(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144042
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
C04B 38/00 20060101AFI20241003BHJP
B01D 39/20 20060101ALI20241003BHJP
B01D 46/00 20220101ALI20241003BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20241003BHJP
B01J 27/182 20060101ALI20241003BHJP
B01J 35/57 20240101ALI20241003BHJP
B28B 3/20 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C04B38/00 303Z
B01D39/20 D
B01D46/00 302
B01D53/94 245
B01D53/94 222
B01D53/94 280
B01J27/182 A ZAB
B01J35/04 301Z
B28B3/20 K
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023187959
(22)【出願日】2023-11-01
(62)【分割の表示】P 2023056775の分割
【原出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】駒井 友架理
(72)【発明者】
【氏名】元木 浩二
【テーマコード(参考)】
4D019
4D058
4D148
4G019
4G054
4G169
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019BA05
4D019BB08
4D019BC07
4D019BC20
4D019BD01
4D019CA01
4D019CB04
4D019CB06
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4D058JA39
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4D148AA18
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4D148BA01X
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4G169AA01
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4G169EA25
4G169EA27
4G169EB12Y
4G169EB15X
4G169EB15Y
4G169ED03
4G169FC08
(57)【要約】
【課題】薄壁化及び高気孔率化されており、且つ、強度に優れたハニカム構造体を提供する。
【解決手段】外周側壁と、外周側壁の内周側に配設され、第一底面から第二底面まで流路を形成する複数のセルを区画する隔壁と、を有するハニカム構造体であって、隔壁の厚みが50μm以上210μm以下であり、隔壁の気孔率が45%~60%であり、ハニカム構造体中のP含有量が0.01質量%以上0.2質量%未満であり、アイソスタティック破壊強度が1.0MPa以上である、ハニカム構造体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周側壁と、外周側壁の内周側に配設され、第一底面から第二底面まで流路を形成する複数のセルを区画する隔壁と、を有するハニカム構造体であって、
隔壁の厚みが50μm以上210μm以下であり、
隔壁の気孔率が45%~60%であり、
ハニカム構造体中のP含有量が0.01質量%以上0.2質量%未満であり、
アイソスタティック破壊強度が1.0MPa以上である、
ハニカム構造体。
【請求項2】
前記ハニカム構造体中のP含有量の上限が0.1質量%以下である請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記ハニカム構造体中のP含有量の上限が0.05質量%以下である請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
外周側壁及び隔壁はコージェライトを含有する請求項1~3の何れかに記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハニカム構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関より排出される排気ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタや、CO、HC、NOxなどの有毒なガス成分を浄化する触媒用の担体として、ハニカム構造体が用いられている。
【0003】
一般に、ハニカム構造体は、外周側壁と、外周側壁の内周側に配設され、第一底面から第二底面まで流路を形成する複数のセルを区画する隔壁とを有する。ハニカム構造体は、セラミックス原料、造孔材、バインダー及び分散媒に各種添加剤を適宜加えて得られた原料組成物を混練し、坏土とした後、所定のセル構造を画定する口金を介して押出成形することで、ハニカム成形体を作製し、このハニカム成形体を所定の長さに切断し、乾燥した後に焼成することで製造可能である。
【0004】
