(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144103
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】固形組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/195 20060101AFI20241003BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20241003BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20241003BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20241003BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20241003BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20241003BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61K31/195
A61K9/20
A61K47/22
A61K47/18
A61K47/38
A61K47/12
A61P29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024003445
(22)【出願日】2024-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2023052852
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306014736
【氏名又は名称】第一三共ヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100152331
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 拓
(72)【発明者】
【氏名】関 夏未
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076DD41
4C076DD51
4C076DD59
4C076EE31
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206NA20
4C206ZB11
(57)【要約】
【課題】高い成形性を有する固形組成物の提供。
【解決手段】本発明は、トラネキサム酸と、アスコルビン酸と、L-システインとを約0.3~5:1:0~3の質量比で含む固形組成物、を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラネキサム酸と、アスコルビン酸と、L-システインとを0.3~5:1:0~3の質量比で含む固形組成物。
【請求項2】
硬度が35N以上である、請求項1に記載の固形組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広く、トラネキサム酸と、アスコルビン酸と、任意にL-システインとを特定の質量比で含有する固形組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アスコルビン酸を含有している組成物は数多く存在するが、その濃度が高い場合には、固形組成物の成形性が低下する。そのため、カテキン類、セルロース類を配合することによって、製剤化における成形性及び製剤の崩壊性を改善する技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、アスコルビン酸を含有しつつも、カテキン類を使用せずに成形性に優れた固形組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、驚くべきことに、カテキン類を配合せずとも、アスコルビン酸と、トラネキサム酸と、任意にL-システインとを特定の質量比で配合することで、固形組成物の成形性が改善されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本願は以下の発明を包含する。
[1]
トラネキサム酸と、アスコルビン酸と、L-システインとを0.3~5:1:0~3の質量比で含む固形組成物。
[2]
硬度が35N以上である、[1]に記載の固形組成物。
[3]
日本薬局方一般試験法崩壊試験法における水懸濁時の崩壊時間が3分以上である、[1]又は[2]に記載の固形組成物。
[4]
賦形剤を更に含む、[1]~[3]のいずれかに記載の固形組成物。
[5]
賦形剤がセルロース類である、[4]に記載の固形組成物。
[6]
カテキン類を含まない、[1]~[5]のいずれかに記載の固形組成物。
[7]
アスコルビン酸を含む固形組成物の成形性を改善する方法であって、1質量部のアスコルビン酸に対し、0.3~5質量部のトラネキサム酸と、0~3の質量部のL-システインとを添加することを含む、方法。
[8]
成形性の改善が、組成物の硬度の向上又は崩壊時間の増大である、[7]に記載の方法。
[9]
硬度が35N以上に向上する、[8]に記載の方法。
[10]
日本薬局方一般試験法崩壊試験法における水懸濁時の崩壊時間が3分以上に増大する、[8]に記載の方法。
[11]
固形組成物が更に、結晶セルロース及びヒドロキシプロピルセルロースから成る群から選択される1又は複数のセルロース類を含み、カテキン類を含まない、[7]~[10]に記載の方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、成形性が改善した固形組成物を提供することができる。
