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特開2024-144102位相シフトマスク、位相シフトマスクの製造方法、及び表示装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144102
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】位相シフトマスク、位相シフトマスクの製造方法、及び表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/32 20120101AFI20241003BHJP
【FI】
G03F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024003183
(22)【出願日】2024-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2023055251
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507066644
【氏名又は名称】韓国ホーヤ電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】HOYA ELECTRONICS KOREA CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】55,Hyeongoksandan-ro,Cheongbuk-myeon,Pyeongtaek-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】523117959
【氏名又は名称】台湾豪雅光電股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HOYA MICROELECTRONICS TAIWAN CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 36, Kedung 3rd Road, Science-Based industrial Park, Chunan, Miaoli County 350, Taiwan
(71)【出願人】
【識別番号】523117960
【氏名又は名称】重慶邁特光電有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHONGQING MASTEK ELECTRONICS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 1021, floor 10, No. 39, Yonghe Road, Yuzui town, Jiang Bei District, Chongqing, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】中山 憲治
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BA12
2H195BB03
2H195BC09
(57)【要約】
【課題】表示装置製造用マスクの露光環境に有利に適合し、微細なホールパターンを安定して転写できる優れた位相シフトマスクを提供する。
【解決手段】透光性基板上に、転写パターンが形成された位相シフト膜を備える位相シフトマスクであって、転写パターンは、ホール形状の透光部からなる第1のホール部および第2のホール部を含み、第1のホール部は、透光部の外周の全てが位相シフト膜によって構成され、第2のホール部は、透光部の外周の少なくとも一部が修正膜によって構成され、位相シフト膜を透過した露光光と、透光部を透過した露光光との間に生じる位相差Φは、150度以上210度以下であり、修正膜を透過した露光光と、透光部を透過した露光光との間に生じる位相差Φは、150度以上210度以下であり、露光光に対する修正膜の透過率Tは、露光光に対する位相シフト膜の透過率Tよりも小さい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板上に、転写パターンが形成された位相シフト膜を備える位相シフトマスクであって、
前記転写パターンは、ホール形状の透光部からなる第1のホール部および第2のホール部を含み、
前記第1のホール部は、前記透光部の外周の全てが前記位相シフト膜によって構成され、
前記第2のホール部は、前記透光部の外周の少なくとも一部が修正膜によって構成され、
前記位相シフト膜を透過した露光光と、前記透光部を透過した前記露光光との間に生じる位相差Φは、150度以上210度以下であり、
前記修正膜を透過した前記露光光と、前記透光部を透過した前記露光光との間に生じる位相差Φは、150度以上210度以下であり、
前記露光光に対する修正膜の透過率Tは、前記露光光に対する位相シフト膜の透過率Tよりも小さいことを特徴とする位相シフトマスク。
【請求項2】
前記位相シフト膜の透過率Tは、10%以上であることを特徴とする請求項1記載の位相シフトマスク。
【請求項3】
前記修正膜の透過率Tは、10%未満であることを特徴とする請求項1記載の位相シフトマスク。
【請求項4】
前記第2のホール部における修正膜で構成されている外周縁の透光部に掘り込み部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の位相シフトマスク。
【請求項5】
前記掘り込み部を透過した前記露光光と、前記透光部を透過した前記露光光との間に生じる位相差Φは、150度以上210度以下であることを特徴とする請求項4記載の位相シフトマスク。
【請求項6】
前記掘り込み部の幅は、2μm以下であることを特徴とする請求項4記載の位相シフトマスク。
【請求項7】
前記露光光は、波長365nmの光を少なくとも含むことを特徴とする請求項1記載の位相シフトマスク。
【請求項8】
透光性基板上に、転写パターンが形成された位相シフト膜を備える位相シフトマスクの製造方法であって、
前記透光性基板上に設けられた前記位相シフト膜にホール形状の透光部からなるホール部を含む転写パターンを形成する工程と、
前記位相シフト膜の転写パターンに対し、欠陥検査を行って欠陥が存在するホール部を特定する工程と、
前記欠陥が存在するホール部に対し、修正膜を用いて欠陥修正を行う工程を有するものであり、
前記位相シフト膜を透過した露光光と、前記透光部を透過した前記露光光との間に生じる位相差Φは、150度以上210度以下であり、
前記修正膜を透過した前記露光光と、前記透光部を透過した前記露光光との間に生じる位相差Φは、150度以上210度以下であり、
前記露光光に対する修正膜の透過率Tは、前記露光光に対する位相シフト膜の透過率Tよりも小さいことを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。
【請求項9】
前記位相シフト膜の透過率Tは、10%以上であることを特徴とする請求項8記載の位相シフトマスクの製造方法。
【請求項10】
前記修正膜の透過率Tは、10%未満であることを特徴とする請求項8記載の位相シフトマスクの製造方法。
【請求項11】
前記欠陥修正を行う工程は、形成された修正膜の外周縁の透光部に掘り込み部を形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項8記載の位相シフトマスクの製造方法。
【請求項12】
前記掘り込み部を透過した前記露光光と、前記透光部を透過した前記露光光との間に生じる位相差Φは、150度以上210度以下であることを特徴とする請求項11記載の位相シフトマスクの製造方法。
【請求項13】
前記掘り込み部の幅は、2μm以下であることを特徴とする請求項11記載の位相シフトマスクの製造方法。
【請求項14】
前記露光光は、波長365nmの光を少なくとも含むことを特徴とする請求項8記載の位相シフトマスクの製造方法。
【請求項15】
請求項1から7のいずれかに記載の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージに載置する工程と、
前記位相シフトマスクに露光光を照射して、表示装置用の基板上に設けられたレジスト膜に転写パターンを転写する工程と、
を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項16】
請求項8から14のいずれかに記載の位相シフトマスクの製造方法で製造された位相シフトマスクを露光装置のマスクステージに載置する工程と、
前記位相シフトマスクに露光光を照射して、表示装置用の基板上に設けられたレジスト膜に転写パターンを転写する工程と、
を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相シフトマスク、位相シフトマスクの製造方法、及び表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、OLED(Organic Light Emitting Diode)を代表とするFPD(Flat Panel Display)等の表示装置では、大画面化、広視野角化、折りたたみなどのフレキシブル化とともに、高精細化、高速表示化が急速に進んでいる。この高精細化、高速表示化のために必要な要素の1つが、微細で寸法精度の高い素子および配線等の電子回路パターンを作製することである。この表示装置用電子回路のパターニングにはフォトリソグラフィが用いられることが多い。このため、微細で高精度なパターンが形成された表示装置製造用の位相シフトマスクが必要である。この位相シフトマスクは、バイナリマスクの遮光部に相当する部分を、低い透過率と180度の位相シフト量をもつハーフトーン膜によって形成したものである。
【0003】
