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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144083
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】連続線コイル及びステータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/28 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H02K3/28 N
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023213826
(22)【出願日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】202310310909.6
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】大曲 賢一
(72)【発明者】
【氏名】吉村 拓郎
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603AA09
5H603CA01
5H603CA05
5H603CD06
5H603CD26
(57)【要約】
【課題】ターン数が奇数及び偶数のいずれの場合にも容易に対応できるとともに、コイルエンド部を小型化できる連続線コイルを提供すること。
【解決手段】ステータコアの複数のスロットに嵌合する複数のスロット嵌合部と、複数のスロット嵌合部の延び方向の両端部にそれぞれ配置され、隣り合うスロット嵌合部同士を接続する複数のコイルエンド部と、を有し、コイルエンド部が導体を厚み方向に折り返すことによって形成されるシート状の連続線コイルにおいて、ステータコアの1周分以上の周回長さに対応可能な数の複数のスロット嵌合部を有する2層コイル部と、2層コイル部に連続して設けられ、ステータコアの1周分の周回長さに対応可能な数の複数のスロット嵌合部を有する1層コイル部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアの複数のスロットに嵌合する複数のスロット嵌合部と、前記複数のスロット嵌合部の延び方向の両端部にそれぞれ配置され、隣り合う前記スロット嵌合部同士を接続する複数のコイルエンド部と、を有し、前記コイルエンド部が導体を厚み方向に折り返すことによって形成されるシート状の連続線コイルにおいて、
前記ステータコアの1周分以上の周回長さに対応可能な数の前記複数のスロット嵌合部を有する2層コイル部と、
前記2層コイル部に連続して設けられ、前記ステータコアの1周分の周回長さに対応可能な数の前記複数のスロット嵌合部を有する1層コイル部と、を備える、ことを特徴とする連続線コイル。
【請求項2】
前記2層コイル部は、折り返し部を境に折り返された第1の層及び第2の層によって構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の連続線コイル。
【請求項3】
前記第1の層の前記コイルエンド部と、前記第2の層の前記コイルエンド部とは、前記2層コイル部の長さ方向に交互にずれて配置されている、請求項2に記載の連続線コイル。
【請求項4】
前記1層コイル部は、前記第1の層及び前記第2の層のいずれか一方の層に連続している、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の連続線コイル。
【請求項5】
複数のスロットを有するステータコアと、前記複数のスロットに装着されるシート状の連続線コイルと、を備え、
前記連続線コイルは、前記複数のスロットに嵌合する複数のスロット嵌合部と、前記複数のスロット嵌合部の延び方向の両端部にそれぞれ配置され、隣り合う前記スロット嵌合部同士を接続する複数のコイルエンド部と、を有し、前記コイルエンド部が導体を厚み方向に折り返すことによって形成されるステータにおいて、
前記連続線コイルは、
前記ステータコアの1周分以上の周回長さに対応可能な数の前記複数のスロット嵌合部を有する2層コイル部と、
前記2層コイル部に連続して設けられ、前記ステータコアの1周分の周回長さに対応可能な数の前記複数のスロット嵌合部を有する1層コイル部と、を備える、ことを特徴とするステータ。
【請求項6】
前記2層コイル部は、折り返し部を境に折り返された第1の層及び第2の層によって構成される、ことを特徴とする請求項5に記載のステータ。
【請求項7】
前記第1の層の前記コイルエンド部と、前記第2の層の前記コイルエンド部とは、前記2層コイル部の長さ方向に交互にずれて配置されている、請求項6に記載のステータ。
【請求項8】
