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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144092
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 13/10 20060101AFI20241003BHJP
   F26B 13/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F26B13/10 E
F26B13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217317
(22)【出願日】2023-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2023053228
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤元 高佳
(72)【発明者】
【氏名】元井 昌司
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA02
3L113AB02
3L113AC08
3L113AC10
3L113AC31
3L113AC46
3L113AC48
3L113AC53
3L113AC67
3L113AC86
3L113BA32
3L113BA34
3L113CA10
3L113CA12
3L113CB24
3L113DA03
(57)【要約】
【課題】塗膜を乾燥させる際に消費するエネルギーを従来よりも削減することができる乾燥装置を提供することを目的としている。
【解決手段】塗膜が形成された基材が内部を通過する筐体部と、前記筐体部内にガスを供給する供給部と、を有し、前記筐体部内で塗膜を加熱することによって乾燥させる第1の乾燥ユニットと第2の乾燥ユニットが並べられた乾燥装置であって、前記第1の乾燥ユニットには、前記第1の乾燥ユニットの前記筐体部内にガスを供給する供給部と、前記供給部から前記筐体部に供給されるまでにガスを加熱することによって塗膜を間接的に加熱する第1の加熱源と、が設けられ前記第2の乾燥ユニットには、前記第2の乾燥ユニットの前記筐体部内の塗膜を直接的に加熱する第2の加熱源が設けられている構成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗膜が形成された基材が内部を通過する筐体部と、前記筐体部内にガスを供給する供給部と、を有し、前記筐体部内で塗膜を加熱することによって乾燥させる第1の乾燥ユニットと第2の乾燥ユニットが並べられた乾燥装置であって、
前記第1の乾燥ユニットには、前記第1の乾燥ユニットの前記筐体部内にガスを供給する供給部と、前記供給部から前記筐体部に供給されるまでにガスを加熱することによって塗膜を間接的に加熱する第1の加熱源と、が設けられ、
前記第2の乾燥ユニットには、前記筐体部内の塗膜を直接的に加熱する第2の加熱源が設けられていることを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
前記第2の乾燥ユニットは、前記第1の乾燥ユニットよりも先に塗膜の加熱を行う位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記第2の加熱源は、赤外線を照射することによって塗膜を加熱することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記第2の加熱源は、塗膜に熱エネルギーを付与する第1の加熱部と、第2の加熱部と、を有しており、
前記第2の加熱部は、前記第1の加熱部よりも塗膜に付与される熱エネルギーの出力が小さく調節され、前記第1の加熱部よりも後に塗膜に熱エネルギーが付与されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記第2の加熱部は、前記第1の加熱部から前記第2の加熱部の順に塗膜に熱エネルギーが付与される乾燥処理方向に、前記第1の加熱部よりも塗膜に熱エネルギーを付与する範囲が広く設定されていることを特徴とする請求項4に記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記第2の加熱部は、複数設けられており、それぞれが前記乾燥処理方向に沿って並べられていることを特徴とする請求項5に記載の乾燥装置。
【請求項7】
前記第1の乾燥ユニットには、前記筐体部内のガスを排出する排出部が設けられ、
前記第1の乾燥ユニットと前記第2の乾燥ユニットの間には、前記排出部により前記第1の乾燥ユニットの前記筐体部内から排出されたガスと前記供給部により前記第2の乾燥ユニットの前記筐体部に供給するガスとで熱交換を行う熱交換部が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項8】
前記第1の乾燥ユニットには、前記筐体部内のガスを排出する排出部が設けられ、
前記供給部は、前記排出部により前記第1の乾燥ユニットの前記筐体部から排出されたガスを前記第2の乾燥ユニットの前記筐体部内に供給することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項9】
前記第1の乾燥ユニットの前記筐体部内の圧力は、前記第2の乾燥ユニットの前記筐体部内の圧力よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項10】
基材の両面に塗膜が形成されており、
第2の加熱源は、基材の両面に形成された各々の塗膜を加熱可能に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に形成された塗膜を加熱して乾燥させる乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、ロールツーロールで搬送されるアルミ箔や、銅箔などのシート状の基材に対して、電極材料のスラリーを塗布して塗膜を形成し、形成した塗膜を乾燥させることで正極、負極が形成されている。なお、正極を形成する場合は、主にNMP(N‐メチル‐ピロリドン)を含有するスラリーが基材に塗布される。そして、塗膜の乾燥は、塗膜を加熱して塗膜に含まれる溶剤等を気化させることによって行われており、正極を形成する場合は塗膜から溶剤であるNMPが気化する。
【0003】
