(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144079
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】負極材料、電気化学装置及び電子装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20241003BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241003BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20241003BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/134
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023212565
(22)【出願日】2023-12-15
(31)【優先権主張番号】202310315006.7
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社AESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】孫 中貴
(72)【発明者】
【氏名】李 若楠
(72)【発明者】
【氏名】黄 鵬
(72)【発明者】
【氏名】孫 化雨
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB11
5H050DA03
5H050FA17
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】サイクル寿命を向上させる負極材料の提供。
【解決手段】負極材料は、炭素層と、炭素層の表面の少なくとも一部の上に位置するシリコン層とを含み、負極材料の元素状シリコン/元素状炭素の分布度RがR≦0.5の関係を満足し、Rは、次の関係を満足する。
X
1、X
2及びX
nは、負極シートをアルゴンイオンエッチング装置で断面切断し、エネルギー分光分析装置による線走査分析により得られる直線上の第1、第2、第n点における元素状炭素の質量に対する元素状シリコンの質量の比であり、nは直線上の点の総数である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素層と、前記炭素層の表面の少なくとも一部に位置するシリコン層と、を含み、前記負極材料は、R≦0.5の関係を満足し、ここで、Rは、前記負極材料の元素状シリコン/元素状炭素の分布度であり、Rは、次の関係を満足する、負極材料。
【数1】
式中、
【数2】
X
1、X
2及びX
nのそれぞれは、前記負極材料からなる負極シートを、アルゴンイオンエッチング装置で断面切断し、エネルギー分光分析装置による線走査分析により得られる、直線上の第1点、第2点、第n点における前記元素状炭素の質量含有量に対する前記元素状シリコンの質量含有量の比であり、nは、直線上の点の総数である。
【請求項2】
前記負極材料の元素状シリコン/元素状炭素の分布度Rは、R≦0.1の関係を満足する、請求項1に記載の負極材料。
【請求項3】
前記負極材料の圧縮密度は、0.5g/cm3~2.5g/cm3である、請求項1に記載の負極材料。
【請求項4】
前記負極材料の圧縮密度は、0.9g/cm3~2.5g/cm3である、請求項3に記載の負極材料。
【請求項5】
前記負極材料の比表面積は、≦15m2/gである、請求項1に記載の負極材料。
【請求項6】
前記負極材料の前記比表面積は、≦8m2/gである、請求項5に記載の負極材料。
【請求項7】
前記シリコン層は、粒子径が≦200nmのシリコン系材料からなる、請求項1に記載の負極材料。
【請求項8】
前記炭素層は、粒子径が≦200nmの炭素系材料からなる、請求項1に記載の負極材料。
【請求項9】
負極シートを含む電気化学装置であって、
前記負極シートは、負極集電体と、前記負極集電体上に位置する負極活物質層と、を含み、前記負極活物質層は、請求項1~8のいずれか一項に記載の負極材料を含む、電気化学装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電気化学装置を備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の技術分野に属し、特に、負極材料、電気化学装置及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、主に正極と負極の間のリチウムイオンの移動に依存する二次電池(充電式電池)である。充放電工程中に、リチウムイオンは正極と負極の間を往復して、挿入又は脱離される。充電工程中、リチウムイオンは正極から脱離され、電解質を介して負極に挿入される。この状況下では、負極はリチウム過剰な状態にあり、放電過程では逆に変化する。リチウムイオンの利点としては、高いエネルギー密度、高い動作電圧、広い動作温度範囲、長サイクル寿命、低い自己放電効率、優れた安全性能、環境に優しい、メモリ効果がないことを含む。
