(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014411
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】流体殺菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20240125BHJP
C02F 1/32 20230101ALI20240125BHJP
【FI】
A61L2/10
C02F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117218
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 英明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】新野 和久
(72)【発明者】
【氏名】川崎 和亮
(72)【発明者】
【氏名】佐野 諒
【テーマコード(参考)】
4C058
4D037
【Fターム(参考)】
4C058AA20
4C058BB06
4C058KK02
4C058KK22
4C058KK28
4C058KK46
4D037AA02
4D037AB03
4D037BA18
4D037BB04
(57)【要約】
【課題】小型化を図りつつ、筐体の紫外線劣化に対処する流体殺菌装置を提供する。
【解決手段】筐体本体12及びアウタカバー14は筐体を構成している。直管18及び光源装置19は、筐体内に軸方向に内挿されている。導出流路35は、筐体内に形成され、直管18の光源装置19側に形成されている切欠き181に連通している。遮蔽リング20は、筐体より高い紫外線耐性を有する。遮蔽リング20のテーパ部201は、導出流路35を画成しているとともに、切欠き181から直管18の外に漏れてくる紫外線に対して筐体を保護する。
【選択図】
図5B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を殺菌する流体殺菌装置であって、
直線である軸の同軸上に一端側と他端側を有する筐体と、
前記筐体は、前記一端側に第1筒部と、前記第1筒部より大きい内径を有する前記他端側の第2筒部とを含み、
被殺菌流体が前記一端側から前記他端側に一方向に流れるように前記筐体の前記第1筒部内に軸方向に内挿され、前記他端側の開口から前記一端側の方へ前記軸方向に所定長さ延在する切欠きを有している流路管と、
前記筐体の前記第2筒部内に備えられ、紫外線透過部を有し前記流路管の前記開口を封鎖する開口封鎖部材と、
前記開口封鎖部材の前記紫外線透過部を介して前記流路管内に前記軸方向の他端側から紫外線を照射する光源と、
前記筐体の前記第2筒部内に備えられ、前記筐体より高い紫外線耐性を有し、前記流路管の外周側に配設され、前記切欠きからの前記被殺菌流体の導出流路の上流端部を画成しているとともに、前記流路管の切欠きからの紫外線の出射光に対して前記筐体の内周側を遮蔽している遮蔽部材と、
を備えていることを特徴とする流体殺菌装置。
【請求項2】
請求項1記載の流体殺菌装置において、
前記遮蔽部材は、前記流路管の軸方向に前記一端側から前記他端側に向かって拡開するテーパ部を内周側に有していることを特徴とする流体殺菌装置。
【請求項3】
請求項2記載の流体殺菌装置において、
前記遮蔽部材は、前記筐体より紫外線に対して高い反射率を有していることを特徴とする流体殺菌装置。
【請求項4】
請求項3記載の流体殺菌装置において、
さらに、前記軸方向に前記光源と前記開口封鎖部材との間に配置され、内周側に前記光源からの前記紫外線を反射する反射面を有し、外周側は前記遮蔽部材及び前記筐体との間の環状間隙において前記導出流路を形成しているリフレクタを備えていることを特徴とする流体殺菌装置。
【請求項5】
請求項4記載の流体殺菌装置において、
前記リフレクタは、径方向に前記流路管の外側に張出して、前記軸方向に前記テーパ部と対向する張出し面を有し、前記筐体より高い紫外線耐性を有し、