前記1層コイル部は、前記第1の層及び前記第2の層のいずれか一方の層に連続している、ことを特徴とする請求項6又は7に記載のステータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続線コイル及びステータに関する。
【背景技術】
【0002】
電動機、発電機等の回転電機のステータは、ステータコアと、ステータコアのスロットに装着されるコイルと、によって構成される。コイルとしては、一般に、セグメントコイルと連続線コイルとが知られている。セグメントコイルは、U字状に成形されたセグメントコンダクタを2つのスロットに挿入した後、両端部を溶接することによって、ステータコアに装着される。連続線コイルは、複数本の導体によって直線状の複数のスロット嵌合部を有するシート状のコイルを成形し、各スロット嵌合部をそれぞれスロットに嵌合することによって、溶接することなくステータコアに装着される。
【0003】
連続線コイルは、並列する複数本の導体の直線部分を傾斜状に折り曲げる工程と、その傾斜状の折り曲げ部を中央部で折り返すことによって山型状のコイルエンド部を成形する工程と、を複数回繰り返すことによって、長尺なシート状に製造される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-58076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
連続線コイルとしては、1枚のシート状のコイルが、ステータの1周分に対応する1層(1ターン)で形成されるパターン(フラットワインディングと呼ばれることがある。)と、1枚のシート状のコイルが、ステータの2周分に対応する2層(2ターン)で形成されるパターン(ソードワインディングと呼ばれることがある。)と、のいずれかのパターンが存在する。
【0006】
フラットワインディングの連続線コイルは、1枚で1ターンを形成するため、所望のターン数分の連続線コイルを使用し、ステータコアのスロットに重ねるように装着することによって、ターン数が奇数及び偶数のいずれの場合にも対応可能である。しかし、導体を折り返すことによって成形される連続線コイルのコイルエンド部は、2ターン分の厚みを有するため、コイルエンド部の厚みはターン数の2倍になる。そのため、フラットワインディングの連続線コイルを使用した場合、コイルエンド部を小型化できず、コンパクトなステータを構成することが困難である。
【0007】
一方、ソードワインディングの連続線コイルでは、コイルエンド部は、ターン数とほぼ同等の厚みを有するため、コイルエンド部の小型化が可能である。しかし、ソードワインディングの連続線コイルは2層構造であるため、対応可能なターン数は偶数に制約される。
【0008】
本発明は、ターン数が奇数及び偶数のいずれの場合にも容易に対応できるとともに、コイルエンド部を小型化できる連続線コイル、及びその連続線コイルを用いたステータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明に係る連続線コイルは、ステータコア(例えば、後述のステータコア31)の複数のスロット(例えば、後述のスロット34)に嵌合する複数のスロット嵌合部(例えば、後述のスロット嵌合部21)と、前記複数のスロット嵌合部の延び方向の両端部にそれぞれ配置され、隣り合う前記スロット嵌合部同士を接続する複数のコイルエンド部(例えば、後述のコイルエンド部22)と、を有し、前記コイルエンド部が導体(例えば、後述の導体2)を厚み方向に折り返すことによって形成されるシート状の連続線コイル(例えば、後述の連続線コイル1)において、前記ステータコアの1周分以上の周回長さに対応可能な数の前記複数のスロット嵌合部を有する2層コイル部(例えば、後述の2層コイル部11)と、前記2層コイル部に連続して設けられ、前記ステータコアの1周分の周回長さに対応可能な数の前記複数のスロット嵌合部を有する1層コイル部(例えば、後述の1層コイル部12)と、を備える。
【0010】
(2) 上記(1)に記載の連続線コイルにおいて、前記2層コイル部は、折り返し部(例えば、後述の折り返し部F)を境に折り返された第1の層(例えば、後述の第1の層111)及び第2の層(例えば、後述の第2の層112)によって構成される。
【0011】
(3) 上記(2)に記載の連続線コイルにおいて、前記第1の層の前記コイルエンド部(例えば、後述のコイルエンド部22A)と、前記第2の層の前記コイルエンド部(例えば、後述のコイルエンド部22B)とは、前記2層コイル部の長さ方向に交互にずれて配置されている。
【0012】
(4) 上記(2)又は(3)に記載の連続線コイルにおいて、前記1層コイル部は、前記第1の層及び前記第2の層のいずれか一方の層(例えば、後述の第2の層112)に連続している。
【0013】
