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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014404
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】全固体電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20240125BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240125BHJP
   H01M 50/474 20210101ALI20240125BHJP
   H01M 50/54 20210101ALI20240125BHJP
   H01M 50/548 20210101ALI20240125BHJP
   H01M 50/553 20210101ALI20240125BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20240125BHJP
   H01M 50/117 20210101ALI20240125BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20240125BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M50/474
H01M50/54
H01M50/548 101
H01M50/553
H01M50/103
H01M50/117
H01M4/134
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117207
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宇人
(72)【発明者】
【氏名】清水 崇史
【テーマコード(参考)】
5H011
5H021
5H029
5H043
5H050
【Fターム(参考)】
5H011AA10
5H011CC05
5H021AA06
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AM12
5H029BJ12
5H029BJ13
5H029HJ07
5H043AA02
5H043BA20
5H043CA13
5H043CB02
5H043CB07
5H043DA11
5H043DA13
5H043DA15
5H043LA02E
5H050AA07
5H050BA15
5H050CA01
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
(57)【要約】
【課題】 内部への水分侵入を抑制することができる全固体電池およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 イオン伝導性を有する酸化物系固体電解質層と、電極活物質を含む内部電極とが交互に積層された積層部分と、積層部分の積層方向の上面および下面の少なくともいずれか一方に設けられたカバー層と、を備え、略直方体形状を有し、略直方体形状において対向する第1端面および第2端面に内部電極が交互に露出するように形成された積層体と、ケイ素を含み、積層体において第1端面および第2端面以外の4面に設けられた無機酸化物層と、第1端面に設けられ、第1端面に露出する内部電極に接続された第1外部電極と、を備え、第1外部電極は、第1金属層上に第2金属層が形成された構造を有し、無機酸化物層は、第1端面上の第1金属層上の一部まで延在し、第2金属層は、4面上の無機酸化物層上まで延在している。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン伝導性を有する酸化物系固体電解質層と、電極活物質を含む内部電極とが交互に積層された積層部分と、前記積層部分の積層方向の上面および下面の少なくともいずれか一方に設けられたカバー層と、を備え、略直方体形状を有し、前記略直方体形状において対向する第1端面および第2端面に前記内部電極が交互に露出するように形成された積層体と、
ケイ素を含み、前記積層体において前記第1端面および前記第2端面以外の4面に設けられた無機酸化物層と、
前記第1端面に設けられ、前記第1端面に露出する前記内部電極に接続された第1外部電極と、を備え、
前記第1外部電極は、第1金属層上に第2金属層が形成された構造を有し、
前記無機酸化物層は、前記第1端面上の前記第1金属層上の一部まで延在し、
前記第2金属層は、前記4面上の前記無機酸化物層上まで延在している、全固体電池。
【請求項2】
前記第1端面の面積をSaとし、前記無機酸化物層が前記第1端面を覆う面積をSbとした場合、Sb/Saは、0.025以上である、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項3】
前記第1端面の面積をSaとし、前記無機酸化物層が前記第1端面を覆う面積をSbとした場合、Sb/Saは、0.975以下である、請求項1または請求項2に記載の全固体電池。
【請求項4】
前記電極活物質は、ゲルマニウムを含む、請求項1または請求項2に記載の全固体電池。
【請求項5】
