では、ターミナル82の結線部付近での渡り線Kの交錯が緩和されることで、ティースTに導線LWを巻くときの導線LWのたるみを抑制すると共に、各相間での導線LWの絶縁性、耐圧性を向上させることが可能となる。
【0067】
さらに、ワイパモータ10では、1本の導線LWをデルタ結線することで、バスバーなどの別体の結線部材が不要となる。これにより、バスバーを用いる構成と比べて、組付け工程や部品点数が削減されるので、ワイパモータ10のコストを抑えることができる。
【0068】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について、図11から図15までを参照して説明する。なお、図11から図15までにおいて、第1実施形態と同一又は同様の構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、図11から図15までにおいては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や、一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0069】
図11に示される第2実施形態のワイパモータ90は、ギヤ部20及びモータ本体部40(図1)を備えたモータ装置の一例である。ワイパモータ90は、ワイパモータ10(図1)のステータユニット70(図3)が、ステータユニット100に置き換えられた点が異なる。ステータユニット100以外の構成については、ワイパモータ10と同様の構成である。
【0070】
(ステータユニット)
図11に示されるように、ステータユニット100は、ステータコア72と、インシュレータ76と、ターミナル92と、第1導線LA及び第2導線LBと、を有している。
【0071】
<ターミナル>
ターミナル92は、上縁部77に設けられている。ターミナル92は、不図示のコントローラから所定のタイミングで供給された電流を、第1導線LA及び第2導線LBに供給する端子部である。具体的には、ターミナル92は、本体部74の周方向に順番に並んだ第1相の第1端子94と、第2相の第2端子96と、第3相の第3端子98と、を備えている。第1端子94、第2端子96及び第3端子98は、一例として、本体部74の周方向のうち中心角が70°程度の範囲内で並んでいる。また、第1端子94、第2端子96及び第3端子98は、周方向にほぼ等間隔で並んでいる。
【0072】
<第1導線及び第2導線>
図11では、第1導線LA及び第2導線LBについて、ターミナル92からティースTへ延びていく部分が実線で示されており、ティースTからターミナル92に戻ってくる部分が点線で示されている。なお、第1導線LA及び第2導線LBは、ターミナル92との接続状態を分かりやすく示すために直線で示されているが、実際はインシュレータ76に沿って円弧状に引き回されている。
【0073】
図12には、第1導線LA及び第2導線LBの引き回し状態、及び複数のコイル部Cでの巻き状態が模式的に示されている。なお、図12は、各コイル部Cでの第1導線LA又は第2導線LBの巻き方向を示すものであり、各コイル部Cでの第1導線LA又は第2導線LBの巻き数を表すものではない。図12に示された端子A1、A2、A3は、第1導線LA又は第2導線LBの右端と左端が繋がっていることを表す仮想の端子である。
【0074】
第1導線LA及び第2導線LBは、それぞれ、導電性を有する1本の線材から成る。つまり、ワイパモータ90では、2本の導線が用いられている。第1導線LAは、実線で示されている。第2導線LBは、一点鎖線で示されている。第1導線LAは、第1端子94と第2端子96を接続すると共に第2端子96と第3端子98を接続している。第2導線LBは、第3端子98と第1端子94とを接続している。第1導線LA及び第2導線LBは、本体部74(図11)の周方向に沿って引き回されている。
【0075】
第1導線LAは、一例として、第1端子94と第2端子96を接続する第1配線部LA1と、第2端子96と第3端子98を接続する第2配線部LA2と、を含む。なお、第1配線部LA1と第2配線部LA2は、1本の第1導線LAについて2つの部位を区別するための名称であり、第1導線LAが2本あることを意味するものではない。
【0076】
第2導線LBは、一例として、残りの1つである第3配線部LB1を含む。このように、第1配線部LA1及び第2配線部LA2は、第1導線LAに含まれている。第3配線部LB1は、第2導線LBに含まれている。第1配線部LA1、第2配線部LA2及び第3配線部LB1のそれぞれは、複数のティースT(図11)のそれぞれに所定の巻き数で巻かれた複数のコイル部Cを有している。
