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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144111
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】発電セル及び燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0284 20160101AFI20241003BHJP
   H01M 8/0206 20160101ALI20241003BHJP
   H01M 8/0267 20160101ALI20241003BHJP
   H01M 8/0276 20160101ALI20241003BHJP
   H01M 8/0247 20160101ALI20241003BHJP
   H01M 8/028 20160101ALI20241003BHJP
   H01M 8/0273 20160101ALI20241003BHJP
   H01M 8/0258 20160101ALI20241003BHJP
   H01M 8/2483 20160101ALI20241003BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20241003BHJP
【FI】
H01M8/0284
H01M8/0206
H01M8/0267
H01M8/0276
H01M8/0247
H01M8/028
H01M8/0273
H01M8/0258
H01M8/2483
H01M8/10 101
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024007814
(22)【出願日】2024-01-23
(31)【優先権主張番号】202310332095.6
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】新井 郁矢
(72)【発明者】
【氏名】田中 之人
(72)【発明者】
【氏名】小山 賢
(72)【発明者】
【氏名】安藤 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】江波戸 穣
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 夏海
(72)【発明者】
【氏名】大久保 拓郎
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA08
5H126AA11
5H126AA12
5H126AA13
5H126AA15
5H126AA23
5H126BB06
5H126DD05
5H126EE03
5H126EE11
5H126EE22
5H126EE25
5H126GG02
5H126GG18
5H126JJ03
(57)【要約】
【解決手段】燃料電池スタック12の発電セル10において、第1金属セパレータ34の第1シール部74は、第1金属セパレータから膜電極接合体38とは反対側に向かって突出した弾性変形可能な金属シール部76であり、第2金属セパレータ36の第2シール部110は、第2金属セパレータの膜電極接合体とは反対側の面36bに取り付けられた弾性変形可能な樹脂シール部材112を有し、樹脂シール部材は、複数の発電セルが互いに積層された状態で、金属シール部に接触する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜と、前記電解質膜の両側に配設されたカソード電極及びアノード電極とを有する膜電極接合体と、
前記膜電極接合体の両側に配設された第1金属セパレータ及び第2金属セパレータと、
を備え、
前記第1金属セパレータ及び前記第2金属セパレータの各々には、酸化剤ガス、燃料ガス又は冷却媒体である流体が流通する流路が設けられた発電セルであって、
前記発電セルは、前記第1金属セパレータと前記第2金属セパレータとが互いに隣接するように複数積層され、
前記第1金属セパレータ及び前記第2金属セパレータの各々には、前記第1金属セパレータと前記第2金属セパレータとの間からの前記流体の漏れを防止するためのシール部が設けられ、
前記第1金属セパレータの前記シール部は、前記第1金属セパレータから前記膜電極接合体とは反対側に向かって突出した弾性変形可能な金属シール部であり、
前記第2金属セパレータの前記シール部は、前記第2金属セパレータの前記膜電極接合体とは反対側の面に取り付けられた弾性変形可能な樹脂シール部材を有し、
前記樹脂シール部材は、複数の前記発電セルが互いに積層された状態で、前記金属シール部に接触する、発電セル。
【請求項2】
請求項1に記載の発電セルであって、
前記膜電極接合体の外周部には、前記膜電極接合体を周回するように延在した樹脂枠部が設けられ、
前記第2金属セパレータは、前記樹脂枠部が接合される接合部を有し、
前記樹脂シール部材は、前記接合部に取り付けられている、発電セル。
【請求項3】
請求項2に記載の発電セルであって、
前記第2金属セパレータの前記流路は、
前記燃料ガスを複数の前記発電セルの積層方向に流通させる燃料ガス連通孔と、
前記アノード電極に沿って前記燃料ガスを流通させる燃料ガス流路と、
前記燃料ガス連通孔と前記燃料ガス流路とを互いに連通させるトンネルと、
を含み、
前記樹脂シール部材は、
前記燃料ガス連通孔を囲む連通孔シール部と、
前記燃料ガス流路を囲む流路シール部と、
を有し、
前記連通孔シール部と前記流路シール部とは、前記トンネルの外面に接触している、発電セル。
【請求項4】
請求項1に記載の発電セルであって、
前記シール部は、前記電解質膜の平面方向に沿った第1方向に線状に延在し、
複数の前記発電セルの積層方向と前記第1方向とに交差する第2方向における前記樹脂シール部材の幅寸法は、前記第2方向における前記金属シール部の先端面の幅寸法よりも大きい、発電セル。
