(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144110
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
B65H 19/12 20060101AFI20241003BHJP
B41J 15/16 20060101ALI20241003BHJP
B65H 23/16 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B65H19/12 B
B41J15/16
B65H23/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024007636
(22)【出願日】2024-01-22
(31)【優先権主張番号】P 2023054604
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】清水 孝吉
【テーマコード(参考)】
2C060
3F064
3F104
【Fターム(参考)】
2C060CB31
3F064EB03
3F064EB06
3F104DA26
(57)【要約】
【課題】印字ヘッドの移行に連動して印字媒体に張力を付与する張力付与部を備えるプリンタにおいて、印字ヘッドの移行に伴う張力付与部による印字媒体の引き戻しを抑制すること。
【解決手段】印字媒体Pに印字する印字ヘッド51と、印字ヘッド51が印字するときに印字媒体Pを印字ヘッド51とで挟持して搬送するプラテンローラ42と、プラテンローラ42よりも搬送方向上流側に設けられる張力付与部60であって、印字ヘッド51がプラテンローラ42に対して離間している第1の位置から印字ヘッド51がプラテンローラ42とで印字媒体Pを挟持している第2の位置への移行に連動して印字媒体Pに張力を付与する張力付与部60と、印字ヘッド51の移行に連動して張力付与部60が印字媒体Pに張力を付与するまでに印字媒体Pの移動を規制する規制手段70と、を備えるプリンタ10。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字媒体に印字する印字ヘッドと、
前記印字ヘッドが印字するときに印字媒体を前記印字ヘッドとで挟持して搬送するプラテンローラと、
前記プラテンローラよりも搬送方向上流側に設けられる張力付与部であって、前記印字ヘッドが前記プラテンローラに対して離間している第1の位置から前記印字ヘッドが前記プラテンローラとで印字媒体を挟持している第2の位置への移行に連動して印字媒体に張力を付与する張力付与部と、
前記移行に連動して前記張力付与部が印字媒体に張力を付与するまでに印字媒体の搬送方向に沿う方向への移動を規制する規制手段と、
を備えるプリンタ。
【請求項2】
前記印字ヘッドは、前記移行において前記張力付与部が印字媒体に張力を付与した後で前記第2の位置に移動し、
前記規制手段は、前記移行において前記張力付与部が印字媒体に張力を付与した後で印字媒体の移動に対する規制を解除する、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記規制手段は、前記印字ヘッドが前記第2の位置に移動すると同時に、あるいは移動した後に、印字媒体に対する規制を解除する、請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記規制手段は、前記印字ヘッドと一体的に前記プラテンローラの軸に平行する第1の軸まわりに回転するカム部と、前記カム部の回転に追従するフォロワ部と、を含み、前記カム部の位相に応じて前記フォロワ部が印字媒体と接触している接触状態と、印字媒体に対して離間している離間状態とを切り替え可能に構成されており、
前記フォロワ部は、前記接触状態において印字媒体を押圧する押圧部を備える、請求項3に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記規制手段は、前記フォロワ部を印字媒体の紙面の法線方向に沿って印字媒体から離れる方向に付勢するばね部材を含んで構成されている、請求項4に記載のプリンタ。
【請求項6】
前記押圧部は、印字媒体と接触する部位が平面状である、請求項3~5のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項7】
前記規制手段は、前記フォロワ部を揺動可能に支持する支持部をさらに含んで構成されている、請求項3~5のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項8】
前記張力付与部は、前記プラテンローラの軸及び前記第1の軸と平行する第2の軸まわりに揺動可能に構成されており、
前記規制手段は、前記印字ヘッドが前記第2の位置に移行する直前まで前記第1の軸まわりの回転トルクにより前記第2の軸まわりに前記張力付与部が回転することを規制し、前記印字ヘッドが前記第2の位置に移行すると同時に、あるいは移行した後に、前記第2の軸まわりに前記張力付与部が回転することに対する規制を解除するように構成されている、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項9】
印字媒体に印字する印字ヘッドと、
前記印字ヘッドが印字するときに印字媒体を前記印字ヘッドとで挟持して搬送するプラテンローラと、
前記プラテンローラの軸に平行する第1の軸まわりに前記印字ヘッドと一体的に揺動可能であり、前記印字ヘッドが前記プラテンローラに対して離間している第1の位置と、前記印字ヘッドが前記プラテンローラとで印字媒体を挟持している第2の位置と、の間を揺動する揺動部と、
前記プラテンローラよりも搬送方向上流側において支持軸のまわりに揺動可能に支持され、前記揺動部が前記第1の位置から前記第2の位置へ移行する間に印字媒体の面に対する接触により印字媒体に対して張力の付与を開始する張力付与部と、
前記揺動部の揺動に連動して所定の軸回りに揺動可能なアーム部材であって、前記張力付与部が印字媒体に張力の付与を開始するまでに印字媒体の搬送経路を構成する面との間で印字媒体を挟み、印字媒体の搬送方向に沿う方向への移動を規制するアーム部材と、
を備えるプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
ロール状に巻かれている印字媒体に印字するプリンタとして、特許文献1に記載されるように、開閉自在の状態で設けられた印字ヘッド部を開放状態から閉止状態にする閉動作に連動して印字媒体に張力を付与するダンパ部(すなわち、張力付与部)を有するプリンタが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のプリンタを用いて印字媒体に対する印字を開始するとき、作業者は、まず、印字ヘッド部を開放状態にしてから印字媒体を媒体供給部から媒体搬送路上おける印字ヘッド部の印字開始位置まで引き出す。その後、作業者は、開放状態の印字ヘッド部の閉動作を行うことで、閉動作に連動して張力付与部で印字媒体に張力を付与してから印字ヘッド部を閉止状態にさせ、印字媒体を印字手段と搬送手段とで挟持させた後で印字を開始する。
上記のプリンタにおいて、張力付与部が印字媒体に張力を付与するとき、媒体供給部から引き出された印字媒体は搬送方向及び搬送方向と逆方向への移動を規制されていない。そのため、上記のプリンタを用いて印字媒体に対する印字を開始する作業において、印字ヘッド部の閉動作に連動して張力付与部が印字媒体に張力を付与することで、印字媒体が搬送方向上流側に引き戻されてしまう虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、印字ヘッドの移行に連動して印字媒体に張力を付与する張力付与部を備えるプリンタにおいて、印字ヘッドの移行に伴う張力付与部による印字媒体の引き戻しを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、
