(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144089
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】感放射線性組成物およびレジストパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20241003BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20241003BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/004 503A
G03F7/039 601
G03F7/20 503
G03F7/20 504
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216301
(22)【出願日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2023051889
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】丸山 研
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
【Fターム(参考)】
2H197CA09
2H197CA10
2H197HA03
2H197JA22
2H225AF23P
2H225AF24P
2H225AF25P
2H225AF28P
2H225AF48P
2H225AF52P
2H225AF56P
2H225AF68P
2H225AF71P
2H225AF99P
2H225AH11
2H225AH12
2H225AH14
2H225AH17
2H225AH19
2H225AH31
2H225AJ07
2H225AJ12
2H225AJ13
2H225AJ43
2H225AJ47
2H225AJ48
2H225AJ53
2H225AJ54
2H225AJ59
2H225AJ60
2H225AN11P
2H225AN38P
2H225AN39P
2H225AN44P
2H225BA02P
2H225BA26P
2H225CA12
2H225CB14
2H225CC03
2H225CC15
(57)【要約】
【課題】感度、解像性およびCDUに優れる感放射線性組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される第1構造単位を有する重合体と、アニオンおよび感放射線性オニウムカチオンを有する化合物とを含有し、上記重合体および上記化合物の少なくとも一方が、少なくとも1つの水素原子がヨウ素原子で置換された環構造を有する感放射線性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される第1構造単位を有する重合体と、
アニオンおよび感放射線性オニウムカチオンを有する化合物と
を含有し、
上記重合体および上記化合物の少なくとも一方が、少なくとも1つの水素原子がヨウ素原子で置換された環構造を有する感放射線性組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1は、水素原子、フッ素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基である。L
1は、単結合、-COO-または-CONH-である。Ar
1は、置換または非置換の芳香族炭化水素環から2個の水素原子を除いた基である。R
2は、酸解離性基である。)
【請求項2】
上記酸解離性基が多環の脂環を有しない請求項1に記載の感放射線性組成物。
【請求項3】
上記酸解離性基が芳香環または炭素-炭素二重結合を有する請求項1に記載の感放射線性組成物。
【請求項4】
上記酸解離性基が少なくとも1つの水素原子がヨウ素原子で置換された芳香環を有する請求項1に記載の感放射線性組成物。
【請求項5】
上記感放射線性オニウムカチオンが少なくとも1つの水素原子がフッ素原子またはフッ素原子含有基で置換された芳香環をさらに有する請求項1に記載の感放射線性組成物。
【請求項6】
上記重合体が少なくとも1つの水素原子がヨウ素原子で置換された環構造を含む第2構造単位をさらに有する請求項1に記載の感放射線性組成物。
【請求項7】
上記第2構造単位が有する上記環構造が少なくとも1つの水素原子がヨウ素原子で置換された芳香環である請求項6に記載の感放射線性組成物。
【請求項8】
基板に直接または間接に請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の感放射線性組成物を塗工する工程と、
上記塗工により形成されたレジスト膜を露光する工程と、
上記露光されたレジスト膜を現像する工程と
を備えるレジストパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性組成物およびレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィによる微細加工に用いられる感放射線性組成物は、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)等の遠紫外線、極端紫外線(EUV)(波長13.5nm)等の電磁波、電子線等の荷電粒子線などの放射線の照射により露光部に酸を発生させ、この酸を起点とする化学反応により露光部と非露光部との間に現像液に対する溶解速度に差異を生じさせることで基板上にレジストパターンを形成する。
【0003】
感放射線性組成物には、極端紫外線、電子線等の放射線に対する感度が良好であることに加え、解像度、CDU(Critical Dimension Uniformity)等に優れることが要求される。
【0004】
これらの要求に対しては、感放射線性組成物に用いられる重合体、酸発生剤およびその他の成分の種類、分子構造などが検討され、さらにその組み合わせについても詳細に検討されている(特開2010-134279号公報、特開2014-224984号公報および特開2016-047815号公報及び特開2021-009357号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-134279号公報
【特許文献2】特開2014-224984号公報
【特許文献3】特開2016-047815号公報
【特許文献4】特開2021-009357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レジストパターンのさらなる微細化に伴って上記性能の要求レベルはさらに高まっており、これらの要求を満たす感放射線性組成物が求められている。
【0007】
本発明の課題は、感度、解像性およびCDUに優れる感放射線性組成物および当該感放射線性組成物を用いたレジストパターン形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、下記式(1)で表される第1構造単位を有する重合体と、アニオンおよび感放射線性オニウムカチオンを有する化合物とを含有し、上記重合体および上記化合物の少なくとも一方が、少なくとも1つの水素原子がヨウ素原子で置換された環構造を有する感放射線性組成物である。
【化1】
(式(1)中、R
1は、水素原子、フッ素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基である。L
1は、単結合、-COO-または-CONH-である。Ar
1は、置換または非置換の芳香族炭化水素環から2個の水素原子を除いた基である。R
2は、酸解離性基である。)
【0009】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、基板に直接または間接に上述の当該感放射線性組成物を塗工する工程と、上記塗工により形成されたレジスト膜を露光する工程と、上記露光されたレジスト膜を現像する工程とを備えるレジストパターン形成方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の感放射線性組成物は、感度、解像性およびCDUに優れる。本発明のレジストパターン形成方法によれば、感度良く、解像性およびCDUに優れるレジストパターンを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の感放射線性組成物およびレジストパターン形成方法について詳説する。
【0012】
