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特開2024-144134カバープロテクタ及びその製造方法、並びに電池モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144134
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】カバープロテクタ及びその製造方法、並びに電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/04 20060101AFI20241003BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20241003BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20241003BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20241003BHJP
【FI】
F16L59/04
H01M10/625
H01M10/658
H01M50/204 401F
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024018669
(22)【出願日】2024-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2023053778
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 祥啓
(72)【発明者】
【氏名】島田 将平
【テーマコード(参考)】
3H036
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB13
3H036AB15
3H036AB18
3H036AB24
3H036AC03
5H031AA09
5H031KK02
5H040AA37
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY04
5H040AY08
5H040LL04
5H040LL06
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】断熱材と、例えば電池ケースの内壁面のような所定の面との接着性を向上させることができるカバープロテクタ及びその製造方法、並びに電池モジュールを提供する。
【解決手段】カバープロテクタ10は、第1の有機繊維3を含む断熱材1と、断熱材1の表面の少なくとも一部に接着された有機フィルム2と、を有し、第1の有機繊維3の少なくとも一部は、断熱材1の表面から突出している。電池モジュール100は、上記カバープロテクタ10と、蓄電池110と、カバープロテクタ10と蓄電池110とを収容する電池ケース120と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の有機繊維及び無機繊維の少なくとも一方からなる繊維を含む断熱材と、
前記断熱材の表面の少なくとも一部に接着された有機フィルムと、を有し、
前記繊維の少なくとも一部は、前記断熱材の表面から突出していることを特徴とする、カバープロテクタ。
【請求項2】
前記第1の有機繊維は非水溶性であることを特徴とする、請求項1に記載のカバープロテクタ。
【請求項3】
前記断熱材は、前記第1の有機繊維と、前記第1の有機繊維と異なる性質を有する第2の有機繊維と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のカバープロテクタ。
【請求項4】
前記第2の有機繊維は水溶性であることを特徴とする、請求項3に記載のカバープロテクタ。
【請求項5】
前記第1の有機繊維は、ポリエチレンテレフタレート繊維であり、
前記第2の有機繊維は、ビニロン繊維であることを特徴とする、請求項4に記載のカバープロテクタ。
【請求項6】
前記無機繊維は、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、ガラス繊維、及びこれらの繊維以外の鉱物系繊維から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1に記載のカバープロテクタ。
【請求項7】
前記断熱材の表面から突出した前記繊維が前記有機フィルムに溶着していることを特徴とする、請求項1に記載のカバープロテクタ。
【請求項8】
前記断熱材は、対向する第1面と第2面とを有し、
前記第1面に前記有機フィルムが配置されており、
前記第2面に無機繊維層が配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のカバープロテクタ。
【請求項9】
前記断熱材と前記無機繊維層とは、接着層により接合されていることを特徴とする、請求項8に記載のカバープロテクタ。
【請求項10】
前記断熱材及び前記無機繊維層は、前記有機フィルムにより被覆されていることを特徴とする、請求項8に記載のカバープロテクタ。
【請求項11】
前記無機繊維層は、シリカ繊維、アルミナ繊維、ガラス繊維及び金属繊維から選択された少なくとも1種を層状に加工したものであることを特徴とする、請求項8に記載のカバープロテクタ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のカバープロテクタの製造方法であって、
前記第1の有機繊維及び前記無機繊維の少なくとも一方からなる繊維を含む断熱材材料をシート状に加工し、前記断熱材を作製する断熱材作製工程と、
前記断熱材の表面の少なくとも一部に前記有機フィルムを接着させる接着工程と、を有し、
前記断熱材作製工程において、前記断熱材の対向する前記第1面及び前記第2面のうち、少なくとも第1面から前記繊維が突出するように前記断熱材を作製し、
前記接着工程において、前記断熱材における前記第1面に前記有機フィルムを接着させることを特徴とする、カバープロテクタの製造方法。
【請求項13】
前記断熱材作製工程において、前記断熱材材料を湿式抄紙法により前記断熱材を作製することを特徴とする、請求項12に記載のカバープロテクタの製造方法。
【請求項14】
前記接着工程において、前記断熱材における前記第1面と前記有機フィルムとを、接着剤又は熱融着により接着することを特徴とする、請求項12に記載のカバープロテクタの製造方法。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか1項に記載のカバープロテクタと、
蓄電池と、
前記カバープロテクタと前記蓄電池とを収容する電池ケースと、を有することを特徴とする、電池モジュール。
【請求項16】
前記電池ケースは、その内部に天井面、側壁面及び底壁面を有し、
前記カバープロテクタにおける前記有機フィルムと、前記天井面、側壁面及び底壁面から選択された少なくとも1つとが接着されて、前記カバープロテクタが前記電池ケース内に取り付けられていることを特徴とする、請求項15に記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバープロテクタ及びその製造方法、並びに該カバープロテクタを備える電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全のために、電気自動車などにリチウムイオン2次電池が用いられている。しかし、リチウムイオン2次電池は、有機電解液を使用しているために、熱暴走時に着火すると火炎が発生してバッテリーパックを損傷させるおそれがある。
【0003】