前記第2金属層が前記4面上において、前記第2端面に向かう方向に延びる距離は、前記全固体電池の長手方向の寸法Lに対して0.01L以上である、請求項1または請求項2に記載の全固体電池。
【請求項6】
イオン伝導性を有する酸化物系固体電解質層と、電極活物質を含む内部電極とが交互に積層された積層部分と、前記積層部分の積層方向の上面および下面の少なくともいずれか一方に設けられたカバー層と、を備え、略直方体形状を有し、前記略直方体形状において対向する第1端面および第2端面に前記内部電極が交互に露出するように形成された積層体の前記第1端面に第1金属層が設けられた中間体を用意し、
ケイ素を含み、前記積層体において前記第1端面および前記第2端面以外の4面に設けられ、前記第1端面上の前記第1金属層上の一部まで延在するように無機酸化物層を形成し、
前記無機酸化物層から露出している前記第1金属層から、前記4面上の前記無機酸化物層上まで第2金属層を形成する、全固体電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型の全固体リチウムイオン二次電池は、発火や漏液の心配がなく、またリフロー半田付けが可能であり、安全で取り扱いが容易な二次電池である(例えば、特許文献1~3参照)。従来の電解液を使用したリチウムイオン電池からの移行が検討されており、幅広い分野での利用に展開されることが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/186449号
【特許文献2】国際公開第2021/070927号
【特許文献3】国際公開第2018/186449号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電池特性の劣化を抑制するために、全固体電池の内部への水分侵入を抑制することが望まれる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、内部への水分侵入を抑制することができる全固体電池およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る全固体電池は、イオン伝導性を有する酸化物系固体電解質層と、電極活物質を含む内部電極とが交互に積層された積層部分と、前記積層部分の積層方向の上面および下面の少なくともいずれか一方に設けられたカバー層と、を備え、略直方体形状を有し、前記略直方体形状において対向する第1端面および第2端面に前記内部電極が交互に露出するように形成された積層体と、ケイ素を含み、前記積層体において前記第1端面および前記第2端面以外の4面に設けられた無機酸化物層と、前記第1端面に設けられ、前記第1端面に露出する前記内部電極に接続された第1外部電極と、を備え、前記第1外部電極は、第1金属層上に第2金属層が形成された構造を有し、前記無機酸化物層は、前記第1端面上の前記第1金属層上の一部まで延在し、前記第2金属層は、前記4面上の前記無機酸化物層上まで延在している。
【0007】
上記全固体電池において、前記第1端面の面積をSaとし、前記無機酸化物層が前記第1端面を覆う面積をSbとした場合、Sb/Saは、0.025以上であってもよい。
【0008】
上記全固体電池において、前記第1端面の面積をSaとし、前記無機酸化物層が前記第1端面を覆う面積をSbとした場合、Sb/Saは、0.975以下であってもよい。
【0009】
上記全固体電池において、前記電極活物質は、ゲルマニウムを含んでいてもよい。
【0010】
上記全固体電池において、前記第2金属層が前記4面上において、前記第2端面に向かう方向に延びる距離は、前記全固体電池の長手方向の寸法Lに対して0.01L以上であってもよい。
【0011】
本発明に係る全固体電池の製造方法は、イオン伝導性を有する酸化物系固体電解質層と、電極活物質を含む内部電極とが交互に積層された積層部分と、前記積層部分の積層方向の上面および下面の少なくともいずれか一方に設けられたカバー層と、を備え、略直方体形状を有し、前記略直方体形状において対向する第1端面および第2端面に前記内部電極が交互に露出するように形成された積層体の前記第1端面に第1金属層が設けられた中間体を用意し、ケイ素を含み、前記積層体において前記第1端面および前記第2端面以外の4面に設けられ、前記第1端面上の前記第1金属層上の一部まで延在するように無機酸化物層を形成し、前記無機酸化物層から露出している前記第1金属層から、前記4面上の前記無機酸化物層上まで第2金属層を形成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、内部への水分侵入を抑制することができる全固体電池およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】全固体電池200の基本構造を示す模式的断面図である。
図2】複数の電池単位が積層された積層型の全固体電池の外観図である。
図3図2のI-I線に沿う断面図である。
図4図2のII-II線に沿う断面図である。
図5】(a)および(b)はSaおよびSbを説明するための図である。
図6】全固体電池の製造方法のフローを例示する図である。
図7】(a)および(b)は積層工程を例示する図である。
図8】(a)および(b)は防湿層形成工程を例示する図である。
