IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大阪ガスケミカル株式会社の特許一覧

特開2024-144116フルオレン骨格を有するジオール化合物およびその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144116
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】フルオレン骨格を有するジオール化合物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 33/36 20060101AFI20241003BHJP
   C07C 29/147 20060101ALI20241003BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C07C33/36
C07C29/147
G02B1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024010966
(22)【出願日】2024-01-29
(31)【優先権主張番号】P 2023054704
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】安田 理恵
(72)【発明者】
【氏名】鞍谷 裕嗣
(72)【発明者】
【氏名】宮内 信輔
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB92
4H006AC41
4H006BA02
4H006BA31
4H006BB15
4H006BB16
4H006BB17
4H006BB25
4H006BB31
4H006BC10
4H006FC54
4H006FE11
4H006FG22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高屈折率で耐熱性が高く取り扱い性に優れたフルオレン含有アルコールの提供。
【解決手段】9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有するジカルボン酸またはそのエステルを還元して、下記式(1)で表される新規なジオール化合物を製造する。

(式中、環Z、環Zはアレーン環を示し、A、Aはアルキレン基を示し、k1、k2は0以上の整数を示し、R、Rは置換基を示し、n1、n2は0~4の整数を示し、Rは置換基を示し、mは0~8の整数を示す)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるジオール化合物。
【化1】
(式中、
環Zおよび環Zは独立してアレーン環を示し、
およびAは独立してアルキレン基を示し、k1およびk2は独立して0以上の整数を示し、
およびRは独立して置換基を示し、
n1およびn2は独立して0~4の整数を示し、
は置換基を示し、
mは0~8の整数を示す)
【請求項2】
前記式(1)において、環Zおよび環Zは独立してC6-10アレーン環であり、n1、n2およびmが0である請求項1記載のジオール化合物。
【請求項3】
結晶体である請求項1または2記載のジオール化合物。
【請求項4】
下記式(2)で表されるジカルボン酸またはそのエステルを還元する工程を含む請求項1または2記載のジオール化合物の製造方法。
【化2】
(式中、
環Zおよび環Zは独立してアレーン環を示し、
およびXは独立して水素原子またはアルキル基を示し、
およびRは独立して置換基を示し、
n1およびn2は独立して0~4の整数を示し、
は置換基を示し、
mは0~8の整数を示す)
【請求項5】
前記式(2)において、XおよびXが水素原子であるジカルボン酸をエステル化した後、得られたエステル化物を還元する請求項4記載の方法。
【請求項6】
請求項1または2記載のジオール化合物を重合成分とする樹脂。
【請求項7】
請求項6記載の樹脂を含む成形体。
【請求項8】
光学部材である請求項7記載の成形体。
【請求項9】
光学フィルムまたは光学レンズである請求項8記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する新規なジオール化合物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオレン骨格を有する化合物は、屈折率、耐熱性などにおいて優れた機能を有しており、樹脂原料や添加剤として用いられている。なかでも、9,9-ビスフェニルフルオレン骨格を有するジオール化合物は、カルド構造に由来して特に優れた光学的特性を示すことで知られており、光学用プラスチック(または光学用樹脂材料)として利用されている。特に、9,9-ビスフェニルフルオレン骨格の優れた機能を樹脂などに導入し易い化合物としては、例えば、ビスフェノールフルオレン(BPF)、ビスクレゾールフルオレン(BCF)、ビスフェノキシエタノールフルオレン(BPEF)などが汎用されている。
【0003】
また、特開2009-155251号公報(特許文献1)には、ヒドロキシル基を有するフルオレン化合物として、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシプロポキシ)-3,5-ジメチルフェニル]フルオレンなどのフルオレン化合物も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-155251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、近年の光学材料は、用途によっては、諸特性のバランスが求められる。例えば、光学材料では、高屈折で、かつ高い耐熱性が求められる反面、融点が高すぎると、成形性などの取り扱い性には不利と働くため、取り扱い性に優れた適度な融点と耐熱性とを兼ね添えた特性が必要とされる。また、取り扱い性の観点からは、適度な融点を有することに加えて、溶剤に対する溶解性も要求され、特に、汎用溶媒である環状エーテル系溶媒に対する溶解性は重要である。
【0006】
しかし、特許文献1などの従来のヒドロキシル基を有するフルオレン化合物のみでは、近年の多様化する用途に対して要求される特性を満たすことはできない。
【0007】
従って、本開示の目的は、高屈折率で耐熱性が高く、取り扱い性にも優れた新規なフルオレン含有ジオールおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有するジカルボン酸またはそのエステルを還元することにより、高屈折率で耐熱性が高く、取り扱い性にも優れた新規なジオール化合物(フルオレン含有ジオール)が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本開示の態様[1]としてのジオール化合物は、下記式(1)で表される。
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、
環Zおよび環Zは独立してアレーン環を示し、
およびAは独立してアルキレン基を示し、k1およびk2は独立して0以上の整数を示し、
およびRは独立して置換基を示し、
n1およびn2は独立して0~4の整数を示し、
は置換基を示し、
mは0~8の整数を示す)
【0012】
本開示の態様[2]は、前記態様[1]の式(1)において、環Zおよび環Zが独立してC6-10アレーン環であり、n1、n2およびmが0である態様である。
【0013】
本開示の態様[3]は、前記態様[1]または[2]のジオール化合物が結晶体である態様である。
【0014】