<感放射線性組成物>
当該感放射線性組成物は、後述する式(1)で表される構造単位を有する重合体(以下、「[A]重合体」ともいう)と、アニオンおよび感放射線性オニウムカチオンを有する化合物(以下、「[Z]化合物」ともいう)とを含有する。[A]重合体および[Z]化合物の少なくとも一方は、少なくとも1つの水素原子がヨウ素原子で置換された環構造(以下、「環構造(p)」ともいう)を有する。
【0013】
当該感放射線性組成物は、通常、有機溶媒(以下、「[D]有機溶媒」ともいう)を含有する。当該感放射線性組成物は、[A]重合体よりもフッ素原子含有率が大きい重合体(以下、「[F]重合体」ともいう)を含有していてもよい。当該感放射線性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲においてその他の任意成分を含有することができる。
【0014】
当該感放射線性組成物は、[A]重合体と[Z]化合物とを含有し、かつ[A]重合体および[Z]化合物の少なくとも一方が環構造(p)を有することで、感度、解像性およびCDUに優れる。当該感放射線性組成物が上記構成を備えることで上記効果を奏する理由は必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推察される。すなわち、ヨウ素原子は放射線の吸収効率が高く、[Z]化合物が環構造(p)を有することで、露光部において[Z]化合物からの酸の発生効率が向上すると考えられる。また、[A]重合体が環構造(p)を有する場合、露光部において[A]重合体からより多くの二次電子が放出され、この二次電子を受け取ることによっても[Z]化合物からの酸の発生効率が向上すると考えられる。その結果、当該感放射線性組成物は感度および解像性に優れると考えられる。さらに、[A]重合体が環構造(p)を有する場合には[A]重合体と[Z]化合物とが相互作用し、[Z]化合物が環構造(p)を有する場合には[Z]化合物分子間で相互作用するため、露光により発生した酸が非露光部へ拡散することが適度に抑制されると考えられる。その結果、当該感放射線性組成物は感度および解像性だけでなく、CDUにも優れると考えられる。
【0015】
当該感放射線性組成物は、例えば[A]重合体および[Z]化合物、ならびに必要に応じて[B]酸発生剤、[C]酸拡散制御剤、[D]有機溶媒、[F]重合体およびその他の任意成分などを所定の割合で混合し、得られた混合物を孔径0.2μm以下のメンブランフィルタでろ過することにより調製することができる。
【0016】
以下、当該感放射線性組成物が含有する各成分について説明する。
【0017】
<環構造(p)>
環構造(p)は、後述する[A]重合体および[Z]化合物の少なくとも一方に含まれる構造である。環構造(p)は、少なくとも1つの水素原子がヨウ素原子で置換された環構造である。換言すると、環構造(p)は、環構造を構成する原子に結合する少なくとも1つの水素原子はヨウ素原子で置換されている。環構造(p)におけるヨウ素原子の含有形態としては、1価のヨード基(*-I;*は、環構造との結合部位を示す。)であってもよいし、ヨードニウム基(*-I+R;*は、環構造との結合部位を示す。Rは、置換または非置換の炭化水素基を示す。)であってもよい。環構造(p)は、少なくとも1つの水素原子が1価のヨード基で置換された環構造であることが好ましい。ヨウ素原子の置換数としては1以上であれば特に制限されず、適宜決定することができ、例えば1~5であり、1~3が好ましい。ヨウ素原子の置換数が2以上である場合には、ヨウ素原子の置換数が1である場合と比較して、感度良く、解像性およびCDUがより向上する傾向があるため好ましい。
【0018】
環構造(p)は、少なくとも[A]重合体に含まれている場合、CDUがより向上する傾向があるため好ましく、少なくとも[Z]化合物に含まれている場合、解像性がより向上する傾向があるため好ましく、[A]重合体および[Z]化合物の両方に含まれている場合、感度、解像性およびCDUがより向上する傾向があるためより好ましい。
【0019】
「環構造」には「脂環」および「芳香環」が含まれる。「脂環」には「脂肪族炭化水素環」および「脂肪族複素環」が含まれる。脂環構造のうち脂肪族炭化水素環および脂肪族複素環を含む多環のものは「脂肪族複素環」に該当するものとする。「芳香環」には「芳香族炭化水素環」および「芳香族複素環」が含まれる。芳香環のうち芳香族炭化水素環および芳香族複素環を含む多環のものは「芳香族複素環」に該当するものとする。
【0020】
環構造(p)を与える環構造の環員数としては、特に制限されず、例えば3~30であり、5~20が好ましい。「環員数」とは、環構造を構成する原子数をいい、多環の場合はこの多環を構成する原子数をいう。「多環」には、2つの環が1つの共有原子を有するスピロ型多環や、2つの環が2つの共有原子を有する縮合多環だけでなく、2つの環が共有原子を持たず、単結合で連結している環集合型の多環も含まれる。
【0021】
環構造(p)を与える環構造としては、例えば環員数3~30の脂肪族炭化水素環、環員数3~30の脂肪族複素環、環員数6~30の芳香族炭化水素環、環員数5~30の芳香族複素環が挙げられる。
【0022】
上記脂肪族炭化水素環としては、例えばシクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロノナン環、シクロデカン環、シクロドデカン環等の単環の飽和脂環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘプテン環、シクロオクテン環、シクロデセン環等の単環の不飽和脂環、ノルボルナン環、アダマンタン環、トリシクロデカン環、テトラシクロドデカン環、ステロイド環等の多環の飽和脂環、ノルボルネン環、トリシクロデセン環等の多環の不飽和脂環が挙げられる。「ステロイド環」とは、3つの6員環と1つの4員環とが縮合した骨格(ステラン骨格)を基本骨格とする環構造をいう。
【0023】
上記脂肪族複素環としては、例えばγ-バレロラクトン環、ヘキサノラクトン環、ノルボルナンラクトン環等のラクトン構造、ヘキサノスルトン環、ノルボルナンスルトン環等のスルトン構造、ジオキソラン環、オキサシクロヘプタン環、オキサノルボルナン環等の酸素原子含有複素環、アザシクロヘキサン環、ジアザビシクロオクタン環等の窒素原子含有複素環、チアシクロヘキサン環、チアノルボルナン環等の硫黄原子含有複素環が挙げられる。
【0024】
上記芳香族炭化水素環としては、例えばベンゼン環;ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ビフェニレン環、フェナントレン環、ピレン環等の縮合多環型芳香族炭化水素環;ビフェニル環、テルフェニル環、ビナフタレン環、フェニルナフタレン環等の環集合型芳香族炭化水素環;9,10-エタノアントラセン環が挙げられる。
【0025】
上記芳香族複素環としては、例えばフラン環、ピラン環、ベンゾフラン環、ベンゾピラン環等の酸素原子含有複素環、ピリジン環、ピリミジン環、インドール環等の窒素原子含有複素環、チオフェン環等の硫黄原子含有複素環環が挙げられる。
【0026】
環構造(p)を与える環構造としては、環員数6~30の芳香族炭化水素環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。この場合、感度をより向上できる傾向がある。
【0027】
環構造(p)は、少なくとも1つの水素原子がヨウ素原子以外の置換基でさらに置換されていてもよい。置換基としては、例えばヨウ素原子以外のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、フッ素化アルキル基(アルキル基が有する少なくとも1つの水素原子をフッ素原子で置換した基)、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基、アシロキシ基が挙げられる。環構造(p)を与える環構造が芳香環である場合、置換基としてはフッ素原子またはフッ素化アルキル基が好ましい。この場合、感度およびCDUをより向上できる傾向がある。
【0028】
<[A]重合体>
[A]重合体は、後述する式(1)で表される構造単位(以下、「構造単位ma」ともいう)を有する。[A]重合体は、酸の作用により現像液への溶解性が変化する重合体である。限定的な解釈を望むものではないが、[A]重合体は、構造単位maを有することにより酸の作用により現像液への溶解性が変化する性質が発揮される。当該感放射線性組成物は、1種または2種以上の[A]重合体を含有することができる。