【請求項5】
請求項1に記載の発電セルであって、
前記金属シール部の先端面は、前記発電セルの積層前の状態で、前記金属シール部の突出方向に向かって凸状に湾曲している、発電セル。
【請求項6】
請求項1に記載の発電セルであって、
前記第2金属セパレータの前記シール部は、前記第2金属セパレータから前記膜電極接合体とは反対側に向かって突出する弾性変形可能な他の金属シール部を有し、
前記樹脂シール部材は、前記他の金属シール部の先端面に取り付けられている、発電セル。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の発電セルが複数積層された、燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発電セル及び燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能且つ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する燃料電池スタックに関する研究開発が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数の発電セルが互いに積層されることにより形成された燃料電池スタックが開示されている。各発電セルは、膜電極接合体と、膜電極接合体の両側に配設された一対の金属セパレータとを備える。各金属セパレータには、酸化剤ガス、燃料ガス又は冷却媒体である流体の漏れを防止するためにシール部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-125288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
材料コストを抑えつつ流体の漏れを効果的に防止することができるシール部を備えた発電セル及び燃料電池スタックが求められている。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は、電解質膜と、前記電解質膜の両側に配設されたカソード電極及びアノード電極とを有する膜電極接合体と、前記膜電極接合体の両側に配設された第1金属セパレータ及び第2金属セパレータと、を備え、前記第1金属セパレータ及び前記第2金属セパレータの各々には、酸化剤ガス、燃料ガス又は冷却媒体である流体が流通する流路が設けられた発電セルであって、前記発電セルは、前記第1金属セパレータと前記第2金属セパレータとが互いに隣接するように複数積層され、前記第1金属セパレータ及び前記第2金属セパレータの各々には、前記第1金属セパレータと前記第2金属セパレータとの間からの前記流体の漏れを防止するためのシール部が設けられ、前記第1金属セパレータの前記シール部は、前記第1金属セパレータから前記膜電極接合体とは反対側に向かって突出した弾性変形可能な金属シール部であり、前記第2金属セパレータの前記シール部は、前記第2金属セパレータの前記膜電極接合体とは反対側の面に取り付けられた弾性変形可能な樹脂シール部材を有し、前記樹脂シール部材は、複数の前記発電セルが互いに積層された状態で、前記金属シール部に接触する、発電セルである。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様による発電セルが複数積層された、燃料電池スタックである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、材料コストを抑えつつ流体の漏れを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池スタックの斜視図である。
図2図2は、発電セルの分解斜視図である。
図3図3は、図2のIII-III線に沿った断面図である。
図4図4は、第1金属セパレータの平面図である。
図5図5は、第2金属セパレータの平面図である。
図6図6は、図2のVI-VI線に沿った断面図である。
図7図7は、図2のVII-VII線に沿った断面図である。
図8図8は、積層前の発電セルの一部省略断面図である。
図9図9は、変形例に係る発電セルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る発電セル10及び燃料電池スタック12について図面を用いて以下に説明する。本実施形態に係る燃料電池スタック12は、例えば、図示しない車両に搭載される。なお、燃料電池スタック12の用途は特に限定されない。
【0012】
図1に示すように、燃料電池スタック12は、複数の発電セル10と、一対のターミナルプレート16a、16bと、一対の絶縁プレート18a、18bと、一対のエンドプレート20a、20bとを備える。複数の発電セル10は、矢印A方向に積層されることにより形成されている。
【0013】
ターミナルプレート16aは、複数の発電セル10の積層方向の一端(矢印A1方向の端)に位置する発電セル10に隣接している。絶縁プレート18aは、ターミナルプレート16aに隣接している。エンドプレート20aは、絶縁プレート18aに隣接している。絶縁プレート18aは、ターミナルプレート16aとエンドプレート20aとの間に位置する。
【0014】
ターミナルプレート16bは、複数の発電セル10の積層方向の他端(矢印A2方向の端)に位置する発電セル10に隣接している。絶縁プレート18bは、ターミナルプレート16bに隣接している。エンドプレート20bは、絶縁プレート18bに隣接している。絶縁プレート18bは、ターミナルプレート16bとエンドプレート20bとの間に位置する。
【0015】
エンドプレート20a、20bは、横長の長方形状を有する。一対のエンドプレート20a、20bは、複数の連結バー22によって互いに連結されている。各連結バー22の一端面は、エンドプレート20aの内面にボルト24によって締結される。各連結バー22の他端面は、エンドプレート20bの内面に図示しないボルトによって締結される。これにより、複数の発電セル10には、積層方向(矢印A方向)の圧縮荷重(締付荷重)が付与される。燃料電池スタック12は、2つのエンドプレート20a、20bを端板とする筐体を備えてもよい。この場合、当該筐体内には、複数の発電セル10が収容される。