その対策として、例えば特許文献1には、耐火性と断熱性に優れた熱暴走抑制耐火シートが提案されている。上記耐火シートは、基材と、無機粒子と無機バインダを含有する無機粒子層とを含み、基材は、ガラス繊維と湿熱接着性バインダ繊維とフィブリル化耐熱性繊維を含有する。また、無機粒子層は、基材に含有される繊維の表面を被覆する被覆層と、基材表面の少なくとも片方の面に存在する断熱層とを有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-96935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電池モジュールの外部に火災が広がることを防止するために、電池が収容される電池ケースの壁面や天井面に、上記のような耐火シートを接着しようとした場合に、耐火シートと電池ケースの内壁面との接着性が極めて弱いという問題点がある。このように、耐火シートと所定の面との接着性が弱いと、電池の熱暴走により火災が発生した場合に、耐火シートが容易に落下してしまい、耐火シートによる耐火効果及び断熱効果を得ることができなくなる。その結果、周囲の物や人に危険が及ぶ可能性がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、断熱材と、例えば電池ケースの内壁面のような所定の面との接着性を向上させることができるカバープロテクタ及びその製造方法、並びに電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、カバープロテクタに係る下記[1]の構成により達成される。
【0008】
[1] 第1の有機繊維及び無機繊維の少なくとも一方からなる繊維を含む断熱材と、
前記断熱材の表面の少なくとも一部に接着された有機フィルムと、を有し、
前記第1の有機繊維の少なくとも一部は、前記断熱材の表面から突出していることを特徴とする、カバープロテクタ。
【0009】
また、カバープロテクタに係る本発明の好ましい実施形態は、以下の[2]~[11]に関する。
【0010】
[2] 前記第1の有機繊維は非水溶性であることを特徴とする、[1]に記載のカバープロテクタ。
【0011】
[3] 前記断熱材は、前記第1の有機繊維と、前記第1の有機繊維と異なる性質を有する第2の有機繊維と、を含むことを特徴とする[1]又は[2]に記載のカバープロテクタ。
【0012】
[4] 前記第2の有機繊維は水溶性であることを特徴とする、[3]に記載のカバープロテクタ。
【0013】
[5] 前記第1の有機繊維は、ポリエチレンテレフタレート繊維であり、
前記第2の有機繊維は、ビニロン繊維であることを特徴とする、[3]又は[4]に記載のカバープロテクタ。
【0014】
[6] 前記無機繊維は、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、ガラス繊維、及びこれらの繊維以外の鉱物系繊維から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする、[1]~[5]のいずれか1つに記載のカバープロテクタ。
【0015】
[7] 前記断熱材の表面から突出した前記繊維が前記有機フィルムに溶着していることを特徴とする、[1]~[6]のいずれか1つに記載のカバープロテクタ。
【0016】
[8] 前記断熱材は、対向する第1面と第2面とを有し、
前記第1面に前記有機フィルムが配置されており、
前記第2面に無機繊維層が配置されていることを特徴とする、[1]~[7]のいずれか1つに記載のカバープロテクタ。
【0017】
[9] 前記断熱材と前記無機繊維層とは、接着層により接合されていることを特徴とする、[8]に記載のカバープロテクタ。
【0018】
[10] 前記断熱材及び前記無機繊維層は、前記有機フィルムにより被覆されていることを特徴とする、[8]又は[9]に記載のカバープロテクタ。
【0019】
[11] 前記無機繊維層は、シリカ繊維、アルミナ繊維、ガラス繊維及び金属繊維から選択された少なくとも1種を層状に加工したものであることを特徴とする、[8]~[10]のいずれか1つに記載のカバープロテクタ。
【0020】
本発明の上記目的は、カバープロテクタの製造方法に係る下記[12]の構成により達成される。
【0021】
[12] [1]~[11]のいずれか1つに記載のカバープロテクタの製造方法であって、
前記第1の有機繊維及び無機繊維の少なくとも一方からなる繊維を含む断熱材材料をシート状に加工し、前記断熱材を作製する断熱材作製工程と、
前記断熱材の表面の少なくとも一部に前記有機フィルムを接着させる接着工程と、を有し、
前記断熱材作製工程において、前記断熱材の対向する前記第1面及び前記第2面のうち、少なくとも第1面から前記繊維が突出するように前記断熱材を作製し、
前記接着工程において、前記断熱材における前記第1面に前記有機フィルムを接着させることを特徴とする、カバープロテクタの製造方法。
【0022】
また、カバープロテクタの製造方法に係る本発明の好ましい実施形態は、以下の[13]~[14]に関する。
【0023】
[13] 前記断熱材作製工程において、前記断熱材材料を湿式抄紙法により前記断熱材を作製することを特徴とする、[12]に記載のカバープロテクタの製造方法。
【0024】
[14] 前記接着工程において、前記断熱材における前記第1面と前記有機フィルムとを、接着剤又は熱融着により接着することを特徴とする、[12]又は[13]に記載のカバープロテクタの製造方法。
【0025】
本発明の上記目的は、電池モジュールに係る下記[15]の構成により達成される。
【0026】
[15] [1]~[11]のいずれか1つに記載のカバープロテクタと、
蓄電池と、
前記カバープロテクタと前記蓄電池とを収容する電池ケースと、を有することを特徴とする、電池モジュール。
【0027】
また、電池モジュールに係る本発明の好ましい実施形態は、以下の[16]に関する。
【0028】
[16] 前記電池ケースは、その内部に天井面、側壁面及び底壁面を有し、
前記カバープロテクタにおける前記有機フィルムと、前記天井面、側壁面及び底壁面から選択された少なくとも1つとが接着されて、前記カバープロテクタが前記電池ケース内に取り付けられていることを特徴とする、[15]に記載の電池モジュール。
【発明の効果】
【0029】
本発明のカバープロテクタは、断熱材の表面から突出した第1の有機繊維と有機フィルムとが強固に接着されており、有機フィルムは他の面との接着性が優れているため、断熱材と、所定の面との接着性を向上させることができる。
【0030】
また、本発明のカバープロテクタの製造方法は、容易に有機フィルムとの接着性が優れた断熱材を製造することができるため、低い製造コストで容易にカバープロテクタを製造することができる。
【0031】
さらに、本発明の電池モジュールは、蓄電池を収容する電池ケースに本発明のカバープロテクタを接着したものであるため、熱暴走時にカバープロテクタが落下することを防止することができる。したがって、断熱材による断熱性を保持することができ、火炎が発生しても外部への延焼をより確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るカバープロテクタを示す模式図である。
図2図2は、本発明の第2実施形態に係るカバープロテクタを示す模式図である。
図3図3は、本発明の第3実施形態に係るカバープロテクタを示す模式的断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る電池モジュールを示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態に関して図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
【0034】
[カバープロテクタ]
