(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144136
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】排水管、および、その排水管を用いた排水配管構造
(51)【国際特許分類】
E03C 1/12 20060101AFI20241003BHJP
E03C 1/122 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E03C1/12 E
E03C1/122 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024018786
(22)【出願日】2024-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2023052792
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】足立 宏平
(72)【発明者】
【氏名】八木 博史
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061AA04
2D061AA05
2D061AB03
2D061AB10
2D061AC05
2D061AC06
(57)【要約】
【課題】最下階の排水の負圧が大きくなることを好適に抑制する。
【解決手段】排水配管構造は、建物の最下階に設けられ、最下階床スラブよりも下方に設けられる脚部継手150における曲げ部分Rよりも上流側に減速機構を備える。この減速機構は、排水集合管100の下部管120が備える突起部122により実現される。突起部122における内周面側から排水集合管100の軸芯側までの突出長さについて、少なくとも一部が一部以外よりも突出長さが短い切欠部122Bと、その切欠部122B以外の非切欠部122Aとを、突起部122が備える。非切欠部122Aにより排水の流速を低下させて管内の負圧が大きくなることを抑制するとともに、切欠部122Bにより空気の逃げ道を生成することにより排水が均一に管芯に集中してしまい空気の逃げ道がなくなり管内の負圧が大きくなることを抑制する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の最下階に設けられる排水管であって、
前記排水管が排水集合管である場合には、前記排水集合管は、前記床スラブの上方に突出する上部管と、前記上部管の下方に接着された下部管とを含み、前記上部管は、上階から排水を流入させる上管を接続する上管接続部と、前記床スラブの上方において横枝管を接続する少なくとも1つの横枝管接続部とを含み、前記下部管は、内周面から突出して管内径を狭める突起部を含み、
前記排水管が前記排水集合管の前記下部管に接続される延長立管である場合には、前記延長立管は、内周面から突出して管内径を狭める突起部を含み、
前記突起部における前記内周面側から前記排水集合管または前記延長立管の軸芯側までの突出長さについて、少なくとも一部が前記一部以外よりも前記突出長さが短い切欠部を、前記突起部が備えることを特徴とする、排水管。
【請求項2】
前記切欠部を備えない場合の前記突起部は、前記内周面から環状に突出して管内径を略同心円状に狭める環状突起であって、
前記切欠部は、前記環状突起が部分的に切り欠かれた切欠部であることを特徴とする、請求項1に記載の排水管。
【請求項3】
前記切欠部を備えない場合の前記突起部の形状は、前記内周面から環状に突出して管内径を略同心円状に狭める環状であって、
前記切欠部を備えることにより、前記環状の形状を喪失したことを特徴とする、請求項1に記載の排水管。
【請求項4】
前記軸芯に垂直な投影面において、前記切欠部を備えない場合の前記突起部の投影面積に対する前記切欠部の投影面積の比率は、10%以上77%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の排水管。
【請求項5】
前記環状突起が略同心円状に狭める前の管内径に対する前記切欠部における幅の比率は、35%以上68%以下であることを特徴とする、請求項2に記載の排水管。
【請求項6】
前記環状突起が略同心円状に狭めた管内径に対する前記切欠部における幅の比率は、50%以上96%以下であることを特徴とする、請求項2に記載の排水管。
【請求項7】
前記排水集合管の前記上部管は、前記上部管の内側に偏流板を備え、
前記軸芯に垂直な投影面において、前記切欠部の位置と前記偏流板の位置とは、一致する場合を含めて重なりを備えることを特徴とする、請求項1に記載の排水管。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれかに記載の前記排水管を用いて、建物の最下階に設けられる排水配管構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数階の建物の最下階に設けられる排水管(この排水管は排水集合管であったりその排水集合管の下方において脚部継手との間に接続される延長立管であったりする)、および、それらの排水管を用いた排水配管構造に関する。特に、これらの最下階に設けられる排水管において流速が大き過ぎて管内の負圧が大きくなり過ぎることに起因して各階に設けられた排水トラップを引き込んでしまうという問題点を解決するために、これらの排水管に減速機構(たとえば縮径部を形成する環状の突起)を設けて流速を低下させる際において、排水が均一に管芯に集中してしまい空気の逃げ道がなくなり管内の負圧が大きくなることを抑制することのできる、排水管、および、その排水管を用いた排水配管構造に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅やオフィスビルなどには、給水設備および排水設備が設けられる。このうちの排水設備は、建築物の各階層を上下に貫く立管(縦管等と同義)と、各階層内に設置される横枝管と、これらを接続する排水集合管(排水集合継手、集合継手等と同義)と、最下階の排水集合管と接続される脚部継手等とを備えた排水配管構造が代表的なものとして広く知られている。このような排水配管構造において、建築物が超高層物件である場合等において最下階のスラブ厚が厚いことがある。このように最下階のスラブ厚が厚い場合等においては、最下階の排水集合管と脚部継手との間を伸ばす必要がある。
【0003】
特開2020-197122号公報(特許文献1)は、最下階スラブに設けられる排水配管構造であって、コストの上昇を抑えつつ最下階スラブのスラブ厚に応じて配管の納まりを向上させるとともに、施工管理を容易にする排水配管構造を開示する。この特許文献1に開示された排水配管構造は、最下階スラブに設けられる排水配管構造であって、最下階スラブの上側に配置される横枝管と接続可能な枝管接続部と、当該枝管接続部よりも下側に形成された、下方に延びる円筒状の下側接続部と、を有する集合継手と、最下階スラブの下側に配置される横主管と接続される曲管状の脚部継手と、少なくとも一部が最下階スラブに埋設されるとともに、下端部が上記脚部継手と接続される、接続縦管と、最下階スラブに埋設されて、上記集合継手と上記接続縦管とを接続する接続継手と、を備え、上記接続縦管の外径は、上記集合継手の下側接続部の外径よりも小さく、上記集合継手と上記接続継手とは、最下階スラブに埋設される位置で接続され、上記接続継手には、熱膨張性シートが巻き付けられていることを特徴とする(請求項1)。
【0004】
この特許文献1に開示された排水配管構造においては、接続縦管(3)は、少なくとも一部が最下階スラブ(20)に埋設されることで、最下階スラブ(20)を挟んで集合継手(2)と脚部継手(5)とを接続する、集合継手(2)とは別体で且つ外形がストレート形状の樹脂管である。この接続縦管(3)は、その内径が下側接続部(9)の内径と略等しい一方、その外径が下側接続部(9)の外径よりも若干小さく形成され、接続縦管(3)の内径が下側接続部(9)の内径と略等しく、接続縦管(3)と集合継手(2)とを接続すると、接続縦管(3)の内周面と下側接続部(9)の内周面とが面一となるようになっている(第0025段落)。すなわち、集合継手(2)の下側接続部(9)の内径と同じ内径を備えた接続縦管(3)を用いて最下階の集合継手(2)と脚部継手(5)との間を伸ばしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された排水配管構造のように、集合継手(2)の下側接続部(9)の内径と同じ内径を備えた接続縦管(3)を用いて最下階の集合継手(2)と脚部継手(5)との間を伸ばしたのでは、集合継手(2)の下側接続部(9)の内径の
