(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014408
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ディスプレイ用ガラス原板、ガラス原板の製造方法、及びガラス原板梱包体
(51)【国際特許分類】
B65D 85/48 20060101AFI20240125BHJP
C03B 33/02 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B65D85/48
C03B33/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117213
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】澤里 拡志
(72)【発明者】
【氏名】前田 透
(72)【発明者】
【氏名】奥 隼人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 茂嘉
【テーマコード(参考)】
3E096
4G015
【Fターム(参考)】
3E096AA05
3E096AA15
3E096BA24
3E096BB05
3E096CA09
3E096CA21
3E096CB02
3E096FA23
4G015FA03
4G015FA04
4G015FB02
4G015FC01
4G015FC10
(57)【要約】
【課題】ガラス原板における下辺と側辺との角部からの破損を抑制する事と、有効領域を十分に確保する事とを、両立させる。
【解決手段】梱包用パレット5に縦姿勢で積載され、横方向に延びる上辺PA及び下辺PDと、縦方向に延びる二つの側辺PB、PCとを備えた略矩形状のガラス原板2につき、板厚が0.2mm以上で1.0mm以下であり、且つ、少なくとも一辺の長さが1500mm以上で4000mm以下であると共に、下辺PDの長さが、上辺PAの長さの95%以上で99.95%以下である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
梱包用パレットに縦姿勢で積載され、横方向に延びる上辺及び下辺と、縦方向に延びる二つの側辺とを備えた略矩形状のディスプレイ用ガラス原板であって、
板厚が0.2mm以上で1.0mm以下であり、且つ、少なくとも一辺の長さが1500mm以上で4000mm以下であると共に、
前記下辺の長さが、前記上辺の長さの95%以上で99.95%以下であることを特徴とするガラス原板。
【請求項2】
前記二つの側辺における少なくとも下端側部分及びその上側の上下方向中間部分はそれぞれ、上方から下方に移行するに連れて、前記上辺の幅方向両端を互いに結ぶ直線とその幅方向中央で直交する基準面に漸次近づく請求項1に記載のガラス原板。
【請求項3】
前記下端側部分は、前記上下方向中間部分よりも、前記基準面に漸次近づく度合いが大きい請求項2に記載のガラス原板。
【請求項4】
前記下端側部分は、幅方向外側に凸になるように湾曲している請求項3に記載のガラス原板。
【請求項5】
前記二つの側辺はそれぞれ、下端から鉛直上方に50mm離れた高さ位置又は前記下端から鉛直上方に100mm離れた高さ位置もしくは前記下端から鉛直上方に200mm離れた高さ位置に基準点を有し、前記基準点と前記下端とを結ぶ直線と、前記下辺とのなす角度が、90.1°以上で110.0°以下である請求項1~4の何れかに記載に記載のガラス原板。
【請求項6】
梱包用パレットに縦姿勢で積載され、横方向に延びる上辺及び下辺と、縦方向に延びる二つの側辺とを備えた略矩形状のディスプレイ用ガラス原板であって、
板厚が0.2mm以上で1.0mm以下であり、且つ、少なくとも一辺の長さが1500mm以上で4000mm以下であると共に、
前記二つの側辺における少なくとも下端側部分及びその上側の上下方向中間部分はそれぞれ、上方から下方に移行するに連れて、前記上辺の幅方向両端を互いに結ぶ直線とその幅方向中央で直交する基準面に漸次近づき、前記下端側部分は、前記上下方向中間部分よりも、前記基準面に漸次近づく度合いが大きいことを特徴とするガラス原板。
【請求項7】
一の方向で対向する二つの第一の辺と、他の方向で対向する二つの第二の辺とを備えた略矩形状のディスプレイ用ガラス原板であって、
板厚が0.2mm以上で1.0mm以下であり、且つ、少なくとも一辺の長さが1500mm以上で4000mm以下であると共に、
前記二つの第一の辺のうち、一方の第一の辺の長さが、他方の第一の辺の長さの95%以上で99.95%以下であることを特徴とするガラス原板。
【請求項8】
幅方向両端部にそれぞれ不要部が形成された不要部付きガラス板を縦姿勢で吊り下げ支持した状態で、前記不要部付きガラス板から前記不要部を除去することで略矩形状のディスプレイ用ガラス原板を製造する方法であって、
前記不要部付きガラス板の幅方向一端部に形成された前記不要部の幅方向内側縁に縦方向に沿う第一スクライブ線を形成する第一スクライブ工程と、前記不要部付きガラス板の幅方向他端部に形成された前記不要部の幅方向内側縁に縦方向に沿う第二スクライブ線を形成する第二スクライブ工程と、前記第一スクライブ線に沿って折割りを行う第一折割り工程と、前記第二スクライブ線に沿って折割りを行う第二折割り工程とを備え、
前記第一スクライブ工程では、上端よりも下端が幅方向内側に位置する第一スクライブ線が形成され、前記第二スクライブ工程では、上端よりも下端が幅方向内側に位置する第二スクライブ線が形成されることを特徴とするガラス原板の製造方法。
【請求項9】
梱包用パレットに、横方向に延びる上辺及び下辺と、縦方向に延びる二つの側辺とを備えた略矩形状のディスプレイ用ガラス原板を縦姿勢で複数枚積載したガラス原板梱包体であって、