前記遮蔽部材のテーパ部は、前記切欠き孔及び前記リフレクタの前記張出し面に向けて前記紫外線を反射することを特徴とする流体殺菌装置。
【請求項6】
請求項4記載の流体殺菌装置において、
前記リフレクタは、前記導出流路を画成する部分に前記被殺菌流体の流れに沿って延在する溝を有していることを特徴とする流体殺菌装置。
【請求項7】
請求項4記載の流体殺菌装置において、
前記開口封鎖部材、前記リフレクタ及び前記光源は、光源装置を構成し、
さらに、前記光源装置との間に前記軸方向の間隙として形成している封鎖部と、前記封鎖部の中心部から前記筐体の外へ突出して前記間隙内の前記被殺菌流体を前記筐体外へ導くアウトレットとを有している筐体封鎖部材を備え、
前記筐体は、前記軸方向の前記一端側において前記一端側への前記筐体内の収納部品の移動を阻止するストッパ部と、前記筐体封鎖部材の前記封鎖部を介して前記収納部品を前記ストッパ部の方へ締め付ける締付け部とを有し、
前記流路管と前記光源装置とが前記収納部品として前記筐体内に収納されているとともに、
前記流路管、前記光源装置、及び前記筐体封鎖部材が、中心軸を揃えて、前記軸方向に前記一端側から順番に一列に配列されていることを特徴とする流体殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体に紫外線を照射して流体を殺菌する流体殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流路管内を一端側から他端側へ流れる被殺菌流体に対し、他端側から紫外線を照射して、殺菌することが知られている。この場合、流路管内の被殺菌流体を流路管の外に導出するために、流路管の他端側には、導出口が設けられている(例:特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-202205号公報
【特許文献2】特開2022-68062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流体殺菌装置は、流路管や光源等の構成要素を、収納部品として筐体の開口側から内挿、収納し、開口側から締め付けるようにして、組付ける構造にすると、組付け構造が簡単化されるとともに、配置スペースが節約されて、小型化を図ることができる。その場合、典型的には、流路管は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン4フッ化エチレン樹脂)等の紫外線耐性の優れる材料で製造されたものが使用されるのに対し、筐体は、剛性がありかつ安価な樹脂が使用されるのが一般的である。
【0005】
導出口が流路管の他端部、すなわち光源側の端部に設けられている場合、導出口近辺の紫外線強度は大きく、筐体が、導出口から流路管の外に漏れ出た紫外線を受けて、劣化し易いという問題がある。
【0006】
特許文献1,2の流体殺菌装置は、筐体に流路管を、光源等の他の部品と共に収納して、組み付けを合理化するという構造を有しておらず、筐体が流路管の導出口から外に漏れた紫外線により劣化するという問題が提起されない。
【0007】
本発明の目的は、流路管の導出口から外へ漏れ出た紫外線に因る筐体の劣化を有効に防止することができる流体殺菌装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
液体を殺菌する流体殺菌装置であって、
直線である軸の同軸上に一端側と他端側を有する筐体と、
前記筐体は、前記一端側に第1筒部と、前記第1筒部より大きい内径を有する前記他端側の第2筒部とを含み、
被殺菌流体が前記一端側から前記他端側に一方向に流れるように前記筐体の前記第1筒部内に軸方向に内挿され、前記他端側の開口から前記一端側の方へ前記軸方向に所定長さ延在する切欠きを有している流路管と、
前記筐体の前記第2筒部内に備えられ、紫外線透過部を有し前記流路管の前記開口を封鎖する開口封鎖部材と、
前記開口封鎖部材の前記紫外線透過部を介して前記流路管内に前記軸方向の他端側から紫外線を照射する光源と、
