(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144108
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】基板ユニットの製造方法及び基板ユニット
(51)【国際特許分類】
H01L 21/20 20060101AFI20241003BHJP
H01L 21/308 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L21/20
H01L21/308 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024006066
(22)【出願日】2024-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2023051481
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】古田 裕典
(72)【発明者】
【氏名】小酒 達
(72)【発明者】
【氏名】伊田 孝寛
(72)【発明者】
【氏名】石川 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】谷川 兼一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴人
(72)【発明者】
【氏名】北島 由隆
【テーマコード(参考)】
5F043
5F152
【Fターム(参考)】
5F043AA03
5F043AA14
5F043BB07
5F152LM09
5F152LN10
5F152LN19
5F152LN28
5F152LN29
5F152LP01
5F152LP08
5F152MM08
5F152MM11
5F152MM15
5F152MM18
5F152NN08
5F152NP05
5F152NP08
5F152NQ05
5F152NQ08
(57)【要約】
【課題】半導体機能層を成長させるための積層基板の再利用を可能にする。
【解決手段】基板ユニットの製造方法においては、基板(101、201)上に半導体積層体(110、210)を形成し、半導体積層体(110、210)上に犠牲層(105、205)を形成し、犠牲層(105、205)上に半導体機能層(120、220)を形成し、基板(101、201)における半導体積層体(110、210)が形成される形成面(101a、201a)と異なる裏面(101b、201b)、基板(101、201)の側面(101c、201c)、及び半導体積層体(110、210)の側面(110c、210c)を少なくとも覆う保護膜(109、209)を形成する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に半導体積層体を形成し、
前記半導体積層体上に犠牲層を形成し、
前記犠牲層上に半導体機能層を形成し、
前記基板における前記半導体積層体が形成される形成面と異なる裏面、前記基板の側面、及び前記半導体積層体の側面を少なくとも覆う保護膜を形成する
ことを特徴とする基板ユニットの製造方法。
【請求項2】
前記保護膜は、前記半導体機能層を形成した後に形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の基板ユニットの製造方法。
【請求項3】
前記保護膜は、前記基板、前記半導体積層体、前記犠牲層、及び前記半導体機能層の全体を覆うように形成される
ことを特徴とする請求項2に記載の基板ユニットの製造方法。
【請求項4】
前記保護膜は、前記犠牲層をエッチングすることで、前記半導体機能層を前記半導体積層体から分離した後に形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の基板ユニットの製造方法。
【請求項5】
前記保護膜は、前記基板及び前記半導体積層体の全体を覆うように形成される
ことを特徴とする請求項4に記載の基板ユニットの製造方法。
【請求項6】
前記半導体積層体の形成は、
前記基板上に第1の層を形成し、
前記第1の層上に前記第1の層と異なる材料で構成される第2の層を形成する、
ことで実行される
ことを特徴とする請求項1に記載の基板ユニットの製造方法。
【請求項7】
前記保護膜を形成した後に、前記第2の層をエッチャント材料でエッチングする
ことを特徴とする請求項6に記載の基板ユニットの製造方法。
【請求項8】
前記第2の層をエッチングした後に、前記第1の層における前記第2の層が形成される面を機械研磨により平滑化する
ことを特徴とする請求項7に記載の基板ユニットの製造方法。
【請求項9】
前記半導体積層体の形成は、
前記基板上に第1の層を形成し、
前記第1の層上に前記第1の層と異なる材料で構成される第2の層を形成し、
前記第2の層上に前記第1の層と同一の材料で構成される第3の層を形成する、
ことで実行される
ことを特徴とする請求項1に記載の基板ユニットの製造方法。
【請求項10】