(5) 本発明に係るステータは、複数のスロット(例えば、後述のスロット34)を有するステータコア(例えば、後述のステータコア31)と、前記複数のスロット内に装着されるシート状の連続線コイル(例えば、後述の連続線コイル1)と、を備え、前記連続線コイルは、前記複数のスロットに嵌合する複数のスロット嵌合部(例えば、後述のスロット嵌合部21)と、前記複数のスロット嵌合部の延び方向の両端部にそれぞれ配置され、隣り合う前記スロット嵌合部同士を接続する複数のコイルエンド部(例えば、後述のコイルエンド部22)と、を有し、前記コイルエンド部が導体(例えば、後述の導体2)を厚み方向に折り返すことによって形成されるステータ(例えば、後述のステータ3)において、前記連続線コイルは、前記ステータコアの1周分以上の周回長さに対応可能な数の前記複数のスロット嵌合部を有する2層コイル部(例えば、後述の2層コイル部11)と、前記2層コイル部に連続して設けられ、前記ステータコアの1周分の周回長さに対応可能な数の前記複数のスロット嵌合部を有する1層コイル部(例えば、後述の1層コイル部12)と、を備える。
【0014】
(6) 上記(5)に記載のステータにおいて、前記2層コイル部は、折り返し部(例えば、後述の折り返し部F)を境に折り返された第1の層(例えば、後述の第1の層111)及び第2の層(例えば、後述の第2の層112)によって構成される。
【0015】
(7) 上記(6)に記載のステータにおいて、前記第1の層の前記コイルエンド部(例えば、後述のコイルエンド部22A)と、前記第2の層の前記コイルエンド部(例えば、後述のコイルエンド部22B)とは、前記2層コイル部の長さ方向に交互にずれて配置されている。
【0016】
(8) 上記(6)又は(7)に記載のステータにおいて、前記1層コイル部は、前記第1の層及び前記第2の層のいずれか一方の層(例えば、後述の第2の層112)に連続している。
【発明の効果】
【0017】
上記(1)に記載の連続線コイルによれば、2層コイル部の長さを適宜設定することによって、ターン数が奇数及び偶数のいずれの場合にも容易に対応できるとともに、コイルエンド部の小型化が可能である。
【0018】
上記(2)に記載の連続線コイルによれば、2層コイル部を容易に成形可能である。
【0019】
上記(3)に記載の連続線コイルによれば、2層コイル部の厚みを最小限に抑えることができる。
【0020】
上記(4)に記載の連続線コイルによれば、2層コイル部と1層コイル部とをステータコアに容易に装着可能である。
【0021】
上記(5)に記載のステータによれば、連続線コイルにおける2層コイル部の長さを適宜設定することによって、ターン数が奇数及び偶数のいずれのステータも容易に形成できるとともに、コイルエンド部が小型化されたコンパクトなステータを構成することができる。
【0022】
上記(6)に記載のステータによれば、連続線コイルの2層コイル部を容易に成形可能である。
【0023】
上記(7)に記載のステータによれば、連続線コイルの2層コイル部の厚みを最小限に抑えることができる。
【0024】
上記(8)に記載のステータによれば、2層コイル部と1層コイル部とを有する連続線コイルをステータコアに容易に装着可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一実施形態に係る連続線コイルの正面図である。
図2】一実施形態に係る連続線コイルを模式的に示す平面図である。
図3】一実施形態に係る連続線コイルを装着したステータを示す平面図である。
図4図1中のA部のコイルエンド部の平面図である。
図5図1中のB部のコイルエンド部の平面図を模式的に示す図である。
図6】7ターンの連続線コイルを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1及び図2に示すように、連続線コイル1は、X方向に沿って長尺なシート状に形成される。シート状の連続線コイル1は、図3に示すように、ステータコア31のスロット34に装着されてステータ3を構成する。
【0027】
ステータコア31は、中央の軸孔32に向けて突出する複数のティース33を有する。隣り合うティース33,33の間に、放射状に配列されて軸孔32に向けて開口するスロット34が形成される。図3において、連続線コイル1は、実線及び破線からなる矢印線によって模式的に示されている。
【0028】
ここで、図中に示す連続線コイル1の方向について次のように定義する。X方向は、連続線コイル1の長さ方向を示す。X方向は、図3に示すステータコア31の周方向D1に対応する。Y方向は、連続線コイル1の幅方向を示す。Y方向は、ステータコア31の軸方向に対応する。ステータコア31の軸方向は、図3の紙面に対する垂直方向である。Z方向は、連続線コイル1の厚み方向を示す。Z方向は、図3に示すステータコア31の径方向D2に対応する。
【0029】