前記筐体の前記第2筒部内に備えられ、前記筐体より高い紫外線耐性を有し、前記流路管の外周側に配設され、前記切欠きからの前記被殺菌流体の導出流路の上流端部を画成しているとともに、前記流路管の切欠きからの紫外線の出射光に対して前記筐体の内周側を遮蔽している遮蔽部材と、
を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、流路管の他端部の切欠きから外に漏れ出た紫外線の照射範囲に、筐体より高い紫外線耐性を有する遮蔽部材が設けられ、漏れ出た紫外線に対し筐体を遮蔽する。これにより、筐体を紫外線に対して保護しつつ、流体殺菌装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】筐体本体の円筒部内に収納される収納部品を流体殺菌装置の軸方向に分解して示す分解斜視図である。
【
図3】光源装置及びアウタレットを軸方向に分解して軸方向一端側から見た分解斜視図である。
【
図4】光源装置及びアウタレットを軸方向に分解して軸方向他端側から見た分解斜視図である。
【
図5A】
図1において軸方向に拡径部及びアウタカバーを含む範囲の拡大図である。
【
図5B】
図5Aにおいて中心軸Rxに対して上側の半部の拡大図である。
【
図7】照度分布の上限を40mw/cm
2として流体殺菌装置におけるUVの照度分布をシミュレーションで解析した図である。
【
図8】照度分布の上限を10mw/cm
2として流体殺菌装置におけるUVの照度分布をシミュレーションで解析した図である。
【
図9】照度分布の上限を5mw/cm
2として流体殺菌装置におけるUVの照度分布をシミュレーションで解析した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は、実施形態に限定されないことは言うまでもない。なお、複数の実施形態間で共通する構成要素については、全図を通して同一の符号を使用する。
【0012】
(構成)
図1は、流体殺菌装置10の縦断面図である。Rxは、流体殺菌装置10の中心軸を示している。流体殺菌装置10は、円筒状の筐体本体12と、キャップ形状のアウタカバー14とを有している。筐体本体12及びアウタカバー14は、流体殺菌装置10の筐体を構成し、中心軸を流体殺菌装置10の中心軸Rxに揃えてそれぞれの雄ねじ部121及び雌ねじ部141において螺合している。雄ねじ部121及び雌ねじ部141の螺合は、筐体内の収納部品を軸方向に締め付けることにより、収納部品の組付構造を簡単化している。
【0013】
筐体本体12は、円筒部122、インレット123、拡径部124及びストッパ部125を有している。インレット123は、円筒部122の軸方向一端側から中心軸Rxに沿って一端側の方へ所定長さ突出している。ストッパ部125は、円筒部122の軸方向の一端側の内面として形成され、中心部においてインレット123のインレット通路が開口している。ストッパ部125は、円筒部122内の収納部品が軸方向の一端側への移動を阻止する役割を有している。拡径部124は、一端側において円筒部122から径方向に張り出し、他端側において開口している。
【0014】
アウタカバー14は、カバー部の中心に開口142を有している。アウタカバー14は、円形の開口142を中央部に画成しているカバー部により筐体本体12からの収納部品の離脱を阻止し、かつ筐体本体12との螺合後は、収納部品をストッパ部125の方へ押し付ける役割を有している。
【0015】
図2は、筐体本体12の円筒部122内に収納される収納部品を流体殺菌装置10の軸方向に分解して示す分解斜視図である。収納部品には、遮蔽体15、整流板16及び直管18が含まれ、それらの中心軸を筐体の中心軸Rxに揃え、その順番で軸方向に一端側から他端側へ配列されて、筐体本体12の他端側の開口側から内挿されている。
【0016】