【0029】
[A]重合体は、構造単位ma以外の酸解離性基を含む構造単位(以下、「構造単位mb」ともいう)をさらに有していてもよい。[A]重合体は、フェノール性水酸基を含む構造単位(以下、「構造単位mc」ともいう)をさらに有することが好ましい。[A]重合体は、構造単位ma、構造単位mbおよび構造単位mc以外のその他の構造単位(以下、「構造単位md」ともいう)をさらに有していてもよい。[A]重合体は、1種または2種以上の各構造単位を有することができる。
【0030】
[A]重合体が環構造(p)を有する場合、[A]重合体は環構造(p)を含む構造単位(以下、「構造単位mx」ともいう)を有することが好ましい。構造単位mxは、構造単位ma、構造単位mb、構造単位mcおよび構造単位mdのいずれかに該当する。例えば、構造単位maが環構造(p)を含む場合、構造単位mxは構造単位maに該当する。
【0031】
当該感放射線性組成物における[A]重合体の含有割合の下限としては、当該感放射線性組成物が含有する[D]有機溶媒以外の全成分に対して、50質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、80質量%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、99質量%が好ましく、95質量%がより好ましい。
【0032】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)の下限としては、1,000が好ましく、2,000がより好ましく、3,000がさらに好ましく、5,000がより一層好ましい。上記Mwの上限としては、30,000が好ましく、20,000がより好ましく、10,000がさらに好ましく、8,000がより一層好ましい。[A]重合体のMwを上記範囲とすることで、当該感放射線性組成物の塗工性を向上させることができる。[A]重合体のMwは、例えば[A]重合体の合成に使用する重合開始剤の種類やその使用量等を調整することにより調節することができる。
【0033】
[A]重合体のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(以下、「Mw/Mn」または「多分散度」ともいう)の上限としては、2.5が好ましく、2.0がより好ましく、1.8がさらに好ましく、1.7がより一層好ましい。上記比の下限としては、通常1.0であり、1.1が好ましく、1.2がより好ましく、1.3がさらに好ましく、1.4がより一層好ましい。
【0034】
[MwおよびMnの測定方法]
本明細書における重合体のMwおよびMnは、以下の条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される値である。
GPCカラム:東ソー(株)の「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本および「G4000HXL」1本
カラム温度 :40℃
溶出溶媒 :テトラヒドロフラン
流速 :1.0mL/分
試料濃度 :1.0質量%
試料注入量 :100μL
検出器 :示差屈折計
標準物質 :単分散ポリスチレン
【0035】
[A]重合体は、例えば各構造単位を与える単量体を公知の方法で重合することにより合成することができる。
【0036】
以下、[A]重合体が有する各構造単位について説明する。
【0037】
[構造単位ma]
構造単位maは、下記式(1)で表される構造単位である。[A]重合体は、1種または2種以上の構造単位maを有することができる。
【0038】
【0039】
上記式(1)中、R1は、水素原子、フッ素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基である。L1は、単結合、-COO-または-CONH-である。Ar1は、置換または非置換の芳香族炭化水素環から2個の水素原子を除いた基である。R2は、酸解離性基である。
【0040】
構造単位maは、R2で表される酸解離性基(以下、「酸解離性基(a)」ともいう)を含む構造単位である。「酸解離性基」とは、カルボキシ基における水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離してカルボキシ基を与える基を意味する。酸解離性基(a)は、カルボキシ基が有する水素原子を置換する基である。換言すると、構造単位maにおいて酸解離性基(a)は、カルボニルオキシ基のエーテル性酸素原子に結合している。
【0041】
[A]重合体が構造単位maを有することで、露光により[Z]化合物や[B]酸発生剤等から発生する酸の作用により構造単位maから酸解離性基(a)が解離し、露光部と非露光部との間における[A]重合体の現像液への溶解性に差異が生じることにより、レジストパターンを形成することができる。[A]重合体が構造単位maを有することが、当該感放射線性組成物が優れた感度、解像性およびCDUを発揮する要因の一つであると考えられる。
【0042】
R1としては、構造単位maを与える単量体の共重合性の観点から、水素原子またはメチル基が好ましい。
【0043】
L1としては、単結合または-COO-が好ましい。なお、L1が-COO-である場合、この基の結合の向きとしては、Ar1との結合部位を*で示すと、-COO-*であることが好ましい。
【0044】
「環構造からX個の水素原子を除いた基」とは、環構造を構成する原子に結合するX個の水素原子を除いた基を意味する。
【0045】
Ar1を与える芳香族炭化水素環の環員数および種類としては、例えば上述の環構造(p)の項において例示した環員数6~30の芳香族炭化水素環が挙げられる。Ar1を与える芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環またはナフタレン環が好ましい。
【0046】
Ar1を与える芳香族炭化水素環は、少なくとも1つの水素原子が置換基でさらに置換されていてもよい。置換基としては、例えばヨウ素原子、上述の環構造(p)の項において例示した置換基が挙げられる。
【0047】
酸解離性基(a)が多環の脂環を有しないと、解像性をより向上できる傾向があるため好ましい。
【0048】
酸解離性基(a)が芳香環または炭素-炭素二重結合を有すると、解像性をより向上できる傾向があるため好ましい。
【0049】
酸解離性基(a)が少なくとも1つの水素原子がヨウ素原子で置換された芳香環を有すると、感度およびCDUを向上できる傾向があるため好ましい。
【0050】
R2で表される酸解離性基(a)としては、例えば下記式(a-1)で表される基(以下、「酸解離性基(a-1)」ともいう)が挙げられる。
【0051】
【0052】
上記式(a-1)中、*は、上記式(1)におけるカルボキシ基のエーテル性酸素原子との結合部位を示す。RXは、置換または非置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基である。RYおよびRZは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、またはこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に環員数3~20の脂環を構成する。
【0053】
「炭素数」とは、基を構成する炭素原子数をいう。「炭化水素基」には「脂肪族炭化水素基」および「芳香族炭化水素基」が含まれる。「脂肪族炭化水素基」には「鎖状炭化水素基」および「脂環式炭化水素基」が含まれる。別の観点から、「脂肪族炭化水素基」には「飽和炭化水素基」および「不飽和炭化水素基」が含まれる。「鎖状炭化水素基」とは、環構造を含まず、鎖状構造のみで構成された炭化水素基をいい、直鎖状炭化水素基および分岐鎖状炭化水素基の両方を含む。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環のみを含み、芳香環を含まない炭化水素基をいい、単環の脂環式炭化水素基および多環の脂環式炭化水素基の両方を含む。但し、脂環のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を含んでいてもよい。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環を含む炭化水素基をいう。但し、芳香環のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環を含んでいてもよい。
【0054】