基板と前記基板上に形成された半導体積層体とを有する積層基板に対して、前記基板における前記半導体積層体が形成される形成面と異なる裏面、前記基板の側面、及び前記半導体積層体の側面を少なくとも覆う保護膜を形成する
ことを特徴とする基板ユニットの製造方法。
【請求項11】
基板と、
前記基板上に形成された半導体積層体と、
前記基板における前記半導体積層体が形成される形成面と異なる裏面、前記基板の側面、及び前記半導体積層体の側面を少なくとも覆う保護膜と
を有することを特徴とする基板ユニット。
【請求項12】
前記保護膜は、前記基板及び前記半導体積層体の全体を覆う
ことを特徴とする請求項11に記載の基板ユニット。
【請求項13】
前記半導体積層体上に形成された犠牲層と、
前記犠牲層上に形成され、前記犠牲層のエッチングによって前記半導体積層体から分離可能である、半導体機能層と、
をさらに有することを特徴とする請求項11に記載の基板ユニット。
【請求項14】
前記保護膜は、前記基板、前記半導体積層体、前記犠牲層、及び前記半導体機能層の全体を覆う
ことを特徴とする請求項13に記載の基板ユニット。
【請求項15】
前記半導体積層体は、前記基板と同一材料で形成されたバッファ層である
ことを特徴とする請求項11に記載の基板ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板ユニットの製造方法及び基板ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体機能層としての半導体薄膜を結晶成長させるための基板の再利用を可能にする半導体装置の製造方法に関する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-019590号公報(例えば、段落0030、0040参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術のように基板の結晶成長面の保護を行うだけでは、エッチング処理による基板の損傷を十分に防ぐことができない。このため、基板とこの上に形成された半導体積層体とを含む積層基板を、次の半導体機能層の結晶成長のために再利用できないことが多い。
【0005】
本開示は、半導体機能層を成長させるための基板の損傷を軽減することができる基板ユニットの製造方法及び基板ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の基板ユニットの製造方法においては、基板上に半導体積層体を形成し、前記半導体積層体上に犠牲層を形成し、前記犠牲層上に半導体機能層を形成し、前記基板における前記半導体積層体が形成される形成面と異なる裏面、前記基板の側面、及び前記半導体積層体の側面を少なくとも覆う保護膜を形成することを特徴とする。
【0007】
本開示の基板ユニットは、基板と、前記基板上に形成された半導体積層体と、前記基板における前記半導体積層体が形成される形成面と異なる裏面、前記基板の側面、及び前記半導体積層体の側面を少なくとも覆う保護膜とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、半導体機能層を成長させるための基板の損傷を軽減することができ、基板及び半導体積層体の再利用の回数を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(A)は、実施の形態1に係る基板ユニットの断面を示す概略図であり、(B)は、実施の形態1に係る基板ユニットの上面を示す概略図である。
【
図2】実施の形態1に係る基板ユニットの製造方法を示すフローチャートである。
【
図3】実施の形態1に係る基板ユニットの製造工程(その1)を示す概略断面図である。
【
図4】実施の形態1に係る基板ユニットの製造工程(その2)を示す概略断面図である。
【
図5】実施の形態1に係る基板ユニットの製造工程(その3)を示す概略断面図である。
【
図6】(A)及び(B)は、半導体機能層の剥離工程(その1)を示す概略断面図及び概略平面図である。
【
図7】(A)及び(B)は、半導体機能層の剥離工程(その2)を示す概略断面図及び概略平面図である。
【
図8】(A)及び(B)は、半導体機能層の剥離工程(その3)を示す概略断面図及び概略平面図である。
【
図9】半導体機能層の剥離工程(その4)を示す概略断面図である。
【
図10】実施の形態1に係る基板ユニットの再利用工程(その1)を示す概略断面図である。
【
図11】実施の形態1に係る基板ユニットの再利用工程(その2)を示す概略断面図である。
【
図12】実施の形態1に係る基板ユニットの再利用工程(その3)を示す概略断面図である。
【
図13】実施の形態1に係る基板ユニットの再利用工程(その4)を示す概略断面図である。
【
図14】実施の形態1に係る基板ユニットの機械研磨工程(その1)を示す概略断面図である。
【
図15】実施の形態1に係る基板ユニットの機械研磨工程(その2)を示す概略断面図である。
【
図16】実施の形態1に係る基板ユニットの再利用工程(その5)を示す概略断面図である。
【
図17】実施の形態2に係る基板ユニットの元になる積層基板を示す概略図である。