【0008】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について説明するが、本発明の範囲は以下の実施形態に限定して解釈されない。
【0009】
(組成物)
第一の態様において、トラネキサム酸と、アスコルビン酸と、L-システインとを約0.3~5:1:0~3の質量比で含む固形組成物が提供される。
【0010】
組成物に配合されるトラネキサム酸(トランス-4-アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸)は本来白色の固体である。トラネキサム酸は抗炎症作用を期待して医薬等に配合されるほか、シミや肝斑の症状を防ぐ目的で化粧料等に配合される。
【0011】
トラネキサム酸は塩の形態であってもよい。特に断らない限り、本明細書で使用する場合のトラネキサム酸にはトラネキサム酸の塩も含まれる。トラネキサム酸の塩としては、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を挙げることができる。
【0012】
トラネキサム酸の配合量は、アスコルビン酸及びL-システインの配合量を考慮して決定される。約0.3~5:1:0~3の質量比(トラネキサム酸:アスコルビン酸:L-システイン)の範囲内であればトラネキサム酸は任意の量でよいが、トラネキサム酸の配合量が多くなると成形性が低下し、固形組成物の強度が低下するため、その量は極力少ない方が好ましい。トラネキサム酸の配合量は更に、組成物におけるトラネキサム酸の用途、投与される対象の症状、年齢、体重、性別等に応じて適宜調節され得る。例えば、シミや肝斑の症状を防ぐ目的の場合、成人に投与されるトラネキサム酸の1日あたりの量は5mg~5000mg、好ましくは50mg~3000mg、より好ましくは100mg~2000mgの範囲で調整され得る。
【0013】
上記の投与量は一例であり、一日に投与される重量が約1000mg~約4000mg、好ましくは約1500mg~約1800mgである組成物あたりのトラネキサム酸の量の例として、約500mg~約1000mg、約550mg~約950mg、約600mg~約900mg、約650mg~約850mg、約700mg~約800mg等が挙げられる。
【0014】
組成物に配合されるアスコルビン酸は本来白色又は淡黄色の固体である。本明細書で使用する場合のアスコルビン酸はL体であり、これはビタミンCとも称される。アスコルビン酸はその酸化防止効果を期待して食品等に配合されるほか、メラニンの生成を抑制するため、シミや肝斑の症状を防ぐ目的で化粧料等に配合される。
【0015】
アスコルビン酸は塩又は誘導体の形態であってもよい。アスコルビン酸の塩としては、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を挙げることができる。アスコルビン酸、その誘導体又はそれらの塩としては、アスコルビン酸;アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸マグネシウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸カルシウム等のアスコルビン酸塩;アスコルビン酸モノステアレート、アスコルビン酸モノパルミテート、アスコルビン酸モノオレエート等のアスコルビン酸モノアルキル又はモノアルケニルエステル類;アスコルビン酸ジステアレート、アスコルビン酸ジパルミテート、アスコルビン酸ジオレエート等のアスコルビン酸ジアルキル又はジアルケニルエステル類;アスコルビン酸トリステアレート、アスコルビン酸トリパルミテート、アスコルビン酸トリオレエート等のアスコルビン酸トリアルキル又はトリアルケニルエステル類;アスコルビル硫酸、アスコルビル硫酸ナトリウム、アスコルビル硫酸カリウム、アスコルビル硫酸マグネシウム、アスコルビル硫酸カルシウム等のアスコルビン酸硫酸エステル類;アスコルビルリン酸、アスコルビルリン酸ナトリウム、アスコルビルリン酸カリウム、アスコルビルリン酸マグネシウム、アスコルビルリン酸カルシウム等のアスコルビン酸リン酸エステル類等;アスコルビン酸グリコシド等のアスコルビン酸配糖体等を挙げることができる。
【0016】
アスコルビン酸の配合量は、トラネキサム酸及びL-システインの配合量を考慮して決定される。約0.3~5:1:0~3の質量比(トラネキサム酸:アスコルビン酸:L-システイン)の範囲内であればアスコルビン酸は任意の量でよいが、アスコルビン酸の配合量が多くなると成形性が低下し、固形組成物の強度が低下するため、その量は極力少ない方が好ましい。アスコルビン酸の配合量は組成物におけるアスコルビン酸の用途、投与される対象の症状、年齢、体重、性別等に応じて適宜調節される。例えば、アスコルビン酸がシミや肝斑の症状を防ぐ目的で配合される場合、成人に投与されるアスコルビン酸の1日あたりの量は1mg~5000mg、好ましくは10mg~3000mg、より好ましくは20mg~2000mgの範囲で調整され得る。
【0017】
上記の投与量は一例であり、一日に投与される重量が約1000mg~約4000mg、好ましくは約1500mg~約1800mgである組成物あたりのアスコルビン酸の量の例として、約50mg~約2000mg、約75mg~約1750mg、約100mg~約1500mg、約200mg~約1000mg、約250mg~約350mg等が挙げられる。
【0018】
上記の組成物の重量及び投与量は1日あたりの投与量(1日分量)であるが、同量を1日複数回、例えば2回又は3回、好ましくは2回に分けて対象に投与してもよい。アスコルビン酸以外の成分についても同様である。また、各投与量は合計量であるため、1回量や組成物の剤形等によって組成物に含まれる各成分の含量は変動し得る。
【0019】
特定の実施形態において、組成物は錠剤であり、上記の投与量は、4錠中に含まれる成分の量である。この実施形態において、成人(15歳以上)の1回の服用量は2錠であり、1日服用回数は2回である。