RX、RYまたはRZを与える炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0055】
RXで表される炭化水素基が有する場合がある置換基としては、例えばフッ素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基、アシロキシ基が挙げられる。RXが置換基としてヨウ素原子を有する場合、当該感放射線性組成物の感度およびCDUをより向上できる傾向があるため好ましい。
【0056】
炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等のアルキル基;エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、2-メチルプロパ-1-エン-1-イル基等のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基が挙げられる。
【0057】
炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環の脂環式飽和炭化水素基;ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の多環の脂環式飽和炭化水素基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の単環の脂環式不飽和炭化水素基;ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基、テトラシクロドデセニル基等の多環の脂環式不飽和炭化水素基が挙げられる。
【0058】
炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、アントリルメチル基等のアラルキル基が挙げられる。
【0059】
RYおよびRZが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成する環員数3~20の脂環としては、例えばシクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等の単環の飽和脂環;シクロプロペン環、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環等の単環の不飽和脂環;ノルボルナン環、アダマンタン環、トリシクロデカン環、テトラシクロドデカン環等の多環の飽和脂環;ノルボルネン環等の多環の不飽和脂環が挙げられる。
【0060】
RYおよびRZが炭素数1~20の1価の炭化水素基である場合、RYおよびRZとしては、鎖状炭化水素基が好ましく、アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。この場合のRXとしては、置換もしくは非置換の鎖状炭化水素基、または置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基が好ましく、非置換のアルキル基、非置換のアルケニル基、または置換もしくは非置換のアリール基がより好ましく、メチル基、エテニル基、フェニル基またはヨードフェニル基がさらに好ましい。RXが、アルケニル基またはアリール基である場合、解像性をより向上できる傾向があるため好ましい。RXが、ヨウ素原子で置換されたアリール基である場合、当該感放射線性組成物の感度およびCDUをより向上できる傾向があるため好ましい。
【0061】
RYおよびRZが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に環員数3~20の脂環を構成する場合、上記脂環としては、単環の飽和脂環が好ましく、シクロペンタン環またはシクロヘキサン環がより好ましい。この場合のRXとしては、置換もしくは非置換の鎖状炭化水素基、または置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基が好ましく、非置換のアルキル基または非置換のアリール基がより好ましく、メチル基、イソプロピル基、t-ブチル基、フェニル基またはヨードフェニル基がさらに好ましい。
【0062】
酸解離性基(a-1)としては、下記式(a-1-1)~(a-1-7)で表される基(以下、「酸解離性基(a-1-1)~(a-1-7)」ともいう)が好ましい。
【0063】
【0064】
上記式(a-1-1)~(a-1-7)中、*は、上記式(a-1)と同義である。
【0065】
例えば、酸解離性基(a)が酸解離性基(a-1-4)である場合、[A]重合体は環構造(p)を含有することとなる。つまり、構造単位maは構造単位mxに該当する。
【0066】
構造単位maとしては、例えば下記式(ma-1)~(ma-8)で表される構造単位(以下、「構造単位(ma-1)~(ma-8)」ともいう)が挙げられる。なお、構造単位(ma-8)は後述する構造単位mcにも該当するが、本明細書においては構造単位maに含めるものとする。
【0067】
【0068】
[A]重合体における構造単位maの含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、15モル%がさらに好ましく、20モル%が好ましい場合もある。上記含有割合の上限としては、70モル%が好ましく、60モル%がより好ましく、50モル%がさらに好ましく、40モル%が好ましい場合もある。
【0069】
[構造単位mb]
構造単位mbは、酸解離性基を含む構造単位であって、構造単位maには該当しないものである。酸解離性基としては、例えば上述の酸解離性基(a)と同様のものが挙げられる。
【0070】
構造単位mbとしては、例えば下記式(2)で表される構造単位が挙げられる。
【0071】
【0072】
上記式(2)中、R1、L1、およびR2は上記式(1)と同義である。R3は、L1が単結合の場合には単結合であり、L1が-COO-または-CONH-の場合には置換または非置換の2価の炭化水素基である。
【0073】
上記式(2)におけるR1、L1、およびR2の説明および好ましい態様は上述している。R3における2価の炭化水素基としては、例えば上述した炭素数1~20の1価の炭化水素基から1個の水素原子を除いた基が挙げられる。中でもR3としては、炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基から1個の水素原子を除いた基が好ましく、炭素数1~20の1価のアルキル基から1個の水素原子を除いた基がより好ましく、炭素数1~8のアルカンジイル基がさらに好ましい。
【0074】
構造単位mbは、環構造(p)を有していてもよい。この場合、構造単位mbは構造単位mxに該当する。構造単位mbが環構造(p)を有する場合、環構造(p)は酸解離性基に含まれていることが好ましい。
【0075】
構造単位mbとしては、例えば下記式(mb-1)~(mb-6)で表される構造単位(以下、「構造単位(mb-1)~(mb-6)」ともいう)が挙げられる。
【0076】
【0077】
例えば、構造単位mbが構造単位(mb-1)、構造単位(mb-2)または構造単位(mb-3)である場合、[A]重合体は環構造(p)を含有することとなる。つまり、構造単位mbは構造単位mxに該当する。
【0078】
[A]重合体が構造単位mbを有する場合、[A]重合体における構造単位mbの含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、15モル%がさらに好ましく、20モル%がより一層好ましい。上記含有割合の上限としては、50モル%が好ましく、40モル%がより好ましく、30モル%が好ましい場合もある。
【0079】
[構造単位mc]
構造単位mcは、フェノール性水酸基を含む構造単位である。「フェノール性水酸基」とは、ベンゼン環に直結するヒドロキシ基に限らず、芳香環に直結するヒドロキシ基全般を指す。[A]重合体は、1種または2種以上の構造単位mcを含有することができる。
【0080】
KrF露光、EUV露光または電子線露光の場合、[A]重合体が構造単位mcを有することで、当該感放射線性組成物の放射線に対する感度をより高めることができる。したがって、[A]重合体が構造単位mcを有する場合、当該感放射線性組成物は、KrF露光用、EUV露光用または電子線露光用の感放射線性組成物として好適に用いることができる。
【0081】
構造単位mcとしては、例えば下記式(3)で表される構造単位が挙げられる。
【0082】
【0083】