本開示には、態様[4]として、下記式(2)で表されるジカルボン酸またはそのエステルを還元する工程を含む、前記態様[1]~[3]のいずれかの態様のジオール化合物の製造方法も含まれる。
【0015】
【化2】
【0016】
(式中、
環Zおよび環Zは独立してアレーン環を示し、
およびXは独立して水素原子またはアルキル基を示し、
およびRは独立して置換基を示し、
n1およびn2は独立して0~4の整数を示し、
は置換基を示し、
mは0~8の整数を示す)
【0017】
本開示の態様[5]は、前記態様[4]の式(2)において、XおよびXが水素原子であるジカルボン酸をエステル化した後、得られたエステル化物を還元する態様である。
【0018】
本開示には、態様[6]として、前記態様[1]~[3]のいずれかの態様のジオール化合物を重合成分とする樹脂も含まれる。
【0019】
本開示には、態様[7]として、前記態様[6]の樹脂を含む成形体も含まれる。
【0020】
本開示の態様[8]は、前記態様[7]の成形体が光学部材である態様である。
【0021】
本開示の態様[9]は、前記態様[8]の光学部材が光学フィルムまたは光学レンズである態様である。
【0022】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、置換基などの炭素原子の数をC、C、C10などで示すことがある。例えば「Cアルキル基」は炭素数が1のアルキル基を意味し、「C6-10アリール基」は炭素数が6~10のアリール基を意味する。
【0023】
また、本明細書および特許請求の範囲において、「独立して」とは、2つの構成要素が、それぞれ独立した構成要素であることを意味し、例えば、アルキレン基AおよびAの場合、AとAとが同一のアルキレン基である必要はなく、異なるアルキレン基であってもよいことを意味する。
【0024】
さらに、本明細書および特許請求の範囲において、「X~Y」を用いて数値範囲を示す場合、端の数値XおよびYを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本開示の新規なフルオレン含有ジオールは、高屈折率で耐熱性が高く、取り扱い性にも優れている。特に、融点が比較的高いにも拘わらず、耐熱性にも優れるとともに、ジオキサンやテトラヒドロフラン(THF)などの環状エーテル系溶媒に対する溶解性も優れている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[新規なフルオレン含有ジオール]
本開示の9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する新規なジオール化合物(フルオレン含有ジオール)は、前記式(1)で表される。
【0027】
環Zおよび環Zで表されるアレーン環(芳香族炭化水素環)としては、ベンゼン環などの単環式アレーン環、多環式アレーン環などが挙げられ;多環式アレーン環としては、縮合多環式アレーン環(縮合多環式芳香族炭化水素環)、環集合アレーン環(環集合多環式芳香族炭化水素環)などが挙げられる。
【0028】
縮合多環式アレーン環としては、縮合二環式アレーン環、具体的には、ナフタレン環、インデン環などの縮合二環式C10-16アレーン環など;縮合三環式アレーン環などの縮合二ないし四環式アレーン環などが挙げられる。縮合三環式アレーン環としては、アントラセン環、フェナントレン環などの縮合三環式C14-20アレーン環などが挙げられる。好ましい縮合多環式アレーン環は、ナフタレン環などの縮合二環式C10-14アレーン環である。環集合アレーン環としては、ビフェニル環、フェニルナフタレン環、ビナフチル環などのビアレーン環;テルフェニル環などのテルアレーン環などが挙げられる。好ましい環集合アレーン環は、ビフェニル環などのC12-18ビアレーン環である。
【0029】
なお、本明細書および特許請求の範囲において「環集合アレーン環」とは、2つ以上の環系(アレーン環系)が一重結合(単結合)か二重結合で直結し、環を直結する結合の数が環系の数より1つだけ少ないものを意味し、例えば、上述のように、フェニルナフタレン環、ビナフチル環などは縮合多環式アレーン環骨格を有していても環集合アレーン環に分類され、ナフタレン環(非環集合アレーン環)などの「縮合多環式アレーン環」と明確に区別される。
【0030】
好ましい環ZおよびZは、C6-14アレーン環、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6-12アレーン環、さらに好ましくはベンゼン環、ナフタレン環などのC6-10アレーン環、最も好ましくはベンゼン環、ナフタレン環である。
【0031】
環ZおよびZの種類は、互いに異なっていてもよいが、通常、同一である。
【0032】
なお、フルオレン環の9位に対する環ZおよびZの結合位置は、特に限定されず、例えば、環ZおよびZがナフタレン環であるとき、1位または2位、好ましくは2位であり、環ZおよびZがビフェニル環であるとき、2位、3位、4位のいずれかの位置、好ましくは3位である。
【0033】
およびAで表されるアルキレン基(直鎖状または分岐鎖状アルキレン基)としては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、1,2-ブタンジイル基、テトラメチレン基などのC2-8アルキレン基などが挙げられる。これらのアルキレン基は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、C2-6アルキレン基が好ましく、C2-4アルキレン基がさらに好ましく、エチレン基、プロピレン基などのC2-3アルキレン基がより好ましく、エチレン基が最も好ましい。アルキレン基Aとアルキレン基Aとは、異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
【0034】
繰り返し数k1およびk2は、それぞれ0以上であり、例えば0~15の整数の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、0~10、0~8、0~6、0~4、0~2、0~1であり、最も好ましくは0である。k1およびk2がそれぞれ2以上の整数である場合、2以上のアルキレン基AおよびAの種類は、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0035】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「繰り返し数(付加モル数)」は、平均値(算術平均値、相加平均値)または平均付加モル数であってもよく、好ましい態様は、上述の好ましい整数の範囲と同様であってもよい。
【0036】
前記式(1)において、環ZおよびZに対する基[-CH-O-(AO)k1-H]および基[-CH-O-(AO)k2-H](特に、-CHOH)の置換位置は、特に限定されず、環ZおよびZがベンゼン環であるとき、フルオレン環の9位に結合するフェニル基の2位、3位、4位のいずれの位置であってもよいが、3位または4位が好ましく、4位が特に好ましい。また、環ZおよびZがナフタレン環であるとき、フルオレン環の9位に対してナフタレン環の1位または2位が結合し(1-ナフチルまたは2-ナフチルの関係で結合し)、この結合位置に対して、基[-CH-O-(AO)k1-H]および基[-CH-O-(AO)k2-H]は、1,5-位、2,6-位などの関係で置換しているのが好ましく、2,6-位の関係で置換しているのが特に好ましい。さらに、環ZおよびZがビフェニル環であるとき、フルオレン環の9位に対してビフェニル環の3位または4位が結合してもよく、フルオレン環の9位に対してビフェニル環の3位が結合する場合、基[-CH-O-(AO)k1-H]および基[-CH-O-(AO)k2-H]は、ビフェニル環の6位または4’位に置換するのが好ましく、6位に置換するのが特に好ましい。
