(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144094
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】波長変換増幅器、光通信装置、及び波長変換パワー制御方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/291 20130101AFI20241003BHJP
G02F 1/35 20060101ALI20241003BHJP
H04J 14/02 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
H04B10/291
G02F1/35 501
H04J14/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219757
(22)【出願日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2023056765
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond 5G 超高速・大容量ネットワークを実現する帯域拡張光ノード技術の研究開発 研究開発項目2 帯域拡張波長多重光ノード構成技術の研究開発 副題:光ネットワークのビットレート距離積拡張に向けた帯域拡張光ノード技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星田 剛司
(72)【発明者】
【氏名】岡田 峻
【テーマコード(参考)】
2K102
5K102
【Fターム(参考)】
2K102AA15
2K102BA13
2K102BA14
2K102BA18
2K102BB01
2K102BB02
2K102BC01
2K102BD02
2K102DA06
2K102DC07
2K102EA25
2K102EB20
2K102EB22
5K102AA01
5K102AD01
5K102KA06
5K102KA42
5K102PH13
5K102PH14
5K102PH42
(57)【要約】
【課題】ポストアンプでの非線形効果による波形歪みを抑制した波長変換増幅器と光通信装置を提供する。
【解決手段】波長変換増幅器は、第1波長帯の光信号を前記第1波長帯と異なる第2波長帯の光信号に変換する波長変換器と、前記波長変換器の後段に設けられ前記第2波長帯の光信号を増幅するラマン増幅器と、前記波長変換器の前段に設けられる非線形ファイバと、前記非線形ファイバへの入力光パワーと、前記ラマン増幅器の出力光パワーとを制御する制御器と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長帯の光信号を前記第1波長帯と異なる第2波長帯の光信号に変換する波長変換器と、
前記波長変換器の後段に設けられ前記第2波長帯の光信号を増幅するラマン増幅器と、
前記波長変換器の前段に設けられる非線形ファイバと、
前記非線形ファイバへの入力光パワーと、前記ラマン増幅器の出力光パワーとを制御する制御器と、
を有する波長変換増幅器。
【請求項2】
前記ラマン増幅器はラマン増幅用の光ファイバを有し
前記ラマン増幅用の光ファイバの前記第2波長帯における波長分散と、前記非線形ファイバの前記第1波長帯における波長分散は同じ符号をもつ、
請求項1に記載の波長変換増幅器。
【請求項3】
前記非線形ファイバは前記ラマン増幅用の光ファイバよりも大きい非線形係数を有し、前記ラマン増幅用の光ファイバよりも短いファイバ長を有する、
請求項2に記載の波長変換増幅器。
【請求項4】
前記ラマン増幅器の前記出力光パワーと、前記出力光パワーのときに非線形雑音を最小にする前記非線形ファイバの前記入力光パワーとの関係を保持するメモリと、
前記ラマン増幅器の前記出力光パワーをモニタするパワーモニタと、
を有し、
前記制御器は、前記パワーモニタによる前記ラマン増幅器の前記出力光パワーのモニタ結果と、前記メモリに保持された前記関係とに基づいて、前記非線形ファイバへの前記入力光パワーの目標値を設定し、前記非線形ファイバへの前記入力光パワーが前記目標値に近づくように前記非線形ファイバへの前記入力光パワーを制御する、
請求項1に記載の波長変換増幅器。
【請求項5】
前記非線形ファイバの前段に設けられる第1増幅器または可変光減衰器、
を有し、前記制御器は、前記第1増幅器または前記可変光減衰器を制御することで、前記非線形ファイバへの前記入力光パワーを制御する、
請求項4に記載の波長変換増幅器。
【請求項6】
前記非線形ファイバの前段に設けられる第1非線形ファイバ、
を有し、
前記制御器は、前記ラマン増幅器の前記出力光パワーのモニタ結果に基づいて、前記第1非線形ファイバの出力光パワーを制御する、
請求項1に記載の波長変換増幅器。
【請求項7】
前記第1非線形ファイバは、前記ラマン増幅器の出力側の伝送路で用いられる伝送路光ファイバと同じ符号の波長分散をもつ、
請求項6に記載の波長変換増幅器。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の波長変換増幅器と、
前記波長変換増幅器から出力される前記第2波長帯の信号を、前記第2波長帯と異なる波長帯の信号と合波して伝送路に出力する合波器と、
を備える光通信装置。
【請求項9】
波長変換器で第1波長帯の光信号を第2波長帯の光信号に変換し、
前記波長変換器の前段に接続された非線形ファイバへの入力光パワーをモニタして第1モニタ値を取得し、
前記第2波長帯の光信号を前記波長変換器の後段に接続されたラマン増幅器で増幅し、
前記ラマン増幅器の出力光パワーをモニタして第2モニタ値を取得し、
前記第1モニタ値と前記第2モニタ値に基づいて、前記非線形ファイバへの前記入力光パワーと、前記ラマン増幅器の前記出力光パワーとが所定の比率で釣り合うように制御する、
波長変換パワー制御方法。
【請求項10】
第1波長帯の光信号を伝送すると共に、前記第1波長帯と異なる第2波長帯の光信号を増幅するラマン増幅ファイバと、
前記ラマン増幅ファイバからの前記第1波長帯の光信号を前記第2波長帯の光信号に変換する波長変換器と、
前記波長変換器にて波長変換後の前記第2波長帯の光信号を伝送するループ用ファイバと、
前記第1波長帯の光信号と、前記ループ用ファイバからの前記第2波長帯の光信号とを合波する合波部と、
前記ラマン増幅ファイバからの前記第1波長帯の信号光を前記波長変換器に分離出力すると共に、前記ラマン増幅ファイバからの前記第2波長帯の光信号を出力部に分離出力する分波部と、
前記ラマン増幅ファイバを伝送する前記第1波長帯の光信号のパワー及び、前記ラマン増幅ファイバを伝送する前記第2波長帯の光信号のパワーを制御する制御器と、
を有することを特徴とする波長変換増幅器。
【請求項11】
前記ラマン増幅ファイバは、
前記第1波長帯の光信号と前記第2波長帯の光信号とが同一方向に流れることを特徴とする請求項10に記載の波長変換増幅器。
【請求項12】
前記ラマン増幅ファイバは、
前記第1波長帯の光信号と前記第2波長帯の光信号とが逆方向に夫々流れることを特徴とする請求項10に記載の波長変換増幅器。
【請求項13】
前記ラマン増幅ファイバは、
前記第2波長帯の光信号を増幅すると共に、前記第1波長帯の光信号を増幅することを特徴とする請求項10に記載の波長変換増幅器。
【請求項14】
前記ラマン増幅ファイバの分散絶対値が前記第2波長帯の光信号に比較して前記第1波長帯の光信号の方が大きい場合に、前記第2波長帯の光信号を伝送する伝送路に分散調整用ファイバを配置することを特徴とする請求項10に記載の波長変換増幅器。
【請求項15】
前記ラマン増幅ファイバの分散絶対値が前記第1波長帯の光信号に比較して前記第2波長帯の光信号の方が大きい場合に、前記第1波長帯の光信号を伝送する伝送路に分散調整用ファイバを配置することを特徴とする請求項10に記載の波長変換増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、波長変換増幅器、光通信装置、及び波長変換パワー制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信ネットワークの伝送容量を拡大するために、複数の波長帯域を用いたマルチバンド光伝送が有効である。現在、C帯とL帯に対応できるトランスポンダが実用化されているが、C帯よりも短波長のS帯、E帯、O帯や、L帯よりも長波長のU帯を用いることで、広帯域の光通信が実現される。マルチバンドの波長分割多重(WDM:wavelength division multiplexing)システムで、C帯、L帯、及びS帯の光増幅にイオン添加ファイバ増幅器を用い、E帯とU帯で半導体光増幅器やラマン増幅器を用いることが検討されている(たとえば、特許文献1参照)。また、ラマン増幅器に分散補償ファイバを用いる構成が知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-200314号公報
【特許文献2】米国特許第7177073号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体光増幅器は、利得飽和や偏波依存性の観点から、高出力化や低コスト化に課題があると予想される。イオン添加ファイバ増幅器は、材料によって波長帯域が制限され、システム要件から導かれる所要帯域で求められる性能が得られるとは限らない。たとえば、エルビウム(Er)添加ファイバ増幅器(EDFA)は、C帯やL帯の短波長側においては良好な特性を示し、広く実用化されているが、S帯やL帯の長波長側では特性が劣化する。また、E帯、O帯、U帯では信号を増幅するための利得を得ることが困難である。S帯、E帯、O帯の光増幅用に、ツリウム(Tm)やビスマス(Bi)を添加したイオン添加ファイバ増幅器が検討されているが、特性の波長依存性が大きく、性能と信頼性の観点から技術が成熟しているとは言えず、未だ実用レベルに達していない。一方、集中型ラマン増幅器は技術的に成熟した光部品を用いて構成することが可能であるとともに、同一の動作原理でO帯からU帯(1260nm~1675nm)の中の所望の波長帯域に広く対処することが考えられる。しかし、集中型ラマン増幅器で高出力化しようとすると、別の課題が生じる。
【0005】
集中型ラマン増幅器は、増幅効率を高めるために非線形性の高いファイバを利用する。集中型ラマン増幅器を、伝送路への出力側のポストアンプに適用する場合、高出力パワーに起因して信号が劣化するおそれがある。集中型ラマン増幅器を用いたポストアンプの高出力パワーにより、ポストアンプの内部でラマン増幅以外の非線形効果、たとえば、自己位相変調、相互位相変調、四光波混合などの光カー効果が顕著になり、信号波形が歪む。実施形態では、ポストアンプでの非線形効果による波形歪みを抑制した波長変換増幅器と光通信装置を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態において、波長変換増幅器は、第1波長帯の光信号を前記第1波長帯と異なる第2波長帯の光信号に変換する波長変換器と、前記波長変換器の後段に設けられ前記第2波長帯の光信号を増幅するラマン増幅器と、前記波長変換器の前段に設けられる非線形ファイバと、前記非線形ファイバへの入力光パワーと、前記ラマン増幅器の出力光パワーとを制御する制御器と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
ポストアンプでの非線形効果による波形歪みを抑制した波長変換増幅器と光通信装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の波長変換増幅器が適用される光通信装置と光通信システムの模式図である。
【
図2A】本発明に至る過程で考えられる波長変換増幅器の構成を示す模式図である。
【
図2B】波長変換増幅器で用いられる第1増幅器と波長変換器の模式図である。
【
図4】第1実施例の波長変換増幅器の模式図である。
【
図5】
図4の波長変換増幅器の制御器の機能ブロック図である。
【
図6】パワー関係を表す係数の事前設定のフローチャートである。
【
図7】ラマン増幅器の出力パワー制御のフローチャートである。
【
図8】非線形ファイバの入力パワー制御のフローチャートである。
【
図9】第1実施例の波長変換増幅器のパラメータの設計例を示す図である。
【
図10】波長変換増幅器内部の累積分散と非線形位相シフトの関係を示す図である。
【
図11】第2実施例の波長変換増幅器の模式図である。
【
図12】
図11の波長変換増幅器の入出力関係を示す模式図である。
【
図13】
図11の波長変換増幅器の第2制御器のブロック図である。
【
図14】第2制御器のメモリに保持する係数の事前決定のフローチャートである。
【
図15】第1非線形ファイバの出力パワー制御のフローチャートである。