塗膜の乾燥を行う乾燥装置の一例として、下記特許文献1には、基材が通過する内部空間を有する筐体部と、ガスを加熱する加熱源と、加熱源により加熱されたガスを筐体部内に供給するノズルと、を備えたものが開示されている。そして、乾燥装置は、加熱源により加熱したガスをノズルにより筐体部内に供給することによって、筐体部内に高温環境を形成する。この高温環境に搬送される基材上の塗膜を一定時間さらすことで、スラリーに含まれる溶剤(NMP)等を気化させて塗膜を乾燥させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-097917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記乾燥装置では、塗膜を乾燥させる際に消費するエネルギーが多くなってしまう問題があった。すなわち、上記乾燥装置では、筐体部内において塗膜が加熱される際に塗膜から気化するNMPの濃度が基準値を超えて危険物化することを防止するため、筐体部内に大量のガスを供給して筐体部内におけるNMPの濃度が基準値を超えないように希釈している。そのため、筐体部内の温度を塗膜を乾燥させるために必要な温度に維持するために、NMPを希釈するために筐体部に供給する大量のガスを加熱源により加熱する必要があったため、消費するエネルギーが多くなってしまっていた。
【0006】
本発明は、上記問題を鑑みてされたものであり、塗膜を乾燥させる際に消費するエネルギーを従来よりも削減することができる乾燥装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するための本発明の乾燥装置は、塗膜が形成された基材が内部を通過する筐体部と、前記筐体部内にガスを供給する供給部と、を有し、前記筐体部内で塗膜を加熱することによって乾燥させる第1の乾燥ユニットと第2の乾燥ユニットが並べられた乾燥装置であって、前記第1の乾燥ユニットには、前記第1の乾燥ユニットの前記筐体部内にガスを供給する供給部と、前記供給部から前記筐体部に供給されるまでにガスを加熱することによって塗膜を間接的に加熱する第1の加熱源と、が設けられ前記第2の乾燥ユニットには、前記第2の乾燥ユニットの前記筐体部内の塗膜を直接的に加熱する第2の加熱源が設けられていることを特徴としている。
【0008】
上記乾燥装置によれば、第1の乾燥ユニットと第2の乾燥ユニットを備え、第2の乾燥ユニットでは、第2の加熱源により筐体部内を通過する基材に形成された塗膜を直接的に加熱することができるため、塗膜から気化した溶剤を希釈するために筐体部内に供給されるガスを加熱しなくても塗膜を加熱することが可能になる。これにより、第1の乾燥ユニットのみにより塗膜を加熱して乾燥させるよりも消費するエネルギーを削減することができる。したがって、塗膜を乾燥させる際に消費するエネルギーを従来よりも削減することができる。
【0009】
また、前記第2の乾燥ユニットは、前記第1の乾燥ユニットよりも先に塗膜の加熱を行う位置に配置されている構成としてもよい。
【0010】
この構成によれば、第2の加熱源によりガスを介さずに塗膜を直接的に加熱する第2の乾燥ユニットが、第1の加熱源によりガスを介して塗膜を間接的に加熱する第1の乾燥ユニットよりも先に塗膜の加熱を行うため、第2の乾燥ユニットにより塗膜の温度を急速に高めた後に、第1の乾燥ユニットにより塗膜に温度のムラが生じないように塗膜を加熱することが可能になる。これにより、塗膜の乾燥にかかる時間を短縮することによって塗膜を乾燥させる際に消費するエネルギーを削減しつつ、塗膜に乾燥ムラが生じることを防ぐことができる。
【0011】
また、前記第2の加熱源は、赤外線を照射することによって塗膜を加熱する構成としてもよい。
【0012】
この構成によれば、塗膜をその表面と内部の両方から加熱することができるため、塗膜の温度を急速に高めることができる。これにより、塗膜の乾燥にかかる時間を短縮することが可能になるため、塗膜を乾燥させる際に消費するエネルギーをより削減することができる。
【0013】
また、前記第2の加熱源は、熱エネルギーを塗膜に付与する第1の加熱部と、第2の加熱部と、を有しており、前記第2の加熱部は、前記第1の加熱部よりも塗膜に付与される熱エネルギーの出力が小さく調節され、前記第1の加熱部よりも後に塗膜に熱エネルギーを付与する構成としてもよい。
【0014】
この構成によれば、第1の加熱部によって先に塗膜を加熱した後に、第1の加熱部よりも塗膜に付与される熱エネルギーの出力が小さく調節された第2の加熱部によって塗膜を加熱するため、塗膜の表面と内部の温度差を低減しつつ、塗膜の温度を急速に高めることができる。これにより、塗膜の乾燥ムラを抑制しつつ、塗膜の乾燥に要する時間を短縮することができる。また、複数の加熱部、すなわち、第1の加熱部と第2の加熱部によって塗膜を加熱するため、1つの加熱部によって塗膜を加熱する場合よりも塗膜の内部に熱を浸透させることができ、加熱後の塗膜の保温性を高めることができる。
【0015】
また、前記第2の加熱部は、前記第1の加熱部から前記第2の加熱部の順に塗膜に熱エネルギーが付与される乾燥処理方向において、前記第1の加熱部よりも塗膜に熱エネルギーを付与する範囲が広く設定されている構成としてもよい。
【0016】
この構成によれば、第2の加熱部によって塗膜の内部に熱を浸透させる時間を多くすることができるため、加熱後の塗膜の保温性をより高めることができる。
【0017】
また、前記第2の加熱部は、複数設けられており、それぞれが前記乾燥処理方向に沿って並べられている構成としてもよい。
【0018】
この構成によれば、第2の加熱部によって塗膜の内部に熱を浸透させる時間を多くすることができるため、加熱後の塗膜の保温性をより高めることができる。
【0019】
また、前記第1の乾燥ユニットには、前記筐体部内のガスを排出する排出部が設けられ、前記第1の乾燥ユニットと前記第2の乾燥ユニットの間には、前記排出部により前記第1の乾燥ユニットの前記筐体部内から排出されたガスと前記供給部により前記第2の乾燥ユニットの前記筐体部に供給するガスとで熱交換を行う熱交換部が設けられている構成としてもよい。
【0020】
この構成によれば、熱交換部によって、排出部により第1の乾燥ユニットの筐体部から排出されたガスと供給部により第2の乾燥ユニットの筐体部に供給するガスとで熱交換を行うため、第2の乾燥ユニットの筐体部内で塗膜から気化した溶剤が冷やされて液化することを抑制することができる。すなわち、第1の加熱源により加熱され第1の乾燥ユニットの筐体部において塗膜を加熱した後のガスにより、供給部により第2の乾燥ユニットの筐体部に供給するガスを加熱することができる。そのため、第2の乾燥ユニットに第1の加熱源を設けることなく、第2の乾燥ユニットの筐体部内の温度を常温よりも高い温度に保つことが可能になる。これにより、塗膜を乾燥させる際に消費するエネルギーを抑えつつ、第2の乾燥ユニットの筐体部内で塗膜から気化した溶剤が冷やされて液化することを抑制することができる。
【0021】