近年、排ガス規制強化に伴い、より厳しいPMの排出基準(PN規制:Particle Matterの個数規制)が導入されており、フィルタにはPMの高捕集性能(PN高捕集効率)が要求されている。また、触媒担体には、熱容量を下げることで触媒の活性温度まで速やかに昇温できるようにすることも要求されている。一方で、ハニカム構造体には排ガスを流した時の圧力損失が低いことも要求されており、市場の要求に応えることのできるフィルタの開発難易度が上がっている。このような要求性能を満たすハニカム構造体を得るため、ハニカム構造体の隔壁の厚さを薄くする「薄壁化」とともに、隔壁の気孔率を従来に比して更に高める「高気孔率化」に関する検討が進められている(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、ハニカム構造体の薄壁化が進展するにつれて、極めて狭いダイスロットに坏土を通して押し出すのに必要な押出成形圧も上昇しており、押出成形機の限度に達している。このため、押出成形圧を低下させるための技術も要求されている。これに関連して、特許文献2には、原料組成物中に添加する澱粉中のアミロース比が高いと流動性が良くなり、成形圧力が下がることが記載されており、特に、アミロース:アミロペクチンの割合が40:60~80:20の時に押出成形圧が低減できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2007-507667号公報
【特許文献2】国際公開第2017/095916号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
澱粉は高気孔率のハニカム構造体を得るための成分として有用である。従って、薄壁化及び高気孔率化されたハニカム構造体を製造する際に、特許文献2に記載されるアミロース及びアミロペクチンの配合割合で澱粉を添加することは有効だと考えられた。しかしながら、このようにアミロース及びアミロペクチンの配合割合を調整した澱粉を原料組成物に添加することで、押出成形圧が低減できたとしても、これによって製造されるハニカム構造体の強度が十分ではなかった。特に薄壁化及び高気孔率化されたハニカム構造体は強度が低下しやすいため、この問題を解決できれば有利であろう。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、一実施形態において、薄壁化及び高気孔率化されており、且つ、強度に優れたハニカム構造体を押出成形機に過度な負担を掛けることなく製造する方法を提供することを課題とする。また、別の一実施形態において、薄壁化及び高気孔率化されており、且つ、強度に優れたハニカム構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決するべく鋭意検討したところ、造孔材としてアクリルポリマー及び架橋澱粉を組み合わせて使用することが有効であることを見出した。本発明は当該知見に基づいて完成したものであり、以下に例示される。
【0010】
(1.ハニカム構造体の製造方法)
[態様1]
外周側壁と、外周側壁の内周側に配設され、第一底面から第二底面まで流路を形成する複数のセルを区画する隔壁と、を有するハニカム構造体の製造方法であって、
セラミックス原料、造孔材、バインダー及び分散媒を含有する坏土を、前記複数のセルの開口形状を画定する口金を介して押出成形することにより、ハニカム成形体を作製する工程と、
前記ハニカム成形体を乾燥して、ハニカム乾燥体を得る工程と、
前記ハニカム乾燥体を焼成して、隔壁の厚みが50μm以上210μm以下であり、隔壁の気孔率が45%~60%のハニカム焼成体を得る工程と、
を含み、
前記坏土中の造孔材は、架橋澱粉と、アクリルポリマーとを含有し、
前記坏土は、セラミックス原料100質量部に対して、P含有量が0.2質量部未満となる条件で、1.0質量部以上の架橋澱粉を含有する、
製造方法。
[態様2]
前記坏土は、セラミックス原料100質量部に対して、P含有量が0.1質量部以下となる条件で、1.0質量部以上の架橋澱粉を含有する態様1に記載の製造方法。
[態様3]
前記坏土は、セラミックス原料100質量部に対して、P含有量が0.05質量部以下となる条件で、1.0質量部以上の架橋澱粉を含有する態様1に記載の製造方法。
[態様4]
前記ハニカム構造体中のP含有量が0.2質量%未満である態様1~3の何れかに記載の製造方法。
[態様5]
前記ハニカム構造体中のP含有量が0.1質量%以下である態様1~3の何れかに記載の製造方法。
[態様6]
前記ハニカム構造体中のP含有量が0.05質量%以下である態様1~3の何れかに記載の製造方法。
[態様7]
前記坏土は、セラミックス原料100質量部に対して、0.5質量部以上のアクリルポリマーを含有する態様1~6の何れかに記載の製造方法。
[態様8]
前記セラミックス原料がコージェライト化原料である態様1~7の何れかに記載の製造方法。
【0011】
(2.ハニカム構造体)
[態様1]
外周側壁と、外周側壁の内周側に配設され、第一底面から第二底面まで流路を形成する複数のセルを区画する隔壁と、を有するハニカム構造体であって、
隔壁の厚みが50μm以上210μm以下であり、
隔壁の気孔率が45%~60%であり、
ハニカム構造体中のP含有量が0.01質量%以上0.2質量%未満であり、
アイソスタティック破壊強度が1.0MPa以上である、
ハニカム構造体。
[態様2]
前記ハニカム構造体中のP含有量の上限が0.1質量%以下である態様1に記載のハニカム構造体。
[態様3]
前記ハニカム構造体中のP含有量の上限が0.05質量%以下である態様1に記載のハニカム構造体。
[態様4]