例えば、特許文献1には、透明基板1上に、半透光膜2がパターニングされてなる半透光部を含む転写用パターンを備えた位相シフトマスクの製造方法であって、半透光部12は、露光光の代表波長に対して所定の透過率と略180度の位相差とを有する位相シフトマスクの製造方法において、半透光部の欠陥を含む所定領域に修正膜4を形成する修正膜形成工程を含み、修正膜は、レーザCVD法により形成された修正膜A4aと、集束イオンビーム法により形成された修正膜B4bとを備えた積層膜である、位相シフトマスクの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-20120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、上記表示装置に用いられる薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、「TFT」)で言えば、TFTを構成する複数のパターンのうち、層間絶縁膜に形成されたコンタクトホールが、確実に上層及び下層のパターンを接続させる作用をもたなければ正しい動作が保証されない。その一方、表示装置の開口率を極力大きくして、明るく、省電力の表示装置とするためには、コンタクトホールの径が十分に小さいことが求められる。これに伴い、このようなコンタクトホールを形成するためのフォトマスクが備えるホールパターンの径も微細化(例えば3μm未満)が望まれている。例えば、径が2.5μm以下、更には、径が2.0μm以下のホールパターンが必要となり、近い将来、これを下回る1.5μm以下の径をもつパターンの形成も望まれると考えられる。こうした背景により、微小なコンタクトホールを確実に転写可能とする、表示装置の製造技術が必要とされている。
【0006】
例えば、ハーフトーン型位相シフトマスクが有する、位相シフト膜によって形成されたパターン部分に欠陥が生じた場合、これを修正することは必ずしも容易ではない。
一般に、位相シフトマスクに欠陥が生じ、これを修正膜によって修正しようとするとき、修正手段として、FIB(集束イオンビーム)装置を用いることが知られている。
しかしながら、FIB装置を用いて、単純に位相シフトマスクの欠陥部分に修正膜を堆積する方法では、欠陥が生じていない位相シフトマスクと同様の機能が回復できない場合があることが分かった。FIB装置を用い、位相シフトマスクの欠陥部分に修正膜を堆積しても、露光光に対する位相シフト量が略180度であり、かつ、正常な部分の位相シフト膜に設定された所望の透過率をもつ修正膜の形成は、容易でないことが分かった。
一方、半透光部を形成する位相シフトマスクの欠陥修正に、レーザCVD法を用いる方法も知られている。しかしながら、レーザCVD法を用いる方法の場合、堆積させた修正膜をウェットエッチングによって除去する工程等が不可避的に生じ、微小なホールパターンの欠陥修正を所望の精度で行うことは困難であった。
【0007】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明は、表示装置製造用マスクの露光環境に有利に適合し、微細なホールパターンを安定して転写できる優れた位相シフトマスク及びその製造方法、および表示装置の製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題を解決する手段として、以下の構成を有する。
【0009】
(構成1)透光性基板上に、転写パターンが形成された位相シフト膜を備える位相シフトマスクであって、
前記転写パターンは、ホール形状の透光部からなる第1のホール部および第2のホール部を含み、
前記第1のホール部は、前記透光部の外周の全てが前記位相シフト膜によって構成され、
前記第2のホール部は、前記透光部の外周の少なくとも一部が修正膜によって構成され、
前記位相シフト膜を透過した露光光と、前記透光部を透過した前記露光光との間に生じる位相差Φは、150度以上210度以下であり、
前記修正膜を透過した前記露光光と、前記透光部を透過した前記露光光との間に生じる位相差Φは、150度以上210度以下であり、
前記露光光に対する修正膜の透過率Tは、前記露光光に対する位相シフト膜の透過率Tよりも小さいことを特徴とする位相シフトマスク。
【0010】
(構成2)前記位相シフト膜の透過率Tは、10%以上であることを特徴とする構成1記載の位相シフトマスク。
【0011】
(構成3)前記修正膜の透過率Tは、10%未満であることを特徴とする構成1記載の位相シフトマスク。
【0012】
(構成4)前記第2のホール部における修正膜で構成されている外周縁の透光部に掘り込み部が設けられていることを特徴とする構成1記載の位相シフトマスク。
【0013】
(構成5)前記掘り込み部を透過した前記露光光と、前記透光部を透過した前記露光光との間に生じる位相差Φは、150度以上210度以下であることを特徴とする構成4記載の位相シフトマスク。
【0014】
(構成6)前記掘り込み部の幅は、2μm以下であることを特徴とする構成4記載の位相シフトマスク。
【0015】
(構成7)前記露光光は、波長365nmの光を少なくとも含むことを特徴とする構成1記載の位相シフトマスク。
【0016】
(構成8)透光性基板上に、転写パターンが形成された位相シフト膜を備える位相シフトマスクの製造方法であって、
前記透光性基板上に設けられた前記位相シフト膜にホール形状の透光部からなるホール部を含む転写パターンを形成する工程と、
前記位相シフト膜の転写パターンに対し、欠陥検査を行って欠陥が存在するホール部を特定する工程と、
前記欠陥が存在するホール部に対し、修正膜を用いて欠陥修正を行う工程を有するものであり、
前記位相シフト膜を透過した露光光と、前記透光部を透過した前記露光光との間に生じる位相差Φは、150度以上210度以下であり、
前記修正膜を透過した前記露光光と、前記透光部を透過した前記露光光との間に生じる位相差Φは、150度以上210度以下であり、
前記露光光に対する修正膜の透過率Tは、前記露光光に対する位相シフト膜の透過率Tよりも小さいことを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。
【0017】
(構成9)前記位相シフト膜の透過率Tは、10%以上であることを特徴とする構成8記載の位相シフトマスクの製造方法。
【0018】
(構成10)前記修正膜の透過率Tは、10%未満であることを特徴とする構成8記載の位相シフトマスクの製造方法。
【0019】
(構成11)前記欠陥修正を行う工程は、形成された修正膜の外周縁の透光部に掘り込み部を形成する工程をさらに含むことを特徴とする構成8記載の位相シフトマスクの製造方法。
【0020】
(構成12)前記掘り込み部を透過した前記露光光と、前記透光部を透過した前記露光光との間に生じる位相差Φは、150度以上210度以下であることを特徴とする構成11記載の位相シフトマスクの製造方法。
【0021】
(構成13)前記掘り込み部の幅は、2μm以下であることを特徴とする構成11記載の位相シフトマスクの製造方法。
【0022】
(構成14)前記露光光は、波長365nmの光を少なくとも含むことを特徴とする構成8記載の位相シフトマスクの製造方法。
【0023】
(構成15)構成1から7のいずれかに記載の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージに載置する工程と、
前記位相シフトマスクに露光光を照射して、表示装置用の基板上に設けられたレジスト膜に転写パターンを転写する工程と、
を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
【0024】
(構成16)構成8から14のいずれかに記載の位相シフトマスクの製造方法で製造された位相シフトマスクを露光装置のマスクステージに載置する工程と、
前記位相シフトマスクに露光光を照射して、表示装置用の基板上に設けられたレジスト膜に転写パターンを転写する工程と、
を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、表示装置製造用マスクの露光環境に有利に適合し、微細なホールパターンを安定して転写できる優れた位相シフトマスク及びその製造方法、および表示装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1の実施形態における位相シフトマスクの一例の、(a)平面模式図および(b)断面模式図である。
図2】本発明の第2の実施形態における位相シフトマスクの他の例の、(a)平面模式図および(b)断面模式図である。
図3】本発明の第3の実施形態における位相シフトマスクの他の例の、(a)平面模式図および(b)断面模式図である。
図4】本発明の第4の実施形態における位相シフトマスクの他の例の、(a)平面模式図および(b)断面模式図である。
図5】本発明の第5の実施形態における位相シフトマスクの他の例の、(a)平面模式図および(b)断面模式図である。
図6】本発明において使用されるリペア装置(FIB装置)によって成膜される修正膜における、波長334nmの光での位相差と透過率の関係を示すグラフである。
図7】本発明の実施例1の位相シフトマスクを用いた場合の、被転写体上に形成される光強度の空間像を示す図である。
図8】本発明の実施例2の位相シフトマスクを用いた場合の、被転写体上に形成される光強度の空間像を示す図である。
図9】本発明の実施例3の位相シフトマスクを用いた場合の、被転写体上に形成される光強度の空間像を示す図である。
図10】本発明の実施例4の位相シフトマスクを用いた場合の、被転写体上に形成される光強度の空間像を示す図である。
図11】本発明の実施例5の位相シフトマスクを用いた場合の、被転写体上に形成される光強度の空間像を示す図である。
図12】本発明の実施例6の位相シフトマスクを用いた場合の、被転写体上に形成される光強度の空間像を示す図である。
図13】本発明の実施例7の位相シフトマスクを用いた場合の、被転写体上に形成される光強度の空間像を示す図である。
図14】本発明の実施例8の位相シフトマスクを用いた場合の、被転写体上に形成される光強度の空間像を示す図である。
図15】本発明の実施例9の位相シフトマスクを用いた場合の、被転写体上に形成される光強度の空間像を示す図である。
図16】本発明の比較例の位相シフトマスクを用いた場合の、被転写体上に形成される光強度の空間像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