前記ガラス原板は、板厚が0.2mm以上で1.0mm以下であり、且つ、少なくとも一辺の長さが1500mm以上で4000mm以下であると共に、
前記下辺の長さが、前記上辺の長さの95%以上で99.95%以下であることを特徴とするガラス原板梱包体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ用ガラス原板、ガラス原板の製造方法、及びガラス原板梱包体についての改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイや太陽電池などに用いられるガラスの基板やカバーは、ガラス原板と称されるガラス板から切り出されて製作される。このディスプレイ用ガラス原板(以下では、単に「ガラス板」ともいう。)は、大型化及び薄肉化が推進されているのが実情であるため、搬送時や輸送時或いは保管時等に破損や損傷などが生じ易い。そのため、この種のガラス板においては、梱包形態が重要となる。
【0003】
その梱包形態の一例として、特許文献1によれば、基台部上に底面支持部と背面支持部とを有する梱包用パレットに、縦姿勢の複数枚のガラス板を相互間に保護シートを介在させて積載することが開示されている。
【0004】
さらに、これに工夫を講じた梱包形態として、特許文献2によれば、ガラス板を台形状などの非矩形状にすることで、ガラス板の側辺に、上方よりも下方が幅方向内側に位置する傾斜部を形成し、この傾斜部を、梱包用パレットの基台部上に別途設けた支持部により支持させることが開示されている。
【0005】
この特許文献2に開示の梱包形態は、ガラス板の下辺と側辺の傾斜部とを梱包用パレットの基台部上で支持することで、支持面積を増加させ、ガラス板の自重による破損を低減することを課題としてなされたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-46239号公報
【特許文献2】特開2010-111426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、特許文献1に開示された梱包形態では、搬送時や輸送持等の揺れなどに起因して、ガラス板の下辺と側辺との角部に応力集中が生じ、当該角部から破損が生じやすいことを知見した。
【0008】
さらに、本発明者等は、この角部からの破損の問題に対し、特許文献2に開示のようにガラス板の形状を台形状などにして、下辺と側辺とのなす角度を鈍角にすることで解決できることをも知見した。
【0009】
これらに関するさらなる検討の結果、本発明者等は、上記角部からの破損の問題だけを重要視していたのでは、以下に示すような新たな問題が生じることをも知見した。すなわち、ガラス板における製品又は中間製品を切り出すための有効領域は、矩形状をなすのが通例である。そのため、上記角部からの破損の抑制のみを目的として、上辺の長さに対する下辺の長さの比率を小さくした場合には、有効領域が大幅に狭くなるという問題が生じる。
【0010】
以上の観点から、本発明の課題は、ガラス原板における下辺と側辺との角部からの破損を抑制する事と、有効領域を十分に確保する事とを、両立させることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 上記課題を解決するために創案された本発明の第一の側面は、梱包用パレットに縦姿勢で積載され、横方向に延びる上辺及び下辺と、縦方向に延びる二つの側辺とを備えた略矩形状のディスプレイ用ガラス原板であって、板厚が0.2mm以上で1.0mm以下であり、且つ、少なくとも一辺の長さが1500mm以上で4000mm以下であると共に、前記下辺の長さが、前記上辺の長さの95%以上で99.95%以下であることに特徴づけられる。ここで、略矩形状とは、上辺の両端を結ぶ直線に沿って延びる第一の直線と、下辺の両端を結ぶ直線に沿って延びる第二の直線と、二つの測辺の上下方向中央にそれぞれ接する第三、第四の直線とが交差して得られる四角形の四つの角部の角度が何れも、90°±5°の範囲内にある形状をいう。
【0012】
このような構成によれば、ガラス原板が大型で薄肉とされているため、梱包した状態での搬送時や輸送時或いは保管時には、ガラス原板の下辺周辺に、その自重による大きな応力が作用する。しかし、ここでの構成では、ガラス原板の下辺の長さが上辺の長さよりも短くされている。そのため、下辺と側辺とのなす角度を鈍角にすることができ、当該角部への応力集中を低減できる。しかも、このガラス原板の形状は略矩形状であって且つ下辺の長さが上辺の長さの95%以上で99.95%以下であるため、矩形状の有効領域を十分に確保することができ、ガラス原板に生じる無駄をなくすことができる。したがって、ここでの構成によれば、ガラス原板における下辺と側辺との角部からの破損を抑制する事と、有効領域を十分に確保する事とを、両立させることが可能となる。
【0013】
(2) 上記(1)の構成において、前記二つの側辺における少なくとも下端側部分及びその上側の上下方向中間部分はそれぞれ、上方から下方に移行するに連れて、前記上辺の幅方向両端を互いに結ぶ直線とその幅方向中央で直交する基準面に漸次近づくことが好ましい。
【0014】
このようにすれば、ガラス原板の下辺と二つの側辺とのそれぞれの角部を、双方共に鈍角にして、上記の両立を確実化できる。
【0015】
(3) 上記(2)の構成において、前記下端側部分は、前記上下方向中間部分よりも、前記基準面に漸次近づく度合いが大きいことが好ましい。
【0016】
このようにすれば、当該二つの角部に生じる応力集中が効果的に低減され、上記の両立をより一層確実化できる。
【0017】
(4) 上記(3)の構成において、前記下端側部分は、幅方向外側に凸になるように湾曲していることが好ましい。
【0018】