【0016】
図2に示すように、発電セル10は、横長の長方形状に形成されている。なお、発電セル10の形状は、特に限定されず、例えば、縦長の長方形状に形成されてもよいし、正方形状に形成されてもよい。発電セル10は、一方の反応ガスである酸化剤ガスと他方の反応ガスである燃料ガスとの電気化学反応により発電する。酸化剤ガスは、例えば、酸素含有ガスである。燃料ガスは、例えば、水素含有ガスである。発電セル10には、発電セル10を冷却するための冷却媒体が流通する。冷却媒体は、例えば、純水、エチレングリコール、オイル等である。
【0017】
各発電セル10には、酸化剤ガス供給連通孔26a、酸化剤ガス排出連通孔26b、燃料ガス供給連通孔28a、燃料ガス排出連通孔28b、冷却媒体供給連通孔30a、冷却媒体排出連通孔30bが積層方向(矢印A方向)に貫通形成されている。
【0018】
発電セル10の長辺方向の一端縁部(矢印B1方向の端縁部)には、酸化剤ガス供給連通孔26aと、冷却媒体供給連通孔30aと、燃料ガス排出連通孔28bとが設けられている。酸化剤ガス供給連通孔26aと、冷却媒体供給連通孔30aと、燃料ガス排出連通孔28bとは、発電セル10の短辺方向(矢印C方向)に並んでいる。
【0019】
酸化剤ガス供給連通孔26aには、酸化剤ガスが矢印A2方向に向かって流通する。冷却媒体供給連通孔30aには、冷却媒体が矢印A2方向に向かって流通する。燃料ガス排出連通孔28bには、燃料ガスが矢印A1方向に向かって流通する。
【0020】
発電セル10の長辺方向の他端縁部(矢印B2方向の端縁部)には、燃料ガス供給連通孔28aと、冷却媒体排出連通孔30bと、酸化剤ガス排出連通孔26bとが設けられている。燃料ガス供給連通孔28aと、冷却媒体排出連通孔30bと、酸化剤ガス排出連通孔26bとは、矢印C方向に並んでいる。
【0021】
燃料ガス供給連通孔28aには、燃料ガスが矢印A2方向に向かって流通する。冷却媒体排出連通孔30bには、冷却媒体が矢印A1方向に向かって流通する。酸化剤ガス排出連通孔26bには、酸化剤ガスが矢印A1方向に向かって流通する。
【0022】
図1に示すように、酸化剤ガス供給連通孔26a、酸化剤ガス排出連通孔26b、燃料ガス供給連通孔28a、燃料ガス排出連通孔28b、冷却媒体供給連通孔30a及び冷却媒体排出連通孔30bは、一方のエンドプレート20aにも形成されている。酸化剤ガス供給連通孔26a、酸化剤ガス排出連通孔26b、燃料ガス供給連通孔28a、燃料ガス排出連通孔28b、冷却媒体供給連通孔30a及び冷却媒体排出連通孔30bの配置、形状及び大きさは、要求される仕様に応じて、適宜設定すればよい。
【0023】
図2及び図3に示すように、発電セル10は、樹脂枠付き膜電極接合体32と、第1金属セパレータ34と、第2金属セパレータ36と備える。第1金属セパレータ34は、樹脂枠付き膜電極接合体32の一方の面(矢印A1方向の面)に配設されている。第2金属セパレータ36は、樹脂枠付き膜電極接合体32の他方の面(矢印A2方向の面)に配設されている。第1金属セパレータ34及び第2金属セパレータ36は、矢印A方向から樹脂枠付き膜電極接合体32を挟持する。複数の発電セル10が互いに積層された状態で、第1金属セパレータ34と第2金属セパレータ36とは互いに隣接する(図3参照)。
【0024】
樹脂枠付き膜電極接合体32は、膜電極接合体38(MEA:Membrane Electrode Assembly)と、樹脂枠部40とを有する。膜電極接合体38は、電解質膜42と、第1電極44と、第2電極46とを含む。電解質膜42は、例えば、固体高分子電解質膜(陽イオン交換膜)である。固体高分子電解質膜は、例えば、水分を含んだパーフルオロスルホン酸の薄膜である。電解質膜42は、フッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質を使用することができる。電解質膜42は、第1電極44及び第2電極46に挟持される。
【0025】
第1電極44は、電解質膜42の一方の面(矢印A1方向の面)に設けられたカソード電極である。第2電極46は、電解質膜42の他方の面(矢印A2方向の面)に設けられたアノード電極である。第1金属セパレータ34は、第1電極44に向かい合うように配置されている。第2金属セパレータ36は、第2電極46に向かい合うように配置されている。
【0026】
図2に示すように、酸化剤ガス供給連通孔26aを流通する酸化剤ガスは、第1金属セパレータ34と樹脂枠付き膜電極接合体32との間に導かれることにより第1電極44に供給される。燃料ガス供給連通孔28aを流通する燃料ガスは、第2金属セパレータ36と樹脂枠付き膜電極接合体32との間に導かれることにより第2電極46に供給される。発電セル10は、第1電極44に供給された酸化剤ガスと第2電極46に供給された燃料ガスとによって発電する。
【0027】
第1金属セパレータ34と樹脂枠付き膜電極接合体32との間を流通した酸化剤ガスは、酸化剤ガス排出連通孔26bに導かれる。第2金属セパレータ36と樹脂枠付き膜電極接合体32との間を流通した燃料ガスは、燃料ガス排出連通孔28bに導かれる。なお、冷却媒体供給連通孔30aを流通する冷却媒体は、第1金属セパレータ34と第2金属セパレータ36との間を流通し、冷却媒体排出連通孔30bに導かれる。
【0028】
図2及び図3に示すように、第1電極44は、第1電極触媒層と第1ガス拡散層とを有する。第1電極触媒層は、電解質膜42の一方の面に接合される。第1ガス拡散層は、第1電極触媒層に積層される。第2電極46は、第2電極触媒層と第2ガス拡散層とを有する。第2電極触媒層は、電解質膜42の他方の面に接合される。第2ガス拡散層は、第2電極触媒層に積層される。第1ガス拡散層及び第2ガス拡散層のそれぞれは、カーボンペーパ、カーボンクロス等により構成される。