上記式(3)中、R1は、上記式(1)と同義である。L2は、単結合、-COO-、-O-または-CONH-である。Ar2は、置換または非置換の芳香族炭化水素環から(p+1)個の水素原子を除いた基である。pは、1~3の整数である。
【0084】
L2としては、単結合または-COO-が好ましく、単結合がより好ましい。なお、L2が-COO-である場合、この基の結合の向きとしては、Ar2との結合部位を*で示すと、-COO-*であることが好ましい。
【0085】
Ar2を与える芳香族炭化水素環としては、例えば上述の環構造(p)の項において例示した環員数6~30の芳香族炭化水素環が挙げられる。Ar2を与える芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環またはナフタレン環が好ましい。
【0086】
Ar2を与える芳香族炭化水素環は、少なくとも1つの水素原子が置換基でさらに置換されていてもよい。置換基としては、例えばヨウ素原子、上述の環構造(p)の項において例示した置換基が挙げられる。
【0087】
pとしては、1または2が好ましい。
【0088】
構造単位mcは、環構造(p)を有していてもよい。この場合、構造単位mcは構造単位mxに該当する。構造単位mcが環構造(p)を有する場合、環構造(p)はAr2に含まれることが好ましい。環構造(p)がAr2に含まれる場合とは、例えばAr2が置換基としてヨウ素原子を有する場合が挙げられる。
【0089】
構造単位mcとしては、例えば下記式(mc-1)~(mc-4)で表される構造単位(以下、「構造単位(mc-1)~(mc-4)」ともいう)が挙げられる。
【0090】
【0091】
例えば、構造単位mcが構造単位(mc-3)である場合、[A]重合体は環構造(p)を含有することとなる。つまり、構造単位mcは構造単位mxに該当する。
【0092】
[A]重合体が構造単位mcを有する場合、[A]重合体における構造単位mcの含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、20モル%が好ましく、30モル%がより好ましく、35モル%がさらに好ましく、40モル%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、80モル%が好ましく、70モル%がより好ましく、65モル%がさらに好ましく、60モル%が特に好ましい。
【0093】
[構造単位md]
構造単位mdは、構造単位ma、構造単位mbおよび構造単位mc以外のその他の構造単位である。構造単位mdとしては、例えばラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造またはこれらの組み合わせを含む構造単位;アルコール性水酸基を含む構造単位、ビニル芳香族化合物に由来する構造単位;(メタ)アクリル酸エステル類に由来する構造単位;放射線の作用によりスルホン酸を発生する基を含む構造単位が挙げられる。
【0094】
構造単位mdとしては、例えば下記式(md-1)~(md-6)で表される構造単位(以下、「構造単位(md-1)~(md-6)」ともいう)が挙げられる。なお、構造単位(md-5)~(md-6)におけるCat1
+~Cat2
+は相互に独立に、感放射線性オニウムカチオンである。
【0095】
【0096】
構造単位(md-1)はビニル芳香族化合物に由来する構造単位の具体例であると共に構造単位mxにも該当する。構造単位(md-2)はラクトン構造を含む構造単位の具体例であると共に構造単位mxにも該当する。構造単位(md-3)は(メタ)アクリル酸エステル類に由来する構造単位の具体例であると共に構造単位mxにも該当する。構造単位(md-4)はアルコール性水酸基を含む構造単位の具体例である。構造単位(md-5)は放射線の作用によりスルホン酸を発生する基を含む構造単位の具体例であると共に構造単位mxにも該当する。構造単位(md-6)は放射線の作用によりスルホン酸を発生する基を含む構造単位の具体例である。
【0097】
構造単位(md-5)~(md-6)におけるCat1
+~Cat2
+としては、後述する[Z]化合物におけるカチオン(Y)が挙げられる。ここで、Cat1
+~Cat2
+が環構造(p)を有する場合、当該感放射線性オニウムカチオンを有する構造単位(md-5)~(md-6)は構造単位mxにも該当する。
【0098】
なお、例えば、構造単位(md-6)が有するCat2
+が後掲する式(r-a-3)、式(r-a-5)、又は式(r-a-6)のいずれかで表される1価のカチオンである場合、構造単位(md-6)は構造単位mxにも該当する。このように放射線の作用によりスルホン酸を発生する基を含む構造単位は、環構造(p)をアニオン部に含んでいてもよいしカチオン部に含んでいてもよい。
【0099】
[A]重合体が構造単位mdを有する場合、構造単位mdの含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%が好ましく、10モル%がより好ましい。上記含有割合の上限としては、30モル%が好ましく、20モル%がさらに好ましい。
【0100】
<[Z]化合物>
[Z]化合物は、アニオン(以下、「アニオン(X)」ともいう)および感放射線性オニウムカチオン(以下、「カチオン(Y)」ともいう)を有する化合物(オニウム塩)である。
【0101】
[Z]化合物は、アニオン(X)が含むアニオン基の種類に応じて、当該感放射線性組成物において放射線の照射により酸を発生する作用、または露光により生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御し、非露光部における好ましくない化学反応(例えば、酸解離性基の解離反応)を抑制する作用を有する。換言すると、[Z]化合物は、アニオン基の種類に応じて、当該感放射線性組成物において、感放射線性酸発生剤(以下、「[B]酸発生剤」ともいう)または酸拡散制御剤(クエンチャー)(以下、「[C]酸拡散制御剤」ともいう)として機能する。
【0102】
[Z]化合物が[B]酸発生剤として機能する場合、放射線の照射により[Z]化合物から発生した酸により[A]重合体が有する構造単位ma等に含まれる酸解離性基が解離してカルボキシ基等の酸性基が生じ、露光部と非露光部との間でレジスト膜の現像液への溶解性に差異が生じることにより、レジストパターンを形成することができる。
【0103】
[Z]化合物が[C]酸拡散制御剤として機能する場合、露光部では酸を発生して[A]重合体の現像液に対する溶解性または不溶性を高め、非露光部ではアニオンによる高い酸捕捉機能が発揮されクエンチャーとして機能し、露光部から拡散する酸を捕捉する。これにより、露光部と非露光部との界面におけるラフネスを改善すると共に、現像液に対する露光部と非露光部との間の現像液への溶解度の差を増大させて解像性を向上させることができる。
【0104】
当該感放射線性組成物は、1種または2種以上の[Z]化合物を含有することができる。当該感放射線性組成物は、少なくとも[B]酸発生剤として機能する[Z]化合物を含有することが好ましく、[B]酸発生剤として機能する[Z]化合物と、[C]酸拡散制御剤として機能する[Z]化合物とを共に含有することがより好ましい。
【0105】
[Z]化合物が[B]酸発生剤として機能する場合、当該感放射線性組成物における[Z]化合物の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、1質量部が好ましく、5質量部がより好ましく、10質量部がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、40質量部が好ましく、30質量部がより好ましく、20質量部がさらに好ましい。
【0106】
[Z]化合物が[C]酸拡散制御剤として機能する場合、当該感放射線性組成物における[Z]化合物の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、1質量部が好ましく、5質量部がより好ましい。上記含有量の上限としては、40質量部が好ましく、30質量部がより好ましく、20質量部がさらに好ましい。
【0107】
以下、[Z]化合物が有する各構造について説明する。
【0108】
[アニオン(X)]
アニオン(X)は、アニオン基を有する。アニオン基としては、例えば1価の有機酸アニオン基が挙げられる。1価の有機酸アニオン基としては、例えばスルホン酸アニオン基(-SO3
-)、カルボン酸アニオン基(-COO-)、スルホンイミド酸アニオン基(-SO2-N--SO2-)が挙げられる。これらの中でも、スルホン酸アニオン基またはカルボン酸アニオン基が好ましい。