【
図18】実施の形態2に係る基板ユニットの断面を示す概略図である。
【
図19】実施の形態2に係る基板ユニットの製造方法を示すフローチャートである。
【
図20】実施の形態2に係る基板ユニットの製造工程(その1)を示す概略断面図である。
【
図21】実施の形態2に係る基板ユニットの製造工程(その2)を示す概略断面図である。
【
図22】(A)及び(B)は、実施の形態2に係る基板ユニットの製造工程(その3)を示す概略断面図及び概略平面図である。
【
図23】(A)及び(B)は、実施の形態2に係る基板ユニットの製造工程(その4)を示す概略断面図及び概略平面図である。
【
図24】(A)及び(B)は、実施の形態2に係る基板ユニットの製造工程(その5)を示す概略断面図及び概略平面図である。
【
図25】実施の形態2に係る基板ユニットの製造工程(その6)を示す概略断面図である。
【
図26】実施の形態2に係る基板ユニットの製造工程(その7)を示す概略断面図である。
【
図27】実施の形態2に係る基板ユニットの再利用工程(その1)を示す概略断面図である。
【
図28】実施の形態2に係る基板ユニットの再利用工程(その2)を示す概略断面図である。
【
図29】実施の形態2に係る基板ユニットの再利用工程(その3)を示す概略断面図である。
【
図30】実施の形態2に係る基板ユニットの再利用工程(その4)を示す概略断面図である。
【
図31】実施の形態2に係る基板ユニットの再利用工程(その5)を示す概略断面図である。
【
図32】実施の形態2に係る基板ユニットの再利用工程(その6)を示す概略断面図である。
【
図33】実施の形態1の変形例2に係る基板ユニットの元になる積層基板の断面を示す概略図である。
【
図34】実施の形態1の変形例2に係る基板ユニットの断面を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施の形態に係る基板ユニットの製造方法及び基板ユニットを、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態は、例にすぎず、本開示の範囲内で種々の変更が可能である。
【0011】
《1》実施の形態1
《1-1》実施の形態1の概要
図1(A)は、実施の形態1に係る基板ユニット1の断面を示す概略図であり、
図1(B)は、基板ユニット1の上面を示す概略図である。
【0012】
基板ユニット1は、積層された複数の半導体層を有する積層基板100と、積層基板100の全体を覆う保護膜109とを有している。積層基板100は、半導体基板(例えば、半導体ウエハ)である基板101と、基板101上に備えられた半導体積層体110と、半導体積層体110上に備えられた犠牲層105と、犠牲層105上に備えられた半導体機能層120とを有している。
【0013】
半導体積層体110は、結晶成長としてのエピタキシャル成長によって基板101上に形成された1つ又は複数の半導体層を有している。半導体積層体110の具体例は、後述される。
【0014】
犠牲層105は、結晶成長としてのエピタキシャル成長によって半導体積層体110上に形成された半導体層である。犠牲層105は、使用されるエッチャント材料によってエッチングされやすい(すなわち、他の層よりもエッチング速度が速い)材料で構成されている。犠牲層105の具体例は、後述される。
【0015】
半導体機能層120は、半導体素子が形成される半導体層である。
図1(A)に示される半導体機能層120からは、加工によって分割されて基板101上に2次元的に配置された複数の半導体素子(すなわち、分割された複数の半導体機能層120)が形成される。犠牲層105をエッチングすることで、複数の半導体素子の各々(すなわち、分割された複数の半導体機能層120の各々)を、半導体積層体110から分離可能(すなわち、剥離可能)である。個々の半導体機能層120は、半導体装置(例えば、光源、光検出器、画像センサ、など)又は半導体素子(例えば、発光素子、受光素子、圧電素子、など)としての機能を持つ。分離された半導体機能層120は、移動装置(図示せず)によって持ち上げられて運ばれ、実装基板(図示せず)上に、例えば、分子間力によって貼り付けられる。なお、半導体機能層120の具体例は、後述される。
【0016】
図1において、保護膜109は、積層基板100の全体を覆っているが、保護膜109は、必ずしも積層基板100の全体を覆う必要はない。保護膜109は、半導体機能層120の形成のために繰り返し使用される部分を覆う構造であればよい。例えば、保護膜109は、基板ユニット1において、基板101における半導体積層体110が形成される形成面101aと異なる裏面101b、基板101の側面101c、及び半導体積層体110の側面110cを少なくとも覆うことが望ましい。言い換えると、保護膜109を裏面101bからバッファ層104(後述の
図4から
図9に示される。)の側面までに形成した基板ユニット1でもよい。そのような基板ユニット1により、半導体機能層120の形成後及び分離後におけるエッチング処理によって基板1とバッファ層104が侵食されることがなく、基板101及びバッファ層102(後述の