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るカバープロテクタを示す模式図である。カバープロテクタ10は、断熱材1と、有機フィルム2とを有する。断熱材1は、繊維として、第1の有機繊維3及び第2の有機繊維4を含むとともに、無機粒子6を含んでいる。また、断熱材1の対向する主面のうち第1面1aからは、第1の有機繊維3や、第2の有機繊維4が突出している。具体的に、断熱材1の第1面1aには、第1の有機繊維3の一方の端部が断熱材1に埋め込まれ、他方の端部のみが突出した突出部3aや、両方の端部が断熱材1に埋め込まれ、中央の領域のみがループ状に突出した突出部3b、第1の有機繊維3の表面の一部のみが断熱材1の第1面1aから突出した突出部3cが形成されている。また、第2の有機繊維4の一方の端部が断熱材1に埋め込まれ、他方の端部のみが第1面1aから突出した突出部4aや、第2の有機繊維4の表面の一部のみが断熱材1の第1面1aから突出した突出部4cも形成されている。さらに、図示は省略するが、第2の有機繊維4の中央の領域のみがループ状に突出した突出部を有していてもよい。そして、第1の有機繊維3の突出部3a、3b及び3c、並びに、第2の有機繊維4の突出部4a及び4cと、有機フィルム2とが不図示の接着剤により接着されており、これにより、断熱材1の表面の少なくとも一部に有機フィルム2が接着されている。
【0035】
ここで、一般的な断熱材と有機フィルムとを接着させようとすると、断熱材の表面の状態によっては、有機フィルムとの接着性が著しく低く、両者を高い接着力で接着させることは困難である。例えば、図1において、断熱材1の表面は平坦であるが、実際の断熱材の表面は凹凸を有しており、特に抄造成形された断熱材は凹凸が大きいため、断熱材と有機フィルムとを接着させることは極めて困難である。また、本実施形態においては、断熱材1が無機粒子6を有しており、断熱材1の表面には粉状の粒子が付着した状態となっているため、他の粘着性物質との接着性は著しく低い。
【0036】
一方、図1に示すような第1実施形態に係るカバープロテクタ10においては、第1の有機繊維3及び第2の有機繊維4の一部は断熱材1の内部に埋め込まれた状態であり、一部は断熱材1の第1面1aから突出し、突出部3a、3b、3c、4a、4cが形成されている。また、第1の有機繊維3や、第2の有機繊維4は柔軟性を有するため、断熱材1と有機フィルム2とを重ね合わせたときに、突出部3a、3b、3c、4a、4cは、断熱材1の第1面1aにおいて、この第1面1aに略平行な方向に倒れた状態となる。したがって、第1の有機繊維3及び第2の有機繊維4と有機フィルム2との接触領域5は、従来と比較して極めて大きいものとなり、断熱材1と有機フィルム2との間で高い接着力を得ることができる。これにより、断熱材1を、例えば所定の面に接着させたい場合に、有機フィルム2を接着剤や接着テープ等によって他の面と接着することができる。その結果、断熱材1を、有機フィルム2を介して他の面に高い接着力で接着させることができ、所定の面からの断熱材1の剥落を抑制することができる。
【0037】
なお、図1に示すように、第1の有機繊維3や第2の有機繊維4の両方の端部が、共に断熱材1の内部に埋まっていると、第1の有機繊維3及び第2の有機繊維4が断熱材1から脱落することを抑制することができる。また、断熱材1に埋め込まれた第1の有機繊維3や第2の有機繊維4は、断熱材1の内部で、他の第1の有機繊維3や、第2の有機繊維4と交絡することがある。これにより、第1の有機繊維3及び第2の有機繊維4の断熱材からの脱落をより一層抑制することができる。
【0038】
本実施形態において、断熱材1と有機フィルム2とは接着剤により接着させたが、本発明は接着方法について接着剤に限定されない。例えば、断熱材1と有機フィルム2とを重ね合わせた後に、加熱しつつ両者を厚さ方向に加圧する方法を使用することもできる。第1の有機繊維3や第2の有機繊維4と、有機フィルム2とは、いずれも有機材料からなるものであるため、加熱により溶融し、加圧されることにより両者が溶着される。したがって、本実施形態に示すように、接触領域5が大きくすることにより、融着面積も広くなり、断熱材1と有機フィルム2とをより一層高い接着力で接着されることができる。
【0039】
本実施形態においては、断熱材1が、第1の有機繊維3、第2の有機繊維4及び無機粒子6を含んでいるが、本発明はこのような構成に限定されない。断熱材は、第1の有機繊維3及び無機繊維の少なくとも一方からなる繊維を含むものであればよい。断熱材が無機繊維を有する実施形態について、以下に説明する。
【0040】
<第2実施形態>
図2は、本発明の第2実施形態に係るカバープロテクタを示す模式図である。図2に示す第2実施形態において、図1に示す第1実施形態に係るカバープロテクタと同一物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略又は簡略化する。第2実施形態に係るカバープロテクタ15は、断熱材11と、有機フィルム2とを有する。断熱材11は、繊維として無機繊維16を含むとともに、無機粒子6を含んでいる。第1実施形態と同様に、断熱材11の対向する主面のうち第1面1aからは、無機繊維16が突出している。具体的には、一方の端部のみが突出した突出部16a、中央の領域のみがループ状に突出した突出部16b、無機繊維16の表面の一部のみが突出した突出部16cが形成されている。そして、無機繊維16の突出部16a、16b及び16cと、有機フィルム2とが不図示の接着剤により接着されており、これにより、断熱材11の表面の少なくとも一部に有機フィルム2が接着されている。
【0041】
このように構成された第2実施形態に係るカバープロテクタ15においても、突出部16a、16b、16cの一部が断熱材11に埋め込まれ、一部が有機フィルムと接着されるため、断熱材11と有機フィルム2との間で高い接着力を得ることができる。また、無機繊維16は熱に強く、加熱によっても溶融することがないため、断熱材11と有機フィルム2とが接着剤により接着されたカバープロテクタ15が高熱に晒された場合であっても、高い接着強度を維持することができる。なお、断熱材11に有機繊維が含まれていない場合においても、断熱材11と有機フィルム2とを重ね合わせた後に、加熱しつつ両者を厚さ方向に加圧することにより、有機フィルム2の表面が溶融し、無機繊維16と有機フィルム2とを接合することができる。
【0042】
図2に示す第2実施形態において、断熱材11は、さらに第1の有機繊維3や、第2の有機繊維4を含んでいてもよい。断熱材が、無機繊維16と有機繊維とを含んでいると、有機繊維と有機フィルム2とを融着させることができ、断熱材11と有機フィルム2とを強固に接合することができる。また、断熱材11の第1面11aから突出した無機繊維と有機繊維とが、断熱材11の表面において交絡することにより、断熱材11と有機フィルム2との間でより一層高い接着力を得ることができる。
【0043】
<第3実施形態>
図3は、本発明の第3実施形態に係るカバープロテクタ20を示す模式的断面図である。図3に示す第3実施形態において、図1に示す第1実施形態と同一物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略又は簡略化する。カバープロテクタ20は、断熱材1と、断熱材1の対向する主面である第1面1aに接着された有機フィルム2と、断熱材1の対向する他の主面である第2面1bに接着された無機繊維層7と、を有する。さらに、カバープロテクタ20は、無機繊維層7における断熱材1側の面と反対側の面に、有機フィルム12が接着されている。なお、断熱材1と有機フィルム2との接着構造については、第1実施形態と同様であるため、図示を省略している。
【0044】
このように構成された第3実施形態に係るカバープロテクタ20において、第1実施形態と同様に、断熱材1と有機フィルム2との間で高い接着力を得ることができる。また、断熱材1の第2面1b側に無機繊維層7を有するため、カバープロテクタ20の周囲で物品が破損し、飛散が生じた場合に、無機繊維層7により断熱材1を保護することができる。したがって、断熱材1の破損を抑制することができ、優れた断熱効果及び防炎効果を維持することができる。