図9】(a)は比較例1を示す図であり、(b)は比較例2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0015】
(実施形態)
図1は、全固体電池200の基本構造を示す模式的断面図である。図1で例示するように、全固体電池200は、第1内部電極10(第1電極層)と第2内部電極20(第2電極層)とによって、固体電解質層30が挟持された構造を有する。第1内部電極10は、固体電解質層30の第1主面上に形成されている。第2内部電極20は、固体電解質層30の第2主面上に形成されている。例えば、第1内部電極10、第2内部電極20、および固体電解質層30は、粉末材料を焼結させることによって得られる焼結体である。
【0016】
全固体電池200を二次電池として用いる場合には、第1内部電極10および第2内部電極20の一方を正極として用い、他方を負極として用いる。本実施形態においては、一例として、第1内部電極10を正極層として用い、第2内部電極20を負極層として用いるものとする。
【0017】
固体電解質層30は、NASICON型の結晶構造を有し、イオン伝導性を有する酸化物系固体電解質を主成分とする。固体電解質層30の固体電解質は、例えばリチウムイオン伝導性を有する酸化物系固体電解質である。当該固体電解質は、例えば、リン酸塩系固体電解質である。NASICON型の結晶構造を有するリン酸塩系固体電解質は、高い導電率を有するとともに、大気中で安定しているという性質を有している。リン酸塩系固体電解質は、例えば、リチウムを含んだリン酸塩である。当該リン酸塩は、特に限定されるものではないが、例えば、Tiとの複合リン酸リチウム塩(例えば、LiTi(PO)などが挙げられる。または、TiをGe,Sn,Hf,Zrなどといった4価の遷移金属に一部あるいは全部置換することもできる。また、Li含有量を増加させるために、Al,Ga,In,Y,Laなどの3価の遷移金属に一部置換してもよい。より具体的には、例えば、Li1+xAlGe2-x(POや、Li1+xAlZr2-x(PO、Li1+xAlTi2-x(POなどが挙げられる。例えば、第1内部電極10および第2内部電極20に含有されるオリビン型結晶構造をもつリン酸塩が含む遷移金属と同じ遷移金属を予め添加させたLi-Al-Ge-PO系材料が好ましい。例えば、第1内部電極10および第2内部電極20にCoおよびLiを含むリン酸塩が含有される場合には、Coを予め添加したLi-Al-Ge-PO系材料が固体電解質層30に含まれることが好ましい。この場合、電極活物質が含む遷移金属の電解質への溶出を抑制する効果が得られる。第1内部電極10および第2内部電極20にCo以外の遷移元素およびLiを含むリン酸塩が含有される場合には、当該遷移金属を予め添加したLi-Al-Ge-PO系材料が固体電解質層30に含まれることが好ましい。
【0018】
正極として用いられる第1内部電極10は、オリビン型結晶構造をもつ物質を電極活物質として含有する。第2内部電極20も、当該電極活物質を含有していることが好ましい。このような電極活物質として、遷移金属とリチウムとを含むリン酸塩が挙げられる。オリビン型結晶構造は、天然のカンラン石(olivine)が有する結晶であり、X線回折において判別することができる。
【0019】
オリビン型結晶構造をもつ電極活物質の典型例として、Coを含むLiCoPOなどを用いることができる。この化学式において遷移金属のCoが置き換わったリン酸塩などを用いることもできる。ここで、価数に応じてLiやPOの比率は変動し得る。なお、遷移金属として、Co,Mn,Fe,Niなどを用いることが好ましい。
【0020】
オリビン型結晶構造をもつ電極活物質は、正極として作用する第1内部電極10においては、正極活物質として作用する。例えば、第1内部電極10にのみオリビン型結晶構造をもつ電極活物質が含まれる場合には、当該電極活物質が正極活物質として作用する。第2内部電極20にもオリビン型結晶構造をもつ電極活物質が含まれる場合に、負極として作用する第2内部電極20においては、その作用メカニズムは完全には判明してはいないものの、負極活物質との部分的な固溶状態の形成に基づくと推察される、放電容量の増大、ならびに、放電に伴う動作電位の上昇という効果が発揮される。
【0021】
第1内部電極10および第2内部電極20の両方ともオリビン型結晶構造をもつ電極活物質を含有する場合に、それぞれの電極活物質には、好ましくは、互いに同一であっても異なっていてもよい遷移金属が含まれる。「互いに同一であっても異なっていてもよい」ということは、第1内部電極10および第2内部電極20が含有する電極活物質が同種の遷移金属を含んでいてもよいし、互いに異なる種類の遷移金属が含まれていてもよい、ということである。第1内部電極10および第2内部電極20には一種だけの遷移金属が含まれていてもよいし、二種以上の遷移金属が含まれていてもよい。好ましくは、第1内部電極10および第2内部電極20には同種の遷移金属が含まれる。より好ましくは、両電極が含有する電極活物質は化学組成が同一である。第1内部電極10および第2内部電極20に同種の遷移金属が含まれていたり、同組成の電極活物質が含まれていたりすることにより、両内部電極層の組成の類似性が高まるので、全固体電池200の端子の取り付けを正負逆にしてしまった場合であっても、用途によっては誤作動せずに実使用に耐えられるという効果を有する。