図4から
図16に示される。)を繰り返し再利用することが可能になる。
【0017】
《1-2》実施の形態1の詳細
〈基板ユニットの製造〉
図2は、実施の形態1に係る基板ユニットの製造方法を示すフローチャートである。
図3、
図4、及び
図5は、実施の形態1に係る基板ユニットの製造工程(その1、その2、及びその3)を示す概略断面図である。
【0018】
図3及び
図4に示されるように、実施の形態1に係る基板ユニットの製造方法では、エピタキシャル成長によって、半導体基板としての基板101上に半導体積層体110を成長させ(
図2のステップS101)、半導体積層体110上に犠牲層105を成長させ(
図2のステップS102)、犠牲層105上に半導体機能層120を成長させる(
図2のステップS103)。基板101は、例えば、インジウムリン(InP)基板である。
【0019】
図4に示されるように、基板101上に成長した半導体積層体110は、InPからなる第1の層としてのバッファ層102と、バッファ層102上に形成されたインジウム・ガリウム・ヒ素(InGaAs)からなる第2の層としてのエッチングストップ層103と、エッチングストップ層103上に形成されたInPからなる第3の層としてのバッファ層104と、インジウム・ガリウム・ヒ素(InGaAs)からなる犠牲層105と、を有している。また、犠牲層105は、InGaAsのみで構成される単層でもよい。また、犠牲層105は、例えば、InGaAsからなる層とインジウム・ガリウム・ヒ素・リン(InGaAsP)からなる層、などの複数の材料の層で構成される多層構造でもよい。第1のエッチャント材料としてのバッファ層104のエッチャント材料は、塩酸、第2のエッチャント材料としてのエッチングストップ層103のエッチャント材料は、リン酸と過酸化水素水と混合液もしくはクエン酸と過酸化水素水の混合液、硫酸と過酸化水素水の混合液を用いる。犠牲層105もリン酸と過酸化水素水と混合液もしくはクエン酸と過酸化水素水の混合液、硫酸と過酸化水素水の混合液を用いる。
【0020】
バッファ層102は、基板101と同じ材料で形成することによって、基板101とバッファ層102の合計の厚みを増やすことができ、また、バッファ層102を設けることによって、後述する再利用(すなわち、リサイクル)工程における上層除去時にも、基板101の厚みを減らさないことが可能である。エッチングストップ層103は、アルミニウム・ガリウム・ヒ素(AlGaAs)などの他の材料で形成されてもよい。半導体積層体110は、
図4に示される構成のものに限定されない。
【0021】
図4に示されるように、犠牲層105上に成長した半導体機能層120は、InPからなるn型クラッド層106と、InGaAs光吸収層としての活性層107と、InPからなるp型クラッド層108とを有している。実施の形態1では、n型クラッド層106とp型クラッド層108とは、基板101の材料と同じ材料で形成されている。
【0022】
次に、
図5に示されるように、積層基板100の全体を覆う保護膜109を形成する(
図2のステップS104)。保護膜109は、例えば、有機金属材料で形成される。保護膜109は、例えば、ALD(Atomic Layer Deposition)により形成される。保護膜109は、CVD(Chemical Vapor Deposition)などのような他の方法で形成されてもよい。保護膜109は、半導体機能層120の形成のために再利用される部分である、基板101における半導体積層体110の裏面101b、基板101の側面101c、及び半導体積層体110の側面110cを少なくとも覆うように形成される。ALDを用いる場合には、保護膜109の膜厚を均一化することができる。
【0023】
次に、ALD加工により積層基板100の周囲全体に保護膜109として、アルミニウムの酸化膜のアルミナを堆積する場合、トリメチルアルミニウム(TMA)を平面素材上に流すとTMAがその表面を覆うが、1層のTMAが全面を覆うと、それ以上積層しない。ここで、窒素を流すと、余っているTMAを除去でき、次に、水又はオゾンを流すとTMAのメチル基が離れてアルミニウムが酸化されて、1層のアルミナ膜ができる。
【0024】
次に、残っている水及びオゾンを除去し、その後に再びTMAを供給する。この操作を繰り返すと、複数の原子層のアルミナが堆積することになる。実施の形態1では、トリメチルアルミニウムを用いているが他の有機金属、例えば、(CH3)3Ga(トリメチルガリウム)などでもよい。
【0025】
保護膜109は、他の有機物保護膜であるレジスト等であってもよい。
【0026】
〈半導体機能層の剥離〉
図6(A)及び(B)、
図7(A)及び(B)、
図8(A)及び(B)は、半導体機能層120の剥離工程(その1、その2、その3)を示す概略断面図及び概略平面図である。
図9は、半導体機能層の剥離工程(その4)を示す概略断面図である。これらの図では、基板101の平面形状を正方形として図示しているが、平面形状は図示の例に限定されない。
【0027】
次に、
