(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144080
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】N-アシルアミノ酸系界面活性剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 231/02 20060101AFI20241003BHJP
C07C 233/47 20060101ALI20241003BHJP
C07C 303/32 20060101ALI20241003BHJP
C07C 309/13 20060101ALI20241003BHJP
C11D 1/10 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C07C231/02
C07C233/47
C07C303/32
C07C309/13
C11D1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023212850
(22)【出願日】2023-12-18
(31)【優先権主張番号】P 2023051664
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森川 稔之
(72)【発明者】
【氏名】杉本 卓巳
(72)【発明者】
【氏名】竹森 友紀
(72)【発明者】
【氏名】藤田 博也
【テーマコード(参考)】
4H003
4H006
【Fターム(参考)】
4H003AB09
4H003DA02
4H003FA21
4H003FA23
4H006AA02
4H006AB12
4H006AB68
4H006AB70
4H006AC53
4H006BC10
4H006BC18
4H006BC31
4H006BE10
4H006BS10
4H006BS70
4H006BV22
(57)【要約】
【課題】高濃度またはクラフト点の高い反応液においても送液でき、すすぎ時にきしみやつっぱりが生じにくく、臭気の発生を抑えたN-アシルアミノ酸系界面活性剤を得る製造方法の提供。
【解決手段】アミノ酸またはその塩と、アルカリとを、35~50℃に加温して、第1の供給口から送液管中に供給する工程と、アミノ酸またはその塩との反応時のモル比(アミノ酸またはその塩/脂肪酸クロライド)が0.9~1.1となる量の脂肪酸クロライドを、前記第1の供給口とは異なる第2の供給口から前記送液管中に供給する工程と、前記アミノ酸またはその塩、前記アルカリ、および前記脂肪酸クロライドを、前記送液管中の撹拌羽根を回転数1,000~6,000rpmで回転させて混合して、反応温度65~80℃となるように反応させる工程と、を有する、N-アシルアミノ酸系界面活性剤の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸またはその塩と、アルカリとを、35~50℃に加温して、第1の供給口から送液管中に供給する工程と、
アミノ酸またはその塩との反応時のモル比(アミノ酸またはその塩/脂肪酸クロライド)が0.9~1.1となる量の脂肪酸クロライドを、前記第1の供給口とは異なる第2の供給口から前記送液管中に供給する工程と、
前記アミノ酸またはその塩、前記アルカリ、および前記脂肪酸クロライドを、前記送液管中の撹拌羽根を回転数1,000~6,000rpmで回転させて混合して、反応温度65~80℃となるように反応させる工程と、
を有する、N-アシルアミノ酸系界面活性剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N-アシルアミノ酸系界面活性剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
N-アシルアミノ酸系界面活性剤は、シャンプーやボディソープなどの洗浄成分として広く用いられている。N-アシルアミノ酸系界面活性剤は、一般的には、脂肪酸クロライドとアミノ酸をアルカリ存在下で反応させるショッテン・バウマン反応によって製造される。しかしながら、反応させるアミノ酸の種類によっては、反応率の低い場合があり、これに伴って、洗浄成分として用いた時に毛髪や皮膚に対してすすぎ時にきしみやつっぱりを生じる場合がある。
