(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144120
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ヒータ装置およびそれを備えるホットランナー装置
(51)【国際特許分類】
H05B 3/36 20060101AFI20241003BHJP
H05B 3/20 20060101ALI20241003BHJP
H05B 3/12 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H05B3/36
H05B3/20 341
H05B3/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024011808
(22)【出願日】2024-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2023050858
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】599072644
【氏名又は名称】株式会社平和電機
(71)【出願人】
【識別番号】591224504
【氏名又は名称】株式会社TMW
(71)【出願人】
【識別番号】523113618
【氏名又は名称】株式会社 TECMO WORKS
(74)【代理人】
【識別番号】100147625
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 高志
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 正高
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 透
(72)【発明者】
【氏名】俵 菊生
【テーマコード(参考)】
3K034
3K092
【Fターム(参考)】
3K034AA06
3K034AA15
3K034BB08
3K034BB13
3K034BC06
3K034BC12
3K034FA05
3K034FA17
3K034JA09
3K092PP20
3K092QA02
3K092QB30
3K092RF02
3K092RF13
3K092RF24
3K092SS01
3K092SS14
3K092TT01
3K092VV22
(57)【要約】
【課題】電力使用量を削減し、また被加熱体の柱状部の軸方向全体に亘って温度を安定にし得るヒータ装置およびホットランナー装置を提供する。
【解決手段】バンドヒータ10による加熱は、円筒部61に加えてジャケット120に対しても行われ、ジャケット120は円筒部61よりも熱伝導率が大きいから、円筒部61よりもジャケット120の方が早く熱が伝わる。円筒部61は、ジャケット120が設けられて覆われる外周の一部または全部においては、バンドヒータ10が設けられていない部分であっても加熱される。ジャケット120のバンドヒータ10に覆われていない部分は、外径がバンドヒータ10に覆われている部分の外径よりも大きいことから熱容量が大きくなるので、バンドヒータ10に覆われている部分に比べてジャケット120の蓄熱性能が向上し、バンドヒータ10による加熱が終了した後においても蓄熱された熱による保温が一定時間持続する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状部を有する被加熱体を加熱するヒータ装置であって、
前記柱状部の外周に設けられ前記外周の一部または全部を覆う伝熱体と、
前記伝熱体を覆って前記伝熱体に熱結合するとともに前記伝熱体を介して間接的に前記柱状部を加熱するバンドヒータと、を備え、
前記伝熱体は、その熱伝導率が前記柱状部の熱伝導率よりも大きく、かつ、その軸方向長さが前記バンドヒータの軸方向長さよりも大きいとともに、前記バンドヒータに覆われていない部分はその外径が前記バンドヒータに覆われている部分の外径よりも大きい、ことを特徴とするヒータ装置。
【請求項2】
前記バンドヒータには、このバンドヒータを保温可能に周囲を覆うカバーが設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載のヒータ装置。
【請求項3】
前記伝熱体の前記バンドヒータに覆われていない部分は、その内部に空間部を有する、ことを特徴とする請求項2に記載のヒータ装置。
【請求項4】
柱状部を有する被加熱体を加熱するヒータ装置であって、
前記柱状部の外周に設けられ前記外周の一部または全部を覆う伝熱体と、
前記伝熱体を覆って前記伝熱体に熱結合するとともに前記伝熱体を介して間接的に前記柱状部を加熱する複数のバンドヒータと、を備え、
前記伝熱体は、その熱伝導率が前記柱状部の熱伝導率よりも大きく、かつ、その軸方向長さが前記複数のバンドヒータの軸方向長さの合計よりも大きいとともに、前記複数のバンドヒータに覆われていない部分はその外径が前記複数のバンドヒータに覆われている部分の外径よりも大きい、ことを特徴とするヒータ装置。
【請求項5】
前記複数のバンドヒータには、これらのバンドヒータを保温可能に周囲を覆うカバーがそれぞれ設けられている、ことを特徴とする請求項4に記載のヒータ装置。
【請求項6】
前記伝熱体の前記複数のバンドヒータに覆われていない部分は、その内部に空間部を有する、ことを特徴とする請求項5に記載のヒータ装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のヒータ装置を備えるホットランナー装置であって、射出成形型内に溶融樹脂を射出するノズルを有し、
前記被加熱体は前記ノズルであり、前記柱状部は前記ノズルの円筒部である、ことを特徴とするホットランナー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱状部を有する被加熱体を加熱するヒータ装置およびそれを備えるホットランナー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
柱状部を有する被加熱体を加熱するヒータ装置として、例えば、下記特許文献1に開示されるバンドヒータがある。バンドヒータは、被加熱体の柱状部に薄板状のヒータ部を巻き付けて加熱するヒータ装置である。バンドヒータのヒータ部は、典型的には短冊形状を有することから、当該柱状部の軸方向に対する加熱可能な範囲は幅広にはなり難い(下記、特許文献1;
図2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、被加熱体の柱状部に対してその軸方向全体を加熱する場合には、複数のバンドヒータを柱状部の軸方向に並べて配置する必要がある。例えば、上記、特許文献1の
図6には、先端にノズルを有する射出装置の加熱筒に対して、3つのバンドヒータを並べて使用する例が開示されている。このような加熱筒は、さらに軸長が長い仕様のものもあるため、多数のバンドヒータが用いられることもある。
【0005】
バンドヒータは、そのヒータ部を構成する発熱線等の発熱体に電力が供給されて発熱することから、バンドヒータの使用数が増えると消費電力が増大し装置全体の電力使用量の増加に直結する。そのため、昨今の電気料金の上昇を考慮すると、バンドヒータの使用数を減らして電力使用量を削減することが望ましい。またバンドヒータの使用数が減れば、バンドヒータを備える、例えばホットランナー装置等の設備コストの低減にも繋がる。
【0006】
また、被加熱体の柱状部は、上記特許文献1の
図6や
図13に開示されている円筒体や加熱筒のように軸長が長いものが多い。そのため、加熱後においても軸方向全体に亘った温度の安定化を求められる場合も少なくない。したがって、このようなニーズにも応えられることが望ましい。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、電力使用量を削減し得るヒータ装置を提供することを目的とする。被加熱体の柱状部の軸方向全体に亘って温度を安定にし得るヒータ装置を提供することを目的とする。また、電力使用量を削減し得るとともに設備コストも低減し得るホットランナー装置を提供することである。ノズルの円筒部の軸方向全体に亘って温度を安定にし得るホットランナー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載された請求項1の技術的手段を採用する。この手段によると、柱状部を有する被加熱体を加熱するヒータ装置は、伝熱体とバンドヒータを備える。柱状部は、内部に空間がない中実のほかに、内部に空間がある中空をも含む概念である。そのため、柱状部には円柱形状や円筒形状も含まれる(以下、本明細書において同じ)。伝熱体は、柱状部の外周に設けられその外周の一部または全部を覆う。バンドヒータは、伝熱体を覆って伝熱体に熱結合するとともに伝熱体を介して間接的に柱状部を加熱する。伝熱体は、その熱伝導率が被加熱体の柱状部の熱伝導率よりも大きい。また、伝熱体の軸方向長さは、バンドヒータの軸方向長さよりも大きいとともに、バンドヒータに覆われていない部分はその外径がバンドヒータに覆われている部分の外径よりも大きい。
【0009】
これにより、バンドヒータによる加熱は、被加熱体の柱状部に加えて伝熱体に対しても行われ、その伝熱体は被加熱体の柱状部よりも熱伝導率が大きいことから、当該柱状部よりも伝熱体の方が早く熱が伝わる。そのため、柱状部は、伝熱体が設けられて覆われるその外周の一部または全部においては、バンドヒータが設けられていない部分であっても加熱される。また、伝熱体のバンドヒータに覆われていない部分は、その外径がバンドヒータに覆われている部分の外径よりも大きいことから、伝熱体のバンドヒータに覆われている部分に比べて体積が大きくなる。そのため、伝熱体のバンドヒータに覆われていない部分は、熱容量が大きくなるので、バンドヒータに覆われている部分に比べて伝熱体の蓄熱性能が向上し、バンドヒータによる加熱が終了した後においても蓄熱された熱による保温が一定時間持続する。
【0010】
また、特許請求の範囲に記載された請求項2の技術的手段を採用する。この手段によると、バンドヒータには、このバンドヒータを保温可能に周囲を覆うカバーが設けられている。これにより、バンドヒータに覆われていない部分に比べて、体積が小さく蓄熱され難い伝熱体のバンドヒータに覆われている部分の保温性が高まる。そのため、バンドヒータに覆われている部分においては、バンドヒータによる加熱が終了した後においてもカバーによる保温が一定時間持続する。