図6(A)及び(B)に示されるように、ドライエッチングにより半導体機能層120及び犠牲層105をパターニングし、
図7(A)及び(B)に示されるように、ドライエッチングによりInPからなるp型クラッド層108とInGaAsからなる活性層107をパターニングする(
図2のステップS105)。
【0028】
次に、
図8(A)及び(B)に示されるように、活性層107の側面とp型クラッド層108の上面及び側面を覆うように、機能層保護膜121を形成する(
図2のステップS106)。機能層保護膜121は、例えば、Al
2O
3、Si
3N
4、又はSiO
2などで形成される。
【0029】
次に、
図9に示されるように、犠牲層105をウェットエッチング用のエッチャント材料によってエッチングして、移動装置(図示せず)によって半導体機能層120を持ち上げることで、半導体機能層120を半導体積層体110から分離(すなわち、剥離)する(
図2のステップS107)。剥離された半導体機能層120(例えば、半導体機能層120の個片)は、所望の実装基板(図示せず)上に貼り付けられ(すなわち、転写され)、配線を設けられ半導体素子(例えば、発光素子、受光素子、圧電素子、など)として機能する。
【0030】
〈基板ユニットの再利用〉
図10から
図13は、実施の形態1に係る基板ユニットの再利用工程(その1~その4)を示す概略断面図である。これらの図では、基板101の平面形状を正方形として図示しているが、平面形状は図示の例に限定されない。
【0031】
半導体機能層120を半導体積層体110から剥離した後に、
図10に示されるように、バッファ層104をウェットエッチングし、基板101、バッファ層102、エッチングストップ層103、及び保護膜109の一部が残った状態にする。次に、
図11に示されるように、保護膜109をエッチングする。なお、
図11及び
図12において、保護膜109を除去しないことも可能である。次に、
図12に示されるように、エッチングストップ層103をウェットエッチングする。このとき、露出したバッファ層102の上面は平滑度の低い荒れた状態であるため、研磨工程(ラッピング)により平滑化のための処理が行われる(
図2のステップS108)。
図13は、平滑化された上面を持つ積層基板を示す。
【0032】
図14及び
図15は、実施の形態1に係る基板ユニットの機械研磨工程(その1及びその2)を示す概略断面図である。
図14及び
図15は、
図10から
図12に示される工程の変形例を示す。つまり、
図10から
図12に示される工程は、
図14及び
図15に示される研磨装置150による機械研磨工程に置き替えられてもよい。機械研磨としては、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)が用いられる。
図14及び
図15に示される機械研磨工程によって、平滑化された上面を持つ積層基板が得られる。
【0033】
図16は、実施の形態1に係る基板ユニットの再利用工程(その5)を示す概略断面図である。
図16に示されるように、
図15におけるバッファ層102上に、バッファ層を追加形成し(保護膜109より上に飛び出た面)、半導体積層体110の残りの層であるエッチングストップ層103及びバッファ層104、犠牲層105、及び半導体機能層120を順に成長させる(
図2のステップS109)。また、
図13におけるバッファ層102上に、バッファ層を追加形成し、
図4で示す様に再度各層を形成する。
【0034】
次に、
図6(A)及び(B)に示されるように、ドライエッチングにより半導体機能層120及び犠牲層105をパターニングし、
図7(A)及び(B)に示されるように、ドライエッチングによりInPからなるp型クラッド層108とInGaAsからなる活性層107をパターニングする(
図2のステップS110)。
【0035】
次に、
図8(A)及び(B)に示されるように、活性層107の側面とp型クラッド層108の上面及び側面を覆うように、機能層保護膜121を形成する。
【0036】
次に、
図9に示されるように、半導体機能層120を半導体積層体110から剥離する(
図2のステップS111)。
【0037】
基板ユニットの再利用工程では、ステップS108からS111の工程(すなわち、半導体機能層を形成するための工程)を繰り返し行うことが可能である。また、再利用工程では、ALD処理を行うことで、
図5の基板ユニットを再度得ることができる。
【0038】
《1-3》実施の形態1の効果
以上のように、実施の形態1の製造方法又は基板ユニット1を用いれば、保護膜109を設けたことによりInPからなる基板101の損傷を軽減することができる。さらに、InPからなるバッファ層102を含めて侵食が無い状態で基板101及びバッファ層102を繰り返し再利用することが可能になる。したがって、半導体機能層120を成長させるための基板101及び半導体積層体110の再利用の回数を増やすことができる。また、実施の形態1の半導体機能層120を形成した後に保護膜109を形成すると、犠牲層105のエッチング時に基板101へのダメージをさらに抑制し、再利用の回数をさらに増やすことができる。