【0022】
第2内部電極20は、負極活物質を含んでいる。一方の電極だけに負極活物質を含有させることによって、当該一方の電極は負極として作用し、他方の電極が正極として作用することが明確になる。なお、両方の電極に負極活物質として公知である物質を含有させてもよい。電極の負極活物質については、二次電池における従来技術を適宜参照することができ、例えば、チタン酸化物、リチウムチタン複合酸化物、リチウムチタン複合リン酸塩、カーボン、リン酸バナジウムリチウムなどの化合物が挙げられる。
【0023】
第1内部電極10および第2内部電極20の作製においては、これら電極活物質に加えて、イオン電導性を有する固体電解質や、導電性材料(導電助剤)などが添加されている。これらの部材については、バインダと可塑剤を水あるいは有機溶剤に均一分散させることで内部電極用ペーストを得ることができる。導電助剤として、カーボン材料などが含まれていてもよい。導電助剤として、金属が含まれていてもよい。導電助剤の金属としては、Pd、Ni、Cu、Fe、これらを含む合金などが挙げられる。第1内部電極10および第2内部電極20に含まれる固体電解質は、例えば、固体電解質層30の主成分固体電解質と同じとすることができる。
【0024】
固体電解質層30の厚さは、例えば、5μm以上30μm以下であり、7μm以上25μm以下であり、10μm以上20μm以下である。第1内部電極10および第2内部電極20の厚さは、例えば、5μm以上50μm以下であり、7μm以上45μm以下であり、10μm以上40μm以下である。各層の厚さは、例えば、1層の異なる10点の厚さの平均値として測定することができる。
【0025】
図2は、複数の電池単位が積層された積層型の全固体電池100の外観図である。図2で例示するように、全固体電池100は、略直方体形状を有する積層チップ70と、積層方向端の上面および下面以外の4面のうち互いに対向する2端面に設けられた第1外部電極40aおよび第2外部電極40bを備える。
【0026】
図3は、図2のI-I線に沿う断面図である。以下の説明において、全固体電池200と同一の組成範囲、同一の厚み範囲、および同一の粒度分布範囲を有するものについては、同一符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0027】
積層チップ70は、積層体60の表面に防湿層80が設けられた構造を有している。積層体60においては、複数の第1内部電極10と複数の第2内部電極20とが、固体電解質層30を介して交互に積層されている。複数の第1内部電極10の端縁は、積層チップ70の第1端面60aに露出し、第2端面60bには露出していない。複数の第2内部電極20の端縁は、積層チップ70の第2端面60bに露出し、第1端面60aには露出していない。それにより、複数の内部電極が、第1外部電極40aと第2外部電極40bとに、交互に導通している。なお、固体電解質層30は、積層チップ70の第1端面60aから第2端面60bにかけて延在している。このように、積層体60は、複数の電池単位が積層された構造を有している。
【0028】
積層体60において、第1内部電極10、固体電解質層30および第2内部電極20の積層部分の上面に、カバー層50が積層されている。当該カバー層50は、最上層の内部電極(第1内部電極10および第2内部電極20のいずれか一方)に接するとともに、固体電解質層30の一部に接している。当該積層部分の下面にも、カバー層50が積層されている。当該カバー層50は、最下層の内部電極(第1内部電極10および第2内部電極20のいずれか一方)に接するとともに、固体電解質層30の一部に接している。例えば、カバー層50は、粉末材料を焼結させることによって得られる焼結体である。
【0029】
第1内部電極10および第2内部電極20は、内部に集電体層を備えていてもよい。集電体層は、導電性材料を主成分とする。例えば、集電体層の導電性材料として、金属、カーボンなどを用いることができる。第1内部電極10の集電体層を第1外部電極40aに接続し、第2内部電極20の集電体層を第2外部電極40bに接続することで、集電効率が向上する。
【0030】
次に、図4で例示するように、積層体60の上面60cと、下面60dと、2端面以外の2側面(60e,60f)に、防湿層80が設けられている。なお、図4は、図2のII-II線に沿う断面図である。防湿層80は、電極層に含有される電極活物質と大気中の水分との反応に起因する電池特性劣化を抑制するために設けられている。防湿層80は、例えば、ケイ素を含む無機酸化物の層である。なお、B、Bi、Zn、Ba、Li、P、Sn、Pb、Mg、およびNaのいずれかを防湿層80に添加してもよい。
【0031】
防湿層80を設けても、積層体60の内部に水分が侵入することがある。具体的には、防湿層80と、第1外部電極40aおよび第2外部電極40bとの間を経由して水分が侵入することがある。侵入した水分は、積層体60の2端面に到達し、当該2端面から積層体60の内部に侵入し、電池特性を劣化させるおそれがある。特に、内部電極がゲルマニウムを含むLi-Al-Ge-PO系材料などを含む場合に、水分侵入に基づく電池特性劣化が顕著である。そこで、本実施形態に係る全固体電池100は、内部への水分の侵入を抑制する構成を有している。以下、水分の侵入を抑制する構成について説明する。