【0003】
負極材料は、リチウムイオンを蓄える主体であり、リチウムイオン電池全体の性能を直接左右する重要な部分である。シリコンは、一般的に採用されるリチウムイオン負極材料であり、その利点は、高い理論容量、低いリチウム挿入プラットフォーム電圧、及び豊富な埋蔵量にある。しかしながら、シリコンの体積膨張率は非常に大きい。最初のリチウムの挿入及び脱離の工程では、体積膨張効果によって機械的ストレスが引き起こされることが多く、これにより活物質と導電剤及びバインダーの間の接触点が減少し、活物質が極シートから脱落する原因となる。同時に、シリコン系活物質の表面のSEI膜が破壊されて再成長すると、安定したSEI膜を形成することが困難となり、また、電解液とリチウム源を継続的に消費すると不動態化層が形成され、リチウムイオンと電子の輸送が妨げられ、不可逆容量が高くなりすぎ、容量が急速に低下する。シリコンの低い電気伝導率は、電池の高速充放電性能とレート性能に影響を与え、これらの要因がシリコン系材料の工業化を妨げている。
【0004】
上記の技術的課題を解決するために、人々はシリコンを複合化するために炭素を使用することを試みてきた。既存の技術では、シリコン表面を炭素材料で覆う技術が一般的である。例えば、公開番号CN102709566Aの特許文献は、シリコンが5%~12%、黒鉛が68%~90%を占め、残りが炭素材料である、リチウムイオン電池用の球状シリコン-炭素複合負極材料及びその製造方法を公開する。公開番号CN102709566Aでは、恒温混合技術を採用して、シリコン粉末、鱗片状黒鉛、及び炭素源材料から球状前駆体を調製し、その後、ペレットを高温熱処理して、異方的に分布した鱗片/シリコン表面炭素材料を核とした球状シリコン炭素複合負極電極を作製する。球状シリコン-炭素複合負極材料は、480mAh/g以上の可逆容量を有し、初回連続効率は85%以上に達することができ、300サイクル後の容量維持率は87%を超える。また、炭素材料と機械的に混合してシリコン-炭素複合材料を作製する方法もある。例えば、公開番号CN113871604Aの特許文献は、シリコン含有鉱物系多孔質シリコン-炭素複合負極材料及びその製造方法を公開している。公開番号CN113871604Aは、精製したシリコン含有鉱物サンプル、ナノシリカ粉末、及び炭素被覆一酸化シリコン粉末をシリコン源として用い、固相混合、噴霧造粒及び低温熱分解を行った後、HF濃度及び反応時間を制御し、SiO2の一部のエッチングにより、一次緩衝構造としてミクロンサイズのマクロ細孔を形成する。導入された低膨張炭素被覆一酸化シリコンは二次緩衝構造として機能する。次に、マグネシウムの熱還元と中間生成物の酸洗いにより、三層緩衝構造であるメソ細孔及びマクロ細孔を形成することにより、多孔質シリコン炭素前駆体が得られる。最後に、有機炭素源を真空含浸によって前駆体の表面に均一にコーティングし、4レベルのバッファ構造を形成し、それにより、四重の緩衝保護を備えたコアシェル構造を有するシリコン含有鉱物系多孔質シリコン-炭素複合負極材料を調製する。調製されたシリコン含有鉱物系多孔質シリコン-炭素複合負極材料の初回効率は、66.7%~70.2%であり、0.5℃で100サイクル後の容量維持率は、54.6%~68.7%である。しかしながら、上記スキームにより製造されたシリコン-炭素複合材料からなる負極シートからなるリチウムイオン二次電池の長サイクル寿命には改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に鑑み、本発明は、負極材料からなる負極シートからなる電気化学装置の長サイクル寿命をさらに向上させるための、負極材料、電気化学装置及び電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記スキームについてさらに研究を行った結果、上記方法で作製した負極材料中のシリコンと炭素の分布が不均一であり、その結果、負極シートからなる電気化学装置は充放電工程中に不均一な応力分布が発生することを見出した。その結果、電気化学装置の構造安定性が低下し、その結果、電気化学装置の長サイクル寿命が低下する。
【0007】
上記の解決策を実現するための、本発明の解決策は次のとおりである。
【0008】
第1の態様において、本発明は、負極材料を提供する。負極材料は、炭素層と、炭素層の表面の少なくとも一部の上に位置するシリコン層と、を含む。負極材料は、R≦0.5の関係を満足し、ここで、Rは、負極材料の元素状シリコン/元素状炭素の分布度であり、Rは、次の関係を満足する。
【数1】
【0009】
【0010】
式中、X1、X2及びXnのそれぞれは、負極材料からなる負極シートを、アルゴンイオンエッチング装置で断面切断し、エネルギー分光分析装置による線走査分析により得られる、直線上の第1点、第2点、第n点における元素状炭素の質量含有量に対する元素状シリコンの質量含有量の比であり、nは、直線上の点の総数である。
【0011】
本発明において、負極材料の元素状シリコン/元素状炭素の分布度Rが特定の範囲(元素状シリコン/元素状炭素の分布度R≦0.5)に制御され、これにより、負極材料からなる負極シートからなる電気化学装置の充放電工程(具体的には、リチウム脱離工程)中の構造安定性が確保され、これにより、複合材料からなる負極シートからなる電気化学装置の長サイクル寿命が向上する。