印字媒体に印字する印字ヘッドと、
前記印字ヘッドが印字するときに印字媒体を前記印字ヘッドとで挟持して搬送するプラテンローラと、
前記プラテンローラよりも搬送方向上流側に設けられる張力付与部であって、前記印字ヘッドが前記プラテンローラに対して離間している第1の位置から前記印字ヘッドが前記プラテンローラとで印字媒体を挟持している第2の位置への移行に連動して印字媒体に張力を付与する張力付与部と、
前記移行に連動して前記張力付与部が印字媒体に張力を付与するまでに印字媒体の搬送方向の移動を規制する規制手段と、
を備えるプリンタである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のある態様によれば、印字ヘッドの移行に連動して印字媒体に張力を付与する張力付与部を備えるプリンタにおいて、印字ヘッドの移行に伴う張力付与部による印字媒体の引き戻しを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係るプリンタの斜視図である。
【
図2】第1の実施形態に係るプリンタの内部構造を示す概略配置図である。
【
図3】第1の実施形態に係る印字部の側面図である。
【
図4】第1の実施形態に係る媒体支持機構部の構造を示す斜視図である。
【
図5】第1の実施形態に係るピンチアームの斜視図である。
【
図7】第1の実施形態に係る印字部の、開状態における側面図である。
【
図8】第1の実施形態に係る印字部の、開状態から閉状態に移行している途中における側面図である。
【
図9】第1の実施形態に係る印字部の、閉状態における側面図である。
【
図10】第1の実施形態に係る印字部の、開状態における側面図である。
【
図11】第1の実施形態に係る印字部の、開状態から閉状態に移行している途中における側面図である。
【
図12】第1の実施形態に対する比較形態に係る印字部の、閉状態における側面図である。
【
図13】第1の実施形態に対する比較形態に係る印字部の、開状態における側面図である。
【
図14】第1の実施形態に対する比較形態に係る印字部の、開状態から閉状態に移行している途中における側面図である。
【
図15】第2の実施形態に係る印字部の、閉状態における側面図である。
【
図16】第2の実施形態に係る印字部の、開状態における側面図である。
【
図17】第2の実施形態に係る印字部の、開状態から閉状態に移行している途中における側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に記載する形態は、図面の簡単な説明により説明される図面に限定されるものではない。
【0010】
本発明のある態様の第1の態様は、印字媒体に印字する印字ヘッドと、前記印字ヘッドが印字するときに印字媒体を前記印字ヘッドとで挟持して搬送するプラテンローラと、前記プラテンローラよりも搬送方向上流側に設けられる張力付与部であって、前記印字ヘッドが前記プラテンローラに対して離間している第1の位置から前記印字ヘッドが前記プラテンローラとで印字媒体を挟持している第2の位置への移行に連動して印字媒体に張力を付与する張力付与部と、前記移行に連動して前記張力付与部が印字媒体に張力を付与するまでに印字媒体の搬送方向に沿う方向への移動を規制する規制手段と、を備えるプリンタである。
【0011】
本発明のある態様の第1の態様によれば、印字ヘッドの移行に連動して印字媒体に張力を付与する張力付与部を備えるプリンタにおいて、印字ヘッドの移行に伴う張力付与部による印字媒体の引き戻しを抑制することができる。
【0012】
本発明のある態様の第2の態様は、前記印字ヘッドは、前記移行において前記張力付与部が印字媒体に張力を付与した後で前記第2の位置に移動し、前記規制手段は、前記移行において前記張力付与部が印字媒体に張力を付与した後で印字媒体の移動に対する規制を解除する、前記第1の態様に記載のプリンタである。
【0013】
本発明のある態様の第2の態様によれば、印字媒体が張力付与部で張力を付与された後に印字ヘッド及びプラテンローラで挟持される場合において、張力付与部による印字媒体の引き戻しを抑制することができる。
【0014】
本発明のある態様の第3の態様は、前記印字ヘッドが前記第2の位置に移動すると同時に、あるいは移動した後に、印字媒体に対する規制を解除する、前記第2の態様に記載のプリンタである。
【0015】
本発明のある態様の第3の態様によれば、印字ヘッドが第2の位置に移動する前に規制手段が印字媒体に対する規制を解除する構成と比して、張力付与部による印字媒体の引き戻しを抑制することができる。
【0016】
本発明のある態様の第4の態様は、前記規制手段は、前記印字ヘッドと一体的に前記プラテンローラの軸に平行する第1の軸まわりに回転するカム部と、前記カム部の回転に追従するフォロワ部と、を含み、前記カム部の位相に応じて前記フォロワ部が印字媒体と接触している接触状態と印字媒体に対して離間している離間状態とを切り替え可能であるように構成されており、前記フォロワ部は、前記接触状態において印字媒体を押圧する押圧部を備える、前記第3の態様に記載のプリンタである。
【0017】
本発明のある態様の第4の態様によれば、印字媒体が張力付与部で張力を付与された後に印字ヘッド及びプラテンローラで挟持される場合において、簡易な構成で張力付与部による印字媒体の引き戻しを抑制することができる。
【0018】
本発明のある態様の第5の態様は、前記規制手段は、前記フォロワ部を印字媒体の紙面の法線方向に沿って印字媒体から離れる方向に付勢するばね部材を含んで構成されている、前記第4の態様に記載のプリンタである。
【0019】
本発明のある態様の第5の態様によれば、規制手段がカム部と及びフォロワ部を含んで構成されている場合において、簡易な構成で印字媒体とフォロワ部との接離状態を切り替えることができる。
【0020】
本発明のある態様の第6の態様は、前記押圧部は、印字媒体と接触する部位が平面状である、前記第3から前記第5の態様のいずれか一態様に記載のプリンタである。
【0021】
本発明のある態様の第6の態様によれば、印字媒体と点接触して、または線接触して押圧する場合と比して、押圧部の接触に伴って印字媒体に付与される負荷を軽減することができる。
【0022】
本発明のある態様の第7の態様は、前記規制手段は、前記フォロワ部を回転可能に支持する支持部をさらに含んで構成されている、前記第3態様から前記第6の態様のいずれか一態様に記載のプリンタである。
【0023】
本発明のある態様の第7の態様によれば、フォロワ部を印字媒体の印字面の法線方向に沿って往復可能に支持する場合と比して、簡易な構成でフォロワ部を設けることができる。
【0024】
本発明のある態様の第8の態様は、前記張力付与部は、前記プラテンローラの軸及び前記第1の軸と平行する第2の軸まわりに揺動可能に構成されており、前記規制手段は、前記印字ヘッドが前記第2の位置に移行する直前まで前記第1の軸まわりの回転トルクにより前記第2の軸まわりに前記張力付与部が回転することを規制し、前記印字ヘッドが前記第2の位置に移行すると同時に、あるいは移行した後に、前記第2の軸まわりに前記張力付与部が回転することに対する規制を解除するように構成されている、前記第1の態様に記載のプリンタである。
【0025】
本発明のある態様の第8の態様によれば、印字媒体が張力付与部で張力を付与される前に印字ヘッド及びプラテンローラで挟持される場合において、張力付与部による印字媒体の引き戻しを抑制することができる。
【0026】
本発明のある態様の第9の態様は、印字媒体に印字する印字ヘッドと、前記印字ヘッドが印字するときに印字媒体を前記印字ヘッドとで挟持して搬送するプラテンローラと、前記プラテンローラの軸に平行する第1の軸まわりに前記印字ヘッドと一体的に揺動可能であり、前記印字ヘッドが前記プラテンローラに対して離間している第1の位置と、前記印字ヘッドが前記プラテンローラとで印字媒体を挟持している第2の位置と、の間を揺動する揺動部と、前記プラテンローラよりも搬送方向上流側において支持軸のまわりに揺動可能に支持され、前記揺動部が前記第1の位置から前記第2の位置へ移行する間に印字媒体の面に対する接触により印字媒体に対して張力の付与を開始する張力付与部と、前記揺動部の揺動に連動して所定の軸回りに揺動可能なアーム部材であって、前記張力付与部が印字媒体に張力の付与を開始するまでに印字媒体の搬送経路を構成する面との間で印字媒体を挟み、印字媒体の搬送方向に沿う方向への移動を規制するアーム部材と、を備えるプリンタである。