まず、本発明の完成に至る経緯を述べる。本発明者は、表示装置製造用マスクの露光環境に有利に適合し、微細なホールパターンを安定して転写できる優れた位相シフトマスクの構成について、鋭意検討を行った。
FIB装置は、主としてガリウムイオンを用い、カーボン系の膜を堆積させるものである。本発明者は、現行のFIB装置によって成膜される修正膜について、位相差と透過率の関係を調査した。その結果を図6に示す。図6は、本発明の実施形態において使用されるリペア装置(FIB装置)によって成膜される修正膜における、波長334nmの光での位相差と透過率の関係を示すグラフである。図6に示されるように、位相差と透過率とは反比例の関係となっており、この修正膜において、所望の位相差(例えば180度)と所望の透過率(例えば10%)を両立させることは困難である。なお、上記修正膜の位相差と透過率の関係のグラフは、i線(波長365nm)の光の場合でも略同じ傾向を有する。また、上記修正膜の位相差と透過率の関係のグラフは、h線(波長405nm)の光の場合でも同様に反比例の傾向を有している。h線の露光光での透過率がより高い位相シフト膜のパターンに対してこの修正膜による修正を行う場合でも、所望の位相差と所望の透過率を両立させることは困難である。
【0028】
そこで、本発明者は発想を転換し、現行のFIB装置によって成膜される修正膜について、位相差および透過率のいずれかのみが所望の範囲となるように成膜し、微細なホールパターンを安定して転写できないかを検討した。その結果、修正膜について、位相差が所望の範囲となるように成膜することで、微細なホールパターンを安定して転写できることが判明した。
本発明の位相シフトマスクは、以上の鋭意研究の結果、導き出されたものである。
【0029】
<第1の実施形態の位相シフトマスク>
本発明の第1の実施形態における位相シフトマスクの一例を図1に例示する。図1(a)は平面模式図であり、図1(b)は断面模式図である。
図1(b)に示すように、位相シフトマスク100は、透光性基板1と、透光性基板1上に、転写パターン(位相シフトパターン)が形成された位相シフト膜2(以下、単に「位相シフト膜2」という場合がある)を備える。
転写パターンは、ホール形状の透光部1Aからなる第1のホール部3Aと、ホール形状の透光部1Bからなる第2のホール部3Bを含む。第1のホール部3Aは、透光性基板1が露出してなる透光部1Aの外周の全てが、位相シフト膜2によって構成されている。第2のホール部3Bは、透光部1Bの外周の少なくとも一部が、修正膜4によって構成される(図1には、透光部1Bの外周の全てが修正膜4によって構成される第2のホール部3Bを示す)。
【0030】
第1のホール部3Aの透光部1Aのサイズは、4.0μm以下であることが好ましく、3.0μm以下であるとより好ましく、2.5μm以下であるとさらに好ましい。一方、第1のホール部3Aの透光部1Aのサイズは、0.8μm以上であることが好ましい。また、第2のホール部3Bの透光部1Bのサイズは、第1のホール部3Aと同様に、4.0μm以下であることが好ましく、3.0μm以下であるとより好ましく、2.5μm以下であるとさらに好ましい。一方、第2のホール部3Bの透光部1Bのサイズは、0.8μm以上であることが好ましい。
【0031】
なお、図1において、これらのホール部3A,3Bの形状が平面視で略正方形状である場合を示しているが、これに限定されるものではない。ホール部3A,3Bの形状は、長方形、多角形状、円形状、楕円形状等の他の形状であってもよい。ホール部3A,3Bの形状が略正方形の場合、サイズは一辺の長さを意味する。ホール部3A,3Bの形状が長方形の場合、サイズは長辺の長さを意味する。ホール部3A,3Bの形状が多角形の場合、サイズは、その多角形に内接する円の直径を意味する。ホール部3A,3Bの形状が円形の場合、サイズは直径を意味する。ホール部3A,3Bの形状が楕円形の場合、サイズは長軸の長さ(長径)を意味する。
【0032】
透光性基板1は、露光光に対して透明である。透光性基板1は、表面反射ロスが無いとしたときに、露光光に対して85%以上の透過率、好ましくは90%以上の透過率を有するものである。透光性基板1は、ケイ素と酸素を含有する材料からなり、合成石英ガラス、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、および低熱膨張ガラス(SiO-TiOガラス等)などのガラス材料で構成することができる。
【0033】
位相シフト膜2は、遷移金属と、ケイ素(Si)を含有する材料からなることができる。遷移金属としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)などが好適であり、チタン、モリブデンがより好ましい。また、位相シフト膜は、クロム(Cr)を含有する材料を用いてもよく、例えば、Crと、酸素(O)または窒素(N)の少なくとも一方を含むクロム系材料を用いることができる。具体的には、CrO、CrN、CrON等が例示される。位相シフト膜2は、ウェットエッチング可能なものが好ましい。
【0034】
露光光としては、例えば、300~500nmの波長域をもつ光を使用することができる。表示装置製造用の露光装置の光源としては、例えば、i線、h線、g線のいずれかまたはその複数を含む光源(例えば、高圧水銀ランプ)が好適に利用できる。露光光の代表波長は、上記波長域に含まれるいずれかの波長とすることができる。
また、パターンの微細化が進み、露光光の波長域の重心を短波長側にずらすことが望まれる場合には、上記波長域より短波長側の波長域(例えば、250~400nm)をもつ光を露光光とすることもでき、例えば、313nm、334nm、365nmのうち2つ以上を含む短波長側の波長域の光を露光光に適用することができる。さらに、i線(365nm)の単一波長の光を露光光に適用することもできる。
このように、露光光は、波長365nmの光を少なくとも含むことが好ましい。
本明細書においては、特記しない限り、i線(365nm)を代表波長の一例として用いる。
【0035】
位相シフト膜2は、露光光の代表波長に対して位相差Φを有する。すなわち、位相シフト膜2を透過した露光光と、透光部1Aを透過した前記露光光との間には、位相差Φが生じる。位相差Φは、略180度であることが好ましい。本明細書において、略180度とは、150度以上210度以下を意味し、好ましくは、160度以上200度以下、より好ましくは、170度以上190度以下である。また、位相シフト膜2は、露光光に含まれる主な波長(例えば、i線、h線、g線)のすべてに対して、略180度の位相差をもつことが好ましい。
【0036】
露光光に対する位相シフト膜2の透過率は、位相シフト膜2として必要な値を満たす。位相シフト膜2の透過率Tは、露光光に含まれる代表波長の光に対して、10%以上であることが好ましい。他方、位相シフト膜2の透過率Tは、露光光に含まれる代表波長の光に対して、50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。
【0037】
位相シフト膜2の膜厚は、光学的な性能を確保するために、200nm以下であることが好ましく、180nm以下であるとより好ましく、150nm以下であるとさらに好ましい。また、位相シフト膜2の膜厚は、所望の透過率を確保するために、50nm以上であることが好ましく、60nm以上であるとより好ましい。
【0038】
位相シフト膜2は、スパッタリング法などの公知の成膜方法により形成することができる。また、転写パターンは、ウェットエッチングなどを用いた公知の方法により形成することができる。
【0039】
修正膜4は、あるべき位相シフト膜2が欠落した白欠陥を含む領域(第2のホール部3Bの少なくとも一部を含む領域)に形成される。
修正膜4は、実質的に酸素を含まない金属膜、または炭素含有膜である。なお、本明細書において、実質的に酸素を含まないとは、Oの含有量が5%未満であることを意味する。
【0040】
修正膜4が炭素含有膜である場合、Cの含有量は、90~100%であることが好ましい。これにより、耐薬性を向上させることができる。なお、修正膜4は、C以外の元素(例えば、Ga、Si、W、Pt、Au等)を含んでいてもよい。
修正膜が金属膜である場合、例えば、MoまたはCrを含んだ膜とすることができる。
【0041】
修正膜4は、露光光の代表波長に対して略180度の位相差Φを有する。すなわち、修正膜4を透過した露光光と、透光部1Bを透過した露光光との間には、略180度(150度以上210度以下)の位相差Φが生じる。位相差Φは、好ましくは、160度以上200度以下、より好ましくは、170度以上190度以下である(図1には、位相差Φが180度の例を示している)。
【0042】
位相シフト膜2の位相差Φと修正膜4の位相差Φとの差は、絶対値で30度以内であると好ましく、絶対値で20度以内であるとより好ましく、絶対値で10度以内であるとさらに好ましい。
【0043】
修正膜4は、露光光の代表波長に対して透過率Tを有する。露光光に対する修正膜4の透過率Tは、露光光に対する位相シフト膜2の透過率Tよりも小さい。修正膜4の透過率Tは、10%未満であってもよい。
すなわち、露光光に対する基板1の透過率T、露光光に対する位相シフト膜2の透過率T、露光光に対する修正膜4の透過率Tとの間には、T<T<Tの関係が成り立つ。
修正膜4の透過率Tは、1%以上であることが好ましい。
【0044】
上記の光学特性を達成するために、修正膜4の膜厚は、100nm以上であることが好ましく、120nm以上であることがより好ましく、130nm以上であることがさらに好ましい。一方、修正膜4の膜厚は、200nm以下であることが好ましく、160nm以下であることがより好ましく、145nm以下であることがさらに好ましい。
第2のホール部3Bを構成する修正膜4の幅は、白欠陥を修正できる範囲の幅が確保されていればよく、0.4μm以上であることが好ましい。また、修正膜4の幅は、10μm以下であることが好ましい。
【0045】
本発明の第1の実施形態における位相シフトマスク100は、上述した構成を有することにより、表示装置製造用マスクの露光環境に有利に適合し、微細なホールパターンを安定して転写できる優れた位相シフトマスクとすることができる。