【0020】
組成物に配合されるL-システインは本来白色の固体である。L-システインは、メラニン色素をつくり出す色素細胞からのチロシナーゼの産生や、産生されたチロシナーゼがチロシンを活性するのを阻害する役割を果たす。そのため、L-システインは、シミや肝斑の症状を防ぐ目的で化粧料等に配合される。
【0021】
L-システインの配合量は、トラネキサム酸及びアスコルビン酸の配合量を考慮して決定される。約0.3~5:1:0~3の質量比(トラネキサム酸:アスコルビン酸:L-システイン)の範囲内であればL-システインは任意の量でよいが、L-システインの配合量が多くなると成形性が低下し、固形組成物の強度が低下するため、その量は極力少ない方が好ましい。L-システインの配合量は更に、組成物におけるL-システインの用途、投与される対象の症状、年齢、体重、性別等に応じて適宜調節され得る。例えば、シミや肝斑の症状を防ぐ目的の場合、成人に投与されるL-システインの1日あたりの量は10mg~1000mg、好ましくは30mg~750mg、より好ましくは100mg~480mgの範囲で調整され得る。
【0022】
上記の投与量は一例であり、一日に投与される重量が約1000mg~約4000mg、好ましくは約1500mg~約1800mgである組成物あたりのL-システインの量の例として、約120mg~約480mg、約140mg~約420mg、約160mg~約380mg、約180mg~約340mg、約200mg~約300mg等が挙げられる。
【0023】
トラネキサム酸と、アスコルビン酸と、L-システインとの質量比は、約0.3~5:1:0~3の質量比の範囲内で適宜調節される。質量比(トラネキサム酸:アスコルビン酸:L-システイン)は0.3~3:1:0~3が好ましく、1~3:1:0~3がより好ましく、2.5:1:0.8がより更に好ましい。
【0024】
組成物は、圧縮成形された場合の硬度が好ましくは35N以上であり、より好ましくは50N以上である。例えば、10kNで錠剤を打錠した場合における硬度が50N以上であることが好ましい。硬度が35N以上であれば、例えば、一定の錠剤硬度を保ちつつ、口腔内崩壊錠(OD)錠等種々の形態の錠剤としても適用可能となる。硬度が50N以上であれば、例えば、生産規模でフィルムコートするときの錠剤の摩損を回避する観点から、好ましい硬度である。
【0025】
そのような硬度は公知の方法、例えば錠剤硬度計(Tablet Tester 8M、Dr.Schleuniger Pharmatron製)を用いて測定することができる。
【0026】
組成物は、日本薬局方一般試験法崩壊試験法において水を試験液としたときの崩壊時間が好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上である。
【0027】
本発明の組成物は、経口的又は非経口的に投与(服用)すればよい。経口的に投与する組成物(経口投与製剤)としては、錠剤、顆粒剤、丸剤、散剤等の剤形を挙げることができる。非経口的に投与する組成物(非経口投与製剤)も固形の剤形であれば特に限定されない。
【0028】
組成物は、成形性を損なわない範囲で、更に他の成分、例えば公知の担体や添加剤等の製剤添加物を任意に配合することができる。これらの製剤添加物としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊補助剤、滑沢剤、安定剤、界面活性剤、抗酸化剤、緩衝剤、pH調整剤、分散剤、溶解補助剤、流動化剤、光沢剤、矯味剤、甘味料、清涼化剤、着色剤、矯臭剤、香料、吸着剤、糖衣剤、コーティング剤、懸濁化剤、静電防止剤、可塑剤、及び芳香剤等を、制限なく、例示することができる。なお、カテキン類は組成物に配合されない。
【0029】
賦形剤としては、成形性を損なわないことを限度として制限されないものの、例えば、セルロース類、例えば結晶セルロース、乳糖水和物、精製白糖、ぶどう糖、粉糖、果糖、マルトース、還元麦芽糖水あめ、粉末セルロース、トウモロコシデンプン(コーンスターチ)、バレイショデンプン、糖アルコール(マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール等)、トレハロース、無機塩、デキストラン、デキストリン、β-シクロデキストリン、ショ糖脂肪酸エステル、大豆レシチン、トラガント末、アラビアガム、プルラン、カオリン、無水乳糖、無水リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム造粒物、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、メチルセルロース、リン酸水素カルシウム水和物、リン酸水素カルシウム造粒物、リン酸水素ナトリウム水和物、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム水和物、リン酸二水素ナトリウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、粉末還元麦芽糖水アメ、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム等を挙げることができる。これらは1種単独又は2種以上を任意に組み合わせて使用することができる。組成物の質量を100質量%とした場合、それに含まれる賦形剤の割合は、成形性に悪影響を及ぼさない範囲であるかぎり制限されないものの、例えば、0.1質量%~70質量%の範囲を例示することができる。好ましくは0.5質量%~50質量%、より好ましくは1質量%~40質量%の範囲である。組成物の色調を白色に維持する観点からは、賦形剤はマンニトール、結晶セルロース及びトウモロコシデンプンから成る群から選択される1又は複数の成分を含むことが好ましい。
【0030】