【0027】
本発明のある態様の第9の態様によれば、印字ヘッドの移行に連動して印字媒体に張力を付与する張力付与部を備えるプリンタにおいて、印字ヘッドの移行に伴う張力付与部による印字媒体の引き戻しを抑制することができる。
【0028】
以下、本発明の一例としての実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0029】
本発明に係るプリンタは、ロール状に巻かれた印字媒体Pの印字面に文字、記号、図形またはバーコード等のような印字情報を印字して、筐体の一方を向く面に設けられている排出口から筐体の外側に排出するプリンタである。
以下に示す説明では、排出口が設けられている筐体を正面として、プリンタを正面視したときの幅方向(横方向)、奥行方向(前後方向)、上下方向(高さ方向)を夫々、X方向、Y方向、Z方向と記載する。また、幅方向、奥行方向、上下方向のそれぞれ一方側と他方側を区別する必要がある場合は、プリンタを正面視したときの右側を-X側、左側を+X側、奥側を-Y側、手前側を+Y側、上側を+Z側、下側を-Z側と記載する。
【0030】
印字媒体Pは、帯状の連続紙である。印字媒体Pは、例えば一方向に延びる長尺状の台紙と、該台紙の一方の面に長手方向に沿って所定の間隔で複数設けられたラベルと、を含んで構成された台紙付きラベルであってもよい。印字媒体Pは、例えば一方向に延びる長尺状のラベルで構成された台紙無しラベルであってもよい。
【0031】
(1)第1の実施形態
第1の実施形態に係るプリンタ10は、
図1及び
図2に示されるように、筐体20と、供給部30と、印字部40と、インクリボン部32と、を備える。プリンタ10は、プリンタ10の各部を制御する制御部(図示省略)をさらに備える。
筐体20は、プリンタ10の内部を覆う機能を有する。筐体20の手前側の正面には、
図1に示されるように、排出口20aが設けられている。筐体20については詳細を後述する。
供給部30は、
図2に示されるように、筐体20の内側の奥側に配置されており、ロール状に巻かれた印字媒体Pを保持して印字部40に供給する機能を有する。供給部30は、印字媒体Pを保持する保持軸30aを含んで構成されている。
印字部40は、筐体20の内側であって供給部30の前方に配置されており、供給部30から供給された印字媒体Pに印字して、筐体20の排出口20aに向けて搬送する機能を有する。印字部40は、後述する印字ヘッド51及びプラテンローラ42で印字媒体Pを挟持して搬送する。印字ヘッド51及びプラテンローラ42で印字媒体Pを挟持している領域は、ニップ領域NPという。印字部40については詳細を後述する。
インクリボン部32は、筐体20の内側であって印字部40の上方に配置されており、インクリボン(図示省略)を保持してニップ領域NPに向けて供給する機能を有する。インクリボン部32は、ニップ領域NPに向けて供給されるインクリボン(図示省略)を保持するリボン保持部32aと、リボン保持部32aから供給されたインクリボン(図示省略)をニップ領域NPから巻き取って回収するリボン回収部32bと、を有する。
【0032】
<筐体20>
筐体20は、
図1に示されるように、第1の収容部21と、第2の収容部22と、底部パネル23と、を備える。
【0033】
第1の収容部21は、プリンタ正面から見て左側の矩形状の部位であり、制御部(図示省略)を覆う機能を有する。第1の収容部21の正面には、操作パネル21aが設けられている。操作パネル21aは、ユーザの操作入力を受け付ける表示パネルを含む。
第2の収容部22は、プリンタ正面から見て第1の収容部21の右側に設けられた矩形状の部位であり、供給部30と、印字部40と、インクリボン部32と、を覆う機能を有する。第2の収容部22の正面には、排出口20aが設けられている。第2の収容部22は、第1の収容部21の天井パネル21bに設けられたY軸回りの回転軸を有するヒンジ部21cと連結されており、ヒンジ部21cまわりに揺動可能である。第2の収容部22は、ヒンジ部22a回りに天井パネル21bの外面側に揺動することで、筐体20の状態を、プリンタ10の内部を露出させるように開放されている露出状態にさせる。なお、
図1に示されるように第2の収容部22がプリンタ10の内部を外部から遮蔽するように閉じている状態を遮蔽状態という。
底部パネル23は、第1の収容部21及び第2の収容部22の下方を覆う板状の部材である。
排出口20aは、第2の収容部22の遮蔽状態において、底部パネル23に対して上方に離間している位置に設けられている。
【0034】
筐体20の内側の空間は、筐体20の内側に設けられたインナーフレーム24(
図2参照)によって第1の収容部21側(+X側)の空間と第2の収容部22側(-X側)の空間とに大別されている。インナーフレーム24は、第2の収容部22側-X側)を向く壁面24aを有する。
インナーフレーム24の壁面24aには、
図2に示されるように、供給部30の保持軸30aと、後述するヘッド部50を支持する支持軸53と、張力付与部60を支持する支持軸64と、が+X側に向かって延びるように設けられている。
本実施形態においては、保持軸30aと、支持軸53、64と、が上側から下側に向かって順に配置されている。また、本実施形態においては、保持軸30aと、支持軸53、64と、が奥側から手前側に向かって順に配置されている。
【0035】
<印字部40>
印字部40は、
図3に示されるように、プラテンローラ42と、媒体支持機構部44と、ヘッド部50と、張力付与部60と、を備える。印字部40は、供給部30から供給された印字媒体Pの移動を規制する規制手段70を有する。
【0036】
ヘッド部50は、印字部40の上側の部分にあり、支持軸53まわりに揺動可能である。印字部40は、ヘッド部50の揺動によって、後述する印字ヘッド51がプラテンローラ42に対して離間している開状態(
図10参照)と、印字ヘッド51がプラテンローラ42とニップ領域NPを形成する閉状態と、に切替可能である(
図3参照)。印字部40は、開状態と閉状態とを切り替えるための作業者の操作を受け付ける操作部(図示省略)をさらに備える。ヘッド部50については詳細を後述する。
【0037】
プラテンローラ42は、
図3に示されるように、プラテンローラ42の中心軸を有する軸材42aと、軸材42aの外周を覆う円筒状の外周部42bと、を含んで構成されている。プラテンローラ42は、軸材42aを媒体支持機構部44に回転可能に支持されており、図示しないモータを含んで構成されている駆動手段と連結されている。軸材42aは、該駆動手段の駆動によって、外周部42bと一体的に回転可能である。
外周部42bは、エラストマで形成されていることが好ましい。
プラテンローラ42は、外周部42bとヘッド部50の後述する印字ヘッド51とで供給部30から印字部40に供給された印字媒体Pを挟持した状態で軸材42aまわりに回転することで、印字媒体Pを排出口20aに向けて搬送する。プラテンローラ42の外周部42bは、印字ヘッド51とで印字媒体Pを挟持して搬送するとき、印字ヘッド51によって弾性変形していることが好ましい。プラテンローラ42は、印字部40に供給された印字媒体Pの印字面とは反対側の面と接触する。プラテンローラ42は、本実施形態において、印字部40に供給された印字媒体Pに対する下側に設けられている。
【0038】
{媒体支持機構部44}
媒体支持機構部44は、
図2に示されるように底部パネル23上に設けられ、排出口20aに向かって搬送される印字媒体Pを支持するように構成されている。プラテンローラ42の軸材42aは、媒体支持機構部44に回転可能に支持される。媒体支持機構部44は、