遮蔽体15は、整流板16及び直管18と共に、紫外線耐性を有する材料によって構成される。遮蔽体15は、ストッパ部125の内面に一端側を当てられて、UV(紫外線)に対してストッパ部125の内面を遮蔽して、ストッパ部125をUVから保護している。遮蔽体15は、また、内周側にテーパ部151を有している。テーパ部151は、小径側及び大径側においてそれぞれインレット123及び直管18の内径に等しい径を有し、それぞれインレット123及び殺菌室182に連通している。テーパ部151を有することによって、テーパ部151で反射したUVが整流板16の方向へ反射されることによって、UVの利用効率が上がる。
【0017】
整流板16は、中央部161を包囲する周辺部に複数の整流孔162を有している。中央部161は、不図示の圧送ポンプからインレット123及び遮蔽体15を経て整流板16に流れ込んでくる被殺菌流体(例:水)に対し、堰止めの機能を果たしている。すなわち、被殺菌流体は、中央部161に当たって、減速されてから、整流孔162から直管18内に流入する。これにより、被殺菌流体の流速は、殺菌室182において径方向の内側と外側とで均一化する。また、中心軸Rx軸上に、遮蔽体15の流入口(テーパ部151の最小径部)と、整流板16の中央部161を有することによって、直管18から整流板方向へ出射されるUVが、流体殺菌装置10から漏出することを防いでいる。ここで、中央部161の面積は、遮蔽体15の流入口の面積以上である。
【0018】
直管18は、殺菌室182を内周側に画成している。複数の切欠き181は、軸方向他端側の直管18の周壁に周方向に等角度間隔で形成され、直管18の他端の開口から一端側の方へ所定長さ延在している。Oリング183は、直管18の外周部の環状溝に嵌着して、外周部における被殺菌流体の漏れを阻止している。
【0019】
図3及び
図4は、光源装置19及び筐体封鎖部材32を軸方向に分解してそれぞれ軸方向一端側及び他端側から見た分解斜視図である。
図5Aは、
図1において軸方向に拡径部124及びアウタカバー14を含む範囲の拡大図、
図5Bは、
図5Aにおいて中心軸Rxに対して上側半部の拡大図である。
【0020】
図3~
図5Bにおいて、光源装置19及び筐体封鎖部材32は、拡径部124内にそれぞれ一端側及び他端側の配列でかつそれらの中心軸を中心軸Rxに揃えて、収納されている。光源装置19は、軸方向に一端側から他端側へ順番に、遮蔽リング20、Oリング191、石英ガラス22、リフレクタ24、UV-LED26、基板28及び放熱カバー30に分解される。
【0021】
光源装置19において、UVを出射する側及びその反対側を適宜、それぞれ表面側及び裏面側ということにする。光源装置19は、表面側及び裏面側をそれぞれ流体殺菌装置10の軸方向の一端側及び他端側に向けている。Oリング191は、石英ガラス22の周部とリフレクタ24の表面側の環状段部との間に嵌着され、シールを行っている。石英ガラス22とOリング191は、流路管としての直管18の他端側開口を封鎖する開口封鎖部材を構成する。
【0022】
リフレクタ24は、遮蔽リング20と共に、紫外線耐性を有する材料によって構成される。リフレクタ24は、反射面241、張出し面242、周面243及び凹所244を有している。反射面241は、リフレクタ24の内周側において裏面側から表面側に向かって径を漸増するテーパに形成されている。張出し面242は、反射面241の周縁から径方向外側に張出している。周面243は、円柱側面の形状で形成され、張出し面242の径方向外側端から軸方向の他端の方へ延在している。凹所244は、リフレクタ24の裏面の周辺部に開口して形成されている。
【0023】
リフレクタ24は、裏面側(
図4)において、円周端面247、及び円周端面247の内周に沿ってかつ奥にへこんで形成されている環状段部248を有している。
【0024】
複数(図示の例では2個)のUV-LED26と複数の電気部品27は、それぞれ基板28の表面側の中心部及び周辺部に実装されている。UV-LED26は、リフレクタ24の裏面側からテーパ形状の反射面241内に露出し、電気部品27は、リフレクタ24の裏面の凹所244に収納されている。円形の基板28の周縁には、対向する1対の凹所281と1対の凹所282とが形成されている。