【0077】
第1配線部LA1は、第1コイル部C1、第2コイル部C2、第7コイル部C7及び第8コイル部C8を繋ぐ第1渡り線部KAを有する。換言すると、第1渡り線部KAは、第1配線部LA1の部位のうち、第1コイル部C1、第2コイル部C2、第7コイル部C7及び第8コイル部C8を除いた残りの部位である。
【0078】
第2配線部LA2は、第5コイル部C5、第6コイル部C6、第11コイル部C11及び第12コイル部C12を繋ぐ第2渡り線部KBを有する。換言すると、第2渡り線部KBは、第2配線部LA2の部位のうち、第5コイル部C5、第6コイル部C6、第11コイル部C11及び第12コイル部C12を除いた残りの部位である。なお、第2配線部LA2のうち、第2端子96から第12コイル部C12までの第2渡り線部KBを渡り線K2Aとし、第5コイル部C5から第3端子98までの第2渡り線部KBを渡り線K2Bとする。
【0079】
第3配線部LB1は、第3コイル部C3、第4コイル部C4、第9コイル部C9及び第10コイル部C10を繋ぐ第3渡り線部KCを有する。換言すると、第3渡り線部KCは、第3配線部LB1の部位のうち、第3コイル部C3、第4コイル部C4、第9コイル部C9及び第10コイル部C10を除いた残りの部位である。
【0080】
第1端子94から第2端子96への第1配線部LA1の引き回し方向と、第3端子98から第1端子94への第3配線部LB1の引き回し方向とは、本体部74(図11)の周方向の一方側に向かう順方向(図12の右方向)に揃えられている。第2端子96から第3端子98への第2配線部LA2の引き回し方向は、順方向とは反対側に向かう逆方向(図12の左方向)である。
【0081】
本体部74の中心CP(図11)から複数のコイル部Cをそれぞれ見た場合に、第1コイル部C1、第4コイル部C4、第5コイル部C5、第8コイル部C8、第9コイル部C9及び第12コイル部C12での導線LWの巻き方向は、時計回り方向である。
【0082】
一方、中心CPから複数のコイル部Cをそれぞれ見た場合に、第2コイル部C2、第3コイル部C3、第6コイル部C6、第7コイル部C7、第10コイル部C10及び第11コイル部C11での導線LWの巻き方向は、反時計回り方向である。
【0083】
図13は、ステータユニット100(図11)について、ターミナル92の周辺部を拡大した図である。V相の第12コイル部C12とW相の第3コイル部C3は、U相の第1コイル部C1及び第2コイル部C2を、本体部74の周方向に挟んでいる。ここで、第12コイル部C12、第1コイル部C1、第2コイル部C2及び第3コイル部C3を第4コイルグループG4とする。ターミナル92は、本体部74の径方向において、第4コイルグループG4と対向する位置にある。
【0084】
図14に示されるように、U相、V相、W相の第1導線LA及び第2導線LBは、「デルタ結線」されている。これにより、ワイパモータ90の構造が簡素化されている。なお、実線で示された線が実際の配線であり、二点鎖線で示された線は第1導線LAに相当する部分と、第2導線LBに相当する部分とを区別するための仮想線である。1本の第1導線LAは、第1端子94の位置が巻き始め位置であり、第2端子96を経由して、第3端子98の位置が巻き終わり位置となっている。1本の第2導線LBは、第3端子98の位置が巻き始め位置であり、第1端子94の位置が巻き終わり位置となっている。このように、ステータユニット100では、不図示の巻き線機(フライヤ)を2つ同時に用いることで、第1導線LA及び第2導線LBの複数のコイル部Cを形成している。なお、巻き線機は、フライヤ式に限らず、例えばノズル式の巻き線機であってもよい。
【0085】
図12に示されるように、第1配線部LA1、第2配線部LA2及び第3配線部LB1のうち、第1配線部LA1及び第2配線部LA2は、第1導線LAに含まれている。第3配線部LB1は、第2導線LBに含まれている。第1渡り線部KA、第2渡り線部KB及び第3渡り線部KCのうち、第1導線LAに含まれる第1渡り線部KA及び第2渡り線部KBは、ステータコア72(図2)の中央に対する軸方向の他端側に位置している。第2導線LBに含まれる第3渡り線部KCは、ステータコア72の中央に対する軸方向の一端側に位置している。
【0086】
図15には、U相及びV相の各コイル部C(図12)を有する第1導線LAが、ステータユニット100の上部(軸方向の他端側)で引き回される場合のフライヤの軌道が矢印F1で示されている。また、W相の各コイル部Cを有する第2導線LBが、ステータユニット100の下部(軸方向の一端側)で引き回される場合のフライヤの軌道が矢印F2で示されている。
【0087】
[第2実施形態の作用]
