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  • 特開-散布剤及び樹脂シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144044
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】散布剤及び樹脂シート
(51)【国際特許分類】
   A01G 20/00 20180101AFI20241003BHJP
   A01M 1/20 20060101ALI20241003BHJP
   C09K 17/30 20060101ALI20241003BHJP
   C09K 17/18 20060101ALI20241003BHJP
   A01M 21/04 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
A01G20/00 ZAB
A01M1/20 A
C09K17/30 H
C09K17/18 H
A01M21/04 C ZBP
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023189029
(22)【出願日】2023-11-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-09-18
(31)【優先権主張番号】P 2023051761
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100124936
【弁理士】
【氏名又は名称】秦 恵子
(72)【発明者】
【氏名】岸本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大宅 徹
(72)【発明者】
【氏名】敷地 渉
【テーマコード(参考)】
2B022
2B121
4H026
【Fターム(参考)】
2B022AB02
2B121AA03
2B121AA11
2B121AA19
2B121AA20
2B121FA20
4H026AA09
4H026AB02
4H026AB04
(57)【要約】
【課題】高い生分解性、被膜形成性、バリア性、及び耐久性を兼ね備える散布剤及び樹脂
シートを提供すること。
【解決手段】本開示に係る散布剤1は、樹脂エマルションを含み、土壌120の団粒化、
種子110又は植物の固定化、及び薬剤の固定化のうち少なくとも一つに用いられる散布
剤であって、前記樹脂エマルションは、エステル骨格を含み、最低造膜温度が30℃以下
である生分解性樹脂を含むものである。また、本開示に係る樹脂シートは、当該樹脂エマ
ルションを含む樹脂組成物により形成されるものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂エマルションを含み、土壌の団粒化、種子又は植物の固定化、及び薬剤の固定化の
うち少なくとも一つに用いられる散布剤であって、
前記樹脂エマルションは、エステル骨格を含み、最低造膜温度が30℃以下である生分
解性樹脂を含む
散布剤。
【請求項2】
前記樹脂エマルションの樹脂成分100質量%中、前記生分解性樹脂の割合が1~10
0質量%である
請求項1に記載の散布剤。
【請求項3】
前記生分解性樹脂がウレタン結合を含む
請求項1に記載の散布剤。
【請求項4】
前記生分解性樹脂の被膜の破断強度が、0.05~45MPaである
請求項1に記載の散布剤。
【請求項5】
前記生分解性樹脂の被膜の破断伸度が、50~2000%である
請求項1に記載の散布剤。
【請求項6】
前記生分解性樹脂の被膜の破断強度保持率が、温度40℃、湿度85%の環境下にて2
0日経過後において70%以上である
請求項1に記載の散布剤。
【請求項7】
前記固定化において、当該散布剤が塗布される対象は、土壌、樹木、及び壁のうち少な
くとも一つである
請求項1~6のいずれか一項に記載の散布剤。
【請求項8】
前記薬剤は、農薬、生育調整剤、除草剤、防虫剤、及び難燃剤のうち少なくとも一つで
ある
請求項1~6のいずれか一項に記載の散布剤。
【請求項9】
樹脂エマルションを含む樹脂組成物により形成され、土壌の団粒化、種子又は植物の固
定化、及び薬剤の固定化のうち少なくとも一つに用いられる樹脂シートであって、
樹脂エマルションは、エステル骨格を含み、最低造膜温度が30℃以下である生分解性
樹脂を含む
樹脂シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、散布剤及び樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、土壌表層に散布することで、粉塵の飛散を防止する粉塵飛散防止剤が
開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-218207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、地球温暖化対策の一環として、二酸化炭素の過剰な排出を抑えるカーボンニュートラルの取り組みが盛んに行われている。しかしながら、社会活動に由来する二酸化炭素の排出を完全にゼロとすることは極めて困難である。そこで、大気中の二酸化炭素を回収、吸収する、即ち、負の排出を行う「ネガティブエミッション技術(NETs:Negative Emissions Technologies)」を用い、全体として二酸化炭素の排出量を実質的にゼロにする取り組みが注目されている。
【0005】
ネガティブエミッション技術の一例として、荒廃地を緑地化し、二酸化炭素の吸収量を増やす取り組みが挙げられる。緑地化の方法としては、広い面積に種子を散布するために種子吹き付け工法が好適に用いられるが、種子を散布するのみでは、風雨によって大半の種子が発芽前に飛ばされるため、目的の場所を十分に緑地化できないという問題がある。そこで、種子吹き付け工法においては、一般に種子を分散させた溶液に固定化剤を混合し吹き付ける方法が用いられている。固定化剤を併せて散布することにより、荒廃地に種子を十分に固定させることが可能となる。
【0006】
しかしながら、固定化剤としては主にアクリル樹脂やエチレン-酢酸ビニル共重合体等が用いられており、生分解性に乏しく、散布後に分解せずに長期間土壌中に残存し続けるため、環境負荷が大きくなる問題があった。また、長期的には、アクリル樹脂が紫外線等で劣化した後に、雨風によって河川や海洋へ流出し、マイクロプラスチックとして生態に悪影響を与える恐れもあった。
【0007】
特許文献1には、土壌表層に散布することで、粉塵の飛散を防止する粉塵飛散防止剤が開示されている。この粉塵飛散防止剤は、生分解樹脂であるポリ乳酸と、増膜助剤として多糖類等の増粘剤を併用しており、増粘剤により硬質なポリ乳酸に適度な粘性を与えることで、土壌表層に樹脂からなる被膜を形成することができる。
【0008】
特許文献1に開示される粉塵飛散防止剤を固定化剤として用いることにより、環境に配慮した荒廃地の緑地化にも貢献できることが期待される。一方で、特許文献1に開示されるポリ乳酸と増粘剤との組合せは、増粘剤の流動性が高すぎるため、特に夏場の高温雨天環境下において、軟化による被膜強度の低下や増粘剤の被膜表層へのブリードが起こり、長期に飛散防止性を保持できないという問題があった。
【0009】
本開示は、これらの課題を鑑みてなされたものであり、高い生分解性、被膜形成性、バリア性、及び耐久性を兼ね備える散布剤及び樹脂シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る散布剤は、樹脂エマルションを含み、土壌の団粒化、種子又は植物の固定化、及び薬剤の固定化のうち少なくとも一つに用いられる散布剤であって、前記樹脂エマルションは、エステル骨格を含み、最低造膜温度が30℃以下である生分解性樹脂を含むものである。
【0011】