図3に示されるように、プラテンローラ42よりも搬送方向上流側に設けられ、印字部40に供給された印字媒体Pの経路を規制する規制部46を有する。媒体支持機構部44は、
図4に示されるように、ピンチアーム71を支持する支持部45(詳細は後述する)を有する。
【0039】
規制部46は、
図3に示されるように、印字部40に供給された印字媒体Pに対して下側に設けられた下側規制部47と、該印字媒体Pを挟んで下側規制部47とは反対側に設けられた上側規制部48と、を含んで構成されている。下側規制部47及び上側規制部48は夫々、
図2及び
図6に示されるように、閉状態において形成されるニップ領域NPに向けて延びており、該印字媒体Pの紙面に対向している下側規制面47a及び上側規制面48aを有する。下側規制部47及び上側規制部48は、下側規制面47a及び上側規制面48aを有することで、プラテンローラ42に向けて供給部30から供給される印字媒体Pの搬送経路を規定する。換言すると、下側規制面47a及び上側規制面48aは、印字媒体Pの搬送経路を構成する。また、下側規制部47及び上側規制部48は、閉状態において印字ヘッド51とプラテンローラ42とで挟持されて搬送される印字媒体Pの搬送に伴うばたつきを抑制する機能を有する。
【0040】
本実施形態において、下側規制部47の下側規制面47aは、上側規制部48の上側規制面48aよりも搬送方向上流側に延びるように形成されている。
【0041】
本実施形態において、下側規制部47の下側規制面47a及び上側規制部48の上側規制面48aは、手前側に行くにつれて高くなるように傾斜して設けられている。
【0042】
{ヘッド部50}
ヘッド部50は、
図3に示されるように、プラテンローラ42及び媒体支持機構部44の上方に設けられている。ヘッド部50は、印字ヘッド51と、印字ユニット52と、リンク部54と、カム部56と、を含んで構成されている。
【0043】
印字ヘッド51は、
図3に示されるように、プラテンローラ42よりも上側に配置されているサーマルヘッドであり、横方向(つまり、印字媒体Pの紙幅方向)に複数並んで設けられている発熱体(図示省略)を含んで構成されている。印字ヘッド51は、閉状態において、印字媒体Pと、リボン保持部32aから印字媒体Pの印字面側に供給されたインクリボン(図示省略)とを、プラテンローラ42とで挟持する。印字ヘッド51は、閉状態において、複数の発熱体(図示省略)を発熱させることで印字媒体Pの印字面にインクリボン(図示省略)の印字用インクを熱転写させる。このとき、印字ヘッド51は、制御部(図示省略)によって複数の発熱体(図示省略)を印字情報に対応するように選択的に発熱させることで、該印字情報を印字用インクで印字媒体Pに熱転写して印字する。
【0044】
印字ユニット52は、
図3に示されるように、印字ヘッド51を保持する部材であり、支持軸53によって支持軸53まわりに揺動可能に支持されている。支持軸53は、媒体支持機構部44の上側規制部48よりも奥側(-Y側)でプラテンローラ42の軸材42aと平行するように配置されている。支持軸53は、第1の軸の一例である。印字ユニット52は、横方向(X方向)の端部に、横方向を向いており奥側(-Y側)の終端部を有する1対の板材52aを有する。印字ユニット52は、1対の板材52aの奥側(-Y側)の終端部を支持軸53によって支持されている。
印字ユニット52は、支持軸53まわりに印字ヘッド51と一体的に、印字部40の開状態及び閉状態に対応する2つの位置の間を揺動する(
図10及び
図11参照)。すなわち、印字ユニット52は、印字ヘッド51がプラテンローラ42に対して離間している第1の位置と、印字ヘッド51がプラテンローラ42で印字媒体Pを挟持している第2の位置との間で、支持軸53まわりに揺動する。印字ユニット52は、揺動部の一例である。
【0045】
リンク部54は、
図3に示されるように、+X側の板材52aの終端部のまわりで、支持軸53から印字ヘッド51とは反対方向に延びるように設けられた部材である。リンク部54は、-X側を向く面と、該面の支持軸53側とは反対側の終端部で-X側に突出するように形成されたピン54aと、を有する。リンク部54及びピン54aは、印字ユニット52と一体的に支持軸53まわりに揺動可能な構成を有する。
【0046】
カム部56は、
図3に示されるように、+X側の板材52aの終端部のまわりで、支持軸53から媒体支持機構部44の下側規制面47a側に向かって突出するように設けられた部材である。カム部56は、印字ユニット52と一体的に支持軸53まわりに揺動可能な構成を有する。カム部56の詳細については後述する。
【0047】
{張力付与部60}
張力付与部60は、
図3に示されるように、プラテンローラ42よりも搬送方向上流側に設けられており、供給部30からニップ領域NPに向けて供給された印字媒体Pの、媒体支持機構部44よりも搬送方向上流側の部分と接触して張力を付与する機能を有する。
張力付与部60は、媒体支持機構部44よりも奥側(-Y側)であってヘッド部50よりも下方(-Z側)で、支持軸64まわりに揺動可能に支持されている。張力付与部60は、ヘッド部50の開状態または閉状態のいずれか一方から他方への移行に連動して支持軸64まわりの姿勢を移行させるように構成されている(
図10及び
図11参照)。
具体的には、張力付与部60は、
図10に示されるように、ヘッド部50が開状態のとき、ヘッド部50の開状態(第1の位置)に対応する第1の姿勢となるように構成されている。
また、張力付与部60は、
図3に示されるように、ヘッド部50が閉状態のとき、ヘッド部50の閉状態(第2の位置)に対応する第2の姿勢となるように構成されている。
図2及び
図3に示されるように、張力付与部60が第2の姿勢となっているとき、張力付与部60の印字媒体Pと接触する部位は、張力付与部60が第1の姿勢となっているとき(
図10参照)と比して、帯状の印字媒体Pが供給部30から引き出される位置から遠ざかるように構成されている。すなわち、張力付与部60は、第1の姿勢から第2の姿勢への移行に伴って、供給部30からニップ領域NPに向けて供給される印字媒体Pにより大きい張力を付与するように構成されている。
張力付与部60は、支持ユニット62と、アウター部66と、インナー部68と、を含んで構成されている。
【0048】
支持ユニット62は、
図3に示されるように、アウター部66を保持する部材であり、支持軸64によって支持軸64まわりに揺動可能に支持されている。支持軸64は、ヘッド部50の支持軸53よりも下側(-Z側)でプラテンローラ42の軸材42aと平行するように配置されている。支持軸64は、第2の軸の一例である。支持ユニット62は、横方向(X方向)の端部に1対の板材62aを有する。1対の板材62aは、横方向で対向しており、前後方向(Y方向)の終端部を有する。支持ユニット62は、1対の板材62aの手前側(+Y側)の終端部において支持軸64によって支持されている。
【0049】
支持ユニット62は、支持軸64に設けられた図示しないトーションばねによって、支持軸64を中心にして
図3における反時計回りに揺動する方向に付勢されている。
【0050】
左側(+X側)の板材62aの板面には、
図7に示されるように、ヘッド部50のリンク部54のピン54aと係合する溝部63が形成されている。
溝部63は、印字部40の開状態及び閉状態に対応する2つの位置の間でヘッド部50と一体的に揺動するリンク部54及びピン54aの揺動を妨げないように湾曲した形状を有する。
具体的には、溝部63は、
図7に示されるように、印字部40が開状態のときにピン54aが配置される端点63aと、印字部40が閉状態のときにピン54aが配置される端点63bと、を有する。印字部40が開状態であってヘッド部50のピン54aが溝部63の端点63aに位置するとき、張力付与部60は第1の姿勢となる。また、印字部40が閉状態であってヘッド部50のピン54aが溝部63の端点63bに位置するとき、張力付与部60は第2の姿勢となる(