【0037】
およびRで表される置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。
【0038】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0039】
アルキル基としては、直鎖状または分岐鎖状アルキル基が含まれ、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基などのC1-10アルキル基、好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはC1-4アルキル基が挙げられる。
【0040】
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、t-ブトキシ基などのC1-10アルコキシ基が挙げられる。
【0041】
アシル基としては、アセチル基などのC1-6アルキル-カルボニル基などが挙げられる。
【0042】
置換アミノ基としては、ジメチルアミノ基などのモノまたはジC1-4アルキルアミノ基;ジアセチルアミノ基などのモノまたはビス(C1-4アルキル-カルボニル)アミノ基などが挙げられる。
【0043】
代表的な基RおよびRとしては、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基などが挙げられる。好ましい基RおよびRは、アルキル基、具体的には、メチル基などのC1-6アルキル基;アルコキシ基、具体的には、メトキシ基などのC1-4アルコキシ基であり;特に好ましくはメチル基などのC1-4アルキル基である。
【0044】
置換数n1およびn2は、0~4の整数、好ましくは0~2の整数、さらに好ましくは0または1、より好ましくは0である。n1およびn2が2以上の整数であるとき、2以上の基RおよびRの種類は同一または異なっていてもよい。
【0045】
基RおよびRの置換位置は特に制限されず、通常、環ZおよびZにおいて、基[-CH-O-(AO)k1-H]および基[-CH-O-(AO)k2-H]に対して少なくともオルト位[前記基の結合位置に隣接する炭素原子]に置換することが多い。
【0046】
で表される置換基としては、シアノ基、ハロゲン原子、アルキル基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、RおよびRのハロゲン原子として例示されたハロゲン原子などが挙げられる。アルキル基としても、RおよびRのアルキル基として例示されたアルキル基などが挙げられる。これらの置換基のうち、アルキル基が好ましく、C1-6アルキル基がさらに好ましく、メチル基などのC1-4アルキル基が特に好ましい。
【0047】
なお、基Rの置換数mが2以上である場合、フルオレン環を構成する2つのベンゼン環のうち、同一のベンゼン環に置換する2以上の基Rの種類は、同一または異なっていてもよく、異なるベンゼン環に置換する2以上の基Rの種類は、同一または異なっていてもよい。また、基Rの結合位置(置換位置)は、フルオレン環の1~8位である限り特に制限されず、例えば、フルオレン環の2位、7位、2,7位などが挙げられる。
【0048】
置換数mは、例えば0~6の整数であってもよく、好ましくは以下段階的に、0~4の整数、0~3の整数、0~2の整数、0または1であり、最も好ましくは0である。なお、フルオレン環を構成する2つのベンゼン環において、基Rのそれぞれの置換数は、互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
【0049】
前記式(1)で表されるジオール化合物としては、k1およびk2が0である下記式(1a)で表されるジオール化合物が好ましい。
【0050】
【化3】
【0051】
(式中、
環Zおよび環Zは独立してアレーン環を示し、
およびRは独立して置換基を示し、
n1およびn2は独立して0~4の整数を示し、
は置換基を示し、
mは0~8の整数を示す)
【0052】
前記式(1a)で表されるジオール化合物としては、9,9-ビス[3-(ヒドロキシメチル)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(ヒドロキシメチル)フェニル]フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシメチル-2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(5-ヒドロキシメチル-1-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス(ヒドロキシメチルC6-10アリール)フルオレン;9,9-ビス[4-(ヒドロキシメチル)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(ヒドロキメチル)-3,5-ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[(モノまたはジ)C1-4アルキル-(ヒドロキシメチル)C6-10アリール]フルオレンなどが挙げられる。これらのうち、9,9-ビス[4-(ヒドロキシメチル)フェニル]フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシメチル-2-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス(ヒドロキシメチルC6-10アリール)フルオレンが好ましい。
【0053】
[フルオレン含有ジオールの特性]
本開示のフルオレン含有ジオールは、高い屈折率を有しており、温度25℃、波長589nmにおける屈折率nDは、例えば1.6~1.8程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、1.60~1.78、1.61~1.75、1.62~1.70、1.63~1.68、1.64~1.66である。
【0054】
本開示のフルオレン含有ジオールの融点は、例えば100~250℃程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、150~230℃、160~200℃、170~190℃、175~185℃、177~180℃である。
【0055】
本開示のフルオレン含有ジオールの5%重量減少温度は、例えば250~450℃程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、270~400℃、280~370℃、300~350℃、310~330℃である。
【0056】
本開示のフルオレン含有ジオールの10%重量減少温度は、例えば250~500℃程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、280~450℃、300~400℃、320~370℃、330~350℃である。
【0057】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、フルオレン含有ジオールの屈折率、融点、5%重量減少温度および10%重量減少温度は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0058】
本開示のフルオレン含有ジオールは、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒などの極性溶媒に対する溶解性に優れており、環状エーテル系溶媒などのエーテル系溶媒に対する溶解性が特に優れている。