本開示に係る樹脂シートは、樹脂エマルションを含む樹脂組成物により形成され、土壌の団粒化、種子又は植物の固定化、及び薬剤の固定化のうち少なくとも一つに用いられる樹脂シートであって、前記樹脂エマルションは、エステル骨格を含み、最低造膜温度が30℃以下である生分解性樹脂を含むものである。
【発明の効果】
【0012】
本開示により、高い生分解性、被膜形成性、バリア性、及び耐久性を兼ね備える散布剤及び樹脂シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の形態に係る散布剤を用いた種子の固定化について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図を用いて本開示について説明する。図1(a)~(c)は、本実施の形態に係る散布剤を用いた種子の固定化を表している。散布剤1は、生分解性樹脂を含む樹脂エマルションを含んでいる。樹脂エマルションとは、樹脂が分散媒に分散した分散液である。分散媒は、主成分が水であることが好ましい。生分解性樹脂の詳細については後述する。
【0015】
図1(a)は、本実施の形態に係る散布剤1を土壌120に吹き付け、種子110を固定化する状態を表している。この時、種子110が土壌120に蒔かれた状態にて、散布剤1を吹き付けてもよいし、予め種子110を散布剤1に混合した状態にて土壌120に吹き付けてもよい。土壌120に吹き付けられた散布剤1が乾燥することにより、散布剤1に含まれる生分解性樹脂が固化し、種子110を土壌120に固定させる。
【0016】
図1(b)は、土壌120の表面が風雨に晒される状態を表している。固化した生分解性樹脂は、高い耐水性を有するため、種子110が発芽するまでの間、風雨による土壌120への浸食や流出を防ぐことができる。
【0017】
図1(c)は、生分解性樹脂が分解され、固定化されていた種子110が発芽した状態を表している。このようにして、本実施の形態に係る散布剤1は、固定化剤として、種子110を土壌120に固定する。また、後述するように、高い生分解性を有するため、環境負荷が小さい。なお、図1(a)~(c)において、散布剤1の成分が種子110を完全に覆っていてもよく、散布剤1の成分が種子110の一部のみを覆っている場合においても効果を発現することができる。
【0018】
本実施の形態に係る散布剤1に含まれる樹脂エマルションが含有する生分解性樹脂は、エステル骨格を含む。樹脂エマルションの樹脂成分100質量%中、生分解性樹脂の割合は、好ましくは1~100質量%であり、より好ましくは10~100質量%である。また、本実施の形態に係る生分解性樹脂は、ウレタン結合を含むことが好ましい。
【0019】
本実施の形態に係る生分解性樹脂は、エステル骨格を含み、生分解性を有する樹脂である。エステル骨格を有することで、強固な被膜を形成することができる。また、生分解性を有することにより、屋外で使用する際にも環境への影響を低減する事が可能である。
【0020】
本実施の形態に係る生分解性樹脂の被膜の破断強度は、0.05~45MPaが好ましく、破断伸度は、50~2000%が好ましい。上記範囲にあることで、基材への密着性が良好になり、種子等を基材へ強固に固定化することが可能になる。本実施の形態に係る生分解性樹脂の被膜の破断強度保持率は、温度40℃、湿度85%の環境下にて20日経過後において70%以上であることが好ましい。上記範囲にあることで、例えば、種子が発芽するまでの十分な期間、基材に種子を固定化し続けることが可能になる。
【0021】
本実施の形態に係る生分解性樹脂の最低造膜温度は、30℃以下である。したがって、本実施の形態に係る樹脂エマルションは、常温下において成膜、固定化することが可能である。例えば、ポリ乳酸又はポリカプロラクトン単体を含む樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が30℃を超えるため、常温下において被膜形成性に乏しい。当該樹脂に増膜助剤として可塑剤を適度に加えることにより被膜形成性を付与することができる。しかしながら、特に高温雨天環境下において、可塑剤の軟化による被膜強度の低下や、可塑剤の被膜表面へのブリード又は地中への拡散による被膜の硬脆化により、固定化能力が著しく低下するという問題がある。
【0022】
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤の他、グアーガム等の水溶性天然成分、ポリビニルアルコール、水溶性アクリル樹脂等の水溶性合成樹脂成分、界面活性剤等が挙げられる。
【0023】
本実施の形態に係る生分解性樹脂は、性能を損なわない範囲で可塑剤を併用してもよいが、好ましくは可塑剤を使用せず、単一の樹脂で用いることが好ましい。
【0024】
本実施の形態に係る生分解性樹脂は、例えば、環状エステルを開環重合して得られる脂肪族ポリエステルや、生分解性ポリエステルウレタン樹脂等が挙げられる。好ましくは、生分解性ポリエステルウレタン樹脂である。
【0025】
環状エステルを開環重合して得られる脂肪族ポリエステルは、例えば、水酸基含有化合物を開始剤として環状エステルを開環重合することで得ることができる。
【0026】
環状エステルとしては、分子内に少なくとも1つのエステル基を有する環状化合物であれば特に限定されず、例えば、ラクトン類、環状ジエステル類等を用いることができる。ラクトン類としては、例えば、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-ヘキサノラクトン、γ-オクタノラクトン、δ-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-ヘキサラノラクトン、δ-オクタノラクトン、ε-カプロラクトン、δ-ドデカノラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、グリコリッド、p-ジオキサノン等が挙げられる。環状ジエステル類としては、D-ラクチド、L-ラクチド、DL-ラクチド、メソラクチド等が挙げられる。好ましくはε-カプロラクトン、D-ラクチド、L-ラクチド、DL-ラクチド、及びメソラクチドであり、これらを組み合わせて使用することで、被膜形成性が良好になる。
【0027】
水酸基含有化合物としては、水酸基を有する物質であれば特に限定されるものではないが、水性化工程を考慮するとカルボキシル基またはポリエチレングリコール、スルホン酸基を有する化合物が好ましく、ジヒドロキシカルボン酸を用いた化合物が特に好ましい。ジヒドロキシカルボン酸としては、分子内に2つ以上の水酸基と1つ以上のカルボン酸を有するものであれば特に限定されず、例えば、ジメチロールプロパン酸(DMPA)、ジメチロールブタン酸(DMBA)、ジメチロールペンタン酸、ジメチロールノナン酸、酒石酸、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸、2,3,4-トリヒドロキシ安息香酸、2,4,6-トリヒドロキシ安息香酸、メバロン酸、パントイン酸、グリセリン酸等が挙げられる。好ましくはジメチロールプロパン酸(DMPA)、ジメチロールブタン酸(DMBA)、酒石酸であり、さらに好ましくはジメチロールプロパン酸(DMPA)、ジメチロールブタン酸(DMBA)である。酒石酸、ジメチロールプロパン酸(DMPA)、ジメチロールブタン酸(DMBA)を使用することで樹脂の水性化が容易になり、水中での分散安定性が良好となるため好ましい。
【0028】
生分解性ポリエステルウレタン樹脂は、生分解性ポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートと、必要に応じてその他ポリオール及び/又はポリアミンとを反応させることで得ることができる。
【0029】
生分解ポリエステルポリオールとしては、生分解性を有するポリエステルポリオールであれば特に制限は無いが、上述の生分解性の環状エステルを開環重合して得られる脂肪族ポリエステルを用いることが好ましい。
【0030】