【0011】
また、特許請求の範囲に記載された請求項3の技術的手段を採用する。この手段によると、伝熱体のバンドヒータに覆われていない部分は、その内部に空間部を有する。これにより、その内部に有する空間部の容積分だけバンドヒータに覆われていない部分における熱容量が減少する。そのため、例えば、過剰な蓄熱性能に起因して消費電力が増大する可能性がある場合には、このような空間部をバンドヒータに覆われていない部分の内部に設けることによって、蓄熱性能を低下させて消費電力の増大を抑制することが可能になる。
【0012】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載された請求項4の技術的手段を採用する。この手段によると、柱状部を有する被加熱体を加熱するヒータ装置は、伝熱体と複数のバンドヒータを備える。伝熱体は、柱状部の外周に設けられその外周の一部または全部を覆う。複数のバンドヒータは、伝熱体を覆って伝熱体に熱結合するとともに伝熱体を介して間接的に柱状部を加熱する。伝熱体は、その熱伝導率が被加熱体の柱状部の熱伝導率よりも大きい。また、伝熱体の軸方向長さは、複数のバンドヒータの軸方向長さの合計よりも大きいとともに、複数のバンドヒータに覆われていない部分はその外径が複数のバンドヒータに覆われている部分の外径よりも大きい。
【0013】
これにより、複数のバンドヒータによる加熱は、被加熱体の柱状部に加えて伝熱体に対しても行われ、その伝熱体は被加熱体の柱状部よりも熱伝導率が大きいことから、当該柱状部よりも伝熱体の方が早く熱が伝わる。そのため、柱状部は、伝熱体が設けられて覆われるその外周の一部または全部においては、複数のバンドヒータが設けられていない部分であっても加熱される。また、伝熱体の、複数のバンドヒータに覆われていない部分は、その外径が複数のバンドヒータに覆われている部分の外径よりも大きいことから、伝熱体の、複数のバンドヒータに覆われている部分に比べて体積が大きくなる。そのため、伝熱体の、複数のバンドヒータに覆われていない部分は、熱容量が大きくなるので、複数のバンドヒータに覆われている部分に比べて伝熱体の蓄熱性能が向上し、複数のバンドヒータによる加熱が終了した後においても蓄熱された熱による保温が一定時間持続する。
【0014】
また、特許請求の範囲に記載された請求項5の技術的手段を採用する。この手段によると、複数のバンドヒータには、これらのバンドヒータを保温可能に周囲を覆うカバーがそれぞれ設けられている。これにより、複数のバンドヒータに覆われていない部分に比べて、体積が小さく蓄熱され難い伝熱体の、複数のバンドヒータに覆われている部分の保温性が高まる。そのため、複数のバンドヒータに覆われている部分においては、それぞれのバンドヒータによる加熱が終了した後においてもカバーによる保温が一定時間持続する。
【0015】
また、特許請求の範囲に記載された請求項6の技術的手段を採用する。この手段によると、伝熱体の、複数のバンドヒータに覆われていない部分は、その内部に空間部を有する。これにより、その内部に有する空間部の容積分だけ複数のバンドヒータに覆われていない部分における熱容量が減少する。そのため、例えば、過剰な蓄熱性能に起因して消費電力が増大する可能性がある場合には、このような空間部を複数のバンドヒータに覆われていない部分の内部に設けることによって、蓄熱性能を低下させて消費電力の増大を抑制することが可能になる。
【0016】
また、特許請求の範囲に記載された請求項7の技術的手段を採用する。この手段によると、請求項1~6のいずれか一項に記載のヒータ装置を備えるホットランナー装置は、射出成形型内に溶融樹脂を射出するノズルを有する。被加熱体はこのノズルであり、柱状部はこのノズルの円筒部である。これにより、バンドヒータによる加熱は、ノズルの柱状部分に加えて伝熱体に対しても行われ、その伝熱体はノズルの柱状部分よりも熱伝導率が大きいことから、当該柱状部分よりも伝熱体の方が早く熱が伝わる。そのため、柱状部分は、伝熱体が設けられて覆われるその外周の一部または全部においては、バンドヒータが設けられていない部分であっても(一のバンドヒータと他のバンドヒータとの間においても)加熱される。また、伝熱体のバンドヒータに覆われていない部分は(一のバンドヒータと他のバンドヒータとの間も)、その外径がバンドヒータに覆われている部分の外径よりも大きいことから、伝熱体のバンドヒータに覆われている部分に比べて体積が大きくなる。そのため、伝熱体のバンドヒータに覆われていない部分は、熱容量が大きくなるので、バンドヒータに覆われている部分に比べて伝熱体の蓄熱性能が向上し、バンドヒータによる加熱が終了した後においても蓄熱された熱による保温が一定時間持続する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明では、バンドヒータによる加熱は、被加熱体の柱状部に加えて伝熱体に対しても行われ、その伝熱体は被加熱体の柱状部よりも熱伝導率が大きいことから、当該柱状部よりも伝熱体の方が早く熱が伝わる。そのため、柱状部は、伝熱体が設けられて覆われる外周の一部または全部においては、バンドヒータが設けられていない部分であっても加熱される。したがって、バンドヒータの使用数を減らすことが可能になるので、電力使用量を削減することができる。
【0018】
また、請求項1の発明では、伝熱体のバンドヒータに覆われていない部分は、その外径がバンドヒータに覆われている部分の外径よりも大きいことから、伝熱体のバンドヒータに覆われている部分に比べて体積が大きくなる。そのため、伝熱体のバンドヒータに覆われていない部分は、熱容量が大きくなるので、バンドヒータに覆われている部分に比べて伝熱体の蓄熱性能が向上し、バンドヒータによる加熱が終了した後においても蓄熱された熱による保温が一定時間持続する。したがって、伝熱体のバンドヒータに覆われていない部分においてこのような蓄熱性能の向上がない場合に比べて、被加熱体の柱状部の軸方向全体に亘って温度を安定にすることができる。
【0019】
請求項2の発明では、バンドヒータに覆われていない部分に比べて、体積が小さく蓄熱され難い伝熱体のバンドヒータに覆われている部分の保温性が高まる。そのため、バンドヒータに覆われている部分においては、バンドヒータによる加熱が終了した後においてもカバーによる保温が一定時間持続する。したがって、このようなカバーがない場合に比べて、被加熱体の柱状部の軸方向全体に亘って温度をさらに安定にすることができる。
【0020】
請求項3の発明では、バンドヒータに覆われていない部分は、その内部に有する空間部の容積分だけ熱容量が減少する。そのため、例えば、過剰な蓄熱性能に起因して消費電力が増大する可能性がある場合には、このような空間部をバンドヒータに覆われていない部分の内部に設けることによって、蓄熱性能を低下させて消費電力の増大を抑制することが可能になる。したがって、このような場合、バンドヒータに覆われていない部分が有する空間部の大きさ(容積)を調整することで、電力使用量を削減し、かつ、被加熱体の柱状部の軸方向全体に亘って温度を安定にすることができる。つまり、電力使用量の削減と柱状部の全体温度の安定化を両立させることができる。
【0021】
請求項4の発明では、複数のバンドヒータによる加熱は、被加熱体の柱状部に加えて伝熱体に対しても行われ、その伝熱体は被加熱体の柱状部よりも熱伝導率が大きいことから、当該柱状部よりも伝熱体の方が早く熱が伝わる。そのため、柱状部は、伝熱体が設けられて覆われる外周の一部または全部においては、複数のバンドヒータが設けられていない部分であっても加熱される。したがって、バンドヒータの使用数を減らすことが可能になるので、電力使用量を削減することができる。
【0022】
また、請求項4の発明では、伝熱体の、複数のバンドヒータに覆われていない部分は、その外径が複数のバンドヒータに覆われている部分の外径よりも大きいことから、伝熱体の、複数のバンドヒータに覆われている部分に比べて体積が大きくなる。そのため、伝熱体の、複数のバンドヒータに覆われていない部分は、熱容量が大きくなるので、複数のバンドヒータに覆われている部分に比べて伝熱体の蓄熱性能が向上し、複数のバンドヒータによる加熱が終了した後においても蓄熱された熱による保温が一定時間持続する。したがって、伝熱体の、複数のバンドヒータに覆われていない部分においてこのような蓄熱性能の向上がない場合に比べて、被加熱体の柱状部の軸方向全体に亘って温度を安定にすることができる。
【0023】
請求項5の発明では、複数のバンドヒータに覆われていない部分に比べて、体積が小さく蓄熱され難い伝熱体の、複数のバンドヒータに覆われている部分の保温性が高まる。そのため、複数のバンドヒータに覆われている部分においては、それぞれのバンドヒータによる加熱が終了した後においてもカバーによる保温が一定時間持続する。したがって、このようなカバーがない場合に比べて、被加熱体の柱状部の軸方向全体に亘って温度をさらに安定にすることができる。
【0024】
請求項6の発明では、複数のバンドヒータに覆われていない部分は、その内部に有する空間部の容積分だけ熱容量が減少する。そのため、例えば、過剰な蓄熱性能に起因して消費電力が増大する可能性がある場合には、このような空間部を複数のバンドヒータに覆われていない部分の内部に設けることによって、蓄熱性能を低下させて消費電力の増大を抑制することが可能になる。したがって、このような場合、複数のバンドヒータに覆われていない部分が有する空間部の大きさ(容積)を調整することで、電力使用量を削減し、かつ、被加熱体の柱状部の軸方向全体に亘って温度を安定にすることができる。つまり、電力使用量の削減と柱状部の全体温度の安定化を両立させることができる。
【0025】