大きさを維持した状態で最下階の集合継手(2)と脚部継手(5)とが接続縦管(3)により延長されることになる。これでは、これらの内径が大き過ぎて排水量が多くなり過ぎて最下階の排水の負圧が大きくなるという問題点が発生して、各階に設けられた排水トラップを引き込んでしまうという問題点がある。
【0007】
このような最下階に設けられる排水管において流速が大き過ぎて管内の負圧が大きくなり過ぎることに起因して各階に設けられた排水トラップを引き込んでしまうという問題点を解決するために、これらの排水管に減速機構(たとえば縮径部を形成する環状の突起)を設けて流速を低下させることが実施されている。ところが、このような環状の突起により減速させる場合、(均一に縮径する環状の突起であるために)排水が均一に管芯に集中してしまい空気の逃げ道がなくなり管内の負圧が大きくなる。これでは、このような排水トラップを引き込んでしまうという問題点を十分に解決できない可能性がある。
【0008】
本発明は、上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、複数階の建物の最下階に設けられる排水管(この排水管は排水集合管であったりその排水集合管の下方において脚部継手との間に接続される延長立管であったりする)、および、それらの排水管を用いた排水配管構造に関し、特に、これらの最下階に設けられる排水管において流速が大き過ぎて管内の負圧が大きくなり過ぎることに起因して各階に設けられた排水トラップを引き込んでしまうという問題点を解決するために、これらの排水管に減速機構(たとえば縮径部を形成する環状の突起)を設けて流速を低下させる際において、排水が均一に管芯に集中してしまい空気の逃げ道がなくなり管内の負圧が大きくなることを抑制することのできる排水管、および、それらの排水管を用いた排水配管構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のある局面に係る排水管は以下の技術的手段を講じている。
【0010】
すなわち、本発明のある局面に係る排水管は、建物の最下階に設けられる排水管であって、(1)前記排水管が排水集合管である場合には、前記排水集合管は、前記床スラブの上方に突出する上部管と、前記上部管の下方に接着された下部管とを含み、前記上部管は、上階から排水を流入させる上管を接続する上管接続部と、前記床スラブの上方において横枝管を接続する少なくとも1つの横枝管接続部とを含み、前記下部管は、内周面から突出して管内径を狭める突起部を含み、(2)前記排水管が前記排水集合管の前記下部管に接続される延長立管である場合には、前記延長立管は、内周面から突出して管内径を狭める突起部を含み、(1)および(2)に共通して備える突起部において、前記突起部における前記内周面側から前記排水集合管または前記延長立管の軸芯側までの突出長さについて、少なくとも一部が前記一部以外よりも前記突出長さが短い切欠部を、前記突起部が備えることを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記切欠部を備えない場合の前記突起部は、前記内周面から環状に突出して管内径を略同心円状に狭める環状突起であって、前記切欠部は、前記環状突起が部分的に切り欠かれた切欠部であるように構成することができる。
【0012】
さらに好ましくは、前記切欠部を備えない場合の前記突起部の形状は、前記内周面から環状に突出して管内径を略同心円状に狭める環状であって、前記切欠部を備えることにより、前記環状の形状を喪失したように構成することができる。
【0013】
さらに好ましくは、前記軸芯に垂直な投影面において、前記切欠部を備えない場合の前記突起部の投影面積に対する前記切欠部の投影面積の比率は、10%以上77%以下であるように構成することができる。
【0014】
さらに好ましくは、前記環状突起が略同心円状に狭める前の管内径に対する前記切欠部における幅の比率は、35%以上68%以下であるように構成することができる。
【0015】
さらに好ましくは、前記環状突起が略同心円状に狭めた管内径に対する前記切欠部における幅の比率は、50%以上96%以下であるように構成することができる。
【0016】
さらに好ましくは、前記排水集合管の前記上部管は、前記上部管の内側に偏流板を備え、前記軸芯に垂直な投影面において、前記切欠部の位置と前記偏流板の位置とは、一致す
る場合を含めて重なりを備えるように構成することができる。
【0017】
また、本発明の別の局面に係る排水配管構造は、上述したいずれかの排水管を用いて、建物の最下階に設けられる排水配管構造である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、複数階の建物の最下階に設けられる排水管(排水集合管、延長立管)において流速が大き過ぎて管内の負圧が大きくなり過ぎることに起因して各階に設けられた排水トラップを引き込んでしまうという問題点を解決するために、これらの排水管に減速機構(たとえば縮径部を形成する環状の突起)を設けて流速を低下させる際において、排水が均一に管芯に集中してしまい空気の逃げ道がなくなり管内の負圧が大きくなることを抑制することのできる排水管、および、それらの排水管を用いた排水配管構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係る排水管(切欠部を備えた突起部を下部管に有する排水集合管100)を、切欠部を備えた突起部を有する(ソケット部210が分離する)分離型延長立管200または(ソケット領域310が分離しない)一体型延長立管300を用いて延長する場合の排水配管構造を説明するための図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る(切欠部を備えた突起部を下部管に有する)排水集合管100の(A)上面図、(B)2B-2B断面図、(C)2C-2C断面図、(D)下部管120の上面図、(E)2E-2E断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る切欠部を備えた突起部を有する(ソケット領域310が分離しない)一体型延長立管300を用いて
図2に示す排水集合管100を延長した排水配管構造の(A)上面図、(B)側面図、(C)3C-3C断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る切欠部を備えた突起部を有する(ソケット部210が分離する)分離型延長立管200の(A)(B)二面図、(C)分解図、(D)4D-4D断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る切欠部を備えた突起部を有する(ソケット領域310が分離しない)一体型延長立管300の(A)(B)二面図、(C)5C-5C断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る排水集合管および延長立管が有する切欠部を備えた突起部を説明するための図である。
【
図7】ソケット部210およびソケット部211を参照して、切欠部を備えた突起部を説明するための図である。
【
図8】突起部における切欠部および切欠き面積率を説明するための図である。
【
図9】切欠き前の形状が環状以外であるものを含む突起部における切欠部を説明するための図である。
【
図11】本発明の実施の形態の変形例に係る排水集合管1000の(A)上面図、(B)11B-11B断面図、(C)11C-11C断面図である。
【
図12】
図11の上階に設けられる排水集合管2000の(A)上面図、(B)12B-12B断面図、(C)上部管1100のみの12B-12B断面図(一部拡大図)、である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下において、本発明の実施の形態に係る、排水配管構造、ならびに、その排水配管構造に用いられる排水管(排水集合管および延長立管)について、図面を参照して詳しく説明する。本実施の形態に係る排水配管構造、ならびに、その排水配管構造に用いられる排水管(排水集合管および延長立管)は、複数階の建物の最下階に設けられる排水配管構造ならびに、排水管(排水集合管および延長立管)に関し、特に、最下階の排水集合管と脚部継手との間において、排水が均一に管芯に集中してしまい空気の逃げ道がなくなり管内の負圧が大きくなることを抑制することのできる、排水配管構造、ならびに、その排水配管構造に用いられる排水管(排水集合管および延長立管)である。これらの排水配管構造