【0032】
第1外部電極40aおよび第2外部電極40bは、それぞれ、下地層41(第1金属層)の上にめっき層42(第2金属層)が設けられた構造を有している。第1外部電極40aの下地層41は、少なくとも、各第1内部電極10が積層体60の第1端面60aに対して露出する部分の全体を覆うように設けられている。第1外部電極40aの下地層41は、積層体60の第1端面60aの全体を覆っていてもよい。また、第1外部電極40aの下地層41は、積層体60の上面60c、下面60d、2側面60e,60fの4つの面にまで延在していてもよい。第2外部電極40bの下地層41は、少なくとも、各第2内部電極20が積層体60の第2端面60bに対して露出する部分の全体を覆うように設けられている。第2外部電極40bの下地層41は、積層体60の第2端面60bの全体を覆っていてもよい。また、第2外部電極40bの下地層41は、積層体60の上面60c、下面60d、2側面60e,60fの4つの面にまで延在していてもよい。ただし、第1外部電極40aの下地層41と、第2外部電極40bの下地層41とは、互いに離間している。
【0033】
下地層41の材料は、例えば、Ag(銀)、Cu(銅)、Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)、C(炭素)、Al(アルミニウム)、Au(金)などである。
【0034】
防湿層80は、積層体60の上面60c、下面60d、2側面60e,60fから第1端面60aおよび第2端面60bまで延在している。防湿層80は、積層体60の第1端面60aおよび第2端面60bまで延在する途中で、下地層41の表面を覆う。ただし、防湿層80は、積層体60の第1端面60a上の下地層41の一部を覆い、第2端面60b上の下地層41の一部を覆っており、当該2端面の中央領域までは覆っていない。
【0035】
図5(a)は、積層体60の第1端面60aおよび第2端面60bを例示する図である。積層体60の各端面は、例えば、下地層41に覆われている。積層体60の各端面の面積を、面積Saと記載する。図5(b)で例示するように、防湿層80が下地層41の一部を覆うように設けられている。積層体60の各端面において、防湿層80が設けられている面積を、面積Sbと記載する。面積Saおよび面積Sbは、Sa>Sb>0の関係を有している。
【0036】
めっき層42は、下地層41において防湿層80に覆われていない領域に接続され、積層体60の2端面上の防湿層80を覆い、積層体60の上面60c、下面60d、2側面60e,60fの上の防湿層80上まで延在している。第1外部電極40aのめっき層42は、積層体60の第1端面60a上の防湿層80を覆い、積層体60の上面60c、下面60d、2側面60e,60fの上の防湿層80上まで延在している。第2外部電極40bのめっき層42は、積層体60の第2端面60b上の防湿層80を覆い、積層体60の上面60c、下面60d、2側面60e,60fの上の防湿層80上まで延在している。第1外部電極40aのめっき層42と、第2外部電極40bのめっき層42とは、互いに離間している。
【0037】
めっき層42の材料は、例えば、Ni、Sn、Au、Cuなどである。なお、めっき層42は、単一層であってもよく、複数の材料を積層させた複数層であってもよい。
【0038】
本実施形態によれば、防湿層80が積層体60の上面60c、下面60d、2側面60e,60fから2端面にまで延在し、めっき層42が防湿層80の上を通って積層体60の上面60c、下面60d、2側面60e,60fの上方まで延在している。この構成では、防湿層80と、第1外部電極40aおよび第2外部電極40bとの間に水分が侵入したとしても、積層体60の2端面において防湿層80が設けられていない領域までの経路が長くなる。それにより、積層体60の内部への水分の侵入を抑制することができる。
【0039】
なお、防湿層80が積層体60の2端面を覆う比率が低いと、十分に水分の侵入を抑制できないおそれがある。そこで、防湿層80が積層体60の2端面を覆う比率に下限を設けることが好ましい。例えば、積層体60の各端面において、Sb/Saは、0.025以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましく、0.1以上であることがさらに好ましい。
【0040】
一方、防湿層80が積層体60の2端面を覆う比率が高いと、第1内部電極10と第1外部電極40aとの電気的接続、および第2内部電極20と第2外部電極40bとの電気的接続が劣化するおそれがある。そこで、防湿層80が積層体60の2端面を覆う比率に上限を設けることが好ましい。例えば、積層体60の各端面において、Sb/Saは、0.975以下であることが好ましく、0.95以下であることがより好ましく、0.9以下であることがさらに好ましい。
【0041】
第1外部電極40aのめっき層42が、積層体60の上面60c、下面60d、2側面60e,60fの上において、第2端面60bに向かう方向に延びる距離は、全固体電池100の長手方向の寸法をLとした場合に、0.01L以上であることが好ましく、0.025L以上であることがより好ましく、0.05L以上であることがさらに好ましい。第2外部電極40bのめっき層42が、積層体60の上面60c、下面60d、2側面60e,60fの上において、第1端面60aに向かう方向に延びる距離は、0.01L以上であることが好ましく、0.025L以上であることがより好ましく、0.05L以上であることがさらに好ましい。