図9参照)。
溝部63は、端点63aと端点63bとの間に溝位置63cを有する。また、溝部は、溝位置63cと端点63bとの間に溝位置63dを有する。溝部63の端点63a及び溝位置63cとの間の部位は湾曲しており、この部位を湾曲部C1という。溝部63の溝位置63c及び溝位置63dとの間の部位は湾曲しており、この部位を湾曲部C2という。溝部63の溝位置63d及び端点63bとの間の部位は湾曲しており、この部位を湾曲部C3という。溝部63は、湾曲部C1と湾曲部C2とが溝位置63cで不連続に繋がっていて且つ湾曲部C2と湾曲部C3とが溝位置63dで不連続に繋がっている形状を有する。
湾曲部C1は、ピン54aが湾曲部C1を移動するとき、図示しないトーションばねによって付勢されている支持ユニット62の姿勢を、第1の姿勢に規制する形状を有する(
図7参照)。換言すると、支持ユニット62は、ピン54aが溝部63の端点63aと溝位置63cとの間に位置するとき、第1の姿勢となる。
湾曲部C2は、ピン54aが湾曲部C2を移動するとき、支持ユニット62の姿勢を、第1の姿勢と第2の姿勢との間の姿勢であって、ピン54aの湾曲部C2における位置に応じた姿勢に規制する形状を有する(
図8参照)。
湾曲部C2は、ピン54aが溝位置63cから移動して溝位置63dに到達したとき、支持ユニット62の姿勢を、第2の姿勢に規制する形状を有する。
湾曲部C3は、ピン54aが湾曲部C3を移動するときにおいて、支持ユニット62の姿勢を、第2の姿勢に規制する形状を有する(
図9参照)。換言すると、支持ユニット62は、ピン54aが溝部63の端点63bと溝位置63dとの間に位置するとき、第2の姿勢となる。すなわち、ヘッド部50の印字ユニット52は、第1の位置から第2の位置への移行において、支持ユニット62が第2の姿勢となって印字媒体Pに張力を付与した後で第2の位置に移動する。
このように、支持ユニット62は、ヘッド部50のピン54aと係合する溝部63を有することで、ヘッド部50の開状態または閉状態のいずれか一方から他方への移行に連動して支持軸64まわりに揺動可能に構成されている。
【0051】
支持ユニット62は、アウター部66を支持する横方向(X方向)に延びる支持軸65を備えている。
【0052】
アウター部66は、供給部30からニップ領域NPに向けて供給された印字媒体Pの、媒体支持機構部44よりも搬送方向上流側の部分と接触して張力を付与する部材である。アウター部66は、支持ユニット62の支持軸65によって支持されている。
アウター部66は、
図3に示されるように、横方向(X方向)から見て支持軸65から奥側(-Y側)に延びており、奥側(-Y側)の終端部で印字媒体Pと接触する。
アウター部66は、支持軸65と奥側(-Y側)の終端部との間に配置された支持軸67を備えている。支持軸67は、横方向(X方向)に延び、インナー部68を支持する。
【0053】
インナー部68は、供給部30からニップ領域NPに向けて供給された印字媒体Pの、アウター部66の奥側(-Y側)の終端部よりも搬送方向下流側の部分と接触して張力を付与する部材である。インナー部68は、アウター部66の支持軸67によって支持されている。
インナー部68は、
図3に示されるように、横方向(X方向)から見て支持軸67から手前側(+Y側)に延びており、手前側(+Y側)の終端部で印字媒体Pと接触する。
【0054】
アウター部66及びインナー部68は、
図3、
図10、
図11に示されるように、支持軸64まわりに揺動する支持ユニット62と一体的に揺動可能に構成されている。
【0055】
{規制手段70}
規制手段70は、
図3に示されるように、ヘッド部50に設けられたカム部56と、媒体支持機構部44に設けられたピンチアーム71及び支持部45(
図4参照)と、を含んで構成されている。
【0056】
{カム部56}
カム部56は、
図3に示されるように、板材52aの終端部のまわりで、支持軸53から媒体支持機構部44の下側規制面47a側に向かって突出するように設けられており、印字ユニット52と一体的に支持軸53まわりに回転する部材である。
【0057】
カム部56の、支持軸53から下側規制面47a側に向かう突出量に係る構成を以下に示す。支持軸53を基準としたカム部56の該突出量は、ヘッド部50が第1の位置と第2の位置との間に位置するときにおける該突出量よりも、ヘッド部50が第1の位置または第2の位置に位置するときにおける該突出量が小さくなるように構成されている。
具体的には、カム部56は、X方向から見て中心線が支持軸53の中心を通っており、支持軸53に向かって脚部56aを拡げている略等脚台形の形状を有する。
【0058】
カム部56は、ヘッド部50が開状態(第1の位置)または閉状態(第2の位置)のいずれか一方から他方に揺動して移行するときにおいて後述するピンチアーム71と常に接触するように構成されている。カム部56は、ヘッド部50の揺動に伴う位相の変化に応じてピンチアーム71と接触する部位を移行させることでピンチアーム71の位置を規制する機能を有する。
【0059】
{ピンチアーム71}
ピンチアーム71は、
図4に示されるように、プラテンローラ42の軸と平行に延びる棒状の部材である。ピンチアーム71は、+X側の端部を媒体支持機構部44の下側規制部47から+X側に突出させるように設けられている。ピンチアーム71は、-X側の端部を下側規制部47の下側規制面47aに対して対向させるように設けられている。
ピンチアーム71は、
図5に示されるように、基部72と、ばね取り付け部73と、突出部74と、先端部76と、を含んで構成されている。
【0060】
基部72は、ピンチアーム71の+X側の端部に設けられた部位であり、媒体支持機構部44の支持部45によって下側規制面47aにおける搬送方向に延びる軸72aまわり(つまりY軸まわり)に揺動可能に支持されている(
図4参照)。ピンチアーム71は、アーム部材の一例である。
【0061】
ばね取り付け部73は、
図5及び
図6に示されるように、ピンチアーム71の両側の端部から離れている箇所から下側規制面47a側に向かって突出するように形成された部位であり、図示しない圧縮コイルばねを取り付けられている。すなわち、規制手段70は、該圧縮コイルばねを含んで構成されている。ばね取り付け部73に取り付けられた該圧縮コイルばねは、支持部45とピンチアーム71との間に挟まれており、ピンチアーム71を下側規制面47aの法線方向に付勢する。すなわち、ばね取り付け部73に取り付けられた該圧縮コイルばねは、ピンチアーム71を下側規制面47aにおける印字媒体Pの紙面の法線方向に沿って印字媒体Pから離れる方向に付勢する。該圧縮コイルばねは、ばね部材の一例である。
【0062】
突出部74は、
図5及び
図6に示されるように、ピンチアーム71の両側の端部から離れている箇所から下側規制面47a側とは反対側に向かって突出するように形成された部位である。突出部74は、ばね取り付け部73に取り付けられた圧縮コイルばね(図示省略)の付勢力によって、開状態(第1の位置)または閉状態(第2の位置)のいずれか一方から他方に揺動(回転)するヘッド部50のカム部56と、常に接触するように構成されている。
具体的には、突出部74は、
図10に示されるように、ヘッド部50が第1の位置に位置するとき、カム部56の印字ヘッド51から遠い側の脚部56aと接触する。突出部74は、
図11に示されるように、ヘッド部50が第1の位置と第2の位置との間に位置するとき、カム部56の頭頂部56bと接触する。突出部74は、
図3に示されるように、ヘッド部50が第2の位置に位置するとき、カム部56の印字ヘッド51に近い側の脚部56aと接触する。
図3、
図10、