結合剤としては、成形性を損なわないことを限度として制限されないものの、例えば、アラビアゴム、ゼラチン、アルファー化デンプン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、寒天、プルラン、デキストリン、セラック、ショ糖、トラガント、トラガント末、キサンタンガム、ペクチン、ポリアクリル酸ナトリウム、グァーガム、トウモロコシデンプン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、コポリビドン、ヒプロメロース(2208)、ヒプロメロース(2906)、ヒプロメロース(2910)、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル、ヒプロメロースフタル酸エステル(200731)、ヒプロメロースフタル酸エステル(220824)、ポビドン(K25)、ポビドン(K30)、ポビドン(K90)、ポリビニルアルコール(完全けん化物)、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等を挙げることができる。組成物の質量を100質量%とした場合、それに含まれる結合剤の割合は、L-システインの効果に悪影響を及ぼさない範囲であるかぎり制限されないものの、例えば、0.1質量%~10質量%の範囲を例示することができる。好ましくは0.5質量%~8質量%、より好ましくは1質量%~5質量%の範囲である。
【0031】
崩壊剤としては、成形性を損なわないことを限度として制限されないものの、例えばコーンスターチ、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスタ-チ、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロース、粉末セルロース、クロスポビドン、カルメロースナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、カルメロース等を挙げることができる。組成物の質量を100質量%とした場合、それに含まれる崩壊剤の割合は、L-システインの効果に悪影響を及ぼさない範囲であるかぎり制限されないものの、例えば、0.1質量%~30質量%の範囲を例示することができる。好ましくは0.5質量%~20質量%、より好ましくは1質量%~15質量%の範囲である。
【0032】
滑沢剤としては、成形性を損なわないことを限度として制限されないものの、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、カルナウバロウ、グリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等を挙げることができる。
【0033】
矯味剤としては、制限されないものの、例えばクエン酸、酒石酸、リンゴ酸等の有機酸、グルタミン酸ナトリウム、5'-イノシン酸ナトリウム、5-グアニル酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム、カラメルを例示することができる。
【0034】
甘味料としては、制限されないものの、例えばサッカリンナトリウム、グリチルリチン酸ジカリウム、アスパルテーム、ステビア、ラカンカ、ソーマチン、アセスルファムカリウム、スクラロース、ショ糖、果糖、ブドウ糖、乳糖水和物、無水乳糖、麦芽糖、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、グリセロール、イノシトール、還元麦芽糖水アメ、パラチノース、カップリングシュガー、ハチミツ等の高甘味度甘味料を例示することができる。
【0035】
コーティング剤としては、制限されないものの、例えばアクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、アセチルグリセリン脂肪酸エステル、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アラビアゴム、アラビアゴム末、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、エチルセルロース、エチルセルロース水分散液、オクチルデシルトリグリセリド、カルナウバロウ、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、含水二酸化ケイ素、乾燥水酸化アルミニウムゲル、乾燥メタクリル酸コポリマーLD、クエン酸トリエチル、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ケイ酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、軽質無水ケイ酸含有ヒドロキシプロピルセルロース、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化チタン、酸化マグネシウム、ジメチルアミノエチルメタアクリレート・メチルメタアクリレートコポリマー、ショ糖脂肪酸エステル、水酸化アルミニウムゲル、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ポリオキシル40、ステアリン酸マグネシウム、精製ゼラチン、精製セラック、精製白糖、ゼラチン、セラック、D-ソルビトール、D-ソルビトール液、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、濃グリセリン、白色セラック、白糖、パラフィン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910・酸化チタン・マクロゴール混合物、ヒプロメロース(2208)、ヒプロメロース(2906)、ヒプロメロース(2910)、