上述の生分解性の環状エステルを開環重合して得られる脂肪族ポリエステル以外の生分解ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリグリコールポリオール、ポリブチレンサクシネートポリオール、ポリヒドロキシアルカノエートポリオール、ポリヒドロキシブチレートポリオール等が挙げられる。
【0031】
生分解ポリエステルポリオールに加えて、併用できるその他ポリオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、2-メチル-1,3-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル-2’,2’-ジメチル-3’-ヒドロキシプロパネート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-エチル-1,5-ペンタンジオール、3-プロピル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、3-オクチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(ヒドロキシプロピル)シクロヘキサン、1,4-ビス(ヒドロキシメトキシ)シクロヘキサン、1,4-ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシメトキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシシクロヘキシル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、3(4),8(9)-トリシクロ[5.2.1.0]デカンジメタノール、ビスフェノールA等の低分子ジオール、及び/または、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子トリオールと、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の二塩基酸との縮合物から得られるポリエステルポリオール類;
前述の低分子ジオールと、ジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、又はジアリールカーボネートと、を反応させてなるポリカーボネートポリオール;
水酸基含有ポリブタジエン、酸基含有水添ポリブタジエン、水酸基含有ポリイソプレン、水酸基含有水添ポリイソプレン、水酸基含有塩素化ポリプロピレン、水酸基含有塩素化ポリエチレン等のポリオレフィンポリオール類;
植物由来の油を原料とした、ひまし油ポリオール;
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレン/プロピレン)グリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール類;
さらに、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、2-メチル-1,3-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル-2’,2’-ジメチル-3’-ヒドロキシプロパネート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-エチル-1,5-ペンタンジオール、3-プロピル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、3-オクチル-1,5-ペンタンジオール等の脂肪族ジオール類や、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(ヒドロキシプロピル)シクロヘキサン、1,4-ビス(ヒドロキシメトキシ)シクロヘキサン、1,4-ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシメトキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシシクロヘキシル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、3(4),8(9)-トリシクロ[5.2.1.0]デカンジメタノール等の脂環族グリコール類、あるいはビスフェノールAの両末端水酸基へのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物の様な芳香族系グリコール類から選ばれる1種類以上のポリオールと、スルホン酸金属塩基を有する二塩基酸である5-ナトリウムスルホイソフタル酸、3-ナトリウムスルホテレフタル酸、4-カリウムスルホ-1,8-ナフタレンジカルボン酸無水物を縮合させてなるポリエステルポリオールを使用してもよい。
【0032】
ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジクロロ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート類;
テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート類;
イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環族系ポリイソシアネート類等が挙げられる。好ましくはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートである。
【0033】
ポリエステルウレタン樹脂の合成において、ウレタン結合濃度調節や各種官能基導入を目的として、低分子ジオールを併用してもよい。
【0034】
低分子ジオールとして好ましくは、分子量500以下のジオールであり、このようなジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレンジオール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)アニリン、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロールペンタン酸等のジメチロールアルカン酸や、ジヒドロキシコハク酸、ジヒドロキシプロピオン酸、ジヒドロキシ安息香酸が挙げられる。
【0035】
中でも、カルボン酸を骨格に有することで水系化が容易に行えるため、好ましくはジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロールペンタン酸等のジメチロールアルカン酸や、ジヒドロキシコハク酸、ジヒドロキシプロピオン酸、ジヒドロキシ安息香酸が挙げられる。さらに好ましくはジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸である。
【0036】
またポリエステルウレタン樹脂は、樹脂の末端が変性されていてもよいし、鎖延長されていてもよい。末端変性や鎖延長反応に使用できる化合物としては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン類、ピペラジン、及びイソホロンジアミン等の脂環族ポリアミン、4,4’-ジフェニルメタンジアミン、メタキシリレンジアミン等の芳香族ポリアミン類等が挙げられ、これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
ウレタン化触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート(DTD)、アルキルチタン酸塩、有機珪素チタン酸塩、スタナスオクトエート、オクチル酸鉛、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、ジブチル錫ジオルソフェニルフェノキサイド、錫オキサイドとエステル化合物(ジオクチルフタレート等)の反応生成物等の金属系触媒類や、モノアミン類(トリエチルアミン等)、ジアミン類(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン等)、トリアミン類(N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン等)、環状アミン類(トリエチレンジアミン等)等のアミン系触媒類等が挙げられる。
