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特開2024-144133カバープロテクタ及びその製造方法、並びに電池モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144133
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】カバープロテクタ及びその製造方法、並びに電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/04 20060101AFI20241003BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20241003BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20241003BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20241003BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20241003BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20241003BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F16L59/04
H01M10/658
H01M10/625
H01M50/204 401F
B32B7/027
B32B9/00 A
B32B5/02 B
H01M50/204 401H
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024018668
(22)【出願日】2024-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2023053777
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 祥啓
(72)【発明者】
【氏名】島田 将平
【テーマコード(参考)】
3H036
4F100
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB13
3H036AB15
3H036AB24
3H036AC03
4F100AA00A
4F100AA00C
4F100AA19C
4F100AA20C
4F100AB01C
4F100AG00C
4F100AK03B
4F100AK46B
4F100AK51B
4F100AN02B
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100DC11B
4F100DE01B
4F100DG00C
4F100GB41
4F100JJ02A
4F100JL11B
4F100YY00B
5H031AA09
5H031EE03
5H031EE04
5H031KK02
5H040AA27
5H040AA37
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY04
5H040AY08
5H040LL04
5H040LL06
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】飛散物から断熱材を保護することができるとともに、より一層断熱性能を向上させることができるカバープロテクタ及びその製造方法、並びに電池モジュールを提供する。
【解決手段】カバープロテクタ1は、無機粒子を含む断熱材2と、無機繊維シート3と、断熱材2と無機繊維シート3とを接合し、有機材料を含む接着層4と、を有する。断熱材2と無機繊維シート3との積層方向視において、接着層4は、複数の島状部5とこれら複数の島状部5を互いに連結する網目状部6と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子を含む断熱材と、
無機繊維シートと、
前記断熱材と前記無機繊維シートとを接合し、有機材料を含む接着層と、を有し、
前記断熱材と前記無機繊維シートとの積層方向視において、前記接着層は、複数の島状部と前記複数の島状部を互いに連結する網目状部と、を有することを特徴とする、カバープロテクタ。
【請求項2】
前記接着層に含まれる有機材料は、合成ゴム、ポリオレフィン系有機材料、ポリアミド系有機材料及びポリウレタン系有機材料から選択された少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載のカバープロテクタ。
【請求項3】
前記有機材料の含有量は、前記接着層全質量に対して80質量%以上であることを特徴とする、請求項1に記載のカバープロテクタ。
【請求項4】
前記網目状部は複数の線状体を有し、前記複数の線状体が部分的に交差しながら複数の方向に延びることにより前記網目状部が構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のカバープロテクタ。
【請求項5】
前記無機繊維シートと前記断熱材との間に、空隙部を有することを特徴とする、請求項1に記載のカバープロテクタ。
【請求項6】
前記無機繊維シートには、前記接着層に接する面から内部に至る領域に、前記接着層を構成する前記有機材料が侵入していることを特徴とする、請求項1に記載のカバープロテクタ。
【請求項7】
前記接着層は、前記断熱材に含まれる無機粒子の一部を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載のカバープロテクタ。
【請求項8】
前記無機繊維シートは、シリカ繊維、アルミナ繊維、ガラス繊維及び金属繊維から選択された少なくとも1種の繊維をシート状に加工したものであることを特徴とする、請求項1に記載のカバープロテクタ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のカバープロテクタの製造方法であって、
前記断熱材と前記無機繊維シートとの間に、前記接着層を構成する接着材料を配置する配置工程と、
前記断熱材と前記接着材料と前記無機繊維シートとが積層された領域を加熱及び加圧する接合工程と、を有し、
前記配置工程は、複数の方向に延びる複数の繊維状の前記接着材料を、前記断熱材と前記無機繊維シートとの間に配置する工程を有し、複数の第1領域における前記接着材料の配置量が、その他の第2領域における前記接着材料の配置量よりも多くなるように、前記接着材料が配置されており、
前記接合工程において、前記第1領域に前記島状部が構成され、前記第2領域に前記網目状部が構成されることを特徴とする、カバープロテクタの製造方法。
【請求項10】
前記第1領域は、前記複数の繊維状の前記接着材料が互いに重なり合った領域であることを特徴とする、請求項9に記載のカバープロテクタの製造方法。
【請求項11】
前記接着材料は、有機材料からなり複数の方向に延びる複数の繊維がシート状に加工されたものであり、前記第1領域における前記繊維の密度が、前記第2領域における前記繊維の密度よりも多くなるように前記繊維が配置されたものであることを特徴とする、請求項9に記載のカバープロテクタの製造方法。
【請求項12】
前記第1領域は、前記複数の繊維が互いに重なり合った領域であることを特徴とする、請求項11に記載のカバープロテクタの製造方法。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか1項に記載のカバープロテクタと、
蓄電池と、
前記カバープロテクタと前記蓄電池とを収容する電池ケースと、を有することを特徴とする、電池モジュール。
【請求項14】
前記電池ケースは、その内部に天井面、側壁面及び底壁面を有し、