請求項7の発明では、バンドヒータによる加熱は、ノズルの柱状部分に加えて伝熱体に対しても行われ、その伝熱体はノズルの柱状部分よりも熱伝導率が大きいことから、当該柱状部分よりも伝熱体の方が早く熱が伝わる。そのため、柱状部分は、伝熱体が設けられて覆われるノズルの外周の一部または全部においては、バンドヒータが設けられていない部分であっても(一のバンドヒータと他のバンドヒータとの間においても)加熱される。したがって、バンドヒータの使用数を減らすことが可能になるので、電力使用量を削減することができ、また設備コストを低減させることができる。また、伝熱体のバンドヒータに覆われていない部分は(一のバンドヒータと他のバンドヒータとの間も)、その外径がバンドヒータに覆われている部分の外径よりも大きいことから、伝熱体のバンドヒータに覆われている部分に比べて体積が大きくなる。そのため、伝熱体のバンドヒータに覆われていない部分は、熱容量が大きくなるので、バンドヒータに覆われている部分に比べて伝熱体の蓄熱性能が向上し、バンドヒータによる加熱が終了した後においても蓄熱された熱による保温が一定時間持続する。したがって、伝熱体のバンドヒータに覆われていない部分においてこのような蓄熱性能の向上がない場合に比べて、被加熱体の柱状部の軸方向全体に亘って温度を安定にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に関する基本的な技術(以下「本基本技術」という)に係るヒータ装置の構成例1を示す斜視図である。
【
図2】本基本技術に係るヒータ装置の構成例2を示す斜視図である。
【
図3】本基本技術のヒータ装置を構成するジャケットを示す図であり、
図3(A)は斜視図、
図3(B)は
図3(A)に示す3B線矢印の矢視方向から見た側面図である。
図3(C)は
図3(A)に示す3C線矢印の矢視方向から見た平面図である。
【
図4】本基本技術のヒータ装置を構成するジャケットカバーを示す図であり、
図4(A)は斜視図、
図4(B)は
図4(A)に示す4B線矢印の矢視方向から見た側面図である。
図4(C)は
図4(A)に示す4C線矢印の矢視方向から見た平面図である。
【
図5】本基本技術に係るホットランナー装置やそれに関連した装置の構成例を示す模式図である。
【
図6】本基本技術に係るヒータ装置の構成例1,2やその他のバリエーションの例を示す模式図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るヒータ装置の一構成例(構成例3)を示す斜視図である。
【
図8】本実施形態のヒータ装置を構成するジャケットを示す図であり、
図8(A)は斜視図、
図8(B)は
図8(A)に示す8B-8B線により切断し同線矢印の矢視方向から見た断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るヒータ装置の他の構成例(構成例4)を示す斜視図である。濃い灰色の着色部分はバンドヒータを表している。
【
図10】本実施形態のヒータ装置を構成するヒータカバーを示す図であり、
図10(A)は斜視図、
図10(B)は
図10(A)に示す10B線矢印の矢視方向から見た平面図である。また
図10(C)は
図10(B)に示す10C-10C線により切断し同線矢印の矢視方向から見た断面図であり、
図10(D)は
図10(C)に示す10D-10D線により切断し同線矢印の矢視方向から見た断面図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係るヒータ装置の他の構成例(構成例5)を示す斜視図である。濃い灰色の着色部分はバンドヒータを表している。
【
図12】本実施形態のヒータ装置を構成するジャケットを示す図であり、
図12(A)は平面図、
図12(B)は
図12(A)に示す12B線矢印の矢視方向から見た側面図である。また
図12(C)は
図12(B)に示す12C-12C線により切断し同線矢印の矢視方向から見た断面図である。
【
図13】本明細書において説明したバンドヒータやヒータ装置により射出ノズルを加熱する場合の構成例を模式的に表した一覧図である。
図13(A)は背景技術で説明したバンドヒータ(従来例)の場合、
図13(B)は本基本技術のヒータ装置(構成例1)の場合、
図13(C)は本実施形態のヒータ装置(構成例4)の場合、
図13(D)は本実施形態のヒータ装置(構成例5)の場合、である。
【
図14】バンドヒータによる加熱終了後における温度低下の経時変化を表した特性図であり、
図14(A)は従来例と構成例1を比較したもの、
図14(B)は従来例と構成例4を比較したもの、
図14(C)は従来例と構成例5を比較したもの、である。
【
図15】バンドヒータによる加熱終了後における温度低下の経時変化を表した特性図であり、
図15(A)は構成例1と構成例4を比較したもの、
図15(B)は構成例4と構成例5を比較したもの、である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明のヒータ装置およびそれを備えるホットランナー装置の実施形態について図を参照して説明する。本実施形態では、本発明のバンドヒータが、例えば、射出成形機を構成するホットランナー装置の射出ノズルに設けられる場合を例示して説明する。なお、本明細書では、
図1~
図4、
図7~
図9、
図11、
図12に示す座標軸表示における、Z軸方向(射出ノズルの長手方向)のことを「軸方向」といい、またX軸方向やY軸方向等、Z軸に直交する方向のことを「径方向」という場合がある。さらにZ軸の先端方向のことを「上方向」、基端方向のことを「下方向」をといい、Z軸周りの方向のことを「周方向」という場合がある。
【0028】
≪本基本技術の説明≫
[構成例1]
まず、本実施形態を説明する前に、本基本技術について
図1~6を参照しながら説明する。
図1に示すように、本基本技術のヒータ装置1(構成例1)は、後述するホットランナー装置50の射出ノズル60を加熱するものであり、2つのバンドヒータ10a,10bとジャケット20とにより構成されている。なお、バンドヒータ10aとバンドヒータ10bは、同様に構成されているため、これらを総称する場合には「バンドヒータ10」という。ホットランナー装置50等の構成については後で
図5を参照しながら説明する。
図1においては、射出ノズル60はその一部として円筒部61(被加熱体)を二点鎖線で表現している。また、当該射出ノズル60の先端部62や射出ノズル60が収容されるプレート70の収容穴72等については、
図5を除いて図示を省略している。
【0029】
ヒータ装置1を構成するバンドヒータ10a,10bは、カバー部12とヒータ部13により構成されている。本基本技術のヒータ装置1は、射出ノズル60の円筒部61の外周がジャケット20で覆われるとともに、このジャケット20の両端をさらに覆うようにバンドヒータ10a,10bが取り付けられる。つまり、バンドヒータ10は、カバー部12がヒータ部13を囲むようにジャケット20を覆うことで、ジャケット20を介して射出ノズル60に間接的に取り付けられる。
【0030】
カバー部12は、例えば、ステンレス製(例えばSUS304)の短冊形状を有する板部材であり、板厚が0.5mmに設定されている。本基本技術では、カバー部12は、アルファベットのC字形状のように軸方向に切れ目を有する円筒形状に形成されており、その両端にはロール状に折り返した端末ループ12aがそれぞれ形成されている。これらの端末ループ12aには締結バー18が収容されている。締結バー18にはボルト19を挿通可能な貫通穴やボルト19を螺合可能な雌ねじ穴が形成されている。一方の端末ループ12aの締結バー18を貫通したボルト19を、他方の端末ループ12aの締結バー18に螺合させてボルト19をねじ締め方向に回転させる。これにより、カバー部12の内側に収容されたヒータ部13を、射出ノズル60の円筒部61を覆うジャケット20等に締め付け固定することを可能にしている。
【0031】
カバー部12の長手方向ほぼ中央には、角部が丸められた丸角長方形状に形成された配線窓12bが形成されている。この配線窓12bは、ヒータ部13に接続された図略の電気配線を挿通させて外部に引き出し得る貫通穴である。ヒータ部13は、ほぼ円筒形状を有する発熱部であり、金属製の内筒プレートと外筒プレートにより挟み込まれるヒータエレメント等により構成されている。これらは図示が省略されている。ヒータエレメントには、前述した電気配線が接続されており、外部の電力供給源から例えば200V~300Vの単相交流電力が供給され得るように構成されている。
【0032】
カバー部12の内周面にはスペーサ17が取り付けられている。スペーサ17は、例えば、外径寸法が約3mmに設定されるステンレス製(例えばSUS304)の円筒パイプであり、カバー部12のZ軸方向の長さとほぼ同じ軸方向長さを有する。本基本技術では、スペーサ17は、その両端がカバー部12の内周面に溶接されて固定されており、例えば、カバー部12の周方向に約90度間隔で4箇所に設けられている。これらのスペーサ17をカバー部12の内側に設けることにより、そのさらに内側に位置するヒータ部13との間にはエアギャップが形成される。そのため、ヒータ部13から発生した熱をカバー部12に伝わり難くしている。なお、このようなエアギャップを形成する必要がない場合には、スペーサ17はなくてもよい。
【0033】
ジャケット20は、例えば、アルミニウム製の円筒形状を有する筒板部材である。
図3にその詳細が図示されているので、ここからは
図3も参照しながら説明する。
図3に示すように、本基本技術では、ジャケット20は、円筒形状を有するジャケット本体21と、その軸方向に形成される隙間23とにより構成されている。即ち、ジャケット20のジャケット本体21は、アルファベットのC字形状のように軸方向に隙間23を1つ有する円筒形状に形成されている。
【0034】
ジャケット20の軸方向長さや内径長は、射出ノズル60の円筒部61の長さや外径寸法に基づいて任意に設定される。本基本技術では、ジャケット20の軸方向長さは、例えば約100mm、また例えば、内径が約40mm、板厚が約2mmにそれぞれ設定されている。隙間23は、ジャケット20の内径寸法と、ジャケット20の取り付けを想定している射出ノズル60の円筒部61の外径寸法との誤差を吸収するためのものであり、本基本技術では、円筒形状の全周に対する割合として、例えば8~10%の円弧相当の隙間空間を形成している。内径が約40mmの場合、隙間23は、例えば約10mmに設定されている。
【0035】
本基本技術のヒータ装置1は、このようなバンドヒータ10とジャケット20を備えることによって、射出ノズル60の円筒部61をジャケット20で覆った後、ジャケット20の一端側にバンドヒータ10a、また他端側にバンドヒータ10bをそれぞれ挿通してボルト19を締め付ける。これにより、バンドヒータ10のカバー部12に押圧されたヒータ部13がジャケット本体21の外周面21bを加圧すると、その内周面21aが円筒部61の外周をさらに加圧した状態で当該外周面に接触してバンドヒータ10がジャケット20を介して射出ノズル60に取り付けられる。