【0025】
UV-LED26が出射するUVは、流体の殺菌に効力の高い深紫外線に属し、波長域が例えば100~400nmの範囲となっている。特に、紫外線波長領域のうち、波長が100~280nmのUVCは特に殺菌効果が高いのでより好ましい。
【0026】
放熱カバー30は、金属製であり、裏面側に筒部301を有している。筒部301には、基板28の電気部品27への配線であるハーネス(図示せず)が挿通されている。1対の突起302は、放熱カバー30の表面側に形成され、基板28の1対の凹所282に嵌合している。Oリング192(
図5A)は、放熱カバー30の内周と、周面243の軸方向他端側の環状段部の外周との間に嵌着されている。
【0027】
筐体封鎖部材32は、内面側に、周方向に等角度間隔で形成されている複数の隆起としてのスペーサ320と、周方向に180°離れた関係にあるスペーサ320の隆起頂面に形成されている凸部321とを有している。円弧状突出縁324は、リフレクタ24の周面243の外側に嵌合している。
【0028】
ハーネス孔322は、筐体封鎖部材32を軸方向に貫通している。ハーネス孔322には、Oリング193が周部に嵌められている筒部301が嵌入されている。凸部321は、別種の流体殺菌装置との部品共通化のために形成されているものであり、この流体殺菌装置10では省略可能である。なぜなら、放熱カバー30と筐体封鎖部材32との周方向の位置決めは、筒部301とハーネス孔322との嵌合により達成されるからである。
【0029】
筐体封鎖部材32は、裏面側に、封鎖部325と、封鎖部325から中心軸Rxに沿って軸方向の他端側に突出するアウトレット326とを有している。アウトレット326は、アウタカバー14の開口142の内周側を通過して、突出端においてアウタカバー14の外側に達している。
【0030】
図5A及び
図5Bにおいて、遮蔽リング20は、軸方向の一端側の環状端面を拡径部124の内周に、Oリング196を用いて嵌着されている。遮蔽リング20は、軸方向一端側及び他端側の内周側にそれぞれ円柱側面部202及びテーパ部201を有している。軸方向において、遮蔽リング20の一端側の端の位置P1、テーパ部201の小径側の端の位置P2、テーパ部201の大径側の端の位置P3、切欠き181の終端の位置(軸方向の一端の位置)Q1、及び切欠き181の始端位置(軸方向の他端の位置)、すなわち直管18の他端位置Q2について、図示の例では、軸方向に一端側から他端側の方へ順番に、P1、Q1、P2、P3(=Q2)の配置となっている。しかしながら、P1とQ1とは軸方向の同一位置(P1=Q1)であることが好ましい。なぜなら、切欠き181の全体がテーパ部201に露出して、切欠き181の有効面積が増大するとともに、テーパ部201の一端側と直管18の外周面との間に横断面が三角形の空間が形成されて、当該三角形の空間に被殺菌流体が滞留することを防止できるからである。
【0031】
図5A及び
図5Bにおいて、Fnは流体殺菌装置10における被殺菌流体の流れを示している。導出流路35は、直管18の切欠き181から径方向の外側に導出されてくる被殺菌流体を流体殺菌装置10の外に導出する通路として、流体殺菌装置10内の光源装置19と、遮蔽リング20のテーパ部201、拡径部124、又は筐体封鎖部材32の封鎖部325の内面との間の空間に形成されている。導出流路35は、被殺菌流体の流れ方向に順番に第1流路部351、第2流路部352、第3流路部353、第4流路部354及び第5流路部355を有している。第1流路部351、第2流路部352及び第3流路部353は、軸方向視でいずれも環状の形状を有している。第4流路部354及び第5流路部355は、軸方向視で円形の形状を有している。
【0032】
第1流路部351は、軸方向にテーパ部201と張出し面242との間に挟まれた空間に形成され、導出流路35の最上流部分として切欠き181から導出した直後の被殺菌流体を下流側に導く。第2流路部352は、張出し面242と周面243との境界のコーナ部とテーパ部201との間の通過部として形成されている。第3流路部353は、拡径部124と周面243との間に環状に形成されている。第4流路部354は、光源装置19の裏面と筐体封鎖部材32の内面との間に軸方向の間隙として形成されている。