図11から図15までを参照して、第2実施形態のワイパモータ90の作用について説明する。なお、個別の図番の記載は省略する。
【0088】
第1導線LAの渡り線K2A及び渡り線K2Bについては、第1実施形態のワイパモータ10と同様に、渡り線K2Aと渡り線K2Bとの干渉を抑制することができる。また、第2導線LBの引き回されている部分が、第1導線LAの引き回されている部分に対して、ステータコア72の軸方向の一方側と他方側とにずれて位置していることで、より渡り線同士の干渉を低減することができる。なお、「第2導線LBの引き回されている部分」は、第3渡り線部KCのうち、ステータコア72の周方向に沿って引き回されている部分である。「第1導線LAの引き回されている部分」は、第1渡り線部KA及び第2渡り線部KBのうち、ステータコア72の周方向に沿って引き回されている部分である。さらに、第1導線LAと第2導線LBとについて、2つのフライヤ(巻線機)による巻き回しが可能となるため、1つのフライヤにより巻き回しを行う場合と比べて、第1導線LA及び第2導線LBの巻き回しに要する時間を短縮することができる。
【0089】
第2導線LBで巻き回しを行う場合、フライヤを軸方向の一方側から他方側へ移動させる時間が必要となる。ここで、第2導線LBでは、巻き回しにより形成される複数のコイル部Cの数が、第1導線LAの複数のコイル部Cの数(8つ)の半分(4つ)なので、第1導線LAと第2導線LBとの巻き回しに要する時間の差を小さくすることができる。
【0090】
具体的には、第1導線LAを巻く工程では、第1導線LAが、U相の第1端子94へフッキングされ、U相の各ティースTに巻かれる。続いて、第1導線LAが、V相の第2端子96へフッキングされ、V相の各ティースTに巻かれる。さらに、第1導線LAは、W相の第3端子98へフッキングされる。
【0091】
一方、第2導線LBを巻く工程では、第2導線LBが、W相の第3端子98へフッキングされ、第3端子98とは軸方向の反対側で引き回され、W相の各ティースTに巻かれる。さらに、第2導線LBは、第3端子98と軸方向の同じ側で引き回され、V相の第2端子96へフッキングされる。
【0092】
このように、U相、V相及びW相のうち、2つの相を巻く側では、複数のコイル部の形成(巻き線動作)に要する時間が長くなるが、渡り線を引き回す時間は短くなる。一方、U相、V相及びW相のうち、1つの相を巻く側では、複数のコイル部の形成(巻き線動作)に要する時間は短くなるが、渡り線を引き回す時間は長くなる。このように、巻き線動作及び引き回し動作に要する合計の時間は、第1導線LAと第2導線LBとで同程度の時間に調整可能となる。
【0093】
第1導線LAは第1端子94から、第2導線LBは第3端子98から巻き始められることになる。ここで、第1端子94と第3端子98との位置は、第1端子94と第2端子96との位置、または、第2端子96と第3端子98との位置に比べて、本体部74の周方向に離れている。これにより、第1導線LA及び第2導線LBをティースTに巻く場合に、2つの巻線機の干渉を抑制できる。
【0094】
第2実施形態のステータユニット100の第1変形例として、図16及び図17に示されるように、ステータユニット110を用いてもよい。ステータユニット110では、U相の第1端子94と、V相の第2端子96とが、巻き始めの端子となる。
【0095】
第2実施形態のステータユニット100の第2変形例として、図18及び図19に示されるように、ステータユニット120を用いてもよい。ステータユニット120では、V相の第2端子96と、W相の第3端子98とが、巻き始めの端子となる。
【0096】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態について、図20及び図21を参照して説明する。なお、図20及び図21において、第1、第2実施形態と同一又は同様の構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、図20及び図21においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や、一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0097】
図20に示される第3実施形態のワイパモータ130は、ギヤ部20及びモータ本体部40(図1)を備えたモータ装置の一例である。ワイパモータ130は、ワイパモータ10(図1)のステータユニット70(図3)が、ステータユニット140に置き換えられた点が異なる。ステータユニット140以外の構成については、ワイパモータ10と同様の構成である。