、ならびに、その排水配管構造に用いられる排水管(排水集合管および延長立管)により排水量が多くなり過ぎることを抑制して、かつ、排水が均一に管芯に集中してしまい空気の逃げ道がなくなり管内の負圧が大きくなることを抑制して、最下階の排水の負圧が大きくなるという問題点が発生しにくくして、各階に設けられた排水トラップを引き込んでしまうという問題点を解決することができる。なお、本発明の実施の形態に係る排水配管構造は、詳しくは後述する、切欠部を備えた突起部を有する排水管(排水集合管および延長立管)を用いて建物の最下階に設けられる排水配管構造であって、超高層用集合管を用いた排水配管構造であっても、2段枝集合管を用いた排水配管構造であっても、その他の排水配管構造であっても、建物の最下階に設けられる排水配管構造を含むものである。
【0021】
ここで、本実施の形態の説明において参照する図においては、本発明の理解をより容易にするために、模式的に記載している場合があったり、隠れ線を記載していない場合があったり、隠れ線で記載すべき部位を実線で記載したり、細部を省略していることにより図どうしで一致しない場合があったりする。また、最下階の排水配管構造に関係する全ての部材について図示しているわけではなく、さらに、図示しているとしても本発明と関連性が低いものは参照符号を付していないし説明もしていない。また、本実施の形態の説明において参照する図においては、異なる図における同じ構成(構造)については同じ参照符号を付しておりそれらについての説明は繰り返さない。なお、配管どうしの接合は、接着剤によるものであっても、ゴム輪止め(止水パッキン止め)であっても、その他の接合方法であっても、構わない。図においては、一例ではあるが、接着剤により、排水集合管100の上部管110と下部管120とが、下部管120と(ソケット部210が分離する)分離型延長立管200とが、または、下部管120と(ソケット領域310が分離しない)一体型延長立管300とが、接合されている。なお、分離型延長立管200と一体型延長立管300とは、本発明の特徴である突起部は同じ構造を備えるためにいずれか一方を代表させて説明する場合があったり、同じ構造を説明する場合には単に延長立管と記載する場合がある。
【0022】
このように、延長立管は、ソケット部210(このソケット部210に減速機構(縮径部)としての突起部212であって空気の逃げ道を生成する切欠部212Bを備える突起部212を有する)が分離する2部材で構成される分離型延長立管200と、1部材で構成されソケット領域310(このソケット領域310に減速機構(縮径部)としての突起部312であって空気の逃げ道を生成する切欠部312Bを備える突起部312を有する)を備える一体型延長立管300とがある。分離型延長立管200のソケット部210における突起部212の構造と、一体型延長立管300のソケット領域310おける突起部312の構造とは同じである。さらに、本実施の形態においては、(
図3(C)に示す下部管120における直管部長さL(1)が(ソケット領域310が分離しない)一体型延長立管300における直管部長さL(2)と一致しない場合があることを除けば)、排水集合管100の下部管120は(ソケット領域310が分離しない)一体型延長立管300と基本的には同じ(略同じ)構造を備える。しかしながら、下部管120は(ソケット部210が分離する)分離型延長立管200と同じ構成を備えるものであっても構わない。なお、排水集合管100の下部管120が有する縮径部、または、ソケット部210もしくはソケット領域310が備える縮径部は、減速機構としての突起部であって、その突起部は切欠部を備え、このように突起部が備える切欠部により、排水が均一に管芯に集中してしまい空気の逃げ道がなくなり管内の負圧が大きくなることを抑制することができる。
【0023】
まず、
図1を参照して、本実施の形態に係る排水配管構造が必要となる場合について説明する。たとえば、
図1(A)に示すように、最下階のスラブ厚が最下階以外のスラブ厚(200mm程度)と同程度の場合には、延長立管を用いないで、下部管120が切欠部を備えた減速機構としての突起部122を有する排水集合管100を用いて排水配管構造を実現すれば良い。一方、建築物が超高層物件である場合を含めて(建築物が超高層物件でなくても構わない)、
図1(A)に点線で
図1(B)に実線で示す最下階のスラブ厚(250mm~300mm程度)が、最下階以外のスラブ厚(200mm程度)よりも厚い場合がある(最下階だけが他の階よりもスラブ厚が厚い場合のみを意味するものではなく、全ての階が同じ厚いスラブ厚(250mm~300mm程度)の場合も含む)。この場合には
図1(B)に示すように、脚部継手150がスラブに埋設されたり、埋設されないとしても床スラブ下面が脚部継手150と接近していて施工性が好ましくない。このような場合に、
図1(B)に示すように本実施の形態に係る分離型延長立管200(または一体型延長立管300)を用いて最下階の排水集合管と脚部継手との間を伸ばす。
【0024】
また、
図1(C)に示すように、最下階のスラブ厚が最下階以外のスラブ厚と同程度であっても、床スラブの下に梁等の建築構造物が配置されている場合がある(300mm角の梁部材H)。
図1(C)に示す場合には、スラブの下の配管は梁の近くにおいて梁をかわす必要がある。このような場合に、
図1(C)に示すように本実施の形態に係る分離型延長立管200(または一体型延長立管300)を用いて最下階の排水集合管と脚部継手との間を伸ばす。
【0025】
なお、梁の有無に関わらず、下流側でレベルの下がったメイン横主管の高さに合わせるために分離型延長立管200(または一体型延長立管300)を用いて最下階の排水集合管と脚部継手との間を伸ばすこともある。図示しないが、最下階スラブSSに設けられる排水集合管100に接続された脚部継手150はさらに下流側のメイン横主管に接続されて建築物外へ排出される。このメイン横主管には複数の脚部継手150が接続されるとともに、メイン横主管には下流側が上流側に比べて低い勾配が備えられ排水がメイン横主管において滞留することを抑制している。このため、複数の脚部継手150が接続されるメイン横主管は、その上流側から下流側へ向けて下方へ傾斜しているので、メイン横主管における下流側で接続される脚部継手150は、最下階の排水集合管と脚部継手との間を伸ばす必要があるので、分離型延長立管200または一体型延長立管300を用いて最下階の排水集合管と脚部継手との間を伸ばす。
【0026】
ここで、
図1においては、排水集合管100は、集水部を備えるとともに上立管接続部および横枝管接続部を備えた上部管110(集水室110と記載する場合がある)とその下流側に接続された下部管120とで構成され、下部管120には減速機構としての突起部122を備えるが、本発明はこのような突起部122を備える排水集合管100に限定して採用されるものではなく延長立管に適用されても構わない。また、限定されるものではないが、下層階負圧が上昇するために、延長立管による最大延長長さは350mm程度であることが現実的である。
【0027】
図1~
図7を参照して、本実施の形態に係る排水配管構造およびその構造に用いられる排水集合管100、および、延長立管(分離型延長立管200、一体型延長立管300)についてその特徴を説明する。ここで、
図2に示す排水集合管100の(断面ではなく外形)側面図は
図3(B)において一体型延長立管300を削除したものであるために、
図2において表していない。なお、排水集合管100、分離型延長立管200および一体型延長立管300に共通する減速機構(縮径部としての、切欠部を備えた突起部)について説明する場合には、分離型延長立管200(特にソケット部210)を代表させて説明する場合がある。また、上述したように、
図3(C)に示すL(1)がL(2)と一致しない場合があることを除けば、排水集合管100の下部管120は(ソケット領域310が分離しない)一体型延長立管300と基本的には同じ構成を備える。
【0028】
本実施の形態に係る排水配管構造は、建物の最下階の床スラブ(最下階床スラブSS)に設けられる。最下階床スラブSSよりも下方に設けられる脚部継手150における曲げ部分Rよりも上流側に減速機構(縮径部)としての突起部であって空気の逃げ道を生成する切欠部を備える突起部を有する。この減速機構は、排水集合管100の下部管120、分離型延長立管200および一体型延長立管300に設けられる。
【0029】
このように、減速機構は、最下階用の排水集合管100を構成する下部管120、下部管120とは別部材の延長立管(分離型延長立管200、一体型延長立管300)に縮径部として設けることができ、
図2(D)(E)等に示すように、この縮径部は、切欠部122Bを備えた突起部122(非切欠部122A+切欠部122B)である。この突起部122における非切欠部122Aにより減速効果が発現されるとともに、切欠部122B