【0033】
(材料)
以下は、流体殺菌装置10を構成している各部品の材料の一例である。
(a)筐体(筐体本体12及びアウタカバー14):PC(ポリカーボネート)やPOM(ポリアセタール)等のエンジニアリングプラスチック
(b)遮蔽体15、整流板16、直管18、遮蔽リング20及びリフレクタ24:PTFE(ポリテトラフルオロエチレン4フッ化エチレン樹脂)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、又はPVF(ポリフッ化ビニル)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等の被殺菌流体及びフッ素樹脂
(c)放熱カバー30:金属
【0034】
上記(b)の材料は、上記(a)の材料より紫外線耐性及びUVに対する反射率が高い材料として選択されている。なお、(a)の材料は、金属よりも被殺菌流体に対する耐腐食性の高い材料として選択されている。遮蔽体15及び遮蔽リング20について上記(b)の材料を選択した理由は、遮蔽体15及び遮蔽リング20がPTFEに軽度の加工を施した部材で構成されているため、簡便な加工で製造することのできる材料とするためである。
【0035】
(作用)
被殺菌流体は、不図示の圧送ポンプから流体殺菌装置10に圧送され、筐体本体12のインレット123、遮蔽体15のテーパ部151及び整流板16の整流孔162を経て直管18の殺菌室182内に導入される。整流板16が通孔無しの中央部161を有している理由は、被殺菌流体を整流板16の整流孔162に伴って整流化するとともに、殺菌室182における流速を、殺菌室182の径方向位置での流速を均一化させるためである。
【0036】
UV-LED26は、UVを、光源装置19の軸方向に石英ガラス22に向けて出射する。UV-LED26から出射した紫外線のうち、径方向に広がって反射面241に照射された紫外線は、反射面241で反射して中心軸Rxの方に反射される。紫外線は、石英ガラス22を通過して、殺菌室182内の被殺菌流体に照射される。これにより、被殺菌流体は、殺菌される。
【0037】
被殺菌流体は、石英ガラス22の表面に衝突することにより、向きを直管18の軸方向から径方向の外向きに変化し、切欠き181から直管18の外へ出る。複数の切欠き181の合計の流通断面積は、殺菌室182の流通断面積より小さいので、被殺菌流体の流速は、切欠き181において増大する。そして、被殺菌流体の流速は、テーパ部201によって更に増大する。
【0038】
図1では、流体殺菌装置10は、横置き(長手方向を水平方向に揃える置き方)になっているが、例えば、インレット123及びアウトレット326をそれぞれ下及び上にした縦置き(長手方向を鉛直方向に揃える置き方)で使用することが可能である。この場合、流体殺菌装置10を装備するウォータサーバ等の装備機器が停止するのに伴い、圧送ポンプの作動も停止し、直管18の上側部分に空気が残る。この残存空気は、次に圧送ポンプが作動開始した時、速やかに外に排出されることが好ましい。なぜなら、空気は、UVの強度を弱める原因になるからである。
【0039】
前述したように、被殺菌流体の流速は、切欠き181において増大するので、流体殺菌装置10において、直管18の上部、すなわち切欠き181の高さに残存していた空気は、長く残存することなく、高速化した被殺菌流体により速やかかつ円滑に直管18の外へ排出される。
【0040】
一方、石英ガラス22から殺菌室182に出射したUVのうち、径方向の外側に大きく広がったものは、切欠き181から直管18の外に出射する。以下、直管18の内周側から切欠き181に進入したUVを「外漏れUV」ともいう。
【0041】