このようにすれば、当該二つの角部が丸みを帯びた形状になるため、上記の応力集中がより確実に低減される。
【0019】
(5) 上記(1)~(4)のいずれかの構成において、前記二つの側辺はそれぞれ、下端から鉛直上方に50mm離れた高さ位置又は前記下端から鉛直上方に100mm離れた高さ位置もしくは前記下端から鉛直上方に200mm離れた高さ位置に基準点を有し、前記基準点と前記下端とを結ぶ直線と、前記下辺とのなす角度が、90.1°以上で110.0°以下であることが好ましい。
【0020】
このようにすれば、当該二つの角部の角度を、上記の両立に適した角度とすることができる。
【0021】
(6) 上記課題を解決するために創案された本発明の第二の側面は、梱包用パレットに縦姿勢で積載され、横方向に延びる上辺及び下辺と、縦方向に延びる二つの側辺とを備えた略矩形状のディスプレイ用ガラス原板であって、板厚が0.2mm以上で1.0mm以下であり、且つ、少なくとも一辺の長さが1500mm以上で4000mm以下であると共に、前記二つの側辺における少なくとも下端側部分及びその上側の上下方向中間部分はそれぞれ、上方から下方に移行するに連れて、前記上辺の幅方向両端を互いに結ぶ直線とその幅方向中央で直交する基準面に漸次近づき、前記下端側部分は、前記上下方向中間部分よりも、前記基準面に漸次近づく度合いが大きいことに特徴づけられる。
【0022】
このような構成によっても、ガラス原板の当該角部からの破損を抑制する事と、有効領域を十分に確保する事とを、両立させることが可能となる。
【0023】
(7) 上記課題を解決するために創案された本発明の第三の側面は、一の方向で対向する二つの第一の辺と、他の方向で対向する二つの第二の辺とを備えた略矩形状のディスプレイ用ガラス原板であって、板厚が0.2mm以上で1.0mm以下であり、且つ、少なくとも一辺の長さが1500mm以上で4000mm以下であると共に、前記二つの第一の辺のうち、一方の第一の辺の長さが、他方の第一の辺の長さの95%以上で99.95%以下であることに特徴づけられる。
【0024】
このような構成のガラス原板を本発明の第一の側面と同様に使用すれば、上記の両立を図ることが可能となる。
【0025】
(8) 上記課題を解決するために創案された本発明の第四の側面は、幅方向両端部にそれぞれ不要部が形成された不要部付きガラス板を縦姿勢で吊り下げ支持した状態で、前記不要部付きガラス板から前記不要部を除去することで略矩形状のディスプレイ用ガラス原板を製造する方法であって、前記不要部付きガラス板の幅方向一端部に形成された前記不要部の幅方向内側縁に縦方向に沿う第一スクライブ線を形成する第一スクライブ工程と、前記不要部付きガラス板の幅方向他端部に形成された前記不要部の幅方向内側縁に縦方向に沿う第二スクライブ線を形成する第二スクライブ工程と、前記第一スクライブ線に沿って折割りを行う第一折割り工程と、前記第二スクライブ線に沿って折割りを行う第二折割り工程とを備え、前記第一スクライブ工程では、上端よりも下端が幅方向内側に位置する第一スクライブ線が形成され、前記第二スクライブ工程では、上端よりも下端が幅方向内側に位置する第二スクライブ線が形成されることに特徴づけられる。
【0026】
この方法によれば、不要部付きガラス板を第一、第二スクライブ線に沿ってそれぞれ折割ることで得たガラス原板を、本発明の第一の側面と同様に使用すれば、上記の両立を図ることが可能となる。しかも、この方法によれば、第一、第二スクライブ線が従来のように互いに平行に上下方向に沿って延びていないため、次に示すような利点が得られる。すなわち、不要部付きガラス板を第一、第二スクライブ線に沿ってそれぞれ折割った際には、ガラス粉が飛散して落下する。この場合、第一、第二スクライブ線が従来のような方向に沿って延びていると、切り出されたガラス原板に多量のガラス粉が付着し、製品であるガラスの基板におけるパーティクルの個数が多くなる。しかし、ここでの構成によれば、第一、第二スクライブ線は何れも、上端よりも下端が幅方向内側に位置しているため、多量のガラス粉が付着したガラス部の一部もしくは大半は不要部として除去される。これにより、切り出されたガラス原板へのガラス粉の付着量を低減でき、製品であるガラスの基板におけるパーティクルの個数を少なくすることができる。
【0027】
(9) 上記課題を解決するために創案された本発明の第五の側面は、梱包用パレットに、横方向に延びる上辺及び下辺と、縦方向に延びる二つの側辺とを備えた略矩形状のディスプレイ用ガラス原板を縦姿勢で複数枚積載したガラス原板梱包体であって、前記ガラス原板は、板厚が0.2mm以上で1.0mm以下であり、且つ、少なくとも一辺の長さが1500mm以上で4000mm以下であると共に、前記下辺の長さが、前記上辺の長さの95%以上で99.95%以下であることに特徴づけられる。
【0028】
このガラス原板梱包体によれば、本発明の第一の側面と同様にして、上記の両立を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ガラス原板における下辺と側辺との角部からの破損を抑制する事と、有効領域を十分に確保する事とを、両立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態に係るガラス原板梱包体の全体構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るガラス原板の形状の第一例を示す正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るガラス原板の形状の第一例の要部を示す拡大正面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るガラス原板の形状の第二例を示す正面