【0042】
なお、本実施形態において、第1外部電極40aおよび第2外部電極40bの両方において、防湿層80が積層体60の上面60c、下面60d、2側面60e,60fから2端面にまで延在し、めっき層42が防湿層80の上を通って積層体60の上面60c、下面60d、2側面60e,60fの上方まで延在しているが、それに限られない。第1外部電極40aおよび第2外部電極40bの少なくとも一方において、防湿層80が積層体60の上面60c、下面60d、2側面60e,60fから2端面にまで延在し、めっき層42が防湿層80の上を通って積層体60の上面60c、下面60d、2側面60e,60fの上方まで延在していればよい。
【0043】
続いて、全固体電池100の製造方法について説明する。図6は、全固体電池100の製造方法のフローを例示する図である。
【0044】
(固体電解質層用の原料粉末作製工程)
まず、上述の固体電解質層30を構成する固体電解質層用の原料粉末を作製する。例えば、原料、添加物などを混合し、固相合成法などを用いることで、酸化物系固体電解質の原料粉末を作製することができる。得られた原料粉末を乾式粉砕することで、所望の平均粒径に調整することができる。例えば、5mmφのZrOボールを用いた遊星ボールミルで、所望の平均粒径に調整する。
【0045】
(カバー層用の原料粉末作製工程)
まず、上述のカバー層50を構成するセラミックスの原料粉末を作製する。例えば、原料、添加物などを混合し、固相合成法などを用いることで、カバー層用の原料粉末を作製することができる。
【0046】
(電極層用ペースト作製工程)
次に、上述の第1内部電極10および第2内部電極20の作製用の内部電極用ペーストを個別に作製する。例えば、導電助剤、電極活物質、固体電解質材料、焼結助剤、バインダ、可塑剤などを水あるいは有機溶剤に均一分散させることで内部電極用ペーストを得ることができる。固体電解質材料として、上述した固体電解質ペーストを用いてもよい。導電助剤として、カーボン材料などを用いる。導電助剤として、金属を用いてもよい。導電助剤の金属としては、Pd、Ni、Cu、Fe、これらを含む合金などが挙げられる。Pd、Ni、Cu、Fe、これらを含む合金や各種カーボン材料などをさらに用いてもよい。
【0047】
内部電極用ペーストの焼結助剤として、例えば、Li-B-O系化合物、Li-Si-O系化合物、Li-C-O系化合物、Li-S-O系化合物,Li-P-O系化合物などのガラス成分のどれか1つあるいは複数などのガラス成分が含まれている。
【0048】
(下地層用ペースト作製工程)
次に、下地層41を作製するための下地層用ペーストを作製する。例えば、導電性材料、ガラスフリット、バインダ、可塑剤などを水あるいは有機溶剤に均一分散させることで下地層用ペーストを得ることができる。
【0049】
(固体電解質グリーンシート作製工程)
固体電解質層用の原料粉末を、結着材、分散剤、可塑剤などとともに、水性溶媒あるいは有機溶媒に均一に分散させて、湿式粉砕を行うことで、所望の平均粒径を有する固体電解質スラリを得る。このとき、ビーズミル、湿式ジェットミル、各種混練機、高圧ホモジナイザーなどを用いることができ、粒度分布の調整と分散とを同時に行うことができる観点からビーズミルを用いることが好ましい。得られた固体電解質スラリにバインダを添加して固体電解質ペーストを得る。得られた固体電解質ペーストを塗工することで、固体電解質グリーンシート51を作製することができる。塗工方法は、特に限定されるものではなく、スロットダイ方式、リバースコート方式、グラビアコート方式、バーコート方式、ドクターブレード方式などを用いることができる。湿式粉砕後の粒度分布は、例えば、レーザ回折散乱法を用いたレーザ回折測定装置を用いて測定することができる。
【0050】
(積層工程)
図7(a)で例示するように、固体電解質グリーンシート51の一面に、内部電極用ペースト52を印刷する。固体電解質グリーンシート51上で内部電極用ペースト52が印刷されていない領域には、逆パターン53を印刷する。逆パターン53として、固体電解質グリーンシート51と同様のものを用いることができる。印刷後の複数の固体電解質グリーンシート51を、交互にずらして積層する。図7(b)で例示するように、積層方向の上下から、カバーシート54を圧着することで、セラミック積層体を得る。この場合、セラミック積層体において、一方の端面に第1内部電極10用の内部電極用ペースト52が露出し、他方の端面に第2内部電極20用の内部電極用ペースト52が露出するようにする。カバーシート54は、固体電解質グリーンシート作製工程と同様の手法でカバー層用の原料粉末を塗工することで形成することができる。カバーシート54は、固体電解質グリーンシート51よりも厚く形成しておく。塗工時に厚くしてもよく、塗工したシートを複数枚重ねることで厚くしてもよい。
【0051】
(焼成工程)