前述したように、軸方向において、遮蔽リング20の一端側の位置P1、円柱側面部202とテーパ部201との境界の位置P2、遮蔽リング20の開口端の位置P3、切欠き181の終端の位置Q1、切欠き181の始端位置、すなわち直管18の他端位置Q2について、軸方向の位置関係が前述のように規定されている結果、外漏れUVは、流体殺菌装置10により遮断されて、筐体本体12の内面への照射が阻止される。すなわち、外漏れUVは、全量が遮蔽リング20のテーパ部201に照射して、径方向内側に反射するか、切欠き181の一端側の一部を介して円柱側面部202へ反射して、直ちに直管18内に戻り、残りは、遮蔽リング20のテーパ部201に照射して、反射する。
【0042】
一方、被殺菌流体は、第1流路部351を通過した後、テーパ部201とリフレクタ24のコーナ部との間に挟まれた第2流路部352を通過する。外漏れUVのうちテーパ部201に照射したものは、テーパ部201で反射した後、反射先が(a)直管18の軸方向の他端部の周壁の切欠き181、(b)直管18の軸方向の他端部の周壁のうち切欠き181が形成されていない部分、及び(c)張出し面242の3つに分かれる。外漏れUVのうち、反射先が(a)のものは、切欠き181を通過して直管18内に戻り、殺菌室182の被殺菌流体の再殺菌に寄与する。外漏れUVのうち、反射先が(b)及び(c)のものは、反射先で再度反射し、強度が十分に弱まるまで、テーパ部201とリフレクタ24との間を繰り返し、再反射し、第1流路部351及び第2流路部352における被殺菌流体の殺菌に寄与する。
【0043】
テーパ部201は、外漏れUVがテーパ部201とリフレクタ24との交互の繰り返し反射で、第2流路部352の下流側の第3流路部353へ抜けることなく、第1流路部351及び第2流路部352に留まるか、最終的に切欠き181を介して殺菌室182へ戻るように、テーパ角の値又は輪郭形状に設定されている。
【0044】
被殺菌流体は、第2流路部352を通過した後、リフレクタ24の周面243と拡径部124の内周面との間の環状の第3流路部353を軸方向に流れ、さらに、その後、封鎖部325の内面に当たって、進行方向を径方向の内側に変える。そして、光源装置19の背面側の第4流路部354に回り込んで、封鎖部325の内面に沿って径方向の中心部としてのアウトレット326の一端側の開口に集合する。第4流路部354は、軸方向に光源装置19の背面と筐体封鎖部材32の封鎖部325との間に挟まれる間隙として形成されている。
【0045】
被殺菌流体は、第4流路部354において光源装置19の放熱カバー30の背面に接触して、放熱カバー30を冷却する。UV-LED26の発熱は、基板28に伝導し、さらに、金属製の放熱カバー30に伝導するので、第4流路部354における被殺菌流体による放熱カバー30の冷却は、UV-LED26の冷却に寄与する。ここで、切欠き181及びテーパ部201によって、被殺菌流体の流速が増大することによって、放熱カバー30の冷却性を向上している。
【0046】
なお、基板28は、金属基板とも呼ばれるもので、放熱を必要とする部品の実装領域は金属となっており、裏面側への熱伝導率が高まる構造になっている。
【0047】
被殺菌流体は、その後、第5流路部355を経て流体殺菌装置10の外に流出する。
【0048】
(リフレクタの変形例)
図6は、変形例のリフレクタ24bの斜視図である。リフレクタ24(
図3及び
図4)に対するリフレクタ24bの相違点は、張出し面242が中心軸に対して垂直ではなく、テーパ部201の形状に合わせたテーパ形状で形成されていること、及び複数の溝245が周方向に等角度間隔でテーパ形状の張出し面242に形成されていることである。
【0049】
この結果、リフレクタ24bの張出し面242は、リフレクタ24の張出し面242よりテーパ部201との間隔を局所的に狭くなることを回避することができる。また、溝245により第1流路部351の流通断面積を十分な大きさに確保することができる。
【0050】
(照度分布の解析)
図7~
図9は、流体殺菌装置10におけるUVの照度分布をシミュレーションで解析した図である。
図7~