前記断熱材が、前記天井面、側壁面及び底壁面から選択された少なくとも1つに対向するように配置されて、前記カバープロテクタが前記電池ケース内に取り付けられていることを特徴とする、請求項13に記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバープロテクタ及びその製造方法、並びに該カバープロテクタを備える電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全のために、電気自動車などにリチウムイオン2次電池が用いられている。しかし、リチウムイオン2次電池は、有機電解液を使用しているために、熱暴走時に着火すると火炎が発生してバッテリーパックを損傷するおそれがある。
【0003】
その対策として、例えば特許文献1では、電気エネルギー貯蔵システムにおける断熱バリアとして使用するための多層材料が提案されている。上記多層材料は、無機接着剤によって無機粒子及び無機繊維を含む不織布層に結合された少なくとも1つの無機布地層を含み、無機接着剤は少なくとも99重量%の無機成分と、0.01重量%以上1重量%未満の有機添加剤とを含むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2021/022130号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近時の電池の容量増加に伴い、スタック数も大きくなっており、有機電解液の量も増えているため、電池が熱暴走を起こしたときの安全対策が強く求められている。しかし、上記特許文献1に記載の多層材料では、十分な断熱性能を得ることができない。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、飛散物から断熱材を保護することができるとともに、より一層断熱性能を向上させることができるカバープロテクタ及びその製造方法、並びに電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、カバープロテクタに係る下記[1]の構成により達成される。
【0008】
[1] 無機粒子を含む断熱材と、
無機繊維シートと、
前記断熱材と前記無機繊維シートとを接合し、有機材料を含む接着層と、を有し、
前記断熱材と前記無機繊維シートとの積層方向視において、前記接着層は、複数の島状部と前記複数の島状部を互いに連結する網目状部と、を有することを特徴とする、カバープロテクタ。
【0009】
また、カバープロテクタに係る本発明の好ましい実施形態は、以下の[2]~[8]に関する。
【0010】
[2] 前記接着層に含まれる有機材料は、合成ゴム、ポリオレフィン系有機材料、ポリアミド系有機材料及びポリウレタン系有機材料から選択された少なくとも1種であることを特徴とする、[1]に記載のカバープロテクタ。
[3] 前記有機材料の含有量は、前記接着層全質量に対して80質量%以上であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載のカバープロテクタ。
[4] 前記網目状部は複数の線状体を有し、前記複数の線状体が部分的に交差しながら複数の方向に延びることにより前記網目状部が構成されていることを特徴とする、[1]~[3]のいずれか1つに記載のカバープロテクタ。
[5] 前記無機繊維シートと前記断熱材との間に、空隙部を有することを特徴とする、[1]~[4]のいずれか1つに記載のカバープロテクタ。
[6] 前記無機繊維シートには、前記接着層に接する面から内部に至る領域に、前記接着層を構成する前記有機材料が侵入していることを特徴とする、[1]~[5]のいずれか1つに記載のカバープロテクタ。
[7] 前記接着層は、前記断熱材に含まれる無機粒子の一部を含んでいることを特徴とする、[1]~[6]のいずれか1つに記載のカバープロテクタ。
[8] 前記無機繊維シートは、シリカ繊維、アルミナ繊維、ガラス繊維及び金属繊維から選択された少なくとも1種の繊維をシート状に加工したものであることを特徴とする、[1]~[7]のいずれか1つに記載のカバープロテクタ。
【0011】
また、本発明の上記目的は、カバープロテクタの製造方法に係る下記[9]の構成により達成される。
【0012】
[9] [1]~[8]のいずれか1つに記載のカバープロテクタの製造方法であって、
前記断熱材と前記無機繊維シートとの間に、前記接着層を構成する接着材料を配置する配置工程と、
前記断熱材と前記接着材料と前記無機繊維シートとが積層された領域を加熱及び加圧する接合工程と、を有し、
前記配置工程は、複数の方向に延びる複数の繊維状の前記接着材料を、前記断熱材と前記無機繊維シートとの間に配置する工程を有し、複数の第1領域における前記接着材料の配置量が、その他の第2領域における前記接着材料の配置量よりも多くなるように、前記接着材料が配置されており、
前記接合工程において、前記第1領域に前記島状部が構成され、前記第2領域に前記網目状部が構成されることを特徴とする、カバープロテクタの製造方法。
【0013】
また、カバープロテクタの製造方法に係る本発明の好ましい実施形態は、以下の[10]~[12]に関する。
【0014】
[10] 前記第1領域は、前記複数の繊維状の前記接着材料が互いに重なり合った領域であることを特徴とする、[9]に記載のカバープロテクタの製造方法。
[11] 前記接着材料は、有機材料からなり複数の方向に延びる複数の繊維がシート状に加工されたものであり、前記第1領域における前記繊維の密度が、前記第2領域における前記繊維の密度よりも多くなるように前記繊維が配置されたものであることを特徴とする、[9]に記載のカバープロテクタの製造方法。
[12] 前記第1領域は、前記複数の繊維が互いに重なり合った領域であることを特徴とする、[11]に記載のカバープロテクタの製造方法。
【0015】
また、本発明の上記目的は、電池モジュールに係る下記[13]の構成により達成される。
【0016】
[13] [1]~[8]のいずれか1つに記載のカバープロテクタと、
蓄電池と、
前記カバープロテクタと前記蓄電池とを収容する電池ケースと、を有することを特徴とする、電池モジュール。
【0017】
また、電池モジュールに係る本発明の好ましい実施形態は、以下の[14]に関する。
【0018】
[14] 前記電池ケースは、その内部に天井面、側壁面及び底壁面を有し、
前記断熱材が、前記天井面、側壁面及び底壁面から選択された少なくとも1つに対向するように配置されて、前記カバープロテクタが前記電池ケース内に取り付けられていることを特徴とする、[13]に記載の電池モジュール。
【発明の効果】
【0019】
本発明のカバープロテクタは、無機繊維シートと断熱材とが接着層によって接合されたものであり、断熱材が無機繊維及び不融化繊維の少なくとも一方を含むため、断熱性能や防炎性能に優れる。また、無機繊維シートを有するため、飛散物の断熱材への直接的な衝突を防止することができる。さらに、接着層が特有の構造を有しているため、接着性能を維持しつつ断熱性能を向上させることができる。
【0020】
また、本発明のカバープロテクタは、有機材料を含む接着材料を無機繊維シートと断熱材との間に挟み、加熱及び加圧するのみで製造することができるため、低い製造コストで容易に製造することができる。
【0021】
さらに、本発明の電池モジュールは、蓄電池を収容する電池ケースに本発明のカバープロテクタを設置したものであるため、熱暴走時に飛散物による破損を抑制することができるとともに、火炎が発生しても外部への延焼をより確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本実施形態に係るカバープロテクタを示す模式的断面図である。
図2図2は、図1に示すカバープロテクタにおける接着層を積層方向視で示す図面代用写真である。