【0036】
そして、外部の電力供給源からバンドヒータ10に電力が供給されると、ヒータ部13が発熱を開始することから、ヒータ部13の熱がジャケット20を介して射出ノズル60の円筒部61に伝達されて円筒部61が加熱される。つまり、ヒータ部13がジャケット20に熱結合するとともに、ジャケット20を介して間接的に円筒部61を加熱する。そして、射出ノズル60の円筒部61を覆うジャケット20は、アルミニウム製(熱伝導率236W/(m・K))でありその熱伝導率が射出ノズル60の円筒部61(例えば、炭素鋼製(熱伝導率44W/(m・K))の熱伝導率よりも大きい。
【0037】
これにより、バンドヒータ10による加熱は、当該円筒部61に加えてジャケット20に対しても行われ、そのジャケット20は円筒部61よりも熱伝導率が大きいことから、円筒部61よりもジャケット20の方が早く熱が伝わる。そのため、円筒部61は、ジャケット20が設けられて覆われる外周面においては、バンドヒータ10が設けられていない部分であっても加熱される。したがって、射出ノズル60の円筒部61のうちジャケット20で覆われる範囲においては、バンドヒータ10が設けられていない部分があっても、その部分もそれに隣接するバンドヒータ10によりジャケット20を介して加熱される。そのため、バンドヒータ10の使用数を減らすことが可能になることから、電力使用量を削減することができる。
【0038】
[構成例2]
次に本基本技術のヒータ装置2(構成例2)について
図2を参照しながら説明する。
図2に示すように、本基本技術のヒータ装置2も、前述したヒータ装置1と同様に後述するホットランナー装置50の射出ノズル60を加熱するものである。ヒータ装置2は、1つのバンドヒータ10とジャケット20とジャケットカバー30とにより構成されている。なお、バンドヒータ10は、前述したバンドヒータ10a,10bと同様に構成されている。ヒータ装置2を構成するバンドヒータ10は、ジャケット20には接することなく、射出ノズル60の円筒部61に直接、取り付けられている。即ち、バンドヒータ10は、ジャケット20を介することなく直接的に円筒部61を加熱し得るように射出ノズル60に取り付けられている。
【0039】
ジャケットカバー30は、例えば、ステンレス製の円筒形状を有する筒板部材である。
図4にその詳細が図示されているので、ここからは
図4も参照しながら説明する。なお、
図4(A)および
図4(B)では、軸方向(Z軸方向)において、カバー本体31やスペーサ35等の一部が省略されている。特に
図4(A)においては、軸方向長さが長いカバー本体31と短いカバー本体31の2つ表されているように見えるが、これらは一体であり両者間の隙間は図示省略により生じたものであることに注意されたい。
【0040】
図4に示すように、ジャケットカバー30は、ジャケット20の外周を覆うとともに、当該ジャケット20を径方向内側に加圧してジャケット本体21の内周面21aと円筒部61の外周面との接触を確保し得る機能を有する。そのため、ジャケット本体21の外径よりも大径の内径を有すること、軸方向長さが長いこと、端末ループ32,33を軸方向の複数箇所に有すること、配線窓12bが形成されていないこと、を除いて、前述したバンドヒータ10のカバー部12とほぼ同様に構成されている。
【0041】
即ち、ジャケットカバー30は、例えば、ステンレス製(例えばSUS304)の幅広の矩形状を有する板部材であり、板厚が0.5mmに設定されている。本基本技術では、ジャケットカバー30のカバー本体31は、アルファベットのC字形状のように軸方向に切れ目を有する円筒形状に形成されており、その両端にはロール状に折り返した端末ループ32,33がそれぞれ形成されている。
【0042】
端末ループ32,33は、カバー本体31の軸方向長さに応じて、軸方向の複数箇所に分割して設けられる。
図2に表されている例では2箇所に設けられているが、3箇所以上の場合もある。また、軸方向に分割することなく、端末ループ32,33は一端側から他端側に連続して設けてもよい。これらの端末ループ32,33には締結バー36が収容されている。締結バー36にはボルト37を挿通可能な貫通穴やボルト37を螺合可能な雌ねじ穴が形成されている。端末ループ33の締結バー36を貫通したボルト37を、端末ループ32の締結バー36に螺合させてボルト37をねじ締め方向に回転させる。これにより、カバー本体31の内側に収容されたジャケット20を、射出ノズル60の円筒部61に締め付け固定することを可能にしている。
【0043】
カバー本体31の内周面にはスペーサ35が取り付けられている。スペーサ35は、例えば、外径寸法が約3mmに設定されるステンレス製(例えばSUS304)の円筒パイプであり、カバー本体31のZ軸方向の長さとほぼ同じ軸方向長さを有する。本基本技術では、スペーサ35は、その両端がカバー本体31の内周面31aに溶接されて固定されており、例えば、カバー本体31の周方向に約90度間隔で4箇所に設けられている。これらのスペーサ35をカバー本体31の内側に設けることにより、そのさらに内側に位置するジャケット20の外周面21bとカバー本体31の内周面31aとの間にはエアギャップが形成される。そのため、バンドヒータ10からジャケット20に伝達された熱をカバー本体31に伝わり難くしている。
【0044】
本基本技術のヒータ装置2は、このようなバンドヒータ10とジャケット20とジャケットカバー30を備えることによって、射出ノズル60の円筒部61をジャケット20で覆った後、さらにジャケット20をジャケットカバー30で覆う。そして、ジャケットカバー30のボルト37を締め付ける。これにより、ジャケットカバー30のカバー本体31がジャケット20の外周面21bを加圧するため、その内周面21aが円筒部61の外周面に接触した状態でジャケット20が射出ノズル60に取り付けられる。また、射出ノズル60の軸方向においてジャケット20で覆われてなく、かつ、ジャケット20に隣接する円筒部61の位置(円筒部61の隣接部位)にバンドヒータ10を挿通してボルト19を締め付ける。これにより、バンドヒータ10のカバー部12に押圧されたヒータ部13が円筒部61の外周を加圧した状態で当該外周面に接触して、バンドヒータ10がジャケット20に隣接した位置で射出ノズル60に直接取り付けられる。
【0045】
そして、外部の電力供給源からバンドヒータ10に電力が供給されると、ヒータ部13が発熱を開始することから、バンドヒータ10が取り付けられた位置においては、ヒータ部13の熱が射出ノズル60の円筒部61に直接伝達されて円筒部61が加熱される。つまり、ヒータ部13がジャケット20を介することなく直接的に円筒部61を加熱する。また、バンドヒータ10が取り付けられていない位置においても、ヒータ部13の熱が隣接するジャケット20を介して射出ノズル60の円筒部61に伝達されて円筒部61が加熱される。つまり、ヒータ部13が円筒部61を経由してジャケット20に熱結合するとともに、ジャケット20を介して間接的に円筒部61を加熱する。射出ノズル60の円筒部61を覆うジャケット20は、アルミニウム製(熱伝導率236W/(m・K))でありその熱伝導率が射出ノズル60の円筒部61(例えば、炭素鋼製(熱伝導率44W/(m・K))の熱伝導率よりも大きい。
【0046】
これにより、前述したヒータ装置1に比べて、ヒータ部13から円筒部61を経由する分、熱伝達や熱伝導の効率は低下するものの、バンドヒータ10による加熱は、当該円筒部61に加えてジャケット20に対しても行われる。そして、ジャケット20は円筒部61よりも熱伝導率が大きいことから、円筒部61よりもジャケット20の方が早く熱が伝わる。そのため、円筒部61は、ジャケット20が設けられて覆われる外周面においては、バンドヒータ10が設けられていない部分であっても加熱される。したがって、射出ノズル60の円筒部61のうちジャケット20で覆われる範囲においては、バンドヒータ10が設けられていない部分があっても、その部分もそれに隣接するバンドヒータ10によりジャケット20を介して加熱される。そのため、バンドヒータ10の使用数を減らすことが可能になることから、電力使用量を削減することができる。
【0047】
このように構成されるヒータ装置1,2を、ホットランナー装置50に適用した場合には、例えば、
図5に示すように構成することが可能である。ホットランナー装置50は、樹脂製品を成形する射出成形機を構成するものである。
図5に示すように、本基本技術では、ホットランナー装置50は、主に、溶融樹脂の流路52を内部に有するマニホールド51と、外部から圧送される溶融樹脂を受け入れて流路52に案内するノズルタッチ53と、マニホールド51の流路52を流れる溶融樹脂を図略の金型内に吐出させる射出ノズル60と、により構成されている。マニホールド51には図略のヒータが流路52に沿った複数箇所に内装されている。また、マニホールド51は、本体部71に射出ノズル60を収容する収容穴72を有するプレート70にスペーサ58と締結ボルト59を介して組み付けられている。
【0048】
射出ノズル60は、主に、円筒部61と先端部62により構成されており、本基本技術では、プレート70の収容穴72に収容されて、その先端部62を図略の金型のキャビティに接続し得るように構成されている。射出ノズル60の円筒部61は、内部に溶融樹脂の流路を有する円柱形状に形成されており、円筒部61の外周には本基本技術のヒータ装置1が取り付けられている。ヒータ装置1は、円筒部61を所定温度で加熱することによって、円筒部61内の流路を流れる溶融樹脂の温度を適正値に保持可能にしている。
図5に表した例では、
図1に示すヒータ装置1が円筒部61に取り付けられているが、例えば、
図2に示すヒータ装置2を円筒部61に取り付けてもよい。
【0049】
また、これまで説明したヒータ装置1,2を含めて、バンドヒータ10とジャケット20の組み合わせのバリエーションを図示すると、例えば、
図6に示すようになる。即ち、
図1に表されているヒータ装置1は
図6(A)に示すように構成されているが、
図6(B)に示すように、バンドヒータ10は、必ずしもジャケット20の両側に設ける必要はなく、いずれか一方に設けるように構成してもよい。また、バンドヒータ10は、必ずしもジャケット20の両端や一端に設ける必要はなく、