【0045】
さらに、本実施形態に係るカバープロテクタ20は、最も外側に有機フィルム2及び有機フィルム12を有するため、断熱材1が例えば無機粒子を有する場合に、無機粒子の脱落を防止することができる。
【0046】
なお、断熱材1の製造方法によっては、一対の主面における一方の主面、例えば第1面1a側に、より多くの繊維が突出している場合がある。このような場合には、第1面1a側に有機フィルム2を接着するように構成すると、断熱材1と有機フィルム2との優れた接着性を得ることができる。
【0047】
本発明に係るカバープロテクタにおいては、断熱材が第1の有機繊維及び無機繊維の少なくとも一方からなる繊維を含み、この繊維が突出して、突出部が形成されていればよい。これにより、突出部と有機フィルム2との間で接触領域5を確保することができ、断熱材1と有機フィルム2とを高い接着力で接着させることができる。なお、断熱材1にさらに積層される無機繊維層7及び有機フィルム12等については、必ずしも必要なものではなく、自由に選択することができる。また、図3に示す第3実施形態においては、第1の有機繊維3及び第2の有機繊維を含む断熱材1が使用されているが、第2実施形態に示すように、無機繊維16を含む断熱材11を使用してもよい。また、第1の有機繊維3及び第2の有機繊維と、無機繊維16とを含む断熱材や、第1の有機繊維3のみを含む断熱材を使用してもよい。
【0048】
また、第3実施形態において、有機フィルム2と有機フィルム12とは、得られる効果が異なるが、互いに同一の有機材料からなるものであってもよいし、それぞれ異なる有機材料からなるものであってもよい。さらに、断熱材1と無機繊維層7との積層体が、有機フィルムによって完全に被覆された状態、すなわち、積層体が有機フィルムに内包されていてもよい。
【0049】
上記第1及び第2実施形態に示すように、例えば、所定の面に有機フィルム2を接着する場合に、断熱材1と有機フィルム2との間においては、少なくとも断熱材1の重量を支える接着力が必要である。しかし、第3実施形態に示すように、無機繊維層7と有機フィルム12との間においては、有機フィルム12の重量のみを支える接着力があればよいため、無機繊維層7と有機フィルム12とを高い接着力で接着させる必要はない。したがって、無機繊維層7と有機フィルム12とは、一般的な方法、例えば接着剤又は熱融着等により接着させることができる。
【0050】
以下、本実施形態に係るカバープロテクタ10を構成する断熱材1、有機フィルム2、無機繊維層7及び接着剤等の材料について、詳細に説明する。
【0051】
〔断熱材〕
本実施形態に係るカバープロテクタ10に用いられる断熱材1としては、第1の有機繊維3を有し、断熱効果が得られるものであれば、特に限定されない。断熱効果を表す指標として、熱伝導率を挙げることができるが、本実施形態においては、断熱材1の熱伝導率は1(W/m・K)未満であることが好ましく、0.5(W/m・K)未満であることがより好ましく、0.2(W/m・K)未満であることがより好ましい。さらに、断熱材1の熱伝導率は0.1(W/m・K)未満であることがより好ましく、0.05(W/m・K)未満であることがより好ましく、0.02(W/m・K)未満であることが特に好ましい。
なお、断熱材1の熱伝導率は、JIS R 2251に記載の「耐火物の熱伝導率の試験方法」に準拠して、測定することができる。
【0052】
断熱材1としては、第1の有機繊維3及び無機繊維16の少なくとも一方を含み、その他の成分として、例えば、無機粒子、第2の有機繊維及び有機粒子から選択された少なくとも1種を含有するものを用いることができる。それぞれの具体例を下記に示す。
【0053】
(第1の有機繊維)
本実施形態において、第1の有機繊維3を構成する有機材料は特に限定されないが、融点が高く、非水溶性(疎水性)の有機材料からなる有機繊維であることが好ましい。第1の有機繊維3として、疎水性の有機繊維を使用すると、第1の有機繊維3と有機フィルム2との接着力をより一層高めることができる。第1の有機繊維3としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維等を使用することができる。
【0054】
(第2の有機繊維)
本実施形態に係るカバープロテクタ10の断熱材1の材料として、上記第1の有機繊維3と異なる性質を有する第2の有機繊維4を含むことが好ましい。第2の有機繊維4を構成する有機材料は、第1の有機繊維3を構成する有機材料と異なるものであれば特に限定されないが、親水性の有機材料からなる有機繊維であることが好ましい。第2の有機繊維4として、親水性の有機繊維を使用すると、断熱材1の成形性を向上させることができる。また、断熱材1が種々の粒子(粉体)等を含む場合には、第2の有機繊維4により、粒子の保持性を向上させ、粒子の脱落を抑制することができる。第2の有機繊維4としては、例えば、ビニロン繊維等を使用することができる。
【0055】
(有機繊維の含有量)
断熱材1における第1の有機繊維3、及び第2の有機繊維4の含有量が適切に制御されていると、上記それぞれの繊維による効果を十分に得ることができる。
断熱材1と有機フィルム2との優れた接着性を得るとともに、断熱材1の成形性及び断熱性を保持するためには、断熱材全質量に対する第1の有機繊維の含有量は、適切に調整することが好ましい。
【0056】
本実施形態において、第2の有機繊維4は断熱材1中に含有されていなくてもよいが、断熱材1の成形性を向上させ、粒子の保持効果を得るとともに、断熱材1の成形性及び断熱性を保持するためには、断熱材全質量に対する第2の有機繊維の含有量も、適切に調整することが好ましい。
【0057】
(有機繊維の繊維長)
有機繊維の繊維長については特に限定されないが、成形性や加工性を確保する観点から、有機繊維の平均繊維長は10mm以下とすることが好ましい。
一方、有機繊維を骨格として機能させ、断熱材の圧縮強度を確保する観点から、有機繊維の平均繊維長は0.5mm以上とすることが好ましい。
【0058】
<無機繊維>
本実施形態に係るカバープロテクタ10における断熱材1は、繊維として、上記有機繊維の代わりに無機繊維を含んでもよいし、上記有機繊維とともに無機繊維を含んでもよい。無機繊維を含むことにより、断熱材の断熱性も向上させることができる。無機繊維として、単一の無機繊維を使用してもよいし、2種以上の無機繊維を組み合わせて使用してもよい。無機繊維としては、例えば、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、カーボンファイバ、ソルブルファイバ、リフラクトリーセラミック繊維、エアロゲル複合材、マグネシウムシリケート繊維、アルカリアースシリケート繊維、チタン酸カリウム繊維、炭化ケイ素繊維、チタン酸カリウムウィスカ繊維等のセラミックス系繊維、ガラス繊維、グラスウール、スラグウール等のガラス系繊維、ロックウール、バサルトファイバ、ウォラストナイト、ムライト繊維等の天然鉱物系繊維等が挙げられる。
これらの無機繊維は、耐熱性、強度、入手容易性などの点で好ましい。無機繊維のうち、取り扱い性の観点から、特にシリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、ガラス繊維、及びこれらの繊維以外の鉱物系繊維から選択される少なくとも1種からなるが好ましい。
【0059】
無機繊維の断面形状は、特に限定されず、円形断面、平断面、中空断面、多角断面、芯断面などが挙げられる。中でも、中空断面、平断面又は多角断面を有する異形断面繊維は、断熱性が若干向上されるため好適に使用することができる。
【0060】
(無機繊維の平均繊維長)