また、前記第1の乾燥ユニットには、前記筐体部内のガスを排出する排出部が設けられ、前記供給部は、前記排出部により前記第1の乾燥ユニットの前記筐体部内から排出されたガスを前記第2の乾燥ユニットの前記筐体部内に供給する構成としてもよい。
【0022】
この構成によれば、排出部により第1の乾燥ユニットの筐体部内から排出されたガスを供給部により第2の乾燥ユニットの筐体部内に供給するため、第2の乾燥ユニットの筐体部内で塗膜から気化した溶剤が冷やされて液化することを抑制することができる。すなわち、第1の加熱源により加熱され第1の乾燥ユニットの筐体部において塗膜を加熱した後の高温のガスを供給部により第2の乾燥ユニットの筐体部内に供給するため、第2の乾燥ユニットに第1の加熱源を設けることなく、第2の乾燥ユニットの筐体部内の温度を常温よりも高い温度に保つことが可能になる。これにより、塗膜を乾燥させる際に消費するエネルギーを抑えつつ、第2の乾燥ユニットの筐体部内で塗膜から気化した溶剤が冷やされて液化することを抑制することができる。
【0023】
また、前記第1の乾燥ユニットの前記筐体部内の圧力は、前記第2の乾燥ユニットの前記筐体部内の圧力よりも小さく設定されている構成としてもよい。
【0024】
この構成によれば、前記第2の乾燥ユニットの筐体部において温められたガスを、第1の乾燥ユニットの筐体部内に供給させることができるため、その供給されたガスを熱風の一部として第1の乾燥ユニットにおける塗膜の加熱に利用することができる。
【0025】
また、基材の両面に塗膜が形成されており、第2の加熱源は、基材の両面に形成された各々の塗膜を加熱可能に設けられている構成としてもよい。
【0026】
この構成によれば、基材の両面に塗膜が形成された場合でもあっても、第2の乾燥ユニットによって基材の両面に形成された塗膜を加熱することが可能になる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の乾燥装置によれば、塗膜を乾燥させる際に消費するエネルギーを従来よりも削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態における乾燥装置を概略的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態における乾燥装置が備える第2の乾燥ユニットを説明するための図であり、(a)は第2の加熱源を上から見た図を示し、(b)は第2の加熱源を側面から見た図を示している。
図3】本発明の一実施形態における塗膜の温度と塗膜に含まれる溶剤の含有率の関係を示す図である。
図4】本発明の一実施形態における乾燥装置が備える第2の乾燥ユニットを説明するための図であり、図2の拡大図を示している。
図5】本発明の一実施形態における乾燥装置の一つのバリエーションを示す図である。
図6】本発明の一実施形態における乾燥装置の一つのバリエーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の第一実施形態における乾燥装置について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、水平方向をX軸方向、Y軸方向と表現し、XY平面と垂直な方向(つまり、鉛直方向)をZ軸方向と表現する。
【0030】
図1は、本実施形態における乾燥装置100を概略的に示す図である。
【0031】
本発明の乾燥装置100は、図示しない塗布装置により基材1上に形成された塗膜11(図2(a)および図2(b)を参照)を乾燥させるためのものであり、図1に示すように、塗膜を加熱することによって乾燥させる第1の乾燥ユニット2と、第2の乾燥ユニット3と、を備えている。
【0032】
本実施形態における塗布装置は、基材1上に塗膜11を形成するためのものであり、帯状の基材1を搬送する図示しない搬送部と、搬送される基材1上に電極材料のスラリー(以下、塗布液と呼ぶ)を塗布して塗膜11を形成する図示しない塗布部と、を備えている。そして、塗布装置が搬送部により搬送される基材1上に塗布液を塗布して塗膜11を形成し、乾燥装置100が基材1上に形成された塗膜11を加熱して乾燥させることによって、リチウムイオン電池の正極が形成される。
【0033】
基材1は、リチウムイオン電池の電池用極板となるアルミニウム箔などの金属箔が用いられる。この基材1は、一方向に長い帯状のシートであり、搬送部により搬送される。
【0034】
塗布液は、たとえば、活物質、バインダー、導電助剤をNMP(N‐メチル‐ピロリドン)などの溶剤により混合させたスラリーのことであり、リチウムイオン電池の電池用極板の材料(所謂、電極材料)として用いられる。この塗布液を塗布部により基材1上に塗布することで、基材1上に塗膜11が形成される。
【0035】
以下、第1の乾燥ユニット2について説明する。
【0036】
第1の乾燥ユニット2は、基材1上に形成された塗膜11を加熱して乾燥させるためのものである。本実施形態では、図1に示すように、同じ構造の第1の乾燥ユニット2が3つ設けられており、基材1の搬送経路に沿って上流側から順に第1の乾燥ユニット2a、第1の乾燥ユニット2b、第1の乾燥ユニット2cが並べられている。以下の説明では、第1の乾燥ユニット2a、第1の乾燥ユニット2b、第1の乾燥ユニット2cを区別しない場合には、単に第1の乾燥ユニット2と呼ぶ。
【0037】
第1の乾燥ユニット2は、図1に示すように、内部に基材1が通過する空間を有する筐体部21と、筐体部21内に供給されるガスを加熱する第1の加熱源22と、筐体部21内に第1の加熱源22により加熱されたガスを導入する図示しないノズルと、筐体部21内からガスを排出する第1の排出部23と、を有している。ここでいうガスは、空気のことである。なお、ガスは、N2ガスやHeガス、Arガスのような不活性ガスであってもよい。
【0038】
筐体部21は、図1に示すように、基材1の搬送方向に長く形成された箱体であり、搬送部による基材1の搬送経路上に設けられている。この筐体部21は、内部に基材1が通過する空間と、この空間に基材1が出入りするための入口および出口を有している。これにより、搬送部により搬送される基材1が筐体部21内を通過するようになっている。そして、第1の乾燥ユニット2a、第1の乾燥ユニット2b、および第1の乾燥ユニット2cは、各々の筐体部21が基材1の搬送経路に沿って連通するように並べられている。これにより、搬送部により搬送される基材1が各々の第1の乾燥ユニット2の筐体部21を連続して通過するようになっている。
【0039】
第1の加熱源22は、筐体部21内に供給されるガスを加熱することによって塗膜11を間接的に加熱するためのものである。この第1の加熱源22は、たとえば、電気ヒータや熱媒ヒータなどのヒータであり、ノズルにより筐体部21内に導入される前のガスを所定の温度(塗膜11を乾燥させるために必要な温度)になるまで加熱するようになっている。