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るガラス原板の形状における「略矩形状」を説明するための正面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るガラス原板の形状の第三例を示す正面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るガラス原板の形状の第四例を示す正面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るガラス原板の製造方法の実施状況を示す概略斜視図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るガラス原板の製造方法の実施状況を示す概略正面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係るガラス原板の形状の変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態に係るディスプレイ用ガラス原板及びガラス原板梱包体並びにガラス原板の製造方法について添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下では、ガラス原板を単に「ガラス板」ともいい、ガラス原板梱包体を単に「ガラス板梱包体」ともいう。
【0032】
図1は、本発明の実施形態に係るガラス板梱包体の全体構成を模式的に示す斜視図である。同図に示すように、ガラス板梱包体1は、縦姿勢にある複数枚のガラス板2の各相互間に保護シート3を介在させたガラス板積層体4を、梱包用パレット5上に積載したものである。
【0033】
保護シート3は、矩形状であって、発泡樹脂シート又は発泡性を有しない樹脂シートもしくは紙などで形成される。保護シート3は、ガラス板2の上辺PA、左辺PB及び右辺PCから外側に食み出している(図示略)。
【0034】
梱包用パレット5は、底部を構成する基台部5aを有し、基台部5a上に、ガラス板2を下方から支持する下方支持部5bと、ガラス板2の背面側を支持する背面支持部5cとが組み付けられている。この場合、ガラス板2の下辺PDが接触する下方支持部5bの載置面5dは、平面状に形成されている。
【0035】
ガラス板2は、略矩形状(詳細は後述する)であって、板厚が0.2mm以上で1.0mm以下、四つの辺の長さが何れも1500mm以上で4000mm以下である。板厚の下限値は、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.4mm以上である。板厚の上限値は、好ましくは0.9mm以下、より好ましくは0.8mm以下である。四つの辺の長さの下限値は、好ましくは2200mm以上、より好ましくは2300mm以上である。四つの辺の長さの上限値は、好ましくは3400mm以下、より好ましくは3020mm以下、さらに好ましくは2690mm以下、最も好ましくは2590mm以下である。
【0036】
ガラス板2の上辺PA、下辺PD、及び二つの側辺(左辺PB及び右辺PC)に位置する端面は、折り割りによって形成され、未研磨の切断面である。このような切断面は、スクライブ痕とリブマークとを有する(各辺の符号は後述する
図2等参照)。
【0037】
以下、第一例~第四例に係るガラス板2の形状について説明する。なお、以下の説明では、横方向(左右方向)を幅方向ともいい、縦方向(高さ方向)を上下方向ともいう。
【0038】
図2は、第一例に係るガラス板2の形状を示す正面図である。この正面図は、ガラス板2の主面2a(表面及び裏面)を鉛直面に沿わせ、かつ載置面5dを水平面に沿わせた場合の正面図である(以下、同様)。同図に示すように、ガラス板2は、横方向に延びる上辺PA及び下辺PDと、縦方向に延びる二つの側辺(左辺PB及び右辺PC)とを備える。図例では、上辺PA及び下辺PDは何れも、一直線上に延び且つ互いに平行に並んでいるが、それらの辺PA、PDが僅かに湾曲していてもよく、或いはそれらの辺PA、PDが互いに僅かな角度(例えば2°以内、好ましくは1°以内)だけ異なる方向に沿っていてもよい。
【0039】
下辺PDの長さL1は、上辺PAの長さL2の95%以上で99.5%以下とされている。この比率の下限値は、好ましくは96.0%以上、より好ましくは96.5%以上である。また、この比率の上限値は、好ましくは99.0%以下、より好ましくは98.5%以下である。一方、上辺PAの長さと下辺PDの長さとの差は、7.5~200.0mmであることが好ましい。この差の下限値は、より好ましくは10.0mm以上、さらに好ましくは20.0mm以上である。また、この差の上限値は、より好ましくは150.0mm以下、さらに好ましくは100.0mm以下である。
【0040】
左辺PB及び右辺PCの下端側部分P1、上下方向中間部分P2及び上端側部分P3は何れも、上方から下方に移行するに連れて、上辺PAとその幅方向中央で直交する基準面Xに漸次近づいている。ここで、左辺PB及び右辺PCの下端側部分P1とは、同図に示す点Aから点Bまでの部分である。したがって、下端側部分P1の下端は、下辺PDと点Aで繋がっている。また、左辺PB及び右辺PCの上下方向中間部分P2とは、同図に示す点Bから点Cまでの部分である。したがって、上下方向中間部分P2の下端は、下端側部分P1の上端と点Bで繋がっている。さらに、左辺PB及び右辺PCの上端側部分P3とは、同図に示す点Cから点Dまでの部分である。したがって、上端側部分P3の下端は、上下方向中間部分P2の上端と点Cで繋がっている。また、上端側部分P3の上端は、上辺PAと点Dで繋がっている。なお、上辺PAが湾曲している場合は、上辺PAの両端Dを互いに結ぶ直線とその幅方向中央で直交する面が、上記基準面Xとなる。