【0003】
このような課題に対して、例えば、特許文献1には、脂肪酸塩化アシルと酸性アミノ酸、アルカリとを反応させる際に、少量の中性アミノ酸を加える製造方法が開示されている。特許文献1では、本方法によって、反応率を大幅に高めている。
【0004】
一方、特許文献1の製造方法は、釜に原料を仕込んで反応させるバッチ式であり、出来高は釜の大きさに依存する。これに対し、化合物の効率的な製造方法として、近年、フローリアクターなどを用いた連続生産も提案されている。このような装置を用いた製造方法はN-アシルアミノ酸系界面活性剤の製造においても利用されている。例えば、特許文献2には、脂肪酸クロライドとアミノ酸、タンパク質水解物などの界面活性剤前駆体または非イオン界面活性剤をアルカリ存在下で、ミキサーを組み込んでいる循環管内で反応させる製造方法が開示されている。特許文献2では、本方法によって、有機溶媒を用いることなく効率的に反応させている。また、特許文献3には、脂肪族ハロゲン化物とアミノ酸、アルカリを、撹拌羽根によって混合するダイナミックミキサーを通し、循環管内で反応させる製造方法が開示されている。特許文献3では、本方法によって、発泡なく、均一に反応させている。しかしながら、これらの文献に記載の方法では循環管内で反応させており、フローリアクターなどを用いた連続的な生産には達していない場合がある。また、反応時間が長いことで、臭気を生じる場合があり、これに伴って、洗浄成分として用いた時に洗浄後の香りを損ない、洗ったという実効感に劣る場合がある。
【0005】
この臭気の課題に対して、洗浄剤組成物への他の成分の配合によって解決する方法も報告されている。例えば、特許文献4には、アミノ酸系界面活性剤と緑茶、およびセラミド類似成分を含有することにより、アミノ酸系界面活性剤に由来する原料臭を抑えた皮膚洗浄用組成物が開示されている。しかしながら、特許文献4の組成物は、特定の香り成分でしか原料臭を抑えることはできず、パーソナライズに注目が集まっている現在の洗浄剤組成物のニーズに対応できない場合がある。
【0006】
これに対して、特許文献5には、脂肪族ハライドとアミノ酸、アルカリを管型反応器中、最高反応温度40~60℃で反応させる製造方法が開示されている。特許文献5の方法における管型反応器には撹拌羽根によって混合するラインミキサーも含まれており、これによって、連続的な生産を可能としている。また、反応時間も短縮されるため、臭気の発生を抑えることができる。しかしながら、特許文献5の方法では反応液を高濃度とした場合の粘度の増加や、クラフト点の高いN-アシルアミノ酸系界面活性剤の製造における析出、に起因する送液不良を引き起こす場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2016-539951号公報
【特許文献2】特表2004-525210号公報
【特許文献3】特表2004-529084号公報
【特許文献4】特開2003-321328号公報
【特許文献5】特開平6-256276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのため、高濃度またはクラフト点の高い反応液においても送液できるとともに、高い反応率を示すことですすぎ時にきしみやつっぱりを生じず、連続生産とすることで臭気の発生を抑えたN-アシルアミノ酸系界面活性剤の製造方法が求められている。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、N-アシルアミノ酸系界面活性剤の製造方法であって、高濃度またはクラフト点の高い反応液においても送液できるとともに、高い反応率を示すことですすぎ時にきしみやつっぱりが生じにくいN-アシルアミノ酸系界面活性剤を製造することができ、連続生産とすることで臭気の発生を抑えたN-アシルアミノ酸系界面活性剤を製造することができる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明者らが鋭意検討した結果、アミノ酸、アルカリ、および脂肪酸クロライドを、特定のモル比、供給温度で送液管内に供給し、送液管内に撹拌羽根によって混合するミキサーを組み込み、特定の回転数、混合後の反応温度で反応させることによって、高濃度またはクラフト点の高い反応液においても送液できるとともに、高い反応率を示すことですすぎ時にきしみやつっぱりを生じず、連続生産とすることで臭気の発生を抑えたN-アシルアミノ酸系界面活性剤の製造方法を見出し、本発明の完成に至ったものである。