【0012】
本発明において、負極材料の元素状シリコン/元素状炭素の分布度Rが≧0.5になると、元素状シリコンと元素状炭素が不均一に分布する。不均一な分布は、負極材料からなる負極シートからなる電気化学装置の充放電過程における不均一な応力分布を引き起こす。その結果、電気化学装置の構造安定性が低下し、その結果、電気化学装置の長サイクル寿命が低下することになる。
【0013】
いくつかの実施形態において、負極材料の元素状シリコン/元素状炭素の分布度Rは、R≦0.1の関係を満足する。
【0014】
いくつかの実施形態において、負極材料の圧縮密度は、0.5g/cm3~2.5g/cm3である。
【0015】
いくつかの実施形態において、負極材料の圧縮密度は、0.9g/cm3~2.5g/cm3である。
【0016】
いくつかの実施形態において、負極材料の比表面積は、≦15m2/gである。
【0017】
いくつかの実施形態において、負極材料の比表面積は、≦8m2/gである。
【0018】
いくつかの実施形態において、シリコン層は、粒子径が≦200nmのシリコン系材料からなる。シリコン系材料は、元素状シリコン、酸化シリコン、又は両者の混合物を含む。酸化シリコンは、一酸化シリコン、二酸化シリコン、又は両者の混合物を含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、炭素層は、粒子径が≦200nmの炭素系材料からなる。炭素系材料は、多孔質炭素、硬質炭素、中空炭素微小球、及び膨張黒鉛のうちの少なくとも1つを含む。
【0020】
なお、本発明において、負極材料の製造方法は特に限定されない。調製された負極材料の上述の特定の指標が、対応する特定の選択された範囲内にある限り、高温熱分解法、テンプレート法(例えば炭酸カルシウムをテンプレートとして用いる)、ボールミル法、蒸着法、水熱合成法、凍結乾燥法、マグネトロンスパッタリング(magnetron sputtering)法、静電自己組織化などを使用することができる。
【0021】
本発明において、負極材料の製造方法は特に限定されない。例えば、蒸着法を採用しても良い。
【0022】
第2の態様において、本発明は、負極シートを含む電気化学装置を提供する。負極シートは、負極集電体と、負極集電体上に位置する負極活物質層とを含む。負極活物質層は、上述した負極材料を含む。
【0023】
電気化学装置の製造方法は特に限定されない。
【0024】
第3の態様において、本発明は、上述の電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明の負極材料、電気化学装置及び電子装置は、以下のような効果を奏する。
【0026】
負極材料の元素状シリコン/元素状炭素の分布度Rを特定の範囲(元素状シリコン/元素状炭素の分布度R≦0.5)に制御することにより、本発明は、負極材料からなる負極シートからなる電気化学装置の充放電工程(具体的には、リチウム脱離工程)中の構造的安定性を確保することができ、これにより、負極材料からなる負極シートからなる電気化学装置の長サイクル寿命が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施例2で調製された負極材料の構造である。ここで、1は炭素層(すなわち内層に位置する炭素層)、2はシリコン層(すなわち内層に位置するシリコン層)、3は表面被覆用炭素層である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに説明する。しかしながら、本発明の実施形態に記載される特定の材料比、工程条件及び結果は、専ら本発明を説明するために使用され、これらに限定されるべきではない。本発明の精神及び本質に基づいて行われるすべての同等の変更又は修正は、本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【0029】
本発明は、圧縮密度が0.5g/cm3~2.5g/cm3であり、比表面積が≦15m2/gである負極材料を提供する。負極材料は、粒径が≦200nmの炭素系材料からなる炭素層を含む。シリコン層は、炭素層の表面の少なくとも一部の上に位置する。シリコン層は、粒子径が≦200nmのシリコン系材料からなる。
【0030】
負極材料は、R≦0.5の関係を満足し、Rは、負極材料の元素状シリコン/元素状炭素の分布度であり、Rは、次の関係を満足する。
【数3】
【0031】
【0032】
式中、X1、X2及びXnのそれぞれは、負極材料からなる負極シートを、アルゴンイオンエッチング装置で断面切断し、エネルギー分光分析装置による線走査分析により得られる、直線上の第1点、第2点、第n点における元素状炭素の質量含有量に対する元素状シリコンの質量含有量の比であり、nは、直線上の点の総数である。
【0033】