外周側壁及び隔壁はコージェライトを含有する態様1~3の何れかに記載のハニカム構造体。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、薄壁化及び高気孔率化されており、且つ、強度に優れたハニカム構造体を、押出成形機に過度な負担を掛けることなく、高い生産性で製造可能である。当該ハニカム構造体は、フィルタや触媒担体として好適に使用でき、特に高捕集性能(PN高捕集効率)が要求されるフィルタや、高い昇温速度が要求される触媒担体として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ウォールスルー型のハニカム構造体を模式的に示す斜視図である。
【
図2】ウォールスルー型のハニカム構造体をセルの延びる方向に平行な断面で観察したときの模式的な断面図である。
【
図3】ウォールフロー型のハニカム構造体を模式的に示す斜視図である。
【
図4】ウォールフロー型のハニカム構造体をセルの延びる方向に平行な断面で観察したときの模式的な断面図である。
【
図5】ウォールフロー型のハニカム構造体の隔壁をセルの延びる方向に直交する断面で観察したときの模式的な部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0015】
<1.ハニカム構造体>
本発明に係るハニカム構造体は一実施形態において、ウォールスルー型又はウォールフロー型のハニカム構造体として提供される。ハニカム構造体の用途は特に制限はない。例示的には、ヒートシンク、フィルタ(例:GPF、DPF)、触媒担体、摺動部品、ノズル、熱交換器、電気絶縁用部材及び半導体製造装置用部品といった種々の産業用途に使用される。中でも、内燃機関、ボイラー等からの排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタや、排ガス浄化用触媒の触媒担体として好適に利用可能である。とりわけ、当該多孔質ハニカム構造体は、自動車用排ガスフィルタ及び/又は触媒担体として好適に利用可能である。
【0016】
図1及び
図2には、ウォールスルー型の自動車用排ガスフィルタ及び/又は触媒担体として適用可能なハニカム構造体100の模式的な斜視図及び断面図がそれぞれ例示されている。このハニカム構造体100は、外周側壁102と、外周側壁102の内周側に配設され、第一底面104から第二底面106まで流体の流路を形成する平行な複数のセル108を区画する隔壁112とを備える。外周側壁102の外表面がハニカム構造体100の側面103を形成する。このハニカム構造体100においては、各セル108の両端が開口しており、第一底面104から一つのセル108に流入した排ガスは、当該セルを通過する間に浄化され、第二底面106から流出する。なお、ここでは第一底面104を排ガスの上流側とし、第二底面106を排ガスの下流側としたが、第一底面及び第二底面の区別は便宜上のものであり、第二底面106を排ガスの上流側とし、第一底面104を排ガスの下流側としてもよい。
【0017】
図3及び
図4には、ウォールフロー型の自動車用排ガスフィルタ及び/又は触媒担体として適用可能なハニカム構造体200の模式的な斜視図及び断面図がそれぞれ例示されている。このハニカム構造体200は、外周側壁202と、外周側壁202の内周側に配設され、第一底面204から第二底面206まで流体の流路を形成する複数のセル208a、208bを区画する隔壁212とを備える。外周側壁202の外表面がハニカム構造体200の側面203を形成する。
【0018】
ハニカム構造体200において、複数のセル208a、208bは、第一底面204から第二底面206まで延び、第一底面204が開口して第二底面206に目封止部209を有する平行な複数の第1セル208aと、外周側壁202の内側に配設され、第一底面204から第二底面206まで延び、第一底面204に目封止部209を有し、第二底面206が開口する平行な複数の第2セル208bに分類することができる。そして、このハニカム構造体200においては、第1セル208a及び第2セル208bが隔壁212を挟んで交互に隣接配置されている。
【0019】
ハニカム構造体200の上流側の第一底面204にスス等の粒子状物質を含む排ガスが供給されると、排ガスは第1セル208aに導入されて第1セル208a内を下流に向かって進む。第1セル208aは下流側の第二底面206に目封止部209を有するため、排ガスは第1セル208aと第2セル208bを区画する隔壁212を透過して第2セル208bに流入する。粒子状物質は隔壁212を通過できないため、第1セル208a内に捕集され、堆積する。粒子状物質が除去された後、第2セル208bに流入した清浄な排ガスは第2セル208b内を下流に向かって進み、下流側の第二底面206から流出する。なお、ここでは第一底面204を排ガスの上流側とし、第二底面206を排ガスの下流側としたが、第一底面及び第二底面の区別は便宜上のものであり、第二底面206を排ガスの上流側とし、第一底面204を排ガスの下流側としてもよい。
【0020】
ハニカム構造体の外形は例えば柱体とすることができる。ハニカム構造体の底面形状に制限はないが、例えば円形状、楕円形状、レーストラック形状及び長円形状等のラウンド形状、三角形状及び四角形状等の多角形状、並びに、その他の異形形状とすることができる。図示のハニカム構造体は、底面形状が円形状であり、全体として円柱状である。
【0021】
ハニカム構造体の高さ(第一底面から第二底面までの長さ)は特に制限はなく、用途や要求性能に応じて適宜設定すればよい。ハニカム構造体の高さは、例えば40mm~450mmとすることができる。ハニカム構造体の高さと各底面の最大径(ハニカム構造体の各底面の重心を通る径のうち、最大長さを指す)の関係についても特に制限はない。従って、ハニカム構造体の高さが各底面の最大径よりも長くてもよいし、ハニカム構造体の高さが各底面の最大径よりも短くてもよい。