【
図16】第2実施例の波長変換増幅器のパラメータの設計例を示す図である。
【
図17】第3実施例の波長変換増幅器の模式図である。
【
図18】
図17の波長変換増幅器の制御器の機能ブロック図である。
【
図19】出力段光パワー制御のフローチャートである。
【
図20】入力段光パワー制御のフローチャートである。
【
図21】第4実施例の波長変換増幅器の模式図である。
【
図22】
図21の波長変換増幅器の制御器の機能ブロック図である。
【
図23】出力段光パワー制御のフローチャートである。
【
図24】入力段光パワー制御のフローチャートである。
【
図25】第5実施例の波長変換増幅器の模式図である。
【
図26】
図25の波長変換増幅器の制御器の機能ブロック図である。
【
図27】出力段光パワー制御のフローチャートである。
【
図28】入力段光パワー制御のフローチャートである。
【
図29】第6実施例の波長変換増幅器の模式図である。
【
図30】
図29の波長変換増幅器の制御器の機能ブロック図である。
【
図31】第7実施例の波長変換増幅器の模式図である。
【
図32】
図31の波長変換増幅器の制御器の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下で、図面を参照して、実施形態の波長変換パワー制御の具体的な構成と手法を説明する。以下に示す形態は、本開示の技術思想を具現化するための一例であって、開示内容を限定するものではない。各図面に示される構成要素の大きさ、位置関係等は、発明の理解を容易にするために、誇張して描かれている場合がある。同一の構成要素または機能に同一の名称または符号を付けて、重複する説明を省略する場合がある。
【0010】
<光通信装置と光通信システム>
図1は、実施形態の波長変換増幅器20が適用される光通信装置10と、光通信装置10が用いられる光通信システム1の模式図である。光通信システム1は、複数の波長帯域で光信号を波長多重伝送するマルチバンドWDMシステムである。光通信装置10は、光ファイバの伝送路2及び3により、光通信システム1が提供するネットワークに接続されている。光通信装置10は、たとえば、所定の波長帯に含まれる所望の波長の信号を選択的に追加、または分離する光アド・ドロップマルチプレクサ(ОADM)ノードである。
図1の例では、光ファイバ伝送路として入力方路と出力方路がそれぞれ1だけある場合を示しているが、より一般的な複数の入出力方路を有する多方路OADMノードであってもよい。
【0011】
光通信装置10は、伝送路2から受け取った光信号をWDMフィルタ11により、複数の波長帯の信号に分離する。
図1の例では、光通信システム1でC帯(1530~1565nm)、L帯(1565~1625nm)、及びU帯(1625~1675nm)が用いられているが、S帯(1460~1530nm)、E帯(1360~1460nm)等、その他の波長帯が用いられてもよい。また、WDMフィルタによる波長帯の分離は、上記のC帯、L帯、U帯、S帯、E帯の名称や波長範囲の定義にとらわれることなく、その境界をまたいだり、その一部の波長帯域のみを用いるようにしたりしてもよい。光通信装置10に、マルチキャストスイッチ(MCS)19を介して1以上のトランスポンダ30が接続されている。各トランスポンダ30は、送信器(TX)と受信器(RX)を有し、光送受信器とも呼ばれる。各トランスポンダ30から送信された信号は光通信装置10でアドされ、光通信装置10でドロップされた信号を受信する。一般的なOADMノードの構成として知られているように、マルチキャストスイッチ19に代えて、多入力多出力の波長選択スイッチや、アレイ導波路格子(Arrayed Waveguide Grating)などの波長合分波素子で構成してもよい。
【0012】
トランスポンダ30はC帯とL帯の信号を処理可能であるが、その他の帯域の信号を処理する機能を有していない。そのため、光通信装置10で、C帯とL帯以外の波長帯の光信号を、トランスポンダ30で処理可能な波長帯の信号に変換する。
図1の例では、U帯とL帯の間で波長変換が行われるが、U帯とC帯の間で波長変換してもよいし、S帯を用いる場合はS帯とC帯の間、あるいはS帯とL帯の間で波長変換が行われてもよい。
【0013】
WDMフィルタ11で分離されたL帯とC帯の信号は、それぞれL帯用のプリアンプ12-1とC帯用のプリアンプ12-2で増幅されて、波長選択スイッチ(WSS)13-2に入力される。L帯とC帯の信号は、宛先に応じて、光通信装置10でドロップされ、または他の方路に送られ、または光通信装置10をそのまま通過する。WDMフィルタ11で分離されたU帯の信号は、波長変換プリアンプ18でL帯に変換され増幅されて、L帯用のWSS13-1に入力される。L帯に変換された信号も、宛先に応じて光通信装置10でドロップされ、または他の方路に送られ、または光通信装置10をそのまま通過する。
【0014】
光通信装置10でアドされまたは通過するC帯とL帯の信号は、WSS14-2に入力され、L帯用のポストアンプ16-1と、C帯用のポストアンプ16-2で、それぞれ増幅される。光通信装置10でアドされ、またはそのまま通過するL帯の信号の一部は、WSS14-1に入力され、波長変換増幅器20でU帯の信号に変換されて増幅される。増幅されたC帯、L帯、及びU帯の信号は、WDMフィルタ15で合波されて、伝送路3に出力される。
【0015】
伝送路3への出力側のポストアンプとして用いられる波長変換増幅器20は、U帯に再変換された光信号を、非線形歪みを抑制しながら高出力パワーに増幅する。波長変換増幅器20の構成として、波長変換、すなわちパラメトリック増幅のみで高出力パワーを得ることも理論上は可能である。たとえば、周期分極リチウムナイオベート(PPLN:periodically-poled lithium niobate)などの強誘電体に導波路を形成して、強誘電体導波路に発現する2次の非線形効果を利用することが波長変換増幅技術として有望である。しかし、通信波長よりも短波長(たとえば800nm付近)の強い励起光を、強誘電体導波路に入射する必要があり、結晶損傷などのダメージや、長期信頼性に対するリスクが大きい。パラメトリック増幅のみでは、伝送路3に出力する再変換信号光のパワーを十分、かつ安定的に増幅できない可能性がある。そのため、比較的低い光パワーで波長変換動作を行わせ、変換光をラマン増幅器でブーストする構成が考えられる。
【0016】
図2Aは、本発明に至る過程で考えられ得る波長変換増幅器の構成を示す。たとえば、L帯からU帯に変換する波長変換器22の前段で、L帯の信号を第1増幅器21で波長変換に適したパワーレベルに増幅し、波長変換器22から出力されるU帯の信号を、ラマン増幅器23で伝送路3への出力に適したパワーレベルに増幅する。ラマン増幅器23は、ラマン増幅用の光ファイバ231と励起光源232を含み、伝送路3への出力段で局所的に、特定波長帯の光信号を増幅する集中型のラマン増幅器である。
【0017】
図2Bは、第1増幅器21と波長変換器22の構成例を示す。第1増幅器21は、たとえば、コアにErがドープされたErドープファイバ211と、励起光源212と、L帯の信号光と励起光を合波する光カプラ213と、励起光(図中で「Pump」と表記)を除去する光フィルタ214とを有する。波長変換器22は、非線形光学媒質221と、励起光源222と、励起光をL帯の信号光に合波する光カプラ223と、励起光及びL帯の信号光を除去する光フィルタ224を有する。励起光源222から出力される励起光は、非線形光学媒質221で非線形光学効果を生じさせる強度を有するが、伝送路3への出力レベルほどの高パワーは不要である。
【0018】
図2Aと
図2Bの構成では、波長変換器22自体はそれほど高いパワーで駆動されないので、長期信頼性の観点では問題がない。しかし、後段のラマン増幅器23で、伝送路3への出力に必要とされるパワーを実現しようとすると、ラマン増幅用の光ファイバ231の出力端の近傍で、カー効果などの非線形効果により波形歪みが発生してしまう。この非線形効果による波形歪みを抑制するために、実施形態では
図3の構成を採用する。
【0019】
<波長変換増幅器の基本構成>
図3は、実施形態の波長変換増幅器20の模式図である。波長変換増幅器20は、波長変換器22と、波長変換器22の前段に設けられる非線形ファイバ26と、波長変換器22の後段に設けられるラマン増幅器23と、非線形ファイバ26への入力光パワーとラマン増幅器23の出力光パワーとを制御する制御器27と、を有する。非線形ファイバ26の前段に、L帯の光信号を増幅する第1増幅器21が設けられている。
【0020】
波長変換器22は、光通信装置10に接続されるトランスポンダ30で用いられるL帯やC帯の信号を、マルチバンド光伝送で用いられるその他の帯域の信号に変換する。波長変換器22は、
図2Bに示した構成を有し、たとえば、非線形光学効果を生じさせるのに必要とされる程度のパワーで駆動される。波長変換器22は、L帯の信号をU帯の信号に変換するが、この例に限定されず、C帯からU帯、C帯からS帯、L帯からS帯など、他の波長帯の間での波長変換であってもよい。
【0021】
ラマン増幅器23は、ラマン増幅用の光ファイバ231と、励起光源232と、励起光源232から出力された励起光を光ファイバ231に入射する光フィルタ234と、を有する。光ファイバ231は、U帯の信号をラマン増幅することに適したファイバである。励起光源232は、U帯の信号よりもラマンシフトに相当する波長分(100nm程度)だけ短い波長の励起光を出力する。たとえば1650nmの信号光に対して、1520~1580nmの励起光を出力する。励起光の入射により、光ファイバ231の内部で誘導ラマン散乱が発生し、U帯の信号光が増幅される。この例では、波長依存性の光フィルタ234によって、励起光が信号光と逆方向に入射される後方励起方式が用いられている。後方励起により、励起光のパワー揺らぎ、すなわちノイズが平均化され、U帯内のパワースペクトルの変動が抑制される。
【0022】
第1増幅器21は、
図2Bに示した構成を有し、波長変換器22に入射するL帯の信号を増幅する。第1増幅器21と波長変換器22の間に配置される非線形ファイバ26は、ラマン増幅器23で発生する非線形歪みを打ち消すために用いられる。換言すると、ラマン増幅器23で発生するカー効果歪みなどの非線形歪みを、非線形ファイバ26で発生するカー効果歪みによって予等化する。
【0023】
ラマン増幅器23で発生するカー効果歪みを非線形ファイバ26のカー効果歪みで打ち消すためには、ラマン増幅器23で発生する非線形位相シフト量と、非線形ファイバ26で発生する非線形位相シフト量とが釣り合っている必要がある。各ファイバで発生する非線形位相シフト量は、それぞれのファイバを伝搬する信号の光パワーに比例する。そのため、制御器27は、非線形ファイバ26への入力光パワーと、ラマン増幅器23の出力光パワーを適切な比率に設定し、ラマン増幅器23で発生するU帯での非線形位相シフト量を、非線形ファイバ26で発生するL帯での非線形位相シフト量がおおむね釣り合うように制御する。たとえば、制御器27は、ラマン増幅器23の励起光源232と、第1増幅器21の励起光源212(
図2B参照)を制御することで、非線形ファイバ26への入力光パワーとラマン増幅器23の出力光パワーを調整する。第1増幅器21に代えて、可変光減衰器を用いて非線形ファイバ26への入力光パワーを制御してもよい。
【0024】
波長変換器22は、ある波長帯(たとえばL帯)に含まれるWDM信号を、別の波長帯(たとえばU帯)のWDM信号に一括して変換する際に、位相共役作用をもたらす。位相共役とは、入射する信号光と、出力される変換光において、光の場の位相項の符号が正負反転させた関係にあることをいう。位相共役作用により、励起光源222(
図2B参照)から出力される励起光の波長を中心として、波長変換前のL帯の信号のスペクトルと、波長変換後のU帯の信号のスペクトルが反転する。そのため、非線形ファイバ26の波長分散は、ラマン増幅用の光ファイバ231の波長分散と同じ符号(プラスまたはマイナス)をもつように設計される。
【0025】
波長変換器22の入射側と出射側で同じ符号の非線形性を持たせ、かつ、ラマン増幅器23の出力光パワーと非線形ファイバ26への入力光パワーを釣り合わせることで、ラマン増幅器23のカー効果歪みを、非線形ファイバ26のカー効果歪みで予等化できる。
【0026】
予等化の効果は、非線形ファイバ26の入力端の付近で損失を受けながら発生する非線形位相シフトと、ラマン増幅用の光ファイバ231の出力端付近で利得を受けながら発生する非線形位相シフトが、波長分散で正規化した距離で見て波長変換器22の位置に対して対称になるときに最大となる。この効果については、
図10を参照してより詳しく説明する。もっとも、非線形ファイバ26の分散係数が十分に小さいとき、すなわち分散値がゼロに近いときは、位置の対称性の要求に対するトレランス(許容)は大きくなる。
【0027】
非線形ファイバ26の非線形係数γは、ラマン増幅用の光ファイバ231の非線形係数よりも大きく、かつ非線形ファイバ26のファイバ長はラマン増幅用の光ファイバ231よりも短いことが好ましい。これにより、非線形ファイバ26で生じる光損失を低減し、かつ、非線形ファイバ26とラマン増幅器23の非線形性を釣り合わせる。以下で、波長変換増幅器20の具体的な動作例を説明する。
【0028】
<第1実施例>
図4は、第1実施例の波長変換増幅器20Aの模式図である。波長変換増幅器20Aは、波長変換器22と、波長変換器22の前段に設けられる非線形ファイバ26と、波長変換器22の後段に設けられるラマン増幅器23と、制御器27Aと、を有する。非線形ファイバ26の前段に第1増幅器21を設けてもよい。第1増幅器21と波長変換器22の構成は、
図2Bに示した構成と同様である。ラマン増幅器23は、
図3と同様に後方励起型のラマン増幅器であってもよい。制御器27Aは、プロセッサ271と、メモリ272と、パワーモニタ273を有する。
【0029】
非線形ファイバ26の入射側で、非線形ファイバ26への入力光の一部がパワースプリッタ28で分岐され、非線形ファイバ26への入力光パワーが制御器27Aのパワーモニタ273でモニタされる。ラマン増幅器23の出射側で、ラマン増幅器23の出力光の一部がパワースプリッタ29で分岐され、ラマン増幅器23の出力光パワーが制御器27Aのパワーモニタ273でモニタされる。
【0030】
メモリ272は、ラマン増幅器23の出力光パワーと、その出力光パワーレベルのときに非線形雑音を最小にする非線形ファイバ26の入力光パワーとの関係を保存している。ラマン増幅器23の出力光パワーと、そのパワーレベルのときに非線形雑音を最小にする非線形ファイバ26の入力光パワーとの関係は、テーブルの形式で記述されていてもよいし、関数その他の関係式の形で記述されていてもよい。あるいは、上記のパワー関係から求められる係数値をメモリ272に保存してもよい。係数値は、ラマン増幅器の出力光パワーと、非線形雑音を最小にする非線形ファイバ26の入力光パワーの比、または差であってもよい。
【0031】
プロセッサ271は、パワーモニタ273で得られたモニタ結果と、メモリ272に保存された関係または係数値とに基づいて、非線形ファイバ26の入力光パワーと、ラマン増幅器23の出力光パワーを制御する。非線形ファイバ26の入力光パワーは、第1増幅器21の励起光源212を制御することで制御されてもよい。ラマン増幅器23の出力光パワーの制御は、励起光源232を制御することで制御されてもよい。このパワー制御により、非線形ファイバ26への入力光パワーと、ラマン増幅器23の出力光パワーとを適切な比率で釣り合わせて、ラマン増幅用の光ファイバ231の出力端で生じるカー効果歪みの大部分を、非線形ファイバ26の入力端で生じるカー効果歪で相殺する。
【0032】
図5は、制御器27Aの機能ブロック図である。制御器27Aは、第1パワーモニタ回路2731、第2パワーモニタ回路2732、第1制御回路2711、第2制御回路2712、目標値計算器2713、及び係数保持部2721を有する。第1制御回路2711と、第2制御回路2712と、目標値計算器2713は、プロセッサ271によって実現される。第1パワーモニタ回路2731と第2パワーモニタ回路2732は、パワーモニタ273によって実現される。係数保持部2721は、メモリ272により実現される。係数保持部2721は、ラマン増幅器23の出力光パワーと、その出力光パワーのときに非線形雑音を最小にする非線形ファイバ26の入力光パワーとの関係を表す係数を保持する。係数は、ラマン増幅器23の出力光パワーと、その出力光パワーのときに非線形雑音を最小にする非線形ファイバ26の入力光パワーとの比、差分などで求められる。
【0033】
ラマン増幅器23の出力光の一部を分岐した光が、第2パワーモニタ回路2732に入力され、そのパワーがモニタされる。目標値計算器2713は、第2パワーモニタ回路2732のモニタ結果(P_2)と、係数保持部2721に保存されている係数とに基づいて、非線形ファイバ26への入力光パワーの目標値を計算する。この目標値をP_target1とする。目標値P_target1は、第1制御回路2711に入力される。
【0034】
他方、非線形ファイバ26への入力光の一部を分岐した光が、第1パワーモニタ回路2731に入力され、そのパワーがモニタされる。第1パワーモニタ回路2731のモニタ結果(P_1)は、第1制御回路2711に入力される。第1制御回路2711は、P_1とP_target1の差がゼロに近づくように、非線形ファイバ26への入力光パワー制御信号を出力する。この入力光パワー制御信号は、第1増幅器21に入力され、励起光源212(
図2B参照)が制御される。
【0035】
第2パワーモニタ回路2732のモニタ結果(P_2)は、目標値計算器1713に入力されるとともに、第2制御回路2712に入力される。第2制御回路2712には、伝送路3への出力に必要なパワーP_target2が入力または設定されている。第2制御回路2712は、ラマン増幅器23からの出力光のモニタ値であるP_2を、設定されたパワーP_target2に近づけるための出力光パワー制御信号をラマン増幅器23に出力する。この出力光パワー制御信号により、ラマン増幅器23の励起光源232が制御される。
【0036】
ラマン増幅器23の励起光源232の制御は、
(a)励起光源232に注入される駆動電流を制御する、
(b)励起光源232の後段に可変光減衰器(VOA:variable optical attenuator)を設けてVOAを制御する、
(c)ラマン増幅用の光ファイバ231の出力端に信号の光パワーを調整するVOAを設けてVOAを制御する、
(d)上記の(a)~(c)の2つ以上を組み合わせる、
等の方法がある。
【0037】
制御器27Aの制御により、非線形ファイバ26への入力光のパワーと、ラマン増幅器23の出力光パワーを適切な比率で釣り合わせ、ラマン増幅用の光ファイバ231の出力端で生じるカー効果歪みを、非線形ファイバ26の入力端のカー効果歪みで予等化する。
【0038】
図6は、係数保持部2721に保持する係数の事前設定のフローチャートである。ラマン増幅器23の出力モニタ値(P_2)と、その出力モニタ値のときに非線形雑音(または歪み)を最小にする非線形ファイバ26の入力モニタ値(P_1)との関係を、事前に測定する(S11)。非線形雑音(または歪み)は、波長変換”増幅”の過程で発生する目的の周波数以外の周波数成分、および位相変動成分である。P_1とP_2の関係から、ラマン増幅器23の出力光パワーP_2の値ごとにパワー関係を表す係数を求めて、メモリ272に保存する(S12)。求めた係数をメモリ272で実現される係数保持部2721に保存することで、制御器27Aは、非線形ファイバ26への入力光のパワーレベルの目標値P_target1を適切に設定できる。
【0039】
図7は、ラマン増幅器23の出力パワー制御のフローチャートである。この制御フローは、光通信装置10の運用中に繰り返し実施される。第2パワーモニタ回路2732で、ラマン増幅器23の出力光のパワーをモニタして、モニタ結果のパワーP_2を取得する(S21)。第2制御回路2712で、パワーP_2と目標パワーP_target2との差をゼロに近づける制御信号を生成し、出力する(S22)。目標パワーP_target2は、あらかじめメモリ272に保存されてメモリ272から読み出されてもよいし、伝送路3の状況に応じてオペレータにより書き換えられてもよい。この制御により、光通信装置10の運用中に、リアルタイムでラマン増幅器23の出力光パワーを適切なレベルに維持できる。
【0040】
図8は、非線形ファイバ26の入力パワー制御のフローチャートである。この制御フローも、光通信装置10の運用中に繰り返し実施される。第1パワーモニタ回路2731で非線形ファイバ26への入力光パワーをモニタして、パワーP_1を取得する(S31)。第2パワーモニタ回路2732で、ラマン増幅器23の出力光のパワーをモニタして、パワーP_2を取得する(S32)。ステップS31とS32は同時に行われてもよい。
【0041】
目標値計算器2713で、パワーP_2と、係数保持部2721に保持されている係数とに基づいて、非線形ファイバ26への入力光パワーの目標値P_target1を算出する(S33)。第1制御回路2711で、P_1とP_target1の差がゼロに近づくように、非線形ファイバ26の入力光パワーを制御する制御信号を生成し出力する(S34)。この制御信号は、たとえば、第1増幅器21の励起光源212の制御に用いられる。
【0042】
図6から
図8の制御により、非線形ファイバ26への入力光パワーと、ラマン増幅器23の出力光パワーを釣り合わせて、カー効果歪みを抑制しつつ、変換光を伝送路3への出力に適したレベルに増幅することができる。
【0043】
図9は、第1実施例の波長変換増幅器20Aのパラメータの設計例を示す。
図9の(A)から(D)で、横軸はデバイス内部のファイバ伝送距離、より具体的には、非線形ファイバ26への入射端から、波長変換器22を経て、ラマン増幅用の光ファイバ231の出射端までの伝送距離を示す。
図9の(A)の縦軸は、相対信号光パワーP[dB]、(B)の縦軸は非線形係数γ、(C)の縦軸は、波長変換増幅器20Aの各位置で発生する波長分散あたりの非線形位相シフト、(D)の縦軸は、累積分散である。(C)の非線形位相シフトは、相対信号光パワーPに非線形係数γを乗算したものである。これを波長分散Dで割り算して、波長分散あたりの、すなわち波長分散で正規化された非線形位相シフトとしている。波長分散で正規化された非線形位相シフトの累積値は、カー効果歪みを表す。
【0044】
図9の(A)と(B)で、実線(b)は波長変換がロスレスの場合の特性値を示す。破線(a)は波長変換に正味利得がある場合の特性値、破線(c)は波長変換が損失を伴う場合の特性値を示す。
図9の(A)を参照すると、非線形ファイバ26に入射したL帯の信号光の相対パワーは、非線形ファイバ26に沿った伝搬過程で徐々に低減する。波長変換器22でU帯に変換された変換光は、ラマン増幅器23で後方励起されて、パワーが徐々に増大する。ラマン増幅用の光ファイバ231の出力端では、伝送路3への出力に適したレベルにまで増幅されている。
【0045】
図9の(B)を参照すると、非線形ファイバ26の非線形係数は、ラマン増幅用の光ファイバ231の非線形係数よりも大きく設定されている。一方、非線形ファイバ26の長さ(伝送距離)は、ラマン増幅用の光ファイバ231の長さよりも短い。非線形ファイバ26の長さを短くすることで、非線形ファイバ26での損失(
図9の(A)参照)を小さくする。長いラマン増幅用の光ファイバ231で発生する非線形歪みを、短い非線形ファイバ26でキャンセルするために、非線形ファイバ26の非線形係数をラマン増幅用の光ファイバ231の非線形係数よりも大きくする。
【0046】
図9の(C)を参照すると、波長分散あたりの非線形位相シフト、すなわちカー効果歪みは、非線形ファイバ26の伝送にしたがって小さくなるが、ラマン増幅用の光ファイバ231の伝送過程で徐々に大きくなる。波長変換前後の破線で示す領域は、局所分散係数で正規化した非線形位相シフトが変動し得る領域を示す。破線の領域では、非線形位相シフトの絶対値が小さいため、カー効果歪みの大きさが波長変換器を境にして互いにずれていてもカー効果歪みの相殺にはそれほど影響しない。波長分散あたりの非線形位相シフトは、非線形ファイバ26の入力端付近と、ラマン増幅用の光ファイバ231の出力端付近とでほぼ等しくなっていればよい。
【0047】
図9の(D)を参照すると、非線形ファイバ26(伝送距離LHNLFと表記)の累積分散(DHNLFLHNLF)と、ラマン増幅用の光ファイバ231(出射端での伝送距離はLHNLF+LRF)の累積分散の大きさは等しく、同じ符号(方向)で変化する。これは、非線形ファイバ26とラマン増幅用の光ファイバ231で累積分散の大きさが釣り合っていることを意味する。なお、非線形ファイバ26の累積分散は波長変換前の信号波長(たとえばL帯)での値、ラマン増幅用の光ファイバ231の累積分散は波長変換後の信号波長(たとえばU帯)で測定される値である点に注意が必要である。波長変換器22の位相共役作用により、非線形ファイバ26の入力端からみたときに、累積分散はあたかも、破線で示すようにラマン増幅用の光ファイバ231の出力端に向かって減少しているようにみえる。波長変換の位相共役作用と、非線形ファイバの非線形性とを利用して、ラマン増幅用の光ファイバ231で発生するカー効果歪みを相殺することができる。
【0048】