により排水が均一に管芯に集中してしまい空気の逃げ道がなくなり管内の負圧が大きくなることを抑制する効果が発現される。なお、下部管120における突起部122は、分離型延長立管200における突起部212、一体型延長立管300における突起部312に対応し、いずれも、脚部継手150における曲げ部分Rよりも上流側に設けられる。また、突起部122の非切欠部122Aおよび切欠部122Bは、突起部212の非切欠部212Aおよび切欠部212B、ならびに、突起部312の非切欠部312Aおよび切欠部312Bに、それぞれ対応する。
【0030】
これらの2種類の延長立管の中で分離型延長立管200は、
図4に示すように、減速機構(たとえば縮径部として、切欠部212Bを備えた突起部212(非切欠部212A+切欠部212B))を備えたソケット部210と、ソケット部210とは別部材であってソケット部210に接続された減速機構を備えない立管220とを含むものであっても構わない。また、
図5に示す一体型延長立管300であっても構わない。このため、本実施の形態に係る延長立管に含まれる、分離型延長立管200は、上流側であって減速機構(ここでは縮径部として、切欠部212Bを備えた突起部212(非切欠部212A+切欠部212B))を備えるソケット部210と減速機構を備えない立管220との異なる2つの部材で構成される。また、一体型延長立管300は、上流側であって減速機構(ここでは縮径部として、切欠部312Bを備えた突起部312(非切欠部312A+切欠部312B))を備えるソケット領域310と減速機構を備えない立管領域320とを含む1つの部材で構成される。さらに、分離型延長立管200を構成する1つ目の部材であるソケット部210は、上述した突起部212の上流側に下部管120を接続するための下部管接続部214と、上述した突起部212の下流側に分離型延長立管200を構成する2つ目の部材である立管220を接続するための立管接続部216とを備え、一体型延長立管300はソケット領域310において上述した下部管接続部214に対応する下部管接続部314を備えるが、一体型延長立管300は1部材で構成されるため立管接続部216に対応する部位を一体型延長立管300は備えない。なお、分離型延長立管200と一体型延長立管300とでは、上述した以外の構造は同じであって、特に、突起部212と突起部312とは同じ構造を備え、これらの突起部212と突起部312とは、突起部122とも基本的に同じ構造を備える。
【0031】
図2~
図5に示すように、本実施の形態に係る排水配管構造に用いられる排水管である、最下階用の排水集合管100においてはその下部管120は減速機構(縮径部)としての突起部122を備え、分離型延長立管200においてはソケット部210が備える減速機構(縮径部)としての突起部212を備え、一体型延長立管300においてはソケット領域310が備える減速機構(縮径部)としての突起部312を備える。これらの突起部122、突起部212および突起部312は、脚部継手150における曲げ部分Rよりも上流側に設けられる。そして、上述したようにこれらの突起部212および突起部312は同じ構造を備えており、下部管120における突起部122も基本的に同じ構造を備える。ここで、略同じ構造とは、本発明の作用効果である、最下階において排水量が多くなり過ぎることを抑制して、かつ、排水が均一に管芯に集中してしまい空気の逃げ道がなくなり管内の負圧が大きくなることを抑制して、最下階の排水の負圧が大きくなるという問題点が発生しにくくして、各階に設けられた排水トラップを引き込んでしまうという問題点を解決することのできる範囲において構造が略同じであることを意味するものである(逆に言及すれば同じ作用効果を発現さえできれば多少の寸法差は許容されることになる)。
【0032】
より具体的には、
図2~
図5に示すように、突起部122、突起部212および突起部312は、突起部における傾斜角度α(deg)が略同じになるように設定されている。また、突起部122、突起部212および突起部312は、大口径D(1)と大口径d(1)とについて、小口径D(2)と小口径d(2)とについてはそれぞれ完全に一致しない場合があるが、その場合においても傾斜角度α(deg)を略同じになることを優先させて、突起部高さHを設定している。このように、上述の通り、同じ作用効果(排水速度を低下させるとともに排水が均一に管芯に集中することを回避して最下階の排水の負圧が大きくなることを抑制するという作用効果)を発現さえできれば、多少の寸法差は許容されることは上述した通りである。より具体的には(以下の数値に本発明が限定されるものではないが)、排水集合管100の下部管120の突起部122における大口径D(1)(=下部管120の嵌合部径である大口径D(1))が140mmで小口径D(2)が100mmで、突起部212および突起部312における大口径d(1)が125mmで小口径d(2)が100mmであるが、高さHを一致させることよりも傾斜角度α(約62deg)を一致させることを優先している(なお、傾斜角度αは約62degと約を付した概算値であるために小口径D(2)および小口径d(2)が100mmであるものを誤差範囲として含めることができる)。ここで、本実施の形態に係る排水管(排水集合管100、分離型延長立管200、一体型延長立管300)が備える突起部の位置におけるこれらの排水管の断面は軸芯を中心とした円形であって、切欠部を除けば傾斜角度αは全周において同じである。
【0033】
ここで、減速機構を実現するための突起部212および突起部312の構造を、突起部122と略同じ構造としている理由は、以下の通りである。本発明に係る排水配管構造の最大の特徴は、最下階床スラブSSよりも下方に設けられる脚部継手150における曲げ部分Rよりも上流側に減速機構を備えるという新しい技術的思想を備える点である。この新しい技術的思想において考慮すべき事項は、既設の排水集合管100を構成する下部管120が突起部122を備えているという事実である。このような突起部122の本質的な目的は、排水集合管100を構成する集水室110における下部管接続部の口径(=下部管120の嵌合部径である大口径D(1))が脚部継手の口径よりも大きいために、口径の小さい脚部継手に合わせて小さくすることである(排水集合管100に接続される上部管の外径が脚部継手の口径より大きく、下部管120により脚部継手の口径に合わせて口径を小さくしている)。ところが、この縮径するという技術的思想は、ある意味において排水の流れの邪魔になり排水の速度を低下させるとも考えることができる。そして、この突起部122と略同じ構造を、新しい技術的思想に採用することにより排水の流速を低減させて最下階の排水の負圧が大きくなることを抑制させる作用効果を発現させることが実現されやすいと出願人が鋭意開発の末に着目したことがその理由である。なお、本発明に係る減速機構は縮径部に限定されるものではないために、上述した理由は、減速機構が縮径部である場合に限定される。また、このような技術的思想に加えて、排水が均一に管芯に集中してしまい空気の逃げ道がなくなり管内の負圧が大きくなることを抑制するという技術的思想について、以下に一部繰り返しになるが説明する。
【0034】
上述したように、本実施の形態に係る排水管(排水集合管、延長立管)は、減速機構としての空気の逃げ道を生成する切欠部を備えた突起部を有する。より詳しくは、本実施の形態に係る排水管は、排水管建物の最下階に設けられる。この排水管が排水集合管100である場合には、排水集合管100は、床スラブの上方に突出する上部管110と、上部管110の下方に接着された下部管120とを含み、上部管110は、上階から排水を流入させる上管を接続する上管接続部と、床スラブの上方において横枝管を接続する少なくとも1つ(ここでは3つ)の横枝管接続部とを含み、下部管120は、内周面から突出して管内径を狭める突起部122を含む。また、排水管が排水集合管100の下部管120に接続される延長立管(分離型延長立管200、一体型延長立管300)である場合には、延長立管は、内周面から突出して管内径を狭める突起部(突起部212、突起部312)を含む。
図6に示すように、突起部における内周面側から排水集合管100または延長立管の軸芯側までの突出長さLについて、少なくとも一部が一部以外よりも突出長さが短い切欠部を、突起部が備える。すなわち、
図6に示すように、突起部122、突起部212および突起部312は、切欠部122B、切欠部212Bおよび切欠部312Bを備え、切り欠かれていない非切欠部122A、非切欠部212Aおよび非切欠部312Aを備える。そして、非切欠部122A、非切欠部212Aおよび非切欠部312Aにより排水の流速を低下させて管内の負圧が大きくなることを抑制するとともに、切欠部122B、切欠部212Bおよび切欠部312Bにより空気の逃げ道を生成することにより排水が均一に管芯に集中してしまい空気の逃げ道がなくなり管内の負圧が大きくなることを抑制する。なお、本発明の対象は、空気の逃げ道を生成する切欠部を備えた突起部を有する排水集合管のみも、切欠部を備えた突起部を有する延長立管のみも、切欠部を備えた突起部を有する排水集合管と切欠部を備えた突起部を有する延長立管とを組み合わせた排水配管構造も、切欠部を備えた突起部を有する排水集合管と(切欠部を備えた)突起部を有しない延長立管とを組み合わせた排水配管構造も、(切欠部を備えた)突起部を有しない排水集合管と切欠部を備えた突起部を有する延長立管とを組み合わせた排水配管構造も、含まれる。