【0038】
ポリエステルウレタン樹脂の合成の際には、任意の有機溶剤を使用してもよい。有機溶剤としては、例えば、オクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素類、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;
エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル類;
ジオキサン等のエーテル類;
ヨウ化メチレン、モノクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;
N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホニルアミド等のアミド系溶剤類の他、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、好ましくはアセトン、メチルエチルケトンである。
【0039】
ポリエステルウレタン樹脂がカルボキシル基を有する場合、カルボキシル基を中和剤で中和することで水系化することができる。中和剤としては、特に限定されないが、例えば、アンモニア、有機アミン化合物、無機塩基性化合物等が上げられる。有機アミン化合物としては、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、sec-ブチルアミン等のアルキルアミン類、3-エトキシプロピルアミン、プロピルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、3-メトキシプロピルアミン等のアルコキシアミン類;
N,N-ジエチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N-メチル-N,N-ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;
モルホリン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等のモルホリン類等が挙げられる。好ましくは乾燥性の観点からトリエチルアミン、アンモニアがよい。
【0040】
本開示の樹脂エマルションの製造方法としては、生分解樹脂を有機溶剤中または無溶剤で合成した後、乳化剤を用いて強制的に水中に分散させる方法、あるいは樹脂中に親水基を導入して自己乳化により水中に分散させる方法等が挙げられる。
【0041】
本開示の樹脂エマルションの平均粒子径としては、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下である。また、平均粒子径の下限は製造可能な範囲であれば特に制限されないが、10nm以上が好ましく、より好ましくは50nm以上である。粒子径が300nm以下であることにより分散体の安定性が良好になり、長期保管した場合でも沈殿が生じにくくなると同時に、基材への投錨性が良好になる。また、10nm以上であれば安定に製造することができる。
【0042】
樹脂エマルションの固形分としては通常10~70質量%であり、好ましくは20~50質量%である。固形分が20質量%以上であると、塗布した後の乾燥塗膜の膜厚を厚くすることができ、それによって強靭な塗膜を得ることができる。固形分が50質量%以下であると、分散体中の粒子間距離を十分に確保できることから分散体の安定性が良好になる。
【0043】
散布剤は、樹脂エマルション以外の任意成分として、植物の種子、肥料、生育調整剤、農薬、難燃剤、生育基盤材、着色料、粘土鉱物、土壌、胞子、菌類、保水剤、消泡剤、界面活性剤、防腐剤、架橋剤等の添加剤を含むことができる。
【0044】
使用する種子としては、特に種類を限定するものではないが、草本植物、木本植物の種子等が挙げられる。使用する際は単一の種類の種子を使用してもよく、それらを併用して複数種類の種子を同時に使用してもよい。
【0045】
肥料としては、特に種類を限定するものではないが、有機質肥料、無機質肥料、複合肥料等が挙げられる。
【0046】
生育調整剤としては、特に種類を限定するものではないが、発根・活着促進剤、開花・着果・肥大促進剤、伸長抑制剤等が挙げられる。
【0047】
農薬としては、特に種類を限定するものではないが、殺虫剤、殺菌剤、殺虫殺菌剤、除草剤、殺鼠剤、植物成長調整剤等が挙げられる。
【0048】
難燃剤としては、特に種類を限定するものではないが、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、無機系難燃剤等が挙げられる。
【0049】
生育基盤材としては、バーク堆肥やピートモスの他、剪定枝葉等の堆肥化物、現地発生土砂、砂質土、生チップ、堆肥化チップ、発酵汚泥コンポスト等が使用できる。
【0050】
着色料としては、特に種類を限定するものではないが、有機顔料、無機顔料、染料等が挙げられる。
【0051】
粘土鉱物としては、特に種類を限定するものではないが、カオリナイト、スメクタイト、セリサライト、イライト、グローコナイト、クロライト、タルク、ゼオライト等が挙げあられる。
【0052】
土壌としては、特に種類を限定するものではないが、適宜の天然土壌、あるいは人工土壌等が挙げられる。
【0053】
保水剤としては、特に種類を限定するものではないが、天然高分子や合成高分子等の高吸収ポリマー等が挙げられる。
【0054】
消泡剤としては、ポリシロキサン系消泡剤、鉱物油系消泡剤、非イオン界面活性剤等が挙げられ、なかでも消泡力の強さの観点から、ポリシロキサン系消泡剤を用いることが好ましい。ポリシロキサン系消泡剤としては、ポリジメチルシロキサン構造を有するもの等を使用することができる。必要に応じて疎水性シリカや鉱物油等を混合したポリシロキサン系消泡剤を使用してもよい。
【0055】
界面活性剤は、生分解性樹脂の基材への濡れ性や投錨性を向上させるために使用することができ、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられるが、安全性や良好な塗膜物性発現の観点からアニオン性界面活性剤またはノニオン性界面活性剤であることが好ましい。
【0056】
防腐剤としては、特に限定されず、例えばデヒドロ酢酸ナトリウム、ジクロロフェン、ソルビン酸、安息香酸ナトリウム、p-ヒドロキシ安息香酸エステル、1,2-Benzisothiazoline-3-one(製品名:プロキセルGXL、アビシア社製)等が挙げられる。
【0057】
架橋剤としては、カルボキシル基に対して反応性を有する多官能性化合物が好適であり、例えば、多官能カルボジイミド、多官能イソシアネート、多官能エポキシ、多官能オキサゾリン等が挙げられる。
【0058】
本開示においては、樹脂単体もしくは樹脂と添加剤の混合物を基材に対して塗布することで様々な効果を発現させることができる。
【0059】
基材(本発明の散布剤が塗布される対象)としては、土壌、樹木、壁、岩、不織布、生分解フィルム、紙、布、ロープ、コンクリート、セメント、葉、草、実、雄花、雌花等が挙げられる。
【0060】
塗布する方法としては、スプレー散布、シャワー散布、ディッピング、印刷、刷毛による塗布、液を垂らして塗布等の方法等が挙げられる。
【0061】
本開示における生分解性樹脂を含む樹脂エマルションは、緑地化用の散布剤として好適に用いることができるが、その他の用途として、土壌の飛散防止剤、火災防止用散布剤、除草剤を含む散布剤、海藻もしくは胞子の固定化剤等として広く使用することができる。
【0062】