【0011】
すなわち本発明は、以下のものである。
アミノ酸またはその塩と、アルカリとを、35~50℃に加温して、第1の供給口から送液管中に供給する工程と、
アミノ酸またはその塩との反応時のモル比(アミノ酸またはその塩/脂肪酸クロライド)が0.9~1.1となる量の脂肪酸クロライドを、前記第1の供給口とは異なる第2の供給口から前記送液管中に供給する工程と、
前記アミノ酸またはその塩、前記アルカリ、および前記脂肪酸クロライドを、前記送液管中の撹拌羽根を回転数1,000~6,000rpmで回転させて混合して、反応温度65~80℃となるように反応させる工程と、
を有する、N-アシルアミノ酸系界面活性剤の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のN-アシルアミノ酸系界面活性剤の製造方法は、高濃度またはクラフト点の高い反応液においても送液できるとともに、高い反応率を示すことですすぎ時にきしみやつっぱりが生じにくいN-アシルアミノ酸系界面活性剤を製造することができ、連続生産とすることで臭気の発生を抑えたN-アシルアミノ酸系界面活性剤を製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態におけるN-アシルアミノ酸系界面活性剤の製造に使用する装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0015】
なお、本明細書において記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限および下限)の数値を含むものとする。例えば、「35~50」は35以上かつ50以下を表す。
【0016】
(装置)
図1は、本実施形態におけるN-アシルアミノ酸系界面活性剤の製造に使用する装置の構成を示す模式図である。
【0017】
装置100は、アミノ酸またはその塩、およびアルカリを貯留する第1貯留部110と、脂肪酸クロライドを貯留する第2貯留部120と、流通途中に撹拌機132を有する送液管130と、生成物を貯留する第3貯留部140と、を有する。
【0018】
第1貯留部110は、第1送液管112を介して送液管130に接続されている。第1送液管112には、アミノ酸またはその塩、およびアルカリを、第1貯留部110から送液管130に送液するための送液ポンプ114が配置されている。
【0019】
第2貯留部120は、第2送液管122を介して送液管130に接続されている。第2送液管122には、脂肪酸クロライドを第2貯留部120から送液管130に送液するための送液ポンプ124が配置されている。
【0020】
第3貯留部は、第3送液管142を介して送液管130に接続されている。
【0021】
第1貯留部110および第2貯留部120は、上記の物質を必要に応じて混合しながら貯留できるものであればよく、たとえば加温できる釜、タンク、およびコンテナなどとすることができる。第1貯留部110および第2貯留部120は、これらの物質を事前に混合するための撹拌羽根を有してもよい。
【0022】
第3貯留部は、送液管130からの生成物を貯留できるものであればよく、釜、タンク、およびコンテナなどとすることができる。
【0023】
送液管130の上流側入口には、T字管やY字管などの3分岐した送液管134が配置されている。3分岐のうち、1つが第1送液管112に接続されて第1の供給口116となり、別の1つが第2送液管122に接続されて第2の供給口126となり、さらに別の1つが、第1送液管112および第2送液管122から送液された物質を撹拌機132へと流通させる流通口136となる。