次に、得られたセラミック積層体を焼成する。焼成の条件は酸化性雰囲気下あるいは非酸化性雰囲気下で、最高温度を好ましくは400℃~1000℃、より好ましくは500℃~900℃などとすることが特に限定なく挙げられる。最高温度に達するまでにバインダを十分に除去するために酸化性雰囲気において最高温度より低い温度で保持する工程を設けてもよい。プロセスコストを低減するためにはできるだけ低温で焼成することが望ましい。焼成後に、再酸化処理を施してもよい。以上の工程により、積層体60が得られる。
【0052】
(下地層焼成工程)
次に、積層体60の第1端面および第2端面のそれぞれに、ディップ法等で下地層用ペーストを塗布して乾燥させる。この下地層用ペーストを焼き付けることで、下地層41を焼成することができる。
【0053】
(防湿層形成工程)
積層体60に対して、防湿層80を形成する。例えば、図8(a)の最も左の図で例示するように、積層体60の一方の側面に防湿層形成用の溶液85を塗布し、乾燥させる。この場合、当該一方の側面における下地層41にも、防湿層形成用の溶液85を塗布し、乾燥させる。防湿層形成用の溶液85は、例えば、ジブチルエーテル又はジブチルエーテル系の溶媒にテトラアルコキシシランを溶解させた溶液である。次に、図8(a)の左から2番目の図で例示するように、積層体60の上面に防湿層形成用の溶液85を塗布して乾燥させる。この場合、当該上面における下地層41にも、防湿層形成用の溶液を塗布し、乾燥させる。次に、図8(a)の左から3番目の図で例示するように、積層体60の他方の側面に防湿層形成用の溶液85を塗布し、乾燥させる。この場合、当該他方の側面における下地層41にも、防湿層形成用の溶液を塗布し、乾燥させる。次に、図8(a)の左から4番目の図で例示するように、積層体60の下面の側面に防湿層形成用の溶液85を塗布し、乾燥させる。この場合、当該下面における下地層41にも、防湿層形成用の溶液を塗布し、乾燥させる。その後、図8(a)の左から5番目の図で例示するように、乾燥させた防湿層形成用の溶液を580℃程度の高温に加熱し、硬化させる。以上の工程により、防湿層80を形成することができる。また、積層体60の第1端面および第2端面の中央領域における下地層41を露出させることができる。
【0054】
なお、図8(b)で例示するように、図8(a)と同じ工程を繰り返すことによって、さらに防湿層80を厚く形成することができる。図8(b)のように工程を繰り返すことで、積層体60の稜線部において防湿層80を厚く形成することが困難な場合であっても、当該稜線部における防湿層80を厚く形成することができるようになる。
【0055】
(めっき工程)
その後、防湿層80から露出している下地層41をシード層として用い、めっき処理によってめっき層42を形成する。以上の工程により、全固体電池100が作製される。
【0056】
本実施形態に係る製造方法によれば、防湿層80が積層体60の上面、下面、2側面から2端面にまで延在し、めっき層42が防湿層80の上を通って積層体60の上面、下面、2側面の上方まで延在するようになる。この構成では、防湿層80と、第1外部電極40aおよび第2外部電極40bとの間に水分が侵入したとしても、積層体60の2端面において防湿層80が設けられていない領域までの経路が長くなる。それにより、積層体60の内部への水分の侵入を抑制することができる。
【実施例0057】
(実施例1)
電極用ペーストが印刷された固体電解質シートを積層し、最上層と最下層とにカバーシートを配置し、圧着することで、セラミック積層体を得た。このセラミック積層体を熱処理により脱脂して焼成し、積層体60を得た。積層体60の第1端面および第2端面のそれぞれに、ディップ法で下地層用ペーストを塗布して焼き付け、下地層41を形成した。その後、図8(a)および図8(b)の手順で、積層体60に対して、防湿層80を形成した。防湿層80は、積層体60の第1端面上の下地層41および第2端面上の下地層41まで回り込ませた。ただし、下地層41の一部は露出させた。Sb/Saは0.025となった。その後、防湿層80から露出している下地層41をシード層として用い、めっき処理によってめっき層42を形成した。めっき層42は、積層チップ70の2端面上の防湿層80を覆い、積層チップ70の上面、下面、2側面上の防湿層80上まで延在していた。めっき層42が反対側の端面に向かう方向に延びる距離(延在距離)は、全固体電池の長手方向の寸法Lに対して0.2Lであった。
【0058】
(実施例2)
実施例2では、Sb/Saは0.05であった。めっき層42が反対側の端面に向かう方向に延びる距離(延在距離)は、全固体電池の長手方向の寸法Lに対して0.2Lであった。その他の条件は、実施例1と同じにした。
【0059】
(実施例3)
実施例3では、Sb/Saは0.5であった。めっき層42が反対側の端面に向かう方向に延びる距離(延在距離)は、全固体電池の長手方向の寸法Lに対して0.2Lであった。その他の条件は、実施例1と同じにした。
【0060】
(実施例4)
実施例4では、Sb/Saは0.95であった。めっき層42が反対側の端面に向かう方向に延びる距離(延在距離)は、全固体電池の長手方向の寸法Lに対して0.2Lであった。その他の条件は、実施例1と同じにした。
【0061】
(実施例5)
実施例5では、Sb/Saは0.975であった。めっき層42が反対側の端面に向かう方向に延びる距離(延在距離)は、全固体電池の長手方向の寸法Lに対して0.2Lであった。その他の条件は、実施例1と同じにした。
【0062】
(実施例6)