【0029】
樹脂枠部40は、膜電極接合体38の外周部を囲む(周回する)枠状のシートである。樹脂枠部40の内周端部は、膜電極接合体38の外周部に挟持されている(図3参照)。樹脂枠部40は、電気絶縁性を有する。
【0030】
樹脂枠部40の構成材料としては、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPA(ポリフタルアミド)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルフォン)、LCP(リキッドクリスタルポリマー)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、m-PPE(変性ポリフェニレンエーテル樹脂)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)及び変性ポリオレフィン等が挙げられる。
【0031】
図2に示すように、樹脂枠部40の一端縁部(矢印B1方向の端縁部)には、酸化剤ガス供給連通孔26aと、冷却媒体供給連通孔30aと、燃料ガス排出連通孔28bとが設けられている。樹脂枠部40の他端縁部(矢印B2方向の端縁部)には、燃料ガス供給連通孔28aと、冷却媒体排出連通孔30bと、酸化剤ガス排出連通孔26bとが設けられている。
【0032】
樹脂枠付き膜電極接合体32の樹脂枠部40は、電解質膜42を第1電極44及び第2電極46の外周よりも外方に突出させることによって形成されてもよい。
【0033】
第1金属セパレータ34は、板状に形成されている。第1金属セパレータ34は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板又はアルミニウム板等の金属薄板である。第1金属セパレータ34には、防食処理が施されてもよい。第1金属セパレータ34は、長方形状に形成されている。第1金属セパレータ34の一端縁部(矢印B1方向の端縁部)には、酸化剤ガス供給連通孔26aと、冷却媒体供給連通孔30aと、燃料ガス排出連通孔28bとが設けられている。第1金属セパレータ34の他端縁部(矢印B2方向の端縁部)には、燃料ガス供給連通孔28aと、冷却媒体排出連通孔30bと、酸化剤ガス排出連通孔26bとが設けられている。第1金属セパレータ34は、金属板をプレス成形することにより形成される。
【0034】
図2及び図3に示すように、第1金属セパレータ34は、樹脂枠付き膜電極接合体32を向く第1表面34aと、当該第1金属セパレータ34に隣接する発電セル10の第2金属セパレータ36を向く第1裏面34bとを有する。
【0035】
図3及び図4に示すように、第1金属セパレータ34の第1表面34aには、第1ガス流路48が形成されている。第1ガス流路48は、第1電極44に沿って酸化剤ガスを流通させる酸化剤ガス流路である。第1ガス流路48は、複数の第1流路凸部50と複数の第1流路溝52とを含む。第1流路凸部50と第1流路溝52とは、矢印C方向に交互に設けられている。第1流路凸部50及び第1流路溝52の各々は、矢印B方向に直線状に延在している。なお、第1流路凸部50及び第1流路溝52の各々は、矢印B方向に波状に延在してもよい。
【0036】
図4に示すように、第1ガス流路48は、複数の第1供給トンネル54を介して酸化剤ガス供給連通孔26aに連通している。複数の第1供給トンネル54は、矢印C方向に間隔を空けて並んでいる。第1供給トンネル54は、矢印B方向に延在している。第1供給トンネル54は、第1金属セパレータ34の第1表面34aから第1裏面34bに向かって膨出している。第1供給トンネル54の内部には、酸化剤ガスが流通可能である。
【0037】
第1ガス流路48は、複数の第1排出トンネル56を介して酸化剤ガス排出連通孔26bに連通している。複数の第1排出トンネル56は、矢印C方向に間隔を空けて並んでいる。第1排出トンネル56は、矢印B方向に延在している。第1排出トンネル56は、第1金属セパレータ34の第1表面34aから第1裏面34bに向かって膨出している。第1排出トンネル56の内部には、酸化剤ガスが流通可能である。
【0038】
第1供給トンネル54と第1ガス流路48との間には、入口バッファ部58が設けられている。第1排出トンネル56と第1ガス流路48との間には、出口バッファ部60が設けられている。
【0039】
図3に示すように、第1金属セパレータ34は、樹脂枠部40が接合される第1接合部62を有する。第1接合部62には、第1接着剤層64を介して樹脂枠部40が接合される。第1接着剤層64は、酸化剤ガス、燃料ガス及び冷却媒体の流通を阻止する接着剤66によって構成されている。
【0040】
第1接着剤層64は、例えば、液状の接着剤66を第1金属セパレータ34の第1表面34aに塗布することにより形成される。なお、第1接着剤層64は、樹脂枠部40の一方の面(第1金属セパレータ34を向く面)に液状の接着剤66を塗布することにより形成されてもよい。第1接着剤層64は、接着剤66により形成された所定形状の接着剤シートを第1金属セパレータ34と樹脂枠部40との間に挟むことにより形成してもよい。
【0041】
図4に示すように、第1接着剤層64は、酸化剤ガス供給連通孔26a、酸化剤ガス排出連通孔26b、燃料ガス供給連通孔28a、燃料ガス排出連通孔28b、冷却媒体供給連通孔30a及び冷却媒体排出連通孔30bを個別に囲む。第1接着剤層64は、第1ガス流路48を囲む。
【0042】
図2に示すように、第1金属セパレータ34の第1裏面34bには、第1冷却媒体流路68が形成されている。第1冷却媒体流路68は、第1ガス流路48の裏面形状を有する。第1冷却媒体流路68と冷却媒体供給連通孔30aとの間には、入口バッファ部70が設けられている。第1冷却媒体流路68と冷却媒体排出連通孔30bとの間には、出口バッファ部72が設けられている。
【0043】