無機繊維の平均繊維長の好ましい下限は0.1mmであり、より好ましい下限は0.5mmである。一方、無機繊維の平均繊維長の好ましい上限は50mmであり、より好ましい上限は10mmである。無機繊維の平均繊維長が0.1mm未満であると、無機繊維同士の絡み合いが生じにくく、断熱材の機械的強度が低下するおそれがある。一方、50mmを超えると、補強効果は得られるものの、無機繊維同士が緊密に絡み合うことができなったり、単一の無機繊維だけで丸まったりし、それにより断熱性の低下を招くおそれがある。
【0061】
無機繊維の平均繊維径の好ましい下限は1μmであり、より好ましい下限は2μmであり、更に好ましい下限は3μmである。一方、無機繊維の平均繊維径の好ましい上限は15μmであり、より好ましい上限は10μmである。無機繊維の平均繊維径が1μm未満であると、無機繊維自体の機械的強度が低下するおそれがある。また、人体の健康に対する影響の観点より、無機繊維の平均繊維径が3μm以上であることが好ましい。一方、無機繊維の平均繊維径が15μmより大きいと、無機繊維を媒体とする固体伝熱が増加して断熱性の低下を招くおそれがあり、また、断熱材の成形性及び強度が悪化するおそれがある。
【0062】
(無機繊維の含有量)
本実施形態において、断熱材1が無機繊維を含む場合に、無機繊維の含有量は、断熱材全質量に対して3質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
【0063】
また、無機繊維の含有量は、断熱材全質量に対して、5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。このような含有量にすることにより、無機繊維による保形性や押圧力耐性、抗風圧性や、無機粒子の保持能力がバランスよく発現される。また、無機繊維の含有量を適切に制御することにより、有機繊維及び無機繊維が互いに絡み合って3次元ネットワークを形成するため、無機粒子、及び後述する他の配合材料を保持する効果をより一層向上させることができる。
【0064】
(不融化繊維)
断熱材1は、上記第1の有機繊維3、無機繊維16及び第2の有機繊維4以外に、不融化繊維を含有していてもよい。不融化繊維としては、ポリアクリロニトリル、セルロース、ピッチなどの熱可塑性樹脂を不融化処理した繊維などが挙げられる。なお、不融化繊維とは、例えば不融化処理された繊維であり、不融化処理としては、放射線、電子線などを照射し架橋させる方法、酸素や水蒸気中で高温に曝し、酸素の作用により不融化させる方法などがある。
【0065】
(炭素含有量)
不融化繊維は、炭素含有量が55~95質量%であることが好ましい。炭素含有量が55質量%以上であると、熱分解による重量減少が既に進行しているので、熱分解による収縮は少なく、熱暴走時、火炎に直接さらされても、原形をとどめ、断熱性を維持することができる。炭素含有量が95質量%以下であると、炭素以外の成分を脱離させ炭素だけの構造に変化するために吸熱反応が起こるので、防炎構造体の裏面に熱が到達する時間を遅らせることができる。
【0066】
好ましい炭素含有量の下限は、60質量%以上である。また、好ましい炭素含有量の上限は90質量%以下、さらに好ましい炭素含有量の上限は85質量%以下である。
【0067】
炭素含有量は、熱処理することにより調整することができる。例えば150~300℃の範囲内の大気中あるいは酸素中での熱処理は、不融化をさらに促進するとともに炭素以外の成分を除去し炭素含有量を高めることができる。例えば300~1000℃の範囲内の熱処理は、縮合多環芳香族構造の形成を進行させるとともに分解ガスを発生し炭素含有量を高めることができる。
【0068】
なお、不融化繊維は、熱可塑性繊維を不融化した繊維に限定されない。上記炭素含有量の範囲であれば、無機繊維であってもよい。
【0069】
(繊維形状)
不融化繊維は短繊維からなるものであることが好ましい。短繊維であるとは、連続繊維ではないことを示している。連続繊維では、クロス、フィラメントワインディングのように繊維の配向方向が揃って繊維束を形成するのに対し、繊維を用いることにより、繊維がランダムな方向を向いた集合体(マットやブランケット、抄造体)となる。そして、短繊維を用いた断熱材は、導電パスが短いので、炭素化の進んだ繊維や、熱暴走に伴って炭素化が進行しても、導電性を低くすることができる。また、繊維がランダムに配向し、繊維同士が点接触となりやすく、熱伝導を低くすることができる。
【0070】
不融化繊維を含む断熱材を製造する場合に、不融化繊維のミルド繊維やチョップド繊維
(繊維長0.01~10mm程度)を使用することが好ましい。また、不融化繊維は、繊維径が1~30μmであることが好ましい。不融化繊維の繊維径が1μm以上であると、高温に曝されても空気酸化、昇華の速度を抑制し、防炎の効果を長時間維持することができる。一方、不融化繊維の繊維径が30μm以下であると、高温に曝され炭素化しても一定のしなやかさを保持し、変形、衝撃が生じても破損しにくくすることができる。
【0071】
<無機粒子>
本実施形態に係るカバープロテクタ10における断熱材1は、所望の断熱性を得るために、無機粒子6を含むことが好ましい。無機粒子として、単一の無機粒子を使用してもよいし、2種以上の無機粒子を組み合わせて使用してもよい。無機粒子の種類としては、断熱効果の観点から、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種の無機材料からなる粒子を使用することが好ましく、酸化物粒子を使用することがより好ましい。また、形状についても特に限定されないが、ナノ粒子、中空粒子及び多孔質粒子から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、具体的には、シリカナノ粒子、金属酸化物粒子、マイクロポーラス粒子や中空シリカ粒子等の無機バルーン、熱膨張性無機材料からなる粒子、含水多孔質体からなる粒子等を使用することもできる。
【0072】
無機粒子の平均二次粒子径が0.01μm以上であると、入手しやすく、製造コストの上昇を抑制することができる。また、200μm以下であると、所望の断熱効果を得ることができる。したがって、無機粒子の平均二次粒子径は、0.01μm以上200μm以下であることが好ましく、0.05μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0073】
なお、2種以上の断熱効果が互いに異なる無機粒子を併用すると、発熱体を多段に冷却することができ、吸熱作用をより広い温度範囲で発現できる。具体的には、大径粒子と小径粒子とを混合使用することが好ましい。例えば、一方の無機粒子として、ナノ粒子を使用する場合に、他方の無機粒子として、金属酸化物からなる無機粒子を含むことが好ましい。以下、小径の無機粒子を第1の無機粒子、大径の無機粒子を第2の無機粒子として、無機粒子についてさらに詳細に説明する。
【0074】
<第1の無機粒子>
(酸化物粒子)
第1の無機粒子として酸化物粒子を使用すると、特に異常発熱などの高温度領域において輻射伝熱を抑制することができる。酸化物粒子としては、シリカ、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム、酸化亜鉛及びアルミナから選択された少なくとも1種の粒子を使用することができる。すなわち、無機粒子として使用することができる上記酸化物粒子のうち、1種のみを使用してもよいし、2種以上の酸化物粒子を使用してもよい。特に、シリカは断熱性が高い成分であり、チタニアは他の金属酸化物と比較して屈折率が高い成分であって、500℃以上の高温度領域において光を乱反射させ輻射熱を遮る効果が高いため、酸化物粒子としてシリカ及びチタニアを用いることが最も好ましい。
【0075】
なお、酸化物粒子は屈折率が高く、光を乱反射させる効果が強いため、酸化物粒子の粒子径は、輻射熱を反射する効果に影響を与えることがある。したがって、酸化物粒子の平均一次粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。
【0076】
(酸化物粒子の平均一次粒子径:0.001μm以上50μm以下)