図3図3は、図1に示すカバープロテクタの一部の断面を示す図面代用写真である。
図4図4は、本発明の実施形態に係るカバープロテクタの製造方法の一例を示す模式図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る電池モジュールを示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に関して図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
【0024】
[カバープロテクタ]
図1は、本実施形態に係るカバープロテクタを示す模式的断面図である。また、図2は、図1に示すカバープロテクタにおける接着層を積層方向視で示す図面代用写真であり、図3は、図1に示すカバープロテクタの一部の断面を示す図面代用写真である。図1に示すように、カバープロテクタ1は、無機粒子を含む断熱材2と、無機繊維シート3と、この断熱材2と無機繊維シート3とを接合する接着層4と、を有する。接着層4は有機材料を含む。
【0025】
図2に示すように、断熱材2と無機繊維シート3との積層方向に平行な積層方向視で、接着層4は、複数の島状部5とこれら複数の島状部5を互いに連結する網目状部6とを有する。より具体的に、網目状部6は複数の線状体を有し、これらの複数の線状体が部分的に交差しながら複数の種々の方向に延びることにより網目状部6が構成されている。そして、網目状部6が複数の島状部5同士を連結している。
【0026】
網目状部6を構成する線状体は、直線状の線状体に限定されず、曲線状の線状体であってもよい。また、線状体は、線状体同士が交差している交点から複数の方向に延びているが、その方向は4方向に限らず、3方向や5方向以上であってもよい。線状体の幅については一様である必要はなく、網目状部6は、幅が100μm以下である幅狭線状体9aや、この幅狭線状体9aの幅の2倍以上の幅を有する幅広線状体9bを有していてもよい。
【0027】
島状部5は、上記線状体の幅(長手方向に直交する方向の長さ)よりも広く、平面状に広がる形状を有する。なお、島状部5の短手方向の幅は、例えば、上記幅広線状体の幅の3倍以上である。接着層4において、島状部5は分散して形成されているが、隣り合う島状部5間の間隔は一定でなくてもよく、互いに接近した島状部5や、離隔した島状部5が存在してもよい。
【0028】
上述のとおり、複数の線状体は種々の方向に延びており、これにより、島状部5の周囲における線状体が存在しない領域に、種々のサイズの空隙部7が形成されている。積層方向視における空隙部7の形状は、扁平な円形状や多角形状を有する。接近した島状部5間の領域には、面積が小さい空隙部7が多く形成されており、離隔した島状部5間の領域には、面積が大きい空隙部7が形成されている。なお、本実施形態において、無機繊維シート3は、無機繊維からなる横糸3aと縦糸3bとが交互に編み込まれることにより形成されている。
【0029】
図3においても示すように、接着層4は網目状部6を有するため、断熱材2と無機繊維シート3との間において、島状部5及び網目状部6が存在しない領域に、空隙部7が形成されている。また、断熱材2に含まれる無機粒子8を図中に点で示しているが、接着層4は、この無機粒子8の一部を含んでいる。さらに、無機繊維シート3には、接着層4に接する面から内部に至る領域に、接着層4に含まれる有機材料が侵入している。
【0030】
上記のように構成された本実施形態に係るカバープロテクタ1においては、断熱性能を有する断熱材2を有するため、優れた断熱効果及び防炎効果を得ることができる。また、断熱材2に接合された無機繊維シート3を有するため、カバープロテクタ1の周囲で物品が破損し、飛散が生じた場合に、無機繊維シート3により断熱材2を保護することができる。したがって、断熱材2の破損を抑制することができ、優れた断熱効果及び防炎効果を維持することができる。
【0031】
さらに、本実施形態においては、断熱材2と無機繊維シート3とを接合する接着層4は島状部5を有し、この島状部5は、平面状に広がる形状を有しているため、断熱材2と無機繊維シート3とを良好に接合することができる。また、断熱材2と無機繊維シート3との間には空隙部7が形成されているため、断熱材2又は無機繊維シート3の表面一面に平面状に塗布された接着剤で両者を接着する場合と比較して、断熱性能をより一層向上させることができる。さらに、接着層4は、種々のサイズの空隙部7を有するため、カバープロテクタ1がその厚さ方向に押圧されていない状態においては、大きいサイズの空隙部7が断熱性の向上に寄与する。そして、カバープロテクタ1がその厚さ方向に押圧された状態において、小さいサイズの空隙部7は周囲の線状体に支持されて、体積の減少が抑制されるため、断熱性能を維持することができる。
【0032】
さらに、本実施形態においては、網目状部6が上記のような特徴的な形状を有するため、カバープロテクタ1が押圧されたり、曲げられたりした場合であっても、網目状部6が柔軟に屈曲し、無機繊維シート3が断熱材2から離脱することを抑制することができる。また、線状体が、島状部5に近い基部において広い幅を有していると、カバープロテクタ1が押圧されたり、曲げられたりした場合に、線状体が島状部5から分断されることを抑制することができる。その結果、接着層4をカバープロテクタ1の形状の変化に追従させることができ、無機繊維シート3の断熱材2からの離脱をより一層抑制することができる。
【0033】
また、断熱材2に含まれる無機粒子8が、接着層4に含まれていることや、接着層4に含まれる有機材料が、無機繊維シート3に侵入していることによって、断熱材2と無機繊維シート3との接合力をより一層高めることができる。
【0034】
以下、本実施形態に係るカバープロテクタ1を構成する断熱材2、無機繊維シート3及び接着層4の材料について、詳細に説明する。
【0035】
〔断熱材〕
本実施形態に係るカバープロテクタに用いられる断熱材2としては、断熱効果を有するものであれば、特に限定されない。断熱効果を表す指標として、熱伝導率を挙げることができるが、本実施形態においては、断熱材2の熱伝導率は1(W/m・K)未満であることが好ましく、0.5(W/m・K)未満であることがより好ましく、0.2(W/m・K)未満であることがより好ましい。さらに、断熱材2の熱伝導率は0.1(W/m・K)未満であることがより好ましく、0.05(W/m・K)未満であることがより好ましく、0.02(W/m・K)未満であることが特に好ましい。
なお、断熱材2の熱伝導率は、JIS R 2251に記載の「耐火物の熱伝導率の試験方法」に準拠して、測定することができる。
【0036】
断熱材2は無機粒子を含み、その他の成分として、例えば、無機繊維、有機繊維及び有機粒子から選択された少なくとも1種を含有するものを用いることができる。それぞれの具体例を下記に示す。
【0037】
<無機粒子>
無機粒子として、単一の無機粒子を使用してもよいし、2種以上の無機粒子を組み合わせて使用してもよい。無機粒子の種類としては、断熱効果の観点から、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種の無機材料からなる粒子を使用することが好ましく、酸化物粒子を使用することがより好ましい。また、形状についても特に限定されないが、ナノ粒子、中空粒子及び多孔質粒子から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、具体的には、シリカナノ粒子、金属酸化物粒子、マイクロポーラス粒子や中空シリカ粒子等の無機バルーン、熱膨張性無機材料からなる粒子、含水多孔質体からなる粒子等を使用することもできる。
【0038】