第1金属セパレータ34の第1裏面34bには、酸化剤ガス、燃料ガス又は冷却媒体である流体の外部への漏出を防止するめの第1シール部(シール部)74が設けられている。第1シール部74は、線状に延在している。図3に示すように、第1シール部74は、第1金属セパレータ34から膜電極接合体38とは反対側(矢印A1方向)に向かって突出した弾性変形可能な金属シール部76である。
【0044】
金属シール部76は、金属板をプレス成形することにより第1金属セパレータ34に一体に設けられている。金属シール部76は、一対の側壁78と、先端部80とを含む。一対の側壁78は、互いに向かい合うように配置されている。一対の側壁78の間隔は、金属シール部76の突出方向に向かって狭くなっている。先端部80は、金属シール部76の突出方向における一対の側壁78の端部を互いに繋ぐ。
【0045】
図2に示すように、金属シール部76は、複数の第1連通孔シール部82と、第1流路シール部84とを含む。複数の第1連通孔シール部82は、酸化剤ガス供給連通孔26a、酸化剤ガス排出連通孔26b、燃料ガス供給連通孔28a及び燃料ガス排出連通孔28bを個別に囲む。第1流路シール部84は、冷却媒体供給連通孔30a、第1冷却媒体流路68及び冷却媒体排出連通孔30bを囲む。
【0046】
第2金属セパレータ36は、板状に形成されている。第2金属セパレータ36は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板又はアルミニウム板等の金属薄板である。第2金属セパレータ36には、防食処理が施されてもよい。第2金属セパレータ36は、長方形状に形成されている。第2金属セパレータ36の一端縁部(矢印B1方向の端縁部)には、酸化剤ガス供給連通孔26aと、冷却媒体供給連通孔30aと、燃料ガス排出連通孔28bとが設けられている。第2金属セパレータ36の他端縁部(矢印B2方向の端縁部)には、燃料ガス供給連通孔28aと、冷却媒体排出連通孔30bと、酸化剤ガス排出連通孔26bとが設けられている。第2金属セパレータ36は、金属板をプレス成形することにより形成される。
【0047】
図2及び図3に示すように、第2金属セパレータ36は、樹脂枠付き膜電極接合体32を向く第2表面36aと、隣接する発電セル10の第1金属セパレータ34を向く第2裏面36bとを有する。
【0048】
第2金属セパレータ36の第2表面36aには、第2ガス流路86が形成されている。第2ガス流路86は、第2電極46に沿って燃料ガスを流通させる燃料ガス流路である。第2ガス流路86は、複数の第2流路凸部88と複数の第2流路溝90とを含む。第2流路凸部88と第2流路溝90とは、矢印C方向に交互に設けられている。第2流路凸部88及び第2流路溝90の各々は、矢印B方向に直線状に延在している。なお、第2流路凸部88及び第2流路溝90の各々は、矢印B方向に波状に延在してもよい。
【0049】
図2に示すように、第2ガス流路86は、複数の第2供給トンネル(トンネル)92を介して燃料ガス供給連通孔28aに連通している。複数の第2供給トンネル92は、矢印C方向に間隔を空けて並んでいる。第2供給トンネル92は、矢印B方向に延在している。第2供給トンネル92は、第2金属セパレータ36の第2表面36aから第2裏面36bに向かって(矢印A2方向に向かって)膨出している(図6参照)。第2供給トンネル92の内部には、燃料ガスが流通可能である。
【0050】
第2ガス流路86は、複数の第2排出トンネル(トンネル)94を介して燃料ガス排出連通孔28bに連通している。複数の第2排出トンネル94は、矢印C方向に間隔を空けて並んでいる。第2排出トンネル94は、矢印B方向に延在している。第2排出トンネル94は、第2金属セパレータ36の第2表面36aから第2裏面36bに向かって膨出している。第2排出トンネル94の内部には、燃料ガスが流通可能である。
【0051】
第2供給トンネル92と第2ガス流路86との間には、入口バッファ部96が設けられている。第2排出トンネル94と第2ガス流路86との間には、出口バッファ部98が設けられている。
【0052】
図3に示すように、第2金属セパレータ36は、樹脂枠部40が接合される第2接合部100を有する。第2接合部100には、第2接着剤層102を介して樹脂枠部40が接合される。第2接着剤層102は、上述した第1接着剤層64と同様の接着剤66によって構成されている。
【0053】
第2接着剤層102は、例えば、液状の接着剤66を第2金属セパレータ36の第2表面36aに塗布することにより形成される。なお、第2接着剤層102は、樹脂枠部40の他方の面(第2金属セパレータ36を向く面)に液状の接着剤66を塗布することにより形成されてもよい。第2接着剤層102は、接着剤66により形成された所定形状の接着剤シートを第2金属セパレータ36と樹脂枠部40との間に挟むことにより形成してもよい。
【0054】
図2に示すように、第2接着剤層102は、酸化剤ガス供給連通孔26a、酸化剤ガス排出連通孔26b、燃料ガス供給連通孔28a、燃料ガス排出連通孔28b、冷却媒体供給連通孔30a及び冷却媒体排出連通孔30bを個別に囲む。第2接着剤層102は、第2ガス流路86を囲む。
【0055】
図5に示すように、第2金属セパレータ36の第2裏面36bには、第2冷却媒体流路104が形成されている。第2冷却媒体流路104は、第2ガス流路86の裏面形状を有する。第2冷却媒体流路104と冷却媒体供給連通孔30aとの間には、入口バッファ部106が設けられている。第2冷却媒体流路104と冷却媒体排出連通孔30bとの間には、出口バッファ部108が設けられている。
【0056】
第2金属セパレータ36の第2裏面36bには、酸化剤ガス、燃料ガス又は冷却媒体である流体の外部への漏出を防止するめの第2シール部(シール部)110が設けられている。第2シール部110は、線状に延在している。図3に示すように、第2シール部110は、第2金属セパレータ36の第2裏面36bに取り付けられた弾性変形可能な樹脂シール部材112を有する。樹脂シール部材112は、第2金属セパレータ36の第2接合部100に取り付けられている。