【0022】
ハニカム構造体のセル密度(セルの延びる方向に垂直な単位断面積当たりのセルの数)は、特に制限はないが、例えば6~2000セル/平方インチ(0.9~311セル/cm2)、更に好ましくは50~1000セル/平方インチ(7.8~155セル/cm2)、特に好ましくは100~600セル/平方インチ(15.5~92.0セル/cm2)とすることができる。ここで、セル密度は、ハニカム構造体の外周側壁を除く一方の底面積で当該底面におけるセル全体の数(目封止されたセルが存在する場合は、セルが目封止されていないものとして計算する。)を割ることにより算出される。
【0023】
ハニカム構造体における隔壁の厚みは、薄壁化して圧力損失を抑制したり、熱容量を下げたりするという観点から210μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることが更により好ましい。また、ハニカム構造体における隔壁の厚みは、強度確保の観点から50μm以上であることが好ましく、60μm以上であることがより好ましく、70μm以上であることが更により好ましい。
【0024】
図5には、ウォールフロー型のハニカム構造体200の隔壁212をセルの延びる方向に直交する断面で観察したときの模式的な部分拡大図が示されている。隔壁の厚みは、セルの延びる方向(ハニカム構造体の高さ方向)に直交する断面において、隣接するセルの重心C同士を線分Nで結んだときに当該線分Nが隔壁を横切る長さを指す。
【0025】
隔壁の気孔率は、高気孔率化して、圧力損失を抑制したり、熱容量を下げたりするという観点からは、45%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。また、隔壁の気孔率の上限は、薄壁化されたハニカム構造体の強度を確保するという観点から、60%以下であることが好ましく、55%以下であることがより好ましい。従って、隔壁の気孔率は、例えば、45~60%であることが好ましく、50~55%であることがより好ましい。気孔率は、水銀ポロシメータを用いて水銀圧入法によって測定される。水銀圧入法はJIS R1655:2003において規定されている。本明細書においては、ハニカム構造体の隔壁サンプル(縦×横×高さ=約13mm×約13mm×約13mmの立方体)を、高さ方向中央部の径方向中心付近と外周付近の2か所から採取し、水銀圧入法により気孔率を測定し、その平均値を測定値とする。
【0026】
ハニカム構造体の隔壁及び外周側壁を構成する材料としては、限定的ではないが、多孔質セラミックスを挙げることができる。セラミックスの種類としては、コージェライト、ムライト、リン酸ジルコニウム、チタン酸アルミニウム、炭化珪素(SiC)、珪素-炭化珪素複合材(例:Si結合SiC)、コージェライト-炭化珪素複合材、ジルコニア、スピネル、インディアライト、サフィリン、コランダム、チタニア、窒化珪素等が挙げられる。そして、これらのセラミックスは、1種を単独で含有するものでもよいし、2種以上を含有するものであってもよい。
【0027】
ハニカム構造体の隔壁及び外周側壁は、耐熱衝撃性の高さから、コージェライトを含有することが好ましい。ハニカム構造体においてコージェライトが占める質量割合は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが好ましい。コージェライトを含有する多孔質ハニカム構造体においてコージェライトが占める質量割合は不可避的不純物を除き実質的に100質量%とすることも可能である。
【0028】
ハニカム構造体には、原料組成物に配合した原料が残留し得る。後述するように、架橋澱粉中にはP(リン)を含有する架橋剤が使用される場合があるが、Pを含有する架橋剤が多くなると坏土に凝集物が生成して押出成形圧が高くなりやすい。このため、造孔材として使用する架橋澱粉中のP含有量が少ない場合には、押出成形圧を低くすることができ、ハニカム構造体中に残留するP濃度も低い。
【0029】
従って、一実施形態において、ハニカム構造体中のP含有量は0.2質量%未満であり、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以下である。押出成形圧を下げる効果を高める観点からは、ハニカム構造体中のP含有量は0.01質量%以下でもよく、更には0でもよいが、Pを含有する架橋剤を用いて架橋した澱粉は、押出成形時にセル変形を抑制する効果が高く、結果としてハニカム構造体の強度向上効果が高い。そこで、押出成形圧を下げる効果とのバランスから、ハニカム構造体中のP含有量は、0.01質量%以上0.2質量%未満であることが好ましく、0.01質量%以上0.05質量%以下であることがより好ましい。
【0030】
ハニカム構造体中のP含有量は、以下の方法で測定される。まず、ハニカム構造体から隔壁サンプル(0.5~5.0g)を高さ方向中央部の径方向中心付近と外周付近の2か所から採取する。各隔壁サンプルに硫酸を加えて加熱し、灰化後、塩酸中に溶解させて試料溶液を調製する。高周波エネルギーにより発生させた高温アルゴンプラズマ中に、試料溶液を噴霧して、励起されたP原子の特有波長の発光強度をシーケンシャル型誘導結合プラズマ発光分光装置(ICP-OES/AES)にて測定し、ハニカム構造体中のP含有量に換算する。各隔壁サンプルから求めたハニカム構造体中のP含有量の平均値を測定値とする。
【0031】