【0059】
本開示のフルオレン含有ジオールは、結晶体であってもよい。
【0060】
[フルオレン含有ジオールの製造方法]
本開示のフルオレン含有ジオールの製造方法は、特に制限されないが、例えば、前記式(2)で表されるフルオレン含有ジカルボン酸またはそのエステルを還元することにより製造できる。さらに、この還元反応は、前記式(2)において、XおよびXが水素原子であるフルオレン含有ジカルボン酸をエステル化するエステル化工程と、エステル化工程で得られたエステル化物[前記式(2)において、XおよびXがアルキル基であるジカルボン酸エステル]を還元する還元工程の2段階の工程を経るのが好ましい。
【0061】
本開示のフルオレン含有ジオールの製造方法において、エステル化工程および還元工程としては、いずれも慣用のエステル化方法および還元方法を利用でき、特に限定されない。特に、前記式(1)において、環Zおよび環Zがベンゼン環であるジオール化合物、環Zおよび環Zがナフタレン環であるジオール化合物は、それぞれ下記の製造方法で製造してもよい。
【0062】
(A)環Zおよび環Zがベンゼン環であるジオール化合物の製造方法
(エステル化工程)
エステル化工程では、下記式に示すように、必要であればエステル化触媒の存在下、式(2a)で表されるフルオレン含有ジカルボン酸を、ROHおよびROHで表されるエステル化剤でエステル化することにより、式(2b)で表されるエステル化物を得ることができる。
【0063】
【化4】
【0064】
[式中、RおよびRは独立してアルキル基を示し、R、R、n1、n2、Rおよびmは、好ましい態様も含めて、前記式(1)に同じ]
【0065】
エステル化剤ROHおよびROHにおけるアルキル基RおよびRとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-6アルキル基が挙げられる。すなわち、ROHおよびROHで表されるエステル化剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの直鎖状または分岐鎖状C1-6アルカノールが挙げられる。これらのアルカノールは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、直鎖状または分岐鎖状C1-4アルカノールが好ましく、メタノールなどのC1-2アルカノールがより好ましい。ROHで表されるエステル化剤は、ROHで表されるエステル化剤と異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
【0066】
エステル化剤の割合は、前記式(2a)で表されるフルオレン含有ジカルボン酸1モルに対して0.8~300モル程度の範囲から選択でき、例えば1~200モル、さらに好ましくは1.5~150モルであり、前記フルオレン含有ジカルボン酸に対して過剰量であってもよく、前記式(2a)で表されるフルオレン含有ジカルボン酸1モルに対して、例えば10~300モル、好ましくは30~200モル、さらに好ましくは50~150モルである。エステル化剤の割合は、前記式(2a)で表されるフルオレン含有ジカルボン酸100質量部に対して、例えば100~2000質量部、好ましくは300~1500質量部、さらに好ましくは500~1000質量部である。
【0067】
エステル化触媒は、必須ではないが、反応性を向上できる点から、エステル化触媒の存在下でエステル化するのが好ましい。
【0068】
エステル化触媒としては、慣用のエステル化触媒を利用できる。慣用のエステル化触媒としては、例えば、酸触媒、塩基触媒、金属アルコキシドなどが挙げられる。これらの触媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、酸触媒が好ましい。
【0069】
酸触媒は、ブレンステッド酸;三フッ化ホウ素エーテラート、四塩化スズなどのルイス酸のいずれであってもよく、ブレンステッド酸は、無機酸、有機酸などの可溶性酸(反応系で可溶な非固体酸);陽イオン交換樹脂、シリカなどの担体にパーフルオロアルキルスルホン酸樹脂が担持された担持触媒、フェノールスルホン酸樹脂などの固体酸などであってもよい。固体酸は多孔質であってもよい。これらの酸触媒は水和物であってもよい。これらの酸触媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0070】
前記無機酸としては、例えば、強酸、具体的には、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸など;ホモまたはヘテロポリ酸、具体的には、タングストリン酸、モリブドリン酸、タングストケイ酸、モリブドケイ酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、ケイタングステン酸、ケイモリブデン酸などが挙げられる。
【0071】
前記有機酸としては、スルホン酸、具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのフルオロアルカンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などのアレーンスルホン酸などが挙げられる。
【0072】
なお、酸触媒は、必要であれば、ホウ酸;ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリアミルなどのホウ酸エステルと併用してもよい。
【0073】
これらのうち、可溶性無機酸および可溶性有機酸(非固体酸)が好ましく、濃硫酸などの硫酸が特に好ましい。
【0074】
エステル化触媒の割合は、前記式(2a)で表されるフルオレン含有ジカルボン酸1モルに対して、例えば0.01~10モル、好ましくは0.1~5モル、さらに好ましくは0.5~3モル、より好ましくは1~2.5モルである。エステル化触媒の割合は、前記式(2a)で表されるフルオレン含有ジカルボン酸100質量部に対して、例えば1~1000質量部、好ましくは10~300質量部、さらに好ましくは20~100質量部、より好ましくは30~70質量部である。
【0075】
エステル化反応は、反応に不活性な有機溶媒中で行うことができ、有機溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類;アセトニトリルなどのニトリル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類などが挙げられる。これらの溶媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。また、前記エステル化剤であるアルカノールを反応溶媒として使用してもよい。
【0076】
エステル化反応は30~100℃程度の還流温度で行ってもよい。反応時間は、例えば1~24時間程度であってもよい。
【0077】
エステル化反応は、空気中で行ってもよく、窒素ガスや希ガスなどの不活性雰囲気中で行ってもよい。これらのうち、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気中で行うのが好ましい。
【0078】
エステル化反応は、攪拌しながら行うことができ、常圧下、加圧下または減圧下で行ってもよい。反応は、反応系から脱水しつつ行うことができ、必要であれば、脱水剤の存在下で行ってもよい。
【0079】
反応終了後、必要により、反応混合物を、慣用の分離精製方法、例えば、洗浄、抽出、ろ過、脱水、濃縮、デカンテーション、乾燥、晶析、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、吸着、これらを組み合わせた方法などにより分離精製してもよい。