具体的には、負極材料の元素状シリコン/元素状炭素の分布度R、負極材料中の元素状シリコン及び元素状炭素の分布の均一性を示す。負極材料の元素状シリコン/元素状炭素の分布度Rを特定の範囲(元素状シリコン/元素状炭素の分布度R≦0.5)に制御することにより、負極材料からなる負極シートからなる電気化学装置の充放電過程(具体的には、リチウムの脱離過程)における構造安定性を確保することができ、これにより、負極材料からなる負極シートからなる電気化学装置の長サイクル寿命が向上する。
【0034】
負極材料の圧縮密度を特定の選択範囲(0.5g/cm3~2.5g/cm3)内に制御することにより、負極材料の骨格強度を確保することができ、これにより負極材料からなる負極シートからなる電気化学装置の充放電過程(具体的には、リチウムの脱離過程)における構造安定性をより一層確保することができ、これにより、負極材料からなる負極シートからなる電気化学装置の長サイクル寿命が向上する。同時に、負極材料の圧縮密度を特定の範囲(0.5g/cm3~2.5g/cm3)に制御することにより、負極材料からなる負極シートからなる電気化学装置の電池セルの体積エネルギー密度を高めることができる。
【0035】
負極材料の比表面積を特定の選択範囲(≦15m2/g)内に制御することにより、負極材料表面への皮膜形成を抑制することが可能となり、これにより、負極材料からなる負極シートからなる電気化学装置の初回効率(すなわち、第1サイクル目のの効率)を確保し、したがって、負極材料からなる負極シートからなる電気化学装置のサイクル寿命が向上する。
【0036】
いくつかの実施形態において、本発明は、さらに、負極シートを含む電気化学装置を提供する。負極シートは、負極集電体と、負極集電体上に位置する負極活物質層とを含む。
負極活物質層は、上述した負極材料を含む。
【0037】
本発明の電気化学装置は、電気化学反応を受ける任意の装置が含まれる。具体的には、各種一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池、キャパシタなどを含む。電気化学装置はナトリウム金属電池であり、電池は、ソフトパック電池、正方形のアルミニウム筐体を備えた電池、正方形のスチール筐体を備えた電池、円筒形のアルミニウム筐体を備えた電池、及び円筒形のスチール筐体を備えた電池のうちの少なくとも1つを含む。
【0038】
以下では、リチウムイオン二次電池を例として説明する。
【0039】
いくつかの実施形態において、本発明は、上述の電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0040】
本発明の電気化学装置の用途は特に限定されず、電気化学装置は当技術分野で知られている任意の電子装置に使用することができる。いくつかの実施形態において、本発明の電気化学装置は、ノートブックコンピュータ、ペン入力コンピュータ、モバイルコンピュータ、電子ブックプレーヤー、携帯電話、ポータブルファックス、ポータブルコピー機、ポータブルプリンタ、ヘッドマウント型ステレオヘッドホン、ビデオレコーダー、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、ポータブルCDプレーヤー、ミニディスク、トランシーバー、電子メモ帳、電卓、メモリーカード、ポータブルレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、二輪車、電動アシスト自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機、時計、電動工具、懐中電灯、カメラ、家庭用大型電池、エネルギー貯蔵及びナトリウムイオンキャパシタなどに使用することができるが、これらに限定されない。
【0041】
以下、具体的な実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。また、以下の実施例は、本発明を具体的に説明するためにのみ使用され、本発明の保護範囲を限定するものとして理解されないことも理解されたい。本発明の上記内容に基づいて当業者によってなされるいくつかの本質的でない改良及び調整はすべて、本発明の保護範囲に属する。以下の実施例における具体的な工程パラメータは、適切な範囲の一例にすぎず、当業者であれば本明細書の説明を通じて適切な範囲内で選択することができ、以下に例示する具体的な値に限定されるものではない。
【0042】
本発明において、元素状シリコン・元素状炭素の分布度Rとは、負極材中の元素状シリコンと元素状炭素の分布の均一性を示すものであり、具体的には、以下の方法で試験される。作製した負極材、ポリアクリル酸、導電性炭素ブラック(SP)を8:1:1の質量比で混合し、次に、得られた混合物に溶媒の脱イオン水を添加し(脱イオン水と負極材料の質量比は、2:1)、その後、十分に撹拌混合して負極スラリーを得ることができる。負極スラリーを負極集電銅箔上に均一に塗布し、乾燥、冷間プレス、スリット工程を経て、負極シートを得ることができる。負極材料からなる負極シートをアルゴンイオンエッチング装置で断面切断する。エネルギー分光分析装置で線走査分析を行うことにより、直線上の1点目、2点目、n点目の元素状炭素の質量含有量に対する元素状シリコンの質量含有量の比を求めることができる。nは、直線上の点の総数である。次に、負極材料の元素状シリコン/元素状炭素の分布度Rは、次の式に従って計算される。