【0109】
下、アニオン(X)のうち、1価のアニオン基としてスルホン酸アニオン基を有するものを「アニオン(X-1)」といい、1価のアニオン基としてカルボン酸アニオン基を有する場合を「アニオン(X-2)」という。
【0110】
(アニオン(X-1))
[Z]化合物がアニオン(X-1)を有する場合、[Z]化合物は感放射線性酸発生剤又は酸拡散制御剤として機能する。[Z]化合物が感放射線性酸発生剤として機能する場合、当該感放射線性組成物は、酸拡散制御剤を含有することが好ましい。上記酸拡散制御剤としては、例えば酸拡散制御剤として機能する場合の[Z]化合物、後述する[[Z]化合物以外の酸拡散制御剤が挙げられる。中でも、上記酸拡散制御剤としては、酸拡散制御剤として機能する場合の[Z]化合物が好ましい。換言すると、当該感放射線性組成物は、アニオン(X-1)を有する[Z]化合物と、アニオン(X-2)を有する[Z]化合物とを含有することが好ましい。
【0111】
アニオン(X-1)としては、オニウム塩型の感放射線性酸発生剤におけるアニオンとして用いられるものであれば特に制限されず、例えば下記式(X-1)で表されるスルホン酸アニオンが挙げられる。
【0112】
【0113】
上記式(X-1)中、Rp1は、環員数5以上の環構造を含む1価の基である。Rp2は、2価の連結基である。Rp3およびRp4は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基または炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基である。Rp5およびRp6は、それぞれ独立して、フッ素原子または炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基である。np1は、0~10の整数である。np2は、0~10の整数である。np3は、0~10の整数である。但し、np1+np2+np3は、1以上30以下である。np1が2以上の場合、複数のRp2は互いに同一または異なる。np2が2以上の場合、複数のRp3は互いに同一または異なり、複数のRp4は互いに同一または異なる。np3が2以上の場合、複数のRp5は互いに同一または異なり、複数のRp6は互いに同一または異なる。
【0114】
環員数5以上の環構造としては、例えば上述の環構造(p)の項において例示した環構造のうち環員数が5以上のものが挙げられる。
【0115】
上記環構造は、環構造を構成する原子に結合する一部又は全部の水素原子が置換基で置換されていてもよい。置換基としては、例えば置換基としては、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、フッ素化アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基、アシロキシ基が挙げられる。
【0116】
置換基がヨウ素原子である場合、上記環構造は、環構造(p)に該当する。つまり、[Z]化合物(より詳細にはアニオン(X))が環構造(p)を有することとなる。
【0117】
上記環構造の環員数の下限としては、6が好ましく、8がより好ましく、9がさらに好ましく、10が特に好ましい。上記環員数の上限としては、25が好ましい。
【0118】
Rp1としては、環員数5以上の脂肪族炭化水素環構造を含む1価の基、環員数5以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基又は環員数6以上の芳香族炭化水素環構造を含む1価の基が好ましい。
【0119】
Rp2で表される2価の連結基としては、例えばカルボニル基、エーテル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、チオカルボニル基、スルホニル基、2価の炭化水素基、環状アセタールを含む2価の基、ステロイド環を含む2価の基またはこれらを組み合わせた基等が挙げられる。
【0120】
Rp3およびRp4で表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば炭素数1~20のアルキル基が挙げられる。Rp3およびRp4で表される炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基としては、例えば炭素数1~20のフッ素化アルキル基が挙げられる。Rp3およびRp4としては、水素原子、フッ素原子またはフッ素化アルキル基が好ましく、水素原子、フッ素原子またはパーフルオロアルキル基がより好ましく、水素原子、フッ素原子またはトリフルオロメチル基がさらに好ましい。
【0121】
Rp5およびRp6で表される炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基としては、例えば炭素数1~20のフッ素化アルキル基が挙げられる。Rp5およびRp6としては、フッ素原子またはフッ素化アルキル基が好ましく、フッ素原子またはパーフルオロアルキル基がより好ましく、フッ素原子またはトリフルオロメチル基がさらに好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
【0122】
np1としては、0~5が好ましく、0~2がより好ましく、0または1がさらに好ましい。
【0123】
np2としては、0~5が好ましく、0~2がより好ましく、0または1がさらに好ましい。
【0124】
np3の下限としては、1が好ましく、2がより好ましい。np3を1以上とすることで、露光により発生する酸の強さを高めることができる。np3の上限としては、4が好ましく、3がより好ましく、2がさらに好ましい。
【0125】
np1+np2+np3の下限としては、2が好ましく、4がより好ましい。np1+np2+np3の上限としては、20が好ましく、10がより好ましい。
【0126】
アニオン(X-1)としては、例えば下記式(X-1-1)~(X-1-3)で表されるスルホン酸アニオンが挙げられる。
【0127】
【0128】
(アニオン(X-2))
[Z]化合物がアニオン部(X-2)を有する場合、[Z]化合物は酸拡散制御剤として機能する。この場合、当該感放射線性組成物は、感放射線性酸発生剤を含有することが好ましい。上記感放射線性酸発生剤としては、例えば感放射線性酸発生剤として機能する場合の[Z]化合物、後述する[Z]化合物以外の感放射線性酸発生剤が挙げられる。中でも、上記感放射線性酸発生剤としては、例えば感放射線性酸発生剤として機能する場合の[Z]化合物が好ましい。
【0129】
アニオン(X-2)としては、露光により感光し弱酸を発生する光崩壊性塩基におけるアニオンとして用いられるものであれば特に制限されず、例えば置換または非置換のサリチル酸アニオン、上記式(X-1)におけるスルホン酸アニオン基をカルボン酸アニオンに置き換えたものが挙げられる。
【0130】
アニオン(X-2)としては、下記式(X-2-1)~(X-2-5)で表されるスルホン酸アニオンが好ましい。
【0131】
【0132】
[カチオン(Y)]
カチオン(Y)は、感放射線性オニウムカチオンである。カチオン(Y)の価数は特に制限されず、アニオン(X)の価数に応じて適宜決定でき、例えば1~3価であり、1価が好ましい。なお、例えばアニオン(X)が2価のアニオンであり、かつカチオン(X)が1価のカチオンである場合、[Z]化合物は、1つのアニオンと、2つのカチオンとを有するオニウム塩である。
【0133】
カチオン(Y)としては、感放射線性組成物に含有される感放射線性酸発生剤や酸拡散制御剤として使用されているオニウム塩における感放射線性オニウムカチオンとして知られているものであれば特に制限されない。カチオン(Y)が1価のカチオンである場合のカチオン種としては、例えばスルホニウムカチオン(S+)、ヨードニウムカチオン(I+)が挙げられる。
【0134】
カチオン(Y)がスルホニウムカチオンである場合、カチオン(Y)としては、例えば下記式(r-a)で表される1価のカチオンが挙げられる。
【0135】
【0136】
上記式(r-a)中、ArB1は、置換または非置換の環員数6~20の芳香族炭化水素環から1個の水素原子を除いた基である。RB1およびRB2は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の環員数6~20の芳香族炭化水素環から1個の水素原子を除いた基であるか、またはRB1およびRB2が互いに合わせられこれらが結合する硫黄原子と共に置換もしくは非置換の環員数9~30の多環の硫黄原子含有芳香族複素環を構成する。