【0041】
下端側部分P1の下端Aから上端Bまでの上下方向(鉛直方向)に沿う距離L3は、30~300mmであることが好ましい。この距離L3の下限値は、より好ましくは70mm以上、さらに好ましくは100mm以上である。また、この距離L3の上限値は、より好ましくは250mm以下、さらに好ましくは200mm以下である。換言すれば、この距離L3は、左辺PB及び右辺PCのそれぞれの全長の1/150~1/10であることが好ましい。この比率の下限値は、より好ましくは1/120以上、さらに好ましくは1/100以上である。また、この比率の上限値は、より好ましくは1/20以下、さらに好ましくは1/50以下である。
【0042】
上端側部分P3の下端Cから上端Dまでの上下方向(鉛直方向)に沿う距離L4は、30~300mmであることが好ましい。この距離L4の下限値は、より好ましくは70mm以上、さらに好ましくは100mm以上である。また、この距離L4の上限値は、より好ましくは250mm以下、さらに好ましくは200mm以下である。換言すれば、この距離L4は、左辺PB及び右辺PCのそれぞれの全長の1/150~1/10であることが好ましい。この比率の下限値は、より好ましくは1/120以上、さらに好ましくは1/100以上である。また、この比率の上限値は、より好ましくは1/20以下、さらに好ましくは1/50以下である。
【0043】
左辺PB及び右辺PCの下端側部分P1は何れも、上下方向中間部分P2及び上端側部分P3よりも上記基準面Xに漸次近づく度合いが大きくなっている。また、それら下端側部分P1は何れも、幅方向外側に凸になるように湾曲している。この場合、下端側部分P1と上下方向中間部分P2とは滑らかに湾曲して連なっている。これに対して、下端側部分P1と下辺PDとは屈曲して連なっている。
【0044】
左辺PB及び右辺PCの上下方向中間部分P2は何れも、一直線上に延びている。図例では、左辺PB及び右辺PCの上端側部分P3も、一直線上に延びている。したがって、上下方向中間部分P2の下端Bから上端側部分P3の上端Dまでが、一直線上に延びている。なお、図例とは異なり、上端側部分P3は、鉛直方向に延びていてもよく、下方から上方に移行するに連れて上記基準面Xに漸次近づいていてもよい。
【0045】
図3は、第一例に係るガラス板2の下部を拡大した一部破断正面図である。同図に示すように、左辺PB及び右辺PCは何れも、下端Aから鉛直上方に100mm離れた高さ位置H1に基準点Eを有している。この基準点Eは、下端Aから鉛直上方に50mm離れた高さ位置H1にあってもよく、又は下端Aから鉛直上方に200mm離れた高さ位置H1にあってもよい。そして、基準点Eと下端Aとを結ぶ直線Mと、下辺PDとのなす角度αは、90.1°以上で110.0°以下とされている。この角度αの下限値は、好ましくは91.0°以上、より好ましくは95.0°以上である。また、この角度αの上限値は、好ましくは107.0°以下、より好ましくは105.0°以下である。なお、下辺PDが湾曲している場合、上記角度αは、下辺PDの両端Aを互いに結ぶ直線と、上記直線Mとのなす角度になる。
【0046】
下辺PDの長さは、基準点Eでのガラス板2の幅方向長さの99.10~99.95%であることが好ましい。この比率の下限値は、より好ましくは99.20%以上、さらに好ましくは99.30%以上である。また、この比率の上限値は、より好ましくは99.90%以下、さらに好ましくは99.85%以下である。なお、図例では、基準点Eが、下端側部分P1の下端Aと上端Bとの間に位置しているが、上端Bと一致していてもよく、又は上端Bよりも上方に位置していてもよい。
【0047】
左辺PB及び右辺PCの上下方向中間部分P2と下辺PDとのなす角度β、つまり左辺PB及び右辺PCの上下方向中央に接する直線(接線)LBと下辺PDとのなす角度βは、90.02°以上で105.00°以下であることが好ましい。この角度βの下限値は、より好ましくは90.10°以上、さらに好ましくは91.00°以上である。また、この角度βの上限値は、より好ましくは98.00°以下、さらに好ましくは93.00°以下である。この角度βは、上述の角度αよりも0.07°~5.00°だけ小さいことが好ましい。この場合の下限値は、より好ましくは0.10°以上、さらに好ましくは0.50°以上である。また、この場合の上限値は、より好ましくは4.00°以下、さらに好ましくは3.00°以下である。
【0048】
ここで、ガラス板2は、製品又は中間製品となる有効領域(図示略)を有している。この有効領域は矩形状(四つの角部が全て90°の四角形)である。
図2を参照して、有効領域について説明する。有効領域の上端における幅方向に沿う直線は、上辺PAから鉛直下方に20~50mm離れた高さ位置に存在していることが好ましい。この場合の下限値は、より好ましくは25mm以上である。また、この場合の上限値は、より好ましくは40mm以下である。なお、上辺PAが湾曲している場合は、上辺PAの両端Dを互いに結ぶ直線の幅方向中央が、上記の高さ位置の基準となる。
【0049】
有効領域の下端における幅方向に沿う直線は、下辺PDから鉛直上方に20~50mm離れた高さ位置に存在していることが好ましい。この場合の下限値は、より好ましくは25mm以上である。また、この場合の上限値は、より好ましくは40mm以下である。なお、下辺PDが湾曲している場合は、下辺PDの両端Aを互いに結ぶ直線の幅方向中央が、上記の高さ位置の基準となる。
【0050】
有効領域の左端及び右端における上下方向に沿う直線は何れも、左辺PB及び右辺PCの上下方向中央に接する直線から幅方向内側に30~60mm離れた位置に存在していることが好ましい。この場合の下限値は、より好ましくは35mm以上である。また、この場合の上限値は、より好ましくは50mm以下である。そして、この左辺PB及び右辺PCを基準とする距離は、上述の上辺PA及び下辺PDを基準とする距離よりも5~15mmだけ長くされている。