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル、ヒプロメロースフタル酸エステル(200731)、ヒプロメロースフタル酸エステル(220824)、フマル酸・ステアリン酸・ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート・ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910混合物、プルラン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリソルベート80、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール(完全けん化物)、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール600、マクロゴール1500、マクロゴール1540、マクロゴール4000、マクロゴール6000、マクロゴール6000EP、マクロゴール20000、マクロゴール35000、マンニトール、無水クエン酸、無水ケイ酸水和物、無水フタル酸、無水リン酸水素カルシウム、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、メチルメタクリレート・メタアクリル酸・メチルメタアクリレートコポリマー、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、硫酸カルシウム、フマル酸及びDL-リンゴ酸等を挙げることができる。
【0036】
組成物は固体形状を有する。そのような組成物としては、錠剤、顆粒剤、丸剤及び散剤を挙げることができる。組成物は、好ましくは錠剤又は顆粒剤、より好ましくは湿式造粒のような水の存在下で混合する工程を経由して得られる錠剤又は顆粒剤である。なお、錠剤は単層からなるものであっても、2層以上の複層構造を有するものであってもよい。
【0037】
錠剤の例としては、裸錠、素錠、糖衣錠、口腔内崩壊錠、フィルムコーティング錠又はチュアブル錠が挙げられる。錠剤は、組成の異なる粉末又は顆粒を2層又は3層以上に積み重ねて圧縮成形した多層錠であってもよい。フィルムには、所望とする組成物に応じて即溶性、遅溶性、胃溶性、及び腸溶性といった特性を付与することができる。
【0038】
錠剤(裸錠・素錠)の大きさは、例えば円形の錠剤(円柱状)に成形した場合、その直径は、約2mm~約15mmの範囲を挙げることができる。好ましくは約3mm~約12mmである。またその厚みは、制限されないもの、約3mm~約10mmの範囲を挙げることができる。
【0039】
組成物は、内服用固形製剤であってもよい。そのような固形製剤を、瓶包装、PTP包装、パウチ包装、スティック包装、SP包装により一旦包装して気密保存してもよい。さらにそれらをピロー包装してもよく、それらを箱等に格納してもよい。ピロー包装に用いられる材料としては、特に限定されず、例えば、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム等の樹脂フィルムやこれら樹脂フィルムにアルミニウム箔を付着させたものを用いるこができる。なお、吸湿性が懸念される場合には乾燥剤等を瓶包装内やピロー包装内に同時に保存してもよい。
【0040】
内服用固形製剤は、上述した経口投与可能な錠剤、顆粒剤、丸剤及び散剤のような形態であってもよい。
【0041】
本発明の組成物は最終製品として高い成形性を有することが期待される医薬組成物、美容組成物、化粧品組成物、飲食品組成物等として存在し得る。
【0042】
アスコルビン酸、トラネキサム酸、L-システインが共通して奏する美白効果から、組成物は美容組成物、好ましくは内服の美容組成物として提供されることが意図される。組成物が美容用途に供される場合、パントテン酸カルシウムやピリドキシン塩酸塩を更に含むことが好ましい。
【0043】
本明細書で使用する場合、美白とは、シミ(肝斑、老人性色素斑等を含む)、そばかす、日やけ、色黒やステロイド等の薬物による皮膚の黒化症等の色素沈着症の予防及び/又は治療を包含する。
【0044】
美白効果を奏する組成物として提供される場合、本発明の組成物は更に公知の美白効果を示す成分や美白効果を増強する成分を含んでもよい。これらの成分としては、カテキン類以外の成分、例えば、L-システインの誘導体(N-アセチル-L-システイン、L-ホモシステイン、L-システイン酸、L-ホモシステイン酸、L-システインスルフィン酸、S-スルフィノ-L-システイン、S-スルホ-L-システイン、シスチン(システインの二量体)等、パントテン酸、その誘導体又はそれらの塩(パントテン酸;パントテン酸ナトリウム、パントテン酸カルシウム等のパントテン酸塩;パンテテイン、パンテチン、ホスホパンテテイン等)、ハイドロキノン又はその誘導体(ハイドロキノン;ハイドロキノン-β-D-グルコース(アルブチン)等のハイドロキノン配糖体等)、グルコサミン又はその誘導体(グルコサミン;アセチルグルコサミン等のグルコサミンエステル類;グルコサミンメチルエーテル等のグルコサミンエーテル類等)、ヒノキチオール又はその誘導体(ヒノキチオール;ヒノキチオールグルコシド等のヒノキチオール配糖体等)、アゼライン酸、その誘導体又はそれらの塩(アゼライン酸;アゼライン酸モノアルキルエステル等のアゼライン酸モノエステル類;アゼライン酸ジアルキルエステル等のアゼライン酸ジエステル類等)、トコフェロール類(α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール、コハク酸d-α-トコフェロール等)、ユビキノン類(コエンザイムQ6(CoQ6)、コエンザイムQ7(CoQ7)、コエンザイムQ8(CoQ8)、コエンザイムQ9(CoQ9)、コエンザイムQ10(CoQ10)等)、カロテノイド(カロテン、ルテイン、ビオラキサンチン、スピリロキサンチン、スフェロイデン等)、フラボン類(フラボン、アピゲニン、ルテオリン及びこれらの配糖体等)、イソフラボン又はその誘導体(イソフラボン;イソフラボン配糖体等)、フラバノン又はその誘導体(ナリンゲニン、エリオジクチオール、ナリンギン等)、フラボノール類(ケンフェロール、クエルセチン、ミリセチン及びこれらの配糖体等)、グリチルリチン酸、その誘導体又はそれらの塩(グリチルリチン酸;グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム等のグリチルリチン酸塩等)、グリチルリチン酸、その誘導体又はそれらの塩(グリチルリチン酸;グリチルリチン酸ステアリル等のグリチルリチン酸アルキルエステル類等)、コウジ酸、その誘導体又はそれらの塩(コウジ酸;コウジ酸モノブチレート、コウジ酸モノカプレート、コウジ酸モノパルミテート、コウジ酸モノステアレート等のコウジ酸モノアルキルエステル類;コウジ酸ジブチレート、コウジ酸ジパルミテート、コウジ酸ジステアレート、コウジ酸ジオレエート等のコウジ酸ジアルキルエステル類等)、エラグ酸、その誘導体又はそれらの塩(エラグ酸;エラグ酸テトラメチルエーテル等のエラグ酸エーテル類;エラグ酸テトラアセタート、エラグ酸テトラベンゾアート等のエラグ酸アシル誘導体等)、グルタチオン、その誘導体又はそれらの塩(グルタチオン;S-ラクトイルグルタチオン等のS-アシルグルタチオン類;N,S-ジオクタノイルグルタチオンジステアリル、N,S-ジパルミトイルグルタチオンジセチル等のN,S-ジアシルグルタチオンジエステル類等)、レゾルシノール又はその誘導体(レゾルシノール;4-n-ブチルレゾルシノール、4-イソアミルレゾルシノール、4-シクロヘキシルレゾルシノール、5-メチルレゾルシノール等のアルキル化レゾルシノール;4-クロロレゾルシノール、4-ブロモレゾルシノール等のハロゲン化レゾルシノール等)、グリコーゲン;ヨクイニン、ハマメリス、ユキノシタ、ジンコウ、チャ、イタドリ、メリッサ、タイム、カワラヨモギ、セイヨウノコギリソウ、オトギリソウ、セイヨウオトギリ、シャクヤク、ボタン、スペインカンゾウ、カンゾウ、クワ、マグワ、シマグワ、クララ、ウワウルシ、ヘラヤハズ、ハリアミジ、ヒジキ、フシツナギ、イワヒゲ、ダルス、ヤナギモク(オオバモク)、エゾノネジモク、フシスジモク、イシモズク、モウセンゴケ、コモウセンゴケ、ラベンダー、オウレン、ハトムギ、イワナシ、アメリカイワナシ、パッション・フラワー、クダモノトケイ、ウォーターレモン、トケイソウ、月葉西番蓮、蛇王藤、杯葉西番蓮、ワイルドパンジー、ニオイスミレ、スミレ、コスミレ、ノジスミレ、ニョイスミレ、ツクシスミレ、シロスミレ、エゾノタチツボスミレ、ネパールスミレ、シロバナスミレ、マルバケスミレ、フキスミレ、タチツボスミレ、地草果、スミレサイシン、ツボスミレ、威霊仙、テッセン、カザグルマ、センニンソウ、杜仲、トゲミノマサキ、ツリバナ、アスパラガス、イブキトラノオ、エンドウ豆、エイジツ、オウゴン、オノニス、キイチゴ、クジン、ケイケットウ、ゴカヒ、サイシン、サンザシ、サンペンズ、シラユリ、センプクカ、ソウハクヒ、大豆、茶、トウキ抽出物、糖蜜、ビャクレン、ブナノキ、ブドウ種子、フローデマニータ、ホップ、マイカイカ、モッカ、羅漢果、アロエ、アルテア、アルニカ、アシタバ、インチンコウ、イラクサ、ウコン、オウバク、カミツレ、キンギンカ、クレソン、コンフリー、サルビア、シコン、シソ、シラカバ、トウキンセンカ、ニワトコ、ホオウ、ムクロジ、レンゲソウ、ヨモギ、ユーカリ、ノイバラ、イチョウ、ヤシャジツ、ジコッピ、ミクロメルム ミヌツム(Micromelum minutum)、ミクロメルム プベセンス(Micromelum pubescens)、バハクジ、ボウカ、スズメウリ、ラズベリー、カキョク又はそれらの抽出物;胎盤抽出物等を挙げることができるが、上記のもののみに限定されるべきものではない。しかしながら、パントテン酸カルシウムが好ましく、パントテン酸カルシウムと乳酸カルシウムの造粒物であるパントテン酸カルシウムタイプS(商品名)としても利用できる。これらの成分は1つのもののみを配合してもよく、また、2種以上のものを組み合わせて配合してもよい。美白用組成物(美白剤)には、公知の美白効果を示す成分や美白効果を増強する成分以外の成分を、さらに加えてもよい。これら成分の配合量は、成形性を損なわない限り、特に限定されない。
【0045】
特定の実施形態において、組成物当たり、アスコルビン酸は10mg~3000mg、トラネキサム酸は50mg~3000mg、L-システインは30mg~750mg配合される。
【0046】
上記の配合量は一日量の例示であり、組成物が1日に複数回投与される場合、これらの量を複数回、例えば2回~4回に分けることもできる。
【0047】
特定の実施形態において、組成物当たり、アスコルビン酸の含有量は5~30質量%であり、トラネキサム酸の含有量は20質量%~60質量%、L-システインの含有量は5質量%~25質量%である。
【0048】
組成物は更に水分を含んでいてもよい。組成物に含まれる水分量は、0.1質量%以上、5.0質量%以下、好ましくは0.1質量%以上、3.0質量%以下である。水分含有量は乾燥減量値として測定可能である。乾燥減量値は、試料を規定された条件で乾燥するとき失われる水分及び揮発性物質の量を測定する方法であり、例えば、第十八改正日本薬局方 一般試験法で説明されている。
【0049】
(製造方法)
【0050】
第二の態様において、トラネキサム酸と、アスコルビン酸と、L-システインとを約0.3~5:1:0~3の質量比で配合し、得られた組成物を圧縮成形する工程を含む、固形組成物の製造方法が提供される。
【0051】
圧縮成形は当業者に公知であり、例えば、ロータリー式打錠機、エキセントリック式打錠機、油圧ポンプ打錠機を用いて実施することができる。これらの打錠機に限定されないが、上記工程に使用する打錠機は、生産性の観点から、好ましくはロータリー式打錠機である。ロータリー式打錠機は製錠速度が速いため、大量生産に好適に使用される。