図10は、波長変換増幅器20Aの内部の累積分散と非線形位相シフトの関係を示す。非線形ファイバ26の入力端から波長変換器22に向かって信号光が伝搬するにつれて、累積分散は増大する一方、信号光のパワーは減衰するため、非線形ファイバ26での当該箇所で発生する非線形位相シフト(γP)は低減する。波長変換器22を超えてラマン増幅器23の出力端に向かって信号光が伝搬するにつれて、累積分散と信号光のパワーがともに増大するため、ラマン増幅用の光ファイバ231での非線形位相シフト(γP)が増大する。
【0049】
波長変換に伴う位相共役作用を利用して、非線形ファイバ26内のカー効果歪みとラマン増幅用の光ファイバ231内のカー効果歪みを相殺する。網掛けの領域Sは、非線形ファイバ26でγPと累積分散とが描く軌跡、ラマン増幅用の光ファイバ231でγPと累積分散とが描く軌跡との対称性が重要な領域である。非線形位相シフトが小さい点線で示す領域では、非線形位相シフトの変化の対称性に対する要求は高くない。非線形ファイバ26とラマン増幅用の光ファイバ231の分散の方向を合わせ、かつ、網掛けの領域Sで非線形性を釣り合わせることで、カー歪み効果を相殺することができる。
【0050】
<第2実施例>
図11は、第2実施例の波長変換増幅器20Bの模式図である。第2実施形態では、波長変換器22の前段に、第1非線形ファイバ261と、第2非線形ファイバ262を配置する。第2非線形ファイバ262は、第1実施例の非線形ファイバ26に相当する。第2非線形ファイバ262の前段に、第1非線形ファイバ261を配置する。波長変換器22で波長変換され、ラマン増幅器23で増幅された信号は、WDMフィルタ15で他の波長帯の光信号と合波されて、伝送路3に出力される。第2非線形ファイバ262の前段に第1非線形ファイバ261を配置することで、伝送路3で発生するカー効果歪みを追加で補償する。
【0051】
第1非線形ファイバ261は、励起光源31により、光学フィルタ32を介して、後方励起される。第1非線形ファイバ261は、伝送路3で発生するカー効果歪みの補償を実現するとともに、入力されたL帯の信号を増幅する。この増幅効果により、第1増幅器21を省略してもよい。この場合、第1非線形ファイバ261と励起光源31は、追加の歪み補償器として機能すると同時に、入力するL帯の信号を増幅する増幅器としても機能する。
【0052】
第1実施例と同じく、第2非線形ファイバ262への入力光の一部がパワースプリッタ28で分岐されて制御器27Bへ入力される。また、ラマン増幅器23の出力光の一部がパワースプリッタ29で分岐されて制御器27Bに入力される。制御器27Bは、プロセッサ271と、メモリ272と、パワーモニタ273を有し、第2非線形ファイバ262への入力光パワーと、ラマン増幅器23の出力光パワーとを適切な比率で釣り合わせる。第2非線形ファイバ262への入力光パワーを制御するために、第2非線形ファイバ262の前段に設けられたVOA34が制御されてもよい。なおVOA34は、減衰器に代えて第1増幅器21に類似する増幅器として構成されてもよい。
【0053】
第1非線形ファイバ261の出力光の一部がパワースプリッタ33で分岐され、制御器27Bに入力される。制御器27Bは、パワースプリッタ33で分岐されたL帯の信号光のパワーモニタ結果に基づいて、励起光源31を制御する。
【0054】
図12は、波長変換増幅器20Bの入出力関係を示す模式図である。波長変換増幅器20Bの制御器27Bは、第1制御器27-1と第2制御器27-2を有する。第1制御器27-1は、第1実施例の制御器27Aとほぼ同じ構成と機能を有する。第1実施例の制御器27Aが非線形ファイバ26への入力パワーを制御するために第1増幅器21を制御するのに対し、第2実施例の第1制御器27-1は、第2非線形ファイバ262の入力光パワーを制御するためにVOA34を制御する。その他の構成と機能は、制御器27Aと同じであり、重複する説明を省略する。
【0055】
第2制御器27-2は、第1非線形ファイバ261の出力光のモニタ結果に基づいて、第1非線形ファイバ261の出力光パワーを制御する。第1非線形ファイバ261の出力光パワーは、後方励起用の励起光源31を制御することで制御され得る。第2制御器27-2は励起光源31を制御するための機能構成を有する。
【0056】
図13は、第2制御器27-2の機能ブロック図である。第2制御器27-2は、パワーモニタ回路2733と、目標値計算器2715と、制御信号生成器2716と、係数保持部2721-2を有する。目標値計算器2715と制御信号生成器2716は、プロセッサ271によって実現される。パワーモニタ回路2733は、パワーモニタ273によって実現される。係数保持部2721-2は、メモリ272により実現される。
【0057】
係数保持部2721-2は、ラマン増幅器23の出力光パワーと、その出力光パワーのときに伝送路3で発生する非線形雑音を最小にする第1非線形ファイバ261の出力光パワーとの関係を表す係数を保持する。係数は、ラマン増幅器23の出力光パワーと、第1非線形ファイバ261の出力光パワーとの比、差分などで求められる。この係数は、伝送路3のファイバの種類に応じて異なるため、使用されているU帯伝送路ファイバの種類に応じて係数が係数保持部2721-2に記録される。
【0058】
第1制御器27-1で得られたラマン増幅器23の出力光パワーのモニタ結果(P_2)と、係数保持部2721に保存されている第1非線形ファイバ261用の係数は、目標値計算器2715に入力される。目標値計算器2715は、モニタ結果P_2と、係数とに基づいて、第1非線形ファイバ261の出力パワーの目標値P_target0を算出する。
【0059】
パワースプリッタ33で分岐された第1非線形ファイバ261の出力光の一部は、パワーモニタ回路2733でモニタされる。モニタ結果P_0と、目標値P_target0は、制御信号生成器2716に入力される。制御信号生成器2716は、第1非線形ファイバ261の出力パワーのモニタ結果P_0と、目標値P_target0との差分がゼロに近づくように、第1非線形ファイバ261の出力パワー制御信号を生成し出力する。この制御信号によって励起光源31が制御されて、第1非線形ファイバ261の後方励起の強さが制御される。
【0060】
第2実施例の構成は、第2非線形ファイバ262によるラマン増幅器23の出力端でのカー効果歪みの相殺に加えて、第1非線形ファイバ261を後方励起ラマン増幅することで、伝送路3でのカー効果歪みの影響を追加で相殺する。
【0061】
図14は、第2制御器27-2に保持する係数の事前設定のフローチャートである。伝送路3のファイバの種類ごとに、ラマン増幅器23の出力モニタ値(P_2)と、そのパワーのときに非線形雑音を最小にする第1非線形ファイバ261の出力モニタ値(P_0)との関係を、事前に測定する(S41)。P_0とP_2の関係から、第2制御器27-2で用いられる係数を求めて、係数保持部2721-2に保存する(S42)。伝送路3のファイバの種類ごとに係数を設定して、処理を終了する。
【0062】
図15は、第1非線形ファイバ261の出力パワー制御のフローチャートである。この制御フローは、光通信装置10の運用中に第2制御器27-2によって実行される。まず、伝送路3のファイバの種類を選択し、設定する(S51)。パワーモニタ回路2733で第1非線形ファイバ261の出力光パワーをモニタして、パワーP_0を取得する(S52)。第1制御器27-1から、ラマン増幅器23の出力光パワーのモニタ結果P_2を取得する(S53)。
【0063】
目標値計算器2715は、伝送路3のファイバの種類に応じた係数を、係数保持部2721-2から読み出し、係数とモニタ結果P_2とから、第1非線形ファイバ261の入力パワーの目標値P_target0を算出する(S54)。制御信号生成器2716は、第1非線形ファイバ261の出力パワーのモニタ結果P_0と、目標値P_target0との差分がゼロに近づくように第1非線形ファイバ261の出力光パワーの制御信号を生成し、更新する(S55)。この制御信号は、励起光源31を制御して第1非線形ファイバ261による補償量を制御するために用いられる。光通信装置10の運用中に、
図15の処理は繰り返し行われる。
【0064】
図16は、第2実施例の波長変換増幅器20Bのパラメータの設計例を示す。
図16の(A)から(D)で、横軸はデバイス内部のファイバ伝送距離、より具体的には、第1非線形ファイバ261の入力端から、第2非線形ファイバ262、波長変換器22、及びマラン増幅用の光ファイバ231を経て、伝送路3の途中までの伝送距離を示す。
【0065】
図16の(A)の縦軸は、相対信号光パワーP[dB]、(B)の縦軸は非線形係数γ、(C)の縦軸は、波長変換増幅器20Aの各位置で発生する波長分散あたりの非線形位相シフト、(D)の縦軸は、累積分散である。(C)の非線形位相シフトは、相対信号光パワーPに非線形係数γを乗算したものである。
【0066】
図16の(A)を参照すると、第1非線形ファイバ261に入射したL帯の信号光は、後方励起により増幅されるが、第2非線形ファイバ262内の伝搬により、徐々にパワーが減少する。波長変換器22でU帯に変換された変換光は、ラマン増幅器23で後方励起されて、パワーが徐々に増大する。WDMフィルタ15での合波により損失が生じ、以降は伝送路3を伝搬することに伴って徐々に相対信号光パワーが減少する。
【0067】
図16の(B)を参照すると、第1非線形ファイバ261と第2非線形ファイバ262の非線形係数γは、ラマン増幅用の光ファイバ231の非線形係数よりも大きく設定されている。一方、第2非線形ファイバ162の長さは、ラマン増幅用の光ファイバ231の長さよりも短い。第2非線形ファイバ262の長さを短くすることで、第2非線形ファイバ262での損失(
図16の(A)参照)を小さくする。短い第1非線形ファイバ261と第2非線形ファイバ262で、長い伝送路3と長いラマン増幅用の光ファイバ231で発生する非線形性をそれぞれキャンセルするために、第1非線形ファイバ261と第2非線形ファイバ262の非線形係数を、ラマン増幅用の光ファイバ231や伝送路3の非線形係数よりも大きくする。
【0068】
図16の(C)を参照すると、波長分散あたりの非線形位相シフト、すなわちカー効果歪みの発生は、第1非線形ファイバ261内を伝搬するとともに増加するが、第2非線形ファイバ262の伝搬に伴って小さくなる。カー効果歪みの発生量は、波長変換を経てラマン増幅用の光ファイバ231の伝送過程で徐々に大きくなる。波長変換前後の破線で示す領域で、第2非線形ファイバ262で生じるカー効果歪みとラマン増幅器23で生じるカー効果歪みの大きさがずれていても、第2非線形ファイバ262の入力端付近と、ラマン増幅用の光ファイバ231の出力端付近でほぼ等しくなっていればよい。
【0069】
図16の(D)を参照すると、第2非線形ファイバ262の累積分散と、ラマン増幅用の光ファイバ231の累積分散の大きさは等しく、同じ符号(方向)で変化する。また、第1非線形ファイバ261の累積分散と、伝送路3の一部での累積分散の大きさは等しく、同じ符号(方向)で変化する。第1非線形ファイバ261と伝送路3の一部での累積分散の大きさと、第2非線形ファイバ262とラマン増幅器23の累積分散の大きさは等しくなっている。
【0070】
波長変換器22の位相共役作用により、第2非線形ファイバ262の入力端からみたときに、累積分散は、あたかも破線のようにラマン増幅用の光ファイバ231の出力端に向かって減少しているようにみえる。また、伝送路3の分散は、あたかも破線のように、減少しているように見える。これにより、波長変換の位相共役作用と、第1非線形ファイバ、及び第2非線形ファイバ262の非線形性を利用して、ラマン増幅器23の出力段で発生するカー効果歪みを相殺することができる。
【0071】
以上、特定の構成例に基づいて光通信装置10で用いられる波長変換増幅器の構成と動作を述べてきたが、本開示は上述した構成または動作に限定されない。伝送路3への出力段のポストアンプとして、L帯からU帯への変換だけではなく、C帯からU帯、C帯からS帯、L帯からS帯などへの変化にも実施形態の構成と手法が適用される。ポストアンプとして伝送路3への出力に必要なパワーまで増幅する際に生じるカー効果歪みを、波長変換器22の前段に設けた非線形ファイバの分散と、波長変換器22の位相共役作用とによって、相殺する。これにより、ポストアンプで発生する光カー効果による信号劣化を抑制した波長変換増幅器と光通信装置が実現される。
【0072】
例えば、第1実施例の波長変換増幅器20では、第1増幅器21と、非線形ファイバ26と、波長変換器22と、ラマン増幅器23とを有し、波長変換器22の前後で逆相の同じ量の非線形位相雑音を発生させて相殺する場合を例示した。その結果、波長変換増幅器20では、非線形効果による波形歪み、すなわち、非線形位相雑音の影響を抑制できる。
【0073】