【数5】
【0043】
【0044】
式中、X1、X2及びXnのそれぞれは、負極材料からなる負極シートを、アルゴンイオンエッチング装置で断面切断し、エネルギー分光分析装置による線走査分析により得られる、直線上の第1点、第2点、第n点における元素状炭素の質量含有量に対する元素状シリコンの質量含有量の比であり、nは、直線上の点の総数である。
【0045】
本発明において、圧縮密度は、「GB/T 24533-2019 リチウムイオン電池用黒鉛負極材料」に従って試験される。
【0046】
本発明において、比表面積は、「GB/T 39713-2020 セラミック粉末の比表面積の試験-BETガス吸着操作」のダイナミック・クロマトグラフィー法に従って試験される。
【0047】
本発明において、初回効率とサイクル寿命の試験工程は、次の通りである。
【0048】
(1)正極シートの作製:正極材料NCM811(すなわち、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2)、導電剤スーパーP(すなわち、高導電性炭素ブラック)、及びバインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)を、97:1.5:1.5の重量比に従って混合し、混合物を得た。混合物に、溶媒としてのN-メチルピロリドン(すなわち、NMP)を添加した。NMPと正極材料NCM811との質量比は1:1であり、十分に撹拌混合して正極スラリーを得た。正極スラリーを正極集電体アルミニウム箔上に塗布し、乾燥、冷間プレス、スリットなどの工程を経て、正極シートを得た。
【0049】
(2)負極シートの作製:試料、ポリアクリル酸、導電性炭素ブラック(SP)を8:1:1の質量比で混合し、次に、得られた混合物に溶媒の脱イオン水を添加した。脱イオン水と試料の質量比は、2:1であり、十分に撹拌混合して負極スラリーを得た。負極スラリーを負極集電銅箔上に均一に塗布し、乾燥、冷間プレス、スリットなどの工程を経て、負極シートを得た。
【0050】
(3)電解液の調製:
【0051】
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)を1:1:1の体積比で混合し、混合溶媒を得た。次に、十分に乾燥させた六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を混合溶媒に溶解し、濃度1mol/Lの電解液を調製した。
【0052】
(4)セパレータの作製:
【0053】
セパレータには、厚さ11μm、透気度280s/100mL、空孔率40%のポリエチレン(PE)多孔質フィルムを採用した。
【0054】
(5)リチウムイオン二次電池の作製:
【0055】
作製した正極シート、セパレータ、及び負極シートを、正極シートと負極シートとの間にセパレータが介在するように順に積層し、それらを分離した。次に、アルミニウムのプラスチックフィルムで包み、乾燥させた後、上記で作製した電解液を注入した。封止、放置、化成などの工程を経て、最終生成物としてリチウムイオン二次電池である3020型ボタン電池を組み立てた。
【0056】
作製した各リチウムイオン二次電池の初回効率及びサイクル性能を試験した。具体的な工程は次の通りである。0.1C~1.5Cで充電し、0.1C~5mVで放電する充放電プログラムでサイクルを実行し、初回効率及びサイクル性能を試験した。
【0057】
初回効率は、次の式に従って計算された。初回効率=1サイクル目の充電グラム容量/1サイクル目の放電グラム容量×100%。1サイクル目の充電グラム容量=1サイクル目の充電容量/(負極シートの質量×0.8)、1サイクル目の放電グラム容量=1サイクル目の放電容量/(負極シートの質量×0.8)。
【0058】
サイクル性能は次の通りである。80%SOHまでサイクルした場合、対応するサイクル数がサイクル性能である。80%SOHは次のように定義される。電池の放電容量をサイクルの最初のサイクルの放電容量で割った値が80%の場合、対応するサイクル数が電池セルのサイクル性能である。
【0059】
実施例1
【0060】
本実施形態は、負極材料の製造方法を提供する。具体的な工程は以下の通りである。
【0061】
工程S1.蒸着法により炭素とシリコンを交互に堆積させた。具体的には、保護ガス(窒素)雰囲気下の密閉チャンバ内において、まず炭素源メタンを密閉チャンバに導入し、密閉チャンバ内の雰囲気温度が850℃になるまで加熱する。炭素の蒸着温度は850℃、炭素の蒸着時間は10分、窒素の流量は20L/分、メタンの流量は10L/分であるため、炭素の蒸着速度は、速度は10nm/分であり、1回に蒸着する炭素の単位サイズは100nmである。次に、密閉チャンバ内にシランを導入し、シリコンの蒸着時間は2分、シランの流量は5L/分であるため、炭素の蒸着速度とシリコンの蒸着速度の比は5:1であり、1回に蒸着するシリコンの粒子径は4nmとなる(1回に蒸着するシリコンの粒子径=炭素の蒸着速度/(炭素の蒸着速度とシリコンの蒸着速度の比)×シリコンの蒸着時間)。1回に蒸着する炭素の粒径は100nm(1回に蒸着する炭素の粒径=炭素の蒸着速度×炭素の蒸着時間)である。このようにして、交互蒸着工程を行い、交互蒸着工程の間、蒸着速度及び時間は変化させず、生成物Aを得ることができる。