無機粒子の平均二次粒子径が0.01μm以上であると、入手しやすく、製造コストの上昇を抑制することができる。また、200μm以下であると、所望の断熱効果を得ることができる。したがって、無機粒子の平均二次粒子径は、0.01μm以上200μm以下であることが好ましく、0.05μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0039】
なお、2種以上の断熱効果が互いに異なる無機粒子を併用すると、発熱体を多段に冷却することができ、吸熱作用をより広い温度範囲で発現できる。具体的には、大径粒子と小径粒子とを混合使用することが好ましい。例えば、一方の無機粒子として、ナノ粒子を使用する場合に、他方の無機粒子として、金属酸化物からなる無機粒子を含むことが好ましい。以下、小径の無機粒子を第1の無機粒子、大径の無機粒子を第2の無機粒子として、無機粒子についてさらに詳細に説明する。
【0040】
<第1の無機粒子>
(酸化物粒子)
第1の無機粒子として酸化物粒子を使用すると、特に異常発熱などの高温度領域において輻射伝熱を抑制することができる。酸化物粒子としては、シリカ、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム、酸化亜鉛及びアルミナから選択された少なくとも1種の粒子を使用することができる。すなわち、無機粒子として使用することができる上記酸化物粒子のうち、1種のみを使用してもよいし、2種以上の酸化物粒子を使用してもよい。特に、シリカは断熱性が高い成分であり、チタニアは他の金属酸化物と比較して屈折率が高い成分であって、500℃以上の高温度領域において光を乱反射させ輻射熱を遮る効果が高いため、酸化物粒子としてシリカ及びチタニアを用いることが最も好ましい。
【0041】
なお、酸化物粒子は屈折率が高く、光を乱反射させる効果が強いため、酸化物粒子の粒子径は、輻射熱を反射する効果に影響を与えることがある。したがって、酸化物粒子の平均一次粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。
【0042】
(酸化物粒子の平均一次粒子径:0.001μm以上50μm以下)
酸化物粒子の平均一次粒子径が0.001μm以上であると、加熱に寄与する光の波長よりも十分に大きく、光を効率よく乱反射させるため、500℃以上の高温度領域においてカバープロテクタ内における熱の輻射伝熱が抑制され、より一層断熱性を向上させることができる。一方、酸化物粒子の平均一次粒子径が50μm以下であると、圧縮されても粒子間の接点や数が増えず、伝導伝熱のパスを形成しにくいため、特に伝導伝熱が支配的な通常温度域の断熱性への影響を小さくすることができる。
【0043】
なお、本発明において平均一次粒子径は、顕微鏡で粒子を観察し、標準スケールと比較し、任意の粒子10個の平均をとることにより求めることができる。
【0044】
(ナノ粒子)
本発明において、ナノ粒子とは、球形又は球形に近い平均一次粒子径が1μm未満のナノメートルオーダーの粒子を表す。ナノ粒子は低密度であるため伝導伝熱を抑制し、第1の無機粒子としてナノ粒子を使用すると、さらに細かい空隙部が分散するため、対流伝熱を抑制する優れた断熱性を得ることができる。このため、通常の常温域の電池使用時において、隣接するナノ粒子間の熱の伝導を抑制することができる点で、ナノ粒子を使用することが好ましい。
さらに、酸化物粒子として、平均一次粒子径が小さいナノ粒子を使用すると、電池セルの熱暴走に伴う膨張によって断熱材が圧縮され、内部の密度が上がった場合であっても、断熱材の伝導伝熱の上昇を抑制することができる。これは、ナノ粒子が静電気による反発力で粒子間に細かな空隙部ができやすく、かさ密度が低いため、クッション性があるように粒子が充填されるからであると考えられる。
【0045】
なお、第1の無機粒子としてナノ粒子を使用する場合に、上記ナノ粒子の定義に沿ったものであれば、材質について特に限定されない。例えば、シリカナノ粒子は、断熱性が高い材料であることに加えて、粒子同士の接点が小さいため、シリカナノ粒子により伝導される熱量は、粒子径が大きいシリカ粒子を使用した場合と比較して小さくなる。また、一般的に入手されるシリカナノ粒子は、かさ密度が0.1(g/cm)程度であるため、例えば、断熱材に対して大きな圧縮応力が加わった場合であっても、シリカナノ粒子同士の接点の大きさ(面積)や数が著しく大きくなることはなく、断熱性を維持することができる。したがって、ナノ粒子としてはシリカナノ粒子を使用することが好ましい。シリカナノ粒子としては、湿式シリカ、乾式シリカ及びエアロゲル等が挙げられるが、本実施形態に特に好適であるシリカナノ粒子について、以下に説明する。
【0046】
(ナノ粒子の平均一次粒子径:1nm以上100nm以下)
ナノ粒子の平均一次粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。
すなわち、ナノ粒子の平均一次粒子径を1nm以上100nm以下とすると、特に500℃未満の温度領域において、断熱材内における熱の対流伝熱及び伝導伝熱を抑制することができ、断熱性をより一層向上させることができる。また、圧縮応力が印加された場合であっても、ナノ粒子間に残った空隙部と、多くの粒子間の接点が伝導伝熱を抑制し、断熱材の断熱性を維持することができる。
なお、ナノ粒子の平均一次粒子径は、2nm以上であることがより好ましく、3nm以上であることが更に好ましい。一方、ナノ粒子の平均一次粒子径は、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。
【0047】
(無機水和物粒子)
無機水和物粒子は、発熱体からの熱を受けて熱分解開始温度以上になると熱分解し、自身が持つ結晶水を放出して発熱体及びその周囲の温度を下げる、所謂「吸熱作用」を発現する。また、結晶水を放出した後は多孔質体となり、無数の空気孔により断熱作用を発現する。
無機水和物の具体例として、水酸化アルミニウム(Al(OH))、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化亜鉛(Zn(OH))、水酸化鉄(Fe(OH))、水酸化マンガン(Mn(OH))、水酸化ジルコニウム(Zr(OH))、水酸化ガリウム(Ga(OH))等が挙げられる。
【0048】
例えば、水酸化アルミニウムは約35%の結晶水を有しており、下記式に示すように、熱分解して結晶水を放出して吸熱作用を発現する。そして、結晶水を放出した後は多孔質体であるアルミナ(Al)となり、断熱材として機能する。
2Al(OH)→Al+3H
【0049】
なお、熱暴走を起こした電池セルでは、200℃を超える温度に急上昇し、700℃付近まで温度上昇を続ける。したがって、断熱材2に含まれる無機粒子としては、熱分解開始温度が200℃以上である無機水和物からなることが好ましい。
【0050】
上記に挙げた無機水和物の熱分解開始温度は、水酸化アルミニウムは約200℃、水酸化マグネシウムは約330℃、水酸化カルシウムは約580℃、水酸化亜鉛は約200℃、水酸化鉄は約350℃、水酸化マンガンは約300℃、水酸化ジルコニウムは約300℃、水酸化ガリウムは約300℃であり、いずれも熱暴走を起こした電池セルの急激な昇温の温度範囲とほぼ重なり、温度上昇を効率よく抑えることができることから、好ましい無機水和物であるといえる。
【0051】
(無機水和物粒子の平均二次粒子径:0.01μm以上200μm以下)
また、第1の無機粒子として、無機水和物粒子を使用した場合に、その平均粒子径が大きすぎると、断熱材2の中心付近にある第1の無機粒子(無機水和物)が、その熱分解温度に達するまでにある程度の時間を要するため、断熱材2の中心付近の第1の無機粒子が熱分解しきれない場合がある。このため、無機水和物粒子の平均二次粒子径は、0.01μm以上200μm以下であることが好ましく、0.05μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0052】