ハニカム構造体の機械的強度の1つの目安がアイソスタティック破壊強度である。ハニカム構造体のアイソスタティック破壊強度の測定においては、ハニカム構造体を圧力容器内の水中に沈め、水圧を徐々に増加させることでハニカム構造体に等方的な圧力を加える試験が行われる。圧力容器内の水圧が徐々に増加することで、最終的にハニカム構造体の隔壁や外周側壁に破壊が生じる。破壊が生じた際の圧力の値(破壊強度)がアイソスタティック破壊強度である。アイソスタティック破壊強度は、社団法人自動車技術協会発行の自動車規格(JASO M505-87)に基づいて測定される。
【0032】
一実施形態において、ハニカム構造体は薄壁化及び高気孔率化されているにも関わらず、1.0MPa以上のアイソスタティック破壊強度を有することができる。ハニカム構造体のアイソスタティック破壊強度は、1.5MPa以上であることが好ましく、2.0MPa以上であることがより好ましい。アイソスタティック破壊強度の上限は特に設定されないが、3.0MPa以下であるのが通常であり、2.5MPa以下であるのが典型的である。
【0033】
ハニカム構造体を触媒担体として使用する場合、隔壁の表面に目的に応じた触媒をコーティングすることができる。触媒は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。触媒としては、限定的ではないが、炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)を酸化燃焼させて排気ガス温度を高めるための酸化触媒(DOC)、スス等のPMの燃焼を補助するPM燃焼触媒、窒素酸化物(NOx)を除去するためのSCR触媒及びNSR触媒、並びに、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)を同時に除去可能な三元触媒が挙げられる。触媒は、例えば、貴金属(Pt、Pd、Rh等)、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Ba、Sr等)、希土類(Ce、Sm、Gd、Nd、Y、La、Pr等)、遷移金属(Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sc、Ti、Zr、V、Cr等)等を適宜含有することができる。
【0034】
<2.ハニカム構造体の製造方法>
本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法を以下に例示的に説明する。
【0035】
(2-1.ハニカム成形体の作製)
まず、セラミックス原料、造孔材、バインダー及び分散媒を含有する原料組成物を混練して坏土を形成した後、坏土を複数のセルの開口形状を画定する口金を介して押出成形することにより、外周側壁と、外周側壁の内周側に配置され、第一底面から第二底面まで延び、第一底面及び第二底面が共に開口部を有するハニカム成形体を作製する。原料組成物中には分散剤等の添加剤を必要に応じて配合してもよい。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚み、セル密度等を有する口金を用いることができる。
【0036】
セラミックス原料は焼成後に残存し、セラミックスとしてハニカム構造体の骨格を構成する部分の原料である。セラミックス原料としては、焼成後に上述したセラミックスを形成することのできる原料を使用することができる。セラミックス原料は例えば粉末の形態で提供することができる。セラミックス原料としては、コージェライト、ムライト、ジルコン、チタン酸アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア、スピネル、インディアライト、サフィリン、コランダム、チタニア等のセラミックスを得るための原料が挙げられる。具体的には、限定的ではないが、シリカ、タルク、アルミナ、カオリン、蛇紋石、パイロフェライト、ブルーサイト、ベーマイト、ムライト、マグネサイト、水酸化アルミニウム等が挙げられる。セラミックス原料は、1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。
【0037】
セラミックスとしてはコージェライトを好適に使用することができる。この場合、セラミックス原料としてはコージェライト化原料を使用することができる。コージェライト化原料とは、焼成によりコージェライトとなる原料である。コージェライト化原料としては、タルク、カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリカ等を使用することができ、コージェライト化原料は、アルミナ(Al2O3)(アルミナに変換される水酸化アルミニウムの分を含む):30~45質量%、マグネシア(MgO):11~17質量%及びシリカ(SiO2):42~57質量%の化学組成からなることが望ましい。
【0038】
コージェライト化原料を含め、セラミックス原料は、ハニカム構造体の強度に影響を与えることから、粉砕、篩別等により粒度調整がなされた原料を使用することが好ましい。具体的には、レーザー回折・散乱法により測定される体積基準の累積粒度分布において、各セラミックス原料の小粒子側からの累積50%粒子径(D50)の下限は、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、1.0μm以上であることが更により好ましい。また、各セラミックス原料の小粒子側からの累積50%粒子径(D50)の上限は、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることが更により好ましい。従って、例えば、各セラミックス原料の累積50%粒子径(D50)は、0.1μm以上30μm以下であることが好ましく、0.5μm以上20μm以下であることがより好ましく、1.0μm以上15μm以下であることが更により好ましい。