連続線コイル1についてさらに詳細に説明する。連続線コイル1は、それぞれ折り曲げ成形された複数本の導体2によって構成される。導体2は、例えば、銅線等の金属線である。本実施形態の連続線コイル1は、6本の導体2によって構成されている。導体2は、複数のスロット嵌合部21と、複数のコイルエンド部22と、をそれぞれ有するように折り曲げ形成される。スロット嵌合部21は、ステータコア31のスロット34内に嵌合する部位であり、直線状に形成される。コイルエンド部22は、ステータコア31のスロット34から軸方向外側に露出する部位であり、導体2を連続線コイル1の厚み方向に折り返すことによって山型状に成形される。
【0030】
スロット嵌合部21及びコイルエンド部22が折り曲げ成形された1本の導体2において、複数本のスロット嵌合部21は、ステータコア31の6スロットおきの間隔に対応する間隔で平行に並列するように設けられている。コイルエンド部22は、ステータコア31の6スロットおきに配置される2本のスロット嵌合部21の延び方向の一端部同士及び他端部同士を、連続線コイル1の長さ方向に交互に接続している。
【0031】
折り曲げ成形後の6本の導体2は、それぞれのスロット嵌合部21がステータコア31のスロット34の配列ピッチに略等しいピッチとなるように、連続線コイル1の長さ方向に沿って位置をずらして重ねられている。これによって、連続線コイル1の全てのスロット嵌合部21は、ステータコア31のスロット34の配列ピッチに略等しいピッチで、連続線コイル1の長さ方向に沿って並列して配列される。
【0032】
連続線コイル1は、図1及び図2に示すように、2層コイル部11と、1層コイル部12と、によって構成される。2層コイル部11と1層コイル部12とは、連続線コイル1の長さ方向に連続している。すなわち、6本の導体2は、2層コイル部11と1層コイル部12とに亘って、途切れることなく連続している。
【0033】
2層コイル部11は、図3に示すように、第1の層111と第2の層112とからなる2層構造を有する。第1の層111と第2の層112とは、連続線コイル1の厚み方向に積層されている。2層コイル部11における6本の導体2は、スロット嵌合部21の配列ピッチを維持した状態で、折り返し部Fを境に連続線コイル1の長さ方向に折り返すことによって、第1の層111及び第2の層112を形成している。
【0034】
詳しくは、2層コイル部11における6本の導体2は、連続線コイル1の一方の端部E1からX1方向に沿って、スロット嵌合部21とコイルエンド部22とを交互に形成して第1の層111を構成した後、折り返し部Fで反転する。反転した6本の導体2は、X2方向に沿って、スロット嵌合部21とコイルエンド部22とを交互に形成して第2の層112を構成する。第1の層111及び第2の層112のそれぞれの複数のスロット嵌合部21は、配列ピッチを維持した状態で、連続線コイル1の厚み方向に積層されている。積層された2層コイル部11のスロット嵌合部21,21は、ステータコア31の同一のスロット34内に積層して装着される。
【0035】
図1に示す2層コイル部11の長さL1は、ステータコア31の1周分以上の周回長さを有する。したがって、2層コイル部11は、ステータコア31の1周分以上の周回長さに対応可能な数の複数のスロット嵌合部21を有する。具体的には、図3に示す本実施形態のステータコア31は、72個のスロット34を有する。そのため、本実施形態の2層コイル部11は、連続線コイル1の長さ方向に沿って見たとき、72か所以上のスロット嵌合部21を有する。2層コイル部11は、第1の層111と第2の層112とが積層された積層構造であるため、72か所以上のスロット嵌合部21は、連続線コイル1の厚み方向に2本ずつ積層されている。
【0036】
1層コイル部12は、図1及び図2に示すように、6本の導体2からなる単層構造を有する。1層コイル部12は、ステータコア31のスロット34の配列ピッチに略等しいピッチで配列される複数のスロット嵌合部21をそれぞれ有する。
【0037】
図1に示す1層コイル部12の長さL2は、ステータコア31の1周分の周回長さを有する。したがって、1層コイル部12は、ステータコア31の1周分の周回長さに対応可能な数の複数のスロット嵌合部21を有する。具体的には、本実施形態の1層コイル部12は、72本のスロット嵌合部21を有する。
【0038】
図4は、図1における連続線コイル1の1層コイル部12をA部において矢視する方向に見た平面図である。1層コイル部12における6本のコイルエンド部22からなる1つの組を観察したとき、導体2は、それぞれ折り返しの頂点22aで連続線コイル1の厚み方向に折り返されているため、コイルエンド部22は、1層分の導体2の厚みT1の2倍の厚みT2をそれぞれ有する。6本の導体2は、ステータコア31のスロット34の配列ピッチに略等しいピッチでずれて重ねられているため、6本のコイルエンド部22の頂点22a同士は、連続線コイル1の厚み方向には重なっていない。