【0046】
<第2の実施形態の位相シフトマスク>
本発明の第2の実施形態における位相シフトマスクの他の例を図2に例示する。図2(a)は平面模式図であり、図2(b)は断面模式図である。この第2の実施形態の位相シフトマスク110における透光性基板1、位相シフト膜2、修正膜4、第1のホール部3A、第2のホール部3Bに関する事項については、第1の実施形態におけるものと同様であるので、その説明を省略する。
この第2の実施形態の位相シフトマスク110は、位相シフト膜2上に、遮光パターンを有する遮光膜5を有している。この遮光膜5は、転写パターン以外の領域に、遮光帯を含む遮光パターンを有している(図2には、第1のホール部3Aを構成する位相シフト膜2のパターンの外側と、第2のホール部3Bを構成する修正膜4の外側とに、遮光パターンを形成した例を示している)。
【0047】
遮光膜5は、位相シフト膜2の上側に配置され、位相シフト膜2をエッチングするエッチング液に対してエッチング耐性を有する(位相シフト膜2とはエッチング選択性が異なる)材料からなる。
遮光膜5は、クロム(Cr)を含有するクロム系材料から構成されることが好ましい。遮光膜5は、クロムを含有し、実質的にケイ素を含まない材料から構成されることがより好ましい。実質的にケイ素を含まないとは、ケイ素の含有量が2%未満であることを意味する。クロム系材料として、より具体的には、クロム(Cr)単体からなる材料、または、クロム(Cr)と、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のうちの少なくともいずれか1つを含有する材料が挙げられる。また、クロム系材料として、クロム(Cr)と、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のうちの少なくともいずれか1つとを含み、さらに、フッ素(F)を含む材料が挙げられる。例えば、遮光膜5を構成する材料として、Cr、CrO、CrN、CrF、CrCO、CrCN、CrON、CrCON、およびCrCONFが挙げられる。
【0048】
遮光膜5は、スパッタリング法などの公知の成膜方法により形成することができる。
【0049】
遮光膜5が露光光の透過を遮る機能を有し、位相シフト膜2と遮光膜5とが積層する部分において、露光光に対する光学濃度は、好ましくは3以上であり、より好ましくは、3.5以上、さらに好ましくは4以上である。なお、本実施形態においては、位相シフト膜2上に遮光膜5を有する構成としたが、位相シフト膜2に対してエッチング選択性が異なるエッチングマスク膜であってもよい。この場合、位相シフト膜よりも透過率が低い低透過膜であることが好ましい。
【0050】
透光部1Aと遮光膜5との間に設けられた位相シフト膜2が露出している領域の幅は、0.4μm以上であることが好ましい。また、その位相シフト膜2が露出している領域の幅は、10μm以下であることが好ましい。
【0051】
なお、図2に示した第2の実施形態の位相シフトマスクは、透光性基板1上に、位相シフト膜2、遮光膜5がこの順に積層した構成を有するが、遮光膜5、位相シフト膜2の順に積層した構成としてもよい。この場合、先に、透光性基板1上に遮光パターンを有する遮光膜5を形成してから、位相シフト膜2の積層と位相シフトパターンの形成を行うことができるため、位相シフト膜2と遮光膜5との間にエッチング選択性を有していなくてもよい。
【0052】
本発明の第2の実施形態における位相シフトマスク110は、上述した構成を有することにより、表示装置製造用マスクの露光環境に有利に適合し、微細なホールパターンを安定して転写できる優れた位相シフトマスクとすることができる。
【0053】
<第3の実施形態の位相シフトマスク>
本発明の第3の実施形態における位相シフトマスクの他の例を図3に例示する。図3(a)は平面模式図であり、図3(b)は断面模式図である。この第3の実施形態の位相シフトマスク120における透光性基板1、位相シフト膜2、修正膜4Cに関する事項については、以下に記載するものを除き、第1の実施形態におけるものと同様である。
【0054】
この第3の実施形態の位相シフトマスク120は、第2のホール部3Cにおける修正膜4Cで構成されている透光部1Cの外周縁に掘り込み部6が設けられている。具体的には、まず、位相シフト膜2のみで外周が構成されている透光部1Aに比べて、修正膜4Cを含む外周で構成されている透光部1Cの方がサイズは大きくなっている。さらに、透光部1Cの外周縁には、透光部1Aよりも大きくなっている分の幅で、掘り込み部6が設けられている。よって、掘り込み部6を除いた部分における透光部1Cのサイズと、透光部1Aのサイズは略同じになっている。
【0055】
掘り込み部6を透過した露光光と、掘り込み部6以外の透光部1Cを透過した露光光との間に生じる位相差Φは、150度以上210度以下であることが好ましく、160度以上200度以下であるとより好ましく、170度以上190度以下であるとさらに好ましい。掘り込み部6の深さは、上記の位相差Φとなるような深さとすることが好ましい。
第2のホール部3Cにおける、掘り込み部6以外の透光部1Cのサイズ(幅寸法)は、第1のホール部3Aの透光部1Aと同様であることが好ましい。
掘り込み部6の幅は、2μm以下であることが好ましく、1.5μm以下であるとより好ましい。掘り込み部6の幅を2μmよりも大きくしても、それによって得られる効果に差が生じにくい。一方、掘り込み部6の幅は、0.3μm以上であることが好ましく0.5μm以上であるとより好ましい。掘り込み部6の幅を0.3μm未満に加工することは、FIB装置による基板掘り込みでは容易ではない。
【0056】
このような構成とすることにより、掘り込み部6を透過した露光光と、掘り込み部6以外の透光部1Cを透過した露光光との間で位相シフト効果を得ることができるとともに、修正膜4Cを透過した露光光と、掘り込み部6以外の透光部1Cを透過した露光光との間でも位相シフト効果を得ることができる。さらに、露光光と、掘り込み部6を含む透光部を、上述した高い透過率Tで透過する。
よって、第2のホール部3Cにおいても、第1のホール部3Aと同様若しくはそれ以上に、位相差のみならず透過率も所望の範囲とすることが可能となる。
【0057】
本発明の第3の実施形態における位相シフトマスク120は、上述した構成を有することにより、表示装置製造用マスクの露光環境に有利に適合し、微細なホールパターンを安定して転写できる優れた位相シフトマスクとすることができる。
【0058】
<第4の実施形態の位相シフトマスク>
本発明の第4の実施形態における位相シフトマスクの他の例を図4に例示する。図4(a)は平面模式図であり、図4(b)は断面模式図である。この第4の実施形態の位相シフトマスク130は、第2の実施形態と同様に、位相シフト膜上に、遮光パターンを有する遮光膜5を有している。そして、この第4の実施形態の位相シフトマスクは、第3の実施形態と同様に、第2のホール部3Cにおける修正膜4Cで構成されている外周縁の透光部1Cに掘り込み部6が設けられている。
この第4の実施形態の位相シフトマスクにおける透光性基板1、位相シフト膜2、修正膜4C、遮光膜5、掘り込み部6に関する事項については、第1ないし第3の実施形態におけるものと同様である。
【0059】
本発明の第4の実施形態における位相シフトマスク130は、上述した構成を有することにより、表示装置製造用マスクの露光環境に有利に適合し、微細なホールパターンを安定して転写できる優れた位相シフトマスクとすることができる。
【0060】
<第5の実施形態の位相シフトマスク>
本発明の第5の実施形態における位相シフトマスクの他の例を図5に例示する。図5(a)は平面模式図であり、図5(b)は断面模式図である。
この第5の実施形態の位相シフトマスク140は、第2のホール部3Dにおける透光部1Dの外周の一部を修正膜4Dによって構成されたものである(図5には、平面視略正方形状の透光部1Dの外周の一側面側に修正膜4Dを形成した例を示している。それ以外の透光部1Dの外周には、位相シフト膜2が配置されている。)。また、この第5の実施形態の位相シフトマスク140は、第2のホール部3Dにおける修正膜4Dで構成されている外周縁の透光部1Dに掘り込み部6Dが設けられている。そして、この第5の実施形態の位相シフトマスク140は、位相シフト膜2上に、遮光パターンを有する遮光膜5を有している。この遮光膜5は、転写パターン以外の領域に、遮光帯を含む遮光パターンを有している。
この第5実施形態の位相シフトマスク140における透光性基板1、位相シフト膜2、修正膜4D、遮光膜5、透光部1A、掘り込み部6Dに関する事項については、上述した点を除き、第1ないし第4の実施形態におけるものと同様であるので、その説明を省略する。
【0061】
本発明の第5の実施形態における位相シフトマスク140は、上述した構成を有することにより、表示装置製造用マスクの露光環境に有利に適合し、微細なホールパターンを安定して転写できる優れた位相シフトマスクとすることができる。
【0062】
次に、本発明の位相シフトマスクの製造方法について説明する。
本発明の位相シフトマスクの製造方法は、透光性基板上に、転写パターンが形成された位相シフト膜を備える位相シフトマスクの製造方法であって、
前記透光性基板上に設けられた前記位相シフト膜にホール形状の透光部からなるホール部を含む転写パターンを形成する工程と、
前記位相シフト膜の転写パターンに対し、欠陥検査を行って欠陥が存在するホール部を特定する工程と、
前記欠陥が存在するホール部に対し、修正膜を用いて欠陥修正を行う工程を有するものである。
【0063】
<第1の実施形態の位相シフトマスクの製造方法>
第1の実施形態の位相シフトマスクを製造する場合には、透光性基板上に位相シフト膜が形成されているマスクブランクを用意する。マスクブランクに形成されている透光性基板、位相シフト膜の具体的な構成については、転写パターンが形成されていない点を除き、第1の実施形態の位相シフトマスクに形成されている透光性基板1、位相シフト膜2と同様である。