【0052】
特定の実施形態において、アスコルビン酸の配合量は約50mg~約2000mg、約75mg~約1750mg、約100mg~約1500mg、約200mg~約1000mg、約250mg~約350mgであり、トラネキサム酸の配合量は約500mg~約1000mg、約550mg~約950mg、約600mg~約900mg、約650mg~約850mg又は約700mg~約800mgであり、L-システインの配合量は、約120mg~約480mg、約140mg~約420mg、約160mg~約380mg、約180mg~約340mg又は約200mg~約300mgであってもよい。
【0053】
上記の配合量は例示であり、所望とする成形性の程度に応じて、上記質量比の範囲内で各成分の添加量を増減させることができる。
【0054】
組成物中には適当な製剤添加物を加えることができる。製剤添加物としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊補助剤、滑沢剤、安定剤、界面活性剤、抗酸化剤、緩衝剤、pH調整剤、分散剤、溶解補助剤、流動化剤、光沢剤、矯味剤、甘味料、清涼化剤、着色剤、矯臭剤、香料、吸着剤、糖衣剤、コーティング剤、懸濁化剤、静電防止剤、可塑剤、及び芳香剤等を挙げることができ、製剤添加物は、成形性を損なわない範囲で適宜選択して、適当量を加えればよい。賦形剤としてはセルロース類が好ましい。
【0055】
組成物の製造は、一般的な固形製剤の製造方法を用いて行うことができる。そのような製造方法として造粒顆粒があり、その例として、高速撹拌造粒法や流動層造粒法等に代表される湿式造粒法が挙げられる。
【0056】
アスコルビン酸は付着性が高い成分であるため、組成物中におけるアスコルビン酸の配合量が多い場合、錠剤化の際には打錠障害を回避するために、造粒顆粒を採用して表面積を低減することが好ましい。これにより、薬物を含む顆粒が滑沢剤に十分に覆われるようになり、また打錠時の薬物と臼杵への接触を低減することが可能となる。
【0057】
特定の実施形態において、製造方法は、アスコルビン酸、トラネキサム酸及びL-システインを水、又は結合剤の水溶液もしくは分散液を用いて湿式造粒する工程、そして任意に、固形組成物を製造するのに当業界で一般的に採用されているその他の工程を含んでもよい。湿式造粒法としては一般に用いられる混合撹拌造粒法、高速撹拌造粒法、流動層造粒法、又は転動造粒法等を用いることができるが、好ましくは高速撹拌造粒法、又は流動層造粒法であり、より好ましくは流動層造粒法である。所望の造粒物、更にはその成形物を製造するために、造粒後に乾燥工程や整粒等の任意の工程を実施してもよい。
【0058】
乾燥工程は、水分量が、0.1質量%以上、5.0質量%以下、好ましくは0.1質量%以上、3.0質量%以下となるように行ってもよい。
【0059】
湿式造粒により得られた顆粒剤を混合し、圧縮成形することで組成物を錠剤の形態にすることもできる。更に、顆粒剤や錠剤を、公知の方法にて、糖衣又はフィルムコーティングすることも可能である。
【0060】
糖衣やフィルムによる被覆(コーティング)は、例えばパンコーティング法、流動層コーティング法、転動コーティング法、ドライコーティング法、又はこれらの方法を組み合わせることで実施することができる。この際、定法に従って、糖衣成分やフィルム成分を水や有機溶媒(エタノール等)に溶解又は分散させてスプレーコーティングすることや、またフィルム成分を直接噴霧して、熱や圧力をかけてドライコーティングすることもできる。
【0061】
糖衣形成のために使用される糖衣成分としては、制限されないものの、ショ糖(白糖、精製白糖)、果糖、ブドウ糖、乳糖水和物、無水乳糖、トレハロース等の単糖類や二糖類;エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、粉末還元麦芽糖水飴、還元乳糖等の糖アルコール等の糖類を挙げることができる。また糖衣液には、アラビアゴム、アラビアゴム末、エチルセルロース、カルナウバロウ、カルメロースナトリウム、ステアリン酸、ステアリン酸ポリオキシル40、精製ゼラチン、精製セラック、ゼラチン、セラック、タルク、沈降炭酸カルシウム、白色セラック、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース(2208)、ヒプロメロース(2906)、ヒプロメロース(2910)、プルラン、ポビドン(K25)、ポビドン(K30)、ポビドン(K90)、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、マクロゴール1500、マクロゴール4000、マクロゴール6000、マンニトール、リン酸一水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、硫酸カルシウム、乳酸カルシウム、カオリン、酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄銅、クロロフィリンナトリウム、銅クロロフィル、リボフラビン、リボフラビン酪酸エステル、リボフラビンリン酸エステルナトリウム等が含まれていてもよい。
【0062】