【0057】
樹脂シール部材112は、ゴム材料によって構成されている。具体的には、樹脂シール部材112の構成材料としては、例えば、EPDM(エチレン-プロピレンゴム)、NBR、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等が挙げられる。樹脂シール部材112は、四角形状の横断面を有する。
【0058】
第2シール部110は、複数の第2連通孔シール部(連通孔シール部)114と、第2流路シール部(流路シール部)116とを含む。複数の第2連通孔シール部114は、酸化剤ガス供給連通孔26a、酸化剤ガス排出連通孔26b、燃料ガス供給連通孔28a及び燃料ガス排出連通孔28bを個別に囲む。第2流路シール部116は、冷却媒体供給連通孔30a、第2冷却媒体流路104及び冷却媒体排出連通孔30bを囲む。
【0059】
以下、燃料ガス供給連通孔28aを囲む第2連通孔シール部114を「第2連通孔シール部114a」と称呼し、燃料ガス排出連通孔28bを囲む第2連通孔シール部114を「第2連通孔シール部114b」と称呼することがある。
【0060】
図5図7に示すように、第2連通孔シール部114aと第2流路シール部116とは、第2供給トンネル92の延在方向と交差する方向(矢印C方向)に複数の第2供給トンネル92に跨がるように延在している。第2連通孔シール部114aと第2流路シール部116とは、第2供給トンネル92の外面に接触している。また、図5に示すように、第2連通孔シール部114bと第2流路シール部116とは、第2排出トンネル94の延在方向と交差する方向(矢印C方向)に複数の第2排出トンネル94に跨がるように延在している。第2連通孔シール部114bと第2流路シール部116とは、第2排出トンネル94の外面に接触している。また、図7に示すように、第2シール部110(樹脂シール部材112)は、互いに隣り合う第2供給トンネル92の間の凹部に入り込むように設けられている。換言すれば、互いに隣り合う第2供給トンネル92の間の凹部には、第2シール部110(樹脂シール部材112)が充填されている。さらに、第2シール部110(樹脂シール部材112)は、互いに隣り合う第2排出トンネル94の間の凹部に入り込むように設けられている。換言すれば、互いに隣り合う第2排出トンネル94の間の凹部には、第2シール部110(樹脂シール部材112)が充填されている。
【0061】
ところで、例えば、第2シール部110を上述した金属シール部76のように構成した場合、当該第2シール部110の内部は、第2供給トンネル92の内部と第2排出トンネル94の内部とに連通する。この場合、燃料ガス供給連通孔28aから第2供給トンネル92に供給された燃料ガスの一部は、第2流路シール部116の内部と第2排出トンネル94の内部とを介して燃料ガス排出連通孔28bに流れてしまう。すなわち、燃料ガスの一部が第2ガス流路86をバイパスすることになるため、第2ガス流路86に燃料ガスを効率よく導くことができない。
【0062】
一方、図7に示すように、第2シール部110が樹脂シール部材112であると、第2シール部110の内部に燃料ガスが流通することができないため、燃料ガスが第2ガス流路86をバイパスすることを防止することができる。これにより、第2ガス流路86に燃料ガスを効率よく導くことができる。なお、第1金属セパレータ34では、第1シール部74が金属シール部76であるため、第1シール部74の内部は、第1供給トンネル54の内部と第1排出トンネル56の内部とに連通する。この場合、酸化剤ガス供給連通孔26aから第1供給トンネル54に供給された酸化剤ガスの一部は、第1シール部74の内部と第1排出トンネル56の内部とを介して酸化剤ガス排出連通孔26bに流れる。すなわち、酸化剤ガスの一部は、第1ガス流路48をバイパスする。しかしながら、第1ガス流路48をバイパスする流体は燃料ガスではなく酸化剤ガスであるため、発電効率に与える影響は僅かである。
【0063】
図3図6及び図7に示すように、樹脂シール部材112は、複数の発電セル10が互いに積層された状態で、金属シール部76に接触する。以下、複数の発電セル10が互いに積層された状態を「発電セル10の積層状態」と称呼する。なお、発電セル10の積層状態では、複数の発電セル10には所定の締付荷重が付与されている。
【0064】
樹脂シール部材112は、発電セル10の積層状態で、金属シール部76の先端面80aに接触する。この状態で、金属シール部76及び樹脂シール部材112の各々は、弾性変形している。すなわち、金属シール部76と樹脂シール部材112とには、適度なシール面圧が作用する。これにより、第1金属セパレータ34と第2金属セパレータ36との間から流体が漏れることを防止することができる。なお、発電セル10の積層状態で、金属シール部76の先端面80aは、平坦である。また、図3及び図6に示す構成の場合には、第2金属セパレータ36のうちの樹脂シール部材112に接触する部分は、金属シール部76のように突出しておらず、平坦である。つまり、第2金属セパレータ36における金属シール部76に対して積層方向に位置する部分は、金属シール部76のように突出しておらず、平坦である。
【0065】
図3に示すように、発電セル10の積層状態で、樹脂シール部材112の幅寸法W1は、金属シール部76の先端面80aの幅寸法W2よりも大きい。幅寸法W1は、樹脂シール部材112の延在方向(第1方向)と発電セル10の積層方向とに交差する方向(第2方向)における樹脂シール部材112の寸法である。金属シール部76の先端面80aの幅寸法W2は、金属シール部76の延在方向(第1方向)と発電セル10の積層方向とに交差する方向(第2方向)における金属シール部76の先端面80aの寸法である。樹脂シール部材112の幅寸法W1は、金属シール部76の延在方向(第1方向)と発電セル10の積層方向とに交差する方向(第2方向)における金属シール部76の基端部の幅寸法W3よりも大きい。
【0066】