【0098】
(ステータユニット)
ステータユニット140は、ステータコア72及びインシュレータ76(図4)と、ターミナル92と、導線LWと、を有している。ステータユニット140は、ステータユニット70と比べて、ティースT(第1コイル部C1から第12コイル部C12まで)における導線LWの巻き方が異なっている。
【0099】
なお、複数のティースTについて、ステータコア72(図4)の周方向に隣り合い且つ同相のコイルが巻かれているものを第1ティースTA及び第2ティースTBと称する。つまり、複数のティースTは、周方向に隣り合い且つ同相の第1ティースTA及び第2ティースTB(図21)を含む。ティースT1、T3、T5、T7、T9、T11は、第1ティースTAの一例である。ティースT2、T4、T6、T8、T10、T12は、第2ティースTBの一例である。
【0100】
第1配線部LW1、第2配線部LW2及び第3配線部LW3は、それぞれ、第1ティースTAに巻かれたコイル部C1、C3、C5、C7、C9、C11と、第2ティースTBに巻かれたコイル部C2、C4、C6、C8、C10、C12と、を有する。コイル部C1、C3、C5、C7、C9、C11は、一のコイル部の一例である。コイル部C2、C4、C6、C8、C10、C12は、他のコイル部の一例である。
【0101】
ここでは、例として、二点鎖線で示された領域SA内の第7コイル部C7及び第8コイル部C8と、領域SB内の第9コイル部C9及び第10コイル部C10について説明する。第1コイル部C1及び第2コイル部C2、第3コイル部C3及び第4コイル部C4、第5コイル部C5及び第6コイル部C6、第11コイル部C11及び第12コイル部C12については、渡り線の配置を除いて同様の構成であるため、説明を省略する。
【0102】
図21には、導線LWの一部がティースT7及びティースT8に巻かれた状態が模式的に示されている。先述の通り、ティースT7は第1ティースTAの一例であり、ティースT8は第2ティースTBの一例である。導線LWのうち、第1ティースTA(T7)に巻かれた部分である第7コイル部C7の巻き始め部分をP1、巻き終わり部分をP2とする。導線LWのうち、第2ティースTB(T8)に巻かれた部分である第8コイル部C8の巻き始め部分をP3、巻き終わり部分をP4とする。なお、ステータコア72の一端面72Aに対して、ステータコア72の軸方向の他端側に位置する面を他端面72Bとする。
【0103】
導線LWの渡り線Kのうち、ステータコア72の周方向に沿って引き回されている部分を渡り部KSとする。渡り部KSから巻き始め部分P1へ延びる部分を引入部KMとする。第7コイル部C7の巻き終わり部分P2から第8コイル部C8の巻き始め部分P3へ延びる部分を中間渡り部KTとする。第8コイル部C8の巻き終わり部分P4から渡り部KSに延びる部分を引出部KDとする。渡り部KS、引入部KM、中間渡り部KT及び引出部KDは、いずれも渡り線K(導線LW)に含まれる。
【0104】
導線LWのうち、第1ティースTA(T7)への第7コイル部C7の巻き始め部分P1は、ステータコア72の軸方向の他端面72Bに位置している。導線LWのうち、第1ティースTA(T7)への第7コイル部C7の巻き終わり部分P2は、ステータコア72の軸方向の他端面72Bに位置している。導線LWのうち、第2ティースTB(T8)の第8コイル部C8の巻き始め部分P3は、ステータコア72の軸方向の一端面72Aに位置している。導線LWのうち、第2ティースTB(T8)の第8コイル部C8の巻き終わり部分P4は、ステータコア72の軸方向の一端面72Aに位置している。第1ティースTA(T7)の突出方向から見たときに、第7コイル部C7の巻き始め部分P1及び巻き終わり部分P2は重なっている。第2ティースTB(T8)の突出方向から見たときに、第8コイル部C8の巻き始め部分P3及び巻き終わり部分P4は重なっている。中間渡り部KTは、他端面72Bから第1ティースTA(T7)と第2ティースTB(T8)との間を通って一端面72Aへ延び且つ第7コイル部C7と第8コイル部C8とを繋いでいる。
【0105】
図22には、他の例として、導線LWの一部がティースT9及びティースT10に巻かれた状態が模式的に示されている。先述の通り、ティースT9は第1ティースTAの一例であり、ティースT10は第2ティースTBの一例である。導線LWのうち、第1ティースTA(T9)への第9コイル部C9の巻き始め部分をP5とする。導線LWのうち、第1ティースTA(T9)への第9コイル部C9の巻き終わり部分をP6とする。導線LWのうち、第2ティースTB(T10)への第10コイル部C10の巻き始め部分をP7とする。導線LWのうち、第2ティースTB(T10)への第10コイル部C10の巻き終わり部分をP8とする。