【0035】
ここで、この突起部は以下のように構成することもできる。
(1)切欠部を備えない場合の突起部として、内周面から環状に突出して管内径(下部管内径、延長立管内径)を略同心円状に狭める環状突起を採用して、切欠部は、環状突起が部分的に切り欠かれた切欠部であるように構成する。
(2)切欠部を備えない場合の突起部の形状として、内周面から環状に突出して管内径を略同心円状に狭める環状を採用して、切欠部を備えることにより、環状の形状を喪失したように構成する。
【0036】
この場合において、切欠部の個数、位置および形状は何ら限定されるものではなく、たとえば
図7(A)(B)に示すソケット部210のように1箇所であっても、
図7(C)(D)に示すソケット部211のように2箇所であっても構わない。さらに
図8にその一例を示すように、切欠き形状も限定されるものではない。なお、本発明における突起部は環状突起に限定されるものでなく、たとえば
図9にその一例を示すように、(円)環状であるものに限定されない。
【0037】
ここで、上述したように、突起部における非切欠部により排水の流速を低下させて管内の負圧が大きくなることを抑制するとともに、突起部における切欠部により空気の逃げ道を生成することにより排水が均一に管芯に集中してしまい空気の逃げ道がなくなり管内の負圧が大きくなることを抑制するためには、どの程度切り欠くのかがポイントとなる。すなわち、たとえば面積率で検討すると、切欠き面積率が大きいと(環状)突起が存在しない割合が増加して減速効果が減少するために切欠き面積率の上限値を限定する必要があり、切欠き面積率が小さいと(環状)突起が存在する割合が増加して空気の逃げ道が減少するために切欠き面積率の下限値を限定する必要がある。このような観点に基づいて、軸芯に垂直な投影面において、切欠部を備えない場合の突起部の投影面積に対する切欠部の投影面積の比率(切欠き面積率)は、10%以上77%以下であることが好ましい。より詳しくは、
図8に示すように、切欠き面積率=(環状)突起が存在しない面積の割合=切欠きがない(環状)突起の面積のうちの切欠かれている部分の面積の比率=X/(X+Y)×100=Xの総和/(Xの総和+Y)×100で算出できて、切欠き面積率は10%以上77%以下であることが好ましい。これは、たとえばX+Y=46cm
2でYが5cm
2以上35cm
2以下である。
【0038】
上述の切欠き面積率に代えて、面積率ではなくたとえば切欠き幅率で検討することも好ましい。
図10に示すように、環状突起が略同心円状に狭める前の管内径d(1)に対する切欠部における幅の比率として第一切欠き幅率を定義して、環状突起が略同心円状に狭めた管内径d(2)に対する切欠部における幅の比率として第二切欠き幅率を定義することが好ましい。いずれの切欠き幅率も大きいと(環状)突起が存在しない割合が増加して減速効果が減少するために切欠き幅率の上限値を限定する必要があり、切欠き幅率が小さいと(環状)突起が存在する割合が増加して空気の逃げ道が減少するために切欠き幅率の下限値を限定する必要がある。このような観点に基づいて、第一切欠き幅率=(環状)突起の上端における管径d(1)(たとえばd(1)=140mm)に対する、切欠部の幅Wの比率=W/d(1)×100=(W(1)+W(2):Wの総和)/d(1)×100=35%以上68%以下(たとえばWの総和=50mm以上95mm以下)が好ましい。また、第二切欠き幅率=(環状)突起の下端における管径d(2)(たとえばd(2)=99mm)に対する切欠部の幅Wの比率=W/d(2)×100=(W(1)+W(2):Wの総和)/d(2)×100=50%以上96%以下(たとえばWの総和=50mm以上95mm以下)が好ましい。
【0039】
ここで、このような切欠き幅Wは、環状突起の内周を形成する円のうちで切り欠かれた弦の長さを意味するものであるが、本発明はこのような弦の長さについてその切欠き幅率の範囲が規定されるものに限定されず、たとえば、環状突起の内周を形成する円のうちで切り欠かれた弧の長さについてその切欠き弧率の範囲が規定されるものであっても構わない。
【0040】
図10(D)に、環状突起の内周を形成する円のうちで切り欠かれた弦の長さWに対応する弧の長さRへの換算式を記載する。この換算式に基づくと、直径99mm(=d(2))の円における弦50mmは弧52.41mm、弦95mmは弧127.27mmになる。このため、φ140mmに対する第一切欠き幅率は弦に対して35%以上68%以下であったが、弧では37%以上91%以下になり、φ99mmに対する第二切欠き幅率は弦に対して50%以上96%以下であったが、弧では52%以上129%以下になる。また、環状突起の内周(φ99の全円周(99×3.1415=)311mm)に対して切り欠いた円弧の比率(どの程度の長さの円弧を切り欠いた)は、(52.41/311=0.1685で)16%以上(127.27/311=0.4092で)41%以下になる。
【0041】
ここで、限定されるものではないが、
図2および
図3に図示するように、本実施の形態に係る排水集合管100の上部管110は、上部管110の内側に偏流板112を備える。そして、排水集合管100の軸芯に垂直な投影面において、切欠部の位置と偏流板112の位置とは、一致する場合を含めて重なりを備えることが好ましい。以下において、この理由について説明する。
【0042】
そもそも、偏流板112は、上部管110における集水室内に多量の排水が流入したときに排水集合管100および立管を流れる排水の流速が増加し、結果として配管内が負圧となることがある。これに対して、排水集合管100の上方に接続された立管から上部管110に流入した排水が偏流板112に接触すると、排水集合管100内を流れる排水が偏流する。これにより、排水集合管100および立管内において空気の逃げ道を生成しやすくして(通気を取りやすくして)、排水配管構造内における圧力変動を減らす役割を有するものである。排水集合管100の軸芯に垂直な投影面において、切欠部の位置と偏流板112の位置とは、一致する場合を含めて重なりを備えると、偏流板112が存在する位置においては空気の逃げ道になり、排水が既に切欠部に流れてこないために、または、切欠部に流れてくる排水量が既に少なくなっているために、切欠部においてさらに空気の逃げ道を生成しやすくなり、排水が均一に管芯に集中してしまい空気の逃げ道がなくなり管内の負圧が大きくなることを好適に抑制することができる。
【0043】
以上のようにして、本実施の形態に係る複数階の建物の最下階に設けられる排水管(排水集合管、延長立管)において流速が大き過ぎて管内の負圧が大きくなり過ぎることに起因して各階に設けられた排水トラップを引き込んでしまうという問題点を解決するために、これらの排水管に減速機構(たとえば縮径部を形成する環状の突起)を設けて流速を低下させる際において、排水が均一に管芯に集中してしまい空気の逃げ道がなくなり管内の負圧が大きくなることを抑制することのできる排水管、および、それらの排水管を用いた排水配管構造を提供することができる。
【0044】
<変形例>
以下において、
図11を参照して、本発明の実施の形態の変形例に係る排水集合管1000について詳しく説明する。この排水集合管1000は上部管1100と下部管120とで構成され、下部管120は
図2に示した物と同一である。この
図11は
図2に対応するものであるが、
図2に示した排水集合管100の下部管120と
図11に示した排水集合管1000の下部管120とは共通であるために、
図11には
図2(D)および
図2(E)を示していない。このように本変形例に係る排水集合管1000の下部管120は、上述した排水集合管100の下部管と同じ構造については
図2と同じ符号を付している。それらについての説明は、上述した説明と重複するために、ここでは繰り返して説明しない。特に、
図2(D)および
図2(E)ならびに
図6~
図10を参照した説明については、以下において繰り返していない。なお、
図2に対応する