そして、位相シフト膜2にホール形状の透光部1A,1Bからなるホール部3A,3Bを含む転写パターンを形成する。例えば、位相シフト膜2の上にレジスト膜を形成し、レジスト膜から形成したホール部3A,3Bを含むレジスト膜パターンをマスクにして位相シフト膜2をウェットエッチングすることで、位相シフト膜2にホール部3A,3Bを含む転写パターンを形成することができる。
位相シフト膜2の転写パターンに対し、欠陥検査を行って欠陥が存在するホール部3Bを特定する。
欠陥が存在するホール部3Bに対し、修正が必要な領域に、修正膜4を用いて欠陥修正を行う。
本実施形態においては、欠陥が存在するホール部について、透光部1Bの外周の全てに修正膜4を形成する(透光部1Bの外周の全てに対して欠陥修正が必要とされる場合に対応している)。
【0064】
修正膜4は、FIB装置を用いて形成することができる。修正膜4を形成するためのFIB装置としては、公知のものを用いることができる。イオン源としては、例えば、Ga(ガリウム)を用いることができる。
修正膜4をFIB法によって形成するための原料ガスとしては、例えば、ピレン(C1610)、フェナントレン(C1410)、またはスチレン(C)等の炭化水素化合物を含むガス、W(CO)、WF、またはWCl等のWを含むガス、TMOSと呼ばれるオルトケイ酸テトラメチル(Si(OCH:Tetramethoxysilane)と酸素との混合ガス、DMG(hfac)と呼ばれるジメチルゴールドヘキサフルオロアセチルアセトネート(CAu:Dimethyl gold hexafluoro acetylacetonate)、(MeCp)PtMeガスと呼ばれる(トリメチル)メチルシクロペンタジエニル白金(IV)(Methylcyclopentadientyl trimethyl platinum)、Cu(hfac)TMVSと呼ばれるトリメチルビニルシリルヘキサフルオロアセチルアセトナト酸塩銅(Copper(+1) hexafluoro acethylacetonate trimethylvinylsilane)を用いることができる。本実施形態では、ピレンを原料ガスとする場合について説明する。
Moを含んだ膜の原料ガスとしては、MoF、Mo(CO)、MoCl等が例示される。Crを含んだ膜の原料ガスとしては、Cr(C等が例示される。
【0065】
FIB装置を用いて、露光光の代表波長に対して略180度(150度以上210度以下)の位相差Φを有するように、修正膜4を所定の膜厚で形成する。このとき、露光光に対する修正膜4の透過率Tは、露光光に対する位相シフト膜2の透過率Tよりも小さいものとなる(図6参照)。
このようにして、透光部の外周の少なくとも一部が修正膜によって構成される第2のホール部と、透光部の外周の全てが位相シフト膜によって構成される第1のホール部とを有する、第1の実施形態の位相シフト膜を製造することができる。
【0066】
<第2の実施形態の位相シフトマスクの製造方法>
第2の実施形態の位相シフトマスクを製造する場合には、透光性基板上に位相シフト膜、遮光膜が形成されているマスクブランクを用意する。マスクブランクに形成されている透光性基板、位相シフト膜、遮光膜の具体的な構成については、転写パターン、遮光パターンが形成されていない点を除き、第2の実施形態の位相シフトマスク110に形成されている透光性基板1、位相シフト膜2、遮光膜5と同様である。
そして、遮光膜5に遮光パターンを形成し、位相シフト膜2にホール形状の透光部1A,1Bからなるホール部3A,3Bを含む転写パターンを形成する。例えば、遮光膜5の上にレジスト膜を形成し、レジスト膜から形成したホール部3A,3Bを含むレジスト膜パターンをマスクにして遮光膜5をウェットエッチングすることで、遮光膜5にホール部3A,3Bを含む転写パターンを形成することができる。そして、この転写パターンが形成された遮光膜5をマスクとするウェットエッチングを行い、位相シフト膜2に転写パターンを形成する。その後、遮光膜5の上に第2のレジスト膜を形成し、第2のレジスト膜から形成した遮光帯を含む遮光パターンを含むレジスト膜パターンをマスクにして遮光膜5をウェットエッチングすることで、遮光膜5に遮光パターンを形成することができる。
位相シフト膜2の転写パターンに対し、欠陥検査を行って欠陥が存在するホール部3Bを特定する。
欠陥が存在するホール部3Bに対し、修正が必要な領域に、修正膜4を用いて欠陥修正を行う。
本実施形態においても、欠陥が存在するホール部3Bについて、透光部1Bの外周の全てに修正膜4を形成する(透光部1Bの外周の全てに対して欠陥修正が必要とされる場合に対応している)。
第1の実施形態の位相シフトマスク100を製造する場合と同様に、FIB装置を用いて、露光光の代表波長に対して略180度(150度以上210度以下)の位相差Φを有するように、修正膜4を所定の膜厚で形成する。このとき、露光光に対する修正膜4の透過率Tは、露光光に対する位相シフト膜2の透過率Tよりも小さいものとなる(図6参照)。
このようにして、透光部の外周の少なくとも一部が修正膜によって構成される第2のホール部と、透光部の外周の全てが位相シフト膜によって構成される第1のホール部とを有する、第2の実施形態の位相シフト膜を製造することができる。
【0067】
<第3の実施形態の位相シフトマスクの製造方法>
第3の実施形態の位相シフトマスクを製造する場合には、第1の実施形態の位相シフトマスクを製造する場合と同様に、透光性基板上に位相シフト膜が形成されているマスクブランクを用意する。マスクブランクに形成されている透光性基板、位相シフト膜の具体的な構成については、転写パターン、掘り込み部が形成されていない点を除き、第1の実施形態の位相シフトマスク120に形成されている透光性基板1、位相シフト膜2と同様である。
そして、第1の実施形態の位相シフトマスク100を製造する場合と同様に、位相シフト膜2にホール形状の透光部1A,1Cからなるホール部3A,3Cを含む転写パターンを形成し、位相シフト膜2の転写パターンに対し、欠陥検査を行って欠陥が存在するホール部3Cを特定する。
欠陥が存在するホール部3Cに対し、修正が必要な領域に、修正膜4Cを用いて欠陥修正を行う。
本実施形態においても、欠陥が存在するホール部3Cについて、透光部1Cの外周の全てに修正膜4Cを形成する(透光部1Cの外周の全てに対して欠陥修正が必要とされる場合に対応している)。このとき、修正膜4Cの幅は、次の工程で形成する掘り込み部6を除いた部分の透光部1Cのサイズが、透光部1Aのサイズと略同じになるようにする。
本実施形態において、欠陥修正を行う工程は、形成された修正膜4Cの外周縁の透光部1Cに掘り込み部6を形成する工程をさらに含む。掘り込み部6は、FIB装置を用いて形成することができる。イオン源としては、例えば、Ga(ガリウム)を用いることができる。
掘り込み部6をFIB法によって形成するための原料ガスとしては、透光性基板1をエッチングできる性質を有するものであれば、特に限定されない。例えば、フッ素系エッチングガスを用いることができる。
FIB装置を用いて、露光光の代表波長に対して略180度(150度以上210度以下)の位相差Φと所望の透過率を有するように、所定の深さと所定の幅を有する掘り込み部6を形成する。
修正膜4Cを形成する工程と、掘り込み部6を形成する工程とは、いずれを先に行ってもよく、並行して行ってもよい。
このようにして、透光部の外周の少なくとも一部が修正膜によって構成されて掘り込み部が形成される第2のホール部と、透光部の外周の全てが位相シフト膜によって構成される第1のホール部とを有する、第3の実施形態の位相シフト膜を製造することができる。
【0068】
<第4の実施形態の位相シフトマスクの製造方法>
第4の実施形態の位相シフトマスクを製造する場合には、第2の実施形態の位相シフトマスクを製造する場合と同様に、マスクブランクに形成されている透光性基板、位相シフト膜、遮光膜の具体的な構成については、転写パターン、遮光パターン、掘り込み部が形成されていない点を除き、第4の実施形態の位相シフトマスク130に形成されている透光性基板1、位相シフト膜2、遮光膜5と同様である。
そして、第2の実施形態の位相シフトマスク110を製造する場合と同様に、位相シフト膜2にホール形状の透光部1A,1Cからなるホール部3A,3Cを含む転写パターンを形成し、位相シフト膜2の転写パターンに対し、欠陥検査を行って欠陥が存在するホール部3Cを特定する。
欠陥が存在するホール部3Cに対し、修正が必要な領域に、修正膜4Cを用いて欠陥修正を行う。
本実施形態においても、欠陥が存在するホール部3Cについて、透光部1Cの外周の全てに修正膜4Cを形成する(透光部1Cの外周の全てに対して欠陥修正が必要とされる場合に対応している)。
本実施形態において、欠陥修正を行う工程は、形成された修正膜の外周縁の透光部に掘り込み部を形成する工程をさらに含む。第3の実施形態の位相シフトマスクを製造する場合と同様に、FIB装置を用いて、露光光の代表波長に対して略180度(150度以上210度以下)の位相差Φと所望の透過率を有するように、所定の深さと所定の幅を有する掘り込み部6を形成する。
このようにして、透光部の外周の少なくとも一部が修正膜によって構成されて掘り込み部が形成される第2のホール部と、透光部の外周の全てが位相シフト膜によって構成される第1のホール部とを有する、第4の実施形態の位相シフト膜を製造することができる。
【0069】
<第5の実施形態の位相シフトマスクの製造方法>
第5の実施形態の位相シフトマスクを製造する場合には、第4の実施形態の位相シフトマスクを製造する場合と同様に、透光性基板上に位相シフト膜、遮光膜が形成されているマスクブランクを用意する。マスクブランクに形成されている透光性基板、位相シフト膜、遮光膜の具体的な構成については、転写パターン、遮光パターン、掘り込み部が形成されていない点を除き、第5の実施形態の位相シフトマスク140に形成されている透光性基板1、位相シフト膜2、遮光膜5と同様である。
そして、第4の実施形態の位相シフトマスク130を製造する場合と同様に、位相シフト膜2にホール形状の透光部1A,1Dからなるホール部3A,3Dを含む転写パターンを形成し、位相シフト膜2の転写パターンに対し、欠陥検査を行って欠陥が存在するホール部3Dを特定する。
欠陥が存在するホール部3Dに対し、修正が必要な領域に、修正膜4Dを用いて欠陥修正を行う。
本実施形態においては、欠陥が存在するホール部3Dについて、透光部1Dの外周の一部に修正膜4Dを形成する(透光部1Dの外周の一部に対してのみ欠陥修正が必要とされる場合に対応している)。
本実施形態において、欠陥修正を行う工程は、形成された修正膜4Dの外周縁の透光部に掘り込み部6Dを形成する工程をさらに含む。第4の実施形態の位相シフトマスク130を製造する場合と同様に、FIB装置を用いて、露光光の代表波長に対して略180度(150度以上210度以下)の位相差Φと所望の透過率を有するように、所定の深さと所定の幅を有する掘り込み部6Dを形成する。
このようにして、透光部の外周の少なくとも一部が修正膜によって構成されて掘り込み部が形成される第2のホール部と、透光部の外周の全てが位相シフト膜によって構成される第1のホール部とを有する、第5の実施形態の位相シフト膜を製造することができる。
【0070】
本実施形態の転写用マスクの製造方法によれば、表示装置製造用マスクの露光環境に有利に適合し、微細なホールパターンを安定して転写できる優れた位相シフトマスクを製造することができる。
【0071】
<表示装置の製造方法>
本実施形態の表示装置の製造方法について説明する。本実施形態の表示装置の製造方法は、上述の実施形態のいずれかに記載の位相シフトマスク、または、上述の実施形態のいずれかに記載の位相シフトマスクの製造方法で製造された位相シフトマスクを、露光装置のマスクステージに載置する工程と、この位相シフトマスクに露光光を照射して、表示装置用の基板上に設けられたレジスト膜に転写パターンを転写する工程と、を有する。
以下、各工程を詳細に説明する。
【0072】
載置工程では、上述した実施形態の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージに載置する。ここで、位相シフトマスクは、露光装置の投影光学系を介して表示装置用の基板上に形成されたレジスト膜に対向するように配置される。
【0073】
パターン転写工程では、位相シフトマスクに露光光を照射して、表示装置用の基板上に形成されたレジスト膜にパターン形成用の薄膜パターンを含む転写パターンを転写する。露光光は、313nm~436nmの波長域から選択される複数の波長の光を含む複合光、または313nm~436nmの波長域からある波長域をフィルターなどでカットし選択された単色光、または313nm~436nmの波長域を有する光源から発した単色光である。例えば、露光光は、i線、h線およびg線のうち少なくとも1つを含む複合光、またはi線の単色光である。露光光として複合光を用いることにより、露光光強度を高くしてスループットを向上することができる。そのため、表示装置の製造コストを下げることができる。
【0074】
本実施形態の表示装置の製造方法によれば、高解像度、微細なコンタクトホールを有する、高精細の表示装置を製造することができる。
【実施例0075】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0076】
本実施形態の位相シフトマスクについて、光学シミュレーションにより、その転写性能を比較し、評価した。すなわち、被転写体上に、サイズ(直径)が1.5μmのホールパターンを形成するための転写用パターンを有する位相シフトマスクについて、露光条件を共通に設定したときに、どのような転写性能を示すかについて、光学シミュレーションを行った。
【0077】
(実施例1)
実施例1の位相シフトマスクは、図1に示すように、透光性基板1上に、転写パターンが形成された位相シフト膜2を備えている。位相シフト膜2は、代表波長334nmの露光光に対して、16%の透過率Tと、180度の位相差Φを有するものである。転写パターンは、ホール形状の透光部1A,1Bからなる第1のホール部3Aおよび第2のホール部3Bを含むものである。第1のホール部3Aと第2のホール部3Bの透光部1A,1Bのサイズ(正方形の一辺)は、2.4μmである。修正膜4は、代表波長334nmの露光光に対して、2%の透過率Tと、180度の位相差Φを有するものである。第2のホール部3Bに形成される修正膜4のサイズ(透光部1Bと修正膜4との境界から修正膜4と位相シフト膜2との境界までの距離である修正膜4の幅。以下、単に幅という場合がある。)を1μm、1.5μm、2μm、3μm、5μmとしたものと、第1のホール部3Aについて、光学シミュレーションを行った。
【0078】
図7は、本発明の実施例1の位相シフトマスクを用いた場合の、被転写体上に形成される光強度の空間像を示す図である。図7において、実施例1における位相シフト膜2の第2のホール部3Bと、第1のホール部3Aについて、光学シミュレーションを行った結果を示している。
図7に示されるように、第2のホール部3Bに形成される修正膜4のサイズ(幅)が大きくなるにつれて、第1のホール部3Aのプロファイル(図7の「Ref」)に対して、ピークの光強度の絶対値が低くなり、透過光強度のピークを形成する傾斜が緩やかになるものの、いずれも許容範囲内であった。
【0079】
より定量的に、位相シフトマスクを、光学的な性能から評価するとき、以下のような指標を用いることができる。
(1)焦点深度(DOF)
目標CD(Critical Dimension)に対し、±10%の範囲内となるための焦点深度の大きさ。DOFの数値が大きければ、被転写体(例えば表示装置用のパネル基板)の平坦度の影響を受けにくく、確実に微細なパターンが形成でき、そのCD(線幅)ばらつきが抑えられる。
(2)MEEF(Mask Error Enhancement Factor) MaskCD誤差と被転写体上に形成されたパターンのCD誤差の比率を示す数値であり、MEEFが小さいほど被転写体上に形成されたパターンのCD誤差が低減できる。
(3)露光裕度(EL)
パネルCDのターゲット 1.5μm ±10%のCDばらつきを満足する露光裕度の割合を表している。
これらの項目について、実施例1の位相シフトマスクを評価した結果を表1に示す(表1には、修正膜4のサイズ(幅)を1μm、2μm、5μmのものを抜粋している)。
【0080】
【表1】
表1に示されるように、第2のホール部3Bは、第1のホール部3Aのプロファイル(表1の「位相シフトマスク」の行)に対して、いずれの指標も同等もしくは低下したものの、いずれも許容範囲内であった。
【0081】
この結果から、実施例1の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、表示装置上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に表示装置上に形成されるホールパターンを高精度に形成できるといえる。
【0082】
(実施例2)
実施例2の位相シフトマスクは、図2に示すように、透光性基板1上に、転写パターンが形成された位相シフト膜2と遮光パターンが形成された遮光膜5を備えている。位相シフト膜2は、代表波長334nmの露光光に対して、16%の透過率Tと、180度の位相差Φを有するものである。また、位相シフト膜2と遮光膜5との積層構造で、代表波長334nmの露光光に対して3.0の光学濃度を有する。転写パターンは、ホール形状の透光部1A,1Bからなる第1のホール部3Aおよび第2のホール部3Bを含むものである。第1のホール部3Aと第2のホール部3Bの透光部1A,1Bのサイズ(正方形の一辺)は、2.4μmである。修正膜4は、代表波長334nmの露光光に対して、2%の透過率Tと、180度の位相差Φを有するものである。第2のホール部3Bに形成される修正膜4のサイズ(透光部1Bと修正膜4との境界から修正膜4と遮光膜5との境界までの距離である修正膜4の幅。以下、単に幅という場合がある。)を1.5μmとしたものと、第1のホール部3Aについて、光学シミュレーションを行った。
【0083】
図8は、本発明の実施例2の位相シフトマスクを用いた場合の、被転写体上に形成される光強度の空間像を示す図である。図8において、実施例1における位相シフト膜2の第2のホール部3Bと、第1のホール部3Aについて、光学シミュレーションを行った結果を示している。
図8に示されるように、修正膜4が設けられた第2のホール部3Bのプロファイルは、第1のホール部3Aのプロファイル(図8の「Ref」)に対してピークの光強度の絶対値は低くなっているが、許容範囲内であった。一方、修正膜4が設けられた第2のホール部3Bのプロファイルは、第1のホール部3Aのプロファイルに対して底の部分の光強度の絶対値が大幅に低くなっており、良好な結果となっている。
【0084】
この結果から、実施例2の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、表示装置上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に表示装置上に形成されるホールパターンを高精度に形成できるといえる。
【0085】
(実施例3)
実施例3の位相シフトマスクは、図3に示すように、透光性基板1上に、転写パターンが形成された位相シフト膜2を備えている。位相シフト膜2は、代表波長334nmの露光光に対して、16%の透過率Tと、180度の位相差Φを有するものである。転写パターンは、ホール形状の透光部1A,1Cからなる第1のホール部3Aおよび第2のホール部3Cを含むものである。第1のホール部3Aの透光部1Aのサイズ(正方形の一辺)は、2.4μmである。また、第2のホール部3Cの掘り込み部6を除いた部分における透光部1Cのサイズ(正方形の一辺)は、2.4μmである。修正膜4Cは、代表波長334nmの露光光に対して、2%の透過率Tと、180度の位相差Φを有するものである。実施例3の位相シフトマスクは、第2のホール部3Cにおける透光部1Cの外周縁に掘り込み部6が設けられている。掘り込み部6は、掘り込み部6以外の透光部1Cを透過した露光光に対して180度の位相差Φを有し、76%の透過率Tを有する。第2のホール部3Cに形成される修正膜4Cのサイズ(幅)を5μmとし、第2のホール部3Cに形成される掘り込み部6のサイズ(幅)を0.6μm、0.8μm、1μm、1.2μm、1.5μmとしたものと、第1のホール部3Aについて、光学シミュレーションを行った。