【0106】
渡り部KSから巻き始め部分P5へ延びる部分を引入部KNとする。第9コイル部C9の巻き終わり部分P6から第10コイル部C10の巻き始め部分P7へ延びる部分を中間渡り部KTとする。第10コイル部C10の巻き終わり部分P8から渡り部KSに延びる部分を引出部KGとする。渡り部KS、引入部KN、中間渡り部KT及び引出部KGは、いずれも渡り線K(導線LW)に含まれる。
【0107】
導線LWのうち、第1ティースTA(T9)への第9コイル部C9の巻き始め部分P5は、一端面72Aに位置している。導線LWのうち、第1ティースTA(T9)への第9コイル部C9の巻き終わり部分P6は、一端面72Aに位置している。導線LWのうち、第2ティースTB(T10)への第10コイル部C10の巻き始め部分P7は、他端面72Bに位置している。導線LWのうち、第2ティースTB(T10)への第10コイル部C10の巻き終わり部分P8は、他端面72Bに位置している。第1ティースTA(T9)の突出方向から見たときに、第9コイル部C9の巻き始め部分P5及び巻き終わり部分P6は重なっている。第2ティースTB(T10)の突出方向から見たときに、第10コイル部C10の巻き始め部分P7及び巻き終わり部分P8は重なっている。中間渡り部KTは、一端面72Aから第1ティースTA(T9)と第2ティースTB(T10)との間を通って他端面72Bへ延びると共に、第9コイル部C9と第10コイル部C10とを繋いでいる。
【0108】
<比較例の説明>
図23及び図24を参照して、第3実施形態に対する比較例について説明する。既述の構成については、同一の符号を付して説明を省略する場合がある。図23及び図24では、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や、一部の構成要素が省略されている場合がある。なお、コイル部Cについて、ティースTの外周の4辺のうち、3辺以上の辺に巻き掛けられているものを1ターンのコイル部Cと称する。
【0109】
図23には、第3実施形態(図21)に対する第1比較例として、導線LWの一部がティースT7及びティースT8に巻かれた状態が模式的に示されている。導線LWのうち、第1ティースTA(T7)に巻かれた部分である第7コイル部C7の巻き始め部分をP1´、巻き終わり部分をP2´とする。導線LWのうち、第2ティースTB(T8)に巻かれた部分である第8コイル部C8の巻き始め部分をP3´、巻き終わり部分をP4´とする。
【0110】
図23において、導線LWのうち、第1ティースTA(T7)への第7コイル部C7の巻き始め部分P1´は、ステータコア72の軸方向の一端面72Aに位置している。導線LWのうち、第1ティースTA(T7)への第7コイル部C7の巻き終わり部分P2´は、ステータコア72の軸方向の一端面72Aに位置している。導線LWのうち、第2ティースTB(T8)の第8コイル部C8の巻き始め部分P3´は、ステータコア72の軸方向の一端面72Aに位置している。第2ティースTB(T8)の第8コイル部C8の巻き終わり部分P4´は、ステータコア72の軸方向の一端面72Aに位置している。第1ティースTA(T7)の突出方向から見たときに、第7コイル部C7の巻き始め部分P1´と巻き終わり部分P2´とは重なっていない。第2ティースTB(T8)の突出方向から見たときに、第8コイル部C8の巻き始め部分P3´及び巻き終わり部分P4´は重なっている。中間渡り部KTは、一端面72A上を引き回されており、且つ第7コイル部C7と第8コイル部C8とを繋いでいる。
【0111】
図23に示されるように、第1比較例において、導線LWは、ステータコア72の一端側からティースT6と第1ティースTA(T7)との間に引き入れられる。さらに、導線LWは、第1ティースTA(T7)に巻かれた後で、第2ティースTB(T8)に巻かれ、第2ティースTB(T8)とティースT9との間からステータコア72の一端側へ引き出される。なお、図23においては、第7コイル部C7は2ターン分巻かれた状態が記載されている。
【0112】
ここで、第1比較例では、上記のように第7コイル部C7及び第8コイル部C8が巻かれることで、第7コイル部C7の導線LWの長さと、第8コイル部C8の導線LWの長さとが異なる。具体的には、第7コイルC7は第8コイルC8に比べ、最後の1ターンがティースTの外周の1辺分短い。このため、第7コイル部C7と第8コイル部C8の起磁力が不均一となり、磁気バランスの偏りが生じるおそれがある。
【0113】