図11に示されるように、ピンチアーム71は、突出部74が脚部56aと接触しているとき、突出部74が頭頂部56bと接触しているときと比して、下側規制面47aから下側規制面47aの法線方向に向けて離間するように構成されている。すなわち、ピンチアーム71は、ヘッド部50が第1の位置及び第2の位置に位置しているとき、ヘッド部50が第1の位置と第2の位置との間に位置しているときと比して、下側規制面47aから遠い位置に位置するように構成されている。また、ピンチアーム71は、ヘッド部50が第1の位置と第2の位置との間に位置しているとき、ヘッド部50が第1の位置または第2の位置に位置しているときと比して、下側規制面47aに近い位置に位置するように構成されている。
このように、ピンチアーム71は、ばね取り付け部73及び突出部74を有することで、ピンチアーム71の位置をヘッド部50のカム部56の回転に追従させるように構成されている。ばね取り付け部73及び突出部74を有するピンチアーム71は、フォロワ部の一例である。
【0063】
先端部76は、
図4に示されるように、ピンチアーム71の-X側の端部であり、媒体支持機構部44の下側規制面47aと対向している部位である。先端部76は、
図5及び
図6に示されるように、先端部76から下側規制面47a側に向けて突出するように設けられたパッド部78を備える。
【0064】
パッド部78は、エラストマで形成された部材である。パッド部78は、
図6に示されるように、下側規制面47aと対向している平面状の部位である平面部78aを有する。平面部78aの平面は、下側規制面47aと略平行している面であることが好ましい。
【0065】
ピンチアーム71は、
図3及び
図10に示されるように、突出部74がカム部56の脚部56aと接触しているとき、パッド部78が下側規制面47aから離間している離間状態となるように構成されている。ピンチアーム71が離間状態であるとき、パッド部78は、媒体支持機構部44の搬送経路上の印字媒体Pに対して離間している。
ピンチアーム71は、
図11に示されるように、突出部74がカム部56の頭頂部56bと接触しているとき、パッド部78が下側規制面47aと接触する接触状態となるように構成されている。ピンチアーム71が接触状態であるとき、パッド部78は、媒体支持機構部44の搬送経路上の印字媒体Pと接触して押圧する。パッド部78は、押圧部の一例である。
このように、規制手段70は、カム部56の位相に応じてピンチアーム71のパッド部78が印字媒体Pと接触している接触状態と、印字媒体Pに対して離間している離間状態とを切り替え可能に構成されている。
特に、規制手段70は、ヘッド部50が開状態であるとき、ピンチアーム71を離間状態にさせることで、後述する供給部30から供給された印字媒体Pを媒体支持機構部44の搬送経路に通して引き出す作業をスムーズにさせることができる。
【0066】
{支持部45}
支持部45は、
図4に示されるように、媒体支持機構部44の下側規制部47から+X側に突出するように設けられた部材であり、ピンチアーム71の基部72を軸72aまわりに揺動可能に支持する機能を有する。
【0067】
(作用及び効果)
次に、第1の実施形態のプリンタ10の作用及び効果について説明する。この説明にあたって、第1の実施形態に対する比較形態としてのプリンタ10Hについて説明する。プリンタ10Hについての説明において、第1の実施形態のプリンタ10と同様の部品等を用いる場合、その部品等の符号及び名称をそのまま用いて説明する。
【0068】
比較形態のプリンタ10Hは、第1の実施形態における印字部40に代わって印字部40Hを備える。印字部40Hは、
図12に示されるように、印字部40と比して、規制手段70を備えていない。すなわち、比較形態のプリンタ10Hは、カム部56と、ピンチアーム71と、支持部45と、を備えていない。以上の点以外については、比較形態のプリンタ10Hは、第1の実施形態のプリンタ10と同様の構成とされている。
【0069】
プリンタ10(またはプリンタ10H)を用いて印字媒体Pに対する印字を開始するとき、作業者は、まず、プリンタ10(またはプリンタ10H)の内部を露出させるように筐体20を開放させた状態にする。その後、作業者は、
図13に示されるように、印字部40(または印字部40H)の操作部(図示省略)を操作して印字部40を開状態にする。その後、作業者は、印字媒体Pの先端部分を供給部30から引き出して、張力付与部60に巻き掛ける。その後、作業者は、該印字媒体Pを媒体支持機構部44の規制部46で規定される搬送経路に通して、該印字媒体Pをプラテンローラ42または印字ヘッド51よりも搬送方向下流側に引き出す。その後、作業者は、開放状態の印字部40(または印字部40H)の操作部(図示省略)を操作して開状態から閉状態に移行させる。
【0070】
比較形態のプリンタ10Hの、印字部40Hの開状態から閉状態への移行における各部の動作について説明する。印字部40Hの開状態から閉状態への移行において、ヘッド部50の印字ユニット52は、第1の位置から第2の位置に向けて揺動する。このとき、リンク部54のピン54aは、印字ユニット52と一体的に揺動する。このとき、ピン54aは、支持ユニット62の溝部63に対して、端点63aから溝位置63c及び溝位置63dを経由して端点63bに向けて相対的に移動する。このとき、張力付与部60は、ピン54aの溝部63に対する端点63aから端点63bへの相対的な移動に連動して、第1の姿勢から第2の姿勢に移行する。
【0071】
プリンタ10Hは、ヘッド部50の第1の位置から第2の位置への移行において、張力付与部60が第2の姿勢となって印字媒体Pに張力を付与した後でヘッド部50を第2の位置に移動させてニップ領域NPを形成して印字媒体Pを挟持させる構成を有する。
具体的には、ヘッド部50のピン54aが溝部63における端点63aから溝位置63dに到達したとき、張力付与部60は第1の姿勢から第2の姿勢に移行し、供給部30から引き出された印字媒体Pに対して、より大きい張力を付与する。このとき、ピン54aは溝部63における端点63bに位置していないため、印字ユニット52は第2の位置に到達していない。このとき、印字部40Hの印字ヘッド51及びプラテンローラ42は、ニップ領域NPを形成しておらず、印字媒体Pを挟持していない。すなわち、プリンタ10Hにおいて、張力付与部60が印字媒体Pに張力を付与するとき、供給部30から引き出された印字媒体Pは搬送方向及び搬送方向と逆方向への移動を規制されていない。
そのため、プリンタ10Hを用いて印字媒体Pに対する印字を開始する作業において、ヘッド部50の第1の位置から第2の位置への移行に連動して張力付与部60が印字媒体Pに張力を付与することで、印字媒体Pが搬送方向上流側に引き戻されてしまう虞がある。
特に、プリンタ10Hのヘッド部50の第1の位置から第2の位置への移行においては、ヘッド部50が第2の位置に達する前に張力付与部60が印字媒体Pに張力を付与することで、印字媒体Pが搬送方向上流側に引き戻されてしまう虞がある。
さらに、ヘッド部50の移行が開始するときにおける印字媒体Pの先端部がプラテンローラ42と接触している場合、ヘッド部50の移行に連動して印字媒体Pの先端部がプラテンローラ42よりも搬送方向上流側に引き戻されてしまう虞がある。
【0072】
次に、規制手段70を備えるプリンタ10の、印字部40の開状態から閉状態への移行における各部の動作について説明する。
【0073】
規制手段70を備えるプリンタ10は、ヘッド部50の第1の位置から第2の位置への移行において、張力付与部60が第2の姿勢となって印字媒体Pに張力を付与する前に規制手段70で印字媒体Pの移動を規制する構成を有する。
具体的には、
図7及び
図8に示されるように、揺動するヘッド部50の移行に伴ってピン54aが溝部63における端点63aから端点63bに向かう相対的な移動を開始したとき、カム部56がヘッド部50の揺動に伴って回転を開始する。
カム部56の回転が開始されると、