図6(C)に示すように、ジャケット20の軸方向ほぼ中央の1箇所に設けるように構成してもよい。さらに図示されてないが、
図6(A)と
図6(C)を組み合わせた構成、つまりジャケット20の両端とほぼ中央の合計3箇所にバンドヒータ10を設けるように構成してもよい。
【0050】
また、
図2に表されているヒータ装置2は
図6(E)に示すように構成されているが、
図6(D)に示すように、ジャケット20を挟んでその両側にバンドヒータ10a,10bを設けるように構成してもよい。また、バンドヒータ10を挟んでその両側にジャケット20a,20bを設けるように構成してもよい。さらに図示されてないが、
図6(D)と
図6(F)を組み合わせた構成、つまり
図6(F)のほぼ中央と、同図のジャケット20a,20bの両端との合計3箇所にバンドヒータ10を設けるように構成してもよい(バンドヒータ10a、ジャケット20a、バンドヒータ10、ジャケット20b、バンドヒータ10b)。
【0051】
上述した
図6(B)や
図6(C)においても
図6(A)のヒータ装置1と同様に、また
図6(D)や
図6(F)においても
図6(E)のヒータ装置2と同様に、バンドヒータ10の使用数を減らすことが可能になることから、電力使用量を削減することができる。
【0052】
このように本基本技術のヒータ装置1,2では、バンドヒータ10とジャケット20を備える。ジャケット20は、射出ノズル60の円筒部61の外周に設けられその外周の一部または全部を覆う。バンドヒータ10は、ジャケット20に熱結合するとともに、ジャケット20を介して間接的に当該円筒部61を加熱したり、射出ノズル60を介することなく直接的に当該円筒部61を加熱したりする。そして、ジャケット20は、例えば、アルミニウム製(熱伝導率236W/(m・K))でありその熱伝導率が円筒部61(例えば、炭素鋼製(熱伝導率44W/(m・K))の熱伝導率よりも大きい。これにより、バンドヒータ10による加熱は、円筒部61に加えてジャケット20に対しても行われ、そのジャケット20は円筒部61よりも熱伝導率が大きいことから、円筒部61よりもジャケット20の方が早く熱が伝わる。そのため、円筒部61は、ジャケット20が設けられて覆われる外周の一部または全部においては、バンドヒータ10が設けられていない部分であっても加熱される。したがって、バンドヒータ10の使用数を減らすことが可能になるので、電力使用量を削減することができる。
【0053】
また、本基本技術のヒータ装置1,2では、バンドヒータ10aに加えてさらに他のバンドヒータ10bを備えている。そして、他のバンドヒータ10bは、ジャケット20に熱結合するとともに、ジャケット20を介して間接的に射出ノズル60の円筒部61を加熱したり、ジャケット20を介することなく直接的に当該円筒部61を加熱したりする。これにより、他のバンドヒータ10bによる加熱も、円筒部61に加えてジャケット20に対しても行われ、そのジャケット20は円筒部61(例えば、炭素鋼製(熱伝導率44W/(m・K))よりも熱伝導率が大きいことから、円筒部61よりもジャケット20の方が早く熱が伝わる。これにより、円筒部61は、バンドヒータ10a,10bが設けられていない両バンドヒータの間においても、ジャケット20が設けられて覆われる外周の一部または全部で加熱される。したがって、バンドヒータ10の使用数を減らすことが可能になるので、電力使用量を削減することができる。
【0054】
本基本技術のホットランナー装置50では、ヒータ装置1を備え、射出成形型内に溶融樹脂を射出する射出ノズル60を有する。そして、ヒータ装置1が加熱する被加熱体はこの射出ノズル60であり、柱状部はこの射出ノズル60の円筒部61である。これにより、バンドヒータ10a,10bによる加熱は、当該円筒部61に加えてジャケット20に対しても行われ、そのジャケット20は円筒部61(例えば、炭素鋼製(熱伝導率44W/(m・K))よりも熱伝導率が大きいことから、円筒部61よりもジャケット20の方が早く熱が伝わる。そのため、円筒部61は、ジャケット20が設けられて覆われるその外周の一部または全部においては、バンドヒータ10a,10bが設けられていない部分であっても加熱される。したがって、バンドヒータ10a,10bの使用数を減らすことが可能になるので、電力使用量を削減することができ、また設備コストも低減させることができる。なお、
図5においては、マニホールド51を備える射出成形機を例示して説明したが、射出ノズル60の円筒部61(柱状部を有する被加熱体)を加熱する必要のある構成であれば、マニホールド51は必ずしも必要はない。
【0055】
なお、上述した本基本技術のヒータ装置2では、離隔部材として、円筒のパイプ材からなるスペーサ35を、ジャケットカバー30のカバー本体31の内周面31aに設ける場合を例示して説明したが、ジャケット20のジャケット本体21(伝熱体)とカバー本体31(カバー体)との間にエアギャップ(空間)を形成する離隔部材であればこれに限られない。例えば、角筒のパイプ材や中実の棒材(丸棒や角棒)でもよい。またこのようなエアギャップを形成することが可能であれば、スペーサ35の長さはその1/2や1/3でもよいし、スペーサ35の本数は3本でも5本でもよい。ただし、スペーサ35を介してジャケット20(のジャケット本体21)とジャケットカバー30(のカバー本体31)が接触する面積が増加するに従って、離隔部材を介してジャケット20からジャケットカバー30に逃げる熱の伝達経路の幅や数が増えるため、長さや本数はエアギャップを安定的に確保し得るために必要な最小限に留めることが望ましい。
【0056】
また、上述した本基本技術のヒータ装置2では、伝熱体の外周の一部または全部を覆うカバー部として、ジャケット20(伝熱体)とほぼ同じ軸方向長さを有するようにジャケットカバー30を構成する場合を例示して説明したが、伝熱体よりも軸方向長さを小さく(短く)設定してもよい。例えば、バンドヒータ10(10a,10b)と同様の軸方向長さを有するようにジャケットカバー30(カバー部)を構成してもよい。この場合には、例えば、
図1に表されているバンドヒータ10a,10bに代えて、軸方向長さが短いジャケットカバー30がジャケット20の両端を覆うように取り付けられる。
【0057】
また、上述し本基本技術のヒータ装置1,2では、伝熱体として、アルファベットのC字形状のように軸方向に隙間23を1つ有する円筒形状にジャケット20のジャケット本体21を形成する場合を例示して説明したが、射出ノズル60の円筒部61(被加熱体の柱状部)の外周の一部または全部を覆い得るものであればよい。例えば、隙間23のような軸方向に切れ目が存在しない全周が繋がった円筒形状や、2つの半円形状が互いに開口側を向けて対向するように軸方向に隙間を2つ有する円筒形状、等にジャケット20のジャケット本体21を形成してもよい。
【0058】
本基本技術のヒータ装置1,2の構成をまとめて技術的思想の創作(技術的手段)として概念すると、次のように表現することができる。
【0059】
[1]柱状部を有する被加熱体を加熱するヒータ装置であって、
前記柱状部の外周に設けられ前記外周の一部または全部を覆う伝熱体と、
前記伝熱体に熱結合するとともに、前記伝熱体を介して間接的にまたは前記伝熱体を介することなく直接的に前記柱状部を加熱するバンドヒータと、を備え、
前記伝熱体は、その熱伝導率が前記柱状部の熱伝導率よりも大きい、ことを特徴とするヒータ装置。
【0060】
[2]前記バンドヒータに加えてさらに他のバンドヒータを備えており、
前記他のバンドヒータは、前記伝熱体に熱結合するとともに、前記伝熱体を介して間接的にまたは前記伝熱体を介することなく直接的に前記柱状部を加熱する、ことを特徴とする上記[1]に記載のヒータ装置。
【0061】
また、本基本技術のヒータ装置1,2を備えるホットランナー装置50は、技術的思想の創作(技術的手段)として概念すると、次のように表現することができる。
【0062】
[3]上記[1]または[2]に記載のヒータ装置を備えるホットランナー装置であって、射出成形型内に溶融樹脂を射出するノズルを有し、
前記被加熱体は前記ノズルであり、前記柱状部は前記ノズルの円筒部である、ことを特徴とするホットランナー装置。
【0063】
上記[1]の技術的手段によると、柱状部を有する被加熱体を加熱するヒータ装置は、伝熱体とバンドヒータを備える。柱状部は、内部に空間がない中実のほかに、内部に空間がある中空をも含む概念である。そのため、柱状部には円柱形状や円筒形状も含まれる。伝熱体は、柱状部の外周に設けられその外周の一部または全部を覆う。バンドヒータは、伝熱体に熱結合するとともに、伝熱体を介して間接的に柱状部を加熱、または伝熱体を介することなく直接的に柱状部を加熱する。そして、伝熱体は、その熱伝導率が被加熱体の柱状部の熱伝導率よりも大きい。これにより、バンドヒータによる加熱は、被加熱体の柱状部に加えて伝熱体に対しても行われ、その伝熱体は被加熱体の柱状部よりも熱伝導率が大きいことから、当該柱状部よりも伝熱体の方が早く熱が伝わる。そのため、柱状部は、伝熱体が設けられて覆われるその外周の一部または全部においては、バンドヒータが設けられていない部分であっても加熱される。したがって、バンドヒータの使用数を減らすことが可能になるので、電力使用量を削減することができる。
【0064】
上記[2]の技術的手段によると、バンドヒータに加えてさらに他のバンドヒータを備えている。そして、他のバンドヒータは、伝熱体に熱結合するとともに、伝熱体を介して間接的に柱状部を加熱、または伝熱体を介することなく直接的に柱状部を加熱する。これにより、他のバンドヒータによる加熱も、被加熱体の柱状部に加えて伝熱体に対しても行われ、その伝熱体は被加熱体の柱状部よりも熱伝導率が大きいことから、当該柱状部よりも伝熱体の方が早く熱が伝わる。例えば、上記[1]に記載のバンドヒータ(一のバンドヒータ)を柱状部の一端側に配置し、他のバンドヒータを柱状部の他端側に配置し、一のバンドヒータと他のバンドヒータとの間に伝熱体を配置する。これにより、柱状部は、バンドヒータが設けられていない両バンドヒータの間においても、伝熱体が設けられて覆われる外周の一部または全部で加熱される。したがって、バンドヒータの使用数を減らすことが可能になるので、電力使用量を削減することができる。
【0065】