【0039】
造孔材として、架橋澱粉とアクリルポリマーを併用すると、坏土の流動性が有意に向上する。これにより成形性が良化して成形時に発生し易いセル変形が抑制されるので、結果としてハニカム構造体の強度を上げることができる。ハニカム構造体を薄壁化するためには、極めて狭いダイスロットに坏土を通して押し出す必要があり、押出成形圧の上昇も相まってセル形状の歪み(セル変形)が生じやすい。造孔材として架橋澱粉とアクリルポリマーを併用することによりセル変形が抑制される理由は必ずしも明らかではない。理論によって本発明が限定されることを意図するものではないが、架橋澱粉及びアクリルポリマーの保水作用が成形性の良化につながっているものと推察される。架橋澱粉及びアクリルポリマーの何れか一方のみを使用する場合に比べ、両者を併用すると顕著な効果を得ることができる。
【0040】
架橋澱粉では、ホルマリン、エピクロロヒドリン、及びリン酸塩等の一種又は二種以上の架橋剤を使用することで、デンプン分子間のいくつかの水酸基が架橋されている。架橋澱粉としては、例えば、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、及びリン酸架橋デンプンが挙げられる。架橋澱粉は1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。
【0041】
このように、架橋澱粉はリン(P)を含有することがある。また、Pを含有する架橋澱粉はハニカム構造体の強度向上効果を得ながら高気孔率を達成するという観点では好ましい。しかしながら、架橋澱粉中のP含有量が多くなると、坏土を押出成形する際の不純物除去に使用されるスクリーンが詰まり、押出成形圧の上昇原因となるため、坏土へのP含有量をスクリーン詰まりの発生しない範囲にコントロールすることが望ましい。
【0042】
坏土を押出成形する際の押出成形圧は15MPa以下であることが好ましく、10MPa以下であることがより好ましい。押出成形圧は低い方が好ましいが、強度を確保する観点からは過度に低い押出成形圧で押出成形可能な坏土は使用できない。このため、押出成形圧は1MPa以上であることが好ましく、3MPa以上であることがより好ましい。従って、押出成形圧は、例えば1~15MPaであることが好ましく、3~10MPaであることがより好ましい。
【0043】
従って、坏土は、アクリルポリマーを含有すると共に、セラミックス原料100質量部に対して、P含有量が0.2質量部未満となる条件で、好ましくは0.1質量部以下となる条件で、より好ましくは0.05質量部以下となる条件で、架橋澱粉を含有することが望ましい。坏土中のP含有量は、セラミックス原料100質量部に対して、0.01質量部以下でもよく、更には0質量部でもよい。坏土中の架橋澱粉の含有量の下限は、ハニカム構造体の強度向上効果を得ながら高気孔率を達成するという観点から、上記のP含有量の好適な条件を満たしつつ、セラミックス原料100質量部に対して1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることが更により好ましい。坏土中の架橋澱粉の含有量の上限は、焼成時の発熱によるクラックの発生を抑制する観点から、セラミックス原料100質量部に対して50質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることが更により好ましい。
【0044】
Pを含有する架橋剤によって架橋された澱粉を使用する場合、坏土中の架橋澱粉の含有量が同じでも、架橋度が大きくなるほどPの含有量が多くなるので、Pの含有量を架橋度の指標として用いることができる。例えば、架橋澱粉としては、10質量部当たりの架橋澱粉中のP含有量が0.01質量部以上0.20質量部未満のものを使用可能である。10質量部当たりの架橋澱粉中のP含有量は0.01質量部以上0.15質量部未満が好ましく、0.01質量部以上0.1質量部未満がより好ましい。
【0045】
坏土中のP含有量は、以下の方法で測定される。まず、坏土からサンプル(0.5~5.0g)を採取する。各隔壁サンプルに硫酸を加えて加熱し、灰化後、塩酸中に溶解させて試料溶液を調製する。高周波エネルギーにより発生させた高温アルゴンプラズマ中に、試料溶液を噴霧して、励起されたP原子の特有波長の発光強度をシーケンシャル型誘導結合プラズマ発光分光装置(ICP-OES/AES)にて測定し、坏土中のP含有量に換算する。
【0046】
坏土は、ハニカム構造体の強度向上効果を得ながら高気孔率を達成するという観点で、セラミックス原料100質量部に対して、0.5質量部以上のアクリルポリマーを含有することが好ましく、0.7質量部以上のアクリルポリマーを含有することがより好ましく、1.0質量部以上のアクリルポリマーを含有することが更により好ましい。また、坏土は、流動性という観点で、セラミックス原料100質量部に対して、10.0質量部以下のアクリルポリマーを含有することが好ましく、7.0質量部以下のアクリルポリマーを含有することがより好ましく、5.0質量部以下のアクリルポリマーを含有することが更により好ましい。従って、坏土は、例えば、セラミックス原料100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下のアクリルポリマーを含有することが好ましく、0.7~7.0質量部のアクリルポリマーを含有することがより好ましく、1.0~5.0質量部のアクリルポリマーを含有することが更により好ましい。
【0047】