さらに、第1比較例では、第1ティースTA(T7)の突出方向から見たときに、第7コイル部C7の巻き始め部分P1´と巻き終わり部分P2´とは重なっていない。これにより、第7コイル部C7が巻き締まらず、導線LWの緩みが生じるおそれがある。
【0114】
図24には、第3実施形態(図22)に対する第2比較例として、導線LWの一部がティースT9及びティースT10に巻かれた状態が模式的に示されている。導線LWのうち、第1ティースTA(T9)に巻かれた部分である第9コイル部C9の巻き始め部分をP5´、巻き終わり部分をP6´とする。導線LWのうち、第2ティースTB(T10)に巻かれた部分である第10コイル部C10の巻き始め部分をP7´、巻き終わり部分をP8´とする。
【0115】
図24において、導線LWのうち、第1ティースTA(T9)への第9コイル部C9の巻き始め部分P5´は、一端面72Aに位置している。導線LWのうち、第1ティースTA(T9)への第9コイル部C9の巻き終わり部分P6´は、一端面72Aに位置している。導線LWのうち、第2ティースTB(T10)への第10コイル部C10の巻き始め部分P7´は、一端面72Aに位置している。導線LWのうち、第2ティースTB(T10)への第10コイル部C10の巻き終わり部分P8´は、一端面72Aに位置している。第1ティースTA(T9)の突出方向から見たときに、第9コイル部C9の巻き始め部分P5´及び巻き終わり部分P6´は重なっている。第2ティースTB(T10)の突出方向から見たときに、第10コイル部C10の巻き始め部分P7´と巻き終わり部分P8´とは重なっていない。中間渡り部KTは、一端面72A上をステータコア72の周方向に沿って引き回され、第7コイル部C7と第8コイル部C8とを繋いでいる。
【0116】
図24に示されるように、第2比較例において、導線LWは、ステータコア72の一端側からティースT8と第1ティースTA(T9)との間に引き入れられる。さらに、導線LWは、第1ティースTA(T9)に巻かれた後で、第2ティースTB(T10)に巻かれ、第2ティースTB(T10)とティースT11との間からステータコア72の一端側へ引き出される。なお、図24においては、第10コイル部C10は2ターン分巻かれた状態が記載されている。
【0117】
ここで、第2比較例では、上記のように第9コイル部C9及び第10コイル部C10が巻かれることで、第9コイル部C9の導線LWの長さと、第10コイル部C10の導線LWの長さとが異なる。具体的には、第10コイルC10は第9コイルC9に比べ、最後の1ターンがティースTの外周の1辺分短い。このため、第9コイル部C9と第10コイル部C10の起磁力が不均一となり、磁気バランスの偏りが生じるおそれがある。
【0118】
さらに、第2比較例では、第2ティースTB(T10)の突出方向から見たときに、第10コイル部C10の巻き始め部分P7´と巻き終わり部分P8´とは重なっていない。これにより、第10コイル部C10が巻き締まらず、導線LWの緩みが生じるおそれがある。
【0119】
[第3実施形態の作用]
第3実施形態のワイパモータ130の作用について、図21及び図22を参照して説明する。なお、第1、第2実施形態と同一又は同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0120】
図21に示されるように、導線LWは、ステータコア72の他端側から第1ティースTA(T7)と第2ティースTB(T8)との間に引き入れられる。さらに、導線LWは、第1ティースTA(T7)に巻かれた後で、第2ティースTB(T8)に巻かれ、第1ティースTA(T7)と第2ティースTB(T8)との間からステータコア72の一端側へ引き出される。
【0121】
ここで、ワイパモータ130では、上記のように第7コイル部C7及び第8コイル部C8が巻かれることで、第7コイル部C7の導線LWの長さと、第8コイル部C8の導線LWの長さとが均一となる。このため、第7コイル部C7と第8コイル部C8の起磁力が均一となり、磁気バランスの偏りが抑制される。これにより、ワイパモータ130としてのモータ特性のばらつきが改善されると共に、ワイパモータ130の作動音を低減させることができる。
【0122】
さらに、第1ティースTA(T7)の突出方向から見たときに、第7コイル部C7の巻き始め部分P1及び巻き終わり部分P2は重なっている。また、第2ティースTB(T8)の突出方向から見たときに、第8コイル部C8の巻き始め部分P3及び巻き終わり部分P4は重なっている。これにより、第7コイル部C7及び第8コイル部C8において、巻き始め部及び巻き終わり部での導線LWの緩みが少なくなる。換言すると、導線LWが巻き締まることで、渡り線Kにテンションを作用させ易くなるので、渡り線Kの緩みにより導線LWに傷が付くことや、絶縁不良又は耐圧不良を抑制することができる。