しかしながら、波長変換増幅器20では、波長変換器22前段に配置された非線形ファイバ26と、波長変換器22後段に配置されたラマン増幅器23を構成するラマン増幅用の光ファイバ231との2本の集中ラマン用の非線形ファイバが必要となる。その結果、部品コストが高くなることは勿論のこと、波長変換増幅器20の製品サイズが大型化してしまう。
【0074】
そこで、非線形ファイバ26を無くすことで部品コストの抑制及び製品サイズの小型化が図れる波長変換増幅器が求められている。そこで、その実施の形態につき、第3実施例として以下に説明する。
【0075】
<第3実施例>
図17は、第3実施例の波長変換増幅器20Cの模式図である。
図17に示す波長変換増幅器20Cは、入力部201と、増幅器21Aと、ラマン増幅ファイバ41と、減衰器45と、波長変換器22Aと、ループ用ファイバ42と、第1カプラ43と、第2カプラ44と、出力部202と、制御器27Cと、を有する。
【0076】
増幅器21Aは、入力部201と第1カプラ43との間に接続し、入力部201から入力された第1波長帯、例えば、L帯の光信号を増幅する。ラマン増幅ファイバ41は、第1カプラ43と第2カプラ44との間に接続し、増幅器21Aにて増幅後のL帯の光信号を透過すると共に、第2波長帯、例えば、U帯の光信号を増幅する。尚、ラマン増幅ファイバ41に求められるL帯及びU帯の光信号に対する特性は、L帯に対してもU帯に対しても波長分散が同じ符号(+又は-)とする。その結果、L帯とU帯に対するラマン増幅ファイバ41の波長分散の符号が同じ場合、L帯の光信号に加わった波長分散歪みは波長変換後のU帯の光信号に対する波長分散歪みと相殺できる。その一方で、L帯及びU帯に対するラマン増幅ファイバ41の波長分散の符号が異なる場合、L帯とU帯にそれぞれ加わる波長分散歪みが相殺できないため、伝送性能の劣化が避けられない。
【0077】
減衰器45は、第2カプラ44と波長変換器22Aとの間に接続し、第2カプラ44からのL帯の光信号を減衰する。波長変換器22Aは、減衰器45とループ用ファイバ42との間に接続し、減衰器45にて減衰後のL帯の光信号をU帯の光信号に変換する。ループ用ファイバ42は、波長変換器22Aと第1カプラ43との間を接続し、波長変換器22Aにて波長変換後のU帯の光信号を第1カプラ43に伝送する。
【0078】
第1カプラ43は、増幅器21Aと接続する第1入力ポートと、ループ用ファイバ42と接続する第2入力ポートと、ラマン増幅ファイバ41と接続する出力ポートとを有する合波部である。第1カプラ43は、増幅器21AからのL帯の光信号と、ループ用ファイバ42からのU帯の光信号とを合波し、合波後の光信号をラマン増幅ファイバ41に出力する。
【0079】
第2カプラ44は、ラマン増幅ファイバ41と接続する入力ポートと、減衰器45と接続する第1出力ポートと、出力部202と接続する第2出力ポートと、を有する分波部である。第2カプラ44は、ラマン増幅ファイバ41からのL帯の信号光を減衰器45に分離出力すると共に、ラマン増幅ファイバ41からのU帯の光信号を出力部202に分離出力する。
【0080】
制御器27Cは、ラマン増幅ファイバ41を伝送するL帯の光信号のパワーを調整する増幅器21Aを制御すると共に、ラマン増幅ファイバ41を伝送するU帯の光信号のパワーを調整するラマン増幅ファイバ41の第1励起光源51を制御する。
【0081】
波長変換増幅器20Cは、第1スプリッタ61と、第2スプリッタ62と、第1励起光源51と、第1フィルタ52とを有する。第1スプリッタ61は、増幅器21Aと第1カプラ43との間に配置され、増幅器21Aにて増幅後のL帯の光信号の一部を分岐する。第2スプリッタ62は、第2カプラ44と出力部202との間に配置され、第2カプラ44にて分波後のU帯の光信号の一部を分岐する。第1励起光源51は、ラマン増幅ファイバ41に入力するU帯の励起光を生成する。第1フィルタ52は、ラマン増幅ファイバ41に配置し、第1励起光源51からのU帯の励起光をラマン増幅ファイバ41に入力する。ラマン増幅ファイバ41は、U帯の励起光に応じて第1カプラ43からのU帯の光信号を増幅する。
【0082】
図18は、
図17の波長変換増幅器20Cの制御器27Cの機能ブロック図である。
図18に示す制御器27Cは、第3パワーモニタ回路273Aと、第4パワーモニタ回路273Bと、係数保持部272Aと、第1目標値計算器274Aと、第3制御回路271Aと、第4制御回路271Bと、を有する。
【0083】
第3パワーモニタ回路273Aは、第1スプリッタ61からのL帯の光信号のパワーモニタ値P_1を取得する。第4パワーモニタ回路273Bは、第2スプリッタ62からのU帯の光信号のパワーモニタ値P_2を取得する。
【0084】
第1目標値計算器274Aは、保持中の係数に応じて第2カプラ44と出力部202との間を流れるU帯の光信号の非線形位相雑音の影響を抑制すべく、増幅器21Aの出力であるL帯の光信号のパワーの目標値、例えば20dBmを算出する。
【0085】
第3制御回路271Aは、増幅器21Aにて増幅するL帯の光信号のパワーが目標値となるように増幅器21Aを制御する第3パワー制御信号を生成する。第4制御回路271Bは、ラマン増幅ファイバ41にて増幅するU帯の光信号のパワーが目標値となるように、第1励起光源51を制御する第4パワー制御信号を生成する。
【0086】
次に第3実施例の波長変換増幅器20Cの動作について説明する。増幅器21Aは、例えば、入力部201から、例えば、10dBmのL帯の光信号R1を入力した場合、制御器27Cからの第3パワー制御信号に応じてL帯の光信号R1を20dBmに増幅する。更に、増幅器21Aは、増幅後の20dBmのL帯の光信号R2を、第1カプラ43経由でラマン増幅ファイバ41に出力する。
【0087】
第2カプラ44は、ラマン増幅ファイバ41からの20dBmのL帯の光信号R2を減衰器45に分離出力する。減衰器45は、第2カプラ44から分離出力された20dBmのL帯の光信号R2を10dBmに減衰し、減衰後の10dBmのL帯の光信号R3を波長変換器22Aに出力する。
【0088】
波長変換器22Aは、10dBmのL帯の光信号R3を10dBmのU帯の光信号R4に波長変換し、波長変換後の10dBmのU帯の光信号R4をループ用ファイバ42に出力する。第1カプラ43は、ループ用ファイバ42からの10dBmのU帯の光信号R4と、増幅器21Aからの20dBmのL帯の光信号R2とを合波し、合波後の光信号をラマン増幅ファイバ41に出力する。
【0089】
ラマン増幅ファイバ41は、第1励起光源51のU帯の励起光に応じて、合波後の光信号の内、10dBmのU帯の光信号R4を20dBmに増幅し、増幅後の20dBmのU帯の光信号R5を第2カプラ44に出力する。制御器27Cは、第2スプリッタ62を通じてU帯の光信号の一部を抽出することでパワーモニタ値P_2を得る。制御器27Cは、パワーモニタ値P_2に基づき、ラマン増幅ファイバ41に出力するU帯の光信号R5が20dBmになるようにU帯の励起光を生成する第4パワー制御信号を第1励起光源51に出力する。第1励起光源51は、第4パワー制御信号に応じてU帯の励起光を生成する。
【0090】
ラマン増幅ファイバ41は、20dBmのL帯の光信号R2及び20dBmのU帯の光信号R5を第2カプラ44に出力する。第2カプラ44は、ラマン増幅ファイバ41からの光信号の内、20dBmのU帯の光信号R5を出力部202に分離出力する。
【0091】
図19は、出力段光パワー制御のフローチャートである。出力段光パワー制御は、波長変換増幅器20Cの出力であるU帯の光信号のパワーを調整する処理である。
図19において制御器27C内の第4パワーモニタ回路273Bは、第2スプリッタ62を通じて第2カプラ44と出力部202との間のU帯の光信号の光パワーをモニタしてパワーモニタ値P_2を取得する(S61)。制御器27C内の第4制御回路271Bは、第4パワーモニタ回路273Bから取得したパワーモニタ値P_2と目標値P_target2との差が0になるように第4パワー制御信号を生成して更新する(S62)。そして、第4制御回路271Bは、更新した第4パワー制御信号を第1励起光源51に設定する。その結果、パワーモニタ値P_2と目標値P_target2との差が0になるようにラマン増幅ファイバ41から出力するU帯の光信号のパワーを調整する。
【0092】
図20は、入力段光パワー制御のフローチャートである。入力段光パワー制御は、波長変換増幅器20C内の増幅器21Aの出力であるL帯の光信号のパワーを調整する処理である。
図20において制御器27C内の第3パワーモニタ回路273Aは、第1スプリッタ61を通じて増幅器21Aと第1カプラ43との間のL帯の光信号のパワーをモニタしてパワーモニタ値P_1を取得する(S71)。制御器27C内の第4パワーモニタ回路273Bは、第2スプリッタ62を通じて第2カプラ44と出力部202との間のU帯の光信号のパワーをモニタしてパワーモニタ値P_2を取得する(S72)。
【0093】
制御器27C内の第1目標値計算器274Aは、係数保持部272Aに保持中の係数と、パワーモニタ値P_2とに基づき、増幅器21Aの出力であるL帯の光信号のパワーの目標値P_target1を算出する(S73)。制御器27C内の第3制御回路271Aは、パワーモニタ値P_1と目標値P_target1との差分が0になるように第3パワー制御信号を更新する(S74)。そして、第3制御回路271Aは、更新した第3パワー制御信号を増幅器21Aに設定する。その結果、パワーモニタ値P_1と目標値P_target1との差が0になるように増幅器21Aから出力するL帯の光信号のパワーを調整する。
【0094】
第3実施例の波長変換増幅器20Cは、ラマン増幅ファイバ41を通じて、波長変換前のL帯の光信号を波長変換器22Aに出力すると共に、波長変換器22Aにて波長変換後のU帯の光信号を増幅する。そして、波長変換増幅器20Cは、第2カプラ44を通じてU帯の光信号を出力部202に出力する。その結果、波長変換増幅器20Cは、第1実施例の波長変換増幅器20Aに比較してラマン増幅ファイバ41が1本で済むため、部品コストの大幅削減及び製品サイズの小型化に大きく貢献できる。
【0095】
尚、第3実施例の波長変換増幅器20Cのラマン増幅ファイバ41では、L帯の光信号とU帯の光信号とが同一方向に流れるため、SRS(Stimulated Raman Scattering)が発生することも考えられる。そこで、SRSを抑制できる実施の形態につき、第4実施例として以下に説明する。
【0096】
<第4実施例>
図21は、第4実施例の波長変換増幅器20Dの模式図である。尚、第3実施例の波長変換増幅器20Cと同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。第3実施例の波長変換増幅器20Cと第4実施例の波長変換増幅器20Dとが異なるところは、ラマン増幅ファイバ41Aを用いてL帯の光信号とU帯の光信号とが逆方向に夫々流れる点にある。
【0097】
波長変換増幅器20Dは、入力部201と、増幅器21Bと、ラマン増幅ファイバ41Aと、第3カプラ46と、第4カプラ47と、減衰器45Aと、波長変換器22Aと、ループ用ファイバ42Aと、出力部202と、制御器27Dと、を有する。
【0098】
増幅器21Bは、入力部201と第3カプラ46との間に接続し、入力部201から入力されたL帯の光信号を増幅する。第3カプラ46は、増幅器21Bと接続する入力ポートと、ラマン増幅ファイバ41Aと接続する入出力ポートと、出力部202と接続する出力ポートと、を有する。第3カプラ46は、増幅器21BからのL帯の光信号をラマン増幅ファイバ41Aに透過出力すると共に、ラマン増幅ファイバ41AからのU帯の信号光を出力部202に分離出力する。
【0099】
ラマン増幅ファイバ41Aは、第3カプラ46と第4カプラ47との間に接続し、第3カプラ46からの増幅後のL帯の光信号を第4カプラ47に伝送すると共に、第4カプラ47からのU帯の光信号を増幅し、増幅後の光信号を第3カプラ46に出力する。尚、ラマン増幅ファイバ41Aに求められるL帯及びU帯の光信号に対する特性は、L帯に対してもU帯に対しても波長分散が同じ符号(+又は-)とする。
【0100】
減衰器45Aは、第4カプラ47と波長変換器22Aとの間に接続し、ラマン増幅ファイバ41AからのL帯の光信号を減衰する。波長変換器22Aは、減衰器45Aとループ用ファイバ42Aとの間に接続し、減衰器45Aにて減衰後のL帯の光信号をU帯の光信号に波長変換する。ループ用ファイバ42Aは、波長変換器22Aと第4カプラ47との間に接続し、波長変換器22Aにて波長変換後のU帯の光信号をラマン増幅ファイバ41Aに伝送する。
【0101】
第4カプラ47は、ラマン増幅ファイバ41Aと接続する入出力ポートと、減衰器45Aと接続する出力ポートと、ループ用ファイバ42Aと接続する入力ポートとを有する。第4カプラ47は、ラマン増幅ファイバ41AからのL帯の光信号を減衰器45Aに出力すると共に、ループ用ファイバ42AからのU帯の光信号をラマン増幅ファイバ41Aに出力する。