酸化物粒子の平均一次粒子径が0.001μm以上であると、加熱に寄与する光の波長よりも十分に大きく、光を効率よく乱反射させるため、500℃以上の高温度領域においてカバープロテクタ内における熱の輻射伝熱が抑制され、より一層断熱性を向上させることができる。一方、酸化物粒子の平均一次粒子径が50μm以下であると、圧縮されても粒子間の接点や数が増えず、伝導伝熱のパスを形成しにくいため、特に伝導伝熱が支配的な通常温度域の断熱性への影響を小さくすることができる。
【0077】
なお、本発明において平均一次粒子径は、顕微鏡で粒子を観察し、標準スケールと比較し、任意の粒子10個の平均をとることにより求めることができる。
【0078】
(ナノ粒子)
本発明において、ナノ粒子とは、球形又は球形に近い平均一次粒子径が1μm未満のナノメートルオーダーの粒子を表す。ナノ粒子は低密度であるため伝導伝熱を抑制し、第1の無機粒子としてナノ粒子を使用すると、さらに細かい空隙部が分散するため、対流伝熱を抑制する優れた断熱性を得ることができる。このため、通常の常温域の電池使用時において、隣接するナノ粒子間の熱の伝導を抑制することができる点で、ナノ粒子を使用することが好ましい。
さらに、酸化物粒子として、平均一次粒子径が小さいナノ粒子を使用すると、電池セルの熱暴走に伴う膨張によって断熱材が圧縮され、内部の密度が上がった場合であっても、断熱材の伝導伝熱の上昇を抑制することができる。これは、ナノ粒子が静電気による反発力で粒子間に細かな空隙部ができやすく、かさ密度が低いため、クッション性があるように粒子が充填されるからであると考えられる。
【0079】
なお、第1の無機粒子としてナノ粒子を使用する場合に、上記ナノ粒子の定義に沿ったものであれば、材質について特に限定されない。例えば、シリカナノ粒子は、断熱性が高い材料であることに加えて、粒子同士の接点が小さいため、シリカナノ粒子により伝導される熱量は、粒子径が大きいシリカ粒子を使用した場合と比較して小さくなる。また、一般的に入手されるシリカナノ粒子は、かさ密度が0.1(g/cm)程度であるため、例えば、断熱材に対して大きな圧縮応力が加わった場合であっても、シリカナノ粒子同士の接点の大きさ(面積)や数が著しく大きくなることはなく、断熱性を維持することができる。したがって、ナノ粒子としてはシリカナノ粒子を使用することが好ましい。シリカナノ粒子としては、湿式シリカ、乾式シリカ及びエアロゲル等が挙げられるが、本実施形態に特に好適であるシリカナノ粒子について、以下に説明する。
【0080】
(ナノ粒子の平均一次粒子径:1nm以上100nm以下)
ナノ粒子の平均一次粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。
すなわち、ナノ粒子の平均一次粒子径を1nm以上100nm以下とすると、特に500℃未満の温度領域において、断熱材内における熱の対流伝熱及び伝導伝熱を抑制することができ、断熱性をより一層向上させることができる。また、圧縮応力が印加された場合であっても、ナノ粒子間に残った空隙部と、多くの粒子間の接点が伝導伝熱を抑制し、断熱材の断熱性を維持することができる。
なお、ナノ粒子の平均一次粒子径は、2nm以上であることがより好ましく、3nm以上であることが更に好ましい。一方、ナノ粒子の平均一次粒子径は、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。
【0081】
(無機水和物粒子)
無機水和物粒子は、発熱体からの熱を受けて熱分解開始温度以上になると熱分解し、自身が持つ結晶水を放出して発熱体及びその周囲の温度を下げる、所謂「吸熱作用」を発現する。また、結晶水を放出した後は多孔質体となり、無数の空気孔により断熱作用を発現する。
無機水和物の具体例として、水酸化アルミニウム(Al(OH))、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化亜鉛(Zn(OH))、水酸化鉄(Fe(OH))、水酸化マンガン(Mn(OH))、水酸化ジルコニウム(Zr(OH))、水酸化ガリウム(Ga(OH))等が挙げられる。
【0082】
例えば、水酸化アルミニウムは約35%の結晶水を有しており、下記式に示すように、熱分解して結晶水を放出して吸熱作用を発現する。そして、結晶水を放出した後は多孔質体であるアルミナ(Al)となり、断熱材として機能する。
2Al(OH)→Al+3H
【0083】
なお、熱暴走を起こした電池セルでは、200℃を超える温度に急上昇し、700℃付近まで温度上昇を続ける。したがって、断熱材1に含まれる無機粒子としては、熱分解開始温度が200℃以上である無機水和物からなることが好ましい。
【0084】
上記に挙げた無機水和物の熱分解開始温度は、水酸化アルミニウムは約200℃、水酸化マグネシウムは約330℃、水酸化カルシウムは約580℃、水酸化亜鉛は約200℃、水酸化鉄は約350℃、水酸化マンガンは約300℃、水酸化ジルコニウムは約300℃、水酸化ガリウムは約300℃であり、いずれも熱暴走を起こした電池セルの急激な昇温の温度範囲とほぼ重なり、温度上昇を効率よく抑えることができることから、好ましい無機水和物であるといえる。
【0085】
(無機水和物粒子の平均二次粒子径:0.01μm以上200μm以下)
また、第1の無機粒子として、無機水和物粒子を使用した場合に、その平均粒子径が大きすぎると、断熱材1の中心付近にある第1の無機粒子(無機水和物)が、その熱分解温度に達するまでにある程度の時間を要するため、断熱材1の中心付近の第1の無機粒子が熱分解しきれない場合がある。このため、無機水和物粒子の平均二次粒子径は、0.01μm以上200μm以下であることが好ましく、0.05μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0086】
(熱膨張性無機材料からなる粒子)
熱膨張性無機材料としては、バーミキュライト、ベントナイト、雲母、パーライト等を挙げることができる。
【0087】
(含水多孔質体からなる粒子)
含水多孔質体の具体例としては、ゼオライト、カオリナイト、モンモリロナイト、酸性白土、珪藻土、湿式シリカ、乾式シリカ、エアロゲル、マイカ、バーミキュライト等が挙げられる。
【0088】
(無機バルーン)
本発明に用いる断熱材1は、第1の無機粒子として無機バルーンを含んでいてもよい。
無機バルーンが含まれると、500℃未満の温度領域において、断熱材1内における熱の対流伝熱又は伝導伝熱を抑制することができ、断熱材1の断熱性をより一層向上させることができる。
無機バルーンとしては、シラスバルーン、シリカバルーン、フライアッシュバルーン、バーライトバルーン、及びガラスバルーンから選択された少なくとも1種を用いることができる。
【0089】
(無機バルーンの含有量:断熱材全質量に対して60質量%以下)
無機バルーンの含有量としては、断熱材全質量に対し、60質量%以下が好ましい。
【0090】
(無機バルーンの平均粒子径:1μm以上100μm以下)
無機バルーンの平均粒子径としては、1μm以上100μm以下が好ましい。
【0091】
<第2の無機粒子>
断熱材1に2種の無機粒子が含有されている場合に、第2の無機粒子は、第1の無機粒子と材質や粒子径等が異なっていれば特に限定されない。第2の無機粒子としては、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子、無機水和物粒子、シリカナノ粒子、金属酸化物粒子、マイクロポーラス粒子や中空シリカ粒子等の無機バルーン、熱膨張性無機材料からなる粒子、含水多孔質体からなる粒子等を使用することができ、これらの詳細については、上述のとおりである。
【0092】