実施例6では、Sb/Saは0.05であった。めっき層42が反対側の端面に向かう方向に延びる距離(延在距離)は、全固体電池の長手方向の寸法Lに対して0.001Lであった。その他の条件は、実施例1と同じにした。
【0063】
(実施例7)
実施例7では、Sb/Saは0.5であった。めっき層42が反対側の端面に向かう方向に延びる距離(延在距離)は、全固体電池の長手方向の寸法Lに対して0.001Lであった。その他の条件は、実施例1と同じにした。
【0064】
(実施例8)
実施例8では、Sb/Saは0.95であった。めっき層42が反対側の端面に向かう方向に延びる距離(延在距離)は、全固体電池の長手方向の寸法Lに対して0.001Lであった。その他の条件は、実施例1と同じにした。
【0065】
(比較例1)
比較例1では、防湿層80を形成したものの、積層体60の第1端面上の下地層41および第2端面上の下地層41までは回り込ませなかった。したがって、Sb=0となり、Sb/Sa=0となった。めっき層42が反対側の端面に向かう方向に延びる距離(延在距離)は、全固体電池の長手方向の寸法Lに対して0.2Lであった。その他の条件は、実施例と同じとした。図9(a)に比較例1の形状を示す。
【0066】
(比較例2)
比較例2では、積層体60の第1端面上の下地層41および第2端面上の下地層41まで防湿層80を回り込ませた。下地層41を露出させなかったため、Sa=Sbとなり、Sb/Sa=1となった。めっき層42が反対側の端面に向かう方向に延びる距離(延在距離)は、全固体電池の長手方向の寸法Lに対して0.2Lであった。その他の条件は、実施例と同じとした。図9(b)に比較例1の形状を示す。
【0067】
実施例1~8および比較例1,2の全固体電池について、サイクル特性試験を行った。具体的には、室温環境において、上限電圧3.3V、下限電圧2.0Vにて0.2Cで充放電サイクル試験を行った。1stサイクルの放電容量Cap1stに対する2000サイクルの放電容量Cap2000thの放電容量の維持率Cap2000th/Cap1stが85%を上回り100%以下であれば良好「〇」と判定し、60%を上回り85%以下であればやや良好「△」と判定し、60%以下であれば不良「×」と判定した。
【0068】
次に、実施例および比較例1,2の全固体電池について、第1外部電極40aおよび第2外部電極40bと、内部電極との電気的接続試験について調べた。具体的には、室温環境において、上限電圧3.3V、下限電圧2.0Vにて0.2Cで充放電試験を行うと仮定した場合の、活物質目付量から算出される1stサイクルの放電容量Cap(1st_theoretical)に対して、放電容量の実測値Cap(1st_measured)の容量比Cap(1st_measured)/Cap(1st_theoretical)が、85%を上回り100%以下であれば良好「〇」と判定し、60%を上回り85%以下であればやや良好「△」と判定し、60%以下であれば不良「×」と判定した。
【0069】
サイクル特性および電気的接続の両方が良好「〇」と判定された場合には、総合判定を良好「〇」とした。サイクル特性および電気的接続の一方がやや良好「△」と判定され他方が不良「×」と判定されなければ総合判定をやや良好「△」とした。サイクル特性および電気的接続のうち一方でも不良「×」と判定されていれば総合判定を不良「×」とした。
【0070】
まず、実施例1~8および比較例1では、電気的接続がやや良好「△」または良好「〇」と判定された。これは、下地層とめっき層とを接続させることができたからであると考えられる。これに対して、比較例2では、電気的接続が不良「×」と判定された。これは、Sa=Sbとなり、防湿層80が下地層41を覆ってしまったからであると考えられる。
【0071】
次に、実施例1~8では、サイクル特性がやや良好「△」または良好「〇」と判定された。これは、積層体60の第1端面および第2端面まで防湿層80を回り込ませ、さらにめっき層42が積層チップ70の2端面上の防湿層80を覆い、積層チップ70の上面、下面、2側面上の防湿層80上まで延在していたために、積層体60の2端面において防湿層80が設けられていない領域までの経路が長くなったからであると考えられる。これに対して、比較例1ではサイクル特性が不良「×」と判定された。これは、防湿層80が積層体60の第1端面および第2端面まで回り込まなかったために、水分の侵入経路を十分に長くできなかったからであると考えられる。なお、比較例2では、電気的接続が不良「×」となったために、サイクル特性を評価できなかった。以上の結果を表1に示す。総合判定がやや良好「△」または「良好」と判定されたのは実施例1~8だけであった。
【表1】
【0072】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0073】
10 第1内部電極
20 第2内部電極
30 固体電解質層
40a 第1外部電極
40b 第2外部電極
41 下地層
42 めっき層
50 カバー層
51 固体電解質グリーンシート
52 内部電極用ペースト
53 逆パターン
54 カバーシート
60 積層体
70 積層チップ
80 防湿層
85 溶液
100,200 全固体電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9