【0080】
なお、前記式(2a)で表されるフルオレン含有ジカルボン酸の製造方法は、特に限定されず、例えば、特許第5324082号公報に記載の製造方法で製造できる。
【0081】
(還元工程)
還元工程では、下記式に示すように、還元剤を用いて(必要に応じてさらに活性化剤と組み合わせて)、式(2b)で表されるフルオレン含有ジカルボン酸エステルを還元することにより、式(2c)で表される新規なフルオレン含有ジオールを得ることができる。
【0082】
【化5】
【0083】
(式中、R~R、n1、n2およびmは前記に同じ)
【0084】
還元剤としては、慣用の還元剤を利用できる。慣用の還元剤としては、水素化ホウ素金属類、水素化アルミニウム金属類、ボラン類、水素化アルミニウム類、有機ケイ素化合物、有機スズ化合物などの金属水素化物などが挙げられる。
【0085】
水素化ホウ素金属類としては、水素化ホウ素アルカリ金属類;水素化ホウ素亜鉛(Zn(BH)などの水素化ホウ素亜鉛類などが挙げられる。水素化ホウ素アルカリ金属類としては、水素化ホウ素リチウム(LiBH)、トリエチル水素化ホウ素リチウム[LiBH(C]、トリs-ブチル水素化ホウ素リチウム[LiBH(s-C]、ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)水素化ホウ素リチウム[LiBH(Mes)]などの水素化ホウ素リチウム類;水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBHCN)、トリメトキシ水素化ホウ素ナトリウム[NaBH(OCH]、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム[NaBH(OCOCH]、水素化ホウ素ナトリウムの硫化物(NaBH)などの水素化ホウ素ナトリウム類;トリs-ブチル水素化ホウ素カリウム[KBH(s-C]などの水素化ホウ素カリウム類などが挙げられる。
【0086】
水素化アルミニウム金属類としては、水素化アルミニウムアルカリ金属類などが挙げられる。水素化アルミニウムアルカリ金属類としては、水素化アルミニウムリチウム[LiAlH]、水素化トリメトキシアルミニウムリチウム[LiAlH(OCH]、水素化トリt-ブトキシアルミニウムリチウム[LiAlH(Ot-C]などの水素化アルミニウムリチウム類;水素化アルミニウムナトリウム(NaAlH)、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム{[(CHOCHCHO)AlH]Na}などの水素化アルミニウムナトリウム類などが挙げられる。
【0087】
ボラン類としては、ジボラン;ボラン・テトラヒドロフラン錯体、ボラン・ジメチルスルフィド錯体などのボラン錯体;9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(9-BBN)などが挙げられる。
【0088】
水素化アルミニウム類としては、水素化アルミニウム(AlH)、水素化ジイソブチルアルミニウム[(i-CAlH]などが挙げられる。
【0089】
有機ケイ素化合物としては、トリエチルシランなどのトリアルキルシラン、ジフェニルシランなどのジアリールシラン、フェニルジメチルシランなどのアリールジアルキルシランなどが挙げられる。
【0090】
有機スズ化合物としては、トリn-ブチルスタンナンなどのトリアルキルスタンナン、ジn-ブチルスタンナンなどのジアルキルスタンナン、ジフェニルスタンナンなどのジアリールスタンナンなどが挙げられる。
【0091】
これらの還元剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、水素化ホウ素アルカリ金属類などの水素化ホウ素金属類が好ましく、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)などの水素化ホウ素ナトリウム類が特に好ましい。
【0092】
還元剤の割合は、前記式(2b)で表されるフルオレン含有ジカルボン酸エステル1モルに対して、0.1~30モル、好ましくは1~10モル、さらに好ましくは2~8モル、より好ましくは3~5モル、最も好ましくは3.5~4.5モルである。
【0093】
還元剤は、その種類や前記フルオレン含有ジカルボン酸エステルなどに応じて、活性化剤などの還元助剤と組み合わせてもよい。還元剤として水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)などの水素化ホウ素ナトリウム類を用いる場合、活性化剤は、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体などの三フッ化ホウ素・エーテル錯体などであってもよい。
【0094】
活性化剤の割合は、還元剤1モルに対して、例えば0.1~10モル、好ましくは0.5~5モル、さらに好ましくは0.8~1.2モルである。
【0095】
還元反応は、不活性な溶媒の存在下または非存在下で行ってもよい。溶媒としては、水、アルコール類、エーテル類、炭化水素類などが挙げられる。
【0096】
アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどが挙げられる。
【0097】
エーテル類は、環状エーテル類と鎖状エーテル類とに大別できる。環状エーテル類としては、ジオキサン、THFなどが挙げられる。鎖状エーテル類としては、ジアルキルエーテル、グリコールエーテルなどが挙げられる。ジアルキルエーテルとしては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどが挙げられ、グリコールエーテルとしては、メチルセロソルブ、メチルカルビトールなどの(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル;ジメトキシエタンなどの(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0098】
炭化水素類としては、ヘキサン、ドデカンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。
【0099】
これらの溶媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、エーテル類が好ましく、THFなどの環状エーテル類が特に好ましい。
【0100】
還元反応は、空気中であってもよく、窒素ガスや希ガスなどの不活性雰囲気中であってもよい。これらのうち、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気中が好ましい。
【0101】
還元反応は30~100℃程度の還流温度で行ってもよい。反応時間は、例えば1~36時間程度であってもよい。
【0102】
反応終了後、還元剤をクエンチしてもよい。クエンチは、水を添加して行ってもよいが、発熱を抑制するために、アセトンおよび水を添加して穏やかにクエンチしてもよい。
【0103】
反応終了後、必要に応じて、反応混合物を、慣用の分離精製方法、例えば、洗浄、抽出、ろ過、脱水、乾燥、濃縮、デカンテーション、再結晶、再沈殿、クロマトグラフィー、これらを組み合わせた方法などにより分離精製してもよい。
【0104】
(アルキレンオキシド付加工程)
アルキレンオキシド付加工程では、下記式に示すように、式(2c)で表されるフルオレン含有ジオールに対して、アルキレン基AおよびAに対応するアルキレンオキシド(アルキレンカーボネートまたはハロアルカノール)を繰り返し数k1およびk2に対応する割合で慣用の方法により反応させて、式(2d)で表されるフルオレン含有ジオールのアルキレンオキシド付加体を得ることができる。