図8に示されるように、ピンチアーム71の突出部74と接触するカム部56の部位が、印字ヘッド51から遠い側の脚部56aから頭頂部56bに移行する。ピンチアーム71の突出部74がカム部56の頭頂部56bと接触しているとき、ピンチアーム71は接触状態となって、供給部30から引き出されて媒体支持機構部44の搬送経路上にある印字媒体Pをパッド部78で押圧して下側規制部47とで挟持する。ピンチアーム71が接触状態となって印字媒体Pを押圧して下側規制部47とで挟持しているとき、媒体支持機構部44の搬送経路上にある印字媒体Pは、搬送方向及び搬送方向と逆方向への移動(すなわち、搬送方向に沿う方向への移動)を規制される。
ヘッド部50の移行が開始した後のピンチアーム71は、ピン54aが溝部63の溝位置63cから、溝位置63dと端点63bとの間に到達するまで接触状態を継続する。すなわち、ヘッド部50の移行において、ピン54aが溝部63における溝位置63dに到達したとき、ピンチアーム71は接触状態となっている。ヘッド部50の移行においてピン54aが溝位置63dに到達したとき、張力付与部60は第2の姿勢となることで供給部30から引き出された印字媒体Pに張力を付与する。つまり、規制手段70のピンチアーム71は、ヘッド部50の移行が開始されてから張力付与部60が印字媒体Pに張力を付与するまでに印字媒体Pを下側規制部47とで挟持して印字媒体Pの搬送方向及び搬送方向と逆方向への移動を規制する。これにより、張力付与部60による張力の付与に伴う印字媒体Pの搬送方向上流側への引き戻しが抑制される。
【0074】
このように、プリンタ10は、規制手段70を備えることで、ヘッド部50の第1の位置から第2の位置への移行に連動して印字媒体Pに張力を付与する張力付与部60を備えるプリンタにおいて、張力付与部60による印字媒体Pの引き戻しを抑制することができる。
【0075】
また、プリンタ10は、規制手段70を備えることで、印字媒体Pが張力付与部60で張力を付与された後に印字ヘッド51及びプラテンローラ42で挟持される場合において、張力付与部60による印字媒体Pの引き戻しを抑制することができる。
【0076】
プリンタ10においては、ヘッド部50のピン54aが溝部63の溝位置63dから端点63bに到達すると同時にヘッド部50が第2の位置に移行する構成を有している。また、プリンタ10においては、ヘッド部50が第2の位置に移行すると同時に、ピンチアーム71の突出部74と接触するカム部56の部位が、頭頂部56bから印字ヘッド51から近い側の脚部56aに移行する構成を有している。ピンチアーム71の突出部74がカム部56の脚部56aと接触しているとき、圧縮コイルばねの付勢力によりピンチアーム71は離間状態となって媒体支持機構部44の搬送経路上にある印字媒体Pから離間する。すなわち、第1の実施形態に係る規制手段70は、ヘッド部50が第2の位置に移動すると同時に、印字媒体Pの搬送方向及び搬送方向と逆方向への移動に対する規制を解除する。
よって、プリンタ10は、規制手段70を備えることで、印字ユニット52が第2の位置に移動する前に規制手段が印字媒体Pに対する規制を解除する構成と比して、張力付与部60による印字媒体Pの引き戻しを抑制することができる。
【0077】
なお、ピン54aが端点63bに位置するとき、印字ヘッド51及びプラテンローラ42はニップ領域NPを形成して印字媒体Pを挟持している。このとき、印字媒体Pは、印字ヘッド51及びプラテンローラ42に挟持されていることで、印字ヘッド51及びプラテンローラ42によって搬送方向及び搬送方向と逆方向への移動を規制されている。このとき、プラテンローラ42が図示しない駆動手段によって回転すると、ピンチアーム71は離間状態であり印字媒体Pに対して非接触であるので、プラテンローラ42による印字媒体Pの搬送を妨げることがない。
【0078】
規制手段70は、カム部56と、ピンチアーム71と、を含み、接触状態と離間状態とを切り替え可能であるように構成されている。また、ピンチアーム71は、パッド部78を備える。よって、プリンタ10は、簡易な構成で張力付与部60による印字媒体Pの引き戻しを抑制することができる。
【0079】
規制手段70は、ピンチアーム71のばね取り付け部73に取り付けられた圧縮コイルばねを含んで構成されている。よって、プリンタ10は、簡易な構成で印字媒体Pとピンチアーム71との接離状態を切り替えることができる。
【0080】
パッド部78は、印字媒体Pと接触する部位である平面状の平面部78aを有する。仮に、ピンチアーム71に設けられた押圧部がピンチアーム71の長手方向に沿って延びる円柱状である場合、該押圧部は印字媒体Pと線接触するため、印字媒体Pを押圧するときに付与する負荷を大きくしてしまう。一方、パッド部78は、平面部78aを有することで、印字媒体Pと面接触するため、印字媒体Pと点接触してまたは線接触して押圧する場合と比して、パッド部78の接触に伴って印字媒体Pに付与される負荷を軽減することができる
【0081】
規制手段70は、ピンチアーム71を回転可能に支持する支持部45をさらに含んで構成されている。よって、プリンタ10は、フォロワ部を印字媒体Pの印字面の法線方向に沿って往復可能に支持する場合と比して、簡易な構成でフォロワ部としてのピンチアーム71を設けることができる。
【0082】
(2)第2の実施形態
次に、第2の実施形態に係るプリンタ110について、図面に基づいて説明する。なお、この説明において、第1の実施形態のプリンタ10で用いたものと同様の部品等を用いる場合、その部品等の符号及び名称をそのまま用いて説明する。以下の説明では、第1の実施形態と同じ構成については重複説明を省略する。
【0083】
プリンタ110は、
図15に示されるように、第1の実施形態における印字部40に代わって印字部140を備える。また、プリンタ110は、第1の実施形態における規制手段70に代わって規制手段170を備える。
【0084】
印字部140は、第1の実施形態におけるヘッド部50及び張力付与部60に代わってヘッド部150及び張力付与部160を備える。ヘッド部150は、ヘッド部50と比してリンク部54及びカム部56を有さない。張力付与部160は、張力付与部60と比して溝部63を有さない。
【0085】
{規制手段170}
規制手段170は、
図15に示されるように、突き当て部154と、レバー部171と、第1のギヤ部172と、第2のギヤ部173と、を含んで構成されている。
【0086】
突き当て部154は、印字ユニット52の-X側の板材52aの-X側の板面から-X側に突出するように設けられた部材である。突き当て部154は、印字ユニット52の揺動に伴って、後述するレバー部171と接離可能に構成されている。
【0087】
レバー部171は、ヘッド部150の支持軸53から径方向に突出するように設けられた部材であり、支持軸53まわりに回転自在の状態で、突き当て部154の揺動軌道と重なるように設けられている。本実施形態においては、レバー部171は、支持軸53から突出している。レバー部171は、支持軸53とは別体として設けられており、支持軸53の回転に対して一体的に回転しないように構成されている。
【0088】
レバー部171は、
図16に示されるように、印字ユニット52の位置が第1の位置(開状態)であるとき、突き当て部154に対して非接触となるように構成されている。
【0089】
レバー部171は、
図17に示されるように、印字ユニット52が第1の位置(開状態)から第2の位置(閉状態)に向けて揺動して印字ヘッド51がプラテンローラ42の外周部42bに接触したときに、突き当て部154と接触するように構成されている。このとき、プラテンローラ42の外周部42bは、印字ヘッド51によって弾性変形していない状態で印字媒体Pを挟持している状態である。プラテンローラ42の外周部42bが印字ヘッド51によって弾性変形していないときのヘッド部50の状態を、ニップ状態という。ヘッド部50がニップ状態であるときから、さらに印字ユニット52を第1の位置から第2の位置に向かう方向に揺動させてプラテンローラ42を弾性変形させてヘッド部50が閉状態となる印字ユニット52の位置を、第3の位置という。
【0090】