【0024】
送液管130の、3分岐した送液管134よりも下流側には、撹拌羽根を有する撹拌機132が配置されている。撹拌機132は、インラインミキサー(Silverson Machines Ltd.)、パイプラインホモミクサー(プライミックス株式会社)などの撹拌羽根を有する撹拌機とすることができる。
【0025】
(第1の工程:アミノ酸またはその塩、およびアルカリの供給)
第1の工程では、アミノ酸またはその塩、およびアルカリを、第1の供給口116から送液管130に供給する。
【0026】
上記したアミノ酸またはその塩としては、例えば、「第1級~第3級のアミノ基と、カルボン酸またはスルホン酸を同一分子内に有する化合物、またはその塩」が挙げられる。この「第1級~第3級のアミノ基と、カルボン酸またはスルホン酸を同一分子内に有する化合物、またはその塩」としては、例えば、動植物から抽出、精製され、もしくは微生物などによる発酵により得られる酸性または中性アミノ酸またはその塩や、化学合成や酵素反応により得られる酸性または中性アミノ酸、アミノエタンスルホン酸またはその塩が挙げられる。
【0027】
上記した酸性または中性アミノ酸の具体例としては、例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、アラニン、サルコシン(N-メチルグリシン)、β-アラニン、N-メチル-β-アラニンなどが挙げられる。これらのうち、光学異性を有する場合は、L体、D体、ラセミ体のいずれをも使用することができるが、L体およびラセミ体が好ましく用いられる。
【0028】
上記したアミノエタンスルホン酸としては、タウリン、N-メチルタウリンなどが挙げられる。
【0029】
上記した酸性または中性アミノ酸またはアミノエタンスルホン酸としては、好ましくはN-メチル-β-アラニン、N-メチルタウリンである。
【0030】
また、上記した酸性または中性アミノ酸またはアミノエタンスルホン酸の塩としては、特に限定されるものではなく、アルカリ金属塩、アルカノールアミン塩などが挙げられる。前記アルカリ金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられ、前記アルカノールアミン塩としては、例えば、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩などが挙げられる。中でも好ましくはアルカリ金属塩であり、ナトリウム塩が特に好ましい。
【0031】
上記したアルカリとしては、特に限定されるものではなく、アルカリ金属の水酸化物、アミン類などが挙げられる。前記アルカリ金属の水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられ、前記アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、アンモニア、ピリジンなどが挙げられる。中でも好ましくはアルカリ金属の水酸化物であり、水酸化ナトリウムが特に好ましい。
【0032】
上記アルカリの量は、アミノ酸またはその塩に対するモル比(アルカリ/アミノ酸またはその塩)が0.9~1.5であることが好ましく、1.0~1.4であることがより好ましい。
【0033】
上記アミノ酸またはその塩、およびアルカリは、溶媒に溶解させて供給してもよい。上記した溶媒としては、水などが挙げられる。上記アミノ酸またはその塩、およびアルカリの溶媒中の濃度は、18~30質量%であることが好ましく、22~26質量%であることがより好ましい。
【0034】
本工程におけるアミノ酸またはその塩、およびアルカリの供給温度は、35~50℃である。供給温度を35℃以上とすることで、アミノ酸またはその塩およびアルカリの溶液粘度を適度に低下して、第1送液管112を通しての送液を容易にすることができる。供給温度を50℃以下とすることで、混合後の反応温度が高くなることによる撹拌機132の故障を抑制することができる。アミノ酸またはその塩、およびアルカリは、第1貯留部110に設けた温度調整部(不図示)により上記温度に温度調整してもよい。
【0035】