本実施の形態に係る散布剤1は、上述のような種子110を土壌120に固定する用途以外に、様々な用途に用いることができる。例えば、土壌に散布することにより、土壌の団粒化や飛散防止を促すことができる。また、種子や植物(植生生物)を、土壌だけでなく、樹木や葉等に固定化することができる。さらに、農薬、生育調整剤、除草剤、防虫剤等の薬剤を土、畑、住宅の外壁等に散布し固定化することができる。その他にも、難燃剤を森林や住宅の外壁に固定化させることによって、火災の延焼防止や、火災の発生そのものを予防する効果が得られる。
【0063】
さらに、樹脂エマルションを含む樹脂組成物をシート状や粒子状に乾燥成形し、樹脂シートや粒状物として使用することができる。例えば、種子、肥料、海藻の一部または全体が樹脂により覆われた樹脂シートや粒状物を作製し、これらを土壌や海底に設置し、種子、肥料、海藻を土壌に固定化することにより、設置した場所を容易に緑地化することができる。このような樹脂シートあるいは粒状物を用いると、植物の発芽や生育の速度をより簡便に制御することができる。
【0064】
このようにして、高い生分解性、バリア性、及び耐久性を備える散布剤及び樹脂シートを提供することができる。
【実施例0065】
以下に実施例を用いて本開示を更に詳しく説明するが、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。以下において「%」及び「部」は特に断りのない限り、それぞれ「質量%」及び「質量部」である。
【0066】
(合成例1)
まず、撹拌器、温度計、還流器を備えた反応容器に、環状エステル成分としてε-カプロラクトン18.67部、ジヒドロキシカルボン酸成分としてジメチロールプロパン酸0.87部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら180℃まで昇温させ5時間反応させた。その後、ポンプで減圧しながら未反応の環状エステル成分を留去し、生分解ポリオールを得た。得られた生分解ポリオールの数平均分子量は3000であった。
【0067】
その後、ポリオールとしてジメチロールプロパン酸1.31部、イソシアネートとしてイソホロンジイソシアネート7.96部を添加して5時間反応を行い、末端にイソシアナト基を有するウレタンプレポリマーを得た。次いで、アセトン20部加えて希釈を行い、トリエチルアミン1.64部を加えて中和し1時間撹拌した。その後、撹拌しながらイオン交換水を68.8部加え、ウレタンプレポリマーを水中に分散させた。その後、反応容器内の温度を30℃になるよう設定し、有機アミンとしてエチレンジアミン0.7部を水5部と混合したものを少しずつ添加した後に5時間撹拌を行った。その後、反応容器の内温を50℃まで昇温し、減圧しながらアセトンを留去した。この際、一部のイオン交換水はアセトンと同時に留去された。最後に、固形分が30%になるようにイオン交換水を加えることで目的の生分解樹脂を含む樹脂エマルションを得た。
【0068】
(合成例2~11)
生分解ポリオール、ポリオール、イソシアネート、有機アミンの種類と配合量を表1の通り変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い表1に示す樹脂エマルションを得た。
【0069】
【表1】

表1に記載の材料の略号について以下に記載する。
PTMG(ポリテトラメチレンエーテルグリコール、三菱ケミカル株式会社製)
P2010(ポリエステルポリオール、株式会社クラレ製)
【0070】
(生分解度)
表1中の生分解度は、樹脂中に含まれる生分解成分の割合である。表1中の溶媒、中和
剤を除いた樹脂成分中におけるε-カプロラクトンの割合から算出することができる。
【0071】
(最低造膜温度)
表1中の最低造膜温度は、JIS K6828-2に準拠して測定した。測定には理学
工業社製:熱勾配試験機を用いた。
【0072】
(破断強度及び破断伸度)
シート状型枠に 樹脂エマルションを充填し、乾燥させることで厚さ2mmの塗膜を作
製した。この塗膜の表面を整えて、3号ダンベル型で打ち抜き、評価用のダンベル型試験
片を作製した。このダンベル片を用いて、引張速度50mm/分で引張試験を行い、破断
応力(MPa)と破断伸度(%)を25℃の環境下で測定した。
【0073】
(実施例1~9及び比較例1~5)
合成例1~11にて得られた樹脂を使用して、下記の試験を行った。合成例1~9の樹
脂をそれぞれ実施例1~9として使用し、比較例1としてポリ乳酸エマルション及びフタ
ル酸エステル可塑剤(PEs)の混合物、比較例2としてポリカプロラクトンエマルショ
ン、比較例3として合成例10の樹脂、比較例4として合成例11の樹脂、比較例5とし
て酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体エマルジョン(栗田工業株式会社製、クリコ
ートC710)を使用した。実施例1~9及び比較例1~5の試験結果を表2に示す。
【0074】
<塗膜耐久性試験>
シート状型枠に樹脂エマルションを充填し、乾燥させることで厚さ2mmの塗膜を作製
した。表面を整えて、3号ダンベル型で打ち抜き、評価用のダンベル型試験片を作製した
。このダンベル片を用いて、引張速度50mm/分で引張試験を行い、破断応力(MPa
)と破断伸度(%)を25℃の環境下で測定した。別途、同様の手順で作製したダンベル
片を40℃、相対湿度85%の環境下で20日経時保管した。その後、引張速度50mm
/分で引張試験を行い、破断応力(MPa)と破断伸度(%)を25℃の環境下で測定し
た。経時保管前の破断強度を100%とした際の、経時保管後の破断強度の破断強度保持
率を評価した。
[評価基準]
S:破断強度保持率が90%以上である(優良)。
A:破断強度保持率が80%以上90%未満である(良)。
B:培破断強度保持率が70%以上80%未満である(可)。
C:破断強度保持率が70%未満である(不可)。
【0075】
<屋外暴露試験>
表に示す樹脂を用いて培養土の表面1m2あたり、樹脂の固形重量が40gとなるよう
に、培養土表面に均一にスプレーし、25℃で乾燥させた。乾燥後、35℃の環境下で風
速15m/sの風と、流速10L/分で5時間均一にシャワー散水した。その後、培養土
の飛散状態を確認した。培養土の飛散試験の評価は、培養土表面を観察し、以下の基準で
実施した。
[評価基準]
S:培養土の飛散が認められない(優良)。
A:培養土の飛散が僅かに認められる(良)。
B:培養土の飛散が認められる(可)。
C:培養土が大量に飛散する(不可)。
【0076】
<生分解性試験>
樹脂エマルションを乾燥させることで厚さ0.5mm、縦10cm、横10cmのフィ
ルムを作製し、コンポスト中に1か月埋没させる。得られたフィルムの体積を10割とし
て試験後に目視で確認できる残渣割合を算出し、以下の評価基準で判定した。
[評価基準]
S:目視で確認できる残渣が6割未満である(優良)。
A:目視で確認できる残渣が6割以上7割未満である(良)。
B:目視で確認できる残渣が7割以上9割未満である(可)。
C:目視で確認できる残渣が9割以上である(不可)。
【0077】
<火災予防難燃性試験>
樹脂エマルション100部に対してポリリン酸アンモニウム20部を加えて散布剤を作
成し、芝1m2(ケンタッキーブルーグラス)に対して散布した。72時間後、流速10
L/分で5時間均一にシャワー散水した。その後72時間かけて芝を乾燥させた。乾燥後
に、散布した部分の芝に対してCRチャッカマン(株式会社東海製)で、3秒間点火した
後、芝の燃焼度合いを評価した。
[評価基準]
S:火を接触させた部分の芝が8割以上残存している(優良)。
A:火を接触させた部分の芝が5割以上8割未満残存している(良)。
B:火を接触させた部分の芝が1割以上5割未満残存している(可)。
C:火を接触させた部分の芝が1割未満しか残存していない(不可)。
【0078】
<除草剤の効果維持確認>
樹脂エマルション1000部に対して除草剤20部(製品名:サンフーロン、大成農材
株式会社製)の割合で混合して散布剤を作成し、ツユクサが群生している土地20m2に
対して、液がツユクサの葉表面に接触するように散布した。5時間後、流速10L/分で
5時間均一にシャワー散水した。1日ごとに散水を行い、2週間後にツユクサの様子を観