【0062】
工程S2.工程S1で得られた生成物Aを粗粉砕した後、気流粉砕機により粉砕、分級する。気流粉砕及び分級工程中、スピンドル速度は3000rpm、出力は1000W、コンプレッサー容量は20m3/分であり、D50が6μmの生成物Bを得ることができる。
【0063】
工程S3.工程S2で得られた生成物Bから液相法を用いて生成物Cを作製する。具体的には、生成物Bと炭素源グルコース可溶物とを1:1の質量比で混合した後、混合物を60℃に加熱し、60℃で12時間水浴反応させ、生成物2の表面と炭素源とを架橋反応させ、洗浄した後、100℃で48時間真空乾燥して、生成物Cを得ることができる。
【0064】
工程S4.生成物3を950℃の温度で熱分解及び炭化する。熱分解及び炭化時間は4時間であり、生成物Cの表面に表面炭素層を蒸着成長させる。表面炭素層の厚さを30nm以内に制御して、負極材料を得ることができる。
【0065】
実施例2
【0066】
以下の条件以外は実施例1と同様にして負極材料を作製した。
【0067】
工程S1. 蒸着法により炭素とシリコンを交互に蒸着させた。具体的には、保護ガス(窒素)雰囲気下の密閉チャンバ内において、まず炭素源メタンを密閉チャンバに導入し、密閉チャンバ内の雰囲気温度が850℃になるまで加熱する。炭素の蒸着温度は850℃、炭素の蒸着時間は10分、窒素の流量は20L/分、メタンの流量は10L/分であるため、炭素の蒸着速度は、速度は10nm/分であり、1回に蒸着する炭素の単位サイズは100nmである次に、密閉チャンバ内にシランを導入し、シリコンの蒸着時間は2分、シランの流量は12.5L/分であるため、炭素の蒸着速度とシリコンの蒸着速度の比は2:1であり、1回に蒸着するシリコンの粒子径は10nmとなる(1回に蒸着するシリコンの粒子径=炭素の蒸着速度×炭素の蒸着速度/(炭素の蒸着速度とシリコンの蒸着速度の比)×シリコンの蒸着時間)。1回に蒸着する炭素の粒径は100nm(1回に蒸着する炭素の粒子径=炭素の蒸着速度×炭素の蒸着時間)。このようにして、交互蒸着工程を行い、交互蒸着工程の間、蒸着速度及び時間は変化させず、生成物Aを得ることができる。
【0068】
本実施形態で作製した負極材料を
図1に示す。ここで、1は炭素層、2はシリコン層、3は表面被覆用炭素層である。
【0069】
実施例3
【0070】
以下の条件以外は実施例1と同様にして負極材料を作製した。
【0071】
工程S1.蒸着法により炭素とシリコンを交互に蒸着させた。具体的には、保護ガス(窒素)雰囲気下の密閉チャンバ内において、まず炭素源メタンを密閉チャンバに導入し、密閉チャンバ内の雰囲気温度が850℃になるまで加熱する。炭素の蒸着温度は850℃、炭素の蒸着時間は10分、窒素の流量は20L/分、メタンの流量は10L/分であるため、炭素の蒸着速度は、速度は10nm/分であり、1回に蒸着する炭素の単位サイズは100nmである。次に、密閉チャンバ内にシランを導入し、シリコンの蒸着時間は2分、シランの流量は25L/分であるため、炭素の蒸着速度とシリコンの蒸着速度の比は1:1であり、1回に蒸着するシリコンの粒子径は20nm(1回に蒸着するシリコンの粒子径=炭素の蒸着速度/(炭素の蒸着速度とシリコンの蒸着速度の比)×シリコンの蒸着時間)。1回に蒸着する炭素の粒径は100nm(1回に蒸着する炭素の粒子径=炭素の蒸着速度×炭素の蒸着時間)。このようにして、交互蒸着工程を行い、交互蒸着工程の間、蒸着速度及び時間は変化させず、生成物Aを得ることができる。
【0072】
実施例4
【0073】
以下の条件以外は実施例1と同様にして負極材料を作製した。
【0074】
工程S4.生成物3を700℃の温度で熱分解及び炭化する。熱分解及び炭化時間は4時間であり、生成物3の表面に表面炭素層を蒸着成長させる。表面炭素層の厚さを2nm以内に制御して、負極材料を得ることができる。
【0075】
比較例1
【0076】
本比較例は、負極材料の製造方法を提供する。具体的な工程は以下の通りである。
【0077】
工程S1.蒸着法により炭素を作製した。具体的には、保護ガス雰囲気(窒素;2重量%のアンモニアガスがドープされる)の密閉チャンバ内において、炭素源メタンを密閉チャンバ内に導入し、炭素源メタンを密閉チャンバ内に導入し、密閉チャンバ内の雰囲気温度が850℃になるまで加熱する。炭素の蒸着温度は850℃、炭素の蒸着時間は3時間、窒素(アンモニアガスドープ、アンモニアドープ量2重量%)の流量は20L/分、流量は20L/分であり、メタンの流量は60L/分であるため、炭素の蒸着速度は60nm/分となり、炭素単体A1を得流ことができる。
【0078】
蒸着法によりシリコンを作製した。具体的には、具体的には、保護ガス雰囲気(窒素;2重量%のアンモニアガスがドープされる)の密閉チャンバ内において、炭素源メタンを密閉チャンバ内に導入し、密閉チャンバ内の雰囲気温度が850℃になるまで加熱する。シリコンを850℃の温度で3時間蒸着し、シランの流量は50L/分であり、シリコンの蒸着速度は100nm/分であり、元素状シリコンA2を得ることができる。