【0086】
図9は、本発明の実施例3の位相シフトマスクを用いた場合の、被転写体上に形成される光強度の空間像を示す図である。図9において、実施例3における位相シフト膜2の第2のホール部3Cと、第1のホール部3Aについて、光学シミュレーションを行った結果を示している。
図9に示されるように、第2のホール部3Cのプロファイルは、いずれにおいても、第1のホール部3Aのプロファイル(図9の「Ref」)に対して、ピークの光強度の絶対値が大きくなっており、第1のホール部3Aと同等若しくはそれ以上の好ましいプロファイルを有していた。
【0087】
実施例1と同様に、光学的な性能について、実施例3の位相シフトマスクを評価した結果を表2に示す(表2には、掘り込み部6のサイズ(幅)を0.6μm、1μm、1.5μmとしたものを抜粋している)。
【0088】
【表2】
表2に示されるように、掘り込み部が形成された第2のホール部3Cは、第1のホール部3Aよりも、DOFについて良好な値が得られた。MEEFについては第1のホール部3Aの方が良好であったが、いずれも許容範囲内であった。ELについても、第1のホール部3Aに比べて良好もしくは遜色ない値が得られた。
【0089】
この結果から、実施例3の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、表示装置上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に表示装置上に形成されるホールパターンを高精度に形成できるといえる。
【0090】
(実施例4)
実施例4の位相シフトマスクは、図3に示すように、透光性基板1上に、転写パターンが形成された位相シフト膜2を備えている。位相シフト膜2は、代表波長334nmの露光光に対して、16%の透過率Tと、180度の位相差Φを有するものである。転写パターンは、ホール形状の透光部1A,1Cからなる第1のホール部3Aおよび第2のホール部3Cを含むものである。第1のホール部3Aの透光部1Aのサイズ(正方形の一辺)は、2.4μmである。また、第2のホール部3Cの掘り込み部6を除いた部分における透光部1Cのサイズ(正方形の一辺)は、2.4μmである。修正膜4Cは、代表波長334nmの露光光に対して、2%の透過率Tと、180度の位相差Φを有するものである。実施例4の位相シフトマスクは、第2のホール部3Cにおける外周縁の透光部1Cに掘り込み部6が設けられている。掘り込み部は6、掘り込み部6以外の透光部を透過した露光光に対して180度の位相差Φを有し、76%の透過率Tを有する。第2のホール部3Cに形成される掘り込み部6のサイズ(幅)を1μmとし、第2のホール部に形成される修正膜4Cのサイズ(幅)を1μm、2μm、3μm、5μmとしたものと、第1のホール部について、光学シミュレーションを行った。
【0091】
図10は、本発明の実施例4の位相シフトマスクを用いた場合の、被転写体上に形成される光強度の空間像を示す図である。図10において、実施例4における位相シフト膜2の第2のホール部3Cと、第1のホール部3Aについて、光学シミュレーションを行った結果を示している。
図10に示されるように、第2のホール部3Cのプロファイルは、いずれにおいても、第1のホール部3Aのプロファイル(図10の「Ref」)に対して、ピークの光強度の絶対値が同等若しくは大きくなっており、第1のホール部3Aと同等若しくはそれ以上の好ましいプロファイルを有していた。
【0092】
実施例1と同様に、光学的な性能について、実施例4の位相シフトマスクを評価した結果を表3に示す(表3には、修正膜4Cのサイズ(幅)を1μm、2μm、5μmとしたものを抜粋している)。
【0093】
【表3】
表3に示されるように、掘り込み部が形成された第2のホール部3Cは、第1のホール部3Aよりも、DOFについて良好な値が得られた。MEEFについては第1のホール部3Aの方が良好であったが、いずれも許容範囲内であった。ELについても、第1のホール部3Aに比べて良好な値が得られた。
【0094】
この結果から、実施例4の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、表示装置上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に表示装置上に形成されるホールパターンを高精度に形成できるといえる。
【0095】
(実施例5)
実施例5の位相シフトマスクは、図4に示すように、透光性基板1上に、転写パターンが形成された位相シフト膜2と遮光パターンが形成された遮光膜5を備えている。位相シフト膜2は、代表波長334nmの露光光に対して、16%の透過率Tと、180度の位相差Φを有するものである。また、位相シフト膜2と遮光膜5との積層構造で、代表波長334nmの露光光に対して3.0の光学濃度を有する。転写パターンは、ホール形状の透光部1A,1Cからなる第1のホール部3Aおよび第2のホール部3Cを含むものである。第1のホール部3Aの透光部1Aのサイズ(正方形の一辺)は、1.9μmである。また、第2のホール部3Cの掘り込み部6を除いた部分における透光部1Cのサイズ(正方形の一辺)は、1.9μmである。修正膜4Cは、代表波長334nmの露光光に対して、2%の透過率Tと、180度の位相差Φを有するものである。実施例5の位相シフトマスクは、第2のホール部3Cにおける透光部1Cの外周縁に掘り込み部6が設けられている。掘り込み部6は、掘り込み部6以外の透光部1Cを透過した露光光に対して180度の位相差Φを有し、76%の透過率Tを有する。第2のホール部3Cに形成される修正膜4Cのサイズ(透光部1Cの掘り込み部6と修正膜4との境界から修正膜4と遮光膜5との境界までの距離である修正膜4の幅。以下、単に幅という場合がある。)を0.6μmとし、第2のホール部3Cに形成される掘り込み部6のサイズ(幅)を0.9μmとしたものと、第1のホール部3Aについて、光学シミュレーションを行った。
【0096】
図11は、本発明の実施例5の位相シフトマスクを用いた場合の、被転写体上に形成される光強度の空間像を示す図である。図4において、実施例5における位相シフト膜2の第2のホール部3Cと、第1のホール部3Aについて、光学シミュレーションを行った結果を示している。
図11に示されるように、第2のホール部3Cのプロファイルは、第1のホール部3Aのプロファイル(図11の「Ref」)に対して、ピークの光強度の絶対値は同等であった。第2のホール部3Cのプロファイルは、底の部分の光強度の絶対値は若干高くなってはいるが、第1のホール部3Aと比べてそん色ないプロファイルを有していた。
【0097】
実施例1と同様に、光学的な性能について、実施例5の位相シフトマスクを評価した結果を表4に示す。
【0098】
【表4】
表4に示されるように、掘り込み部が形成された第2のホール部3Cは、第1のホール部3Aよりも、DOFについて良好な値が得られた。MEFFについては第1のホール部3Aの方が良好であったが、許容範囲内であった。ELについても、第1のホール部3Aに比べて良好な値が得られた。
【0099】
この結果から、実施例5の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、表示装置上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に表示装置上に形成されるホールパターンを高精度に形成できるといえる。
【0100】
(実施例6)
実施例6の位相シフトマスクは、図1に示すように、透光性基板1上に、転写パターンが形成された位相シフト膜2を備えている。位相シフト膜2は、代表波長334nmの露光光に対して、10%の透過率Tと、180度の位相差Φを有するものである。転写パターンは、ホール形状の透光部1A,1Bからなる第1のホール部3Aおよび第2のホール部3Bを含むものである。第1のホール部3Aと第2のホール部3Bの透光部1A,1Bのサイズ(正方形の一辺)は、2.4μmである。修正膜4は、代表波長334nmの露光光に対して、2%の透過率Tと、180度の位相差Φを有するものである。第2のホール部3Bに形成される修正膜4のサイズ(透光部1Bと修正膜4との境界から修正膜4と位相シフト膜2との境界までの距離である修正膜4の幅。以下、単に幅という場合がある。)を1μm、2μm、3μm、5μmとしたものと、第1のホール部3Aについて、光学シミュレーションを行った。
【0101】
図12は、本発明の実施例6の位相シフトマスクを用いた場合の、被転写体上に形成される光強度の空間像を示す図である。図12において、実施例6における位相シフト膜2の第2のホール部3Bと、第1のホール部3Aについて、光学シミュレーションを行った結果を示している。
図12に示されるように、第2のホール部3Bに形成される修正膜4のサイズ(幅)が大きくなるにつれて、第1のホール部3Aのプロファイル(図12の「Ref」)に対して、ピークの光強度の絶対値が低くなり、透過光強度のピークを形成する傾斜が緩やかになるものの、いずれも許容範囲内であった。
【0102】
実施例1と同様に、光学的な性能について、実施例6の位相シフトマスクを評価した結果を表5に示す(表5には、修正膜4のサイズ(幅)を1μm、2μm、5μmとしたものを抜粋している)
【0103】
【表5】
表5に示されるように、第2のホール部3Bは、第1のホール部3Aのプロファイル(表1の「位相シフトマスク」の行)に対して、いずれの指標も同等もしくは低下したものの、いずれも許容範囲内であった。
【0104】
この結果から、実施例6の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、表示装置上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に表示装置上に形成されるホールパターンを高精度に形成できるといえる。
【0105】
(実施例7)