察して評価を実施した。
[評価基準]
S:8割以上のツユクサが枯れている(優良)。
A:5割以上、8割未満のツユクサが枯れている(良)。
B:2割以上、5割未満のツユクサが枯れている(可)。
C:枯れているツユクサが2割未満である(不可)。
【0079】
<種の生育試験>
樹脂エマルションを固形換算で3.4部、芝の種子(ケンタッキーブルーグラス、福花
園種苗株式会社社製)1.4部、肥料としてメネデール芝肥料(メネデール株式会社製)
0.04部、水95.1部を混合して散布剤を作成し、土壌に3.5kg/m2散布した
。土壌はプランターに入れ、斜面を想定した環境を再現するために土壌表面が地表から4
5°の角度になるようにプランターを傾け、室温が35℃になるように温室で保管した。
また、1日1回、流速10L/分で5時間均一にシャワー散水とドライヤーの風(風速換
算10m/s、30秒)を当てることで雨風の環境を再現した。1か月後、芝の生育状態
の評価を実施した。
[評価基準]
S:芝が生育している部分が、目視で土壌全体の8割以上である(優良)。
A:芝が生育している部分が、目視で土壌全体の5割以上8割未満である(良)。
B:芝が生育している部分が、目視で土壌全体の2割以上5割未満である(可)。
C:芝が生育している部分が、目視で土壌全体の2割未満である(不可)。
【0080】
<海藻の固定化試験>
海藻の種苗(体長約3cm、トサカノリ)をコンクリートブロック10cm×10cm
の範囲に9個載せ、樹脂エマルションを散布し、室温で24時間乾燥することで種苗とコ
ンクリートブロックを固定した。その後、種苗を固定したコンクリートブロックを角メッ
シュビク(株式会社昌栄製)の中に入れて、海水表面から5mの位置に沈めた。その後、
1か月間放置し、固定化の度合いを確認した。
[評価基準]
S:7~9個、固定化されたまま種苗が残っている(優良)。
A:4~6個、固定化されたまま種苗が残っている(良)。
B:1~3個、固定化されたまま種苗が残っている(可)。
C:すべての種苗が固定されておらず残っていない(不可)。
【表2】
【0081】
以上、本開示を上記実施の形態に即して説明したが、本開示は上記実施の形態の構成に
のみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であ
ればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。また、本開示におけ
る生分解性樹脂を含む樹脂エマルションは、緑地化に使用する散布剤、土壌の飛散防止剤
、火災防止用散布剤、除草剤を含む散布剤、海藻もしくは胞子の固定化剤に限らず、その
他の散布剤や固定化剤としても好適に使用することが可能である。
【0082】
また、本開示は、カーボンニュートラル、脱炭素、持続可能な開発目標(SDGs:S
ustainable Development Goals)に貢献するものである。
【符号の説明】
【0083】
1 散布剤
110 種子
120 土壌
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-03-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂エマルションを含み、土壌の団粒化、種子又は植物の固定化、及び薬剤の固定化のうち少なくとも一つに用いられる散布剤であって、
前記樹脂エマルションは、エステル骨格とウレタン結合とを含み、最低造膜温度が30℃以下である生分解性樹脂を含む
散布剤。
【請求項2】
前記生分解性樹脂は、生分解性ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとを含む複数種の原料の反応生成物を含む
請求項1に記載の散布剤。
【請求項3】
前記生分解性ポリエステルポリオールは、生分解性の環状エステルを開環重合して得られる脂肪族ポリエステルポリオールを含む
請求項2に記載の散布剤。
【請求項4】
前記環状エステルは、ラクトン類および環状ジエステル類からなる群より選ばれる1種以上である
請求項3に記載の散布剤。
【請求項5】
前記ラクトン類は、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-ヘキサノラクトン、γ-オクタノラクトン、δ-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-ヘキサラノラクトン、δ-オクタノラクトン、ε-カプロラクトン、δ-ドデカノラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、グリコリッド、およびp-ジオキサノンからなる群より選ばれる1種以上であり、
前記環状ジエステル類は、D-ラクチド、L-ラクチド、DL-ラクチド、メソラクチド等が挙げられる。好ましくはε-カプロラクトン、D-ラクチド、L-ラクチド、DL-ラクチド、およびメソラクチドからなる群より選ばれる1種以上である
請求項4に記載の散布剤。
【請求項6】
前記樹脂エマルションの樹脂成分100質量%中、前記生分解性樹脂の割合が1~100質量%である
請求項1に記載の散布剤。
【請求項7】
前記生分解性樹脂の被膜の破断強度が、0.05~45MPaである
請求項1に記載の散布剤。
【請求項8】
前記生分解性樹脂の被膜の破断伸度が、50~2000%である
請求項1に記載の散布剤。
【請求項9】
前記生分解性樹脂の被膜の破断強度保持率が、温度40℃、湿度85%の環境下にて20日経過後において70%以上である
請求項1に記載の散布剤。
【請求項10】
前記固定化において、当該散布剤が塗布される対象は、土壌、樹木、及び壁のうち少なくとも一つである
請求項1~9のいずれか一項に記載の散布剤。
【請求項11】
前記薬剤は、農薬、生育調整剤、除草剤、防虫剤、及び難燃剤のうち少なくとも一つである
請求項1~9のいずれか一項に記載の散布剤。
【請求項12】
樹脂エマルションを含む樹脂組成物により形成され、土壌の団粒化、種子又は植物の固定化、及び薬剤の固定化のうち少なくとも一つに用いられる樹脂シートであって、
樹脂エマルションは、エステル骨格とウレタン結合とを含み、最低造膜温度が30℃以下である生分解性樹脂を含む
樹脂シート。
【請求項13】
前記生分解性樹脂は、生分解性ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとを含む複数種の原料の反応生成物を含む
請求項12に記載の樹脂シート。
【請求項14】
前記生分解性ポリエステルポリオールは、生分解性の環状エステルを開環重合して得られる脂肪族ポリエステルポリオールを含む
請求項13に記載の樹脂シート。
【請求項15】
前記環状エステルは、ラクトン類および環状ジエステル類からなる群より選ばれる1種以上である
請求項14に記載の樹脂シート。
【請求項16】
前記ラクトン類は、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-ヘキサノラクトン、γ-オクタノラクトン、δ-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-ヘキサラノラクトン、δ-オクタノラクトン、ε-カプロラクトン、δ-ドデカノラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、グリコリッド、およびp-ジオキサノンからなる群より選ばれる1種以上であり、
前記環状ジエステル類は、D-ラクチド、L-ラクチド、DL-ラクチド、メソラクチド等が挙げられる。好ましくはε-カプロラクトン、D-ラクチド、L-ラクチド、DL-ラクチド、およびメソラクチドからなる群より選ばれる1種以上である
請求項15に記載の樹脂シート。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