【0040】
そして、第1の加熱源22により加熱されたガスは、循環路51(図1を参照)を通じてノズルから筐体部21内に導入される。これにより、筐体部21内に高温環境が形成される。そして、筐体部21内を搬送部により搬送される基材1が通過することによって、基材1上の塗膜11が高温環境にさらされて加熱され塗膜11から溶剤が気化する。すなわち、第1の加熱源22は、ガスを介して熱エネルギーを塗膜11に与えることによって塗膜11を表面から加熱している。
【0041】
第1の排出部23は、筐体部21内のガスを筐体部11外に排出するための開口であり、筐体部21の壁部に形成されている。そして、塗膜11から気化した溶剤を含むガスが第1の排出部23から筐体部21外に排出される。
【0042】
また、第1の乾燥ユニット2には、図1に示すように第1の排出部23から排出されたガスに対して溶剤の回収処理を行う溶剤回収ユニット4と、筐体部21と溶剤回収ユニット4との間でガスを循環させる循環路5が設けられている。
【0043】
溶剤回収ユニット4は、筐体部21内で塗膜11から気化した溶剤を液化させて回収する処理を行うためのものであり、筐体部21に付設するように設けられている。本実施形態における溶剤回収ユニット4は、図1に示すように、塗膜11から気化した溶剤を含むガスを冷却する冷却部41と、冷却部41により冷却されたことによって液化した溶剤を貯留する回収部42と、冷却部41と回収部42を接続する回収路43と、を有している。
【0044】
冷却部41は、溶剤を含むガスを冷却して溶剤を液化させるためのものである。この冷却部41は、水冷方式を用いる冷却器であり、ガスが流れる空洞を有する本体部44と、冷媒である水が流れる図示しない冷媒流路と、を有している。
【0045】
本体部44は、内部にガスが流れる空洞を有する筐体であり、循環路5により筐体部21と接続されている。これにより、筐体部21内で塗膜から気化した溶剤を含むガスが、循環路5を介して本体部44内に流入する。
【0046】
冷媒流路は、冷媒が流れる流路であり、本体部44内に設けられている。この冷媒流路に冷媒を流すことによって、循環路5を介して筐体部21から流入した本体部44内のガスを冷却する。これにより、ガスに含まれる溶剤が液化する。
【0047】
回収部42は、冷却部41で液化した溶剤を回収するためのものであり、回収路43により冷却部41と接続されている。そして、回収路43には、図示しないポンプが設けられており、このポンプにより冷却部41で液化された溶剤が回収路43を介して回収部42に送られる。これにより、溶剤が回収部42に回収される。そして、溶剤を回収された後のガスは、含まれる溶剤の濃度が低減された低濃度ガスとして冷却部41の本体部44内から循環路5に排出される。
【0048】
循環路5は、第1の乾燥ユニット2と溶剤回収ユニット4との間でガスを循環させるためのものである。本実施形態における循環路5は、図1に示すように第1の加熱源22から筐体部21にガスを送るよう接続された循環路51、筐体部21から冷却部41にガスを送るよう接続された循環路52、冷却部41から第1の加熱源22にガスを送るよう接続された循環路53により構成されている。そして、循環路5の各所には、ガスを循環させるためのファンが設けられている。このファンにより、ガスが循環路5を介して第1の加熱源22から筐体部21、冷却部41、第1の加熱源22へ、というように循環する。
【0049】
また、第1の乾燥ユニット2には、循環路5により循環させられるガスを供給する供給部61が設けられている。この供給部61は、少なくとも溶剤回収ユニット4により溶剤が回収された後のガス中に含まれる溶剤の濃度よりも含まれる溶剤の濃度が低いガス(以下、低濃度ガスと呼ぶ)を第1の乾燥ユニット2に供給するための供給源である。
【0050】
この供給部61は、図1に示すように、供給する低濃度ガスが第1の加熱源22の手前側で、溶剤回収ユニット4により溶剤を回収された後のガスと合流することができるように供給路62により循環路53に接続されている。そして、供給路62には、図示しないファンが設けられており、このファンにより低濃度ガスが供給路62を介して供給部61から循環路5に供給される。これにより、循環路5により循環するガスに含まれる溶剤の濃度を低減させることができる。
【0051】
また、供給部61は、第1の乾燥ユニット2、溶剤回収ユニット4、循環路5の各部において、ガスに含まれる溶剤の濃度が基準値を超えて溶剤が危険物化することを防ぐため、溶剤を十分に希釈することが可能な量のガスを乾燥装置100の動作中は供給し続けるようになっている。なお、基準値とは、溶剤が爆発する限界値のことである。
【0052】
そして、溶剤回収ユニット4により溶剤が回収された後のガスと供給部61により供給される低濃度ガスが合流して循環路5により循環させられるガスは、第1の加熱源22により加熱され、ノズルにより筐体部21内に導入される。すなわち、溶剤を希釈するためのガスが第1の加熱源22により加熱され、塗膜11を加熱するためのガスとして筐体部21内に供給されている。これにより、筐体部21内において溶剤が危険物化することを防ぎつつ、筐体部21内で塗膜11を加熱することができる。
【0053】
また、第1の乾燥ユニット2には、循環路5により循環させられるガスの一部を装置外に排気するための排気部71が設けられている。この排気部71は、図1に示すように、冷却部41から第1の加熱源22にガスを送る循環路53において供給部61により低濃度ガスが供給される位置よりも手前側で排気路72により接続されている。そして、排気路72には、図示しないファンが設けられており、このファンにより排気量を調節しながら循環路53を流れるガスを排気路72を介して排気部71から装置外に排気している。これにより、溶剤回収ユニット4により溶剤が回収された後のガスの一部が装置外に排気される。
【0054】
そして、排気部71から排気されるガスの量は、少なくとも供給部61により供給する量よりも多くなるようにファンにより調節される。これにより、筐体部21内を筐体部21外に対して負圧にすることができるため、筐体部21からガスが漏れ出ることを防ぐことができる。
【0055】
以下、第2の乾燥ユニット3について説明する。なお、第1の乾燥ユニット2と同様の構成については詳細な説明を省略して説明する。
【0056】
第2の乾燥ユニット3は、基材1上に形成された塗膜11を加熱して乾燥させるためのものである。本実施形態における第2の乾燥ユニット3は、図1に示すように、内部を基材1が通過する筐体部31と、筐体部31内で塗膜11を加熱する第2の加熱源32と、第2の排出部33と、を有している。なお、筐体部31および第2の排出部33は、第1の乾燥ユニット2が有する筐体部21および第1の排出部23と同様な構成を有しているため、詳細な説明を省略する。