【0123】
図22に示されるように、導線LWは、ステータコア72の一端側から第1ティースTA(T9)と第2ティースTB(T10)との間に引き入れられる。さらに、導線LWは、第1ティースTA(T9)に巻かれた後で、第2ティースTB(T10)に巻かれ、第1ティースTA(T9)と第2ティースTB(T10)との間からステータコア72の軸方向の他端側へ引き出され、その後、当該軸方向の一端側へ引き回される。
【0124】
ここで、ワイパモータ130では、上記のように第9コイル部C9及び第10コイル部C10が巻かれることで、第9コイル部C9の導線LWの長さと、第10コイル部C10の導線LWの長さとが均一となる。このため、第1、第2比較例と比べて、第9コイル部C9と第10コイル部C10の起磁力が均一となり、磁気バランスの偏りが抑制される。これにより、ワイパモータ130としてのモータ特性のばらつきが改善されると共に、ワイパモータ130の作動音を低減させることができる。
【0125】
さらに、第1ティースTA(T9)の突出方向から見たときに、第9コイル部C9の巻き始め部分P5及び巻き終わり部分P6は重なっている。また、第2ティースTB(T10)の突出方向から見たときに、第10コイル部C10の巻き始め部分P7及び巻き終わり部分P8は重なっている。これにより、第9コイル部C9及び第10コイル部C10において、巻き始め部及び巻き終わり部での導線LWの緩みが少なくなる。換言すると、導線LWが巻き締まることで、渡り線Kにテンションを作用させ易くなるので、渡り線Kの緩みにより導線LWに傷が付くことを抑制でき、且つ絶縁不良又は耐圧不良を抑制することができる。
【0126】
<本実施形態の変形例>
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。以下、変形例について説明する。
【0127】
第1配線部LW1は、第1端子84から、第1コイル部C1、第2コイル部C2、第7コイル部C7、第8コイル部C8の順で引き回されていなくてもよい。第2配線部LW2は、第2端子86から、第12コイル部C12、第11コイル部C11、第6コイル部C6、第5コイル部C5の順で引き回されていなくてもよい。第3配線部LW3は、第3端子88から、第3コイル部C3、第4コイル部C4、第9コイル部C9、第10コイル部C10の順で引き回されていなくてもよい。
【0128】
本体部74の中心CPから複数のコイル部Cをそれぞれ見た場合に、第1コイル部C1、第4コイル部C4、第5コイル部C5、第8コイル部C8、第9コイル部C9及び第12コイル部C12での導線LWの巻き方向が時計回り方向でなくてもよい。また、第2コイル部C2、第3コイル部C3、第6コイル部C6、第7コイル部C7、第10コイル部C10及び第11コイル部C11での導線LWの巻き方向が反時計回り方向でなくてもよい。
【0129】
複数のコイルグループGのうち、第1コイルグループG1が第1コイル部C1を含み、第2コイルグループG2が第12コイル部C12を含まず、且つ第3コイルグループG3が、第3コイル部C3を含まなくてもよい。第1コイルグループG1が第1コイル部C1を含まず、第2コイルグループG2が第12コイル部C12を含み、且つ第3コイルグループG3が、第3コイル部C3を含まなくてもよい。第1コイルグループG1が第1コイル部C1を含まず、第2コイルグループG2が第12コイル部C12を含まず、且つ第3コイルグループG3が、第3コイル部C3を含んでもよい。
【0130】
第1コイルグループG1が第1コイル部C1を含み、第2コイルグループG2が第12コイル部C12を含み、且つ第3コイルグループG3が、第3コイル部C3を含まなくてもよい。第1コイルグループG1が第1コイル部C1を含まず、第2コイルグループG2が第12コイル部C12を含み、且つ第3コイルグループG3が、第3コイル部C3を含んでもよい。第1コイルグループG1が第1コイル部C1を含み、第2コイルグループG2が第12コイル部C12を含まず、且つ第3コイルグループG3が、第3コイル部C3を含んでもよい。
【0131】
上記の実施形態では、ブラシレスモータ60を「14極12スロット形」のブラシレスモータとしたものを示したが、「10極12スロット形」に設定することも可能である。さらに、他の極数及び他のスロット数に設定しても構わない。
【0132】
モータ装置は、ワイパモータ10(ブラシレスモータ60)、90、130に限らず、ブラシレスサンルーフモータ、ブラシレスパワーウインドウモータ、ブラシレスパワーシートモータ等であってもよい。
【0133】