【0039】
これに対し、図5は、図1における連続線コイル1の2層コイル部11をB部において矢視する方向に見た平面図を模式的に示している。図5におけるハッチング領域は、第1の層111の6本のコイルエンド部22Aの組を示し、白抜き領域は、第2の層112の6本のコイルエンド部22Bの組を示している。各組におけるコイルエンド部22A,22Bは、図4と同様の構造を有する。
【0040】
2層コイル部11において、第1の層111のコイルエンド部22Aの組と第2の層112のコイルエンド部22Bの組は、図5に示すように、連続線コイル1の厚み方向に重なることなく、連続線コイル1の長さ方向に交互にずれて配置される。第1の層111と第2の層112とは、単純に重ねられた積層構造ではなく、第1の層111及び第2の層112をそれぞれ構成する6本の導体2が、互いに編み込まれることによって積層されている。したがって、2層コイル部11は、第1の層111及び第2の層112の2層構造を有するものでありながらも、コイルエンド部22(22A,22B)の厚みは、1層コイル部12のコイルエンド部22と同様に、1層分の導体2の厚みT1の2倍の厚みT2を有する。
【0041】
連続線コイル1は、図3に示すように、各スロット嵌合部21をステータコア31のスロット34内に順次嵌合することによって、ステータコア31を周回するように装着される。図3において、実線は2層コイル部11を示し、破線は1層コイル部12を示している。この連続線コイル1において、2層コイル部11は、ステータコア31の1周分(1ターン分)の周回長さを有している。2層コイル部11は2層構造であるため、ステータコア31に2ターンを構成する。1層コイル部12は単層構造であるため、ステータコア31に1ターンを構成する。したがって、図3に示す連続線コイル1は、ステータコア31内に、(2層コイル部11:2ターン)+(1層コイル部:1ターン)=3ターンの奇数ターンのコイルを構成する。
【0042】
ここで、従来のフラットワインディングの連続線コイルと比較すると、1ターン分の連続線コイルのコイルエンド部の厚みは、導体が厚み方向に折り返されているため、2本分の厚みを有する。したがって、従来のフラットワインディングの3ターンの連続線コイルの場合、3ターン×2=6となり、コイルエンド部は、導体の6本分の厚みを有する。
【0043】
これに対し、本実施形態の連続線コイル1の場合、1ターン分の2層コイル部11と1層コイル部12とのコイルエンド部22は、図4及び図5に示すように、いずれも導体2の2倍の厚みT2を有するため、ステータコア31に装着された3ターンの連続線コイル1のコイルエンド部22の厚みは、(2層コイル部11:T2×1)+(1層コイル部:T2×1)=T2×2となり、導体2の4本分の厚みに抑えられる。そのため、コイルエンド部22が小型化されたコンパクトなステータ3が構成される。
【0044】
連続線コイル1は、2層コイル部11の長さを適宜設定することによって、さらにターン数を増加させることができる。図6は、ステータコア31の3周分の周回長さに設定された2層コイル部11を有する連続線コイル1を模式的に示している。この場合、連続線コイル1は7ターンを構成するが、連続線コイル1のコイルエンド部22の厚みは、(2層コイル部11:T2×3)+(1層コイル部:T2×1)=T2×4となり、導体2の8本分の厚みに抑えられる。
【0045】
また、例えば、2層コイル部11をステータコア31の2.5周分の周回長さに設定することによって、ステータコア31に偶数となる6ターン分のコイルを構成することができる。したがって、連続線コイル1は、奇数ターン及び偶数ターンのいずれにも対応可能である。以下の表に示すように、本発明に係る連続線コイル1よれば、ステータコア31内のターン数を奇数及び偶数のいずれに増加させても、従来技術に係るフラットワインディングの連続線コイルに比べて、コイルエンド部22の厚みを抑制することができる。なお、以下の表において、コイルエンド部の厚みは、導体の本数によって示されている。
【0046】
【表1】



【0047】
図3に示すステータ3において、連続線コイル1の1層コイル部12は、ステータコア31の最内層に配置されているが、これに限定されない。連続線コイル1の1層コイル部12は、ステータコア31の最外層に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 連続線コイル
11 2層コイル部
111 第1の層
112 第2の層
12 1層コイル部
2 導体
21 スロット嵌合部
22,22A,22B コイルエンド部
3 ステータ
31 ステータコア
34 スロット
F 折り返し部

図1
図2
図3
図4
図5
図6