(第2の工程:脂肪酸クロライドの供給)
第2の工程では、脂肪酸クロライドを、送液管130に供給する。
【0036】
脂肪酸クロライドは、第1の供給口116とは異なる第2の供給口126から、送液管130に供給される。アミノ酸またはその塩、およびアルカリを供給する第1の供給口116と、脂肪酸クロライドを供給する第2の供給口126と、を別の供給口として、これらを送液管の中で接触させることで、脂肪酸クロライドのアルカリや水などの溶媒による混合前の分解を抑制することができる。
【0037】
上記した脂肪酸クロライドとしては、直鎖または分岐の飽和または不飽和脂肪酸クロライドを1種または2種以上用いることができ、また混合脂肪酸クロライドを用いることもできる。
【0038】
上記脂肪酸クロライドの炭素数は、特に限定されないが、通常8~18である。具体例としては、カプリル酸クロライド、カプリン酸クロライド、ラウリン酸クロライド、ミリスチン酸クロライド、パルミチン酸クロライド、イソパルミチン酸クロライド、ステアリン酸クロライド、イソステアリン酸クロライド、オレイン酸クロライド、ヤシ油脂肪酸クロライド、パーム油脂肪酸クロライド、パーム核油脂肪酸クロライドなどが挙げられる。中でも好ましくは、カプリン酸クロライド、ラウリン酸クロライド、ヤシ油脂肪酸クロライド、パーム油脂肪酸クロライド、パーム核油脂肪酸クロライドである。
【0039】
第1の工程で供給するアミノ酸またはその塩と、第2の工程で供給する脂肪酸クロライドとの反応時のモル比(アミノ酸またはその塩/脂肪酸クロライド)は、0.9~1.1であり、好ましくは1.0~1.1である。上記モル比が0.9以上であると、反応率が十分に高まり、すすぎ時のきしみ感やつっぱり感が低減されたN-アシルアミノ酸系界面活性剤を得られる。上記モル比が1.1以下であると、未反応のアミノ酸またはその塩が生じにくく、原料の無駄を抑制することができる。
【0040】
本工程における脂肪酸クロライドの供給温度は、20~40℃である。好ましくは20~30℃である。脂肪酸クロライドは、第2貯留部120に設けた温度調整部(不図示)により上記温度に温度調整してもよい。
【0041】
(第3の工程:撹拌および反応)
第3の工程では、送液管130中の撹拌機132が有する撹拌羽根を回転させて上記アミノ酸またはその塩、上記アルカリ、および上記脂肪酸クロライドを混合し、反応させる。
【0042】
混合する際の上記した撹拌羽根の回転数は、1,000~6,000rpmであり、好ましくは2,000~5,000rpmである。上記回転数を1,000rpm以上とすることで、反応率が十分に高まり、臭気、すすぎ時のきしみ感やつっぱり感が低減されたN-アシルアミノ酸系界面活性剤を得られる。上記回転数を6,000rpm以下とすることで、反応液内への泡の発生を抑制して反応率の低下を抑制し、すすぎ時のきしみ感やつっぱり感が低減されたN-アシルアミノ酸系界面活性剤を得られる。
【0043】
混合後の反応温度は、65~80℃である。反応温度を60℃以上とすることで、高濃度またはクラフト点の高い反応液においても第3送液管142を送液しやすくすることができる。反応温度を80℃以下とすることで、撹拌機132の故障を抑制することができる。
【0044】
上記の各工程は、送液管130の中の撹拌機132の一方側から原料であるアミノ酸またはその塩、アルカリ、および脂肪酸クロライドを連続的に供給し、他方側から生成物であるN-アシルアミノ酸系界面活性剤を連続的に排出して、連続的に行うことができる。
【0045】
このようにして得られた反応液は、固形分濃度を32~45質量%とすることができ、35~42質量%とすることが好ましい。
【実施例0046】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0047】
<界面活性剤の製造>
以下に記載の反応率は、高速液体クロマトグラフィー測定の結果より、アミノ酸と反応しなかった脂肪酸クロライドが加水分解して形成した脂肪酸のモル数を計算し、式(1)を使用して算出した。
【0048】
【0049】
〔測定条件〕
カラム:Wakosil-II 5C18HG(3.0mm(直径)×150mm)