幅寸法W1は、幅寸法W3以下であってもよい。この場合、幅寸法W1は、幅寸法W2よりも大きくてもよいし、幅寸法W2以下であってもよい。
【0067】
燃料電池スタック12は、図8に示すように、発電セル10を複数製造した後で、これら発電セル10を互いに積層する。この状態で一対のエンドプレート20a、20b(図1参照)によって締付荷重を付与することによって製造される。発電セル10の積層前の状態で、金属シール部76の先端面80aは、金属シール部76の突出方向に向かって凸状に湾曲している。金属シール部76の先端面80aは、発電セル10に締付荷重を付与した時に金属シール部76が弾性変形することにより平坦になる(図3参照)。
【0068】
本実施形態に係る燃料電池スタック12は、以下のように動作する。
【0069】
まず、図1及び図2に示すように、酸化剤ガスは、酸化剤ガス供給連通孔26aに供給される。燃料ガスは、燃料ガス供給連通孔28aに供給される。冷却媒体は、冷却媒体供給連通孔30aに供給される。
【0070】
酸化剤ガスは、酸化剤ガス供給連通孔26aから、第1供給トンネル54の内部を介して第1ガス流路48に導入される。酸化剤ガスは、第1ガス流路48を矢印B2方向に流れながら膜電極接合体38の第1電極44に供給される。
【0071】
燃料ガスは、燃料ガス供給連通孔28aから第2供給トンネル92の内部を介して第2ガス流路86に導入される。燃料ガスは、第2ガス流路86を矢印B1方向に流れながら膜電極接合体38の第2電極46に供給される。
【0072】
膜電極接合体38では、第1電極44に供給される酸化剤ガスと、第2電極46に供給される燃料ガスとが電気化学反応により消費される。この結果、発電が行われる。
【0073】
次いで、第1電極44に供給されて一部が消費された酸化剤ガスは、酸化剤排ガスとして、第1ガス流路48から第1排出トンネル56の内部を介して酸化剤ガス排出連通孔26bに排出される。第2電極46で消費された燃料ガスは、燃料排ガスとして、第2ガス流路86から第2排出トンネル94の内部を介して燃料ガス排出連通孔28bに排出される。
【0074】
冷却媒体供給連通孔30aに供給された冷却媒体は、第1金属セパレータ34と第2金属セパレータ36との間に設けられた第1冷却媒体流路68及び第2冷却媒体流路104とに導入される。冷却媒体は、第1冷却媒体流路68及び第2冷却媒体流路104に導入された後、矢印B2方向に流通する。この冷却媒体は、膜電極接合体38を冷却した後、冷却媒体排出連通孔30bから排出される。
【0075】
本実施形態によれば、金属シール部76と樹脂シール部材112とが電解質膜42の平面方向に互いに位置ずれした場合であっても、樹脂シール部材112を当該平面方向に容易に弾性変形させることができるため金属シール部76と樹脂シール部材112との接触状態を維持することができる。従って、第1金属セパレータ34と第2金属セパレータ36との間からの流体の漏れを効果的に防止することができる。また、第1シール部74が金属シール部76であるため、第1シール部74と第2シール部110との両方を樹脂シール部材112により構成する場合と比較して、樹脂シール部材112の使用量を少なくできる。これにより、材料コストを抑えることができる。
【0076】
(変形例)
発電セル10の第2金属セパレータ36は、上述した第2シール部110に代えて図9に示す変形例に係る第2シール部110aを有してもよい。なお、本変形例において、上述した燃料電池スタック12の構成と同一の構成については、同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0077】
図9に示すように、第2シール部110aは、金属シール部120と、樹脂シール部材112aとを含む。金属シール部120は、第1シール部74の金属シール部76と同様に構成されている。樹脂シール部材112aは、金属シール部120の先端面に取り付けられている。樹脂シール部材112aは、上述した樹脂シール部材112と同様に構成されている。このような場合、発電セル10の積層状態で、第2シール部110aの樹脂シール部材112aは、第1シール部74の金属シール部76の先端面80aに接触する。
【0078】
本変形例では、樹脂シール部材112aは、金属シール部120の先端面ではなく第1シール部74の金属シール部76の先端面80aに取り付けられてもよい。
【0079】
上記実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0080】
(付記1)
本開示の発電セル(10)は、電解質膜(42)と、前記電解質膜の両側に配設されたカソード電極(44)及びアノード電極(46)とを有する膜電極接合体(38)と、前記膜電極接合体の両側に配設された第1金属セパレータ(34)及び第2金属セパレータ(36)と、を備え、前記第1金属セパレータ及び前記第2金属セパレータの各々には、酸化剤ガス、燃料ガス又は冷却媒体である流体が流通する流路が設けられた発電セルであって、前記発電セルは、前記第1金属セパレータと前記第2金属セパレータとが互いに隣接するように複数積層され、前記第1金属セパレータ及び前記第2金属セパレータの各々には、前記第1金属セパレータと前記第2金属セパレータとの間からの前記流体の漏れを防止するためのシール部(74、110、110a)が設けられ、前記第1金属セパレータの前記シール部は、前記第1金属セパレータから前記膜電極接合体とは反対側に向かって突出した弾性変形可能な金属シール部(76)であり、前記第2金属セパレータの前記シール部は、前記第2金属セパレータの前記膜電極接合体とは反対側の面(36b)に取り付けられた弾性変形可能な樹脂シール部材(112、112a)を有し、前記樹脂シール部材は、複数の前記発電セルが互いに積層された状態で、前記金属シール部に接触する。
【0081】