(熱膨張性無機材料からなる粒子)
熱膨張性無機材料としては、バーミキュライト、ベントナイト、雲母、パーライト等を挙げることができる。
【0053】
(含水多孔質体からなる粒子)
含水多孔質体の具体例としては、ゼオライト、カオリナイト、モンモリロナイト、酸性白土、珪藻土、湿式シリカ、乾式シリカ、エアロゲル、マイカ、バーミキュライト等が挙げられる。
【0054】
(無機バルーン)
本発明に用いる断熱材2は、第1の無機粒子として無機バルーンを含んでいてもよい。
無機バルーンが含まれると、500℃未満の温度領域において、断熱材2内における熱の対流伝熱又は伝導伝熱を抑制することができ、断熱材2の断熱性をより一層向上させることができる。
無機バルーンとしては、シラスバルーン、シリカバルーン、フライアッシュバルーン、バーライトバルーン、及びガラスバルーンから選択された少なくとも1種を用いることができる。
【0055】
(無機バルーンの含有量:断熱材全質量に対して60質量%以下)
無機バルーンの含有量としては、断熱材全質量に対し、60質量%以下が好ましい。
【0056】
(無機バルーンの平均粒子径:1μm以上100μm以下)
無機バルーンの平均粒子径としては、1μm以上100μm以下が好ましい。
【0057】
<第2の無機粒子>
断熱材2に2種の無機粒子が含有されている場合に、第2の無機粒子は、第1の無機粒子と材質や粒子径等が異なっていれば特に限定されない。第2の無機粒子としては、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子、無機水和物粒子、シリカナノ粒子、金属酸化物粒子、マイクロポーラス粒子や中空シリカ粒子等の無機バルーン、熱膨張性無機材料からなる粒子、含水多孔質体からなる粒子等を使用することができ、これらの詳細については、上述のとおりである。
【0058】
なお、ナノ粒子は伝導伝熱が極めて小さいとともに、断熱材に圧縮応力が加わった場合であっても、優れた断熱性を維持することができる。また、チタニア等の金属酸化物粒子は、輻射熱を遮る効果が高い。さらに、大径の無機粒子と小径の無機粒子とを使用すると、大径の無機粒子同士の隙間に小径の無機粒子が入り込むことにより、より緻密な構造となり、断熱効果を向上させることができる。したがって、上記第1の無機粒子として、例えばナノ粒子を使用した場合に、さらに、第2の無機粒子として、第1の無機粒子よりも大径である金属酸化物からなる粒子を、断熱材に含有させることが好ましい。
【0059】
金属酸化物としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、ジルコン、酸化ジルコニウム等を挙げることがでる。特に、酸化チタン(チタニア)は他の金属酸化物と比較して屈折率が高い成分であり、500℃以上の高温度領域において光を乱反射させ輻射熱を遮る効果が高いため、チタニアを用いることが最も好ましい。
【0060】
第1の無機粒子として、シリカナノ粒子及びシリカエアロゲルから選択された少なくとも1種の粒子を使用し、第2の無機粒子として、チタニア、ジルコン、ジルコニア、炭化ケイ素、酸化亜鉛及びアルミナから選択された少なくとも1種の粒子を使用する場合に、90℃以下の温度範囲内において、優れた断熱性能を得るためには、第1の無機粒子は、無機粒子全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。また、第1の無機粒子は、無機粒子全質量に対して、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましい。
【0061】
一方、90℃を超える温度範囲内において、優れた断熱性能を得るためには、第2の無機粒子は、無機粒子全質量に対して、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。また、第2の無機粒子は、無機粒子全質量に対して、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0062】
(第2の無機粒子の平均一次粒子径)
金属酸化物からなる第2の無機粒子を断熱材に含有させる場合に、第2の無機粒子の平均一次粒子径は、1μm以上50μm以下であると、500℃以上の高温度領域で効率よく輻射伝熱を抑制することができる。第2の無機粒子の平均一次粒子径は、5μm以上30μm以下であることが更に好ましく、10μm以下であることが最も好ましい。
【0063】
(無機粒子の含有量)
本実施形態において、断熱材2中の無機粒子の合計の含有量が適切に制御されていると、断熱材2の断熱性を十分に確保することができる。
無機粒子の合計の含有量は、断熱材全質量に対して60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。また、無機粒子の合計の含有量が多くなりすぎると、有機繊維の含有量が相対的に減少するため、骨格の補強効果及び無機粒子の保持効果を十分に得るためには、無機粒子の合計の含有量は、断熱材全質量に対して95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。
【0064】
なお、断熱材中の無機粒子の含有量は、例えば、断熱材を800℃で加熱し、有機分を分解後、残部の質量を測定することにより、算出することができる。
【0065】
<無機繊維>
無機繊維として、単一の無機繊維を使用してもよいし、2種以上の無機繊維を組み合わせて使用してもよい。無機繊維としては、例えば、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、カーボンファイバ、ソルブルファイバ、リフラクトリーセラミック繊維、エアロゲル複合材、マグネシウムシリケート繊維、アルカリアースシリケート繊維、チタン酸カリウム繊維、炭化ケイ素繊維、チタン酸カリウムウィスカ繊維等のセラミックス系繊維、ガラス繊維、グラスウール、スラグウール等のガラス系繊維、ロックウール、バサルトファイバ、ウォラストナイト、ムライト繊維等の天然鉱物系繊維等が挙げられる。
これらの無機繊維は、耐熱性、強度、入手容易性などの点で好ましい。無機繊維のうち、取り扱い性の観点から、特にシリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、ガラス繊維、及びこれらの繊維以外の天然鉱物系繊維から選択される少なくとも1種からなるが好ましい。
【0066】
無機繊維の断面形状は、特に限定されず、円形断面、平断面、中空断面、多角断面、芯断面などが挙げられる。中でも、中空断面、平断面又は多角断面を有する異形断面繊維は、断熱性が若干向上されるため好適に使用することができる。
【0067】
(無機繊維の平均繊維長)
無機繊維の平均繊維長の好ましい下限は0.1mmであり、より好ましい下限は0.5mmである。一方、無機繊維の平均繊維長の好ましい上限は50mmであり、より好ましい上限は10mmである。無機繊維の平均繊維長が0.1mm未満であると、無機繊維同士の絡み合いが生じにくく、断熱材の機械的強度が低下するおそれがある。一方、50mmを超えると、補強効果は得られるものの、無機繊維同士が緊密に絡み合うことができなったり、単一の無機繊維だけで丸まったりし、それにより断熱性の低下を招くおそれがある。
【0068】
無機繊維の平均繊維径の好ましい下限は1μmであり、より好ましい下限は2μmであり、更に好ましい下限は3μmである。一方、無機繊維の平均繊維径の好ましい上限は15μmであり、より好ましい上限は10μmである。無機繊維の平均繊維径が1μm未満であると、無機繊維自体の機械的強度が低下するおそれがある。また、人体の健康に対する影響の観点より、無機繊維の平均繊維径が3μm以上であることが好ましい。一方、無機繊維の平均繊維径が15μmより大きいと、無機繊維を媒体とする固体伝熱が増加して断熱性の低下を招くおそれがあり、また、断熱材の成形性及び強度が悪化するおそれがある。