【0051】
図4は、第二例に係るガラス板2の形状を示す正面図である。同図に示すように、この第二例に係るガラス板2が上述の第一例に係るガラス板2と相違している点は、左辺PB及び右辺PCにおける上端側部分P3及び上下方向中間部分P2が、上方から下方に移行するに連れて上記基準面Xに漸次近づき且つ幅方向外側に凸になるように湾曲している点である。なお、この第二例でも、下端側部分P1は、上端側部分P3及び上下方向中間部分P2よりも、上方から下方に移行するに連れて上記基準面Xに漸次近づく度合いが大きい。そして、その他の構成は、上述の第一例に係るガラス板2と同一であるので、両者に共通する構成要素については
図4に同一符号を付し、その説明を省略する。なお、
図4に同一符号を付して説明を省略した構成要素については、上述の第一例で説明した事項の全てが成り立つ。
【0052】
ここで、便宜上、第二例に係るガラス板2の形状を用いて、既述の「略矩形状」について説明する。
図5は、その説明をするための正面図である。同図に示すように、「略矩形状」とは、上辺PAに沿って延びる上側の直線LAと、下辺PDに沿って延びる下側の直線LDと、左辺PB及び右辺PCの上下方向中央にそれぞれ接する左側の直線LB及び右側の直線LBとが交差して得られる四角形の四つの角部の角度θが何れも、90°±5°の範囲内にある形状をいう。なお、上辺PAが湾曲している場合、上述の上側の直線LAは、上辺PAの両端Dを互いに結ぶ直線に沿って延びる。また、下辺PDが湾曲している場合、上述の下側の直線LDは、下辺PDの両端Aを互いに結ぶ直線に沿って延びる。一方、左辺PB及び右辺PCの上下方向中間部分P2が一直線上に延びる場合、上述の右側の直線LB及び左側の直線LBは、それら上下方向中間部分P2に沿って延びる直線になる。
【0053】
図6は、第三例に係るガラス板2の形状を示す正面図である。この第三例に係るガラス板2が上述の第一例に係るガラス板2と相違している点は、左辺PB及び右辺PCにおける下端側部分P1が、その下端Aから上端Bまで一直線上に延びている点である。その他の構成は、上述の第一例に係るガラス板2と同一であるので、両者に共通する構成要素については
図4に同一符号を付し、その説明を省略する。なお、
図6に同一符号を付して説明を省略した構成要素については、上述の第一例で説明した事項の全てが成り立つ。
【0054】
図7は、第四例に係るガラス板2の形状を示す正面図である。この第四例に係るガラス板2が上述の第一例に係るガラス板2と相違している点は、左辺PB及び右辺PCにおける下端側部分P1が何れも、上下方向中間部分P2に同一方向に連なって一直線上に延びている点である。その他の構成は、上述の第一例に係るガラス板2と同一であるので、両者に共通する構成要素については
図4に同一符号を付し、その説明を省略する。なお、
図7に同一符号を付して説明を省略した構成要素については、上述の第一例で説明した事項の全てが成り立つ。
【0055】
以上の第一例~第四例に係るガラス板2は何れも、下辺PDの長さL1が上辺PAの長さL2よりも短いため、梱包用パレット5の載置面5d上に当該ガラス板2を縦姿勢で載置して搬送や輸送等を行っても、左辺PB及び右辺PCと下辺PDとのそれぞれの角部から当該ガラス板2が破損することを抑制できる。また、第一例~第四例に係るガラス板2は何れも、上辺PAの長さL2に対する下辺PDの長さL1の比率が既述のように設定されているため、矩形状の有効領域を十分に確保して、無駄な領域を狭くできる。したがって、左辺PB及び右辺PCと下辺PDとの角部からのガラス板2の破損の抑制と、有効領域の十分な確保とを、両立させることができる。
【0056】
次に、本発明の実施形態に係るガラス板の製造方法について説明する。このガラス板の製造方法は、主たる構成として、第一スクライブ工程と、第二スクライブ工程と、第一折割り工程と、第二折割り工程と、を備える。これらの工程は何れも、
図8に示すように、幅方向両端部にそれぞれ不要部20x、20yが形成された不要部付きガラス板20を把持機構6により縦姿勢で吊り下げ支持した状態で行われる。ここで、不要部20x、20yとは、当該ガラス板20の幅方向中央領域よりも板厚が厚くなった厚肉部(耳部と称される)を含む部位であって、ダウンドロー法(例えばオーバーフローダウンドロー法やスロットダウンドロー法)やフロート法による成形工程で作り出されるものである。なお、不要部付きガラス板20の上下方向両端部は、スクライブ切断された切断部であるため、厚肉部が形成されていない。
【0057】
第一スクライブ工程は、
図8に示すスクライブエリア7で、不要部付きガラス板20の幅方向一端部(図例では左端部)に形成された不要部20xの幅方向内側縁に上下方向に沿う第一スクライブ線S1を形成する工程である。第一スクライブ線S1は、スクライブホイールSW(その他の切れ刃などであってもよい)によって形成される。第二スクライブ工程は、同じくスクライブエリア7で、不要部付きガラス板20の幅方向他端部(図例では右端部)に形成された不要部20yの幅方向内側縁に上下方向に沿う第二スクライブ線S2を形成する工程である。第二スクライブ線S2も、同じくスクライブホイールSWなどによって形成される。そして、