【0057】
第2の加熱源32は、筐体部31内で塗膜11を直接的に加熱するためのものである。この第2の加熱源32は、赤外線レーザなどのレーザ34(図2(a)および図2(b)を参照)を照射するレーザ光源である。
【0058】
第2の加熱源32は、図1に示すように、筐体部31内における筐体部31の上側の壁部に複数取り付けられており、複数の第2の加熱源32は基材1の搬送経路に沿って所定の間隔を空けて並べられている。そして、各々の第2の加熱源32は、図2(b)に示すように鉛直方向下側に向かってレーザ34を照射するようになっている。
【0059】
各々の第2の加熱源32は、レーザ34を照射する図示しない発信器と、レーザ34を所定の形状に整形するための図示しないレンズと、を有している。そして、発振器によりレンズにレーザ34を照射することによって、所定の形状に整形されたレーザ34が塗膜11に照射されるようになっている。ここでいう所定の形状とは、図2(a)に示すように、基材1の幅方向の全体に亘ってレーザ34を照射することが可能な形状のことである。これにより、各々の第2の加熱源32は、基材1の幅方向の全体に亘ってレーザ34を照射する。そして、各々の加熱源32により基材1の幅方向の全体に亘って照射されるレーザ34の下を、搬送部により基材1が定速で搬送されるため、塗膜11の全体が一様に加熱される。
【0060】
このように、第2の加熱源32は、塗膜11にレーザ34を照射することによって、ガスを介さずに塗膜11を直接的に加熱しているため、第1の加熱源22のようにガスを介して塗膜11に熱エネルギー伝達させるよりも塗膜11に伝達させる熱エネルギーを大きくすることができる。これにより、第2の加熱源32は、第1の加熱源22により塗膜11を加熱するよりも塗膜11の温度を急速に高めることができる。
【0061】
また、第2の加熱源32により照射されたレーザ34は、塗膜11の内部に浸透、透過しながら塗膜11に吸収され熱エネルギーに変換される。すなわち、第2の加熱源32は、塗膜11を内部から加熱することができる。これにより、第2の加熱源32は、塗膜11をその内部から加熱することができるため、第1の加熱源22にように塗膜11を表面から加熱するよりも塗膜11の温度を急速に高めることができる。
【0062】
また、第2の加熱源32は、ガスを介さずに塗膜11を直接的に加熱することができるため、第1の加熱源22のように塗膜11から気化した溶剤を希釈するためのガスを加熱しなくても塗膜11を加熱することが可能になる。これにより、第2の加熱源32により塗膜11を加熱する際に消費するエネルギーは、第1の加熱源22により塗膜11を加熱する際に消費するエネルギーよりも少なくなる。
【0063】
一方、第1の加熱源22は、ガスを加熱し、そのガスにより筐体部21内に高温環境を形成して塗膜11を加熱しているため、複数の方向から塗膜11を加熱することができる。すなわち、基材1の裏面側からも塗膜11を加熱することができる。そのため、搬送機構による基材1の搬送中に基材1の撓みや位置ずれが生じたとしても、複数の方向から塗膜11に対して熱エネルギーを与えることができる。これにより、第1の加熱源22により塗膜11を加熱した方が、第2の加熱源32のように一方向から塗膜11を加熱するよりも塗膜11の温度にムラが生じにくくなっている。
【0064】
また、第2の乾燥ユニット3には、筐体部31内にガスを供給する供給部81が設けられている。この供給部81は、ガスを供給するための供給源であり、図1に示すように供給路82により筐体部31に接続されている。そして、供給路82には、図示しないファンが設けられており、このファンによりガスが供給路82を介して供給部81から筐体部31内に供給される。
【0065】
ここで、図1に示すように、乾燥装置100には、第1の排出部23により第1の乾燥ユニット2の筐体部21内から排出されたガスと供給部81により第2の乾燥ユニット3の筐体部31に供給するガスとで熱交換を行う熱交換部83が設けられている。本実施形態では、熱交換部83内で循環路52と供給路82を交差させており、第1の乾燥ユニット2において第1の排出部23により筐体部21内から排出されて循環路52を流れるガスと供給路82を流れるガスとで熱交換を行うようになっている。
【0066】
すなわち、熱交換部83によって、第1の加熱源22により加熱され第1の乾燥ユニット2の筐体部21において塗膜11を加熱した後のガスにより、供給部81により第2の乾燥ユニット3の筐体部31に供給するガスを加熱している。そのため、第2の乾燥ユニット3に第1の加熱源21を設けることなく、第2の乾燥ユニット3の筐体部31内の温度を常温よりも高い温度に保つことが可能になる。これにより、塗膜11を乾燥させる際に消費するエネルギーを抑えつつ、第2の乾燥ユニット3の筐体部31内で塗膜11から気化した溶剤が冷やされて液化することを抑制することができる。なお、ここでいう常温以上の温度とは、たとえば、40~60℃程度の温度のことである。
【0067】
また、第2の乾燥ユニット3には、筐体部31内の一部のガスを装置外に排気する排気部91が設けられている。この排気部91は、図1に示すように排気路92により筐体部31が有する第2の排出部33に接続されている。そして、排気路92には、図示しないファンが設けられており、このファンにより排気量を調節しながら筐体部31内のガスを排気路92を介して排気部91から装置外に排気している。これにより、筐体部31内で塗膜11から気化した溶剤をガスとともに装置外に排気することができるため、塗膜11から気化した溶剤が筐体部31内で滞留することを防ぐことができる。
【0068】
そして、排気部91から排気されるガスの量は、少なくとも供給部81により供給する量よりも多くなるようにファンにより調節される。これにより、筐体部31内を筐体部31外に対して負圧にすることができるため、筐体部31からガスが漏れ出ることを防ぐことができる。
【0069】
また、乾燥装置100は、塗膜11の乾燥の進行状態を制御するため、第1の乾燥ユニット2と第2の乾燥ユニット3による塗膜11の乾燥工程を、乾燥初期、乾燥中期、および乾燥後期に分けて領域ごとに塗膜11の温度を管理している。
【0070】
ここで、本実施形態では、第2の乾燥ユニット3が乾燥初期における塗膜11の乾燥を行うようになっている。すなわち、第2の乾燥ユニット3は、図1に示すように、第1の乾燥ユニット2よりも上流側に位置するように第2の乾燥ユニット3の筐体部31が第1の乾燥ユニット2aの筐体部21と連通するように設けられ、第1の乾燥ユニット2よりも先に塗膜11の加熱を行うようになっている。そして、第1の乾燥ユニット2が乾燥中期および乾燥後期における塗膜11の乾燥を行うようになっている。