【0105】
【化6】
【0106】
[式中、A、A、k1およびk2は、好ましい態様も含めて、前記式(1)に同じであり、R~R、n1、n2およびmは前記に同じ]
【0107】
(B)環Zおよび環Zがナフタレン環であるジオール化合物の製造方法
(エステル化工程)
エステル化工程では、下記式に示すように、必要であればエステル化触媒の存在下、式(2e)で表されるフルオレン含有ジカルボン酸と、ハロゲン化剤とを反応させ、式(2f)で表される酸ハライドを得た後、この酸ハライドをROHおよびROHで表されるエステル化剤でエステル化することにより、式(2g)で表されるエステル化物を得ることができる。
【0108】
【化7】
【0109】
[式中、RおよびRは独立してアルキル基を示し、R、R、n1、n2、Rおよびmは、好ましい態様も含めて、前記式(1)に同じ]
【0110】
ハロゲン化剤としては、塩化チオニル、塩化スルフリル、塩化オキサリル、塩化ホスホニル、三塩化リン、五塩化リンなどの塩素化剤、これらの塩素化剤に対応する臭素化剤などが挙げられる。これらのハロゲン化剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのハロゲン化剤のうち、塩化チオニル、塩化スルフリルが好ましい。
【0111】
ハロゲン化剤の割合は、前記式(2e)で表されるフルオレン含有ジカルボン酸1モルに対して0.8~300モル程度の範囲から選択でき、例えば1~200モル、さらに好ましくは1.5~150モルであり、前記フルオレン含有ジカルボン酸に対して過剰量であってもよく、前記式(2e)で表されるフルオレン含有ジカルボン酸1モルに対して、例えば10~300モル、好ましくは30~200モル、さらに好ましくは50~150モルである。ハロゲン化剤の割合は、前記式(2e)で表されるフルオレン含有ジカルボン酸100質量部に対して、例えば100~5000質量部、好ましくは1000~3000質量部、さらに好ましくは2000~2500質量部である。
【0112】
ハロゲン化反応は、反応に不活性な有機溶媒中で行うことができ、有機溶媒としては、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノールなどのアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド類;アセトニトリルなどのニトリル系溶媒;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類などが挙げられる。これらの溶媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、エーテル類、アミド類が好ましく、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミド類が特に好ましい。
【0113】
ハロゲン化反応は、例えば30~120℃、好ましくは60~100℃で行ってもよい。反応時間は、例えば1~24時間程度であってもよい。
【0114】
ハロゲン化反応は、空気中であってもよく、窒素ガスや希ガスなどの不活性雰囲気中であってもよい。これらのうち、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気中が好ましい。
【0115】
ハロゲン化反応は、攪拌しながら行うことができ、常圧下、加圧下または減圧下で行ってもよい。
【0116】
エステル化剤ROHおよびROHにおけるアルキル基RおよびRとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-6アルキル基が挙げられる。すなわち、ROHおよびROHで表されるエステル化剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの直鎖状または分岐鎖状C1-6アルカノールが挙げられる。これらのアルカノールは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、直鎖状または分岐鎖状C1-4アルカノールが好ましく、メタノールなどのC1-2アルカノールがより好ましい。ROHで表されるエステル化剤は、ROHで表されるエステル化剤と異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
【0117】
エステル化剤の割合は、前記式(2f)で表される酸ハライド1モルに対して0.8~300モル程度の範囲から選択でき、例えば1~200モル、さらに好ましくは1.5~150モルであり、前記酸ハライドに対して過剰量であってもよく、前記式(2f)で表される酸ハライド1モルに対して、例えば5~300モル、好ましくは10~100モル、さらに好ましくは15~50モルである。
【0118】
エステル化反応は、慣用のエステル化触媒の存在下で行ってもよく、エステル触媒を用いることなく行ってもよい。
【0119】
エステル化反応は、反応に不活性な有機溶媒中で行うことができ、有機溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトニトリルなどのニトリル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類などが挙げられる。これらの溶媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類が好ましい。
【0120】
エステル化反応は、例えば10~100℃、好ましくは15~50℃で行ってもよい。反応時間は、例えば1~24時間程度であってもよい。
【0121】
エステル化反応は、空気中であってもよく、窒素ガスや希ガスなどの不活性雰囲気中であってもよい。これらのうち、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気中が好ましい。
【0122】
エステル化反応は、攪拌しながら行うことができ、常圧下、加圧下または減圧下で行ってもよい。
【0123】
反応終了後、必要により、反応混合物を、慣用の分離精製方法、例えば、洗浄、抽出、ろ過、脱水、濃縮、デカンテーション、乾燥、晶析、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、吸着、これらを組み合わせた方法などにより分離精製してもよい。
【0124】
なお、前記式(2e)で表されるフルオレン含有ジカルボン酸の製造方法は、特に限定されず、例えば、特開2019-131513号公報に記載の製造方法で製造できる。
【0125】
(還元工程)
還元工程では、下記式に示すように、還元剤を用いて(必要に応じてさらに活性化剤と組み合わせて)、式(2g)で表されるフルオレン含有ジカルボン酸エステルを還元することにより、式(2h)で表される新規なフルオレン含有ジオールを得ることができる。
【0126】
【化8】
【0127】
(式中、R~R、n1、n2およびmは前記に同じ)
【0128】
還元剤としては、好ましい態様も含めて、環Zおよび環Zがベンゼン環であるジオール化合物の製造方法(A)の還元工程の項で例示された還元剤から選択できる。
【0129】
還元剤の割合は、前記式(2g)で表されるフルオレン含有ジカルボン酸エステル1モルに対して、0.1~30モル、好ましくは1~10モル、さらに好ましくは2~8モル、より好ましくは2~5モル、最も好ましくは2.5~3.5モルである。
【0130】