上記[3]の技術的手段によると、上記[1]または[2]に記載のヒータ装置を備えるホットランナー装置は、射出成形型内に溶融樹脂を射出するノズルを有する。被加熱体はこのノズルであり、柱状部はこのノズルの円筒部である。これにより、バンドヒータによる加熱は、ノズルの柱状部分に加えて伝熱体に対しても行われ、その伝熱体はノズルの柱状部分よりも熱伝導率が大きいことから、当該柱状部分よりも伝熱体の方が早く熱が伝わる。そのため、柱状部分は、伝熱体が設けられて覆われるその外周の一部または全部においては、バンドヒータが設けられていない部分(一のバンドヒータと他のバンドヒータとの間においても)であっても加熱される。したがって、バンドヒータの使用数を減らすことが可能になるので、電力使用量を削減することができ、また設備コストを低減させることができる。
【0066】
≪本実施形態の説明≫
本発明のヒータ装置およびそれを備えるホットランナー装置の実施形態は、上述した本基本技術のヒータ装置1やホットランナー装置50をベースに構成したものである。そのため、これから説明する本実施形態においては、ヒータ装置1やホットランナー装置50と実質的に同様に構成される部分については、同じ用語や同一の符号を用いてそれらの説明を省略する。
【0067】
[構成例3]
まず、
図7および
図8に基づいて本実施形態のヒータ装置101(構成例3)の構成や機能について説明する。このヒータ装置101は、上述した本基本技術のヒータ装置1に対してジャケット20が蓄熱部122を備える点が異なる。即ち、ヒータ装置101は、2つのバンドヒータ10a,10bとジャケット120とにより構成されている。これらのバンドヒータ10a,10bは、ヒータ装置1のものと同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0068】
ジャケット120は、例えば、アルミニウム製の二重の円筒形状を有する部材である。
図8にその詳細が図示されているので、ここからは
図8も参照しながら説明する。
図8に示すように、本実施形態では、ジャケット120は、径方向内側において円筒形状を有する伝熱部121と、その軸方向ほぼ中央に位置し径方向外側において伝熱部121よりも大径かつ厚肉の円筒形状を有する蓄熱部122とにより構成されている。
【0069】
伝熱部121は、ヒータ装置1のジャケット20の隙間23を無くして円筒形状に繋げたものに相当し、その軸方向長さや内径は、射出ノズル60の円筒部61の長さや外径寸法に基づいて任意に設定されるが、本実施形態ではその軸方向長さは当該ヒータ装置101を構成するバンドヒータ10a,10bの軸方向長さの合計よりも長く(大きく)なるように設定される。伝熱部121の軸方向長さがバンドヒータ10a,10bの軸方向長さの合計よりも短い(小さい)場合や同じである場合には、蓄熱部122を設けることができないからである。
【0070】
本実施形態では、射出ノズル60の円筒部61を軸方向全体に亘って加熱することができ得るように、伝熱部121の軸方向長さは、例えば約100mm、また例えば、外径が約40mm、板厚が約3mmにそれぞれ設定されている。伝熱部121の内径は、
図5を参照しながら説明したヒータ装置1の場合と同様に、ヒータ装置101が射出ノズル60に取り付けられた状態において、当該射出ノズル60の円筒部61の外周に伝熱部121の内周面121aが接触し得る寸法に設定されている。
【0071】
蓄熱部122は、熱容量を高めるために軸方向長さが伝熱部121よりも短いながらもプレート70の収容穴72に収容可能な範囲内で十分に厚い板厚を有する円筒形状に形成されているとともに、伝熱部121の外周面121bに対してほぼ密着し得るように設けられている。蓄熱部122の内周面122aの直径(内径)は、伝熱部121の外径よりも僅かに大径に設定される。そのため、これらの各寸法は、プレート70の収容穴72の内径寸法、伝熱部121の長さ、外径寸法や伝熱部121に取り付けられるバンドヒータ10の数および寸法等に基づいて任意に設定される。なお、「収容可能な範囲内で十分に厚い板厚を有する」とは、射出ノズル60が収容される収容穴72の内周壁に蓄熱部122の外周面122bが接触しない範囲内で最大の外径を当該蓄熱部122が有することを意味する。
【0072】
本実施形態では、バンドヒータ10の数は2つでありその1つ当たりの軸方向長さ(幅)が約20mmである。つまり、2つのバンドヒータ10a,10bの軸方向長さの合計は約40mmであり、伝熱部121の軸方向長さは約100mmであることから、2つのバンドヒータ10a,10bに覆われていない部分(伝熱部121の一部)の長さは約60mmであり、これが蓄熱部122の軸方向長さとして設定されている。また、蓄熱部122の外周面122bの直径(外径)は約60mm、内径は約40mm、板厚は約10mmに、それぞれ設定されている。
【0073】
なお、この長さ約60mmである伝熱部121の一部は、2つのバンドヒータ10a,10bに覆われていない部分であり、特許請求の範囲に記載の「バンドヒータに覆われていない部分」や「複数のバンドヒータに覆われていない部分」に相当し得るものである。また、伝熱部121の残りの約40mmは、2つのバンドヒータ10a,10bに覆われている部分であり、特許請求の範囲に記載の「バンドヒータに覆われている部分」や「複数のバンドヒータに覆われている部分」に相当し得るものである。
【0074】
また、本実施形態においては、伝熱部121と蓄熱部122を別体(別部材)で構成する場合を例示して説明したが、これらを一体(同部材)で構成してもよい。例えば、伝熱部121と同じ軸長を有する蓄熱部122相当の母材から、その両端を切削加工して伝熱部121を削り出して形成してもよい。これにより、伝熱部121と蓄熱部122は一体に成形されることから、これらを別体で構成した場合に比べて両者間における熱伝導効率が向上し、蓄熱部122は、バンドヒータ10a,10bが発した熱を効率良く蓄熱することが可能になる。
【0075】
このように構成することにより本実施形態のヒータ装置101では、バンドヒータ10a,10bとジャケット120を備える。ジャケット120は、射出ノズル60の円筒部61の外周に設けられその外周の一部または全部を覆う。バンドヒータ10a,10bは、ジャケット120を覆ってジャケット120に熱結合するとともにジャケット120を介して間接的に当該円筒部61を加熱する。ジャケット120は、例えば、アルミニウム製(熱伝導率236W/(m・K))でありその熱伝導率が円筒部61(例えば、炭素鋼製(熱伝導率44W/(m・K))の熱伝導率よりも大きい。また、ジャケット120の軸方向長さは、バンドヒータ10a,10bの軸方向長さの合計よりも大きいとともに、バンドヒータ10a,10bに覆われていない部分はその外径がバンドヒータ10a,10bに覆われている部分の外径よりも大きい。
【0076】
これにより、バンドヒータ10a,10bによる加熱は、円筒部61に加えてジャケット120に対しても行われ、そのジャケット120は円筒部61よりも熱伝導率が大きいことから、円筒部61よりもジャケット120の方が早く熱が伝わる。そのため、円筒部61は、ジャケット120が設けられて覆われる外周の一部または全部においては、バンドヒータ10a,10bが設けられていない部分であっても加熱される。したがって、バンドヒータ10a,10bの使用数を減らすことが可能になるので、電力使用量を削減することができる。
【0077】
また、ジャケット120のバンドヒータ10a,10bに覆われていない部分は、その外径がバンドヒータ10a,10bに覆われている部分の外径よりも大きいことから、ジャケット120のバンドヒータ10a,10bに覆われている部分に比べて体積が大きくなる。そのため、ジャケット120のバンドヒータ10a,10bに覆われていない部分は、熱容量が大きくなるので、バンドヒータ10a,10bに覆われている部分に比べてジャケット120の蓄熱性能が向上し、バンドヒータ10a,10bによる加熱が終了した後においても蓄熱された熱による保温が一定時間持続する。したがって、ジャケット120のバンドヒータ10a,10bに覆われていない部分においてこのような蓄熱性能の向上がない場合に比べて、射出ノズル60の円筒部61の軸方向全体に亘って温度を安定にすることができる。
【0078】
[構成例4]
次に、
図9および
図10に基づいて本実施形態のヒータ装置102(構成例4)の構成や機能について説明する。このヒータ装置102は、前述した本実施形態のヒータ装置101に対して、バンドヒータ10にヒータカバー130が設けられている点が異なる。即ち、ヒータ装置102は、2つのバンドヒータ10a,10bと、これらのバンドヒータ10a,10bの周囲を覆う2つのヒータカバー130と、ジャケット120と、により構成されている。これらのバンドヒータ10a,10bは、ヒータ装置1やヒータ装置101のものと同じである。またジャケット120もヒータ装置101のものと同様に構成されている。そのため、これらの説明は省略する。
【0079】
ヒータカバー130は、バンドヒータ10を保温可能に周囲を覆う保温カバーであり、例えば、アルミニウム製の円筒形状を有する部材である。
図10にその詳細が図示されているので、ここからは
図10も参照しながら説明する。
図10に示すように、本実施形態では、ヒータカバー130は、円筒形状を有する本体部131と、本体部131の一端側に位置して円環形状を有するリード部132と、本体部131の他端側に位置して円環形状を有するガイド部133と、により構成されている。本実施形態では、これらは一体に形成されているが、別体に構成してもよい。
【0080】
本体部131は、バンドヒータ10を収容する空間部135を形成するものである。そのため、本体部131はその内径がバンドヒータ10の外径よりも大径に設定されており、その軸方向長さがバンドヒータ10の軸方向長さよりも僅かに長く(大きく)設定されている。また本体部131は、保温性を高めるためその肉厚が伝熱部121よりも厚肉に設定されており、その外径はジャケット120の外径とほぼ同様に設定されている。
【0081】