アクリルポリマーの種類としては、限定的ではないが、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル等が挙げられ、特にポリメタクリル酸メチル(Polymethyl methacrylate:PMMA)は好適なアクリルポリマーの一種である。アクリルポリマーは架橋されていてもよい。アクリルポリマーは1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。
【0048】
坏土中には公知のその他の造孔材を1種又は2種以上適宜添加してもよい。例えば、小麦粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、架橋されていない澱粉、多孔質シリカ、炭素(例:グラファイト)、セラミックスバルーン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、フェノール等の有機造孔材を挙げることができる。
【0049】
架橋澱粉及びアクリルポリマー等の造孔材は、ハニカム構造体の強度に影響を与えることから、粉砕、篩別等により粒度調整がなされているものを使用することが好ましい。具体的には、レーザー回折・散乱法により測定される体積基準の累積粒度分布において、各造孔材の小粒子側からの累積50%粒子径(D50)の下限は、0.1μm以上であることが好ましく、1.0μm以上であることがより好ましく、5.0μm以上であることが更により好ましい。また、各造孔材の小粒子側からの累積50%粒子径(D50)の上限は、30.0μm以下であることが好ましく、20.0μm以下であることがより好ましく、15.0μm以下であることが更により好ましい。従って、例えば、各造孔材の小粒子側からの累積50%粒子径(D50)は、0.1~30.0μmであることが好ましく、1.0~20.0μmであることがより好ましく、5.0~15.0μmであることが更により好ましい。
【0050】
バインダーとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の有機バインダーを例示することができる。特に、メチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを併用することが好適である。また、坏土中のバインダーの含有量は、ハニカム成形体の強度を高めるという観点から、セラミックス原料100質量部に対して4質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であるのがより好ましく、6質量部以上であるのが更により好ましい。坏土中のバインダーの含有量は、焼成工程での異常発熱によるキレ発生を抑制する観点から、セラミックス原料100質量部に対して9質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であるのがより好ましく、7質量部以下であるのが更により好ましい。バインダーは、1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。
【0051】
分散媒としては、水、又は水とアルコール等の有機溶媒との混合溶媒等を挙げることができるが、特に水を好適に用いることができる。坏土中の分散媒の含有量は、セラミックス原料100質量部に対して、30~70質量部であることが好ましく、35~65質量部であることがより好ましく、40~60質量部であることが更により好ましい。坏土中の分散媒の含有量が、セラミックス原料100質量部に対して、30質量部以上であることで、ハニカム成形体の品質が安定し易いという利点が得られやすい。坏土中の分散媒の含有量が、セラミックス原料100質量部に対して、70質量部以下であることで、乾燥時の収縮量が小さくなり、変形を抑制することができる。本明細書において、坏土の水の含有量は、乾燥減量法により測定される値を指す。
【0052】
分散剤には、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリエーテルポリオール等を用いることができる。分散剤は、1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。坏土中の分散剤の含有量は、セラミックス原料100質量部に対して0~2質量部であることが好ましい。
【0053】
(2-2.ハニカム成形体の乾燥)
次いで、ハニカム成形体を乾燥してハニカム乾燥体を得る。乾燥工程においては、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の従来公知の乾燥方法を用いることができる。なかでも、成形体全体を迅速かつ均一に乾燥することができる点で、熱風乾燥と、マイクロ波乾燥又は誘電乾燥とを組み合わせた乾燥方法が好ましい。また、バッチ式の乾燥機を使用してもよいし、連続式の乾燥機を使用してもよい。
【0054】
目封止部を形成する場合は、乾燥したハニカム成形体の第一底面及び第二底面の所定位置に目封止部を形成した上で目封止部を乾燥する。ハニカム成形体の第一底面及び第二底面を目封止する方法は、特に限定されるものではなく、公知の手法を採用することができる。目封止部の材料については、特に制限はないが、強度や耐熱性の観点からセラミックスであることが好ましい。セラミックスとしては、コージェライト、ムライト、ジルコン、チタン酸アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア、スピネル、インディアライト、サフィリン、コランダム、及びチタニアからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するセラミックス材料であることが好ましい。焼成時の膨張率を同じにでき、耐久性の向上につながるため、目封止部はハニカム成形体の本体部分と同じ材料組成とすることが更により好ましい。