【0102】
制御器27Dは、ラマン増幅ファイバ41Aを伝送するL帯の光信号のパワーを調整する増幅器21Bを制御すると共に、ラマン増幅ファイバ41Aを伝送するU帯の光信号のパワーを調整するラマン増幅ファイバ41Aの第2励起光源51Aを制御する。
【0103】
更に、波長変換増幅器20Dは、第3スプリッタ61Aと、第4スプリッタ62Aと、第2励起光源51Aと、第2フィルタ52Aと、を有する。第3スプリッタ61Aは、増幅器21Bと第3カプラ46との間に配置され、増幅器21Bにて増幅後のL帯の光信号の一部を分岐する。第4スプリッタ62Aは、第3カプラ46と出力部202との間に配置され、第3カプラ46からのU帯の光信号の一部を分岐する。第2励起光源51Aは、ラマン増幅ファイバ41Aに入力するU帯の励起光を生成する。第2フィルタ52Aは、ラマン増幅ファイバ41Aに配置し、第2励起光源51AからのU帯の励起光をラマン増幅ファイバ41Aに入力する。ラマン増幅ファイバ41Aは、U帯の励起光に応じて第4カプラ47からのU帯の光信号を増幅する。
【0104】
図22は、
図21の波長変換増幅器20Dの制御器27Dの機能ブロック図である。
図22に示す制御器27Dは、第5パワーモニタ回路273Cと、第6パワーモニタ回路273Dと、係数保持部272Aと、第2目標値計算器274Bと、第5制御回路271Cと、第6制御回路271Dと、を有する。
【0105】
第5パワーモニタ回路273Cは、第3スプリッタ61AからのL帯の光信号のパワーモニタ値P_1を取得する。第6パワーモニタ回路273Dは、第4スプリッタ62AからのU帯の光信号のパワーモニタ値P_2を取得する。
【0106】
第2目標値計算器274Bは、保持中の係数に応じて第3カプラ46と出力部202との間を流れるU帯の光信号の非線形位相雑音の影響を抑制すべく、増幅器21Bの出力であるL帯の光信号の光パワーの目標値、例えば20dBmを算出する。
【0107】
第5制御回路271Cは、増幅器21Bにて増幅するL帯の光信号のパワーが目標値となるように増幅器21Bを制御する第5パワー制御信号を生成する。第6制御回路271Dは、ラマン増幅ファイバ41Aにて増幅するU帯の光信号のパワーが目標値となるように、第2励起光源51Aを制御する第6パワー制御信号を生成する。
【0108】
次に第4実施例の波長変換増幅器20Dの動作について説明する。増幅器21Bは、例えば、入力部201から、例えば、10dBmのL帯の光信号R11を入力した場合、制御器27Dからの第5パワー制御信号に応じてL帯の光信号R11を20dBmに増幅する。そして、増幅器21Bは、増幅後の20dBmのL帯の光信号R12を、第3カプラ46経由でラマン増幅ファイバ41Aに出力する。
【0109】
第4カプラ47は、ラマン増幅ファイバ41Aからの20dBmのL帯の光信号R12を減衰器45Aに透過出力する。減衰器45Aは、第4カプラ47から透過出力された20dBmのL帯の光信号R12を10dBmのL帯の光信号R13に減衰し、減衰後の10dBmのL帯の光信号R13を波長変換器22Aに出力する。
【0110】
波長変換器22Aは、10dBmのL帯の光信号R13を10dBmのU帯の光信号R14に波長変換し、波長変換後の10dBmのU帯の光信号R14をループ用ファイバ42Aに出力する。第4カプラ47は、ループ用ファイバ42Aからの10dBmのU帯の光信号R14をラマン増幅ファイバ41Aに出力する。
【0111】
ラマン増幅ファイバ41Aは、第2励起光源51AのU帯の励起光に応じて10dBmのU帯の光信号R14を20dBmのU帯の光信号R15に増幅する。制御器27Dは、第4スプリッタ62Aを通じてU帯の光信号の一部を抽出することでパワーモニタ値P_2を得る。制御器27Dは、パワーモニタ値P_2に基づき、ラマン増幅ファイバ41Aから出力するU帯の光信号R15が20dBmになるようにU帯の励起光を生成する第6パワー制御信号を第2励起光源51Aに出力する。第2励起光源51Aは、第6パワー制御信号に応じてU帯の励起光を生成する。
【0112】
ラマン増幅ファイバ41Aは、20dBmのU帯の光信号R15を第3カプラ46に出力する。第3カプラ46は、ラマン増幅ファイバ41Aからの20dBmのU帯の光信号R15を出力部202に出力する。
【0113】
図23は、出力段光パワー制御のフローチャートである。出力段光パワー制御は、波長変換増幅器20Dの出力であるU帯の光信号のパワーを調整する処理である。
図23において制御器27D内の第6パワーモニタ回路273Dは、第4スプリッタ62Aを通じて第3カプラ46と出力部202との間のU帯の光信号のパワーをモニタしてパワーモニタ値P_2を取得する(S61A)。制御器27D内の第6制御回路271Dは、第6パワーモニタ回路273Dから取得したパワーモニタ値P_2と目標値P_target2との差が0になるように第6パワー制御信号を更新する(S62A)。そして、第6制御回路271Dは、更新した第6パワー制御信号を第2励起光源51Aに設定する。その結果、パワーモニタ値P_2と目標値P_target2との差が0になるようにラマン増幅ファイバ41Aから出力するU帯の光信号のパワーを調整する。
【0114】
図24は、入力段光パワー制御のフローチャートである。入力段光パワー制御は、波長変換増幅器20D内の増幅器21Bの出力であるL帯の光信号のパワーを調整する処理である。
図24において制御器27D内の第5パワーモニタ回路273Cは、第3スプリッタ61Aを通じて増幅器21Bと第3カプラ46との間のL帯の光信号のパワーをモニタしてパワーモニタ値P_1を取得する(S71A)。制御器27D内の第6パワーモニタ回路273Dは、第4スプリッタ62Aを通じて第3カプラ46と出力部202との間のU帯の光信号のパワーをモニタしてパワーモニタ値P_2を取得する(S72A)。
【0115】
制御器27D内の第2目標値計算器274Bは、係数保持部272Aに保持中の係数と、パワーモニタ値P_2とに基づき、増幅器21Bの出力であるL帯の光信号のパワーの目標値P_target1を算出する(S73A)。制御器27D内の第5制御回路271Cが、パワーモニタ値P_1と目標値P_target1との差分が0になるように第5パワー制御信号を更新する(S74A)。そして、第5制御回路271Cは、更新した第5パワー制御信号を増幅器21Bに設定する。その結果、パワーモニタ値P_1と目標値P_target1との差が0になるように増幅器21Bから出力するL帯の光信号のパワーを調整する。
【0116】
第4実施例の波長変換増幅器20Dは、ラマン増幅ファイバ41Aを通じて波長変換前のL帯の光信号を順方向から入力すると共に、波長変換器22Aにて波長変換後のU帯の光信号を逆方向から入力し、U帯の光信号を増幅する。その結果、波長変換増幅器20Dは、第1実施例の波長変換増幅器20Aに比較してラマン増幅ファイバ41Aが1本で済むため、部品コストの大幅削減及び製品サイズの小型化に大きく貢献できる。
【0117】
しかも、波長変換増幅器20Dは、ラマン増幅ファイバ41Aの順方向からL帯の光信号を入力すると共に、ラマン増幅ファイバ41Aの逆方向からU帯の光信号を入力して、U帯の光信号を増幅する。その結果、L帯の光信号とU帯の光信号とが異なる方向に夫々流れるため、SRSの影響を抑制できる。
【0118】
しかしながら、第4実施例の波長変換増幅器20Dでは、ラマン増幅ファイバ41Aにて、第2励起光源51AからのU帯の励起光がL帯の光信号と同一方向に流れる構成とした。その結果、U帯の励起光のRIN(Relative Intensity Noise)の影響が生じる。そこで、U帯の励起光のRINの影響を抑制できる実施の形態につき、第5実施例として以下に説明する。
【0119】
<第5実施例>
図25は、第5実施例の波長変換増幅器20Eの模式図である。尚、第3実施例の波長変換増幅器20Cと同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。第3実施例の波長変換増幅器20Cと第5実施例の波長変換増幅器20Eとが異なるところは、ラマン増幅ファイバ41Bを用いて、U帯の光信号は勿論のこと、L帯の光信号を増幅する点にある。
【0120】
図25に示す波長変換増幅器20Eは、入力部201と、第5カプラ48と、ラマン増幅ファイバ41Bと、第6カプラ49と、減衰器45Bと、波長変換器22Aと、ループ用ファイバ42Bと、出力部202と、制御器27Eと、を有する。
【0121】
第5カプラ48は、入力部201と接続する第1入力ポートと、ループ用ファイバ42Bと接続する第2入力ポートと、ラマン増幅ファイバ41Bと接続する出力ポートとを有する。第5カプラ48は、入力部201からのL帯の光信号と、ループ用ファイバ42BからのU帯の光信号とを合波し、合波後の光信号をラマン増幅ファイバ41Bに出力する。
【0122】
ラマン増幅ファイバ41Bは、第5カプラ48と第6カプラ49との間に接続し、第5カプラ48からのL帯の光信号及びU帯の光信号を夫々増幅する。尚、ラマン増幅ファイバ41Bに求められるL帯及びU帯の光信号に対する特性は、L帯に対してもU帯に対しても波長分散が同じ符号(+又は-)とする。
【0123】
減衰器45Bは、第6カプラ49と波長変換器22Aとの間に接続し、ラマン増幅ファイバ41BからのL帯の光信号を減衰する。波長変換器22Aは、減衰器45Bとループ用ファイバ42Bとの間に接続し、減衰器45Bにて減衰後のL帯の光信号をU帯の光信号に波長変換する。ループ用ファイバ42Bは、波長変換器22Aと第5カプラ48との間に接続し、波長変換器22Aにて波長変換後のU帯の光信号を第5カプラ48に出力する。
【0124】
第6カプラ49は、ラマン増幅ファイバ41Bと接続する入力ポートと、減衰器45Bと接続する第1出力ポートと、出力部202と接続する第2出力ポートとを有する。第6カプラ49は、ラマン増幅ファイバ41BからのL帯の光信号を減衰器45Bに分離出力すると共に、ラマン増幅ファイバ41BからのU帯の光信号を出力部202に分離出力する。
【0125】
制御器27Eは、ラマン増幅ファイバ41Bを伝送するL帯の光信号のパワーを調整する第3励起光源51Bを制御すると共に、ラマン増幅ファイバ41Bを伝送するU帯の光信号のパワーを調整する第4励起光源51Cを制御する。
【0126】
波長変換増幅器20Eは、第5スプリッタ61Cと、第6スプリッタ62Cと、第3励起光源51Bと、第3フィルタ52Bと、第4励起光源51Cと、第4フィルタ52Cと、を有する。
【0127】
第5スプリッタ61Cは、第6カプラ49と減衰器45Bとの間に配置され、第6カプラ49にて分離出力されたL帯の光信号の一部を分岐する。第6スプリッタ62Cは、第6カプラ49と出力部202との間に配置され、第6カプラ49にて分離出力されたU帯の光信号の一部を分岐する。
【0128】
第3励起光源51Bは、ラマン増幅ファイバ41Bに入力するL帯の励起光を生成する。第3フィルタ52Bは、ラマン増幅ファイバ41Bに配置し、第3励起光源51BからのL帯の励起光をラマン増幅ファイバ41Bに入力する。ラマン増幅ファイバ41Bは、
図25に示すように後方励起方式で、L帯の励起光に応じて第5カプラ48からのL帯の光信号を増幅する。
【0129】
第4励起光源51Cは、ラマン増幅ファイバ41Bに入力するU帯の励起光を生成する。第4フィルタ52Cは、ラマン増幅ファイバ41Bに配置し、第4励起光源51CからのU帯の励起光をラマン増幅ファイバ41Bに入力する。ラマン増幅ファイバ41Bは、
図25に示すように後方励起方式で、U帯の励起光に応じて第5カプラ48からのU帯の光信号を増幅する。
【0130】
図26は、
図25の波長変換増幅器20Eの制御器27Eの機能ブロック図である。
図26に示す制御器27Eは、第7パワーモニタ回路273Eと、第8パワーモニタ回路273Fと、係数保持部272Aと、第3目標値計算器274Cと、第7制御回路271Eと、第8制御回路271Fと、を有する。
【0131】
第7パワーモニタ回路273Eは、第5スプリッタ61CからのL帯の光信号のパワーモニタ値P_1を取得する。第8パワーモニタ回路273Fは、第6スプリッタ62CからのU帯の光信号のパワーモニタ値P_2を取得する。
【0132】
第3目標値計算器274Cは、保持中の係数に応じて第6カプラ49と出力部202との間を流れるU帯の光信号の非線形位相雑音の影響を抑制すべく、ラマン増幅ファイバ41Bの出力であるL帯の光信号の光パワーの目標値、例えば20dBmを算出する。
【0133】
第7制御回路271Eは、ラマン増幅ファイバ41Bにて増幅するL帯の光信号のパワーが目標値となるように第3励起光源51Bを制御する第7パワー制御信号を生成する。第8制御回路271Fは、ラマン増幅ファイバ41Bにて増幅するU帯の光信号のパワーが目標値となるように、第4励起光源51Cを制御する第8パワー制御信号を生成する。