【0071】
図3を用いて具体的に説明する。図3は、本実施形態における塗膜11の温度と塗膜11に含まれる溶剤の含有率の関係を示す図であり、実線Aと実線Bが本実施形態における乾燥装置100により塗膜11の加熱を行う場合を示し、鎖線Cと鎖線Dが従来の乾燥装置のように第1の乾燥ユニット2のみにより塗膜11の加熱を行う場合を示している。
【0072】
乾燥初期は、塗膜11の温度を常温から所定の温度まで予熱する領域になっており、図3の実線Bで示すように塗膜11における溶剤の含有率が含有率aのようにほぼ横ばいになっている。すなわち、乾燥初期では、塗膜11から溶剤がほぼ気化しない領域になっている。
【0073】
ここで、本実施形態では、第2の乾燥ユニット3により乾燥初期における塗膜11の加熱を行う。すなわち、乾燥初期において、第1の加熱源22よりも塗膜11の温度を急速に高めることができる第2の加熱源32により塗膜11を加熱するため、図3の実線Aと鎖線Cで示すように塗膜11の温度を従来よりも急速に高めることができ、塗膜11を所定の温度まで加熱する時間を短縮することができる。
【0074】
また、乾燥初期では塗膜11から溶剤がほぼ気化しないため、乾燥初期において塗膜11を加熱する第2の乾燥ユニット3では筐体部31内に溶剤を希釈するためのガスを大量に供給する必要がない。そして、第2の乾燥ユニット3では、第2の加熱源32により塗膜11を直接的に加熱することができるため、第1の乾燥ユニット2のように塗膜11を加熱するためのガスを筐体部31に供給することも不要となっている。そのため、本実施形態では、第2の乾燥ユニット3の筐体部31には、その内部を換気するために用いる少量のガスを供給部81により供給するだけでよく、従来の乾燥装置よりも塗膜11を乾燥させる際に用いるガスの量を大幅に削減することができる。これにより、塗膜11を乾燥させる際に消費するエネルギーを従来よりも削減することができる。
【0075】
乾燥中期は、塗膜11の温度をほぼ一定の温度または緩やかに温度を高めることにより塗膜11の乾燥を進行させる領域になっている。ここで、本実施形態では、第1の乾燥ユニット2により乾燥中期における塗膜11の加熱を行う。すなわち、乾燥中期において、第2の加熱源32よりも塗膜11の温度にムラが生じることを抑制することができる第1の加熱源22により塗膜11を加熱するため、図3の実線Aに示すように塗膜11の温度をほぼ一定の温度になるように加熱しやすくなる。これにより、図3の実線Bに示す塗膜11の溶剤の含有率が含有率bから含有率cのように一定の推移で塗膜11から溶剤を気化させることができるため、塗膜11を乾燥させすぎないように制御しながら塗膜11の乾燥を進行させることができる。
【0076】
乾燥後期は、塗膜11の温度を再び高めることにより塗膜11を乾燥させる領域になっている。ここで、本実施形態では、第1の乾燥ユニット2により乾燥中期における塗膜11の加熱を行う。すなわち、乾燥後期において、第2の加熱源32よりも塗膜11の温度にムラが生じることを抑制することができる第1の加熱源22により塗膜11を加熱するため、図3の実線Bに示す塗膜11の含有率が含有率cから含有率dのように一定の推移で塗膜11から溶剤を気化させ、塗膜11を乾燥させすぎることがないように塗膜11の温度を調節しながら塗膜11を加熱することができる。これにより、塗膜11に乾燥ムラを生じさせることなく塗膜11を乾燥させることができる。
【0077】
このように、本実施形態における乾燥装置100では、乾燥初期において第2の加熱源32により塗膜11の加熱を行うため、図3の実線Aと鎖線Cに示すように従来の乾燥装置よりも塗膜11を所定の温度まで加熱する時間が短くなり、図3の実線Bと鎖線Dに示すように塗膜11の乾燥にかかる時間を短縮することができる。これにより、塗膜11を乾燥させる際に消費するエネルギーを従来よりも削減することができる。そして、乾燥中期および乾燥後期において第1の加熱源22により塗膜11の加熱を行うため、加熱中の塗膜11中のバインダーが偏析することを抑え、塗膜11に変形が生じることを防ぐことができる。すなわち、本実施形態における乾燥装置100では、塗膜11に変形が生じることを防ぎつつ、塗膜の乾燥にかかる時間を短縮して塗膜11の乾燥にかかる時間を短縮することができる。
【0078】
ここで、本実施形態における第2の乾燥ユニット3には、溶剤回収ユニット4をあえて設けていない。具体的には、本実施形態における第2の乾燥ユニット3は、塗膜11から溶剤が気化しにくく溶剤の回収を必要としない乾燥初期において塗膜11の加熱を行っている。そのため、第2の乾燥ユニット3には、溶剤回収ユニット4を設けていない。これにより、第1の乾燥ユニット2と第2の乾燥ユニット3のすべてに溶剤回収ユニット4を設ける場合に比べて設備の設置費と設備を稼働するためのランニングコストを削減している。
【0079】
また、第2の加熱源32は、図4に示すように、レーザ34を塗膜11に照射する第1の加熱部32aと、第1の加熱部32aよりも出力が小さく調節されたレーザ34を塗膜11に照射する第2の加熱部32bと、を有しており、本実施形態では、複数の第2の加熱源32のうち、最初に塗膜11を加熱する第2の加熱源32を第1の加熱部32aとし、この第1の加熱部32aよりも後に塗膜11の加熱を行うように基材1の搬送方向に沿って並べられた第2の加熱源32を第2の加熱部32bとしている。すなわち、本実施形態における第2の乾燥ユニット3は、第2の加熱部32bよりも照射するレーザ34の出力が大きく調節された第1の加熱部32aによって先に塗膜11を加熱した後に、第1の加熱部32aよりも照射するレーザ34の出力が小さく調節された第2の加熱部32bによって塗膜11を加熱するようになっている。これにより、塗膜11の乾燥ムラを抑制しつつ、塗膜11の乾燥に要する時間を短縮することができるようになっている。
【0080】
具体的に説明する。仮に、第2の乾燥ユニット3が、照射するレーザ34の出力が大きく調節された第1の加熱部32aのみを有し、この第1の加熱部32aを基材1の搬送方向に沿って複数並べて各々の第1の加熱部32aによって塗膜11の加熱を行うものであった場合、塗膜11の温度を急速に高めて塗膜11の乾燥に要する時間を短縮することができるが、塗膜11の表面の温度が塗膜11の内部の温度よりも急速に高まり、塗膜11の表面と内部とで温度差が大きくなってしまうため、塗膜11に乾燥ムラが生じる場合がある。
【0081】