【0137】
ArB1、RB1またはRB2で表される環員数6~20の芳香族炭化水素環としては、例えば上述の環構造(p)の項において例示した芳香族炭化水素環のうち環員数6~20のものが挙げられる。ArB1、RB1またはRB2で表される環員数6~20の芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環が好ましい。
【0138】
RB1およびRB2が互いに合わせられこれらが結合する硫黄原子と共に構成する多環の硫黄原子含有芳香族複素環としては、例えばジベンゾチオフェン環が挙げられる。
【0139】
上記芳香族炭化水素環および上記多環の硫黄原子含有芳香族複素環は少なくとも1つの水素原子が置換基で置換されていてもよい。置換基としては、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、フッ素化アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基、アシロキシ基が挙げられる。置換基としては、ヨウ素原子、フッ素原子、またはフッ素化アルキル基が好ましい。
【0140】
置換基がヨウ素原子である場合、上記芳香族炭化水素環および上記多環の硫黄原子含有芳香族複素環は、環構造(p)に該当する。つまり、[Z]化合物(より詳細にはカチオン(Y))が環構造(p)を有することとなる。
【0141】
置換基がヨウ素原子、フッ素原子またはフッ素化アルキル基である場合、感度をより向上できる傾向があるため好ましい。
【0142】
カチオン(Y)がスルホニウムカチオンである場合のカチオン(Y)としては、例えば下記式(r-a-1)~(r-a-6)で表される1価のカチオンが挙げられる。
【0143】
【0144】
[Z]化合物としては、上述のアニオン(X)と、カチオン(Y)とを適宜組み合わせた化合物を用いることができる。
【0145】
<[D]有機溶媒>
当該感放射線性組成物は、通常、[D]有機溶媒を含有する。[D]有機溶媒は、少なくとも[A]重合体および[Z]化合物、ならびに必要に応じて含有されるその他の任意成分を溶解または分散可能な溶媒であれば特に限定されない。
【0146】
[D]有機溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒が挙げられる。当該感放射線性組成物は、1種または2種以上の[D]有機溶媒を含有することができる。
【0147】
アルコール系溶媒としては、例えば4-メチル-2-ペンタノール、n-ヘキサノール、ジアセトンアルコール、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等の脂肪族モノアルコール系溶媒、シクロヘキサノール等の脂環式モノアルコール系溶媒、1,2-プロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒が挙げられる。
【0148】
エーテル系溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル等のジアルキルエーテル系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル系溶媒、ジフェニルエーテル、アニソール等の芳香環含有エーテル系溶媒が挙げられる。
【0149】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-iso-ブチルケトン、2-ヘプタノン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-iso-ブチルケトン、トリメチルノナノン等の鎖状ケトン系溶媒、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノンが挙げられる。
【0150】
アミド系溶媒としては、例えばN,N’-ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等の環状アミド系溶媒、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド系溶媒が挙げられる。
【0151】
エステル系溶媒としては、例えば酢酸n-ブチル、乳酸エチル等のモノカルボン酸エステル系溶媒、γ-ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン系溶媒、酢酸プロピレングリコール等の多価アルコールカルボキシレート系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒、シュウ酸ジエチル等の多価カルボン酸ジエステル系溶媒、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶媒が挙げられる。
【0152】
炭化水素系溶媒としては、例えばn-ペンタン、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒が挙げられる。
【0153】
[D]有機溶媒としては、アルコール系溶媒、エステル系溶媒またはこれらの組み合わせが好ましく、多価アルコール部分エーテル系溶媒、多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒またはこれらの組み合わせがより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートまたはこれらの組み合わせがさらに好ましい。
【0154】
当該感放射線性組成物が[D]有機溶媒を含有する場合、[D]有機溶媒の含有割合の下限としては、当該感放射線性組成物に含有される全成分に対して、50質量%が好ましく、60質量%がより好ましく、70質量%がさらに好ましく、80質量%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、99.9質量%が好ましく、99.5質量%が好ましく、99.0質量%がさらに好ましい。
【0155】
<[F]重合体>
[F]重合体は、[A]重合体とは異なる重合体であって、[A]重合体よりもフッ素原子含有率が大きい重合体である。通常、ベース重合体となる重合体より疎水性が高い重合体は、レジスト膜表層に偏在化する傾向がある。[F]重合体は[A]重合体よりもフッ素原子含有率が大きいため、この疎水性に起因する特性により、レジスト膜表層に偏在化する傾向がある。その結果、当該感放射線性組成物が[F]重合体を含有する場合、形成されるレジストパターンの断面形状が良好となることが期待される。当該感放射線性組成物は、例えばレジスト膜の表面調整剤として[F]重合体を含有することができる。当該感放射線性組成物は、1種または2種以上の[F]重合体を含有することができる。
【0156】
<その他の任意成分>
その他の任意成分としては、例えば[Z]化合物以外の酸発生剤、[Z]化合物以外の酸拡散制御剤、界面活性剤などが挙げられる。当該感放射線性組成物は、1種または2種以上のその他の任意成分を含有することができる。
【0157】
[Z]化合物以外の酸発生剤としては、例えばN-スルホニルオキシイミド化合物、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物が挙げられる。
【0158】
[Z]化合物以外の酸拡散制御剤としては、例えば窒素原子含有化合物が挙げられる。窒素原子含有化合物としては、例えばトリペンチルアミン、トリオクチルアミン等のアミン化合物、ホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド基含有化合物、尿素、1,1-ジメチルウレア等のウレア化合物、ピリジン、N-(ウンデシルカルボニルオキシエチル)モルホリン、N-t-ペンチルオキシカルボニル-4-ヒドロキシピペリジン等の含窒素複素環化合物などが挙げられる。
【0159】
<レジストパターン形成方法>
当該レジストパターン形成方法は、基板に直接または間接に感放射線性組成物を塗工する工程(以下、「塗工工程」ともいう)と、上記塗工工程により形成されたレジスト膜を露光する工程(以下、「露光工程」ともいう)と、上記露光されたレジスト膜を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう)とを備える。
【0160】
上記塗工工程では、感放射線性組成物として上述の当該感放射線性組成物を用いる。したがって、当該レジストパターン形成方法によれば、感度良く、解像性およびCDUに優れるレジストパターンを形成することができる。