図9の照度分布の解析では、UV-LED26から出射したUVの出射強度(輝度)は同一にしている。ただし、照度分布解析の上限は、それぞれ40mw/cm
2、10mw/cm
2及び5mw/cm
2としている。したがって、各照度分布図において、上限以上の照度の位置は、一律に最上段階の領域に属させている。尚、シミュレーションはBreault Research Organization社のASAPを用いて行った。
【0051】
また、
図1及び
図2の説明において、整流板16の中央部161の直管18側は、UVの反射面となっていると説明したが、
図7~
図9の照度分布では、中央部161においてUVは反射しないものと計算している。
【0052】
図7~
図9の照度分布では、上限の照度Luを4等分して、各位置が4段階の照度段階のどの段階に属するかを示している。すなわち、照度をLとすると、第1照度段階は、0≦L<Lu/4、第2照度段階は、Lu/4≦L<Lu/2、第3照度段階は、Lu/2≦L<3・Lu/4、第4照度段階は、3・Lu/4≦Lである。
【0053】
図7から、UV-LED26の出射近辺が30mw/cm
2以上の強い照度であること、及び切欠き181の外周側に、10mw/cm
2~20mwの照度領域があることが分かる。
図8から、テーパ部201の径方向内側部分と遮蔽体15とが2.5mw/cm
2~5.0mwの照度領域であること、
図9から、テーパ部201の最大径側が1.25mw/cm
2~2.5mwの照度領域であることが、分かる。
【0054】
すなわち、
図7~9の照度分布のシミュレーション結果から、テーパ部201を設けることによって、筐体(筐体本体12及びアウタカバー14)の領域へ紫外光が漏れることを防ぎ、紫外線による劣化を抑制できる。
【0055】
(補足)
流体殺菌装置10では、被殺菌流体として水が使用されている。しかしながら、本発明では、被殺菌流体は、水以外の液体であってもよい。
【0056】
流体殺菌装置10は、UVを出射する光源としてUV-LED26を2個、備えている。本発明の流体殺菌装置は、UVを出射する光源は、1個でもよいし、3個以上であってもよい。
【0057】
流体殺菌装置10では、紫外線透過部として石英ガラス22が用いられている。本発明の紫外線透過部は、紫外線を透過し、被殺菌流体に対する耐腐食性があるものであれば、石英ガラス22以外のものを使用することができる。
【0058】
流体殺菌装置10の円筒部122及び拡径部124は、それぞれ本発明の第1筒部及び第2筒部に相当し、それぞれ流路管としての直管18及び光源装置19を収納している。遮蔽リング20は、拡径部124において直管18の切欠き181側の端部に外挿されている。遮蔽リング20のテーパ部201は、直管18の導出口としての切欠き181から外に導出されて来る被殺菌流体の、拡径部124における導出通路を形成するとともに、切欠き181から直管18の外に漏れ出た紫外線を受けて、拡径部124を保護している。
【0059】
流体殺菌装置10が殺菌対象とする被殺菌流体の例として、製氷機の貯水タンクの貯水、送水管や給湯器における送水、ウォータサーバの飲料水、循環装置(チラー)の冷却水、及びドリンクサーバにおける飲料液がある。
【符号の説明】
【0060】
10・・・流体殺菌装置、18・・・直管(流路管)、19・・・光源装置、20・・・遮蔽リング(遮蔽部材)、22・・・石英ガラス(紫外線透過部)、24,24b・・・リフレクタ、26・・・UV-LED(光源)、28・・・基板、30・・・放熱カバー、32・・・筐体封鎖部材、35・・・導出流路、24・・・拡径部、122・・・円筒部(第1筒部)、124・・・拡径部(第2筒部)、114・・・アウタカバー、125・・・ストッパ部、142・・・開口、181・・・切欠き、201・・・テーパ部、202・・・円柱側面部、241・・・反射面、242・・・張出し面、243・・・周面、245・・・溝、325・・・封鎖部、326・・・アウトレット、351・・・第1流路部、352・・・第2流路部、353・・・第3流路部、354・・・第4流路部、355・・・第5流路部。