図9に示すように、第一スクライブ工程では、上端S1aよりも下端S1bが幅方向内側に位置する第一スクライブ線S1が形成される。また、第二スクライブ工程では、上端S2aよりも下端S2bが幅方向内側に位置する第二スクライブ線S2が形成される。この場合、第一スクライブ線S1及び第二スクライブ線S2は何れも、一直線上に延びている。また、これらスクライブ線S1、S2の上端S1a、S2a及び下端S1b、S2bは何れも、不要部付きガラス板20の上端及び下端の何れにも到達していない。それら上端S1a、S2aから不要部付きガラス板20の上端までの距離は、3~100mmであることが好ましい。この距離の下限値は、より好ましくは5mm以上である。また、この距離の上限値は、より好ましくは80mm以下である。さらに、それら下端S1b、S2bから不要部付きガラス板20の下端までの距離は、3~100mmであることが好ましい。この距離の下限値は、より好ましくは5mm以上である。また、この距離の上限値は、より好ましくは80mm以下である。
【0058】
第一折り割り工程は、
図8に示す折割りエリア8で、第一スクライブ線S1に沿って折割りを行う工程である。第二折割り工程は、同じく折割りエリア8で、第二スクライブ線S2に沿って折割りを行う工程である。この場合、第一折割り工程では、不要部付きガラス板20の裏面を裏面支持部材9により支持した状態で、幅方向左端部に形成された不要部20xを表面側から押込み部材(図示略)により押し込むことで折割りを行い、その不要部20xを除去する。また、第二折割り工程では、幅方向右端部に形成された不要部20yを表面側から押込み部材(図示略)により押し込むことで折割りを行い、その不要部20yを除去する。これにより、上述の第一例~第四例に示したようなガラス板2が得られる。ここで、第一スクライブ線S1及び第二スクライブ線S2はそれぞれ、ガラス板2の左辺PB及び右辺PCにおける上下方向中間部分P2の形状と一致している。したがって、第二例に係るガラス板2を得るためには、第一スクライブ線S1及び第二スクライブ線S2は既述のように一直線上に延びるのではなく、幅方向外側に凸になるように湾曲している。
【0059】
なお、第一、第二スクライブ工程と第一、第二折割り工程とを実行する順序は、上述の説明に限定されず、何れか一方のスクライブ工程を実行した後に何れか一方の折割り工程を実行し、然る後、何れか他方のスクライブ工程を実行した後に何れか他方の折割り工程を実行するようにしてもよい。この場合には、スクライブエリア7と折割りエリア8とが同一のエリアであってもよい。また、第一スクライブ工程と第二スクライブ工程とについては、何れを先に実行してもよく、或いは両者を同時に実行してもよい。さらに、第一折割り工程と第二折割り工程とについても、何れを先に実行してもよく、或いは両者を同時に実行してもよい。
【0060】
以上の構成を備えた製造方法によれば、不要部付きガラス板20を第一、第二スクライブ線S1、S2に沿ってそれぞれ折割ることで得たガラス板2を、既述のガラス板梱包体1に使用すれば、上述の両立を図ることが可能である。しかも、この製造方法によれば、第一、第二スクライブ線S1、S2が従来のように互いに平行に上下方向に沿って延びていないため、次に示すような利点が得られる。すなわち、不要部付きガラス板20を第一、第二スクライブ線S1、S2に沿ってそれぞれ折割った際には、ガラス粉が飛散して落下する。この場合、第一、第二スクライブ線が従来のような方向に沿って延びていると、切り出されたガラス板に多量のガラス粉が付着し、製品であるガラスの基板におけるパーティクルの個数が多くなる。しかし、ここでの構成によれば、第一、第二スクライブ線S1、S2は何れも、上端S1a、S2aよりも下端S1b、S2bが幅方向内側に位置しているため、多量のガラス粉が付着したガラス部の一部もしくは大半は不要部20x,20yとして除去される。これにより、切り出されたガラス板2へのガラス粉の付着量を低減でき、製品であるガラスの基板におけるパーティクルの個数を少なくすることができる。
【0061】
以上の実施形態では、ガラス板2の形状として、左辺PB及び右辺PCの上下方向に接する二本の直線LBと下辺PDとのなす角度βが何れも鈍角である形状を例示したが、例えば
図10に示すようなガラス板2の形状であっても、本発明の範囲を逸脱するものではない。すなわち、同図に示すガラス板2の形状は、左辺PBの上下方向中央に接する直線LBと下辺PDとのなす角度β1が鈍角であるのに対し、右辺PCの上下方向中央に接する直線LBと下辺PDとのなす角度β2が鋭角となっている。したがって、同図に示すガラス板2の形状が、既述の第一例に係るガラス板2の形状と大きく相違している点は、角度β2が鋭角になっている点である。この場合、同図に示すようなガラス板2の形状であっても、下辺PDの長さL1と上辺PAの長さL2との比率が既述の第一例に係るガラス板2と同一であり、且つ、既述の「略矩形状」の要件を満たしていれば、本発明の範囲を逸脱しない。なお、図例における左辺PBと右辺PCとは入れ替わっていてもよい。
【0062】
図10に示すガラス板2の形状は、既述の第一例に係るガラス板2の形状と対比して、上記の相違点以外の構成が基本的に同一であるため、両者に共通する構成要素については、
図10に同一符号を付し、その説明を省略する。したがって、
図10に同一符号を付して説明を省略した構成要素については、既述の第一例で説明した事項が基本的に成り立つ。なお、右辺PCの上端側部分P3は、右辺PCの上下方向中間部分P2よりも、下方から上方に移行するに連れて上記基準面Xに漸次近づく度合いが大きくてもよい。また、既述の第二例~第四例(これらと第一例との相違点)を、
図10に示すガラス板2の形状に適用してもよい。この場合、
図10に示すガラス板2の形状に既述の第二例及び第三例を適用する場合には、図例のように右辺PC側の角度αが鈍角になるようにすることが好ましい。一方、
図10に示すガラス板2の形状に既述の第四例を適用したならば、右辺PCの下端側部分P1が上下方向中間部分P2と同一方向に連なって一直線上に延びるため、図例とは異なり右辺PC側の角度αが鋭角になる。これについて、