実施例7の位相シフトマスクは、図3に示すように、透光性基板1上に、転写パターンが形成された位相シフト膜2を備えている。位相シフト膜2は、代表波長334nmの露光光に対して、10%の透過率Tと、180度の位相差Φを有するものである。転写パターンは、ホール形状の透光部1A,1Cからなる第1のホール部3Aおよび第2のホール部3Cを含むものである。第1のホール部3Aの透光部1Aのサイズ(正方形の一辺)は、2.4μmである。また、第2のホール部3Cの掘り込み部6を除いた部分における透光部1Cのサイズ(正方形の一辺)は、2.4μmである。修正膜4Cは、代表波長334nmの露光光に対して、2%の透過率Tと、180度の位相差Φを有するものである。実施例7の位相シフトマスクは、第2のホール部3Cにおける外周縁の透光部1Cに掘り込み部6が設けられている。掘り込み部は6、掘り込み部6以外の透光部を透過した露光光に対して180度の位相差Φを有し、76%の透過率Tを有する。第2のホール部3Cに形成される掘り込み部6のサイズ(幅)を1μmとし、第2のホール部に形成される修正膜4Cのサイズ(幅)を1μm、2μm、3μm、5μmとしたものと、第1のホール部について、光学シミュレーションを行った。
【0106】
図13は、本発明の実施例7の位相シフトマスクを用いた場合の、被転写体上に形成される光強度の空間像を示す図である。図13において、実施例7における位相シフト膜2の第2のホール部3Cと、第1のホール部3Aについて、光学シミュレーションを行った結果を示している。
図13に示されるように、第2のホール部3Cのプロファイルは、いずれにおいても、第1のホール部3Aのプロファイル(図13の「Ref」)に対して、ピークの光強度の絶対値が同等若しくは大きくなっており、第1のホール部3Aと同等若しくはそれ以上の好ましいプロファイルを有していた。
【0107】
実施例1と同様に、光学的な性能について、実施例7の位相シフトマスクを評価した結果を表6に示す(表6には、修正膜4Cのサイズ(幅)を1μm、2μm、5μmとしたものを抜粋している)。
【0108】
【表6】
表6に示されるように、掘り込み部が形成された第2のホール部3Cは、第1のホール部3Aよりも、DOFについて良好な値が得られた。MEEFについては第1のホール部3Aの方が良好であったが、いずれも許容範囲内であった。ELについても、第1のホール部3Aに比べて良好な値が得られた。
【0109】
この結果から、実施例7の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、表示装置上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に表示装置上に形成されるホールパターンを高精度に形成できるといえる。
【0110】
(実施例8)
実施例8の位相シフトマスクは、図1に示すように、透光性基板1上に、転写パターンが形成された位相シフト膜2を備えている。位相シフト膜2は、代表波長365nmの露光光に対して、10%の透過率Tと、180度の位相差Φを有するものである。転写パターンは、ホール形状の透光部1A,1Bからなる第1のホール部3Aおよび第2のホール部3Bを含むものである。第1のホール部3Aと第2のホール部3Bの透光部1A,1Bのサイズ(正方形の一辺)は、2.4μmである。修正膜4は、代表波長365nmの露光光に対して、2%の透過率Tと、180度の位相差Φを有するものである。第2のホール部3Bに形成される修正膜4のサイズ(透光部1Bと修正膜4との境界から修正膜4と位相シフト膜2との境界までの距離である修正膜4の幅。以下、単に幅という場合がある。)を1μm、2μm、3μm、5μmとしたものと、第1のホール部3Aについて、光学シミュレーションを行った。
【0111】
図14は、本発明の実施例8の位相シフトマスクを用いた場合の、被転写体上に形成される光強度の空間像を示す図である。図14において、実施例8における位相シフト膜2の第2のホール部3Bと、第1のホール部3Aについて、光学シミュレーションを行った結果を示している。
図14に示されるように、第2のホール部3Bに形成される修正膜4のサイズ(幅)が大きくなるにつれて、第1のホール部3Aのプロファイル(図14の「Ref」)に対して、ピークの光強度の絶対値はわずかに低くなり、透過光強度のピークを形成する傾斜がわずかに緩やかになるものの、いずれも許容範囲内であった。
【0112】
実施例1と同様に、光学的な性能について、実施例8の位相シフトマスクを評価した結果を表7に示す(表7には、修正膜4のサイズ(幅)を1μm、2μm、5μmとしたものを抜粋している)
【0113】
【表7】
表7に示されるように、第2のホール部3Bは、第1のホール部3Aのプロファイル(表1の「位相シフトマスク」の行)に対して、いずれの指標も同等もしくは低下したものの、いずれも許容範囲内であった。
【0114】
この結果から、実施例8の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、表示装置上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に表示装置上に形成されるホールパターンを高精度に形成できるといえる。
【0115】
(実施例9)
実施例9の位相シフトマスクは、図3に示すように、透光性基板1上に、転写パターンが形成された位相シフト膜2を備えている。位相シフト膜2は、代表波長365nmの露光光に対して、10%の透過率Tと、180度の位相差Φを有するものである。転写パターンは、ホール形状の透光部1A,1Cからなる第1のホール部3Aおよび第2のホール部3Cを含むものである。第1のホール部3Aの透光部1Aのサイズ(正方形の一辺)は、2.4μmである。また、第2のホール部3Cの掘り込み部6を除いた部分における透光部1Cのサイズ(正方形の一辺)は、2.4μmである。修正膜4Cは、代表波長365nmの露光光に対して、2%の透過率Tと、180度の位相差Φを有するものである。実施例9の位相シフトマスクは、第2のホール部3Cにおける外周縁の透光部1Cに掘り込み部6が設けられている。掘り込み部は6、掘り込み部6以外の透光部を透過した露光光に対して180度の位相差Φを有し、76%の透過率Tを有する。第2のホール部3Cに形成される掘り込み部6のサイズ(幅)を1μmとし、第2のホール部に形成される修正膜4Cのサイズ(幅)を1μm、2μm、3μm、5μmとしたものと、第1のホール部について、光学シミュレーションを行った。
【0116】
図15は、本発明の実施例9の位相シフトマスクを用いた場合の、被転写体上に形成される光強度の空間像を示す図である。図15において、実施例9における位相シフト膜2の第2のホール部3Cと、第1のホール部3Aについて、光学シミュレーションを行った結果を示している。
図15に示されるように、第2のホール部3Cのプロファイルは、いずれにおいても、第1のホール部3Aのプロファイル(図15の「Ref」)に対して、ピークの光強度の絶対値が同等若しくは大きくなっており、第1のホール部3Aと同等若しくはそれ以上の好ましいプロファイルを有していた。
【0117】
実施例1と同様に、光学的な性能について、実施例9の位相シフトマスクを評価した結果を表6に示す(表6には、修正膜4Cのサイズ(幅)を1μm、2μm、5μmとしたものを抜粋している)。
【0118】
【表8】
表8に示されるように、掘り込み部が形成された第2のホール部3Cは、第1のホール部3Aよりも、DOFについて良好な値が得られた。MEEFについては第1のホール部3Aの方が良好であったが、いずれも許容範囲内であった。ELについても、第1のホール部3Aに比べて良好な値が得られた。
【0119】
この結果から、実施例9の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、表示装置上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に表示装置上に形成されるホールパターンを高精度に形成できるといえる。
【0120】
(比較例1)
比較例1の位相シフトマスクは、図1に示すように、透光性基板上に、転写パターンが形成された位相シフト膜を備えている。位相シフト膜は、代表波長334nmの露光光に対して、16%の透過率Tと、180度の位相差Φを有するものである。転写パターンは、ホール形状の透光部からなる第1のホール部および第2のホール部を含むものである。第1のホール部と第2のホール部の透光部のサイズ(正方形の一辺)は、2.4μmである。修正膜は、代表波長334nmの露光光に対して、16%の透過率Tと、85度の位相差Φを有するものである。第2のホール部に形成される修正膜のサイズ(幅)を1μm、1.5μm、2μm、3μm、5μmとしたものと、第1のホール部について、光学シミュレーションを行った。
【0121】
図16は、本発明の比較例1の位相シフトマスクを用いた場合の、被転写体上に形成される光強度の空間像を示す図である。図16において、比較例1における位相シフト膜の第2のホール部と、第1のホール部について、光学シミュレーションを行った結果を示している。
図16に示されるように、第2のホール部に形成される修正膜は、いずれのサイズ(幅)においても、第1のホール部のプロファイル(図16の「Ref」)に対して、ピークの光強度の絶対値が低くなり、透過光強度のピークを形成する傾斜に大きなばらつきがあり、いずれも許容範囲外であった。
【0122】
この結果から、比較例1の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、表示装置上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に表示装置上に形成されるホールパターンを十分な精度で形成できないことが予想される。
【符号の説明】
【0123】
1 透光性基板
1A,1B,1C,1D 透光部
2 位相シフト膜
3A 第1のホール部
3B,3C,3D 第2のホール部
4,4C,4D 修正膜
5 遮光膜
6 掘り込み部
100,110,120,130,140 位相シフトマスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16