【0069】
(無機繊維の含有量)
本実施形態において、断熱材2が無機繊維を含む場合に、無機繊維の含有量は、断熱材全質量に対して3質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
【0070】
また、無機繊維の含有量は、断熱材全質量に対して、5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。このような含有量にすることにより、無機繊維による保形性や押圧力耐性、抗風圧性や、無機粒子の保持能力がバランスよく発現される。また、無機繊維の含有量を適切に制御することにより、有機繊維及び無機繊維が互いに絡み合って3次元ネットワークを形成するため、無機粒子、及び後述する他の配合材料を保持する効果をより一層向上させることができる。
【0071】
<有機繊維>
有機繊維は、断熱材に柔軟性を与える効果を有するとともに、有機繊維が骨格を形成することにより、断熱材の強度を高める効果を有する。また、有機繊維の表面に無機粒子及び他の有機繊維が溶着されていると、断熱材の強度を向上させる効果及び形状を保持する効果をより一層向上させることができる。また、断熱材に適切な含有量で有機繊維が含まれていると、断熱材の内部にも複数の空隙部が形成され、断熱材が加熱された際に、空気や水分を、空隙部を介して外部に放出することができる。
【0072】
断熱材2における有機繊維の材料として、セルロースファイバ等の単一成分の有機繊維の他に、ポリビニルアルコール(PVA)繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、ポリウレタン繊維及びエチレン-ビニルアルコール共重合体繊維等を使用することができる。
【0073】
なお、断熱材の製造を抄造法にて行う場合に、加熱温度を250℃よりも高くすることは困難であるため、有機繊維のガラス転移点は、250℃以下とすることが好ましく、200℃以下とすることがより好ましい。
【0074】
有機繊維のガラス転移点の下限値も特に限定されないが、樹脂バインダを使用する場合に、樹脂バインダのガラス転移点との差が10℃以上であれば、製造時の冷却工程において、半溶融状態であった有機繊維が完全に固化した後に、樹脂バインダが固化するため、
樹脂バインダによる骨格の補強効果を十分に得ることができる。したがって、樹脂バインダのガラス転移点と、有機繊維のガラス転移点との差は、10℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましい。
【0075】
一方、両者のガラス転移点の差が130℃以下であると、有機繊維が完全に固化してから、樹脂バインダが固化し始めるまでの時間を適切に調整することができ、樹脂バインダが良好な分散状態のまま固化するため、より一層骨格の補強効果を得ることができる。したがって、樹脂バインダのガラス転移点と、有機繊維のガラス転移点との差は、130℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることがさらに好ましく、80℃以下であることがさらにより好ましく、70℃以下であることが特に好ましい。
【0076】
有機繊維としては、芯鞘構造のバインダ繊維を使用することもできる。芯鞘構造のバインダ繊維は、繊維の長手方向に延びる芯部と、芯部の外周面を被覆するように形成された鞘部とを有するものである。この場合に、芯部は第1の有機材料からなり、鞘部は第2の有機材料からなり、第1の有機材料の融点は、第2の有機材料の融点よりも高いものとする。
【0077】
(第1の有機材料)
本実施形態において、芯鞘構造のバインダ繊維を使用する場合に、芯部を構成する第1の有機材料は、芯部の外周面に存在する鞘部、すなわち第2の有機材料の融点よりも高いものであれば、特に限定されない。第1の有機材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン及びナイロンから選択された少なくとも1種が挙げられる。
【0078】
(第2の有機材料)
第2の有機材料は、上記有機繊維を構成する第1の有機材料の融点よりも低いものであれば、特に限定されない。第2の有機材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン及びナイロンから選択された少なくとも1種が挙げられる。
なお、第2の有機材料の融点は、90℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。また、第2の有機材料の融点は、150℃以下であることが好ましく、130℃以下であることがより好ましい。
【0079】
(有機繊維の含有量)
断熱材2における有機繊維の含有量が適切に制御されていると、骨格の補強効果を十分に得ることができる。
有機繊維の含有量は、断熱材全質量に対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、有機繊維の含有量が多くなりすぎると、無機粒子の含有量が相対的に減少するため、所望の断熱性能を得るためには、有機繊維の含有量は、断熱材全質量に対して25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
【0080】
(有機繊維の繊維長)
有機繊維の繊維長については特に限定されないが、成形性や加工性を確保する観点から、有機繊維の平均繊維長は10mm以下とすることが好ましい。
一方、有機繊維を骨格として機能させ、断熱材の圧縮強度を確保する観点から、有機繊維の平均繊維長は0.5mm以上とすることが好ましい。
【0081】
(不融化繊維)
断熱材2は、繊維として不融化繊維を含有していてもよい。不融化繊維としては、ポリアクリロニトリル、セルロース、ピッチなどの熱可塑性樹脂を不融化処理した繊維などが挙げられる。なお、不融化繊維とは、例えば不融化処理された繊維であり、不融化処理としては、放射線、電子線などを照射し架橋させる方法、酸素や水蒸気中で高温に曝し、酸素の作用により不融化させる方法などがある。
【0082】
(炭素含有量)
不融化繊維は、炭素含有量が55~95質量%であることが好ましい。炭素含有量が55質量%以上であると、熱分解による重量減少が既に進行しているので、熱分解による収縮は少なく、熱暴走時、火炎に直接さらされても、原形をとどめ、断熱性を維持することができる。炭素含有量が95質量%以下であると、炭素以外の成分を脱離させ炭素だけの構造に変化するために吸熱反応が起こるので、防炎構造体の裏面に熱が到達する時間を遅らせることができる。
【0083】
好ましい炭素含有量の下限は、60質量%以上である。また、好ましい炭素含有量の上限は90質量%以下、さらに好ましい炭素含有量の上限は85質量%以下である。
【0084】
炭素含有量は、熱処理することにより調整することができる。例えば150~300℃の範囲内の大気中あるいは酸素中での熱処理は、不融化をさらに促進するとともに炭素以外の成分を除去し炭素含有量を高めることができる。例えば300~1000℃の範囲内の熱処理は、縮合多環芳香族構造の形成を進行させるとともに分解ガスを発生し炭素含有量を高めることができる。
【0085】
なお、不融化繊維は、熱可塑性繊維を不融化した繊維に限定されない。上記炭素含有量の範囲であれば、無機繊維であってもよい。
【0086】
(繊維形状)
不融化繊維は短繊維からなるものであることが好ましい。短繊維であるとは、連続繊維ではないことを示している。連続繊維では、クロス、フィラメントワインディングのように繊維の配向方向が揃って繊維束を形成するのに対し、繊維を用いることにより、繊維がランダムな方向を向いた集合体(マットやブランケット、抄造体)となる。そして、短繊維を用いた断熱材は、導電パスが短いので、炭素化の進んだ繊維や、熱暴走に伴って炭素化が進行しても、導電性を低くすることができる。また、繊維がランダムに配向し、繊維同士が点接触となりやすく、熱伝導を低くすることができる。
