(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144107
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】工作機械の主軸ブレーキ構造
(51)【国際特許分類】
F16D 55/2265 20060101AFI20241003BHJP
F16D 55/228 20060101ALI20241003BHJP
B23Q 5/04 20060101ALI20241003BHJP
B23Q 5/54 20060101ALI20241003BHJP
F16D 55/22 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
F16D55/2265 107
F16D55/228
B23Q5/04 F
B23Q5/54 A
F16D55/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024005737
(22)【出願日】2024-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2023055476
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000212566
【氏名又は名称】中村留精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】上河原 敦
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA63
3J058AA66
3J058AA69
3J058AA73
3J058AA77
3J058AA87
3J058BA53
3J058BA67
3J058CA01
3J058CB11
3J058CC02
3J058CC23
3J058CC33
3J058CC36
3J058CC86
3J058FA32
(57)【要約】
【課題】ブレーキパッドの押し付けにより、ブレーキディスクにブレーキを掛ける際に、ブレーキパッドの当たりが均一になるとともに、ピストン部等に過剰の負荷が掛からない工作機械の主軸ブレーキ構造の提供を目的とする。
【解決手段】主軸に固定されたブレーキディスクと、前記ブレーキディスクの回転を固定あるいは回転負荷を与えるためのブレーキ構造であって、前記ブレーキディスクを挟んで対向配置された一対のピストンベース部と、前記一対のピストンベース部を前進後退制御するベース部とを備え、前記一対のピストンベース部はそれぞれブレーキパッドと、ピストンと、ガイド孔とを有し、前記ベース部は前記ガイド孔に挿通されたガイドピンと、前記ピストンを前進後退制御するシリンダーを有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸に固定されたブレーキディスクと、前記ブレーキディスクの回転を固定あるいは回転負荷を与えるためのブレーキ構造であって、
前記ブレーキディスクを挟んで対向配置された一対のピストンベース部と、前記一対のピストンベース部を前進後退制御するベース部とを備え、
前記一対のピストンベース部はそれぞれブレーキパッドと、ピストンと、ガイド孔とを有し、
前記ベース部は前記ガイド孔に挿通されたガイドピンと、前記ピストンを前進後退制御するシリンダーを有することを特徴とする工作機械の主軸ブレーキ構造。
【請求項2】
前記ピストンベース部に設けたガイド孔とピストンとは相互に分離して配置してあることを特徴とする請求項1記載の工作機械の主軸ブレーキ構造。
【請求項3】
前記ガイド孔は前記ブレーキディスク外周よりも外側に配置してあり、前記ピストン中心が前記ブレーキディスク上に位置していることを特徴とする請求項2記載の工作機械の主軸ブレーキ構造。
【請求項4】
前記ガイド孔はすべり軸受け構造になっていることを特徴とする請求項3記載の工作機械の主軸ブレーキ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械におけるC軸ユニット等の回転軸の固定又は回転負荷を与える等のブレーキ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の分野においては、ワークを保持し、回転制御する主軸等の回転軸にブレーキディスクを固定し、このブレーキディスクに両側からブレーキパッドを押しつけて回転軸が回転しないように固定したり、低速回転制御するのに所定の負荷を与える等のブレーキ制御が行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、ピストンにてブレーキパッドをブレーキディスクに押しつける際に、ブレーキパッドに倒れが生じないようにピストンを貫通させて、同軸上にガイド軸を設けた構造例を開示する。
同技術は、ブレーキパッドの片当たりやピストンに傾きが生じないようにしつつ、ブレーキディスクの小型を図ることができる点が優れている。
しかし、ピストン中心をブレーキディスク上に配置するのが難しく、ブレーキパッドに偏摩耗が生じたり、ピストン部,ガイド軸部に過剰の負荷が掛かる場合もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ブレーキパッドの押し付けにより、ブレーキディスクにブレーキを掛ける際に、ブレーキパッドの当たりが均一になるとともに、ピストン部等に過剰の負荷が掛からない工作機械の主軸ブレーキ構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る工作機械の主軸ブレーキ構造は、主軸に固定されたブレーキディスクと、前記ブレーキディスクの回転を固定あるいは回転負荷を与えるためのブレーキ構造であって、前記ブレーキディスクを挟んで対向配置された一対のピストンベース部と、前記一対のピストンベース部を前進後退制御するベース部とを備え、前記一対のピストンベース部はそれぞれブレーキパッドと、ピストンと、ガイド孔とを有し、前記ベース部は前記ガイド孔に挿通されたガイドピンと、前記ピストンを前進後退制御するシリンダーを有することを特徴とする。