図11においては、後述するように外層材(外層カバー)1700が排水集合管1000の外周に設けられている状態を図示するとともに、上部管110と上部管1100とで同じ構造である上立管接続部1110および立管受口1112、ならびに、横枝管接続部1120および横枝管受口1122に符号を付して、ゴム輪1114およびゴム輪1124を図示している。一例ではあるが、上立管と排水集合管1000(および排水集合管100)とは、上立管接続部1110に設けられた立管受口1112およびゴム輪1114を介して接続され、横枝管と排水集合管1000(および排水集合管100)とは、横枝管接続部1120に設けられた横枝管受口1122およびゴム輪1124を介して接続される。
【0045】
図11に示すように、本変形例に係る排水集合管1000は、上述したように上部管1100と下部管120とで構成され、上部管1100は排水集合管100を構成する上部管110と異なる構造を備える。より詳しくは、上部管1100は排水集合管100を構成する上部管110と異なる構造を備える。上部管1100は、上部管110が(任意的に)備えた偏流板112を備えず、この偏流板112とは異なる位置および構造の偏流板1200を備える。なお、偏流板1200を含めて上部管1100の詳細については後述する。このような上部管1100は超高層用排水集合管に用いられることが多いため、
図11に示す排水集合管1000は超高層(建物)専用の最下階用排水集合管とも言える。ただし、上部管1100を中高層建物の最下階用排水集合管へ適用することを排除するものではない。以下においては、排水集合管1000は超高層(建物)専用(超高層用専用と記載する場合がある)の最下階用排水集合管1000として説明する。
【0046】
このような超高層用専用の最下階用排水集合管1000は超高層建物の最下階に設けられ、その上階(最下階以外)には
図12に示す超高層用排水集合管2000が設けられる。この排水集合管2000は、上部管1100と(下部管120とは異なる構造とは異なり縮径部DRの一部に高さ方向が重なる位置に旋回羽根1600を備えた)下部管1500とで構成される。すなわち、超高層用専用以外の(
図2に示した)最下階用排水集合管100と超高層用専用の(
図11に示した)最下階用排水集合管1000とでは下部管120が共通し、超高層用専用の(
図11に示した)最下階用排水集合管1000と超高層用専用の(
図12に示した)排水集合管2000とでは上部管1100が共通する。
【0047】
このように超高層建物の最下階に
図11に示す超高層用専用の最下階用排水集合管1000を設けて、その上階(最下階以外)に
図12に示す超高層用排水集合管2000を設けると、上部管1100が共通しており、最下階以外の上階の超高層用排水集合管2000の偏流板1200と最下階用排水集合管1000の偏流板1200とが同じ位置で同じ形状であるために、上階から最下階への排水の流れが変わることなく、排水が誘導される。これにより、排水集合管の内部に空気の通り道が確保されて所望の排水能力を発揮することができる。また、切欠部122B(および非切欠部122A)を備えた突起部122を有する下部管120と組み合わせることにより、非切欠部122Aにより排水の流速を低下させて、切欠部122Bにより空気の逃げ道を生成することにより、排水集合管内部の負圧が大きくなることを抑制することができる。なお、下部管120における切欠部122Bの位置は、上部管1100との位置関係で決められても構わないし、上部管1100との位置関係で決まらなくても構わない。ここでは、
図11に示す超高層用専用の最下階排水集合管1000のように、切欠部122Bの位置は上部管1000の偏流板1200の下方位置(9時の枝下)であるが(超高層用上部管1100の偏流板1200と下部管120の切欠部122Bが同じ位置であるが)、これ以外の方向であっても構わず、切欠部122Bの周方向の位置はどの方向であっても構わない。
【0048】
なお、超高層建物の場合には、最下階に最下階用排水集合管100(
図2)または超高層用専用の最下階用排水集合管1000(
図11)を設けて、上階(最下階以外)に超高層用排水集合管2000を設けて、中高層建物の場合には、最下階に最下階用排水集合管100(
図2)を設けて(上述したように中高用建物の最下階に超高層用専用の最下階用排水集合管1000を設けることを排除するものではない)、上階(最下階以外)に中高層用排水集合管を設けることになる。ここで、この中高層用排水集合管は、概略的には、
図2に示す(偏流板112の有無は問わないが偏流板1200を備えない)上部管110
と
図12に示す下部管1500とで構成される。
【0049】
以下において、
図11に示す超高層用専用の最下階排水集合管1000(および
図12に示す超高層用排水集合管2000)を構成する上部管1100について詳しく説明する。この上部管1100においては、
図11および
図12(以下においては特記する場合を除いて
図11で代表させる)に示すように排水集合管を上から見た上面図において、0時、3時および6時の方向に横枝管接続部1120を備え、9時の方向に横枝管接続部1120を備えないが、横枝管接続部1120は少なくとも1つ備えればよい。
【0050】
横枝管から排水集合管1000に流入した排水が隣の横枝管に逆流することを防止するための第一逆流防止リブ1310が0時方向の横枝管接続部1120と3時方向の横枝管接続部1120との間に、第二逆流防止リブ1320が3時方向の横枝管接続部1120と6時方向の横枝管接続部1120との間に、それぞれ設けられている。これらの第一逆流防止リブ1310および第二逆流防止リブ1320は、排水集合管1000の上部管1100の内周(内壁)に位置するように、かつ、軸芯に平行な形状を備えるように、設けられている。
【0051】
この上部管1100は、横枝管接続部1120を備えない方向(ここでは9時の方向)において、排水の流れを変化させるために内周に突出した偏流板1200を備える。一例ではあるが、この偏流板1200の表面1200Pは平面形状を備える。さらに、
図11に示すように、この偏流板1200の終点である下端1200Dの高さ位置は、横枝管接続部1120の管軸(好ましくは管底)よりも下である。このように偏流板1200の下端1200Dの高さ位置が横枝管接続部1120の管軸(好ましくは管底)よりも下であることにより、偏流板1200から横枝管への逆流を防止することができるとともに、旋回流を形成しやすくなる点で好ましい。換言すると、全て(ここでは0時方向、3時方向および6時方向)の横枝管接続部1120は偏流板1200の上面を臨む位置に設けられていることになる。なお、ここで、全ての横枝管接続部1120は偏流板1200の上面を臨む位置に設けられているとは、偏流板1200の始点である上端1200Uの高さ位置が、
図12(C)に示す、
(1)横枝管接続部1120の管軸より下であることを基本として、
(2)横枝管の管軸より下であっても
(3)横枝管接続部1120の管底より下または同等高さであっても
のいずれであっても構わず、少なくともこれらの(1)~(3)の場合には、全ての横枝管接続部1120は偏流板1200の上面を臨む位置に設けられていることになる。ただし、(2)については、超高層用専用の最下階排水集合管1000(または超高層用排水集合管2000)に接続される横枝管の管径の違いにより横枝管の管軸の高さ位置は変化する。
【0052】
また、排水集合管1000の上部管1100は、偏流板1200の終点側(下端1200D側)に、偏流板1200からの跳ね返り排水が横枝管へ逆流することを防止するための、軸芯に平行な形状を備えた終点側逆流防止リブ(第三逆流防止リブ1330)を備える。この終点側逆流防止リブ(第三逆流防止リブ1330)の下端1330Dの高さ位置は、
図11に示すように、横枝管接続部1120の管底よりも下であって、かつ、偏流板1200の下端1200Dよりも上である。このように終点側逆流防止リブ(第三逆流防止リブ1330)の下端1330Dの高さ位置が横枝管接続部1120の管底よりも下であることにより偏流板1200から横枝管への逆流を防止することができて、終点側逆流防止リブ(第三逆流防止リブ1330)の下端1330Dの高さ位置が偏流板1200の下端1200Dよりも上であることにより空間1330Sを形成することができるために、旋回流を形成しやすくなる点で好ましい。この空間1330Sが存在することにより、偏流板1200により誘導される旋回流が、終点側逆流防止リブ(第三逆流防止リブ1330)で妨げられることなく流下する。
【0053】
なお、横枝管接続部1120においては、高さ方向の低い方から高い方へ、横枝管接続部1120の管底、横枝管受口1122の管底、横枝管の外径(外径の管底)、横枝管の内径(内径の管底、横枝管底)の順に形成される。上述のように横枝管接続部1120の