【0087】
不融化繊維を含む断熱材を製造する場合に、不融化繊維のミルド繊維やチョップド繊維(繊維長0.01~10mm程度)を使用することが好ましい。また、不融化繊維は、繊維径が1~30μmであることが好ましい。不融化繊維の繊維径が1μm以上であると、高温に曝されても空気酸化、昇華の速度を抑制し、防炎の効果を長時間維持することができる。一方、不融化繊維の繊維径が30μm以下であると、高温に曝され炭素化しても一定のしなやかさを保持し、変形、衝撃が生じても破損しにくくすることができる。
【0088】
<有機粒子>
有機粒子としては、中空ポリスチレン粒子等を使用することができる。
【0089】
<他の配合材料>
(樹脂バインダ)
本実施形態における断熱材2の材料は、樹脂バインダにより結着することもできる。樹脂バインダとしては、上記単一成分の有機繊維のガラス転移点よりも低いガラス転移点を有するものであれば、特に限定されない。例えば、スチレン-ブタジエン樹脂、アクリル樹脂、シリコン-アクリル樹脂及びスチレン樹脂から選択された少なくとも1種を含む樹脂バインダを使用することができる。
【0090】
樹脂バインダのガラス転移点は特に規定しないが、-10℃以上であることが好ましい。なお、樹脂バインダのガラス転移点が室温以上であると、樹脂バインダを有する断熱材が室温で使用された場合に、断熱材の強度をより一層向上させることができる。したがって、樹脂バインダのガラス転移点は、例えば20℃以上であることがより好ましく、30℃以上であることがさらに好ましく、50℃以上であることがさらにより好ましく、60℃以上であることが特に好ましい。
【0091】
樹脂バインダの含有量は、断熱材全質量に対して0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0092】
(ホットメルトパウダー)
断熱材2を製造する際の混合物中には、上記無機粒子、無機繊維、有機繊維及び有機粒子の他に、ホットメルトパウダーを含有させてもよい。上記芯鞘構造のバインダ繊維を使用する場合に、ホットメルトパウダーは、例えば上記第1の有機材料及び第2の有機材料とは異なる第3の有機材料を含有し、加熱により溶融する性質を有する粉体とする。断熱材2の材料混合物中にホットメルトパウダーを含有させ、加熱することにより、ホットメルトパウダーは溶融し、その後冷却すると、周囲の無機粒子を含んだ状態で硬化する。したがって、断熱材からの無機粒子の脱落をより一層抑制することができる。
【0093】
ホットメルトパウダーとしては、種々の融点を有するものが挙げられるが、使用するバインダ繊維の芯部及び鞘部の融点を考慮して、適切な融点を有するホットメルトパウダーを選択すればよい。有機繊維として芯鞘構造のバインダ繊維を使用する場合に、ホットメルトパウダーを構成する成分である第3の有機材料は、上記有機繊維を構成する第1の有機材料の融点よりも低いものであれば、芯部を残して、鞘部及びホットメルトパウダーを溶融させるための加熱温度を設定することができる。例えば、ホットメルトパウダーの融点が、鞘部の融点以下であると、製造時の加熱温度は、芯部の融点と鞘部の融点との間で設定すればよいため、より一層容易に加熱温度を設定することができる。
【0094】
一方、ホットメルトパウダーの融点が、芯部の融点と鞘部の融点との間となるように、使用するホットメルトパウダーの種類を選択することもできる。このような融点を有するホットメルトパウダーを使用すると、鞘部及びホットメルトパウダーがともに溶融した後、冷却されて硬化する際に、先に有機繊維(芯部)とその周囲の溶融した鞘部、及び無機粒子の隙間に存在するホットメルトパウダーが硬化する。その結果、有機繊維の位置を固定することができ、その後、溶融していた鞘部が有機繊維に溶着することにより、立体的な骨格が形成されやすくなる。したがって、断熱材全体の強度をより一層向上させることができる。
【0095】
ホットメルトパウダーを構成する第3の有機材料の融点が、芯部を構成する第1の有機材料の融点よりも十分に低いと、加熱する工程における加熱温度の設定裕度を広げることができ、より一層所望の構造を得るための温度設定を容易にすることができる。例えば、第1の有機材料の融点は、第3の有機材料の融点よりも60℃以上高いことが好ましく、70℃以上高いことがより好ましく、80℃以上高いことがさらに好ましい。
【0096】
なお、ホットメルトパウダー(第3の有機材料)の融点は、80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましい。また、ホットメルトパウダー(第3の有機材料)の融点は、180℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。ホットメルトパウダーを構成する成分としては、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、エチレン酢酸ビニル等が挙げられる。
【0097】
(ホットメルトパウダーの含有量)
無機粒子の脱落を抑制するために、断熱材の材料中にホットメルトパウダーを含有させる場合に、その含有量は微量でも粉落ち抑制の効果を得ることができる。したがって、ホットメルトパウダーの含有量は、断熱材を構成する材料全質量に対して0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。
一方、ホットメルトパウダーの含有量を増加させると、無機粒子等の含有量が相対的に減少するため、所望の断熱性能を得るためには、ホットメルトパウダーの含有量は、断熱材を構成する材料全質量に対して5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましい。
【0098】
断熱材の材料としてホットメルトパウダーを含む場合に、加熱する工程における加熱温度は、鞘部を構成する第2の有機材料の融点、及びホットメルトパウダーを構成する第3の有機材料の融点のいずれか高い方よりも10℃以上高く設定することが好ましく、20℃以上高く設定することがより好ましい。一方、加熱温度は、芯部を構成する第1の有機材料の融点よりも10℃以上低く設定することが好ましく、20℃以上低く設定することがより好ましい。このような加熱温度に設定することにより、強固な骨格を形成することができ、断熱材の強度をより一層向上させることができるとともに、無機粒子の脱落を防止することができる。
【0099】
なお、断熱材2は、さらに、必要に応じて、他の結合材、着色剤等を含有させることができる。これらはいずれも断熱材の補強や成形性の向上等を目的とする上で有用であり、断熱材全質量に対して合計量で、10質量%以下とすることが好ましい。
【0100】
本発明において、断熱材2の製造方法についても特に限定されず、一般的に使用されている湿式法及び乾式法を利用して断熱材2を製造することができる。製造時の材料については、上記列挙した材料から、要求される特性に応じて、製造方法に適した材料を選択すればよい。
【0101】
〔無機繊維シート〕
本実施形態における無機繊維シート3は、無機繊維をシート状に加工したものであり、使用する無機繊維は特に制限されない。例えば、上記断熱材2において説明した無機繊維を使用することもできる。中でも、安価で、取扱性に優れ、高い耐熱性を有することなどから、シリカ繊維、アルミナ繊維、ガラス繊維及び金属繊維等を使用することが好ましい。
【0102】
なお、無機繊維については、繊維径など形状的な制限はない。ただし、熱暴走時の飛散物の衝突を防止することを考慮すると、目開きは小さい方が好ましい。