【0079】
工程S2.工程S1で得られたシリコン単体A2と炭素単体A1を粗粉砕した後、気流粉砕機により粉砕、分級する。気流粉砕及び分級工程中、スピンドル速度は3000rpm、出力は1000W、コンプレッサー容量は20m3/分であり、D50が6μmの元素状シリコンとD50が6μmの元素状炭素を得ることができる。
【0080】
工程S3.工程S2で得られたD50が6μmの元素状シリコンとD50が6μmの元素状炭素を、1:1の質量比に従って機械的に混合する。
【0081】
工程S4.混合物を950℃の温度で熱分解及び炭化する。生成物3の表面に表面炭素層を蒸着及び成長させるための熱分解及び炭化時間は4時間である。表面炭素層の厚さを30nm以内に制御して、負極材料を得ることができる。
【0082】
比較例2
【0083】
以下の条件以外は実施例1と同様にして負極材料を作製した。
【0084】
工程S1.蒸着法により炭素とシリコンを交互に蒸着させた。具体的には、保護ガス(窒素)雰囲気下の密閉チャンバ内において、まず炭素源メタンを密閉チャンバに導入し、密閉チャンバ内の雰囲気温度が850℃になるまで加熱する。炭素の蒸着温度は850℃、炭素の蒸着時間は10分、メタンとガスの流量は10L/分であるため、炭素の蒸着速度は、速度は10nm/分であり、1回に蒸着する炭素の単位サイズは100nmである。次に、密閉チャンバ内にシランを導入し、シリコンの蒸着時間は2分、窒素の流量は20L/分、シランの流量は5L/分であるため、炭素の蒸着速度とシリコンの蒸着速度の比は5:1であり、1回に蒸着するシリコンの粒子径は4nmである(1回に蒸着するシリコンの粒子径=炭素の蒸着速度/(炭素の蒸着速度とシリコンの蒸着速度の比)×シリコンの蒸着時間)。1回に蒸着する炭素の粒径は100nm(1回に蒸着する炭素の粒子径=炭素の蒸着速度×炭素の蒸着時間)。このようにして、交互蒸着工程を行い、交互蒸着工程の間、蒸着速度及び時間は変化させず、生成物Aを得ることができる。
【0085】
蒸着工程中に、ポリリン酸アンモニウムを密閉チャンバに追加する。ポリリン酸アンモニウムの量は、0.1mg/分である。
【0086】
比較例3
【0087】
以下の条件以外は実施例1と同様にして負極材料を作製した。
【0088】
工程S1.蒸着法により炭素とシリコンを交互に蒸着させた。具体的には、保護ガス(窒素)雰囲気下の密閉チャンバ内において、まず炭素源メタンを密閉チャンバに導入し、密閉チャンバ内の雰囲気温度が850℃になるまで加熱する。炭素の蒸着温度は850℃、炭素の蒸着時間は10分、窒素の流量は20L/分、メタンの流量は10L/分であるため、炭素の蒸着速度は、速度は10nm/分であり、1回に蒸着する炭素の単位サイズは100nmである。次に、密閉チャンバ内にシランを導入し、シリコンの蒸着時間は2分、窒素の流量は20L/分、シランの流量は5L/分であるため、炭素の蒸着速度とシリコンの蒸着速度の比は5:1であり、1回に蒸着するシリコンの粒子径は4nmである(1回に蒸着するシリコンの粒子径=炭素の蒸着速度/(炭素の蒸着速度とシリコンの蒸着速度の比)×シリコンの蒸着時間)。1回に蒸着する炭素の粒径は100nm(1回に蒸着する炭素の粒子径=炭素の蒸着速度×炭素の蒸着時間)。このようにして、交互蒸着工程を行い、交互蒸着工程の間、蒸着速度及び時間は変化させず、生成物Aを得ることができる。
【0089】
蒸着工程中、密閉チャンバに追加されるポリリン酸アンモニウムの量は、0.5mg/分である。
【0090】
比較例4
【0091】
本比較例では、負極材料の製造方法を提供する。具体的な工程は以下の通りである。
【0092】
工程S1.蒸着法により炭素とシリコンを交互に蒸着させた。具体的には、保護ガス(窒素)雰囲気下の密閉チャンバ内において、まず炭素源メタンを密閉チャンバに導入し、密閉チャンバ内の雰囲気温度が850℃になるまで加熱する。炭素の蒸着温度は850℃、炭素の蒸着時間は10分、窒素の流量は20L/分、メタンの流量は10L/分であるため、炭素の蒸着速度は、速度は10nm/分であり、1回に蒸着する炭素の単位サイズは100nmである。次に、密閉チャンバ内にシランを導入し、シリコンの蒸着時間は10分、シランの流量は100L/分であるため、炭素の蒸着速度とシリコンの蒸着速度の比は1:4であり、1回に蒸着するシリコンの粒子径は400nmである(1回に蒸着するシリコンの粒子径=炭素の蒸着速度/(炭素の蒸着速度とシリコンの蒸着速度の比)×シリコンの蒸着時間)。1回に蒸着する炭素の粒径は100nm(1回に蒸着する炭素の粒子径=炭素の蒸着速度×炭素の蒸着時間)。このようにして、交互蒸着工程を行い、交互蒸着工程の間、蒸着速度及び時間は変化させず、生成物Aを得ることができる。
【0093】
比較例5
【0094】
以下の条件以外は実施例1と同様にして負極材料を作製した。
【0095】