還元剤は、その種類や前記フルオレン含有ジカルボン酸エステルなどに応じて、活性化剤などの還元助剤と組み合わせてもよい。還元剤として水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)などの水素化ホウ素ナトリウム類を用いる場合、活性化剤は、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体などの三フッ化ホウ素・エーテル錯体などであってもよい。
【0131】
活性化剤の割合は、還元剤1モルに対して、例えば0.1~10モル、好ましくは0.5~5モル、さらに好ましくは0.8~1.2モルである。
【0132】
還元反応は、不活性な溶媒の存在下または非存在下で行ってもよい。溶媒としては、好ましい態様も含めて、環Zおよび環Zがベンゼン環であるジオール化合物の製造方法(A)の還元工程の項で例示された溶媒から選択できる。
【0133】
還元反応は、空気中で行ってもよく、窒素ガスや希ガスなどの不活性雰囲気中で行ってもよい。これらのうち、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気中で行うのが好ましい。
【0134】
還元反応は30~100℃程度の還流温度で行ってもよい。反応時間は、例えば1~36時間程度であってもよい。
【0135】
反応終了後、還元剤をクエンチしてもよい。クエンチは、水を添加して行ってもよいが、発熱を抑制するために、アセトンおよび水を添加して穏やかにクエンチしてもよい。
【0136】
反応終了後、必要に応じて、反応混合物を、慣用の分離精製方法、例えば、洗浄、抽出、ろ過、脱水、乾燥、濃縮、デカンテーション、再結晶、再沈殿、クロマトグラフィー、これらを組み合わせた方法などにより分離精製してもよい。
【0137】
(アルキレンオキシド付加工程)
アルキレンオキシド付加工程では、下記式に示すように、式(2h)で表されるフルオレン含有ジオールに対して、アルキレン基AおよびAに対応するアルキレンオキシド(アルキレンカーボネートまたはハロアルカノール)を繰り返し数k1およびk2に対応する割合で慣用の方法により反応させて、式(2i)で表されるフルオレン含有ジオールのアルキレンオキシド付加体を得ることができる。
【0138】
【化9】
【0139】
[式中、A、A、k1およびk2は、好ましい態様も含めて、前記式(1)に同じであり、R~R、n1、n2およびmは前記に同じ]
【実施例0140】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例で使用した材料の詳細、実施例での各評価方法は、以下の通りである。
【0141】
[材料]
フルオレンジ安息香酸:特許第5324082号公報の実施例1に準拠して合成した4,4’-(9-フルオレニリデン)ジベンゾイックアシッド[または9,9-ビス(4-カルボキシフェニル)フルオレン]
BPF:9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、大阪ガスケミカル(株)製
BPEF:9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、大阪ガスケミカル(株)製
BCF:9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、大阪ガスケミカル(株)製
BNF:9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレン、大阪ガスケミカル(株)製
BNEF:9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、大阪ガスケミカル(株)製
【0142】
[融点]
示差走査熱量計(TA Instruments社製、「DSC25」)を用い、窒素雰囲気下、測定温度30~300℃、昇温速度10℃/分の条件で試料を昇温して測定した。得られたDSCチャート(DSC曲線)から、融解による吸熱ピークのピークトップの温度を融点として求めた。
【0143】
[屈折率nD]
屈折率は、屈折率計((株)アタゴ製「RX-7000i」)を用いて、温度25℃、波長589nm(D線)で測定した。なお、屈折率の算出は、試料をジメチルホルムアミド(DMF)に溶解して、濃度が異なる複数の溶液を調製し、得られた溶液の屈折率を測定することで作成した検量線(近似直線)において、濃度を100質量%に外挿して求めた。
【0144】
[5%および10%重量減少温度]
熱重量測定-示差熱分析装置(TG-DTA)(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「TG/DTA6200」)を使用して、窒素雰囲気下、30℃から昇温速度10℃/分の条件下で昇温し、試料の重量が5重量%および10重量%減少した温度を測定した。
【0145】
H-NMR]
内部標準物質としてテトラメチルシランを含む重溶媒(CDCl)に試料を溶解し、核磁気共鳴装置(BRUKER社製「AVANCE III HD」)を用いて、H-NMRスペクトルを測定した。
【0146】
[LC純度]
HPLC(高性能または高速液体クロマトグラフ)装置として(株)島津製作所製「Nexera XR」、MSユニットとして「LCMS-2020」、カラムとしてPhenomenex製「Kinetex C-18」を用いて、試料をアセトニトリルに溶解し、純度[面積%]を算出した。
【0147】
[溶剤溶解性]
各種溶剤に対して10質量%濃度または20質量%濃度に試料を調整し、以下の基準で溶剤溶解性を評価した。
【0148】
◎:25℃で溶剤に投入後すぐに溶解
○:25℃で1時間以内に溶解
△:50℃で1時間以内に溶解
×:50℃でも溶解しない。
【0149】
実施例1
(エステル化工程)
【0150】
【化10】
【0151】
上記式に示すように、フルオレンジ安息香酸をエステル化し、フルオレンジ安息香酸のメチルエステルを製造するため、以下のエステル化反応を実施した。すなわち、反応容器に窒素雰囲気下、フルオレンジ安息香酸226g(555mmol)、メタノール1.8Lを投入し、攪拌しながら98質量%硫酸60mLを滴下投入し、18時間還流攪拌した。原料の消失を確認して室温まで冷却した後、析出物をろ別し、メタノールで洗浄した後、乾燥し、白色結晶224g(粗体収率93%)を得た。得られた粗体をトルエン1.6Lに溶解し、イオン交換水を加えて有機層を抽出した。この操作を4回繰り返し、濃縮乾固することで、白色結晶223g(収率92.3%)として得た。得られた白色結晶のH-NMRスペクトルの結果を以下に示す。
【0152】
H-NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)=3.9(6H,s)、7.2-7.4(14H,m)、7.8(2H,d)
【0153】
(還元工程)
【0154】
【化11】
【0155】
上記式に示すように、フルオレンジ安息香酸のメチルエステルを還元し、新規なフルオレン含有ジオールを製造するため、以下の還元反応を実施した。反応容器に窒素雰囲気下、フルオレンジ安息香酸メチル143g(333mmol)と脱水THF733gとを投入して溶解した後、氷浴で冷却した。冷却した溶解液に、水素化ホウ素ナトリウム49.9g(1.32mol)をゆっくりと添加し、さらに三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体187g(1.32mol)を滴下して氷浴で攪拌した。発泡がおさまったことを確認した後、室温にて攪拌した。攪拌後、55℃まで反応温度を上昇させて還流攪拌し反応させた。
【0156】