これに対し、本実施形態における第2の乾燥ユニット3は、第1の加熱部32aによって先に塗膜11を加熱した後に、第1の加熱部32aよりも照射するレーザ34の出力が小さく調節された第2の加熱部32bによって塗膜11を加熱しているため、第1の加熱部32aのみによって塗膜11を加熱する場合よりも塗膜11の表面の温度を緩やかに高めることができる。これにより、塗膜11の表面と内部に生じる温度差を低減しつつ、塗膜11の温度を急速に高めることができる。したがって、塗膜11の乾燥ムラを抑制しつつ、塗膜11の乾燥に要する時間を短縮することができる。
【0082】
また、第2の乾燥ユニット3では、複数の第2の加熱源32、すなわち、第1の加熱部32aと第2の加熱部32bによって塗膜11を連続して加熱しているため、塗膜11の乾燥に要する時間をより短縮することができる。具体的には、筐体部31内の温度は、第2の加熱源32によるレーザ34の照射範囲以外は温度があまり高くならないため、筐体部31内における第2の加熱源32のレーザ34の照射範囲から次の筐体部21内で塗膜11が加熱されるまでの間に塗膜11の温度が低下する場合がある。これに対し、本実施形態における乾燥ユニット3では、第1の加熱部32aと第2の加熱部32bによって塗膜11を連続して加熱しているため、塗膜11の内部に熱を浸透させることができ、加熱後の塗膜11の保温性を高めることができる。これにより、第2の乾燥ユニット3によって塗膜11を加熱してから、第1の乾燥ユニット2によって塗膜11を加熱するまでの間に塗膜11の温度が低下することを防ぐことができるため、塗膜11の乾燥に要する時間をより短縮することができる。
【0083】
また、本実施形態における第2の加熱部32bは、基材1の搬送方向において第1の加熱部32aよりもレーザ34の照射範囲が広くなるようにレーザ34を照射するように設定されている。本実施形態では、図4に示すように、第1の加熱部32aよりも第2の加熱部32bを多く設け、各々の第2の加熱部32bを基材1の搬送方向に沿って並べることにより、基材1の搬送方向において第1の加熱部32aよりも第2の加熱部32bが照射するレーザ34の照射範囲を広くしている。このように、第2の加熱部32bが照射するレーザ34の照射範囲を広くすることにより、第2の加熱部32bによって塗膜11の内部に熱を浸透させる時間を多くすることができるため、加熱後の塗膜11の保温性をより高めることができる。
【0084】
また、本実施形態における第2の乾燥ユニット3は、基材1の搬送方向において第1の加熱部32aと第2の加熱部32bのそれぞれが照射するレーザ34間で隙間が生じないように、第1の加熱部32aと第2の加熱部32bのそれぞれを配置している。これにより、第1の加熱部32aと第2の加熱部32bのそれぞれが照射するレーザ34間で隙間を空けて、第1の加熱部32aと第2の加熱部32bのそれぞれによってレーザ34を照射する場合よりも、加熱後の塗膜11の保温性を高めることができる。
【0085】
また、複数の第2の加熱部32bのうち、塗膜11を最後に加熱する第2の加熱部32bは、筐体部31の出口側の側壁近傍に位置する塗膜11にレーザ34を照射できるように設けられており、第2の加熱部32bが照射するレーザ34が筐体部31の内壁に照射されない範囲において、第2の加熱部32bによるレーザ34の照射範囲の端部と筐体部31の出口側の側壁との距離ができるだけ短くなるように照射することが好ましい。これにより、第2の乾燥ユニット3によって塗膜11を加熱してから、第1の乾燥ユニット2によって塗膜11を加熱するまでの時間を短縮することができるため、第2の乾燥ユニット3によって塗膜11を加熱してから第1の乾燥ユニット2によって塗膜11を加熱するまでに塗膜11の温度が低下することをより防ぎやすくなる。
【0086】
このように、上記実施形態における乾燥装置100によれば、第2の加熱源32によって、第2の乾燥ユニット3の筐体部31内を通過する基材1に形成された塗膜11を直接的に加熱することができるため、塗膜11から気化した溶剤を希釈するために筐体部11内に供給されるガスを加熱しなくても塗膜11を加熱することが可能になる。これにより、塗膜11を乾燥させる際に消費するエネルギーを従来よりも削減することができる。
【0087】
また、第2の乾燥ユニット3は、第1の乾燥ユニット2よりも先に塗膜11を加熱するため、塗膜11から溶剤が気化しにくい位置で第2の加熱源32により直接的に塗膜11を加熱することができる。そのため、第2の乾燥ユニット3では、塗膜11から気化した溶剤を希釈するために筐体部31内に供給するガスの量を少なくしつつ、塗膜11を加熱することができる。これにより、塗膜11を乾燥させる際に消費するエネルギーをより削減することができる。
【0088】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。たとえば、上記実施形態では、第2の加熱源32が、レーザを照射することによって塗膜11を加熱する例について説明したが、塗膜11に熱エネルギーを付与することにより塗膜を直接的に加熱することができるものであれば、これに限られない。たとえば、第2の加熱源32が、マイクロ波を照射することによって塗膜11を加熱するものであってもよいし、第2の加熱源32が、赤外線ヒータ、赤外線ランプ、誘導加熱や、誘電加熱により塗膜11を加熱するものであってもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、第2の乾燥ユニット3が、乾燥初期において塗膜11の加熱を行う例について説明したが、他の領域において加熱を行ってもよい。この場合、塗膜11から気化した溶剤を回収するために第2の乾燥ユニット3に溶剤回収ユニット4を設ける必要がある。第2の乾燥ユニット3に溶剤回収ユニット4を設ける場合であっても、第2の乾燥ユニット3は第1の乾燥ユニット2のように循環路5を循環するガスを加熱しなくても第2の加熱源32により塗膜11を直接的に加熱することができるため、塗膜11を加熱する際に消費するエネルギーを従来よりも削減することができる。
【0090】
また、図4において、第2の加熱源32が1つの第1の加熱部32aと4つの第2の加熱部32bを有している例を示しているが、これに限られない。また、上記実施形態では、第1の加熱部32aよりも第2の加熱部32bを多く設け、各々の第2の加熱部32bを基材1の搬送方向に沿って並べることにより、基材1の搬送方向において第1の加熱部32aよりも第2の加熱部32bが照射するレーザ34の照射範囲を広くする例について説明したが、これに限られない。たとえば、図5に示すように、基材1の搬送方向において、各々の第2の加熱部32bによって照射するレーザ34の照射範囲を第1の加熱部32aによって照射するレーザ34の照射範囲よりも広く設定してレーザ34を照射するように第2の加熱部32bを構成してもよい。この場合、第2の加熱源32が有する第1の加熱部32aと第2の加熱部32bの数が同じであっても、上記実施形態と同様に基材1の搬送方向において第1の加熱部32aよりも第2の加熱部32bによって照射するレーザ34の照射範囲を広くすることができる。