本体部131の一端側に設けられているリード部132は、ヒータカバー130の内部に収容されたバンドヒータ10等から電気配線を外部に引き出し可能にする切欠部132a,132bを形成するために設けられている。例えば、切欠部132aは、バンドヒータ10のヒータ部13に接続された電気配線(図略)を引き出すための貫通溝であり、また切欠部132bは、射出ノズル60の円筒部61に組み込まれた温度センサの電気配線(図略)を引き出すための貫通溝である。リード部132の内径は、これらの電気配線が通る隙間を伝熱部121の外周面121bとの間に形成し得るように、伝熱部121の外径よりもやや大径に設定されている。
【0082】
本体部131の他端側に設けられているガイド部133は、ヒータカバー130を安定して伝熱部121に取り付け可能にするために設けられている。そのため、ガイド部133の内径は伝熱部121の外径よりも僅かに大径に設定されており、またヒータカバー130が伝熱部121の周囲で回らないように所定位置で伝熱部121の雌ねじ穴(図略)に螺合可能なボルト134を挿通し得る貫通穴133aと低背のボルトヘッドを収容可能な座ぐり穴が形成されている。
【0083】
このようにヒータカバー130を構成することによりヒータ装置102では、ヒータカバー130がバンドヒータ10を保温可能に周囲を覆う。これにより、バンドヒータ10に覆われていない部分に比べて、体積が小さく蓄熱され難い伝熱部121のバンドヒータ10に覆われている部分の保温性が高まる。そのため、バンドヒータ10に覆われている部分においては、バンドヒータ10による加熱が終了した後においてもヒータカバー130による保温が一定時間持続する。したがって、このようなヒータカバー130がない場合に比べて、射出ノズル60の円筒部61の軸方向全体に亘って温度をさらに安定にすることができる。
【0084】
[構成例5]
続けて、
図11および
図12に基づいて本実施形態のヒータ装置103(構成例5)の構成等について説明する。このヒータ装置103は、前述した本実施形態のヒータ装置102に対し、ジャケット120’を構成する蓄熱部125が内部に空間部126を有する点が異なる。即ち、ヒータ装置103は、2つのバンドヒータ10a,10bと、これらのバンドヒータ10a,10bの周囲を覆う2つのヒータカバー130と、ジャケット120’と、により構成されている。これらのバンドヒータ10a,10bは、ヒータ装置1やヒータ装置101,102のものと同じである。またヒータカバー130もヒータ装置102のものと同様に構成されている。そのため、これらの説明は省略する。
【0085】
ジャケット120’は、ヒータ装置101で説明したジャケット120に対して蓄熱部125が異なる。そのため、ここでは伝熱部121については説明を省略する。前述したヒータ装置101やヒータ装置102を構成するジャケット120では、その蓄熱部122はその熱容量を増加させることを目的にしていることから、内部に空間を有することのない中実に構成されている。しかし、蓄熱部122が予定の仕様を超えた過剰な蓄熱性能を有する場合には、バンドヒータ10による加熱時間が長くなる可能性があり、バンドヒータ10による加熱を開始してから、射出ノズル60の円筒部61が所定温度に到達するまでの立ち上がり時において消費電力量の増大を招くおそれがある。
【0086】
このため、本実施形態のヒータ装置103では、このような中実の蓄熱部122に代えて、その内部に空間部126を有する蓄熱部125を備えるようにジャケット120’を構成した。ジャケット120’は、伝熱部121と蓄熱部125により構成されており、その外形状はヒータ装置101のジャケット120と同様で、例えば、アルミニウム製の二重の円筒形状を有する。
【0087】
蓄熱部125は、
図12にその詳細が図示されているので、ここからは
図12も参照しながら説明する。
図12に示すように、蓄熱部125は、その外形状が蓄熱部122とほぼ同様に構成されているものの、内部に空間部126が形成されている。この空間部126は、蓄熱部125が伝熱部121に取り付けられた状態において、伝熱部121の外周面121bと蓄熱部125の内周面125a’との間に形成される(
図12(C)に表されている薄い灰色に着色された部分)。
【0088】
また、蓄熱部125は、その開口内周面125aの直径(内径)が伝熱部121の外径よりも僅かに大径に設定されており、伝熱部121の外周面121bに対して開口内周面125aがほぼ密着し得るように構成されている。なお、蓄熱部125の各寸法は、蓄熱部122と同様に、プレート70の収容穴72の内径寸法、伝熱部121の長さ、外径寸法や伝熱部121に取り付けられるバンドヒータ10の数および寸法等に基づいて任意に設定される。
【0089】
このようにジャケット120’の蓄熱部125を構成することによりヒータ装置103では、ジャケット120’のバンドヒータ10に覆われていない部分、つまり蓄熱部125は、その内部に空間部126を有する。これにより、ジャケット120’の蓄熱部125は、その内部に有する空間部126の容積分だけ熱容量が減少する。そのため、例えば、過剰な蓄熱性能に起因して消費電力が増大する可能性がある場合には、このような空間部126を蓄熱部125(バンドヒータ10に覆われていない部分)の内部に設けることによって、蓄熱性能を低下させて消費電力の増大を抑制することが可能になる。
【0090】
したがって、このような場合、蓄熱部125(バンドヒータ10に覆われていない部分)が有する空間部126の大きさ(容積)を予め調整して所定の容積値に設定することで、電力使用量を削減し、かつ、射出ノズル60の円筒部61の軸方向全体に亘って温度を安定にすることができる。つまり、電力使用量の削減と柱状部の全体温度の安定化を両立させることができる。なお、蓄熱部125における空間部126の大きさ(容積)は、蓄熱部の蓄熱特性に応じて個別具体的に行われる実験や計算機シミュレーション等の結果に基づいて、適宜、最適値に設定される。
【0091】
ここで、これまでに説明したヒータ装置の構成例として、本基本技術のヒータ装置1(構成例1)、本実施形態のヒータ装置102(構成例4)、本実施形態のヒータ装置103(構成例5)や、背景技術で説明したように3つのバンドヒータ10a~10cで構成した背景技術相当の従来構成100(従来例)を模式的に表した一覧図を
図13に示す。なお、
図13には、同図(A)に従来構成100、同図(B)にヒータ装置1、同図(C)にヒータ装置102、同図(D)にヒータ装置103がそれぞれ図示されている。これらの構成例においては、射出ノズル60(被加熱体)の円筒部61(柱状部)に対して、バンドヒータ10は2つではなく、3つのバンドヒータ10a~10cが設けられていることに注意されたい。
【0092】
これらについて、まずバンドヒータ10a~10cによる加熱を開始してから、射出ノズル60の円筒部61が所定温度(例えば230℃)に到達するまでの立ち上がり時(昇温域)に要する消費電力量の合計値を測定した。その結果、次の表(イ)に示すようなデータが得られた。削減率は、従来構成100(従来例)における消費電力量の合計値に対して削減することができた消費電力量の割合(%)を表したものである。
【0093】
表(イ) |消費電力量(kwh) |削減率(%)|
────────────────────┼────────┼─────┤
背景技術相当の従来構成100( 従来例 )| 1.011 | 0 |
本基本技術のヒータ装置1 (構成例1)| 0.946 | 6 |
本実施形態のヒータ装置102(構成例4)| 0.979 | 3 |
本実施形態のヒータ装置103(構成例5)| 0.982 | 3 |
【0094】
また、射出ノズル60の円筒部61が所定温度(例えば230℃)に到達した後、その温度を一定時間、維持するように(定温域)、例えばPID制御によりバンドヒータ10a~10cのオンオフを制御した間において要した消費電力量の合計値も測定した。その結果は次の表(ロ)に示す通りである。
【0095】
表(ロ) |消費電力量(kwh) |削減率(%)|
────────────────────┼────────┼─────┤
背景技術相当の従来構成100( 従来例 )| 1.422 | 0 |
本基本技術のヒータ装置1 (構成例1)| 0.932 | 34 |
本実施形態のヒータ装置102(構成例4)| 0.950 | 33 |
本実施形態のヒータ装置103(構成例5)| 1.061 | 25 |
【0096】
表(イ)と表(ロ)を合わせたもの、即ち、加熱開始から立ち上がりの昇温域を経て一定時間の定温域を終えるまでの全期間に要した消費電力量の合計値は、次の表(ハ)に示す結果になる。なお、本実施形態では、全期間は、例えば2時間である。
【0097】
表(ハ) |消費電力量(kwh) |削減率(%)|
────────────────────┼────────┼─────┤
背景技術相当の従来構成100( 従来例 )| 2.433 | 0 |
本基本技術のヒータ装置1 (構成例1)| 1.878 | 23 |
本実施形態のヒータ装置102(構成例4)| 1.929 | 21 |
本実施形態のヒータ装置103(構成例5)| 2.043 | 16 |
【0098】
なお、上記各測定時における周囲環境の温度は、次の通りである。
背景技術相当の従来構成100( 従来例 ): 29.0℃
本基本技術のヒータ装置1 (構成例1): 29.0℃
本実施形態のヒータ装置102(構成例4): 23.0℃
本実施形態のヒータ装置103(構成例5): 17.0℃
【0099】
この結果から、本基本技術のヒータ装置1、本実施形態のヒータ装置102,103のいずれについても従来構成100に比べて、昇温域、定温域および全期間のすべてにおいて消費電力量を削減できていることを確認した。なお、前述したように、本実施形態のヒータ装置103は、立ち上がり時(昇温域)における消費電力量の増大を抑制し得る構成であるものの、昇温域に加えて定温域においてもヒータ装置102に比べて電力消費量が多い。これは、測定時における周囲環境の温度差が影響しているものと考えられる。
【0100】
次に、所定温度(例えば230℃)に到達した後、バンドヒータ10a~10cによる加熱を停止または終了した場合における温度低下の経時変化を測定した。この測定結果は、
図14および
図15に図示されているので、ここからはこれらの図も参照しながら説明する。なお、これらの図においては、横軸が経過時間(分)、縦軸が温度(℃)をそれぞれ表しており、いずれのグラフも1分間隔で温度データがプロットされている。また、各プロットは、◆印が従来構成100(従来例)、▲印がヒータ装置1(構成例1)、*印がヒータ装置102(構成例4)、+印がヒータ装置103(構成例5)、の温度データをそれぞれ表している。