【0039】
《2》実施の形態2
《2-1》実施の形態2の概要
図17は、実施の形態2に係る基板ユニットの元になる積層基板を示す概略図である。
図18は、実施の形態2に係る基板ユニット2の断面を示す概略図である。
図18の基板ユニット2は、
図17の半導体機能層220を成長させるために用いられる。あるいは、
図18の基板ユニット2は、
図17の半導体機能層220を剥離した後における、基板201及び半導体積層体210を再利用して形成される。
【0040】
基板ユニット2は、積層された複数の半導体層を有する積層基板200と、積層基板200の全体を覆う保護膜209とを有している。積層基板200は、半導体基板(例えば、半導体ウエハ)である基板201と、基板201上に備えられた半導体積層体210とを有している。
【0041】
半導体積層体210は、結晶成長としてのエピタキシャル成長によって基板201上に形成された1つ又は複数の半導体層を有している。半導体積層体210の具体例は、後述される。
【0042】
図17に示される犠牲層205は、結晶成長としてのエピタキシャル成長によって半導体積層体210上に形成された半導体層である。犠牲層205は、使用されるエッチャント材料によってエッチングされやすい(すなわち、他の層よりもエッチング速度が速い)材料で構成されている。犠牲層205の具体例は、後述される。
【0043】
図17に示される半導体機能層220は、半導体素子が形成される半導体層である。実施の形態1の場合と同様に、半導体機能層220は、加工によって分割されて半導体ウエハ上に2次元的に配置される。犠牲層205をエッチングすることで、複数の半導体素子の各々(すなわち、分割された複数の半導体機能層220の各々)を、半導体積層体210から分離可能(すなわち、剥離可能)である。個々の半導体機能層220は、半導体装置(例えば、光源、光検出器、画像センサ、など)又は半導体素子(例えば、発光素子、受光素子、圧電素子、など)としての機能を持つ。分離された半導体機能層220は、移動装置(図示せず)によって持ち上げられて運ばれ、実装基板(図示せず)上に、例えば、分子間力によって貼り付けられる。なお、半導体機能層220の具体例は、後述される。
【0044】
図18において、保護膜209は、積層基板200の全体を覆っているが、保護膜209は、必ずしも積層基板200の全体を覆う必要はない。保護膜209は、半導体機能層220の形成のために繰り返し使用される部分を覆う構造であればよい。例えば、保護膜209は、基板ユニット2において、基板201における半導体積層体210が形成される形成面201aと異なる裏面201b、基板201の側面201c、及び半導体積層体110の側面210cを少なくとも覆うことが望ましい。
【0045】
《2-2》実施の形態2の詳細
〈基板ユニットの製造〉
図19は、実施の形態2に係る基板ユニットの製造方法を示すフローチャートである。
図20及び
図21は、実施の形態2に係る基板ユニットの製造工程(その1及びその2)を示す概略断面図である。
【0046】
図20及び
図21に示されるように、実施の形態2に係る基板ユニットの製造方法では、エピタキシャル成長によって、半導体基板としての基板201上に半導体積層体210を成長させ、半導体積層体210上に犠牲層205を成長させ、犠牲層105上に半導体機能層220を成長させる(
図19のステップS201)。基板201は、例えば、InP基板である。犠牲層205は、実施の形態1の犠牲層105の場合と同様に、InGaAsのみで構成される単層でもよい。また、犠牲層205は、例えば、InGaAsからなる層とInGaAsPからなる層、などの複数の材料の層で構成される多層構造でもよい。
【0047】
図21に示されるように、基板201上に成長した半導体積層体210は、InPからなる第1の層としてのバッファ層202と、バッファ層202上に形成されたInGaAsからなる第2の層としてのエッチングストップ層203と、エッチングストップ層203上に形成されたInPからなる第3の層としてのバッファ層204とを有している。
【0048】
バッファ層202は、基板201と同じ材料で形成することによって、基板201とバッファ層202の合計の厚みを増やすことができ、また、バッファ層202を設けることによって、後述する再利用工程における上層除去時にも、基板201の厚みを減らさないことが可能である。エッチングストップ層203は、InGaAsPなどの他の材料で形成されてもよい。半導体積層体210は、
図21に示される構成のものに限定されない。ここで、実施の形態2においては、犠牲層205をInGaAsとし、エッチングストップ層203をInGaAsPとすることが望ましい。これにより、犠牲層205に対するエッチングストップ層203のエッチング選択比が低くなるので、犠牲層205を除去する際のエッチングストップ層203の損傷を減らすことができる。
【0049】