なお、ナノ粒子は伝導伝熱が極めて小さいとともに、断熱材に圧縮応力が加わった場合であっても、優れた断熱性を維持することができる。また、チタニア等の金属酸化物粒子は、輻射熱を遮る効果が高い。さらに、大径の無機粒子と小径の無機粒子とを使用すると、大径の無機粒子同士の隙間に小径の無機粒子が入り込むことにより、より緻密な構造となり、断熱効果を向上させることができる。したがって、上記第1の無機粒子として、例えばナノ粒子を使用した場合に、さらに、第2の無機粒子として、第1の無機粒子よりも大径である金属酸化物からなる粒子を、断熱材に含有させることが好ましい。
【0093】
金属酸化物としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、ジルコン、酸化ジルコニウム等を挙げることがでる。特に、酸化チタン(チタニア)は他の金属酸化物と比較して屈折率が高い成分であり、500℃以上の高温度領域において光を乱反射させ輻射熱を遮る効果が高いため、チタニアを用いることが最も好ましい。
【0094】
第1の無機粒子として、シリカナノ粒子及びシリカエアロゲルから選択された少なくとも1種の粒子を使用し、第2の無機粒子として、チタニア、ジルコン、ジルコニア、炭化ケイ素、酸化亜鉛及びアルミナから選択された少なくとも1種の粒子を使用する場合に、90℃以下の温度範囲内において、優れた断熱性能を得るためには、第1の無機粒子は、無機粒子全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。また、第1の無機粒子は、無機粒子全質量に対して、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましい。
【0095】
一方、90℃を超える温度範囲内において、優れた断熱性能を得るためには、第2の無機粒子は、無機粒子全質量に対して、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。また、第2の無機粒子は、無機粒子全質量に対して、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0096】
(第2の無機粒子の平均一次粒子径)
金属酸化物からなる第2の無機粒子を断熱材に含有させる場合に、第2の無機粒子の平均一次粒子径は、1μm以上50μm以下であると、500℃以上の高温度領域で効率よく輻射伝熱を抑制することができる。第2の無機粒子の平均一次粒子径は、5μm以上30μm以下であることが更に好ましく、10μm以下であることが最も好ましい。
【0097】
(無機粒子の含有量)
本実施形態において、断熱材1中の無機粒子の合計の含有量が適切に制御されていると、断熱材1の断熱性を十分に確保することができる。
無機粒子の合計の含有量は、断熱材全質量に対して60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。また、無機粒子の合計の含有量が多くなりすぎると、有機繊維の含有量が相対的に減少するため、骨格の補強効果及び無機粒子の保持効果を十分に得るためには、無機粒子の合計の含有量は、断熱材全質量に対して95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。
【0098】
なお、断熱材中の無機粒子の含有量は、例えば、断熱材を800℃で加熱し、有機分を分解後、残部の質量を測定することにより、算出することができる。
【0099】
<有機粒子>
本実施形態に係るカバープロテクタ10における断熱材1は、有機粒子を含んでいてもよい。有機粒子としては、中空ポリスチレン粒子等を使用することができる。
【0100】
<他の配合材料>
(樹脂バインダ)
本実施形態における断熱材1の材料は、樹脂バインダにより結着することもできる。樹脂バインダとしては、例えば、スチレン-ブタジエン樹脂、アクリル樹脂、シリコン-アクリル樹脂及びスチレン樹脂から選択された少なくとも1種を含む樹脂バインダを使用することができる。
【0101】
樹脂バインダのガラス転移点は特に規定しないが、-10℃以上であることが好ましい。なお、樹脂バインダのガラス転移点が室温以上であると、樹脂バインダを有する断熱材が室温で使用された場合に、断熱材の強度をより一層向上させることができる。したがって、樹脂バインダのガラス転移点は、例えば20℃以上であることがより好ましく、30℃以上であることがさらに好ましく、50℃以上であることがさらにより好ましく、60℃以上であることが特に好ましい。
【0102】
樹脂バインダの含有量は、断熱材全質量に対して0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0103】
(ホットメルトパウダー)
断熱材1を製造する際の混合物中には、上記種々の材料の他に、ホットメルトパウダーを含有させてもよい。断熱材1の材料混合物中にホットメルトパウダーを含有させ、加熱することにより、ホットメルトパウダーは溶融し、その後冷却すると、周囲の無機粒子を含んだ状態で硬化する。したがって、断熱材からの無機粒子の脱落をより一層抑制することができる。
【0104】
ホットメルトパウダーとしては、種々の融点を有するものが挙げられるが、適切な融点を有するホットメルトパウダーを選択すればよい。ホットメルトパウダーを構成する成分としては、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、エチレン酢酸ビニル等が挙げられる。
【0105】
(ホットメルトパウダーの含有量)
断熱材の材料中にホットメルトパウダーを含有させる場合に、その含有量は微量でも粉落ち抑制の効果を得ることができる。したがって、ホットメルトパウダーの含有量は、断熱材を構成する材料全質量に対して0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。
一方、ホットメルトパウダーの含有量を増加させると、無機粒子等の含有量が相対的に減少するため、所望の断熱性能を得るためには、ホットメルトパウダーの含有量は、断熱材を構成する材料全質量に対して5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましい。
【0106】
なお、本実施形態に係るカバープロテクタ10における断熱材1は、さらに、必要に応じて、他の結合材、着色剤等を含有させることができる。これらはいずれも断熱材1の補強や成形性の向上等を目的とする上で有用であり、断熱材全質量に対して合計量で、10質量%以下とすることが好ましい。
【0107】
本発明において、断熱材1の製造方法については、例えば、一般的に使用されている湿式法及び乾式法を利用することができる。製造時の材料については、上記列挙した材料から、要求される特性に応じて、製造方法に適した材料を選択すればよい。
【0108】
〔無機繊維層〕
第3実施形態に示す無機繊維層7は、例えば、無機繊維を層状に加工したものであり、使用する無機繊維は特に制限されない。例えば、上記断熱材1において説明した無機繊維を使用することもできる。中でも、安価で、取扱性に優れ、高い耐熱性を有することなどから、シリカ繊維、アルミナ繊維、ガラス繊維及び金属繊維等を使用することが好ましい。
【0109】
なお、無機繊維については、繊維径など形状的な制限はない。ただし、熱暴走時の飛散物の衝突を防止することを考慮すると、目開きは小さい方が好ましい。
【0110】
〔接着剤〕
断熱材1と有機フィルム2、及び無機繊維層7と有機フィルム12とを接着剤により接着させる場合に、接着剤は有機材料を含むものであることが好ましい。接着させる部材の一方に接着剤を配置し、接着剤の上に他方の部材を配置した後、例えばこれを加熱し、加圧することにより、両者を接着することができる。なお、接着剤中の有機材料の含有量は、接着剤全質量に対して80質量%以上であることが好ましい。
【0111】