反応の終点を確認した後、アセトン383g、イオン交換水383gを加えて攪拌、減圧濃縮で有機層を濃縮した後、酢酸エチル570gを加えて溶解し、水層除去した。さらにイオン交換水200gを加えて水洗する操作を3回繰り返した後、有機層を回収して減圧濃縮で酢酸エチルを除去し、エタノールを加えて攪拌、冷却することで結晶を析出させ、ろ過して目的物であるビスベンジルアルコールフルオレン(BBAF)の白色結晶117g(収率91.3%、LC純度:98.6%)を得た。得られた白色結晶のH-NMRスペクトルの結果を以下に示す。
【0157】
H-NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)=1.7(2H,s),4.6(4H,s),7.2-7.4(14H,m)、7.8(2H,m)
【0158】
実施例1で得られたフルオレン含有ジオールの評価結果を表1および2に示す。また、参考例1~3として、従来のフルオレン含有ジオールであるBPF、BPEF、BCFの結果も併せて示す。
【0159】
【表1】
【0160】
【表2】
【0161】
表1の結果から明らかなように、実施例1のBBAFは、フェノール系材料である参考例1および3(BPF,BCF)に比べ、融点が低いにも拘わらず、耐熱性が優れていた。また、実施例1は、同じアルコール系である参考例2(BPEF)に比べると、融点が高かった。
【0162】
表2の結果から明らかなように、実施例1(BBAF)はエーテル系溶媒に高い溶解性を示した。
【0163】
実施例2
(ジナフチルフルオレン化合物の合成)
【0164】
【化12】
【0165】
メカニカルスターラーを備えた500ml反応容器に、フルオレノン16.2g(90mmol)、2-メチルナフタレン38.4g(270mmol)を仕込み、窒素置換後、3-メルカプトプロピオン酸1.2g(11.4mmol)を添加して50℃で攪拌した。得られた混合物に、メタンスルホン酸58.8g(612mmol)を20分かけて滴下した後、100℃まで昇温し、減圧下(~30mmHg)で3.5時間攪拌した。反応終了後、反応液を80℃まで冷却し、トルエン200mL、イオン交換水200mLを加えて30分攪拌し、水層を分離除去した。有機層を10%水酸化ナトリウム水溶液200mLで洗浄し、さらにイオン交換水200mLでの洗浄を3回行った後、減圧濃縮し有機溶媒を除去することにより褐色固体を得た。得られた固体をテトラヒドロフランに溶解してシリカゲル65gを添加し吸着させた後、シリカゲル700gを用いてヘキサン/THF移動相でクロマトグラフィー精製し、淡黄色固体9,9-ビス(6-メチル-2-ナフチル)フルオレン23.1g(収率57.5%、LC純度95%)を得た。
【0166】
(フルオレン含有ジカルボン酸の合成)
【0167】
【化13】
【0168】
メカニカルスターラーを備えた500mL反応容器に、得られた9,9-ビス(6-メチル-2-ナフチル)フルオレン20g(44.8mmol)と酢酸コバルト(II)(4水和物)13.3g(53.6mmol)、酢酸セリウム(III)(1水和物)4.5g(13.4mmol)、臭化ナトリウム0.69g(6.72mmol)および酪酸130mLを仕込み、90℃で攪拌した後、165℃まで加温して酸素を吹き込みつつ10時間攪拌した。反応終了後、90℃まで冷却した後、イオン交換水1.5Lの中へ滴下して攪拌した後、析出物を濾別して、イオン交換水500mLでリンスを行った。リンスを10回繰り返した後、80℃、真空乾燥させることにより淡褐色固体の9,9-ビス(6-カルボキシ-2-ナフチル)フルオレン(BNFジカルボン酸)22.7g(収率100%、LC純度97%)を得た。
【0169】
(エステル化工程)
【0170】
【化14】
【0171】
メカニカルスターラー、還流冷却器および三方コックを備えた500mL反応容器に、得られたBNFジカルボン酸22.7g(44.9mmol)を仕込み、窒素置換した後、塩化チオニル479g(4.0mol)およびDMF10滴を添加し攪拌させ、90℃で5時間反応させた。反応終了後50℃まで冷却したのち、減圧下で塩化チオニルを留去することにより暗褐色固体の9,9-ビス(6-クロロカルボニル-2-ナフチル)フルオレン(BNFジカルボン酸クロリド)を得た。
【0172】
【化15】
【0173】
メカニカルスターラー、還流冷却器および三方コックを備えた500mL反応容器に、得られたBNFジカルボン酸クロリド44.9mmol、ジクロロメタン300mLを添加し、次いでメタノール40ml(989mmol)を10分かけて滴下し、室温で24時間攪拌した。反応液にシリカゲル30gを添加し吸着させた。ガラスカラムにシリカゲル300gを入れ粗体吸着済みシリカゲルを充填し、ヘキサン/酢酸エチル系溶媒を用いてクロマトグラフィーにより淡黄色固体の9,9-ビス(6-メトキシカルボニル-2-ナフチル)フルオレン(BNFジカルボン酸メチルエステル)15.8g(収率66%、LC純度89%)を得た。得られた淡黄色固体のH-NMRスペクトルの結果を以下に示す。
【0174】
H-NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)=3.9-4.0(6H、d)、7.2-7.5(8H,m)、7.6-7.7(4H,m)、7.8-7.9(4H,m)、8.0(2H、d)、8.6(2H,s)
【0175】
(還元工程)
【0176】
【化16】
【0177】
メカニカルスターラー、還流冷却器および三方コックを備えた300mL反応容器に、得られたBNFジカルボン酸メチルエステル4.81g(9.00)mmolを仕込み、窒素置換した後、THF84mLを添加して攪拌し水素化ホウ素ナトリウム1.03g(27mmol)を5分かけて滴下し、次いで三フッ化ホウ素・エーテル錯体3.39mL(27mmol)を1時間かけて滴下し、室温で攪拌した。攪拌後、混合物を60℃に昇温し反応させた。反応終了後、溶媒を濃縮除去し淡黄色固体を得た。得られた淡黄色固体をクロロホルム100mLに溶解し、イオン交換水100mLで洗浄し減圧濃縮することにより淡黄色固体の9,9-ビス(6-ヒドロキシメチル-2-ナフチル)フルオレン(BNFジメタノールまたはBNFM)4.4g(収率:100%、LC純度84%)を得た。得られた淡黄色固体のH-NMRスペクトルの結果を以下に示す。
【0178】
H-NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)=1.74(2H、t)、4.8(4H、d)、7.2-7.8(14H,m)、7.7-7.8(4H,m)、7.8-7.9(2H,d)
【0179】
実施例2で得られたフルオレン含有ジオール(BNFM)の溶剤溶解性の評価結果を表3に示す。また、参考例4および5として、従来のフルオレン含有ジオールであるBNF、BNEFの結果も併せて示す。
【0180】
【表3】
【0181】
表3の結果から明らかなように、実施例2(BNFM)はケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒に高い溶解性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0182】
本開示のジオール化合物は、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有し、耐熱性や光学特性に優れるため、光学分野などの各種分野で利用できる樹脂原料[例えば、熱可塑性樹脂(ポリエステル、ポリカーボネートなど)原料、熱または光硬化性樹脂(エポキシ樹脂、ポリオールポリ(メタ)アクリレートなど)原料]、添加剤などとして利用できる。
【0183】
特に、屈折率が高く、耐熱性にも優れるため、樹脂原料として好ましく利用できる。本開示のジオール化合物を含む樹脂で形成された成形体は、光学部材として利用してもよく、光学フィルムや光学レンズとして好適に利用できる。