溶離液:0.1M リン酸二水素ナトリウム緩衝液(pH2.1±0.1)とメタノールの1:3(体積比)溶液
流速:1mL/分
検出器:紫外検出器210nm
【0050】
(合成例1:N-ヤシ油脂肪酸アシル-N-メチルタウリンナトリウム)
40重量%N-メチルタウリンナトリウム:48重量%水酸化ナトリウム水溶液:イオン交換水=47.1:13.3:39.6(重量比)となるように混合し、45℃に加温したアミノ酸混合液を調製した。このアミノ酸混合液を第1の供給口116、ヤシ油脂肪酸クロライドを第2の供給口126から、モル比(N-メチルタウリンナトリウム/ヤシ油脂肪酸クロライド)が1.04となるように送液ポンプ114および124を用いて各々送液管130内に送り、撹拌機132であるインラインミキサー(L5M-A Verso、Silverson社製)に導入した。2液の衝突はインラインミキサー到達の直前とし、インラインミキサーの回転数を4,000rpmで混合した。これによって、反応温度77℃のN-ヤシ油脂肪酸アシル-N-メチルタウリンナトリウム水溶液を得た。得られた反応生成物水溶液の固形分濃度は40重量%であり、反応率は92.3%であった。
【0051】
(合成例2:N-ヤシ油脂肪酸アシル-N-メチルタウリンナトリウム)
40重量%N-メチルタウリンナトリウム:48重量%水酸化ナトリウム水溶液:イオン交換水=43.3:12.2:44.5(重量比)となるように混合し、43℃に加温したアミノ酸混合液を調製した。モル比(N-メチルタウリンナトリウム/ヤシ油脂肪酸クロライド)が0.95となるように合成例1と同様に送液してインラインミキサーに導入し、回転数を4,000rpmで混合した。これによって、反応温度72℃のN-ヤシ油脂肪酸アシル-N-メチルタウリンナトリウム水溶液を得た。得られた反応生成物水溶液の固形分濃度は40重量%であり、反応率は90.7%であった。
【0052】
(合成例3:N-ヤシ油脂肪酸アシル-N-メチルタウリンナトリウム)
40重量%N-メチルタウリンナトリウム:48重量%水酸化ナトリウム水溶液:イオン交換水=43.3:12.2:44.5(重量比)となるように混合し、42℃に加温したアミノ酸混合液を調製した。モル比(N-メチルタウリンナトリウム/ヤシ油脂肪酸クロライド)が1.04となるように合成例1と同様に送液してインラインミキサーに導入し、回転数を5,500rpmで混合した。これによって、反応温度79℃のN-ヤシ油脂肪酸アシル-N-メチルタウリンナトリウム水溶液を得た。得られた反応生成物水溶液の固形分濃度は42重量%であり、反応率は91.1%であった。
【0053】
(合成例4:N-ラウロイル-N-メチル-β-アラニンナトリウム)
40重量%N-メチル-β-アラニンナトリウム:48重量%水酸化ナトリウム水溶液:イオン交換水=37.0:10.3:52.7(重量比)となるように混合し、38℃に加温したアミノ酸混合液を調製した。モル比(N-メチル-β-アラニンナトリウム/ラウリン酸クロライド)が1.05となるように合成例1と同様に送液してインラインミキサーに導入し、回転数を4,000rpmで混合した。これによって、反応温度69℃のN-ラウロイル-N-メチル-β-アラニンナトリウム水溶液を得た。得られた反応生成物水溶液の固形分濃度は36重量%であり、反応率は95.1%であった。
【0054】
(合成例5:N-ラウロイル-N-メチルグリシンナトリウム)
40重量%N-メチルグリシンナトリウム:48重量%水酸化ナトリウム水溶液:イオン交換水=35.3:10.9:53.8(重量比)となるように混合し、37℃に加温したアミノ酸混合液を調製した。モル比(N-メチルグリシンナトリウム/ラウリン酸クロライド)が1.07となるように合成例1と同様に送液してインラインミキサーに導入し、回転数を4,000rpmで混合した。これによって、反応温度72℃のN-ラウロイル-N-メチルグリシンナトリウム水溶液を得た。得られた反応生成物水溶液の固形分濃度は36重量%であり、反応率は93.2%であった。
【0055】
(比較合成例1:N-ヤシ油脂肪酸アシル-N-メチルタウリンナトリウム)