特許文献1には、土壌表層に散布することで、粉塵の飛散を防止する粉塵飛散防止剤が開示されている。この粉塵飛散防止剤は、生分解樹脂であるポリ乳酸と、増膜助剤として多糖類等の増粘剤を併用しており、増粘剤により硬質なポリ乳酸に適度な粘性を与えることで、土壌表層に樹脂からなる被膜を形成することができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
水酸基含有化合物としては、水酸基を有する物質であれば特に限定されるものではないが、水性化工程を考慮するとカルボキシル基を有する化合物、ポリエチレングリコール、又はスルホン酸基を有する化合物が好ましく、ジヒドロキシカルボン酸特に好ましい。ジヒドロキシカルボン酸としては、分子内に2つ以上の水酸基と1つ以上のカルボン酸を有するものであれば特に限定されず、例えば、ジメチロールプロパン酸(DMPA)、ジメチロールブタン酸(DMBA)、ジメチロールペンタン酸、ジメチロールノナン酸、酒石酸、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸、2,3,4-トリヒドロキシ安息香酸、2,4,6-トリヒドロキシ安息香酸、メバロン酸、パントイン酸、グリセリン酸等が挙げられる。好ましくはジメチロールプロパン酸(DMPA)、ジメチロールブタン酸(DMBA)、酒石酸であり、さらに好ましくはジメチロールプロパン酸(DMPA)、ジメチロールブタン酸(DMBA)である。酒石酸、ジメチロールプロパン酸(DMPA)、ジメチロールブタン酸(DMBA)を使用することで樹脂の水性化が容易になり、水中での分散安定性が良好となるため好ましい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
中でも、カルボキシル基を骨格に有することで水系化が容易に行えるため、好ましくはジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロールペンタン酸等のジメチロールアルカン酸や、ジヒドロキシコハク酸、ジヒドロキシプロピオン酸、ジヒドロキシ安息香酸が挙げられる。さらに好ましくはジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
ポリエステルウレタン樹脂がカルボキシル基を有する場合、カルボキシル基を中和剤で中和することで水系化することができる。中和剤としては、特に限定されないが、例えば、アンモニア、有機アミン化合物、無機塩基性化合物等が挙げられる。有機アミン化合物としては、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、sec-ブチルアミン等のアルキルアミン類、3-エトキシプロピルアミン、プロピルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、3-メトキシプロピルアミン等のアルコキシアミン類;
N,N-ジエチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N-メチル-N,N-ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;
モルホリン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等のモルホリン類等が挙げられる。好ましくは乾燥性の観点からトリエチルアミン、アンモニアがよい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
本開示の樹脂エマルションの製造方法としては、生分解樹脂を有機溶剤中または無溶剤で合成した後、乳化剤を用いて強制的に水中に分散させる方法、あるいは樹脂中に親水基を導入して自己乳化により水中に分散させる方法等が挙げられる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
粘土鉱物としては、特に種類を限定するものではないが、カオリナイト、スメクタイト、セリサライト、イライト、グローコナイト、クロライト、タルク、ゼオライト等が挙げれる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
防腐剤としては、特に限定されず、例えばデヒドロ酢酸ナトリウム、ジクロロフェン、ソルビン酸、安息香酸ナトリウム、p-ヒドロキシ安息香酸エステル、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(製品名:プロキセルGXL、アビシア社製)等が挙げられる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0061
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0061】
本開示における生分解性樹脂を含む樹脂エマルションは、緑地化用の散布剤として好適に用いることができるが、その他の用途として、土壌の飛散防止剤、火災防止用散布剤、除草剤を含む散布剤、海藻もしくは胞子の固定化剤等として広く使用することができる。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0065
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0065】
以下に実施例を用いて本開示を更に詳しく説明するが、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。以下の記載において、配合量及び固形分濃度の単位の「%」は、特に断りのない限り「質量%」であり、配合量の単位の「部」は、特に断りのない限り「質量部」である
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0067
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0067】
その後、ポリオールとしてジメチロールプロパン酸1.31部、イソシアネートとしてイソホロンジイソシアネート7.96部を添加して5時間反応を行い、末端にイソシアナト基を有するウレタンプレポリマーを得た。次いで、アセトン20部加えて希釈を行い、トリエチルアミン1.64部を加えて中和し1時間撹拌した。その後、撹拌しながらイオン交換水を68.8部加え、ウレタンプレポリマーを水中に分散させた。その後、反応容器内の温度を30℃になるよう設定し、有機アミンとしてエチレンジアミン0.7部を水5部と混合したものを少しずつ添加した後に5時間撹拌を行った。その後、反応容器の内温を50℃まで昇温し、減圧しながらアセトンを留去した。この際、一部のイオン交換水はアセトンと同時に留去された。最後に、固形分が30%になるようにイオン交換水を加えることで目的の生分解樹脂を含む樹脂エマルションを得た。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0068
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0068】
(合成例2~11)
生分解ポリオール、ポリオール、イソシアネート、有機アミンの種類と配合量を表1の通り変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い表1に示す樹脂エマルションを得た。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0069
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0069】
【表1】
表1に記載の材料の略号について以下に記載する。
PTMG(ポリテトラメチレンエーテルグリコール、三菱ケミカル株式会社製)
P2010(ポリエステルポリオール、株式会社クラレ製)
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0070
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0070】