【0101】
図14(A)に示すように、まず従来構成100(従来例)による温度低下特性(◆印)では、230℃から200℃に下がるまでの時間は130秒であり、また230℃から150℃に下がるまでの時間は600秒である。これに対して、ヒータ装置1(構成例1)による温度低下特性(▲印)では、230℃から200℃に下がるまでの時間は206秒であり、また230℃から150℃に下がるまでの時間は840秒である。これを10℃ごとに表すと次のようになる。なお、蓄熱増加率(=((▲印の温度-◆印の温度)/◆印の温度)×100)は、平均8.7%(最大10.3%、最小4.4%)であることを確認した。
【0102】
<従来構成100> <ヒータ装置1> 延長時間 増加率
230℃→220℃: 42秒 85秒 43秒 202%
230℃→210℃: 86秒 138秒 52秒 160%
230℃→200℃: 130秒 206秒 76秒 158%
230℃→190℃: 187秒 283秒 96秒 151%
230℃→180℃: 257秒 384秒 127秒 149%
230℃→170℃: 350秒 510秒 160秒 146%
230℃→160℃: 456秒 660秒 204秒 145%
230℃→150℃: 600秒 840秒 240秒 140%
【0103】
また
図14(B)に示すように、ヒータ装置102(構成例4)による温度低下特性(*印)では、230℃から200℃に下がるまでの時間は283秒であり、また230℃から150℃に下がるまでの時間は1060秒である。これを10℃ごとに表すと次のようになる。なお、蓄熱増加率(=((▲印の温度-*印の温度)/*印の温度)×100)は、平均14.3%(最大17.0%、最小5.2%)であることを確認した。
【0104】
<従来構成100> <ヒータ装置102> 延長時間 増加率
230℃→220℃: 42秒 128秒 86秒 305%
230℃→210℃: 86秒 203秒 117秒 236%
230℃→200℃: 130秒 283秒 153秒 218%
230℃→190℃: 187秒 384秒 197秒 205%
230℃→180℃: 257秒 504秒 247秒 196%
230℃→170℃: 350秒 645秒 295秒 184%
230℃→160℃: 456秒 820秒 364秒 180%
230℃→150℃: 600秒 1060秒 460秒 177%
【0105】
さらに
図14(C)に示すように、ヒータ装置103(構成例5)による温度低下特性(+印)では、230℃から200℃に下がるまでの時間は291秒であり、また230℃から150℃に下がるまでの時間は1020秒である。これを10℃ごとに表すと次のようになる。なお、蓄熱増加率(=((▲印の温度-+印の温度)/+印の温度)×100)は、平均11.2%(最大16.7%、最小3.6%)であることを確認した。
【0106】
<従来構成100> <ヒータ装置103> 延長時間 増加率
230℃→220℃: 42秒 120秒 78秒 286%
230℃→210℃: 86秒 206秒 120秒 240%
230℃→200℃: 130秒 291秒 161秒 224%
230℃→190℃: 187秒 396秒 209秒 212%
230℃→180℃: 257秒 516秒 259秒 201%
230℃→170℃: 350秒 660秒 310秒 189%
230℃→160℃: 456秒 825秒 369秒 181%
230℃→150℃: 600秒 1020秒 420秒 170%
【0107】
このように本実施形態のヒータ装置102(構成例4)およびヒータ装置103(構成例5)は、従来構成100や本基本技術のヒータ装置1(構成例1)に比べると、バンドヒータ10a~10cによる加熱の停止後または終了後から所定温度に低下するまでの時間が大幅に延長されていることがわかる。つまり、これらを構成するジャケット120,120’の蓄熱部122,125による蓄熱機能が十分に発揮されて保温効果が現れていることを確認した。
【0108】
また、
図14(A)~(C)に示す各温度低下特性を、ヒータ装置1(構成例1)、ヒータ装置102(構成例4)、ヒータ装置103(構成例5)同士において比較したグラフが、
図15に図示されている。
図15(A)は、ヒータ装置1(構成例1)とヒータ装置102(構成例4)を比較したグラフ、
図15(B)はヒータ装置102(構成例4)とヒータ装置103(構成例5)を比較したグラフである。これにより、蓄熱性能は、ヒータ装置102(構成例4)、ヒータ装置103(構成例5)、ヒータ装置1(構成例1)の順番で優れていることを確認した。
【0109】
なお、本実施形態のヒータ装置101(構成例3)については、上述したような立ち上がり時等における消費電力量の測定や、蓄熱性能を確認する測定は行っていないが、本基本技術のヒータ装置1(構成例1)と本実施形態のヒータ装置102(構成例4)との間に位置する測定結果が得られることが予想される。したがって、蓄熱性能は、ヒータ装置102(構成例4)、ヒータ装置103(構成例5)、ヒータ装置101(構成例3)、ヒータ装置1(構成例1)またはヒータ装置102(構成例4)、ヒータ装置101(構成例3)、ヒータ装置103(構成例5)、ヒータ装置1(構成例1)の順番で優れている蓋然性が高い。
【0110】
なお、上述した本実施形態のヒータ装置101,102,103においては、バンドヒータ10a,10bやバンドヒータ10a~10cのように、バンドヒータ10が複数個設けられている場合を例示して説明したが、例えば、本基本技術のヒータ装置2のように、1つのバンドヒータ10と、ジャケット120,120’に相当するジャケットと、で構成してもよい。この場合のジャケットは、その軸方向長さが1つのバンドヒータ10の軸方向長さよりも長く(大きく)設定されている必要があること以外は、ジャケット120やジャケット120’と同様に構成される。
【0111】
また、上述した本実施形態のヒータ装置101,102,103では、ジャケット120を構成する伝熱部121のうち、バンドヒータ10a,10b,10c等のバンドヒータ10に覆われていない部分の外径を大径の蓄熱部122に構成する場合を例示して説明したが、バンドヒータ10に覆われていない部分は、その全ての外径が伝熱部121よりも大径である必要はない。バンドヒータ10に覆われていない部分の大半において、その外径が伝熱部121の外径よりも大きければよい。つまり、バンドヒータ10に覆われていない部分において、伝熱部121と同寸法の外径またはそれよりも小径の部分が存在してもよい。
【0112】
さらに、上述した本実施形態のヒータ装置101,102,103では、バンドヒータ10a,10b,10c等の複数のバンドヒータ10が機械的および電気的に同じ仕様である場合を例示して説明した。そのため、バンドヒータ10a,10b等に覆われている部分の伝熱部121は、その外径寸法が同じであることを前提に構成したが、伝熱部121に設けられるバンドヒータの機械的および電気的仕様の違いによって、伝熱部121の外径寸法が異なる場合があってもよい。つまり、バンドヒータ10に覆われている部分の伝熱部121は、その外径寸法が区区(まちまち)であってもよい。
【0113】
なお、上述した本基本技術のヒータ装置1,2や本実施形態のヒータ装置101,102,103では、伝熱体として、ジャケット20のジャケット本体21、ジャケット120,120’の伝熱部121および蓄熱部122,125をアルミニウム製にする場合を例示して説明したが、射出ノズル60の円筒部61よりも熱伝導率が大きい素材であれば、アルミニウム(熱伝導率236W/(m・K))に限られない。例えば、ステンレス鋼の熱伝導率は16.7~20.9W/(m・K)であり、また鉄の熱伝導率は83.5W/(m・K)であることから、射出ノズル60の円筒部61をステンレスや鉄で構成する場合には、これらよりも熱伝導率が大きい真鍮(熱伝導率:106W/(m・K))や銅(同:403W/(m・K))等でジャケット本体21、伝熱部121や蓄熱部122,125を構成してもよい。
【0114】
また、上述した本基本技術のヒータ装置1,2や本実施形態のヒータ装置101,102,103においては、被加熱体として、円筒部61を有する射出ノズル60に取り付ける場合を例示して説明したが、本発明のヒータ装置により加熱される被加熱体はこれに限られない。ヒータ装置1,2,101,102,103を取り付ける対象は、柱状体(または筒状体)であれば、例えば、角柱形状(または角筒形状)や多角柱形状(または多角筒形状)を有する射出ノズル等の被加熱体でもよい。また、押出し成形機の加熱シリンダにヒータ装置1,2を取り付けてもよい。
【0115】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、上述した具体例を様々に変形または変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。さらに、本明細書または図面に例示した技術は、複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つ。なお、[符号の説明]の欄における括弧内の記載は、上述した各実施形態で用いた用語と、特許請求の範囲に記載の用語との対応関係を明示し得る。
【符号の説明】
【0116】
1,2…ヒータ装置
10,10a,10b、10c…バンドヒータ
12…カバー部
13…ヒータ部
17…スペーサ
20,20a,20b…ジャケット(伝熱体)
21…ジャケット本体
21a…内周面
21b…外周面
23…隙間
30…ジャケットカバー
31…カバー本体
31a…内周面
31b…外周面
35…スペーサ
50…ホットランナー装置
51…マニホールド
53…ノズルタッチ
60…射出ノズル(被加熱体)
61…円筒部(柱状部)
62…先端部
70…プレート
72…収容穴
100…従来構成
101,102,103…ヒータ装置
120,120’…ジャケット(伝熱体)
121…伝熱部
122,125…蓄熱部(バンドヒータに覆われていない部分)
126…空間部
130…ヒータカバー(カバー)
131…本体部
132…リード部
134…ボルト
135…空間部