有機材料としては特に限定されないが、合成ゴム、ポリオレフィン系有機材料、ポリアミド系有機材料、ポリウレタン系有機材料等が挙げられる。このような有機材料の中でも、ポリオレフィン系有機材料及びポリアミド系有機材料の少なくとも一方を含むことが好ましい。接着剤に含まれる有機材料として、特にポリオレフィン系有機材料を使用すると、接着剤のコストを低減することができる。また、接着剤に含まれる有機材料として、ポリアミド系有機材料を使用すると、接合強度を向上させることができる。このため、要求される特性に応じて、接着層の材料を選択すればよい。
なお、ポリオレフィン系有機材料として、具体的に、ポリエチレンやポリプロピレンが挙げられる。これらの材料は、柔軟性を有する、衝撃を吸収する、柔らかい、剛性が低く、変形しやすい、フィルム状に伸ばすことができる、等のような性質を有する。したがって、ポリエチレンやポリプロピレンは、接着剤の材料として、好適に使用することができる。
【0112】
[カバープロテクタの製造方法]
以下、上記第1実施形態に係るカバープロテクタ10の製造方法について工程順に説明する。
【0113】
<断熱材作製工程>
まず、第1の有機繊維3、第2の有機繊維4及び無機粒子6を含む断熱材材料を、シート状に加工する。このとき、断熱材の対向する一対の主面である第1面及び第2面のうち、少なくとも第1面から、第1の有機繊維3が突出するように、断熱材を作製する。断熱材材料から上記のようなシート状の断熱材を作製する方法としては、乾式法又は湿式抄紙法を使用することができる。乾式法及び湿式抄紙法について、以下に説明する。
【0114】
(乾式法)
まず、第1の有機繊維3、第2の有機繊維4及び無機粒子6を含む断熱材材料を所定の割合でV型混合機などの混合機に投入し、混合物を作製する。断熱材材料に含有させる繊維としては、第2実施形態において説明した無機繊維16のみを使用してもよいし、第1の有機繊維3や第2の有機繊維4とともに、無機繊維16を使用してもよい。乾式法により断熱材1を作成する場合に、混合物には水等の溶媒を添加しない。ただし、第2の有機繊維4として水溶性の有機繊維を使用する場合に、断熱材1の成形性や粒子の保持性を高めるためには、乾式法とされる範囲内で少量の水などの溶媒を添加してもよい。例えば、混合物に水などの少量の溶媒を添加することにより、製造時における無機粒子の飛散をより一層抑制する効果も得ることができる。また、成形後に外部から水分を含ませることによっても、水溶性の有機繊維を使用する効果を得ることができる。
【0115】
その後、得られた混合物を所定の型内に投入し、プレス機等により加圧して、得られた成形体を加熱する。その後、加熱された混合物を冷却することにより、シート状に加工された断熱材1を得ることができる。
【0116】
なお、断熱材の第1面から、第1の有機繊維3や第2の有機繊維4が突出するように断熱材を作製する方法としては特に限定されない。例えば、得られた混合物を所定の型内に投入する際に、第1の有機繊維3や第2の有機繊維4が完全に分別されない程度の所定のメッシュを有する網目状シートを通過させることにより、混合物の上方に、この混合物の上面から突出するように第1の有機繊維3や第2の有機繊維4を配置させることができる。これにより、有機フィルム2との接着性が優れた断熱材1を得ることができる。
【0117】
(湿式抄紙法)
湿式抄紙法では、まず、上記断熱材材料を水中で混合し、撹拌機で撹拌することにより、混合液を調製する。その後、濾過用のメッシュを介して、メッシュの裏側から水分を吸引することにより混合液を脱水し、湿潤シートを作製する。その後、得られた湿潤シートを加熱するとともに加圧することにより、断熱材1を得ることができる。なお、加熱および加圧工程の前に、湿潤シートに熱風を通気させて、シートを乾燥する通気乾燥処理を実施してもよいが、この通気乾燥処理を実施せず、湿潤した状態で加熱および加圧してもよい。
【0118】
上記湿式抄紙法によると、メッシュの裏側から混合液の水分を吸引する際に、繊維がメッシュの裏側から突出する。したがって、断熱材1を作製する際のメッシュ側の面を第1面1aとして、少なくともこの第1面1a側を、有機フィルム2と接着する面に設定することができる。なお、メッシュの上に混合液を流し込み、ある程度まで水分を吸引した後、湿潤シートの上下を逆にしてメッシュの上に配置し、さらにメッシュの裏側から残部の水分を吸引し、これを乾燥させることにより、第1面1a及び第2面1bの両面から繊維が突出した断熱材1を得ることができる。
【0119】
<接着工程>
次に、得られた断熱材1の表面の少なくとも一部に、有機フィルム2を接着させる。この接着工程においては、断熱材1における少なくとも第1面1a側に有機フィルム2を接着させる。断熱材1の第1面1a及び第2面1bの両面において、繊維が突出している場合は、両面に有機フィルム2を接着してもよい。
【0120】
断熱材1と有機フィルム2とを接着させる方法としては、上述のとおり、接着剤を使用してもよいし、両者を重ね合わせた後に、加熱しつつ加圧する方法等を使用することができる。このようにして、本実施形態に係るカバープロテクタ10を製造することができる。
【0121】
上記本実施形態に係るカバープロテクタの製造方法によると、容易に有機フィルム2との接着性が優れた断熱材1を製造することができるため、低い製造コストで容易にカバープロテクタを製造することができる。
【0122】
[電池モジュール]
図4は、本発明の実施形態に係る電池モジュールを示す模式的断面図である。図4に示すように、電池モジュール100は、複数の蓄電池110を、電池ケース120に収容したものである。また、各蓄電池110の電極ターミナル111は、バスバー130により直列に接続されている。
【0123】
また、電池ケース120は、内部に天井面120a、側壁面120b及び底壁面120cを有する。電池ケース120の天井面120aの全面には、例えば第1実施形態に係るカバープロテクタ10がテープ等により取り付けられている。なお、図示は省略しているが、カバープロテクタ10における有機フィルム2が接着されている面が、電池ケース120の天井面側に対向するように、カバープロテクタ10が配置されている。
【0124】
このように構成された電池モジュール100においては、カバープロテクタ10が断熱材1と有機フィルム2とを有し、これらが優れた接着性を有するため、蓄電池110の使用時に断熱材1が天井面120aから剥落することを抑制することができる。したがって、断熱材1による断熱性を保持することができ、火炎が発生しても外部への延焼をより確実に防ぐことができる。
【0125】
さらに、図4に示すカバープロテクタ10を、第3実施形態に係るカバープロテクタ20とした場合に、断熱材1における蓄電池110側に無機繊維層7を配置することができる。このように構成された電池モジュールにおいては、蓄電池110が熱暴走により破裂した場合に、無機繊維層7により断熱材を保護することができるため、断熱材1の破損を抑制することができ、断熱材1による断熱性をより一層保持することができる。
【0126】
なお、図4に示す電池モジュール100は、電池ケース120の天井面120aのみにカバープロテクタ10が取り付けられているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、電池ケース120の天井面120a、側壁面120b及び底壁面120cの少なくとも1つにカバープロテクタ10を取り付けることにより、電池ケース120の外部への熱の伝達を遅らせることができる。また、電池ケース120の天井面120a、側壁面120b及び底壁面120cの全ての面にカバープロテクタ10を取り付けると、より一層断熱性及び防炎性を向上させることができる。さらに、カバープロテクタ10は、複数の蓄電池110の間に取り付けられていてもよい。
【符号の説明】
【0127】
1 断熱材
2、12 有機フィルム
3 第1の有機繊維
4 第2の有機繊維
5 接触領域
6 無機粒子
7 無機繊維層
8 無機粒子
10、20 カバープロテクタ
100 電池モジュール
110 蓄電池
120 電池ケース
図1
図2
図3
図4