40重量%N-メチルタウリンナトリウム:48重量%水酸化ナトリウム水溶液:イオン交換水=47.1:13.3:39.6(重量比)となるように混合し、40℃に加温したアミノ酸混合液を調製した。モル比(N-メチルタウリンナトリウム/ヤシ油脂肪酸クロライド)が1.04となるように合成例1と同様に送液してインラインミキサーに導入し、回転数を500rpmで混合した。これによって、反応温度73℃のN-ヤシ油脂肪酸アシル-N-メチルタウリンナトリウム水溶液を得た。得られた反応生成物水溶液の固形分濃度は40重量%であり、反応率は70.4%であった。
【0056】
(比較合成例2:N-ヤシ油脂肪酸アシル-N-メチルタウリンナトリウム)
40重量%N-メチルタウリンナトリウム:48重量%水酸化ナトリウム水溶液:イオン交換水=47.1:13.3:39.6(重量比)となるように混合し、42℃に加温したアミノ酸混合液を調製した。モル比(N-メチルタウリンナトリウム/ヤシ油脂肪酸クロライド)が1.04となるように合成例1と同様に送液してインラインミキサーに導入し、回転数を8,000rpmで混合した。これによって、反応温度74℃のN-ヤシ油脂肪酸アシル-N-メチルタウリンナトリウム水溶液を得た。得られた反応生成物水溶液の固形分濃度は40重量%であり、反応率は78.2%であった。
【0057】
上記の合成例1~5および比較合成例1、2の各界面活性剤の製造に用いた原料、反応条件、反応率を表1および表2に示した。
【0058】
【0059】
【0060】
<界面活性剤の評価>
以下に合成例および比較合成例の各界面活性剤において、臭気、すすぎ時のきしみ感の抑制について、評価を行った。
【0061】
(1)臭気
20~50歳の男女各10名をパネラーとし、合成例1~5および比較合成例1、2の各界面活性剤1gを手に取って前腕および手指を洗っている最中の臭いを嗅ぎ、下記の絶対評価基準に従って評価した。各パネラーの評価の合計点を求め、評価の合計点に基づき、下記評価基準により「◎」、「○」、「△」、「×」の4段階にて評価した。前記評価が「◎」である場合および「○」である場合を合格とした。
【0062】
<絶対評価基準>
(評点):(評価)
2点:洗浄中に全く臭気を感じなかった
1点:洗浄中にやや臭気を感じた
0点:洗浄中に強い臭気を感じた
<評価の合計による4段階評価>
◎:合計点30点以上
○:合計点20点以上、30点未満
△:合計点10点以上、20点未満
×:合計点10点未満
【0063】
(2)すすぎ時のきしみ感やつっぱり感の抑制
20~50歳の男女各10名をパネラーとし、合成例1~5および比較合成例1、2の各界面活性剤1gを手に取って前腕および手指を洗い、40℃の湯水を用いてすすいだ時の感触について、下記の絶対評価基準に従って評価した。各パネラーの評価の合計点を求め、評価の合計点に基づき、下記評価基準により「◎」、「○」、「△」、「×」の4段階にて評価した。前記評価が「◎」である場合および「○」である場合を合格とした。
【0064】
<絶対評価基準>
(評点):(評価)
2点:すすぎ時に全くきしみやつっぱりがないと感じた
1点:すすぎ時にややきしみやつっぱりがあると感じた
0点:すすぎ時にとてもきしみやつっぱりがあると感じた
<評価の合計による4段階評価>
◎:合計点30点以上
○:合計点20点以上、30点未満
△:合計点10点以上、20点未満
×:合計点10点未満
【0065】
上記(1)、(2)の評価結果を、表3に示した。
【0066】
【0067】
実施例1~5は、いずれも高い反応率を示し、臭気、すすぎ時のきしみやつっぱりの抑制が良好であった。
【0068】
一方、比較例1は、インラインミキサーの回転数が小さいため、反応率が不十分であり、臭気、すすぎ時のきしみ感やつっぱり感の抑制に劣った。
【0069】
比較例2は、インラインミキサーの回転数が大きいため、反応率が不十分であり、すすぎ時のきしみ感やつっぱり感の抑制に劣った。
本発明は、高濃度またはクラフト点の高い反応液においても送液できるとともに、高い反応率を示すことですすぎ時にきしみやつっぱりを生じず、連続生産とすることで臭気の発生を抑えたN-アシルアミノ酸系界面活性剤を提供できる。