【0134】
次に第5実施例の波長変換増幅器20Eの動作について説明する。第5カプラ48は、例えば、入力部201から、例えば、10dBmのL帯の光信号R21と、ループ用ファイバ42Bから、例えば、10dBmのU帯の光信号R24とを合波し、合波後の光信号をラマン増幅ファイバ41Bに出力する。
【0135】
ラマン増幅ファイバ41Bは、第3励起光源51BのL帯の励起光に応じてL帯の光信号R21を20dBmに増幅し、増幅後の20dBmのL帯の光信号R22を第6カプラ49に出力する。ラマン増幅ファイバ41Bは、第4励起光源51CのU帯の励起光に応じてU帯の光信号R24を20dBmに増幅し、増幅後の20dBmのU帯の光信号R25を第6カプラ49に出力する。
【0136】
第6カプラ49は、ラマン増幅ファイバ41Bからの20dBmのL帯の光信号R22を減衰器45Cに分離出力する。減衰器45Cは、第6カプラ49から分離出力された20dBmのL帯の光信号R22を10dBmのL帯の光信号R23に減衰し、減衰後の10dBmのL帯の光信号R23を波長変換器22Aに出力する。
【0137】
波長変換器22Aは、10dBmのL帯の光信号R23を10dBmのU帯の光信号R24に波長変換し、波長変換後の10dBmのU帯の光信号R24をループ用ファイバ42Bに出力する。第5カプラ48は、ループ用ファイバ42Cからの10dBmのU帯の光信号R24と、入力部201からの10dBmのL帯の光信号R21とを合波し、合波後の光信号をラマン増幅ファイバ41Bに出力する。
【0138】
ラマン増幅ファイバ41Bは、第4励起光源51CのU帯の励起光に応じて合波後の光信号の内、10dBmのU帯の光信号R24を20dBmのU帯の光信号R25に増幅する。制御器27Eは、第6スプリッタ62Cを通じてU帯の光信号の一部を抽出することでパワーモニタ値P_2を得る。制御器27Eは、パワーモニタ値P_2に基づき、ラマン増幅ファイバ41Bから出力するU帯の光信号R24が20dBmになるようにU帯の励起光を生成する第8パワー制御信号を第4励起光源51Cに出力する。第4励起光源51Cは、第8パワー制御信号に応じてU帯の励起光を生成する。
【0139】
ラマン増幅ファイバ41Bは、20dBmのL帯の光信号R22及び20dBmのU帯の光信号R25を第6カプラ49に出力する。第6カプラ49は、20dBmのU帯の光信号R25を出力部202に分離出力する。
【0140】
図27は、出力段光パワー制御のフローチャートである。出力段光パワー制御は、波長変換増幅器20Eの出力であるU帯の光信号のパワーを調整する処理である。
図27において制御器27E内の第8パワーモニタ回路273Fは、第6スプリッタ62Cを通じて第6カプラ49と出力部202との間のU帯の光信号のパワーをモニタしてパワーモニタ値P_2を取得する(S61B)。制御器27E内の第8制御回路271Fは、第8パワーモニタ回路273Fから取得したパワーモニタ値P_2と目標値P_target2との差が0になるように第8パワー制御信号を更新する(S62B)。そして、第8制御回路271Fは、更新した第8パワー制御信号を第4励起光源51Cに設定する。その結果、パワーモニタ値P_2と目標値P_target2との差が0になるようにラマン増幅ファイバ41Bから出力するU帯の光信号のパワーを調整する。
【0141】
図28は、入力段光パワー制御のフローチャートである。入力段光パワー制御は、波長変換増幅器20E内のラマン増幅ファイバ41Bの出力であるL帯の光信号のパワーを調整する処理である。
図28において制御器27E内の第7パワーモニタ回路273Eは、第5スプリッタ61Cを通じて第5カプラ48と第6カプラ49との間のL帯の光信号のパワーをモニタしてパワーモニタ値P_1を取得する(S71B)。制御器27E内の第8パワーモニタ回路273Fは、第6スプリッタ62Cを通じて第6カプラ49と出力部202との間のU帯の光信号のパワーをモニタしてパワーモニタ値P_2を取得する(S72B)。
【0142】
制御器27E内の第3目標値計算器274Cは、係数保持部272Aに保持中の係数と、パワーモニタ値P_2とに基づき、ラマン増幅ファイバ41Bの出力であるL帯の光信号の光パワーの目標値P_target1を算出する(S73B)。制御器27E内の第7制御回路271Eが、パワーモニタ値P_1と目標値P_target1との差分が0になるように第7パワー制御信号を更新する(S74B)。そして、第7制御回路271Eは、更新した第7パワー制御信号を第3励起光源51Bに設定する。その結果、パワーモニタ値P_1と目標値P_target1との差が0になるようにラマン増幅ファイバ41Bから出力するL帯の光信号のパワーを調整する。
【0143】
第5実施例の波長変換増幅器20Eは、ラマン増幅ファイバ41Bを通じて波長変換前のL帯の光信号を増幅すると共に、波長変換器22Aにて波長変換後のU帯の光信号を増幅する。その結果、波長変換増幅器20Eは、第1実施例の波長変換増幅器20Aに比較してラマン増幅ファイバ41Bが1本で済むため、部品コストの大幅削減及び製品サイズの小型化に大きく貢献できる。
【0144】
波長変換増幅器20Eのラマン増幅ファイバ41Bでは、U帯の光信号を増幅することは勿論のこと、L帯の光信号をL帯の励起光に応じて増幅するため、第3実施例のように増幅器21Aが不要となる。
【0145】
波長変換増幅器20Eでは、ラマン増幅ファイバ41Bにて、第3励起光源51BからのL帯の励起光がU帯の光信号と逆方向に流れる構成としたので、L帯の励起光のRINの影響を抑制できる。
【0146】
波長変換増幅器20Eでは、ラマン増幅ファイバ41Bにて、第4励起光源51CからのU帯の励起光がL帯の光信号と同一方向に流れる構成としたので、U帯の励起光のRINの影響を抑制できる。
【0147】
ラマン増幅ファイバ41Bは、L帯の励起光に応じてL帯の光信号を増幅し、L帯の各波長の励起光を調整する。その結果、L帯の各波長の光信号のパワーを自由に調整できる。
【0148】
尚、ラマン増幅ファイバ41Bは、L帯の光信号を後方励起方式でラマン増幅する場合を例示したが、励起方式は前方励起や双方向励起でも良く、適宜変更可能である。また、ラマン増幅ファイバ41Bは、U帯の光信号を後方励起方式でラマン増幅する場合を例示したが、励起方式は前方励起や双方向励起でも良く、適宜変更可能である。
【0149】
また、ラマン増幅では励起光源として、光信号の波長・位相を揃えたコヒーレントポンプを使用し、コヒーレントポンプを前方励起に用いた場合、励起光のRIN雑音、つまり励起光の強度ゆらぎが光信号に遷移する問題がある。従って、光信号と励起光とが対向する後方励起では励起光のゆらぎは平均化され抑制されるため、ラマン増幅には後方励起方式を使用する例を例示した。
【0150】
しかしながら、励起光源として、光信号の波長・位相が一定していないインコヒーレントポンプを使用しても良く、インコヒーレントポンプを使用した場合、後方励起は勿論のこと、前方励起や双方向励起にも使用できる。
【0151】
尚、第3実施例の波長変換増幅器20Cでは、ラマン増幅ファイバ41の分散の絶対値がU帯に比較してL帯の方が大きい場合、L帯の分散の絶対値とU帯の分散の絶対値との差が0になるように補償する必要がある。そこで、このような事態に対処する実施の形態につき、第6実施例として以下に説明する。
【0152】
<第6実施例>
図29は、第6実施例の波長変換増幅器20Fの模式図である。尚、第3実施例の波長変換増幅器20Cと同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。第3実施例の波長変換増幅器20Cと第6実施例の波長変換増幅器20Fとが異なるところは、U帯の光信号を伝送するループ用ファイバ42Dに分散調整用ファイバ71を配置した点にある。分散調整用ファイバ71は、L帯の分散による歪と、U帯の分散による歪とが等しくなるように設定する分散補償用ファイバである。
【0153】
図29に示す波長変換増幅器20Fは、入力部201と、増幅器21Aと、ラマン増幅ファイバ41Dと、減衰器45と、波長変換器22Aと、ループ用ファイバ42と、第1カプラ43と、第2カプラ44と、出力部202と、制御器27Fと、を有する。
【0154】
図30は、
図29の波長変換増幅器20Fの制御器27Fの機能ブロック図である。第3パワーモニタ回路273Aは、第1スプリッタ61からのL帯の光信号のパワーモニタ値P_1を取得する。第4パワーモニタ回路273Bは、第2スプリッタ62からのU帯の光信号のパワーモニタ値P_2を取得する。
【0155】
第1目標値計算器274Aは、保持中の係数に応じて第2カプラ44と出力部202との間を流れるU帯の光信号の非線形位相雑音の影響を抑制すべく、増幅器21Aの出力であるL帯の光信号のパワーの目標値、例えば20dBmを算出する。
【0156】
第3制御回路271Aは、増幅器21Aにて増幅するL帯の光信号のパワーが目標値となるように増幅器21Aを制御する第3パワー制御信号を生成する。第4制御回路271Bは、ラマン増幅ファイバ41Dにて増幅するU帯の光信号のパワーが目標値となるように、第1励起光源51を制御する第4パワー制御信号を生成する。
【0157】
次に第6実施例の波長変換増幅器20Fの動作について説明する。増幅器21Aは、例えば、入力部201から、例えば、10dBmのL帯の光信号R1を入力した場合、制御器27Cからの第3パワー制御信号に応じてL帯の光信号R1を20dBmに増幅する。増幅器21Aは、増幅後の20dBmのL帯の光信号R2を、第1カプラ43経由でラマン増幅ファイバ41Dに出力する。
【0158】
第2カプラ44は、ラマン増幅ファイバ41Dからの20dBmのL帯の光信号R2を減衰器45に分離出力する。減衰器45は、第2カプラ44から分離出力された20dBmのL帯の光信号R2を10dBmに減衰し、減衰後の10dBmのL帯の光信号R3を波長変換器22Aに出力する。
【0159】
波長変換器22Aは、10dBmのL帯の光信号R3を10dBmのU帯の光信号R4に波長変換し、波長変換後の10dBmのU帯の光信号R4をループ用ファイバ42Dに出力する。第1カプラ43は、ループ用ファイバ42Dからの10dBmのU帯の光信号R4と、増幅器21Aからの20dBmのL帯の光信号R2とを合波し、合波後の光信号をラマン増幅ファイバ41Dに出力する。
【0160】
ラマン増幅ファイバ41Dは、第1励起光源51のU帯の励起光に応じて、合波後の光信号の内、10dBmのU帯の光信号R4を20dBmに増幅し、増幅後の20dBmのU帯の光信号R5を第2カプラ44に出力する。制御器27Cは、第2スプリッタ62を通じてU帯の光信号の一部を抽出することでパワーモニタ値P_2を得る。制御器27Cは、パワーモニタ値P_2に基づき、ラマン増幅ファイバ41Dに出力するU帯の光信号R5が20dBmになるようにU帯の励起光を生成する第4パワー制御信号を第1励起光源51に出力する。第1励起光源51は、第4パワー制御信号に応じてU帯の励起光を生成する。
【0161】
ラマン増幅ファイバ41Dは、20dBmのL帯の光信号R2及び20dBmのU帯の光信号R5を第2カプラ44に出力する。第2カプラ44は、20dBmのU帯の光信号R5を出力部202に分離出力する。
【0162】
第6実施例の波長変換増幅器20Fは、ラマン増幅ファイバ41Dを通じて、波長変換前のL帯の光信号を波長変換器22Aに出力すると共に、波長変換器22Aにて波長変換後のU帯の光信号を増幅する。そして、波長変換増幅器20Fは、第2カプラ44を通じてU帯の光信号を出力部202に出力する。その結果、波長変換増幅器20Fは、第1実施例の波長変換増幅器20Aに比較してラマン増幅ファイバ41Dが1本で済むため、部品コストの大幅削減及び製品サイズの小型化に大きく貢献できる。
【0163】
波長変換増幅器20Fは、第1カプラ43の第2入力ポートと接続するループ用ファイバ42Cに分散調整用ファイバ71を配置したので、L帯の分散による歪と、U帯の分散による歪とが等しくなる。その結果、ラマン増幅ファイバ41Dの分散の絶対値がU帯に比較してL帯の方が大きい場合でも、L帯の分散の絶対値とU帯の分散の絶対値との差を抑制できる。
【0164】
尚、第3実施例の波長変換増幅器20Cでは、ラマン増幅ファイバ41の分散の絶対値がL帯に比較してU帯の方が大きい場合、L帯の分散の絶対値とU帯の分散の絶対値との差が0になるように補償する必要がある。そこで、このような事態に対処する実施の形態につき、第7実施例として以下に説明する。
【0165】
<第7実施例>
図31は、第7実施例の波長変換増幅器20Gの模式図である。尚、第3実施例の波長変換増幅器20Cと同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。第3実施例の波長変換増幅器20Cと第7実施例の波長変換増幅器20Gとが異なるところは、第2カプラ44と減衰器45との間のL帯の光信号を伝送する伝送路に分散調整用ファイバ71Aを配置した点にある。分散調整用ファイバ71Aは、L帯の分散による歪と、U帯の分散による歪とが等しくなるように設定する分散補償用ファイバである。