【0055】
(2-3.ハニカム乾燥体の焼成)
ハニカム成形体を乾燥した後、脱脂及び焼成を実施することで柱状ハニカム構造体を製造することができる。脱脂工程及び焼成工程の条件はハニカム成形体の材料組成に応じて公知の条件を採用すればよく、特段に説明を要しないが以下に具体的な条件の例を挙げる。
【0056】
脱脂工程について説明する。バインダーの燃焼温度は200℃程度、造孔材の燃焼温度は300~1000℃程度である。従って、脱脂工程はハニカム成形体を200~1000℃程度の範囲に加熱して実施すればよい。加熱時間は特に限定されないが、通常は、10~100時間程度である。脱脂工程を経た後のハニカム成形体は仮焼体と称される。
【0057】
焼成工程は、ハニカム成形体の材料組成にもよるが、例えば仮焼体を1350~1600℃に加熱して、3~10時間保持することで行うことができる。
【0058】
ハニカム構造体を触媒担体として使用する場合には、隔壁に触媒を担持させることができる。多孔質隔壁に触媒を担持させる方法自体は特に制限はなく、公知の方法を採用すればよいが、例えば、多孔質隔壁に触媒組成物スラリーを接触させた後に、乾燥及び焼成する方法が挙げられる。触媒組成物スラリーは、その用途に応じて適切な触媒を1種類又は2種類以上組み合わせて含有することが望ましい。
【実施例0059】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を例示するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0060】
<A.実施例及び比較例に係るハニカム構造体の製造>
(1)原料
コージェライト化原料として、タルク、カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウム及びシリカを用意用した。これらのレーザー回折・散乱法により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50)を表1に示す。
造孔材として、アクリルポリマー、低架橋澱粉、中架橋澱粉及び高架橋澱粉を用意した。アクリルポリマーとしては、ポリアクリル酸を使用した。低架橋澱粉、中架橋澱粉及び高架橋澱粉は何れもリン酸系の架橋剤で架橋された澱粉であるが架橋度が異なる。これらのレーザー回折・散乱法により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50)を表1に示す。
助剤として、バインダー、分散剤及び水を用意した。バインダーとしてはメチルセルロースを使用し、分散剤としてはエチレングリコールを使用した。
【0061】
(2)ハニカム成形体の作製
上記のコージェライト化原料、造孔材及び助剤を、実施例及び比較例の番号に応じて表1に示す質量比率で配合した原料組成物を混練して実施例及び比較例に係る坏土をそれぞれ形成した。表1には、先述した方法に従って測定した坏土中のセラミックス原料100質量部に対するP含有量を示している。
【0062】
その後、それぞれの坏土を押出成形機に投入し、所定形状の口金を介して押出成形することにより円柱状のハニカム成形体を得た。押出成形時の圧力(押出成形圧)を圧力センサーにより測定した。結果を表1に示す。得られたハニカム成形体を誘電乾燥及び熱風乾燥した後、所定の寸法となるように両底面を切断し、70℃×2時間の条件で更に熱風乾燥した。
【0063】
(3)焼成
次いで、大気雰囲気下、約200℃で加熱脱脂し、更に大気雰囲気下、1400℃で10時間焼成することにより、実施例及び比較例に係るハニカム構造体を得た。ハニカム構造体は下記の試験に必要な数を製造した。
【0064】
(4)ハニカム構造体の仕様
得られたハニカム構造体の仕様は以下である。
全体形状:直径100mm×高さ100mmの円柱状
セルの流路方向に垂直な断面におけるセル形状:正方形
隔壁の厚み(口金の仕様に基づく公称値):表1に記載
セル密度(単位断面積当たりのセルの数):表1に記載(cpsi:セル/平方インチ)
【0065】
<B.特性評価>
上記で得られた実施例及び比較例に係る各ハニカム構造体に対して種々の特性評価を行った。
【0066】
(1)気孔率
各ハニカム構造体の隔壁サンプル(縦×横×高さ=約13mm×約13mm×約13mmの立方体)を、高さ方向中央部の径方向中心付近と外周付近の2か所から採取し、水銀圧入法により気孔率を測定し、その平均値を測定値とした。結果を表1に示す。
【0067】
(2)アイソスタティック破壊強度の測定
各ハニカム構造体のアイソスタティック破壊強度を、社団法人自動車技術協会発行の自動車規格(JASO M505-87)に基づいて測定した。結果を表1に示す。
【0068】
(3)P含有量の測定
各ハニカム構造体中のP含有量を、先述した測定方法に従って測定した。結果を表1に示す。
【0069】
【0070】
(4)考察
実施例及び比較例に係るハニカム構造体はすべて薄壁化及び高気孔率化されている。比較例1~6は何れも、造孔材としてアクリルポリマー及び架橋澱粉の一方のみを使用した例である。比較例1~4はハニカム構造体の強度が十分ではなかった。高架橋澱粉を使用した比較例5、6については、優れた強度を有していたが、P含有量が多くなって押出成形圧が高すぎたことで著しく押出速度が低下し、また、成形機に過度な負担が掛かった。
一方、実施例1~16では、造孔材としてアクリルポリマー及び架橋澱粉を併用したことで、薄壁化及び高気孔率化されており、且つ、強度に優れたハニカム構造体を、押出成形機に過度な負担を掛けることなく(押出成形圧が15MPa以下)、製造することができた。