管底を基準として、この偏流板1200の終点である下端1200Dの高さ位置、および、終点側逆流防止リブ(第三逆流防止リブ1330)の下端1330Dの高さ位置を規定しているが、これは排水集合管1000の(最小)構成としては、横枝管受口1122(ゴム輪1124)および横枝管を含まないことがその理由である。上述した作用効果(横枝管への逆流防止)を発現させるためには、偏流板1200の終点である下端1200Dの高さ位置も終点側逆流防止リブ(第三逆流防止リブ1330)の下端1330Dの高さ位置も、より厳密的には横枝管の内径よりも下でさえあれば構わない。本発明においては、上述した理由により横枝管接続部1120の管底を基準としているが、横枝管の内径よりも下でさえあれば上述した作用効果を発現できるために、これらの偏流板1200の終点である下端1200Dの高さ位置、および、終点側逆流防止リブ(第三逆流防止リブ1330)の下端1330Dの高さ位置、については、横枝管接続部1120の管底よりも下ということには、横枝管の内径よりも下である場合を排除する意味が含まれるものではないと解することは、それらの差(横枝管接続部1120の管底と横枝管の内径との差)が小さいこと、および、上述した作用効果に鑑みれば、当該技術分野の当業者の技術常識である。
【0054】
上述したようにこの上部管1100は、偏流板1200の終点側(下端1200D側)に、偏流板1200からの跳ね返り排水が横枝管へ逆流することを防止するための終点側逆流防止リブ(第三逆流防止リブ1330)を備えることに加えて/替えて、この偏流板1200の始点側(上端1200U側)に、偏流板1200からの跳ね返り排水が横枝管へ逆流することを防止するための、軸芯に平行な形状を備えた始点側逆流防止リブ(第四逆流防止リブ1340)を備える。この始点側逆流防止リブ(第四逆流防止リブ1340)の下端1340Dの高さ位置は、偏流板1200の上端1200U(始点)に略一致することを特徴とする。このように偏流板1200の上端1200U(始点)の高さ位置に略一致する位置まで始点側逆流防止リブ(第四逆流防止リブ1340)の下端1340Dが伸びているために、偏流板1200から横枝管への逆流を防止することができるとともに、旋回流を形成しやすくなる点で好ましい。
【0055】
このように、軸芯に平行な形状を備えた逆流防止リブは、横枝管から排水集合管1000に流入した排水が隣の横枝管に逆流することを防止するための第一逆流防止リブ1310および第二逆流防止リブ1320と、偏流板1200からの跳ね返り排水が横枝管へ逆流することを防止するための終点側逆流防止リブ(第三逆流防止リブ1330)および始点側逆流防止リブ(第四逆流防止リブ1340)との、4つの逆流防止リブを本変形例に係る排水集合管1000は備える。上述したように、第一逆流防止リブ1310および第二逆流防止リブ1320は排水集合管1000の上部管1100の内周(内壁)に設けられているが、少なくとも、終点側逆流防止リブ(第三逆流防止リブ1330)は、偏流板1200の横であって上部管1100の内周(内壁)から離隔した位置に設けられている。また、軸芯に平行な形状を備えているという点では4つの逆流防止リブの形状は類似するが、その他の形状は一致しない場合を含む(特に始点側逆流防止リブ(第四逆流防止リブ1340))。
【0056】
なお、上述した以外の態様として、以下のような場合があることを記載しておく。
・第一逆流防止リブ1310および第二逆流防止リブ1320の下端の高さよりも、第三逆流防止リブ1330(終点側逆流防止リブ)の下端の高さの方が下に位置する。ただし、横枝管接続部1120の管底よりも下であれば、第一逆流防止リブ1310、第二逆流防止リブ1320および第三逆流防止リブ1330(終点側逆流防止リブ)の下端の高さ位置が同じであっても構わない。
・第四逆流防止リブ1340(始点側逆流防止リブ)の下端1340Dの高さ位置は、偏流板1200が設けられる高さ位置により決まるために、横枝管接続部1120の管底よりも下に位置にしない場合がある。
・これら4箇所の逆流防止リブの下端の高さ位置の関係は、高い順に、第四逆流防止リブ1340(始点側逆流防止リブ)、第一逆流防止リブ1310=第二逆流防止リブ132
0、第三逆流防止リブ1330(終点側逆流防止リブ)である。ただし、第四逆流防止リブ1340(始点側逆流防止リブ)の下端1340Dの高さ位置は、偏流板1200が設けられる高さ位置により決まるために、偏流板1200が設けられる高さ位置が下がれば、第四逆流防止リブ1340(始点側逆流防止リブ)の下端1340Dの高さも下がることになり、偏流板1200の高さの位置によっては、第四逆流防止リブ1340(始点側逆流防止リブ)の下端1340Dが4箇所の逆流防止リブの下端の中で一番下に位置する場合がある。
【0057】
ここで、この排水集合管1000に巻き付けられる外層材(外層カバー)1700について
図11を参照して説明する。この外層材1700は、本願出願人により出願された、たとえば特開2021-167557号公報に開示された外層部材700に対応する(ただし熱膨張性耐火材の形態および位置が異なる)。この排水集合管1000は、燃焼した場合に、その熱によって熱膨張性耐火材1712が径方向の内側に膨張し、樹脂製の排水集合管1000がその中空部を押しつぶして排水集合管1000を閉塞するようになっている。これによって、これらの排水集合管1000を用いた排水配管構造は、火災時に火炎、煙等が流通しないように管路を遮断できるようになっている。なお、
図12に示す超高層用排水集合管2000は、下部管1500の外観形状が下部管120と異なるため、取り付けた形状が異なる外層材(外層カバー)1701が設けられているが、以下における説明は同じであるために外層材(外層カバー)1700を代表させて説明する。
【0058】
図11に示すように、この外層材1700は、3層構造を備え、排水集合管1000の外表面から、制振材1714(または熱膨張性耐火材1712)、耐火性無機繊維によって形成された振動絶縁体1720、遮音カバー1730の順に、排水集合管1000の上部管1100および/または下部管120の外周面に設けられている。
【0059】
このように、この3層構造における最内層1710は、熱膨張性耐火材1712および制振材1714のいずれかである。熱膨張性耐火材1712(耐火シート、耐火テープ)は、
図11に示すように、その高さ位置は、下部管120の上端より上で、かつ、外層材1700の上端1700U(遮音カバー1730の上端)よりも下であることが好ましい。ここで、最内層1710として、排水集合管1000の上部管1100の外周面にテープ状またはシート状の熱膨張性耐火材1712が設けられているために、(たとえば上部管1100の下端に外嵌されている部分の下部管120の外周に設ける場合に比較して)排水集合管1000の外層材1700を含む管外径が大きくなることを回避できる点で好ましい。また、偏流板1200の下端1200Dの高さ位置は、熱膨張性耐火材1712の上端よりも上であること(すなわち、偏流板1200(偏流板1200)と熱膨張性耐火材1712とが高さ方向で重ならないこと)が火災時における管路の迅速な閉塞の観点からは好ましいが、上述したように、偏流板1200を設ける高さ位置が下がる場合があり、その場合には、偏流板1200の下端1200Dの高さ位置は、熱膨張性耐火材1712の上端よりも下である場合(すなわち、偏流板1200と熱膨張性耐火材1712とが高さ方向で重なる場合)がある。なお、熱膨張性耐火材1712はパテ状であっても構わない。
【0060】
制振材1714は、ブチル系(ブチルゴム等)またはアスファルト系(ゴムアスファルト、改質アスファルト等)の材料を含んで形成され、遮音カバー1730は、ゴム系(EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等)、エラストマー系または樹脂系の材料を含んで形成され(ゴム等の軟質材料のみならず硬質の塩ビ製でも構わない)、耐火性無機繊維によって形成された振動絶縁体1720は、耐火性を備えた無機繊維の集合体(多孔質材料)からなる。
【0061】
ここで、無機繊維としては、人造鉱物繊維が挙げられ、たとえば、グラスウール、ロックウールまたはセラミックファイバー等であって、これらは振動絶縁性能が高い点に加えて吸音性能が高い点でも好ましい。排水集合管1000の上部管1100または下部管120を流下する排水による振動(たとえば偏流板1200に当たって発生する騒音、振動)を、制振材1714で抑制した上で、さらに、このロックウール等で形成された振動絶縁体1720により振動を遮断して(および/または振動に伴う騒音を吸収して)、さらに、EPDM製等のゴムカバーで形成された遮音カバー1730により振動に伴う騒音の伝搬を遮断する。ここで、ロックウールとは天然岩石または高炉スラグなど鉄鋼スラグなどを主原料として製造されたものの総称であって、グラスウールとはガラス繊維で構成された綿状のものの総称であって、ともに耐火性および遮炎性を有する。