ここで、ピストンベース部に設けたガイド孔とピストンとは相互に分離して配置するのがよく、ガイド孔は前記ブレーキディスク外周よりも外側に配置してあり、前記ピストン中心が前記ブレーキディスク上に位置しているのが好ましい。
【0007】
ここで、ブレーキパッドに固体潤滑剤分散型パッドを用いると、潤滑油等の供給を不要にすることができ、潤滑油供給経路を設ける必要が無くなり、コンパクトになる。
固体潤滑剤分散型の材料としては、固体潤滑剤を分散させた焼結材等が例として挙げられ、より具体的には黒鉛を主体にした固体潤滑剤を銅又は鉄系焼結材に分散させた焼結複層材である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るブレーキ構造にあっては、ブレーキパッドをブレーキディスクに向けて押し付ける構造として、ブレーキパッドとピストンを備えたピストンベース部を設けるとともに、このピストンベース部にガイド孔をピストンとは分離して設けることで、ピストン中心をブレーキディスク上に配置することができる。
【0009】
これにより、ブレーキパッドのブレーキディスクへの当たりが均一になり、偏摩耗を抑えることができる。
また、ピストンベース部の移動をガイドするガイド孔やガイドピン(ガイド軸)に、過剰な負荷が掛かるのを抑えることができる。
また、ここでガイド孔にすべり軸受け構造を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は本発明に係るブレーキ構造の構成例を示し、(b)はピストンベース部の構造例を示す。
【
図2】ブレーキディスクの軸方向から見た図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るブレーキ構造の構造例を以下図に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0012】
図1には、工作機械のC軸におけるブレーキ機構の部分を示し、ブレーキディスク1は回転軸側に固定され、
図1(a)のベース部10A,10Bの内部には油圧回路や電気制御回路が設けられているが、その構造は省略した。
図1(b)には、ブレーキディスク1を両側から挟み込むように対向配置した一対のピストンベース部の一方の構造を示す。
図2は、ブレーキディスク1の軸方向に沿って見た
図1(a)の平面図であり、そのA-A線断面図を
図3に、B-B線断面図を
図4にそれぞれ示す。
【0013】
ブレーキディスク1の両側に、
図1(b)に示したような構造のピストンベース部20A,20Bを配置すべく、
図3に示すように左右の一対のベース部10A,10Bにピストンベース部20A,20Bの収容部11A,11Bを形成し、ボルト13により両方のベース部10A,10Bを連結固定してある。
【0014】
ピストンベース部20A,20Bは、
図1(b)に示したプレート形状に構成し、相互に対向配置される。
図1(b)に基づいて、ピストンベース部20Aについて説明するが、ピストンベース部20Bが同様の構造で対称配置されている。
ピストンベース部20B及びそれに設けられているブレーキパッド23B,ピストン22B等の構造は、ピストンベース部20A側と同様であり、符号を(A)→(B)に替えて付してある。
ピストンベース部20Aは、ブレーキディスク1に向けて押し付けられるブレーキパッド23Aが、ブレーキディスク1の側面に沿って当たるように円弧形状となっており、ボルト等にてピストンベース部20Aに固定されている。
ピストンベース部20Aのブレーキパッド23Aを取り付けた側面とは反対の側面に、ピストン22Aを設けてある。
本実施例では、
図2に示すように2個のピストン22A,22Aを配置した例であり、
図4に示すように対向配置した一対のピストン22Aとピストン22Bとの中心軸122がブレーキディスク1の面上に有しているように配置することで、ブレーキパッド23A,23Bがブレーキディスク1に均一に当たるようになっている。
このピストン22A,22Bは、ピストンベース部20A,20Bにボルト等にて位置決め固定されている。
また、ベース部10A,10Bに設けたシリンダー14A,14B及びその油圧回路及び油圧制御により、前進後退制御されている。
【0015】
ピストンベース部20A,20Bには、
図2に示すようにピストン22A,22Bとは離れた位置で、ブレーキディスク1の外周よりも外側にガイド孔21A,21Bを有し、この左右一対のガイド孔21A,21Bに沿ってガイドピン12を挿通し、ベース部10A,10Bの収容部11A,11Bにボルト12aにて取り付けてある。
シリンダー14A,14B内に配置されているピストン22A,22Bが油圧制御等により、前進又は後退移動する際には、ピストンベース部20A,20Bを介して、ブレーキパッド23A,23Bが前進又は後退移動することになる。
この場合に、ピストンベース部20A,20Bに設けたガイド孔21A,21Bには、ガイドピン12が挿通されているので、このピストンベース部20A,20Bは、ガイドピン12に沿ってスライド移動することになる。
本発明においては、ピストン22A,22Bの中心軸122がブレーキディスク1の面上に有するように配置されているので、このブレーキパッド23A,23Bに倒れ込みが生じるような負荷が掛からないので、ピストン22A,22B及びガイドピン12,ガイド孔21A,21B等に、傾き方向やねじれ方向の負荷が生じるのを抑えることができる。
したがって、ガイドピン12とガイド孔21A,21Bとの間のクリアランスを従来よりも小さい微小な間隔に設定することができる。
このガイドピン12とガイド孔21A,21Bとの間のクリアランスを微小に設定できると、主軸等を低速回転制御するのにブレーキディスク1に、回転負荷を掛ける際に回転方向のガタツキが生じるのを抑えることができる。
また、ガイド孔21A,21Bにすべり軸受けを設けると、さらにこのガイド孔21A,21Bとガイドピン12との間のクリアランスを微小にすることができる。
このようにすることで、ブレーキディスク1の小型化を図り、ブレーキ機構がコンパクトになる。
【符号の説明】
【0016】
1 ブレーキディスク
10A ベース部
10B ベース部
12 ガイドピン
14A シリンダー
20A ピストンベース部
21A ガイド孔
22A ピストン
23A ブレーキパッド