【0103】
〔接着層〕
本実施形態における接着層4には有機材料が含まれる。本実施形態における接着層4は、例えば、断熱材2と無機繊維シート3との間に、有機材料からなる接着材料を配置して、これを加熱し、加圧することにより形成される。このとき、断熱材2中の無機粒子8が接着層4に浸入するため、接着層4には無機粒子8も含まれる。ただし、有機材料の含有量は、接着層全質量に対して80質量%以上であることが好ましい。
【0104】
有機材料としては特に限定されないが、合成ゴム、ポリオレフィン系有機材料、ポリアミド系有機材料、ポリウレタン系有機材料等が挙げられるが、中でもポリオレフィン系有機材料及びポリアミド系有機材料の少なくとも一方を含むことが好ましい。特にポリオレフィン系有機材料を使用すると、低コストで接着層を設けることができ、ポリアミド系有機材料を使用すると、接合強度を向上させることができる。このため、要求される特性に応じて、接着層の材料を選択すればよい。
なお、ポリオレフィン系有機材料として、具体的に、ポリエチレンやポリプロピレンが挙げられる。これらの材料は、柔軟性を有する、衝撃を吸収する、柔らかい、剛性が低く、変形しやすい、フィルム状に伸ばすことができる、等のような性質を有する。したがって、ポリエチレンやポリプロピレンは、本実施形態における接着層の材料として、好適に使用することができる。
【0105】
[カバープロテクタの製造方法]
図4は、本発明の実施形態に係るカバープロテクタの製造方法の一例を示す模式図である。図4を参照して、カバープロテクタの製造方法について工程順に説明する。
【0106】
<配置工程>
配置工程は、断熱材と無機繊維シートとの間に、接着層を構成する接着材料を配置する工程である。具体的には、巻回されたシートロール11から無機繊維シート材12を引き出し、これを水平方向に移動させながら、無機繊維シート材12の上方に配置された複数のノズル13から、繊維状の接着材料14を吐出させる。その後、接着材料14が配置された無機繊維シート材12の上に断熱シート材15を配置する。
【0107】
上記無機繊維シート材12の上面に接着材料14を配置する工程において、無機繊維シート材12の上には、複数の方向に延びる複数の繊維状の接着材料14が、少なくとも一部で互いに重なり合った状態で配置される。
【0108】
<接合工程>
接合工程は、断熱材と接着材料と無機繊維シートとが積層された領域を加熱及び加圧する工程である。具体的には、さらに、無機繊維シート材12、接着材料14及び断熱シート材15を移動させて、これらの上下に配置された1組のホットロール16の間を通過させることにより、これらが積層された領域を加熱するとともに加圧する。その後、冷却されることにより、無機繊維シート材12と断熱シート材15とが接合される。
【0109】
上記接合工程において、接着材料14が互いに重なり合った領域で広がって融着し、図2に示す島状部5が構成される。また、島状部5が形成されていない領域では、接着材料14は加圧により少し広がった形状となるが、繊維形状はそのまま残り、網目状部6が構成される。
【0110】
<成形工程>
その後、無機繊維シート材12と断熱シート材15とが接合された領域に対して、切断機17等により切断することにより、所望の形状及びサイズに成型する。これにより、断熱材2と無機繊維シート3とが接着層4により接合されたカバープロテクタ1を製造することができる。なお、切断後の不要の部分は、巻取りロール18により巻き取られる。
【0111】
上記製造方法によると、容易に島状部5と網目状部6とを有する接着層4を形成することができ、島状部5によって断熱材2と無機繊維シート3とを強固に接合することができる。また、網目状部6によって図3に示す空隙部7が形成されるため、断熱材2と無機繊維シート3とが通常の接合材により接合された場合と比較して、断熱性能をより一層向上させることができる。
【0112】
なお、繊維状の接着材料14を配置する形状については特に限定されないが、例えば、不織布のように繊維状の接着材料14を不規則に配置させてもよい。また、第1方向、この第1方向と異なる第2方向、第1方向及び第2方向と異なる第3方向にそれぞれ伸びる複数の繊維状の接着材料14が重なり合うように配置してもよい。その他、螺旋状や波状に複数の繊維状の接着材料14を配置してもよい。
【0113】
また、島状部5を形成するためには、複数の第1領域における繊維状の接着材料の配置量を、他の第2領域における接着材料の配置量よりも多くなるように、接着材料14を配置することが好ましい。例えば、上記第1領域は、複数の繊維状の接着材料14が互いに重なり合った領域とすることができる。また、島状部5が形成されるように、所望の領域(第1領域)における接着材料14の配置量が多くなるように意図的に調整してもよい。
【0114】
カバープロテクタ1の製造方法は、上記方法に限定されない。例えば、接着材料として、予め接着シートを作製しておき、所望の形状に形成された断熱材と無機繊維シートとの間に接着シートを配置し、加熱及び加圧する方法を採用することもできる。接着シートは、有機材料からなり、複数の方向に延びる複数の繊維をシート状に加工することにより作製することができる。このとき、複数の第1領域における繊維の密度が、第2領域における繊維の密度よりも多くなるように、有機材料からなる繊維を配置すればよい。例えば、複数の繊維が互いに重なり合った領域を形成することにより、この領域を第1領域とすることができる。
【0115】
[電池モジュール]
図5は、本発明の実施形態に係る電池モジュールを示す模式的断面図である。図5に示すように、電池モジュール100は、複数の蓄電池110を、電池ケース120に収容したものである。また、各蓄電池110の電極ターミナル111は、バスバー130により直列に接続されている。
【0116】
また、電池ケース120は、内部に天井面120a、側壁面120b及び底壁面120cを有する。電池ケース120の天井面120aの全面には、上記本実施形態に係るカバープロテクタ1がテープ等により取り付けられている。なお、図示は省略しているが、カバープロテクタ1における無機繊維シートが電極ターミナル111に対向するように、また、カバープロテクタ1における断熱材が電池ケース120の天井面側に対向するように、カバープロテクタ1が配置されている。
【0117】
このように構成された電池モジュール100においては、カバープロテクタ1が優れた断熱性を有するため、蓄電池110が熱暴走して高温になったり発火した場合であっても、電池ケース120の外部への熱の伝達を遅らせることができる。また、本実施形態においては、無機繊維シートと断熱材とが高い接合力で接合されているため、蓄電池110が熱暴走により破裂した場合に、無機繊維シートが落下することなく断熱材を保護し、断熱材の破損を抑制することができる。
【0118】
なお、図5に示す電池モジュール100は、電池ケース120の天井面120aのみにカバープロテクタ1が取り付けられているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、電池ケース120の天井面120a、側壁面120b及び底壁面120cの少なくとも1つにカバープロテクタ1を取り付けることにより、電池ケース120の外部への熱の伝達を遅らせることができる。また、電池ケース120の天井面120a、側壁面120b及び底壁面120cの全ての面にカバープロテクタ1を取り付けると、より一層断熱性及び防炎性を向上させることができる。さらに、カバープロテクタ1は、複数の蓄電池110の間に取り付けられていてもよい。
【符号の説明】
【0119】
1 カバープロテクタ
2 断熱材
3 無機繊維シート
4 接着層
5 島状部
6 網目状部
7 空隙部
8 無機粒子
14 接着材料
100 電池モジュール
110 蓄電池
120 電池ケース
図1
図2
図3
図4
図5