【0091】
また、上記実施形態では、第2の加熱源32が第1の加熱部32aと第2の加熱部32bを有している例について説明したが、これに限られない。たとえば、塗膜11に乾燥ムラが生じない程度に、照射するレーザ34の出力が調節された第2の加熱源32を基材1の搬送方向に沿って並べて塗膜11を加熱する構成にしてもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、第2の乾燥ユニット3が筐体部31を有している例について説明したが、筐体部31を有していなくてもよい。また、第2の乾燥ユニット3と最も近い位置に配置された筐体部21の入り口から、第2の乾燥ユニット3によって加熱されて塗膜11から気化した溶剤含むガスを供給してもよい。具体的には、第2の乾燥ユニット3が筐体部31を有している場合、筐体部31内の圧力よりも筐体部21内の圧力を小さく設定することによって筐体部31内のガスを筐体部21内に供給させる。また、第2の乾燥ユニット3が筐体部31を有していない場合、筐体部21の入り口近傍における筐体部21外の圧力よりも筐体部21内の圧力を小さく設定することによって筐体部31の入り口近傍に存在するガスを筐体部21内に供給させる。これにより、第2の乾燥ユニット3によって塗膜11が加熱される際に温度が高まったガスを筐体部21内に供給し、その筐体部21内の塗膜11の加熱に利用させることができる。また、第2の乾燥ユニット3によって加熱されて塗膜11から気化した溶剤を筐体部31内から筐体部21内に供給することができるため、筐体部31内において溶剤の濃度が高まることを抑制することができる。これにより、筐体部31内に滞留する溶剤によって、第2の加熱源32による塗膜11の加熱が阻害されることを防ぎやすくなる。
【0093】
また、上記実施形態では、第2の乾燥ユニット3に第2の加熱源32のみが設けられている例について説明したが、第1の加熱源22と第2の加熱源32が設けられていてもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、乾燥装置100が第2の乾燥ユニット3を1つだけ備えている例について説明したが、複数備えていてもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、第2の加熱源32が有する第2の加熱源32が複数である例について説明したが、1つであってもよい。この場合、第2の加熱源32により照射するレーザの出力を高めて塗膜11の加熱を行う。
【0096】
また、上記実施形態では、塗布部により基材1の幅方向において1つの塗膜11を形成している例について説明したが、塗布部により基材1の幅方向に沿って形成される各々の塗膜11間に一定の間隔が空くように複数の塗膜11を形成してもよい。この場合であっても、上記実施形態における乾燥装置100では、第2の加熱源32により基材1の幅方向の全体に亘ってレーザ34を照射することによって、複数の塗膜11を加熱することができるようになっている。なお、基材1に形成された塗膜11の数だけ、第2の加熱源32を設けて基材1の幅方向に沿って配列し、各々の第2の加熱源32により塗膜11を個別に加熱させてもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、塗布部によって基材1の片面に塗膜11を形成している例について説明したが、塗布部によって基材1の両面に塗膜11を形成してもよい。この場合、第2の乾燥ユニット3は、基材1の両面に形成された塗膜11を加熱するように構成される。すなわち、基材1の両面に形成された塗膜11のそれぞれに対してレーザ34を照射するように、第2の加熱源32を設ける。たとえば、筐体部31内における筐体部31の上側の壁部と下側の壁部のそれぞれに第2の加熱源32を取り付けるとよい。
【0098】
また、上記実施形態では、熱交換部83によって第2の乾燥ユニット3の筐体部31内の温度を常温以上の温度に保たせる例について説明したがこれに限られない。たとえば、図6に示すように、供給部81が、第1の排出部23により第1の乾燥ユニット2の筐体部21内から排出されたガスを第2の乾燥ユニット3の筐体部31内に供給する構成としてもよい。具体的には、図6に示すように供給部81と排気路72を接続し、第1の乾燥ユニット2において第1の加熱源22により加熱され、筐体部21内で塗膜11を加熱した後に第1の排出部23により筐体部21内から排出され、溶剤回収ユニット4により溶剤を回収された後の低濃度ガスを排気路72、供給部81、および供給路82を通じて筐体部31内に供給している。
【0099】
すなわち、第1の加熱源22により加熱され筐体部21において塗膜11を加熱した後の高温のガスを供給部81により筐体部31に供給すため、第2の乾燥ユニット3に第1の加熱源12を設けることなく、筐体部31内の温度を常温よりも高い温度に保つことが可能になる。これにより、塗膜11を乾燥させる際に消費するエネルギーを抑えつつ、第2の乾燥ユニット3の筐体部31内で塗膜11から気化した溶剤が冷やされて液化することを抑制することができる。なお、供給部81により第2の乾燥ユニット3の筐体部31に供給するガスを排出する第1の乾燥ユニット2の筐体部21の内部においてガスに含まれる溶剤の濃度が基準値以下の場合、溶剤回収ユニット4により溶剤を回収しなくてもよい。すなわち、第1の排出部23により第1の乾燥ユニット2の筐体部21内から排出されたガスを第2の乾燥ユニット3の筐体部31内に直接供給してもよい。
【0100】
また、熱交換部83を設けなくてもよい。この場合、たとえば大気中のガスを第2の乾燥ユニット3の筐体部31内に直接供給してもよい。すなわち、第2の乾燥ユニット3の筐体部31内には、常温のガスが供給されてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、塗布液に含まれる溶剤がNMPである例について説明したが、水であってもよい。
【符号の説明】
【0102】
100 乾燥装置
1 基材
11 塗膜
2 第1の乾燥ユニット
2a 第1の乾燥ユニット
2b 第1の乾燥ユニット
2c 第1の乾燥ユニット
21 筐体部
22 第1の加熱源
23 第1の排出部
3 第2の乾燥ユニット
31 筐体部
32 第2の加熱源
32a 第1の加熱部
32b 第2の加熱部
33 第2の排出部
34 レーザ
4 溶剤回収ユニット
41 冷却部
42 回収部
43 回収路
44 本体部
5 循環路
51 循環路
52 循環路
53 循環路
61 供給部
62 供給路
71 排気部
72 排気路
81 供給部
82 供給路
83 熱交換部
91 排気部
92 排気路
図1
図2
図3
図4
図5
図6