第1導線LAが第1渡り線部KA及び第3渡り線部KCを含み、第2導線LBが第2渡り線部KBを含んでもよい。この場合、第1渡り線部KA及び第3渡り線部KCが軸方向の一端側に位置し、第2渡り線部KBが軸方向の他端側に位置する。
【0134】
第1導線LAが第2渡り線部KB及び第3渡り線部KCを含み、第2導線LBが第1渡り線部KAを含んでもよい。この場合、第2渡り線部KB及び第3渡り線部KCが軸方向の一端側に位置し、第1渡り線部KAが軸方向の他端側に位置する。
【0135】
第1、第2、第3実施形態または各変形例の形態によれば、上述のように部品の組付け工程が減ることで、製造エネルギーの省力化や、温室効果ガスの発生の抑制を図ることができる。さらに、製品毎に複数のコイル部Cの大きさがばらつくことを抑制して不良品の発生を抑えることができる。これにより、国連で定められた持続可能な開発目標(SDGs)における特に目標7(すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的なエネルギーへのアクセスを確保する)及び目標13(気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる)を実現することが可能となる。
【符号の説明】
【0136】
10…ワイパモータ,20…ギヤ部,22…ギヤハウジング,24…ギヤ収容部,26…ベースプレート取付部,28…ヘリカルギヤ,29…軸受部,32…軸固定部,34…センサマグネット,36…軸受部材収容部,38…バックアップ部材,40…モータ本体部,42…モータハウジング,44…モータ収容部,45…底壁,46…固定壁,47…側壁,47A…フランジ,48…ベース装着部,52…センサ基板,54…保持部材,56…ベースプレート,60…ブラシレスモータ,62…ロータユニット,64…ロータ本体,64A…ロータ底壁,64B…ロータ側壁,64C…ボス部,65…内周面,66…ピニオンギヤ,70…ステータユニット,72…ステータコア,72A…一端面,72B…他端面,74…本体部,75…固定部,76…インシュレータ,77…上縁部,82…ターミナル,84…第1端子,86…第2端子,88…第3端子,90…ワイパモータ,92…ターミナル,94…第1端子,96…第2端子,98…第3端子,100…ステータユニット,110…ステータユニット,120…ステータユニット,130…ワイパモータ,140…ステータユニット,A1…端子,A2…端子,A3…端子,B1…第1軸受,B2…第2軸受,B3…第3軸受,C…コイル部,C1…第1コイル部,C2…第2コイル部,C3…第3コイル部,C4…第4コイル部,C5…第5コイル部,C6…第6コイル部,C7…第7コイル部,C8…第8コイル部,C9…第9コイル部,C10…第10コイル部,C11…第11コイル部,C12…第12コイル部,CA…中心軸,CB…中心軸,CP…中心,G…コイルグループ,G1…第1コイルグループ,G2…第2コイルグループ,G3…第3コイルグループ,G4…第4コイルグループ,HS1…ホールセンサ,HS2…ホールセンサ,K…渡り線,K1…渡り線,K2…渡り線,K2A…渡り線,K2B…渡り線,K3…渡り線,KA…第1渡り線部,KB…第2渡り線部,KC…第3渡り線部,KD…引出部,KG…引出部,KM…引入部,KN…引入部,KS…渡り部,KT…中間渡り部,L1…距離,LA…第1導線,LA1…第1配線部,LA2…第2配線部,LB…第2導線,LB1…第3配線部,LW…導線,LW1…第1配線部,LW2…第2配線部,LW3…第3配線部,MG…マグネット,P1…巻き始め部分,P2…巻き終わり部分,P3…巻き始め部分,P4…巻き終わり部分,P5…巻き始め部分,P6…巻き終わり部分,P7…巻き始め部分,P8…巻き終わり部分,P1´…巻き始め部分,P2´…巻き終わり部分,P3´…巻き始め部分,P4´…巻き終わり部分,P5´…巻き始め部分,P6´…巻き終わり部分,P7´…巻き始め部分,P8´…巻き終わり部分,S…領域,S1…固定ねじ,SA…領域,SB…領域,SH1…回転軸,SH2…出力軸,T…ティース,T1…ティース,T2…ティース,T3…ティース,T4…ティース,T5…ティース,T6…ティース,T7…ティース,T8…ティース,T9…ティース,T10…ティース,T11…ティース,T12…ティース,TA…第1ティース,TB…第2ティース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
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図21
図22
図23
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