フィルムコーティング剤としては、例えば水溶性高分子化合物、胃溶性高分子化合物、及び腸溶性高分子化合物を挙げることができる。水溶性高分子化合物としては、制限されないものの、例えばメチルセルロース、ヒプロメロース(2208)、ヒプロメロース(2906)、ヒプロメロース(2910)、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール(完全けん化物)、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ポリビニルピロリドン、マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール600、マクロゴール1500、マクロゴール1540、マクロゴール4000、マクロゴール6000、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー等を挙げることができる。胃溶性高分子化合物としては、制限されないものの、例えばポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート等のポリビニルアセタール系高分子、メタクリル酸メチル-メタクリル酸ブチル-メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、メタクリル酸メチル-メタクリル酸ジエチルアミノエチル共重合体等の胃溶性メタクリル酸系高分子化合物を挙げることができる。腸溶性高分子化合物としては、制限されないものの、例えばメタクリル酸-アクリル酸エチル共重合体、メタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸コポリマーS、アクリル酸メチル-メタクリル酸メチル-メタクリル酸コポリマー等の腸溶性メタクリル酸系高分子化合物;酢酸フタル酸セルロース、ヒプロメロースフタレート、ヒプロメロースアセテートサクシネート、ポリビニルアセテートフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース等の腸溶性セルロース系高分子化合物を挙げることができる。また、コーティング液には、タルク、酸化チタン、アラビアゴム、アラビアゴム末、エチルセルロース、カルナウバロウ、カルメロースナトリウム、ステアリン酸、ステアリン酸ポリオキシル40、精製ゼラチン、精製セラック、ゼラチン、セラック、タルク、沈降炭酸カルシウム、白色セラック、プルラン、ポビドン(K25)、ポビドン(K30)、ポビドン(K90)、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール、マクロゴール1500、マクロゴール4000、マクロゴール6000、マンニトール、リン酸一水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、硫酸カルシウム、乳酸カルシウム、カオリン、酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄銅、クロロフィリンナトリウム、銅クロロフィル、リボフラビン、リボフラビン酪酸エステル、リボフラビンリン酸エステルナトリウム等が含まれていてもよい。
【0063】
製造される組成物は白色を呈していることが好ましいが、組成物中のL-システインの量が少ない場合にはピンク色、橙色、茶色を呈することもある。
【0064】
(成形性改善方法)
第三の態様において、トラネキサム酸と、アスコルビン酸と、L-システインとを約0.3~5:1:0~3の質量比で配合し、得られた組成物を圧縮成形する工程を含む、固形組成物の成形性改善方法が提供される。
【0065】
特定の実施形態において、アスコルビン酸の配合量は約50mg~約2000mg、約75~約1750mg、約100mg~約1500mg、約200mg~約1000mg、約250mg~約350mgであり、トラネキサム酸の配合量は約500mg~約1000mg、約550mg~約950mg、約600mg~約900mg、約650mg~約850mg又は約700mg~約800mgであり、L-システインの配合量は、約120mg~約480mg、約140mg~約420mg、約160mg~約380mg、約180mg~約340mg又は約200mg~約300mgであってもよい。
【0066】
上記の配合量は例示であり、所望とする成形性の程度に応じて、上記質量比の範囲内で各成分の添加量を増減させることができる。
【0067】
成形性の改善効果はアスコルビン酸、トラネキサム酸及びL-システインの三成分を特定の質量比で含む組成物を圧縮成形した後で確認される。成形性の改善方法は、更に任意の工程を含んでもよい。
【0068】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0069】
(実施例1)
以下の表1の配合量の比率にてトラネキサム酸(Hunan Dongting Pharmaceutical社製)、アスコルビン酸(DSM社製)、L-システイン(日本プロテイン社製)と結晶セルロース(PH-101、旭化成社製)を乳鉢で混合し、8質量%のヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本曹達社製)水溶液を滴下して造粒を行った後、80℃の恒温チャンバーで30分間乾燥を実施し、顆粒を得た。顆粒に対して、後末として、表1の配合量の比率にてクロスカルメロースナトリウム(AcDiSol、DuPont社製)とステアリン酸マグネシウム(太平化学産業社製)を混合後、油圧ポンプ打錠機(理研精機社製)を用いて10kNにて打錠し、錠剤を得た。
【0070】
(実施例2、比較例1)
実施例1において、造粒部の配合を表1の内容に変更した他は、実施例1に準じて各例の錠剤を製造した。
【0071】
(錠剤硬度の測定)
錠剤の硬度は、錠剤硬度計(Tablet Tester 8M、Dr.Schleuniger Pharmatron製)を用いて測定した。
【0072】
(崩壊時間の測定)
錠剤の崩壊時間の測定は、崩壊試験機(NT-2HSF、富山産業社製)にて第十八改正日本薬局方「崩壊試験法」に従い、試験液に水を用いて実施した。
【0073】
【0074】
上記の結果より、アスコルビン酸と、トラネキサム酸と、任意にL-システインとを特定の質量比で配合することで、固形組成物の成形性が改善されることが明らかとなった。