【0062】
なお、以下においては、制振材1714としてブチルゴムを採用し、振動絶縁体1720としてロックウールを採用し、遮音カバー1730としてEPDM製のゴムカバーを採用した場合について説明する場合があるが、これらの材料は一例に過ぎない。また、外層材1700は(最内層:熱膨張性耐火材1712または制振材1714、中間層:振動絶縁体1720、最外層:遮音カバー1730)は、排水集合管1000の外径(より詳しくは上部管1100の横枝管接続部1120の下方の直管部分である胴部の外径)に対応したリング状で弾性を備えた(EPDM製等の)リング弾性材(ゴムリング1900)を介して、排水集合管1000の外表面に当接することが、止水性を担保できる点で好ましい。止水性を担保するという点からは、リング弾性材(ゴムリング1900)に代えて、パッキン構造を採用することもできる。さらに、ゴムリング1900を介して、排水集合管1000の外表面に外層材1700は接着接合される場合において、接着接合性能が確保できる時間が経過するまでは、たとえば、
図11に示す熱収縮チューブ1910を用いて、排水集合管1000からゴムリング1900および外層材1700の位置がずれないようにすることも好ましい。なお、組み立て作業効率向上のために、外層材1700の遮音カバー1730とゴムリング1900とを(同素材ではあっても)別部材としている。
【0063】
この上部管1100は、上述したように、横枝管接続部1120を備えない方向(ここでは9時の方向)において、排水の流れを変化させるために内周に突出した偏流板1200を備える。そして、
図11(C)に示すように、排水集合管1000の上部管1100は、この偏流板1200が備えられた上部管1100の外周面に、偏流板1200を形成するための凹みを備える。
【0064】
ここで、限定されるものではないが、上部管1100の縦管軸と下部管120の縦管軸とは一致して排水集合管1000の軸芯を形成しており、凹みは、この軸芯に垂直な面を含むリブ1400を備えるようにすることができる。ここで、凹みは必須の構成であるが、このリブ1400は任意的な構成であって、リブ1400を備えることなく、上部管1100の外周面に偏流板1200を形成するための凹みを備えるだけであっても構わない。詳しくは後述するが、リブ1400には、複数(ここでは4個)の胴部同径リブ1410と、これらの胴部同径リブ1410とは出っ張り長さ(
図11(C)に示す長さt)が異なる最下段の(1個の)ゴムリング位置決めリブ1412とを含む。胴部同径リブ1410は、胴部の外径(=胴部径)と略同じであって、ゴムリング位置決めリブ1412は、胴部径よりも長さtだけ出っ張っている。なお、胴部とは上部管1100のおける横枝管接続部1120の直下の直管部分であって、胴部径とはここの外径を意味する。
【0065】
ここで、この凹み(リブの有無を問わない)は、偏流板1200に排水が当たって発生する振動または騒音を低減する機能を備えるようにすることができる。
【0066】
ここで、偏流板1200に排水が当たって発生する振動または騒音を低減する作用効果は、凹み(リブの有無を問わない)に滞留する空気(リブ1400を備える場合にはリブ1400の間に形成される空間1410Sに滞留する空気)により発現させることができる。
【0067】
ここで、偏流板1200に排水が当たって発生する振動または騒音を低減する作用効果は、凹み(リブの有無を問わない)を含めて排水集合管1000を覆う部材、または、凹み(リブの有無を問わない)に嵌め込んだ部材により、により発現させることができる。また、限定されるものではないが、リブがない凹みに滞留する空気を封止するカバー材(制振性能および/または遮音性能を備えるカバー材であるとさらに好ましい)、または、リブ1400の間に形成される空間1410Sに滞留する空気を封止するカバー材(制振性能および/または遮音性能を備えるカバー材であるとさらに好ましい)、を設けることにより、偏流板1200に排水が当たって発生する振動または騒音を低減する作用効果を発現させることができる。また、リブがない凹みに制振性能および/または遮音性能を備えた素材、または、リブ1400の間に形成される空間1410Sに制振性能および/または遮音性能を備えた素材、を設けることにより、偏流板1200に排水が当たって発生する振動または騒音を低減する作用効果を発現させることができる。
【0068】
また、限定されるものではないが、凹みがリブ1400を有する場合において、リブ1400は、横枝管接続部1120の上面から下面までの間に複数(ここでは5個)設けられ、最下段リブ(ゴムリング位置決めリブ1412)の外径は、最下段リブ以外の通常リブ(胴部同径リブ1410)の外径と異なるようにすることができる。
【0069】
この場合において、通常リブ(胴部同径リブ1410)の外径は、上部管1100における横枝管接続部1120よりも下側の胴部の外径(=胴部径)と略同じであることが好ましい。このように、複数の(ここでは4個の)通常リブ(胴部同径リブ1410)の外径は、上部管1100における横枝管接続部1120よりも下側の胴部の外径(=胴部径)と略同じすることにより、3方向(9時の方向以外の3方向)に横枝管接続部1120の外径と略同じか少し大きな直径を最大直径として有するΩ字形状等の穴を備えた上部管カバーを被せる際に、通常リブ(胴部同径リブ1410)が存在することにより、9時方向も他の3方向と同じ外径であるために、上部管カバーを上部管1100に巻着させる作業性が向上するので好ましい。
【0070】
さらに、最下段リブ(ゴムリング位置決めリブ1412)の外径は、上部管1100における横枝管接続部1120よりも下側の胴部の外径よりも大きく(すなわち胴部同径リブ1410よりも大きく)することができる。この場合において、上述したように特開2021-167557号公報を参照して説明したように、胴部に設けられたゴムリング1900を介して、排水集合管1000に外層部材(ここでは3層から構成される外層材1700)が設けられている場合において、以下の態様とすることがさらに好ましい。最下段リブ(ゴムリング位置決めリブ1412)の下面の高さ位置は、横枝管接続部1120の下面と略同じ位置であって、かつ、最下段リブ(ゴムリング位置決めリブ1412)の外径は、胴部の外径よりもゴムリング1900の厚み分を超過して外周側に突出していることが好ましい。
【0071】
すなわち、最下段リブ(ゴムリング位置決めリブ1412)以外の通常リブ(胴部同径リブ1410)は、リブの外径を胴部の外径と略同じであることにより、上部管1100に上部管カバーを被せる際に、この通常リブ(胴部同径リブ1410)が存在することにより、9時方向も他の3方向と同じ外径であるために、上部管カバーを上部管1100に巻着させる作業性が向上する点で好ましい。また、最下段リブ(ゴムリング位置決めリブ1412)は、リブ外径≠胴部外径(リブ外径>胴部外径)であって、ゴムリング位置決めリブ1412の下側の出っ張り量tはゴムリング1900の厚み(たとえば5mm)以上であり(ゴムリング位置決めリブ1412の外径>胴部外径+ゴムリング1900の厚み)、最下段リブ(ゴムリング位置決めリブ1412)の下面の高さ位置は、横枝管接続部1120の下面と略同じ位置である。このため、ゴムリング1900を排水集合管1000の上部管1100にセットする場合において、ゴムリング1900の上端面1900Uをゴムリング位置決めリブ1412の出っ張り量tだけ外周側へ出っ張ったゴムリング位置決めリブ1412の下面に当接させるだけで、排水集合管1000の上部管1100に対して、ゴムリング1900を容易に位置決めすることができ、外層材1700を排水集合管1000に取り付ける作業性が向上する点で好ましい。
【0072】
以上のようにして、本変形例によると、偏流板1200を有する上部管1100と、切欠部122B(および非切欠部122A)を備えた突起部122を有する下部管120とを組み合わせることにより、所望の排水能力を発現できる超高層用専用の最下階用排水集合管(排水管)、および、この排水管を用いた排水配管構造を提供することができる。
【0073】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、複数階の建物の最下階に設けられる排水管(排水集合管、延長立管)およびそれらの排水管を用いた排水配管構造に好ましく、流速が大き過ぎて管内の負圧が大きくなり過ぎることに起因して各階に設けられた排水トラップを引き込んでしまうという問題点を好適に抑制することができる点で特に好ましい。
【符号の説明】
【0075】
100 排水集合管
110 上部管(集水室)
120 下部管
150 脚部継手
200 分離型延長立管
300 一体型延長立管