【0161】
以下、当該レジストパターン形成方法が備える各工程について説明する。
【0162】
[塗工工程]
本工程では、基板に直接または間接に感放射線性組成物を塗工する。これにより基板に直接または間接にレジスト膜が形成される。
【0163】
本工程では、感放射線性組成物として上述の当該感放射線性組成物を用いる。
【0164】
基板としては、例えばシリコンウエハ、二酸化シリコン、アルミニウムで被覆されたウエハ等の従来公知のものが挙げられる。
【0165】
塗工方法としては、例えば回転塗工(スピンコーティング)、流延塗工、ロール塗工等が挙げられる。塗工した後に、必要に応じて、塗膜中の溶媒を揮発させるためプレベーク(以下、「PB」ともいう。)を行ってもよい。PBの温度およびPBの時間は特に制限されず、例えば60℃以上150℃以下の温度で5秒以上300秒以下の時間行う。形成されるレジスト膜の平均厚みは、特に制限されず、例えば10nm以上1,000nm以下である。
【0166】
[露光工程]
本工程では、上記塗工工程により形成されたレジスト膜を露光する。この露光は、フォトマスクを介して(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)放射線を照射することにより行う。放射線としては、遠紫外線、EUVまたは電子線が好ましく、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)、EUV(波長13.5nm)または電子線がより好ましく、KrFエキシマレーザー光、EUVまたは電子線がさらに好ましく、EUVまたは電子線が特に好ましい。
【0167】
上記露光の後、ポストエクスポージャーベーク(以下、「PEB」ともいう)を行うことが好ましい。このPEBによって、露光部と非露光部との間で現像液に対する溶解性の差異を増大させることができる。PEBの温度およびPEBの時間は特に制限されず、例えば50℃以上180℃以下の温度で5秒以上600秒以下の時間行うことができる。
【0168】
[現像工程]
本工程では、上記露光されたレジスト膜を現像する。これにより、所定のレジストパターンを形成することができる。現像工程における現像方法は、アルカリ現像であってもよいし、有機溶媒現像であってもよい。
【0169】
アルカリ現像の場合、現像に用いる現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(以下、「TMAH」ともいう)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液が挙げられる。これらの中で、TMAH水溶液が好ましく、2.38質量%TMAH水溶液がより好ましい。
【0170】
有機溶媒現像の場合、現像液としては、例えば上述の当該感放射線性組成物の[D]有機溶媒として例示した有機溶媒が挙げられる。
【実施例0171】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各物性値の測定方法を以下に示す。
【0172】
[構造単位の含有割合]
重合体の構造単位の含有割合は、核磁気共鳴装置(日本電子(株)の「JNM-Delta400」)を用いた1H-NMR分析により測定した。
【0173】
[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)およびMw/Mn]
重合体のMwおよびMnは、上記[MwおよびMnの測定方法]の項に記載の条件に従って測定した。重合体のMw/Mnは、MwおよびMnの測定結果より算出した。
【0174】
<[A]重合体の合成>
[合成例1~25]重合体(P-1)~(P-24)および(Pc-1)の合成
以下に示す各構造単位を与えるモノマーを組み合わせてテトラヒドロフラン(THF)溶剤下で共重合反応を行った後に単離、乾燥して、下記表1に示す重合体(P-1)~(P-24)および(Pc-1)を得た。
【0175】
【0176】
【0177】
上記式(md-5)におけるCat1
+はトリス(4-フルオロフェニル)スルホニウムである。上記式(md-6)におけるCat2
+は(4-ヨードフェニル)ジフェニルスルホニウムである。上記式(md-7)におけるCat3
+はトリフェニルスルホニウムである。
【0178】
下記表1中、「-」は該当する構造単位を含有していないことを示し、「mol%」は[A]重合体を構成する全構造単位に対する各構造単位の含有割合を示す。
【0179】
【0180】
<感放射線性組成物の調製>
感放射線性組成物の調製に用いた[B]酸発生剤、[C]酸拡散制御剤、[D]有機溶媒および[F]重合体を以下に示す。以下の実施例および比較例においては特に断りのない限り、「質量部」は使用した[A]重合体の質量を100質量部とした場合の値を意味する。
【0181】
[[B]酸発生剤]
[B]酸発生剤として、以下に示す酸発生剤(PAG1)~(PAG4)を用いた。
【0182】
【0183】
[[C]酸拡散制御剤]
[C]酸拡散制御剤として、以下に示す酸拡散制御剤(Q-1)~(Q-6)を用いた。
【0184】
【0185】
[[D]有機溶媒]
[D]有機溶媒として、下記の有機溶媒を用いた。
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
DAA:ジアセトンアルコール
【0186】
[[F]重合体]
[F]重合体として、以下に示す重合体(F-1)を用いた。下記式(F-1)中、構造単位の右下に記載の数値は、[F]重合体を構成する全構造単位に対する構造単位の含有割合(モル比)を示す。重合体(F-1)のMwは8,900であり、Mw/Mnは2.0であった。
【0187】
【0188】
[実施例1~33および比較例1~2]
界面活性剤(スリーエム社の「FC-4430」)を100ppm溶解させた下記表2に記載の[D]有機溶媒に下記表2に示す各成分を溶解させた。得られた混合液を孔径0.2μmのメンブランフィルタでろ過して感放射線性組成物を調製した。下記表2中、「-」は該当する成分を含有していないことを示す。
【0189】
<評価>
上記調製した感放射線性組成物を用いて、以下の方法に従い、感度、解像性およびCDUを評価した。評価結果を下記表2に示す。
【0190】
[感度]
12インチのシリコンウエハ上に、スピンコーター(東京エレクトロン(株)の「CLEAN TRACK ACT12」)を使用して、下層反射防止膜形成用組成物(ブルワーサイエンス社の「ARC66」)を塗工した後、205℃で60秒間加熱することにより平均厚さ10nmの下層反射防止膜を形成した。この下層反射防止膜上に、上記スピンコーターを使用して上記調製した各感放射線性組成物を塗工し、130℃で60秒間PBを行った。その後、23℃で30秒間冷却することにより、平均厚さ55nmのレジスト膜を形成した。このレジスト膜に対して、EUVスキャナー(ASML社の「NXE3300」、NA0.33、σ0.9/0.6、クアドルポール照明、ウエハ上寸法がピッチ46nm、+20%バイアスのホールパターンのマスク)を用いて露光した。120℃のホットプレート上で60秒間PEBを行い、2.38質量%TMAH水溶液で30秒間現像を行って、23nmホール46nmピッチのレジストパターンを形成した。この23nmホール46nmピッチのレジストパターンを形成する露光量を最適露光量(Eop、単位:mJ/cm2)とした。感度は、Eopの値が小さいほど良好であることを示す。
【0191】
[解像性]
上記[感度]の項に記載のレジストパターンの形成方法において、露光量を変えた場合に解像される最小のコンタクトホールの直径を測定し、この測定値を解像度(単位:nm)とした。解像性は、解像度の値が小さいほど良好であることを示す。
【0192】
[CDU]
上記[感度]の項で求めたEopの露光量を照射して、上記[感度]の項と同様にして23nmホール46nmピッチのレジストパターンを形成した。形成したレジストパターンを走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクの「CG-5000」)を用いて、パターン上部から観察した。500nmの範囲でホール径を16点測定して平均値を求めた。また、平均値を任意のポイントで計500点測定した。測定値の分布から3シグマ値を求め、求めた3シグマ値をCDU(単位:nm)とした。CDUは、その値が小さいほど、長周期でのホール径のばらつきが小さく良好であることを示す。
【0193】