このような構成によれば、金属シール部と樹脂シール部材とが電解質膜の平面方向に互いに位置ずれした場合であっても、樹脂シール部材を当該平面方向に容易に弾性変形させることができるため金属シール部と樹脂シール部材との接触状態を維持することができる。従って、第1金属セパレータと第2金属セパレータとの間からの流体の漏れを効果的に防止することができる。また、第1金属セパレータのシール部が金属シール部であるため、全てのシール部を樹脂シール部材により構成する場合と比較して、樹脂シール部材の使用量を少なくできる。これにより、材料コストを抑えることができる。
【0082】
(付記2)
付記1に記載の発電セルにおいて、前記膜電極接合体の外周部には、前記膜電極接合体を周回するように延在した樹脂枠部(40)が設けられ、前記第2金属セパレータは、前記樹脂枠部が接合される接合部(100)を有し、前記樹脂シール部材は、前記接合部に取り付けられてもよい。
【0083】
このような構成によれば、第2金属セパレータに金属シール部が形成されないため第2金属セパレータの構成を簡素にできる。
【0084】
(付記3)
付記2に記載の発電セルにおいて、前記第2金属セパレータの前記流路は、前記燃料ガスを複数の前記発電セルの積層方向に流通させる燃料ガス連通孔(28a、28b)と、前記アノード電極に沿って前記燃料ガスを流通させる燃料ガス流路(86)と、前記燃料ガス連通孔と前記燃料ガス流路とを互いに連通させるトンネル(92、94)と、を含み、前記樹脂シール部材は、前記燃料ガス連通孔を囲む連通孔シール部(114)と、前記燃料ガス流路を囲む流路シール部(116)と、を有し、前記連通孔シール部と前記流路シール部とは、前記トンネルの外面に接触してもよい。
【0085】
このような構成によれば、樹脂シール部材が連通孔シール部と流路シール部とを有するため、トンネルの内部を流通する燃料ガスの一部が連通孔シール部の内部及び流路シール部の内部に流れることがない。これにより、燃料ガスが燃料ガス流路をバイパスすることを抑制できる。すなわち、燃料ガスを燃料ガス流路に効率よく供給することができる。よって、発電セルの燃費の向上を図ることができる。
【0086】
(付記4)
付記1~3のいずれか1つに記載の発電セルにおいて、前記シール部は、前記電解質膜の平面方向に沿った第1方向に線状に延在し、複数の前記発電セルの積層方向と前記第1方向とに交差する第2方向における前記樹脂シール部材の幅寸法(W1)は、前記第2方向における前記金属シール部の先端面(80a)の幅寸法(W2)よりも大きくてもよい。
【0087】
このような構成によれば、樹脂シール部材と金属シール部とが電解質膜の平面方向に位置ずれした場合でも、樹脂シール部材と金属シール部との接触状態を維持し易くなる。これにより、樹脂シール部材と金属シール部との間を良好にシールすることができる。
【0088】
(付記5)
付記1~4のいずれか1つに記載の発電セルにおいて、前記金属シール部の先端面は、前記発電セルの積層前の状態で、前記金属シール部の突出方向に向かって凸状に湾曲してもよい。
【0089】
このような構成によれば、発電セルの積層前の状態で金属シール部の先端面を平坦に形成した場合と比較して、複数の発電セルを積層する際にシール部に作用する面圧を高めることができる。これにより、複数の発電セルを積層する際に金属シール部と樹脂シール部材とが電解質膜の平面方向に互いに位置ずれし難くなる。また、発電セルの積層前の状態で金属シール部の先端面を平坦に形成した場合と比較して、複数の発電セルに締付荷重を付与した際にシール部に作用する反力を小さくすることができる。この場合、シール部に作用する反力を受ける部材(エンドプレート又は筐体)の剛性を必要以上に大きく設定しなくてよいため、燃料電池スタックを軽量にすることができる。これにより、燃料電池スタックの製造コストの削減を図ることができる。
【0090】
(付記6)
付記1~5のいずれか1つに記載の発電セルにおいて、前記第2金属セパレータの前記シール部は、前記第2金属セパレータから前記膜電極接合体とは反対側に向かって突出する弾性変形可能な他の金属シール部(120)を有し、前記樹脂シール部材は、前記他の金属シール部の先端面に取り付けられてもよい。
【0091】
このような構成によれば、樹脂シール部材の使用量を一層少なくすることができる。
【0092】
(付記7)
本開示の燃料電池スタック(12)は、付記1~6のいずれか1つに記載の発電セルが複数積層される。
【0093】
本開示について詳述したが、本開示は上述した個々の実施形態に限定されるものではない。これらの実施形態は、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、又は、請求の範囲に記載された内容とその均等物から導き出される本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、置き換え、変更、部分的削除等が可能である。また、これらの実施形態は、組み合わせて実施することもできる。例えば、上述した実施形態において、各動作の順序や各処理の順序は、一例として示したものであり、これらに限定されるものではない。また、上述した実施形態の説明に数値又は数式が用いられている場合も同様である。
【符号の説明】
【0094】
10…発電セル 12…燃料電池スタック
28a…燃料ガス供給連通孔(燃料ガス連通孔)
28b…燃料ガス排出連通孔(燃料ガス連通孔)
34…第1金属セパレータ 36…第2金属セパレータ
38…膜電極接合体 40…樹脂枠部
42…電解質膜 44…第1電極(カソード電極)
46…第2電極(アノード電極) 74…第1シール部(シール部)
76…金属シール部 80a…先端面
86…第2ガス流路(燃料ガス流路) 92…第2供給トンネル(トンネル)
94…第2排出トンネル(トンネル) 100…第2接合部(接合部)
110、110a…第2シール部(シール部)
112、112a…樹脂シール部材
114…第2連通孔シール部(連通孔シール部)
116…第2流路シール部(流路シール部)
120…金属シール部 W1~W3…幅寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9