図21に示されるように、犠牲層205上に成長した半導体機能層220は、InPからなるn型クラッド層206と、InGaAs光吸収層としての活性層207と、InPからなるp型クラッド層208とを有している。実施の形態1では、n型クラッド層206とp型クラッド層208とは、基板201の材料と同じ材料で形成されている。
【0050】
図22(A)及び(B)、
図23(A)及び(B)、
図24(A)及び(B)は、実施の形態2に係る基板ユニットの製造工程(その3、その4、その5)を示す概略断面図及び概略平面図である。これらの図では、基板201の平面形状を正方形として図示しているが、平面形状は図示の例に限定されない。
【0051】
次に、
図22(A)及び(B)に示されるように、ドライエッチングにより半導体機能層220及び犠牲層205をパターニングし、
図23(A)及び(B)に示されるように、ドライエッチングによりInPからなるp型クラッド層208とInGaAsからなる活性層207をパターニングする(
図19のステップS202)。
【0052】
次に、
図24(A)及び(B)に示されるように、活性層207の側面とp型クラッド層208の上面及び側面を覆うように、機能層保護膜221を形成する。機能層保護膜221は、例えば、Al
2O
3、Si
3N
4、又はSiO
2などで形成される。
【0053】
図25は、実施の形態2に係る基板ユニットの製造工程(その7)を示す概略断面図である。
図25に示されるように、犠牲層205をウェットエッチング用のエッチャント材料によってエッチングして、移動装置(図示せず)によって半導体機能層220を持ち上げることで、半導体機能層220を半導体積層体210から分離(すなわち、剥離)する(
図19のステップS203)。剥離された半導体機能層220(例えば、半導体機能層220の個片)は、所望の実装基板(図示せず)上に貼り付けられ(すなわち、転写され)、配線を設けられ半導体素子(例えば、発光素子、受光素子、圧電素子、など)として機能する。
【0054】
図26は、実施の形態2に係る基板ユニットの製造工程(その8)を示す概略断面図である。
図26に示されるように、基板201と半導体積層体210とからなる積層基板200の全体を覆う保護膜209を形成する(
図19のステップS204)。保護膜209は、例えば、有機金属材料で形成される。保護膜209は、例えば、ALDにより形成される。保護膜209は、CVDなどのような他の方法で形成されてもよい。保護膜209は、必ずしも積層基板200の全体を覆う必要はない。保護膜209は、半導体機能層220の形成のために再利用される部分である、基板201における半導体積層体210の裏面201b、基板201の側面201c、及び半導体積層体210の側面210cを少なくとも覆うように形成される。保護膜209は、実施の形態1における保護膜と同様である。
【0055】
〈基板ユニットの再利用〉
図27から
図31は、実施の形態2に係る基板ユニットの再利用工程(その1~その5)を示す概略断面図である。
【0056】
半導体機能層220を半導体積層体210から剥離した後に、
図27及び
図28に示されるように、バッファ層204をウェットエッチングし、基板201、バッファ層202、エッチングストップ層203、及び保護膜209の一部が残った状態にする。次に、
図29に示されるように、保護膜209をエッチングする。なお、
図29において、保護膜209を除去しないことも可能である。次に、
図30に示されるように、エッチングストップ層303をウェットエッチングする。このとき、露出したバッファ層302の上面は平滑度の低い荒れた状態であるため、研磨工程(ラッピング)により平滑化のための処理が行われる(
図19のステップS205)。
図31は、平滑化された上面を持つ積層基板を示す。なお、実施の形態1の場合と同様に、平滑化処理に、CMPを用いてもよい。
【0057】
図32は、実施の形態1に係る基板ユニットの再利用工程(その6)を示す概略断面図である。
図32に示されるように、
図31におけるバッファ層202上に、半導体積層体210の残りの層であるエッチングストップ層203及びバッファ層204を順に成長させ、積層基板200を形成する(
図19のステップS206)。
【0058】
次に、
図26に示されるように、積層基板200の全体を覆う保護膜209を形成する(
図19のステップS207)。保護膜209は、半導体機能層220の形成のために再利用される部分である、基板201における半導体積層体210の裏面201b、基板201の側面201c、及び半導体積層体210の側面210cを少なくとも覆うように形成される。この処理によって、
図26に示される基板ユニット2が形成される。
【0059】
《2-3》実施の形態2の効果
以上のように、実施の形態2の製造方法又は基板ユニット2を用いれば、保護膜209を設けたことによりInPからなる基板201だけでなく、InPからなるバッファ層202含めて侵食が全く無い状態で基板201及びバッファ層202を繰り返し再利用することが可能になる。したがって、半導体機能層220を成長させるための基板201及び半導体積層体210の再利用の回数を増やすことができる。また、半導体機能層220が半導体積層体210から分離するプロセスの後に保護膜209が形成されるので、前記分離するプロセスで発生し得る保護膜209の傷等の発生を低減することができる。従って、基板ユニットの再利用工程において、保護膜209の傷からのエッチング液(エッチャント)の侵入を防止し、再利用における歩留まりを向上させることができる。