工程S1.蒸着法により炭素とシリコンを交互に蒸着させた。具体的には、保護ガス(窒素)雰囲気下の密閉チャンバ内において、まず炭素源メタンを密閉チャンバに導入し、密閉チャンバ内の雰囲気温度が850℃になるまで加熱する。炭素の蒸着温度は850℃、炭素の蒸着時間は20分、炭素の蒸着時間は20L/分、メタンの流量は20L/分であるため、炭素の蒸着速度は20nm/分であり、1回に蒸着する炭素の単位サイズは100nmである。次に、密閉チャンバ内にシランを導入し、シリコンの蒸着時間は2分、シランの流量は5L/分であるため、炭素の蒸着速度とシリコンの蒸着速度の比は5:1であり、1回に蒸着するシリコンの粒子径は4nmである(1回に蒸着するシリコンの粒子径=(炭素の蒸着速度/(炭素の蒸着速度とシリコンの蒸着速度の比)×シリコンの蒸着時間)。1回に蒸着する炭素の粒子径は400nmである(1回に蒸着する炭素の粒子径=炭素の蒸着速度×炭素の蒸着時間)。このようにして、交互蒸着工程を行い、交互蒸着工程の間、蒸着速度及び時間は変化させず、生成物Aを得ることができる。
【0096】
試験
【0097】
実施例1~4及び比較例1~5で作製した負極材料について、元素状シリコン/元素状炭素の分布、圧縮密度、比表面積、初回効率及びサイクル寿命を試験した。試験結果を表1に示す。
試験結果
【0098】
【0099】
表1から分かるように、実施例1~4の負極材料からなる負極シートからなるリチウムイオン二次電池の初回効率は、≧87.1%であり、サイクル寿命は≧600である。この結果は、本発明の負極材料からなる負極シートからなるリチウムイオン二次電池が優れた長サイクル寿命性能を有することを示している。
【0100】
表1から、比較例1の負極材料の元素状シリコン/元素状炭素分布度Rは、≧0.5(具体的には0.6)であり、負極材料からなる負極シートからなるリチウムイオン二次電池のサイクル寿命が320サイクルに過ぎないことが分かる。実施例1~4の負極材料の元素状シリコン/元素状炭素分布度Rは、<0.5であり、負極材料からなる負極シートからなるリチウムイオン二次電池のサイクル寿命は、600~1000サイクルである。この結果は、負極材料の元素状シリコン/元素状炭素の分布度を特定の範囲(元素状シリコン/元素状炭素の分布度R≦0.5)に制御することにより、負極材料からなる負極シートからなるリチウムイオン二次電池の充放電過程(具体的には、リチウムの脱離・挿入過程)における構造安定性を確保することができ、これにより、負極材料からなる負極シートからなるリチウムイオン二次電池の長サイクル寿命が向上することを示している。
【0101】
表1より、比較例2の負極材料の圧縮密度は0.5g/cm3未満(具体的には0.3g/cm3)であり、負極材料からなる負極シートからなるリチウムイオン二次電池のサイクル寿命は330サイクルに過ぎないことが分かる。実施例1~4の負極材料の圧縮密度は、1.3g/cm3~1.5g/cm3であり、負極材料からなる負極シートからなるリチウムイオン二次電池のサイクル寿命は、600サイクル~1000サイクルである。この結果は、負極材料の圧縮密度を特定の選択範囲(0.5g/cm3~2.5g/cm3)内に制御することにより、負極材料の骨格強度を確保することができ、これにより、負極材料からなる負極シートからなるリチウムイオン二次電池の充放電過程(具体的には、リチウムの脱離過程)における構造安定性をより確保することができ、これにより、負極材料からなる負極シートからなるリチウムイオン二次電池の長サイクル寿命が向上することを示している。
【0102】
表1より、比較例3及び比較例5の負極材料の比表面積は、どちらも≧15m2/g(具体的にはそれぞれ25.1m2/g及び20.2m2/g)であり、負極材料からなる負極シートからなるリチウムイオン二次電池のサイクル寿命は、それぞれ230サイクル、480サイクルであったことが分かる。比較すると、実施例1~4の負極材料の比表面積はいずれも<15m2/gであり、負極材料からなる負極シートからなるリチウムイオン二次電池のサイクル寿命は、600サイクル~1000サイクルである。この結果は、負極材料の比表面積を特定の選択範囲(≦15m2/g)内に制御することにより、負極材料表面への皮膜形成を抑制することが可能となり、これにより、負極からなる負極シートからなるリチウムイオン二次電池の初回効率(すなわち、初回クーロン効率)を確保し、これにより、負極材料からなる負極シートからなるリチウムイオン二次電池の長サイクル寿命が向上することを示している。
【0103】
上記実施形態は、本発明の原理及び効果を例示するものであり、本発明を限定するものではない。技術分野の通常の知識を有する者なら誰でも、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、上記の実施形態を修正又は変更することができる。したがって、本発明に開示される精神及び技術的思想から逸脱することなく、技術分野の通常の知識を有する者によって行われるすべての同等の修正又は変更は、なおも本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明により提供される負極材料は、リチウムイオン電池に適用することができる。
【符号の説明】
【0105】
1: 炭素層
2: シリコン層
3: 表面被覆用炭素層
【外国語明細書】