【0166】
図31に示す波長変換増幅器20Gは、入力部201と、増幅器21Aと、ラマン増幅ファイバ41Dと、減衰器45と、波長変換器22Aと、ループ用ファイバ42と、第1カプラ43と、第2カプラ44と、出力部202と、制御器27Fと、を有する。
【0167】
図32は、
図31の波長変換増幅器20Gの制御器27Gの機能ブロック図である。第3パワーモニタ回路273Aは、第1スプリッタ61からのL帯の光信号のパワーモニタ値P_1を取得する。第4パワーモニタ回路273Bは、第2スプリッタ62からのU帯の光信号のパワーモニタ値P_2を取得する。
【0168】
第1目標値計算器274Aは、保持中の係数に応じて第2カプラ44と出力部202との間を流れるU帯の光信号の非線形位相雑音の影響を抑制すべく、増幅器21Aの出力であるL帯の光信号のパワーの目標値、例えば20dBmを算出する。
【0169】
第3制御回路271Aは、増幅器21Aにて増幅するL帯の光信号のパワーが目標値となるように増幅器21Aを制御する第3パワー制御信号を生成する。第4制御回路271Bは、ラマン増幅ファイバ41Dにて増幅するU帯の光信号のパワーが目標値となるように、第1励起光源51を制御する第4パワー制御信号を生成する。
【0170】
次に第7実施例の波長変換増幅器20Gの動作について説明する。増幅器21Aは、例えば、入力部201から、例えば、10dBmのL帯の光信号R1を入力した場合、制御器27Cからの第3パワー制御信号に応じてL帯の光信号R1を20dBmに増幅する。増幅器21Aは、増幅後の20dBmのL帯の光信号R2を、第1カプラ43経由でラマン増幅ファイバ41Dに出力する。
【0171】
第2カプラ44は、ラマン増幅ファイバ41Dからの20dBmのL帯の光信号R2を減衰器45に分離出力する。減衰器45は、第2カプラ44から分離出力された20dBmのL帯の光信号R2を10dBmに減衰し、減衰後の10dBmのL帯の光信号R3を波長変換器22Aに出力する。
【0172】
波長変換器22Aは、10dBmのL帯の光信号R3を10dBmのU帯の光信号R4に波長変換し、波長変換後の10dBmのU帯の光信号R4をループ用ファイバ42Dに出力する。第1カプラ43は、ループ用ファイバ42Dからの10dBmのU帯の光信号R4と、増幅器21Aからの20dBmのL帯の光信号R2とを合波し、合波後の光信号をラマン増幅ファイバ41Dに出力する。
【0173】
ラマン増幅ファイバ41Dは、第1励起光源51のU帯の励起光に応じて、合波後の光信号の内、10dBmのU帯の光信号R4を20dBmに増幅し、増幅後の20dBmのU帯の光信号R5を第2カプラ44に出力する。制御器27Cは、第2スプリッタ62を通じてU帯の光信号の一部を抽出することでパワーモニタ値P_2を得る。制御器27Cは、パワーモニタ値P_2に基づき、ラマン増幅ファイバ41Dに出力するU帯の光信号R5が20dBmになるようにU帯の励起光を生成する第4パワー制御信号を第1励起光源51に出力する。第1励起光源51は、第4パワー制御信号に応じてU帯の励起光を生成する。
【0174】
ラマン増幅ファイバ41Dは、20dBmのL帯の光信号R2及び20dBmのU帯の光信号R5を第2カプラ44に出力する。第2カプラ44は、20dBmのU帯の光信号R5を出力部202に分離出力する。
【0175】
第7実施例の波長変換増幅器20Gは、ラマン増幅ファイバ41Dを通じて、波長変換前のL帯の光信号を波長変換器22Aに出力すると共に、波長変換器22Aにて波長変換後のU帯の光信号を増幅する。そして、波長変換増幅器20Gは、第2カプラ44を通じてU帯の光信号を出力部202に出力する。その結果、波長変換増幅器20Gは、第1実施例の波長変換増幅器20Aに比較してラマン増幅ファイバ41Dが1本で済むため、部品コストの大幅削減及び製品サイズの小型化に大きく貢献できる。
【0176】
波長変換増幅器20Gは、第2カプラ44と減衰器45との間のL帯の光信号を伝送する伝送路に分散調整用ファイバ71Aを配置したので、L帯の分散による歪と、U帯の分散による歪とが等しくなる。その結果、ラマン増幅ファイバ41Dの分散の絶対値がL帯に比較してU帯の方が大きい場合でも、L帯の分散の絶対値とU帯の分散の絶対値との差を抑制できる。
【0177】
尚、本実施例では、第1波長帯としてL帯、第2波長帯としてU帯とし、L帯からU帯への波長変換を例示したが、例えば、C帯からU帯、C帯からS帯、L帯からS帯等の波長変換でも良く、適宜変更可能である。
【0178】
以上の開示に対し、以下の付記を提示する。
【0179】
(付記1)第1波長帯の光信号を前記第1波長帯と異なる第2波長帯の光信号に変換する波長変換器と、
前記波長変換器の後段に設けられ前記第2波長帯の光信号を増幅するラマン増幅器と、
前記波長変換器の前段に設けられる非線形ファイバと、
前記非線形ファイバへの入力光パワーと、前記ラマン増幅器の出力光パワーとを制御する制御器と、
を有する波長変換増幅器。
【0180】
(付記2)前記ラマン増幅器はラマン増幅用の光ファイバを有し、
前記ラマン増幅用の光ファイバの前記第2波長帯における波長分散と、前記非線形ファイバの前記第1波長帯における波長分散は同じ符号をもつ、
付記1に記載の波長変換増幅器。
【0181】
(付記3)前記非線形ファイバは前記ラマン増幅用の光ファイバよりも大きい非線形係数を有し、前記ラマン増幅用の光ファイバよりも短いファイバ長を有する、
付記2に記載の波長変換増幅器。
【0182】
(付記4)前記ラマン増幅器の前記出力光パワーと、前記出力光パワーのときに非線形雑音を最小にする前記非線形ファイバの前記入力光パワーとの関係を保持するメモリと、
前記ラマン増幅器の前記出力光パワーをモニタするパワーモニタと、
を有し、
前記制御器は、前記パワーモニタによる前記ラマン増幅器の前記出力光パワーのモニタ結果と、前記メモリに保持された前記関係とに基づいて、前記非線形ファイバへの前記入力光パワーの目標値を設定し、前記非線形ファイバへの前記入力光パワーが前記目標値に近づくように前記非線形ファイバへの前記入力光パワーを制御する、
付記1に記載の波長変換増幅器。
【0183】
(付記5)前記非線形ファイバの前段に設けられる第1増幅器または可変光減衰器、
を有し、前記制御器は、前記第1増幅器または前記可変光減衰器を制御することで、前記非線形ファイバへの前記入力光パワーを制御する、
付記4に記載の波長変換増幅器。
【0184】
(付記6)前記パワーモニタは、前記ラマン増幅器の前記出力光パワーをモニタし、
前記制御器は、前記パワーモニタによる前記ラマン増幅器の前記出力光パワーのモニタ結果と、あらかじめ設定された目標出力光パワーとに基づいて、前記ラマン増幅器の前記出力光パワーが前記目標出力光パワーに近づくように前記ラマン増幅器を制御する、
付記4に記載の波長変換増幅器。
【0185】
(付記7)前記非線形ファイバの前段に設けられる第1非線形ファイバ、
を有し、
前記制御器は、前記ラマン増幅器の前記出力光パワーのモニタ結果に基づいて、前記第1非線形ファイバの出力光パワーを制御する、
付記1に記載の波長変換増幅器。
【0186】
(付記8)前記第1非線形ファイバは、前記ラマン増幅器の出力側の伝送路で用いられる伝送路光ファイバと同じ符号の波長分散をもつ、
付記7に記載の波長変換増幅器。
【0187】
(付記9)前記第1非線形ファイバを後方励起する励起光源、
を有し、
前記制御器は、前記ラマン増幅器の前記出力光パワーの前記モニタ結果に基づいて、前記励起光源を制御する、
付記7に記載の波長変換増幅器。
【0188】
(付記10)付記1から9のいずれかに記載の波長変換増幅器と、
前記波長変換増幅器から出力される前記第2波長帯の信号を、前記第2波長帯と異なる波長帯の信号と合波して伝送路に出力する合波器と、
を備える光通信装置。
【0189】
(付記11)波長変換器で第1波長帯の光信号を第2波長帯の光信号に変換し、
前記波長変換器の前段に接続された非線形ファイバへの入力光パワーをモニタして第1モニタ値を取得し、
前記第2波長帯の光信号を前記波長変換器の後段に接続されたラマン増幅器で増幅し、
前記ラマン増幅器の出力光パワーをモニタして第2モニタ値を取得し、
前記第1モニタ値と前記第2モニタ値に基づいて、前記非線形ファイバへの前記入力光パワーと、前記ラマン増幅器の前記出力光パワーとが所定の比率で釣り合うように制御する、
波長変換パワー制御方法。
【0190】
(付記12)前記非線形ファイバの前記第1波長帯における波長分散が、前記ラマン増幅器で用いられるラマン増幅用の光ファイバの前記第2波長帯における波長分散と同じ符号を持つように前記非線形ファイバを選択する、
付記11に記載の波長変換パワー制御方法。
【0191】
(付記13)前記非線形ファイバが、前記ラマン増幅器で用いられるラマン増幅用の光ファイバよりも大きい非線形係数を持ち、かつ、前記ラマン増幅用の光ファイバよりも短いファイバ長を持つように、前記非線形ファイバを選択する、
付記12に記載の波長変換パワー制御方法。
【0192】
(付記14)前記ラマン増幅器の前記出力光パワーと、前記出力光パワーのときに非線形雑音を最小にする前記非線形ファイバの前記入力光パワーとの関係を予め取得し、
前記第2モニタ値と前記関係とに基づいて、前記非線形ファイバへの前記入力光パワーの目標値を設定し、
前記第1モニタ値が前記目標値に近づくように前記非線形ファイバへの前記入力光パワーを制御する、
付記11に記載の波長変換パワー制御方法。
【0193】
(付記15)第1波長帯の光信号を伝送すると共に、前記第1波長帯と異なる第2波長帯の光信号を増幅するラマン増幅ファイバと、
前記ラマン増幅ファイバからの前記第1波長帯の光信号を前記第2波長帯の光信号に変換する波長変換器と、
前記波長変換器にて波長変換後の前記第2波長帯の光信号を伝送するループ用ファイバと、
前記第1波長帯の光信号と、前記ループ用ファイバからの前記第2波長帯の光信号とを合波する合波部と、
前記ラマン増幅ファイバからの前記第1波長帯の信号光を前記波長変換器に分離出力すると共に、前記ラマン増幅ファイバからの前記第2波長帯の光信号を出力部に分離出力する分波部と、
前記ラマン増幅ファイバを伝送する前記第1波長帯の光信号のパワー及び、前記ラマン増幅ファイバを伝送する前記第2波長帯の光信号のパワーを制御する制御器と、
を有することを特徴とする波長変換増幅器。
【0194】
(付記16)前記ラマン増幅ファイバは、
前記第1波長帯の光信号と前記第2波長帯の光信号とが同一方向に流れることを特徴とする付記15に記載の波長変換増幅器。
【0195】
(付記17)前記ラマン増幅ファイバは、
前記第1波長帯の光信号と前記第2波長帯の光信号とが逆方向に夫々流れることを特徴とする付記15に記載の波長変換増幅器。
【0196】
(付記18)前記ラマン増幅ファイバは、
前記第2波長帯の光信号を増幅すると共に、前記第1波長帯の光信号を増幅することを特徴とする付記15に記載の波長変換増幅器。
【0197】
(付記19)前記ラマン増幅ファイバの分散絶対値が前記第2波長帯の光信号に比較して前記第1波長帯の光信号の方が大きい場合に、前記第2波長帯の光信号を伝送する伝送路に分散調整用ファイバを配置することを特徴とする付記15に記載の波長変換増幅器。
【0198】
(付記20)前記ラマン増幅ファイバの分散絶対値が前記第1波長帯の光信号に比較して前記第2波長帯の光信号の方が大きい場合に、前記第1波長帯の光信号を伝送する伝送路に分散調整用ファイバを配置することを特徴とする付記15に記載の波長変換増幅器。
【符号の説明】
【0199】
1 光通信システム
2、3 伝送路
10 光通信装置
11 WDMフィルタ
12-1、12-2 プリアンプ
13-1、13-2、14-1、14-2 WSS
15 WDMフィルタ(合波器)
16-1、16-2 ポストアンプ
18 波長変換プリアンプ
20、20A、20B 波長変換増幅器
21 第1増幅器
211 イオン添加ファイバ
212 励起光源(第1励起光源)
22 波長変換器
221 非線形光学媒質
222 励起光源
23 ラマン増幅器
231 ラマン増幅用の光ファイバ
232 励起光源
234 光フィルタ
26 非線形ファイバ
261 第1非線形ファイバ
262 第2非線形ファイバ
27、27A 制御器
27-1 第1制御器
27-2 第2制御器
271 プロセッサ
2711 第1制御回路
2712 第2制御回路
2713、2715 目標値計算器
2716 制御信号生成器
272 メモリ
2721、2721-2 係数保持部
273 パワーモニタ
2731 第1パワーモニタ回路
2732 第2パワーモニタ回路
2733 パワーモニタ回路