図17に示される第2の位置(ニップ状態)から印字ユニット52が第3の位置(閉状態)に向けてさらに揺動すると、レバー部171は、突き当て部154に突き当てられて支持軸53まわり(
図17における反時計まわりの方向)に回転する。
【0091】
第1のギヤ部172は、レバー部171と一体的に形成されており、支持軸53から張力付与部160の支持軸64に向かう方向に突出するように設けられた部材である。第1のギヤ部172は、支持軸64側の先端部に、後述する第2のギヤ部173のギヤ歯群173aと噛み合うギヤ歯群172aを有する。
【0092】
第2のギヤ部173は、支持軸64まわりに形成され、張力付与部160の支持ユニット62と一体的に形成された部材である。第2のギヤ部173は、第1のギヤ部172のギヤ歯群172aと噛み合うギヤ歯群173aを有する。第2のギヤ部173は、支持ユニット62と一体的に支持軸64まわりに回転可能に構成されている。
このように、張力付与部160は、第1のギヤ部172の支持軸53まわりの回転トルクにより支持軸64まわりに回転可能に構成されている。
【0093】
張力付与部160は、支持軸64に設けられた図示しないトーションばねによって第2の姿勢から第1の姿勢となる方向に付勢されている。
張力付与部160は、
図16に示されるように、ヘッド部150の位置が第1の位置(開状態)から第2の位置(ニップ状態)までの間であるとき、支持軸64に設けられた図示しないトーションばねの付勢力によって、第1の姿勢となるように構成されている。このとき、レバー部171が突き当て部154に突き当てられていないため、張力付与部160は、レバー部171と一体的である第1のギヤ部172から回転トルクを伝達されないように構成されている。
換言すると、規制手段170は、印字ユニット52が第2の位置に移行する直前まで支持軸53まわりの回転トルクにより支持軸64まわりに張力付与部160が回転することを規制するように構成されている。
【0094】
図17に示される第2の位置(ニップ状態)から第3の位置(閉状態)に向けて移行する印字ユニット52の突き当て部154にレバー部171が突き当てられるときの各部の動作を以下に示す。このとき、第1のギヤ部172はレバー部171と一体となって支持軸53まわり(
図17における反時計まわりの方向)に回転する。このとき、第2のギヤ部173は、第2のギヤ部173と噛み合う第1のギヤ部172の回転に従動して張力付与部160を第1の姿勢から第2の姿勢に移行させる方向に回転させるように構成されている。すなわち、規制手段170は、印字ユニット52が第2の位置に移行すると同時に、張力付与部160の回転(揺動)に対する規制を解除するように構成されている。
【0095】
印字ユニット52の第2の位置から第3の位置への移行が完了したとき、第2のギヤ部173は、
図15に示されるように、レバー部171及び第1のギヤ部172の回転に従動して張力付与部160を第2の姿勢にさせるように構成されている。
すなわち、張力付与部160は、ヘッド部150の第1の位置から第2の位置への移行に連動して第1の姿勢から第2の姿勢に移行し、供給部30から引き出された印字媒体Pに対して、より大きい張力を付与するように構成されている。
【0096】
このように、プリンタ110は、規制手段170を備えることで、ヘッド部150が第1の位置から第2の位置に移行した後に、張力付与部160が供給部30から引き出された印字媒体Pに張力を付与するように構成されている。
【0097】
以上の点以外については、第2実施形態のプリンタ110は、第1の実施形態のプリンタ10と同様の構成とされている。
【0098】
(作用及び効果)
次に、第2の実施形態のプリンタ110の作用及び効果について説明する。
【0099】
規制手段170を備えるプリンタ110においては、
図17に示されるように、張力付与部160が第1の姿勢から第2の姿勢に移行して印字媒体Pに張力を付与する前に、ヘッド部150はプラテンローラ42とで印字媒体Pを挟持する第2の位置に位置している。また、プリンタ110において、張力付与部160が第1の姿勢から第2の姿勢に移行して印字媒体Pに張力を付与するとき、
図15に示されるように、ヘッド部150は弾性変形した状態のプラテンローラ42とで印字媒体Pを挟持する第3の位置に位置している。このように、張力付与部160が第1の姿勢から第2の姿勢に移行して印字媒体Pに張力を付与する前に、印字媒体Pは、印字ヘッド51及びプラテンローラ42によって搬送方向及び搬送方向と逆方向への移動を規制されている。よって、プリンタ110においては、張力付与部160による印字媒体Pへの張力の付与に伴う印字媒体Pの搬送方向上流側への引き戻しが抑制される。
すなわち、ヘッド部150の第1の位置から第2の位置への移行に連動して印字媒体Pに張力を付与する張力付与部160を備えるプリンタ110は、規制手段170を備えることで、張力付与部160による印字媒体Pの引き戻しを抑制することができる。
【0100】
以上のとおり、本発明の一例としての実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内にて種々の変形、変更、改良が可能である。
【0101】
例えば、第1の実施形態において、ピンチアーム71は、ばね取り付け部73に取り付けられた図示しない圧縮コイルばねによって付勢されている構成を有するものとした。しかしながら、ピンチアーム71を付勢する付勢手段は、ばね取り付け部73に取り付けられた圧縮コイルばねに限定されない。ピンチアーム71を付勢する付勢手段は、たとえばピンチアーム71の基部72に設けられたトーションばねであってもよい。
【0102】
また、第1の実施形態において、規制手段70は、印字ユニット52が第2の位置に移動すると同時に、印字媒体Pの搬送方向及び搬送方向と逆方向への移動に対する規制を解除する構成を有するものとした。しかしながら、規制手段70は、印字ユニット52が第2の位置に移動した後で、印字媒体Pの搬送方向及び搬送方向と逆方向への移動に対する規制を解除する構成を有していてもよい。
【0103】
また、第2の実施形態において、規制手段170は、印字ユニット52が第2の位置に移動すると同時に、張力付与部160の回転(揺動)に対する規制を解除する構成を有するものとした。しかしながら、規制手段170は、印字ユニット52が第2の位置に移動した後で、張力付与部160の回転(揺動)に対する規制を解除する構成を有していてもよい。
【0104】
また、第2の実施形態において、プリンタ110が規制手段170を備えることで、ヘッド部150が第1の位置から第2の位置に移行した後に張力付与部160で印字媒体Pに張力を付与する構成を有するものとした。しかしながら、本発明において、揺動部が第1の位置から第2の位置に移行した後に張力付与部で印字媒体Pに張力を付与する構成は、規制手段170に限定されない。本発明に係る揺動部が第1の位置から第2の位置に移行した後に張力付与部で印字媒体Pに張力を付与する構成は、例えば、揺動部と一体的に回転するリンク部と、張力付与部に設けられてリンク部と係合する溝部と、を含んで構成されていてもよい。具体的には、該溝部は、例えばリンク部を有する揺動部が第1の位置から第2の位置に移行するまでに張力付与部を第1の姿勢に規制して、且つ該揺動部が第2の位置に移行したときに張力付与部を第1の姿勢から第2の姿勢に移行させるように工夫されていてもよい。
【符号の説明】
【0105】
10 :プリンタ
40 :印字部
42 :プラテンローラ
50 :ヘッド部
51 :印字ヘッド
52 :印字ユニット(揺動部の一例)
53 :支持軸
56 :カム部
60 :張力付与部
62 :支持ユニット
64 :支持軸
70 :規制手段
71 :ピンチアーム(フォロワ部の一例)
72 :基部
72a :軸
73 :ばね取り付け部
74 :突出部
78 :パッド部(押圧部の一例)
78a :平面部
110 :プリンタ
154 :突き当て部
170 :規制手段
171 :レバー部
172 :第1のギヤ部
173 :第2のギヤ部
P :印字媒体