【0060】
《3》変形例1
上記実施の形態1及び2では、成長の元となる基板101,201、半導体積層体110、210、及び犠牲層105、205の上層に成長させる半導体機能層120、220は、一例を示したが、半導体積層体110、210に追加の層を設けてもよく、犠牲層105、205に追加の層を設けてもよく、また、半導体機能層120、220に追加の上層を設けてもよい。また、半導体積層体110(210)をバッファ層102(202)、エッチングストップ層103(203)、バッファ層104(204)で構成したが、一層のみで構成してもよい。例えば、半導体積層体をバッファ層104(204)のみの構成としてもよい。
【0061】
上記実施の形態1及び2では、InP系の材料を用いて、積層基板100、200を形成した例を説明したが、GaAs系の材料又はGaN系の材料を用いて、積層基板100、200を形成してもよい。例えば、基板101,201の材料としてGaAsを用い、バッファ層102、202の材料としてGaAsを用い、エッチングストップ層103、203の材料としてInGaPを用い、バッファ層104、204の材料としてAlGaAs又はGaAsを用い、犠牲層105、205の材料としてAlAsを用いることができる。
【0062】
《4》変形例2
上述した実施の形態1では、半導体積層体110を、バッファ層102と、バッファ層102上に形成されたInGaAsからなるエッチングストップ層103と、エッチングストップ層103上に形成されたInPからなるバッファ層104とで構成し、犠牲層105を、InGaAsとし、半導体機能層120を、犠牲層105上に形成されるInPからなるn型クラッド層106と、活性層(AC)107と、InGaAsからなるp型クラッド層108とで構成した、積層基板100を用いて基板ユニットを製造する例を説明した。しかし、
図33に示すように、半導体積層体1110を、InPからなるバッファ層1102とInGaAsからなるエッチングストップ層1103とで構成し、犠牲層1105を、InPとし、半導体機能層1120を、InGaAsからなるn型クラッド層1106と活性層(AC)1107とInGaAsからなるp型クラッド層1108とで構成した積層基板1100を用いて、変形例2に係る基板ユニットを製造することもできる。
【0063】
変形例2では、
図34に示すように、基板1101上に半導体積層体1110、犠牲層1105、半導体機能層1120を順に積層した後に保護膜1109を形成する。保護膜1109の材料、形状、及び形成方法は、実施の形態1における保護膜109のものと同様である。それ以降の工程では、実施の形態1又は2と同様に、犠牲層1105を除去し、半導体機能層1120を半導体積層体1110から分離する。その後、
図14及び
図15に示す例と同様に、CMPにより研磨してエッチングストップ層1103を除去し、バッファ層1102の上面を平滑化処理することで、基板1101と、基板1101上の平滑化された上面を持つバッファ層1102と、基板1101の裏面1101bからバッファ層1102の側面1102c(半導体積層体1110の側面である。)までを覆うように形成された保護膜1109を有する基板ユニットを得ることができる。
【0064】
このように、基板1101と犠牲層1105とが同一の材料(例えば、InP)とする場合であっても、半導体機能層1120を形成した後であって犠牲層105を除去する前に保護膜1109が形成されているので、犠牲層1105を除去するためのエッチャントによる損傷から基板1101の裏面1101b、側面1101c、及びバッファ層1102の側面1102c(側面1101c及び1102cは、半導体積層体1110の側面を形成している。)を保護することができる。
【0065】
なお、変形例2の積層基板1100を、変形例1のように、GaAs系の材料又はGaN系の材料を用いて形成してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1、2 基板ユニット、 100、200、1100 積層基板、 101、201、1101 基板、 101a、201a 形成面、 101b、201b、1101b 裏面、 101c、201c、1101c 基板の側面、 102、202、1102 バッファ層(第1の層)、 1102c バッファ層の側面、 103、203、1103 エッチングストップ層(第2の層)、 104、204 バッファ層(第3の層)、 105、205、1105 犠牲層、 106、206、1106 n型クラッド層、 107、207、1107 活性層、 108、208、1108 p型クラッド層、 109、209、1109 保護膜、 110、210、1110 半導体積層体、 110c、210c 半導体積層体の側面、 120、220、1120 半導体機能層。