図10に示すガラス板2は重心が左側に偏倚しているため、右辺PCと下辺PDとの角部に作用する応力が軽減される。そのため、当該角度が鋭角であっても、当該角部からのガラス板2の破損は効果的に抑制される。ただし、
図10に示すガラス板2の形状に既述の第四例を適用しなくてもよい。
【0063】
以上の実施形態では、ガラス板2の四辺PA~PDの全ての長さを1500mm以上で4000mm以下としたが、少なくとも一つの辺の長さが1500mm以上で4000mm以下としてもよい。この場合、例えば、上辺PAの長さL2だけが上記の数値範囲内にあるときは、下辺PDの長さL1は、既述の比率で決まるが、左辺PB及び右辺PCの長さは、1000mm以上で4000mm以下であることが好ましい。また、例えば、左辺PB及び右辺PCの長さだけが上記の数値範囲内にあるときは、上辺PAの長さL2は、1000mm以上で4000mm以下であることが好ましく、下辺PDの長さL1は、既述の比率で決まることが好ましい。この場合の既述の長さの差は、50~200mmであることが好ましい。この場合の下限値は、より好ましくは50mm以上であり、さらに好ましくは60mm以上である。
【0064】
以上の実施形態では、ガラス板2を、ガラス板梱包体1に用いるものとしたが、その用途はこれに限定されない。したがって、その他の用途に用いられるガラス板2については、一の方向で対向する二つの第一の辺のうち、一方の第一の辺が既述の下辺PDに相当し、他方の第一の辺が既述の上辺PAに相当すると共に、他の方向で対向する二つの第二の辺がそれぞれ、既述の左辺PB及び右辺PCに相当する。
【0065】
以上の実施形態では、不要部付きガラス板20の上下方向両端部は、スクライブ切断された切断部であったが、レーザ溶断された溶断部で合っても良い。換言すると、上辺及び下辺に位置する端面は、レーザ溶断によって形成された溶断面であってもよい。
【実施例0066】
以下、本発明の実施例及び比較例について説明する。下記の表1は、実施例1~実施例8及び比較例を示すものである。下記の表1中、「高さ100mmを基準とする角度」とは、既述の左辺PB及び右辺PCにおける下端Aから鉛直上方に100mm離れた高さ位置にある基準点Eと下端Aとを結ぶ直線Mと、下辺PDとのなす角度αを意味し、「上下方向中央を基準とする角度」とは、既述の左辺PB及び右辺PCの上下方向中央に接する直線と、下辺PDとのなす角度βを意味している。
【0067】
また、下記の表1中、「長距離輸送の破損率」とは、350枚の当該ガラス板2と保護シート3とを交互に配列させたガラス板積層体4を梱包用パレット5に積載して梱包したガラス板梱包体1(
図1参照)をコンテナに積み込み、平均速度40km/hの自動車にて200kmの陸上輸送を実施して得られた破損率を意味している。詳しくは、上記の陸上輸送後のガラス板梱包体1を開梱し、クラックや欠損等の破損が生じたガラス板2の枚数をカウントする輸送テストを行う。そして、この輸送テストを計100パレット(35000枚)のガラス板梱包体1について行い、破損が生じたガラス板2の合計枚数を、ガラス板2の合計枚数(35000枚)で除算して得られた破損率(ppm)を意味している。
【0068】
さらに、下記の表1中、「1μm以上のパーティクル個数」とは、上記の長距離輸送を終えて取り出したガラス板2から、ディスプレイ用等のガラスの基板(製品)の元になる元ガラス基板をスクライブ切断により切り出し、所定の加工を行うことで得られた製品のパーティクルの個数を意味している。詳しくは、当該元ガラス基板に端面加工及びその後の洗浄工程を行って製品を得た後、表面パーティクル測定器によって製品の主面を測定し、その測定結果として得られた当該主面に付着していた1μm以上のパーティクルの個数(35000枚のガラス板2についての平均値)を意味している。
【0069】
なお、実施例及び比較例の測定に使用した各35000枚のガラス板2は、それぞれ同一製造ラインで製造された同一ロットのガラス板2である。従って、各35000枚のガラス板2は、それぞれ略同一形状となる。表1に記載の寸法及び角度は、各35000枚のガラス板2から1枚を抜き取って測定した代表値である。
【0070】
【0071】
上記の表1によれば、実施例1~実施例6は、何れも、下辺/上辺が比較例よりも小さく、左辺及び右辺の高さ100mmを基準とする角度及び上下方向中央を基準とする角度が比較例よりも大きいため、長距離輸送の破損率が比較例よりも大幅に小さく、1μm以上のパーティクル個数も比較例よりも少なかった。また、実施例1~実施例6(実施例5を除く)は、何れも、有効領域の面積の割合が、比較例よりもやや少ないが、十分な有効領域(矩形の領域)を確保できる数値である。なお、実施例1~実施例6の中でも、実施例3及び実施例4は、長距離輸送の破損率及び1μm以上のパーティクル個数の面で優れている。その理由は、実施例3及び実施例4における左辺及び右辺の高さ100mmを基準とする角度が、他の実施例よりも大きいところにあることが伺える。
【0072】
また、実施例7は、下辺/上辺が比較例よりも小さく、左辺の上下方向中央を基準とする角度が比較例よりも大きいが、右辺の上下方向中央を基準とする角度は比較例よりも小さく、鋭角である。しかしながら、左辺及び右辺の高さ100mmを基準とする角度が比較例よりも十分に大きいため、長距離輸送の破損率が比較例よりも大幅に小さく、1μm以上のパーティクル個数も比較例よりも少なかった。
【0073】
また、実施例8は、下辺/上辺が比較例よりも小さく、右辺の上下方向中央を基準とする角度が比較例よりも大きいが、左辺の上下方向中央を基準とする角度は比較例よりも小さく、鋭角である。しかしながら、左辺及び右辺の高さ100mmを基準とする角度が比較例よりも十分に大きいため、長距離輸送の破損率が比較例よりも大幅に小さく、1μm以上のパーティクル個数も比較例よりも少なかった。