合成例1~11にて得られた樹脂エマルションを使用して、下記の試験を行った。合成例1~9の樹脂エマルションをそれぞれ実施例1~9として使用し、比較例1としてポリ乳酸エマルション及びフタル酸エステル可塑剤(PEs)の混合物、比較例2としてポリカプロラクトンエマルション、比較例3として合成例10の樹脂エマルション、比較例4として合成例11の樹脂エマルション、比較例5として酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体エマルション(栗田工業株式会社製、クリコートC710)を使用した。実施例1~9及び比較例1~5の試験結果を表1、表2に示す。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0071
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0071】
<塗膜耐久性試験>
シート状型枠に樹脂エマルションを充填し、乾燥させることで厚さ2mmの塗膜を作製した。表面を整えて、3号ダンベル型で打ち抜き、評価用のダンベル型試験片を作製した。このダンベル片を用いて、引張速度50mm/分で引張試験を行い、破断応力(MPa)と破断伸度(%)を25℃の環境下で測定した。別途、同様の手順で作製したダンベル片を40℃、相対湿度85%の環境下で20日経時保管した。その後、引張速度50mm/分で引張試験を行い、破断応力(MPa)と破断伸度(%)を25℃の環境下で測定した。経時保管前の破断強度を100%とした際の、経時保管後の破断強度の破断強度保持率を評価した。
[評価基準]
S:破断強度保持率が90%以上である(優良)。
A:破断強度保持率が80%以上90%未満である(良)。
B:培破断強度保持率が70%以上80%未満である(可)。
C:破断強度保持率が70%未満である(不可)。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
<屋外暴露試験>
表に示す樹脂エマルションを用いて培養土の表面1mあたり、樹脂の固形重量が40gとなるように、培養土表面に均一にスプレーし、25℃で乾燥させた。乾燥後、35℃の環境下で風速15m/sの風と、流速10L/分で5時間均一にシャワー散水した。その後、培養土の飛散状態を確認した。培養土の飛散試験の評価は、培養土表面を観察し、以下の基準で実施した。
[評価基準]
S:培養土の飛散が認められない(優良)。
A:培養土の飛散が僅かに認められる(良)。
B:培養土の飛散が認められる(可)。
C:培養土が大量に飛散する(不可)。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0077
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0077】
<海藻の固定化試験>
海藻の種苗(体長約3cm、トサカノリ)をコンクリートブロック10cm×10cmの範囲に9個載せ、樹脂エマルションを散布し、室温で24時間乾燥することで種苗とコンクリートブロックを固定した。その後、種苗を固定したコンクリートブロックを角メッシュビク(株式会社昌栄製)の中に入れて、海水表面から5mの位置に沈めた。その後、1か月間放置し、固定化の度合いを確認した。
[評価基準]
S:7~9個、固定化されたまま種苗が残っている(優良)。
A:4~6個、固定化されたまま種苗が残っている(良)。
B:1~3個、固定化されたまま種苗が残っている(可)。
C:すべての種苗が固定されておらず残っていない(不可)。
【表2】
【手続補正書】
【提出日】2024-06-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂エマルションを含み、土壌の団粒化、種子又は植物の固定化、及び薬剤の固定化のうち少なくとも一つに用いられる散布剤であって、
前記樹脂エマルションは、エステル骨格とウレタン結合とを含み、最低造膜温度が30℃以下である生分解性樹脂を含む
散布剤。
【請求項2】
前記生分解性樹脂は、生分解性ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとを含む複数種の原料の反応生成物を含む
請求項1に記載の散布剤。
【請求項3】
前記生分解性ポリエステルポリオールは、生分解性の環状エステルを開環重合して得られる脂肪族ポリエステルポリオールを含む
請求項2に記載の散布剤。
【請求項4】
前記環状エステルは、ラクトン類および環状ジエステル類からなる群より選ばれる1種以上である
請求項3に記載の散布剤。
【請求項5】
前記ラクトン類は、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-ヘキサノラクトン、γ-オクタノラクトン、δ-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-ヘキサラノラクトン、δ-オクタノラクトン、ε-カプロラクトン、δ-ドデカノラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、グリコリッド、およびp-ジオキサノンからなる群より選ばれる1種以上であり、
前記環状ジエステル類は、D-ラクチド、L-ラクチド、DL-ラクチド、およびメソラクチドからなる群より選ばれる1種以上である
請求項4に記載の散布剤。
【請求項6】
前記樹脂エマルションの樹脂成分100質量%中、前記生分解性樹脂の割合が1~100質量%である
請求項1に記載の散布剤。
【請求項7】
前記生分解性樹脂の被膜の破断強度が、0.05~45MPaである
請求項1に記載の散布剤。
【請求項8】
前記生分解性樹脂の被膜の破断伸度が、50~2000%である
請求項1に記載の散布剤。
【請求項9】
前記生分解性樹脂の被膜の破断強度保持率が、温度40℃、湿度85%の環境下にて20日経過後において70%以上である
請求項1に記載の散布剤。
【請求項10】
前記固定化において、当該散布剤が塗布される対象は、土壌、樹木、及び壁のうち少なくとも一つである
請求項1~9のいずれか一項に記載の散布剤。
【請求項11】
前記薬剤は、農薬、生育調整剤、除草剤、防虫剤、及び難燃剤のうち少なくとも一つである
請求項1~9のいずれか一項に記載の散布剤。
【請求項12】
樹脂エマルションを含む樹脂組成物により形成され、土壌の団粒化、種子又は植物の固定化、及び薬剤の固定化のうち少なくとも一つに用いられる樹脂シートであって、
樹脂エマルションは、エステル骨格とウレタン結合とを含み、最低造膜温度が30℃以下である生分解性樹脂を含む
樹脂シート。
【請求項13】
前記生分解性樹脂は、生分解性ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとを含む複数種の原料の反応生成物を含む
請求項12に記載の樹脂シート。
【請求項14】
前記生分解性ポリエステルポリオールは、生分解性の環状エステルを開環重合して得られる脂肪族ポリエステルポリオールを含む
請求項13に記載の樹脂シート。
【請求項15】
前記環状エステルは、ラクトン類および環状ジエステル類からなる群より選ばれる1種以上である
請求項14に記載の樹脂シート。
【請求項16】
前記ラクトン類は、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-ヘキサノラクトン、γ-オクタノラクトン、δ-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-ヘキサラノラクトン、δ-オクタノラクトン、ε-カプロラクトン、δ-ドデカノラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、グリコリッド、およびp-ジオキサノンからなる群より選ばれる1種以上であり、
前記環状ジエステル類は、D-ラクチド、L-ラクチド、DL-ラクチド、およびメソラクチドからなる群より選ばれる1種以上である
請求項15に記載の樹脂シート。